(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】医療用シャフト、医療デバイスおよび医療用シャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A61M25/00 632
(21)【出願番号】P 2022503161
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002263
(87)【国際公開番号】W WO2021171849
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020030645
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】向井 雄起
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527258(JP,A)
【文献】特開2008-125897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0267408(US,A1)
【文献】特表2017-522076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在する少なくとも一つのルーメンを備えるシャフトと、
前記ルーメン内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材と、
前記芯部材と同じルーメン内に配置されており、かつ前記芯部材の外側に配置されており、長手方向における長さが前記芯部材の長さよりも短い筒部材と、を有し、
前記ルーメンにおいて、前記筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面での前記ルーメンの断面積は、前記筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面での前記ルーメンの断面積よりも大き
く、
前記筒部材が存在していない部分において、前記芯部材の最大外径は、前記芯部材が配置されている前記ルーメンの最小内径よりも小さい医療用シャフト。
【請求項2】
前記芯部材を構成する材料は、金属であり、
前記筒部材を構成する材料は、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物である請求項1に記載の医療用シャフト。
【請求項3】
前記筒部材が配置されている部分の前記シャフトの外径は、前記筒部材の遠位端よりも遠位側における前記シャフトの外径よりも大きく、かつ前記筒部材の近位端よりも近位側における前記シャフトの外径よりも大きい請求項1または2に記載の医療用シャフト。
【請求項4】
前記筒部材が配置されている部分の前記シャフトの外径は、前記筒部材の遠位端よりも遠位側における前記シャフトの外径よりも小さく、かつ前記筒部材の近位端よりも近位側における前記シャフトの外径よりも小さい請求項1または2に記載の医療用シャフト。
【請求項5】
前記ルーメンにおいて、前記筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面での前記筒部材の断面の長軸の長さは、前記筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面での前記ルーメンの断面の長軸の長さよりも大きい請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用シャフト。
【請求項6】
前記筒部材は、前記ルーメン内の異なる位置に複数設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用シャフト。
【請求項7】
長手方向における前記筒部材の長さは、前記芯部材の長さの1/10以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用シャフト。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用シャフトを用いた医療デバイス。
【請求項9】
長手方向に延在する少なくとも一つのルーメンを備えるシャフトと、
前記ルーメン内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材と、
前記芯部材と同じルーメン内に配置されており、かつ前記シャフトと前記芯部材との間に配置されており、長手方向における長さが前記芯部材の長さよりも短い筒部材と、を有する医療用シャフトの製造方法であって、
前記筒部材が配置されていない前記芯部材を前記シャフトの前記ルーメン内に配置する工程と、
前記筒部材の内側に前記芯部材を配置する工程と、
前記筒部材を加熱する工程と、を有する医療用シャフトの製造方法。
【請求項10】
前記芯部材を前記シャフトの前記ルーメン内に配置する工程の前において、前記筒部材の外径は、前記ルーメンの内径よりも大きい請求項9に記載の医療用シャフトの製造方法。
【請求項11】
さらに、前記筒部材の内側に前記芯部材を配置する工程、および、前記筒部材が配置されている前記芯部材を前記シャフトの前記ルーメン内に配置する工程の後に、前記筒部材が存在している部分の前記シャフトの外方に、外側筒部材を配置する工程を有する請求項9または10に記載の医療用シャフトの製造方法。
【請求項12】
前記筒部材を加熱する工程は、前記筒部材が配置されている部分の前記シャフトを加熱する工程である請求項9~11のいずれか一項に記載の医療用シャフトの製造方法。
【請求項13】
さらに、前記筒部材を加熱する工程の後に、前記シャフトを50℃以上の温度にて2時間以上加熱する工程を有する請求項9~12のいずれか一項に記載の医療用シャフトの製造方法。
【請求項14】
さらに、前記シャフトの外側と前記ルーメンとが連通している開口を形成する工程を有する請求項9~13のいずれか一項に記載の医療用シャフトの製造方法。
【請求項15】
前記開口を形成する工程において、前記シャフトの外表面を切り込み、一方の端部が自由端であって他方の端部が前記シャフトと一体であるフラップを形成する請求項14に記載の医療用シャフトの製造方法。
【請求項16】
さらに、前記筒部材の内側に前記芯部材を配置する工程の前に、前記芯部材を前記シャフトの前記ルーメン内に配置する工程を有し、
前記芯部材を前記シャフトの前記ルーメン内に配置する工程の後に、前記開口を形成する工程を行い、
前記開口を形成する工程において、前記ルーメンに前記芯部材が配置された状態にて、前記シャフトの外表面を切り込む請求項14または15に記載の医療用シャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーメン内に芯部材が配置されている医療用シャフト、医療用シャフトを含む医療デバイス、および医療用シャフトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、血管や消化管等の体内の管腔部に挿入するためのシャフトを有している。体内の細い管腔部に挿入されるカテーテルは、外径が小さいほうが好ましい。また、複雑な管腔の深部にカテーテルを挿入するためには、カテーテルは柔軟であることが好ましい。一方で、カテーテルを管腔内へ挿入する際は、体外にあるカテーテルの手元側からカテーテルを押したり回転させたりして操作するので、その操作により発生する力をカテーテルの先端まで伝えるために、カテーテルには一定の硬さが必要である。このようなカテーテルは、シャフトに剛性を付与するために、ルーメンに芯部材を配置しているものもある。
【0003】
