(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】物資支援システム、物資を支援するための方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20241107BHJP
【FI】
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2022049557
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 健二
(72)【発明者】
【氏名】黒田 英敬
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073184(JP,A)
【文献】特開2006-188331(JP,A)
【文献】特開2008-059476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物資を備蓄する複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する記憶装置と、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、前記記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得し、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から決定し、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信する、管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて決定される抽出条件を更新しながら複数の支援拠点のプレ候補を抽出し、
前記複数の支援拠点のプレ候補に属する前記1以上の支援拠点の候補のそれぞれの所在地および物資の備蓄量を含む備蓄情報を前記被災側端末装置に送信し、前記被災側端末装置に出力させて、被災拠点のユーザに前記1以上の支援拠点の候補の中から前記支援拠点を選択させる、物資支援システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
前記複数の支援拠点のプレ候補のそれぞれの所在地が示す備蓄拠点の端末装置に、前記備蓄拠点が支援拠点のプレ候補とされたことを通知し、
プレ候補とされたことの通知に応答して前記端末装置から送信される、前記支援要請の受諾の可否を示す受諾可否通知を受信し、
前記受諾可否通知が示す前記支援要請の受諾の可否の情報に基づいて、前記複数の支援拠点のプレ候補の中から前記1以上の支援拠点の候補を抽出する、請求項
1に記載の物資支援システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記被災拠点の備蓄情報、および、前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の備蓄情報に基づいて評価スコアを算出し、前記評価スコアに基づいて前記複数の支援拠点のプレ候補を抽出する、請求項
1または2に記載の物資支援システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記支援拠点から前記被災拠点までの物資の輸送時間、輸送コスト、および交通網の少なくとも1つをさらに考慮して、前記評価スコアを算出する、請求項
3に記載の物資支援システム。
【請求項5】
前記備蓄情報は備蓄拠点の連絡先情報を含まず、前記支援情報は前記支援拠点の連絡先情報を含む、請求項1から
4のいずれかに記載の物資支援システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記被災拠点のユーザによって選択された前記支援拠点の前記支援情報を前記被災側端末装置に送信し、かつ、前記被災拠点の連絡先情報を、前記支援拠点の支援側端末装置に送信する、請求項
5に記載の物資支援システム。
【請求項7】
前記管理装置は、前記物資を購入したユーザのみにシステムの利用を許可する、請求項1から
6のいずれかに記載の物資支援システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記支援拠点から前記被災拠点への物資の支援を決定した場合に、前記被災拠点が支援を受ける物資の量に応じて決定される数量の物資を前記支援拠点の所在
地を届け先として発注する、請求項1から
7のいずれかに記載の物資支援システム。
【請求項9】
前記物資は、アルミ缶入り飲料水である、請求項1から
8のいずれかに記載の物資支援システム。
【請求項10】
コンピュータに実装される、物資を備蓄する複数の備蓄拠点の間で互いに物資を支援するための方法であって、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得するステップであって、前記記憶装置は、前記複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する、ステップと、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から抽出するステップ
であって、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて決定される抽出条件を更新しながら複数の支援拠点のプレ候補を抽出することと、
前記複数の支援拠点のプレ候補に属する前記1以上の支援拠点の候補のそれぞれの所在地および物資の備蓄量を含む備蓄情報を前記被災側端末装置に送信し、前記被災側端末装置に出力させて、被災拠点のユーザに前記1以上の支援拠点の候補の中から前記支援拠点を選択させることと、
を含むステップと、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信するステップと、
をコンピュータに実行させる方法。
【請求項11】
物資を備蓄する複数の備蓄拠点の間で互いに物資を支援するために利用されるコンピュータプログラムであって、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得することであって、前記記憶装置は、前記複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する、ステップと、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から抽出するステップ
