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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ステントデバイスデリバリーツール
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20241107BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021519158
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 GB2019053238
(87)【国際公開番号】W WO2020128417
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】1820899.1
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503116084
【氏名又は名称】バスクテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VASCUTEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー マクドナルド
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-529719(JP,A)
【文献】特表2008-506459(JP,A)
【文献】特表2012-520153(JP,A)
【文献】特表2013-511335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントデバイス展開装置であって、
少なくとも、非展開状態にしぼんだシース付きステントデバイスの長さを受容する内部ボアを有し、患者側の近位端及びユーザ側の遠位端を有する本体であって、前記シース付きステントデバイスはファブリック及びリング要素を有する、該本体と、
前記ボア内に存在する任意のステントデバイスが前記本体の遠位端へ通過することを制限するボアリストリクションであって、1つ又は複数の開口部を有する該ボアリストリクションと、を備え、前記ボアリストリクションは、前記ボア内のステントデバイスのシース材料が、前記本体の前記遠位端でアクセスされ、前記ステントデバイスのシース材料の一部を受容するように構成された前記開口部を有する前記ボアリストリクションを越えて引っ張られることができるように構成され、それによって前記ステントデバイスがその近位端で露出される、ステントデバイス展開装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記1つまたは複数の開口部は、前記リストリクションを通って前記ボアの長手方向に延在する2つの周方向のスロットを備える、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記スロットは、それぞれ、前記ボアの中心の周りに、周方向で90~120度の範囲の角度をなす、装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の装置であって、前記本体の前記遠位端に端部カラーをさらに備える、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記本体の内向きの壁は、前記端部カラーに向かって内向きに先細りである、装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の装置であって、前記本体は側部窓をさらに備える、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、前記側部窓は、前記ステントデバイスが装置本体およびシース材料から外に通過するために、前記ボアの軸に対して実質的に垂直な経路を提供する、装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の装置であって、前記本体は、その内部へのアクセスを可能にする開閉可能なカバーを備える、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、開閉可能な前記カバーは、ヒンジ式に取り付けられている、装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の装置であって、前記カバーは、ロッキングピンによって、閉位置にロック可能である、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、前記ロッキングピンは、シース材料のプルストラップと結合可能であり、前記プルストラップはさらに、前記本体の遠位端のシース材料と結合可能である、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、前記ロッキングピンは、所定の範囲のシース材料が前記本体の前記遠位端から引っ張られた場合にのみ、前記本体から取り外されるように作動され、前記カバーのロックを解除する、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記ロッキングピンは、コードによって前記プルストラップに結合され、前記コードは、前記プルストラップに結合されたシース材料の範囲に対して制御された範囲のたるみを有する、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置であって、前記本体に結合されたハンドルをさらに備え、前記ハンドルは開口部を備え、前記本体の遠位端のシース材料は、前記開口部を通って前記プルストラップへと延びる、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記ハンドルは1つまたは複数の柔軟な部材を介して前記本体に結合されている、装置。