(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】スパイン形成のためのファシン結合化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/416 20060101AFI20241107BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61K31/416
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2021510960
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 US2019048408
(87)【国際公開番号】W WO2020046991
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520036824
【氏名又は名称】スピノジェニックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サラフ, ステラ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】サイモン, ヴィンセント エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダークリシュ, ピーター ダブリュー.
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526472(JP,A)
【文献】特表2015-502913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイン形成を促進するための組成物であって、以下の構造を有するN-(1-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-インダゾール-3-イル)フラン-2-カルボキサミド(化合物1)またはその薬学的に許容される塩を含む、組成物:
【化34】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119(e)条のもと、2018年8月27日に出願された米国特許仮出願第62/723381号、2018年9月4日に出願された同第62/726904号、および2018年12月27日に出願された同第62/785435号の利益を主張し、各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書では、スパイン形成を促進するための方法、およびニューロン疾患または障害を治療するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
神経障害は、脳、脊髄、および末梢神経系の病気である。疫学および人の罹患率という観点では、神経変性状態によって、最大の社会的コストが生じ、この神経変性状態は、ニューロンおよびそれらの間のシナプス結合のダメージまたは喪失をもたらす。これらの中で最も有名なものに、アルツハイマー病とパーキンソン病がある。他の神経変性状態には、加齢に伴う状態(例えば、パーキンソン型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症)、遺伝性症候群(例えば、ダウン症候群)、損傷関連状態(例えば、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症)、ならびに統合失調症およびうつ病など、通常、性質上は純粋な精神疾患性と考えられる状態が含まれる。
【0004】
研究者たちは、脳腫瘍、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、および脳卒中など、数百の神経系の疾患、ならびに認知症などの老年期に関連する状態を分類している。いくつかのそのような状態は、シナプスの進行性喪失(2つの異なるニューロン間の接合部)および最終的にはニューロンの喪失(神経変性)に起因する。残念ながら、神経変性疾患は、治療に対してほぼ完全な耐性がある。脳内のニューロンは、送信側ニューロンが化学物質(神経伝達物質)をシナプスに放出し、受信側ニューロンの電位を変化させることによって互いに通信している。神経伝達物質を放出するニューロンの部分は、軸索(シナプスのシナプス前側)であり、神経伝達物質の影響を受けるシナプスの部分は、樹状突起スパイン(シナプスのシナプス後側)と呼ばれる。シナプス接合部の数、場所、さらには形状の変化が、記憶、学習、思考、および私たちの性格の基礎をなす。海馬と呼ばれる脳の一部は、記憶の形成に密接に関与しており、神経変性疾患ではシナプスおよびニューロンに目立った喪失を抱えている。海馬のスパイン密度を回復するための新しい方法の開発は、神経変性および発達性認知障害の宿主の治療に重要な意味を持つ可能性がある。
【0005】
樹状突起の複雑さ、シナプス形成、ならびにニューロンの適切な発達および機能は、脳由来神経栄養因子(BDNF)などの成長因子によって内因的に調節される。いくつかの小分子は、神経栄養因子様の活性を示すことが近年報告されているが、これらの分子が樹状突起スパインの形成を促進することは実証されていない。小分子の新しい細胞内標的の同定は、多くの神経変性および精神発達障害の治療につながる可能性があり、また、改善された記憶および学習を提供する可能性がある。したがって、スパイン形成を促進する小分子は、アルツハイマー病などの神経変性疾患の認知障害を改善するために使う可能性があり、一般的な認知増強剤の用途が見出される可能性もある。また一方で、そのような活性を有する薬学的に許容される化合物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書では、スパイン形成を促進するための方法、およびニューロン疾患または障害を治療するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する、またはニューロン疾患もしくは障害を治療する方法を提供し、該方法は、ファシンの活性を阻害する薬剤とファシンを接触させることを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を提供し、該方法は、治療有効量の少なくとも結合部位2または結合部位3でファシンに結合する化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を提供し、該方法は、治療有効量の少なくとも結合部位2でファシンに結合する化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を提供し、該方法は、治療有効量の少なくとも結合部位3でファシンに結合する化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を提供し、該方法は、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む:
【化1】
(式中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、およびA
6は、CH、CR
3、およびNからなる群から独立して選択され、ただし、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、およびA
6の4つ以下はNであり、
R
1は、フェニル、5員のヘテロアリール、および6員のヘテロアリールからなる群から選択され、該フェニル、5員のヘテロアリールまたは6員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~3つのR
6で置換され、
L
2は、共有結合、-NR
8-、-C(O)NR
8-、-NR
8-、-C(O)NR
8-、-NR
8C(O)-、-C(O)CR
8
2-、-CR
8
2C(O)-、-NR
8CR
8
2-、および-CR
8
2NR
8-からなる群から選択され、
R
2は、H、C
1-6アルキル、6~10員のアリール、または5~10員のヘテロアリールであり、該6~10員のアリールまたは5~10員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~4つのR
4で置換され、各R
4は、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、フェニル(場合によっては、C
1-6アルキル、ハロ、C
1-6ハロアルキル、または-OHで置換されている)、-OH、-OR
7、-SH、-SR
7、-NR
10R
10、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7、-CO
2H、-CO
2R
7、-CONR
10R
10、-OCOR
7、-OCO
2R
7、-OCONR
10R
10、-NR
10COR
7、-NR
10CO
2R
7、-SOR
7、-SO
2R
7、-SO
2NR
10R
10、および-NR
10SO
2R
7からなる群から独立して選択され、
各R
3は、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、-OH、-OR
7、-SH、-SR
7、-NR
10R
10、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7、-CO
2H、-CO
2R
7、-CONR
10R
10、-OCOR
7、-OCO
2R
7、-OCONR
10R
10、-NR
10COR
7、-NR
10CO
2R
7、-SOR
7、-SO
2R
7、-SO
2NR
10R
10、および-NR
10SO
2R
7からなる群から独立して選択され、
qは、1、2、または3であり、
各R
6は、シアノ、ハロ、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、および-CH
2OHからなる群から独立して選択され、
R
7は、C
1-6アルキルまたはC
1-6ハロアルキルであり、
R
8は、水素またはC
1-6アルキルであり、
各R
10は、独立して、水素またはC
1-6アルキルであるか、または2つのR
10が、それに結合した原子と一緒になって4~6員環を形成し、
R
11は、水素またはR
3である)。
【0012】
いくつかの実施形態では、うつ病を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、化合物は、米国特許出願公開第2015/0299191号に記載されている化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、米国特許出願公開第2014/0080843号に記載されている化合物である。
【0014】
いくつかの実施形態では、化合物は、国際特許公開第WO2013/013240号に記載されている化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、米国特許出願公開第2014/0024705号に記載されている化合物である。
【0015】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、該方法は、治療有効量の少なくとも結合部位2でファシンに結合する化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、該方法は、治療有効量の少なくとも結合部位3でファシンに結合する化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、該方法は、治療有効量の本明細書に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。該化合物は、例えば、本明細書で提供される式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩から選択される化合物、本明細書で提供される式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩、本明細書で提供される式IVの化合物もしくはその薬学的に許容される塩から選択される化合物、本明細書で提供される式Vの化合物もしくはその薬学的に許容される塩から選択される化合物、本明細書で提供される式VIIの化合物もしくはその薬学的に許容される塩から選択される化合物、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0018】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン型認知症、自閉症、脆弱X症候群、および外傷性脳損傷から選択される。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン型認知症、自閉症、脆弱X症候群、うつ病、および外傷性脳損傷から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害は、気分障害、例えば、うつ病である。
【0020】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を本明細書において提供し、該方法は、治療有効量の本明細書に記載の薬剤を、それを必要とする患者に投与することを含む。該薬剤は、例えば、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XI、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、あるいはその薬学的に許容される塩から選択される化合物である。
【0021】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を提供し、該方法は、治療有効量の、以下の構造を有するN-(1-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-インダゾール-3-イル)フラン-2-カルボキサミド(化合物1)またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【化2】
【0022】
いくつかの実施形態では、ファシンを阻害する化合物を提供し、該化合物は、結合部位1ではファシンに結合しない。
【0023】
いくつかの実施形態では、患者においてスパイン形成を促進する方法を提供し、該方法は、治療有効量のファシンに結合する化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。ただし、該化合物は、式IIIの化合物ではない:
【化3】
(式中、Yは、-NR
33-、O、または-S-であり、R
31は、独立して、ハロゲン、-CX
31、-CHX
31、-CH
2X
31、-OCX
31
3、-OCHX
31
2、-OCH
2X
31、-CN、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、-NHNH
2、-ONH
2、-HNC(O)NHNH
2、-NHC(O)NH
2、-NHSO
2H、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、R
32は、独立して、ハロゲン、-CX
32
3、-CHX
32
2、-CH
2X
32、-OCX
32
3、-OCHX
32
2、-OCH
2X
32、-CN、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、-NHNH
2、-ONH
2、-NHC(O)NHNH
2、-NHC(O)NH
2、-NHSO
2H、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、X
31およびX
32のそれぞれは、独立して、ハロゲンであり、z1およびz2のそれぞれは、独立して、0~4の整数であり、z3は、1~12の整数であり、R
33は、水素または置換もしくは非置換C
1-6アルキルである)。いくつかの実施形態では、式IIIのYは、-NR
33-または-S-である。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
患者においてスパイン形成を促進する方法であって、治療有効量の少なくとも結合部位2でファシンに結合する化合物を、スパイン形成を必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目2)
患者においてスパイン形成を促進する方法であって、治療有効量の少なくとも結合部位3でファシンに結合する化合物を、スパイン形成を必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目3)
患者においてスパイン形成を促進する方法であって、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、スパイン形成を必要とする患者に投与することを含む、方法:
【化32】
(式中、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、およびA
6
は、CH、CR
3
、およびNからなる群から独立して選択され、ただし、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、およびA
6
の4つ以下はNであり、
R
1
は、フェニル、5員のヘテロアリール、および6員のヘテロアリールからなる群から選択され、前記フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~3つのR
6
で置換され、
L
2
は、共有結合、-NR
8
-、-C(O)NR
8
-、-NR
8
-、-C(O)NR
8
-、-NR
8
C(O)-、-C(O)CR
8
2
-、-CR
8
2
C(O)-、-NR
8
CR
8
2
-、および-CR
8
2
NR
8
-からなる群から選択され、
R
2
は、H、C
1-6
アルキル、6~10員のアリール、または5~10員のヘテロアリールであり、前記6~10員のアリールまたは5~10員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~4つのR
4
で置換され、各R
4
は、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、フェニル(場合によっては、C
1-6
アルキル、ハロ、C
1-6
ハロアルキル、または-OHで置換されている)、-OH、-OR
7
、-SH、-SR
7
、-NR
10
R
10
、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7
、-CO
2
H、-CO
2
R
7
、-CONR
10
R
10
、-OCOR
7
、-OCO
2
R
7
、-OCONR
10
R
10
、-NR
10
COR
7
、-NR
10
CO
2
R
7
、-SOR
7
、-SO
2
R
7
、-SO
2
NR
10
R
10
、および-NR
10
SO
2
R
7
からなる群から独立して選択され、
各R
3
は、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、-OH、-OR
7
、-SH、-SR
7
、-NR
10
R
10
、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7
、-CO
2
H、-CO
2
R
7
、-CONR
10
R
10
、-OCOR
7
、-OCO
2
R
7
、-OCONR
10
R
10
、-NR
10
COR
7
、-NR
10
CO
2
R
7
、-SOR
7
、-SO
2
R
7
、-SO
2
NR
10
R
10
、および-NR
10
SO
2
R
7
からなる群から独立して選択され、
qは、1、2、または3であり、
各R
6
は、シアノ、ハロ、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、および-CH
2
OHからなる群から独立して選択され、
R
7
は、C
1-6
アルキルまたはC
1-6
ハロアルキルであり、
R
8
は、水素またはC
1-6
アルキルであり、
各R
10
は、独立して、水素またはC
1-6
アルキルであるか、または2つのR
10
が、それに結合した原子と一緒になって4~6員環を形成し、
R
11
は、水素またはR
3
である)。
(項目4)
患者においてスパイン形成を促進する方法であって、治療有効量の式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩から選択される化合物を、スパイン形成を必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目5)
ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも結合部位2でファシンに結合する化合物を、治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目6)
ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の少なくとも結合部位3でファシンに結合する化合物を、治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目7)
前記化合物が、式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩から選択される、項目5または項目6に記載の方法。
(項目8)
ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、方法:
【化33】
(式中、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、およびA
6
は、CH、CR
3
、およびNからなる群から独立して選択され、ただし、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、およびA
6
の4つ以下はNであり、
R
1
は、フェニル、5員のヘテロアリール、および6員のヘテロアリールからなる群から選択され、前記フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~3つのR
6
で置換され、
L
2
は、共有結合、-NR
8
-、-C(O)NR
8
-、-NR
8
-、-C(O)NR
8
-、-NR
8
C(O)-、-C(O)CR
8
2
-、-CR
8
2
C(O)-、-NR
8
CR
8
2
-、および-CR
8
2
NR
8
-からなる群から選択され、
R
2
は、H、C
1-6
アルキル、6~10員のアリール、または5~10員のヘテロアリールであり、前記6~10員のアリールまたは5~10員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~4つのR
4
で置換され、各R
4
は、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、フェニル(場合によっては、C
1-6
アルキル、ハロ、C
1-6
ハロアルキル、または-OHで置換されている)、-OH、-OR
7
、-SH、-SR
7
、-NR
10
R
10
、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7
、-CO
2
