(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】バスバー及びそれを備えた組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/526 20210101AFI20241107BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20241107BHJP
H01M 50/51 20210101ALI20241107BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20241107BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20241107BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20241107BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20241107BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M50/526
H01M50/505
H01M50/51
H01M50/503
H01M50/522
H01M50/516
H01G11/12
H01G11/76
(21)【出願番号】P 2022071277
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067762(JP,A)
【文献】特開2015-187910(JP,A)
【文献】特開2013-222621(JP,A)
【文献】特開2012-213789(JP,A)
【文献】特開2019-061740(JP,A)
【文献】特開2010-073336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部分
と、前記板状部分を厚み方向に貫通する窓部と、を有する第1金属部材と、
前記第1金属部材の前記板状部分に重ねられる板状部分を有する第2金属部材と、
前記第1金属部材の前記板状部分と前記第2金属部材の前記板状部分とを塑性変形させることによってかしめ接合してなる、
複数のかしめ接合部と、
前記第1金属部材の前記板状部分と前記第2金属部材の前記板状部分とを金属接合してなる、
複数の金属接合部と、
を備え
、
複数の前記かしめ接合部および複数の前記金属接合部は、それぞれ、前記第1金属部材の前記窓部の外側に設けられている、バスバー。
【請求項2】
前記かしめ接合部は、環状の塑性変形部を有し、
平面視において、前記金属接合部は、環状の前記塑性変形部の内側に設けられている、請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記第1金属部材の前記板状部分は矩形状であり、少なくとも前記矩形状の長辺方向の両端部に、前記かしめ接合部および前記金属接合部がそれぞれ設けられている、
請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項4】
前記金属接合部は、断面視において、櫛歯状に設けられた複数の溶融凝固部を有する、
請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項5】
前記第1金属部材と前記第2金属部材とは、異種金属から構成されている、
請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項6】
前記第1金属部材はアルミニウムを主体として構成され、前記第2金属部材は銅を主体として構成されている、
請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項7】
前記第2金属部材は、表面にニッケルメッキもしくはレーザ粗化が施されている、
請求項6に記載のバスバー。
【請求項8】
複数の電池間を電気的に接続するために用いられる、
請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項9】
複数の前記かしめ接合部および複数の前記金属接合部は、それぞれ、前記第1金属部材の前記窓部を少なくとも一方向から挟み込むように設けられている、
請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項10】
正極と負極とを有する少なくとも2つの電池と、
一方の前記電池の前記正極と、他方の前記電池の前記負極とを、電気的に接続するバスバーと、を備え、
前記バスバーが、
板状部分
と、前記板状部分を厚み方向に貫通する窓部と、を有する第1金属部材と、
前記第1金属部材の前記板状部分に重ねられる板状部分を有する第2金属部材と、
前記第1金属部材の前記板状部分と前記第2金属部材の前記板状部分とを塑性変形させることによってかしめ接合してなる、かしめ接合部と、
