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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】輸送容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20241107BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B65D81/20 Z
B65D85/50
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021546659
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034797
(87)【国際公開番号】W WO2021054296
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019169616
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡彦
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-043753(JP,A)
【文献】特開2012-134000(JP,A)
【文献】特開2014-215020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/20
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞または細胞の集合体である生物構成体を輸送するための輸送容器であって、
放電によって前記輸送容器の内部に放電生成物を生成する放電装置と、
前記生物構成体を受け容れる開口部を有する収容部と、前記開口部を閉塞させる蓋部と、
前記生物構成体を収容する一次容器と、
前記一次容器を収容する二次容器と、
前記収容部及び前記蓋部を備え、前記二次容器を収容する三次容器と、
を備え、
前記放電装置は、前記蓋部の内側に設けられ、
前記一次容器及び前記二次容器は前記蓋部側の面である上面部を有し、前記上面部は気体を透過させる材質で構成されることを特徴とする輸送容器。
【請求項2】
前記蓋部は、内面に凹部を有し、
前記放電装置は、前記凹部に設けられることを特徴とする請求項に記載の輸送容器。
【請求項3】
前記放電装置は、前記蓋部を介して外部電源から給電されることを特徴とする請求項1または2に記載の輸送容器。
【請求項4】
前記放電装置は、正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項5】
前記放電装置は、前記輸送容器内における正イオンおよび負イオンの濃度が、それぞれ7000個/cm以上となるように正イオンおよび負イオンを供給することを特徴とする請求項に記載の輸送容器。
【請求項6】
前記放電装置は、前記輸送容器内における正イオンおよび負イオンの濃度が、それぞれ7000個/cm以上、100万個/cm以下となるように正イオンおよび負イオンを供給することを特徴とする請求項に記載の輸送容器。
【請求項7】
前記輸送容器内における正イオンおよび負イオンの一方または両方の濃度を検出するイオンセンサと、
前記イオンセンサが検出したイオン濃度、または当該イオン濃度に基づく情報を表示する表示部とを備えることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項8】
記放電装置は、前記三次容器と前記二次容器との間の空間に前記放電生成物を生成することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、生物構成体を輸送するための容器に関する。本願は、2019年9月18日に日本で出願された特願2019-169616号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発泡樹脂からなり、鮮魚を収容するための内部空間を有する内ケースと、段ボールからなり、内ケースを収容する外ケースと、を備える鮮魚輸送容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-64702号公報(平成31年4月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鮮魚輸送容器においては、時間の経過とともに雑菌等が増殖することから、長時間の輸送が困難であるという課題があった。
【0005】
本発明の一態様は上記の課題に鑑みてなされたものであり、長時間の輸送が可能な輸送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る輸送容器は、細胞または細胞の集合体である生物構成体を輸送するための輸送容器であって、放電によって前記輸送容器の内部に放電生成物を生成する放電装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、長時間の輸送が可能な輸送容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る輸送容器の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る輸送容器が備える放電装置の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る実験後の細胞数を示す表である。
