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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】固体撮像素子、および、電子装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/773 20230101AFI20241107BHJP
   G01S 7/4863 20200101ALI20241107BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20241107BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H04N25/773
G01S7/4863
G01S17/10
H01L27/146 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022508061
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046693
(87)【国際公開番号】W WO2021186817
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020047645
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】佃 恭範
(72)【発明者】
【氏名】伊東 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】島田 翔平
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135800(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180898(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013170(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/773
G01S 7/4863
G01S 17/10
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換により電荷を生成する光電変換領域と、
前記生成された電荷を増倍する増倍領域と、
前記増倍された電荷を出力する出力電極と、
前記出力電極から出力された電荷に基づいて照射光に対する反射光に含まれる光子の有無を検出する検出回路と、
所定電位が印加された場合には前記電荷を前記光電変換領域から排出する追加電極と、
前記照射光が照射された照射タイミングで前記追加電極に前記所定電位を印加する制御回路と
を具備し、
前記検出回路は、
電流源と、
ゲートにイネーブル信号が入力されるトランジスタと、
前記電流源および前記トランジスタの接続ノードの電位に基づいてパルス信号を出力する論理ゲートと
を備え、
前記電流源および前記トランジスタは、電源ノードと基準ノードとの間において直列に接続され、
前記出力電極は、前記接続ノードに接続される
固体撮像素子。
【請求項2】
前記出力電極および前記追加電極は、カソードであり、
前記電荷は、電子である
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記制御回路は、所定期間に亘って前記所定電位を印加し、前記所定期間の開始タイミングから前記所定期間の終了タイミング前の所定タイミングまでの期間に亘って前記トランジスタを前記イネーブル信号によりオン状態に制御する
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記パルス信号に基づいて距離を算出する信号処理部をさらに具備する
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記信号処理部は、所定の基準距離測定期間内に前記パルス信号に基づいて基準距離を取得し、所定の測距期間内に前記パルス信号に基づいて距離を算出して前記基準距離により補正する
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記光電変換領域と前記増倍領域と前記出力電極と前記検出回路と前記追加電極とは、参照画素および測距画素のそれぞれに配置され、
前記信号処理部は、前記参照画素からの前記パルス信号に基づいて基準距離を取得し、前記測距画素からの前記パルス信号に基づいて距離を算出して前記基準距離により補正する
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項7】
照射光を照射する発光部と、
光電変換により電荷を生成する光電変換領域と、
前記生成された電荷を増倍する増倍領域と、
前記増倍された電荷を出力する出力電極と、
前記出力電極から出力された電荷に基づいて前記照射光に対する反射光に含まれる光子の有無を検出する検出回路と、
所定電位が印加された場合には前記電荷を前記光電変換領域から排出する追加電極と、
前記照射光が照射された照射タイミングで前記追加電極に前記所定電位を印加する制御回路と
を具備し、
前記検出回路は、
電流源と、
ゲートにイネーブル信号が入力されるトランジスタと、
前記電流源および前記トランジスタの接続ノードの電位に基づいてパルス信号を出力する論理ゲートと
を備え、
前記電流源および前記トランジスタは、電源ノードと基準ノードとの間において直列に接続され、
前記出力電極は、前記接続ノードに接続される
電子装置。
【請求項8】
前記光電変換領域と前記増倍領域と前記出力電極とは、画素アレイ部内の複数の画素のそれぞれに配置され、
前記追加電極は、前記複数の画素の境界を含む領域に配置される
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記画素アレイ部は、所定数の画素がそれぞれに配置された複数の共有ブロックに分割され、
前記複数の共有ブロックのそれぞれにおいて前記所定数の画素は、前記追加電極を共有する
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記複数の共有ブロックのそれぞれには4つの画素が配置される
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記複数の共有ブロックのそれぞれには2つの画素が配置される
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記追加電極は、画素ごとに配置される
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記追加電極は、前記境界のうち画素の角を含む領域に配置される
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記追加電極は、前記境界のうち画素の角を含まず、画素の辺を含む領域に配置される
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記出力電極および前記追加電極は、カソードであり、
前記複数の画素のそれぞれには、前記境界に埋め込まれたアノードがさらに設けられる
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項16】
前記出力電極と前記追加電極との間には、所定の半導体領域が配置され、
前記出力電極および前記追加電極は、前記半導体領域と異なる極性の半導体により形成される
請求項記載の固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子に関する。詳しくは、光子の有無を検出する固体撮像素子、および、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測距機能を持つ電子装置において、ToF(Time of Flight)方式と呼ばれる測距方式が知られている。このToF方式は、照射光を電子装置から物体に照射し、その照射光が反射して電子装置に戻ってくるまでの往復時間を求めて距離を測定する方式である。照射光に対する反射光の検出には、光電変換素子としてSPAD(Single-Photon Avalanche Diode)が用いられることが多い。例えば、SPADからの電流を抵抗に流し、その抵抗の端子間の電圧降下に基づいて検出した受光タイミングから距離を求める測距装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/003227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、電荷を増倍するSPADを用いることにより、微弱な光の検出を図っている。しかしながら、上述の測距装置では、その装置内で照射光が反射し、迷光としてSPADに入射されて、電圧降下が生じることがある。