(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】末梢血管疾病の判定のための光電式容積脈波記録撮像と組み合わせた灌流血管造影法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241107BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20241107BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241107BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20241107BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61B6/00 550A
A61B6/50 511E
A61B6/00 570
A61B6/03 560G
A61B6/46 536A
A61B5/02 310A
(21)【出願番号】P 2022522388
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2020078680
(87)【国際公開番号】W WO2021074097
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-10-12
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス ベルナルドス ヘンドリクス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】イザミス マリア‐ルイーサ
(72)【発明者】
【氏名】シャン ツァイフェン
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525599(JP,A)
【文献】特開2008-178466(JP,A)
【文献】特表2018-502622(JP,A)
【文献】特表2015-527100(JP,A)
【文献】特開2013-202414(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189071(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/097702(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0124768(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051648(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0245766(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0313196(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0380807(US,A1)
【文献】特表2020-527992(JP,A)
【文献】Lior Dayan et al.,SPECT/CT-plethysmography--non-invasive quantitation of bone and soft tissue blood flow,Journal of Orthopaedic Surgery and Research,2008年,Vol. 3, No. 36,p. 1-8,<検索日:2024.05.30>, <DOI: 10.1186/1749-799X-3-36>, <URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2527489/ でダウンロード可能>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32 、 5/00 - 5/03 、
5/06 - 5/22 、 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官
の深部組織に対する灌流状態を示す複数の二次元投影像を有する第1の画像シーケンスを受け取る第1の入力ポートと、
前記器官
の表面組織または
前記器官の表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元光電式容積脈波記録像を有する第2の画像シーケンスを受け取る第2の入力ポートであって、前記複数の
二次元光電式容積脈波記録像の各々は、前記器官
の表面上の対応する複数の異なる空間位置において血液量の値と関連付けられた複数の像点を有する、第2の入力ポートと、
前記受け取った第1の画像シーケンスおよび前記受け取った第2の画像シーケンスからそれぞれ、経時的な前記灌流状態の第1の変化および第2の変化を抽出し、且つ経時的な前記灌流状態の前記第1の変化および前記第2の変化またはこれらから導き出された量を整列させる処理ユニットと、
前記灌流状態の前記整列された第1の変化および前記整列された第2の変化または前記導き出された量を視覚化するために灌流撮像信号を出力する出力ポートとを備える、灌流像を処理するためのデバイスであって、
前記処理ユニットは、以前に送達された造影剤ボーラスの通過を検出することによって前記灌流状態の前記第1の変化および前記第2の変化を時間的に整列させる、デバイス。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記器官
