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特許7583746温度変化の間のレーザーヘッドからのレーザービームの偏向を制限する方法およびレーザーヘッド
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  • 特許-温度変化の間のレーザーヘッドからのレーザービームの偏向を制限する方法およびレーザーヘッド 図1
  • 特許-温度変化の間のレーザーヘッドからのレーザービームの偏向を制限する方法およびレーザーヘッド 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】温度変化の間のレーザーヘッドからのレーザービームの偏向を制限する方法およびレーザーヘッド
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/02 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
H01S3/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021569104
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 SK2020000004
(87)【国際公開番号】W WO2021002807
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】PP78-2019
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(31)【優先権主張番号】PUV99-2019
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(73)【特許権者】
【識別番号】521506951
【氏名又は名称】エスイーシー テクノロジーズ,エス.アール.オー.
【氏名又は名称原語表記】SEC TECHNOLOGIES,S.R.O.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィチェニーク,イリー
(72)【発明者】
【氏名】セドラチコヴァ,ジナ
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122450(JP,A)
【文献】特開2001-244523(JP,A)
【文献】特開2002-164593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/02-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーヘッドの上壁と下壁をつなぐ側壁に、金属板部品が埋め込まれて熱伝導性の接合部により取り付けられ、レーザーヘッドの上壁と下壁の温度差を低減することを特徴とする、温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法。
【請求項2】
レーザーヘッドの上壁が最も暖かく、レーザーヘッドの下壁が最も冷たいことを特徴とする請求項1に記載の温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法。
【請求項3】
レーザーヘッドの上壁が最も冷たく、レーザーヘッドの下壁が最も暖かいことを特徴とする請求項1に記載の温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法。
【請求項4】
温度変化の間のたわみが制限されたレーザーヘッドであって、ブッシングを備えた上壁および側壁と、下壁と、光共振器の要素を備えた前壁および後壁と、を含み、金属板部品(4)が、レーザーヘッドの最も暖かい上壁(2)と最も冷たい下壁(3)または最も冷たい上壁(2)と最も温かい下壁(3)をつなぐ側壁(1)に埋め込まれて熱伝導性の接合部で取り付けられていることを特徴とするレーザーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法、および動作温度が大きくかつ急激に変化するシステムで使用されるヘッド本体に強固に結合された共振器を備えるレーザーヘッドの実際の構造に関する。このような温度変化は、「保存」温度のシステムが突然大きく異なる温度の環境で動作しなければならないときの外部からの影響、または、集中的なレーザー動作中に廃熱によってレーザーヘッドが加熱されるときの内部からの影響によって、引き起こされることがある。本発明は、レーザー技術の分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
いくつかのタイプのレーザー(例えば、「TEA」(大気圧横方向放電励起:Transversally Excited at Atmospheric pressure)レーザー)のレーザーヘッドは、多くの場合、ヘッドと環境の間の伝熱が表面の一部を通じてのみ大きくなるように構成される。このようなレーザーヘッドは、具体的には、ブロックとして構成され、このようなブロックの6つの壁のうちの1つのみを通じて環境と良好な熱的接触を有するように構成されることが多い。少なくとも2つの(通常は3つの)壁には、高電圧ブッシングが装備される。他の2つの壁にはヘッドの光共振器の要素が搭載されており、それらのうちの1つの壁には半透明ミラーがあり、反対側の壁には「完全」反射ミラーがある。したがって、6つの壁のうち4~5つの壁は、大きな伝熱から必然的に除外される。第6の壁は、環境との熱交換を仲介する冷却器に低い熱抵抗を介して結合される。
【0003】