この場合は、降下した電圧が所定値まで復帰するのを待ってから測距を行う必要があるが、電圧が復帰するまでの時間が長いほど測距可能な最短距離が長くなり、近距離の測定に支障をきたすという問題がある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、反射光の受光タイミングに基づいて測距を行う固体撮像素子において、測距可能な最短距離を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、光電変換により電荷を生成する光電変換領域と、上記生成された電荷を増倍する増倍領域と、上記増倍された電荷を出力する出力電極と、上記出力電極から出力された電荷に基づいて照射光に対する反射光に含まれる光子の有無を検出する検出回路と、所定電位が印加された場合には上記電荷を上記光電変換領域から排出する追加電極と、上記照射光が照射された照射タイミングで上記追加電極に上記所定電位を印加する制御回路とを具備する固体撮像素子である。これにより、迷光の入射時に出力電極から電荷が出力されないという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記出力電極および上記追加電極は、カソードであり、上記電荷は、電子であってもよい。これにより、追加電極から電子が排出されるという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記検出回路は、電流源と、ゲートにイネーブル信号が入力されるトランジスタと、上記電流源および上記トランジスタの接続ノードの電位に基づいてパルス信号を出力する論理ゲートとを備え、上記電流源および上記トランジスタは、電源ノードと基準ノードとの間において直列に接続され、上記出力電極は、上記接続ノードに接続されてもよい。これにより、光子の有無が検出されるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記制御回路は、所定期間に亘って上記所定電位を印加し、上記所定期間の開始タイミングから上記所定期間の終了タイミング前の所定タイミングまでの期間に亘って上記トランジスタを上記イネーブル信号によりオン状態に制御してもよい。
【0010】
また、この第1の側面において、上記パルス信号に基づいて距離を算出する信号処理部をさらに具備してもよい。これにより、最短測距距離が短くなるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記信号処理部は、所定の基準距離測定期間内に上記パルス信号に基づいて基準距離を取得し、所定の測距期間内に上記パルス信号に基づいて距離を算出して上記基準距離により補正してもよい。これにより、測距精度が向上するという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記光電変換領域と上記増倍領域と上記出力電極と上記検出回路と上記追加電極とは、参照画素および測距画素のそれぞれに配置され、上記信号処理部は、上記参照画素からの上記パルス信号に基づいて基準距離を取得し、上記測距画素からの上記パルス信号に基づいて距離を算出して上記基準距離により補正してもよい。これにより、フレームレートと測距精度が向上するという作用をもたらす。
【0013】
また、本技術の第2の側面は、照射光を照射する発光部と、光電変換により電荷を生成する光電変換領域と、上記生成された電荷を増倍する増倍領域と、上記増倍された電荷を出力する出力電極と、上記出力電極から出力された電荷に基づいて上記照射光に対する反射光に含まれる光子の有無を検出する検出回路と、所定電位が印加された場合には上記電荷を上記光電変換領域から排出する追加電極と、上記照射光が照射された照射タイミングで上記追加電極に上記所定電位を印加する制御回路とを具備する電子装置である。これにより、照射光に対する迷光の入射時に出力電極から電荷が出力されないという作用をもたらす。
【0014】
また、本技術の第3の側面は、光電変換により電荷を生成する光電変換領域と上記生成された電荷を増倍する増倍領域と上記増倍された電荷を出力する出力電極とがそれぞれに配置された複数の画素を配列した画素アレイ部と、上記複数の画素の境界を含む領域に配置されて上記電荷を上記光電変換領域から排出する追加電極とを具備する固体撮像素子である。これにより、画素の微細化が容易になるという作用をもたらす。
【0015】
また、この第3の側面において、上記画素アレイ部は、所定数の画素がそれぞれに配置された複数の共有ブロックに分割され、上記複数の共有ブロックのそれぞれにおいて上記所定数の画素は、上記追加電極を共有してもよい。これにより、画素当たりの追加電極数が削減されるという作用をもたらす。
【0016】
また、この第3の側面において、上記複数の共有ブロックのそれぞれには4つの画素が配置されてもよい。これにより、4画素ごとに追加電極が配置されるという作用をもたらす。
【0017】
また、この第3の側面において、上記複数の共有ブロックのそれぞれには2つの画素が配置されてもよい。これにより、2画素ごとに追加電極が配置されるという作用をもたらす。
【0018】
また、この第3の側面において、上記追加電極は、画素ごとに配置されてもよい。これにより、画素当たりの電荷の排出能力が向上するという作用をもたらす。
【0019】
また、この第3の側面において、上記追加電極は、上記境界のうち画素の角を含む領域に配置されてもよい。これにより、角に配置された追加電極から電荷が排出されるという作用をもたらす。
【0020】
また、この第3の側面において、上記追加電極は、上記境界のうち画素の角を含まず、画素の辺を含む領域に配置されてもよい。これにより、辺に配置された追加電極から電荷が排出されるという作用をもたらす。
【0021】
また、この第3の側面において、上記出力電極および上記追加電極は、カソードであり、上記複数の画素のそれぞれには、上記境界に埋め込まれたアノードがさらに設けられてもよい。これにより、工数が削減されるという作用をもたらす。
【0022】
また、この第3の側面において、上記出力電極と上記追加電極との間には、所定の半導体領域が配置され、前記出力電極および前記追加電極は、前記半導体領域と異なる極性の半導体により形成されてもよい。これにより、工数が削減されるという作用をもたらす。
【0023】
また、本技術の第4の側面は、照射光を照射する発光部と、光電変換により電荷を生成する光電変換領域と上記生成された電荷を増倍する増倍領域と上記増倍された電荷を出力する出力電極とがそれぞれに配置された複数の画素を配列した画素アレイ部と、上記複数の画素の境界を含む領域に配置されて上記電荷を上記光電変換領域から排出する追加電極とを具備する電子装置である。これにより、電子装置において画素の微細化が容易になるという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本技術の第1の実施の形態における測距モジュールの一構成例を示すブロック図である。
図2】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
図3】本技術の第1の実施の形態における画素の一構成例を示す断面図および回路図である。
図4】本技術の第1の実施の形態における画素の駆動方法を説明するための図である。
図5】本技術の第1の実施の形態における信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図6】本技術の第1の実施の形態における制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図7】比較例における制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図8】本技術の第1の実施の形態における測距モジュールの動作の一例を示すフローチャートである。
図9】本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図10】本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における制御回路の一構成例を示すブロック図である。
図11】本技術の第1の実施の形態の第2の変形例における制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図12】本技術の第1の実施の形態の第3の変形例における画素アレイ部の一構成例を示す平面図である。
図13】本技術の第1の実施の形態の第3の変形例における制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図14】本技術の第2の実施の形態における画素の一構成例を示す断面図である。
図15】本技術の第2の実施の形態における画素アレイ部の一構成例を示す平面図である。
図16】本技術の第2の実施の形態における画素の駆動方法を説明するための図である。
図17】本技術の第2の実施の形態における測距モジュールの動作の一例を示すタイミングチャートである。
図18】本技術の第2の実施の形態における画素のポテンシャル図の一例である。