であって、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて決定される抽出条件を更新しながら複数の支援拠点のプレ候補を抽出することと、
前記複数の支援拠点のプレ候補に属する前記1以上の支援拠点の候補のそれぞれの所在地および物資の備蓄量を含む備蓄情報を前記被災側端末装置に送信し、前記被災側端末装置に出力させて、被災拠点のユーザに前記1以上の支援拠点の候補の中から前記支援拠点を選択させることと、
を含むステップと、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信するステップと、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項12】
物資を備蓄する複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する記憶装置と、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、前記記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得し、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から決定し、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信する、管理装置と、
を備え、
前記備蓄情報は備蓄拠点の連絡先情報を含まず、前記支援情報は前記支援拠点の連絡先情報を含む、物資支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物資支援システム、物資を支援するための方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害用の物資を管理する管理システムが提案されている。特許文献1は、災害用物資の備蓄・備品情報管理システムを開示している。この管理システムによれば、複数のユーザの各々が備蓄している災害用物資の備蓄情報を一元的に管理することが可能となる。特許文献2は、管理者の高度な意思決定を必要とせず、システムで管理される備蓄物資を各被災拠点に過不足なく円滑に供給することを可能とする災害支援システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-92071号公報
【文献】特開2004-157843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1または2に開示されたシステムによれば、災害時にシステムを利用するユーザ同士のコミュニケーションが円滑に行えない課題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティまたはプライバシーを守りつつ、システムを利用するユーザ同士のコミュニケーションを円滑に行うことを可能とする、物資支援システム、物資を支援するための方法およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の解決手段が提供される。
【0007】
[項目1]
物資を備蓄する複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する記憶装置と、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、前記記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得し、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から決定し、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信する、管理装置と、
を備える物資支援システム。
[項目2]
前記管理装置は、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて決定される抽出条件を更新しながら複数の支援拠点のプレ候補を抽出し、
前記複数の支援拠点のプレ候補に属する前記1以上の支援拠点の候補のそれぞれの所在地および物資の備蓄量を含む備蓄情報を前記被災側端末装置に送信し、前記被災側端末装置に出力させて、被災拠点のユーザに前記1以上の支援拠点の候補の中から前記支援拠点を選択させる、項目1に記載の物資支援システム。
[項目3]
前記管理装置は、
前記複数の支援拠点のプレ候補のそれぞれの所在地が示す備蓄拠点の端末装置に、前記備蓄拠点が支援拠点のプレ候補とされたことを通知し、
プレ候補とされたことの通知に応答して前記端末装置から送信される、前記支援要請の受諾の可否を示す受諾可否通知を受信し、
前記受諾可否通知が示す前記支援要請の受諾の可否の情報に基づいて、前記複数の支援拠点のプレ候補の中から前記1以上の支援拠点の候補を抽出する、項目2に記載の物資支援システム。
[項目4]
前記管理装置は、前記被災拠点の備蓄情報、および、前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の備蓄情報に基づいて評価スコアを算出し、前記評価スコアに基づいて前記複数の支援拠点のプレ候補を抽出する、項目2または3に記載の物資支援システム。
[項目5]
前記管理装置は、前記支援拠点から前記被災拠点までの物資の輸送時間、輸送コスト、および交通網の少なくとも1つをさらに考慮して、前記評価スコアを算出する、項目4に記載の物資支援システム。
[項目6]
前記備蓄情報は備蓄拠点の連絡先情報を含まず、前記支援情報は前記支援拠点の連絡先情報を含む、項目1から5のいずれかに記載の物資支援システム。
[項目7]
前記管理装置は、前記被災拠点のユーザによって選択された前記支援拠点の前記支援情報を前記被災側端末装置に送信し、かつ、前記被災拠点の連絡先情報を、前記支援拠点の支援側端末装置に送信する、項目6に記載の物資支援システム。
[項目8]
前記管理装置は、前記物資を購入したユーザのみにシステムの利用を許可する、項目1から7のいずれかに記載の物資支援システム。
