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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ツールホルダ用のクランピングデバイス
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/117 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B23B31/117 601D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021573373
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020065939
(87)【国際公開番号】W WO2020249551
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】19179442.9
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マトリック, グンナル
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-150035(JP,U)
【文献】特開2002-096231(JP,A)
【文献】特表2002-537127(JP,A)
【文献】米国特許第05911547(US,A)
【文献】特開2001-018134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/117、26
B23B 19/02
B23B 29/04、12
B23Q 3/12
B23Q 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールホルダシャンク(33)を解放可能に保持するためのクランピングデバイス(1)であって、
前端(3)と、後端(4)と、ボア(5)であって、前記前端に交差し、前記前端から後方に延在して、前記ボアの、前記前端にある載置部位(32)において、前記ツールホルダシャンク(33)を受容するボア(5)と、を有するハウジング(2)と、
その縦方向軸(L)に沿って、前記ボア(5)の内側に往復移動可能に載置されているドローバー(6)であって、前端にかみ合い手段(7)を含み、前記かみ合い手段(7)は、ロッキング位置になると、前記ツールホルダシャンク(33)の端にて、かみ合いフォーメーションにてかみ合うよう適合されている、ドローバー(6)と、
前記ドローバー(6)に固定して配置されたウェッジかみ合い部材(8)であって、前記ハウジング(2)の前記前端(3)に向いているウェッジかみ合いスライド面(9)を含む、ウェッジかみ合い部材(8)と、
第1の受圧面(13)と、前記後端に向いている第1のウェッジ面(11)と、前記前端に向いている第2のウェッジ面(12)と、を含み、前記第1及び第2のウェッジ面(11、12)は、前記縦方向軸に向けて半径方向に互いに接近しているウェッジ(10)と、
を含むクランピングデバイス(1)であって、
アパーチャ(14)は、前記ハウジング(2)の周壁を通して半径方向に延在し、
前記アパーチャ(14)は、前記ハウジング(2)の前記後端(4)に向いているアパーチャスライド面(15)を含み、
前記ウェッジ(10)は、前記ハウジング(2)の外側から前記アパーチャ(14)へ、半径方向に内向きに延在し、
前記第1のウェッジ面(11)は、前記ウェッジかみ合いスライド面(9)と接触し、
前記第2のウェッジ面(12)は、前記アパーチャスライド面(15)と接触し、
前記第1の受圧面(13)は、前記ハウジング(2)から外を向き、
前記クランピングデバイスは、前記ハウジング(2)の前記周壁の前記外側に、その外周の周りに、前記アパーチャ(14)を覆って配置されており、前記ハウジングに関して、第1の方向(D)に移動可能であるスリーブ(16)をさらに含み、
前記スリーブ(16)は、その内面に、前記第1の受圧面と接触するために内を向き、前記第1の方向に増える、前記縦方向軸までの半径方向の距離を有する第1の加圧面(17)を含み、
前記スリーブ(16)と、前記ウェッジ(10)と、前記ウェッジかみ合い部材(8)と、前記ドローバー(6)と、は、前記スリーブ(16)が前記第1の方向(D)に移動する際に、前記第1の加圧面(17)が、前記ウェッジ(10)の前記第1の受圧面(13)上をスライドしてこれを押し付けることにより前記ウェッジ(10)を、前記アパーチャ(14)において半径方向に内向きに押し、結果として、前記第1及び第2のウェッジ面(11、12)が、それぞれ、前記ウェッジかみ合いスライド面(9)及び前記アパーチャスライド面(15)上をスライドしてこれらを押し付けて、前記ドローバー(6)を、前記ボア(5)の内側において、前記後端(4)に向けて変位させ、前記かみ合い手段(7)を前記ロッキング位置にさせるように配置されており、
前記スリーブは、前を向くリリース加圧面(20)を含み、前記リリース加圧面(20)は、前記スリーブが前記第1の方向とは反対の方向に移動する際に、前記ウェッジかみ合い部材上の後を向くリリース受圧面(21)に接触して圧力を加え、前記ボアの内側での前記前端に向けての前記ドローバーの変位をもたらすよう配置されている、ことを特徴とする、
クランピングデバイス(1)。
【請求項2】
前記第1の方向(D)は、前記縦方向軸(L)と平行している、請求項1に記載のクランピングデバイス。
【請求項3】
前記第1の加圧面及び前記第1の受圧面のそれぞれは、前記ボアを通る縦方向の断面で見た際に、前記縦方向軸と平行な線に関してゼロでない角度αだけ傾いている、請求項2に記載のクランピングデバイス。
【請求項4】
前記角度αは、セルフロック閾値角度未満であり、
前記ドローバーが、前記ボアの内側を、後部に向かって変位していれば、前記スリーブが、前記ウェッジに関してセルフロッキング状態となり、前記かみ合い手段が前記ロッキング位置となるようになっている、請求項3に記載のクランピングデバイス。