前記第1金属部材の前記板状部分と前記第2金属部材の前記板状部分とを金属接合してなる、金属接合部と、
を備え
、
前記かしめ接合部および前記金属接合部は、それぞれ、前記第1金属部材の前記窓部の外側に設けられている、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー及びそれを備えた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両駆動用電源等の用途では、高出力化のために複数の電池(単電池)を電気的に接続してなる組電池が広く利用されている。組電池では、複数の電池の電極端子がバスバーを介して電気的に接続されている。これに関連する技術として、例えば特許文献1には、銅とアルミニウムをレーザで異種金属接合して金属溶融部を形成した異種金属接合体(バスバー)が記載されている。また、特許文献2には、自動車用ワイヤーハーネス等を分岐接続するための電気接続箱に収容するバスバーにタブ端子をリベットかしめし、リベットかしめとは別の位置でさらにレーザ溶接することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-211981号公報
【文献】特開平11-297373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1の技術では、異種金属接合によって脆性の金属間化合物が多く形成される。これにより、電池の使用時に外部から振動や衝撃等の外力が加わった際に、金属溶融部が破壊される虞がある。その結果、導通接続が不安定になったり、接続不良となったりすることがあり得る。また、特許文献2の技術を組電池に適用しようとすると、リベットによる重量や体積の増加で組電池のエネルギー密度が低下することが課題となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、導通信頼性に優れ、かつ組電池のエネルギー密度の低下を抑えられるバスバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材と、上記第1金属部材の上記板状部分と上記第2金属部材の上記板状部分とを塑性変形させることによってかしめ接合してなる、かしめ接合部と、上記第1金属部材の上記板状部分と上記第2金属部材の上記板状部分とを金属接合してなる、金属接合部と、を備える、バスバーが提供される。
【0007】
上記バスバーは、連結方法の異なる2種類の接合部、すなわち、かしめ接合部と金属接合部とを備えている。このような構成により、外部から振動や衝撃等が加わっても、第1金属部材と第2金属部材とが密接した状態を維持しやすくなる。そのため、第1金属部材と第2金属部材との導通接続を安定して保つことができ、導通信頼性の高いバスバーを実現できる。また、リベットが不要となり、組電池のエネルギー密度の低下を抑制できる。
【0008】
ここに開示されるバスバーの好適な一態様において、上記かしめ接合部は、環状の塑性変形部を有し、平面視において、上記金属接合部は、環状の上記塑性変形部の内側に設けられている。金属接合部は、かしめ接合部に比べて相対的に剛性が低い(脆い)接合部であり得る。このような金属接合部を塑性変形部の内側に配することで、接合部を安定して維持し、長期にわたって導通信頼性を高めることができる。
【0009】
ここに開示されるバスバーの好適な一態様において、上記第1金属部材の上記板状部分は矩形状であり、少なくとも上記矩形状の長辺方向の両端部に、上記かしめ接合部および上記金属接合部がそれぞれ設けられている。これにより、第1金属部材と第2金属部材との接合強度を高めて、導通信頼性を向上できる。また、金属接合部の形成時(例えば、溶接接合時)に発生し得るガスや熱を逃がしやすくなり、接合不良(例えば、溶接不良)の発生を抑制できる。
【0010】
ここに開示されるバスバーの好適な一態様において、上記金属接合部は、断面視において、櫛歯状に設けられた複数の溶融凝固部を有する。これにより、第1金属部材と第2金属部材とが異種金属で構成されていても、金属間化合物の生成を抑制することができる。また、アンカー効果が発揮されて、強固な金属接合部を実現できる。
【0011】
ここに開示されるバスバーの好適な一態様において、上記第1金属部材と上記第2金属部材とは、異種金属から構成されている。例えば、上記第1金属部材はアルミニウムを主体として構成され、上記第2金属部材は銅を主体として構成されている。
【0012】
ここに開示されるバスバーの好適な一態様において、上記第2金属部材は、表面にニッケルメッキもしくはレーザ粗化が施されている。これにより、金属接合部を溶接接合で形成する際に、溶接性を向上できる。
【0013】
ここに開示されるバスバーは、複数の二次電池間を電気的に接続するために好適に用いられる。これにより、高エネルギー密度で信頼性にも優れた組電池を実現できる。