の組織における所定の関心領域にわたって、前記灌流状態の前記整列された第1の変化および前記整列された第2の変化から到着時間信号、ピークまでの時間信号、時間密度信号で構成される群のうちの少なくとも1つを導き出す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記取得した第2の画像シーケンスにおいて、撮像中に前記器官
の表面組織または前記
器官の表面付近の組織の運動によって生じた運動アーチファクトを相殺する運動補償モジュールをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記器官
の表面組織または前記
器官の表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元蛍光像を有する第3の画像シーケンスを受け取るための第3の入力ポートをさらに備え、前記処理ユニットはさらに、前記取得した第3の画像シーケンスから経時的な前記灌流状態の第3の変化を抽出し、経時的な前記灌流状態の前記第1の変化、前記第2の変化および前記第3の変化を整列させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の灌流像を処理するためのデバイスと、
前記第1の画像シーケンスを取得するためのX線撮像装置であって、前記第1の入力ポートに接続されている、または接続可能であるX線撮像装置と、
前記第2の画像シーケンスを取得するための光電式容積脈波記録撮像装置であって、前記第2の入力ポートに接続されている、または接続可能なである光電式容積脈波記録撮像装置と、
前記X線撮像装置および前記光電式容積脈波記録撮像装置による同時の撮像を開始させる処理ユニットと、
前記灌流状態の前記整列された第1の変化および前記整列された第2の変化またはこれらから導き出された量を共通の画像内で視覚化するためのディスプレイユニットであって、前記出力ポートに接続されている、または接続可能であるディスプレイユニットとを備える、灌流撮像システム。
【請求項6】
前記灌流状態の前記整列された第1の変化および前記整列された第2の変化、または前記導き出された量を前記器官の三次元復元像にマッピングするための画像マージングモジュールをさらに備え、
前記ディスプレイユニットは、前記灌流状態の前記マッピングされ整列された第1の変化および前記マッピングされ整列された第2の変化またはこれらから導き出された量を前記器官の前記三次元復元像に対するオーバーレイ画像として表示する、請求項5に記載の灌流撮像システム。
【請求項7】
前記光電式容積脈波記録撮像装置は、可視スペクトルおよび/または赤外線スペクトルで光を放出する光源と、撮像中、前記光源によって放出され、前記器官の表面組織または前記
器官の表面付近の組織から反射された光を検出するためのカメラとを備える、請求項5に記載の灌流撮像システム。
【請求項8】
前記器官
の表面組織または前記
器官の表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元蛍光像を有する第3の画像シーケンスを取得するためのカメラをさらに備え、当該カメラは前記第3の入力ポートに接続されている、または接続可能である、請求項
4に従属する請求項5から7のいずれか一項に記載の灌流撮像システム。
【請求項9】
撮像中の前記第2の画像シーケンスにおける1つまたは複数の像点において前記血液量の値の測定可能な減少を生じさせるために、膨張カフのような血液保持および解放手段をさらに備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の灌流撮像システム。
【請求項10】
末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法であって、前記方法は、
撮像中に灌流されている器官
の深部組織に対する灌流状態を示す複数の二次元X線投影像を有する取得した第1の画像シーケンスを提供するステップと、
撮像中に灌流されている前記器官
の表面組織または前記
器官の表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元光電式容積脈波記録像を有する同時に取得した第2の画像シーケンスを提供するステップであって、前記複数の
二次元光電式容積脈波記録像の各々は、前記器官
の表面上の対応する複数の異なる空間位置において血液量の値と対応付けられる複数の像点を有する、提供するステップと、
前記取得した第1の画像シーケンスおよび前記取得した第2の画像シーケンスからそれぞれ、経時的な前記灌流状態の第1の変化および第2の変化を抽出するステップと、
前記灌流状態の前記第1の変化および前記第2の変化またはこれらから導き出された量を時間的に整列させるステップと、
ディスプレイユニット上に表示するための画像を生成するステップであって、前記画像は、複数の灌流器官組織位置において、前記灌流状態の前記整列された第1の変化および前記整列された第2の変化または前記導き出された量を示す複数の画像信号を有する、生成するステップとを有する、方法であって、
前記灌流状態の前記第1の変化および前記第2の変化、または前記導き出された量を時間的に整列させるステップは、以前に送達された造影剤ボーラスの通過を検出するステップを有する、方法。
【請求項11】
