(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】音質の向上および個人化
(51)【国際特許分類】
H04R 3/04 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
H04R3/04
(21)【出願番号】P 2021510202
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2019048918
(87)【国際公開番号】W WO2020047324
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592051453
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウェルティ, トッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】コンサリポア, オミド
(72)【発明者】
【氏名】オリーブ, ショーン エドワード
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182553(JP,A)
【文献】特開2000-209698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0197591(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0366518(US,A1)
【文献】特表2014-534658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0334644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ入力信号に基づいてオーディオコンテンツを再生するように構成されるオーディオ再生デバイスを識別することであって、前記オーディオ再生デバイスは、測定済みの特有の周波数応答を有する、ことと、
複数の好みの周波数応答に基づく目標周波数応答曲線を受信することであって、前記複数の好みの周波数応答の各好みの周波数応答は、複数のユーザのうちの
異なるユーザによって選択される、ことと、
前記測定済みの特有の周波数応答と、前記目標周波数応答曲線とに基づいて、前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答を、修正された周波数応答に修正する周波数応答フィルタを生成することと、
前記周波数応答フィルタを用いて前記オーディオ入力信号を処理して、1つまたは複数の周波数帯域において前記オーディオ入力信号と相対振幅が異なるフィルタリングされたオーディオ信号を生成することと、
前記オーディオ再生デバイスに、前記フィルタリングされたオーディオ信号を再生させることと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記オーディオ再生デバイスを識別する前に、前記オーディオ再生デバイスに関連付けられた前記測定済みの特有の周波数応答を取得することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記オーディオ入力信号を処理する前に、少なくとも1つのユーザの好みの周波数応答に基づいて前記周波数応答フィルタを修正することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記周波数応答フィルタを修正することは、
前記周波数応答フィルタおよびプリセットフィルタ応答を用いてテストオーディオ信号を処理して、前記オーディオ再生デバイスで前記テストオーディオ信号を再生することと、
前記テストオーディオ信号を再生した後に、前記プリセットフィルタ応答が前記少なくとも1つのユーザの好みの周波数応答に対応することを示すユーザ入力を受信することと、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記目標周波数応答曲線は、前記測定済みの特有の周波数応答の少なくとも一部を相殺するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記複数のユーザの前記好みの周波数応答曲線は、前記複数のユーザの平均周波数応答曲線を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記目標周波数応答曲線は、プリセットフィルタ応答に基づく、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記目標周波数応答曲線は、第1のプリセットフィルタ応答と第2のプリセットフィルタ応答との組み合わせに基づく、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記オーディオ再生デバイスを識別することは、前記オーディオ再生デバイスから受信した情報に基づいて前記オーディオ再生デバイスのモデルを特定することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記オーディオ再生デバイスを識別することは、前記オーディオ再生デバイスの前記モデルを示すユーザ入力を受信することを含む、請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
オーディオ再生デバイスのユーザのユーザ固有の情報を示す1つまたは複数のユーザ入力を受信することと、
前記オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答を相殺するデバイス特有の周波数応答を受信することと、
複数の好みの周波数応答に基づく目標周波数応答曲線を受信することであって、前記複数の好みの周波数応答の各好みの周波数応答は、複数のユーザのうちの
異なるユーザによって選択され、前記
異なるユーザは、前記ユーザ固有の情報の少なくとも一部に関連付けられる、ことと、
前記目標周波数応答曲線および前記デバイス特有の周波数応答の組み合わせに基づいて、個人用音響フィルタ応答を生成することと、
前記個人用音響フィルタ応答に基づいて、前記オーディオ再生デバイスの周波数応答を調整することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記ユーザ固有の情報は、前記ユーザに関連する人口統計情報を含む、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答に基づいて前記オーディオ再生デバイスの前記周波数応答を調整することをさらに含む、請求項11または12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答に基づいて前記オーディオ再生デバイスの前記周波数応答を調整することは、
前記オーディオ再生デバイスを識別することと、
前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答に基づく周波数応答フィルタを取得することと、
を含む、請求項13に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
第1の音響フィルタ応答の第1のユーザランキングと、第2の音響フィルタ応答の第2のユーザランキングとを受信することであって、前記第1の音響フィルタ応答および前記第2の音響フィルタ応答の各々は、複数の好みの周波数応答に基づくそれぞれの目標周波数応答から生成され、前記複数の好みの周波数応答の各好みの周波数応答は、複数のユーザのうちの
異なるユーザによって選択される、ことと、
前記第1のユーザランキングおよび前記第2のユーザランキングに基づいて、第3の音響フィルタ応答を生成することと、
前記第3の音響フィルタ応答と、オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答とに基づいて、前記オーディオ再生デバイスの周波数応答を調整することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記第3の音響フィルタ応答は、前記第1の音響フィルタ応答および前記第2の音響フィルタ応答の組み合わせを含む、請求項15に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
前記第1のユーザランキングを受信する前に、前記第1の音響フィルタ応答を用いてテストオーディオ信号を処理して、前記オーディオ再生デバイスで前記テストオーディオ信号を再生することと、
前記第2のユーザランキングを受信する前に、前記第2の音響フィルタ応答を用いて前記テストオーディオ信号を処理して、前記オーディオ再生デバイスで前記テストオーディオ信号を再生することと、
をさらに含む、請求項15または16に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項18】
前記オーディオ再生デバイスのモデル情報を受信することと、
前記モデル情報に基づいて、前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答を取得することと、
をさらに含む、請求項15~17のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月31日に出願され、「SOUND QUALITY PERSONALIZATION APPLICATION」と題された米国仮特許出願第62/725,926号の優先権の利益を主張する。この関連出願の主題は、これによって、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に音再生に関し、より詳細には音質の向上および個人化(personalization)に関する。
【背景技術】
【0003】