【請求項5】
前記ウェッジは、前記ハウジングから外を向く第2の受圧面(18)を含み、
前記スリーブは、前記第2の受圧面と接触するために内を向く第2の加圧面(19)を含み、
前記第2の受圧面(18)及び前記第2の加圧面(19)は、前記第1の方向に増える、前記縦方向軸までの半径方向の距離を有する、
請求項3または4に記載のクランピングデバイス。
【請求項6】
前記第2の受圧面及び前記第2の加圧面のそれぞれは、前記ボアを通る縦方向の断面で見た際に、前記縦方向軸と平行な線に関してゼロでない角度βだけ傾いており、
前記角度βは、前記角度αより大きく、
前記第1及び第2の加圧及び受圧面のそれぞれは、連続して配置されており、前記スリーブの前記第1の方向への移動後、前記第1の加圧面が前記第1の受圧面上をスライドしてこれを押し付ける前に、前記第2の加圧面が前記第2の受圧面上をスライドしてこれを押し付けるようになっている、
請求項に記載のクランピングデバイス。
【請求項7】
前記第2のウェッジ面と前記アパーチャスライド面とは、前記アパーチャを通して半径方向から見た際に曲がっている、請求項1から6のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項8】
前記ウェッジかみ合い部材は、前記ドローバーに取り外し可能に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項9】
前記クランピングデバイスは、前記ドローバーを前記前端に向けて付勢するためのリリーススプリング(22)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項10】
前記クランピングデバイスは、前記ハウジングの前記周壁において対応する数の異なるアパーチャを通して延在するよう配置された複数のウェッジ及びウェッジかみ合い部材を含み、
前記アパーチャと、関連するウェッジ及びウェッジかみ合い部材と、は、前記ハウジングの前記外周の周りに回転対称的に間隔があけられている、
請求項1からのいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項11】
前記クランピングデバイスは、3つのウェッジ及びウェッジかみ合い部材を含む、請求項10に記載のクランピングデバイス。
【請求項12】
前記ボアの、前記前端にある前記載置部位は、円錐状である、請求項1から11のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項13】
前記ハウジングはマシンスピンドルである、請求項1から12のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールホルダ用のクランピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
加工ツール及び金属切削の分野においては、切削ツール用のツールホルダを加工ツールに接続するために、クランピングメカニズムがしばしば使用される。ドリル又はミリングツールを保持するためなど、加工ツールの回転可能なスピンドルに載置するために構成される場合、そのようなクランピングデバイス及び対応するツールホルダは時に、「被駆動(driven)」と呼ばれる。加工ツールのスピンドルは、時に、そのような被駆動ツールホルダをクランピングするための、統合されたクランピングメカニズムを含む。多くのクランピングメカニズムは、ツールホルダをクランピング及び/又は解放するための、カムシャフトの作動などの手動操作を必要とする。例えば、クランピングメカニズムの状態を制御するために油圧ピストンが使用される、自動ツール交換プロセスに適合されているクランピングメカニズムもある。
【0003】
EP1468767は、2つのドローバーと、それらのドローバー間に配置された、数多くのセットの協働するウェッジに関係する力増幅器と、の使用に基づくクランピングメカニズムを含むマシンスピンドルを開示する。ガススプリングは、クランピングメカニズムのドローバーを、ツールホルダがクランプされる位置に付勢する。油圧ピストンを使用して、クランピングメカニズムがクランプされない状態となる別の位置にドローバーを変位させることができる。しかし、クランピングメカニズムは、マシンスピンドルの軸方向に比較的広いスペースを必要とする。クランピングメカニズムは、したがって、クランピングメカニズムのために利用可能な軸方向のスペースが限られているツールタレットの外面に被駆動ツールホルダを載置することに好適ではない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の欠点を軽減し、加工ツールのツールタレットに関連する使用に好適な、被駆動ツールホルダ用のクランピングデバイスを提供することである。
【0005】
したがって、1つの態様によると、本発明は、ツールホルダシャンクを解放可能に保持するためのクランピングデバイスに関する。クランピングデバイスは、
前端と、後端と、ボアであって、前端に交差し、前端から後方に延在して、ボアの、前端にある載置部位において、ツールホルダシャンクを受容するボアと、を有するハウジングと、
その縦方向軸に沿って、ボアの内側に往復移動可能に載置されているドローバーであって、前端にかみ合い手段を含み、かみ合い手段は、ロッキング位置になると、ツールホルダシャンクの端にて、かみ合いフォーメーションにてかみ合うよう適合されている、ドローバーと、
ドローバーに固定して配置されたウェッジかみ合い部材であって、ハウジングの前端に向いているウェッジかみ合いスライド面を含む、ウェッジかみ合い部材と、
第1の受圧面と、後端に向いている第1のウェッジ面と、前端に向いている第2のウェッジ面と、を含み、第1及び第2のウェッジ面は、縦方向軸に向けて半径方向に互いに接近しているウェッジと、
を含む。
【0006】