カテーテルの操作によって、カテーテルのシャフトは、シャフトの長手方向への引っ張りの力もしくは圧縮の力を受ける。また、カテーテルを任意の場所に搬送する際には、カテーテルの姿勢や先端部の向かう方向を制御するために、シャフトに回転方向(捻り)の力も加わる。そのため、シャフトと芯部材等の各部材とを強固に固定する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、遠位側のディスタールシャフトと、近位側のプロキシマルシャフトと、基端側が前記プロキシマルシャフトの内周面に固定され、先端側部分が先端に向かって先細りに形成され且つシャフトルーメン内に位置しているコアワイヤと、コアワイヤに対する摺動抵抗がディスタールシャフトより大きく且つ内側シャフトより大きく、コアワイヤに当接するように先端側シャフト部材内に固定されている抵抗部材とを備え、抵抗部材は円筒状に形成され、内側シャフトに外装されて固定されてルーメンに狭窄部を形成し、コアワイヤは先端側部分が狭窄部に挿通しており、狭窄部より基端側に狭窄部の隙間より大径に形成されている係止部分を有しているカテーテルが記載されている。特許文献2には、線状のコアワイヤが固定されて用いられる管状の医療用シャフトであって、先端縁から基端側に向かって螺旋状のスリットが形成された先端部と、先端縁の一部においてスリットを避けて医療用シャフトの全周のうちの50%以下の部分を占めるように形成されたノッチと、ノッチと向かい合う内壁にコアワイヤを固定するために用いられる固定領域とを有することを特徴とする医療用シャフトが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-036732号公報
【文献】特開2013-233202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のカテーテルやカテーテルの製造方法は、芯部材等をシャフトに固定するにあたり、芯部材の外周とシャフトとの間に接着剤を充填しにくく、芯部材の外周の全体とシャフトとを十分に接合することが困難であり、芯部材とシャフトとの接合強度を十分に高めることが難しいという問題があった。そこで、特許文献1および2のように、シャフトと芯部材とを係合して接合するカテーテルや、シャフトと芯部材との接合状況を確認できるカテーテルが構成されてきた。しかし、特許文献1および2のようなカテーテルでは、芯部材とシャフトの接合における工程の数が多く、さらに、接合用の他部材の内径および外径や芯部材の外径、シャフトのルーメンの内径等、各部材の大きさについての制約が多く、カテーテルの用途等に応じた寸法とすることが困難であるという問題もあった。
【0007】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、芯部材とシャフトとの接合強度が高い医療用シャフト、医療用シャフトを含む医療デバイス、および芯部材とシャフトとの強固な接合が容易である医療用シャフトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた医療用シャフトは、長手方向に延在する少なくとも一つのルーメンを備えるシャフトと、ルーメン内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材と、芯部材と同じルーメン内に配置されており、かつ芯部材の外側に配置されており、長手方向における長さが芯部材の長さよりも短い筒部材と、を有し、ルーメンにおいて、筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積は、筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積よりも大きいことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の医療用シャフトにおいて、芯部材を構成する材料は、金属であり、筒部材を構成する材料は、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物であることが好ましい。
【0010】
本発明の医療用シャフトにおいて、筒部材が配置されている部分のシャフトの外径は、筒部材の遠位端よりも遠位側におけるシャフトの外径よりも大きく、かつ筒部材の近位端よりも近位側におけるシャフトの外径よりも大きいことが好ましい。
【0011】
本発明の医療用シャフトにおいて、筒部材が配置されている部分のシャフトの外径は、筒部材の遠位端よりも遠位側におけるシャフトの外径よりも小さく、かつ筒部材の近位端よりも近位側における前記シャフトの外径よりも小さいことも好ましい。
【0012】
本発明の医療用シャフトは、ルーメンにおいて、筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面での筒部材の断面の長軸の長さは、筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面の長軸の長さよりも大きいことが好ましい。
【0013】
本発明の医療用シャフトにおいて、筒部材は、ルーメン内の異なる位置に複数設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の医療用シャフトにおいて、長手方向における筒部材の長さは、芯部材の長さの1/10以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の医療デバイスは、上記の医療用シャフトを含むことが好ましい。
【0016】
前記課題を解決することができた医療用シャフトの製造方法は、長手方向に延在する少なくとも一つのルーメンを備えるシャフトと、ルーメン内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材と、芯部材と同じルーメン内に配置されており、かつシャフトと芯部材との間に配置されており、長手方向における長さが芯部材の長さよりも短い筒部材と、を有する医療用シャフトの製造方法であって、筒部材が配置されていない芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程と、筒部材の内側に芯部材を配置する工程と、筒部材を加熱する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程の前において、筒部材の外径は、ルーメンの内径よりも大きいことが好ましい。
【0018】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、さらに、筒部材の内側に芯部材を配置する工程、および、筒部材が配置されている芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程の後に、筒部材が存在している部分のシャフトの外方に、外側筒部材を配置する工程を有することが好ましい。
【0019】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、筒部材を加熱する工程は、筒部材が配置されている部分のシャフトを加熱する工程であることが好ましい。
【0020】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、さらに、筒部材を加熱する工程の後に、シャフトを50℃以上の温度にて2時間以上加熱する工程を有することが好ましい。
【0021】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、さらに、シャフトの外側とルーメンとが連通している開口を形成する工程を有することが好ましい。
【0022】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、開口を形成する工程において、シャフトの外表面を切り込み、一方の端部が自由端であって他方の端部がシャフトと一体であるフラップを形成することが好ましい。
【0023】
本発明の医療用シャフトの製造方法において、さらに、筒部材の内側に芯部材を配置する工程の前に、芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程を有し、芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程の後に、開口を形成する工程を行い、開口を形成する工程において、ルーメンに芯部材が配置された状態にて、シャフトの外表面を切り込むことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の医療用シャフトによれば、筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積が、筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積よりも大きいことにより、筒部材が存在している部分では筒部材の外表面がシャフトのルーメンの壁面に押し付けられた状態となる。そのため、筒部材がシャフトのルーメンの壁面に密着しやすくなり、筒部材を介して芯部材とシャフトとを強固に接合することが可能となる。また、本発明の医療用シャフトの製造方法によれば、筒部材の内側に芯部材を配置する工程と、芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程と、筒部材を加熱する工程と、を有することによって、筒部材を介して芯部材とシャフトとの強固な接合が行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施の形態における医療用シャフトの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図2】