[項目9]
前記管理装置は、前記支援拠点から前記被災拠点への物資の支援を決定した場合に、前記被災拠点が支援を受ける物資の量に応じて決定される数量の物資を前記支援拠点の所在地を届け先として発注する、項目1から8のいずれかに記載の物資支援システム。
[項目10]
前記物資は、アルミ缶入り飲料水である、項目1から9のいずれかに記載の物資支援システム。
[項目11]
コンピュータに実装される、物資を備蓄する複数の備蓄拠点の間で互いに物資を支援するための方法であって、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得するステップであって、前記記憶装置は、前記複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する、ステップと、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から抽出するステップと、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信するステップと、
をコンピュータに実行させる方法。
[項目12]
物資を備蓄する複数の備蓄拠点の間で互いに物資を支援するために利用されるコンピュータプログラムであって、
前記複数の備蓄拠点のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置から送信される物資の支援要請に応答して、記憶装置にアクセスして前記被災拠点の備蓄情報を取得することであって、前記記憶装置は、前記複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地、および、前記複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む備蓄情報を記憶する、ステップと、
前記被災拠点の備蓄情報に基づいて、前記被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を前記被災拠点以外の前記複数の備蓄拠点の中から抽出するステップと、
前記1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を前記被災側端末装置に送信するステップと、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【0008】
本開示の包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、もしくはコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得る。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、揮発性の記憶媒体を含んでいてもよいし、不揮発性の記憶媒体を含んでいてもよい。装置は、複数の装置で構成されていてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよいし、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の例示的な実施形態は、セキュリティまたはプライバシーを守りつつ、システムを利用するユーザ同士のコミュニケーションを円滑に行うことを可能とする、物資支援システム、物資を支援するための方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態における物資支援システムの概略的な構成を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による物資支援システムの概要を説明するための図である。
【
図3】
図3は、物資の支援要請から支援要請が成立するまでの管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ステップS200に含まれる処理のより詳細なフローチャートである。
【
図5】
図5は、ステップS300に含まれる処理のより詳細なフローチャートである。
【
図6】
図6は、端末装置に表示される、備蓄水データベースの表示画面を例示する図である。
【
図7】
図7は、端末装置に表示される、備蓄情報の表示画面を例示する図である。
【
図8】
図8は、端末装置に表示される、被災時の支援要請の表示画面を例示する図である。
【
図9】
図9は、端末装置に表示される、支援拠点の候補とされたことを通知する表示画面を例示する図である。
【
図10】
図10は、端末装置に表示される支援拠点の候補の表示画面を例示する図である。
【
図11】
図11は、端末装置に表示される、支援拠点の候補の地図上の位置を表す表示画面を例示する図である。
【
図12】
図12は、物資の支援要請から支援要請が成立するまでの管理装置の動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、マッチング成立後に被災側端末装置に表示される表示画面を例示する図である。
【
図14】
図14は、マッチング成立後に支援側端末装置に表示される表示画面を例示する図である。
【
図15】
図15は、物資の支援要請から支援要請が成立するまでの管理装置の動作の更なる他の例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、管理装置の概略的なハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図17】
図17は、端末装置の概略的なハードウェア構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示による物資支援システム、および物資を支援するための方法を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成または処理に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、実質的に同一の構成または処理に同一の参照符号を付す場合がある。
【0012】
以下の実施形態は例示であり、本開示による物資支援システム、および物資を支援するための方法は、以下の実施形態に限定されない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、一の態様と他の態様とを組み合わせることが可能である。