アパーチャは、ハウジングの周壁を通して半径方向に延在する。アパーチャは、ハウジングの後端に向いているアパーチャスライド面を含む。ウェッジは、ハウジングの外側からアパーチャへ、半径方向に内向きに延在する。第1のウェッジ面は、ウェッジかみ合いスライド面と接触する。第2のウェッジ面は、アパーチャスライド面と接触する。第1の受圧面は、ハウジングから外を向く。
【0007】
クランピングデバイスは、ハウジングの周壁の外側に、その外周の周りに、アパーチャを覆って配置されており、ハウジングに関して、第1の方向に移動可能であるスリーブをさらに含む。スリーブは、その内面に、受圧面と接触するために内を向き、第1の方向に増える、縦方向軸までの半径方向の距離を有する第1の加圧面を含む。スリーブと、ウェッジと、ウェッジかみ合い部材と、ドローバーと、は、スリーブが第1の方向に移動する際に、第1の加圧面が、ウェッジの第1の受圧面上をスライドしてこれを押し付け、結果として、第1及び第2のウェッジ面が、それぞれ、ウェッジかみ合いスライド面及びアパーチャスライド面上をスライドしてこれらを押し付けることにより、ウェッジを、アパーチャにおいて半径方向に内向きに押すように配置されており、ドローバーを、ボアの内側において、後端に向けて変位させ、かみ合い手段をロッキング位置にさせる。
【0008】
ハウジングの表面と、ドローバーに固定して配置された部材の表面と、の間にウェッジを配置することにより、及び、ウェッジの移動をもたらすために、ハウジングの周面の周りにスリーブを使用することにより、クランピングデバイスを、(ガススプリングなどの)別個の手段を必要とすることなく、デバイスをクランプされた状態に維持するよう設計でき、デバイスを、縦方向に非常にコンパクトにすることができる。クランピングデバイスは、したがって、ツールタレット内への統合に好適となる。
【0009】
「ハウジング(housing)」は、ここで使用するように、ツールタレットにおけるスピンドルなどのマシンスピンドルを指し得る。ここでは、スピンドルは、ツールタレットにおける駆動メカニズムに接続される(又は、これに接続可能である)。しかし、クランピングメカニズムは、ツールタレットでの使用に限定されず、加工ツールの一部である、又は、これに接続可能であるいずれのスピンドルに使用できる。例えば、ハウジングは、加工ツールのメインスピンドル、又は、そこに接続可能なスピンドルを指し得る。換言すると、クランピングメカニズムは、メインスピンドルの統合部であってよい、又は、メインスピンドルに接続可能なハウジングにおいて使用されてよい。クランピングメカニズムは、また、例えば、回転しないツールをクランピングするための、回転可能でないハウジングに使用するものと想定される。したがって、ハウジングは、マシンスピンドルである必要はない。
【0010】
本出願を通しての説明及び特許請求の範囲では、「前方(forward)」という語が、クランピング中に、ツールホルダシャンクがそれを通して挿入される、ボアの外向き開口に向かう方向又は位置を示すために使用される。これに類似して、「後(rear)」又は「後方(rearward)」という語が、ボアのそのような外向き開口から離れる方向又は位置を示すために使用される。
【0011】
さらに、以下に使用するように、表面の向きを画定するための、ハウジングの前端(又は、後端)「に向かって対向する(facing towards)」という表現は、この表面が、例えば、少なくともある程度、各端に対向するように向けられている、ということを示す。したがって、この表現は、表面が、ハウジングの縦方向軸に鉛直している構成のみをカバーするのではなく、表面に対する垂線が、ハウジングの縦方向軸に対して90°まで(この角度は含まない)の鋭角にて延在する構成もカバーする。
【0012】
本明細書を通して、半径方向の距離、又は、軸方向若しくは半径方向と呼ぶいずれのものは、ハウジングにおけるボア及びその縦方向軸に関する。
【0013】
ウェッジかみ合い部材は、ドローバーに、統合的に形成される、若しくは、固定的に配置されるなど、固定して配置される、又は、ドローバーに関して少なくとも縦方向に移動不可能に配置される。これにより、縦方向軸に沿うウェッジかみ合い部材の移動は、ドローバーの対応する移動を引き起こす。ウェッジかみ合い部材は、ドローバーの後部に配置されてよい。
【0014】
ウェッジかみ合い部材は、ボアからアパーチャ内へ、半径方向に外向きに延在してよい。
【0015】
ウェッジかみ合い部材、及び、ウェッジかみ合い部材が延在する、ハウジングの周壁におけるアパーチャは、クランピングデバイスがクランプされない状態にある際に、ウェッジかみ合い部材とアパーチャの後面との間に遊びがあるよう設計されてよい。これは、ウェッジかみ合い部材が、アパーチャ内を、縦方向に沿って、後部に向かって移動することを可能にし、ドローバーの、ボア内での対応する縦方向の変位を引き起こす。例えば、アパーチャは、縦方向軸に平行な方向に細長くともよい。
【0016】
第1の加圧面は、第1の方向に増える縦方向軸までの半径方向の距離を有するため、第1の方向へのスリーブの移動は、第1の加圧面により、ウェッジの第1の受圧面に圧力が加わることとなる。この圧力は、ウェッジが、縦方向軸に向けて半径方向に内向きに押されるような、半径方向のコンポーネントを有することとなる。
【0017】
第1及び第2のウェッジ面は平行ではなく、縦方向軸に向けて半径方向に互いに接近している。その結果として、ウェッジの半径方向に内向きの移動は、縦方向軸に平行な方向に前部に向かうコンポーネントを有する力を、アパーチャスライド面上にもたらす。対応する力は、ウェッジかみ合い部材上に作用し、縦方向に後部に向かうドローバーの変位を引き起こす。
【0018】
