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特許7583729経口投与されるジオキソランヌクレオチドを抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体と組み合わせて用いる肝臓がんの治療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】経口投与されるジオキソランヌクレオチドを抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体と組み合わせて用いる肝臓がんの治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/685 20060101AFI20241107BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61K31/685
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P1/16
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021548235
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 SE2020050175
(87)【国際公開番号】W WO2020171757
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】1950202-0
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507261423
【氏名又は名称】メディヴィル・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】アルバーテラ,マーク
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526677(JP,A)
【文献】国際公開第2017/151044(WO,A1)
【文献】特表2015-500207(JP,A)
【文献】特表2018-534321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/661
A61K 39/395
A61P 1/16
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の肝臓がんの治療のための医薬製剤であって、式I:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含み、前記治療が、PD-L1、PD-L2またはPD-1のいずれかに特異的に結合し、かつ、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合をブロックするモノクローナル抗体との哺乳動物の同時又は順次処置によって特徴づけられる医薬製剤。
【請求項2】
モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナルIgG4抗体である抗PD1モノクローナル抗体である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
ヒト化モノクローナルIgG4抗体が、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、又はニボルマブである、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
ヒト化モノクローナルIgG4抗体がペムブロリズマブである、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
ヒト化モノクローナルIgG4抗体がニボルマブである、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項6】
モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナルIgG1抗体である抗PDL1モノクローナル抗体である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
IgG1抗体が、アテゾリズマブ、又はデュルバルマブである、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項8】
IgG1抗体がデュルバルマブである、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
がんがHCCである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
式Iの化合物が経口投与され、モノクローナル抗体が非経口投与される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記化合物が、少なくとも90%eeのジアステレオマー:
【化2】
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
原発性又は続発性肝腫瘍に罹患している哺乳動物を治療するための医薬製剤であって、式I:
【化3】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含み、前記治療は前記哺乳動物に治療上有効量の前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、PD-L1、PD-L2またはPD-1のいずれかに特異的に結合し、かつ、PD-L1又はPD-L2のPD1への結合をブロックする治療上有効量のモノクローナル抗体とを周期的に投与することを含み、前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩は経口投与され、前記抗体は非経口投与される、医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、経口投与されるジオキソランヌクレオチドのMIV-818、そのジアステレオマー又はその薬学的に許容可能な塩を、非経口投与される抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体と組み合わせて用いる肝臓の原発性又は転移性がんの治療法を提供する。また、本明細書において、肝腫瘍に罹患している哺乳動物への抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体との同時又は順次投与のために製剤化された、MIV-818又はその薬学的に許容可能な塩の経口組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
原発性肝がんは世界で5番目に多く診断されるがんで、がんによる死亡原因の第2位である。肝臓がんは肝臓の表面又は内部で増殖する悪性腫瘍であり、それらは、肝臓自体から、又は血管もしくは胆管を含む肝臓内の構造体から形成される。
【0003】
肝臓がんの主因はB型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスによるウイルス感染である。がんは通常、これらのウイルスによって引き起こされる肝硬変に続発して形成される。このため、肝臓がんは、これらのウイルスが蔓延している東アジア及びサハラ以南のアフリカを含む地域で最も高率に発生する。肝臓にあるその他のがんは、続発性肝がんとしても知られる肝転移を含む。これは身体の他のどこかの臓器を起源とし、肝臓に移動したがんである。肝臓は、その豊富で二重の血液供給(肝動脈及び門脈)のために、転移性疾患の部位として一般的である。肝臓の転移性腫瘍はその原発性腫瘍より20倍多い。全症例中50%で原発性腫瘍は消化管の腫瘍である。他の一般的な部位は、乳腺、卵巣、気管支及び腎臓などである。
【0004】
全原発性肝がんのおよそ75%を占める最も高頻度の肝臓がんは肝細胞がん(HCC)である。HCCは、悪性化した肝臓の細胞(liver cell)(肝細胞(hepatocyte)としても知られる)によって形成される。肝細胞によって形成される別のタイプのがんは肝芽腫で、未熟肝細胞によって特異的に形成される。これは主に小児に発生する希少な悪性腫瘍で、小児の全がんのおよそ1%、15歳未満の全原発性肝がんの79%を占める。
【0005】
肝臓がんは、胆管、血管及び免疫細胞などの肝臓内の他の構造体からも形成されうる。胆管のがん(胆管がん及び胆管細胞嚢胞腺がん)は原発性肝がんのおよそ6%を占める。HCCと胆管がんの両方からなるHCCの変異型もある。肝臓血管の腫瘍は、血管肉腫及び血管内皮腫などである。胎児性肉腫及び線維肉腫は、間葉として知られる結合組織の一種から発生する。肝臓の筋肉から発生するがんは、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫である。その他の稀な肝臓がんは、がん肉腫、奇形腫、卵黄嚢腫瘍、カルチノイド腫瘍及びリンパ腫などである。リンパ腫は通常肝臓へのびまん性浸潤を起こすが、稀に肝腫瘤を形成することもある。
【0006】
外科的切除は多くの場合、肝硬変でない肝臓に対する最適な治療法である。硬変した肝臓を切除すると、肝不全などの合併症のリスクが高まりうる。切除後の5年生存率は、過去20~30年で大幅に改善され、今や50%を超えることもある。初期腫瘍の拡大又は新規腫瘍の形成による切除後の再発率は70%を超える。肝移植も、この形態の治療が許され、腫瘍が特定の基準(例えばミラノ基準)に適合するHCCの場合、使用できる。がんは末期に見つかることが多いので、手術や移植に適格なHCC患者は30~40%未満である。また、HCCは肝移植の待機中に進行することもあり、最終的に移植できなくなることもある。
【0007】
経皮的アブレーションは、治癒を提供できる唯一の非外科的治療法である。経皮的アブレーションには多くの形態があり、化学物質(エタノール又は酢酸)を肝臓に注入する、又は高周波アブレーション、マイクロ波、レーザーもしくは凍結療法を用いて極端な温度を生成する、のいずれかからなる。これらのうち、高周波アブレーションはHCCで最も評判が良い方法の一つであるが、他の臓器や血管に近い腫瘍は、それぞれ熱発生及び熱失神作用(heat sync effect)のために治療できないという制限がある。
【0008】
全身化学療法はHCCでは常用されないが、局所化学療法は肝動脈化学塞栓療法(TACE)として知られる手技で使用されることもある。この手技では、ドキソルビシン又はシスプラチンなどの細胞毒性薬をリピオドールと共に投与し、肝臓に血液を供給している動脈をゼラチンスポンジ又は他の粒子によってブロックする。大部分の全身薬はHCCの治療に効果がないので、肝臓がんの発生に関与している分子経路の研究から、状況によっては細胞増殖及び血液細胞増殖を防止する標的療法薬のソラフェニブが生まれた。
【0009】
放射線療法は、肝臓が放射線に耐性がないので、HCCではあまり使用されない。肝臓の特定領域にうまく標的化された放射線を提供する現代技術を以てしても、周辺肝組織への付随的損傷が問題となり、より良い“肝臓温存”療法の必要性が力説されている。放射線療法プラス化学塞栓療法、局所化学療法、全身化学療法又は標的療法薬の二重治療が、放射線療法単独に優る利益を示すことができる。
【0010】
国際特許出願公開第WO2016/030335号に、MIV-818としても知られる化合物:
【0011】
【化1】
【0012】
を含む、経口投与され肝臓を標的とするジオキソランヌクレオチドが開示されている。
腫瘍性形質転換の発生(outgrowth)制御における完全無欠な(intact)免疫学的監視機能の重要性は広く知られている。腫瘍細胞上にPD-L1(プログラム死-リガンド1)が高発現していることと、卵巣がんを含む様々ながんタイプにおける予後不良及び生存率の低さとは相関することが分かっている。前臨床データは、PD-1(プログラム死-1又はプログラム細胞死-1)経路を卵巣がんにおける有望な(viable)標的として示唆している。EOCにおけるPD-1/PD-L1阻害の臨床データは限られているが、抗PD-L1抗体のBMS-936559の第1相試験において、17人のEOC患者のうちの一人に客観的反応が見られた。
【0013】
T細胞上のPD-1受容体又は腫瘍細胞上のそのリガンド(PD-L1)に向けられた抗体による免疫チェックポイントの阻害は、全てではないが一部の腫瘍、例えばメラノーマ及び非小細胞肺がんにおいて有望な抗腫瘍活性を示している。
【0014】
完全ヒト免疫グロブリンG4モノクローナル抗体であるPD-1アンタゴニストのニボルマブ(nivolumab)が2017年9月FDAによって肝臓がんの治療薬として認可されたが、ソラフェニブが奏功しなかった後の第二選択治療薬でしかなかった。
【0015】
MK-3475及びキイトルーダ(Keytruda)としても知られるペムブロリズマブ(Pembrolizumab)は、免疫増強活性の可能性を有するヒト細胞表面受容体PD-1に対して向けられたヒト化モノクローナルIgG4抗体である。投与されると、ペムブロリズマブは、活性化T細胞の表面上に発現された阻害シグナリング受容体であるPD-1に結合し、そのリガンドによるPD-1への結合及び活性化をブロックする結果、腫瘍細胞に対するT細胞媒介性免疫応答が活性化する。PD-1に対するリガンドは、抗原提示細胞(APC)上に発現され、特定のがん細胞上に過剰発現されているPD-L1と、主にAPC上に発現されているPD-L2を含む。活性化されたPD-1は、PI3K/Akt経路の抑制を通じて、T細胞活性化を負に調節する。しかしながら、肺転移性肝がんにおいてペムブロリズマブ誘発性肝不全が報告されている(Wuら,Medicine(Baltimore) 2017 96(51):e9431)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際特許出願公開第WO2016/030335号
【非特許文献】
【0017】
【文献】Wuら,Medicine(Baltimore) 2017 96(51):e9431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
原発性及び続発性肝がん、特に先行治療の後に再発した又は先行治療に不応性の肝臓がんの治療薬に対する高いニーズが未だ満たされないまま存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第一の側面において、哺乳動物の肝臓がんの治療における、式:
【0020】
【化2】
【0021】
