(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】多段ラテックスポリマー粒子を含む水性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 265/06 20060101AFI20241107BHJP
C08F 265/10 20060101ALI20241107BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20241107BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20241107BHJP
D06M 15/29 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C08F265/06
C08F265/10
C08F2/22
D06M15/263
D06M15/29
(21)【出願番号】P 2021516996
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 US2019052114
(87)【国際公開番号】W WO2020068577
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ラフラー、エドワード イー.
(72)【発明者】
【氏名】レイ、ハミル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ヌンゲッサー、ジュニア、エドウィン アロイシウス
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05071902(US,A)
【文献】特開2007-262405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段ラテックスポリマー粒子を含む水性組成物であって、前記多段ラテックスポリマー粒子は、
0.03μm~1μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子を1重量%~40重量%;
1μm~20μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子を5重量%~80重量%含み、
各バインダー粒子および各微小球粒子は、
(A)
(i)N-メチロールアクリルアミド、
(ii)第1のビニルモノマーを含む、第1段階のポリマーと、
(B)
(i)N-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、
(ii)第2のビニルモノマーを含む、第2段階のポリマーと、を含む多段ラテックスポリマー粒子を含み、
前記第1段階のポリマーが前記第2段階のポリマーに結合されている、水性組成物。
【請求項2】
前記第1段階のポリマーが、前記第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~10重量%の、前記N-メチロールアクリルアミドの重合単位を含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記第2段階のポリマーが、前記第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~15重量%の、前記N-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素の重合単位を含む、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記第1のビニルモノマーおよび前記第2のビニルモノマーが、それぞれ独立して、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸アリル、スチレン、ジビニルベンゼン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記多段ラテックスポリマー粒子が、0.25μm~0.70μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記多段ラテックスポリマー粒子が、4μm~10μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記組成物が0~10.0ppmのナッシュホルムアルデヒド含有量を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の水性組成物と接触している不織布を含む物品。
【請求項9】
不織布、
前記不織布上のコーティングを含む物品であって、前記コーティングが、多段ラテックスポリマー粒子を含む組成物を含み、前記多段ラテックスポリマー粒子が、
0.03μm~1μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子を1重量%~40重量%;
1μm~20μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子を5重量%~80重量%含み、
各バインダー粒子および各微小球粒子は、
(A)
(i)N-メチロールアクリルアミド、
(ii)第1のビニルモノマーを含む、第1段階のポリマーと、
(B)
(i)N-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、
(ii)第2のビニルモノマーを含む、第2段階のポリマーと、を含む多段ラテックスポリマー粒子を含み、
前記第1段階のポリマーが前記第2段階のポリマーに結合している、物品。
【請求項10】
前記第1段階のポリマーが、前記第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~10重量%の、前記N-メチロールアクリルアミドの重合単位を含む、請求項
9に記載の物品。
【請求項11】
前記第2段階のポリマーが、前記第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~15重量%の、前記N-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素の重合単位を含む、請求項
9または
10に記載の物品。
【請求項12】
前記第1のビニルモノマーおよび前記第2のビニルモノマーが、それぞれ独立して、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸アリル、スチレン、ジビニルベンゼン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記多段ラテックスポリマー粒子が、0.25μm~0.70μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子である、請求項
9~
12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
前記多段ラテックスポリマー粒子が、4μm~10μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子である、請求項
9~
13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記組成物が0~10.0ppmのナッシュホルムアルデヒド含有量を有し、前記物品が30%~100%の湿潤張力保持率を有する、請求項
9~
14のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ラテックスポリマー粒子を含む水性組成物は、布地のバインダーとして使用される。ラテックスポリマーは、水性組成物でコーティングされた布地から形成される物品の機械的特性を高めるため、望ましくは自己架橋性であり、従来、n-メチロールアクリルアミド(MOA)モノマーなどのn-メチロール官能基を有するモノマーで形成されている。しかしながら、n-メチロール官能性モノマーは、フィルム形成中の自己架橋メカニズムの副産物としてホルムアルデヒドを生成することが知られている。
【0002】
当技術分野は、布地用の架橋可能なバインダーとしての使用に適したラテックスポリマー粒子を含む水性組成物の必要性を認識している。当技術分野はさらに、許容可能な量のホルムアルデヒドを含むラテックスポリマー粒子を含む水性組成物の必要性を認識している。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、物品を提供する。水性組成物は、多段ラテックスポリマー粒子を含む。多段ラテックスポリマー粒子には、(A)(i)n-メチロール官能性モノマー、および(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーと、(B)(i)ホルムアルデヒド捕捉モノマー、および(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーとを含む。第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。
【0004】
本開示は、別の水性組成物を提供する。水性組成物は、多段ラテックスポリマー粒子を含む。多段ラテックスポリマー粒子には、(A)(i)n-メチロールアクリルアミド、および(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーと、(B)(i)n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素、および(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーとを含む。第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。
【0005】
本開示は物品も提供する。物品は、不織布および不織布上のコーティングを含み、コーティングは、多段ラテックスポリマー粒子を含む組成物を含む。多段ラテックスポリマー粒子には、(A)(i)n-メチロール官能性モノマー、および(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーと、(B)(i)ホルムアルデヒド捕捉モノマー、および(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーとを含む。第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。
【0006】
定義
元素周期表へのいかなる言及も、CRC Press,Inc.によって1990-1991に発行されたものへの言及である。この表における元素の族への言及は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0007】
米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度まで)および当該技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が、参照によりそのように組み込まれる)。
【0008】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値および上限値からの全ての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば、1、2、または3~5、または6、または7の範囲)の場合、2つの明示的な値の間の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6等)。
【0009】
反対の記載がない限り、または当該技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、文脈から示唆されない限り、全ての部およびパーセントは重量を基準としており、全てのテスト方法は本開示の出願日現在のものである。
【0010】
「アルキル」および「アルキル基」とは、飽和直鎖状、環状、または分岐状炭化水素基を指す。好適なアルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、i-ブチル(または2-メチルプロピル)などが挙げられる。一実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子を有する。
【0011】
「アルケニル」または「アルケニル基」は、少なくとも1つのC=C二重結合を含むヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、直鎖状、環状、または分枝状であり得る。好適なアルケニル基の非限定的な例には、エテニル基、n-プロペニル基、i-プロペニル基、n-ブテニル基、t-ブテニル基、i-ブテニル基などが挙げられる。
【0012】
「水性」は、水を含む組成物を指す。水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または99重量%、または100重量%未満の水を含む。
【0013】
「アラルキル」および「アラルキル基」は、1つ以上の水素原子をアリール基で置き換えることによって芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを指す。
【0014】