前記取得した第1の画像シーケンスおよび前記取得した前記第2の画像シーケンスと同時に取得した、第3の画像シーケンスを提供するステップをさらに有し、前記取得した第3の画像シーケンスは、撮像中に灌流されている前記器官
の表面組織または前記
器官の表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元蛍光像を有する、提供するステップと、前記取得した第3の画像シーケンスから経時的な前記灌流状態の第3の変化を抽出するステップと、
前記灌流状態の前記第1の変化、前記第2の変化および前記第3の変化を時間的に整列させるステップとをさらに有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
撮像中に前記器官
の表面組織または前記
器官の表面付近の組織が動くことによって生じた運動アーチファクトを相殺するために、前記取得した第2の画像シーケンスの少なくとも前記複数の
二次元光電式容積脈波記録像に対して運動補償を適用するステップをさらに有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記取得された画像シーケンスが入力として提供されるデータ処理デバイス上で実行されるとき、前記データ処理デバイスに請求項10から12のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用撮像デバイス及び医療用撮像方法の分野に関する。より具体的には、本発明は、灌流血管造影法と光電式容積脈波記録との両方を用いて末梢器官の血管組織を撮像するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
灌流血管造影法は、末梢器官における血管疾病の判定並びにその治療のために広く行き渡り認識された技術を表している。それは、二次元蛍光透視法などの、コントラスト増強X線撮像によって正常に撮像される有機体の深部組織の灌流特性の研究に依拠している。その結果、灌流血管造影法は、例えば、虚血又は血管形成後の閉塞した深部血管の血管再生に関して、灌流組織の健康状態に貴重な洞察を提供する。
【0003】
欧州特許明細書EP-286664号は、光電式容積脈波記録(PPG)解明モジュールが、血管から位置変え可能な光センサによって収集されたPPG情報を表す、画像におけるピクセル値を出力する開通性評価システムを開示する。ディスプレイへの出力のために画像生成モジュールによってPPGマップが生成される。画像生成モジュールは、PPG解明モジュールに結合されており、よって出力ピクセルを受け取る。光センサ及び光源は、光センサが、光源によって生成された光に応答して血管から光を受光するように内視鏡上に設置される。一実施形態において、画像生成モジュールは、PPGマップをX線像の上に重ねるように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に記載される実施形態は、当面の血管に関与する(最小限の)侵襲式の外科的介入中に典型的に生じるような、内視鏡によって到達される血管の開通性の評価を対象としている。したがって器官組織の灌流特性に対して利用可能な情報は制限される、又はそのような情報は存在しない。
【0005】
灌流特性に対する多量の情報、及び末梢器官の深部血管に関する灌流組織の健康状態を提供するという事実にも関わらず、灌流血管造影法は、灌流器官組織の全体の灌流について、及びとりわけ器官の表面付近の表在組織領域での灌流器官組織のより完全な三次元灌流分布について制限された情報しか提供しない。末梢器官の灌流組織の全体の灌流特性に依拠するより完全な研究は、血管疾病のより正確な判定並びにより効果的な処置計画及びそのモニタリングの精緻さを可能にする。
【0006】
この目的を達成するように構成された内視鏡デバイスによって単一の又はいくつかの血管に関して収集された光電式容積脈波記録(PPG)信号は、外科的介入中の開通性の判定に有益であるが、この手法は、四肢、例えば脚又は腕などの伸張した末梢器官組織全体に関連する灌流特性の研究には適さない。
【0007】
研究及び評価に利用可能な灌流された末梢器官組織の全体の灌流特性に対する情報を作成する撮像方法及び撮像デバイスを提供し、これにより器官組織の深部灌流特性、組織微小循環及び器官の表面付近の表在器官組織の灌流が明らかになることが本発明の実施形態の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明による方法及びデバイスによって達成される。
【0009】
本発明の第1の態様によると、灌流撮像を行うためのデバイスが提供される。デバイスは、撮像中、灌流されている器官深部組織に対する灌流状態を示す複数の二次元投影像を有する第1の画像シーケンスを受け取るように構成された第1の入力ポートと、撮像中、灌流されている器官表面組織又は表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元光電式容積脈波記録像を有する第2の画像シーケンスを受け取るように構成された第2の入力ポートであって、複数の光電式容積脈波記録像の各々は、器官表面上の対応する複数の異なる空間位置において血液量の値と関連付けられた複数の像点を有する第2の入力ポートと、受け取った第1の画像シーケンス及び受け取った第2の画像シーケンスからそれぞれ、経時的な灌流状態の第1の変化及び第2の変化を抽出するように構成され、且つ灌流状態の第1の変化及び第2の変化を時間的に整列させる、又はこれらから導き出された量を整列させるように構成された処理ユニットと、灌流状態の整列された第1の変化及び整列された第2の変化又は前記導き出された量を視覚化するために灌流撮像信号を出力するように構成された出力ポートとを備える。