図4】本発明の実施形態2に係る輸送容器の構成を示す図である。
図5】本発明の実施形態3に係る輸送容器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
(輸送容器1の構成)
図1は、実施形態1に係る輸送容器1の構成を示す図である。輸送容器1は、細胞または細胞の集合体である生物構成体を輸送するための容器である。実施形態1においては、生物構成体は、哺乳動物由来の細胞、組織、または器官である。図1に示すように、輸送容器1は、一次容器10と、二次容器20と、三次容器30と、イオン発生装置(放電装置)40と、を備える。これにより、輸送容器1は、例えば一次容器10および二次容器20を有しないものと比べて、外部環境から遮断された状態で生物構成体を収容することができる。
【0011】
一次容器10は、生物構成体を直接収容する直方体状の容器である。ただし、一次容器10は、生物構成体を収容することができる構成であるならば直方体状の容器に限られない。一次容器10の少なくとも一部は、気体を透過させる材質で構成される。このような材質の例として、シリコーンゴムなどが挙げられる。実施形態1においては、一次容器10の上面部が、気体を透過させる材質で構成される。上面部とは、生物構成体を輸送容器1により輸送する状態において鉛直上方を向く部分である。
【0012】
二次容器20は、一次容器10を収容する直方体状の容器である。ただし、二次容器20は、一次容器10を収容することができる構成であるならば直方体状の容器に限られない。二次容器20は、密閉性を有しない。すなわち、空気などの気体は二次容器20に対して出入り可能である。
【0013】
二次容器20は、内面が一次容器10と接触しないように構成されている。これにより、二次容器20に外部から衝撃が加わった場合に、当該衝撃が一次容器10に対して伝わる度合いを低減することができる。
【0014】
三次容器30は、二次容器20を収容する密閉用の直方体状の容器である。ただし、三次容器30は、二次容器20を収容することができる構成であるならば直方体状の容器に限られない。三次容器30は、収容部31と、蓋部35と、を備える。
【0015】
収容部31は、二次容器20を収容する有底筒状の容器である。収容部31は、底部を下側とした場合における上側に、二次容器20および生物構成体を受け容れるための開口部32を有する。
【0016】
蓋部35は、開口部32を閉塞させる。蓋部35は、開口部32を覆うことが可能な形状を有する板状の部材である。蓋部35は、内面38に凹部37A、37Bを有する。蓋部35が開口部32を覆った状態において、三次容器30は密閉された状態となる。具体的には、例えば開口部32にOリング(不図示)が設けられ、蓋部35は当該Oリングを介して開口部32を覆う。
【0017】
蓋部35は、収容部31の長手方向に沿って設けられる蝶番34を介して収容部31に接続されている。蓋部35を蝶番34の周りで回動させることで、蓋部35が開口部32を覆う状態と開放する状態とを切り換えることができる。
【0018】
三次容器30は、二次容器20との間に空間を形成し、内面が二次容器20と接触しないように構成されている。例えば、二次容器20と三次容器30との間には、衝撃吸収材(不図示)、および/または二次容器20の温度変化を低減する断熱材(不図示)が配される。これにより、三次容器30に外部から衝撃が加わった場合に、当該衝撃が二次容器20に対して伝わる度合いを低減することができる。
【0019】
三次容器30は、輸送容器1をユーザが輸送するための持ち手部を外面に有していてもよい。持ち手部の例としては、手で把持するための把持部、または肩に掛けるための肩掛け部などが挙げられる。
【0020】
イオン発生装置40は、放電によって輸送容器1の内部に正イオンおよび負イオン(放電生成物)を発生させる放電装置である。ただし、イオン発生装置40は、放電によって輸送容器1の内部に正イオンまたは負のイオンのいずれか一方のみを発生させる放電装置でもよい。本実施形態では、イオン発生装置40は、三次容器30と二次容器20との間の空間に正イオンおよび負イオンを発生させる。図1に示す例では、輸送容器1は、2つのイオン発生装置40を備える。イオン発生装置40の数は、目標とするイオン濃度、および三次容器30の大きさに応じて設計者が決定すればよく、1つ、または3つ以上であってもよい。また、輸送容器1は、イオン発生装置40の代わりにイオンとは別の放電生成物を生成する装置を備えていても良い。例えば輸送容器1は、イオン発生装置40の代わりに、放電により輸送容器1内のウイルスおよび細菌などを抗菌、除菌、または殺菌することができる放電生成物を生成する放電装置を備えていてもよい。放電方式としては、例えば、プラズマ放電またはコロナ放電が挙げられる。
【0021】
イオン発生装置40は、蓋部35の内側に設けられる。このため、イオン発生装置40により発生したイオンが、輸送容器1の内部に効率よく拡散する。ただし、イオン発生装置40は、必ずしも蓋部35の内側に設けられる必要はなく、例えば収容部31の内側に設けられていてもよい。