図19】本技術の第2の実施の形態の第1の変形例における画素アレイ部の一構成例を示す平面図である。
図20】本技術の第2の実施の形態の第1の変形例における画素アレイ部の別の例を示す平面図である。
図21】本技術の第2の実施の形態の第2の変形例における画素アレイ部の一構成例を示す平面図である。
図22】本技術の第2の実施の形態の第3の変形例における画素の一構成例を示す断面図である。
図23】本技術の第2の実施の形態の第4の変形例における画素の一構成例を示す断面図である。
図24】本技術の第2の実施の形態の第4の変形例における画素のポテンシャル図の一例である。
図25】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図26】撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(追加カソードを設け、電位制御する例)
2.第2の実施の形態(画素間の境界に追加カソードを設ける例)
3.移動体への応用例
【0026】
<1.第1の実施の形態>
[測距モジュールの構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における測距モジュール100の一構成例を示すブロック図である。この測距モジュール100は、物体までの距離を測定するものであり、発光部110、同期制御部120および固体撮像素子200を備える。測距モジュール100は、スマートフォン、パーソナルコンピュータや車載機器などに搭載され、距離を測定するために用いられる。
【0027】
同期制御部120は、発光部110および固体撮像素子200を同期して動作させるものである。この同期制御部120は、所定周波数(10乃至20メガヘルツなど)のクロック信号CLKpを発光部110および固体撮像素子200に信号線128および129を介して供給する。
【0028】
発光部110は、同期制御部120からのクロック信号CLKpに同期して間欠光を照射光として供給するものである。例えば、照射光として近赤外光などが用いられる。
【0029】
固体撮像素子200は、照射光に対する反射光を受光し、クロック信号CLKpの示す発光タイミングから反射光を受光したタイミングまでの往復時間を測定するものである。この固体撮像素子200は、物体501までの距離を往復時間から算出し、その距離を示す距離データを生成して出力する。
【0030】
ここで、照射光502は、測距対象の物体501で反射し、反射光504として固体撮像素子200に入射されるが、照射光502は、測距モジュール100内で反射し、迷光505として固体撮像素子200に入射されることがある。測距モジュール100表面にカバーガラス(不図示)が存在する場合、照射光502の一部が反射し、同図に例示したように迷光505が発生してしまう。仮に固体撮像素子200が、迷光505の受光タイミングを反射光504の受光タイミングとして誤検出すると、測距精度が低下するおそれがある。この誤検出を防止する方法の詳細については後述する。
【0031】
[固体撮像素子の構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の一構成例を示すブロック図である。この固体撮像素子200は、制御回路210、画素アレイ部220および信号処理部230を備える。画素アレイ部220には、複数の画素300が二次元格子状に配列される。
【0032】
制御回路210は、同期制御部120からのクロック信号CLKpに基づいて画素アレイ部220内の画素300のそれぞれを制御するものである。制御内容の詳細については後述する。
【0033】
信号処理部230は、画素300からの信号とクロック信号CLKpとに基づいて画素回路ごとに往復時間を測定し、距離を算出するものである。この信号処理部230は、距離を示す距離データを測距点に対応する画素群ごとに生成し、それらを外部に出力する。
【0034】
また、画素アレイ部220は、画素チップ201に配置され、その画素チップ201に積層された回路チップ202に制御回路210および信号処理部230が配置される。
【0035】
なお、制御回路210を回路チップ202に配置しているが、画素チップ201に配置することもできる。その際、制御回路210の一部または全てを画素300のそれぞれに分散して配置することもできる。また、制御回路210を画素チップ201および回路チップ202のそれぞれに分散して配置することもできる。また、回路チップ202に制御回路210を配置する場合、画素チップ201を上側として、画素アレイ部220の直下に配置することもできる。画素アレイ部220の直下に配置する場合、制御回路210を、画素ごとに分散し、分散した個々の回路を対応する画素の直下に配置することもできる。この場合には、画素チップ201または回路チップ202の配線層内に、制御対象の画素300までの信号線が配線される。
【0036】
[画素の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態における画素300の一構成例を示す断面図および回路図である。この画素300は、SPAD310およびクウェンチ回路350を備える。また、クウェンチ回路350は、電流源351、バッファ352、および、nMOS(negative Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタ353を備える。
【0037】
SPAD310は、光電変換により電荷を生成して増倍するものである。このSPAD310には、アノード311、光電変換領域312、増倍領域320、追加カソード331およびカソード332が設けられる。アノード311には、所定の基準電位VSSより低い低電位VRLが印加される。
【0038】
光電変換領域312は、光電変換により電荷(例えば、電子)を生成するものである。増倍領域320は、光電変換領域312で生成された電荷(電子など)をアバランシェ増倍するものである。
【0039】
制御回路210は、照射光の照射タイミングで、所定電位の信号を制御信号CA2として追加カソード331に供給する。アノード311に低電位VRLが印加される場合、その電位より高いハイレベル(電源電位など)の制御信号CA2が追加カソード331に供給される。アノード311および追加カソード331の間にバイアス電圧が印加されるため、それらの間に電流が流れ、光電変換領域312により生成された電子は、追加カソード331から排出される。また、アノード311および追加カソード331の間に優先的に電流が流れ、増倍領域320には電流が流れないように、イオン注入のプロファイルが設定される。これにより、カソード332からは、電子が出力されなくなる。
【0040】
また、制御回路210は、反射光が入射される期間において、電源電位より低い電位(言い換えれば、ローレベル)の信号を制御信号CA2として追加カソード331に供給する。ローレベルが追加カソード331に印加された場合、アノード311と追加カソード331との間の電圧が低下し、反射光の入射時において、増倍された電子がカソード332からクウェンチ回路350へ出力される。
【0041】
なお、追加の電極として追加カソード331を設けているが、追加カソード331の代わりに追加アノードを設けることもできる。この場合には、カソードにハイレベルが印加され、アノードにクウェンチ回路350が接続され、照射タイミングにおいてローレベルの電荷が追加アノードに印可される。
【0042】
なお、追加カソード331は、特許請求の範囲に記載の追加電極の一例であり、カソード332は、特許請求の範囲に記載の出力電極の一例である。
【0043】
クウェンチ回路350は、カソード332から出力された電荷に基づいて反射光に含まれる光子の有無を検出するものである。このクウェンチ回路350において、電流源351およびnMOSトランジスタ353は、電源ノードと基準ノードとの間において直列に接続される。これらの接続ノードは、カソード332に接続される。なお、クウェンチ回路350は、特許請求の範囲に記載の検出回路の一例である。
【0044】
また、nMOSトランジスタ353のゲートには、制御回路210からのイネーブル信号APDENが入力される。イネーブル信号APDENは、画素300の光子の検出機能をイネーブルまたはディセーブルに設定するための信号である。例えば、イネーブルに設定する場合にローレベルのイネーブル信号APDENが供給され、ディセーブルに設定する場合にハイレベルのイネーブル信号APDENが供給される。
【0045】
nMOSトランジスタ353は、イネーブル信号APDENがローレベル(すなわち、イネーブル)である場合にオフ状態に移行し、イネーブル信号APDENがハイレベル(すなわち、ディセーブル)である場合にオン状態に移行する。なお、nMOSトランジスタ353は、特許請求の範囲に記載のトランジスタの一例である。
【0046】