【0010】
本発明の実施形態によるデバイスにおいて、処理ユニットは、例えば、第2の画像シーケンスにおける1つ又は複数の像点における血液量の値の急な減少として、以前に送達された造影剤ボーラスの通過を検出することによって灌流状態の第1の変化及び第2の変化を時間的に整列させるように構成される。
【0011】
本発明の実施形態によるデバイスにおいて、処理ユニットは、撮像中に灌流されている器官組織における所定の関心領域にわたって、灌流状態の整列された第1の変化及び整列された第2の変化から到着時間信号、ピークまでの時間信号、時間密度信号で構成される群のうちの少なくとも1つを導き出すように構成される。
【0012】
本発明の実施形態によるデバイスは、取得した第2の画像シーケンスにおいて、撮像中に器官表面組織又は表面付近の組織によって生じた運動アーチファクトを相殺するように適合された運動補償モジュールをさらに備える。
【0013】
本発明の実施形態によるデバイスは、撮像中に灌流されている器官表面組織又は表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元蛍光像を有する第3の画像シーケンスを受け取るための第3の入力ポートをさらに備え、処理ユニットは、取得した第3の画像シーケンスから経時的な灌流状態の第3の変化を抽出するように、且つ灌流状態の第1の変化、第2の変化及び第3の変化を時間的に整列させるようにさらに構成される。
【0014】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにしたがって灌流撮像を実行するためのデバイスを備える灌流撮像システムが記載される。灌流撮像システムはさらに、第1の画像シーケンスを取得するためのX線撮像装置と、第2の画像シーケンスを取得するための光電式容積脈波記録(PPG)撮像装置とを備え、X線撮像装置は、第1の入力ポートに結合されており、PPG撮像装置は、第2の入力ポートに結合されている。第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスの各々は、複数の二次元画像を有し、第1の画像シーケンスの二次元画像は、撮像中に灌流されるべき器官深部組織に対する灌流状態を示す投影像であり、第2の画像シーケンスの二次元画像は、撮像中に灌流されるべき器官表面組織又は表面付近の組織に対する灌流状態を示す光電式容積脈波記録像である。PPG像の各々において、複数の像点が、器官表面上の対応する複数の異なる空間位置において血液量の値と対応付けられる。処理ユニットはまた、灌流撮像を実行するためのデバイスの一部として灌流撮像システムの一部であり、X線撮像装置及びPPG撮像装置による同時の撮像を開始するように、且つ取得した第1の画像シーケンス及び取得した第2の画像シーケンスからそれぞれ、経時的な灌流状態の第1の変化及び第2の変化を抽出するように構成される。さらに、処理ユニットは、灌流状態の第1の変化及び第2の変化を時間的に整列させる、又はこれらから導き出された量を整列させるように構成される。灌流状態の第1の変化及び第2の変化又は前記導き出された量はその後、灌流撮像システムのディスプレイユニット上で共通の画像内に視覚化される。灌流撮像システムは、実施形態ではまた、撮像中に灌流されるべき器官組織に造影剤を送達するための送達デバイスも含み、送達デバイスは、X線撮像装置及びPPG撮像装置による同時の撮像の前に造影剤を送達するように適合されている。
【0015】
本発明の第3の態様によると、末梢器官組織灌流撮像システムに関する灌流特性を撮像するための方法が記載される。そのような方法は、例えば、本発明の第1の態様の一実施形態による灌流撮像を実行するためのデバイスを使用する際、又は撮像のための本発明の第2の態様による一実施形態による灌流撮像システムを使用する際に実行される。方法は、取得した第1の画像シーケンスを提供するステップと、同時に取得した第2の画像シーケンスを提供するステップとを有する。第1の画像シーケンスは、撮像中に灌流されるべき器官深部組織に対する灌流状態を示す複数の二次元X線投影像を有し、第2の画像シーケンスは、撮像中に灌流されるべき器官表面組織又は表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元光電式容積脈波記録像を有する。各PPG像は、器官表面上の対応する複数の異なる空間位置において血液量の値と対応付けられる複数の像点を有する。次に、取得した第1の画像シーケンス及び取得した第2の画像シーケンスからそれぞれ、経時的な灌流状態の第1の変化及び第2の変化が抽出され、灌流状態の第1の変化及び第2の変化又はこれらから導き出された量が時間的に整列される。ディスプレイユニット上に表示するための画像もまた生成され、生成された画像は、複数の灌流器官組織位置において、灌流状態の整列された第1の変化及び整列された第2の変化又は前記導き出された量を示す複数の画像信号を有する。
【0016】