図1に示した医療用シャフトのII-II断面図を表す。
【
図3】
図1に示した医療用シャフトのIII-III断面図を表す。
【
図4】本発明の別の実施の形態における医療用シャフトの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図5】本発明の一実施の形態における医療用シャフトの製造方法での、芯部材をシャフトのルーメン内に配置した状態の、医療用シャフトの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図6】本発明の一実施の形態における医療用シャフトの製造方法での、筒部材が存在している部分のシャフトの外方に外側筒部材を配置した状態の、医療用シャフトの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図7】本発明の一実施の形態における医療用シャフトの製造方法での、シャフトの外側とルーメンとが連通している開口を形成した状態の、医療用シャフトの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図8】本発明の一実施の形態における医療用シャフトの製造方法での、シャフトにフラップを形成した状態の、医療用シャフトの長手方向に沿った図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0027】
図1は本発明の一実施の形態における医療用シャフト1の長手方向に沿った断面図であり、
図2は
図1に示した医療用シャフト1のII-II断面図であり、
図3は
図1に示した医療用シャフト1のIII-III断面図である。
【0028】
図1~
図3に示すように、本発明の医療用シャフト1は、長手方向に延在する少なくとも一つのルーメン11を備えるシャフト10と、ルーメン11内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材20と、芯部材20の外側に配置されている筒部材30と、を有している。
【0029】
本発明において、近位側とはシャフト10の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、シャフト10の延在方向を長手方向と称する。長手方向は、シャフト10の遠近方向と言い換えることができる。径方向とはシャフト10の長手方向における断面形状の外接円の半径方向を指し、径方向内方とはシャフト10の断面形状の外接円の軸中心側に向かう方向を指し、径方向外方とは内方と反対側に向かう方向を指す。
【0030】
シャフト10は、長手方向に延在するルーメン11を少なくとも1つ有している。シャフト10が有しているルーメン11の数は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。シャフト10が複数のルーメン11を備えていることにより、内部に芯部材20を配置するルーメン11の他、例えば、ガイドワイヤの挿通路として用いるルーメン11や、造影剤または薬剤が注入されるルーメン11、シャフト10にバルーンが接続されている場合にはバルーンの拡張に使用する流体の流路として用いるルーメン11等を別途設けることが可能となる。そのため、機能的な医療用シャフト1とすることができる。医療用シャフト1は、種々の医療デバイスに用いることができる。医療デバイスとしては、カテーテル、内視鏡用デバイス、高周波デバイス、超音波デバイス等が挙げられる。
【0031】
シャフト10を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフト10を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。シャフト10を構成する材料がポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることにより、シャフト10の表面の滑り性を高め、血管への挿通性を向上させることができる。
【0032】
長手方向におけるシャフト10の断面形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。また、長手方向におけるルーメン11の断面形状も、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0033】
図1に示すように、芯部材20は、ルーメン11内に配置されており、シャフト10の長手方向に沿って延在している。シャフト10が芯部材20を有していることにより、芯部材20が配置されている部分のシャフト10の剛性を高めることができる。
【0034】
芯部材20を構成する材料は、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等の金属、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。
【0035】
芯部材20を構成する材料は、シャフト10を構成する材料よりも剛性が高いものであることが好ましい。芯部材20を構成する材料の剛性がシャフト10を構成する材料の剛性よりも高いことにより、芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置することによって、シャフト10の剛性が高まりやすくなる。
【0036】
芯部材20は、長手方向に延在する内腔を有する筒形状であってもよいが、内腔を有していない中実状であることが好ましい。芯部材20が中実状であることにより、芯部材20の外径を大きくすることなく芯部材20の剛性を高めることができる。そのため、ルーメン11内に芯部材20を配置することによって、シャフト10の剛性を十分に高めることができる。
【0037】
芯部材20は、単線であってもよく、単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。中でも、芯部材20は、単線であることが好ましい。芯部材20が単線であることにより、芯部材20の外表面の滑り性が向上し、芯部材20をルーメン11内に配置しやすくなる。
【0038】
長手方向における芯部材20の断面形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。中でも、長手方向における芯部材20の断面形状は、円形または楕円形であることが好ましい。芯部材20の断面形状が円形または楕円形であることにより、芯部材20をルーメン11内に配置するときに芯部材20がルーメン11の周壁を傷付けにくくすることができ、また、筒部材30を芯部材20の外側に配置するときに芯部材20が筒部材30の内表面を傷付けにくくすることができる。
【0039】
図1に示すように、筒部材30は、芯部材20と同じルーメン11内に配置されており、かつ芯部材20の外側に配置されている。筒部材30が芯部材20の外側に配置されていることにより、芯部材20の外表面、および、ルーメン11の周壁に筒部材30が接触し、筒部材30を介して芯部材20とルーメン11とを固定することができる。筒部材30は、シャフト10と芯部材20との間に配置されており、長手方向における長さが芯部材20の長さよりも短い。
【0040】
筒部材30を構成する材料は、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0041】
長手方向における筒部材30の断面形状は、C字状、ロール状とすることができる。断面形状がC字状とは、シャフト10の長手方向に延びるスリットが筒部材30にあり、断面形状が閉じた形状でない状態を示す。断面形状がロール状とは、筒部材30がシート状であり、シャフト10の長手方向に延びるシートの端部同士が接して芯部材20を包む状態を示す。また、長手方向における筒部材30の外形の断面形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0042】