録音は音楽または他の音をキャプチャして、後で適切なオーディオシステムまたは他の再生デバイスを用いて再生できるようにする。これにより、複数の聴取者は様々な時間に異なる再生デバイスを用いて、たとえば、ヘッドホン、カーステレオシステム、ホームエンターテインメントシステムなどを用いて、特定の音楽演奏を楽しむことができる。しかしながら、再生時に、特定の再生デバイスによって再生される音は、録音過程でキャプチャされた元の音と大幅に異なり得る。録音の品質がこの不一致の一因となり得るが、もう1つの重要な要素は、録音を再生するスピーカーの周波数応答である。ラウドスピーカー、スピーカーのシステム、または他のオーディオシステムの周波数応答は、刺激に応答するオーディオシステムの出力スペクトルの定量的尺度であり、それによってシステムの強弱が特徴付けられる。
【0004】
理想的なオーディオシステムは、出力信号の基になる入力信号の歪みがほとんどまたは全くない出力信号を生成する。すなわち、理想的なオーディオシステムは、システムの動作周波数(たとえば、20Hz~20kHz)全体にわたって均一で平坦な大きさの周波数応答で動作する。さらに、出力信号は、システムの全ての動作周波数において正確に同じ時間だけ遅延する。実際には、任意の所与のオーディオシステムは、理想的なオーディオシステムの上記の周波数応答から変化した異なる周波数応答を有する。さらに、多くのラウドスピーカーは、特定の周波数でのピークおよびディップ、および/または特定の周波数で過度に強調された応答を含む、起伏があり非平坦な周波数応答を有する。一般に、非平坦な周波数応答を有するラウドスピーカーは、ほとんどのユーザに聞こえ、一般的に嫌われる共鳴またはカラーレーションが追加された出力を生成する。結果的に、高品質の録音で特定の音楽演奏をキャプチャすることに多大な労力およびリソースが向けられたとしても、再生デバイスの周波数応答によって、録音を聞くときのユーザ体験が大幅に低下し得る。
【0005】
上記に照らして、オーディオシステムによって生成されるオーディオ出力のオーディオ入力信号への忠実度を向上させるためのより効果的な技術は有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態において、オーディオシステムの周波数応答を修正するための技術を示している。これらの技術は、オーディオ入力信号に基づいてオーディオコンテンツを再生するように構成されるオーディオ再生デバイスを識別することであって、オーディオ再生デバイスは、測定済みの特有の周波数応答を有する、識別することと、オーディオ再生デバイスに関連付けられた測定済みの特有の周波数応答を取得することと、測定済みの特有の周波数応答と、複数のユーザの好みの周波数応答曲線とに基づいて、オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答を、修正された周波数応答に修正する周波数応答フィルタを生成することと、周波数応答フィルタを用いてオーディオ入力信号を処理して、1つまたは複数の周波数帯域においてオーディオ入力信号と相対振幅が異なるフィルタリングされたオーディオ信号を生成することと、オーディオ再生デバイスに、フィルタリングされたオーディオ信号を再生させることと、を含む。
【0007】
開示した実施形態の少なくとも1つの利点は、ユーザが録音された音楽および他のオーディオコンテンツの再生中に、向上したリスニング体験を有することができることである。より具体的には、開示した実施形態により、オーディオシステムが再生中にオーディオ出力に大きな影響を与える固有の周波数応答を有する場合でも、オーディオシステムは、録音前の元の音声コンテンツにより近いオーディオ出力を生成することが可能になる。他の利点は、ユーザが、オーディオシステムによって生成されたオーディオ出力を個人用音響応答に一致するように簡単に修正できることであり、これは元の音声コンテンツのイコライゼーションに相当する。さらなる利点は、ユーザがオーディオシステムを使用してそのような個人用音響応答を生成できることである。
【0008】
1つまたは複数の実施形態の上記に列挙した特徴を詳細に理解できるようにするために、上記で簡潔にまとめた1つまたは複数の実施形態のより具体的な説明を、ある特定の実施形態を参照して行い得、その一部を添付図面に示している。しかしながら、添付図面が典型的な実施形態のみを示しており、したがって、いかなる方法でもその範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、その理由は、様々な実施形態の範囲には他の実施形態も包含されるためである、ということに留意されたい。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
オーディオ入力信号に基づいてオーディオコンテンツを再生するように構成されるオーディオ再生デバイスを識別することであって、上記オーディオ再生デバイスは、測定済みの特有の周波数応答を有する、上記識別することと、
上記測定済みの特有の周波数応答と、複数のユーザの好みの周波数応答曲線とに基づいて、上記オーディオ再生デバイスの上記測定済みの特有の周波数応答を、修正された周波数応答に修正する周波数応答フィルタを生成することと、
上記周波数応答フィルタを用いて上記オーディオ入力信号を処理して、1つまたは複数の周波数帯域において上記オーディオ入力信号と相対振幅が異なるフィルタリングされたオーディオ信号を生成することと、
上記オーディオ再生デバイスに、上記フィルタリングされたオーディオ信号を再生させることと、
を含む、コンピュータ実装方法。
(項目2)
上記オーディオ再生デバイスを識別する前に、上記オーディオ再生デバイスに関連付けられた上記測定済みの特有の周波数応答を取得することをさらに含む、項目1に記載のコンピュータ実装方法。
(項目3)
上記オーディオ入力信号を処理する前に、少なくとも1つのユーザの好みの周波数応答に基づいて上記周波数応答フィルタを修正することをさらに含む、項目1に記載のコンピュータ実装方法。
(項目4)
上記周波数応答フィルタを修正することは、
上記周波数応答フィルタおよびプリセットフィルタ応答を用いてテストオーディオ信号を処理して、上記オーディオ再生デバイスで上記テストオーディオ信号を再生することと、
上記テストオーディオ信号を再生した後に、上記プリセットフィルタ応答が上記少なくとも1つのユーザの好みの周波数応答に対応することを示すユーザ入力を受信することと、
を含む、項目3に記載のコンピュータ実装方法。
(項目5)
上記修正された周波数応答は、目標周波数応答曲線に基づく、項目1に記載のコンピュータ実装方法。
(項目6)
上記目標周波数応答曲線は、上記測定済みの特有の周波数応答の少なくとも一部を相殺するように構成される、項目5に記載のコンピュータ実装方法。
(項目7)
上記目標周波数応答曲線は、複数のユーザの好みの周波数応答曲線に基づく、項目5に記載のコンピュータ実装方法。
(項目8)
上記複数のユーザの上記好みの周波数応答曲線は、上記複数のユーザの平均周波数応答曲線を含む、項目7に記載のコンピュータ実装方法。
(項目9)
上記目標周波数応答曲線は、プリセットフィルタ応答に基づく、項目5に記載のコンピュータ実装方法。
(項目10)
上記目標周波数応答曲線は、第1のプリセットフィルタ応答と第2のプリセットフィルタ応答との組み合わせに基づく、項目9に記載のコンピュータ実装方法。
(項目11)
上記オーディオ再生デバイスを識別することは、上記オーディオ再生デバイスから受信した情報に基づいて上記オーディオ再生デバイスのモデルを特定することを含む、項目1に記載のコンピュータ実装方法。
(項目12)
上記オーディオ再生デバイスを識別することは、上記オーディオ再生デバイスの上記モデルを示すユーザ入力を受信することを含む、項目1に記載のコンピュータ実装方法。
(項目13)
ユーザ固有の情報を示す1つまたは複数のユーザ入力を受信することと、
上記ユーザ固有の情報の少なくとも一部に基づいて、個人用音響フィルタ応答を生成することと、
上記個人用音響フィルタ応答に基づいて、オーディオ再生デバイスの周波数応答を調整することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
(項目14)
上記ユーザ固有の情報は、上記ユーザに関連する人口統計情報を含む、項目13に記載のコンピュータ実装方法。
(項目15)
上記オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答に基づいて上記オーディオ再生デバイスの上記周波数応答を調整することをさらに含む、項目13に記載のコンピュータ実装方法。
(項目16)
上記オーディオ再生デバイスの上記測定済みの特有の周波数応答に基づいて上記オーディオ再生デバイスの上記周波数応答を調整することは、
上記オーディオ再生デバイスを識別することと、
上記オーディオ再生デバイスの上記測定済みの特有の周波数応答に基づく周波数応答フィルタを取得することと、
を含む、項目15に記載のコンピュータ実装方法。
(項目17)
第1の音響フィルタ応答の第1のユーザランキングと、第2の音響フィルタ応答の第2のユーザランキングとを受信することと、
上記第1のユーザランキングおよび上記第2のユーザランキングに基づいて、第3の音響フィルタ応答を生成することと、
上記第3の音響フィルタ応答と、オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答とに基づいて、上記オーディオ再生デバイスの周波数応答を調整することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
(項目18)
上記第3の音響フィルタ応答は、上記第1の音響フィルタ応答および上記第2の音響フィルタ応答の組み合わせを含む、項目17に記載のコンピュータ実装方法。
(項目19)
上記第1のユーザランキングを受信する前に、上記第1の音響フィルタ応答を用いてテストオーディオ信号を処理して、上記オーディオ再生デバイスで上記テストオーディオ信号を再生することと、