【0014】
また、本発明により、正極と負極とを有する少なくとも2つの電池と、一方の上記電池の上記正極と、他方の上記電池の上記負極とを、電気的に接続する上記バスバーと、を備える組電池が提供される。これにより、電池特性や信頼性に優れた組電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る組電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のバスバーを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1のバスバーを模式的に示す平面図である。
【
図4】
図1のバスバーの要部を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない組電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
<組電池100>
図1は、組電池100の斜視図である。組電池100は、複数の電池10と、複数の電池10を相互に電気的に接続する複数のバスバー20と、を備えている。バスバー20は、導電性の連結部材である。組電池100に用いられるバスバー20の個数は、典型的には(電池の個数-1)個である。
【0018】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、以下の図面において、符号U、D、F、Rr、L、Rは、それぞれ上、下、前、後、左、右を表し、符号Yは電池10の配列方向、符号Xは符号Yと直交し電池10の長辺に沿う延伸方向、符号Zは電池10の高さ方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、組電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0019】
複数の電池10は、いずれも扁平な角型であり、ここでは同一形状を有している。複数の電池10は、一対の平坦な側面(幅広面)が相互に対向するように、配列方向Yに沿って一列に並んでいる。なお、複数の電池10は、拘束バンド等の拘束機構によって一体的に保持されていてもよい。複数の電池10は、バスバー20によってここでは直列に電気接続されている。ただし、組電池100を構成する電池10の形状やサイズ、個数、配置、接続方法等は特に限定されず、適宜変更することができる。また、複数の電池10の間には、例えば、電池10で発生する熱を効率よく放散させるための放熱部材や、長さ調整手段としてのスペーサ等が配置されていてもよい。
【0020】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0021】
電池10は、筐体となる電池ケース11に発電要素(図示せず)が収容されて構成されている。電池10の構成については従来と同様でよく、特に限定されない。電池10は、典型的には二次電池、ここではリチウムイオン二次電池である。電池ケース11は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)に形成されている。ただし、他の実施形態において、電池ケース11は、円柱等の任意の形状であってよい。電池ケース11は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の軽量で熱伝導性の良い金属材料で構成されている。
【0022】
発電要素は、典型的には正極と負極と電解質とを有している。図示は省略するが、正極は、正極集電体と、正極集電体上に固着された正極合剤層と、を有する。正極集電体は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極合剤層は、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な正極活物質(例えば、リチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。負極は、負極集電体と、負極集電体上に固着された負極合剤層と、を有する。負極集電体は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極合剤層は、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。電解質は、例えば、非水溶媒とリチウム塩等の支持塩とを含む非水電解液である。ただし、電解質は固体状(固体電解質)で、正極及び負極と一体化されていてもよい。
【0023】
電池10の上面10uには、正極端子12と負極端子14が付設されている。正極端子12と負極端子14は、延伸方向X(