ウェッジかみ合いスライド面は、前端(第1のウェッジ面)に向き、対応するエクステンションを、第1のウェッジ面として有してよい。一方、アパーチャスライド面は、後端(第2のウェッジ面)に向き、対応するエクステンションを、第2のウェッジ面として有してよい。これは、それぞれの面間のスライディング接触が、ウェッジの移動中に広いエリアにわたって達成されるようになっている。しかし、それぞれの面は、縦方向軸に関して若干異なる傾斜角度を有してよい。例えば、ウェッジかみ合いスライド面は、第1のウェッジ面よりも、傾斜の若干きつい角度を有し、ウェッジがアパーチャ内を内向きに移動する際に、圧力の大半が、ウェッジかみ合い部材の半径方向に外側の部分に加わることを確かにしてよい。別の例として、ウェッジかみ合いスライド面全体が、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、曲がっていてよい。
【0019】
第1及び第2のウェッジ面の少なくとも1つと、対応するアパーチャスライド面及びウェッジかみ合いスライド面と、は、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、縦方向軸に鉛直する面に関して傾斜している。第1のウェッジ面と、対応するウェッジかみ合いスライド面と、が、このように配置されていれば、ウェッジの半径方向に内向きの移動は、ウェッジかみ合い部材上において、軸方向のコンポーネント、つまり、縦方向軸に平行な方向に後部に向かうコンポーネントと、半径方向のコンポーネント、つまり、縦方向軸に向かうコンポーネントと、の双方を有する力をもたらす。この力の軸方向のコンポーネントは、ドローバーの変位を提供する。一方、この力の半径方向のコンポーネントは、ウェッジかみ合い部材上における曲げモーメントを減らし、ウェッジかみ合い部材が、これがもし、ドローバーとは別個の部品であり、それに取り外し可能に配置されていれば(例えば、ドローバーにおけるリセス又はポケットに収められていれば)、クランピングデバイスの使用中にドローバーとのしっかりとしたかみ合いにあることを確かにし得る。
【0020】
第1及び第2のウェッジ面の双方ではなく、これらの1つと、対応するアパーチャスライド面及びウェッジかみ合いスライド面と、は、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、縦方向軸に鉛直する面と平行に配置されてよい。いくつかの実施形態によると、しかし、第1及び第2のウェッジ面の双方と、対応するアパーチャスライド面及びウェッジかみ合いスライド面と、が、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、縦方向軸に鉛直する面に関して傾斜している。
【0021】
クランピングデバイスは、スリーブの変位をもたらすための、油圧ピストンなどのピストンといった、追加的コンポーネントを含んでよい。スリーブの位置を変える、空圧に基づく手段などの他の手段もまた想定される。したがって、クランピングデバイスの制御を、いずれの手動操作を必要とすることなく、容易に自動化できる。したがって、本開示に係るクランピングデバイスは、自動ツール交換のアプリケーションでの使用に好適である。
【0022】
ウェッジの第1の受圧面は、スリーブの第1の加圧面のエクステンションに対応又は実質的に対応するエクステンションの方向を有してよい。このようにして、これらの面は、第1の加圧面が第1の受圧面上をスライドしてこれを押し付ける際に、加えられた力が良好に分散するような、広い接触エリアを有することとなる。
【0023】
スリーブは、ハウジングに関して回転方向に移動可能であってよい。つまり、第1の方向は、ハウジングの外面に沿う回転方向に対応してよい。代替的に、スリーブは、ハウジングの外面に沿って軸方向に移動可能である。つまり、第1の方向(D)は、縦方向軸(L)と平行であってよい。そのようなスリーブは、製造の観点から特に好適であり得る。なぜなら、スリーブは、シンプルな回転対称設計を有し得るからである。さらに、液圧に基づく制御配列を使用する場合、スリーブの軸方向の運動は、回転運動よりも容易に達成され得る。第1の方向Dは、後部に向かうものであってよい。
【0024】
第1の加圧面及び第1の受圧面は、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、線形又は実質的に線形なエクステンションを有してよい。しかし、これらの面の1つ又は双方は、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、若干曲がったエクステンションを有してよい。したがって、これらの面のエクステンションは、全体的に互いに対応しなくともよい。曲率は小さくともよいが、しかし、第1の加圧面が第1の受圧面上をスライドしてこれを押し付ける際に、これらの面間の十分な接触面積が得られるものである。
【0025】
第1の加圧面及び第1の受圧面のそれぞれは、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、縦方向軸と平行な線に関してゼロでない角度αだけ傾斜していてよい。したがって、第1の加圧面及び第1の受圧面の双方は、同じ方向に延在してよく、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、線形又は実質的に線形なエクステンションを有してよい。角度αは、セルフロック閾値角度未満であり、ドローバーが、ボアの内側を、後部に向かって変位していれば、スリーブが、ウェッジに関してセルフロッキング状態となり、かみ合い手段がロッキング位置となるようになっていてよい。セルフロッキング状態を得るためには、角度αは十分に小さく、つまり、セルフロッキング閾値角度未満でなければならない。セルフロッキング状態とは、ウェッジの第1の受圧面とスリーブの第1の加圧面との間の静止摩擦力が、ウェッジに対して縦方向軸に鉛直する半径方向に加えられた力によって引き起こされる、摩擦面において対向する力より大きい状態を指す。したがって、セルフロッキング状態は、ウェッジの第1の受圧面とスリーブの第1の加圧面との間の摩擦係数に依存する角度範囲内にて得られる。