バッファ352は、電流源351およびnMOSトランジスタ353の接続ノードの電位の信号であるカソード信号CA1に基づいてパルス信号OUTを出力するものである。このバッファ352は、カソード信号CA1が所定の閾値より高い場合にハイレベルのパルス信号OUTを出力し、カソード信号CA1が閾値以下の場合にローレベルのパルス信号OUTを信号処理部230へ出力する。なお、バッファ352の代わりにインバータを設けることもできる。また、バッファ352は、特許請求の範囲に記載の論理ゲートの一例である。
【0047】
同図に例示した構成により、イネーブルである場合に反射光が入射されると、カソード信号CA1の電位が低下し、クウェンチ回路350は、その電位が閾値以下になったときにローレベルのパルス信号OUTを出力する。このため、ローレベルのパルス信号OUTは、光子が入射されたことを示す。
【0048】
なお、画素300の全体を画素チップ201に配置しているが、画素300の一部(例えば、SPAD310)を画素チップ201に配置し、残りを回路チップ202に配置することもできる。
【0049】
図4は、本技術の第1の実施の形態における画素300の駆動方法を説明するための図である。同図におけるaは、照射光の照射タイミングにおける画素300の状態を示す断面図であり、同図におけるbは、反射光の入射タイミングにおける画素300の状態を示す断面図である。
【0050】
同図におけるaに例示するようにアノード311には、基準電位VSSより低い低電位VRLが印加される。また、照射タイミングにおいて、制御回路210は、基準電位VSSより高い電源電位VDDの制御信号CA2を追加カソード331に供給する。アノード311および追加カソード331の間に電源電位VDDおよび低電位VRLの電位差(すなわち、バイアス電圧)が印加されるため、光電変換領域312により生成された電子は、増倍領域320を介さずに追加カソード331から排出される。
【0051】
ただし、電荷の排出が不十分である場合、迷光が入射されると、カソード332からのカソード信号CA1の電位は、電源電位VDDから基準電位VSSに低下することがある。
【0052】
また、同図におけるbに例示するように、制御回路210は、反射光が入射される期間において、基準電位VSSの制御信号CA2を追加カソード331に供給する。この電位制御により、アノード311と追加カソード331との間の電圧が低下し、反射光の入射時において、光電変換された電子が増倍領域320に供給されて増倍される。そして、増倍された電子がカソード332からクウェンチ回路350へ出力され、カソード信号CA1の低下により、光子が検出される。
【0053】
[信号処理部の構成例]
図5は、本技術の第1の実施の形態における信号処理部230の一構成例を示すブロック図である。この信号処理部230は、列ごとにTDC(Time-to-Digital Converter)231および距離データ生成部232を備える。
【0054】
TDC231は、クロック信号CLKpの示す発光タイミングから、対応する列からのパルス信号OUTの立下り(すなわち、受光タイミング)までの時間を計測するものである。このTDC231は、測定した時間を示すデジタル信号を距離データ生成部232に供給する。
【0055】
距離データ生成部232は、物体までの距離Dを算出するものである。この距離データ生成部232は、クロック信号CLKpよりも低い周波数(30ヘルツなど)の垂直同期信号VSYNCの周期ごとに、その周期内でTDC231により計測された時間のうち最頻値を往復時間dtとして求める。そして、距離データ生成部232は、次の式を用いて距離Dを算出し、その距離Dを示す距離データを出力する。
D=c×dt/2 ・・・式1
上式において、cは光速であり、単位は、メートル毎秒(m/s)である。また、距離Dの単位は、例えば、メートル(m)であり、往復時間dtの単位は、例えば、秒(s)である。
【0056】
図6は、本技術の第1の実施の形態における制御回路210の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるaは、制御信号CA2の変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるbは、イネーブル信号APDENの変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるcは、カソード信号CA1の変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるdは、画素300の状態の一例を示すタイミングチャートである。タイミングT1において照射光が照射され、その照射光に対する反射光がタイミングT6において画素300に入射されたものとする。
【0057】
同図におけるaに例示するように、タイミングT1の直前のタイミングT0から、タイミングT1の直後のタイミングT3までの期間に亘って、制御回路210は、制御信号CA2をハイレベルにする。この期間以外では、制御信号CA2は、ローレベルに制御される。
【0058】
また、同図におけるbに例示するように、制御回路210は、ローレベル(すなわち、イネーブル)のイネーブル信号APDENを供給する。
【0059】
また、同図におけるcに例示するように、タイミングT6において、反射光の光子が増倍されてカソード信号CA1の電位が降下する。この電位は、電流源351からの電流により復帰し、タイミングT7において、バッファ352の閾値より高くなる。
【0060】
また、同図におけるdに例示するように、画素300は、タイミングT6までの期間は、測距可能なガイガーモードで動作する。タイミングT6乃至T7の期間は、カソード信号CA1の電位が復帰していないため、新たに光子を受光および光電変換しても、その有無を検出することができず、不感期間となる。タイミングT7以降においては、電位が復帰したため、画素300は、再度ガイガーモードで動作する。
【0061】
ここで、追加カソード331にハイレベルを印加しない比較例を想定する。図7は、比較例における制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。比較例では、同図におけるaに例示するように、タイミングT0乃至T3の期間内に制御信号CA2がハイレベルに制御されず、ローレベルのままである。また、比較例では、迷光の誤検出を防止するため、同図におけるbに例示するように、タイミングT0乃至T3の期間内に、制御回路210がハイレベル(ディセーブル)のイネーブル信号APDENを供給するものとする。
【0062】
比較例のnMOSトランジスタ353は、イネーブル信号APDENにより、タイミングT0乃至T3の期間内にオン状態になる。この制御により、同図におけるcに例示するようにカソード信号CA1の電位が降下し、バッファ352の閾値以下となる。そして、カソード信号CA1の電位は復帰し、タイミングT5において、バッファ352の閾値より高くなる。
【0063】
同図におけるcに例示するように、比較例では、タイミングT0乃至T5の期間内に電位が降下するため、この期間は不感期間となってしまう。このため、反射光の光子の検出により測距可能となるのは、タイミングT5以降となる。したがって、測距可能な最短距離は、タイミングT1からT5までの往復時間dt1に応じた距離となる。
【0064】
これに対して、照射タイミングにおいて、制御回路210が制御信号CA2をハイレベルに制御した場合、前述したように、電子は増倍領域320を介さずに追加カソード331から排出される。これにより、カソード332からは、電子が出力されなくなり、図6におけるcに例示するように、カソード信号CA1の電位が降下しない。したがって、測距可能な最短距離は、タイミングT1からT3までの往復時間dt2に応じた距離となる。この往復時間dt2は、比較例の往復時間dt1よりも短くなる。したがって、式1より、測距可能な最短距離を比較例よりも短くすることができる。
【0065】
[測距モジュールの動作例]
図8は、本技術の第1の実施の形態における測距モジュール100の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、測距を行うための所定のアプリケーションが実行されたときに開始される。
【0066】
測距モジュール100は、照射光の発光と、反射光の受光とを開始する。この際には、照射タイミングと同期して追加カソード331の電位が制御される(ステップS901)。また、測距モジュール100は、往復時間を測定し(ステップS902)、物体までの距離を算出する(ステップS903)。ステップS903の後に、測距モジュール100は、測距のための動作を終了する。
【0067】
このように、本技術の第1の実施の形態では、制御回路210は、照射タイミングで追加カソード331にハイレベルの制御信号CA2を供給して電荷を排出させるため、カソード311からクウェンチ回路350に電荷が出力されなくなる。このため、迷光の誤検出防止のために、クウェンチ回路350をディセーブルに設定する必要がなくなる。これにより、制御信号CA2をローレベルに戻した時点から測距が可能となり、クウェンチ回路350をディセーブルに設定する場合と比較して測距可能な最短距離を短くすることができる。
【0068】
[第1の変形例]