H、-CO
2
R
7
、-CONR
10
R
10
、-OCOR
7
、-OCO
2
R
7
、-OCONR
10
R
10
、-NR
10
COR
7
、-NR
10
CO
2
R
7
、-SOR
7
、-SO
2
R
7
、-SO
2
NR
10
R
10
、および-NR
10
SO
2
R
7
からなる群から独立して選択され、
各R
3
は、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、-OH、-OR
7
、-SH、-SR
7
、-NR
10
R
10
、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7
、-CO
2
H、-CO
2
R
7
、-CONR
10
R
10
、-OCOR
7
、-OCO
2
R
7
、-OCONR
10
R
10
、-NR
10
COR
7
、-NR
10
CO
2
R
7
、-SOR
7
、-SO
2
R
7
、-SO
2
NR
10
R
10
、および-NR
10
SO
2
R
7
からなる群から独立して選択され、
qは、1、2、または3であり、
各R
6
は、独立して、シアノ、ハロ、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、および-CH
2
OHからなる群から独立して選択され、
R
7
は、C
1-6
アルキルまたはC
1-6
ハロアルキルであり、
R
8
は、水素またはC
1-6
アルキルであり、
各R
10
は、独立して、水素もしくはC
1-6
アルキルであるか、または2つのR
10
が、それに結合した原子と一緒になって4~6員環を形成し、
R
11
は、水素またはR
3
である)。
(項目9)
前記ニューロン疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン型認知症、自閉症、脆弱X症候群、うつ病、および外傷性脳損傷から選択される、項目5~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記ニューロン疾患または障害がアルツハイマー病である、項目5~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記ニューロン疾患または障害がうつ病である、項目5~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
患者においてスパイン形成を促進する方法であって、治療有効量の、以下の構造を有するN-(1-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-インダゾール-3-イル)フラン-2-カルボキサミド(化合物1)またはその薬学的に許容される塩を、スパイン形成を必要とする患者に投与することを含む、方法:
【化34】
(項目13)
治療を必要とする患者において、うつ病を治療する方法であって、治療有効量の式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩から選択される化合物を患者に投与することを含む、方法。
(項目14)
うつ病を治療する方法であって、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、治療を必要とする患者に投与することを含む、方法:
【化35】
(式中、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、およびA
6
は、CH、CR
3
、およびNからなる群から独立して選択され、ただし、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、およびA
6
の4つ以下はNであり、
R
1
は、フェニル、5員のヘテロアリール、および6員のヘテロアリールからなる群から選択され、前記フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~3つのR
6
で置換され、
L
2
は、共有結合、-NR
8
-、-C(O)NR
8
-、-NR
8
-、-C(O)NR
8
-、-NR
8
C(O)-、-C(O)CR
8
2
-、-CR
8
2
C(O)-、-NR
8
CR
8
2
-、および-CR
8
2
NR
8
-からなる群から選択され、
R
2
は、H、C
1-6
アルキル、6~10員のアリール、または5~10員のヘテロアリールであり、前記6~10員のアリールまたは5~10員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~4つのR
4
で置換され、各R
4
は、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、フェニル(場合によっては、C
1-6
アルキル、ハロ、C
1-6
ハロアルキル、または-OHで置換されている)、-OH、-OR
7
、-SH、-SR
7
、-NR
10
R
10
、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7
、-CO
2
H、-CO
2
R
7
、-CONR
10
R
10
、-OCOR
7
、-OCO
2
R
7
、-OCONR
10
R
10
、-NR
10
COR
7
、-NR
10
CO
2
R
7
、-SOR
7
、-SO
2
R
7
、-SO
2
NR
10
R
10
、および-NR
10
SO
2
R
7
からなる群から独立して選択され、
各R
3
は、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、-OH、-OR
7
、-SH、-SR
7
、-NR
10
R
10
、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7
、-CO
2
H、-CO
2
R
7
、-CONR
10
R
10
、-OCOR
7
、-OCO
2
R
7
、-OCONR
10
R
10
、-NR
10
COR
7
、-NR
10
CO
2
R
7
、-SOR
7
、-SO
2
R
7
、-SO
2
NR
10
R
10
、および-NR
10
SO
2
R
7
からなる群から独立して選択され、
qは、1、2、または3であり、
各R
6
は、独立して、シアノ、ハロ、C
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、および-CH
2
OHからなる群から独立して選択され、
R
7
は、C
1-6
アルキルまたはC
1-6
ハロアルキルであり、
R
8
は、水素またはC
1-6
アルキルであり、
各R
10
は、独立して、水素もしくはC
1-6
アルキルであるか、または2つのR
10
が、それに結合した原子と一緒になって4~6員環を形成し、
R
11
は、水素またはR
3
である)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、一実施形態において、既知であるファシンの3つのアクチン結合部位を示す。
【0025】
【
図2A】
図2Aは、一実施形態において、利用可能な結晶構造に基づいて、ファシンの正面図を提供する。
【
図2B】
図2Bは、一実施形態において、利用可能な結晶構造に基づいて、ファシンの底面図を提供する。
【
図2C】
図2Cは、一実施形態において、利用可能な結晶構造に基づいて、ファシンの上面図を提供する。
【
図2D】
図2Dは、一実施形態において、利用可能な結晶構造に基づいて、ファシンの背面図を提供する。
【0026】
【
図3A-3C】
図3Aは、一実施形態において、ヒトファシン1と比較化合物2をドッキングさせた複合体を示す。
図3Bは、一実施形態において、ヒトファシン1と比較化合物3をドッキングさせた複合体を示す。
図3Cは、一実施形態において、ヒトファシン1と比較化合物4をドッキングさせた複合体を示す。
【0027】
【
図4】
図4は、一実施形態において、比較化合物2およびヒトファシン1の複合体の2D相互作用の図を示す。
【0028】
【
図5】
図5は、化合物1の結合したファシン構造に重ね合わせたファシンアポ構造を示しており、結合部位1および結合部位2は一実施形態に示されているとおりである。
【0029】
【
図6】
図6は、一実施形態において、ビヒクル対照と比較した、比較化合物2、比較化合物7、および化合物1のシナプス成長の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般に、本明細書に記載の組成物および方法は、結合部位2または結合部位3でファシンに結合する化合物を投与し、スパイン形成の促進をはかるためのものである。いくつかの実施形態では、組成物および方法は、ニューロン疾患または障害を治療するために有用である。一般に、有効成分または主成分は、本明細書に記載の化合物または化合物の薬学的に許容される塩などの薬剤を含む。有効成分または主成分はまた、1つまたは複数の追加の薬学的に活性な材料を含み得る。
【0031】
I. 定義
以下の説明は、本技術の例示的な実施形態を説明する。しかし、このような説明は、本開示の範囲の限定を意図しておらず、むしろ、例示的な実施形態の説明として提供されていると認識されるべきである。
【0032】
本明細書で使用される場合、以下の語、句、および記号は、それらが使用される文脈がそうではないことを示す範囲を除いて、通常、以下に記載の意味を持つことが意図される。
【0033】
「ファシン」という用語は、アクチン架橋タンパク質である54~58kDaのタンパク質を指す。「ファシン」という用語は、ヒトファシン1のアミノ酸配列を指し得る。「ファシン」という用語は、野生型のヌクレオチド配列またはタンパク質、およびそれらの任意の変異体の両方を含む。いくつかの実施形態では、「ファシン」は野生型ファシンである。いくつかの実施形態では、「ファシン」は、1つまたは複数の変異型である。いくつかの実施形態では、ファシンはヒトファシン1である。いくつかの実施形態では、ファシンタンパク質は、参照番号GI:347360903に対応するヌクレオチド配列にコードされている。いくつかの実施形態では、ファシンタンパク質は、RefSeq M_003088のヌクレオチド配列にコードされている。いくつかの実施形態では、ファシンは、RefSeq NP_003079.1のアミノ酸配列に対応する。
【0034】
「スパイン形成」などの用語は、通常の慣習的な意味において、ニューロンにおける樹状突起スパインの発達(例えば、成長および/または成熟)を指す。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、スパインの形態に影響を与えることなく、スパイン形成を促進する。促進は、化合物の投与がない場合との比較である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「樹状突起」という用語は、ニューロン細胞の分枝状伸長を指す。樹状突起は通常、隣接するニューロンの軸索から送信される電気化学的信号の受信を担う。「樹状突起スパイン(dendritic spines)」または「樹状突起スパイン(dendrite spines)」という用語は、ニューロン細胞(例えば、樹状突起)上の原形質隆起を指す。いくつかの実施形態では、樹状突起スパインは、小頭部(例えば、頭部)で終結し得る膜状の頸部を有すると記述され得る。樹状突起スパインは、その形状によってヘッドレス、シン、スタビィ、マッシュルーム、またはブランチと分類される。樹状突起スパイン密度は、ニューロン細胞の単位長さあたりの樹状突起スパインの総数を指す。例えば、樹状突起スパイン密度は、1ミクロンあたりの樹状突起スパインの数として与えられ得る。
【0036】
「樹状突起スパイン形成」などの用語は、通常の慣習的な意味において、樹状突起スパインの数の増加または樹状突起スパインの発達の増加をもたらすプロセスを指す。「樹状突起スパインの形態」などの用語は、通常の慣習的な意味において、樹状突起スパインの物理的特徴(例えば、形状および構造)を指す。樹状突起スパインの形態の改善は、形態の変化(例えば、長さの増加または幅の増加)であり、その結果、機能の向上(例えば、ニューロン間の接触数の増加または隣接するニューロン間のスペース(例えば、シナプス間隙)の減少)をもたらす。当技術分野で知られ、本明細書に開示されるように、そのような特徴付けのための例示的な方法には、樹状突起スパインの寸法(すなわち、長さおよび幅)の測定が含まれる。したがって、「樹状突起スパインの形態を改善する」という用語は、一般に、樹状突起スパインの長さ、幅、または長さおよび幅の両方の増加を指す。
【0037】
「結合」は、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子を含む化合物または細胞)が、反応または相互作用するのに十分に近位になり、それによって複合体の形成をもたらすことを指す。例えば、2つの異なる種(例えば、タンパク質および本明細書に記載の化合物)の結合は、種が非共有結合または共有結合を介して相互作用している複合体の形成をもたらし得る。いくつかの実施形態では、得られる複合体は、2つの異なる種(例えば、タンパク質および本明細書に記載の化合物)が、非共有結合(例えば、静電的、ファン・デル・ワールス、または疎水性)を介して相互作用することで形成される。
【0038】
本明細書で定義される場合、タンパク質-アクチベータ(例えば、アゴニスト)の相互作用を参照しての「活性化」、「活性化する」、「活性化している」などの用語は、アクチベータ(例えば、本明細書に記載の化合物)の非存在下でのタンパク質の活性または機能と比較して、タンパク質の活性または機能に正の影響(例えば、向上)を及ぼすことを意味する。
【0039】
「対照」または「対照実験」は、その平易な通常の意味に従って使用され、実験の手順、試薬、または変数の省略を除いて、実験の対象または試薬を並行実験のように扱う実験を指す。場合によっては、対照は、実験の効果を評価する際の比較の基準として使用される。
【0040】
「接触する」は、その平易な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子を含む化合物または細胞)が、相互作用するのに十分に近位になれるプロセスを指す。「接触する」という用語は、2つの分子種が反応するか、または物理的に接触することを可能にすることを含み得、ここで、2つの種は、例えば、本明細書に記載の化合物、生体分子、タンパク質または酵素であり得る。いくつかの実施形態では、接触は、本明細書に記載の化合物が、タンパク質(例えば、ファシン)または酵素と相互作用することを可能にすることを含む。いくつかの実施形態では、接触は、タンパク質の結合を含み得る。
【0041】
本明細書で定義される場合、「阻害」、「阻害する」、「阻害している」などの用語には、当業者に慣用の意味が与えられるべきである。タンパク質-阻害剤(例えば、アンタゴニスト)相互作用を参照しての「阻害」、「阻害する」、「阻害している」という用語は、阻害剤の非存在下でのタンパク質の機能的活性と比較して、タンパク質の機能的活性に負の影響(例えば、低下)を及ぼすことを意味する。
【0042】
2つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-C(O)NH2は、炭素原子を介して結合されている。化学基の前または最後のダッシュは便宜上のものであり、化学基は、1つまたは複数のダッシュの有無にかかわらず、通常の意味を失うことなく表すことができる。構造内の線を通る波線は、基の結合点を示す。化学的または構造的に必要な場合を除き、化学基の記述または命名の順序によって方向性が示されたり暗示されることはない。
【0043】
接頭辞「Cu-v」は、次に続く基が、u~v個の炭素原子を有することを示す。例えば、「C1-6アルキル」は、アルキル基が、1~6個の炭素原子を有することを示す。
【0044】
本明細書における値またはパラメータへの「約」の言及は、その値またはパラメータ自体に関する実施形態を含む(および実施形態を記述する)。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量の±10%を含む。他の実施形態では、「約」という用語は、示された量の±5%を含む。ある特定の他の実施形態では、「約」という用語は、示された量の±1%を含む。また、「約X」という用語は、「X」という記述を含む。また、単数形の「a」および「the」は、文脈が明確に別途指示しない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(the compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含み、「アッセイ(the assay)」への言及は、1つまたは複数のアッセイ、および当業者に既知のそれらの均等物への言及を含む。
【0045】
「アルキル」は、非分枝状または分枝状の飽和炭化水素鎖を指す。本明細書で使用される場合、アルキルは、1~20個の炭素原子(すなわち、C1-20アルキル)、1~8個の炭素原子(すなわち、C1-8アルキル)、1~6個の炭素原子(すなわち、C1-6アルキル)、または1~4個の炭素原子(すなわち、C1-4アルキル)を有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、および3-メチルペンチルが挙げられる。特定の数の炭素を有するアルキル残基が化学名によって命名されるか、または分子式によって特定される場合、その数の炭素を有するすべての位置異性体が包含され得る。したがって、例えば、「ブチル」は、n-ブチル(すなわち、-(CH2)3CH3)、sec-ブチル(すなわち、-CH(CH3)CH2CH3)、イソブチル(すなわち、-CH2CH(CH3)2)、およびtert-ブチル(すなわち、-C(CH3)3)を含み、「プロピル」は、n-プロピル(すなわち、-(CH2)2CH3)およびイソプロピル(すなわち、-CH(CH3)2)を含む。いくつかの実施形態では、「低級アルキル」という用語は、C1-6アルキルを指す。
【0046】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、2~20個の炭素原子(すなわち、C2-20アルケニル)、2~8個の炭素原子(すなわち、C2-8アルケニル)、2~6個の炭素原子(すなわち、C2-6アルケニル)、または2~4個の炭素原子(すなわち、C2-4アルケニル)を有するアルキル基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、ブタジエニル(1,2-ブタジエニルおよび1,3-ブタジエニルを含む)が挙げられる。
【0047】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、2~20個の炭素原子(すなわち、C2-20アルキニル)、2~8個の炭素原子(すなわち、C2-8アルキニル)、2~6個の炭素原子(すなわち、C2-6アルキニル)、または2~4個の炭素原子(すなわち、C2-4アルキニル)を有するアルキル基を指す。「アルキニル」という用語には、1つの三重結合および1つの二重結合を有する基が含まれる。
【0048】
「アルコキシ」は、「アルキル-O-」基を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、および1,2-ジメチルブトキシが挙げられる。
【0049】
「ハロアルコキシ」は、上で定義されたアルコキシ基を指し、1個または複数の水素原子がハロゲンで置き換えられている。
【0050】
「アルキルチオ」は、「アルキル-S-」基を指す。
【0051】
「アシル」は、-C(O)R基を指し、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアルキル、またはヘテロアリールであり、それらのそれぞれは、本明細書で定義されるように、場合によっては置換され得る。アシルの例としては、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチル-カルボニル、およびベンゾイルが挙げられる。
【0052】
「アミド」は、-C(O)NRyRz基を指す「C-アミド」基、および-NRyC(O)Rz基を指す「N-アミド」基の両方を指し、RyおよびRzは、水素、アルキル、アリール、ハロアルキル、またはヘテロアリールからなる群から独立して選択され、それらのそれぞれは、場合によっては置換され得る。
【0053】
「アミノ」は、-NRyRz基を指し、RyおよびRzは、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールからなる群から独立して選択され、それらのそれぞれは、場合によっては置換され得る。
【0054】
「アリール」は、縮合系を含む単一の環(例えば、単環式)または複数の環(例えば、二環式または三環式)を有する芳香族炭素環式基を指す。本明細書で使用される場合、アリールは、6~20個の環炭素原子(すなわち、C6-20アリール)、6~12個の炭素環原子(すなわち、C6-12アリール)、または6~10個の炭素環原子(すなわち、C6-10アリール)を有する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、およびアントリルが挙げられる。しかしながら、アリールは、以下に定義するヘテロアリールを包含しないか、またはヘテロアリールと決して重複しない。1つまたは複数のアリール基が、ヘテロアリールと縮合する場合、得られる環系はヘテロアリールである。1つまたは複数のアリール基が、ヘテロシクリルと縮合する場合、得られる環系はヘテロシクリルである。
【0055】
「アラルキル」は、アルキル基にペンダントしたアリール基を指す。アラルキル基の例としては、ベンジル、フェネチル、および3-ナフチルプロピルが挙げられる。
【0056】
「カルバモイル」は、-O-C(O)NRyRz基を指す「O-カルバモイル」基、および-NRyC(O)ORz基を指す「N-カルバモイル」基の両方を指し、RyおよびRzは、水素、アルキル、アリール、ハロアルキル、またはヘテロアリールからなる群から独立して選択され、それらのそれぞれは、場合によっては置換され得る。
【0057】
「カルボキシル」は、-C(O)OHを指す。
【0058】
「カルボキシルエステル」は、-OC(O)Rおよび-C(O)ORの両方を指し、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアルキル、またはヘテロアリールであり、それらのそれぞれは、本明細書で定義されるように、場合によっては置換され得る。
【0059】
「シクロアルキル」は、縮合、架橋、およびスピロ環系を含む単一の環または複数の環を有する、飽和または部分的に不飽和の環状アルキル基を指す。「シクロアルキル」という用語には、シクロアルケニル基(すなわち、少なくとも1つの二重結合を有する環状基)が含まれる。本明細書で使用される場合、シクロアルキルは、3~20個の環炭素原子(すなわち、C3-20シクロアルキル)、3~12個の環炭素原子(すなわち、C3-12シクロアルキル)、3~10個の環炭素原子(すなわち、C3-10シクロアルキル)、3~8個の環炭素原子(すなわち、C3-8シクロアルキル)、または3~6個の環炭素原子(すなわち、C3-6シクロアルキル)を有する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル、ならびにシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどの部分的に不飽和の基が挙げられる。
【0060】