長手方向における筒部材30の長さは、芯部材20の長さよりも短い。筒部材30の長さが芯部材20の長さよりも短いことにより、筒部材30を用いた芯部材20とシャフト10との固定を効率的に行うことができる。
【0043】
ルーメン11において、
図2に示すように、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積は、
図3に示すように、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積よりも大きい。なお、ルーメン11の断面積とは、長手方向に垂直な断面における、ルーメン11の周壁に囲まれた領域の面積を示す。筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積が、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積よりも大きいことにより、芯部材20の外側に配置されている筒部材30がルーメン11を押し広げるように、筒部材30の外表面がルーメン11の周壁に押し付けられた状態となる。そのため、筒部材30がシャフト10のルーメン11に密着し、筒部材30をシャフト10へ強固に接合することができる。即ち、筒部材30を介した芯部材20とシャフト10との接合を強固に行うことが可能である。
【0044】
筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積が、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積よりも大きくなるようにするには、例えば、
図1および
図2に示すように、筒部材30の外径をルーメン11の直径よりも大きくすることが挙げられる。筒部材30の外径をルーメン11の直径よりも大きくすることにより、ルーメン11内に筒部材30を配置した際に筒部材30の外表面がルーメン11の周壁に押し付けられ、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面積が、筒部材30が存在していない部分におけるルーメン11の断面積よりも大きくすることができる。
【0045】
図1に示すような、芯部材20が配置されているルーメン11とは異なるルーメン(以下、「空ルーメン」と称することがある)の形状は、芯部材20が配置されているルーメン11の、芯部材20に筒部材30が配置された部分に対応する部分であるか、筒部材30が配置されていない部分に対応する部分であるかどうかに関わらず、ルーメン11の断面が一定であることが好ましい。断面形状を一定にするために、製造過程において、空ルーメン内に空ルーメンを保護するための保護芯材を配置してもよい。保護芯材を空ルーメンに配置することで、空ルーメンの断面形状における長軸の長さを確保することができる。また、芯部材20とシャフト10とを接合するためにシャフト10を加熱する工程において、シャフト10が溶融もしくは軟化した際の応力の逃げを防ぎ、芯部材20へ筒部材30がより密着し、接合強度をより高めることができる。
【0046】
図1に示すように、芯部材20の最大外径は、芯部材20が配置されているルーメン11の最小内径よりも小さいことが好ましい。芯部材20の最大外径がルーメン11の最小内径よりも小さいことにより、芯部材20をルーメン11内に配置する際に芯部材20の移動が行いやすくなる。
【0047】
芯部材20を構成する材料は、金属であり、筒部材30を構成する材料は、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物であることが好ましい。芯部材20を構成する材料が金属であって、筒部材30を構成する材料がポリエチレンを主成分とする樹脂組成物であることにより、筒部材30によって芯部材20をシャフト10に固定しやすく、かつ、芯部材20が配置されている部分のシャフト10の剛性を十分に高めることが可能となる。
【0048】
中でも、芯部材20を構成する材料は、Ni-Ti合金またはステンレス鋼系金属であり、筒部材30を構成する材料は、高密度ポリエチレン樹脂であることがより好ましい。芯部材20を構成する材料がNi-Ti合金またはステンレス鋼系金属であって、筒部材30を構成する材料が高密度ポリエチレン樹脂であることにより、筒部材30を介して芯部材20とルーメン11とを接着しやすく、また、芯部材20とルーメン11との接着強度を高めることができる。
【0049】
図4は本発明の別の実施の形態における医療用シャフト1の長手方向に沿った断面図である。
図4に示すように、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1は、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも大きく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも大きいことが好ましい。筒部材30がルーメン11を押し広げることにより、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の厚みが薄くなってしまう場合がある。シャフト10の厚みが薄くなっている部分はシャフト10の強度が低下しているため、医療用シャフト1の製造時や使用時等に破損が生じるおそれがある。そのため、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1を、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも大きく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも大きくすることにより、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の厚みを増やして、強度を高めることが可能となる。
【0050】
筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1を、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも大きく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも大きくする方法としては、例えば、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外方に、シャフト10を構成する材料と同じ材料を含む筒状部材を配置して、熱溶着等によってシャフト10と筒状部材とを一体化させること等が挙げられる。
【0051】
筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1が、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2、および筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも大きい場合、外径D1は、外径D2および外径D3の1.1倍以下の大きさであることが好ましく、1.05倍以下の大きさであることがより好ましく、1.01倍以下の大きさであることがさらに好ましい。外径D1と、外径D2および外径D3との大きさの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1と、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2および筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3との間に大きな段差が生じにくくなり、管腔部に医療用シャフト1を挿通させる際にシャフト10が引っ掛かりにくく、挿通性の高い医療用シャフト1とすることができる。
【0052】