上述の第1の実施の形態では、制御回路210が、照射タイミングで追加カソード331にハイレベルの制御信号CA2を供給して増倍領域320への電子流入を抑制していた。しかし、このハイレベルの期間内に増倍領域320へ電子が流入することもある。この第1の実施の形態における第1の変形例の制御回路210は、制御信号CA2がハイレベルの期間内に、ハイレベル(ディセーブル)のイネーブル信号APDENを供給するに設定することにより、増倍領域320での増幅率を大幅に低下させるする点において第1の実施の形態と異なる。
【0069】
図9は、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における制御回路210の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるaは、制御信号CA2の変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるbは、イネーブル信号APDENの変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるcは、カソード信号CA1の変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるdは、画素300の状態の一例を示すタイミングチャートである。
【0070】
同図におけるaに例示するように、タイミングT0からタイミングT3までの期間に亘って、制御回路210は、制御信号CA2をハイレベルにする。この期間以外では、制御信号CA2は、ローレベルに制御される。
【0071】
また、同図におけるbに例示するように、制御回路210は、タイミングT0から、タイミングT3の直前のタイミングT2までの期間に亘って、イネーブル信号APDENをハイレベル(ディセーブル)にする。この期間以外では、イネーブル信号APDENは、ローレベルに制御される。
【0072】
また、同図におけるcに例示するように、イネーブル信号APDENの制御により、カソード信号CA1の電位が降下し、バッファ352の閾値以下となる。そして、カソード信号CA1の電位は復帰し、タイミングT4において、バッファ352の閾値より高くなる。
【0073】
また、同図におけるdに例示するように、画素300は、タイミングT0までの期間は、ガイガーモードで動作する。タイミングT0乃至T4の期間は、不感期間となる。タイミングT4において画素300は、再度ガイガーモードで動作する。タイミングT6以降は、第1の実施の形態と同様である。
【0074】
ここで、第1の実施の形態と同様に、制御回路210が追加カソード331にハイレベルを印加せず、タイミングT0乃至T3の期間内に、ハイレベルのイネーブル信号APDENを供給する比較例を想定する。同図におけるbの一点鎖線は、比較例のイネーブル信号APDENの電位変動を示す。
【0075】
タイミングT3でイネーブルにする比較例では、タイミングT5で、カソード信号CA1の電位が復帰する。これに対して、第1の変形例では、タイミングT3の前のタイミングT2でイネーブルにするため、比較例よりも早いタイミングT4で電位を復帰させることができる。これにより、比較例よりも最短距離を短くすることができる。
【0076】
また、追加カソード331にハイレベルを供給する期間内に、ディセーブルに設定することにより、その期間内の増倍領域320での電子増倍を確実に防止することができる。これにより、測距モジュール100の動作を安定させることができる。
【0077】
図10は、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における制御回路210の一構成例を示すブロック図である。この制御回路210は、パルス信号生成部211、パルス幅調整部212、ドライバ213およびドライバ214を備える。これらのパルス信号生成部211、パルス幅調整部212、ドライバ213およびドライバ214は、画素アレイ部220内の行ごと、もしくは列ごと、もしくは1個以上の画素群ごとに設けられる。
【0078】
パルス信号生成部211は、同期制御部120からのクロック信号CLKpに同期して、パルス信号を生成するものである。このパルス信号生成部211は、例えば、遅延回路やレベルシフタを備え、クロック信号CLKpを遅延させたり、そのレベルを調整することにより、パルス信号を生成する。パルス信号は、パルス幅調整部212およびドライバ214へ供給される。
【0079】
パルス幅調整部212は、パルス信号のパルス幅を長くするものである。このパルス幅調整部212は、調整後のパルス信号をドライバ213に供給する。
【0080】
ドライバ213は、パルス幅調整部212からのパルス信号を制御信号CA2として画素300へ出力するものである。ドライバ214は、パルス信号生成部211からのパルス信号をイネーブル信号APDENとして画素300へ出力するものである。
【0081】
なお、パルス幅調整部212は、制御信号CA2側のパルス幅を調整しているが、イネーブル信号APDEN側のパルス幅を調整することもできる。
【0082】
このように、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例では、制御回路210は、追加カソード331にハイレベルを供給する期間内に、クウェンチ回路350をディセーブルに設定する。これにより、その期間内に増倍領域320での電子増倍を確実に防止することができる。
【0083】
[第2の変形例]
上述の第1の実施の形態では、同期制御部120がクロック信号CLKpを供給して発光部110を発光させていたが、クロック信号CLKpの立上りや立下りから、実際の発光までには、若干の遅延時間が存在する。この遅延時間により、測距精度が低下するおそれがある。この第1の実施の形態の第2の変形例の固体撮像素子200は、基準距離を測定して測距精度を向上させる点において第1の実施の形態と異なる。
【0084】
図11は、本技術の第1の実施の形態の第2の変形例における制御回路210の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるaは、制御信号CA2の変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるbは、イネーブル信号APDENの変動の一例を示すタイミングチャートである。
【0085】
同図におけるaおよびbに例示するように、タイミングT30までの基準距離取得期間内において、制御回路210は、クロック信号CLKpに同期して制御信号CA2を交互にハイレベルおよびローレベルにする。また、制御回路210は、その制御信号CA2と同相の信号をイネーブル信号APDENとして供給する。
【0086】
例えば、クロック信号CLKpの立上りで発光部110が発光する場合、その立上りの直前のタイミングT20から、立上りの直後のタイミングT21までの期間に亘って制御信号CA2がローレベルに制御される。その次の立上りの直前のタイミングT22から、次の立上りの直後のタイミングT23までの期間に亘って制御信号CA2がローレベルに制御される。それらの間の期間は、制御信号CA2がハイレベルに制御される。
【0087】
同様に、T20からT21までの期間に亘ってイネーブル信号APDENがローレベルに制御される。タイミングT22からタイミングT23までの期間に亘ってイネーブル信号APDENがローレベルに制御される。それらの間の期間は、イネーブル信号APDENがハイレベルに制御される。
【0088】
基準距離取得期間内において、信号処理部230は、クロック信号CLKpの立上りから、その直後の迷光の受光タイミングまでの往復時間をパルス信号に基づいて測定する。そして、信号処理部230は、測定した往復時間から式1により距離を算出し、その距離を基準距離として取得して保持する。クロック信号CLKpの立上りから、発光までに遅延時間が存在する場合、基準距離は、ゼロとならず、それより大きな値となる。
【0089】
タイミングT30以降の測距期間内において、制御回路210は、基準距離取得期間内のイネーブル信号APDENと同様の波形の信号を制御信号CA2として供給し、その制御信号CA2を反転した信号をイネーブル信号APDENとして供給する。
【0090】
例えば、クロック信号CLKpの立上りの直前のタイミングT30から、立上りの直後のタイミングT31までの期間に亘って制御信号CA2がハイレベルに制御される。その次の立上りの直前のタイミングT32から、次の立上りの直後のタイミングT33までの期間に亘って制御信号CA2がハイレベルに制御される。それらの間の期間は、制御信号CA2がローレベルに制御される。
【0091】
同様に、T30からT31までの期間に亘ってイネーブル信号APDENがハイレベルに制御される。タイミングT32からタイミングT33までの期間に亘ってイネーブル信号APDENがハイレベルに制御される。それらの間の期間は、イネーブル信号APDENがローレベルに制御される。
【0092】