「イミノ」は、-C(NR)R基を指し、各Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアルキル、またはヘテロアリールであり、それらのそれぞれは、本明細書で定義されるように、場合によっては置換され得る。
【0061】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。「ハロアルキル」は、上で定義されたように、非分枝状または分枝状アルキル基を指し、1個または複数の水素原子がハロゲンで置き換えられている。例えば、残基が2つ以上のハロゲンで置換されている場合、結合したハロゲン部分の数に対応する接頭辞を使用することによって言及することができる。ジハロアルキルおよびトリハロアルキルは、2つ(「ジ」)または3つ(「トリ」)のハロ基で置換されたアルキルを指し、これらは、同じハロゲンであってもよいが、必ずしもそうではない。ハロアルキルの例としては、ジフルオロメチル(-CHF2)およびトリフルオロメチル(-CF3)が挙げられる。
【0062】
「ヘテロアルキル」は、1個または複数の炭素原子(および任意の関連する水素原子)が、それぞれ独立して、同じまたは異なるヘテロ原子基で置き換えられているアルキル基を指す。「ヘテロアルキル」という用語には、炭素およびヘテロ原子を有する非分枝状または分枝状の飽和鎖が含まれる。例として、1個、2個、または3個の炭素原子は、独立して、同じまたは異なるヘテロ原子基で置き換えられ得る。ヘテロ原子基には、-NR-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-などが含まれるが、これらに限定されない。ここで、RはH、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、それらのそれぞれは、場合によっては置換され得る。ヘテロアルキル基の例としては、-OCH3、-CH2OCH3、-SCH3、-CH2SCH3、-NRCH3、および-CH2NRCH3が挙げられる。ここで、Rは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロアリールであり、それらのそれぞれは、場合によっては置換され得る。本明細書で使用される場合、ヘテロアルキルは、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、または1~4個の炭素原子、および1~3個のヘテロ原子、1~2個のヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を含む。
【0063】
「ヘテロアリール」は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1個または複数の環ヘテロ原子を有し、単一の環、複数の環、または複数の縮合環を有する芳香族基を指す。本明細書で使用される場合、ヘテロアリールは、5~20個の環原子(すなわち、5~20員のヘテロアリール)、または5~10個の環原子(すなわち、5~10員のヘテロアリール)、ならびに窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子、1~4個のヘテロ原子、1~3個のヘテロ原子、1~2個のヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基の例としては、ピリミジニル、プリニル、ピリジル、ピリダジニル、ベンゾチアゾリル、およびピラゾリルが挙げられる。縮合ヘテロアリール環の例としては、ベンゾ[d]チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンゾ[d]イミダゾリル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジニル、およびイミダゾ[1,5-a]ピリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、ヘテロアリールは、縮合系のいずれかの環を介して結合することができる。少なくとも1個のヘテロ原子を含む、単一または複数の縮合環を有する任意の芳香環は、分子の残りの部分への(すなわち、縮合環のいずれか1つを介した)結合物に関係なくヘテロアリールと見なされる。ヘテロアリールは、上で定義されたように、アリールを包含しないか、またはアリールと重複しない。
【0064】
「ヘテロシクリル」および「ヘテロシクロアルキル」は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1個または複数の環ヘテロ原子を有する、飽和または不飽和の環状アルキル基を指す。「ヘテロシクリル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語には、ヘテロシクロアルケニル基(すなわち、少なくとも1つの二重結合を有するヘテロシクリル基)、架橋ヘテロシクリル基、縮合ヘテロシクリル基、およびスピロヘテロシクリル基が含まれる。ヘテロシクリルは、単一の環または複数の環であり得、複数の環は縮合されるか、架橋されるか、またはスピロであり得る。少なくとも1個のヘテロ原子を含む非芳香環は、結合物(すなわち、炭素原子またはヘテロ原子を介して結合され得る)に関係なく、ヘテロシクリルと見なされる。さらに、ヘテロシクリルという用語は、分子の残りの部分への結合物に関係なく、少なくとも1個のヘテロ原子を含む任意の非芳香環を包含することを意図しており、その環は、アリールまたはヘテロアリール環に縮合され得る。本明細書で使用される場合、ヘテロシクリルは、3~20個の環原子(すなわち、3~20員の ヘテロシクリル)、3~12個の環原子(すなわち、3~12員の ヘテロシクリル)、または3~10個の環原子(すなわち、3~10員のヘテロシクリル)を有し、窒素、硫黄または酸素から独立して選択される1~5個の環ヘテロ原子、1~4個の環ヘテロ原子、1~3個の環ヘテロ原子、1~2個の環ヘテロ原子、または1個の環ヘテロ原子を有する。ヘテロシクリル基の例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキセタニル、ジオキソラニル、アゼチジニル、およびモルホリニルが挙げられる。本明細書で使用される場合、「架橋ヘテロシクリル」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を有し、1つまたは複数(例えば、1つまたは2つ)の4~10員の環状部分を有するヘテロシクリルの2個の隣接しない原子で接続された4~10員の環状部分を指す。ここで、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される。本明細書で使用される場合、架橋ヘテロシクリルには、二環式および三環式環系が含まれる。また、本明細書で使用される場合、「スピロヘテロシクリル」という用語は、3~10員のヘテロシクリルが、1個または複数の追加の環を有する環系を指す。ここで、1個または複数の追加の環は、3~10員のシクロアルキルまたは3~10員のヘテロシクリルであり、1個または複数の追加の環の1個の原子はまた、3~10員のヘテロシクリルの原子である。スピロヘテロシクリル環の例としては、2-オキサ-7-アザスピロ[3.5]ノナニル、2-オキサ-6-アザスピロ[3.4]オクタニル、および6-オキサ-1-アザスピロ[3.3]ヘプタニルなどの二環式および三環式環系が挙げられる。縮合ヘテロシクリル環の例としては、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジニル、インドリニル、およびイソインドリニルが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、ヘテロシクリルは、縮合系のいずれかの環を介して結合することができる。
【0065】
「オキソ」は、(=O)または(O)基を指す。
【0066】
「スルホニル」は、-S(O)2R基を指し、ここでRは、アルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはアリールである。スルホニルの例としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、およびトルエンスルホニルが挙げられる。
【0067】
「アルキルスルホニル」は、-S(O)2R基を指し、ここで、Rはアルキルである。
【0068】
「アルキルスルフィニル」は、-S(O)R基を指し、ここでRはアルキルである。
【0069】
「チオシアネート」は、-SCN基を指す。
【0070】
「チオキソ」または「チオン」は、(=S)または(S)基を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「糖質」という用語は、単糖、二糖、オリゴ糖または多糖などの糖を指す。単糖には、グルコース、リボース、およびフルクトースが含まれるが、これらに限定されない。二糖には、スクロースおよびラクトースが含まれるが、これらに限定されない。オリゴ糖は、好ましくはアルファ結合を介して互いに結合された2~10個の糖を指す。オリゴ糖の例としては、マルトース、ラクトース、スクロースなどが挙げられる。多糖には、セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロースまたはデンプンが含まれるが、これらに限定されない。糖質または糖には、グルコース、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトース、フコース、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、フルクトース、シアル酸など(それらのアルドール型およびピラノース型、ならびにそれらのDおよびL異性体を含む)の任意かつすべての天然糖が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0072】
特定の一般的に使用される代替の化学名が使用される場合がある。例えば、二価の「アルキル」基、二価の「アリール」基などの二価の基はまた、それぞれ「アルキレン」基または「アルキレニル」基、「アリーレン」基または「アリーレニル」基と称されてもよい。また、特に明記しない限り、基の組合せが本明細書で1つの部分、例えばアリールアルキルと称される場合、最後に述べた基は、その部分が分子の残りの部分に結合する原子を含む。
【0073】
「任意の」または「場合によっては」という用語は、その後に記述される事象または状況が発生しても、または発生しなくてもよく、記述には、該事象または状況が発生する場合および発生しない場合が含まれることを意味する。また、「場合によっては置換された」という用語は、指定された原子または基上の任意の1個または複数の水素原子が、水素以外の部分によって置き換えられても、または置き換えられなくてもよいことを指す。
【0074】
保護基は、例えば、Peter G.M.WutsおよびTheodora W.Greene、Greene’s protective groups in organic synthesis(Wiley-Interscience、2007)に記載されているように、当技術分野で公知なものであれば任意である。いくつかの実施形態では、酸素保護基は、ベンジルエーテル、シリルエーテル、エステル、カーボネート、環状アセタールおよびケタールから選択され得る。
【0075】
いくつかの化合物は、互変異性体として存在する。互変異性体は、互いに平衡状態にある。例えば、アミド含有化合物は、イミド酸互変異性体と平衡状態で存在し得る。どの互変異性体が示されるかに関係なく、また互変異性体間の平衡の性質に関係なく、化合物は、当業者によって、すべての互変異性体を含むと理解される。
【0076】
本明細書で与えられる任意の式または構造はまた、化合物の非標識形態および同位体標識形態を表すことを意図している。同位体標識化合物は、1個または複数の原子が、選択された原子量または質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて、本明細書で与えられる式により示される構造を有する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体、またはそれらの対イオンの例としては、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の下では、様々な同位体標識化合物、例えば、3H、13C、および14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものが可能である。そのような同位体標識化合物は、代謝研究、反応速度論研究、薬物もしくは基質組織分布アッセイを含む、陽電子放射断層撮影(PET)もしくは単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)などの検出もしくは撮像技法、または患者の放射性治療において有用であり得る。
【0077】
本開示はまた、炭素原子に結合した1~n個の水素が重水素によって置き換えられている、化合物の「重水素化類似体」およびそれらの対イオンを含む。ここで、nは分子内の水素の数である。このような化合物は、代謝に対する耐性の増加を示し、したがって、哺乳動物、特にヒトに投与された場合、化合物の半減期を長くさせるのに有用である。例えば、Foster、「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」、Trends Pharmacol.Sci.5(12):524-527(1984)を参照されたい。このような化合物は、当技術分野で周知の手段によって、例えば、1個または複数の水素が重水素によって置き換えられている出発物質を用いることによって合成される。
【0078】
本開示の重水素標識または置換された治療用化合物は、分布、代謝、および排泄(ADME)に関連して、改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有し得る。重水素などのより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から生じる特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の延長、必要用量の低減、および/または治療指数の改善をもたらし得る。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識化合物およびそれらのプロドラッグは、通常、非同位体標識試薬を、容易に入手可能な同位体標識試薬で置き換え、スキームまたは下に記載される実施例および調製に開示された手順を実行することによって調製され得る。この文脈における重水素は、化合物内の置換基と見なされることが理解される。
【0079】
このようなより重い同位体、具体的には重水素の濃度を、同位体濃縮係数によって定義することができる。本開示の化合物では、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すことを意味する。特に明記しない限り、位置が具体的に「H」または「水素」と指定される場合、その位置は、その天然存在比の同位体組成で水素を含むと理解される。したがって、本開示の化合物では、重水素(D)として具体的に指定される任意の原子は、重水素を表すことを意味する。
【0080】
本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される塩のような塩として存在してよい。化合物は、酸性および/または塩基性塩などの塩を形成することができる。本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性形態、多形、およびプロドラッグも提供される。「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」は、獣医学的またはヒトの医薬用途に適した医薬組成物を調製するのに有用な化合物、塩、組成物、剤形および他の材料を指す。本明細書に記載の化合物の塩を、本明細書に記載の手順に従って、当技術分野で公知なように調製できる。
【0081】
所与の化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、所与の化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的ないしは別の点で不適当でない塩を指す。「薬学的に許容される塩」または「生理学的に許容される塩」としては、例えば、無機酸との塩および有機酸との塩が挙げられる。加えて、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、酸性塩の溶液を塩基性化することにより遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解し、該溶液を酸で処理することによって作られ得る。当業者は、毒性のない薬学的に許容される付加塩を調製するために使用することができる、様々な合成方法論を認識するであろう。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製できる。無機酸に由来する塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸に由来する塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエン-スルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。同様に、薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製できる。無機塩基に由来する塩としては、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が挙げられる。有機塩基に由来する塩としては、アルキルアミン(すなわち、NH2(アルキル))、ジアルキルアミン(すなわち、HN(アルキル)2)、トリアルキルアミン(すなわち、N(アルキル)3)、置換アルキルアミン(すなわち、NH2(置換アルキル))、ジ(置換アルキル)アミン(すなわち、HN(置換アルキル)2)、トリ(置換アルキル)アミン(すなわち、N(置換アルキル)3)、アルケニルアミン(すなわち、NH2(アルケニル))、ジアルケニルアミン(すなわち、HN(アルケニル)2)、トリアルケニルアミン(すなわち、N(アルケニル)3)、置換アルケニルアミン(すなわち、NH2(置換アルケニル))、ジ(置換アルケニル)アミン(すなわち、HN(置換アルケニル)2)、トリ(置換アルケニル)アミン(すなわち、N(置換アルケニル)3、モノ-、ジ-またはトリ-シクロアルキルアミン(すなわち、NH2(シクロアルキル)、HN(シクロアルキル)2、N(シクロアルキル)3)、モノ-、ジ-またはトリ-アリールアミン(すなわち、NH2(アリール)、HN(アリール)2、N(アリール)3)、または混合アミンなどの第一級、第二級および第三級アミンの塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適なアミンの具体例としては、ほんの一例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N-エチルピペリジンなどが挙げられる。塩を調製する方法はまた、例えば、塩の溶解度が異なるために、活性金属との酸化還元反応によって、またはイオンの交換によって化合物を混合することを含む。
【0082】
「置換された」という用語は、指定された原子または基上の任意の1個または複数の水素原子が、水素以外の1つまたは複数の置換基で置き換えられることを意味する。ただし、指定された原子の通常の原子価を超えない。1つまたは複数の置換基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アミノ、アミド、アリール、-N3、カルバモイル、カルボキシル、カルボキシルエステル、-CN、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-OH、イミノ、オキソ、-NO2、アルキルスルフィニル、-SO3H、アルキルスルホニル、チオシアネート、-SH、チオン、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。追加の置換基が無限に付加された置換基を定義することによって到達する、ポリマーまたは類似の不定構造(例えば、それ自体が置換アリール基で置換され、さらに置換ヘテロアルキル基で置換された置換アルキルを有する置換アリールなど)を、本明細書に含めることは意図していない。特に明記しない限り、本明細書に記載の化合物における連続置換の最大数は3である。例えば、置換アリール基と他の2つの置換アリール基との連続置換は、((置換アリール)置換アリール)置換アリールに限定される。同様に、上記の定義は、許容されない置換パターン(例えば、5個のフッ素で置換されたメチルまたは2個の隣接する酸素環原子を有するヘテロアリール基)を含むことは意図していない。このような許容されない置換パターンは、当業者に周知である。化学基を修飾するために使用される場合、「置換された」という用語は、本明細書で定義される他の化学基を記述し得る。別段の指定がない限り、基が場合によっては置換されていると記述されている場合、その基の置換基自体は非置換である。例えば、いくつかの実施形態では、「置換アルキル」という用語は、ヒドロキシル、ハロ、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールを含む、1つまたは複数の置換基を有するアルキル基を指す。他の実施形態では、1つまたは複数の置換基は、各々が置換されているハロ、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールでさらに置換されてもよい。他の実施形態では、置換基は、各々が非置換であるハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールでさらに置換されてもよい。
【0083】
「溶媒和物」は、溶媒分子が組み込まれた化合物の固体形態である。溶媒和物は、溶媒および化合物の相互作用によって形成される。水和物は、溶媒が水である溶媒和物である。本明細書に記載の化合物の塩の溶媒和物も提供される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」には、任意かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質として、このような媒体および薬剤を使用することは、当技術分野において周知である。従来の媒体または薬剤が有効成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物においての使用が企図される。補助的な有効成分も組成物に組み込むことができる。
【0085】
「治療」または「治療する」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチである。有益なまたは望ましい臨床結果には、以下の1つまたは複数が含まれ得る。a)疾患または状態を治療する(例えば、疾患もしくは状態に起因する1つもしくは複数の症状を減少させ、かつ/または疾患もしくは状態の程度を軽減させる)、b)疾患または状態に関連する1つまたは複数の臨床症状の発症を遅延または阻止する(例えば、疾患または状態を安定化させ、疾患または状態の悪化もしくは進行を予防または遅延させ、かつ/または疾患もしくは状態の広がり(例えば、転移)を予防もしくは遅延させる、および/あるいはc)疾患を軽減する、すなわち、臨床症状の退行を引き起こす(例えば、病状を改善し、疾患または状態の部分的もしくは完全な寛解を提供し、別の医薬の効果を増強させ、疾患の進行を遅延させ、生活の質を向上させ、かつ/または生存期間を延長させる)。