上記第2のユーザランキングを受信する前に、上記第2の音響フィルタ応答を用いて上記テストオーディオ信号を処理して、上記オーディオ再生デバイスで上記テストオーディオ信号を再生することと、
をさらに含む、項目17に記載のコンピュータ実装方法。
(項目20)
上記オーディオ再生デバイスのモデル情報を受信することと、
上記モデル情報に基づいて、上記オーディオ再生デバイスの上記測定済みの特有の周波数応答を取得することと、
をさらに含む、項目19に記載のコンピュータ実装方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】オーディオシステムが、オーディオ入力信号を受信し、オーディオシステムの周波数応答の影響を受けたオーディオ出力を生成する様子を概略的に示す図である。
【
図2】本開示の様々な実施形態による、
図1のオーディオシステムが、フィルタリングされたオーディオ入力信号を受信し、修正されたオーディオ出力を生成する様子を概略的に示す図である。
【
図3】本開示の様々な実施形態による、
図1のオーディオシステムが、フィルタリングされたオーディオ入力信号を受信し、修正されたオーディオ出力を生成する様子を概略的に示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、目標周波数応答曲線のボード振幅線図である。
【
図5】様々な実施形態の1つまたは複数の態様を実装するように構成されるコンピューティングシステムの概念的ブロック図である。
【
図6】本開示の様々な実施形態による、オーディオシステムが、個人用オーディオ入力信号を受信し、個人用オーディオ出力を生成する様子を概略的に示す図である。
【
図7A】本開示の一実施形態によるユーザ情報画面を概略的に示す図である。
【
図7B】本開示の一実施形態によるノイズレベル画面を概略的に示す図である。
【
図7C】本開示の一実施形態による音響プリセットランク付け画面を概略的に示す図である。
【
図7D】本開示の一実施形態による音響プリセット結果画面を概略的に示す図である。
【
図8】本開示の様々な実施形態による、特定のオーディオ再生デバイスの特有の周波数応答を相殺するための方法ステップのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
明確にするために、該当する場合、図間で共通の同一の要素を指定するために、同一の参照番号を使用している。ある実施形態の特徴は、さらなる説明なしに、他の実施形態に組み込まれ得ることを企図している。
【0011】
一般に、ラウドスピーカーまたはラウドスピーカーのシステムなどの任意のオーディオシステムは、特定の周波数でのピークおよびディップ、および/または特定の周波数で過度に強調された応答を含み得る非理想的な周波数応答を有する。結果的に、高品質な録音がオーディオシステムによって再生された場合でも、再生デバイスの周波数応答によって、録音を聞くときのユーザ体験が大幅に低下し得る。そのようなシナリオの1つを
図1に示す。
【0012】
図1は、オーディオシステム130が、オーディオ入力信号101を受信し、オーディオシステム130の周波数応答の影響を受けたオーディオ出力104を生成する様子を概略的に示している。オーディオシステム130は、オーディオ入力信号101に基づいてオーディオ出力104を生成する任意のデバイスまたはシステムとすることができ、1つまたは複数の増幅器と、1つまたは複数のラウドスピーカーもしくはラウドスピーカーのシステムと、を含むことができる。オーディオ入力信号101は、オーディオコンテンツのインスタンス、たとえば、音楽録音、音声録音、ビデオコンテンツのインスタンスの音成分などに対応するアナログまたはデジタル信号とすることができる。説明のために、
図1に示す例では、オーディオ入力信号101は、周波数領域における入力信号振幅の線
図110において振幅111によって示すように、各周波数で等しい振幅を有する(すなわち、オーディオ入力信号101はホワイトノイズである)。他の例では、オーディオ入力信号101は、他の任意のオーディオ信号とすることができる。
【0013】
オーディオ入力信号101を受信すると、オーディオシステム130は対応するオーディオ出力104を生成し、これはその後ユーザ109によって聴取される。オーディオシステム130は、ボード振幅線
図131に示す周波数応答132を有する。図示のように、オーディオシステム130の周波数応答132は理想的ではなく、したがって、平坦でニュートラルではない。代わりに、周波数応答132は、異なる周波数帯域で異なる相対応答を有する。結果として、オーディオ出力104は、オーディオ出力信号104の生成元の実際のオーディオとは大きく異なり得、ユーザ109のリスニング体験に悪影響を与え得る。たとえば、
図1では、オーディオ入力信号101は各周波数で等しい振幅を有するが、オーディオ出力104は、周波数領域におけるオーディオ出力信号振幅の線
図120において振幅121で示すように、異なる周波数で異なる相対振幅を有する。さらに、
図1に示す例では、オーディオ入力信号101は各周波数で等しい振幅を有するので、各周波数でのオーディオ出力104の異なる相対振幅は、オーディオシステム130の周波数応答132の変動に対応することが分かる。
【0014】
様々な実施形態によれば、周波数応答アプリケーションは、オーディオシステムの周波数応答を相殺するように、オーディオシステムの入力信号を修正する。このようにして、オーディオシステムからのオーディオ出力は、入力信号を生成するために使用された音により近くなる。たとえば、一部の実施形態では、周波数応答アプリケーションは、デバイス特有の周波数応答フィルタを生成または受信して、入力信号の修正を実行する。次いで、オーディオシステムが入力信号を再生する前に、デバイス特有の周波数応答フィルタによって入力信号が処理される。そのような実施形態の1つを
図2に示す。
【0015】
図2は、本開示の様々な実施形態による、オーディオシステム130が、フィルタリングされたオーディオ入力信号202を受信し、修正されたオーディオ出力204を生成する様子を概略的に示している。図示のように、オーディオ入力信号201は、デバイス特有の周波数応答(FR)フィルタ230によって処理されて、フィルタリングされたオーディオ入力信号202を生成する。次いで、オーディオシステム130は、フィルタリングされたオーディオ入力信号202を受信および再生して、修正されたオーディオ出力204を生成する。説明を明確にするために、オーディオ入力信号201は、ホワイトノイズとして、すなわち、全ての周波数で等しい相対振幅を有するものとして図示している。しかしながら、オーディオ入力信号201は、他の任意のオーディオ入力信号とすることができる。
【0016】
デバイス固有のFRフィルタ230はボード振幅線
図231に示す周波数応答232を有する。
図2に示す実施形態では、デバイス固有のFRフィルタ230の周波数応答232は、オーディオシステム130の非理想的な周波数応答132の大部分または全部を相殺するように選択される。結果として、各周波数において、フィルタリングされたオーディオ入力信号202は一般に、周波数領域におけるフィルタリングされたオーディオ入力信号振幅の線
図210において振幅211によって示すように、オーディオ入力信号201とは異なる振幅を有する。たとえば、周波数応答132が利得を生成する各周波数帯域において、周波数応答232は対応する損失を含む。逆に、周波数応答132が損失を生成する各周波数帯域において、周波数応答232は対応する利得を含む。
【0017】
一部の実施形態では、周波数応答232は、周波数応答132などのキャンセルまたは相殺すべきオーディオシステム130の測定された周波数応答曲線に基づいて生成することができる。一部の実施形態では、広い周波数スペクトルまたは他の多周波数信号、たとえば、ピンクノイズ信号または同等のものが、オーディオシステム130によって再生される。次いで、オーディオシステム130のインパルス応答は、この入力信号と、オーディオシステム130の結果的に得られるオーディオ出力との逆畳み込みによって計算される。一部の実施形態では、上記の処理は、オーディオシステム130および/またはオーディオシステム130の複数のインスタンスに対して複数回実行される。このように、音測定値のばらつき、および/またはオーディオシステムの同じモデルの異なるインスタンス間のばらつきには、平均化によって対処することができる。
【0018】
図2に示す例では、オーディオ入力信号201は、各周波数で等しい振幅を有する。結果的に、各周波数でのフィルタリングされたオーディオ入力信号202の異なる相対振幅は、デバイス固有のFRフィルタ230の周波数応答232の変動に対応することが分かる。周波数応答232は、非理想的な周波数応答132の大部分または全部を相殺するように選択されるので、フィルタリングされたオーディオ入力信号202がオーディオシステム130によって再生されると、オーディオ入力信号201と各周波数で実質的に同じ相対振幅を有する修正されたオーディオ出力204が生成される。このようにして、デバイス固有のFRフィルタ230は、オーディオ入力信号201を生成するために使用された音に対する、聴取者が聞く音の忠実度を向上させる。
【0019】
図2に示す実施形態では、デバイス固有のFRフィルタ230の周波数応答232は、オーディオシステム130の非理想的な周波数応答132の大部分または全部を相殺するように選択される。他の実施形態では、デバイス固有のFRフィルタの周波数応答は、オーディオシステム130のオーディオ出力を修正する他の何らかの周波数応答曲線を有するように選択される。そのような実施形態では、オーディオ入力信号がデバイス固有のFRフィルタによって処理され、次いでオーディオシステム130によって再生された場合に、オーディオ入力信号が実質的に目標周波数応答曲線によって修正されているように、デバイス固有のFRフィルタの周波数応答が選択される。すなわち、デバイス固有のFRフィルタの周波数応答と、オーディオシステム130の周波数応答との組み合わせが、目標周波数応答曲線を近似する。そのような実施形態の1つを