この測距期間において、信号処理部230は、パルス信号に基づいて距離を測定し、基準距離により補正する。例えば、信号処理部230は、式1により距離を算出し、算出した値から基準距離を減算する補正処理を行い、補正後の距離を出力する。これにより、測距精度を向上させることができる。このように、第1の実施の形態の第2の変形例では、全画素が、基準距離の取得と測距との両方で用いられる。
【0093】
このように、本技術の第1の実施の形態の第2の変形例によれば、基準距離に基づいて距離を補正するため、測距精度を向上させることができる。
【0094】
[第3の変形例]
上述の第1の実施の形態の第2の変形例では、基準距離取得期間内に基準距離を取得し、その後の測距期間内に測距を行っていた。しかし、この構成では、基準距離の取得と測距とを時分割で行うため、画素ごとの距離データを配列したフレームを連続して生成する際に、フレームレートが低下するおそれがある。この第1の実施の形態の第3の変形例の固体撮像素子200は、基準距離の取得と測距とを同時に行う点において第1の実施の形態の第2の変形例と異なる。
【0095】
図12は、本技術の第1の実施の形態の第3の変形例における画素アレイ部220の一構成例を示す平面図である。この第1の実施の形態の第3の変形例における画素アレイ部220には、複数の参照画素301と複数の測距画素302とが配列される。参照画素301の画素数は、測距画素302よりも少ないものとする。例えば、参照画素301は、1行のみ配列され、測距画素302は、複数行が配列される。また別の例では、参照画素と測距画素はそれぞれ画素アレイ部220の複数の画素領域に配置される。
【0096】
参照画素301および測距画素302の回路構成は、第1の実施の形態の画素300と同様である。ただし、参照画素301からのパルス信号は基準距離を取得するために用いられ、測距画素302からのパルス信号は測距のために用いられる。
【0097】
図13は、本技術の第1の実施の形態の第3の変形例における制御回路210の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるaは、参照画素301への制御信号CA2REFの変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるbは、参照画素301へのイネーブル信号APDENREFの変動の一例を示すタイミングチャートである。また、同図におけるcは、測距画素302への制御信号CA2DISTの変動の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるdは、測距画素302へのイネーブル信号APDENDISTの変動の一例を示すタイミングチャートである。
【0098】
同図におけるaおよびbに例示するように、制御回路210は、クロック信号CLKpに同期して制御信号CA2REFを交互にハイレベルおよびローレベルにし、その制御信号CA2REFと同相の信号をイネーブル信号APDENREFとして供給する。
【0099】
例えば、クロック信号CLKpの立上りの直前のタイミングT20から、立上りの直後のタイミングT21までの期間に亘って制御信号CA2REFがローレベルに制御される。その次の立上りの直前のタイミングT22から、次の立上りの直後のタイミングT23までの期間に亘って制御信号CA2REFがローレベルに制御される。それらの間の期間は、制御信号CA2REFがハイレベルに制御される。
【0100】
同様に、T20からT21までの期間に亘ってイネーブル信号APDENREFがローレベルに制御される。タイミングT22からタイミングT23までの期間に亘ってイネーブル信号APDENREFがローレベルに制御される。それらの間の期間は、イネーブル信号APDENがハイレベルに制御される。
【0101】
また、制御回路210は、制御信号CA2REFを反転した信号を制御信号CA2DISTとして測距画素302へ供給し、その反転した信号と同相の信号をイネーブル信号APDENDISTとして測距画素302へ供給する。
【0102】
信号処理部230は、参照画素301のパルス信号から基準距離を取得し、測距画素302のパルス信号から距離を求め、その距離を基準距離により補正する。同図に例示するように、信号処理部230は、基準距離の取得と、測距とを同時に行うことができるため、フレームレートを向上させることができる。
【0103】
このように、本技術の第1の実施の形態の第3の変形例では、参照画素301および測距画素302を配置したため、信号処理部230は、基準距離の取得と測距とを同時に行うことができる。
【0104】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、追加カソード331を画素300の内部に配置していたが、この構成では、画素ごとの追加カソード331の追加により、画素の微細化が困難になるおそれがある。この第2の実施の形態の固体撮像素子200は、隣接する画素間の境界に追加カソード331を配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0105】
図14は、本技術の第2の実施の形態における画素300の一構成例を示す断面図である。同図は、隣接する2つの画素300の断面図を示す。以下、光軸に平行な軸を「Z軸」とし、Z軸に垂直な軸を「X軸」とする。Z軸およびX軸に垂直な軸を「Y軸」とする。
【0106】
画素300の上部には、マイクロレンズ341が設けられる。また、画素300内には、光電変換領域312、BDP(Break Down Positive)領域321、BDN(Break Down Negative)領域322およびカソード332が配置される。BDP領域321およびBDN領域322は、増倍領域320として機能し、BDP領域321はP型不純物を含み、BDN領域322は、N型不純物を含む。また、隣接する2つの画素300の境界を含む所定の領域には、追加カソード331が形成される。
【0107】
また、Z軸方向から見た場合、光電変換領域312の周囲には、トレンチ形成領域342が配置される。このトレンチ形成領域242は、P型不純物領域、メタル、パッシベーション膜で構成されている。また、トレンチ形成領域342のうち、追加カソード331の上部には、DTI(Deep Trench Isolation)が形成され、混色防止のため、そのDTIにメタル346が埋め込まれる。また、トレンチ形成領域342のうち、追加カソード331の上部以外の領域には、その上部よりも深いトレンチが形成され、メタル343が埋め込まれる。このメタル343には、アノード(不図示)が接続される。
【0108】
また、カソード332と追加カソード331との間には、STI(Short Trench Isolation)345が形成される。
【0109】
同図に例示したように、画素間の境界を含む領域に追加カソード331を配置することにより、画素内に追加カソード331のためのスペースを設ける必要がなくなり、画素の微細化が容易となる。
【0110】
図15は、本技術の第2の実施の形態における画素アレイ部220の一構成例を示す平面図である。同図は、Z軸方向から見た場合の平面図を示す。第2の実施の形態の画素アレイ部220は、複数の電極共有ブロック305により分割される。それぞれの電極共有ブロック305には、所定数の画素300が配列される。例えば、2行×2列で4つの画素300が配列される。電極共有ブロック305内の4画素は、1つの追加カソード331を共有する。追加カソード331は、画素間の境界のうち、画素の角を含む矩形の領域に配置される。同図における点線は、画素間の境界を示す。
【0111】
なお、電極共有ブロック305内の画素数は4画素に限定されず、2画素などであってもよい。
【0112】
図16は、本技術の第2の実施の形態における画素300の駆動方法を説明するための図である。同図におけるaは、反射光の入射タイミングにおける画素300の状態を示す断面図であり、同図におけるbは、クウェンチおよびリチャージのときにおける画素300の状態を示す断面図である。
【0113】
同図におけるaに例示するように反射光が入射される期間内において制御回路210は、カソード332および追加カソード331のそれぞれに、例えば、「3」ボルト(V)、「0」ボルト(V)の電位を印加する。この電位制御により、電子が追加カソード331へ向かわず、増倍領域(BDP領域321およびBDN領域322)で増倍され、カソード332から出力される。
【0114】
また、同図におけるbに例示するように、クウェンチおよびリチャージの際に制御回路210は、カソード332に「0」ボルト(V)を印加し、追加カソード331に「3」ボルト(V)の電位を印加する。この電位制御により、電子は、追加カソード331から排出され、降下した電位が復帰するまでの時間を短くすることができる。なお、追加電極として追加アノードを配置する場合には、アノードに「3」ボルトが印加され、追加アノードに「0」ボルトの電位が印加される。
【0115】