「アリール」および「アリール基」は、芳香族炭化水素から1個の水素原子を欠失することによって芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを指す。アリール基は、単環系および/または縮合環系であってもよく、これらの各環は、好適には、5~7個、好ましくは5個または6個の原子を含む。2つ以上のアリール基が単結合を介して結合している構造も含まれる。具体的な例には、限定されないが、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニル等が含まれる。
【0015】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーの組成物である。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、ならびにドメイン構成を測定および/または特定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含んでも含まなくてもよい。
【0016】
「組成物」「組成」という用語は、組成物を含む材料の混合物と並んで、組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0017】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、およびそれらの派生語は、具体的に開示されているか否かにかかわらず、追加の構成要素、工程または手順の存在を排除することを意図していない。疑念を避けるために、「含む」という語の使用を通じて請求項に記載される全ての組成物は、反対の記述がない限り、重合されているかどうかに関わらず、追加の添加剤、助剤、または化合物を含み得る。対照的に、「~から本質的になる」という用語は、任意の後続の詳述の範囲から、操作性に必要不可欠ではないものを除き、任意の他の構成成分、工程または手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に記述または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。「または」という用語は、別途記載がない限り、列挙された部材を個々に、および任意の組み合わせで指す。単数形の使用は、複数形の使用を含み、逆もまた同様である。
【0018】
「架橋性」および「硬化性」は、物品に成形される前または後のポリマーが、硬化も架橋もされておらず、実質的な架橋を誘導した処理に供されても曝露されてもいないが、ポリマーが、このような処理(例えば、水への曝露、または乾燥)に供されるかまたは曝露されたときに実質的な架橋をもたらす添加剤(複数可)または官能基を含むことを示す。
【0019】
「架橋された」および同様の用語は、ポリマー組成物は、物品に成形される前または後に、90重量パーセント以下のキシレンまたはデカリン抽出物(extractable)(すなわち、10重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを示す。
【0020】
「ジエン」は、炭素原子間に2つの二重結合を含有する不飽和炭化水素である。ジエンは、6~15個の炭素原子を有する共役、非共役、直鎖、分岐鎖または環式の炭化水素ジエンであり得る。好適なジエンの非限定的な例には、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエンが含まれる。
【0021】
「生地」は、個々の繊維または糸から形成された織られた構造または不織の(編まれたなど)構造である。
【0022】
「繊維」および類似の用語は、絡み合ったフィラメントの細長いカラムを指す。繊維径は、様々な方法で測定および報告することができる。一般に、繊維径は、1つのフィラメントあたりのデニールで測定される。デニールは、繊維の長さ9,000メートルあたりのその繊維のグラムとして定義される繊維用語である。モノフィラメントは、一般に、15を超える、通常は30を超える1つのフィラメントあたりのデニールを有する押出ストランドを指す。細いデニール繊維とは、一般に、15デニール以下の繊維を指す。マイクロデニール(別名マイクロファイバー)は、一般に、直径が100マイクロメートル以下のファイバーを指す。
【0023】
「フィラメント」および類似の用語は、概して円形の断面、および10を超える長さ対直径の比を有する細長い材料の単一の連続したストランドを指す。
【0024】
「ハロゲン」とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)を含む元素周期表のlUPACグループ17の元素である。
【0025】
「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、およびVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、F、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。
【0026】
「ヒドロカルビル」および「炭化水素」という用語は、分岐または非分岐、飽和または不飽和、環式、多環式または非環式の種を含む水素および炭素の原子のみを含有する置換基を指す。非限定的な例には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、およびアルキニル基が含まれる。
【0027】
「ニット生地」は、手によって、編み針で、または機械上で、一連の連結したループ内で糸または線維を絡み合せることから形成される。生地は、縦編みまたは横編み、平編み、および丸編みによって形成することができる。好適な縦編みの非限定的な例としては、トリコット、ラッセルパワーネット、およびレースが挙げられる。好適な横編みの非限定的な例としては、丸編み、平編み、およびシームレス(これは多くの場合丸編みのサブセットと見なされる)が挙げられる。
【0028】
「ラテックスポリマー」は、水性乳化重合によって調製されたポリマー化合物である。ラテックスポリマーは、連続水性媒体全体に懸濁した粒子として存在する、安定した分散液である。
【0029】
「不織の」は、ランダムに差し込まれているが、ニット生地の場合のように識別可能な様式ではない、個々の繊維またはより糸の構造を有するウェブまたは生地である。
【0030】
「ポリマー」は、同じタイプであるか異なるタイプであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、および4つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。微量の不純物、例えば、触媒残渣が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。また、例えばランダム、ブロック等の全ての形態のコポリマーも包含する。ポリマーは、多くの場合、特定のモノマーまたはモノマーの種類に「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含む」など、1つ以上の特定のモノマー「から作られる」ものと言及されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定されたモノマーの重合残留物を指し、非重合種には言及していないことが理解されることに留意されたい。一般に、本明細書中のポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0031】
「置換ヒドロカルビル」および「置換炭化水素」は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例としては、ヘテロ原子、ヘテロ原子含有部分、酸素含有部分(例えば、アルコール、アクリレート、アクリル酸、アルデヒド、カルボン酸、エステル、エーテル、ケトン、およびペルオキシド基)、ならびに窒素含有部分(例えば、アミド、アミン、アゾ、イミド、イミン、ニトレート、ニトリル、およびニトライト基)が挙げられる。
【0032】
「布地」は、天然繊維、人工繊維、およびそれらの組み合わせのネットワークで構成される柔軟な材料である。布地には、生地および布が含まれる。
【0033】
「尿素」または「尿素基」は、以下の構造式(A)を有する置換基である:
【化1】
式中、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アクリルモノマー、およびそれらの組み合わせから選択され、R
7およびR
8は、任意選択で、環状構造または芳香族構造を形成し得る。
【0034】
「ポリマーの重量」は、ポリマーの乾燥重量を指す。
【0035】
「織られた」は、識別可能な方法で、パターンで差し込まれる個々の繊維またはより糸の構造を有するウェブまたは生地を指す。織られた生地の非限定的な例は、ニット生地である。
【0036】
「糸」は、織られたか、またはニット生地の製造に使用することができる、連続した長さの撚られたか、またはそうでなければ絡み合ったフィラメントである。
【0037】
試験方法
D50の粒子サイズは、Coulter Corporationから入手可能なCoulter LS 230レーザー光散乱粒径測定器を使用して測定する。D50粒子サイズは、MSLPPの質量の50%がこの値未満の直径を有する粒子からなり、MSLPPの質量の50%が、その値より大きい直径を有する粒子からなる粒径である。粒子サイズはミクロン(μm)で測定する。
【0038】
ガラス転移温度(Tg)は、ASTM-D3418-15に従って測定される。
【0039】
光沢は、Micro-TRI-光沢計(cat.No.4448、BYK-Gardner GmbH)を用いて60°および85°の幾何学で測定される。光沢は、3ミルのウェットバードアプリケーターを使用してLeneta 5C不透明度チャートに水性組成物を塗布し、105℃のオーブンで5分間水性組成物を乾燥させてフィルムを形成した後に測定される。フィルムを室温で一晩硬化させる。鏡面光沢は、反射率(%)で測定される。
【0040】
粘着性は、3ミルのウェットバードアプリケーターを使用してLeneta 5C不透明度チャートに水性組成物を塗布し、105℃のオーブンで5分間水性組成物を乾燥させてフィルムを形成した後に決定される。フィルムを室温で一晩硬化させる。水性組成物は、不透明度チャート上でコーティング表面を形成する。コーティングされた試験片のコーティング表面を手でこすった後、1~4までの主観的な評価が適用される。評価1は粘着性が最も低いコーティングを表し、評価4は粘着性が最も高いコーティングを表す。
【0041】
ホルムアルデヒド含有量
遊離ホルムアルデヒド含有量および総ホルムアルデヒド含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)によって測定される。サンプルを150℃の温度に4分間(遊離ホルムアルデヒド)または30分間(総ホルムアルデヒド)加熱する。ヘッドスペースサンプリングを使用して、5977A質量選択検出器(MSD)と7697A HSを備えたAgilent 7890B GCを使用して、サンプルのホルムアルデヒド含有量を測定する。条件を以下の表Aに示す。遊離ホルムアルデヒドテストでは、液体サンプルの上のガスが試験される。総ホルムアルデヒドテストでは、液体サンプルの上のガスを除き、液体サンプルがテストされる。
【表1】
【0042】
ナッシュホルムアルデヒド含有量は、ASTM D5910-05に従って測定される。サンプルは、ホルムアルデヒドナッシュ試薬を使用して、カラム誘導体化後、試験される。カラム誘導体化は、アセチルアセトンを使用してクロマトグラフィー分離後にホルムアルデヒドを誘導体化する。誘導体化反応は、検出器の直前の95℃の反応ループで起こる。C-18 AQ、またはエンドキャップカラムでの分離は、UV 210nmで検出される。感度(LOD)は0.2ppmで、定量限界(LOQ)は0.5ppmである。
【0043】
張力
乾式張力、湿式張力、およびイソプロピルアルコール(IPA)張力は、それぞれINSTRON引張試験装置で測定される。テストストリップは、毎分12インチの速度(インチ/分)で引っ張られる。
【0044】
28cm×46cmであるWHATMAN(商標)グレード4セルロース濾紙(Whatman Ltd.から入手可能)である基材が提供される。基材を、(i)300mLの水性組成物に0.1秒超~1分未満の期間浸漬され、(ii)水性組成物から取り去り、(iii)Mathis(商標)パダーでパディングされ、そして(iv)150℃の温度のオーブンで3分間乾燥および架橋して、架橋物品を形成する。ポリマー粒子の付加物は、全架橋物品の25重量%になるように制御される。
【0045】
架橋された物品は、1インチ×4インチの試験ストリップに切断され、ここで、4インチの方向は、試験ストリップのクロスマシン方向(CD)である。
【0046】
テストストリップの張力は、INSTRON引張試験装置で測定される。テストストリップは、乾燥、湿潤、IPAの3つの条件下で12インチ/分の速度で引っ張られる。「乾燥」状態は、切断後に処理されていないテストストリップで測定される。「湿潤」状態は、試験ストリップを0.1重量%のTRITON(商標)X-100(The Dow Chemical Company社から入手可能な界面活性剤であるオクチルフェノールエトキシレート)を含む溶液に30分間浸漬した直後に測定される。湿潤張力は、架橋された物品の水に対する抵抗を示す。「IPA」状態は、テストストリップをイソプロピルアルコール(IPA)に30分間浸した直後に測定される。IPA張力は、架橋された物品のIPAに対する抵抗を示す。
