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特許7583790リチウムイオン電池用複合アノードを調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用複合アノードを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1393 20100101AFI20241107BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241107BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M4/1393
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/36 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022511046
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 IN2020050591
(87)【国際公開番号】W WO2021033195
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】201941033431
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】501307804
【氏名又は名称】インディアン・スペース・リサーチ・オーガニゼイション
【氏名又は名称原語表記】INDIAN SPACE RESEARCH ORGANISATION
【住所又は居所原語表記】Department of Space, Antariksh Bhavan, New BEL Road, Bangalore 560 094, India
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エス,アラバムザン
(72)【発明者】
【氏名】メルシー,ティーディ
(72)【発明者】
【氏名】ビビン,ジョン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/152113(WO,A1)
【文献】特開2000-011997(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128182(WO,A1)
【文献】特開平08-195201(JP,A)
【文献】特開2003-068301(JP,A)
【文献】特開2017-117789(JP,A)
【文献】特開2017-069039(JP,A)
【文献】特開2002-175810(JP,A)
【文献】特表2003-522367(JP,A)
【文献】国際公開第2019/101829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用の複合アノードを調製するためのプロセスであって、
i.活物質、バインダ及び溶媒を混合することによって遊星混合機においてアノードスラリーを形成することと、
ii.コーティング機において、0.3~1.0m/分の速度で銅箔基材上に前記スラリーをコーティングすることと、
iii.50~150℃の温度で、カレンダ加工機において前記アノードをカレンダ加工することと、
を含み、
前記活物質は、球状グラファイトと鱗片状グラファイトとの混合物であり、
前記バインダは、ポリフッ化ビニリデンであり、
前記溶媒は、1-メチル-2-ピロリジノンであり、
前記バインダの量が、前記アノードスラリーの総重量に基づいて1~15重量%の範囲であり、且つ、前記溶媒の量が、前記アノードスラリーの総重量に基づいて45~55重量%の範囲であり、
ステップ(i)が、前記活物質を乾式混合し、続いてバインダ溶液を添加し、次いで前記溶媒を異なる時間間隔で添加することによって、2000~15000cpsの範囲の粘度の前記アノードスラリーを形成することを含む、
プロセス。
【請求項2】
前記遊星混合機で混合する前に前記活物質および前記バインダを乾燥させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記球状グラファイトの量が、前記アノードスラリーの総重量に基づいて30~40重量%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記鱗片状グラファイトの量が、前記アノードスラリーの総重量に基づいて5~15重量%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記銅箔基材が、8~15μmの範囲の厚さである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
コーティング後の前記アノードの厚さが、200~300μmの範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
カレンダ加工後の前記アノードの最終厚さが、100~200μmの範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記電極製造が行われる前記プロセス環境の相対湿度が、2~15%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