の化合物、そのジアステレオマー又はその薬学的に許容可能な塩の使用を提供し、前記使用は、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合をブロックするモノクローナル抗体との哺乳動物の同時又は順次治療を特徴とする。
【0022】
本発明の第二の側面において、原発性又は続発性肝腫瘍に罹患した哺乳動物の治療法に使用するための化合物を提供し、前記化合物は、式:
【0023】
【化3】
【0024】
、そのジアステレオマー又はその薬学的に許容可能な塩を有し、前記方法は、対象に、治療上有効量の前記化合物、そのジアステレオマー又はその薬学的に許容可能な塩と、治療上有効量の抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体を周期的に投与することを含み、前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩は経口投与される。
【0025】
本発明は、少なくとも一部は、MIV-818が肝がん細胞に対する直接的な抗腫瘍効果を有することに加えて免疫系も刺激できるという発見に基づいている。この免疫系の活性化は、抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体の効力及び/又は耐性を増強し、肝臓がん(例えばHCC)の領域内で予想外の抗腫瘍活性の増強をもたらす。我々は、この有益な相互作用は肝転移の治療に拡大することもできるという仮説を立てている。
【0026】
理論に束縛されることは望まないが、我々はさらに、MIV-818とPD1及びPDL1アンタゴニストのような薬剤との組合せの予期せぬ免疫刺激は、免疫系が肝臓内で局所的に活性化された後、移動して遠隔病変を攻撃するという遠達効果(abscopal effect)のために、肝臓の原発病変に加えて肝外腫瘍病変に対しても増強された抗腫瘍活性をもたらすのではないかという仮説も立てている。
【0027】
便宜上、本明細書においては、式:
【0028】
【化4】
【0029】
の化合物、そのジアステレオマー又はその薬学的に許容可能な塩は、一般的に、互換的に“MIV-818”と呼ばれる。一部の添付図面では、MIV-818はMDR_MV087313とも呼ばれている。
【0030】
MIV-818の好適な態様は、構造:
【0031】
【化5】
【0032】
を有するジアステレオマーである。
MIV-818は、典型的には、経口投与され、血液中に取り込まれ、そして初回通過代謝を通じて肝臓で濃縮される。MIV-818はヒト血漿中で安定であるが、残念なことに齧歯類の血液中では非常に迅速に代謝されてしまう。このことは、つまり、固形腫瘍の腫瘍学に一般的に使用される本質的に全てのインビボモデルが、PD-1アンタゴニストなどのチェックポイント阻害薬との併用療法のPK/PD、有効性、機序及び相乗効果を評価しようとするモデルを含め、単純に使用に適さないことを意味する。従って、経口投与されたMIV-818と非経口投与されたPD-1アンタゴニストとの間のこの相互作用の解明は、一部は実施例中に概要が示されている精緻な機構モデルから誘導された。
【0033】
一定の態様において、肝臓のがん又は腫瘍は、肝細胞がん(HCC)、肝芽腫、胆管がん又は胆管細胞嚢胞腺がん、特にHCCから選ばれる原発性肝腫瘍である。
一定の態様において、肝臓のがん又は腫瘍は、消化管、乳腺、卵巣、気管支又は腎臓の原発性腫瘍から誘導されたものなどの続発性肝腫瘍である。
【0034】
一定の態様において、MIV-818は経口剤形、例えば錠剤又はカプセルに製剤化される。一態様において、MIV-818は、それを必要とする哺乳動物、典型的にはヒトに経口投与される。一態様において、MIV-818は、それを必要とする哺乳動物に持続した期間投与される。一態様において、MIV-818は、それを必要とする対象に周期的に投与される(例えば、1日以上の投与後に休薬期間を置く)。一態様において、MIV-818は、それを必要とする哺乳動物に複数の投与サイクルにわたって投与される。
【0035】
一定の態様において、PD-1阻害薬は抗PD-1抗体である。一態様において、抗体はモノクローナル抗体である。一態様において、抗体はヒト化抗体である。特別な態様において、抗PD-1モノクローナル抗体はペムブロリズマブである。
【0036】
一定の態様において、肝臓のがん又は腫瘍は再発性又は不応性である。一定の態様において、疾患又は障害を有する哺乳動物は先行治療に反応しなかった。一定の態様において、先行治療は、ソラフェニブ、レゴラフェニブ又はドナフェニブを含む。
【0037】
一定の態様において、抗PD1モノクローナル抗体はヒト化モノクローナルIgG4抗体である。一態様において、ヒト化モノクローナルIgG4抗体はペムブロリズマブである。
【0038】
一定の態様において、抗PDL1モノクローナル抗体はヒト化モノクローナルIgG1抗体である。一態様において、ヒト化モノクローナルIgG1抗体はデュルバルマブ(durvalumab)(MEDI4736)である。
【0039】
一態様において、抗PD1モノクローナル抗体は、ペムブロリズマブ、MK-3475、ピジリズマブ(pidilizumab)又はニボルマブ(nivolumab)(BMS-936558、MDX-1106、又はONO-4538)である。
【0040】
一態様において、抗PDL1モノクローナル抗体は、BMS-936559、アテゾリズマブ(atezolizumab)(MPDL3280A)、又はデュルバルマブ(MEDI4736)である。
【0041】
一態様において、抗PD-L1モノクローナル抗体はバベンチオ(Bavencio)(アベルマブ(avelumab))である。
一態様において、抗PD-1モノクローナル抗体はカムレリズマブ(Camrelizumab)(SHR1210)である。
【0042】
一態様において、抗PD-1モノクローナル抗体はチスレリズマブ(Tislelizumab)(BGBA317)である。
一定の態様において、MIV-818は、28日周期で連続21日間投与され、その後連続7日間休薬する。一定の態様において、MIV-818は、21日周期で連続14日間投与され、その後連続7日間休薬する。
【0043】
一定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は28日周期の7日目及び21日目に投与される。一定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は28日周期の8日目及び21日目に投与される。一定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は28日周期の1日目に投与される。一定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は21日周期の1日目に投与される。
【0044】
一定の態様において、MIV-818は、28日周期で連続21日間投与され、その後連続7日間休薬し、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は28日周期の7日目及び21日目に投与される。一定の態様において、MIV-818は、28日周期で連続21日間投与され、その後連続7日間休薬し、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は28日周期の8日目及び21日目に投与される。一定の態様において、MIV-818は、28日周期で連続21日間投与され、その後連続7日間休薬し、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は28日周期の1日目に投与される。
【0045】
特定の態様において、肝臓がんはHCCである。さらに特定の態様において、HCCは再発性又は不応性である。特別な態様において、HCCは、ソラフェニブ、レゴラフェニブ又はドナフェニブによる治療に反応しないか、又はもはや反応しなくなっている。
【0046】
一定の態様において、MIV-818は、21日周期で連続14日間投与され、その後連続7日間休し、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は21日周期の1日目に投与される。
【0047】
一定の態様において、MIV-818は、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約500mg、又は約600mgの量で経口投与される。一定の態様において、MIV-818は、1日約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、又は約600mgの量で経口投与される。
【0048】
別の態様において、MIV-818は、1日約600mgの量で投与される。別の態様において、MIV-818は、1日約500mgの量で投与される。別の態様において、MIV-818は、1日約400mgの量で投与される。一態様において、MIV-818は、1日約300mgの量で投与される。別の態様において、MIV-818は、1日約200mgの量で投与される。別の態様において、MIV-818は、1日約100mgの量で投与される。別の態様において、MIV-818は、1日約50mgの量で投与される。
【0049】
一定の態様において、MIV-818は、1日1回投与される。一定の態様において、MIV-818は、1日2回投与される。一態様において、MIV-818は、約200mg、約150mg、又は約100mgの量で1日2回投与される。一態様において、MIV-818は、約200mgの量で1日2回投与される。一態様において、MIV-818は、約150mgの量で1日2回投与される。一態様において、MIV-818は、約100mgの量で1日2回投与される。
【0050】
一定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は非経口投与される。一定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、約0.5mg/Kg(対象の質量1キログラムあたり約0.5mgの抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体)、約1mg/Kg、約2mg/Kg、約3mg/Kg、約4mg/Kg、約5mg/Kg、約6mg/Kg、約7mg/Kg、約8mg/Kg、約9mg/Kg、約10mg/Kg、約11mg/Kg、約12mg/Kg、約13mg/Kg、約14mg/Kg、約15mg/Kg、約16mg/Kg、約17mg/Kg、約18mg/Kg、約19mg/Kg、又は約20mg/Kgの量で投与される。
【0051】
特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約20mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約19mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約18mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約17mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約16mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約15mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約14mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約13mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約12mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約11mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約9mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約8mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約7mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約6mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体は、約5mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約4mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約3mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約2mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約1mg/Kgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約0.5mg/Kgの量で静脈内投与される。
【0052】
特定の態様において、抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約1,500mgの量で静脈内投与される。特定の態様において、抗PD1又は抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の1日目に1日約1,500mgの量で投与される。特別な態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の1日目、28日周期の7日目と21日目、又は28日周期の8日目と21日目に、1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。特別な態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の1日目に1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。特別な態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の7日目と21日目に1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。特別な態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の8日目と21日目に1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。特別な態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の7日目と21日目に1日約5mg/Kgの量で静脈内投与される。