【0013】
<1.物資支援システムの概要>
先ず、
図1を参照して、本開示の実施形態における物資支援システムの概要を説明する。
図1に、本開示の実施形態における物資支援システムの概略的な構成を例示する。
【0014】
図1に例示する物資支援システム1000は、管理装置100と、後述する記憶装置とを備える。複数の備蓄拠点300のそれぞれにおいて利用される端末装置200が、ネットワーク400を介して管理装置100に接続される。管理装置100は、ネットワーク400を介して記憶装置に接続されてもよいし、ネットワーク400を介さずに記憶装置に接続されてもよい。図示する例では、7か所の備蓄拠点300において利用される7台の端末装置200が物資支援システム1000に接続されているが、これは例示に過ぎない。物資支援システム1000に接続される端末装置200の台数は、数百台あるいは数千台であり得る。また、物資支援システム1000は、通信遅延の低減またはネットワーク負荷の分散の観点から、1以上のエッジコンピュータをさらに備えていてもよい。
【0015】
各備蓄拠点300には、災害時に備えて物資が備蓄されている。物資の種類は特に限定されないが、例えば、飲料水、食料品、衣服または医薬品である。本開示の実施形態における物資は、アルミ缶入り飲料水である。アルミ缶入り飲料水は、ペットボトル入りの飲料水に比べて長期保存を可能とするので、備蓄拠点300に備蓄する物資に適している。
【0016】
管理装置100の例はクラウドサーバであり、記憶装置(
図13を参照)の例は、クラウドストレージである。端末装置200は、各備蓄拠点300においてユーザが使用するコンピュータである。管理装置100および複数の端末装置200は、ネットワーク400を介して互いに通信することができる。
図1に例示する端末装置200は、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのモバイル端末であるが、これに限定されない。端末装置200は、ラップトップコンピュータ、デスクトップPC(personal computer)などの据え置き型のコンピュータであってもよい。例えば、ブラウザからクラウドシステムにアクセスする方式を採用することで、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのデバイスの種類によらず、ユーザは物資支援システム1000を利用し得る。
【0017】
本明細書において、自然災害などによって被災した備蓄拠点を「被災拠点」と呼び、被災拠点において利用される端末装置を「被災側端末装置」と呼ぶ。また、被災拠点からの支援要請を受け、被災拠点に物資を提供することが可能な備蓄拠点を「支援拠点の候補」と呼び、1以上の支援拠点の候補の中から選択される少なくとも1つの支援拠点の候補を「支援拠点」と呼び、支援拠点において利用される端末装置を「支援側端末装置」と呼ぶ。
図1には、7台の端末装置200のうちの被災側端末装置201および支援側端末装置202をそれぞれ示している。さらに、被災拠点において被災側端末装置を利用するユーザを「被災者」と呼び、支援拠点の候補において端末装置を利用するユーザを「支援候補者」と呼び、支援拠点において支援側端末装置を利用するユーザを「支援者」と呼ぶ場合がある。例えば、ユーザは、個人であってもよく、行政、団体または企業の担当者または管理者であってもよい。
【0018】
物資を備蓄する複数の備蓄拠点のそれぞれの所在地(または住所)、および、複数の備蓄拠点のそれぞれに備蓄された物資の備蓄量を含む情報を「備蓄情報」と呼ぶ。備蓄情報は、備蓄拠点ごとに、所在地と物資の備蓄量とが関連付けられて記憶装置に記憶される。ただし、備蓄情報は、所在地および物資の備蓄量に加え、例えば、過去に支援を行った回数を含む過去の実績のような更なる情報を含んでいてもよい。
【0019】
本開示の実施形態による物資支援システムは、例えば市区町村がすでに運用している既存のシステムに連携され得る。あるいは、物資支援システムは、公共団体同士または自治体同士の連携を可能とする。また、民間が参入することで、行政と民間とが物資支援システムを介して繋がり得る。さらには、日本全国に存在する複数の備蓄拠点で利用される複数の端末装置がネットワークを介して同一の物資支援システムに相互に繋がり得る。
【0020】
図2に、本開示の実施形態による物資支援システムの概要を説明するための図を示す。本開示の実施形態では、物資(例えば飲料水)の製造元または販売元が物資支援システムを管理し、例えば物資の購入者から申請がある場合に、購入者に物資支援システムの利用を許可し得る。物資支援システムへの加入は任意である。被災拠点に備蓄されている物資が不足している場合に、被災者であるユーザが、被災側端末装置を利用して他の備蓄拠点に物資の支援要請を行うことができる。被災者による操作によって被災側端末装置から支援要請の信号が管理装置に送信される。支援要請の信号は、被災者を特定するための被災者IDを含む。被災者IDは、ユーザごとに割り当てられた固有の識別情報である。ユーザIDは、例えば端末装置のシリアル番号に紐付けされて付与され得る。
【0021】
本開示の実施形態では、被災者が、支援要請を行うときに、被災の事実、および、被災現場で必要な物資(例えば飲料水)の量を物資支援システムに通知する。さらには、被災者は、支援要請を行うときに、被災現場で必要な物資の情報(例えば飲料水以外に食料や衣服が不足している)を含むメッセージを送信してもよい。
【0022】
被災者が支援要請を行うときに、端末装置200は、被災の事実、例えば気象庁が公表する自然災害発生の事実を確認できる機能を備え得る。この機能により、虚偽の支援要請または報告、もしくは誤記入などを適切に防止することができる。
【0023】
物資支援システムが被災者から支援要請を受けると、被災者IDに基づいて管理装置に支援候補者をリストアップさせる。
図2には、被災者IDに基づいてリストアップした結果、支援候補者AおよびBを含む支援候補者がリストアップされた結果を例示している。管理装置は、リストアップした支援候補者に支援要請の可否の問合せを行う。言い換えると、管理装置は、支援候補者が利用する端末装置に、支援拠点の候補とされたことを通知する。支援候補者が利用する端末装置には、被災拠点の所在地および物資の備蓄量を含む被災拠点の備蓄情報が通知される。ここで、被災拠点の備蓄情報は、被災者の連絡先情報を含んでいない。