図3に示す。
【0020】
図3は、本開示の様々な実施形態による、オーディオシステム130が、フィルタリングされたオーディオ入力信号302を受信し、修正されたオーディオ出力304を生成する様子を概略的に示している。図示のように、オーディオ入力信号301は、デバイス固有のFRフィルタ330によって処理されて、フィルタリングされたオーディオ入力信号302を生成する。次いで、オーディオシステム130は、フィルタリングされたオーディオ入力信号302を再生して、修正されたオーディオ出力304を生成する。説明を明確にするために、オーディオ入力信号301は、ホワイトノイズとして、すなわち、全ての周波数で等しい相対振幅を有するものとして図示している。しかしながら、オーディオ入力信号301は、他の任意のオーディオ入力信号とすることができる。
【0021】
デバイス固有のFRフィルタ330はボード振幅線
図331に示す周波数応答332を有する。
図3に示す実施形態では、オーディオ入力信号302が、オーディオシステム130の非理想的な周波数応答132と組み合わせられた場合に、目標周波数応答曲線を有するオーディオシステムによるオーディオ出力に実質的に変換されるように、デバイス固有のFRフィルタ330の周波数応答332が選択される。すなわち、修正されたオーディオ出力304は、目標周波数応答曲線を有するオーディオシステムによって生成されるオーディオ出力に近くなる。したがって、オーディオシステム130の非理想的な(そして大抵は望ましくない)周波数応答132にもかかわらず、修正されたオーディオ出力304は、周波数応答132に対応する相対振幅の変化を含まず、代わりに、目標周波数応答曲線に対応する相対振幅の変化を含む。
【0022】
参考のため、ボード振幅線
図331には、デバイス固有のFRフィルタ230の周波数応答232(破線)も示しており、これはオーディオシステム130の周波数応答132を実質的に相殺する周波数応答に対応する。対照的に、周波数応答332は、周波数応答232と目標周波数応答曲線との組み合わせに対応する。
図3に示す例では、目標周波数応答曲線は、低周波数帯域233における相対応答の増加と、高周波数帯域234における相対応答の増加とを含む。結果として、修正されたオーディオ出力304は、オーディオ入力信号301と比較して、周波数領域におけるオーディオ出力信号振幅の線
図320において振幅321によって示すように、低周波数帯域233および高周波数帯域234においてより大きい相対振幅を有する。オーディオ出力信号304の振幅321に対応する目標周波数応答曲線の例を
図4に示している。
【0023】
図4は、本開示の一実施形態による、目標周波数応答曲線420のボード振幅線
図400である。図示のように、目標周波数応答曲線420は、低周波数帯域233における相対応答の増加と、高周波数帯域234における相対応答の他の増加とを含む。したがって、目標周波数応答曲線420と実質的に同様の周波数応答を有するオーディオシステムによってオーディオ入力信号が再生された場合に、そのように生成されたオーディオ出力信号は、
図3に示す修正されたオーディオ出力304と同様の周波数領域における相対振幅を有する。
【0024】
一部の実施形態では、目標周波数応答曲線420は、平均的な聴取者または特定の聴取者のグループに最も受け入れられると経験的に判断された周波数応答に基づくことができる。たとえば、目標周波数応答曲線420は、複数の聴取者の好みの周波数応答、たとえば、数十または数百の聴取者のそれぞれの好みの周波数応答の平均などに基づくことができる。そのような実施形態では、複数の聴取者はそれぞれ、制御されたリスニング環境でテストされている間に、好みの周波数応答を示すことができる。このように、目標周波数応答曲線420は、
図4に示す特定の曲線プロファイルに限定されず、相対応答が減少する1つまたは複数の周波数帯域、相対応答の増加が異なる周波数帯域、相対応答の増加または減少が一定値ではない周波数帯域などを含むことができる。
【0025】
図3に戻ると、周波数応答332は、オーディオシステム130の測定された周波数応答曲線(すなわち、周波数応答132)と、特定の目標周波数応答曲線とに基づいて生成することができる。たとえば、一部の実施形態では、周波数応答332は、周波数応答232(
図2に示す)と目標周波数応答曲線420(
図4に示す)との組み合わせに基づいて生成することができる。
【0026】
図5は、様々な実施形態の1つまたは複数の態様を実装するように構成されるコンピューティングシステム500の概念的ブロック図である。コンピューティングシステム500は、FRアプリケーション501、FRフィルタ502、個人用FRフィルタ503、フィルタ生成器504、個人用フィルタ生成器505、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)506、および/またはハードウェア識別(ID)アプリケーション507に関連する命令を含むがこれらに限定されないアプリケーションプログラムを実行することが可能な任意のタイプのデバイスであり得る。たとえば、限定はしないが、コンピューティングシステム500は、電子タブレット、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、車両に組み込まれたインフォテインメントシステム、ホームエンターテインメントシステムなどであり得る。あるいは、コンピューティングシステム500は、マイクロプロセッサなどのスタンドアロンチップとして、または特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SoC)などとして実装されるより包括的なソリューションの一部として実装され得る。本明細書に記載のコンピューティングシステムは例示的なものであり、他の任意の技術的に実現可能な構成は本発明の範囲内にあることに留意されたい。
【0027】
図示のように、コンピューティングシステム500は、限定はしないが、プロセッサ550、I/Oデバイス580に結合された入力/出力(I/O)デバイスインターフェース560、メモリ510、ストレージ530、およびネットワークインターフェース570を接続する相互接続(バス)540を含む。プロセッサ550は、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、他の任意のタイプの処理ユニット、または異なる処理ユニットの組み合わせ、たとえば、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)と連動するように構成されるCPUとして実装される任意の適切なプロセッサであり得る。たとえば、一部の実施形態では、プロセッサ550はCPUおよびDSPを含む。一般に、プロセッサ550は、本明細書に記載の
図5のコンピューティングシステム500の動作を容易にするためにデータを処理および/または命令を実行することが可能な任意の技術的に実現可能なハードウェアユニットであり得る。さらに、本開示の文脈において、コンピューティングデバイス500内に示したコンピューティング要素は、物理的なコンピューティングシステム(たとえば、データセンター内のシステム)に対応し得、またはコンピューティングクラウド内で実行される仮想的なコンピューティングインスタンスであり得る。
【0028】
I/Oデバイス580は、キーボード、マウス、タッチ感応画面、マイクロフォン581など、入力を提供することが可能なデバイス、ならびに、ラウドスピーカー582および表示画面など、出力を提供することが可能なデバイスを含み得る。表示画面は、コンピュータモニタ、ビデオ表示画面、ハンドヘルドデバイスに組み込まれた表示装置、または他の任意の技術的に実現可能な表示画面であり得る。ラウドスピーカー582の特定の例には、
図1のオーディオシステム130などのオーディオシステムの要素である1つまたは複数のラウドスピーカーを含めることができる。
【0029】
I/Oデバイス580は、タッチスクリーン、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポートなど、入力の受け取りと出力の提供との両方が可能な追加のデバイスを含み得る。そのようなI/Oデバイス580は、コンピューティングデバイス500のエンドユーザから様々なタイプの入力を受け取り、また、表示されるデジタル画像またはデジタルビデオなどの様々なタイプの出力をコンピューティングデバイス500のエンドユーザに提供するように構成され得る。一部の実施形態では、I/Oデバイス580のうちの1つまたは複数は、コンピューティングデバイス500を通信ネットワーク505に結合するように構成される。
【0030】
I/Oインターフェース560は、I/Oデバイス580とプロセッサ550との通信を可能にする。I/Oインターフェースは一般に、プロセッサ550によって生成されるI/Oデバイス580に対応するアドレスを解釈するために必要なロジックを含む。I/Oインターフェース560はまた、プロセッサ550とI/Oデバイス580との間のハンドシェイクを実装し、および/またはI/Oデバイス580に関連する割り込みを生成するように構成され得る。I/Oインターフェース560は、任意の技術的に実現可能なCPU、ASIC、FPGA、他の任意のタイプの処理ユニットまたはデバイスとして実装され得る。
【0031】