このような状況下において、ヘッドには熱勾配が生じる。通常、表面で最も大きな壁であるヘッドの第6の壁の環境に対する熱抵抗は小さく、残りの壁の熱抵抗は大きい。ヘッドの材料は、特定の(多くの場合無視できない)熱膨張率を有するため、変形が生じ、レーザーヘッドがたわむことになる。この過程は、共振器の軸に対して対称とはなり得ない。最も簡素で、いくつかの点では最も有利なヘッドの構成では、ヘッド本体に直接かつ強固に結合された共振器要素を使用しているため、共振器ミラーが理想的な平行性を失って、誤った位置に配置されることになる。このような状態は、パラメータの劣化、さらにはレーザーの故障につながる。
【発明の概要】
【0004】
レーザーの光共振器の機械的安定性に対する熱力学の影響を低減するため、レーザーのパラメータをより安定させることができる技術的手段によりこの問題を解決することに取り組まれた結果は、本発明に従う、温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法、およびレーザーヘッドの変更された構造として、さらに詳しく説明される。
【0005】
上述した欠点は、概して、本発明に従う温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法およびレーザーヘッドの実際の構造によって解消される。その本質は、温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法において、レーザーヘッドの上壁と下壁とをつなぐ側壁に熱伝導性の接合部によって取り付けられた熱伝導率の高い金属板部品によって、レーザーヘッドの最も暖かい部分と最も冷たい部分との間の温度差が低減されることにある。また、レーザーヘッドの上壁と下壁をつなぐ側壁に、アルミニウムなどの比重の小さい金属板部品を熱伝導性の接合部で取り付ければ、より好ましい。天候および/または動作条件に応じて、レーザーヘッドの下壁が最も暖かく、上壁が最も冷たくなることがあり得る。
【0006】
TEAレーザー、またはガスレーザー、のレーザーヘッドは、良好な真空特性を有しかつ良好に溶接可能な材料で構成されている。適切な材料は、例えば、ステンレス鋼である。しかしながら、これらの材料は、熱伝導率が低く、比重が大きい。本発明に従うレーザーヘッドの構造の本質は、熱伝導率が高く、かつ(好ましくは)比重の小さい材料(例えばアルミニウム)の板状部材がレーザーヘッドの側壁に熱伝導的に取り付けられ、ヘッドの最も温かい上壁と最も冷たい下壁の間で熱を伝達するという事実にある。
【0007】
本発明に従う温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法およびレーザーヘッドの実際の構造の利点は、外部に奏する効果から明らかである。一般的には、ヘッドの重量をわずかに増加させるだけで、ヘッドの最も温かい壁と最も冷たい壁の間の熱抵抗を大幅に減少させることができるという事実に、この解決手段の独創性があると言える。その結果、ヘッドの壁間の温度差が低減し、熱力学が光共振器の機械的安定性に与える影響が大幅に軽減され、より安定したレーザーパラメーターを得ることが可能となる。
【0008】
本発明に従う温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法およびレーザーヘッドは添付図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実際のレーザーヘッドを示す側面図およびA-A断面図である。
図2図2は、実際のレーザーヘッドを示す上面図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の個々の実施形態は、説明のために提示されるものであり、技術的解決手段を限定するものではないことを理解されたい。当業者であれば、日常的な実験を行うだけで、本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を見出すか、あるいは確認することが可能であり、このような等価物もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【0011】
当業者にとって、構造および要素の選択を最適に設計することは問題とはならないであろう。したがって、このような特徴は詳細には開示されていない。
【0012】
(例1)
本発明の特定の実施形態のこの例において、本発明に従う温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法という解決手段を説明する。この方法は、COレーザーのステンレス鋼製のブロック形状のTEAレーザーヘッドに適用される。図1および図2に示すように、前壁5および後壁6には共振器ミラー7が搭載され、上壁2には主放電電極のHVブッシング8が配置されている。左右の側壁1は、予備電離装置のHVブッシング8を保持している。最後の下壁3は滑らかであり、熱はそこを通じてヘッドから遠ざかるように導かれる。ヘッドを変形させる熱勾配は、最も暖かい上壁2と最も冷たい下壁3の間で発生し、その結果、共振器を離調させるものである。しかし、この熱勾配または温度差は、レーザーヘッドの最も暖かい上壁2と最も冷たい下壁3の間の、レーザーヘッドの上壁2と下壁3をつなぐ側壁1に、熱伝導率が高くかつ比重の小さい金属板部品4が熱伝導性の接合部で取り付けられていることで、大幅に制限されている。
【0013】
代わりに、天候および/または動作条件により、レーザーヘッドの下壁2が最も暖かく、上壁3が最も冷たくなることもあり得る。
【0014】
(例2)
本発明の特定の実施形態のこの例では、図1および図2に示すような、COレーザーのステンレス鋼製のブロック形のTEAヘッドの構造について説明する。例1で基本的に説明したCOレーザーのTEAレーザーヘッドは、さらに、レーザーヘッドの暖かい上壁2と冷たい下壁3をつなぐ側壁1に、好適にはアルミニウムである、熱伝導率が高く、さらに比重の小さい4つの金属板部品4が熱伝導性の接合部によって両側に取り付けられているという解決手段を有している。
【0015】
(産業上の利用可能性)
温度変化の間のレーザーヘッドのたわみを制限する方法およびレーザーヘッドは、レーザー技術への適用において利用可能である。
図1
図2