【0053】
一態様において、抗PD1モノクローナル抗体はペムブロリズマブで、30分間の静注として投与される。
一態様において、抗PD1モノクローナル抗体はMK-3475で、30分間の静注として投与される。
【0054】
一態様において、抗PD1モノクローナル抗体はピジリズマブで、30分間の静注として投与される。
一態様において、抗PD1モノクローナル抗体はニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、又はONO-4538)で、30分間の静注として投与される。
【0055】
一態様において、抗PDL1モノクローナル抗体はアテゾリズマブ(MPDL3280A)で、30分間の静注として投与される。
一態様において、抗PDL1モノクローナル抗体はデュルバルマブ(MEDI4736)で、30分間の静注として投与される。
【0056】
一態様において、デュルバルマブ(MEDI4736)は、各28日間の治療周期の1日目に単回の1500mg静注として投与される。
一定の態様において、MIV-818は、カプセル、錠剤又はカプレットのような固体剤形単位の形態である。
【0057】
一定の態様において、当該方法はさらに、治療上有効量のソラフェニブ、レゴラフェニブ又はドナフェニブなどの追加の活性薬を、MIV-818及びPD-1アンタゴニストに続いて又はそれらと同時に投与することを含む。
【0058】
特定の態様において、対象はヒトである。
本発明の態様
態様1
哺乳動物の肝臓がんの治療における、式I:
【化A】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩の使用であって、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合をブロックするモノクローナル抗体との哺乳動物の同時又は順次治療を特徴とする使用。
態様2 モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナルIgG4抗体である抗PD1モノクローナル抗体である、態様1に記載の使用。
態様3 ヒト化モノクローナルIgG4抗体が、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、ニボルマブ、カムレリズマブ又はチスレリズマブである、態様2に記載の使用。
態様4 ヒト化モノクローナルIgG4抗体がペムブロリズマブである、態様3に記載の使用。
態様5 ヒト化モノクローナルIgG4抗体がニボルマブである、態様3に記載の使用。
態様6 モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナルIgG1抗体である抗PDL1モノクローナル抗体である、態様1に記載の使用。
態様7 IgG1抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ又はデュルバルマブである、態様4に記載の使用。
態様8 IgG1抗体がデュルバルマブである、態様7に記載の使用。
態様9 がんがHCCである、態様1に記載の使用。
態様10 式Iの化合物が経口投与され、モノクローナル抗体が非経口投与される、態様1に記載の使用。
態様11 前記化合物が、少なくとも90%eeのジアステレオマー:
【化B】
又はその薬学的に許容可能な塩である、態様1に記載の使用。
態様12 原発性又は続発性肝腫瘍に罹患している哺乳動物の治療法であって、化合物は、式I:
【化C】
を有するか又はその薬学的に許容可能な塩であり、前記方法は前記哺乳動物に治療上有効量の前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、PD-L1又はPD-L2のPD1への結合をブロックする治療上有効量のモノクローナル抗体とを周期的に投与することを含み、前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩は経口投与され、前記抗体は非経口投与される方法。
本発明の側面は、以下の実施例及び添付図面を参照することによって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、腫瘍免疫微小環境の複雑な細胞培養モデルにおけるMIV-818の効果を描くBioMAPリードアウトであり、実施例1でさらに説明される。
図2図2は、1000nMのMIV-818と50ug/mlのペムブロリズマブの組合せのBioMAPリードアウトである。
図3図3は、1000nMのMIV-818/50ugのペムブロリズマブの組合せを対応単剤に重ね合わせたBioMAPリードアウトである。
図4図4は、200nMのMIV-818/10ug/mlのペムブロリズマブの組合せを対応単剤に重ね合わせたBioMAPリードアウトである。
図5図5は、40nMのMIV-818/2ug/mlのペムブロリズマブの組合せを対応単剤に重ね合わせたBioMAPリードアウトである。
図6図6は、8nMのMIV-818/0.4ug/mlのペムブロリズマブの組合せを対応単剤に重ね合わせたBioMAPリードアウトである。
図7図7は、比較のため、ペムブロリズマブの用量反応のBioMAPリードアウトである。
図8図8は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおけるMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の間質IFNガンマに対する用量と効果の間の関係を示すプロットである。
図9図9は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおけるMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の血管IFNガンマに対する用量と効果の間の関係を示すプロットである。
図10図10は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおけるMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の間質IL17Aに対する用量と効果の間の関係を示すプロットである。
図11図11は、図10に対応するプロットであるが、血管IL-17Aは組合せによる影響を実質的に受けないことを示している。
図12図12は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおけるMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の間質TNFアルファに対する用量と効果の間の関係を示すプロットである。
図13図13は、図12に対応するプロットであるが、血管TNFアルファは組合せによる影響を実質的に受けないことを示している。
図14図14は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおけるMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の間質IL-6に対する用量と効果の間の関係を示すプロットである。
図15図15は、図14に対応するプロットであるが、血管IL6は組合せによる影響を実質的に受けないことを示している。
図16図16は、MIV-818によって用量依存的に増強されたIL-2発現、及びペムブロリズマブとの組合せによる増強を示すグラフである。
図17図17は、MIV-818とペムブロリズマブの組合せによって増加したPBMC媒介性腫瘍細胞死を示すグラフである。
図18図18は、ヌクレオシド前駆体の合成を示すスキームである。
図19図19は、ホスホラミド試薬とヌクレオシド前駆体の結合を示すスキームである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用されているすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書中で参照されているすべての出版物及び特許は、それらの全文を引用によって本明細書に援用する。
【0061】
A.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、不定冠詞“a”及び“an”ならびに定冠詞“the”は、文脈上明白に他の場合を示していない限り、単数の指示対象だけでなく複数の指示対象も含む。
【0062】
用語“約”又は“およそ”は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味する。それは一部はその値がどのように測定又は決定されたかによる。一定の態様において、用語“約”又は“およそ”は、1、2、3、又は4標準偏差以内を意味する。一定の態様において、用語“約”又は“およそ”は、所与の値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、又は0.05%以内を意味する。
【0063】
本明細書においては、他に規定のない限り、用語“治療する”、“治療すること”及び“治療”は、疾患又は障害、あるいは疾患又は障害に随伴する一つ又は複数の症状の根絶又は改善を言う。一定の態様において、該用語は、疾患又は障害の拡大又は悪化を、そのような疾患又は障害を抱える対象に一つ又は複数の予防薬又は治療薬を投与する結果、最小限に抑えることを指す。一部の態様において、該用語は、特定疾患の症状の発現後、本明細書中に提供されている化合物又は剤形を、一つ又は複数の追加の活性薬の有無にかかわらず投与することを指す。
【0064】
本明細書においては、他に規定のない限り、用語“予防する”、“予防すること”及び“予防”は、疾患又は障害、あるいはその一つ又は複数の症状の発現、再発又は拡大を予防することを言う。一定の態様において、該用語は、症状の発現前に、特に本明細書中に提供されている疾患又は障害のリスクのある対象に対する、本明細書中に提供されている化合物又は剤形による治療又はそれの投与を指す(一つ又は複数のその他の追加活性薬を使って又は使わずに)。該用語には、特定疾患の症状の阻害又は減退も包含される。特に疾患の家族歴を有する対象は、一定の態様において予防的療法の候補者である。さらに、反復症状の既往歴を有する対象も、予防の潜在的候補者である。これに関連して、用語“予防(prevention)”は、用語“予防的治療(prophylactic treatment)”と互換的に使用できる。
【0065】
本明細書においては、他に規定のない限り、用語“管理する”、“管理すること”及び“管理”は、疾患又は障害、あるいはその一つ又は複数の症状の進行、拡大又は悪化を防止又は緩徐化することを言う。対象が予防薬及び/又は治療薬から引き出す有益効果は、疾患又は障害の治癒をもたらさないことも多い。この点において、“管理する”という用語には、特定疾患に罹患したことのある対象を、該疾患の再発を予防又は最小限に抑えようとして治療することも包含される。
【0066】
本明細書においては、特定医薬組成物の投与による特定障害の症状の改善は、それが永続的又は一時的、持続的又は一過性であるかどうかにかかわらず、該組成物の投与に起因しうる又は関連付けることができるあらゆる緩和を指す。
【0067】
本明細書においては、他に規定のない限り、化合物の“治療上有効量”及び“有効量”という用語は、疾患又は障害の治療又は管理において治療的利益を提供する、あるいは該疾患又は障害に随伴する一つ又は複数の症状を遅延させる又は最小限に抑えるのに十分な量を意味する。化合物の“治療上有効量”及び“有効量”は、疾患又は障害の治療又は管理に治療的利益を提供する治療薬の単独の量又は一つもしくは複数の他の薬剤と組み合わせた量を意味する。用語“治療上有効量”及び“有効量”は、全般的療法を改良する、疾患又は障害の症状又は原因を低減又は回避する、又は別の治療薬の治療効果を増強する量も包含できる。
【0068】
本明細書においては、他に規定のない限り、化合物の“予防上有効量”という用語は、疾患又は障害を予防する、又はその再発を予防するのに十分な量である。化合物の予防上有効量とは、疾患の予防に予防的利益を提供する治療薬の単独の量又は一つもしくは複数の他の薬剤と組み合わせた量を意味する。用語“予防上有効量”は、全般的予防を改良する、又は別の予防薬の予防効果を増強する量も包含できる。
【0069】
本明細書において“腫瘍”とは、悪性であれ良性であれ、新生物細胞の成長及び増殖、ならびにすべての前がん性及びがん性の細胞及び組織のことを言う。本明細書において“新生物”は、悪性であれ良性であれ、異常な組織増殖をもたらすあらゆる形態の調節不全の又は調節されない細胞増殖のことを言う。従って、“新生物細胞”は、調節不全の又は調節されない細胞増殖を有する悪性及び良性細胞を含む。
【0070】
用語“がん”及び“がん性”とは、典型的には、調節されない細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す又は説明する。がんの例は、HCCなどの固形腫瘍を含む。
【0071】
本明細書においては、他に規定のない限り、用語“増殖性”障害又は疾患とは、多細胞生物に害(すなわち不快症状又は平均余命の短縮)をもたらす、多細胞生物における一つ又は複数の細胞小集団の望ましくない細胞増殖のことを言う。例えば、本明細書において、増殖性障害又は疾患は、新生物障害及びその他の増殖性障害を含む。
【0072】
本明細書においては、他に規定のない限り、用語“再発性”とは、療法後にがんの寛解を得ていた対象にがん細胞が再来した状況を指す。
本明細書においては、他に規定のない限り、用語“不応性(難治性)”又は“抵抗性”とは、集中治療後も対象の体内にがん細胞が残っている状況を指す。
【0073】
本明細書中で使用されている用語“組成物”、“製剤”、及び“剤形”は、特定成分(一つ又は複数)(示されている場合、特定量)を含む組成物のほか、特定量の特定成分(一つ又は複数)の組合せから直接的又は間接的に得られた任意の製品(一つ又は複数)を包含する。“薬学的”又は“薬学的に許容可能な”とは、組成物、製剤、又は剤形中のあらゆる希釈剤、賦形剤又は担体(いずれも一つ又は複数)が他の成分(一つ又は複数)と適合可能で、そのレシピエントに対して有害でないことを意味する。特に明記されない限り、用語“組成物”、“製剤”、及び“剤形”は本明細書においては互換的に使用される。