図2に示す例では、この通知を受けた支援候補者Aは、物資の支援が可能であることを管理装置に回答し、この通知を受けた支援候補者Bは、支援が不可能であることを管理装置に回答している。
【0024】
管理装置は、支援候補者からの回答を受け、支援候補者の中から支援可能な支援候補者をリストアップする。管理装置は、リストアップした結果を被災側端末装置に通知する。被災者は、被災側端末装置を利用して、通知された支援可能な支援候補者の中から少なくとも一人の支援者を選択し、選択した結果を管理装置に通知する。管理装置は、被災者によって選択された支援者の通知を受け、支援要請のマッチングが成立したと判断する。その後、管理装置は、被災側端末装置に支援者の連絡先情報を送信し、支援側端末装置に被災者の連絡先情報を送信する。マッチングが成立した後は、支援者の連絡先情報の通知を受けた被災者は、支援者に連絡することが可能となり、被災者の連絡先情報の通知を受けた支援者は、被災者に連絡することが可能となる。被災者と支援者とのコミュニケーションは、物資支援システムを介して行われてもよいし、物資支援システムを介さずに(例えば電話網を介して)行われてもよい。
【0025】
このように、本開示の実施形態による物資支援システムによれば、マッチングが成立するまでは、被災者および支援者の連絡先情報は明かされないために、キュリティまたはプライバシーが守られる。マッチング成立後は、システムを利用するユーザ同士のコミュニケーションを円滑に行うことが可能となる。例えば、システムに統合されたチャット機能もしくはメッセージ送受信機能、システム外部の電子メール、または電話などを利用してユーザ同士のコミュニケーションが行われ得る。
【0026】
<2.物資支援システムの詳細>
図3に、物資の支援要請から支援要請が成立するまでの管理装置100の動作の例のフローチャートを示す。管理装置100は、被災拠点の備蓄情報を取得するステップS100と、被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を決定するステップS200と、支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を被災側端末装置201に送信するステップS300とを含む動作を実行する。
【0027】
前述したように、各備蓄拠点300の備蓄情報は、所在地と物資の備蓄量とが関連付けられて記憶装置に記憶される。本開示の実施形態では、前述したように、物資を購入した顧客にシステムの利用が許可され得る。そのため、物資を購入した顧客情報に基づいてデータベースが整備されているために、ユーザの加入を任意で認める場合に比べ、データの信頼性が高い。
【0028】
図6に、端末装置200に表示される、備蓄水データベースの表示画面200Aを例示する。表示画面200Aは、「管理者情報」、「組織内の備蓄水データ」、「被災時の支援要請」、「地図表示」、「チュートリアル」など項目を含むメニュー画面であり得る。ただし、図示するメニュー画面は一例に過ぎない。
図7に、端末装置200に表示される備蓄情報の表示画面200Bを例示する。表示画面200Bは、
図6に示すメニュー画面における「組織内の備蓄水データ」の項目が選択されたときに表示される。表示画面200Bは、同じ管理者が管理する複数の備蓄拠点300のうちの備蓄拠点300A~300Cのそれぞれの備蓄水の量(ケース数)および住所の情報を含む。図示する例における端末装置200は、住所を表示または非表示にする機能を有する。表示画面200Bに表示される備蓄情報は、例えば日または週ごとに更新され得る。
【0029】
(ステップS100)
管理装置100は、複数の備蓄拠点300のうちの被災した備蓄拠点である被災拠点の被災側端末装置201から送信される物資の支援要請に応答して、記憶装置にアクセスして被災拠点の備蓄情報を取得する。
図8に、端末装置200に表示される被災時の支援要請の表示画面200Cを例示する。表示画面200Cは、
図6に示すメニュー画面における「被災時の支援要請」の項目が選択されたときに表示される。このような表示画面の例によれば、例えば管理者が、表示画面200Cに表示される支援要請のボタンを押すことによって、物資を必要とする備蓄拠点を選択し、当該備蓄拠点への支援要請を容易に行い得る。また、前述したように、管理者から入力を受けた被災側端末装置201から物資支援システムに、例えば被災の事実、および、被災現場で必要な物資の量が通知される。
【0030】
(ステップS200)
管理装置100は、被災拠点の備蓄情報に基づいて、被災拠点に物資を提供することが可能な1以上の支援拠点の候補を被災拠点以外の複数の備蓄拠点300の中から決定する。
【0031】
図4に、ステップS200に含まれる処理のより詳細なフローチャートを示す。
図4に例示する処理手順は、ステップS210~S270の処理を含む。ステップS210~S250において、管理装置100は、被災拠点の備蓄情報に基づいて決定される抽出条件を更新しながら複数の支援拠点のプレ候補を抽出する。
【0032】
ステップS210において、管理装置100は、抽出条件として評価スコアを算出し得る。例えば、管理装置100は、被災拠点の備蓄情報、および、被災拠点以外の複数の備蓄拠点300の備蓄情報に基づいて評価スコアを算出し、評価スコアに基づいて複数の支援拠点のプレ候補を抽出する。管理装置100は、支援拠点から被災拠点までの距離を備蓄情報に基づいて、例えば地図上における座標の点のユークリッド距離またはマンハッタン距離として算出することができる。管理装置100は、支援拠点から被災拠点までの物資の輸送時間、輸送コスト、および交通網の少なくとも1つをさらに考慮して、評価スコアを算出し得る。これは、例えば最適輸送理論を評価スコアの算出に導入することで実現され得る。このため、ステップS230の処理は、例えば遺伝的アルゴリズムを利用して最適輸送問題を解くことを含み得る。最適輸送理論の詳細およびアルゴリズムの例は、特開2019-133323号公報や米国特許出願公開第2020/0065759号明細書に記載されている。特開2019-133323号公報および米国特許出願公開第2020/0065759号明細書の開示内容のすべてを参照により本明細書に援用する。管理装置100は、備蓄拠点300における物資の備蓄量の回復時間などをさらに考慮して、評価スコアを算出してもよい。