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の装置であって、前記ボアは、前記ボア内のステントデバイスのシース材料の分割を促進するプロファイル化された要素を備える、装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記要素はウェッジ部材である、装置。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載の装置であって、前記本体は、長手方向のスロットを備える実質的に円形のチューブを備える、装置。
【請求項19】
請求項1~18の何れか一項に記載の装置であって、圧縮された実質的に剛性の構成から放射状に拡張された構成まで展開可能であるステントデバイスと共に使用するための、装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、前記ステントデバイスは、鱗片状のリング要素で形成されている、装置。
【請求項21】
請求項1~20の何れか一項に記載の装置であって、非展開状態にしぼみ、展開の準備ができて本体内に装填されたシース付きステントデバイスの長さを有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデバイスデリバリーツール、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連して、大動脈解離および動脈瘤に対する現在の治療方法では、主に、従来の外科的グラフトおよび開放手術が利用される。血管内治療法も可能である。しかしながら、純粋に血管内アプローチによって大動脈弓の頂部から放射状に伸びるすべての主要な分枝血管への灌流を維持することは複雑である。そのため、血管内治療法は現在のところ、非常に限られている。
【0003】
さらに、従来の外科的グラフトを使用する場合、しばしば完全な開胸、すなわち胸腔を大きく外科的に開口する必要がある。これは、典型的には、冠動脈バイパス術を必要とし、また低体温および心停止を誘導する必要がある。このような外科的処置を行うことは、更なる合併症の危険がないわけではない。
【0004】
さらに、既知の血管内ステントデバイスデリバリーシステムは、内部のデリバリーサポートシャフトに依存しており、挿入を容易にするために、典型的にはその端部に一体成形されたチップを備え、装置を支持し、展開するためのマウントループおよびリリースワイヤも備える。このタイプの装置では、デバイスを、チップ端部でデリバリーシステムから吊り下げることができる。それは、シースからの抜き取りが終わるまでそこに保持される。その後、それをデリバリーシステムからリリースすることができる。典型的に、リリースワイヤによってリリースした後、次に、支持している内部のセントラルシャフトおよびチップアセンブリを、これらアイテムをデバイスルーメンの内側を通して引き込んで、ステントデバイス内部から完全に取り外さなければならない。意図せずに引っ掛かって、先に展開されたデバイスを外してしまうという潜在的なリスクを克服するために、これらのアイテムを注意深く取り外す必要がある。この機能を提供するために、典型的に、デリバリーシステムはシャフトの内部ルーメンおよびチップ成形品を通過するガイドワイヤなどの他の補助要素を必要とする。
【0005】
このようなコンポーネントでは、必要な場合でも、ステント装着部分を展開する前に、デバイスの非ステント装着端部を補助デバイスまたは本来の血管のいずれかに吻合することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、現在利用可能なものに関連する問題を軽減することができる改良されたステントデリバリーシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ステントデバイス展開装置が提供される。ステントデバイス展開装置は、少なくとも、非展開状態にしぼんだシース付きステントデバイスの長さを受容する内部ボアを有する本体と、ボア内に存在する任意のステントデバイスが本体の遠位端へ通過することを制限するボアリストリクションと、を備える。ボアリストリクションは、ボア内のステントデバイスのシース材料が、本体の遠位端でアクセスされ、ボアリストリクションを越えて引っ張られることができるように構成され、それによってステントデバイスがその近位端で露出される。
【0008】