また、図示していないが、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1は、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも小さく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも小さいことも好ましい。筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1を、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも小さく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも小さくすることにより、筒部材30が配置されている部分のシャフト10が他物と接触しにくくなり、また、シャフト10の外表面に凸部が生じにくくなるため、医療用シャフト1の挿通性を高めることができる。
【0053】
筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1を、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも小さく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも小さくする方法としては、例えば、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外方に熱収縮チューブを配置し、熱収縮チューブを加熱して収縮させ、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径を小さくすること等が挙げられる。
【0054】
筒部材30が配置されている部分のシャフト10の外径D1が、筒部材30の遠位端30dよりも遠位側におけるシャフト10の外径D2よりも小さく、かつ筒部材30の近位端30pよりも近位側におけるシャフト10の外径D3よりも小さい場合、外径D2および外径D3の0.9倍以上の大きさであることが好ましく、0.95倍以上の大きさであることがより好ましく、0.97倍以上の大きさであることがさらに好ましい。外径D1と、外径D2および外径D3との大きさの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の強度を確保することができる。
【0055】
ルーメン11において、
図2に示すように、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面での筒部材30の断面の長軸の長さL1は、
図3に示すように、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面の長軸の長さL2よりも大きいことが好ましい。筒部材30が存在している部分では、筒部材30の外表面がシャフト10の周壁に押し付けられ、筒部材30がルーメン11を押し広げる。そのため、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面での筒部材30の断面の長軸の長さL1が、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面の長軸の長さL2よりも大きくなる。筒部材30が存在している部分における筒部材30の断面の長軸の長さL1が、筒部材30が存在していない部分におけるルーメン11の断面の長軸の長さL2よりも大きいことにより、筒部材30がルーメン11の周壁に密着した状態となる。そのため、シャフト10と筒部材30との接合強度を高めることが可能となる。
【0056】
なお、「筒部材30の断面の長軸」は、
図2に示すように、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面での、筒部材30の断面の中心P1と、筒部材30の断面の外形上の2点(P2、P3)を通る、長さが最大となる軸のことを指す。また、「ルーメン11の断面の長軸」は、
図3に示すように、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面での、ルーメン11の断面の中心P4と、ルーメン11の断面の周壁上の2点(P5、P6)を通る、長さが最大となる軸のことを指す。
【0057】
筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面での筒部材30の断面の長軸の長さL1は、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面の長軸の長さL2の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。筒部材30が存在している部分における筒部材30の断面の長軸の長さL1と、筒部材30が存在していない部分におけるルーメン11の断面の長軸の長さL2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、筒部材30をルーメン11の周壁に十分密着させることができる。その結果、筒部材30とシャフト10との接合を強固なものとすることができる。また、筒部材30が存在している部分における長手方向に垂直な面での筒部材30の断面の長軸の長さL1は、筒部材30が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメン11の断面の長軸の長さL2の1.5倍以下であることが好ましく、1.4倍以下であることがより好ましく、1.3倍以下であることがさらに好ましい。筒部材30が存在している部分における筒部材30の断面の長軸の長さL1と、筒部材30が存在していない部分におけるルーメン11の断面の長軸の長さL2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、筒部材30の断面の長軸の長さL1がルーメン11の断面の長軸の長さL2に対して大きくなりすぎることを防ぎ、ルーメン11内に筒部材30を配置しやすくなる。
【0058】
長手方向における筒部材30の長さは、芯部材20の長さの1/10以下であることが好ましい。筒部材30の長さが芯部材20の長さの1/10以下であることにより、芯部材20とシャフト10との接合において、筒部材30の長さが長くなりすぎず、芯部材20の外側やルーメン11の内側に筒部材30を配置しやすくすることができる。なお、長手方向における筒部材30の長さは、芯部材20の長さの1/10以下であることが好ましいが、筒部材30の長さが芯部材20の長さの1/10を超えている場合であっても、医療用シャフト1を作製することは可能であり、そのような態様も本発明の医療用シャフト1に含まれる。
【0059】
長手方向における筒部材30の長さは、芯部材20の長さの1/10以下であることが好ましく、1/11以下であることがより好ましく、1/12以下であることがさらに好ましい。筒部材30の長さと芯部材20の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、芯部材20の外方へ筒部材30を配置しやすくなって、医療用シャフト1の製造効率を向上させることが可能となる。また、長手方向における筒部材30の長さは、2mmから5mm程度が好ましい。筒部材30の長さが短いと、芯部材20の固定強度が小さくなる。また、筒部材30の長さが長いと、筒部材30が配置された部分が他の部分より硬くなる。芯部材20の長さや、必要な固定強度、部材の材料等により、長手方向における筒部材30の長さを選択することができる。
【0060】
筒部材30は、シャフト10のルーメン11内の異なる位置に複数設けられていてもよい。例えば、シャフト10の遠位側と近位側のように、ルーメン11内の合計2箇所に筒部材30を配置することによって芯部材20とシャフト10の全体を接合し、医療用シャフト1へ剛性を付与することができる。
【0061】
次に、本発明の医療用シャフト1の製造方法について説明する。なお、下記の説明において、上記の説明と重複する部分は説明を省略する。
【0062】
図5は芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置した状態の医療用シャフト1の長手方向に沿った断面図であり、
図6は筒部材30が存在している部分のシャフト10の外方に外側筒部材40を配置した状態の医療用シャフト1の長手方向に沿った断面図であり、
図7はシャフト10の外側とルーメン11とが連通している開口50を形成した状態の医療用シャフト1の長手方向に沿った断面図であり、
図8はシャフト10にフラップ51を形成した状態の医療用シャフト1の長手方向に沿った図である。
【0063】
医療用シャフト1の製造方法は、