この摩擦係数は、使用されている材料、表面上のコーティング、潤滑材の使用などの各種のパラメータに依存してよい。したがって、セルフロック閾値角度は、これらのパラメータのいくつか又はすべてに依存する。当業者であれば、共通する一般的な知識及び/又は通常の実験を使用することによる、特定のアプリケーションに適用されるセルフロック閾値角度を特定可能となる、又は、特定の角度がそのようなセルフロック閾値角度未満であるか否かを少なくとも予想又は算定可能となるであろう。一般的に、セルフロッキング構成を確かなものとするために、セルフロック閾値角度を十分に下回る角度αを選ぶことが好ましい。小さい角度αを使用することのさらなる利点は、力増幅効果が達成されることである。ここでは、スリーブの比較的大きい縦方向の変位が、ドローバーの比較的小さい変位をもたらす。しかし、小さすぎる角度αは効果がなく、実際に良好に機能しない場合がある。例えば、非常に小さい角度αの結果として、クランピングデバイスが、クランプされた状態にて固着し、スリーブを解放することが難しくなる場合がある。いくつかの実施形態によると、角度αは、2°と10°との間にあってよい。そのような範囲では、セルフロッキング構成及び適切な力増幅効果の双方が達成され得る。例えば、角度αは、3°と6°との間、例えば、4°、又は、約4°であってよい。
【0026】
ウェッジは、ハウジングから外を向く第2の受圧面を含んでよい。スリーブは、第2の受圧面と接触するために内を向く第2の加圧面を含んでよい。これらの面のそれぞれは、第1の方向に増える、縦方向軸までの半径方向の距離を有する。複数の加圧面及び対応する受圧面を使用する場合、クランピングメカニズムは、ドローバーの必要な運動及び良好な力増幅効果の双方を容易に達成できるよう設計できる。第2の受圧面及び第2の加圧面のそれぞれは、ボアを通る縦方向の断面で見た際に、縦方向軸と平行な線に関してゼロでない角度βだけ傾いていてよい。角度βは、角度αより大きい。第1及び第2の面のそれぞれは、連続して配置されており、スリーブの第1の方向への移動後、第1の加圧面が第1の受圧面上をスライドしてこれを押し付ける前に、第2の加圧面が第2の受圧面上をスライドしてこれを押し付けるようになっている。
【0027】
これにより、ドローバーは、より大きな角度βを使用することによるクランピングの初期フェーズ中、迅速に変位する、又は移送され得る。この初期クランピングフェーズは、大きな力を必要としない。しかし、クランピングの最終フェーズ中、ドローバーを短い距離だけ変位させるために、大きな力が必要とされる。したがって、実際のクランピングが生じると、つまり、かみ合い手段がロッキング位置となると、より小さい角度αが使用され、ドローバーの変位が、スリーブの軸方向の変位と比較して少なくなり、「パワーブースト」とも呼ばれる力増幅効果をもたらす。いくつかの実施形態によると、角度βは、10°と75°との間であってよい。例えば、角度βは、35°と65°との間、例えば、45°又は実質的に45°にあり、ドローバーの効率の良い初期変位を提供してよい。
【0028】
それぞれの面は、スリーブが後部に向かって移動しており、第2の加圧面が第2の受圧面を通過しており、第1の加圧面が第1の受圧面に到達していると、つまり、それらそれぞれの面間の遷移にて、ドローバーが、完全にではないが、ボアの後端での、その最終目的地にほぼ到達するよう配置されてよい。これは、第1の加圧面が、最終クランピングが生じる前に、第1の受圧面上においていくらかの距離をスライドすると、クランピングの最終フェーズにおいて圧力が上がる際に、それらの面間に十分な接触面積があるようになることが有益となり得るためである。
【0029】
ドローバーの初期変位にきつい角度を使用し、実際のクランピングに小さい角度を使用することにより、スリーブ(及び、したがって、クランピングデバイス)を、軸方向に比較的短くできる一方で、力増幅効果の高いセルフロッキングクランピングメカニズムを依然として提供する。
【0030】
第1及び第2の加圧面と第1及び第2の受圧面との間のそれぞれの遷移は、丸まったように滑らかであり、第2の面から第1の面への遷移中にも、加圧面と受圧面とのそれぞれの間に十分な接触面積があるようになっていてよい。
【0031】
第2のウェッジ面及びアパーチャスライド面は、アパーチャを通して半径方向から見た際に、曲がっていてよい。これにより、ウェッジは、いくらかの小さい程度だけ、半径方向と一致する軸を中心として変位可能である。その結果として、ウェッジは、アパーチャ内のその位置を、アパーチャスライド面に関して適合させることにより、1つ又はそれ以上のコンポーネントの幾何学的偏差又は不具合を自動的に補償できるようになる。
【0032】
ウェッジかみ合い部材は、ドローバーに取り外し可能に配置されてよい。例えば、ウェッジかみ合い部材は、ドローバーにおけるリセス又はポケットに収められる別個の部品とすることができる。そのようなリセス又はポケットは、ウェッジかみ合い部材が、ドローバーと、少なくとも縦方向に、それに関して移動不可能にしっかりとかみ合うようになるよう設計されてよい。ウェッジかみ合い部材がドローバーと統合的に形成される場合、ウェッジかみ合い部材が、ハウジングの周壁におけるアパーチャ内に半径方向に延在するように配置されると、ドローバーをボア内に配置することが難しくなる場合がある。別個の取り外し可能なウェッジかみ合い部材は、一方で、アパーチャを通して、ハウジングの外側から挿入でき、したがって、クランピングメカニズムのハウジングにおける載置を簡略化する。
【0033】
スリーブは、スリーブが、第1の方向とは反対の方向に移動する際に、ウェッジかみ合い部材上の後を向くリリース受圧面に接触してここに圧力を加え、ボアの内側での前端に向けてのドローバーの変位をもたらすよう配置されている前を向くリリース加圧面を含んでよい。これにより、スリーブを反対方向に単に移動させることにより、クランピングを解放することができる。クランピングデバイスの解放は、クランピングに要したほどの大きな力を必要としない。それにもかかわらず、ツールホルダシャンクと載置部位との間のいずれのセルフロッキング効果に打ち勝ち、ツールホルダシャンクを載置部位から押し出すために、いくらかの力が必要とされ得る。この力は、ウェッジかみ合い部材のリリース受圧面上に直接作用するリリース加圧面により提供されてよい。結果として、ウェッジの関与なく、クランピングが解放され得る。