従来のX線血管造影法は、深部器官組織の灌流特性に関して二次元投影像を集めるのみであるのに対して、X線撮像装置及びPPG撮像装置の組み合わされた設備及び撮像中の同時の使用は、本発明の実施形態による灌流撮像システムの組織撮像能力を、X線灌流血管造影法において利用可能であったものよりはるかに拡張させ、灌流末梢器官組織の全体の灌流特性への洞察を与える。2つの画像シーケンスから抽出された、経時的な灌流された有機体組織の灌流状態の変化に基づいた、深部器官組織の灌流特性及び表在器官組織の灌流特性の両方の観点での有意義な解釈は、これらの変化が一時的に整列された場合に可能であることが分かった。
【0017】
単一の灌流測定における単一の灌流撮像システムを介して、深部灌流、微小循環濃染及び表在灌流並びに空間的三次元灌流分布情報を組み合わせる、灌流末梢器官組織の全体の灌流特性が獲得され、分析のために利用可能にされる点が本発明の実施形態の利点である。これは、より有効な末梢血管疾病の治療及びそのモニタリングを可能にする。
【0018】
既存の血管造影法X線撮像装置、プロトコル及びソフトウェアを、PPG像シーケンスの同時の取得を考慮するように容易に適合させることができる点が本発明の実施形態の利点である。
【0019】
従来の血管造影法において使用される二次元X線撮像技術は、三次元での空間灌流分布を提供するために2Dを超えて拡張される点が、本発明の実施形態のさらなる利点である。
【0020】
本発明の種々の実施形態において、灌流撮像システムの送達デバイスによって送達された、以前に投与された造影剤を有するボーラスの通過によって生じるPPG像における画像信号強度の減少を使用して、2つの同時に取得された画像シーケンスを時間的に整列させることができる。したがって、少なくとも2つの異なる撮像モダリティ、すなわちX線とPPGの同時に取得された画像シーケンスを、PPG撮像装置によって取得された画像シーケンスにおける画像信号振幅の低下を検出することによって時間的に正確に整列させることができ、この低下は、灌流血管造影法に既に存在する、以前に送達された造影剤ボーラスの通過によって生じるものである点が本発明の実施形態の利点である。時間的な整列を達成するのに別のデバイス又は製品は必要とされない。これは、PPG撮像プロセスにマイナスの影響を与える、又はPPG撮像プロセスに干渉する、造影物質のボーラスの通過を考慮する当業者にとって驚くべきことであり、予期しない発見である。例えば血流の維持中断又は置換えによる、周期的変動の何らかの乱れ、又はその何らかの長く続く抑制は、動脈酸素飽和度又は心拍数測定に関して一般的に予測されるPPG像信号のタイプと矛盾する情報を提供する。さらに、本発明の態様は、X線灌流血管造影撮像及びPPG撮像は、互いに適合可能である2つの撮像技術であり、それに関して、ボーラスの通過などの相互作用機構が有益であり得ることを例証している。
【0021】
方法の実施形態において、任意の画像を提供するステップという用語は、そのような画像を受け取るステップを含む場合、又は含まない場合がある。画像を受け取るステップは、画像が実際には方法によって生成されない状況も含むことが意図されている。例えば、それらは、どこか他の場所、別の方法及び/又は別の時間に獲得される場合もあり、現在の方法によって処理されるのみである。方法は当然のことながら、画像の生成及びその処理を含む。
【0022】
方法は、画像が画像処理デバイス及び/又はシステムのそれぞれの入力によって受信されるコンピュータ実現方法である。
【0023】
本発明の一実施形態では、処理ユニットは、撮像中に灌流されるべき器官組織内の所定の関心領域にわたって、灌流状態の整列された第1の変化及び整列された第2の変化から量を導き出すように構成されており、導き出された量は、到達時間信号、ピークまでの時間信号、時間密度信号から成る群の少なくとも1つから選択される。導き出された量は、さらに研究されるとき、又は灌流撮像システムのディスプレイユニット上で視覚化されたとき、例えば改良された治療計画を開発する目的で、灌流器官組織の全体の灌流特性、とりわけ動的な灌流特性のさらに深い理解を生み出すのに医療従事者を助けることができる。
【0024】
種々の実施形態において、撮像中に灌流されるべき器官は、末梢器官、例えば四肢である。
【0025】
本発明の実施形態によると、非イオンヨウ化造影剤を灌流撮像システムの送達システムによって、灌流撮像方法の直前のそのときに、末梢器官組織に送達することができる。そのような造影剤は、撮像されている対象者の健康リスクを大きく低下させる副作用は、極めてわずかにしか示さない。
【0026】
本発明の実施形態によると、灌流撮像システムは、取得した第2の画像シーケンスにおいて、撮像中の器官の表面組織又は表面近くの組織の運動によって生じた運動アーチファクトを相殺するように適合された運動補償モジュールを有する。したがって、末梢器官、その表面又はその一部の動きによって生じた運動アーチファクトは、灌流撮像システムの精度に潜在的に影響を与える可能性があり、低下させる、さらには最小限にする、又はそれを補償することができる。
【0027】
本発明の実施形態は、蛍光剤を使用する器官の表面付近の灌流器官組織の蛍光撮像と有利に組み合わせることができる。これは、撮像のための末梢器官の灌流特性に追加データを提供する。そのような実施形態に関して、灌流撮像システムは、複数の二次元蛍光像を有する第3の画像シーケンスを取得するためにカメラを備える。蛍光像は、撮像中に灌流されるべき器官の表面組織又は表面付近の組織に対する灌流状態を示す。さらに、送達デバイスによって以前に送達された造影剤は、蛍光透視撮像に適した蛍光剤を有する。そのような実施形態による処理ユニットはまた、X線撮像装置及びPPG撮像装置と同時に、カメラによる撮像を開始するように、取得した第3の画像シーケンスから経時的な灌流状態の第3の変化を抽出するように、且つ灌流状態の第1の変化、第2の変化及び第3の変化を時間的に整列させるように構成される。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、取得された画像シーケンスが入力として提供されるデータ処理デバイス上で実行されるとき、データ処理デバイスに本発明の第3の態様による撮像方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品に関する。データ処理デバイスは、本明細書に指摘されるような画像処理デバイスである、又はデータ処理デバイス又は画像処理デバイスを備えるシステムであってもよい。