【0047】
張力は、インチあたりのグラム(g/インチ)で測定される。
【0048】
張力保持率
湿潤張力保持率は等式(A)に従って計算される:
【数1】
【0049】
IPA張力保持率は、等式(B)に従って計算される:
【数2】
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、水性組成物を提供する。水性組成物は、多段ラテックスポリマー粒子を含む。多段ラテックスポリマー粒子には、(A)(i)n-メチロール官能性モノマー、および(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーと、(B)(i)ホルムアルデヒド捕捉モノマー、および(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーとを含む。第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。
【0051】
本開示は、別の水性組成物を提供する。水性組成物は、多段ラテックスポリマー粒子を含む。多段ラテックスポリマー粒子には、(A)(i)n-メチロールアクリルアミド、および(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーと、(B)(i)n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素、および(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーとを含む。第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。
【0052】
「多段ラテックスポリマー粒子」(「MSLPP」)は、粒子がそれぞれ第1段階のポリマーおよび第2段階のポリマーを含み、第1段階のポリマーが第2段階のポリマーに結合しているラテックスポリマーである。MSLPPに関して本明細書で使用される場合、「結合する」という用語は、互いに共有結合している、または第1段階のポリマーがコアを形成し、第2段階のポリマーがシェルを形成しているコアシェル構造で互いに会合している、第1段階のポリマーおよび第2段階のポリマーを指す。MSLPPは2つ以上の重合段階で調製される。重合段階の1つでは、乳化重合プロセスを実行して、第1段階のポリマー粒子を生成する。次の段階では、乳化重合プロセスが第1段階のポリマー粒子の存在下で行われ、第2段階のポリマーを形成する。一実施形態では、第1段階のポリマーの形成と第2段階のポリマーの形成との間に、検出可能な重合が起こらない期間がある。第2段階のポリマーの形成において、第2段階のポリマーの半分以上(重量で、第2段階のポリマーの重量に基づく)が、第1段階のポリマー粒子の表面上に形成され、第2段階のポリマーは、第1段階のポリマーに結合する。第2段階のポリマーは、第1段階のポリマー粒子を包むか、または実質的に包む。1つ以上の追加の重合段階が、(i)第1段階のポリマーの形成の前に、および/または(ii)第1段階のポリマーの形成と第2段階のポリマーとの間に、および/または(iii)第2段階のポリマーの形成後に、および/または(iv)それらの組み合わせで、任意に実施される。
【0053】
A.第1段階のポリマー
本多段ラテックスポリマー粒子は、(A)(i)n-メチロール官能性モノマーおよび(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーを含む。
【0054】
一実施形態では、多段ラテックスポリマー粒子は、(A)(i)n-メチロールアクリルアミド(MOA)および(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーを含む。
【0055】
第1段階のポリマーは、n-メチロール官能性モノマーを含む。「n-メチロール官能性モノマー」は、n-メチロール置換基を含む化合物である。好適なn-メチロール官能性モノマーの非限定的な例には、n-メチロールアクリルアミド(MOA)、n-メチロールメタクリルアミド、n-メチロールマレイミド、n-メトロールマレアミック酸、n-メチロールマレアミック酸エステル、n-メチロールp-ビニルベンズアミドのようなビニル芳香族エステルのn-メチロールアミドおよびそれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、n-メチロール官能性モノマーはMOAである。
【0056】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、n-メチロールアクリルアミド(MOA)モノマーを含む。N-メチロールアクリルアミド(MOA)の構造式(1)は次のとおりである:
【化2】
【0057】
第1段階のポリマーは、第1のビニルモノマーを含む。
【0058】
「ビニルモノマー」は、以下の構造式(2)を有する化合物である:
【化3】
式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アクリルモノマー、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0059】
好適なビニルモノマーの非限定的な例には、スチレン(STY)、α-メチルスチレン、エチレン、エチレンエステル、ジエン、酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、アクリロニトリル(AN)、(メタ)アクリロニトリル、メタ(アクリル)酸、アクリル酸、(メタ)アルキルアクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸アリル(ALMA)、(メタ)ヒドロキシアルキルアクリレート、ジビニルベンゼン(DVB)、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0060】
一実施形態では、第1のビニルモノマーは、アクリロニトリル(AN)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸アリル(ALMA)、スチレン(STY)、ジビニルベンゼン(DVB)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0061】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、(i)MOAならびに(ii)AN、BA、EA、MMA、ALMA、STY、DVB、およびそれらの組み合わせから選択される第1のビニルモノマーを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0062】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1.0重量%、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または2.7重量%、または3.0重量%~5.2重量%、または5.5重量%、または6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%のn-メチロール官能性モノマー(MOAなど)の重合単位を含む。
【0063】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づき(i)1重量%、または2重量%、または3重量%~6重量%、または7重量%、または8重量%、または9重量%、または10重量%のn-メチロール官能性モノマー(MOAなど)および(ii)残量の第1のビニルモノマー、または90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%~97重量%、または98重量%、または99重量%の第1のビニルモノマーを含む。
【0064】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、MOA、EA、およびBAを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。さらなる一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1.0重量%、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または2.7重量%~3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%、または5.0重量%のMOA、(ii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または48重量%~49重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のEA、および(iii)30重量%、または35重量%、または40重量%,または45重量%、または48重量%~49重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のBAを含む。
【0065】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、本質的に、MOA、BA、およびSTYからなるか、またはそれらからなる。さらなる一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1.0重量%、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%、または5.0重量%、または5.1重量%~5.2重量%、または5.5重量%、または6.0重量%、または6.5重量%、または7.0重量%のMOA、(ii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または48重量%~49重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のBA,および(iii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、46重量%~47重量%または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のSTYを含む。
【0066】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、本質的に、MOA、EA、およびMMAからなるか、またはそれらからなる。さらなる一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1.0重量%、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%~3.5重量%、または4.0重量%、または5.0重量%、または6.0重量%のMOA、(ii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または48重量%~49重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のEA、および(iii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または48重量%~49重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のMMAを含む。
【0067】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、本質的に、MOA、BA、およびALMAからなるか、またはそれらからなる。さらなる一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1重量%、または1.5重量%、または2.0重量%~2.6重量%、または3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%のMOA(ii)70重量%、または75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または94重量%~95重量%、または96重量%、または97重量%、または98重量%のBA、および(iii)1重量%、または2重量%、または3重量%、または4重量%から、5重量%、または6重量%、または7重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%、または29重量%のALMAを含む。
【0068】
成分(i)~(iii)の合計は、第1段階のポリマーの100重量%になる。
【0069】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、ホルムアルデヒド-捕捉モノマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0070】
一実施形態では、第1段階のポリマーは、MAEEUを含まないか、または実質的に含まない。
【0071】
第1段階のポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0072】