コーティング後、50~150℃の範囲の温度で乾燥ゾーンにおいて前記アノードを乾燥させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アノードのカレンダ加工が、0.5~3m/分の速度及び50~150℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合アノードを調製するためのプロセスに関する。具体的には、本発明は、優れた剥離強度、比容量及び容量維持率を有するリチウムイオン電池用の複合アノードを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池は、様々な用途、すなわち、携帯電話、カメラ、ラップトップ、並びに軍事、航空機、宇宙及び電気自動車などのハイテク用途のための電源としてかなりの注目を集めている。
【0003】
一般に、リチウムイオン電池の主要な構成要素は、カソード、アノード、電解質及びセパレータを含む。リチウムイオン電池の性能は、使用される電極の特性によって影響を受け、その特性は、使用される材料の種類、電極組成及び電極製造技術に依存する。
【0004】
リチウム化遷移金属酸化物/リン酸塩がカソードとして使用され、グラファイト/炭素がアノードとして使用され、リチウムイオン電池の電解質として有機塩に溶解したリチウム塩が使用されている。リチウムイオン電池に使用されるアノード材料は、高い比容量、良好なサイクル性能、レート性能及び安全性の特徴を示すべきである。場合によっては、衛星用途のように、電池の電圧をチェックすることで任意の時点での充電状態を予測できるように、フラットな放電曲線ではなく、傾斜した放電曲線を示すべきであることが要求される。
【0005】
現代の用途のための電子デバイスは、高容量アノード材料の使用を必要とする高エネルギーリチウムイオン電池を必要とする。
【0006】
特定の特性を有するリチウムイオン電池に使用するためのアノード材料、電極組成物、及びそれらが採用されるプロセスを開発するために、かなりの量の研究が行われてきた。
【0007】
特許文献1は、Siのような活物質、グラファイト及びバインダからなる複合アノードを扱っている。
【0008】
特許文献2は、スズ、スズ合金、ケイ素、ケイ素合金などのような活物質からなる負極を扱っている。
【0009】
特許文献3及び特許文献4は、Si又はSn系アノードを含むリチウムイオン電池を扱っている。
【0010】
特許文献5は、アノード活物質として金属合金/金属間粒子を扱っている。
【0011】
特許文献6は、活物質が、炭素質材料と、グラファイトと、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn及びPbの群から選択されるナノ金属粒子と、の混合物からなるリチウムイオン電池用負極を開示している。
【0012】
従来技術の高容量アノード材料に関連する主な問題点は、サイクル中の高い体積変化が、特に衛星における重要な用途の重要なパラメータであるサイクル寿命を制限することである。
【0013】
サイクル寿命に関する限り、特に衛星用途では、最も適切な活物質は、その優れた電気化学的特徴のためにグラファイトである。グラファイトアノードの性能を向上させるために、グラファイトと種々の炭素質材料との複合化が試みられている。
【0014】
特許文献7は、グラファイト及び難黒鉛化性炭素を含有するグラファイト系複合電極を開示している。上記材料の粒子は、難黒鉛化性炭素質材料からなる表面層が設けられたグラファイト核を含む。
【0015】
特許文献8は、アノード用の炭素材料がグラファイト及び難黒鉛化性炭素材料の両方を含有するリチウムイオン電池を開示している。
【0016】
グラファイトは、難黒鉛化性炭素材料よりも真密度が高いため、アノードに使用した場合に高い電極充填性を示す。難黒鉛化性炭素のより低い真密度及び難黒鉛化性炭素へのリチウムイオンのより低いインターカレーション容量は、難黒鉛化性炭素アノードの主な欠点である。
【0017】
特許文献9は、グラファイトとコークスとの混合物からなるアノード組成物を開示している。しかし、コークスはグラファイトと比較して容量が低いため、混合物はより低い容量しかもたらさない。
【0018】
複合アノードの従来技術では、グラファイトは、難黒鉛化性炭素、低結晶性炭素、黒鉛化マイクロビーズ炭素粒子又はコークスと組み合わせて使用される。これらの材料の欠点は、グラファイトと比較して容量が低いことである。したがって、この組み合わせでは、より低い容量しか得られない。また、グラファイトは、これらの材料よりも真密度が高いため、アノードに使用した場合に高い電極充填性を示す。
【0019】
したがって、優れた比容量及びサイクル寿命、担持レベル、厚さ、水分含有量及び剥離強度並びに最大充填効率などの望ましいアノード特性を有する効果的な複合アノードを提供することが有利であり、その結果、粒子間の導電率及び充填密度が改善され、電池の全体的な比容量及びレート性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】UA2008/0206641A1
【文献】US8,354,189B2
【文献】US2013/0216910A1
【文献】US2014/0234719A1
【文献】US2009/0305131A1
【文献】JP2004213927A
【文献】US5,908,715
【文献】EP627,777
【文献】US5,958,622