ネットワークインターフェース570は、プロセッサ550を通信ネットワーク505に接続するコンピュータハードウェアコンポーネントである。ネットワークインターフェース570は、スタンドアロンカード、プロセッサ、または他のハードウェアデバイスとしてコンピューティングデバイス500に実装され得る。通信ネットワーク505がWiFiネットワークまたはWPANを含む実施形態では、ネットワークインターフェース570は、適切な無線送受信器を含む。代替的または追加的に、ネットワークインターフェース570は、セルラー通信機能、衛星電話通信機能、ワイヤレスWAN通信機能、または通信ネットワーク505およびコンピューティングシステム500の外部の他のコンピューティングデバイス500との通信を可能にする他のタイプの通信機能を備えて構成され得る。
【0032】
メモリ510は、ランダムアクセスメモリ(RAM)モジュール、フラッシュメモリユニット、または他の任意のタイプのメモリユニットあるいはそれらの組み合わせを含み得る。プロセッサ550、I/Oデバイスインターフェース560、およびネットワークインターフェース570は、メモリ510に対してデータの読み書きを行うように構成される。メモリ510は、プロセッサ550によって実行できる様々なソフトウェアプログラムと、それらのソフトウェアプログラムに関連するアプリケーションデータ、たとえば、FRアプリケーション501、FRフィルタ502、個人用FRフィルタ503、フィルタ生成器504、個人用フィルタ生成器505および/またはGUI506、および/またはハードウェアIDアプリケーション507と、を含む。
【0033】
ストレージ530は、不揮発性ストレージデバイスなどの非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。一部の実施形態では、ストレージ530は、様々なオーディオシステム、ラウドスピーカー、または他のデバイスの周波数応答曲線のデータベース531を含む。追加的または代替的に、一部の実施形態では、データベース531は、フィルタ応答プリセット、デバイス固有のFRフィルタなどを含む。あるいは、一部の実施形態では、データベース531は、コンピューティングシステム500からリモートに、たとえば、クラウドコンピューティング環境に存在することができる。
【0034】
FRアプリケーション501は、本明細書に記載の様々な実施形態の1つまたは複数の態様を実装するように構成される。たとえば、一部の実施形態では、FRアプリケーション501により、オーディオシステムが、再生中にオーディオ出力を大幅に変化させる固有の周波数応答を有する場合でも、オーディオシステムは、録音前の元の音声コンテンツに非常に近いオーディオ出力を生成することが可能になる。さらに、一部の実施形態では、FRアプリケーション501により、ユーザは、オーディオシステムによって生成されたオーディオ出力を、オーディオシステムの個人用音響応答に一致するように修正することが可能になる。一部の実施形態では、FRフィルタ502、個人用FRフィルタ503、フィルタ生成器504、個人用フィルタ生成器505、GUI506、および/またはハードウェアIDアプリケーション507のうちの1つまたは複数の機能は、FRアプリケーション501に組み込まれ得る。
【0035】
FRフィルタ502は、特定の周波数応答曲線に従ってオーディオ入力信号を修正するように構成される。たとえば、一部の実施形態では、FRフィルタ502は、オーディオシステム130などの特定のオーディオシステムの既知の周波数応答を相殺および/またはキャンセルするようにオーディオ入力信号を修正するよう構成されるデバイス固有のFRフィルタである。あるいは、一部の実施形態では、オーディオ入力信号がFRフィルタ502によって処理され、特定のオーディオシステムによって再生されると、オーディオ出力が、目標周波数応答曲線を有するオーディオシステムによって生成されたオーディオ出力に近くなるように、FRフィルタ502の周波数応答が選択される。
【0036】
個人用FRフィルタ503は、特定のユーザ選択の周波数応答曲線に従ってオーディオ入力信号を修正するように構成される。一部の実施形態では、セットアップ手順中にユーザによって特定の周波数応答曲線が選択される(
図8と併せて以下で説明する)。たとえば、個人用FRフィルタ503は、ユーザによって選択された方法で元の音声コンテンツを効果的にイコライズする特定のイコライゼーションパラメータを実装するように構成することができる。オーディオ入力信号がFRフィルタ502および個人用FRフィルタ503によって処理され、次いでFRフィルタ502が選択されたオーディオシステムによって再生された場合、オーディオシステムによって生成された結果的なオーディオ出力は、ユーザ選択の周波数応答曲線を有するオーディオシステムによって生成されたオーディオ出力に非常に近い。そのような実施形態の1つを
図6に示す。
【0037】
図6は、本開示の様々な実施形態による、オーディオシステム130が、個人用オーディオ入力信号603を受信し、個人用オーディオ出力604を生成する様子を概略的に示している。図示のように、オーディオ入力信号601は、デバイス固有のFRフィルタ630によって処理されて、フィルタリングされたオーディオ入力信号602を生成する。たとえば、一部の実施形態では、デバイス固有のFRフィルタ630は、ボード振幅線
図631に示すように、オーディオシステム130の周波数応答を相殺する周波数応答632を備えて構成される。次いで、フィルタリングされたオーディオ入力信号602は、個人用FRフィルタ503によって処理されて、個人用オーディオ入力信号603を生成する。次いで、オーディオシステム130は、個人用オーディオ入力信号603を再生して、個人用オーディオ出力604を生成する。説明を明確にするために、オーディオ入力信号601は、ホワイトノイズとして、すなわち、全ての周波数で等しい相対振幅を有するものとして図示している。しかしながら、オーディオ入力信号601は、他の任意のオーディオ入力信号とすることができる。
【0038】
個人用FRフィルタ503はボード振幅線
図651に示す周波数応答652を有する。
図6に示す実施形態では、個人用FRフィルタ503の周波数応答652は、ユーザ選択の周波数応答曲線に対応する。したがって、オーディオ入力信号601がデバイス固有のFRフィルタ630および個人用FRフィルタ503によって処理され、結果として生じる個人用オーディオ入力信号603がオーディオシステム130によって再生された場合、周波数応答652を有するオーディオシステムによるオーディオ出力に相当する相対振幅621を有する個人用オーディオ出力604が生成される。
【0039】
図6に示す例では、ユーザ選択の周波数応答曲線は、低周波数帯域601での相対応答の増加、高周波数帯域602での相対応答の増加を含み、中間周波数帯域603での利得または損失は含まない。他の例では、ユーザ選択の周波数応答曲線は、特定のユーザの音の好みに応じて、様々な周波数帯域での利得および/または損失の技術的に実現可能な他の任意の組み合わせを含むことができる。
【0040】
図5に戻ると、ハードウェアIDアプリケーション507は、コンピューティングシステム500に関連付けられたオーディオシステムのモデルを特定または識別するように構成される。一部の実施形態では、ハードウェアIDアプリケーション507は、ユーザによって入力された情報に基づいて、オーディオシステムのオーディオ再生デバイス(複数可)を識別する。他の実施形態では、ハードウェアIDアプリケーション507は、デバイスに直接問い合わせることによって、たとえば、オーディオ再生デバイスとの無線接続を介してメディアアクセス制御(MAC)アドレスを受信することによって、オーディオ再生デバイス(複数可)を識別する。
【0041】
フィルタ生成器504は、任意の適切なアルゴリズムを使用して、オーディオシステム130の周波数応答に基づいてFRフィルタ502を生成するように構成される。一部の実施形態では、オーディオシステム130および/または複数の他のオーディオシステムの周波数応答は、データベース531に記憶される。他の実施形態では、FRアプリケーション501は、オーディオシステム130が識別されると、リモートコンピューティングデバイスにオーディオシステム130の周波数応答を要求するように構成される。いずれの場合も、オーディオシステム130の周波数応答は、オーディオシステム130から得られた測定値に基づくことができる。
図5に示す実施形態では、フィルタ生成器504はメモリ510に存在する。他の実施形態では、フィルタ生成器504の機能はリモートに存在することができ、FRアプリケーション501は、リモートコンピューティングデバイスまたはデータベースにFRフィルタ502を要求するように構成される。
【0042】
個人用フィルタ生成器505は、1つまたは複数のユーザ入力に基づいて個人用FRフィルタ503を生成するように構成される。一部の実施形態では、個人用フィルタ生成器505は、GUI506を使用して、ユーザに関連情報を入力するように促し、および/または個人用フィルタ生成器505が特定の個人用FRフィルタ503を選択または生成することを可能にするユーザ入力を提供するように促す。そのような実施形態の1つを
図7A~
図7Dに示す。
【0043】
図7Aは、本開示の一実施形態によるユーザ情報画面710を概略的に示している。ユーザ情報画面710は、コンピューティングシステム500のI/Oデバイス580のうちの1つにGUI506を介して表示することができる。図示のように、ユーザ情報画面710は、前進ボタン716と、ユーザ情報のユーザ入力のための様々な情報入力要素711、たとえば、ドロップダウンメニュー、ラジオボタン、および/または、ダイヤル、スイッチ、もしくは他の選択可能または調整可能なアイコンのグラフィック表現と、を含む。
【0044】