このような装置により、ステントデリバリーシステムは、その複雑性の点で単純化される。そのため、コンポーネントが低減されるとともに、ユーザに対する手順のステップおよび潜在的リスクが減り、時間効率がより良く単純化されたデバイス展開が可能になる。さらに、複雑になりがちなステントデバイス展開手順を、一人のユーザがコントロールすることを可能にする。
【0009】
さらに、この装置には、血管または内腔内に突出するセントラルシャフトまたは支持部がないため、接続オプションおよびタイミングに関して、手順の間の自由度がより高い。さらに、この装置では、ステントデバイスが、直径が小さく、比較的スリムで硬いカラムとして提示される。これは、より狭い血管で展開できることを意味する。
【0010】
好適には、ボアは、1つまたは複数の開口部を備える。これらは、ボアの長手方向に延在する2つの周方向のスロットの形態をとることができる。代替的に、ボアリストリクションは、ステントデバイスと係合する1つまたは複数のピンまたはプロングの形態をとることができる。
【0011】
好都合には、スロットは、ボアの中心の周りに、周方向で90~120度の範囲の角度をなす。
【0012】
好都合には、装置は、本体の遠位端に端部カラーをさらに備える。本体の内向きの壁は、端部カラーに向かって内向きに先細りになるように配置されてよく、それによってシース材料をカラーに導く。
【0013】
好都合には、本体は、シースが本体に取り付けられたままで、ステントデバイスの一部が、シース付き部分の長手方向軸から分岐することを可能にする側部窓をさらに備える。
【0014】
これに関連して、好適には、側部窓は、ステントデバイスが装置本体およびシース材料から外に通過するために、ボアの軸に対して実質的に垂直な経路を提供する。
【0015】
好適には、本体は、その内部へのアクセスを可能にする開閉可能なカバーを備える。このようにして、ステントデバイスの装置への装填および取り外しを容易にすることができる。
【0016】
好都合には、開閉可能なカバーは、ヒンジ式に取り付けられている。
【0017】
好適には、カバーは、ロッキングピンによって、閉位置にロック可能である。
【0018】
好都合には、ロッキングピンはシース材料のプルストラップと結合可能である。プルストラップはさらに、本体の遠位端のシース材料と結合可能である。
【0019】
好適には、ロッキングピンは、所定の範囲のシース材料が本体の遠位端から引っ張られた場合にのみ、本体から取り外されるように作動され、カバーのロックを解除する。
【0020】
ロッキングピンは、コードによってプルストラップに結合されてよい。コードは、プルストラップに結合されたシース材料の範囲に対して制御された範囲のたるみを有する。
【0021】
好適には、装置は、本体に結合されたハンドルをさらに備える。ハンドルは開口部を備える。本体の遠位端のシース材料は、この開口部を通ってプルストラップへと延びる。
【0022】
好都合には、ハンドルは、1つまたは複数の柔軟な部材を介して本体に結合されている。
【0023】
好都合には、ボアは、プロファイル化された要素、例えばボア内のステントデバイスシースの分割を促進する鈍いウェッジ要素を備える。
【0024】
好適には、ウェッジ要素は、それが本体の遠位端に向かって進むにつれて、シースに対して丸みを帯びた表面を呈する。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、先行する何れかの請求項に記載の装置を使用してステントデバイスを展開する方法が提供される。方法は以下のステップを含む。すなわち、少なくとも部分的にシース付きステントデバイスを本体のボア内に挿入するステップであって、シース付きステントデバイスの一部を本体の近位端から突出させ、ステントデバイスの遠位端をボア内のリストリクションに当接させ、ステントデバイスの遠位端のシース材料は、本体の遠位端でのアクセスのためにボアリストリクションを越えて延在するステップ。および、シース付きステントデバイスの近位端を、目標である血管内に提供するステップ、ステントデバイスをボアリストリクションに押し付けるためにシース材料を本体の遠位端から引っ張るステップであって、それによって、シース材料をステントデバイスに対して引き戻し、ステントデバイスの近位端を露出させ、血管内に展開させるステップである。
【0026】
デリバリーシステムをステント付きプロテーゼの周囲に外付けすることによって、デバイスを支持して展開するデリバリーシャフト、取り付けループ、およびリリースワイヤを備える必要がない。
【0027】
さらに、外部化されたデリバリーシステムには、デバイスルーメンを通るセントラルシャフトまたは支持部がない。これによって、必要であれば、ステント装着部分を展開する前に、デバイスの非ステント装着端部を補助デバイス(または本来の血管)に吻合する選択肢が可能になる。接続オプションとタイミングの点で、これによって、手順を実行する範囲が増加する。
【0028】
本発明の実施形態は、実施例によって、また以下の図面を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】適合性ステントデバイスが所定の位置にある、本発明の装置の断面図である。