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、電気自動車、打ち上げロケット、衛星、潜水艦、航空機などを含む様々な用途のための優れたアノード特性を有するリチウムイオン電池のために、リチウムイオン電池用の複合アノードを調製するためのプロセスを提供することであり、(i)活物質、バインダ及び溶媒を混合することによって遊星混合機においてアノードスラリーを形成すること、(ii)コーティング機において、0.3~1.0m/分の速度で銅箔基材上にスラリーをコーティングすること、及び(iii)50~130℃の温度で、カレンダ加工機においてアノードをカレンダ加工することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、そうでないことが明示的に特定される場合を除いて、様々な代替の変形及び工程順序を想定し得ることを理解されたい。更に、任意の実施例以外、又は別段の指示がある場合を除き、例えば本明細書で使用される成分の量を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。特に明記しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に示される全ての百分率は、全組成物の重量百分率を指すことに留意されたい。
【0023】
したがって、本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の例示されたシステム又は方法パラメータに限定されず、これらは当然変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的としており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0024】
本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書のいずれかにおける実施例の使用は例示にすぎず、決して本発明又は任意の例示された用語の範囲及び意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本文書が優先される。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリマー(polymer)」への言及は、2つ以上のそのようなポリマーを含み得る。
【0027】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じ又は他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものではない。
【0028】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」などの用語は、オープンエンドである、すなわち、含むが限定されないことを意味すると理解されるべきである。
【0029】
一態様では、本出願は、リチウムイオン電池用の複合アノードを調製するためのプロセスを提供し、以下のステップ、
i.活物質、バインダ及び溶媒を混合することによって遊星混合機においてアノードスラリーを形成すること、
ii.コーティング機において、0.3~1.0m/分の速度で銅箔基材上にスラリーをコーティングすること、及び、
iii.50~130℃の温度で、カレンダ加工機においてアノードをカレンダ加工すること、
を含む。
【0030】
一実施形態では、アノードスラリーは、溶媒の存在下で活物質とバインダとを混合することによって遊星混合機で調製される。本発明によるアノードスラリーは、遊星混合機において、活物質を乾式混合し、続いてバインダを添加し、次いで溶媒を添加することによって行われる。
【0031】
一実施形態では、活物質は、球状グラファイト、鱗片状グラファイト、難黒鉛化性炭素、メソカーボンマイクロビーズなどから選択される。好ましい実施形態では、活物質は球状グラファイト及び鱗片状グラファイトである。
【0032】
一実施形態では、バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)などから選択される。特定の実施形態では、バインダはポリフッ化ビニリデンである。バインダは、電極内の構成材料間の良好な接着を提供すると共に、基板上に構成材料を結合する。バインダは、電池で使用される材料と適合しなければならず、また、電池の動作電位窓において電気化学的安定性を示さなければならない。
【0033】
一実施形態では、溶媒は、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)などから選択される。好ましい実施形態では、溶媒は、1-メチル-2-ピロリジノンである。溶媒の役割は、スラリー中の成分のより良好な混合を提供するためにバインダを溶解することである。
【0034】
このプロセスは、遊星混合機で混合する前に成分を乾燥させることを含む。電極中の水分含有量は、リチウムイオン電池の効率、可逆容量及びサイクル寿命に影響を及ぼす重要な因子である。したがって、アノードスラリー調製に使用される成分は、水分を除去するために混合する前に乾燥される。
【0035】
PVDFを除く粉末材料を、真空下、150~230℃で20~36時間乾燥させる。PVDFをより低い温度で乾燥させる。PVDFを600~700mmHgの真空下、50~80℃で2~7時間乾燥させる。
【0036】
溶媒の存在下で活物質とバインダとを混合することによるアノードスラリーの形成は、遊星混合機で行われる。アノードの成分は、入口を通って遊星混合機に供給される。遊星混合機は、遊星ブレード及び高速分散機を含む。遊星混合機における成分の混合は、成分の均一な混合を確実にし、活物質の粉砕を回避し、それによって優れた性能特性を有するアノードを達成するのに役立つ。
【0037】
一実施形態では、遊星ブレードの速度は40~160rpmの範囲内であり、分散機の速度は450~600rpmの範囲内である。
【0038】
成分の混合に採用される順序は、アノードの電気化学的特性を決定する上で非常に重要である。本開示によれば、アノードスラリー形成プロセスは、高速分散機を備えた遊星混合機で行われる。アノードスラリー調製の第1のステップは、粉末材料をより低速で乾式混合し、続いて必要な量のPVDF溶液を添加することを含む。次いで、混合を継続しながら、NMPを異なる間隔で添加して、アノードスラリーの粘度を所望のレベルまで低下させる。