【0086】
「予防」または「予防する」は、疾患または状態の臨床症状を発症させない、疾患または状態の任意の処置を意味する。化合物は、いくつかの実施形態では、疾患もしくは状態のリスクがあるか、または疾患もしくは状態の家族歴を有する対象(ヒトを含む)に投与され得る。
【0087】
「対象」とは、治療、観察または実験の目的であったか、または目的となるであろう哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療および/または獣医学的用途において有用であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物である。一実施形態では、対象は、ヒトである。対象が人間である場合、対象は「患者」と呼ばれることがある。
【0088】
本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の「治療有効量」または「有効量」という用語は、対象に投与された場合に、治療効果を発揮するのに十分な量を意味し、症状の改善または疾患の進行の遅延などの治療上の利益をもたらす。例えば、治療有効量は、ニューロン疾患の症状を減少させるのに十分な量であり得る。治療有効量は、治療される対象および疾患または状態、対象の体重および年齢、疾患または状態の重症度、ならびに投与方法に応じて異なり得るが、当業者によって容易に決定することができる。
【0089】
本明細書に記載の方法は、インビボまたはエクスビボで細胞集団に適用することができる。「インビボ」は、動物またはヒト体内のように、生きている個体の体内を意味する。これに関連して、本明細書に記載の方法を、個体において治療的に使用することができる。「エクスビボ」は、生きている個体の外を意味する。エクスビボ細胞集団の例としては、インビトロ細胞培養物、および個体から得られた体液または組織サンプルを含む生物学的サンプルが挙げられる。このようなサンプルは、当技術分野において周知の方法によって得ることができる。例示的な生体液サンプルには、血液、脳脊髄液、尿、および唾液が含まれる。これに関連して、本明細書に記載の化合物および組成物を、治療および実験的な目的を含む様々な目的に使用することができる。例えば、本明細書に記載の化合物および組成物をエクスビボで使用して、所与の適応症、細胞型、個体、および他のパラメータに対する本開示の化合物の投与の最適なスケジュールおよび/または投与量を決定することができる。このような使用から収集された情報を、実験的な目的または診療所で、インビボ処置のプロトコルを設定するために使用することができる。本明細書に記載の化合物および組成物が適するであろう他のエクスビボ用途を以下に記載するが、当業者には明らかであろう。選択された化合物は、ヒトまたは非ヒト対象における安全性または耐容投与量を調べるためにさらに特徴付けされてもよい。このような特性は、当業者に一般的に知られている方法を使用して調べることができる。
【表5】
【0090】
化合物
本明細書では、スパイン形成を促進する薬剤を提供する。このような薬剤は、ニューロン疾患および障害の治療に有用である。薬剤は、本明細書で提供される化合物であり得る。化合物は、米国特許出願公開第2015/0299191号に記載されている化合物であり得る。化合物は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩であり得る:
【化4】
(式中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、およびA
6は、CH、CR
3、およびNからなる群から独立して選択され、ただし、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、およびA
6の4つ以下はNであり、
R
1は、フェニル、5員のヘテロアリール、および6員のヘテロアリールからなる群から選択され、該フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~3つのR
6で置換され、
L
2は、共有結合、-NR
8-、-C(O)NR
8-、-NR
8-、-C(O)NR
8-、-NR
8C(O)-、-C(O)CR
8
2-、-CR
8
2C(O)-、-NR
8CR
8
2-、および-CR
8
2NR
8-からなる群から選択され、
R
2は、H、C
1-6アルキル、6~10員のアリール、または5~10員のヘテロアリールであり、該6~10員のアリールまたは5~10員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~4つのR
4で置換され、各R
4は、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、フェニル(場合によっては、C
1-6アルキル、ハロ、C
1-6ハロアルキル、または-OHで置換されている)、-OH、-OR
7、-SH、-SR
7、-NR
10R
10、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7、-CO
2H、-CO
2R
7、-CONR
10R
10、-OCOR
7、-OCO
2R
7、-OCONR
10R
10、-NR
10COR
7、-NR
10CO
2R
7、-SOR
7、-SO
2R
7、-SO
2NR
10R
10、および-NR
10SO
2R
7からなる群から独立して選択され、
各R
3は、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、-OH、-OR
7、-SH、-SR
7、-NR
10R
10、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7、-CO
2H、-CO
2R
7、-CONR
10R
10、-OCOR
7、-OCO
2R
7、-OCONR
10R
10、-NR
10COR
7、-NR
10CO
2R
7、-SOR
7、-SO
2R
7、-SO
2NR
10R
10、および-NR
10SO
2R
7からなる群から独立して選択され、
qは、1、2、または3であり、
各R
6は、シアノ、ハロ、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、および-CH
2OHからなる群から独立して選択され、
R
7は、C
1-6アルキルまたはC
1-6ハロアルキルであり、
R
8は、水素またはC
1-6アルキルであり、
各R
10は、独立して、水素もしくはC
1-6アルキルであるか、または2つのR
10が、それに結合した原子と一緒になって4~6員環を形成し、
R
11は、水素またはR
3である)。
【0091】
化合物は、国際特許公開第WO2013/013240号に記載の化合物であり得る。化合物は、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり得る:
【化5】
(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、
X
1は、-O-、-NR
7a-、-CR
9aR
9b-、-C(O)-NR
7a-、-NR
7a-C(O)-、-NR
8a-S(O)
2-、または-S(O)
2-NR
8a-であり、
X
2は、-NR
8a-、-CR
9aR
9b-、-S-、-O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-NR
8a-、-NR
8a-C(O)-、-NR
8a-S(O)
2-、または-S(O)
2-NR-であり、
R
1aは、ハロ、C
1-6アルキル、またはC
1-6アルコキシであり、
各R
2aおよびR
2bは、独立して、水素またはC
1-6アルキルであり、
各R
4aおよびR
4bは、独立して、水素、ヒドロキシル、C
1-6アルキル、またはC
1-6アルコキシであり、
各R
5aおよびR
5bは、独立して、水素、ハロ、アミノ、アミド、C
1-6アルキル、またはC
1-6アルコキシであり、
各R
6aおよびR
6bは、独立して、水素、ハロ、アミノ、アミド、C
1-6アルキル、またはC
1-6アルコキシであり、
R
7aは、水素、C
1-6アルキル、アシル、アリール、またはアラルキルであり、
R
8aは、水素、C
1-6アルキル、アシル、アリールまたはアラルキルであり、
各R
9aおよびR
9bは、独立して、水素、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、ハロ、アミノ、アミド、アリール、またはヘテロアリールである)。
【0092】
化合物は、米国特許出願公開第2014/0024705号に記載されている化合物であり得る。化合物は、式IVの化合物またはその薬学的に許容される塩であり得る:
【化6】
R
21は、水素、または場合によっては置換されたC
1-6アルキルであり、
R
22は、酸素保護基、水素、または場合によっては置換されたC
1-6アルキルであり、
R
23およびR
25は、それぞれ独立して、場合によっては置換されたC
1-6アルキルであり、
R
24は、水素または-T-Yであり、
-T-は、場合によっては置換されたC
1-8二価飽和または不飽和、直鎖または分枝状、炭化水素鎖であり、1つまたは複数のメチレン単位が、場合によっては独立して-NR
26-、-N(R
26)C(O)-、-C(O)N(R
26)-、-N(R
26)SO
2-、-SO
2N(R
26)-、-O-、-C(O)-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(O)O-、-OC(O)N(R
26)-、-S-、-SO-、または-SO
2-に置き換えられ、
各R
26は、独立して、水素、またはC
1-20アルキル、C
1-20ヘテロアルキル、6~10員のアリール、5~12員のヘテロアリール、3~14員のシクロアルキル、3~12員のヘテロシクリルからなる群から選択され、
-Yは、水素またはアシルである)。
【0093】
化合物は、米国特許出願公開第2014/0080843号に記載されている化合物であり得る。化合物は、式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩であり得る:
【化7】
(式中、
L
5は、-(C(R
58)
2)
q-、-(C(R
58)
2)
q-C(O)-(C(R
58)
2)
r-、
-(C(R
58)
2)
q-C(O)N(R
58)-(C(R
58)
2)
r-、-(C(R
58)
2)
q-N(R
58)C(O)-(C(R
58)
2)
r-、-(C(R
58)
2)
q-N(R
58)S(O)
2-(C(R
58)
2)
r、-(CH
2)
q-S(O)
2N(R
58)-(CH
2)
r-、-S-、-O-、および-NR
58-からなる群から選択され、
各R
51は、ハロおよび1~3個のハロで場合によっては置換されたC
1-6アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはフェニル環上の2つの隣接するR
51は、フェニル環と縮合した5員もしくは6員のシクロアルキルまたはヘテロシクリルを形成し、
各R
58は、独立して、水素またはC
1-6アルキルであり、
qは、0または1であり、
rは、0または1であり、
u5は、1、2、または3である)。
【0094】
いくつかの実施形態では、化合物は、米国特許出願公開第2014/0080843号に記載されている化合物であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、式I-aまたは式I-bの化合物であり、
【化8】
式I-aまたは式I-bのQ
1およびQ
2は、独立して、フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールであり、式I-aにおいては一緒に縮合されており、
式I-bのQ
3は、6員の不飽和環であり、(1)Y
1およびY
2の間の結合が二重結合であり、YおよびY
2の間の結合が単結合であるか、または(2)Y
1およびY
2の間の結合が単結合であり、Y
3およびY
2の間の結合が二重結合であり、式I-bにおいてはQ
3がQ
2と縮合しており、
式I-aまたは式I-bのsは、0または1であり、
式I-aまたは式I-bのtは、1または2であり、
式I-aまたは式I-bのY
1、Y
3、およびY
4は、独立して、CまたはNであり、式I-aまたは式I-bのY
2、Y
4、およびY
6は、独立して、CH、CR
3、またはNであり、ただし、式I-aまたは式I-bのY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、およびY
6の4つ以下はNであり、
式I-aまたは式I-bのR
1は、フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールであり、フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールは、場合によっては式I-aまたは式I-bの1つ~3つのR
6で置換されており、
式I-aまたは式I-bのRおよびR
4の一方は、存在しないか、水素、ハロ、もしくは低級アルキル(好ましくは、メチルもしくはエチル)であり、RおよびR
4の他方は、L
2-R
5もしくはL
3-R
3であり、または、Rは存在せず、R
4は、-(CH
2)
j-R
11aであり、式I-aまたは式I-bのR
11aは、-OH、-OR
7、-SH、-SR
7、-NR
10R
10、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7、-CO
2H、-CO
2R
7、-CONR
10R
10、-OCOR
7、-OCO
2R
7、-OCONR
10R
10、-NR
10COR
10、-NR
10CO
2R
10、-SOR
7、-SO
2R
7、-SO
2NR
10R
10、および-NR
10SO
2R
7からなる群から選択され、
式I-aまたは式I-bのX
1は、OR
8、NHR
8、およびSR
8からなる群から選択され、
式I-aまたは式I-bのX
2は、O、NR
8、およびSからなる群から選択され、
式I-aまたは式I-bのL
1は、-(C(R
8)
2)
j-、-(C(R
8)
2)
q-C(O)-(C(R
8)
2)
r-、-(C(R
8)
2)
q-C(O)N(R
8)-(C(R
8)
2)
r-、-(C(R
8)
2)
q-N(R
8)C(O)-(C(R
8)
2)
r-、-(C(R
8)
2)
q-N(R
8)S(O)
2-(C(R
8)
2)
r-、-(CH
2)
q-S(O)
2N(R
8)-(CH
2)
r-、-S-、-O-、および-NR
8-からなる群から選択され、
式I-aまたは式I-bのjは,1、2、または3であり、
式I-aまたは式I-bのqは、0または1であり、
式I-aまたは式I-bのrは、0または1であり、
式I-aまたは式I-bのL
2は、共有結合、-C(O)N(R
8)-、-N(R
8)C(O)-、-N(R
8)S(O)
2-、および-S(O)
2N(R
8)-からなる群から選択され、
式I-aまたは式I-bのL
3は、=NC(O)-または=NS(O)
2-であり、
式I-aまたは式I-bの各R
3は、低級アルキル(好ましくは、メチルまたはエチル)およびハロからなる群から独立して選択され、
式I-aまたは式I-bのR
5は、フェニル、5員のヘテロアリール、6員のヘテロアリール、5員のヘテロシクロアルキル、または6員のヘテロシクロアルキルであり、フェニル、5員のヘテロアリール、または6員のヘテロアリールは、場合によっては1つ~4つのR
2で置換され、式I-aまたは式I-bの各R
2は、低級アルキル、低級ハロアルキル、-OH、-OR
7、-SH、-SR
7、-NR
10R
10、ハロ、シアノ、ニトロ、-COH、-COR
7、-CO
2H、-CO
2R
7、-CONR
10R
10、-OCOR
7、-OCO
2R
7、-OCONR
10R
10、-NR
10COR
10、-NR
10CO
2R
10、-S(O)R
7、-SO
2R
7、-SO
2NR
10R
10、および-NR
10SO
2R
7からなる群から独立して選択され、
式I-aまたは式I-bの各R
6は、ハロおよび1~3個のハロで場合によっては置換された低級アルキル(好ましくは、メチルまたはエチル)からなる群から独立して選択されるか、あるいはフェニル環上の2つの隣接するR
6は、フェニル環と縮合した5員もしくは6員のシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを形成し、
式I-aまたは式I-bのR
7は、低級アルキル(好ましくは、メチルまたはエチル)であり、
式I-aまたは式I-bのR
8は、水素または低級アルキル(好ましくは、メチルまたはエチル)であり、
式I-aまたは式I-bの各R
10は、独立して、水素もしくは低級アルキル(好ましくは、メチルもしくはエチル)であるか、または2つのR
10が、それに結合した原子と一緒になって4~6員環を形成する。
【0095】
いくつかの実施形態では、式VIIによる化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化9】
(式中、ニトロ基は、オルトまたはメタであり、式VIIのRは、メチルまたはエチルであり、式VIIのXは、OまたはSである)。
【0096】
いくつかの実施形態では、式VIIIによる化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化10】
【0097】
いくつかの実施形態では、式IXによる化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化11】
【0098】
いくつかの実施形態では、式Xによる化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化12】
【0099】
いくつかの実施形態では、式XIによる化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化13】
【0100】
いくつかの実施形態では、化合物は以下の
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【化14-5】
【化14-6】
【化14-7】
【化14-8】
【化14-9】
【化14-10】
【化14-11】
【化14-12】
【化14-13】
【化14-14】
【化14-15】
【化14-16】
【化14-17】
から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0101】
いくつかの実施形態では、化合物は以下の
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
【化15-4】
【化15-5】
【化15-6】
【化15-7】
から選択される化合物
【0102】
いくつかの実施形態では、化合物は以下の
【化16】
から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0103】
いくつかの実施形態では、化合物は以下の
【化17-1】
【化17-2】
【化17-3】
から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0104】
【0105】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の構造を有するN-(1-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-インダゾール-3-イル)フラン-2-カルボキサミド
【化19】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0106】
いくつかの実施形態では、化合物は、比較化合物2、比較化合物3、または比較化合物4ではない。
【化20】
いくつかの実施形態では、比較化合物2、比較化合物3、または比較化合物4は、その薬学的に許容される塩として存在する。
【0107】
いくつかの実施形態では、化合物は、化合物5もしくは化合物6、
【化21】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0108】
いくつかの実施形態では、化合物は以下の
【化22】
から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態では、化合物は、ミグラスタチン(化合物8)またはイソミグラスタチン(化合物9)である。
【化23】
いくつかの実施形態では、化合物8または化合物9は、その薬学的に許容される塩として存在する。
【0110】
いくつかの実施形態では、化合物は化合物10である。
【化24】
いくつかの実施形態では、化合物10は、その薬学的に許容される塩として存在する。
【0111】
いくつかの実施形態では、化合物は化合物11
【化25】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0112】
いくつかの実施形態では、化合物は、Abstract LB-228:Identifying small molecule inhibitors of Fascin 1 using fragment-based drug discovery、Cancer Research 77(付録13):LB-228-LB-228、7月 2017、DOI:10.1158/1538-7445.AM2017-LB-228に開示されている、BDP-00010834またはBDP-00013544である。
【0113】
いくつかの実施形態では、薬剤は、少なくとも結合部位2または結合部位3でファシンに結合するファシン抗体である。
【0114】
いくつかの実施形態では、化合物は、式IIIの化合物ではない:
【化26】
(式中、Yは、-NR
33-または-S-であり、R
31は、独立して、ハロゲン、-CX
31、-CHX
31、-CH
2X
31、-OCX
31
3、-OCHX
31
2、-OCH
2X
31、-CN、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、-NHNH
2、-ONH
2、-HNC(O)NHNH
2、-NHC(O)NH
2、-NHSO
2H、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、R
32は、独立して、ハロゲン、-CX
32
3、-CHX
32
2、-CH
2X
32、-OCX
32
3、-OCHX
32
2、-OCH
2X
32、-CN、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、-NHNH
2、-ONH
2、-NHC(O)NHNH
2、-NHC(O)NH
2、-NHSO
2H、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、X
31およびX
32のそれぞれは、独立して、ハロゲンであり、z1およびz2のそれぞれは、独立して、0~4の整数であり、z3は1~12の整数であり、R
33は、水素または置換もしくは非置換のC
1-6アルキルである)。