【0074】
“即時放出”という用語は、本明細書で提供される組成物、製剤、又は剤形に関連して本明細書中で使用される場合、該組成物、製剤、又は剤形が、経口投与後、胃の先で、該組成物、製剤、又は剤形からのAPIの一部又は全部の空間的及び/又は時間的放出を遅らせる役割を果たす成分(例えばコーティング)を含まないことを意味する。一定の態様において、即時放出組成物、製剤、又は剤形は、経口投与後、実質的に胃でAPIを放出するものである。特定の態様において、即時放出組成物、製剤、又は剤形は、遅延放出されないものである。特定の態様において、即時放出組成物、製剤、又は剤形は、腸溶コーティングを含まないものである。
【0075】
“対象”という用語は、これらに限定されないが、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む哺乳動物を意味する。特定の態様において、対象はヒトである。
【0076】
“同時投与”及び“~との組合せ(併用)”という用語は、2種類以上の治療薬を、同時に(simultaneously,concurrently)投与するか又は特定されない制限時間内に順次投与することを含む。一態様において、薬剤は細胞内又は対象の体内に同時に存在するか又はそれらの生物学的又は治療的効果を同時に発揮する。一態様において、治療薬は同じ組成物内又は単位剤形内に存在する。他の態様において、治療薬は別の組成物内又は単位剤形内に存在する。一定の態様において、第一の薬剤は、第二の治療薬の投与前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、投与と同時に、又は投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与できる。
【0077】
“同位体組成”という用語は、所与の原子位置に存在するそれぞれの同位体の量のことを言い、“天然同位体組成”とは、所与の原子位置に関して天然に存在する同位体組成又は存在比(abundance)を意味する。原子位置がそれらの天然同位体組成で構成される場合、その原子位置は、本明細書においては“濃縮されていない”と表現されることもある。別段の指定がない限り、本明細書に記載される化合物の原子位置はその原子のあらゆる安定同位体を表すものとする。例えば、特に明記されない限り、ある位置が具体的に“H”又は“水素”と指定されている場合、その位置はその天然同位体組成の水素を有すると理解される。
【0078】
用語“同位体的に濃縮された”とは、ある原子位置がその原子の天然同位体組成以外の同位体組成を有することを意味する。“同位体的に濃縮された”とは、少なくとも一つの原子位置がその原子の天然同位体組成以外の同位体組成を有する少なくとも一つの原子位置を含有する化合物も意味する。本明細書において、“アイソトポログ”は同位体的に濃縮された化合物である。“同位体濃縮”という用語は、分子内の所与の原子位置で、その原子の天然同位体組成の代わりに取り込まれている特定同位体の量の割合を指す。例えば、所与の位置で1%のジュウテリウム濃縮とは、所与のサンプル中の分子の1%が特定位置でジュウテリウムを含有していることを意味する。ジュウテリウムの天然分布は約0.0156%なので、濃縮されていない出発物質を用いて合成された化合物中の任意の位置におけるジュウテリウム濃縮は約0.0156%である。
【0079】
用語“同位体濃縮係数”は、特定同位体の同位体組成と天然同位体組成との間の比率を指す。本明細書において提供される化合物に関して、特定の原子位置がジュウテリウム又は“D”を有すると指定されている場合、その位置におけるジュウテリウムの存在比は、ジュウテリウムの天然存在比(約0.015%)より実質的に大きいと理解される。ジュウテリウムを有すると指定された位置は、典型的には、特別な態様において、指定された各ジュウテリウムの位置で、少なくとも1000(15%ジュウテリウム取込み)、少なくとも2000(30%ジュウテリウム取込み)、少なくとも3000(45%ジュウテリウム取込み)、少なくとも3500(52.5%ジュウテリウム取込み)、少なくとも4000(60%ジュウテリウム取込み)、少なくとも4500(67.5%ジュウテリウム取込み)、少なくとも5000(75%ジュウテリウム取込み)、少なくとも5500(82.5%ジュウテリウム取込み)、少なくとも6000(90%ジュウテリウム取込み)、少なくとも6333.3(95%ジュウテリウム取込み)、少なくとも6466.7(97%ジュウテリウム取込み)、少なくとも6600(99%ジュウテリウム取込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%ジュウテリウム取込み)の最小同位体濃縮係数を有する。
【0080】
[0099]本明細書において提供される化合物の同位体濃縮及び同位体濃縮係数は、当業者に公知の従来分析法、例えば、質量分析、核磁気共鳴分光学、及び結晶学を用いて決定できる。
【0081】
B.MIV-818
MIV-818の合成は、WO2016/030335に示されている。手短に述べると、ヌクレオシド前駆体を図18に示されているように製造し、図19に示されているようにホスホラミド試薬に結合させる。
【0082】
MIV-818は、典型的には、>75%、例えば>90%、好ましくは>95%、さらに好ましくは少なくとも95%eeのジアステレオマーである。
【0083】
【化6】
【0084】
あるいはリンの位置でのラセミ化合物も使用でき、典型的には製造が安価である。
C.医薬製剤
1.概説
本明細書の態様にはMIV-818を含む医薬製剤及び組成物も包含され、該製剤及び組成物は経口投与用に製造される。特別な態様は、本明細書において提供されているような特定の医学的適応症を治療するための医薬製剤及び組成物の製造におけるMIV-818の使用に関する。本明細書において提供されるMIV-818を含む医薬製剤及び組成物は、それを必要とする対象への経口送達を意図している。経口送達の形態は、これらに限定されないが、錠剤、カプセル、カプレット、溶液、懸濁液、及びシロップなどで、被包化されていてもいなくてもよい複数の顆粒、ビーズ、粉末又はペレットも含みうる。そのような形態は、本明細書においては、MIV-818を含有する“薬物コア(drug core)”と呼ばれることもある。
【0085】
本明細書では特別な態様において、錠剤又はカプセルである固体経口剤形を提供する。一定の態様において、該製剤はMIV-818を含む錠剤である。一定の態様において、該製剤はMIV-818を含むカプセルである。一定の態様において、本明細書において提供される錠剤又はカプセルは、任意に、例えば、流動促進剤、希釈剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、造粒剤、結合剤、ポリマー、及びコーティング剤などの一つ又は複数の賦形剤を含む。一定の態様において、該製剤は即時放出錠剤である。一定の態様において、該製剤は、APIを例えば実質的に腸管で放出する制御放出錠剤である。一定の態様において、該製剤は硬質ゼラチンカプセルである。一定の態様において、該製剤は軟質ゼラチンカプセルである。一定の態様において、該カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。一定の態様において、該製剤は即時放出カプセルである。一定の態様において、該製剤は、APIを例えば実質的に腸管で放出する即時又は制御放出カプセルである。
【0086】
特別な態様において、製剤は、例えば関連テキストに記載されているような、医薬製剤分野の当業者に公知の従来法を用いて製造できる。例えば、REMINGTON,THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,第20版,Lippincott Williams & Wilkins,(2000)、ANSELら,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,第7版,Lippincott Williams & Wilkins,(1999)、GIBSON,PHARMACEUTICAL PREFORMULATION AND FORMULATION,CRC Press(2001)参照。
【0087】
特別な態様において、製剤中のMIV-818の具体的な量は、例えば、約10mg、約20mg、約40mg、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、最小約240mg、約260mg、約280mg、約300mg、約320mg、約340mg、約360mg、約380mg、約400mg、約420mg、約440mg、約460mg、約480mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600 mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、約2500mg、約3000mg、約4000mg、又は約5000mgである。
【0088】
特別な態様において、製剤中のMIV-818の具体的な量は、例えば、少なくとも約10mg、少なくとも約20mg、少なくとも約40mg、少なくとも約60mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約140mg、少なくとも約160mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、少なくとも約600mg、少なくとも約700mg、少なくとも約800mg、少なくとも約900mg、少なくとも約1000mg、少なくとも約1100mg、少なくとも約1200mg、少なくとも約1300mg、少なくとも約1400mg、少なくとも約1500mg、少なくとも約1600mg、少なくとも約1700mg、少なくとも約1800mg、少なくとも約1900mg、少なくとも約2000mg、少なくとも約2100mg、少なくとも約2200mg、少なくとも約2300mg、少なくとも約2400mg、少なくとも約2500mg、少なくとも約3000mg、少なくとも約4000mg、又は少なくとも約5000mgである。
【0089】
一定の態様において、製剤は錠剤であり、該錠剤は、当該技術分野で承認されている標準的な錠剤加工手順及び装置を用いて製造される。一定の態様において、錠剤を形成するための方法は、MIV-818を単独で又は一つもしくは複数の賦形剤、例えば、担体、添加剤、ポリマーなどと組み合わせて含む粉末、結晶性、及び/又は顆粒組成物の直接圧縮である。一定の態様において、直接圧縮の代替として、錠剤は、湿式造粒又は乾式造粒法を用いて製造できる。一定の態様において、錠剤は、湿潤材料又はそれ以外の加工しやすい材料から出発して、圧縮されるのではなく成形される。一定の態様において、圧縮及び造粒技術が使用される。
【0090】
一定の態様において、製剤はカプセルであり、該カプセルは、当該技術分野で承認されている標準的なカプセル加工手順及び装置を用いて製造できる。一定の態様において、軟質ゼラチンカプセルが製造でき、該カプセルは、MIV-818と植物油又は非水性の水混和性材料、例えばポリエチレングリコールなどとの混合物を含有する。一定の態様においては硬質ゼラチンカプセルが製造でき、該カプセルは、MIV-818の顆粒を、固体粉末担体、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体、又はゼラチンなどと組み合わせて含有する。一定の態様において、硬質ゼラチンカプセルシェルは、ゼラチンと少量のグリセロールなどの可塑剤とを含むカプセル組成物から製造できる。一定の態様において、ゼラチンの代替として、カプセルシェルは炭水化物材料から製造することもできる。一定の態様において、カプセル組成物は、必要に応じて追加的に、ポリマー、着色剤、フレーバー及び乳白剤を含んでいてもよい。一定の態様において、カプセルはHPMCを含む。
【0091】
一定の態様において、本明細書において提供される医薬製剤はMIV-818を含む圧縮錠剤である。錠剤は、MIV-818に加えて、任意に下記の一つ又は複数の賦形剤を含んでいてもよい。(a)希釈剤又は充填剤(所望サイズの錠剤を製造するために製剤に必要な嵩を追加できる)、(b)結合材又は接着剤(製剤の粒子の接着を促進できるので、造粒を可能にし、最終錠剤の一体性を維持できる)、(c)崩壊剤(disintegrants,disintegrating agents)(投与後、薬物のアベイラビリティ改良のために錠剤をより小さい粒子に分解するのを促進できる)、(d)粘着防止剤、流動促進剤、滑沢剤又は潤滑剤(錠剤材料の錠剤ダイへの流動を増強し、パンチとダイの摩耗を最小限に抑え、充填材料がパンチとダイに粘着するのを防止し、光沢ある錠剤を製造できる)、及び(e)着色剤及びフレーバーなどの様々な添加物。圧縮後、本明細書において提供される錠剤は本明細書中に記載の様々な材料でコーティングされてもよい。
【0092】
一定の態様において、本明細書において提供される医薬製剤は、MIV-818の多重圧縮錠剤である。多重圧縮錠剤は、充填材料を2回以上の圧縮に付すことによって製造される。その結果、多層錠剤又は錠剤内錠剤が得られる。内側の錠剤はMIV-818と任意に一つ又は複数の賦形剤を含むコアであり、外側部分はシェルで、該シェルは一つ又は複数の賦形剤を含み、更なるMIV-818を含有しても又はしなくてもよい。積層錠剤は、充填材料の一部をダイに入れてまず圧縮し、次いで追加の充填材料を圧縮して2層又は3層錠剤(別個に充填した回数による)を形成することによって製造できる。各層は、化学的又は物理的に不適合という理由で互いに別個の異なる治療薬を含有することも、又は段階的薬物放出のために同じ治療薬を含有することも、又は単に多層錠剤の独特な外観のためのこともある。各充填部分に異なる色を付ければ独特の外観の錠剤を製造できる。圧縮錠剤を内部コアとして有する錠剤の製造においては、次にそれ包囲する充填材料を圧縮するために予備形成錠剤をダイ内部に正確に配置するための特殊な機械を使用できる。
【0093】
一定の態様において、MIV-818の圧縮錠剤は着色又は非着色糖層でコーティングできる。コーティングは水溶性で経口摂取後迅速に溶解できる。糖コーティングは、封入薬物を環境から保護するだけでなく、不快な味又は臭いに対するバリアを提供する目的も果たすことができる。糖コーティングは、圧縮錠剤の外観を向上させるとともに、製造業者の情報を識別する刷込みも可能にしうる。一定の態様において、糖衣錠は元の非被覆錠剤よりも50%大きく重くなりうる。錠剤の糖コーティングは下記の任意工程に分割できる。(1)防水加工及び封止(必要な場合)、(2)サブコーティング、(3)平滑化及び最終の丸み付け、(4)仕上げ及び着色(所望の場合)、(5)刷込み(必要な場合)、及び(6)研磨。