図1の左右方向)において、電池10の左右の端部に配置されている。正極端子12は、電池ケース内の正極と電気的に接続されている。正極端子12は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。正極端子12は、正極集電体と同じ金属種からなっていてもよい。負極端子14は、電池ケース内の負極と電気的に接続されている。負極端子14は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。負極端子14は、負極集電体と同じ金属種からなっていてもよい。電池10は、正極端子12と負極端子14を介して充放電される。
【0024】
本実施形態では、正極端子12および負極端子14は、それぞれ、上端が矩形な平板形状に形成されている。正極端子12および負極端子14は、それぞれ、電池10の上面10uと平行な平坦面を有している。また、本実施形態では、正極端子12と負極端子14は、それぞれ、延伸方向Xの幅が配列方向Yの幅よりも長い。ただし、正極端子12および負極端子14の形状やサイズ、配置等は特に限定されず、適宜変更することができる。配列方向Yに隣り合う電池10の正極端子12と負極端子14は、それぞれバスバー20で交互に接続されている。
【0025】
バスバー20は、複数の電池10間を電気的に接続するために用いられる金属部材である。バスバー20は、ここでは、配列方向Yに隣り合う第1の電池10の正極端子12と、第2の電池10の負極端子14とを、電気的に接続している。バスバー20は、ここでは、正極端子12および負極端子14の上記平坦面を覆うように配置されている。なお、バスバー20は、例えばレーザ溶接等の従来公知の接合方法によって、正極端子12および負極端子14の上記平坦面と接合することができる。正極端子12および負極端子14の上記平坦面とバスバー20とが接続される部分には、図示しない溶接接合部が形成されている。これにより、バスバー20は、正極端子12および負極端子14と一体化されている。
【0026】
図2は、バスバー20の斜視図であり、
図3は、バスバー20の平面図である。また、
図4は、バスバー20の要部の縦断面図である。
図2、
図3に示すように、バスバー20は、ここでは、第1金属部材21と、第2金属部材22と、複数のかしめ接合部23と、複数の金属接合部24とを備えている。第1金属部材21と第2金属部材22は、かしめ接合部23と金属接合部24とを介して一体化され、相互に電気的に接続されている。
【0027】
第1金属部材21は、電池10の正極端子12と導通接続される部材である。第1金属部材21は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。第1金属部材21は、アルミニウムを主体として構成されていることが好ましい。第1金属部材21は、ここではアルミニウム製である。第1金属部材21は、正極端子12と同じ金属種、または同じ金属元素を第1成分(質量比で最も配合割合の高い成分。以下同じ。)とする合金であってもよい。第1金属部材21は、例えば一枚の金属板をプレス加工で屈曲させることにより形成されている。
【0028】
第1金属部材21は、正極端子12と接続される第1接続部21aと、平板状の第2金属部材22と接続される第2接続部21bと、第1接続部21aおよび第2接続部21bを連結する連結部21cと、を有している。連結部21cは、配列方向Yに沿って延びている。連結部21cは、ここでは平板状である。ただし、他の実施形態において、連結部21cは、U字状等に屈曲した部分を有していてもよい。第1接続部21aおよび第2接続部21bは、連結部21cの配列方向Yの両端部からそれぞれ延伸方向Xに延びている。
図3に示すように、第1接続部21aおよび第2接続部21bは、L字状である。
【0029】
第1接続部21aは、正極端子12の上記平坦面に沿う板状部分21a1と、板状部分21a1から連結部21cに延びる延伸部21a2と、を有している。板状部分21a1は、正極端子12と当接する部分である。板状部分21a1の外形は、ここでは略矩形状である。平面視において、板状部分21a1の外形は、正極端子12の上記平坦面の外形と略同じであるか、それよりも小さいとよい。板状部分21a1は、概ね0.01~5mm、例えば0.1~1mm程度の厚みを有する。ただし、板状部分21a1の形状やサイズ、厚みは特に限定されず、適宜変更することができる。
【0030】
板状部分21a1は、高さ方向Zに貫通する貫通孔21hを有している。貫通孔21hは、板状部分21a1の中央部に設けられている。貫通孔21hは、ここでは平面視において略四角形状(例えば略矩形状)に形成されている。貫通孔21hは、正極端子12の上記平坦面に板状部分21a1を溶接接合する位置を示す目安となる。また、溶接接合の際に発生するガスや熱の逃げ道としても機能し得る。
【0031】