【0115】
本明細書に記載の化合物を、当業者に公知の方法に従って調製することができる。利用可能な場合、化合物を、例えば、Sigma Aldrichまたは他の化学薬品供給業者から商業的に購入することができる。
【0116】
合成は、既知の手順またはその修正によって実施することができる。例えば、出発物質の多くは、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wisconsin、USA)、Bachem(Torrance、California、USA)、Emka-Chemce or Sigma(St.Louis、Missouri、USA)などの商用供給業者から入手可能である。他のものは、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、第1-15巻(John Wiley and Sons、1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、第1-5巻、および付録(Elsevier Science Publishers、1989)、Organic Reactions、第1-40巻(John Wiley and Sons、1991)、March’s Advanced Organic Chemistry、(John Wiley and Sons、第5版、2001)、ならびにLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989)などの標準的な参照テキストに記載されている手順またはそれらの修正によって調製することができる。
【0117】
治療方法および使用
ファシン
本明細書では、本明細書に記載の化合物のような薬剤を用いて細胞骨格タンパク質を標的にすることにより、神経変性状態まで失われたスパインシナプスを再生するための方法を記述する。予期せぬことに、細胞骨格タンパク質ファシン1(FSCN1)の阻害により、インビボおよびインビトロで樹状突起スパインが急速にアップレギュレーションされることが観察された。樹状突起スパインは、細胞およびその細胞内の特殊分化に構造を与える細胞骨格ポリマーである線維状アクチン(F-アクチン)を含む。F-アクチンフィラメントの伸長およびその組織内での変化は、樹状突起スパインの形成、成熟、および可塑性にとって重要であると考えられている。本開示の前に、F-アクチンフィラメントを平行アレイに束ねるファシン1の能力は、浸潤突起、糸状仮足、およびおそらく樹状突起スパインなど、広範囲の細胞突起の形成に不可欠であると考えられていた。ファシン1は、そのようなプロセスによって細胞遊走および関連するがん転移のプロセスを促進すると考えられている。F-アクチンを束ねる能力を阻害する、ファシン1の小分子阻害剤は、F-アクチンに富む細胞突起を減少させることが観察されている。したがって、以前の研究は、ファシン阻害剤が、F-アクチンに富む細胞突起である樹状突起スパインの形成も阻害することを示唆していた。しかしながら、予想に反して、本開示は、その反対が真実であることを実証する。すなわち、ファシン1の構造的に異なる阻害剤、およびファシン1の遺伝子ノックダウンは、樹状突起スパイン密度の急速な増加をもたらし得る。理論によって制限されることは望まないが、樹状突起スパインは、F-アクチンの高度に分枝した集合体の形成を必要とし、そのような集合体の形成は、ファシン1により平行アレイに束ねることによって妨げられたり、または大幅に減少する可能性があると考えられている。
【0118】
いくつかの実施形態では、ファシンタンパク質の部位2または部位3に結合する方法を提供し、該方法は、有効量の本明細書に記載の化合物をファシンタンパク質と接触させることを含む。該化合物は、例えば、本明細書で提供される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいは本明細書で提供される式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩、本明細書で提供される式IVの化合物から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩、本明細書で提供される式Vの化合物から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩、本明細書で提供される式VIIの化合物から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、方法はファシンを阻害する。本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、ファシンを阻害することによって樹状突起スパイン形成を促進する。
【0119】
ファシンは、他のアクチン結合タンパク質とアミノ酸配列の相同性を持たない重要なアクチン架橋剤である。脊椎動物には3つの形態のファシンが見出され、ファシン1は、神経系やその他の場所において、ファシン2は、網膜視細胞において、ファシン3は、精巣にのみおいてのみ見出される。いくつかの実施形態では、ファシンはヒトファシン1である。ファシンは、分子量55kDaであり、単量体として機能し、アクチンフィラメントを真っ直ぐでコンパクトで硬い束に架橋して、アクチン束に機械的剛性を与える。ファシンは、平行なアクチンフィラメントを一緒に保持して、直径60~200nm程度の糸状仮足を形成すると考えられている。アクチン結合部位とともに、ファシンの構造を
図1に示す。
【0120】
ニューロンの発達中、f-アクチンの長い束がニューロンの膜を押し出し、軸索、樹状突起、糸状仮足、および葉状仮足などの構造を形成すると考えられている。ファシンは、発生期の樹状突起の突出における細胞骨格の再編成に関与していると考えられている。したがって、ファシンによるアクチンの束化は、軸索および樹状突起の形成および伸長に必要であると一般に考えられている。驚くべきことに、本結果は、アクチン束の形成におけるファシンの活性を阻害することが、樹状突起スパイン、樹状突起の細胞質膜の突起の形成を促進することを示す。
【0121】
ファシンは、少なくとも3つの結合部位、結合部位1、結合部位2、および結合部位3を有すると考えられている。したがって、
図1を参照すると、ファシンは、アクチンが結合し得る3つの部位を有するように見受けられる。結合部位2は、おそらくリガンド結合時のタンパク質構造の動きのために、ファシンの初期のアポ(リガンドなし)結晶構造では見られなかった。国際特許公開第WO2017/120198号に開示されている化合物は、結合部位1でファシンに結合すると考えられている。
【0122】
化合物1が結合すると、アクチン結合部位2が開き、アクチン結合部位1が閉じ、少なくとも部分的にアクチンフィラメントの束化を妨げることが観察されている。
図5に示すように、化合物1は、結合部位2でファシンに結合することがわかっている。さらに、化合物1は、対照と比較してスパイン密度を増加させ得ることが発見された。
図6。特に、化合物1は、比較化合物1および7よりもスパイン密度を増加させることが見出された。
図6。したがって、少なくとも結合部位2で結合することによりファシンを阻害することによって、樹状突起スパイン密度を増加させるための新しい分子経路が期待される。
【0123】
いくつかの実施形態では、ファシン結合部位1は、少なくとも部分的に、V10、Q11、L40、K41、A137、H139、Q141、Q258、S259、R383、R389、E391、G393、F394、S409、Y458、K460、E492、および/またはY493によって定義される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、V10、Q11、L40、K41、A137、H139、Q141、Q258、S259、R383、R389、E391、G393、F394、S409、Y458、K460、E492、および/またはY493から選択されるファシン残基のいずれにも結合しない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、ファシン結合部位1および結合部位2に結合しない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、ファシン結合部位1および結合部位3に結合しない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、ファシン結合部位1、結合部位2、および結合部位3に結合しない。
【0124】
ファシン結合部位2は、少なくとも部分的に、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、および/またはS218によって定義されると考えられている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、およびS218から選択される少なくとも1つのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、およびS218から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、F14およびL16から選択される少なくとも1つのグループIのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、L48、Q50、およびL62から選択される少なくとも1つのグループIIのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、W101およびL103から選択される少なくとも1つのグループIIIのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、E215およびS218から選択される少なくとも1つのグループIVのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、ファシン結合部位2は、少なくとも部分的に、F14、L16、L48、A58、V60、L62、I93、A95、W101、L103、V134、T213、L214、E215、F216、および/またはR217によって定義される。
【0125】
いくつかの実施形態では、ファシン結合部位3は、少なくとも部分的に、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、および/またはK379によって定義される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、およびK379から選択される少なくとも1つのファシン残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、およびK379から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのファシン残基に結合する。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物などの薬剤の結合部位は、部位特異的変異導入によって決定することができる。例えば、変異型ファシンのアミノ酸残基は、野生型ファシンと比較して変化し得る。例えば、薬剤の結合親和性の低下が、野生型ファシンと、結合部位1、結合部位2、または結合部位3のアミノ酸残基が非天然残基(例えば、アラニン残基)で置き換えられている変異型ファシンとの間で測定される場合、その低下は、置換部位での結合親和性の喪失に起因する可能性がある。部位特異的変異導入は、既知の方法、例えば、クンケル法、カセット変異導入、PCR部位特異的変異導入、またはCRISPRによって実施することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤は、等温滴定熱量測定で測定する場合、少なくとも約1μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、または少なくとも約500μMのKdでファシンに結合する。
【0128】
本明細書に開示される様々な小分子化合物は、ファシンの結合部位2またはファシン結合部位3に結合することができる。また、それらの変異体および追加の化合物を、当技術分野で公知の方法で同定することができる。例えば、抗体に対するエピトープとして機能するファシン結合部位2または3内にあるアミノ酸残基に結合する抗体を同定することができる。
【0129】
抗体を作製する方法は、当技術分野で周知であり、本明細書に記載されている。例えば、タンパク質上の特定のエピトープに対する抗体は、タンパク質またはエピトープ断片を動物に投与することによって調製することができる。抗体のヒト化、霊長類化、脱免疫化、またはキメラ抗体を作製することができる。これらのタイプの抗体は、親抗体の抗原結合特性を保持または実質的に保持するが、ヒトでは免疫原性が低い非ヒト抗体(典型的には、マウスまたは霊長類の抗体)に由来する。
【0130】
本開示の抗原結合ポリペプチドの結合特異性は、インビトロアッセイ、例えば、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定することができる。
【0131】
ヒト化抗体は、非ヒト種の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を有する所望の抗原、およびヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク領域に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置にとって特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法を含む、当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して産生することもできる。
【0132】
ニューロン疾患および状態、ならびにそれらの治療
認知要素に関連する神経変性状態の統一的な特徴は、アミノ酸グルタミン酸を神経伝達物質として利用するシナプス(「グルタミン酸作動性」シナプス)の喪失であり、これはヒトおよび他の哺乳動物において最も種類の多いシナプスであると考えられている。重要なことに、グルタミン酸作動性シナプスの約90%は、シナプス後樹状突起スパインに関係している。神経変性状態で失われるシナプスの大部分は、軸索が樹状突起スパインと接触するシナプス、いわゆる「軸索-スパイン間シナプス」である。通常の条件下では、樹状突起スパインの密度、形状、およびタンパク質組成の変化は、シナプスコミュニケーションの強度に影響を与え、学習および記憶、認知の柔軟性、損傷および疾患への適応、ならびに他のプロセスに関与するシナプスの変化(すなわち「可塑性」)のいくつかの形態の基礎となる。軸索-スパイン間シナプスにおけるこれらの変化は、海馬などの構造の記憶符号化機能にとって重要であると考えられている。したがって、海馬および他の領域における樹状突起スパインの早期かつ進行性の喪失は、アルツハイマー病および他の認知症における記憶喪失および認知機能低下の原動力であると考えられている。スパイン密度を再生するための新しい方法の開発は、神経変性および発達性認知障害のホストの治療に重要な意味を持つ可能性がある。
【0133】
樹状突起スパインは、シナプス入力の受信に関与する特殊な突起であり、ニューロン間のコミュニケーションにおいて重要な機能を提供する。樹状突起スパインの形態とその全体的な密度は、シナプス機能と相関しており、記憶および学習に強く関与している。脳細胞の細胞変化は、ニューロン疾患の病因に寄与する可能性がある。例えば、脳内の樹状突起スパイン密度の異常なレベル(例えば、減少)は、ニューロン疾患の病因に寄与する可能性がある。その結果、樹状突起スパインの変化または誤調節は、シナプス機能に影響を及ぼし、自閉症、脆弱X症候群、パーキンソン病(PD)、およびアルツハイマー病(AD)などの様々な神経および精神障害で主要な役割を果たすと考えられている。例えば、ADでは、ニューロンの喪失に先立って、アミロイド-β(Aβ)タンパク質によって引き起こされる海馬シナプス機能の変化から損失が始まることを示唆する証拠が増加している。したがって、後期の疾患介入ではなく、初期のシナプス喪失を標的とする治療戦略は、ADの治療により良い予後を提供する可能性がある。さらに、ほとんどの認知障害は樹状突起スパインの形態および機能に異常を誘発するため、これらのスパイン変化を変化または軽減するために、小分子を使用してそれらを直接標的にすることが望ましい。例えば、脆弱X症候群は、未熟なスパインが過剰に存在することを特徴とする。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤、例えば、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、気分障害の治療に有用である。気分障害は、主に精神障害であり、患者の一般的な感情状態もしくは気分が歪んでいるか、または状況と矛盾しており、患者が日常生活を送る能力を妨げる。対象は、悲しみ、空虚、またはイライラを感じるか、または過度の幸福感(躁)と交互に起こる否定的な感情の期間を持つ可能性がある。
【0135】
いくつかの実施形態では、気分障害はうつ病であり得る。大うつ病性障害または臨床的うつ病と呼ばれることもあるうつ病は、一般的であるが、深刻な気分障害である。うつ病に苦しむ人々は、悲しみおよび絶望感が持続し、かつて楽しんだ活動への興味を失う可能性がある。うつ病によって引き起こされる感情的な問題の他に、個体は慢性的な痛みまたは消化器系の問題などの身体的症状を呈することもある。うつ病と診断されるためには、一般的に少なくとも2週間にわたり、症状が存在する必要がある。うつ病は、例えば、精神障害の診断および統計マニュアル(「DSM」)のガイドラインに従って、当業者によって診断され得る。DSMは、うつ病の診断を行うために、次の基準の概要を示している。現在、DSM-5の診断基準によると、うつ病の診断では、個体は同一の2週間に5つ以上の症状を経験している必要があり、症状の少なくとも1つは、(1)落ち込んだ気分、または(2)興味や喜びの喪失のいずれかである。DSMで特定される症状は次のとおりである。
1.ほぼ毎日、1日のほとんどの時間、落ち込んだ気分。
2.ほぼ毎日、1日のほとんどの時間、すべてまたはほとんどすべての活動に対する興味または喜びが著しく減少。
3.ダイエットをしていないときの大幅な体重減少もしくは大幅な体重増加、またはほぼ毎日、食欲の減退もしくは増加。
4.思考の減速および身体の動きの減少(単に主観的な情動不安または減速だけでなく、他人が観察可能)。
5.ほぼ毎日、倦怠感またはエネルギーの喪失。
6.ほぼ毎日、無価値感、または過度もしくは不適切な罪悪感。
7.ほぼ毎日、思考力もしくは集中力の低下、または優柔不断。
8.死についての繰り返しの考え、具体的な計画のない繰り返しの自殺念慮、または自殺未遂もしくは自殺のための具体的な計画。
【0136】
うつ病の診断を受けるには、これらの症状が、社会的、職業的、またはその他の重要な機能領域において、臨床的に重大な苦痛または機能障害を個体に引き起こす必要がある。DSMは、診断されたうつ病の特定用語も提供する。(1)混合性の特徴-この特定用語は、躁病エピソードの全ての基準は満たさない患者のうつ病診断の一部として躁症状の存在を可能にする。(2)不安性の苦痛-患者の不安の存在は、予後、治療の選択肢、およびそれらに対する患者の反応に影響を与える可能性がある。
【0137】
うつ病には多くの原因がある。うつ病の要因には、身体的虐待、心理的虐待、心的外傷事象、個人的な葛藤、愛する人との関係の喪失、社会的孤立、病気、物質乱用、または特定の医薬の使用などのストレッサーが含まれる。対象は、うつ病の遺伝的素因を有する可能性がある。対象は、外傷性脳損傷(TBI)または慢性外傷性脳症(CTE)など、脳に影響を与える身体的外傷を患っている可能性がある。場合によっては、うつ病は特発性である。うつ病のクラスには、大うつ病性障害-極度の悲しみの長期的かつ持続する期間、双極性障害-躁うつ病または双極性感情障害とも呼ばれ、うつと躁の交互の時間を含むうつ病、季節性感情障害(SAD)-晩秋から早春にかけて、極北および南の緯度で昼間の時間が少なくなることに最も多く関連するうつ病の形態、気分循環性障害-双極性障害ほど極端ではない感情的な浮き沈みを引き起こす障害、月経前不快気分障害-女性の周期の月経前段階で発生し、月経の開始とともに消える気分の変化および易怒性、持続性抑うつ障害(気分変調症)-長期(慢性)であるが軽度のうつ病、重篤気分調節症-子供の発達年齢と一致しない頻繁なかんしゃく発作を含むことが多い、子供の慢性的で重度の持続的な易怒性の障害、医学的病気に関連するうつ病-持続的な落ち込んだ気分および別の病状の身体的影響に直接関連するほとんどまたはすべての活動における喜びの大幅な喪失、および物質使用または医薬によって誘発されるうつ病-物質の使用中もしくは直後、または医薬からの離脱もしくは曝露後に発症するうつ病の症状が含まれる。
【0138】
いくつかの実施形態では、治療を必要とする患者において、気分障害を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量の本明細書に記載の化合物を患者に投与する方法ことを含む。いくつかの実施形態では、気分障害はうつ病である。いくつかの実施形態では、患者は、抗うつ薬による治療に抵抗性であり得る。抗うつ薬は、本明細書に記載の抗うつ薬であり得る。
【0139】
さらなる実施形態では、気分障害の症状を緩和、軽減、または反転させるための組成物および方法を提供する。症状は、本明細書に記載の任意の症状、または例えば、DSMに記載されているように開業医に公知の任意の症状であり得る。
【0140】
うつ病の症状には、不安、日常活動への興味の喪失、悲観論、持続的な否定感、悲しみ、空虚感または落ち込み、無価値感、無力感、絶望感、倦怠感、疲労感またはエネルギー不足、低い自尊感情、自己批判および/または無能感、集中力の低下、詳細の記憶の困難、および/または意思決定の困難、持続的な易怒性、敵意および/または過度の怒り、活動、有効性および/または生産性の低下、社会的活動の回避、過去に対する罪悪感および/または心配、食欲不振または過食、自殺念慮、性欲の低下および/またはセックスへの興味の喪失、睡眠障害、不眠症、早朝の覚醒、または過眠、情動不安、楽しい活動への興味の喪失、過食または食欲不振、原因不明の鈍痛、原因不明の激痛、原因不明の頭痛、持続的なけいれん、持続的な消化器系の問題、自殺念慮、ならびに自殺行為が含まれ得る。
【0141】
本明細書では、スパイン形成を促進するために有用な方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、または本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは実施形態を含む本明細書に記載の化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することを含む。スパイン形成は、ニューロンあたりの平均スパイン数の増加、またはニューロンの単位長さの増加として観察される場合があり、これは樹状突起スパイン密度の増加と呼ばれる場合がある。スパイン形成は、樹状突起スパインの形態の改善として観察される場合がある。例えば、樹状突起スパインの形態の改善は、スパインヘッドの平均サイズの増加として観察される場合がある。スパイン形成は、樹状突起スパインのサイズ、スパインの可塑性、スパインの運動性、スパイン密度、および/またはシナプス機能の改善として観察される場合がある。スパイン形成は、膜電位の局所的な空間平均の増加として観察される場合がある。スパイン形成は、Ca2+のシナプス後濃度(例えば、体積平均)の増加として観察される場合がある。スパイン形成は、成熟したスパインと未熟なスパインの平均比率の増加として観察される場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、対照と比較して樹状突起スパイン密度を増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、治療の開始時に観察されたものと比較して樹状突起スパイン密度を増加させる。いくつかの実施形態では、樹状突起スパイン密度の増加は、対象または患者におけるニューロン疾患または障害の症状の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、樹状突起スパイン密度の増加は、解剖学的観察によって説明される。いくつかの実施形態では、樹状突起スパイン密度の増加は、一次海馬ニューロンで観察される。