B.第2段階のポリマー
本多段ラテックスポリマー粒子は、(B)(i)ホルムアルデヒド捕捉モノマーおよび(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーを含む。
【0073】
一実施形態では、多段ラテックスポリマー粒子は、(B)(i)n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素(MAEEU)および(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーを含む。
【0074】
第2段階のポリマーには、ホルムアルデヒド捕捉モノマーが含まれる。「ホルムアルデヒド捕捉モノマー」は、尿素基を含む化合物である。好適なホルムアルデヒド捕捉モノマーの非限定的な例には、n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素(MAEEU)、n-ヒドロキシエチレン尿素、n-アミノエチレン尿素、n-(3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミノエチレン尿素、n-アクリロキシエチレン尿素、n-メタクリルアミノエチレン尿素、n-アクリルアミノエチレン尿素、n-メタクリロキシアセトキシエチレン尿素、n-メタクリロキシアセトアミノエチレン尿素、およびn-ジ(3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミノエチルエチレン尿素が含まれる。一実施形態では、ホルムアルデヒド捕捉モノマーは、n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素(MAEEU)である。
【0075】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素(MAEEU)モノマーを含む。MAEEUの構造式(3)は次のとおりである:
【化4】
【0076】
第2段階のポリマーは、第2のビニルモノマーを含む。
【0077】
第2のビニルモノマーは、本明細書に開示される任意のビニルモノマーであり得る。
【0078】
第2のビニルモノマーは、第1段階のポリマー中の第1のビニルモノマーと同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、第2段階のポリマーの第2のビニルモノマーは、第1段階のポリマーの第1のビニルモノマーと同じである。第2段階のポリマーの第2のビニルモノマーが第1段階のポリマーの第1のビニルモノマーと同じである場合、第2のビニルモノマーおよび第1のビニルモノマーは、同一のビニルモノマー、または同一の重量比でビニルモノマーの同一のブレンドを含む。別の実施形態では、第2段階のポリマーの第2のビニルモノマーは、第1段階のポリマーの第1のビニルモノマーとは異なる。
【0079】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、(i)MAEEUおよび(ii)AN、BA、EA、MMA、ALMA、STY、DVB、およびそれらの組み合わせから選択される第2のビニルモノマーから得られた重合単位を含む、本質的にその重合単位からなる、またはその重合単位からなる。
【0080】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1.0重量%、または1.5重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または4.0重量%~5.0重量%、または6.0重量%,または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または11.0重量%、または12.0重量%、または13.0重量%、または14.0重量%、または15.0重量%のホルムアルデヒド-捕捉モノマー(MAEEUなど)の重合単位を含有する。
【0081】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1重量%、または2重量%、または3重量%、または、4重量%~5重量%、または6重量%、または7重量%、または8重量%、または9重量%、または10重量%、または、11重量%、または12重量%、または13重量%、または14重量%、または15重量%のホルムアルデヒド-捕捉モノマー(MAEEUなど)、および(ii)残量の第2のビニルモノマー、または85重量%、または86重量%、または87重量%、または88重量%、または89重量%、または90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%、または95重量%~96重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%の、第2のビニルモノマーを含む。
【0082】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、MAEEU、EA、およびBAを含むか、本質的にMAEEU、EA、およびBAからなるか、またはMAEEU、EA、およびBAからなる。さらなる一実施形態では、第2段階のポリマーは、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1.0重量%、または.2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%~4.3重量%、または4.5重量%、または5.0重量%、または、5.5重量%、または6.0重量%、または7.0重量%、または10.0重量%のMAEEU、(ii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または47重量%から、48重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のEA、および(iii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または47重量%~48重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のBAを含む。
【0083】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、MAEEU、BA、およびSTYを含むか、本質的にMAEEU、BA、およびSTYからなるか、またはMAEEU、BA、およびSTYからなる。さらなる実施形態では、第2段階のポリマーは、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)3.0重量%、または3.5重量%、または4.0重量%、または4.5重量%、または5.0重量%、または5.5重量%、または6.0重量%、または6.5重量%~7.0重量%、または7.5重量%、または8.0重量%、または8.5重量%、または9.0重量%または10.0重量%、または11.0重量%のMAEEU、(ii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%~51重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または67重量%のBA、および(iii)30重量%、または35重量%、40重量%、または45重量%、または47重量%~48重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または67重量%のSTYを含む。
【0084】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、MAEEU、EA、およびMMAを含むか、本質的にMAEEU、EA、およびMMAからなるか、またはMAEEU、EA、およびMMAからなる。さらなる実施形態では、第2段階のポリマーは、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または3.5重量%、または4.5重量%~4.8重量%、または5.0重量%、または5.5重量%、または6.0重量%、または7.0重量%、または10.0重量%のMAEEU;(ii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または48重量%~49重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%のEA、および(iii)30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または47重量%~48重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または69重量%の%MMAを含む。
【0085】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、MAEEU、MMA、およびEAを含むか、本質的に、MAEEU、MMA、およびEAからなるか、または、MAEEU、MMA、およびEAからなる。さらなる実施形態では、第2段階のポリマーは、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、(i)5.0重量%、または6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または9.5重量%、または10.0重量%~10.5重量%、または11.0重量%、または11.5重量%、または12.0重量%、または13.0重量%、または14.0重量%、または15.0重量%のMAEEU、(ii)60重量%、または65重量%、または70重量%または75重量%、または80重量%、または86重量%~90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%のMMA、および(iii)1重量%、または2重量%、または3重量%、または4重量%~5重量%、または6重量%、または7重量%、または10重量%、または15重量%または20重量%、または25重量%、または29重量%のEAを含む。
【0086】
成分(i)~(iii)の合計は、第2段階のポリマーの100重量%になる。
【0087】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、n-メチロール官能性モノマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0088】
一実施形態では、第2段階のポリマーは、MOAを含まないか、または実質的に含まない。
【0089】
第2段階のポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0090】
第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。一実施形態では、第1段階のポリマーは、第1段階のポリマー中の少なくとも1つのモノマーと第2段階のポリマー中の少なくとも1つのモノマーとの間の架橋反応によって第2段階のポリマーに結合される。第1段階のポリマーと第2段階のポリマーとの間に結合を形成する架橋性モノマーの非限定的な例は、少なくとも2つのビニル基を有するビニルモノマーである。「ビニル基」は、以下の構造式(4)を有する部分である:
【化5】
式中、R
5は、水素およびC
1~C
8ヒドロカルビルから選択される。
【0091】
一実施形態では、第1段階のポリマーおよび第2段階のポリマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのビニル基を有するビニルモノマーを含む。少なくとも2つのビニル基を有する好適なビニルモノマーの非限定的な例には、ALMA、DVB、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0092】
一実施形態では、MSLPPは、MSLPPの乾燥総重量に基づいて、40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%,または80重量%~85重量%、または90重量%、または95重量%の第1段階のポリマーを含む。
【0093】
一実施形態では、MSLPPは、MSLPPの乾燥総重量に基づいて、5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%の第2段階のポリマーを含む。
【0094】
一実施形態では、MSLPPにおける第1段階のポリマーと第2段階のポリマーとの重量比は、0.6:1、または0.8:1、または1:1、または1.2:1、または1.5:1、または1.8:1、または2.3:1、または3:1、または4:1、または5.7:1、または9:1、または19:1である。
【0095】
C.粒子
MSLPPの粒子は、(i)バインダー粒子、(ii)微小球粒子、または(iii)バインダー粒子と(ii)微小球粒子の組み合わせであり得る。
【0096】
一実施形態では、MSLPPは、0.03μm~5μmまたは20μmのD50粒子サイズを有する。
【0097】
一実施形態では、MSLPPはバインダー粒子を含む。「バインダー粒子」は、0.03μm~1.0μm未満のD50粒子サイズを有するMSLPPである。一実施形態では、バインダー粒子は、0.03μm、または0.05μm、または0.08μm、または0.10μm、または0.20μm、または0.25、または0.29~0.30μm、または0.40μm、または0.45、または0.50μm、または0.60μm、または0.70μm、または0.80μm、または0.90μm、または1.0μm未満のD50粒子サイズを有する。