図2A】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図2B】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図3】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図4】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図5A】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図5B】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図5C】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図6A】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図6B】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図6C】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図6D】適合性ステントデバイスを展開する際の本発明の実施形態の作動段階を示す図である。
図7A】本発明で使用する適合性ステントデバイスの図である。
図7B】本発明で使用する適合性ステントデバイスの図である。
図8】本発明で使用する適合性ステントデバイスの隣接するリング要素を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、装置1の断面図を示す。装置1は、適合性シース付きステントデバイス(compatible sheathed stent device)3が配置された本体2を備える。
【0031】
この点に関して、本体はボア4を備える。ボア4は、シース付きステントデバイス3がボア内に位置可能とするが、シース材料がボアおよびステントデバイスに対して移動するのを妨げるほどきつくないように、寸法設定されている。
【0032】
装置で使用する適合性シース付きステントデバイス3を、図7aおよび7bに示す。これは、好適には、典型的にはゲルコーティングされたポリエステルのファブリック製のルーメンまたはスリーブを備え、「ステント要素」20のような一連のバネが装着され、典型的に、波状のZ形状、または好適な実施形態ではサドルリング、すなわち双曲放物線の形状のニチノールワイヤから形成されたリング要素21を備える。
【0033】
適合性シース付きステントデバイスの複数のリング要素21は、ルーメンの軸に沿って配置されている。これらは、縫合糸によってファブリックに周方向に取り付けられ、ステント装着デバイス部分を形成する。ステント装着デバイス部分は、著しく小さい直径のチューブ、すなわちシース内に拘束される能力を有する。
【0034】
図7bに示すように、小口径シース内に圧縮すると、適合性シース付きステントデバイス(適切に選択されたオーバーサイズを有する)を、分枝血管の内腔内に容易に挿入することができる。ステントデバイスからシースを取り外すと、ステント装着部分が放射状に外側に拡張する本来の血管内に、ステントデバイスを展開することが可能となる。放射状に拡張するステント要素は、血管内壁に接触して押し付けられ、ぴったりとフィットする縫合されていない密封された接合部を形成する。
【0035】
圧縮された構成におけるリング要素の重なり合う性質は、展開装置での使用を容易にするカラム剛性を有するスリーブを提供する。
【0036】
適合性デバイスのこの実施例では、シースは、サドル高さを比較的高くし、リング間隔をサドル高さよりも小さくして構成し、隣接するリングの山と谷が重なり合うようにすることができる。この特性は、支持されたファブリックの隣接部分と組み合わせることにより、シースから抜き取るプロセスの前および最中に、本体2に対するステントデバイスの位置を維持するために利用される。
【0037】
図1に示すように、適合性デバイスのステント装着部分の遠位端、またはその近傍に、典型的にはゲルコーティングされたポリエステルの伸縮性のあるクリンプ構造のファブリック15の部分を設けることができる。この部分は、縫合によって接合されて取り付けられ、血液密で連続的なエンドプロテーゼのルーメンを形成する。いくつかの実施形態において、この部分はまた、「Y」形の分岐ルーメンを含むことができる。非ステント装着部分は、エンドプロテーゼをプロテーゼ本体、または代替的に本来の血管の健全な部分のいずれかに縫合することによって接合可能とし、本来の分枝血管への血液の灌流を再開するために備えられている。
【0038】
好適には、適合性ステントデバイスのシースは、追加的な溝または穿孔を必要とせずに、直線的に断裂する固有の事前位置を有する薄壁(典型的にはPTFE材料)である。シースは3つの部分を備えてよい。すなわち、圧縮されたステント装着部分の長さよりわずかに長い近位円形部分、その遠位端のテール部分、および円形部分が分割して2つのテール要素に伝搬する中間部である。
【0039】
これらの平坦なリボン状のテール要素7は、円形部分の端部から発し、折り畳みによって形成することができる。形成されたテールは、本体2内のリストリクション5を通って、または通過して、個別のストラップ要素に送り出される。そこで、これらを一緒に結ぶことができ、シースを取り外すための単一のユーザインターフェイスを形成することができる。