【0094】
一定の態様において、MIV-818の圧縮錠剤はフィルムコーティングされていてもよい。フィルムコート錠は、錠剤上に皮膚のような膜を形成できるポリマーの薄層でコーティングされた圧縮錠剤でありうる。フィルムは通常着色され、より耐久性が高く、かさばらず、そして適用に時間がかからないという利点を有する。その組成により、コーティングは消化管内の所望の位置で破れ、コア錠剤を露出するように設計できる。プラスチック様材料の薄くてぴったりしたコーティングを圧縮錠剤上に配置するフィルムコーティング法によって、元の圧縮錠剤と本質的に同じ重量、形状、及びサイズの被覆錠剤を製造できる。フィルムコーティングは、錠剤を魅力的で独特なものにするために着色されてもよい。フィルムコーティング溶液は非水性又は水性でありうる。特別な態様において、非水性溶液は、錠剤に所望コーティングを提供するために、任意に一つ又は複数の下記種類の材料を含有していてもよい。(1)従来のコーティング条件下で再現可能で、様々な錠剤形状に適用可能な平滑薄膜を生成できるフィルム形成剤、例えば酢酸フタル酸セルロース;(2)フィルムに水溶性又は透過性を提供し、体液による浸透及び薬物の治療的利用可能性を確保できるアロイ物質、例えばポリエチレングリコール;(3)コーティングに柔軟性及び弾性をもたらすことによって耐久性を提供する可塑剤、例えばヒマシ油;(4)適用時にフィルムの塗布性を増強する界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン誘導体;(5)コート錠の外観を魅力的で独特なものにするための乳白剤及び着色剤、例えば乳白剤として二酸化チタン、及び着色剤としてFD&C又はD&C色素;(6)対象への錠剤の受容性を高めるための甘味剤、フレーバー、又は芳香剤、例えば甘味剤としてサッカリン、フレーバー及び芳香剤としてバニリン;(7)別の研磨操作をしなくても錠剤に光沢を提供する光沢剤(glossant)、例えば蜜ろう;及び(8)錠剤上に他の成分を塗布することを可能にしつつ、効果的でありながら高速の操作を可能にする迅速な蒸発も可能にする揮発性溶媒、例えばアルコール-アセトン混合物。一定の態様において、水性フィルムコーティング剤は下記の一つ又は複数を含有しうる。(1)フィルム形成ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルセルロースのようなセルロースエーテルポリマー;(2)可塑剤、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチルフタレート、及び塩基性酢酸ジブチル;(3)着色剤及び乳白剤、例えばFD&C又はD&Cレーキ及び酸化鉄顔料;又は(4)ビヒクル、例えば水。
【0095】
一定の態様において、MIV-818の圧縮錠剤は圧縮コーティングされうる。顆粒又は粉末の形態のコーティング材料は、特殊な錠剤プレスを用いて錠剤の薬物コア上に圧縮できる。
【0096】
一定の態様において、医薬製剤はMIV-818のゼラチンコート錠である。ゼラチンコート錠はカプセル形状の圧縮錠剤で、等量の粉末が充填されたカプセルよりもコート製品を小さくすることができる。ゼラチンコーティングは嚥下を容易にし、封止されていないカプセルと比べて、ゼラチンコート錠の方がより開封明示的である(不正開封の跡がすぐ分かる)。
【0097】
一定の態様において、圧縮錠剤は湿式造粒によって製造できる。湿式造粒は圧縮錠剤の製造に広く使用されている方法で、特別な態様において、一つ又は複数の下記工程を必要とする。(1)成分の秤量とブレンディング(配合);(2)湿潤塊(damp mass)の製造;(3)湿潤塊をペレット又は顆粒にスクリーニング;(4)造粒物(granulation)の乾燥;(5)乾式スクリーニングによる造粒物のサイジング;(6)滑沢剤の添加とブレンディング;及び(7)圧縮による錠剤化。
【0098】
一定の態様において、圧縮錠剤は乾式造粒によって製造できる。乾式造粒法により、粉末混合物は大きなピースに圧縮され、その後顆粒に解砕又はサイジングされる。しかし、この方法は、活性成分又は希釈剤のいずれかが凝集特性を有する。成分の秤量と混合後、粉末混合物は平たい大きなタブレット又はペレットにスラッグ化又は圧縮できる。その後、スラッグは手作業又はミルによって粉砕され、サイジングのために所望メッシュのスクリーンに通される。滑沢剤が通常の様式で添加され、錠剤は圧縮によって製造される。あるいは、スラッグ化の代わりに粉末圧縮機を用いて高圧ローラーに挟んでプレスすることにより、粉末の密度を高くすることもできる。次いで、圧縮された材料は、分解、サイジング、及び潤滑化され、錠剤が通常の様式で圧縮により製造される。ローラー圧縮法のほうがスラッグ化より好適であることが多い。ローラー圧縮製剤に使用される結合剤は、メチルセルロース又はヒドロキシ-メチルセルロースなどで、良好な錠剤硬度及び摩損度を生み出すことができる。
【0099】
一定の態様において、圧縮錠剤は直接圧縮によって製造できる。一部の粒子状化学物質は、湿式又は乾式造粒の必要なしに錠剤機で直接圧縮することを可能にする自由流動性及び凝集特性を備えている。この性質を持たない化学物質の場合、直接圧縮による錠剤の製造に必要な性質を付与する特殊な医薬用賦形剤が使用できる。特殊な錠剤化賦形剤は、例えば、充填剤(例えば、噴霧乾燥ラクトース、アルファ-ラクトース一水和物の微結晶、スクロース-転化糖-コーンスターチ混合物、微結晶性セルロース、結晶性マルトース、及びリン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、直接圧縮デンプン、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、架橋カルボキシメチルセルロースファイバー、及び架橋ポリビニルピロリドン);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム及びタルク);及び流動促進剤(例えばヒュームド二酸化ケイ素)などである。
【0100】
一定の態様において、本明細書において提供される錠剤は成形によって製造できる。成形錠剤用の基剤は、一般的に、粉末スクロースの部分を含む又は含まない微粉末ラクトースの混合物である。充填物の製造に際しては、薬物と基剤を幾何学的希釈によって均一に混合する。粉末混合物は、粉末を湿らせる程度に水とアルコールの混合物で濡らし、圧縮できるようにする。ラクトース/スクロース基剤の部分に対する水の溶媒作用により、乾燥時に粉末混合物の結合が達成される。アルコール部分は乾燥工程を促進する。
【0101】
一定の態様において、本明細書において提供される医薬製剤は、MIV-818と任意に一つ又は複数の賦形剤を含有し、“薬物コア”を形成する。任意の賦形剤は、例えば、当業者に公知の希釈剤(増量剤)、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、保存剤、着色剤、フレーバー、結合剤、補助賦形剤(excipient support)、流動促進剤、浸透増強賦形剤、可塑剤などである。当業者には理解される通り、一部の物質は医薬組成物において複数の目的を果たす。例えば、一部の物質は、圧縮後錠剤を一つにまとめるのを助ける結合剤でありながら、ひとたびそれが標的送達部位に達すると錠剤の分解を助ける崩壊剤にもなる。賦形剤の選択と使用量は、経験及び標準的手順の検討及び当該技術分野で利用可能な参考文献に基づいて、製剤科学者が容易に決定できる。
【0102】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の結合剤を含む。結合剤は、例えば錠剤に凝集性を付与し、そして圧縮後も錠剤が無傷のままであることを確保するために使用できる。適切な結合剤は、とりわけ、デンプン(コーンスターチ及びアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース及びラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ワックス、ならびに天然及び合成ゴム、例えばアカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系ポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを含む)、ヴィーガム(veegum)、カルボマー(例えばカーボポール)、ナトリウム、デキストリン、グアガム、水添植物油、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、KOLLIDON、PLASDONE)、微結晶性セルロースなどであるが、これらに限定されない。また、結合剤には、例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カボマー(cabomer)、カラギーナン、酢酸フタル酸セルロース、イナゴマメ(ceratonia)、キトサン、粉砂糖、コポビドン、デキストレート、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒプロメロース、イヌリン、ラクトース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、ポロキサマー、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメチルアクリレート、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、ステアリン酸、スクロース、及びゼインも含まれる。
【0103】
結合剤は、薬物コアに対して、適切と判断された場合、薬物コアの約2%w/w、薬物コアの約4%w/w、薬物コアの約6%w/w、薬物コアの約8%w/w、薬物コアの約10%w/w、薬物コアの約12%w/w、薬物コアの約14%w/w、薬物コアの約16%w/w、薬物コアの約18%w/w、薬物コアの約20%w/w、薬物コアの約22%w/w、薬物コアの約24%w/w、薬物コアの約26%w/w、薬物コアの約28%w/w、薬物コアの約30%w/w、薬物コアの約32%w/w、薬物コアの約34%w/w、薬物コアの約36%w/w、薬物コアの約38%w/w、薬物コアの約40%w/w、薬物コアの約42%w/w、薬物コアの約44%w/w、薬物コアの約46%w/w、薬物コアの約48%w/w、薬物コアの約50%w/w、薬物コアの約52%w/w、薬物コアの約54%w/w、薬物コアの約56%w/w、薬物コアの約58%w/w、薬物コアの約60%w/w、薬物コアの約62%w/w、薬物コアの約64%w/w、薬物コアの約66%w/w、薬物コアの約68%w/w、薬物コアの約70%w/w、薬物コアの約72%w/w、薬物コアの約74%w/w、薬物コアの約76%w/w、薬物コアの約78%w/w、薬物コアの約80%w/w、薬物コアの約82%w/w、薬物コアの約84%w/w、薬物コアの約86%w/w、薬物コアの約88%w/w、薬物コアの約90%w/w、薬物コアの約92%w/w、薬物コアの約94%w/w、薬物コアの約96%w/w、薬物コアの約98%w/w、又はそれより多い量でありうる。一定の態様において、特定の結合剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0104】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の希釈剤を含む。希釈剤は、例えば、実用サイズの錠剤が最終的に提供されるように、嵩を増すために使用できる。適切な希釈剤は、とりわけ、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、微結晶性セルロース(例えばAVICEL)、超微粒子セルロース、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えばEUDRAGIT)、塩化カリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール及びタルクなどである。希釈剤には、例えば、アルギン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸セルロース、圧縮糖、粉砂糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、エリトリトール、エチルセルロース、フルクトース、フマル酸、パルミトステアリン酸グリセリル、イソマルト、カオリン、ラクチトール(lacitol)、ラクトース、マンニトール、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、中鎖トリグリセリド、微結晶性セルロース、微結晶性ケイ化セルロース、粉末セルロース、ポリデキストロース、ポリメチルアクリレート、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、スルホブチルエーテル-シクロデキストリン、タルク、トラガカント、トレハロース、及びキシリトールも含まれる。
【0105】
希釈剤は、錠剤又はカプセルに所望体積をもたらすように計算された量で使用できる。一定の態様において、希釈剤は、薬物コアの(重量/重量で)約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約22%以上、約24%以上、約26%以上、約28%以上、約30%以上、約32%以上、約34%以上、約36%以上、約38%以上、約40%以上、約42%以上、約44%以上、約46%以上、約48%以上、約50%以上、約52%以上、約54%以上、約56%以上、約58%以上、約60%以上、約62%以上、約64%以上、約68%以上、約70%以上、約72%以上、約74%以上、約76%以上、約78%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、又は約95%以上;薬物コアの約10%~約90%w/w、薬物コアの約20%~約80%w/w、薬物コアの約30%~約70%w/w、薬物コアの約40%~約60%w/wの量で使用できる。一定の態様において、特定の希釈剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0106】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の滑沢剤を含む。滑沢剤は、例えば錠剤の製造を容易にするために使用でき、適切な滑沢剤の例は、例えば、落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及びテオブロマ油(カカオ脂)などの植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸などである。一定の態様において、ステアリン酸類は、存在する場合、薬物含有コアのおよそ2重量%を超えない。滑沢剤の更なる例は、例えば、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、及びステアリン酸亜鉛などである。特別な態様において、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0107】