【0098】
一実施形態では、MSLPPは微小球粒子を含む。「微小球粒子」は、1μm~20μmのD50粒子サイズを有するMSLPPである。一実施形態では、微小球粒子は、1μm、または2μm、または3μm、または4μm、または5μm~6μm、または7μm、または8μm、または9μm、または10μm、または13μm、または15μm、または18μm、または19μm、または20μmのD50粒子サイズを有する。
【0099】
MSLPPの粒子サイズを制御するための好適な方法の非限定的な例には、界面活性剤の選択、界面活性剤の濃度の制御、シード成長、およびそれらの組み合わせが含まれる。微小球粒子およびバインダー粒子は、USP7,829,626(それぞれ、反応性の低い粒子およびバインダー成分を指す)に記載されているように調製することができ、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
一実施形態では、MSLPPは、界面活性剤の選択を使用して、所望の粒子サイズに形成される。好適な界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル、アリール、またはアルキルアリールスルフェートのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、スルホネート、もしくはホスフェートのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アルキルスルホン酸;スルホコハク酸塩;脂肪酸;エチレン性不飽和界面活性剤モノマー;エトキシル化アルコールまたはフェノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤は、硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせである。
【0101】
一実施形態では、MSLPPは、界面活性剤濃度を制御することによって、所望の粒子サイズに形成される。一実施形態では、第1段階のポリマーおよび/または第2段階のポリマーの形成中の水性乳化重合における界面活性剤の濃度は、モノマーの総重量に基づいて、0重量%超、または0.1重量%~6重量%までである。
【0102】
一実施形態では、MSLPPは、シード成長を使用して所望の粒子サイズに形成される。シード成長中、シード粒子(コポリマーシード粒子またはオリゴマーシード粒子のいずれか)が、第1段階のポリマーを生成するために行われる乳化重合プロセスに含まれる。一実施形態では、シード粒子の形成と、第1段階のポリマーの形成との間に検出可能な重合が起こらない期間がある。第1段階のポリマーの形成において、第1段階のポリマーの半分以上(重量で、第1段階のポリマーの重量に基づく)がシード粒子の表面上に形成される。第1段階のポリマーは、シード粒子を包むか、または実質的に包む。シード粒子は、USP8,686,096(例えば、実施例1および5(列19および20))およびUSP7,829,626に記載されているように調製することができ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、シード粒子は、アクリルモノマーを含むオリゴマーシード粒子である。さらなる実施形態では、シード粒子は、アクリル酸ブチル、n-ドデシルメルカプタン、メタクリル酸メチル(MMA)、およびメタクリル酸(MAA)を含むアクリルオリゴマーシード(AOS)粒子である。一実施形態では、シード粒子は、0.03μm、または0.1μm、または0.5μm、または0.8μm~1.0μm、または2.0μm、または5.0μm、または10.0μm、または15.0μmまで、または20.0μm未満のD50粒子サイズを有する。
【0103】
(A)第1段階のポリマーおよび(B)第2段階のポリマーを有する本MSLPPは、単一の重合工程で調製されたポリマーなどの単相ポリマーを含まない。代わりに、本MSLPPは、異なるモノマーを持つ2つの異なるポリマー((A)MOAと第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマー、および(B)MAEEUと第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマー)を結合して含むが、従来の単相ポリマーは、ポリマー鎖全体に同じモノマーが分布している単一のポリマーが含まれているため、従来の単相ポリマーとは構造的に異なる。
【0104】
MSLPPは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0105】
D.水性組成物
本水性組成物はMSLPPを含む。MSLPPは、本明細書に開示される任意のMSLPPであり得る。
【0106】
一実施形態では、水性組成物は、1つ以上の任意の添加剤を含有する。好適な添加剤の非限定的な例には、湿潤剤、レオロジー調整剤(ACRYSOL(商標)ASE-60、The Dow Chemical Companyから入手可能な増粘剤、など)、ブロッキング防止剤、消泡剤、噴霧助剤、塩基(水酸化アンモニウム水溶液など)、顔料、染料、およびそれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、0重量%超、または0.1重量%、または0.5重量%~1重量%、または5重量%、または10重量%の任意の添加剤を含有する。
【0107】
一実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、1重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または70重量%,または80重量%の固形分を有する。
【0108】
一実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、1重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または80重量%のMSLPPを含有する。
【0109】
一実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、1重量%、または5重量%、または7重量%、または10重量%、または15重量%、または19重量%、または20重量%、または21重量%、または25重量%~26重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%までのバインダー粒子を含む。別の実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、1重量%~40重量%、または5重量%~30重量%、または7重量%~26重量%のバインダー粒子を含む。
【0110】
一実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、5重量%、または8重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または22重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または44重量%~45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または80重量%の微小球粒子を含有する。別の実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、5重量%~80重量%、または5重量%~50重量%、または8重量%~45重量%の微小球粒子を含む。
【0111】
一実施形態では、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、(i)1重量%、または5重量%、または7重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%のバインダー粒子、および(ii)5重量%、または6重量%、または8重量%~23重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%の微小球粒子を含む。
【0112】
一実施形態では、水性組成物は、30ppm未満の遊離ホルムアルデヒド(HCHO)含有量を有する。さらなる実施形態では、水性組成物は、0ppm~12ppm、または13pm、または18ppm、または20ppm、または25ppm、または30ppm未満の遊離HCHO含有量を有する。さらなる実施形態では、水性組成物は、0ppm~30ppm未満、または0ppm~25ppm未満、または0ppm~20ppm、または0ppm~18ppmの遊離HCHO含有量を有する。遊離HCHO含有量は、水性組成物を含む容器が開かれたときに遊離され得るHCHOの初期濃度を示す。
【0113】
一実施形態では、水性組成物は、150ppm未満の総ホルムアルデヒド(HCHO)含有量を有する。さらなる実施形態では、水性組成物は、0ppm~92ppm、または95ppm、または114ppm、または115ppm、または143ppm、または145ppm、または150ppm未満の総HCHO含有量を有する。さらなる実施形態では、水性組成物は、0ppm~150ppm未満、または0ppm~145ppm、または0ppm~143ppmの総HCHO含有量を有する。総HCHO含有量は、乾燥または熱硬化プロセス中に放出される可能性のあるHCHOの量を示す。
【0114】
一実施形態では、水性組成物は、2ppm以下のナッシュホルムアルデヒド(HCHO)含有量を有する。さらなる実施形態において、水性組成物は、0ppm~0.8ppm、または0.9ppm、または1.0ppm、または1.9ppm、または2.0ppm未満、または2.0ppm、または6.0ppm、または10.0ppmのナッシュHCHO含有量を有する。さらなる実施形態では、水性組成物は、0ppm~10.0ppm、または0ppm~6.0ppm、または0ppm~2.0ppm、または0ppm~2.0ppm未満、または0ppm~1.9ppmまでのナッシュHCHO含有量を有する。ナッシュのHCHO含有量は、水性組成物を含む、閉じた(すなわち、開いていない)容器内に存在するHCHOの量を示す。
【0115】
一実施形態では、水性組成物は、0%超、または0.1%、または0.5%、または0.6%~8.2%、または8.5%、または9.0%の60°の光沢を有する。9%以下の光沢は、物品の表面からの光の反射を低減する必要がある物品の用途に有利である。低光沢(すなわち、9%未満)はまた、均一な外観のコーティング表面を提供する。
【0116】
一実施形態では、水性組成物は、0%超、または1%、または5%、または7%~8%、または10%、または15%、または20%、または50%、または70%、または80%の85°の光沢を有する。
【0117】
一実施形態では、水性組成物は、1~2の粘着性評価を有する。
【0118】
一実施形態では、水性組成物は安定している。安定性は、保存前後の粘度を測定することによって決定される。保存後の粘度と保存前の粘度の比が0.5:1~2:1の範囲にある場合、水性組成物は安定していると見なされる。粘度は、ブルックフィールドLV粘度計、スピンドル#2、60rpmで25℃で測定される。保存は50℃で7日間行う。
【0119】
一実施形態では、水性組成物は、以下の特性の1つ、いくつか、または全てを有する:(i)0ppm~12ppm、または13pm、または18ppm、または20ppm、または25ppm、または30ppm未満の遊離HCHO含有量、および/または(ii)0ppm~92ppm、または95ppm、または114ppm、または115ppm、または143ppm、または145ppm、または150ppm未満の総HCHO含有量、および/または(iii)0ppm~0.8ppm、または0.9ppm、または1.0ppm、または1.9ppm、または2.0ppm未満、または2.0ppm、または6.0ppm、または10.0ppmのナッシュHCHO含有量、および/または(iv)0%超、または0.1%、または0.5%、または0.6%~8.2%、または8.5%、または9.0%の60°の光沢、および/または(v)0%超、または1%、または5%、または7%~8%、または10%、または15%、または20%の85°の光沢、および/または(vi)1~2の粘着性評価、および/または(vii)水性組成物が安定している。
【0120】
一実施形態では、水性組成物は、
(A)MSLPPの総重量に基づき、40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%、または80重量%~85重量%、または90重量%、または95重量%の第1段階のポリマーであって、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づき、(i)1重量%、または2重量%,または3重量%~6重量%、または7重量%、または8重量%、または9重量%、または10重量%のMOAの重合単位、および(ii)第1段階のポリマーの乾燥重量に基づき、90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%~97重量%、または98重量%、または99重量%の第1のビニルモノマーの重合単位を含む、第1段階のポリマー、