図17は、本技術の第2の実施の形態における測距モジュールの動作の一例を示すタイミングチャートである。同図におけるaは、発光部110の発光動作を示すタイミングチャートである。同図におけるbは、固体撮像素子200の受光量の変動を示すタイミングチャートである。同図におけるcは、カソード信号CA1の変動を示すタイミングチャートである。
【0116】
同図におけるaに例示するように、タイミングT30において照射光が照射され、固体撮像素子200に迷光が入射されたものとする。また、タイミングT32において、固体撮像素子200に反射光が入射されたものとする。
【0117】
タイミングT30においてカソード信号CA1は、第1の実施の形態の第1の変形例と同様に、イネーブル信号APDENの制御により降下し、タイミングT30からT31までのリチャージ動作により元の電圧に戻る。そして、タイミングT32においてカソード信号CA1は、反射光の入射により再度、降下する。
【0118】
ここで、リチャージ動作が遅いと、反射光の入射するタイミングT32までにカソード信号CA1の電位が復帰せず、反射光を検出することができなくなるおそれがある。しかし、図16に例示した電位制御により、リチャージ動作を高速化することができるため、測距可能な最短距離を短くすることができる。例えば、センチメートル(cm)オーダーの近距離の測距を実現することができる。
【0119】
図18は、本技術の第2の実施の形態における画素300のポテンシャル図の一例である。同図におけるaは、照射タイミングの画素300のポテンシャル図であり、同図におけるbは、反射光の受光タイミングの画素300のポテンシャル図である。同図における縦軸は、界面ポテンシャルであり、横軸は、画素300の受光面からの深さを示す。
【0120】
同図におけるaおよびbに例示するように、照射タイミングから、反射光の受光タイミングまでのリチャージの過程において、ポテンシャルの軌跡が変化する。また、同図におけるbの一点鎖線は、追加カソード331の無い比較例のポテンシャルを示す。
【0121】
比較例では、ポテンシャルが比較的浅くなり、電子が増倍領域320へ流れにくいが、追加カソード331を配置することにより、ポテンシャルが深くなり、反射光の入射時に電子が増倍領域320へ流れやすくなる。これにより、リチャージ動作を高速化することができる。
【0122】
このように、本技術の第2の実施の形態では、隣接する画素間の境界の領域に追加カソード331を配置したため、追加カソード331のためのスペースを画素300内に設ける必要がなくなり、画素の微細化が容易となる。
【0123】
[第1の変形例]
上述の第2の実施の形態では、複数の画素で追加カソード331を共有していたが、共有する画素数が多いと、画素当たりの電荷の排出能力が不足するおそれがある。この第2の実施の形態の第1の変形例の固体撮像素子200は、画素ごとに追加カソード331を設ける点において第2の実施の形態と異なる。
【0124】
図19は、本技術の第2の実施の形態の第1の変形例における画素アレイ部220の一構成例を示す平面図である。この第2の実施の形態の第1の変形例では、画素ごとに追加カソード331が配置される。例えば、画素300の4つの角のそれぞれに追加カソード331が配置される。ある画素300の周囲の4つの追加カソード331のいずれかが、その画素300に対応する追加カソード331に該当する。このように、画素ごとに追加カソード331を配置することにより、共有する場合と比較して、画素当たりの電荷排出能力を向上させることができる。
【0125】
なお、画素の角を含む領域に追加カソード331を配置しているが、この構成に限定されない。図20に例示するように、画素の境界のうち角を含まず、辺を含む矩形の領域に追加カソード331を配置することもできる。
【0126】
このように、本技術の第2の実施の形態の第1の変形例では、画素ごとに追加カソード331を配置したため、追加カソード331を共有する場合と比較して、画素当たりの電荷排出能力を向上させることができる。
【0127】
[第2の変形例]
上述の第2の実施の形態では、4つの画素300が追加カソード331を共有しているが、共有する画素数が多いと、画素当たりの電荷の排出能力が不足するおそれがある。この第2の実施の形態の第2の変形例の固体撮像素子200は、追加カソード331を共有する画素数を削減した点において第2の実施の形態と異なる。
【0128】
図21は、本技術の第2の実施の形態の第2の変形例における画素アレイ部220の一構成例を示す平面図である。この第2の実施の形態の第2の変形例では、画素共有ブロックごとに2画素が配置され、これらの2画素が追加カソード331を共有する。また、画素の4つの角のうち、互いに向き合う2つの角に追加カソード331が配置される。この配置では、斜め方向において隣接する2画素が、それらの間の追加カソード331を共有する。
【0129】
このように、本技術の第2の実施の形態の第2の変形例では、追加カソード331を共有する画素数を2つに削減したため、画素当たりの電荷排出能力を向上させることができる。
【0130】
[第3の変形例]
上述の第2の実施の形態では、画素間のメタル343にアノードを接続していたが、アノードを画素内に埋め込むこともできる。この第2の実施の形態の第3の変形例の固体撮像素子200は、画素内にアノードを埋め込んだ点において第2の実施の形態と異なる。
【0131】
図22は、本技術の第2の実施の形態の第3の変形例における画素300の一構成例を示す断面図である。この第2の実施の形態の第3の変形例では、トレンチ形成領域342のうち、追加カソード331の上部以外の領域に、その上部と同程度の深さのトレンチが形成され、メタル343が埋め込まれる。このメタル343の下部に、P型不純物を含むコンタクト344が設けられる。このコンタクト344の下部に、STIが形成され、そのSTIにアノード347が埋め込まれる。このように、画素間の境界にアノード347を埋め込むことにより、アノードの上部と、追加カソード331の上部とでトレンチの深さを変える必要がなくなり、画素300を形成する工程数を削減することができる。
【0132】
なお、第2の実施の形態の第3の変形例に、第2の実施の形態の第1または第2の変形例を適用することもできる。
【0133】
このように、本技術の第2の実施の形態の第3の変形例では、画素間の境界にアノード347を埋め込むため、トレンチの深さを変える必要がなくなり、画素300を形成する工程数を削減することができる。
【0134】
[第4の変形例]
上述の第2の実施の形態の第3の変形例では、カソード332と追加カソード331の間にSTI345を設けて分離していたが、カソード332および追加カソード331と極性の異なる半導体領域を設けることもできる。この第2の実施の形態の第4の変形例の固体撮像素子200は、カソード332および追加カソード331と極性の異なる半導体領域を、それらの間に設けた点において第2の実施の形態の第3の変形例と異なる。
【0135】
図23は、本技術の第2の実施の形態の第4の変形例における画素300の一構成例を示す断面図である。この第2の実施の形態の第4の変形例の画素300は、カソード332および追加カソード331との間にSTI345の代わりにP領域348が形成される点において第2の実施の形態の第3の変形例と異なる。
【0136】
また、カソード332および追加カソード331は、N型の半導体により形成される。P領域348は、それらと極性の異なるP型の半導体により形成される。
【0137】
図24は、本技術の第2の実施の形態の第4の変形例における画素300のポテンシャル図の一例である。同図に例示するように、カソード332および追加カソード331の間のP領域348のポテンシャルは、N型のカソード332および追加カソード331よりも低くなる。このため、カソード332から追加カソード331へ電子が流れ込むことがなくなり、それらは電気的に分離される。
【0138】
図23および図24に例示したように、P領域348によりカソード332および追加カソード331を分離することにより、STI345を形成する必要がなくなり、工程数をさらに削減することができる。
【0139】
なお、トレンチの深さを揃えない第2の実施の形態に、第2の実施の形態の第4の変形例を適用することもできる。また、第2の実施の形態の第4の変形例に、第2の実施の形態の第1または第2の変形例を適用することもできる。
【0140】
このように、本技術の第2の実施の形態の第4の変形例では、カソード332および追加カソード331と極性の異なる半導体領域を、それらの間に形成したため、STI345を形成する必要がなくなり、工程数をさらに削減することができる。
【0141】
<3.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0142】