一部の実施形態では、1つまたは複数の情報入力要素711(たとえば、ドロップダウンメニュー712および713)により、ユーザは、ユーザの性別、ユーザの年齢、および他の人口統計学的なユーザ情報などの、ユーザベースの情報を入力することが可能になる。そのような実施形態では、個人用フィルタ生成器505は、そのような人口統計学的なユーザ情報に基づいて個人用FRフィルタ503を生成するように構成される。たとえば、ユーザは年齢を55歳と入力し、性別を男性と入力し得る。次いで、FRアプリケーション501は、たとえば、ローカルまたはリモートデータベース531から、入力された人口統計データに関連する既存のリスニングテストデータを取得する。次いで、FRアプリケーション501は、個人用プリセットフィルタ応答(すなわち、個人用FRフィルタ503)を生成し、および/または同様の人口統計コホート内の他のユーザの1つまたは複数の高ランクのプリセットフィルタ応答を取得する。
【0045】
一部の実施形態では、1つまたは複数の情報入力要素711(たとえば、ドロップダウンメニュー714)により、ユーザは他のユーザ固有の情報、たとえば、好みのリスニングジャンルおよび/またはリスニング経験(すなわち、オーディオシステム機能をカスタマイズした経験)などを入力することが可能になる。そのような実施形態では、リスニング経験のレベルは、ユーザが音楽を聴く際に有する経験または訓練の量を反映した定性的な推定値であり得る。一部の実施形態では、FRアプリケーション501は、指定された閾値を超える訓練または経験レベルを有するユーザが、以下に説明する個人化プロセスの一部として追加の入力を実行することを可能にする。
【0046】
一部の実施形態では、1つまたは複数の情報入力要素711(たとえば、ドロップダウンメニュー715)により、ユーザはデバイス固有の情報、たとえば、特定の個人用FRフィルタ503が生成される特定のオーディオシステムのモデルなどを入力することが可能になる。そのような実施形態では、個人用音響フィルタ応答を生成する場合、フィルタ生成器504は、指定されたヘッドホンモデルまたは指定されたスピーカーモデルの特定の動作特性を組み込み得る。たとえば、一部の実施形態では、ユーザがドロップダウンメニュー715を介して指定されたヘッドホンモデルを入力した場合、FRアプリケーション501は、指定されたヘッドホンモデルの特有の周波数応答スペクトルを取得する。次いで、FRアプリケーション501は、たとえばFRフィルタ502を介して、指定されたヘッドホンモデルの特有の周波数応答を相殺するように入力オーディオ信号の再生を調整し、その結果、オーディオ出力が、目標周波数応答曲線を有するオーディオシステムによって生成されたオーディオ出力に近くなる。
【0047】
図7Bは、本開示の一実施形態によるノイズレベル画面720を概略的に示している。ノイズレベル画面720は、コンピューティングシステム500のI/Oデバイス580のうちの1つにGUI506を介して表示することができる。図示のように、ノイズレベル画面720は、ノイズレベルインジケータ721および前進ボタン726を含む。一部の実施形態では、ノイズレベルインジケータ721は、ユーザの音響環境における現在のノイズレベルをグラフィカルに示す。一部の実施形態では、FRアプリケーション501は、マイクロフォンからノイズ信号を受信し、ここでノイズレベルは、音響環境におけるノイズ信号の強度に対応する。一部の実施形態では、ノイズレベル画面720は、閾値ノイズレベル722を含み、それを上回ると、ユーザは、音または音楽の1つまたは複数の主観的な品質を正確に判断することができなくなる。たとえば、ノイズレベルインジケータ721は、「OK」なノイズレベル強度の低ノイズレベル範囲と、「大き過ぎる」ノイズレベル強度の高ノイズレベル範囲とを含むことができる。測定されたノイズレベルが閾値ノイズレベル722を下回る場合、FRアプリケーション501は、正確な音響フィルタ応答を作成できると判定する。ノイズレベルのせいで正確な音響フィルタ応答を作成できないとFRアプリケーション501が判定した場合、FRアプリケーション501は、ユーザにノイズ強度がより低い別の音響環境に移動するように提案することができる。
【0048】
図7Cは、本開示の一実施形態による音響プリセットランク付け画面730を概略的に示している。音響プリセットランク付け画面730は、コンピューティングシステム500のI/Oデバイス580のうちの1つにGUI506を介して表示することができる。図示のように、音響プリセットランク付け画面730は、1つまたは複数のプリセットフィルタ応答ボタン731と、それぞれがプリセットフィルタ応答ボタン731のうちの1つに対応する1つまたは複数のユーザランキング入力要素732と、テスト開始ボタン736と、を含む。一部の実施形態では、各音響フィルタ応答ボタン731により、異なるプリセットフィルタ応答をテストすることが可能になる。したがって、ユーザが特定のプリセットフィルタ応答ボタン731を選択すると、特定のプリセットフィルタ応答のテストが開始され、そのテストでは、その特定のプリセットフィルタ応答によって処理された音楽または他の音のループが、ユーザに対して再生される。一部の実施形態では、ユーザは、音楽または他の音のループとして、いくつかの利用可能なトラックから特定のトラックを選択することができる。一部の実施形態では、音楽または他の音のループは、音響プリセットランク付け画面730に含まれる適切な制御ボタン(図示せず)を介して、一時停止、巻き戻し、早送りなどを行うことができる。次いで、ユーザは、特定のプリセットフィルタ応答を、対応するユーザランキング入力要素732を介して評価することができる。ユーザランキング入力要素732は、ドロップダウンメニュー、移動可能なアイコン、文字入力フィールドなどとして構成することができる。
【0049】
一般に、プリセットフィルタ応答ボタン731に関連付けられた各音響フィルタ応答は、1つまたは複数の異なるイコライゼーションパラメータを含む。たとえば、プリセットフィルタ応答のそれぞれは、バスブーストイコライゼーションパラメータ(たとえば、低周波数範囲への+6dBの調整)、トレブルブーストイコライゼーションパラメータ(たとえば、高周波数範囲への+6dBの調整)、バランスブーストイコライゼーションパラメータ(たとえば、低周波数範囲および高周波数範囲の両方への+3dBの調整)、および/またはトレブルカットイコライゼーションパラメータ(たとえば、中間周波数範囲への-3dBの調整)、を含み得る。代替的または追加的に、プリセットフィルタ応答のそれぞれは、異なる大きさおよび周波数範囲の1つまたは複数の他のイコライゼーションパラメータを含み得る。
【0050】
一部の実施形態では、音響プリセットランク付け画面730は、各プリセットフィルタ応答ボタン731に対して、そのプリセットフィルタ応答ボタン731に関連付けられたイコライゼーションパラメータの一部または全部をグラフィカルに示す視覚的インジケータ733をさらに含む。代替的または追加的に、一部の実施形態では、プリセットフィルタ応答ボタン731に関連付けられた音響フィルタ応答の一部または全部がテストされるまで、視覚的インジケータ733は非表示のままである。ユーザがプリセットフィルタ応答のランキングを入力すると、そのような情報を一元的に収集し、後続のユーザに提供される音響フィルタ応答をさらに洗練させる際に使用することができる。
【0051】
図7Dは、本開示の一実施形態による音響プリセット結果画面740を概略的に示している。音響プリセットランク付け画面740は、コンピューティングシステム500のI/Oデバイス580のうちの1つにGUI506を介して表示することができる。図示のように、音響プリセット結果画面740は、結果グラフィック741を含み、一部の実施形態では、1つまたは複数の最適化入力742をさらに含むことができる。結果グラフィック741は、ユーザ入力が完了したときの最高ランクのプリセットフィルタ応答ボタン731に関連付けられたイコライゼーションパラメータをグラフィカルに示す。最適化入力742により、ユーザは、個人用フィルタ生成器505によって使用される選択された音響フィルタ応答に対してよりきめ細かい変更を実施して、個人用FRフィルタ503を生成することが可能になる。たとえば、最適化入力742は、ユーザが指定された閾値を超える訓練または経験レベルを入力した場合に、(図示のように)トレブルおよび/またはバスゲイン制御ノブを含むことができる。代替的または追加的に、一部の実施形態では、設定ボタンまたは他の最適化アイコンがユーザによって選択された後に、最適化入力742がユーザに対して表示される。代替的または追加的に、一部の実施形態では、最適化入力742により、ユーザは、最適化プロセスを開始し、1つまたは複数の追加の最適化入力をユーザに対して表示させることが可能になる。
【0052】
図8は、本開示の様々な実施形態による、特定のオーディオ再生デバイスの特有の周波数応答を相殺するための方法ステップのフローチャートを示している。
図8は、好みの目標曲線の様々なプリセット修正を比較するリスニングテストを実行し、バスおよびトレブルレベルの個人用調整を行うための方法ステップをさらに含む。方法ステップは
図1~
図7のシステムに関して説明しているが、方法ステップを任意の順序で実行するように構成されるあらゆるシステムが、様々な実施形態の範囲内にあることを当業者は理解するであろう。方法ステップの前に、FRアプリケーション501がコンピューティングシステム500にロードされるか、またはコンピューティングシステム500が組み込まれたオーディオシステムがユーザによって起動される。
【0053】
図示のように、方法800はステップ801から始まり、FRアプリケーション501は、たとえばGUI506を介して、ユーザガイドまたは他の命令をユーザに対して表示させる。
【0054】
ステップ802において、FRアプリケーション501はユーザプロファイルを確立する。たとえば、一部の実施形態では、FRアプリケーション501は、ユーザ情報画面710をユーザに対して表示させる。次いで、FRアプリケーション501は、特定のユーザ固有の情報および/またはデバイス固有の情報を示す1つまたは複数のユーザ入力を受信する。
【0055】