一定の態様において、滑沢剤は、薬物コアに対して、薬物コアの約0.2%w/w、薬物コアの約0.4%w/w、薬物コアの約0.6%w/w、薬物コアの約0.8%w/w、薬物コアの約1.0%w/w、薬物コアの約1.2%w/w、薬物コアの約1.4%w/w、薬物コアの約1.6%w/w、薬物コアの約1.8%w/w、薬物コアの約2.0%w/w、薬物コアの約2.2%w/w、薬物コアの約2.4%w/w、薬物コアの約2.6%w/w、薬物コアの約2.8%w/w、薬物コアの約3.0%w/w、薬物コアの約3.5%w/w、薬物コアの約4%w/w、薬物コアの約4.5%w/w、薬物コアの約5%w/w、薬物コアの約6%w/w、薬物コアの約7%w/w、薬物コアの約8%w/w、薬物コアの約10%w/w、薬物コアの約12%w/w、薬物コアの約14%w/w、薬物コアの約16%w/w、薬物コアの約18%w/w、薬物コアの約20%w/w、薬物コアの約25%w/w、薬物コアの約30%w/w、薬物コアの約35%w/w、薬物コアの約40%w/w、薬物コアの約0.2%~約10%w/w、薬物コアの約0.5%~約5%w/w、又は薬物コアの約1%~約3%w/wの量で存在する。一定の態様において、特定の滑沢剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0108】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の崩壊剤を含む。崩壊剤は、例えば錠剤の崩壊を容易にするために使用でき、例えば、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム又は架橋ポリマーでありうる。崩壊剤には、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、AC-DI-SOL、PRIMELLOSE)、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、KOLLIDON、POLYPLASDONE)、グアガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末セルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、EXPLOTAB)及びデンプンも含まれる。追加の崩壊剤は、例えば、アルギン酸カルシウム、キトサン、ドクサートナトリウム(sodium docusate)、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポビドンなどである。
【0109】
一定の態様において、崩壊剤は、薬物コアに対して、薬物コアの約1%w/w、薬物コアの約2%w/w、薬物コアの約3%w/w、薬物コアの約4%w/w、薬物コアの約5%w/w、薬物コアの約6%w/w、薬物コアの約7%w/w、薬物コアの約8%w/w、薬物コアの約9%w/w、薬物コアの約10%w/w、薬物コアの約12%w/w、薬物コアの約14%w/w、薬物コアの約16%w/w、薬物コアの約18%w/w、薬物コアの約20%w/w、薬物コアの約22%w/w、薬物コアの約24%w/w、薬物コアの約26%w/w、薬物コアの約28%w/w、薬物コアの約30%w/w、薬物コアの約32%w/w、薬物コアの約32%w/wより大、薬物コアの約1%~約10%w/w、薬物コアの約2%~約8%w/w、薬物コアの約3%~約7%w/w、又は薬物コアの約4%~約6%w/wの量で存在する。一定の態様において、特定の崩壊剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0110】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の安定剤を含む。安定剤(吸収促進剤とも呼ばれる)は、例えば薬物分解反応(例を挙げると酸化反応など)を阻害又は遅延させるために使用できる。安定剤は、例えば、d-アルファ-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS)、アカシア、アルブミン、アルギン酸、ステアリン酸アルミニウム、 アルギン酸アンモニウム、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ベントナイト、ブチル化ヒドロキシトルエン、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、カラギーナン、イナゴマメ(ceratonia)、コロイド状二酸化ケイ素、シクロデキストリン、ジエタノールアミン、エデテート、エチルセルロース、エチレングリコール、パルミトステアレート、グリセリンモノステアレート、グアガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、転化糖、レシチン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、モノエタノールアミン、ペクチン、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸カリウム、ポラクリリンカリウム、ポビドン、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、ラフィノース、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ステアリルフマル酸ナトリウム、ソルビトール、ステアリルアルコール、スルホブチル-b-シクロデキストリン、トレハロース、白ろう、キサンタンガム、キシリトール、黄ろう、及び酢酸亜鉛などである。
【0111】
一定の態様において、安定剤は、薬物コアに対して、薬物コアの約1%w/w、薬物コアの約2%w/w、薬物コアの約3%w/w、薬物コアの約4%w/w、薬物コアの約5%w/w、薬物コアの約6%w/w、薬物コアの約7%w/w、薬物コアの約8%w/w、薬物コアの約9%w/w、薬物コアの約10%w/w、薬物コアの約12%w/w、薬物コアの約14%w/w、薬物コアの約16%w/w、薬物コアの約18%w/w、薬物コアの約20%w/w、薬物コアの約22%w/w、薬物コアの約24%w/w、薬物コアの約26%w/w、薬物コアの約28%w/w、薬物コアの約30%w/w、薬物コアの約32%w/w、薬物コアの約1%~約10%w/w、薬物コアの約2%~約8%w/w、薬物コアの約3%~約7%w/w、又は薬物コアの約4%~約6%w/wの量で存在する。一定の態様において、特定の安定剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0112】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の流動促進剤を含む。流動促進剤は、例えば、粉末組成物又は顆粒の流動性を改良するため又は投与の正確性を改良するために使用できる。流動促進剤として機能しうる賦形剤は、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、第三リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、粉末セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、デンプン、第三リン酸カルシウム、及びタルクなどである。
【0113】
一定の態様において、流動促進剤は、薬物コアに対して、薬物コアの約1%w/w未満、薬物コアの約1%w/w、薬物コアの約2%w/w、薬物コアの約3%w/w、薬物コアの約4%w/w、薬物コアの約5%w/w、薬物コアの約6%w/w、薬物コアの約7%w/w、薬物コアの約8%w/w、薬物コアの約9%w/w、薬物コアの約10%w/w、薬物コアの約12%w/w、薬物コアの約14%w/w、薬物コアの約16%w/w、薬物コアの約18%w/w、薬物コアの約20%w/w、薬物コアの約22%w/w、薬物コアの約24%w/w、薬物コアの約26%w/w、薬物コアの約28%w/w、薬物コアの約30%w/w、薬物コアの約32%w/w、薬物コアの約1%~約10%w/w、薬物コアの約2%~約8%w/w、薬物コアの約3%~約7%w/w、又は薬物コアの約4%~約6%w/wの量で存在する。一定の態様において、特定の流動促進剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0114】
一定の態様において、本明細書において提供される製剤は、一つ又は複数の浸透増強剤(例えば浸透性増強剤とも呼ばれる)を含む。一定の態様において、浸透増強剤は胃腸壁からのMIV-818の取込みを増強する。一定の態様において、浸透増強剤は血流に入るMIV-818の速度及び/又は量を変更する。特別な態様において、d-アルファ-トコフェリルポリエチレングリコール-1000スクシネート(ビタミンE TPGS)が浸透増強剤として使用される。特別な態様において、例えば当業者に公知の任意の浸透増強剤など、一つ又は複数の他の適切な浸透増強剤が使用される。適切な浸透増強剤の具体例は、例えば以下にリストされているものなどである。
製品名の例/化学名/供給業者
Pluronic F 127/ポロキサマー F 127/Sigma社
Lutrol F 68/ポロキサマー 188/BASF社
Carbopol 934-P/カルボマー 934-P/Spectrum Chemical社
Tween 80/ポリソルベート 80/Sigma社
Chitosan/キトサン低分子量/Aldrich社
Capric acid/Na cap/デカン酸ナトリウム/Sigma社
Lauric acid/Na laur/ドデカン酸ナトリウム/Sigma社
Disodium EDTA/エチレンジアミン四酢酸/Sigma社
二ナトリウム二水和物
Propylene glycol/1,2 プロパンジオール/Sigma社
CM Cellulose/カルボキシメチルセルロース/Sigma社
Labrasol/カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド/Gattefosse社
N,N-ジメチルアセトアミド(99%以上)/Sigma社
Vitamin E TPGS/d-アルファ-トコフェリルポリエチレン/Eastman社
グリコール-1000スクシネート
Solutol HS 15/ポリエチレングリコール 660 12-/BASF社
ヒドロキシステアレート
Labrafil M 1944 CS (2)/オレイルマクロゴールグリセリド/Gattefosse社
その他の可能性ある浸透増強剤は、例えば、アルコール、ジメチルスルホキシド、グリセリルモノオレエート、グリコフロール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、リノール酸、ミリスチン酸、オレイン酸、オレイルアルコール、パルミチン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、2-ピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、及びチモールなどである。
【0115】
一定の態様において、浸透増強剤は、製剤中に、製剤の全重量に対して、重量で約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、約5%、約5.1%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、約5.5%、約5.6%、約5.7%、約5.8%、約5.9%、約6%、約6.1%、約6.2%、約6.3%、約6.4%、約6.5%、約6.6%、約6.7%、約6.8%、約6.9%、約7%、約7.1%、約7.2%、約7.3%、約7.4%、約7.5%、約7.6%、約7.7%、約7.8%、約7.9%、約8%、約8.1%、約8.2%、約8.3%、約8.4%、約8.5%、約8.6%、約8.7%、約8.8%、約8.9%、約9%、約9.1%、約9.2%、約9.3%、約9.4%、約9.5%、約9.6%、約9.7%、約9.8%、約9.9%、約10%、約10%を超える、約12%を超える、約14%を超える、約16%を超える、約18%を超える、約20%を超える、約25%を超える、約30%を超える、約35%を超える、約40%を超える、約45%を超える、又は約50%を超える量で存在する。一定の態様において、本明細書において提供される適切な浸透増強剤の適切な量は当業者によって決定される。
【0116】
何らかの特定理論に限定しようとしているのではないが、本明細書において提供される浸透増強剤は、とりわけ、胃腸壁を通過するMIV-818の輸送を促進する(例えば、速度又はその程度を増大する)ことによって機能しうる。一般に、胃腸壁を通過する移動は、例えば、受動拡散(濃度勾配によってのみ推進される様式で膜を通過する薬物の移動);担体媒介拡散(細胞膜に埋め込まれた特殊な輸送系を通じて細胞膜を通過する薬物の移動);傍細胞拡散(細胞の中ではなく二つの細胞の間を通ることによって膜を通過する薬物の移動);及び経細胞拡散(細胞を通過する薬物の移動)によって起こりうる。
【0117】
さらに、細胞内に入る薬物を排出することによって薬物の細胞内蓄積を防止することができる多数の細胞タンパク質がある。これらは排出ポンプと呼ばれることもある。一つのそのような排出ポンプは、体内の多くの異なる組織(例えば、腸、胎盤膜、血液脳関門)に存在するp糖タンパク質が関与するものである。浸透増強剤は、とりわけ、上記過程のいずれかを促進することによって(例えば、特に、膜の流動性を増大することによって、細胞間の密着結合を開くことによって、及び/又は排出を阻害することによって)機能できる。
【0118】
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の7日目及び21日目に投与される。
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の1日目に投与される。
【0119】