第2接続部21bは、平板状の第2金属部材22に沿う板状部分21b1と、板状部分21b1から連結部21cに延びる延伸部21b2と、を有している。板状部分21b1の外形は、ここでは略矩形状である。板状部分21b1の外形は、板状部分21a1と同様であってもよい。平面視において、板状部分21b1の外形は、第2金属部材22の外形と略同じであるか、それよりも小さいとよい。板状部分21b1は、概ね0.01~5mm、例えば0.1~1mm程度の厚みを有する。ただし、板状部分21b1の形状やサイズ、厚みは特に限定されず、適宜変更することができる。
【0032】
板状部分21b1は、高さ方向Zに貫通する窓部21wを有している。窓部21wは、板状部分21b1の中央部に設けられている。延伸方向Xにおいて、窓部21wは、複数のかしめ接合部23の間に位置している。窓部21wは、ここでは平面視において略四角形状(例えば略矩形状)に形成されている。平面視において、窓部21wからは、第2金属部材22が露出している。
【0033】
第2金属部材22は、電池10の負極端子14と導通接続される部材である。第2金属部材22は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。第2金属部材22は、例えば第1成分が、第1金属部材21と同じ金属種であってもよいし、異なる金属種であってもよい。第2金属部材22は、ここでは第1金属部材21と異なる金属で構成されている。第2金属部材22は、銅を主体として構成されていることが好ましい。第2金属部材22は、ここでは銅製である。第2金属部材22は、負極端子14と同じ金属種、または同じ金属元素を第1成分とする合金であってもよい。第2金属部材22は、表面にNi等の金属が被覆された金属被覆部を備えていてもよい。第2金属部材22は、表面にレーザ粗化が施されていてもよい。第2金属部材22は、表面にニッケルメッキもしくはレーザ粗化が施されていることが好ましい。これにより、金属接合部24を溶接接合で形成する際に溶接性を向上できる。
【0034】
第2金属部材22は、ここでは平板状である。第2金属部材22は、ここでは板状部分からなっている。第2金属部材22は、一方の面(
図2の上面)が、第1金属部材21の第2接続部21bと当接し、反対の面(
図2の下面)が負極端子14と当接する。第2金属部材22の外形は、ここでは略矩形状である。平面視において、第2金属部材22の外形は、負極端子14の上記平坦面の外形と略同じであるか、それよりも小さいとよい。第2金属部材22は、概ね0.01~5mm、例えば0.1~1mm程度の厚みを有する。ただし、第2金属部材22の形状やサイズ、厚みは特に限定されず、適宜変更することができる。
【0035】
第2金属部材22は、高さ方向Zに貫通する貫通孔22hを有している。貫通孔22hは、第2金属部材22の中央部に設けられている。貫通孔22hは、ここでは平面視において略四角形状(例えば略矩形状)に形成されている。貫通孔22hは、第1金属部材21の貫通孔21hと略同じ大きさである。貫通孔22hは、負極端子14の上記平坦面に第2金属部材22を溶接接合する位置を示す目安となる。また、溶接接合の際に発生するガスや熱の逃げ道としても機能し得る。
【0036】
かしめ接合部23は、
図4に示すように、第1金属部材21の板状部分21b1と平板状の第2金属部材22とを塑性変形させることによってかしめ接合してなる接合部である。これにより、例えば第1金属部材21と第2金属部材22とが異種金属で構成されていても、リベットを使用することなく、第1金属部材21と第2金属部材22とを好適に接合することができる。また、バスバー20の抵抗を低減できる。
図3、
図4からわかるように、かしめ接合部23の外形は、ここでは略円柱状である。
図3に示すように、平面視において、かしめ接合部23は略円形状である。ただし、他の形状、例えば、略四角形状、楕円柱状、円や楕円が2つつながった瓢箪様形状等であってもよい。なお、本明細書において「略四角形状」とは、完全な四角形状(例えば矩形状や正方形状)に加えて、例えば、角部がR状になっている形状等をも包含する用語である。
【0037】
かしめ接合部23は、ここでは複数(具体的には2つ)である。ただし、他の実施形態において1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。延伸方向Xにおいて、2つのかしめ接合部23は、ここでは第1金属部材21の板状部分21b1の両端部にそれぞれ設けられている。延伸方向Xは、「矩形状の長辺方向」の一例である。これにより、第1金属部材21と第2金属部材22との接合強度を高めて、導通信頼性を向上できる。他の実施形態において、第1金属部材21の板状部分21b1の4隅に設けられていてもよい。2つのかしめ接合部23は、平面視において窓部21wの外側に設けられている。2つのかしめ接合部23は、延伸方向Xにおいて、窓部21wを挟み込むように設けられている。
図3、
図4に示すように、かしめ接合部23は、平面視で環状(例えば略円環状)の塑性変形部23aを有する。これにより、かしめ接合部23の強度を高められる。
【0038】