【0034】
スリーブ上のリリース加圧面に加えて、又は、この代替として、クランピングデバイスは、ドローバーを前部に向けて付勢するためのリリーススプリングをさらに含んでよい。そのようなリリーススプリングは、スリーブが第1の方向とは反対の方向に移動する際に、ドローバーを前部に向けて変位させるよう配置されてよい。そのようなスプリングは、スリーブが第1の方向とは反対の方向に移動する際に、ドローバー及びウェッジかみ合い部材が、前部に向けて直ぐに押されることを確かにし得る。これにより、クランピングを解放する際に、第1及び第2のウェッジ面は接触したままとなり、ウェッジかみ合いスライド面及びアパーチャスライド面のそれぞれの上をスライドする。いくつかの実施形態によると、スプリングは、クランピングデバイスの各部が、解放の初期フェーズ中に、そのどれもが誤った位置にないよう、互いに密接したままとなることを確かにする。その後、リリース加圧面は、ツールホルダシャンクを載置部位から押し出すために十分な力をウェッジかみ合い部材上に提供してよい。リリーススプリングは、ドローバーを前部に向けて付勢するために、縦方向軸に沿って、ドローバーの後ろに配置される圧縮コイルスプリングであってよい。
【0035】
クランピングデバイスは、ハウジングの周壁において対応する数の異なるアパーチャを通して延在するよう配置された複数のウェッジ及びウェッジかみ合い部材を含んでよい。アパーチャと、関連するウェッジ及びウェッジかみ合い部材と、は、ハウジングの外周の周りに、回転対称的に間隔があけられてよい。これにより、力の分布が良好な、バランスのよい、回転対称的なクランピングデバイスが得られる。ここでは、いずれの望ましくない曲げモーメント又は他の望んでいない影響が回避される。過剰に多いウェッジ及び対応するアパーチャは、しかし、望ましくない場合がある。なぜならこれは、ハウジングの堅牢性を損なう場合があるからである。いくつかの実施形態によると、クランピングデバイスは、3つのウェッジ及びウェッジかみ合い部材を含む。結果として、これらのウェッジは、ハウジングの外周の周りを120°ごとに、互いに間隔があけられてよい。これにより、比較的シンプルではあるものの、依然としてバランスがよく、十分なレベルの力の分布を提供しつつ、堅牢性を維持するクランピングデバイスが得られる。なぜならこれは、ハウジングにおいて必要とされるアパーチャの数が非常に少ないからである。
【0036】
ボアの、前端にある載置部位は、円錐状であってよく、非円形断面を有してもよい。円錐形状は、半径方向、同様に、軸方向への、遊びのない接続を確保し、一方、(例えば、「三角形」状又は多角形状を持つ)非円形断面は、マウンティングボアに関しての、マウンティングシャンクの回転不可能な固定を確保する。
【0037】
本発明が、特許請求の範囲内での、多くの様々な方法を用いての変形及び変更が可能であることが明白である。例えば、以下に説明して示す、本発明の例示的実施形態では、クランピングデバイスのマウンティングボアは、円錐状に形成されており、同様に形成されたマウンティングシャンクを有するツールホルダをクランピングするために、断面においていくらかの「三角形」状又は多角形状を持つ。しかし、マウンティングボアは、他のタイプのマウンティングシャンクをクランピングするために、異なる形状をも有し得る。
【0038】
以下では、例示的な実施形態を、以下の添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、クランプされた状態での、ツールホルダを保持するクランピングデバイスの側面図である。
図2図2は、スリーブとハウジングとを、縦方向軸に沿う断面に示す、クランプされた状態での、クランピングデバイスの等角図である。
図3図3は、クランプされた状態での、クランピングデバイスとツールホルダとを、縦方向軸に沿ってクランピングデバイスを通る断面図に示す。
図4図4は、スリーブを取り外した、クランプされた状態での、クランピングデバイスとツールホルダとの上面図である。
図5図5は、スリーブと、ハウジングと、ツールホルダと、を、縦方向軸に沿う断面に示す、クランプされない状態での、クランピングデバイスの等角図である。
図6図6は、クランプされない状態での、クランピングデバイスとツールホルダとの側面図である。
図7図7は、クランプされない状態での、クランピングデバイスとツールホルダとを、縦方向軸に沿ってクランピングデバイスを通る断面図に示す。
図8図8は、図6に示すようなクランピングデバイスを断面図に示す。
【0040】
すべての図は模式的であり、必ずしも原寸ではなく、実施形態のそれぞれを明らかにするために、一般的に必要な構成要素のみを示す一方で、他の構成要素が省略されていたり、単に提案されていたりする場合がある。特に示さない限りは、異なる図面において、同様の参照番号は同様の構成要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、クランピングデバイス1の側面図である。ここでは、ツールホルダ30(図1、及び図3から図7に高度に模式的に示す)がクランプされている。この場合ではマシンスピンドルであるハウジング2は、ツールホルダ30が載置されている前端3と、後端4と、の間を延在する。マシンスピンドル2は、接続ピン31を介して、加工ツールのツールタレットにおける駆動メカニズムに接続可能である。スリーブ16は、スピンドル2の外周の周りに配置され、軸方向に、つまり、縦方向軸に沿って、後端4に向かう第1の方向Dに沿って、及び、前端3に向かう、第1の方向Dとは反対の方向に、移動可能である。
【0042】