図5に示すように、筒部材30が配置されていない芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程(以下、「芯部材工程」と称することがある)と、筒部材30の内側に芯部材20を配置する工程(以下、「筒部材工程」と称することがある)と、筒部材30を加熱する工程(以下、「加熱工程」と称することがある)と、を有する。筒部材30は、シャフト10と芯部材20との間に配置されており、長手方向における長さが芯部材20の長さよりも短い。
【0064】
筒部材工程は、芯部材工程の後に行うことが好ましい。つまり、芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程の後に、筒部材30の内側に芯部材20を配置する工程を有することが好ましい。芯部材工程の後に筒部材工程を行うことにより、ルーメン11に芯部材20を挿通しやすく、また、筒部材30をルーメン11の所望の位置に配置しやすくなる。その結果、医療用シャフト1の製造効率を高めることができる。なお、筒部材工程は、芯部材20の径方向外方に筒部材30を配置する工程であると言い換えることができる。筒部材工程は、例えば、筒部材30のルーメンに、芯部材20を挿入する工程である。筒部材工程により、シャフト10のルーメン11のうち、芯部材20が配置されているルーメン11と同じルーメン11内に筒部材30が配置することができる。その結果、芯部材20の周囲に筒部材30が配置されることとなる。
【0065】
加熱工程は、筒部材工程および芯部材工程の後に行うことが好ましい。つまり、筒部材30の内側に芯部材20を配置する工程、および、芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程の後に、筒部材30を加熱する工程を有することが好ましい。なお、加熱工程の前に、筒部材30が配置された芯部材20を、シャフト10のルーメン11内に配置することが必要である。筒部材工程および芯部材工程の後に加熱工程を行うことにより、加熱されて溶融した筒部材30がルーメン11の周壁と芯部材20の両方に接着される。そのため、筒部材30によってシャフト10と芯部材20とを効率的に接合することが可能となる。
【0066】
筒部材30を加熱する加熱工程は、筒部材30が配置されている部分のシャフト10を加熱する工程であってもよい。筒部材30が配置されている部分のシャフト10を加熱することにより、筒部材30まで熱が及び、溶融した筒部材30がルーメン11の周壁と芯部材20の両方に接着される。加熱工程では、シャフト10をシャフト10の融点以下、かつ筒部材30の融点以上の温度にて加熱することが好ましい。加熱工程を行う時間が短時間であれば、加熱温度がシャフト10の融点を超えてもよい。筒部材30が充分軟化するのであれば、加熱温度が筒部材30の融点以下の温度であってもよい。シャフト10および筒部材30の材料選択は、融点を基準に行うことができる。加熱時間は、シャフト10および筒部材30の材料と、加熱温度により適宜選択することができる。また、後述する外側筒部材40を構成する材料の融点が筒部材30の融点よりも高い温度であってもよい。外側筒部材40の溶融状態を見極めることによって筒部材30が溶融するのに十分な加熱が加えられたと判断でき、筒部材30によるシャフト10と芯部材20との接合の工程を安定化することができる。
【0067】
芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程の前において、筒部材30の外径は、ルーメン11の内径よりも大きいことが好ましい。芯部材工程の前では、筒部材30の外径がルーメン11の内径よりも大きいことにより、芯部材20と筒部材30をルーメン11内に配置した際に、筒部材30の外表面とルーメン11の周壁とが密着しやすくなる。そのため、筒部材30とシャフト10との接合強度を高めることができる。
【0068】
なお、長手方向に垂直な筒部材30の外形の断面形状が円形でない場合、「筒部材30の外径」は「筒部材30の断面形状の長軸の長さ」とする。また、長手方向に垂直なルーメン11の断面形状が円形でない場合、「ルーメン11の内径」は「ルーメン11の断面形状の長軸の長さ」とする。
【0069】
芯部材工程の前での筒部材30の外径は、ルーメン11の内径の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。芯部材工程の前での筒部材30の外径とルーメン11の内径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、筒部材30をルーメン11内に配置した際に、筒部材30の外表面がルーメン11の周壁に密着しやすくなる。また、芯部材工程の前での筒部材30の外径は、ルーメン11の内径の1.3倍以下であることが好ましく、1.25倍以下であることがより好ましく、1.2倍以下であることがさらに好ましい。芯部材工程の前での筒部材30の外径とルーメン11の内径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、ルーメン11内に筒部材30を配置しやすくなる。
【0070】
図6に示すように、筒部材30の内側に芯部材20を配置する工程、および、筒部材30が配置されている芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程の後に、筒部材30が存在している部分のシャフト10の外方に、外側筒部材40を配置する工程(以下、「外側筒部材工程」と称することがある)を有することが好ましい。前述の通り、筒部材30をルーメン11内に配置することによって、筒部材30がルーメン11を押し広げて、筒部材30が配置されている部分のシャフト10の厚みが薄くなり、このシャフト10の厚みが薄くなっている部分のシャフト10の強度が低下して破損が生じやすくなるということがある。筒部材工程および芯部材工程の後に外側筒部材工程を有していることにより、シャフト10の厚みが薄くなりやすい部分である、筒部材30が存在している部分のシャフト10の外方に外側筒部材40が存在することとなる。そのため、筒部材30が存在している部分のシャフト10の厚みが薄くなっても、この部分を外側筒部材40が保護して、シャフト10が破損することを防ぎ、医療用シャフト1の耐久性を高めることができる。
【0071】
空ルーメンに保護芯材を配置する工程(以下、「保護芯材工程」と称することがある)を有していてもよい。空ルーメンに保護芯材を配置することによって、空ルーメンの断面形状の長軸長さを確保することができる。また、シャフト10と芯部材20との接合のためにシャフト10を加熱したときに、シャフト10が溶融もしくは軟化した際の応力の逃げを防ぎ、芯部材20へ筒部材30がより密着して接合強度を高めることができる。
【0072】
外側筒部材40を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
中でも、外側筒部材40を構成する材料は、シャフト10を構成する材料と同一の材料であるか、またはシャフト10を構成する材料と同一の材料を含んでいることが好ましい。外側筒部材40を構成する材料がシャフト10を構成する材料と同一の材料であるか、または、同一の材料を含んでいることにより、シャフト10の外方に外側筒部材40を配置した後に外側筒部材40を加熱することによって外側筒部材40とシャフト10とが溶融して一体化し、外側筒部材40がシャフト10から外れることを防止して、筒部材30が存在している部分のシャフト10の厚みを増すことができる。
【0074】
長手方向における外側筒部材40の断面形状は、C字状、ロール状であってもよい。また、長手方向における外側筒部材40の外形の断面形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0075】
図6に示すように、長手方向における筒部材30の長さL3は、外側筒部材40の長さL4よりも短くてもよい。筒部材30の長さL3が外側筒部材40の長さL4よりも短いことにより、筒部材30がルーメン11内に配置されることによってシャフト10の厚みが薄くなった部分の全体を外側筒部材40が覆うことができる。そのため、シャフト10の厚みが薄くなった部分の全体を外側筒部材40によって保護することができ、医療用シャフト1の耐久性を高めることができる。長手方向における筒部材30の長さL3は、外側筒部材40の長さL4よりも長くてもよい。筒部材30の長さL3が外側筒部材40の長さL4よりも長いことにより、筒部材30を配置した箇所を補強することができる。また、後述するフラップ51をシャフト10へ設けた場合にフラップ51を開口50にかぶせておくためや、後述する開口50の形成時に取り除いたシャフト10の部分や、シャフト10と同じ材料を含む片材を開口50に配置する際に、筒部材30の長さL3が外側筒部材40の長さL4よりも長いことによって、外側筒部材40がフラップ51や片材の全体を開口50に対して押さえておくことができる。