【0029】
本発明の特定の好ましい態様が、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項からの特徴は、適宜、かつ特許請求の範囲に明示的に記載されるようにだけではなく、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わされる。
【0030】
本発明及び従来技術に対して達成された利点を要約する目的で、本発明の特定の目的及び利点が上記に記載されている。当然のことながら、すべてのそのような目的又は利点が必ずしも本発明の任意の特定の実施形態によって達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば当業者は、本発明が、本明細書に教示される、又は本明細書に提示される他の目的又は利点を必ずしも達成するわけではない、本明細書に教示されるような1つの利点又は利点の集合を達成する、又は最適化するやり方で具現化される、又は実施されることを認識するであろう。
【0031】
本発明の上記の及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照することで明らかになり、解明されるであろう。
【0032】
本発明はここで、一例として添付の図面を参照して、さらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態による灌流撮像システムを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による、灌流されるべき末梢器官組織に関する灌流特性の撮像方法のステップを説明するフロー図である。
【0034】
図面は、単に概略的であり、非制限的である。図面において、要素の一部のサイズは、誇張されており、例示の目的で縮尺通りに描かれていない。寸法及び相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に必ずしも対応していない。
【0035】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、特定の実施形態に関して、且つ特定の図面を参照して記載されるが、本発明は、それに制限されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0037】
説明及び特許請求の範囲における第1、第2などの用語は、同様の要素を区別するために使用されており、一時的に、空間的に、順位付けでの、又は任意の他の様式でのいずれでも必ずしも順番を記述するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下において相互に入れ替え可能であること、及びここに記載される本発明の実施形態は、ここに記載される、又は例示されるもの以外の順番での動作が可能であることを理解されたい。
【0038】
特許請求の範囲において使用される「備える」は、その後に列挙される手段に限定されるように解釈するべきではなく、それは、他の要素又はステップを排除するものではないことに注意されたい。それはしたがって、参照されるような指定される特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するように解釈されるべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ又は構成要素或いはその集合の存在を排除するものではない。よって、「手段A及びBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみで構成されるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素のみがA及びBであることを意味する。
【0039】
本明細書を通して「ある実施形態」又は「一実施形態」に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、「ある実施形態」又は「一実施形態」というフレーズがこの明細書を通して様々な場所に現れることは、必ずしも全て同じ実施形態を指すものとは限らないが、そういう場合もある。さらに、特定の特徴、構造又は特徴は、本開示から当業者に明白であるように、任意の好適なやり方で1つ又は複数の実施形態に組み合わされる場合もある。
【0040】