図2は、クランピングデバイスの等角図である。ここでは、ドローバー6と、ウェッジ10と、ウェッジかみ合い部材8と、を示すよう、スリーブ16及びスピンドル2の一部が取り除かれている。ドローバー6は、ボア5の内側を縦方向軸Lに沿って往復移動可能に載置されている。ボア5の前端は、ツールホルダ30のシャンク33を受容する載置部位32を含む(図2には図示せず)。かみ合いセグメントの形態のかみ合い手段7が、ドローバー6の前端付近に配置されている。
【0043】
図3は、図1に示すような、縦方向軸Lに沿うクランピングデバイス1の断面図を示す。ツールホルダ30には、マウンティングシャンク33が提供されている。これは、ここに示す実施形態では、US5340248に開示する種類のものであり、軸方向のボアを有する円錐状シャンクを含む。このシャンクは、いくらかの「三角形」又は多角形の非円形断面を有し、対応する形状の載置部位32内に引き込まれるよう適合されている。封止リング43は、ドローバー6とハウジング2の内面との間に配置されている。この実施形態によると、クランピングデバイスの接続メカニズムは、かみ合いセグメント7だけでなく、ボア5内にすべて配置されている、圧縮スプリング36と、スラストリング37と、リテーナリング39と、弾性Oリング38と、ストップリング40と、を含む。後述する接続メカニズムは、例えば、EP2987575に開示するような、クランピングデバイスに対して先に使用した他の接続メカニズムと同様である。
【0044】
クランピングデバイスは、3つのウェッジ10と、3つの対応するウェッジかみ合い部材8と、を含む(ウェッジとウェッジかみ合い部材との1つのセットを図3に見ることができる)。ウェッジ10とウェッジかみ合い部材8とは、スピンドル2の周壁におけるアパーチャ14を少なくとも部分的に通して延在する。アパーチャ14は、縦方向に細長くなっており、後部に向いている、縦方向軸と平行な線に関して約45°だけ傾いているウェッジスライド面15を含む。
【0045】
ウェッジかみ合い部材8は、ドローバー6における、クランピングデバイス1を通してクーラントを運ぶための内部チャネル23まで半径方向に完全に延在するポケット内にしっかりと保持されている。ウェッジかみ合い部材8は、これにより、ドローバー6に関して移動不可能に配置されている。ウェッジかみ合い部材8は、前部に向いている、縦方向軸Lと平行な線に関して約60°だけ傾いているウェッジかみ合いスライド面9を含む。ウェッジかみ合い部材8は、後部に向いているリリース受圧面21をさらに含む。
【0046】
ウェッジ10は、後部に向いている、ウェッジかみ合いスライド面9のように、縦方向軸と平行な線に関して対応する傾斜を有している、それと接触するよう配置されている第1のウェッジ面11を含む。ウェッジ10は、前部に向いている、アパーチャスライド面15のように、縦方向軸と平行な線に関して対応する傾斜を有している、それと接触するよう配置されている第2のウェッジ面12をさらに含む。ウェッジは、また、第1の受圧面13と第2の受圧面18とを含む。これらの双方は、スピンドルから外を向く。第1の受圧面13は、縦方向軸と平行な線に関して約4°だけ傾いている。第2の受圧面18は、縦方向軸と平行な線に関して約35°だけ傾いている。
【0047】
スリーブ16は、その内面に、第1の加圧面17と第2の加圧面19とを含む。これらの双方は、ウェッジ上の第1の受圧面13と第2の受圧面18とそれぞれ接触するために内を向く。スリーブ16は、また、前部に向いているリリース加圧面20を含む。さらに、クランピングデバイスは、サポーティングセグメント34とピン35とを含む(図8に最もよく見える)。サポーティングセグメント34は、ウェッジ10をサポートし、それらがそこに保持され、スリーブ16に関して円周方向にずれることができないようにする。各ピン35は、スピンドル2におけるリセスに部分的に収まり、サポーティングセグメント34におけるリセスに部分的に収まるよう配置されている。ピン35は、スリーブ16を、スピンドル2に関して円周方向に固定し、スリーブ16とスピンドル2との間のいずれの相互の回転移動を防ぐ。その結果として、スピンドルが回転すると、スリーブ16はスピンドル2と共に対応する回転速度にて回転し、スピンドル2に関して円周方向に変位することができない。
【0048】
クランピングデバイス1は、また、ドローバー6の後部に配置されているリリーススプリング22を含む。
【0049】
図4は、スピンドル2におけるアパーチャ14の1つを通して半径方向に見た、ウェッジ10とウェッジかみ合い部材8とが見えるようにスリーブ16を取り除いた、図1から図3のクランピングデバイス1の上面図である。この図では、第2のウェッジ面12及び対応するアパーチャスライド面15は曲がっている一方で、第1のウェッジ面11及び対応するウェッジかみ合いスライド面9は実質的に平らである。
【0050】
図1から図4では、クランピングデバイス1を、ロックされた、又はクランプされた状態に示す。ここでは、スリーブ16は後部に向かって移動しており、かみ合い手段7をロッキング位置にさせるようになっている。この位置では、ドローバー6、及び、事実上、スリーブ16は、後部に向かってさらに移動することはできない。
【0051】
図5から図8は、アンロックされた位置にあるクランピングデバイス1を示す。ここでは、スリーブ16は、前部に向かって移動しており、かみ合い手段7がロッキング位置を離れており、ツールホルダ30のシャンク33が載置部位32から「押し出されて」いる。
【0052】