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の8日目及び21日目に投与される。
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、21日周期の1日目に投与される。
【0120】
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、14日周期の1日目に投与される。
一態様において、MIV-818は、1日約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、又は約600mgの量で投与される。
【0121】
一態様において、MIV-818は、1日約300mgの量で投与される。
一態様において、MIV-818は、1日約200mgの量で投与される。
一態様において、MIV-818は、1日1回投与される。
【0122】
一態様において、MIV-818は、1日2回投与される。
一態様において、MIV-818は、1日2回、約200mg、約150mg、又は約100mgの量で投与される。一態様において、MIV-818は、1日2回、約200mgの量で投与される。一態様において、MIV-818は、1日2回、約150mgの量で投与される。一態様において、MIV-818は、1日2回、約100mgの量で投与される。
【0123】
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は非経口投与される。
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、対象の質量1キログラムあたり抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体約0.5mg、約1mg/Kg、約2mg/Kg、約3mg/Kg、約4mg/Kg、約5mg/Kg、約6mg/Kg、約7mg/Kg、約8mg/Kg、約9mg/Kg、約10mg/Kg、約11mg/Kg、約12mg/Kg、約13mg/Kg、約14mg/Kg、約15mg/Kg、約16mg/Kg、約17mg/Kg、約18mg/Kg、約19mg/Kg、又は約20mg/Kgの量で投与される。
【0124】
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。
一態様において、抗PD1/抗PDL1モノクローナル抗体は、28日周期の7日目及び21日目、又は28日周期の8日目及び21日目に、1日約10mg/Kgの量で静脈内投与される。
【0125】
一態様において、抗PD1モノクローナル抗体は、ペムブロリズマブ、MK-3475、ピジリズマブ、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、又はONO-4538)であり、30分間の静注として投与される。
【0126】
一態様において、抗PDL1モノクローナル抗体は、BMS-936559、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、又はデュルバルマブ(MEDI4736)であり、30分間の静注として投与される。
【0127】
一態様において、1,500mgのデュルバルマブ(MEDI4736)が各28日治療周期の1日目に1時間の静脈内(IV)注入によって投与される。
一定の態様において、肝腫瘍の治療法は、MIV-818を含む製剤を1日1回又は複数回経口投与することを含む。特別な態様において、MIV-818を含む製剤(一つ又は複数)は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、又は1日5回以上経口投与される。例えば、一定の態様において、MIV-818を含む製剤は、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、又は約1,000mgを1日1回、2回、3回、又は4回、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間投与することを含む治療サイクルを用いて投与される。
【0128】
一定の態様において、治療法は連続低用量投与を含む。一定の態様において、MIV-818を含む製剤は、約300mgのMIV-818を1日2回7日間投与することを含む治療サイクルを用いて投与される。一定の態様において、MIV-818を含む製剤は、約300mgのMIV-818を1日2回14日間投与することを含む治療サイクルを用いて投与される。一定の態様において、MIV-818を含む製剤は、約300mgのMIV-818を1日3回7日間投与することを含む治療サイクルを用いて投与される。一定の態様において、MIV-818を含む製剤は、約300mgのMIV-818を1日3回14日間投与することを含む治療サイクルを用いて投与される。
【0129】
一定の態様において、本明細書において提供される方法は、MIV-818を含む製剤を、本明細書において提供されるサイクルの一つ又は複数を用い、そのサイクルの一つ又は複数を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、又は12ヶ月を超える期間繰り返して投与することを含む。
【0130】
一定の態様において、本明細書において提供される方法は、MIV-818の経口製剤を対象に、7日間以上、8日間以上、9日間以上、10日間以上、11日間以上、12日間以上、13日間以上、14日間以上、15日間以上、16日間以上、17日間以上、18日間以上、19日間以上、20日間以上、又は21日間以上毎日投与することを含む。
【0131】
一定の態様において、MIV-818の用量は、例えば、約50mg/m/日~約2,000mg/m/日、約100mg/m/日~約1,000mg/m/日、約100mg/m/日~約500mg/m/日、又は約120mg/m/日~約250mg/m/日の範囲でありうる。一定の態様において、特別な用量は、例えば、約120mg/m/日、約140mg/m/日、約150mg/m/日、約180mg/m/日、約200mg/m/日、約220mg/m/日、約240mg/m/日、約250mg/m/日、約260mg/m/日、約280mg/m/日、約300mg/m/日、約320mg/m/日、約350mg/m/日、約380mg/m/日、約400mg/m/日、約450mg/m/日、又は約500mg/m/日である。
【実施例
【0132】
実施例1
腫瘍免疫微小環境アッセイのインビトロモデル
前述のように、MIV-818は齧歯類の血漿中では極めて不安定なため、発がん及びがん治療における免疫系の役割を反映する標準的マウスモデルでは使用することができない。そこで、我々は、Eurofins Scientificの子会社DiscoverX(www.discoverx.com)から市販されているBioMAPという腫瘍免疫微小環境の複雑な細胞培養モデルを使用した。この系はヒト細胞を使用しているという更なる利点を有することにより、マウスでは活性でないヒトPDL-1モノクローナル抗体(例えばペムブロリズマブ)の使用が可能になる。マウスモデルだと、PDL-1モノクローナル抗体をマウスの相当物に置き換える必要があるからである。
【0133】
多成分TMEに現れる複雑なシグナル伝達ネットワークを再現するために、BioMAP Oncologyシステムでは、ヒト初代免疫細胞を、特定のがん細胞株の存在下で初代組織細胞と共培養する。これらの共培養物を、腫瘍内微小環境に動員されるT細胞及びモデル免疫細胞を予備刺激(prime)するが最大限に活性化させないために分裂促進レベル以下(submitogenic level)のT細胞受容体(TCR)リガンドで刺激する。
【0134】
BioMAP Oncologyパネルには2種類あり、結腸がんの状況下(HT-29 CRC細胞株)、又は非小細胞肺がんの状況下(NCI-H1299 NSCLC細胞株)での免疫-間質(線維芽細胞)及び免疫-血管(内皮細胞)環境間の相互作用をモデル化している。腫瘍細胞、刺激された免疫細胞(末梢血単核細胞(PBMC))、及び宿主の間質ネットワーク(ヒト新生児皮膚線維芽細胞(HDFn))間の相互作用は、Stro Oncologyシステムで捉えられる。並行して、Vascシステムは、腫瘍細胞、活性化された免疫細胞、及び血管組織(ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC))間の相互作用を捉える。Oncologyパネルのために選ばれたバイオマーカーは、宿主の腫瘍微小環境の状況下における炎症、免疫機能、組織再構築及び転移に関連する活性についての情報を提供する。合わせて、Oncology CRCパネル及びOncology NSCLCパネルである。
【0135】
BioMAPシステムにおけるヒト初代細胞は、細胞培養条件への適応を最小限に抑え、生理的シグナル応答を失わないようにするために初期継代(第4継代以下)で使用される。すべての初代細胞は、複数のドナー(n=3~6)からプールされており、市販品を購入し、製造業者の勧告に従って取り扱われる。HT-29 CRC細胞株及びNCI-H1299 NSCLC細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入する。略語は以下のように使用される。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、末梢血単核細胞(PBMC)、ヒト新生児皮膚線維芽細胞(HDFn)及びT細胞受容体(TCR)。Oncology CRC及びNSCLCパネルの両システムとも、免疫細胞の腫瘍環境へのその場での動員を再現するために、TCRを介して作用する分裂促進レベル以下のスーパー抗原(SAg)によって刺激される。これらの刺激条件はT細胞を活性化又は予備刺激するが、T細胞の増殖は推進しないように最適化される。
【0136】
CRCシステムのそれぞれで使用される細胞型は次の通りである。StroHT29システム[HT-29結腸直腸腺がん細胞株+HDFn+PBMC]及びVascHT29システム[HT-29結腸直腸腺がん細胞株+HUVEC+PBMC]。理論に拘束されることは望まないが、StroHT29システムは、HCCにおける間質組織の重要性やHT-29がMIV-818単独にも感受性があり(およそ0.02uM)、代表的HCC細胞株に匹敵するIC50を有する(例えばHepG2 およそ0.02uM)という観察を考えると、HCCをモデル化するのに特に適していると考えられる。
【0137】
すべての初代ヒト細胞は、研究対象者の保護のため、米国健康と人的資源省(US Department of Health and Human Resources)のEPA規則 40 CFR 26及びHHS規則 45 CFR 46の要件に従って運営される施設内審査委員会(Institutional Review Board(s))(IRB)によって審査されたプロトコルの下で得られた。
【0138】
添付図面において、バイオマーカーは左から右に次の通りである。
【0139】
【表1】
【0140】
図1~7の各BioMAPリードアウトにおいて、Y軸は-1.0から+1.0までの対数比率である。MIV-818はMV087313とコードされている。
付着細胞型を96ウェルプレートでコンフルエントになるまで培養し、次いでPBMCを添加する。DMSO(小分子;最終濃度≦0.1%)又はPBS(バイオ医薬品)のいずれかに調製された試験薬を刺激1時間前に特定濃度で加え、48時間培養下に置く。各プレートは、薬物対照(例えば旧来の対照試験薬コルヒチン)、陰性対照(例えば非刺激状態)及びビヒクル対照(例えば0.1%DMSO)を含有している。直接ELISAを用いて、細胞関連及び細胞膜標的のバイオマーカーレベルを測定する。上清からの可溶性因子を、HTRF(登録商標)検出、ビーズベースのマルチプレックスイムノアッセイ又はキャプチャーELISAのいずれかを用いて定量する。細胞生存性に対する試験薬の効果(細胞毒性)は、付着細胞についてはスルホローダミンB(SRB)によって(48時間)、懸濁液中の細胞についてはalamarBlue(登録商標)還元によって(42時間)、指示された時点で測定する。すべての試験薬は、標準化されたフォーマットで4濃度で三重に試験される。コルヒチン刺激ウェル、ビヒクル対照処理ウェル、及び刺激なしウェルを対照として各プレートに含める(n=3~8)。データ受理基準は、プレートパフォーマンス(対照の%CV)と、既存(ヒストリカル)対照と比較したアッセイ全体の陽性対照のパフォーマンスに基づく。
【0141】
データ分析
バイオマーカー測定は、試験薬処理サンプルについて三重にプロファイルし、ビヒクル対照サンプル(同じプレートからの少なくとも6個のビヒクル対照)の平均で割り算して比率を出し、次いでそれをlog10変換する。有意性予測エンベロープ(significance prediction envelopes)は、既存ビヒクル対照データを用いて95%信頼区間で計算する。統計的p値は、ビヒクル対照と比較した生のアッセイ値の、対応のないt検定統計から算出する。
【0142】
プロファイルアノテーション - バイオマーカー活性は、試験薬の少なくとも一つの濃度が、ビヒクル対照と比較して効果サイズ>20%(|log10比率|>0.1)及びp値<0.01の有意性エンベロープの外にある場合、アノテーションされる(注釈が付けられる)。細胞毒性状態は、総タンパク質レベルが50%を超えて減少した場合に発生し(SRBのlog10比率<-0.3)、X軸上方の細黒矢印で示されている。検出可能な広い細胞毒性を有する試験薬の濃度はバイオマーカー活性アノテーションと下流のベンチマーク分析から除外される。細胞毒性の矢印は、一つの濃度がプロファイルアノテーションの示されたlog10比率閾値を満たすことのみを要件とし、p値要件は含まれない。
【0143】
オーバーレイ分析 - 試験薬の一つの濃度のプロファイルは、BioMAP Oncologyパネルのベンチマークリストから選ばれた候補ベンチマーク化合物のそれと比較されるか、又は現在のクライアントのプロジェクトもしくは以前のプロジェクト内の別の化合物のオーバーレイでもよい。共通バイオマーカーのリードアウトは、両プロファイルのリードアウトが同じ方向に効果サイズ>20%(|log10比率|>0.1)の有意性エンベロープの外にある場合、アノテーションされる。差別的(differentiating)バイオマーカーは、一つのプロファイルが効果サイズ>20%(|log10比率|>0.1)の有意性エンベロープの外にリードアウトを有し、他のプロファイルがエンベロープ内か又は反対方向のいずれかの場合、アノテーションされる。
【0144】
分析