【0040】
図1に示すように、ボア2内のリストリクション5は、ステントデバイスの走行を妨げるように構成されている。しかしながら、このリストリクションは、ステントデバイスシース材料、すなわちテール7が、本体2の遠位端でのアクセスのために、このリストリクションを通過することを可能にする。シース材料は、カラー8を介して本体から出る。そのコア開口部は丸みを帯びた出口面を備え、本体2から出る際に、シース材料を広範囲の角度から引っ張ることを可能にする。
【0041】
リストリクションを越えてシース材料の通過を可能にするために任意の適切な手段を採用することができる。しかしながら、図1に示す実施形態では、リストリクション5に面して2つの円弧状の開口部13が設けられている。開口部は、本体の軸方向で長手方向に延在する。開口部は、実質的に周方向であり、90~120度の角度をなす。これに関連して、開口部は、それぞれ、シース材料7のテールのための通路を提供する。シース材料は、ボア4内の点9で分割される。
【0042】
本体は、ステントデバイスのクリンプ構造部分15が窓を介して本体から側方に出る状態で、シース付きステントデバイスを本体内に配置可能とする側部窓10を備える。したがって、側部窓は、非ステント装着デバイスのファブリックが、シース付きシースの軸に対して実質的に垂直に本体2の範囲から外に通過するための経路を提供し、ステントデバイスの遠位端へのアクセスを可能にする。したがって、この端部は、個々の患者の解剖学的構造に合わせた長さでトリミングすることができ、補助的なグラフトまたは本来の血管への縫合を容易にする。
【0043】
本発明の装置の実施形態の使用順序を図2aから図6dに示す。
【0044】
図2aおよび図2bに示されるように適合性シース付きステントデバイス3は、シースのテール7が遠位端から突出し、シース付きステントデバイス部分11が本体の近位端から突出するように、装置の本体内に挿入される。シース付き部分11は、圧縮されたステントデバイス材料の相互作用により比較的剛性であり、シース材料の内側表面に対して膨張しようとする。そのため、ステント処置を必要とする血管または内腔内の位置に、それを容易かつ正確に操作して移動させることができる。
【0045】
この点に関して、適合性ステントデバイスは、好適には、ファブリック製のルーメン上に構成されて配置された鱗片状に重なったリング要素で形成されている。そのため、シース材料7内で圧縮されて拘束されると、それらが高度のカラム剛性を示す要素の提供に寄与する。
【0046】
内腔または血管内の所定の位置に入ると、シース材料のテール7を引っ張ることで、リストリクション5と係合するようステントデバイスを引き寄せ、ステントデバイス自体がそれ以上移動できないようにする。その際、シース材料をさらに引っ張ると、シース材料がステントデバイスの近位端30から引き戻される。その結果、ステントデバイスがその近位端で露出する。したがって、内腔または血管内の展開状態に向かって拡張することができる。これを図3に示す。図4は、ステントデバイスのさらに多くを露出させるために、テール7がさらに引っ張られて、ステントデバイスが内腔または血管内でより大きく展開できることを示す。
【0047】
図1に示されるように、本体2の遠位端25は、シース材料をカラー8に向かって導くために先細りになっている。これに関連して、カラー8の出口面は丸みを帯びており、裂けたり破砕したりすることなく、テールが広範囲の角度にわたって引っ張られることを可能にする。
【0048】
ステントデバイスが十分に展開されたら、それを、装置の本体2から取り外すことができる。
【0049】
この点に関して、図5aから図5c、および図6aから図6dは、ヒンジ付きカバー12を備える実施形態を示す。これにより、シースから抜き取った後、またいったん展開した後に、ステントデバイスをリリースするために本体を開くことができる。この実施形態では、単一ユーザによるステントデバイスの展開がさらに容易である。
【0050】
これに関連して、本体2は、挿入およびシースからの抜き取りのためにステントデバイスを保持し、包囲し、および支持するように構成された開口型クラスプ本体2の形態をとる。これはまた、ヒンジ付きカバー要素12、すなわち本体2の一部を形成するクラスプ蓋によって、シースからの抜き取りおよび展開の後のデバイスからの取り外しを容易にする。
【0051】
本体2は、シースの分割領域の周囲に略円形の包囲部を提供し、クラスプハウジング40、クラスプ蓋12、ピボット42、およびロッキングピン43を備える。
【0052】
クラスプ本体2は、クラスプ蓋のポケットキャビティ44内に係合するロッキングピン43によって閉じて保持されている。シースがデバイスのステント装着部分から完全に取り外されるまで、係合位置は展開過程を通して維持される。
【0053】