ステップ803において、FRアプリケーション501は、特有の周波数応答が相殺されるオーディオ再生デバイス、たとえば、特定のモデルのヘッドホン、車両ベースのオーディオシステムもしくはインフォテインメントシステム、スマートスピーカー、または他のオーディオシステムなどを識別する。一部の実施形態では、FRアプリケーション501は、ステップ802で受信した情報に基づいてオーディオ再生デバイスを識別する。他の実施形態では、ハードウェアIDアプリケーション501は、デバイスに直接問い合わせることによって、たとえば、オーディオ再生デバイスとの無線接続を介してMACアドレスを受信することによって、オーディオ再生デバイスを識別する。
【0056】
ステップ804において、FRアプリケーション501は、オーディオ再生デバイスに対して特有の周波数応答が決定されているか否かを判定する。一部の実施形態では、特有の周波数応答は、利用可能な場合、ローカルまたはリモートのデータベース531に記憶される。Yesの場合、方法800はステップ805に進み、Noの場合、方法800はステップ820に進む。
【0057】
ステップ805において、FRアプリケーション501は、オーディオ再生デバイスの特有の周波数応答に基づいて、適切なFRフィルタ502を取得または生成する。このように、一部の実施形態では、FRアプリケーション501のフィルタ生成器504はFRフィルタ502を生成するが、他の実施形態では、FRフィルタ502はリモートデータベース531から取得される。
【0058】
ステップ806において、FRアプリケーション501は、ユーザの音響環境における現在のノイズレベルを測定することによって、ノイズレベルテストを実行する。一部の実施形態では、FRアプリケーション501は、ノイズレベルテストの結果をユーザに対して表示する。
【0059】
ステップ807において、FRアプリケーション501は、ノイズレベルが閾値を下回っており、プリセットフィルタ応答テストを実行できるか否かを判定する。Yesの場合、方法800はステップ808に進み、Noの場合、方法800はステップ830に進む。
【0060】
ステップ808において、FRアプリケーション501は、たとえば、音響プリセットランク付け画面730を介して、プリセットフィルタ応答のテストを実行する。一部の実施形態では、プリセットフィルタ応答のそれぞれは、複数回テストされる。代替的または追加的に、一部の実施形態では、プリセットフィルタ応答のそれぞれは、ランダムな順序でテストされる。代替的または追加的に、一部の実施形態では、最高ランクのプリセットフィルタ応答の組み合わせがテストされ得る。したがって、そのような実施形態では、音響フィルタ応答は、2つ以上のプリセットフィルタ応答のランキングに基づいて生成される。利用可能な音響フィルタ応答の一部または全部がユーザによってテストおよびランク付けされた後、方法800はステップ809に進む。
【0061】
ステップ809において、FRアプリケーション501は、たとえば、音響プリセット結果画面740を介して、プリセットフィルタ応答のテスト結果を提供する。
【0062】
ステップ810において、FRアプリケーション501は、
図7Dに示す選択されたプリセットフィルタ応答へのより細かい調整などの詳細設定をユーザに対して有効にするか否かを判定する。一部の実施形態では、その判定は、ユーザによって入力された訓練または経験レベルに基づく。一部の実施形態では、その判定は、ユーザに対して表示された適切なアイコンを介した入力など、詳細設定の使用を要求するユーザからの入力に基づく。ユーザに対して詳細設定を有効にする場合、方法800はステップ811に進み、そうでない場合、方法800はステップ812に進む。
【0063】
ステップ811において、FRアプリケーション501は、たとえば、最適化入力742をユーザに対して表示させることによって、ユーザが詳細設定を使用できるようにする。次いで、FRアプリケーション501は、最高ランクのプリセットフィルタ応答の一部を修正するユーザ入力を受信する。一部の実施形態では、最適化入力742は、特定の周波数帯域、たとえば、高周波数帯域および低周波数帯域における周波数応答の修正に限定され、他の周波数帯域、たとえば、中周波数帯域を修正することを防止される。
【0064】
ステップ812において、FRアプリケーション501は、ユーザおよびコンピューティングシステム500に関連付けられたオーディオシステムに固有のユーザプロファイルを完成させ、方法800は終了する。たとえば、FRアプリケーション501は、FRフィルタ502および/または個人用FRフィルタ503をデータベース531に記憶する。その後、ユーザがオーディオシステムを使用するときはいつでも、記憶されたFRフィルタ502および/または個人用FRフィルタ503を使用して、オーディオ入力信号を処理する。
【0065】
ステップ820は、オーディオ再生デバイスの特有の周波数応答が利用可能でないとFRアプリケーション501が判定したことに応答して実行される。ステップ820において、FRアプリケーション501は、オーディオ再生デバイスについて決定される特有の周波数応答(および一部の実施形態では、関連するFRフィルタ)の要求を送信する。ステップ821において、FRアプリケーション501は、後日、オーディオ再生デバイスの周波数応答のセットアップを試みるようにユーザに促す。
【0066】
ステップ830は、ノイズレベルが閾値レベルを上回っており、正確なプリセットフィルタ応答のテストを実行できないとFRアプリケーション501が判定したことに応答して実行される。ステップ830において、FRアプリケーション501は、プリセットフィルタ応答テストの実行を試みる前に、オーディオ再生デバイスを移動すること、および/または周囲ノイズを低減することをユーザに促す。
【0067】
要約すると、様々な実施形態は、特定のオーディオ再生デバイスの特有の周波数応答を相殺するためのシステムおよび技術を示している。それらの実施形態では、周波数応答アプリケーションは、オーディオシステムの周波数応答を相殺するようにオーディオシステムの入力信号を修正する。周波数応答アプリケーションは、周波数応答フィルタを適用して入力信号を修正する。一部の実施形態では、入力信号を修正して、結果として生じるオーディオ出力が、特定の目標周波数応答曲線を有するオーディオシステムによって生成されたオーディオ出力に近くなるようにする。
【0068】
開示した実施形態の少なくとも1つの技術的進歩は、ユーザが、録音された音楽および他のオーディオコンテンツの再生中に、向上したリスニング体験を有することができるということである。より具体的には、開示した実施形態により、オーディオシステムが再生中のオーディオ出力に大きな影響を与える固有の周波数応答を有する場合でも、オーディオシステムは、録音前の元の音声コンテンツに非常に近いオーディオ出力を生成することが可能になる。すなわち、オーディオシステムの周波数応答の不要な要素を相殺することができる。他の利点は、ユーザが、オーディオシステムによって生成されたオーディオ出力を、個人用音響応答に一致するように簡単に修正できることであり、これは元の音声コンテンツが録音される前の、その音声コンテンツのイコライゼーションに相当する。
【0069】
1.一部の実施形態では、コンピュータ実装方法は、オーディオ入力信号に基づいてオーディオコンテンツを再生するように構成されるオーディオ再生デバイスを識別することであって、前記オーディオ再生デバイスは、測定済みの特有の周波数応答を有する、前記識別することと、
前記測定済みの特有の周波数応答と、複数のユーザの好みの周波数応答曲線とに基づいて、前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答を、修正された周波数応答に修正する周波数応答フィルタを生成することと、
前記周波数応答フィルタを用いて前記オーディオ入力信号を処理して、1つまたは複数の周波数帯域において前記オーディオ入力信号と相対振幅が異なるフィルタリングされたオーディオ信号を生成することと、
前記オーディオ再生デバイスに、前記フィルタリングされたオーディオ信号を再生させることと、を含む。
【0070】
2.前記オーディオ再生デバイスを識別する前に、前記オーディオ再生デバイスに関連付けられた前記測定済みの特有の周波数応答を取得することをさらに含む、条項1に記載のコンピュータ実装方法。
【0071】
3.前記オーディオ入力信号を処理する前に、少なくとも1つのユーザの好みの周波数応答に基づいて前記周波数応答フィルタを修正することをさらに含む、条項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【0072】
4.前記周波数応答フィルタを修正することは、
前記周波数応答フィルタおよびプリセットフィルタ応答を用いてテストオーディオ信号を処理して、前記オーディオ再生デバイスで前記テストオーディオ信号を再生することと、
前記テストオーディオ信号を再生した後に、前記プリセットフィルタ応答が前記少なくとも1つのユーザの好みの周波数応答に対応することを示すユーザ入力を受信することと、を含む、条項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0073】
5.前記修正された周波数応答は、目標周波数応答曲線に基づく、条項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0074】
6.前記目標周波数応答曲線は、前記測定済みの特有の周波数応答の少なくとも一部を相殺するように構成される、条項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0075】
7.前記目標周波数応答曲線は、複数のユーザの好みの周波数応答曲線に基づく、条項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0076】
8.前記複数のユーザの前記好みの周波数応答曲線は、前記複数のユーザの平均周波数応答曲線を含む、条項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0077】