【0033】
被災拠点と支援拠点とを結ぶ道路の種類(国道、県道、私道など)を考慮し、評価スコアは算出され得る。これによって、交通網の寸断などにもスムーズに対応できる支援拠点の候補が管理装置100から提示され得、災害時のシステムのレジリエンスを高めることが可能となる。
【0034】
ステップS220において、管理装置100は、複数の支援拠点のプレ候補を抽出できなかった場合には、抽出条件、すなわち評価スコアを更新し(ステップS230)、更新後の抽出条件を用いて複数の支援拠点のプレ候補を抽出する。抽出条件、すなわち評価スコアの更新は、条件が緩和されるように実行される。管理装置100が複数の支援拠点のプレ候補を抽出できた場合には、処理は次のステップS240に進む。管理装置100が複数の支援拠点のプレ候補を抽出できなかった場合には、ステップS210~S230の処理を、複数の支援拠点のプレ候補を抽出できるまで繰り返し実行する。
【0035】
ステップS240において、管理装置100は、複数の支援拠点のプレ候補のそれぞれの所在地が示す備蓄拠点300の端末装置200に、当該備蓄拠点300が支援拠点のプレ候補とされたことを通知する。この通知を受信した端末装置200を利用するユーザは、当該備蓄拠点300が支援拠点のプレ候補とされたこと認識し、支援要請の受諾の可否を判断する。当該ユーザは、支援要請の受諾の可否を端末装置200から管理装置100に送信する。
【0036】
図9に、端末装置200に表示される、支援拠点の候補とされたことを通知する表示画面200Dを例示する。端末装置200は、管理装置100から送信される、支援拠点の候補とされたことを通知する信号に応答して、表示画面200Dを表示する。ユーザは、表示画面200Dに表示される支援を必要とする被災拠点からの支援要請を受諾する場合には支援可のボタンを押し、支援要請を拒否する場合には支援不可のボタンを押すことができる。このように、支援要請が届いたことを端末装置200に表示することで、ユーザは、支援要請の受諾の可否を管理装置100に瞬時に返答することが可能となる。また、被災者が支援要請を行うときに、被災拠点が必要とする物資の量および期間を被災側端末装置201に入力してもよい。そのような情報が被災側端末装置201から管理装置100に送信され、管理装置100から支援拠点の候補で利用される端末装置200に通知される。支援要請を受けたユーザは、被災拠点が必要とする物資の量および期間の情報を、支援要請の受諾の可否を判断する材料に利用することができる。
【0037】
ステップS250において、管理装置100は、支援拠点候補の通知に応答して端末装置200から送信される、支援要請の受諾の可否を示す受諾可否通知を受信する。1以上の端末装置200から送信され得る受諾可否通知に、支援要請の受諾可を示す少なくとも1つの通知が含まれている場合には、処理は次のステップS260に進む。これに対し、1以上の端末装置から送信され得る受諾可否通知に、支援要請の受諾可を示す通知が1つも含まれていない場合には、処理はステップS230に戻る。管理装置100は抽出条件を緩和して、緩和後の抽出条件を用いて複数の支援拠点のプレ候補の抽出を再び試みる。(ステップS210)。
【0038】
ステップS260において、管理装置100は、受諾可否通知が示す支援要請の受諾の可否の情報に基づいて、複数の支援拠点のプレ候補の中から1以上の支援拠点の候補を抽出する。言い換えると、管理装置100は、複数の支援拠点のプレ候補の中から、支援要請の受諾可を示す通知を送信した端末装置を利用する1以上の備蓄拠点300を、1以上の支援拠点の候補として抽出する。例えば、管理装置100は、ステップS210において、複数の支援拠点のプレ候補として10拠点を抽出したとする。この場合、管理装置100は、10拠点のうちの3拠点において利用される各端末装置200から支援要請の受諾可を示す通知を受け取ると、10拠点の支援拠点のプレ候補に属する当該3拠点を支援拠点の候補として決定する。
【0039】
ステップS270において、管理装置100は、複数の支援拠点のプレ候補に属する1以上の支援拠点の候補のそれぞれの所在地および物資の備蓄量を含む備蓄情報を被災側端末装置に送信する。
図10に、端末装置200に表示される支援拠点の候補の表示画面200Eを例示する。この例では、被災者であるユーザが、支援拠点の候補301、303および305の中から1以上の支援拠点を、決定ボタンを押すことで選択することが可能である。
【0040】
図11に、端末装置200に表示される支援拠点の候補の地図上の位置を表す表示画面200Fを例示する。端末装置200は、支援拠点の候補の地図上の位置を表す表示画面200Fを表示してもよい。また、地図上の支援拠点の候補の1つに矢印のカーソルを合わせることで、端末装置200はその備蓄拠点の備蓄情報200Gを表示してもよい。ユーザは、地図上で備蓄拠点に備蓄されている物資の備蓄量を確認しながら、備蓄拠点の場所を直観的に認識できる。また、この例では、備蓄拠点の位置を示すアイコンに物資の備蓄量(例えば飲料水のケース数)が地図上に明示されている。地図上に備蓄量が表示されるために、近隣の物資の備蓄状態を把握することが容易になり得る。
【0041】
(ステップS300)
管理装置100は、1以上の支援拠点の候補の中から決定される少なくとも1つの支援拠点の備蓄情報を含む支援情報を被災側端末装置201に送信する。
図5に、ステップS300に含まれる処理のより詳細なフローチャートを示す。
図5に例示する処理手順は、ステップS310~S330の処理を含む。
【0042】
ステップS310において、管理装置100は、支援拠点候補の備蓄情報を被災側端末装置201に出力させて、被災拠点の被災者であるユーザに1以上の支援拠点の候補の中から支援拠点を選択させる。
【0043】
ステップS320において、被災拠点のユーザによって支援拠点が選択された場合には、処理は次のステップS330に進む。ユーザは、1つの支援拠点に限らず、複数の支援拠点を選択してもよい。被災拠点のユーザによって支援拠点が選択されなかった場合、つまり、被災者が希望する支援候補者が見つからなかった場合には、処理はステップS250に戻り、管理装置100は抽出条件を緩和して、緩和後の抽出条件を用いて複数の支援拠点のプレ候補の抽出を再び試みる(