ロッキングピン43の他端は、リンク要素51を介してプルストラップ50に取り付けられている。リンク要素51は、一実施形態において、デバイスの展開を容易にするためにプルストラップをユーザが係合および引っ張ることを可能にする、指定された長さの可撓性の弾性コード51とすることができる。コードの長さは、特に、ピンに張力がかかっていないことを保証するために制御された量のたるみを与えるように構成されている。ロッキングピン43は、シースがステント装着デバイス部分から完全に取り外されるまで、係合したままである。この点において、シース材料7はプルストラップにも結合されているので、プルストラップを引っ張る動作は、まず、装置の遠位端でシース材料に張力を加える。
【0054】
加えられた引っ張りが、コード内の事前のたるみを吸収すると、この引張り動作は、次いで、ロッキングピンに伝達される。それによって、ロッキングピンが、クラスプ蓋ポケット44内のロッキングピンの係合からスライドして外れる。
【0055】
別の実施形態において、可撓性のコード要素を弾性ワイヤで置換することができる。弾性ワイヤは、一体型の停止機能を有し、この停止機能の係合に先立って予め決定された量の滑りを許容する。
【0056】
ロッキングピン43がクラスプ蓋12から取り外されると、次に、蓋が自由に旋回して開き、展開されたステントデバイス6からのクラスプ本体2の取り外しを容易にする。
【0057】
有益なことに、クラスプ本体2は、展開過程全体を通して、圧縮された適合性ステントデバイス3を完全に支持する。蓋12は、シース取り外しプロセスの終了に対してのみ開くことができる。これは、ユーザが別の展開ステップで動作する必要なしに、1つの連続したシームレスな動きで実行することができる。
【0058】
図6aから図6dに示すように、プルストラップ50は、1つまたは複数のコネクタ53によってクラスプ本体2に接続されたハンドル52を含む。図6bに示すように、好適には、コネクタ53は、ハンドルが本体に対して角度をつけるように操作できる柔軟な材料で形成されている。これにより、ユーザは、ステントデバイス展開のためのより良いアクセスを得るために、展開装置を操作することができる。
【0059】
ハンドル52は、図6bに示すように、シース材料7、ロッキングピン43、およびコード51が通過できるスルーチャネル54を含む。ピン43からのコードは、チャネル54を通過し、プルストラップハンドル50のキーブレード要素56の孔55に取り付けられる。ステントデバイスを展開し、ロッキングピン43をキャビティ44から引き抜く前に、キーブレード要素は、適切に離れてハンドル開口部に収まる。
【0060】
上記の装置で、本体2は、適合性シース付きステントデバイス3を保持し、支持して、近位の圧縮された部分を、本来の血管または補助的なステントデバイス本体のいずれかに挿入可能とする。その結果、それを、続くシースからの抜き取りおよび展開のために保持し、次いで血管への灌流を再開させることができる。
【0061】
これにより、デリバリーシステムは、その複雑性の点で単純化される。そのため、コンポーネントが低減されるとともに、ユーザに対する手順のステップおよび潜在的リスクが減り、時間効率がより良く単純化されたデバイス展開が可能となる。
【0062】
本体内の内部配置により、ユーザがストラップ要素を引っ張るときに、シースの分割を制御することができる。シースが内部のボアリストリクションを越えて引っ張られると、シースの円形のルーメンの面は、2つのテール要素7に沿って伝播しながら分割を続ける。同時に、ストラップに加えられた動きがシースの近位端に伝達され、それがステントデバイスの上を滑るようになり、圧縮されたステントデバイスがその放射状の拘束からリリースされることを可能にする。そうすることで、ステントデバイスが開き、血管の内腔に係合する。
【0063】
図1および図5に示すように、適合性ステントは、一体型のステントデバイスチップ24の特徴を有することができる。図5に示すように、これは、ステントデバイスのステント装着領域の近位端に設けることができる。これは、シースの拘束内で圧縮されると、シースの端部を越えても突出し、軟縫合糸(またはPTFE糸)で覆われて圧縮されたステントデバイス要素を部分的に露出させて、非外傷性チップのような特徴を提供する。
【0064】
リストリクション5は、ボア3内のアバットメントとして示されているが、例えば、ステントデバイスに取り付けられた、またはその上に形成されたアイレットまたはポケットなどの形成物と一時的に相互係合するピンまたはプロング要素のような、代替的で適切な形態をとることができる。これによって、シースからの抜き取りおよび展開ステップの間に、適合性ステントデバイスを本体内に保持して配置するための代替的な装置を提供する。
【0065】
さらに本体2は、シースの軸に実質的に垂直な方向に引き離されるシース用のガイドチャネルを備えることができる。そうすることにより、圧縮されたデバイスからのシースの効率的な低力分割および取り外しを容易にすると同時に、ステント装着部分に隣接する追加のデバイス機能(再カフ要素)を収容するキャビティを配置する機能も提供する。これによって、このファブリックを十分に包み込み、またはそれを保持し、それをファブリックのバックストップとして利用することを可能する。
【0066】
本体の端部にあるカラー8は、さらに、シースに対して角度範囲にわたってテールが引っ張られるのを容易にするために、1または複数のローラを組み込むことができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8