【0142】
いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩で治療を開始した時と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%、500%、750%、もしくは1000%、または任意の2つの数値の間の任意の範囲(端点を含む)で、平均樹状突起スパイン密度を増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩で治療を開始した時と比較して、平均樹状突起スパイン密度を約50%~約500%増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩で治療を開始した時と比較して、平均樹状突起スパイン密度を約100%~約300%増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩で治療を開始した時と比較して、平均樹状突起スパイン密度を約200%~約300%増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩を用いた治療の期間は、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、3日、5日、7日、14日、28日、90日、180日、または365日である。
【0143】
いくつかの実施形態では、方法は、新しいスパインの形成を促進することによってスパイン密度を増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのスパイン密度)と比較して、平均スパイン密度を少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%、500%、750%、もしくは1000%、または任意の2つの数値の間の任意の範囲(端点を含む)で増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのスパイン密度)と比較して、平均スパイン密度を約50%~約500%増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのスパイン密度)と比較して、スパイン密度を約100%~約300%増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのスパイン密度)と比較して、スパイン密度を約200%~約300%増加させる。
【0144】
いくつかの実施形態では、方法は、ニューロン長を増加させることによってスパイン密度を増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩で治療を開始した時と比較して、約100nm、300nm、500nm、700nm、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、7ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、または任意の2つの数値の間の任意の範囲(端点を含む)で平均ニューロン長を増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのニューロン長)と比較して、平均ニューロン長を約500nm~約25ミクロン増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのニューロン長)と比較して、ニューロン長を約10%~約300%増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対照(例えば、化合物の非存在下でのニューロン長)と比較して、ニューロン長を約200%~約300%増加させる。
【0145】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩で治療を開始した時と比較して、ニューロンあたりの平均スパイン数を増加させる。いくつかの実施形態では、ニューロンの単位長さあたりの平均スパイン数は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは約1000以上、または任意の2つの数値の間の任意の範囲(端点を含む)で増加する。いくつかの実施形態では、時間は、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、3日、5日、7日、14日、28日、90日、180日、または365日である。
【0146】
いくつかの実施形態では、化合物は、ニューロン疾患および障害の治療に有用である。ニューロン疾患は、対象の神経系の機能が損なわれる病気または状態である。ニューロン疾患または障害は、神経疾患または障害であり得る。ニューロン疾患または障害は、神経変性疾患または障害に関連している可能性がある。
【0147】
一態様では、治療を必要とする患者において、ニューロン疾患を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量の、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はアルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はパーキンソン型認知症である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は自閉症である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は脆弱X症候群である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、アミロイド斑の蓄積に関連する(例えば、それによって特徴付けられる)。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は外傷性脳損傷である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患を有する患者は、ニューロン疾患の発症前、発症中、または発症後に外傷性脳損傷を患っている。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はニューロンの機能障害を含む。ニューロンの機能障害は、ニューロンの有効な機能の萎縮またはその他の低下を含み得る。例えば、アルツハイマー病では、特に海馬ニューロンおよび海馬に近接するニューロンなどの皮質ニューロンにおいて、ニューロンの機能障害を呈することが知られている。シナプスの喪失は、樹状突起スパインの喪失および神経変性と相関している可能性がある。
【0148】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は、異常な樹状突起スパインの形態、スパインのサイズ、スパインの可塑性、スパインの運動性、スパイン密度、および/または異常なシナプス機能に関連する。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は、樹状突起スパイン密度の異常な(例えば、低下した)レベルに関連する。
【0149】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はアルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は、認知症を伴うパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は自閉症である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は脳卒中である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は外傷性脳障害(TBD)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は慢性外傷性脳症(CTE)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は統合失調症である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は認知症(例えば、一般的な認知症)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は注意欠陥/多動性障害(ADHD)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、FTLD-タウ、FTLD-TDP、またはFTLD-FUS)である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は記憶喪失である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は記憶喪失を含む。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は加齢に伴う記憶喪失である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は、加齢に伴う記憶喪失を含む。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は高血圧性脳症である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は慢性ストレスである。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は慢性ストレスを含む。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はFTLD-TDPタイプAである。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はFTLD-TDPタイプBである。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はFTLD-TDPタイプCである。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はFTLD-TDPタイプDである。
【0150】
本明細書に記載の化合物または方法で治療され得るニューロン疾患の例としては、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、うつ病、周産期仮死、パーキンソン病認知症(「PD認知症」)、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(スピールマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病としても知られている)、海綿状脳症(例えば、牛海綿状脳症(狂牛病)、クールー、クロイツフェルト-ヤコブ病、致死性家族性不眠症、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、脆弱X症候群、前頭側頭型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、マチャド・ジョセフ病(脊髄小脳変性症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、統合失調症、脊髄小脳失調症(様々な特徴を持つ複数のタイプ)、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄ろう、薬剤性パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、特発性パーキンソン病、常染色体優性遺伝性パーキンソン病、家族性、1型(PARK1)、パーキンソン病3、常染色体優性レビー小体(PARK3)、パーキンソン病4、常染色体優性レビー小体(PARK4)、パーキンソン病5(PARK5)、パーキンソン病6、常染色体劣性早発性(PARK6)、パーキンソン病2、常染色体劣性若年性(PARK2)、パーキンソン病7、常染色体劣性早発性(PARK7)、パーキンソン病8(PARK8)、パーキンソン病9(PARK9)、パーキンソン病10(PARK10)、パーキンソン病11(PARK11)、パーキンソン病12(PARK12)、パーキンソン病13(PARK13)、またはミトコンドリアパーキンソン病が挙げられる。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン型認知症、自閉症、脳卒中、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、外傷性脳障害(TBD)、慢性外傷性脳症(CTE)、統合失調症、認知症(例えば、一般的な認知症)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、FTLD-タウ、FTLD-TDP、またはFTLD-FUS)、記憶喪失(例えば、加齢に伴う記憶喪失)、高血圧性脳症、または慢性ストレスが含まれる。
【0151】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患はアルツハイマー病(AD)である。アルツハイマー病は、病気の初期段階での記憶喪失の症状を特徴とする。Apoε4キャリアは、ADを発症するリスクが高くなる。APOε4は、Aεの除去において他のアイソフォームよりも効率が低いと考えられており、したがって、アミロイド負荷の増加、タウのリン酸化、シナプス毒性、およびシナプス密度の低下と相関している可能性がある。外傷性脳損傷(TBI)を経験することは、ADを発症する別の危険因子であり、研究によると、TBIを経験した人はADのリスクが大幅に増加する。認知機能の低下は、進行性のシナプス喪失と相関している。病気が進行するにつれて、症状には、混乱、長期記憶の喪失、錯語、語彙の喪失、攻撃性、易怒性、および/または気分のむらが含まれる。病気のより進行した段階では、身体機能の喪失がある。アルツハイマー病(AD)の患者は、酸化ストレスの増加、ミトコンドリア機能障害、シナプス機能障害、カルシウム恒常性の破壊、老人斑および神経原線維変化の沈着、ならびに脳の萎縮など、多くの特徴的な神経障害を呈する。理論に縛られることは望まないが、これらの神経障害の原因と結果の両方は、脳内の凝集したアミロイドベータ(Αβ)ペプチドの有害な形態の蓄積であると考えられている。AD関連障害には、AD型の老年期認知症(SDAT)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、軽度の認知機能障害(MCI)、加齢性記憶障害(AAMI)が含まれる。いくつかの実施形態では、アルツハイマー病を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、または本明細書に記載の化合物(化合物1など)を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者は、Apoε2またはApoε3キャリアである。いくつかの実施形態では、患者はTBIを患っている。いくつかの実施形態では、患者はApoε4キャリアである。いくつかの実施形態では、患者は、TBIを患ったApoε4キャリアである。
【0152】
いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は脆弱X症候群(FXS)である。当技術分野で公知なように、FXSは、様々な障害(例えば、自閉症および遺伝性知的障害)に関連している遺伝的症候群である。身体障害は、軽度から重度までの範囲で現れ得る。FXSを患う男性は、通常40歳以降から、作業記憶を必要とするタスクを実行する際に、徐々に深刻な問題を発症し始めることが観察されている。これは、特に言語性作業記憶に関して観察される。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患は自閉症である。当技術分野で公知なように、自閉症は神経発達の障害である。理論に縛られることは望まないが、自閉症は、神経およびシナプスがどのように接続して組織化するかが変わることによって、脳内の情報処理に影響を与えると考えられている。
【0153】
さらなる実施形態では、ニューロン疾患または障害の症状を緩和、軽減、または反転させるための組成物および方法を提供する。症状は、本明細書に記載の任意の症状であり得る。
【0154】
「記憶」などの用語は、通常の慣習的な意味において、情報が対象によって符号化され、貯蔵され、検索されるプロセスを指す。記憶の文脈における「符号化する」、「登録する」などの用語は、通常の慣習的な意味において、化学的または物理的刺激として感覚に影響を与える情報を受信し、処理し、組み合わせることを指す。この文脈における「貯蔵された」などの用語は、通常の慣習的な意味において、符号化された情報の記録の作成を指す。この文脈における「検索する」、「再生する」などの用語は、通常の慣習的な意味において、貯蔵された情報を呼び戻すことを指す。当技術分野で公知なように、検索は手がかりに応答することができる。いくつかの実施形態では、記憶喪失は、情報を符号化、保存、または検索する能力の低下を指す。いくつかの実施形態では、記憶は、再認記憶または再生記憶であり得る。この文脈において、「再認記憶」は、以前に遭遇した刺激の回想を指す。刺激は、当技術分野で公知なように、例えば、単語、シーン、音、匂いなどであり得る。より広いクラスの記憶は「再生記憶」であり、これは、対象が以前に遭遇した一連の行動、単語または数字のリストなど、以前に学習した情報の検索を伴う。対象によって行われた記憶の符号化、貯蔵、および検索のレベルを評価するための方法は、本明細書に開示される方法を含めて、当技術分野で周知である。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、ニューロン疾患を患う対象において、記憶の改善を必要とする対象の記憶を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、対象の記憶を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、対象のニューロンまたは認知機能障害を治療する。いくつかの実施形態では、方法は、対象のニューロン機能障害を治療する。いくつかの実施形態では、方法は、対象の認知機能障害を治療する。
【0155】
本明細書に開示される任意の態様に加えて、いくつかの実施形態では、対象は脳損傷を患っている。脳損傷の種類には、脳のダメージ(すなわち、脳細胞の破壊または変性)、外傷性脳損傷(すなわち、脳に対する外力の結果として生じるダメージ)、脳卒中(すなわち、一時的または恒久的に脳にダメージを与える血管障害、例えば無酸素症)、および後天性脳損傷(すなわち、出生時には存在しない脳のダメージ)が含まれる。いくつかの実施形態では、方法は、対象の記憶を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、対象における学習を改善する。いくつかの実施形態では、方法は、対象のニューロンまたは認知機能障害を治療する。いくつかの実施形態では、方法は、対象のニューロン機能障害を治療する。いくつかの実施形態では、方法は、対象の認知機能障害を治療する。
【0156】
いくつかの実施形態では、スパイン形成の促進を必要とする患者において、スパイン形成を促進するための方法であって、ファシンを阻害する化合物を該患者に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、該方法は、治療有効量の、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害の治療に使用するための化合物を提供し、該化合物は、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害の治療のための医薬の製造に使用するための化合物を提供し、該化合物は、本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン型認知症、自閉症、脆弱X症候群、および外傷性脳損傷から選択される。いくつかの実施形態では、ニューロン疾患または障害は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、f-アクチンの架橋を阻害する。いくつかの実施形態では、少なくとも結合部位2もしくは結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩は、抗転移性である。
【0157】
併用療法
一実施形態では、本明細書に開示される化合物を、ニューロン疾患もしくは障害を治療するために使用および/または開発されている1種または複数の追加の治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0158】
上記の疾患および障害の治療または予防に使用される場合、少なくとも結合部位2または結合部位3でファシンに結合する薬剤、あるいは本明細書で提供される式I、式II、式IV、式V、式VII、式VIII、式IX、式X、もしくは式XIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、あるいは化合物1、化合物8、化合物9、化合物10、もしくは化合物11、またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の追加の治療薬、例えば、特定の疾患または障害の治療または予防での使用が承認された追加の治療薬、より具体的には、現在の標準的なケアをなすと考えられる薬剤と一緒に投与することができる。併用療法が想定される場合、活性剤は、1種または複数の医薬組成物で、同時に、別々に、または連続して投与することができる。
【0159】
したがって、ADの治療のための最近の戦略には、Αβペプチドの特定のアイソフォームの産生または凝集状態を制御することが含まれる。追加の戦略には、有毒な形態のリン酸化タウの予防、低減、または除去が含まれる。他の戦略には、脳内のAβペプチドの存在量を低下させるために、アミロイド前駆体タンパク質のプロセシングを通じてAβペプチドの産生に役割を果たす酵素の小分子ターゲティングが含まれる。さらに、タウオパチーもしくはアポリポタンパク質E遺伝子における特定の突然変異の散発的な遺伝など、非アミロイド神経障害の役割に関する情報が蓄積されており、これは神経変性と戦うための追加の戦略を奨励している。