(B)MSLPPの総重量に基づき、5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%の第2段階のポリマーであって、第2段階のポリマーの乾燥重量に基づき、(i)1重量%、または2重量%、3重量%、または4重量%、5重量%~6重量%、または7重量%、または8重量%、または9重量%、または10重量%、または11重量%、または12重量%、または13重量%、または14重量%、または15重量%のMAEEUの重合単位、および(ii)第2段階のポリマーの乾燥重量に基づき、85重量%、または86重量%、または87重量%、または88重量%、または89重量%、または90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%、または95重量%~96重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%の第2のビニルモノマーの重合単位を含む、第2段階のポリマー、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなるMSLPPを含むか、本質的にMSLPPからなるか、またはMSLPPからなり、
第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合しており、
MSLPPは、次の特性:(1)第1段階のポリマーがMAEEUを欠いているか、もしくは実質的に欠いている、および/または(2)第2段階のポリマーが、MOAを欠いているか、もしくは実質的に欠いている、および/または(3)MSLPPにおける第1段階のポリマーと第2段階のポリマーとの重量比が、0.6:1、もしくは0.8:1、もしくは1:1、もしくは1.2:1、もしくは1.5:1、もしくは1.8:1、もしくは2.3:1、もしくは3:1、もしくは4:1、もしくは5.7:1、もしくは9:1、もしくは19:1である、および/または(4)MSLPPが0.03μm~5μm、もしくは20μmのD50粒子サイズを有する、および/または(5)MSLPPが、0.03μm、もしくは0.05μm、もしくは0.08μm、もしくは0.10μm、もしくは0.20μmもしくは、0.25、もしくは0.29~0.30μm、もしくは0.40μm、もしくは0.45、もしくは0.50μm、もしくは0.60μm、もしくは0.70μm、もしくは0.80μm、もしくは0.90μm、もしくは1.0μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子を有する、および/または(6)MSLPPが、1μm、もしくは2μm、もしくは3μm、もしくは4μm、もしくは5μm~6μm、もしくは7μm、もしくは9μm、もしくは10μm、もしくは15μm、もしくは18μm、もしくは19μm、もしくは20μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子を含む、のうちの1つ、いくつか、または全てを有し、
水性組成物は、以下の特性:(1)水性組成物が、水性組成物の総重量に基づいて、1重量%、もしくは5重量%、もしくは7重量%、もしくは10重量%、もしくは15重量%、19重量%、もしくは20重量%、もしくは21重量%、もしくは25重量%~26重量%、もしくは30重量%、もしくは35重量%、もしくは40重量%のバインダー粒子を含む、および/または(2)水性組成物が、水性組成物の総重量に基づいて、5重量%、もしくは8重量%、もしくは10重量%、もしくは15重量%、もしくは20重量%、もしくは22重量%、もしくは25重量%、もしくは30重量%、もしくは35重量%、もしくは40重量%、もしくは44重量%~45重量%、もしくは50重量%、もしくは55重量%、もしくは60重量%、もしくは65重量%、もしくは70重量%、もしくは80重量%の微小球粒子を含む、および/または(3)0ppm~12ppm、もしくは13pm、もしくは18ppm、もしくは20ppm、もしくは25ppm、もしくは30ppm未満の遊離HCHO含有量、および/または(4)0ppm~92ppm、もしくは95ppm、もしくは114ppm、もしくは115ppm、もしくは143ppm、もしくは145ppm、もしくは150ppm未満の総HCHO含有量、および/または(5)0ppm~0.8ppm、もしくは0.9ppm、もしくは1.0ppm、もしくは1.9ppm、もしくは2.0ppm未満、もしくは2.0ppm、もしくは6.0ppm、もしくは10.0ppmのナッシュHCHO含有量、および/または(6)0%超、もしくは0.1%、もしくは0.5%、もしくは0.6%~8.2%、もしくは8.5%、もしくは9.0%の60°の光沢、および/または(7)0%超、もしくは1%、もしくは5%、もしくは7%~8%、もしくは10%、もしくは15%、もしくは20%の85°の光沢、および/または(8)1~2の粘着性評価、および/または(9)水性組成物が安定している、のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0121】
前述のMSLPPを含む、本明細書に開示されるMSLPPの各々における成分の合計は、100重量%になることが理解される。
【0122】
前述の水性組成物を含む、本明細書に開示される水性組成物の各々における成分の合計は、100重量%になることが理解される。
【0123】
特定の理論に拘束されることを望まないが、第1段階のポリマー中のMOAの存在は、本水性組成物に自己架橋する能力を提供すると考えられている。しかしながら、ホルムアルデヒドはMOAの乳化重合の副産物である。水性組成物、ならびに水性組成物から形成された成分を含む物品中のホルムアルデヒドの存在は、水性組成物および物品の製造業者、ならびに最終的に使用する消費者の両方にとって望ましくない。
【0124】
(A’)(i)ホルムアルデヒド捕捉モノマーおよび(ii)第2のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーならびに(B’)(i)n-メチロール官能性モノマーおよび(ii)第1のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーを含むように、第1段階のポリマーおよび第2段階のポリマーそれぞれの組成が切り替えられたMSLPPを含む別の組成物が提供される。(A’)第1段階のポリマーは(B’)第2段階のポリマーに結合する。ホルムアルデヒド除去モノマーとn-メチロール官能性モノマーはそれぞれ、MSLPPの異なる段階のポリマーに含まれている。
【0125】
水性組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0126】
E.物品
一実施形態では、基材および上記の水性組成物を含む物品を調製することができる。基材は水性組成物と接触している。
【0127】
適切な基材の非限定的な例には、不織布、紙、プラスチック、皮革、石膏、石膏ボード、ガラス、金属、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0128】
一実施形態では、物品は、不織布を含む。不織布の非限定的な例は、編まれた布地である。人工繊維の非限定的な例には、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、およびそれらの組み合わせが含まれる。好適な天然繊維の非限定的な例には、羊毛、セルロースおよびそれらの組み合わせが含まれる。セルロース繊維の非限定的な例には、綿、麻、およびそれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、繊維は、人工繊維、セルロース繊維、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0129】
一実施形態では、物品は、不織布、および不織布上のコーティングを含む。コーティングは、(A)(i)MOAおよび(ii)第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーと、(B)(i)MAEEUおよび(ii)第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーとを含むMSLPPを含む組成物を含む。第1段階のポリマーは第2段階のポリマーに結合している。
【0130】
コーティングは不織布と接触している。一実施形態では、コーティングは、コーティングが不織布の厚さ全体にわたって繊維と接触するように、不織布全体に、または実質的に不織布全体に分散される。
【0131】
一実施形態では、コーティングは、不織布、またはさらに不織布の繊維に直接接触する。本明細書で使用される場合、「直接接触する」という用語は、コーティングが不職布(またはさらに、繊維)に直接隣接して配置され、コーティングが不職布(またはさらに、繊維)に接触し、介在層、介在コーティング、および/または介在構造がコーティングと不職布との間に存在しないコーティングの配置である。
【0132】
別の実施形態では、コーティングは、不織布、またはさらに不織布の繊維に間接的に接触する。本明細書で使用される場合、「間接接触する」という用語は、介在層、介在コーティング、および/または介在構造がコーティングと布地(またはさらに、繊維)との間に存在するコーティングの配置である。
【0133】
一実施形態では、不織布を含む物品は、6000g/インチ、または6500g/インチ、または7000g/インチ、または7100g/インチ~7500g/インチ、または8000g/インチ、または9000g/インチ、または10000g/インチ、または15000g/インチ、または20000g/インチの乾燥張力を有する。
【0134】
一実施形態では、不織布を含む物品は、2000g/インチ、または2100g/インチ~3500g/インチ、または4000g/インチ、または5000g/インチ、または10000g/インチ、または15000g/インチ、または20000g/インチの湿潤張力を有する。
【0135】
一実施形態では、不織布を含む物品は、20%、または25%、または30%~45%、または50%、または55%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または100%の湿潤張力保持率を有する。別の実施形態では、物品は、20%~100%、または25%~80%、または30%~80%の湿潤張力保持率を有する。20%~100%の湿潤張力保持率は、コーティングが、洗浄可能であるべき衣類など、普通水にさらされる物品用途のため、不織布の繊維を互いに十分に結合することを示す。十分な湿潤張力保持率がないと、水にさらされた後、物品はほつれたり、バラバラになったりする。
【0136】
一実施形態では、不織布を含む物品は、2000g/インチ、または2500g/インチ、または3000g/インチ~4000g/インチ、または4500g/インチ、または5000g/インチ、または10000g/インチ、または20000g/インチのイソプロピルアルコール(IPA)張力を有する。
【0137】
一実施形態では、不織布を含む物品は、35%、または40%、または43%~50%、または55%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または100%のIPA張力保持率を有する。
【0138】
一実施形態では、不織布を含む物品は(i)20%、または25%、または30%~45%、または50%、または55%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または100%の湿潤張力保持率、および(ii)35%、または40%、または43%~50%、または55%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または100%のIPA張力保持率を有する。
【0139】
一実施形態では、物品は、1~2までの粘着性評価を有する。
【0140】
一実施形態では、物品は、0%超、または0.1%、または0.5%、または0.6%~8.2%、または8.5%、または9.0%の60°の光沢を有する。
【0141】
一実施形態では、物品は、0%超、または1%、または5%、または7%~8%、または10%、または15%、または20%の85°の光沢を有する。
【0142】
一実施形態では、物品は、不織布および不織布上のコーティングを含む。コーティングは、
(A)粒子の総重量に基づき、40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%、または80重量%から、85重量%、または90重量%、または95重量%の第1段階のポリマーであって、第1段階のポリマーの乾燥重量に基づき、(i)1重量%、または2重量%、または3重量%~6重量%、または7重量%、または8重量%、または9重量%、または10重量%のMOAの重合単位、および(ii)第1段階のポリマーの乾燥重量に基づき、90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%~97重量%、または98重量%、または99重量%の第1のビニルモノマーの重合単位を含む、第1段階のポリマー、