【0022】
具体的には、イオン発生装置40は、蓋部35の内面38に設けられた凹部37A、37Bにそれぞれ設けられる。より具体的には、イオン発生装置40は、蓋部35の内面38よりも内側に突出しないように設けられる。このため、イオン発生装置40が二次容器20などに衝突して故障する虞が低減される。ただし、イオン発生装置40は、必ずしも凹部37A、37Bに設けられる必要はなく、内面38に直接設けられていてもよい。
【0023】
図1に示す例では、蓋部35の内部には、電源としてのバッテリー36、および当該バッテリー36とイオン発生装置40とを電気的に接続する給電線39が埋設されている。ただし、バッテリー36は、蓋部35の内側に設けられていてもよい。イオン発生装置40は、給電線39を介してバッテリー36から給電される。
【0024】
なお、イオン発生装置40は、蓋部35を介して外部から給電されてもよい。例えば、蓋部35の内部と外部とを接続する給電線が設けられてよい。この場合、三次容器30の外部に配されたバッテリー36が、給電線を介してイオン発生装置40に接続されて電力を供給する外部電源として機能する。または、三次容器30の外部に配されたバッテリー36から、電磁誘導によりイオン発生装置40に給電してもよい。この場合、必要に応じてバッテリー36を交換することで、蓋部35を閉じた状態で放電生成物の生成を継続できる。言い換えると、輸送容器1においては、蓋部35を開けることなくバッテリー36を交換できるため、バッテリー36の交換時に、輸送容器1の内部へのウイルスおよび細菌等の侵入を防ぐことができる。
【0025】
(イオン発生装置40の具体的な構成)
図2は、イオン発生装置40の構成を示す図である。図2に示すように、イオン発生装置40は、平面視で矩形の形状を有する。イオン発生装置40は、長手方向に沿って配列された2つのイオン発生部48Aおよび48Bを備えている。
【0026】
バッテリー36は、イオン発生部48Aおよび48Bに電力を供給する。イオン発生部48Aおよびイオン発生部48Bのそれぞれがコロナ放電することにより、イオンが発生する。イオン発生部48Aは正イオンを発生し、イオン発生部48Bは負イオンを発生する。ただし、イオン発生部48Aが負イオンを発生し、イオン発生部48Bが正イオンを発生するようにしてもよい。
【0027】
イオン発生部48Aおよび48Bはそれぞれ、先鋭状をなす放電電極凸部48Aa,48Ba、および当該放電電極凸部48Aa,48Baを囲む誘導電極環48Ab,48Bbを有している。放電電極凸部48Aaおよび48Baはそれぞれ、誘導電極環48Ab,48Bbの中心部に配されている。
【0028】
なお、放電電極凸部48Aa,48Baは、面電極、針電極、ブラシ電極などであってもよく、放電可能であれば放電電極凸部48Aa,48Baの形状、種類および素材は問わない。
【0029】
イオン発生部48Aには正電圧が印加される。イオン発生部48Aに正電圧が印加されると、放電により空気中の水分子が電気的に分解され、主として水素イオンHが生成される。そして、生成した水素イオンHの周りに空気中の水分子が凝集し、電荷が正の安定したクラスターイオンH(HO)が形成される。
【0030】
イオン発生部48Bには負電圧が印加される。イオン発生部48Bに負電圧が印加されると、放電により空気中の酸素分子が電気的に分解され、主として酸素イオンO が生成される。そして、生成した酸素イオンO の周りに空気中の水分子が凝集し、電荷が負の安定したクラスターイオンO (HO)が形成される。
【0031】
ここで、m、nは任意の整数である。この明細書中で「正イオン」というときは正のクラスターイオンを意味し、「負イオン」というときは負のクラスターイオンを意味する。なお、正負のクラスターイオンの生成は、飛行時間分解型質量分析法により確認することができる。
【0032】
イオン発生装置40は、輸送容器1内における正イオンおよび負イオンの濃度が、それぞれ7000個/cm以上となるように正イオンおよび負イオンを供給する。正負イオン濃度がそれぞれ7000個/cm以上であれば、細菌およびウイルス等の生育および増殖を減らすことができる。また、イオン発生装置40は、輸送容器1内における正イオンおよび負の濃度が、それぞれ100万個/cm以下となるように正イオンおよび負イオンを供給する。正イオンおよび負の濃度が、それぞれ100万個/cm以下であれば、細胞に対して悪影響を及ぼすことなく除菌することができる。
【0033】
正イオンおよび負イオンは、同時に空気中に放出されると、微生物の表面で凝集してこれらを取り囲む。そして、瞬間的に、正イオンと負イオンが結合して、[・OH](水酸基ラジカル)またはH(過酸化水素)が微生物の表面上にて凝集生成される。[・OH]およびHは、酸化力の非常に高い活性種であるので、化学反応により微生物の表面のタンパク質を分解してその働きを減らすことができる。
【0034】
このため、輸送容器1においては、イオン発生装置40によって正イオンおよび負イオンを発生させ、三次容器30の内部に正イオンおよび負イオンを供給することにより、三次容器30と二次容器20との間の空間に存在するウイルスを不活化し、好適に除菌することができる。また、上述したとおり、二次容器20は密閉されていない。さらに、一次容器10の上面部は、気体を透過させる材質で構成されている。このため、輸送容器1においては、イオン発生装置40が発生させるイオンによって、一次容器10および二次容器20の内部までも除菌することができる。