図25は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0143】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図25に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0144】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0145】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0146】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0147】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0148】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0149】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0150】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0151】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0152】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図25の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0153】
図26は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0154】
図26では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0155】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0156】
なお、図26には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0157】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0158】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0159】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0160】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0161】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、車外情報検出ユニット12030に適用され得る。具体的には、図1の測距モジュール100を、車外情報検出ユニット12030に適用することができる。車外情報検出ユニット12030に本開示に係る技術を適用することにより、測距可能な最短距離を短くし、特に近距離について正確な距離情報を取得することができる。
【0162】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0163】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0164】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)光電変換により電荷を生成する光電変換領域と、
前記生成された電荷を増倍する増倍領域と、
前記増倍された電荷を出力する出力電極と、
前記出力電極から出力された電荷に基づいて照射光に対する反射光に含まれる光子の有無を検出する検出回路と、
所定電位が印加された場合には前記電荷を前記光電変換領域から排出する追加電極と、
前記照射光が照射された照射タイミングで前記追加電極に前記所定電位を印加する制御回路と
を具備する固体撮像素子。
(2)前記出力電極および前記追加電極は、カソードであり、
前記電荷は、電子である
前記(1)記載の固体撮像素子。
(3)前記検出回路は、
電流源と、
ゲートにイネーブル信号が入力されるトランジスタと、
前記電流源および前記トランジスタの接続ノードの電位に基づいてパルス信号を出力する論理ゲートと
を備え、
前記電流源および前記トランジスタは、電源ノードと基準ノードとの間において直列に接続され、
前記出力電極は、前記接続ノードに接続される
前記(1)または(2)に記載の固体撮像素子。
(4)前記制御回路は、所定期間に亘って前記所定電位を印加し、前記所定期間の開始タイミングから前記所定期間の終了タイミング前の所定タイミングまでの期間に亘って前記トランジスタを前記イネーブル信号によりオン状態に制御する
前記(3)記載の固体撮像素子。
(5)前記パルス信号に基づいて距離を算出する信号処理部をさらに具備する
前記(3)または(4)に記載の固体撮像素子。
(6)前記信号処理部は、所定の基準距離測定期間内に前記パルス信号に基づいて基準距離を取得し、所定の測距期間内に前記パルス信号に基づいて距離を算出して前記基準距離により補正する
前記(5)記載の固体撮像素子。
(7)前記光電変換領域と前記増倍領域と前記出力電極と前記検出回路と前記追加電極とは、参照画素および測距画素のそれぞれに配置され、
前記信号処理部は、前記参照画素からの前記パルス信号に基づいて基準距離を取得し、前記測距画素からの前記パルス信号に基づいて距離を算出して前記基準距離により補正する
前記(5)記載の固体撮像素子。
(8)照射光を照射する発光部と、
光電変換により電荷を生成する光電変換領域と、
前記生成された電荷を増倍する増倍領域と、
前記増倍された電荷を出力する出力電極と、
前記出力電極から出力された電荷に基づいて前記照射光に対する反射光に含まれる光子の有無を検出する検出回路と、
所定電位が印加された場合には前記電荷を前記光電変換領域から排出する追加電極と、
前記照射光が照射された照射タイミングで前記追加電極に前記所定電位を印加する制御回路と
を具備する電子装置。
(9)光電変換により電荷を生成する光電変換領域と前記生成された電荷を増倍する増倍領域と前記増倍された電荷を出力する出力電極とがそれぞれに配置された複数の画素を配列した画素アレイ部と、
前記複数の画素の境界を含む領域に配置されて前記電荷を前記光電変換領域から排出する追加電極と
を具備する固体撮像素子。
(10)前記画素アレイ部は、所定数の画素がそれぞれに配置された複数の共有ブロックに分割され、
前記複数の共有ブロックのそれぞれにおいて前記所定数の画素は、前記追加電極を共有する
前記(9)記載の固体撮像素子。
(11)前記複数の共有ブロックのそれぞれには4つの画素が配置される
前記(10)記載の固体撮像素子。
(12)前記複数の共有ブロックのそれぞれには2つの画素が配置される
前記(10)記載の固体撮像素子。
(13)前記追加電極は、画素ごとに配置される
前記(9)記載の固体撮像素子。
(14)前記追加電極は、前記境界のうち画素の角を含む領域に配置される
前記(9)から(13)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(15)前記追加電極は、前記境界のうち画素の角を含まず、画素の辺を含む領域に配置される
前記(9)に記載の固体撮像素子。
(16)前記出力電極および前記追加電極は、カソードであり、
前記複数の画素のそれぞれには、前記境界に埋め込まれたアノードがさらに設けられる
前記(9)から(15)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(17)前記出力電極と前記追加電極との間には、所定の半導体領域が配置され、
前記出力電極および前記追加電極は、前記半導体領域と異なる極性の半導体により形成される
前記(9)から(16)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(18)照射光を照射する発光部と、
光電変換により電荷を生成する光電変換領域と前記生成された電荷を増倍する増倍領域と前記増倍された電荷を出力する出力電極とがそれぞれに配置された複数の画素を配列した画素アレイ部と、
前記複数の画素の境界を含む領域に配置されて前記電荷を前記光電変換領域から排出する追加電極と
を具備する電子装置。
【符号の説明】
【0165】
100 測距モジュール
110 発光部
120 同期制御部
200 固体撮像素子
201 画素チップ
202 回路チップ
210 制御回路
211 パルス信号生成部
212 パルス幅調整部
213、214 ドライバ
220 画素アレイ部
230 信号処理部
231 TDC
232 距離データ生成部
300 画素
301 参照画素
302 測距画素
305 電極共有ブロック
310 SPAD
311、347 アノード
312 光電変換領域
320 増倍領域
321 BDP領域
322 BDN領域
331 追加カソード
332 カソード
341 マイクロレンズ
342 トレンチ形成領域
343、346 メタル
344 コンタクト
345 STI
348 P領域
350 クウェンチ回路
351 電流源
352 バッファ
353 nMOSトランジスタ
501 物体
12030 車外情報検出ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26