【0160】
1種または複数の追加の治療薬は、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、レボドパ、カルビドパ、リスリド、ラサギリン、トルカポン、エンタカポン、クロザピン、デシプラミン、シタロプラム、ノルトリプチリン、パロキセチン、アトモキセチン、ベンラファキシン、アマンタジン、ドネペジル、リバスチグミン、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、アポモルヒネ、ベンセラジド、セレギリン、オミガピル、CEP-1347、イスラジピン、DOPA、リチウム、リルゾール、レベチラセタム、エゾガビン、プレガバリン、ルフィナミド、フェルバメート、カルバマゼピン、バルプロ酸、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、フェニトイン、オクスカルバゼピン、エトスクシミド、ガバペンチン、チアガビン、トピラマート、ビガバトリン、フェノバルビタール、ピリミドン、クロナゼパム、インターフェロンベータ-la、インターフェロンベータ-lb、ミトキサントロン、ナタリズマブ、フィンゴリモド、ナタリズマブ、テリフルノミド、フマル酸ジメチル、グラチラマー、ATOH1遺伝子治療、オザネズマブ、アリモクロモル、チラセムチブ、デクスプラミペキソール、プリドピジン、もしくはガランタミン、またはUS2018/0147263に記載されているホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)であり得る。いくつかの実施形態では、1種または複数の追加の治療薬は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)、例えば、アコチアミド、アルファピネン、アンベノニウム、デメカリウム、DFP(ジイソプロピルフルオロリン酸)、ドネペジル、エドロホニウム、ガランタミン、フペルジンA、ラクチュコピクリン、ラドスチギル、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、ジフロス、エコーチオパート、リバスチグミン、ロスマリン酸、タクリン、ウンゲレミン、ザナペジル、ガンスチグミン、フェンセリン、フェネチルノルシムセリン(PENC)、シムセリン、チアシムセリン、SPH1371(ガランタミン プラス)、ER127528、RS1259、またはF3796であり得る。いくつかの実施形態では、1種または複数の追加の治療薬は、アミロイド除去抗体、例えば、バピネオズマブ、ソラネズマブ、ガンテネルマブ、クレネズマブ、ポネズマブ、BAN2401、またはアデュカヌマブであり得る。
【0161】
1種または複数の追加の治療薬は、抱水クロラール、エスタゾラム、フルラゼパム塩酸塩、ペントバルビタール、ペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタールナトリウム、セコバルビタールナトリウム、テマゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、またはゾルピデム酒石酸塩などの催眠鎮静薬、アセトアゾラミドナトリウム、カルバマゼピン、クロナゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、ジアゼパム、ジバルプロエクスナトリウム、エトスクシミド、ホスフェニトインナトリウム、ガバペンチン、ラモトリギン、硫酸マグネシウム、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、ピリミドン、チアガビン塩酸塩、トピラマート、バルプロ酸ナトリウム、またはバルプロ酸などの抗けいれん薬、アミトリプチリン塩酸塩、パモ酸アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン塩酸塩、シタロプラム臭化水素酸塩、クロミプラミン塩酸塩、デシプラミン塩酸塩、ドキセピン塩酸塩、フルオキセチン塩酸塩、イミプラミン塩酸塩、パモ酸イミプラミン、ミルタザピン、ネファゾドン塩酸塩、ノルトリプチリン塩酸塩、パロキセチン塩酸塩、硫酸フェネルジン、セルトラリン塩酸塩、硫酸トラニルシプロミン、トリミプラミンマレイン酸塩、またはベンラファキシン塩酸塩などの抗うつ薬、アルプラゾラム、ブスピロン塩酸塩、クロルジアゼポキシド、クロルジアゼポキシド塩酸塩、クロラゼプ酸二カリウム、ジアゼパム、ドキセピン塩酸塩、ヒドロキシジンエンボン酸塩、ヒドロキシジン塩酸塩、ヒドロキシジンパモ酸塩、ロラゼパム、メプロバメート、ミダゾラム塩酸塩、またはオキサゼパムなどの抗不安薬、クロルプロマジン塩酸塩、クロザピン、フルフェナジンデカン酸エステル、フルフェナジンエナント酸エステル、フルフェナジン塩酸塩、ハロペリドール、ハロペリドールデカン酸エステル、乳酸ハロペリドール、ロキサピン塩酸塩、コハク酸ロキサピン、メソリダジンベシレート、モリンドン塩酸塩、オランザピン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、クエチアピンフマル酸塩、リスペリドン、チオリダジン塩酸塩、チオチキセン、チオチキセン塩酸塩、またはトリフロペラジン塩酸塩などの抗精神病薬、硫酸アンフェタミン、カフェイン、硫酸デキストロアンフェタミン、ドキサプラム塩酸塩、メタンフェタミン塩酸塩、メチルフェニデート塩酸塩、モダフィニル、ペモリン、またはフェンテルミン塩酸塩などの中枢神経系刺激薬、アマンタジン塩酸塩、メシル酸ベンツトロピン、ビペリデン塩酸塩、乳酸ビペリデン、ブロモクリプチンメシル酸塩、カルビドパ-レボドパ、エンタカポン、レボドパ、ペルゴリドメシル酸塩、プラミペキソール二塩酸塩、ロピニロール塩酸塩、セレギリン塩酸塩、トルカポン、またはトリヘキシフェニジル塩酸塩などの抗パーキンソン病薬、ブプロピオン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、ドロペリドール、フルボキサミンマレイン酸塩、炭酸リチウム、クエン酸リチウム、ナラトリプタン塩酸塩、ニコチンポラクリレックス、ニコチン経皮システム、プロポフォール、リザトリプタン安息香酸塩、シブトラミン塩酸塩一水和物、スマトリプタンコハク酸塩、タクリン塩酸塩、またはゾルミトリプタンなどの中枢神経系薬、ベタネコール塩化物、エドロホニウム塩化物、ネオスチグミン臭化物、ネオスチグミンメチル硫酸塩、サリチル酸フィゾスチグミン、またはピリドスチグミン臭化物などのコリン作動薬(例えば、副交感神経刺激薬)、アストロピン硫酸塩、ジサイクロミン塩酸塩、グリコピロラート、ヒヨスチアミン、硫酸ヒヨスチアミン、プロパンテリン臭化物、スコポラミン、ブチルスコポラミン臭化物、またはスコポラミン臭化水素酸塩などの抗コリン薬、ドブタミン塩酸塩、ドパミン塩酸塩、酒石酸水素メタラミノール、酒石酸水素ノルエピネフリン、フェニレフリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、または硫酸プソイドエフェドリンなどのアドレナリン作動薬(交感神経刺激薬)、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エルゴタミン酒石酸塩、マレイン酸メチセルジド、またはプロプラノロール塩酸塩などのアドレナリン遮断薬(交感神経遮断薬)、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン塩酸塩、ダントロレンナトリウム、メトカルバモール、またはチザニジン塩酸塩などの骨格筋弛緩薬、ベシル酸アトラクリウム、ベシル酸シサトラクリウム、塩化ドキサクリウム、塩化ミバクリウム、パンクロニウム臭化物、ピペクロニウム臭化物、ラパクロニウムブロミド、臭化ロクロニウム、塩化サクシニルコリン、塩化ツボクラリン、またはベクロニウム臭化物などの神経筋遮断薬、あるいはベタメタゾン、ベタメタゾン酢酸エステルもしくはベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、コルチゾン酢酸エステル、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、フルドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾンシピオネート、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン酢酸エステル、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、プレドニゾロン、プレドニゾロン酢酸エステル、プレドニゾロンリン酸エステルナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、または酢酸トリアムシノロンなどの副腎皮質ステロイドであり得る。
【0162】
1種または複数の追加の治療薬は、レボミルナシプラン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、シブトラミン、ネファゾドン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ビシファジン、テソフェンシン、ブラソフェンシン、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン、ラサギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ブトリプチリン、アモキサピン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、ジベンゼピン、イプリンドール、ロフェプラミン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、シタロプラミン、ダポキセチン、エスシタロプラム、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ケタミン、エスケタミン、ブプロピオン、ミルタザピン、ビラゾドン、ボルチオキセチン、アリピプラゾール、およびセント・ジョーンズ・ワートから選択される抗うつ薬であり得る。
【0163】
キット
本明細書では、本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、場合によっては第2の有効成分、および適切な包装を含むキットも提供する。一実施形態では、キットは、使用説明書をさらに含む。一態様では、キットは、化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに本明細書に記載の疾患または状態を含む適応症の治療における医薬組成物の使用に関するラベルおよび/または使用説明書を含む。
【0164】
本明細書では、適切な容器内に本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む製造品も提供する。容器は、バイアル、ジャー、アンプル、充填済み注射器、ネブライザー、エアロゾル分注装置、スポイト、または静脈注射用のバッグであり得る。
【0165】
医薬組成物および投与の様式
本明細書で提供される化合物は、通常、医薬組成物の形態で投与される。したがって、本明細書では、一般に本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、ならびに担体、アジュバントおよび賦形剤から選択される1種または複数の薬学的に許容されるビヒクルを含み、本明細書に記載の化合物の1つまたは複数を含有する医薬組成物も提供する。好適な薬学的に許容されるビヒクルとしては、例えば、不活性固体希釈剤および充填剤、滅菌水溶液および様々な有機溶媒を含む希釈剤、透過増強剤、可溶化剤、ならびにアジュバントを挙げることができる。このような組成物は、薬学分野で周知の様式で調製される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mace Publishing Co.、Philadelphia、Pa.第17版(1985)、およびModern Pharmaceutics、Marcel Dekker,Inc.第3版(G.S.Banker&C.T.Rhodes編)を参照されたい。
【0166】
医薬組成物を、単回投与または複数回投与のいずれかで投与することができる。医薬組成物を、例えば、直腸、頬側、鼻腔内および経皮経路を含む様々な方法によって投与することができる。特定のいくつかの実施形態では、医薬組成物は、動脈内注射、静脈内に、腹腔内に(「i.p.」)、非経口的に、筋肉内に、皮下に、経口的に、局所的に、または吸入剤として投与され得る。
【0167】
投与の1つの様式は、例えば、注射による非経口である。本明細書に記載の医薬組成物を注射による投与のために組み込むことができる形態には、例えば、ゴマ油、コーン油、綿実油、または落花生油を含む、水性もしくは油性懸濁液または乳濁液、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、および同様の薬学的ビヒクルが含まれる。
【0168】
経口投与は、本明細書に記載の組成物を投与するための別の経路であり得る。投与は、例えば、カプセル剤または腸溶性コーティング錠剤を介して行うことができる。本明細書に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を作製する際に、有効成分は通常、賦形剤によって希釈され、および/またはカプセル剤、分包、紙または他の容器の形態であり得るような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として働く場合、それは、有効成分のビヒクル、担体、または媒体として機能し、固体、半固体、または液体材料の形態であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体として)、例えば、最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、ソフトおよびハードゼラチンカプセル剤、滅菌注射液、ならびに滅菌包装された散剤の形態であり得る。
【0169】
適切な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。製剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油などの滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、メチルおよびプロピルヒドロキシ安息香酸などの保存剤、甘味剤、ならびに風味剤を追加で含むことができる。
【0170】
医薬組成物およびそれが分配される任意の容器は、滅菌され得る。医薬組成物はまた、保存剤、安定剤、乳化剤もしくは懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧を変化させるための塩、粘稠剤、または緩衝剤などのアジュバントを含有し得る。
【0171】
本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩など、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物を含む組成物を、当技術分野で既知の手順を用いることにより、対象への投与後に有効成分の迅速、持続または遅延放出を提供するように製剤化することができる。経口投与用の放出制御薬物送達システムには、浸透圧ポンプシステム、およびポリマーコーティングされたリザーバーまたは薬物-ポリマーマトリックス製剤を含む溶解システムが含まれる。放出制御システムの例は、米国特許第3,845,770号、同第4,326,525号、同第4,902,514号、および同第5,616,345号に記載されている。本明細書に開示される方法で使用するための別の製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を用いる。このような経皮パッチは、本明細書に記載の化合物の連続的または不連続的な注入を、制御された量で提供するために使用され得る。薬剤の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、同第4,992,445号、および同第5,001,139号を参照されたい。このようなパッチには、薬剤の連続的、脈動的、またはオンデマンド送達用に構築されたものが含まれる。
【0172】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な有効成分を薬学的賦形剤と混合して、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の均質な混合物を含有する固体予備製剤組成物を形成することができる。これらの予備製剤組成物を均質であると呼ぶ場合、有効成分は組成物全体に均一に分散しており、組成物を錠剤、丸剤、カプセル剤などの同等に有効な単位剤形に容易に細分することができる。
【0173】
本明細書に記載の化合物の錠剤または丸剤は、長期作用の利点を与える剤形を提供するために、または胃の酸性状態から保護するために、コーティングまたは他の方法で配合することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内側の投与量および外側の投与量コンポーネントを含むことができ、後者は前者を覆うエンベロープの形態である。2つのコンポーネントは、胃での崩壊に抵抗し、内部コンポーネントを完全なままで十二指腸に通過させるか、または放出を遅らせるのに役立つ腸溶層によって区切ることができる。様々な材料をそのような腸溶層またはコーティングに使用することができ、そのような材料は、いくつかのポリマー酸およびポリマー酸とシェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料との混合物を含む。
【0174】
医薬組成物を、経鼻投与用に製剤化することができる。このような医薬組成物は、様々な物理的状態において、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩などの、1つまたは複数の有効成分を含むことができる。例えば、有効成分は、液体担体に溶解または懸濁され得る。有効成分は、乾燥形態であり得る。乾燥形態は、粉末であり得る。粉末中の有効成分は、アモルファスまたは結晶性であり得る。例えば、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩は、アモルファスまたは結晶性であり得る。結晶性活物質は、水和物または溶媒和物であり得る。
【0175】
固体化合物、またはその塩もしくは結晶は、選択された平均粒子サイズで製剤中に存在し得る。粒子は、10nm、100nm、300nm、500nm、1μm、10μm、50μm、100μm、300μm、もしくは500μm、または任意の2つの値の間の範囲にある平均粒子サイズ(最長寸法)を有する。
【0176】
投与は、吸入または吹送による可能性がある。吸入または吹送用の組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末を含み得る。液体または固体の組成物は、本明細書に記載の適切な薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、経口または鼻呼吸経路によって投与される。効果は、局所的または全身的である可能性がある。特定の実施形態では、効果は頭蓋組織に局所的である。他の実施形態では、薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接吸入され得るか、または噴霧装置は、フェイスマスクテント、または断続的な陽圧呼吸器に取り付けられ得る。溶液、懸濁液、または粉末組成物を、適切な方法で製剤を送達する装置から、好ましくは経口または経鼻的に投与することができる。吸入または吹送用の医薬組成物は、エアロゾルであり得る。
【0177】
医薬組成物には、約0.05%、約0.1%、約0.3%、約0.5%、約0.7%、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%w/wの有効成分を含む、液体懸濁液または溶液が含まれ得る。液体は、水および/またはアルコールを含み得る。液体は、pHが約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、もしくは約10、またはそれらの間の値の範囲にあるように、pH調整剤を含み得る。
【0178】
医薬組成物は、薬学的に許容される保存剤を含み得る。本明細書での使用に適した保存剤には、以下に限定されないが、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、または安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩を含む、病原性粒子による汚染から溶液を保護する保存剤が含まれる。特定のいくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.01%~約1.0%w/wの塩化ベンザルコニウム、または約0.01%~約1%v/wのフェニルエチルアルコールを含む。保存剤はまた、組成物の総重量または総体積の約0.01%~約1%、好ましくは約0.002%~約0.02%の量で存在し得る。
【0179】
医薬組成物はまた、約0.01%~約90%、または約0.01%~約50%、または約0.01%~約25%、または約0.01%~約10%、または約0.01%~約1%w/wの、1つまたは複数の乳化剤、湿潤剤または懸濁剤を含み得る。本明細書で使用するためのそのような薬剤には、ポリエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアラートを含むポリオキシエチレンソルビタン脂肪エステルまたはポリソルベートが挙げられるが、これらに限定されず、レシチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、プロパン-1,2-ジオールアルギネート、寒天、カラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、トラガカント、アカシア、キサンタンガム、カラヤゴム、ペクチン、アミド化ペクチン、ホスファチジン酸のアンモニウム塩、微結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、脂肪酸のナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酒石酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのモノアセチル酒石酸エステルおよびジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの混合酢酸および酒石酸エステル、脂肪酸のスクロースエステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ヒマシ油の重縮合脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、ステアロイル-2乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-乳酸カルシウム、酒石酸ステアロイル、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミタート、キラヤの抽出物、大豆油の二量体化脂肪酸のポリグリセロールエステル、酸化重合化大豆油、ならびにペクチン抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