金属接合部24は、第1金属部材21の板状部分21b1と平板状の第2金属部材22とを金属接合してなる接合部である。金属接合部24は、かしめ接合部23に比べて、相対的に剛性が高い接合部であり得る。金属接合部24は、溶接によって形成された溶接接合部であることが好ましい。
図4に示すように、金属接合部24は、ここではかしめ接合部23の内側(詳しくは、円環状の塑性変形部23aの内側)に設けられている。具体的には、円環状の塑性変形部23aの中心部に設けられている。これにより、金属接合部24を安定して維持し、長期にわたって導通信頼性を高めることができる。
【0039】
図3に示すように、金属接合部24は、ここでは2つのかしめ接合部23の内側にそれぞれ設けられている。金属接合部24は、かしめ接合部23と同数である。金属接合部24は、複数(具体的には2つ)である。ただし、他の実施形態において、かしめ接合部23と同数でなくてもよい、1つであってもよいし、3つ以上であってもよいし。また、金属接合部24は、かしめ接合部23から離れた位置に設けられていてもよい。延伸方向Xにおいて、2つの金属接合部24は、ここでは第1金属部材21の板状部分21b1の両端部に設けられている。これにより、金属接合部24の形成時(例えば、溶接接合時)に発生し得るガスや熱を逃がしやすくなり、接合不良(例えば、溶接不良)の発生を抑制できる。他の実施形態において、第1金属部材21の板状部分21b1の4隅に設けられていてもよい。2つの金属接合部24は、平面視において窓部21wの外側に設けられている。2つの金属接合部24は、延伸方向Xにおいて、窓部21wを挟み込むように設けられている。
【0040】
図4に示すように、金属接合部24は、断面視において、複数の溶融凝固部24aを有する。複数の溶融凝固部24aは、櫛歯状に設けられている。これにより、第1金属部材21と第2金属部材22とが異種金属で構成されていても、金属間化合物の生成を抑制することができる。また、アンカー効果が発揮されて、強固な金属接合部24を実現できる。複数の溶融凝固部24aは、それぞれ、溶融凝固部24aは、第1金属部材21から第2金属部材22に向かって(
図4の下方に向かって)逆三角形状に形成されている。断面視において、溶融凝固部24aは、第1金属部材21の表面21u(
図4の上面)における幅が、第1金属部材21の反対側の面21d(
図4の下面、第2金属部材22と接する方の面)の幅よりも大きい。特に限定されるものではないが、溶融凝固部24aの深さ(高さ方向Zの長さ)は、第1金属部材21の板状部分21b1の厚みよりも大きく、概ね10~1000μm、例えば50~500μm、100~300μm程度であり得る。溶融凝固部24aの平面視における径(スポット径)は、概ね5~200μm、例えば10~100μm程度であり得る。なお、ここでは1つの溶融凝固部24aの深さが約150μm、スポット径が約30μmである。
【0041】
<バスバー20の製造方法>
特に限定されるものではないが、バスバー20は、例えば、上記したような第1金属部材21と第2金属部材22とを用意し、かしめ工程と、金属接合工程とを、典型的にはこの順序で含む製造方法によって製造することができる。ただし、かしめ工程と金属接合工程との順序は逆であってもよい。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0042】
かしめ工程では、第1金属部材21の板状部分21b1と平板状の第2金属部材22とを塑性変形させて、かしめ接合部23を形成する。かしめ接合部23は、例えば、従来公知のTOX(商標)かしめによって好適に行うことができる。TOX(商標)かしめでは、市販のツール(ポンチとダイ)で第1金属部材21と第2金属部材22とを挟み込んで圧縮することによって、円環状の塑性変形部23aを形成できる。このため、熱を使用することなく、冷間成形で第1金属部材21と第2金属部材22とを好適に接合することができる。また、第1金属部材21と第2金属部材22とが異種金属で構成されていても、好適に接合することができる。さらに、TOX(商標)かしめによれば、第2金属部材22の表面に施されたニッケルメッキが剥がれにくく、組電池の製造時に第2金属部材22を安定してバスバー20と溶接できる。
【0043】
特に限定されるものではないが、塑性変形部23aの内径(ポンチ径)は、1.0~4.0mmとすることが好ましく、塑性変形部23aの外径(ダイ径)は、1.5~5.0mmとすることが好ましく、かしめ圧は、500~2500Nとすることが好ましい。これにより、接合強度の高いかしめ接合部23を安定して形成できる。
【0044】