9.前記目標周波数応答曲線は、プリセットフィルタ応答に基づく、条項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0078】
10.前記目標周波数応答曲線は、第1のプリセットフィルタ応答と第2のプリセットフィルタ応答との組み合わせに基づく、条項1~9のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0079】
11.前記オーディオ再生デバイスを識別することは、前記オーディオ再生デバイスから受信した情報に基づいて前記オーディオ再生デバイスのモデルを特定することを含む、条項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0080】
12.前記オーディオ再生デバイスを識別することは、前記オーディオ再生デバイスの前記モデルを示すユーザ入力を受信することを含む、条項1~11のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0081】
13.一部の実施形態では、コンピュータ実装方法は、ユーザ固有の情報を示す1つまたは複数のユーザ入力を受信することと、
前記ユーザ固有の情報の少なくとも一部に基づいて、個人用音響フィルタ応答を生成することと、
前記個人用音響フィルタ応答に基づいて、オーディオ再生デバイスの周波数応答を調整することと、を含む。
【0082】
14.前記ユーザ固有の情報は、前記ユーザに関連する人口統計情報を含む、条項13に記載のコンピュータ実装方法。
【0083】
15.前記オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答に基づいて前記オーディオ再生デバイスの前記周波数応答を調整することをさらに含む、条項13または14に記載のコンピュータ実装方法。
【0084】
16.前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答に基づいて前記オーディオ再生デバイスの前記周波数応答を調整することは、
前記オーディオ再生デバイスを識別することと、
前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答に基づく周波数応答フィルタを取得することと、を含む、条項13~15のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0085】
17.一部の実施形態では、コンピュータ実装方法は、第1の音響フィルタ応答の第1のユーザランキングと、第2の音響フィルタ応答の第2のユーザランキングとを受信することと、
前記第1のユーザランキングおよび前記第2のユーザランキングに基づいて、第3の音響フィルタ応答を生成することと、
前記第3の音響フィルタ応答と、オーディオ再生デバイスの測定済みの特有の周波数応答とに基づいて、前記オーディオ再生デバイスの周波数応答を調整することと、を含む。
【0086】
18.前記第3の音響フィルタ応答は、前記第1の音響フィルタ応答および前記第2の音響フィルタ応答の組み合わせを含む、条項17に記載のコンピュータ実装方法。
【0087】
19.前記第1のユーザランキングを受信する前に、前記第1の音響フィルタ応答を用いてテストオーディオ信号を処理して、前記オーディオ再生デバイスで前記テストオーディオ信号を再生することと、
前記第2のユーザランキングを受信する前に、前記第2の音響フィルタ応答を用いて前記テストオーディオ信号を処理して、前記オーディオ再生デバイスで前記テストオーディオ信号を再生することと、をさらに含む、条項17または18に記載のコンピュータ実装方法。
【0088】
20.前記オーディオ再生デバイスのモデル情報を受信することと、
前記モデル情報に基づいて、前記オーディオ再生デバイスの前記測定済みの特有の周波数応答を取得することと、をさらに含む、条項17~19のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0089】
任意の請求項に列挙した任意の請求項要素、および/または本出願に記載した任意の要素の、任意の方法での任意の組み合わせおよび全ての組み合わせは、本発明および保護の企図した範囲内に入る。
【0090】
様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示しているが、網羅的であることも、開示した実施形態に限定されることも意図していない。多くの修正例および変形例は、説明した実施形態の範囲および主旨から逸脱することなく当業者には明白であろう。
【0091】
本実施形態の態様は、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具現化され得る。したがって、本開示の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、または全て一般的に「モジュール」もしくは「システム」と本明細書では称し得るソフトウェア態様およびハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形態を取り得る。さらに、本開示に記載の任意のハードウェアおよび/またはソフトウェア技術、プロセス、機能、コンポーネント、エンジン、モジュール、あるいはシステムは、回路または回路のセットとして実装され得る。さらに、本開示の態様は、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読プログラムコードがそこに具現化された、該少なくとも1つのコンピュータ可読媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取り得る。
【0092】
少なくとも1つのコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、たとえば、限定はしないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、もしくは半導体のシステム、装置、もしくはデバイス、または前述の任意の好適な組み合わせであり得る。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)には、少なくとも1つの電線を有する電気的接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMもしくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、または前述の任意の好適な組み合わせが含まれるであろう。本文書の文脈において、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによる使用または併用のためにプログラムを含むまたは記憶することができる任意の有形媒体であり得る。
【0093】
本開示の態様は、本開示の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して上記に説明している。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実装できることは理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令を、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供することにより、それらの命令が、そのコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行された場合に、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに規定された機能/行為を実装することが可能になるマシンが生成され得る。そのようなプロセッサは、限定はしないが、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、特定用途向けプロセッサ、またはフィールドプログラマブルプロセッサもしくはゲートアレイであり得る。
【0094】
図中のフローチャートおよびブロック図は、本開示の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実施態様のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。この点で、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、規定された論理的な機能(複数可)を実装するための少なくとも1つの実行可能命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの一部を表し得る。また、一部の代替的な実施態様では、ブロックに記載した機能は、図に記載した順序とは異なる順序で起こり得ることに留意されたい。たとえば、連続して示した2つのブロックは、実際には、関与する機能に応じて、実質的に同時に実行され得、またはそれらのブロックは、逆の順序で実行されることもあり得る。また、ブロック図および/またはフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組み合わせは、規定の機能もしくは行為を実行する専用のハードウェアベースのシステム、または専用のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせによって実装できることに留意されたい。
【0095】
上記は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の他の実施形態およびさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。