【0035】
従来の輸送容器では、生物構成体の収容前に、薬剤(例えば、エタノールなどのアルコール)を用いて内部を殺菌していた。しかしながら、薬剤が完全に気化する前に生物構成体を収容した場合、内部で気化した残存薬剤により、生物構成体(特に細胞)に悪影響を及ぼす問題があった。この問題を解決するために、薬剤が完全に気化した後に生物構成体を収容する場合、生物構成体を収容する際に、再度ウイルスおよび細菌等が侵入してしまう。また、従来の輸送容器内にUVランプを設置した場合も、生物構成体(特に細胞)に悪影響を及ぼす問題があった。
【0036】
これに対し、輸送容器1においては、生物構成体を収容した後でも、必要に応じてイオン発生装置40によりイオンを発生させ、継続的に内部を除菌することができる。
【0037】
イオン発生装置40は、ファンをさらに備えていてもよい。これにより、正イオンおよび負イオンが輸送容器1の内部において拡散するので、より効率的に除菌することができる。
【0038】
(イオンによる生物構成体への影響についての実験)
輸送容器1により輸送される生物構成体の例として、iPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。本願発明者は、イオンによるiPS細胞への影響を確認するための実験を行った。実験では、PCI(プラズマクラスターイオン)発生装置を設置したインキュベータと設置しなかったインキュベータとで、iPS細胞を7日間培養し、最終日における細胞数をカウントした。PCI発生装置が発生させるイオンの濃度は、平均で212,000個/cmとした。
【0039】
図3は、実験の結果を示す表である。図3には、PCI発生装置のあるなしそれぞれについて、3つずつの結果が示されている。図3に示すように、PCI発生装置を設置したインキュベータにおけるiPS細胞の平均生存率±標準偏差は、91.5±1.31%であった。一方、PCI発生装置を設置しなかったインキュベータにおけるiPS細胞の平均生存率±標準偏差は、92.5±1.57%であった。すなわち、実験後のiPS細胞の平均生存率および標準偏差には、PCI発生装置の設置の有無による有意差は見られなかった。このため、輸送容器1がイオン発生装置40を備えても細胞への悪影響を及ぼすことはないといえる。したがって、輸送容器1によれば、iPS細胞に悪影響を与えることなく除菌を行うことができる。
【0040】
以上のとおり、輸送容器1によれば、生物構成体に影響を与えることなく内部を除菌することができる。したがって、菌による生物構成体の劣化を抑制し、長時間にわたって輸送することが可能となる。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0042】
図4は、実施形態2に係る輸送容器2の構成を示す図である。図4に示すように、輸送容器2は、輸送容器1の構成に加えて、イオンセンサ50および表示部51を備える。
【0043】
イオンセンサ50は、輸送容器2内のイオン濃度を検出し、当該イオン濃度に対応する信号を出力するセンサである。イオンセンサ50は、輸送容器2内における正イオンおよび負イオンの一方または両方の濃度を検出する。実施形態2においては、イオンセンサ50は、蓋部35の内部に2か所設けられている。ただし、イオンセンサ50の数は、目標とするイオン濃度の検出精度、および三次容器30の大きさに応じて設計者が決定すればよく、1つでもよく、3つ以上でもよい。また、イオンセンサ50は、収容部31の内部に設けられていても良い。
【0044】
表示部51は、イオンセンサ50が検出したイオン濃度、または当該イオン濃度に基づく情報を表示する表示装置である。表示部51は、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。イオン濃度に基づく情報には、イオン発生装置40の動作が正常であるか否かの情報、またはイオン発生装置40の交換時期に関する情報が含まれる。表示部51がイオン濃度に基づく情報を表示する場合には、輸送容器2は、イオン濃度に基づいてイオン発生装置40の状態について判定する処理を実行する制御部を備えていればよい。
【0045】
実施形態2においては、表示部51は、矩形状であり、収容部31の外側の面に設けられている。ただし、表示部51は、イオンセンサ50が検出したイオン濃度、または当該イオン濃度に基づく情報を表示することができる構成であれば、上記の例に限定されない。例えば表示部51は、円形状でもよい。また、例えば表示部51は、蓋部35の外側の面に設けられていてもよい。
【0046】
輸送容器2によれば、ユーザは、表示部51の表示に基づいて、イオン発生装置40の状態を認識することができる。このため、イオン発生装置40の動作に異常が生じている場合などに、イオン発生装置40のメンテナンスを行うなどの対応を取ることができる。したがって、輸送容器2によれば、より確実にイオンを発生させ、内部の除菌を行うことができる。
【0047】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。
【0048】