(B)粒子の総重量に基づき、5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%の第2段階のポリマーを含み、(i)第2段階のポリマーの乾燥重量に基づき、1重量%、または2重量%、または3重量%、または4重量%~5重量%、または6重量%、または7重量%、または8重量%、または9重量%、または10重量%、または11重量%、または12重量%、または13重量%、または14重量%、または15重量%のMAEEUの重合単位、および(ii)第2段階のポリマーの乾燥重量に基づき、85重量%、または86重量%、または87重量%、または88重量%、または89重量%、または90重量%、または91重量%、または92重量%、または93重量%、または94重量%、または95重量%~96重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%の第2のビニルモノマーの重合単位を含む、第2段階のポリマー、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなるMSLPPを含む組成物を含み、
第1段階のポリマーは、第2段階のポリマーに結合しており、
MSLPPは、以下の特性:(1)第1段階のポリマーが、MAEEUを欠いているか、もしくは実質的に欠いている、および/または(2)第2段階のポリマーが、MOAを欠いているか、もしくは実質的に欠いている、および/または(3)第1段階のポリマーと第2段階のポリマーとの重量比が、0.6:1、もしくは0.8:1、もしくは1:1、もしくは1.2:1、もしくは1.5:1、もしくは1.8:1、もしくは2.3:1、もしくは3:1、もしくは4:1、もしくは5.7:1、もしくは9:1、もしくは19:1からである、および/または(4)MSLPPが0.03μm、または0.10μm、または0.20μm、または0.25、または0.29~0.30μm、または0.40μm、または0.45、または0.50μm、または0.60μm、または0.70μm、または0.80μm、または0.90μm、または1.0μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子を含む、および/または(5)MSLPPが、1μm、または2μm、または3μm、または4μm、または5μm~6μm、または7μm、または8μm、または10μm、または15μm、または20μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子を含む、のうちの1つ、いくつか、または全てを有し、
組成物は、以下の特性:(1)水性組成物が、水性組成物の総重量に基づいて1重量%、もしくは5重量%、もしくは7重量%、もしくは10重量%、もしくは、15重量%、19重量%、もしくは20重量%、もしくは21重量%、もしくは25重量%~26重量%、もしくは30重量%、もしくは35重量%、もしくは40重量%のバインダー粒子を含む、および/または(2)水性組成物が、5重量%、もしくは8重量%、もしくは10重量%、もしくは15重量%、もしくは20重量%、もしくは22重量%、もしくは25重量%、もしくは30重量%、もしくは35重量%、もしくは40重量%%、もしくは44重量%~45重量%、もしくは50重量%、もしくは55重量%、もしくは60重量%、もしくは65重量%、もしくは70重量%、もしくは80重量%の微小球粒子を含む、および/または(3)0ppm~12ppm、もしくは13pm、もしくは18ppm、もしくは20ppm、もしくは25ppm、もしくは30ppm未満の遊離HCHO含有量、および/もしくは(4)0ppm~92ppm、もしくは95ppm、もしくは114ppm、もしくは115ppm、もしくは143ppm、もしくは145ppm、もしくは150ppm未満の総HCHO含有量、および/または(5)0ppm~0.8ppm、もしくは0.9ppm、もしくは1.0ppm、もしくは1.9ppm、もしくは2.0ppm未満、もしくは2.0ppm、もしくは6.0ppm、もしくは10.0ppmのナッシュHCHO含有量、および/または(6)0%超、もしくは0.1%、もしくは0.5%、もしくは0.6%~8.2%、もしくは8.5%、もしくは9.0%の60°の光沢、および/または(7)0%超、もしくは1%、もしくは5%、もしくは7%~8%、もしくは10%、もしくは15%、もしくは20%の85°の光沢、および/または(8)1~2の粘着性評価、および/または(9)水性組成物が安定している、のうちの1つ、いくつか、または全てを有する水性組成物から形成され、
この物品は、次の特性:(1)6000g/インチ、もしくは6500g/インチ、もしくは7000g/インチ、もしくは7100g/インチから7500g/インチ、もしくは8000g/インチ、もしくは9000g/インチ、もしくは10000g/インチ、もしくは15000g/インチ、もしくは20000g/インチの乾燥張力、および/または(2)2000g/インチ、もしくは2100g/インチ~3500g/インチ、もしくは4000g/インチ、もしくは5000g/インチ、もしくは10000g/インチ、もしくは15000g/インチ、もしくは20000g/インチの湿潤張力、および/または(3)20%、もしくは25%、もしくは30%~45%、もしくは50%、もしくは55%、もしくは60%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは90%、もしくは95%、もしくは100%の湿潤張力保持率、および/または(4)2000g/インチ、もしくは2500g/インチ、もしくは3000g/インチから4000g/インチ、もしくは4500g/インチ、もしくは5000g/インチ、もしくは10000g/インチ、もしくは15000g/インチ、もしくは20000g/インチのIPA張力、および/または(5)35%、もしくは40%、もしくは43%~50%、もしくは55%、もしくは60%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは90%、もしくは95%、もしくは100%のIPA張力保持率、および/または(6)0%超、もしくは0.1%、もしくは0.5%、もしくは0.6%~8.2%、もしくは8.5%、もしくは9.0%の60°の光沢、および/または(7)0%超、もしくは1%、もしくは5%、もしくは7%~8%、もしくは10%、もしくは15%、もしくは20%の85°の光沢、および/または(8)1~2までの粘着性評価、のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0143】
上記のような物品は、典型的には、不織布を水性組成物と接触させ、次いで、移動する空気への曝露、25℃を超える温度への曝露、またはそれらの組み合わせによって水を蒸発させることによって作製することができる。不織布を本水性組成物と接触させる非限定的な方法には、浸漬、ブラシがけ、噴霧、さっと漬ける、注入、およびそれらの組み合わせが含まれる。特定の理論にとらわれないが、水の蒸発中または蒸発後に、MSLPP上の潜在的な架橋基が互いに化学反応を起こし、MSLPP間に共有結合を形成すると考えられている。潜在的な架橋基によって形成される結合は、第1段階のポリマーを第2段階のポリマーに接続し、異なるMSLPPに存在するポリマー鎖も接続する。
【0144】
一実施形態では、水性組成物は、例えばフラットマットの形態である、不織布と接触する。不織布は、水性組成物と接触する前は繊維が互いに結合され、またはされていなくても良い。水性組成物から水が蒸発するか、または実質的に蒸発して、不織布と接触するコーティングを形成する。
【0145】
好適な物品の非限定的な例には、衣類、タオル、寝具、ブランケット、看板、ウェットタオル、フィルター、靴、バッグ、おもちゃ、旗、家具、カーテン、カーペット、カーペット裏地、壁装材、自動車用途(例えば、天井の内張り、フードライナー、フローリング、座席の詰め物など)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0146】
本物品は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0147】
ここで、限定ではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、次の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0148】
実施例において使用されるモノマーは、下記の表1に提供する。
【表2】
【0149】
A.バインダー粒子を含む水性組成物の代表的な調製
サンプル1およびサンプル11のバインダー粒子を含む水性組成物は、以下の重合手順を使用して2段階乳化重合で形成される。
1.ウォーターバスの温度を40℃に設定し、攪拌速度を75回転/分(RPM)に設定する。(表2の)Aを反応ボトルへ加え、次いでパージに5分間N
2でボトルをパージする。
2.A(表2の)反応混合物BをN
2で5分間パージし、Aが入っている反応ボトルに移す。
3.N
2でAおよびBを含有する反応容器をパージし、かつ迅速にガスケットでボトルをキャップする。キャップをした反応ボトルをウォーターバスに入れる。
4.(表2の)CおよびDをN
2で5分間パージし、次にCおよびDをAおよびBを含む反応ボトルに注入する。反応ボトルを40℃の温度で120分間攪拌する。
5.(表2の)EとFをN
2で5分間パージしてから、反応ボトルに注入する。反応ボトルを40℃の温度で60分間撹拌する。
6.(表2の)第2段階の混合物GをN
2で5分間パージしてから、反応ボトルに注入する。
7.(表2の)HをN
2で5分間パージし、反応ボトルに注入する。反応ボトルを40℃の温度で60分間撹拌する。
8.(表2の)IとJをN
2で5分間パージし、反応ボトルに注入しする。反応ボトルを40℃の温度で一晩攪拌する。
9.室温(23℃)まで冷却し、ラテックスポリマーサンプルを収集し、第1段階/第2段階のラテックスポリマーサンプルの特性を明らかにする。
【表3-1】
【表3-2】
【0150】
水性組成物サンプル1~12は、サンプル1および11を調製するための上記の手順を使用して調製される。各サンプルにおいて、乾燥した第1段階のポリマーと乾燥した第2段階のポリマーの重量比は80:20である。
【0151】
水性組成物サンプル13は、第2段階のポリマーを欠く第1段階のポリマーである。
【0152】
水性組成物サンプル1~13の組成および特性を以下の表3に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0153】
水性組成物サンプル1~4、9、11、および12は、濾紙を水性組成物でコーティングすることにより、グレード4のWHATMAN(商標)濾紙(不織布、2.5オンス/ヤード(86g/cm)の湿潤した重ねた木材パルプから形成)上へコーティングされる。具体的には、濾紙を300mLの水性組成物に0.1秒超から1分未満の期間浸漬し、(ii)水性組成物から取り出し、(iii)Mathis(商標)パダーでパディングし、(iv)150℃の温度のオーブンで3分間乾燥および架橋して、架橋物品を形成する。ポリマー粒子の付加は、全架橋物品の25重量%になるように制御される。不織布と接触するコーティングを有する物品が形成される。水性組成物サンプル1~4、9、11、および12から形成されたコーティングを有する物品サンプルの特性を以下の表4に提供する。
【0154】
表3および4において、重量パーセントは、第1段階のポリマーおよび第2段階のポリマーそれぞれの総重量に基づいている。言い換えれば、サンプル1の第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの総重量に基づいて、50重量%のEAおよび50重量%のBAを含む。表3、表4において、「HCHO」はホルムアルデヒド、「NM」は測定されていない値を示している。
【表5】
【0155】
サンプル1、5、および9は、(A)第1のビニルモノマーを含むがMOAを欠く第1段階のポリマーならびに(B)第2のビニルモノマーおよびMOA(MAEEUではなく)を含む第2段階のポリマーを有するバインダー粒子を含有する水性組成物である。表3に示すように、サンプル1、5、および9は、それぞれ10.0ppmを大幅に超える(それぞれ、274ppm、359ppm、および76ppm)ナッシュHCHO含有量を示す。したがって、サンプル1、5、および9は、MOAの乳化重合中にホルムアルデヒドが形成されることを示している。サンプル1、5、および9はそれぞれ10.0ppmを超えるナッシュHCHO含有量を示すため、サンプル1、5、および9から形成されたコーティングを施した物品は、天井の内張りやフードライナーなどの自動車用途での使用には適していない。
【0156】
サンプル2、6、および10は、(A)第1のビニルモノマーを含むがMOAを欠く第1段階のポリマーならびに(B)第2のビニルモノマーおよびMAEEUを含有する第2段階のポリマーを含有するバインダー粒子を含む水性組成物である。したがって、サンプル2、6、および10には、ホルムアルデヒドを生成するモノマー(MOA)が含まれていないため、表3に示すように、10.0ppm未満のナッシュHCHO含有量を示す。しかしながら、表4は、サンプル2から形成されたコーティングを有する物品が、(i)20%未満の湿潤張力保持率および(ii)35%未満のIPA張力保持率を示すことを示している。湿潤張力保持率が20%未満の物品は、水にさらされるとほつれたりバラバラになったりするため、洗濯可能であるべき衣類など、普通、水にさらされる物品の用途には適していない。
【0157】