【0039】
スラリー処理は、2~15%の範囲の相対湿度を有する湿度制御された環境で行われる。
【0040】
特定の実施形態では、スラリーの粘度は、100rpmの速度で2000~15000cpsの範囲である(スピンドルS-06を使用してBrookfield Viscometer RVDV-1Primeで測定)。スラリーの粘度は、電極の特性を決定する上で重要な役割を果たす。粘度は、担持レベル(付着量)、剥離強度の制御性を決定し、それによってサイクル中の電極の性能を決定する。
【0041】
一実施形態では、活物質は、アノードスラリーの総重量に基づいて45~55重量%の範囲の量で存在する。
【0042】
一実施形態では、バインダは、アノードスラリーの総重量に基づいて1~10重量%の範囲の量で存在する。
【0043】
一実施形態では、溶媒は、アノードスラリーの総重量に基づいて45~55重量%の範囲の量で存在する。
【0044】
電極の組成は、その電気化学的特性を決定する上で非常に重要である。電極中の活物質の濃度は、電極による放電容量を決定する。バインダは、電極内の構成材料間の接着を提供すると共に、基板上に構成材料を結合する。高い活物質濃度は、高い容量をもたらす。しかし、導電性希釈剤及びバインダの最適濃度は、電池の良好なサイクル寿命及びレート性能のために必要とされる。
【0045】
更なるステップでは、プロセスは、コーティング機で銅箔基材上にアノードスラリーをコーティングすることを含む。一実施形態では、銅箔基材は、8~15μmの範囲の厚さである。
【0046】
銅箔基材上へのアノードスラリーのコーティングは、コーティング機で行われる。遊星混合機で形成されたアノードスラリーは、コーティング機に移送される。コーティング機はリバースコンマ方式で作動する。リバースコンマブレードとアプリケータとの間のギャップは、銅箔基材上の活物質の所望の担持レベルを得るために最初に調整される。一実施形態では、ギャップ設定値は100~300μmの範囲内である。最適なコーティング速度及び乾燥温度は、溶媒を完全に除去し、亀裂、活物質の剥離などの欠陥のない電極を得るために必要である。
【0047】
本開示によるアノードスラリーのコーティングは、a)スラリーをスラリーダムに供給してコーティングを開始すること、b)アプリケータとリバースコンマブレードとの間の厚さに基づいてスラリーを箔に転写すること、c)スラリーでコーティングされた箔を2つの加熱ゾーンに通すこと、d)箔の一方の面のコーティングを完了した後、箔の他方の面のコーティングを作製するために反転することを含む。
【0048】
コーティング機は、複数の加熱ゾーンを含む。スラリーでコーティングされた箔は、加熱ゾーンを通過する。箔の一方の面のコーティングを完了した後、箔の他方の面のコーティングを作製するために反転させる。コーティング速度及び温度の値は、2つの加熱ゾーンを通過した後のアノードの乾燥に基づいて決定される。
【0049】
一実施形態では、アノードは、コーティング機において50~150℃の範囲の温度で加熱ゾーンで乾燥される。
【0050】
次いで、乾燥したアノードを最終的にロール状に巻き付ける。一実施形態では、コーティング速度は0.3~0.8m/分の範囲である。
【0051】
コーティング環境は、電極の特性を決定する上で重要な役割を果たす。コーティングプロセスは、2~15%の範囲の相対湿度で行われる。コーティング後のアノードは、真空下で60~100℃の範囲の温度で乾燥される。一実施形態では、コーティング後のアノードの厚さは、150~250μmの範囲である。一実施形態では、アノードを600mmHg~700mmHgの範囲の真空で15時間~25時間乾燥させる。
【0052】
次のステップでは、プロセスは、カレンダ加工機におけるアノードのカレンダ加工を含む。一実施形態では、アノードのカレンダ加工は、0.5~3m/分の速度で行われる。一実施形態では、アノードのカレンダ加工は、カレンダ加工機において50~150℃の範囲の温度で行われる。
【0053】
カレンダ加工機は、予熱ゾーンと、アノードをプレスするための2つの加熱されたロールと、を含む。このようにして本開示によりロール形態で形成されたアノードは、予熱ゾーンを通過し、カレンダ加工機のローラ内で0.5~3m/分の速度で100~200μmの厚さにプレスされる。
【0054】
一実施形態では、予熱ゾーンの温度は、80~150℃の範囲である。一実施形態では、カレンダロールの温度は、50~100℃の範囲である。
【0055】
このようにして本開示により形成されたアノードは、カソードに対して組み立てられて、リチウムイオン電池を形成する。このようにして形成されたリチウムイオン電池は、優れた電池特性を示した。本発明によるアノード及びLiNi0.8Co0.15Al0.05系カソードを有するリチウムイオン電池は、2000サイクル試験した場合、C/2-1C充放電レートで100%の放電深度で80%を超える容量維持率を示した。
【0056】
一実施形態では、アノードの剥離強度は、10~40gf/cmの範囲である。好ましい実施形態では、剥離強度は、10~20gf/cmの範囲である。
【0057】
一実施形態では、アノードの比容量は、345~365mAh/gの範囲内である。好ましい実施形態では、比容量は、350~355mAh/gの範囲である。
【0058】
一実施形態では、本発明によるアノードを有する電池の容量維持率は、カソードとしてLiNi0.8Co0.15Al0.05に対してC/2充電レート及び1C放電レートで試験した場合、2000サイクルで80%を超える。
【0059】
本開示によるリチウムイオン電池用の複合アノードは、銅箔を除いて、(i)グラファイト(球状):60~80%、(ii)グラファイト(鱗片状):10~30%、PVDF:2~10%を含む。いくつかの実施形態では、複合アノード中の活物質はまた、メソカーボンマイクロビーズ、難黒鉛化性炭素、Siなどであってもよい。