図5は、実施形態3に係る輸送容器3の構成を示す図である。図5に示すように、輸送容器3は、蓋部35と収容部31とが蝶番34を介して接続されていない構成を有する。輸送容器3は、蝶番34を有しないため、部品点数を減らすことができる。このため、輸送容器3は、輸送容器1、2と比べて製造コストを削減することができる。
【0049】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。
【0050】
輸送容器1、2、3に収容される生物構成体は、上述した哺乳動物由来の細胞、組織、または器官に限定されず、食肉、鮮魚、または野菜などであってもよい。輸送容器1、2、3によれば、食肉、鮮魚、または野菜などについても、鮮度を維持したまま長時間にわたって輸送することができる。
【0051】
この場合、生物構成体を過度に慎重に取り扱う必要性が小さいので、輸送容器1、2、3は一次容器10および二次容器20を備える必要がない。すなわち、食肉、鮮魚、または野菜などを輸送する場合には、輸送容器1、2、3は、三次容器30と、イオン発生装置40と、を備えていればよい。このような輸送容器1、2、3は、一次容器10および二次容器20を備えるものと比べて部品点数を少なくすることができるため、製造コストを削減することができる。
【0052】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る輸送容器は、細胞または細胞の集合体である生物構成体を輸送するための輸送容器であって、放電によって前記輸送容器の内部に放電生成物を生成する放電装置を備える。
【0053】
上記の構成によれば、放電によって輸送容器の内部に放電生成物を生成すると、輸送容器の内部に存在するウイルスを不活化し、好適に除菌することができる。このため、長時間の輸送が可能な輸送容器を提供できる。
【0054】
本発明の態様2に係る輸送容器は、上記態様1において、前記生物構成体を受け容れる開口部を有する収容部と、前記開口部を閉塞させる蓋部とを備え、前記放電装置は、前記蓋部の内側に設けられてもよい。
【0055】
上記の構成によれば、放電装置により発生したイオンが、輸送容器の内部に効率よく拡散する。
【0056】
本発明の態様3に係る輸送容器は、上記態様2において、前記蓋部は、内面に凹部を有し、前記放電装置は、前記凹部に設けられてもよい。
【0057】
上記の構成によれば、放電装置が凹部に設けられていない構成と比べて、放電装置が輸送容器などに衝突して故障する虞が低減される。
【0058】
本発明の態様4に係る輸送容器は、上記態様2または3において、前記放電装置は、前記蓋部を介して外部電源から給電されてもよい。
【0059】
上記の構成によれば、蓋部を閉じた状態で放電装置に継続的に給電し、放電生成物を生成することができる。
【0060】
本発明の態様5に係る輸送容器は、上記態様1~4のいずれかにおいて、前記放電装置は、正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置であってもよい。
【0061】
上記の構成によれば、イオン発生装置によって正イオンおよび負イオンを発生させ、輸送容器の内部に供給することにより、輸送容器の内部に存在するウイルスを不活化し、好適に除菌することができる。
【0062】
本発明の態様6に係る輸送容器は、上記態様5において、前記放電装置は、前記輸送容器内における正イオンおよび負イオンの濃度が、それぞれ7000個/cm以上となるように正イオンおよび負イオンを供給してもよい。
【0063】
上記の構成によれば、正負イオン濃度がそれぞれ7000個/cm以上であれば、細菌およびウイルス等の生育および増殖を減らすことができる。
【0064】
本発明の態様7に係る輸送容器は、上記態様6において、前記放電装置は、前記輸送容器内における正イオンおよび負イオンの濃度が、それぞれ7000個/cm以上、100万個/cm以下となるように正イオンおよび負イオンを供給してもよい。
【0065】
上記の構成によれば、細胞に対して悪影響を及ぼすことなく除菌することができる。
【0066】
本発明の態様8に係る輸送容器は、上記態様5~7のいずれかにおいて、前記輸送容器内における正イオンおよび負イオンの一方または両方の濃度を検出するイオンセンサと、前記イオンセンサが検出したイオン濃度、または当該イオン濃度に基づく情報を表示する表示部とを備えてもよい。
【0067】
上記の構成によれば、ユーザが輸送容器内のイオン濃度を知ることができる。また、ユーザが輸送容器内のイオン濃度に基づく情報を認識することができる。例えば輸送容器の異常発生時に、ユーザが異常発生状態を認識することができる。
【0068】
本発明の態様9に係る輸送容器は、上記態様1~8において、前記生物構成体を収容する一次容器と、前記一次容器を収容する二次容器と、前記二次容器を収容する三次容器とを備え、前記放電装置は、前記三次容器と前記二次容器との間の空間に前記放電生成物を生成してもよい。
【0069】
上記の構成によれば、輸送容器においては、放電装置によって正イオンおよび負イオンを発生させ、三次容器の内部に正イオンおよび負イオンを供給することにより、三次容器と二次容器との間の空間に存在するウイルスを不活化し、好適に除菌することができる。
【0070】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5