金属接合工程では、第1金属部材21の板状部分21b1と平板状の第2金属部材22とを金属接合、すなわち冶金的に接合して、金属接合部24を形成する。かしめ工程の後に金属接合工程を行うことで、形状の安定した金属接合部24を精度よく形成することができる。金属接合部24は、光エネルギー、電子エネルギー、熱エネルギー等を用いて、従来公知の方法で形成できる。金属接合部24は、例えば、溶接、融接、圧接、熱圧着、ろう接等の方法で形成できる。なかでも、レーザ溶接、超音波溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接等の溶接が好ましい。これにより、高強度かつ低抵抗の金属接合部24を安定して形成することができる。
【0045】
金属接合部24は、例えば、第1金属部材21の板状部分21b1と平板状の第2金属部材22とが積層された個所にレーザを照射して、レーザ光が第1金属部材21を貫通するように溶接することによって形成できる。金属接合部24は、ここでは、かしめ接合部23の円環状の塑性変形部23aの内側、特には塑性変形部23aの中心部に形成される。これにより、接合箇所がずれにくくなり、作業性を向上することができる。また、溶接によって金属接合部24を形成する場合には、溶接性を向上することができる。
【0046】
金属接合部24は、連続的或いは間欠的に形成される。一例では、ナノパルスレーザを用いて、単発(スポット)で、幅が狭くかつ溶融深度の深い溶融凝固部24aを形成することが好ましい。レーザの照射条件については、従来公知の技術、例えば特開2020-203315号公報等を参考に、所望の溶融凝固部24aを形成するように適宜決定すればよい。特に限定されるものではないが、ナノパルスレーザを用いる場合、レーザ出力は、5~13kWとすることが好ましく、レーザのスポット径は、20~400μmとすることが好ましく、パルスの照射時間は、1~1000psecとすることが好ましく、レーザの周波数は、10~250kHzとすることが好ましく、波長は100~2000nm(例えば1060nm)とすることが好ましい。このような単発のレーザを複数回(2回以上、例えば2~10回)照射することで、上記したようなサイズおよび/または形状で複数の溶融凝固部24aを形成し、櫛歯状の金属接合部24を形成することができる。
【0047】
<組電池100の製造方法>
組電池100は、例えば、上記したような複数の電池10と、バスバー20と、を用意し、一方の電池10の正極端子12と、他方の電池10の負極端子14とを、バスバー20を介して電気的に接続することで作製できる。詳しくは、まず一方の電池10の正極端子12の平坦面の上に、バスバー20の板状部分21a1を載置し、貫通孔21hで位置合わせをしたら、バスバー20の板状部分21a1と正極端子12とをレーザ溶接する。同様に、他方の電池10の負極端子14の平坦面の上に、バスバー20の板状部分21b1および第2金属部材22を載置し、貫通孔22hで位置合わせをしたら、板状部分21b1に開けられた窓部21wから露出している第2金属部材22と負極端子14とをレーザ溶接する。第2金属部材22と負極端子14とをレーザ溶接する場合、レーザの波長は、540nm以下とするとよい。これにより、溶接性を向上できる。
【0048】
<組電池100の用途>
組電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0050】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材と、上記第1金属部材の上記板状部分と上記第2金属部材の上記板状部分とを塑性変形させることによってかしめ接合してなる、かしめ接合部と、上記第1金属部材の上記板状部分と上記第2金属部材の上記板状部分とを金属接合してなる、金属接合部と、を備える、バスバー。
項2:上記かしめ接合部は、環状の塑性変形部を有し、平面視において、上記金属接合部は、環状の上記塑性変形部の内側に設けられている、項1に記載のバスバー。
項3:上記第1金属部材の上記板状部分は矩形状であり、少なくとも上記矩形状の長辺方向の両端部に、上記かしめ接合部および上記金属接合部がそれぞれ設けられている、項1または項2に記載のバスバー。
項4:上記金属接合部は、断面視において、櫛歯状に設けられた複数の溶融凝固部を有する、項1~項3のいずれか一つに記載のバスバー。
項5:上記第1金属部材と上記第2金属部材とは、異種金属から構成されている、項1~項4のいずれか一つに記載のバスバー。
項6:上記第1金属部材はアルミニウムを主体として構成され、上記第2金属部材は銅を主体として構成されている、項1~項5のいずれか一つに記載のバスバー。
項7:上記第2金属部材は、表面にニッケルメッキもしくはレーザ粗化が施されている、項6に記載のバスバー。
【符号の説明】
【0051】
10 電池
12 正極端子
14 負極端子
20 バスバー
21 第1金属部材
21a 第1接続部
21a1 板状部分
21a2 延伸部
21b 第2接続部
21b1 板状部分
21b2 延伸部
21c 連結部
21h 貫通孔
21w 窓部
22 第2金属部材
22h 貫通孔
23 かしめ接合部
23a 塑性変形部
24 金属接合部
24a 溶融凝固部
100 組電池