出願人は、(A)MOAおよび第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーならびに(B)MAEEUおよび第2のビニルモノマーを含有する第2段階のポリマーを有するバインダー粒子を含む水性組成物(サンプル3、7、および11)は、表3に示すように、2.0ppm未満の好適なナッシュHCHO含有量を有利に示すことを予期せず発見した。さらに、表4は、サンプル3または11から形成されたコーティングを有する物品が、驚くべきことに、(i)少なくとも20%の湿潤張力保持率および(ii)少なくとも35%のIPA張力保持率の両方を示すことを示している。したがって、サンプル3または11から形成されたコーティングを施した物品は、洗濯可能であるべき衣類など、普通、水にさらされる物品の用途に適している。
【0158】
出願人は、(A)MAEEU(MOAではなく)および第1のビニルモノマーを含む第1段階のポリマーならびに(B)MOA(MAEEUではなく)および第2のビニルモノマーを含む第2段階のポリマーを有するバインダー粒子を含む水性組成物(サンプル4、8、および12)は、有利なことに表3に示すように、10ppm未満の含有量のナッシュHCHO含有量を示すことを予期せず発見した。したがって、サンプル4、8、および12から形成されたコーティングを施した物品は、天井の内張りやフードライナーなどの自動車用途での使用に適している。
【0159】
B.微小球粒子を含む水性組成物
アクリルオリゴマーシード(AOS)の水性分散液は、US8,686,096、実施例1および5(19列および20列)に記載されているように調製される。水性分散液は、33重量%の固形分を有する。アクリルオリゴマーシードには、67重量%のアクリル酸ブチル(BA)、18重量%n-ドデシルメルカプタン、14.8重量%メタクリル酸メチル(MMA)、および0.2重量%のメタクリル酸(MAA)が含まれる。ディスク遠心光沈降法(DCP)による決定では、アクリルオリゴマーシードは、855nm(0.855μm)のD50粒子サイズ、および5%の変動係数を有す。アクリルオリゴマーシードは、2,532g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0160】
サンプル14~16の第1のモノマーエマルジョン(ME 1)は、脱イオン水(218g)、Siponate(商標)DS-4分岐アルキルベンゼンスルホン酸(7.27g、22.5重量%水溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アクリル酸n-ブチル(BA、444.13g)、およびALMA(18.53g)を組み合わせて最初のフラスコで調製する。サンプル17の第1のモノマーエマルジョン(ME 1)は、MOA(11.28g)(水に45重量%のn-メチロールアクリルアミドを含む商品名FLOCRYL MOA 45でSNF Floergerから入手可能)も含むフラスコで調製される。
【0161】
開始剤エマルジョン(IE)は、脱イオン水(8.4g)、Siponate(商標)DS-4(0.091g、22.5重量%水溶液)、およびt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPEH、2.4g、98重量%活性)を組み合わせて、別のバイアルで調製する。IEは、5,000rpmで、ホモジナイザーで5分間乳化される。
【0162】
脱イオン水(730.6g)を2段乳化重合反応器に加え、90℃に加熱した後、アクリルオリゴマーシード(AOS)(5.65g、固形分33%)を反応器に加え、続いて15分をかけて第1のモノマーエマルジョン(ME 1)を添加する。60分間保持した後、開始剤エマルジョン(IE)を反応器にショット添加し、重合反応を開始する。発熱により、反応器の温度が90℃に上昇する。ピーク発熱温度で、反応を5分間保持し、次に78℃に冷却する。
【0163】
イソアスコルビン酸(IAA)のショット(5.6gの水に0.175g)を反応器に加える。
【0164】
第2のモノマーエマルジョン(ME 2)は別のフラスコで調製される。サンプル14~17の第2のモノマーエマルジョン(ME 2)の成分は、以下の表5に提供されている。
【表6】
【0165】
第2のモノマーエマルジョン(ME 2)、t-ブチルヒドロペルオキシド溶液(t-BHP、0.649g(39.7gの水に70重量%)、およびIAA(39.7の水に0.29g)が45分にわたって反応器に供給される。残りのモノマーに次いでFeSO 4・7H2O(0.07g)、t-BHPの溶液(21.2gの水に1.12g(70%水溶液))、およびIAA(15.6gの水に0.56g)を反応器へ供給する。得られた分散液は、ACRYSOL(商標)ASE-60レオロジー調整剤(The Dow Chemical Companyから入手可能)を使用して増粘した後、中和する。得られた分散液を保存するために殺生物剤が添加される。分散液は45μmスクリーンで濾過される。スクリーンに残ったゲルを集めて乾燥させる(0.5重量%)。濾液の固形分を分析する。
【0166】
サンプル14~17の組成を以下の表6に示す。表6において、重量パーセントは、第1段階のポリマーおよび第2段階のポリマーそれぞれの総重量に基づいている。言い換えれば、サンプル14の第1段階のポリマーは、第1段階のポリマーの総重量に基づいて、96重量%のBAおよび4重量%のALMAを含む。
【表7】
【0167】
C.バインダー粒子および微小球粒子を含むコーティング組成物
つや消しされた透明なコーティング組成物のサンプルは、3ピンの攪拌棒を使用して攪拌しながらプラスチック塗料容器で調製される。サンプル14、16、または17(上記のとおり)の1つを分散液として容器に追加し、続いて(i)水、(ii)増粘剤、(iii)サンプル2、11、または13(上記のとおり)の1つ、および(iv)塩基(水酸化アンモニウム水溶液、28重量%溶液)を加える。混合物を5分間撹拌し、次にドローダウンをLeneta 5C不透明度チャート上に3ミルのバードドローダウンバーを使用して調製する。コーティングは105℃の強制空気オーブンで5分間乾燥される。
【0168】
各コーティング組成物サンプルの組成および特性を、以下の表7に提供する。
【表8】
【0169】
出願人は、予想外のことに、(1)(A)EA、MMA、およびMOAを含む第1段階のポリマーおよび(B)EA、MMA、およびMAEEUを含む第2段階のポリマーを有するバインダー粒子(サンプル11)ならびに(2)(A)BA、ALMA、MOAを含む第1段階のポリマーおよび(B)MMA、EA、およびMAEEUを含む第2段階のポリマーを有する微小球粒子(サンプル17)の両方を含有する水性組成物から形成されたコーティングを有する物品(サンプル18および19)が(i)1または2の粘着性評価によって証明されるように、低い粘着性、(ii)9%未満の60°光沢、および(iii)20%未満の85°光沢を示すことを見出した。粘着性評価が1または2であることから明らかなように、粘着性が低いということは、粘着性評価が高い(3または4の)比較品よりも、触覚が向上し、ブロック化抵抗が高く、汚れの付着が少ないことを示す。その結果、本物品は、柔軟なおよび剛性の基材をコーティングするのに好適な低光沢および低感触のコーティングである。
【0170】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、以下の特許請求の範囲にある実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組み合わせを含む、これらの実施形態の変更された形態を含むことが、明確に意図されている。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
多段ラテックスポリマー粒子を含む水性組成物であって、前記多段ラテックスポリマー粒子は、
(A)
(i)n-メチロール官能性モノマー、
(ii)第1のビニルモノマーを含む、第1段階のポリマーと、
(B)
(i)ホルムアルデヒド捕捉モノマー、
(ii)第2のビニルモノマーを含む、第2段階のポリマーと、を含み、
前記第1段階のポリマーが前記第2段階のポリマーに結合されている、水性組成物。
[2]
多段ラテックスポリマー粒子を含む水性組成物であって、前記多段ラテックスポリマー粒子は、
(A)
(i)n-メチロールアクリルアミド、
(ii)第1のビニルモノマーを含む、第1段階のポリマーと、
(B)
(i)n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素、
(ii)第2のビニルモノマーを含む、第2段階のポリマーと、を含み、
前記第1段階のポリマーが前記第2段階のポリマーに結合されている、水性組成物。
[3]
前記第1段階のポリマーが、前記第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~10重量%の、前記n-メチロールアクリルアミドの重合単位を含む、[2]に記載の水性組成物。
[4]
前記第2段階のポリマーが、前記第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~15重量%の、前記n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素の重合単位を含む、[2]または[3]に記載の水性組成物。
[5]
前記第1のビニルモノマーおよび前記第2のビニルモノマーが、それぞれ独立して、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸アリル、スチレン、ジビニルベンゼン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]~[4]のいずれか1項に記載の水性組成物。
[6]
前記粒子が、バインダー粒子、微小球粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]~[5]のいずれか1項に記載の水性組成物。
[7]
前記多段ラテックスポリマー粒子が、0.03μm~1μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の水性組成物。
[8]
前記多段ラテックスポリマー粒子が、1μm~20μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の水性組成物。
[9]
前記水性組成物の全重量に基づいて、
1重量%~40重量%のバインダー粒子と、
5重量%~80重量%の微小球粒子と、を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載の水性組成物。
[10]
前記組成物が0~10.0ppmのナッシュホルムアルデヒド含有量を有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の水性組成物。
[11]
[1]~[10]のいずれか1項に記載の水性組成物と接触している不織布を含む物品。
[12]
不織布、
前記不織布上のコーティングを含む物品であって、前記コーティングが、多段ラテックスポリマー粒子を含む組成物を含み、前記多段ラテックスポリマー粒子が、
(A)
(i)n-メチロールアクリルアミド、
(ii)第1のビニルモノマーを含む、第1段階のポリマーと、
(B)
(i)n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素、
(ii)第2のビニルモノマーを含む、第2段階のポリマーと、を含み、
前記第1段階のポリマーが前記第2段階のポリマーに結合している、物品。
[13]
前記第1段階のポリマーが、前記第1段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~10重量%の、前記n-メチロールアクリルアミドの重合単位を含む、[12]に記載の物品。
[14]
前記第2段階のポリマーが、前記第2段階のポリマーの乾燥重量に基づいて、1重量%~15重量%の、前記n-(2-メタクリロイルオキシエチレン)エチレン尿素の重合単位を含む、[12]または[13]に記載の物品。
[15]
前記第1のビニルモノマーおよび前記第2のビニルモノマーが、それぞれ独立して、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸アリル、スチレン、ジビニルベンゼン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[12]~[14]のいずれか一項に記載の物品。
[16]
前記粒子が、バインダー粒子、微小球粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[12]~[15]のいずれか一項に記載の物品。
[17]
前記多段ラテックスポリマー粒子が、0.03μm~1μm未満のD50粒子サイズを有するバインダー粒子である、[12]~[16]のいずれか一項に記載の物品。
[18]
前記多段ラテックスポリマー粒子が、1μm~20μmのD50粒子サイズを有する微小球粒子である、[12]~[16]のいずれか一項に記載の物品。
[19]
前記組成物が0~10.0ppmのナッシュホルムアルデヒド含有量を有し、前記物品が30%~100%の湿潤張力保持率を有する、[12]~[18]のいずれか一項に記載の物品。
[20]
前記物品が1~2の粘着性評価を有する、[12]~[19]のいずれか一項に記載の物品。