では次に図1を見ると、二つのパネルに単独投与されたMIV-818は、様々な免疫マーカーで特有のパターンを示し、抗腫瘍反応につながりうる免疫系の刺激を示す特異的マーカーで良好な用量反応を示していることが明らかであろう。使用されたMIV-818の用量は、1uM、200nM、40nM及び8nMに相当する。HT-29と末梢血単核細胞(PBMC)の血管又は間質モデルのMIV-818処理は、分泌タンパク質に複数の変化をもたらし、様々な経路における変化を示している。
・免疫関連活性:sIL-6の減少;sIL-17A、sIFNγの増加
・炎症関連活性:VCAM-1、IP-10の減少
・マトリックス再構築活性:Collagen IIIの減少
・血管新生関連活性:uPARの減少
この発見は驚くべきことであると同時にエキサイティングなことでもある。というのも、MIV-818は、元来は肝細胞に直接的な活性を有する細胞毒性薬として開発されたからである。この発見によって、MIV-818と特定クラスの腫瘍免疫療法薬(immune-oncologic agents)、すなわち、以下の実施例に示されているように、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合をブロックするモノクローナル抗体との組合せが開かれる。
【0145】
比較のために、図7に二つのパネルに対するペムブロリズマブ単独の対応アッセイを示す。用量は、50,000ng/ml、10,000ng/ml、2,000ng/ml及び400ng/mlに対応する。特に、反応のパターン(陽性、陰性又は無効)のほか、ペムブロリズマブによる用量反応の程度も図1とは顕著に異なることに注意する。
【0146】
図2は、本発明によって想定される組合せの、段階希釈された1000nMのMIV-818と50ug/mlのペムブロリズマブを表すストック溶液のBioMAPリードアウトである。
1X,(1000nMのMIV-818と50ug/mlのペムブロリズマブ)
0.2X,(200nMのMIV-818と10ug/mlのペムブロリズマブ)
0.04X,(40nMのMIV-818と2ug/mlのペムブロリズマブ)
0.008X,(8nMのMIV-818と0.4ug/のペムブロリズマブ)
MIV-818とペムブロリズマブの組合せは、単剤の効果に加えて、サイトカイン及び分泌タンパク質の範囲に増強された変化をもたらしている。
【0147】
組合せの主要活性は下記を含む。
・増加した免疫関連活性:sIL-10、sIL-17A、sGranB、sIL-2、sIFNγの増加;sIL-6の調節
・炎症関連活性:VCAM-1、IP-10の減少;sTNFαの増加
図3は、1000nMのMIV-818/50ugのペムブロリズマブの組合せのBioMAPリードアウトで、対応単剤上にオーバーレイされている。特に、下記システム内にアノテーションされた14個の差別的活性が見られることに注意する。StroHT29(VCAM-1、Collagen III、IP-10、sIFNγ、sIL-17A、sIL-2、sIL-6、sTNFα)及びVascHT29(uPAR、IP-10、sIL-10、sIL-2、sIL-6、sTNFα)。
【0148】
図4は、200nMのMIV-818/10ug/mlのペムブロリズマブの組合せのBioMAPリードアウトで、対応単剤上にオーバーレイされている。下記システム内にアノテーションされた12個の差別的活性が見られる。StroHT29(VCAM-1、IP-10、sGranB、sIL-6、sTNFα、sVEGF)及びVascHT29(uPAR、IP-10、sIL-17A、sIL-2、sIL-6、sTNFα)。
【0149】
図5は、40nMのMIV-818/2ug/mlのペムブロリズマブの組合せのBioMAPリードアウトで、対応単剤上にオーバーレイされている。下記システム内にアノテーションされた10個の差別的活性が見られる。StroHT29(sGranB、sIFNγ、sIL-10、sIL-17A、sIL-6、sTNFα)及びVascHT29(uPAR、sIL-2、sIL-6、sTNFα)。
【0150】
図6は、8nMのMIV-818/0.4ug/mlのペムブロリズマブの組合せのBioMAPリードアウトで、対応単剤上にオーバーレイされている。下記システム内にアノテーションされた7個の差別的活性が見られる。StroHT29(sIFNγ、sIL-17A、sIL-6、sVEGF)及びVascHT29(uPAR、sIL-10、sTNFα)。
【0151】
図2~6は、顕著なマーカーを個別にプロットすることによってより良く理解できる。例えば、MIV-818は、図8に示されているように、ペムブロリズマブとの併用で免疫刺激サイトカインIFN-ガンマを増強している。図8は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおける間質IFNガンマに対するMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の用量と比率の間の関係を示すプロットである。インターフェロンガンマ(IFNγ)は、感染に対する自然免疫応答及び適応免疫応答に関与するサイトカインである。可溶性IFNγ(sIFNγ)は、状況依存性の抗腫瘍活性及び腫瘍形成(pro-tumourigenic)活性を示し、結腸がん細胞株(CRC HT29)の状況下で免疫-間質(線維芽細胞)環境間の相互作用をモデル化したStroHT29システムにおいて免疫関連活性として分類される。
【0152】
MIV-818とペムブロリズマブの組合せは、いずれかの薬剤単独と比較して、間質HT-29システムにおいて明白な用量反応増強sIFNγを示しており、増強された抗腫瘍免疫反応の誘導を示唆している。同様に、図9は、血管IFNガンマについての増強された抗腫瘍免疫反応を示している。
【0153】
図10は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおける間質IL17Aに対するMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の用量と比率の間の関係を示すプロットである。インターロイキン17A(IL-17A)は、活性化T細胞のサブセット(Th17細胞)、γδT細胞及び好中球によって分泌される炎症誘発性サイトカインである。IL-17Aは、腫瘍形成機能(血管新生及び転移)と抗腫瘍機能(細胞傷害性T細胞反応の誘導)の両方を示す。可溶性IL-17A(sIL-17A)は、結腸がん細胞株(CRC HT29)の状況下で免疫-間質(線維芽細胞)環境間の相互作用をモデル化したStroHT29システムにおいて免疫関連活性として分類される。
【0154】
MIV-818とペムブロリズマブの組合せは、いずれかの薬剤単独と比較して、間質HT-29システムにおいて明白な用量反応増強IL-17Aを示しており、増強された抗腫瘍免疫反応の誘導を示唆している。これに対し、図11は、血管IL-17Aは組合せによる影響を実質的に受けないことを示しており、間質HT29パネルがHCCに特に関連しているという仮説と一致している。しかし、重要なことは、拮抗作用の証拠が見られないことである。
【0155】
図12は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおける間質TNFアルファに対するMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の用量と比率の間の関係を示すプロットである。腫瘍壊死因子アルファ(sTNFα)は、マクロファージ、単球、好中球、T細胞、及びNK細胞によって産生される炎症誘発性サイトカインで、全身性炎症を伴う疾患で主要な役割を演じている。がんではTNFαは状況依存性の多面的効果を有し、それらは、成長、生存、増殖、血管新生及び腫瘍細胞死の促進を含む。可溶性TNFα(sTNFα)は、結腸がん細胞株(CRC HT29)の状況下で免疫-間質(線維芽細胞)環境間の相互作用をモデル化したStroHT29システムにおいて炎症関連活性として分類される。
【0156】
MIV-818とペムブロリズマブの組合せは、ペムブロリズマブ単独と比較して、間質HT-29システムにおいて明白な用量反応増強TNFαを示し、増強された抗腫瘍免疫反応の誘導を示唆している。これに対し、図13は、血管TNFαは組合せによる影響を実質的に受けないことを示唆しているが、重要なことは、拮抗作用の証拠が見られないことである。
【0157】
図14は、腫瘍微小環境の細胞培養モデルにおける間質IL-6に対するMIV-818成分とペムブロリズマブ成分の用量と比率の間の関係を示すプロットである。MIV-818をペムブロリズマブに加えると、腫瘍促進サイトカインIL-6の減少がもたらされる。これはペムブロリズマブ単独で観察される増加とは対照的である。インターロイキン6(IL-6)は、分泌型炎症誘発性サイトカインで、線維芽細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、及び単球によって産生される急性期反応物質である。結腸直腸がんでは、IL-6は増殖を促進し、腫瘍細胞のアポトーシスを抑制する。可溶性IL-6(sIL-6)は、結腸がん細胞株(CRC HT29)の状況下で免疫-間質(線維芽細胞)環境間の相互作用をモデル化したStroHT29システムにおいて免疫関連活性として分類される。
【0158】
MIV-818は、間質HT-29システムにおいてsIL-6を単独で及びペムブロリズマブとの併用で阻害する。これは、sIL-6のわずかな増強をもたらすペムブロリズマブ単独の場合とは対照的である。図15は、血管IL6はこのシステムで組合せによる影響を実質的に受けないことを示唆している。
【0159】
実施例2
免疫刺激末梢血単核細胞(PBMC)培養物におけるIL-2発現のインビトロ刺激
免疫応答時のT細胞増殖と腫瘍細胞死滅の主要サイトカインはIL-2である。免疫サイトカインの産生に及ぼす各種薬剤の影響は、スーパー抗原、例えばブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)によって刺激された免疫細胞(PBMC)の培養物で試験できる。我々は、既知の作用機序を考慮すると驚くべきことに、MIV-818がそのようなSEB刺激培養物中で用量依存的にIL-2の発現を誘導したこと、そしてまた抗PD1チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブの添加でIL-2の発現が増強されたことを観察した。このことは、MIV-818と抗PD(L)1の併用療法が、がんを治療する場合に増大した治療効果をもたらすであろうことを示唆している。
【0160】
方法
ヒトPBMCを3人の健常ドナーから単離し、カウントして均一密度で播種した。細胞を、MIV-818単独又はペムブロリズマブと組み合わせて、最大6濃度で、刺激前に1時間インキュベートした。適切な対照、すなわち、非刺激細胞、培地のみの存在下で刺激された細胞(陽性対照)、ビヒクルの存在下で刺激された細胞、及び単一濃度のリファレンス化合物の存在下で刺激された細胞も含められた。次に、細胞を5日間、単一濃度のブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)とインキュベートした。細胞増殖はトリチウム化チミジンの取込みによって定量した。5日後に培養物上清を回収し、Luminex(登録商標)アッセイによるサイトカインIL-2の分析まで保管した。各培養条件は三重に確立された。(同時測定された)多重読み取り(multiplex readings)は、各培養ウェルで個々に(in singlicate)実施された。
【0161】
図16は、ブドウ球菌エンテロトキシンB刺激PBMC培養物において、T細胞抗腫瘍反応を高めるために重要なサイトカインIL-2の増加を示すグラフである。IL-2発現はMIV-818単独によって誘導され、増強されたIL-2発現はペムブロリズマブの添加で観察される。
【0162】
実施例3
PBMC媒介性の腫瘍細胞死滅
免疫系による腫瘍細胞死滅モデルとして、単離された末梢血単核細胞(主にT細胞)を用いたインビトロモデルを使用する。そこではT細胞は抗CD3抗体によってT細胞受容体(TCR)を刺激することによって活性化される。T細胞はその後、細胞を死滅させることになるが、この共培養物への化合物の添加効果が測定できる。MIV-818は、PBMC媒介性のがん細胞死滅を増強することが観察され、MIV-818が、チェックポイント阻害薬活性(ペムブロリズマブ)との相乗効果を誘導することが示唆される。
【0163】
方法
3人の健常ドナーからの全血を使用した。PBMCを密度勾配法によって単離し、カウントした後、NucLight Redで標識された腫瘍標的に、抗CD3刺激の存在下、規定のE:T比で添加した。腫瘍細胞-PBMC共培養物を8濃度の試験化合物とインキュベートした。適切な対照、すなわち、PBMC単独、腫瘍細胞単独、単一濃度のリファレンス化合物存在下の腫瘍細胞/PBMCも含められた。直接的な化合物関連の腫瘍細胞毒性を検出するために、刺激PBMCの不在下で、全試験条件を腫瘍細胞に適用することも行った。腫瘍の死滅は、NucLight陽性の生存腫瘍細胞を経時的にカウントすることによって評価した。さらに、カスパーゼ3/7色素を用いてアポトーシスを起こした腫瘍細胞を識別した。培養物は、リアルタイムの定量的生細胞蛍光イメージングが可能なIncuCyte ZOOM機を用いて分析された。共培養物は68時間にわたりイメージングされた。各培養条件は三重に確立された。細胞培養上清は任意のサイトカイン分析のために保管された。
【0164】
図17は、MIV-818とペムブロリズマブの存在下におけるPBMC媒介性腫瘍細胞殺滅活性を示すグラフである(アポトーシスを起こしたSK-OV-3の数)。
PBMCを3人の健常ドナーから単離し、抗CD3刺激及びNucLight Red標識SK-OV-3腫瘍細胞との共培養物に添加した。培養物は、ビヒクル対照と並行して、ペムブロリズマブ又は5000nMのMIV-818+ペムブロリズマブの組合せと三重にインキュベートされた。SK-OV-3のアポトーシス細胞死は、共培養系でIncuCyte Zoomソフトウェアを用いて68時間イメージングすることによりモニターされた。データは、平均値±SEM(3人のドナー)として示されている。
【0165】
上記態様は単に例示を目的としたものであり、当業者は、単なるルーチンな実験を用いて、特定の化合物、材料及び手順の多数の等価物を認識又は確認できるであろう。すべてのそのような等価物は(本発明の)範囲内にあると見なされ、添付の特許請求の範囲によって包含される。
図1
図2
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