図4を参照)。管理装置100は、例えば被災拠点から支援拠点の候補までの距離、および物資の備蓄量の条件を緩和することで次の支援拠点のプレ候補を速やかに決定し得る。
【0044】
ステップS330において、管理装置100は、被災拠点のユーザによって選択された少なくとも1つの支援拠点の支援情報を被災側端末装置201に送信し、かつ、被災拠点の連絡先情報を、支援拠点の支援側端末装置202に送信する。ここで、備蓄情報は備蓄拠点300の連絡先情報を含まず、支援情報は支援拠点の連絡先情報を含む。これにより、マッチング成立後は、支援者の連絡先情報の通知を受けた被災者は、支援者に連絡することが可能となり、被災者の連絡先情報の通知を受けた支援者は、被災者に連絡することが可能となる。被災者と支援者とのコミュニケーションは、物資支援システムを介して行われてもよいし、例えば電話またはシステム外部の電子メールを利用して行われてもよい。マッチングの成立後は、被災者と支援者との間に例えばチャットを開設し、通信が不安定な状態になっても、物資の受け渡し場所のような最低限の情報を交換できるようにしておくことが望ましい。
【0045】
図12に、物資の支援要請から支援要請が成立するまでの管理装置100の動作の他の例のフローチャートを示す。管理装置100は、さらに、支援拠点から被災拠点への物資の支援を決定した場合に、被災拠点が支援を受ける物資の量に応じて決定される数量の物資を支援拠点の所在地を届け先として発注するステップS400を含み得る。例えば、管理装置100は、マッチングの成立後、所定の期間が経過した後(例えば90日)に、支援者への物資の返却を被災者に促す機能を有し得る。これにより、管理装置100は、各備蓄拠点300の物資の在庫を適切に管理し得る。
【0046】
図13に、マッチング成立後に被災側端末装置201に表示される表示画面の例を示す。
図13に示す例における表示画面は、支援拠点の備蓄情報200Hと、支援を要請した物資の量200Iと、発注に関するメッセージ200Jとを含む。支援拠点の備蓄情報200Hは、支援拠点の代表者および連絡先情報を含む。また、支援の感謝として、支援元である支援拠点に物資の発注を促すメッセージ200Jが表示され得る。被災者であるユーザは、物資の発注に同意する場合には、決定ボタンを押して物資を発注することができる。ただし、物資の発注を促すメッセージの表示は必須でなく、マッチングが成立した後は管理装置100が物資の発注を自動的に行ってもよい。
【0047】
マッチング成立後には、被災者と支援者との間でチャット形式によるメッセージのやり取りが行われてもよい。
図13には、メッセージを投稿するためのチャットボックス200Kを示す。これにより、ユーザはメッセージを遡って確認したり、履歴を確認したりできる。また、マッチング成立後においても被災者と支援者との間のコミュニケーションを容易に継続できる。
【0048】
図14に、マッチング成立後に支援側端末装置202に表示される表示画面の例を示す。
図14に示す例における表示画面は、被災拠点の備蓄情報200Mと、被災者から発注される物資が届く予定日のメッセージ200Nとを含む。支援者は、表示画面を確認することによって、被災拠点の代表者および連絡先情報を確認でき、かつ、支援先から支援の物資が発注されることを把握できる。支援側端末装置202に表示される表示画面も、被災側端末装置201と同様に、メッセージを投稿するためのチャットボックス200Kを含み得る。
【0049】
このように、本開示の実施形態による物資支援システムによれば、マッチングが成立するまでは、被災者および支援者の連絡先情報は明かされないために、キュリティまたはプライバシーが守られる。マッチング成立後は、システムを利用するユーザ同士が、例えば、システムに統合されたチャット機能もしくはメッセージ送受信機能、システム外部の電子メール、または電話などを利用して、コミュニケーションを円滑に行うことが可能となる。また、最小限のデータベースの支援情報、すなわち備蓄情報を、被災者と支援者との間で送受信することによって、例えば災害時に通信ネットワークの帯域が低下したとしても、被災者は支援要請を行うことができる。
【0050】
図15に、物資の支援要請から支援要請が成立するまでの管理装置100の動作の更なる他の例のフローチャートを示す。管理装置100は、さらに、被災者から発注された物資を支援拠点に配送するための配送計画を行い、配送の手配を行うステップS500を含み得る。管理装置100は、公知の種々なアルゴリズムを用いて配送計画の最適化を行い得る。あるいは、災害で陸路の交通網が利用できない場合などには、管理装置100は、ドローンを用いる物資の配送計画を行ってもよい。
【0051】
前述した例では、災害時の管理装置100の動作を主に説明したが、管理装置100は、例えば平時にも備蓄拠点のおおよその場所および物資の備蓄量の情報をユーザに開示し、あるいは複数のユーザと共有してもよい。これにより、例えば他の自治体または市町村における備蓄拠点の物資の備蓄量を把握できる。また、複数の拠点から構成されるバックアップセンターが、記憶装置に記憶されているデータ(各備蓄拠点の備蓄情報)のバックアップをリアルタイムで行うことが好ましい。これにより、災害時のレジリエンスを高めることが可能となる。
【0052】
前述した例では、被災者が、被災側端末装置201を利用して、通知された支援可能な支援候補者の中から少なくとも一人の支援者を選択したが、本開示の実施形態はこれに限定されない。管理装置100が、支援可能な支援候補者の中から支援者を自動で決定してもよい。例えば、管理装置100は、評価スコアが最も高い備蓄拠点を支援拠点として決定してもよい。
【0053】
物資の容器(例えば缶入り飲料水の場合には缶)またはダンボールケースに、物資支援システムへのアクセス先のURLまたは2次元バーコードを表示することによって、緊急時のシステムへのアクセスが容易になり得る。また、管理装置100は、物資の購入後、例えば1年ごとに棚卸を行うように端末装置200に通知することで、平時において物資の在庫確認を各備蓄拠点の管理者または担当者に促してもよい。
【0054】
管理装置100は、各備蓄拠点に備蓄された物資の賞味期限を管理し得る。管理装置100は、例えば物資の賞味期限が半分を経過した時点で、備蓄拠点の管理者または担当者に物資の交換または補充を通知してもよい。これにより、物資を積極的に支援するインセンティブを管理者または担当者に与えることができ、その結果、地域間のコミュニケーションの醸成および賞味期限のリセットの効果が期待される。