さらなる実施形態では、経鼻投与のための医薬組成物は、粉末の形態で提供され得る。例えば、粉末状の経鼻用組成物は、単位剤形の粉末として直接使用することができる。必要に応じて、粉末をハード・ゼラチン・カプセルなどのカプセルに充填することができる。カプセルまたは単回投与装置の内容物を、例えば、吹送器を使用して投与することができる。
【0181】
したがって、ニューロン障害を治療するための方法は、本明細書に記載の化合物またはその塩を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に経鼻的に投与するステップを含み得る。
投与
【0182】
具体的な対象に対する本出願の有効成分(例えば、本明細書に記載の化合物またはその塩)の具体的な用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、ならびに治療を受けている対象における排出速度、薬物の組合せ、および特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存するであろう。例えば、投与量は、対象の体重1キログラムあたりに対する、本明細書に記載の化合物のミリグラム数(mg/kg)として表すことができる。約0.1~150mg/kgの間の投与量が適切な場合がある。いくつかの実施形態では、約0.1および100mg/kgが適切であり得る。他の実施形態では、0.5~60mg/kgの間の投与量が適切であり得る。対象の体重に応じて正規化することは、子供と成人の両方で薬物を使用する場合、または犬などのヒト以外の対象の有効投与量をヒト対象に適した投与量に変換する場合に起こるように、サイズが大きく異なる対象の間で投与量を調整する場合に特に有用である。
【0183】
1日投与量はまた、1回分あたり、または1日あたりに投与される、本明細書に記載の化合物の総量として記載され得る。本明細書に記載の化合物またはその塩の1日投与量は、約1mg~4,000mg、約2,000~4,000mg/日、約1~2,000mg/日、約1~1,000mg/日、約10~500mg/日、約20~500mg/日、約50~300mg/日、約75~200mg/日、または約15~150mg/日の間であり得る。
【0184】
経鼻投与される場合、ヒト対象の1日の総投与量は、1mg~1,000mg、約1,000~2,000mg/日、約10~500mg/日、約50~300mg/日、約75~200mg/日、または約100~150mg/日の間であり得る。様々な実施形態では、1日投与量は、約10mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、もしくは約1000mg、またはそれらの間の値の範囲である。
【0185】
本出願の有効成分またはその医薬組成物を、上記の任意の適切な様式を使用して、1日1回、2回、3回、または4回投与することができる。また、投与または治療は、数日間継続することができる。例えば、通常、治療は、1サイクルの治療で、少なくとも7日間、14日間、または28日間継続する。治療サイクルは周知であり、サイクルの間で約1~28日間、通常は約7日間または約14日間の休薬期間と交互に行われることがよくある。他の実施形態では、治療サイクルも連続的であり得る。投与または治療は、無期限に継続される場合がある。
【0186】
特定の実施形態では、方法は、本明細書に記載の化合物の約1~800mgを最初の1日用量として対象に投与し、臨床効果が達成されるまで用量を段階的に増加させることを含む。約5、10、25、50、または100mgの増分を使用して、用量を増やすことができる。投与量を、毎日、隔日、週に2回、または週に1回増やすことができる。
【実施例】
【0187】
実施例
実施例1
ファシン結晶構造の解析および準備
利用可能なすべてのファシン結晶構造を、PDBからダウンロードし、構造解析用に準備した。構造を、目およびMolSoftのICM-Proソフトウェアに組み込まれた標準の自動プロトコルによって解析した。水素原子を構造に追加し、AsnおよびGln側鎖の正しい配向、リガンドおよびタンパク質の電荷、ヒスチジンの配向およびプロトン化状態、ならびに高b因子または低占有率などの結晶学的品質フラグに関して考察を行った。
【0188】
MolSoftのICMPocketFinderアルゴリズムを使用して、利用可能なすべてのファシン結晶構造の潜在的なリガンド結合ポケットおよびくぼみを特定した。結晶構造3LLPの活性鎖Aでポケットを検索した。この構造は、最高の分解能(1.8Å)を有している。
図2A~
図2Dは、それぞれ、ファシンの「正面」、「底面」、「上面」、および「背面」の図を提供し、ポケットA~Dが示されている。
【0189】
小分子の結合に適した特性を有すると考えられる4つの「薬物らしい」ポケット(ポケットA~D)を同定した。
【0190】
リガンドドッキングおよびスコアリング
MolSoftのICM-Dockingソフトウェア(バージョン3.8-6a)7を使用して、比較化合物2、比較化合物3、および比較化合物4のヘッドグループおよびヘッド+テールを、
図1に示す4つのポケットのそれぞれにドッキングさせた。各ポケットへのドッキングスコアを表1に示す。ドッキングスコアが低いほど、リガンドとの相互作用が良好である。
【0191】
比較化合物2は、以下の構造を有し
【化27】
比較化合物3は、以下の構造を有し
【化28】
比較化合物4は、以下の構造を有する
【化29】
【表1】
【0192】
図1に示すように、アクチン結合部位1にあるポケットBは、最も低いドッキングスコアをもたらした。この部位を、他のファシン結晶構造でさらに調査した。このポケットは、PDB 3P53において、ペンタエチレングリコール結合部位に近接している。ヘッドグループを、PDB 3P53のポケットBにドッキングしたところ、大幅に優れたスコアが得られた。
【表2】
【0193】
次いで、ドッキングしたヘッドグループをアンカーポイントとして使用して、テールをドッキングさせた。エネルギー的に好ましい最終的なリガンドの姿勢を
図3A~
図3Cに示す。
【0194】
図3A~
図3Cは、ヒトファシン1と比較化合物2、比較化合物3、および比較化合物4をドッキングさせた複合体を示す。3つのリガンドはすべて、ベンゾチアゾール環の窒素からARG389に水素結合を形成し、最初のエチレングリコールはLYS460と水素結合を形成する。
【0195】
図4は、比較化合物2とヒトファシン1の複合体の2D相互作用の図を示す。破線の矢印は水素結合を表す。リガンド形状を囲む太線は、アクセス可能な表面を示す。残基の楕円サイズは、接触の強さを表す。残基の標識とリガンドの間の2D距離は、近接性を表す。
【0196】
実施例2
図5に示すように、化合物1に結合したファシンの結晶構造(タンパク質構造データバンク(PDB)6B0T)を構造解析用に準備した。構造を、目およびMolSoftのICM-Proソフトウェアに組み込まれた標準の自動プロトコルによって解析した。水素原子を構造に追加し、AsnおよびGln側鎖の正しい配向、リガンドおよびタンパク質の電荷、ヒスチジンの配向およびプロトン化状態、ならびに高b因子または低占有率などの結晶学的品質フラグに関して考察を行った。MolSoftのICMPocketFinderアルゴリズムを使用して、ドッキング用の結合ポケットを定義した。ファシン結合部位を、リガンドに最も近い隣接残基(3Åの距離内の残基)によって記述した。
図5を参照すると、ファシン結合部位1は、V10、Q11、L40、K41、A137、H139、Q141、Q258、S259、R383、R389、E391、G393、F394、S409、Y458、K460、E492、およびY493によって定義され、結合部位2は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、およびS218によって定義された。
リガンドドッキングおよびスコアリング
【0197】
比較化合物2、比較化合物3、および比較化合物4を各結合部位にドッキングさせて、各化合物にとって最も好ましい結合部位を決定した。比較化合物2、比較化合物3、および比較化合物4の予測されるエネルギー的に好ましい結合コンフォメーションは、上記のとおりである。
【0198】
比較化合物2、比較化合物3、および比較化合物4のヘッドグループおよびヘッド+テールを、結合部位2にドッキングさせた(表3の行を参照)。各ポケットへのドッキングスコアを表3に示す。ドッキングスコアが低いほど、リガンドとの相互作用が良好である。比較化合物2、3、および4を結合部位2にドッキングさせると、スコアが大幅に高くなり、結合があまり好ましくないことを示している。
【表3】
【0199】
結合部位1および結合部位2にドッキングさせた2つの化合物(化合物5および化合物6)は、以下の構造を有する:
【化30】
ドッキングスコアを表4に示す。結果に基づくと、化合物5および化合物6のいずれも、結合部位1および結合部位2に結合する可能性は低い。
【表4】
【0200】
実施例3
マウス皮質一次ニューロンのシナプス密度に関し、示された化合物の効果を、治療の24時間後に決定した。
図6。マウス皮質一次ニューロンを、15日目にインビトロで、1uMのファシン阻害小分子またはビヒクル(DMSO)で処置した。処置の24時間後、ニューロンを固定し、シナプスのタンパク質成分(シナプス前小胞タンパク質であるシナプトフィジン(P38))を免疫標識し、次いで、核色素DAPIで染色した。免疫標識されたニューロンを、ライカ共焦点顕微鏡で撮像した。P38免疫陽性パンクタの数を、Squashプラグインを備えたFIJIを使用して分析した。データを分析し、Graphpad Prismでプロットした(** p<0.0001、* p=0.0012、両側T検定)。
図6は、一実施形態におけるビヒクル対照と比較した、比較化合物2、比較化合物7、および化合物1のシナプス成長の結果を示す。比較化合物7は、以下の構造を有する
【化31】
【0201】
実施例4
有効性試験手順
いくつかの研究によると、APOe4を有するメスは、オスよりも記憶力が低下し、脳萎縮が大きく、脳代謝が低いことが示されているため、メスのAPOe4-TRマウスを選択した。APOe4を有するメスはまた、対立遺伝子を有するオスよりも、軽度の認知機能障害またはアルツハイマー病を発症する可能性が高い。APOe3対立遺伝子(APOe3-TR)を発現するマウスは、対照として機能する。さらに、制御下皮質衝撃(CCI)をAPOe4-TRおよびAPOe3マウスに施し、信頼性が高く、調整されたTBIイベントを引き起こした。CCIに供される麻酔したマウスは、速度5.0m/s、深さ1.0mm、滞留時間50msの衝撃を受ける。対照の動物は、衝撃を受けることなく、同じ約20~25分の手順を実行する。
【0202】
CCIがAPOe4-TRマウスの認知機能低下を悪化させることの判定。APOe4マウスの認知能力と運動能力は、樹状突起スパインシナプスに対するTBIおよびAPOe4遺伝子型の相乗効果によって悪化するという仮説がある。これを試験するために、CCI(または衝撃のない対照の手順)を8か月齢のAPOe4-TRおよびAPOe3-TRマウス(各群につき12匹のマウス)に施し、次いで10か月齢および12か月齢で行動試験を行う。行動試験は、次のように、最もストレスの少ないタスクから最もストレスの多いタスクまで(つまり、最小限のハンドリングに対し拘束を伴う嫌悪タスク)を予定する(行動の表現型は、Ethovision Xt(Noldus)を使用して実行する)。オープンフィールド試験(1日目):ビデオトラッキングを使用し、マウスがアリーナの中心および周辺で過ごす時間と頻度を不安の評価に使用することができる。周辺にいる時間の増加は不安の増加を示し、移動距離と速度は自発運動/自発的活動を示す。新しい場所とオブジェクトの認識(6~7日目):馴化の4日後(6日目)、マウスはアリーナ内の2つの同一のオブジェクトを探索し、次いで翌日(7日目)にアリーナに戻される。オブジェクトの1つは、新しいオブジェクトに置き換えられている。新しい場所にある見慣れたオブジェクト、または新しいオブジェクトを探索する時間が増えることは、記憶の改善を示す。Y迷路(8日目):Y迷路の自発的交替行動は、新しい環境を探索するげっ歯類の意欲を測定するために実施される。マウスは、以前に訪れたアームに戻るよりも、新しいアームを探索することを好む。各マウスを1つのアームの端に置き、8分間のセッション中に迷路内を自由に移動させる。交替行動は、重複する3セットの試行で、3つのアームへの連続した進入として定義される。バーンズ迷路(9~13日目):この試験では、海馬に依存する空間学習と記憶を評価する。習得中、マウスは、迷路外の視覚的手がかりを使用して、円形のテーブルに隠された脱出穴を見つけるように訓練される。マウスは、試行間に約30分間はさみ、1日2回の試行で試験される。マウスが5分以内に脱出ケージに入らない場合は、正しい脱出場所に誘導される。尾懸垂(14日目):尾懸垂試験では、マウスを地面より上に、尾を用いて吊るす。不動時間(秒)を、ストレスの尺度として使用する。文脈的恐怖条件付け(15~16日目):マウスを、電気ショックが与えられる新しいチャンバーに入れる。24時間後、マウスをチャンバーに戻し、すくみ行動の量を記録する。すくみの増加は、文脈に対する記憶の改善を示す。
【0203】
期待される結果と代替結果:シナプス喪失および認知に対する、TBIおよびAPOe4遺伝子型の影響が特徴付けられる。これらのアルツハイマー病の危険因子の組合せは、測定されたタスク、特に空間記憶のさらなる(APOe4のみを超える)機能障害につながると予想される。この組合せが、アルツハイマー病およびTBIの間に、シナプス喪失によって大きな打撃を受ける構造に依存しているためである。可能性は低いが、TBIの追加を伴う、いずれのタスクにおいて、能力の低下が見られないことがあり得る。この場合、CCIの枠組みを最適化して、よりしっかりしたシナプス喪失を誘発することを検討する。一部の機能障害は、検出可能なシナプス喪失に対応しない可能性がある。TBIを追加すると、発生している機能障害の回復を困難にすることができ、そのため、アルツハイマー病における一般的な遺伝子X-環境相互作用を治療するSPG能力の有効な試験が提供され得る。
【0204】
APOe4-TRマウスにおけるTBIによる認知機能低下を改善する化合物の決定。化合物のスパイン形成効果は、APOe4遺伝子型によって誘発されるシナプス喪失およびTBIの追加を相殺し、機能回復の改善につながる可能性がある。目的1と同様に、CCIに供した8か月齢のAPOe4-TRおよびAPOe3-TRマウスに対し、CCI手順の直後から化合物(30mg/kg/日、腹腔内)またはビヒクルを用いた処置を開始し、10か月齢および12か月齢で(目的1の記載と同様に)行動試験をしながら処置を継続する。長期間にわたるげっ歯類への毎日の投与には、腹腔内投与経路を使用する。
【0205】
期待される結果と代替結果:CCIに曝露されたAPOe4-TRマウスでは、認知機能および運動機能の両方が改善する。場合によっては、特定の脳領域におけるニューロンの生存能力に対する、APOe4状態とTBIの間の相乗作用により、1つの症状ドメインのみが回復する(例えば、空間記憶であり、運動能力ではない)。ニューロンの死が特定のレベルを超えると、シナプス密度の回復が不可能になり得る。組織学的データの評価により、CCIプロトコルを考慮して、ニューロンの喪失を較正する。
【0206】
目的3:APOe4-TRマウスの樹状突起スパイン密度およびアルツハイマー関連分子バイオマーカーに対する化合物の効果を評価する。目的2(APOe4-TR+/-CCI)において、化合物を用いて処置されたマウスが、スパイン密度の改善とコフィリンのAb開始脱リン酸化の減少を示すと仮定する。さらに、ファシンを阻害することにより、ミクログリアの遊走と活性化が減少する可能性があるため、活性化合物がミクログリアによるシナプス刈り込みを減少させると仮定する。測定される属性には、(i)シナプス密度、(ii)ホスホコフィリン、および(iii)シナプス関連の活性化ミクログリアが含まれる。さらに、ホスホタウおよびAbのレベルを評価する。
【0207】
マウスに麻酔をかけ、パラホルムアルデヒドを経心的に灌流させ、組織学的分析および樹状突起スパイン分析のために脳を収集する。海馬、嗅内皮質、およびいくつかの新皮質領域(例えば島、前頭前皮質)におけるニューロン喪失を、クレシルバイオレットおよびNeuN染色切片を用い、不偏立体学(Stereo Investigator System、MBF Biosciences)を介して評価する。脳体積、特に海馬体内の脳体積を、キャバリエ法で測定する。シナプスパンクタを、シナプトフィジン(シナプス前終末)およびPSD95(シナプス後肥厚)に対する抗体で標識し、Bitplane Imarisで計数する。シナプスに対するファシンのレベルおよび分布も同様に決定する。グリア細胞の密度および活性化状態も評価する。ミクログリアを、IBA1の免疫組織化学によって検出し、Bitplane Imarisによってミクログリア細胞体を自動的に計数する。追加の試験には、PSD95染色への近接性に基づいて、ミクログリアをシナプス関連およびシナプス外IBA+細胞に層別化することが含まれる。さらに、ミクログリアをプラーク関連および非プラーク関連のIBA1+細胞として層別化する。ミクログリアの活性化状態を、CD45およびCD68を含む一連の既知のミクログリア表面マーカーに対する抗体を使用して評価する。アストロサイトの数および活性化状態、ならびにシナプスに対する分布を、GFAP、BLPB、およびS100bに対する抗体を使用して同様に評価する。さらに、Aβおよびタウの病理を、Imarisソフトウェアおよび市販の抗体を介した3D体積Aβ/タウ負荷分析を使用して測定する。
【0208】
立体的定量化を、Microbrightfield Bioscience(MBF Bioscience、Williston、VT、USA)のStereo-Investigatorソフトウェアを使用して実行し、海馬CA3野の放射状層(SR)および網状分子層におけるスパイン数を決定する。要するに、1つおきのセクションを使用し、Microbrightfield Bioscience(MBF Bioscience、Williston、VT、USA)のStereo-Investigatorソフトウェアを使用することで、全体の立体的定量化を実行して、海馬CA3野の放射状層(SR)および網状分子層におけるスパイン数を決定する。要するに、1つおきのセクションを使用し、Microbrightfield Bioscience(MBF Bioscience、Williston、VT、USA)のStereo-Investigatorソフトウェアを使用することで、全体の立体的定量化を実行して、海馬CA3野の放射状層(SR)および網状分子層におけるスパイン数を決定する。要するに、1つおきのセクションを使用し、Microbrightfield Bioscience(MBF Bioscience、Williston、VT、USA)のStereo-Investigatorソフトウェアを使用することで、全体の立体的定量化を実行して、海馬CA3野の放射状層(SR)および網状分子層におけるスパイン数を決定した。要するに、1つおきのセクションを全体を通じて使用する。樹状突起スパイン密度および樹状突起の形態を、Neurolucidaソフトウェア(MBF Bioscience、Williston、VT、USA)を使用して立体的に測定し、海馬の放射状層(sr)と歯状回(dg)におけるスパイン数を決定する。マウスの脳を、前述のように、superGolgiキット(Bioenno Tech LLC、Santa Ana、CA)を使用して処理する。海馬のCA1放射状層および歯状回領域、ならびに嗅内皮質の第2層および島と内側前頭前皮質の第2/3層を、5xの対物レンズを使用して定義し、スパインを100x/1.4の対物レンズを使用して計数する。樹状突起スパインの長さおよびスパインの体積については、100x/1.4の対物レンズを使用してトレースし、データをNeurolucida Explorerソフトウェアを介して分析する。スパイン密度を、目的2の行動回復措置と相関させる。樹状突起の形態解析では、CA1海馬領域について、動物あたり5ニューロン(n=6)を、Neurolucidaソフトウェアを使用してトレースし、ショール分析を使用して評価する。
【0209】
期待される結果と代替結果:処置により、海馬の樹状突起スパイン密度が約20%以上増加し、APOe4遺伝子型およびAPOe4 X CCIによって生じる喪失がほぼ相殺され、ホスホコフィリンのレベルが増加する。場合によっては、処置によりシナプスのミクログリア貪食能が低下する。
【0210】
実施例5
スパイン形成試験
ファシン1の小分子阻害剤が、前頭前皮質で新しい樹状突起スパインシナプスの形成を誘導するか否かを判断するために、マウスをファシン1阻害剤である化合物1および化合物11で処置し、次に樹状突起スパイン密度および形態をゴルジ染色で分析する。具体的には、26週齢の15匹のC57BL/6Jマウスを3日間飼育条件およびハンドリング条件に順応させ、次いで、以下の3つの治療群(5匹のマウス/群)にランダムに割り当てる。(1)ビヒクル(7%DMSO、14%Tween80、H2O)対照、(2)10mg/kgの化合物1、(3)10mg/kgの化合物11。次いで、マウスにビヒクル、化合物1、または化合物11を26日間にわたり毎日、腹腔内注射する。最後の注射の2時間後、マウスを犠牲にし、浸潤固定のために脳を迅速に取り出し、その後、ゴルジ染色を行う。ゴルジ染色の完了後、前頭前皮質のセクションを冠状面で切断し、顕微鏡を使用して画像を取得するためにマウントする。樹状突起スパイン密度を、本明細書の実施例4に記載されている方法(n=X画像/切片、Y切片/マウス)によって、前頭前皮質ニューロン第II/III層上で分析する。
【0211】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0212】
本明細書に例示的に記載されている開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(複数可)、限定(複数可)のない状態で適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広範かつ非限定的に読まれなければならない。さらに、本明細書で用いられる用語および表現は、説明の用語として使用され、かつ限定のための用語ではなく使用されている。また、示され、かつ記載されている特徴またはその部分に関する任意の均等物を除外する意図では、用語および表現を使用しておらず、様々な修正が可能であることを認識されたい。
【0213】
したがって、本開示は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示の本発明に具体化された開示の修正、改善および変形は、当業者によって実施され可能性があり、また、そのような修正、改善および変形は、本開示の範囲内であると見なされることを理解すべきである。本明細書で提供される材料、方法、および例は、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0214】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、各々が参照により個別に組み込まれるのと同じ程度に、その全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。