【0060】
以下の実施例は、特許請求される発明をよりよく説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。以下に記載されるすべての特定の材料及び方法は、本発明の範囲内に入る。これらの特定の組成物、材料、及び方法は、本発明を限定することを意図するものではなく、単に本発明の範囲内にある特定の実施形態を例示することを意図している。当業者は、本発明の能力を発揮することなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の材料及び方法を開発することができる。このような変形が本発明の範囲内に含まれることは、本発明者らの意図である。
【実施例
【0061】
優れた電池特性を有するリチウムイオン電池用複合アノードの調製を以下の実施例に記載する。
【0062】
実施例1
混合グラファイト系複合アノードの電極製造について以下に説明する。
【0063】
複合アノードは、活物質としての球状及び鱗片状グラファイトと、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)との混合物からなる。電極組成は、グラファイト(球状):70~75%、(ii)グラファイト(鱗片状):20~25%、PVDF:4~6%である。球状グラファイトの粒径は15~30μm(D50)であり、鱗片状グラファイトの粒径は15~35μm(D50)である。電極スラリーの処理には、溶媒として1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を使用する。グラファイト粉末及びPVDFを、混合前に真空下で乾燥させる。電極製造は、スラリー調製、電極コーティング及びカレンダ加工を含む。
【0064】
スラリー調製は、高速分散機を備えた遊星混合機で行われる。スラリー調製は、50~70rpmの遊星ブレード速度及び450~500rpmの分散機速度で混合機内において球状及び鱗片状グラファイト粉末を乾式混合すること、続いてポリフッ化ビニリデン溶液を添加し、50~150rpmの遊星ブレード速度で混合を継続しながら、異なる間隔でNMPを添加することを含む。NMPの体積は、50~54%のスラリー固形分を得るように調整される。
【0065】
電極コーティングは、リバースコンマ方式で作動するコーティング機で行われる。コーティングには、厚さ10~12μmの銅箔を使用した。リバースコンマブレードとアプリケータとの間のギャップは、150~200μmのギャップを得るように調整される。スラリーをスラリーダムに装填し、コーティングを行う。コーティングは0.3~0.7m/分の速度で行われる。加熱ゾーンの温度は80~120℃に保たれる。乾燥後の電極は、機械からロール状で回収される。次いで、電極を真空下、70℃で15~20時間乾燥させる。両面コーティング後の電極の厚さは200~260μmである。
【0066】
電極のカレンダ加工は、予熱ゾーン及びカレンダロールを備えたカレンダ加工機で行われる。予熱温度は100~120℃であり、カレンダ加工ロールの温度は50~80℃である。ロール形態の電極を1~2m/分の速度で予熱ロール及びカレンダロールに通して、140~170μmの最終電極厚さを得る。
【0067】
実施例2
混合グラファイト系複合アノードの電極製造について以下に説明する。
【0068】
複合アノードは、活物質としての球状及び鱗片状グラファイトと、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)との混合物からなる。電極組成は、グラファイト(球状):71~73%、(ii)グラファイト(鱗片状):21~24%、PVDF:5~7%である。電極スラリーの処理には、溶媒として1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を使用する。グラファイト粉末及びPVDFは、混合前に真空下で乾燥させる。電極製造は、スラリー調製、電極コーティング及びカレンダ加工を含む。
【0069】
スラリー調製は、高速分散機を備えた遊星混合機で行われる。混合を継続しながら、遊星混合機に入れたPVDFに1-メチル-2-ピロリジノンを異なる時間間隔で添加することによって、PVDF溶液を遊星混合機で調製する。スラリー調製は、50~60rpmの遊星ブレード速度及び500~550rpmの分散機速度で混合機内において球状及び鱗片状グラファイト粉末を乾式混合すること、続いて調製されたポリフッ化ビニリデン溶液を添加し、50~150rpmの遊星ブレード速度で混合を継続しながら、異なる間隔で、NMPを添加することを含む。NMPの体積は、48~52%のスラリー固形分を得るように調整される。
【0070】
電極コーティングは、リバースコンマ方式で作動するコーティング機で行われる。コーティングには、厚さ10~12μmの銅箔を使用した。リバースコンマブレードとアプリケータとの間のギャップは、100~150μmのギャップを得るように調整される。スラリーをスラリーダムに装填し、コーティングを行う。コーティングは0.5~0.9m/分の速度で行われる。加熱ゾーンの温度は80~120℃に保たれる。乾燥後の電極は、機械からロール状で回収される。次いで、電極を真空下、70℃で15~20時間乾燥させる。両面コーティング後の電極の厚さは120~160μmである。
【0071】
電極のカレンダ加工は、予熱ゾーン及びカレンダロールを備えたカレンダ加工機で行われる。予熱温度は100~120℃であり、カレンダ加工ロールの温度は50~80℃である。ロール形態の電極を1~2m/分の速度で予熱ロール及びカレンダロールに通して、100~130μmの最終電極厚さを得る。
【0072】
【0073】