【0076】
筒部材30の長さL3が外側筒部材40の長さL4よりも短い場合、長手方向における筒部材30の長さL3は、外側筒部材40の長さL4の0.9倍以下であることが好ましく、0.8倍以下であることがより好ましく、0.7倍以下であることがさらに好ましい。筒部材30の長さL3と外側筒部材40の長さL4との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、外側筒部材40が筒部材30の全体を覆いやすくなり、筒部材30がルーメン11内に配置されてシャフト10の厚みが薄くなった部分の全体を外側筒部材40にて保護しやすくなる。また、長手方向における筒部材30の長さL3は、外側筒部材40の長さL4の0.1倍以上であることが好ましく、0.2倍以上であることがより好ましく、0.3倍以上であることがさらに好ましい。筒部材30の長さL3と外側筒部材40の長さL4との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、外側筒部材40が長くなりすぎることを防いで外側筒部材工程が行いやすくなる。
【0077】
筒部材30の長さL3が外側筒部材40の長さL4よりも長い場合、長手方向における筒部材30の長さL3は、外側筒部材40の長さL4の1.1以上であってもよく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であってもよい。外側筒部材を筒部材30より長くし、筒部材30の長さL3と外側筒部材40の長さL4との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、外側筒部材40の溶融の様子が筒部材30の接合の程度を判断する指標となり、加熱工程を安定化して行いやすくすることができる。また、長手方向における筒部材30の長さL3は、外側筒部材40の長さL4の2.0倍以下であることが好ましく、1.9倍以下であることがより好ましく、1.8倍以下であることがさらに好ましい。筒部材30の長さL3と外側筒部材40の長さL4との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、外側筒部材40の長さが長くなりすぎることを防いで外側筒部材工程が行いやすくなる。
【0078】
図示していないが、加熱工程の前に、シャフト10の外方に熱収縮チューブを配置する工程(以下、「熱収縮チューブ工程」と称することがある)を有していてもよい。加熱工程において筒部材30が溶融した際に、溶融した筒部材30が流動してシャフト10の一部の外径が大きくなることがある。シャフト10の外方へ熱収縮チューブを配置することにより、加熱工程を行うことによって熱収縮チューブも加熱され、熱収縮チューブが縮径する。その結果、熱収縮チューブが配置されている部分のシャフト10の外径が大きくなることが妨げられ、外表面に凹凸が少ない医療用シャフト1を製造することができる。
【0079】
シャフト10の外方に熱収縮チューブを配置する工程の後に筒部材を加熱する工程を行い、筒部材を加熱する工程の後に熱収縮チューブを除去する工程(以下、「除去工程」と称することがある)を有することが好ましい。熱収縮チューブ工程の後に加熱工程を行い、さらにその後に除去工程を行うことにより、シャフト10の外径が筒部材30によって広げられることを防止するだけでなく、シャフト10の外方に熱収縮チューブが配置されていることによってシャフト10の外表面に凹凸が生じることや滑り性が低下することを防ぎ、医療用シャフト1の挿通性を向上させることが可能となる。
【0080】
筒部材30を加熱する工程の後に、シャフト10を50℃以上の温度にて2時間以上加熱する工程(以下、「後加熱処理工程」と称することがある)を有することが好ましい。加熱工程の後に後加熱処理工程を有していることにより、加熱工程において接合した筒部材30とシャフト10や、筒部材30と芯部材20の密着性を高めることや、外側筒部材40とシャフト10との密着性を高めることが可能となる。また、後加熱処理工程を有していることによって、医療用シャフト1の製造において生じたシャフト10の表面の凹凸を緩和することができ、医療用シャフト1の表面を滑らかにして挿通性を向上させることもできる。
【0081】
後加熱処理工程は、シャフト10を50℃以上の温度にて加熱することが好ましく、シャフト10の加熱温度は、50.5℃以上であることがより好ましく、51℃以上であることがさらに好ましい。後加熱処理工程におけるシャフト10の加熱温度の下限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10の加熱処理を効率的に行うことができる。また、後加熱処理工程におけるシャフト10の加熱温度は、58℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、53℃以下であることがさらに好ましい。後加熱処理工程におけるシャフト10の加熱温度の上限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10や筒部材30の温度が上がりすぎて再度溶融してしまい、シャフト10と筒部材30や、筒部材30と芯部材20の接合が外れてしまうことを防止できる。
【0082】
後加熱処理工程は、シャフト10を2時間以上加熱することが好ましく、シャフト10の加熱時間は、2.3時間以上であることがより好ましく、2.5時間以上であることがさらに好ましい。後加熱処理工程におけるシャフト10の加熱時間の下限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10の全体を十分に加熱することができ、加熱処理を十分に行うことができる。また、後加熱処理工程におけるシャフト10の加熱時間は、11時間以下であることが好ましく、10.7時間以下であることがより好ましく、10.5時間以下であることがさらに好ましい。後加熱処理工程におけるシャフト10の加熱時間の上限値を上記の範囲に設定することにより、加熱処理を十分に行いつつ、後加熱処理工程にかかる時間を短縮することができる。そのため、医療用シャフト1の製造効率を向上させることが可能となる。
【0083】
本発明の医療用シャフト1の製造方法は、さらに、
図7に示すように、シャフト10の外方とルーメン11とが連通している開口50を形成する工程(以下、「開口工程」と称することがある)を有することが好ましい。シャフト10が開口50を有していることにより、開口50からルーメン11内に配置している芯部材20の端部を引き出し、外部に露出している芯部材20に筒部材30を配置することができる。これは、筒部材30がその径方向外方に配置されている芯部材20をルーメン11内に配置することよりも筒部材工程が行いやすくなる。また、開口50から芯部材20を引き出して筒部材30を配置する工程を行うことにより、筒部材30の外径を大きくして、ルーメン11の周壁と筒部材30との密着性をさらに高めることもできる。
【0084】
開口工程としては、例えば、シャフト10に貫通孔をあけて、ルーメン11とシャフト10の外方とが連通している開口50を形成することや、シャフト10の外表面に切り込みを入れて、ルーメン11とシャフト10の外方とが連通している開口50を形成すること等が挙げられる。なお、シャフト10に開口50を形成した場合、加熱工程の前に、開口50の形成時に取り除いたシャフト10の部分や、シャフト10と同じ材料を含む片材を開口50に配置したうえで加熱することが好ましい。
【0085】
長手方向における開口50の大きさは、筒部材30の長さよりも長いことが好ましい。開口50の大きさが筒部材30の長さよりも長いことにより、開口50からルーメン11内に配置されている芯部材20の端部を引き出して、開口50から引き出した芯部材20に筒部材30を配置し、筒部材30が径方向外方に配置されている芯部材20を開口50に挿入することが行いやすくなる。そのため、医療用シャフト1の製造効率を高めることができる。