図8は、図6に示すような平面での、縦方向軸を横断する断面図を示す。ウェッジ10及びウェッジかみ合い部材8は、ドローバー6の外周の周りに、対称的に間隔があけられている。スクリュ24は、スリーブ16をサポーティングセグメント34に接続し、スリーブ16とサポーティングセグメント34との間のいずれの相互の移動を防ぐようになっている。スリーブは、3つの組み立て孔25をさらに含む。クランピングデバイス1を組み立てる際に、ドローバー6は、前部からスピンドルに挿入され、スリーブ及びサポーティングセグメント34は、ピン35と共に、後側からスピンドル上をスライドする。スリーブ16は、スピンドル2と、サポーティングセグメント34と、ピン35と、に関して回され(これは、スリーブの外側部が、サポーティングセグメントにまだ固定されていないために可能である。)、組み立て孔25がアパーチャ14に整列するようになる。続いて、ウェッジかみ合い部材8及びウェッジ10が挿入される。その後、スリーブ16は、そこにあるスクリュ孔が、サポーティングセグメント34において対応するスクリュ孔と整列するまで回される。最後に、スクリュ24を使用して、スリーブ16がサポーティングセグメント34に固定される。この状態では、スリーブは、円周方向には移動可能ではなく、軸方向にのみ移動可能である。さらに、組み立てられた状態では、スリーブは、ウェッジ及びウェッジかみ合い部材により、スピンドル2から軸方向に取り外すことはできない。
【0053】
以下では、クランピングデバイス1の機能を説明する。
【0054】
図5から図8のクランピングデバイス1は初期状態にあり、ツールホルダ30は、クランピングデバイス1からアンロックされている。ここに見られるように、かみ合いセグメント7が、ドローバー6のネック部位42周囲の、ネック部位と、ツールホルダ30のマウンティングシャンク33内のかみ合いボアの内面と、の間に形成された空間内に載置されている。かみ合いセグメント7は、リテーナリング39の内側の内溝とかみ合っているかみ合いセグメントのそれぞれの、外方向に延在するフランジ部位45と、かみ合いセグメントの後端における外向き溝フォーメーション内に位置する弾性Oリング38と、を用いて保持されている。かみ合いセグメントの前端には、外を向くかみ合いフランジ46が形成されており、これらのフランジは、ツールホルダのかみ合いボアの内側のインナーかみ合い溝47とかみ合うよう適合されているが、この初期状態では、かみ合い溝とはかみ合っていない(図7を参照されたい)。さらに、圧縮スプリング36は、ドローバーのフランジと、スラストリング37と、の間に載置されており、スラストリング37と、同様に、リテーナリング39及びかみ合いセグメント7と、を押し、ストップリング40に対して前方向に力を加える。このアンロックされた状態に到達するために、スリーブ16は、前端に向かって動かされている。スリーブ16が前方向に移動する際に、リリーススプリング22がもたらした力は、ドローバー6も前方向に変位させる。スリーブ16が前部に向かって可能な限り遠くに移動すると、スリーブ上のリリース加圧面20が、ウェッジかみ合い部材8上においてリリース受圧面21を押し付ける。これは、かみ合いセグメント7をロックされた位置から離し、ツールホルダシャンク33を載置部位32から押し出す力を提供する。
【0055】
図1から図4をここで参照する。ここでは、クランピングデバイスは、ロックされた状態又はクランプされた状態にあり、ここでは、マウンティングシャンク33が、接続メカニズムを用いてクランピングデバイス1に接続されており、ドローバー6を用いて、スピンドル2の載置部位32内に、大きな力で引き込まれており、しっかりとかみ合っている。
【0056】
これは、スリーブ16を、第1の方向D、つまり、後部に向かって移動させ、ドローバー6を後方向に変位させることにより達成される。これを、以下に、さらに詳細に説明する。図3からわかるように、スラストリング37、リテーナリング39、及びかみ合いセグメント7は依然として、圧縮スプリング36を用いて、前方に、ストップリング40に向かって押されている一方で、ドローバー6が、ウェッジかみ合い部材8を用いて後方に引き込まれている。これは、かみ合いセグメント7が、ドローヘッド41に関して外方向に変位し、それらの前端が、ドローヘッド41の後向き傾斜面49上をスライドする効果を有する。このようにして、かみ合いセグメント7の前端上のかみ合いフランジ46が外方向に変位してロッキング位置となり、ツールホルダのかみ合いボアの内側のかみ合い溝47とかみ合い、ツールホルダシャンク33が、ドローバー6を用いて引き込まれ、スピンドル2内の載置部位32の表面に対して、しっかりと支持される。
【0057】
スリーブ16が、図5から図8に示すような、アンロックされた状態に対応するスターティング位置から後部に向かって移動すると、スリーブ16上の第2の加圧面19が、ウェッジ10上の第2の受圧面18上をスライドしてこれを押し付ける。これにより、ウェッジ10は、アパーチャ14を通して内向きに押され、ドローバー6が、後部に向かって変位する。第2の加圧及び受圧面19、18の(図7に示す)比較的きつい傾斜βにより、ウェッジ10は、初期的に、非常に速く内向きに移動し、ドローバー6の比較的迅速な変位をもたらす。ドローバー6の初期変位は、大きな力を必要としないため、この比較的きつい角度βは、使用に好適である。
【0058】
第1及び第2の加圧及び受圧面13、17、18、19は、スリーブ16が後部に向かって移動しており、第2の加圧面19が第2の受圧面18を通過しており、第1の加圧面17が第1の受圧面13に到達していると、つまり、それらそれぞれの面間の遷移にて、ドローバー6が、ボア5の後端での、その最終目的地にほぼ到達するよう配置されている。したがって、大きな力が好適である最終クランピングフェーズについて、第1の加圧及び受圧面13、17が有効となっている。このフェーズでは、スリーブ16の比較的大きな移動は、ウェッジ10の非常に小さい半径方向の変位、及び、ドローバー6のさらに小さい軸方向の変位をもたらし、したがって、力増幅効果を提供する。さらに、第1の加圧及び受圧面13、17の(図7に示す)小さい傾斜αは、セルフロッキング効果を提供する。ここでは、クランピングデバイスは、いずれの追加的手段を必要とすることなく、クランプされた状態のままとなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8