【0055】
本開示の実施形態による物資支援システム1000は、例えば災害が発生した地域に存在する複数の被災拠点から複数の支援要請を受けてもよい。その場合であっても、管理装置100は、例えば最適輸送理論を評価スコアの算出に導入することで、複数の支援拠点から複数の被災拠点への物資の支援を可能とする。
【0056】
<3.支援物資システムのハードウェア構成>
(管理装置100)
図16に、管理装置100の概略的なハードウェア構成のブロック図を例示する。管理装置100は、各備蓄拠点300から離れた場所に設置されたコンピュータであり得る。管理装置100の典型例は、クラウドサーバである。管理装置100は、通信装置110と、制御装置120と、記憶装置130とを備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。
【0057】
通信装置110は、ネットワーク400(
図1を参照)を介して端末装置200と通信するための通信モジュールである。例えば、通信装置110は、IEEE1394(登録商標)、またはイーサネット(登録商標)などの通信規格に準拠した有線通信を行うことができる。通信装置110は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格もしくはWi-Fi規格に準拠した無線通信、または、3G、4Gもしくは5Gなどのセルラー移動体通信を行うことができる。
【0058】
制御装置120は、例えば、プロセッサ121、ROM(Read Only Memory)122およびRAM(Random Access Memory)123などを備える。プロセッサ121が少なくとも1つの処理を実行するためのソフトウェア(またはファームウェア)が、ROM122に実装され得る。そのようなソフトウェアは、例えば光ディスクなど、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録され、パッケージソフトウェアとして販売され、または、ネットワーク400を介してユーザに提供され得る。
【0059】
プロセッサ121は、半導体集積回路であり、中央演算処理装置(CPU)を含む。プロセッサ121は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラによって実現され得る。プロセッサ121は、少なくとも1つの処理を実行するための命令群を記述した、ROM122に格納されるコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。
【0060】
制御装置120は、プロセッサ121に加えてまたは代えて、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ASSP(Application Specific Standard Product)、または、これら回路の中から選択される2つ以上の回路の組み合わせを備え得る。
【0061】
ROM122は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM122は、プロセッサ121の動作を制御するプログラムを記憶している。ROM122は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であり得る。複数の集合体の一部は取り外し可能なメモリであってもよい。
【0062】
RAM123は、ROM122に格納された制御プログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM123は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であり得る。
【0063】
記憶装置130は、主としてデータベースのストレージとして機能する。記憶装置130の例はクラウドストレージである。記憶装置130は、例えば、磁気記憶装置または半導体記憶装置である。磁気記憶装置の例は、ハードディスクドライブ(HDD)である。半導体記憶装置の例は、ソリッドステートドライブ(SSD)である。
【0064】
(端末装置200)
図17に、端末装置200の概略的なハードウェア構成のブロック図を例示する。端末装置200は、入力装置210、表示装置220、通信装置230、記憶装置240、プロセッサ250、ROM260、およびRAM270を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。
【0065】
入力装置210は、ユーザからの指示をデータに変換してコンピュータに入力するための装置である。入力装置210の例は、キーボード、マウスまたはタッチパネルである。表示装置220の例は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである。通信装置230、記憶装置240、プロセッサ250、ROM260、およびRAM270のそれぞれに関する説明は、管理装置100のハードウェア構成例において記載したとおりであり、省略する。
【0066】
本開示の実施形態における物資支援システムで使用されるコンピュータプログラムは、当該システムとは独立して製造および販売され得る。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されて提供され得る。コンピュータプログラムは、電気通信回線(例えばインターネット)を介したダウンロードによっても提供され得る。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の技術は、複数のユーザ間で物資の支援を行う物資支援システムにおいて広く利用され得る。
【符号の説明】
【0068】
100:管理装置、110:通信装置、120:制御装置、121:プロセッサ、122:ROM、123:RAM、130:記憶装置、200:端末装置、200A~200F:表示画面、201:被災側端末装置、202:支援側端末装置、210:入力装置、220:表示装置、230:通信装置、240:記憶装置、250:プロセッサ、260:ROM、270:RAM、300:備蓄拠点、300A:備蓄拠点、300B:備蓄拠点、300C:備蓄拠点、301:候補、303:候補、400:ネットワーク、1000:物資支援システム