【0086】
長手方向における開口50の大きさは、筒部材30の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。開口50の大きさと筒部材30の長さとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、開口50から芯部材20の端部を引き出すことや、開口50に芯部材20を挿通することが行いやすくなる。また、長手方向における開口50の大きさは、筒部材30の長さの3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。開口50の大きさと筒部材30の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、開口50の大きさが大きくなりすぎることを防止し、接合箇所を精度よく設定することができるとともに、シャフト10の強度を十分なものとすることが可能となる。
【0087】
図8に示すように、開口50を形成する工程において、シャフト10の外表面を切り込み、一方の端部が自由端であって他方の端部がシャフト10と一体であるフラップ51を形成することが好ましい。開口工程においてフラップ51を形成することにより、フラップ51によって開口50を覆うことが可能となる。そのため、ルーメン11内に配置している芯部材20の端部を開口50から引き出して筒部材30を配置し、筒部材30がルーメン11内に配置されるように芯部材工程を行った後に、開口50をフラップ51によって覆い、その後、加熱工程を行うことによって開口50を塞ぐことができる。その結果、筒部材30とシャフト10とが接触している面積を増やすことができ、筒部材30を介した芯部材20とシャフト10との接合強度を高めることができる。
【0088】
長手方向におけるフラップ51の一方の端部から他方の端部までの長さは、筒部材30の長さよりも長いことが好ましい。フラップ51の長さが筒部材30の長さよりも長いことにより、筒部材30の長手方向における全長とフラップ51とが接触しやすくなり、筒部材30とシャフト10との接合が強固なものとなる。その結果、シャフト10に筒部材30を介して芯部材20を強固に接合することができる。
【0089】
長手方向におけるフラップ51の一方の端部から他方の端部までの長さは、筒部材30の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。フラップ51の一方の端部から他方の端部までの長さと筒部材30の長さとの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、フラップ51が長手方向における筒部材30の全長に接触しやすくなって、筒部材30を介したシャフト10と芯部材20との接合強度が高まりやすくなる。また、長手方向におけるフラップ51の一方の端部から他方の端部までの長さは、筒部材30の長さの3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。フラップ51の一方の端部から他方の端部までの長さと筒部材30の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、フラップ51の長さが長くなることによって強度が低下することを防ぐことができる。そのため、医療用シャフト1の製造においてフラップ51が破断しにくくなり、医療用シャフト1の製造効率を高めることが可能となる。
【0090】
本発明の医療用シャフト1の製造方法は、さらに、筒部材30の内側に芯部材20を配置する工程の前に、芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程を有し、芯部材20をシャフト10のルーメン11内に配置する工程の後に、開口50を形成する工程を行い、開口50を形成する工程において、ルーメン11に芯部材20が配置された状態にて、シャフト10の外表面を切り込むことが好ましい。芯部材工程の後、ルーメン11に芯部材20が配置された状態にてシャフト10の外表面を切り込んで開口工程を行うことにより、シャフト10の外表面の切り込み深さを定めることが可能となる。詳細には、ルーメン11に芯部材20が配置された状態にてシャフト10の外表面を刃物等によって深く切り込んだ場合、刃物等が芯部材20に当たって刃物等の進行が止まり、シャフト10を深く切り込みすぎることを防止する。そのため、芯部材20が配置されているルーメン11がシャフト10の外方と連通するような開口50を設けやすく、医療用シャフト1の製造効率を向上させることができる。
【0091】
開口工程において、シャフト10の外表面を切り込む際に、ルーメン11内へ芯部材20を配置してもよいが、開口50形成用の治具を配置することも好ましい。開口50の形成に治具を用いることにより、芯部材20に傷が入ることがなく、また、治具の形状や材質等を開口50の形成に適したものとすることができる。そのため、開口工程において、ルーメン11に治具が配置された状態にて、シャフト10の外表面を切り込むことによって、開口50の形成の効率をより高めることが可能となる。開口50形成用の治具を構成する材料としては、例えば、SUS等のステンレス鋼、炭素鋼等が挙げられる。
【0092】
以上のように、本発明の医療用シャフトは、長手方向に延在する少なくとも一つのルーメンを備えるシャフトと、ルーメン内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材と、芯部材と同じルーメン内に配置されており、かつ芯部材の外側に配置されており、長手方向における長さが芯部材の長さよりも短い筒部材と、を有し、ルーメンにおいて、筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積は、筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積よりも大きい。筒部材が存在している部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積が、筒部材が存在していない部分における長手方向に垂直な面でのルーメンの断面積よりも大きいことにより、筒部材が存在している部分では筒部材の外表面がシャフトのルーメンの壁面に押し付けられた状態となる。そのため、筒部材がシャフトのルーメンの壁面に密着しやすくなり、筒部材を介して芯部材とシャフトとを強固に接合することが可能となる。
【0093】
また、本発明の医療用シャフトの製造方法は、長手方向に延在する少なくとも一つのルーメンを備えるシャフトと、ルーメン内に配置されており、長手方向に沿って延在している芯部材と、芯部材と同じルーメン内に配置されており、かつシャフトと芯部材との間に配置されており、長手方向における長さが芯部材の長さよりも短い筒部材と、を有する医療用シャフトの製造方法であって、筒部材が配置されていない芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程と、筒部材の内側に芯部材を配置する工程と、筒部材を加熱する工程と、を有する。芯部材をシャフトのルーメン内に配置する工程と、筒部材の内側に芯部材を配置する工程と、筒部材を加熱する工程と、を有することにより、筒部材を介して、芯部材とシャフトとの強固な接合を行いやすくなる。
【0094】
本願は、2020年2月26日に出願された日本国特許出願第2020-30645号に基づく優先権の利益を主張するものである。2020年2月26日に出願された日本国特許出願第2020-30645号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0095】
1:医療用シャフト
10:シャフト
11:ルーメン
20:芯部材
30:筒部材
30d:筒部材の遠位端
30p:筒部材の近位端
40:外側筒部材
50:開口
51:フラップ
P1:筒部材の断面の中心
P2:筒部材の断面の外形上の点
P3:筒部材の断面の外形上の点
P4:ルーメンの断面の中心
P5:ルーメンの断面の周壁上の点
P6:ルーメンの断面の周壁上の点
L1:筒部材の断面の長軸長さ
L2:ルーメンの断面の長軸長さ
L3:筒部材の長さ
L4:外側筒部材の長さ
D1:筒部材が配置されている部分のシャフトの外径
D2:筒部材の遠位端よりも遠位側のシャフトの外径
D3:筒部材の近位端よりも近位側のシャフトの外径