同様に、本発明の例示の実施形態の記載において、本発明の種々の特徴は、本開示を合理化する、及び種々の発明の態様のうちの1つ又は複数の理解を助ける目的のために、新規の単一の実施形態、単一の図面又はその記述に一緒にグループ化される場合があることを理解されたい。しかしながら、開示のこの方法は、特許請求される発明は、各特許請求の範囲において明白に列挙されるものよりも多くの特徴を必要とするという意向を反映するように解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の上述の開示される実施形態の全ての特徴よりも少ない状態にある。よって、詳細な記載に続く特許請求の範囲はこれによって、この詳細な記載に明白に組み込まれており、各特許請求の範囲は、本発明の別個の実施形態として独自の立場を採る。
【0041】
さらに、本明細書に記載される一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる他の特徴をいくつか含むが、そうでないものもあり、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することが表されている。
【0042】
本明細書に提供される記載において、多くの特有の詳細が記載されている。しかしながら本発明の実施形態は、これらの特有の詳細なしで実施されることを理解されたい。他の例では、よく知られた方法、構造及び技術は、この記載の理解をあいまいにしないために、詳細には示されていない。
【0043】
定義
本発明のコンテキストにおいて、灌流は、血液及びリンパ液などの体液がその十分な機能を維持するために血管系を通り器官及び組織を通り過ぎる通過に関連する。より具体的には、灌流は、器官又は組織に送達される血液などの流体の体積の観点で特徴付けられることが多い。灌流状態はしたがって、時間の関数として、器官又は組織に送達された血液(又は研究下にある他の体液)の量に関連し、とりわけ流量として、すなわち単位時間当たり送達された流体の量又は体積として表される、或いは所定の時間間隔にわたって送達された流体の統合された量又は体積として表される。
【0044】
灌流器官は一般に、四肢などの末梢器官を指すが、それは、介入中に露出された場合、心臓、脳、腸又は腎臓などの内部器官を指す場合もある。したがって、器官表面は一般に、皮膚、並びに真皮及び皮下組織に近い表面を指す。しかしながら内部器官の場合、介入中に露出した器官表面は、器官を取り囲む組織構造、例えば筋肉、脂肪又は皮膜を指す。
【0045】
灌流撮像の目的のための大循環は、大きな血管系動脈を指すが、微小循環は、小動脈、毛細血管床及びリンパ毛細管を指す。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態による灌流撮像システム1の一例を示す。灌流撮像システム1の心臓部は、灌流撮像を実行するためのデバイス13であり、これはワークステーションとさらに呼ばれる。灌流撮像システム1は、X線撮像装置2と、PPG撮像装置3とを備える。撮像中に灌流されるべき器官6、例えば、例えば腕、脚、手又は足などの四肢など末梢器官が、器官6の少なくとも所定の関心領域を2つの撮像装置2、3によって同時に撮像することができるようにX線撮像装置2及びPPG撮像装置3に対して位置決めされる。例えば、脚又は腕が、灌流撮像中対象者支持台の上に位置決めされ、締め金、くさび、スポンジ、曲線付きパッド、ベルトなどの好適な固定手段によってさらに安定される。灌流撮像システム1のワークステーション13又はコンソールは、第1の入力ポート20及び第2の入力ポート21においてそれぞれ、例えば直接又はネットワークを介して、X線撮像装置2及びPPG撮像装置3に接続される。よって一実施形態では、デバイス13は、灌流撮像データを処理するためのデバイスである。データは、2つの撮像装置2及び3によって生成されている。第1の入力ポート及び第2の入力ポートは、別個のデバイス機構である、又はそれらは、単一のデバイス機構に組み込まれる場合もある。例示の実施形態におけるワークステーション13は、処理ユニット4、画像マージモジュール7及び運動補償モジュール8を備える。2つの撮像装置2及び3による同時の取得は、処理ユニットによって発行される取得コマンドによってトリガされる。X線撮像装置2及びPPG撮像装置3は次いで、各々のいくつかの二次元画像、例えば数十から数百の画像を並行して、且つ所定のフレームレートで、例えば毎秒3フレーム又はそれ以上で取得するが、これは、両方の撮像装置2、3に対して同じである、又は異なる場合もある。処理ユニット4は、単一のプロセッサ又はコントローラに限定されるものではないが、複数のプロセッサ、複数の共有プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、分散処理要素又は他の好適なデータ処理手段を記述するのにより一般的に使用される。処理ユニット4は、運動補償モジュール8及びマージモジュール7に関して機能を実行するための専用ハードウェアを備える、又は定義された機能性を果たすセグメントを備えたコンピュータソフトウェアを実行するためのハードウェアを装備する。さらに、処理ユニット4には、その独自のメモリが備わっており、このメモリに、コンピュータソフトウェアセグメント、例えば運動補償モジュール8及びマージモジュール7などのソフトウェアモジュールをロードし記憶することができる。運動補償モジュール8の機能上の目的は、以下でさらに詳細に記載するように、少なくとも、PPG撮像装置3によって取得された画像シーケンスにおける運動アーチファクト、例えば、PPG撮像装置3に対する灌流器官又は器官表面の未制御の運動を検出し、これを補償することである。マージモジュール7の機能目的は、以下でさらに詳細に記載するように、同一の灌流器官の2Dビューと3Dビューをマージすることである。
【0047】
ワークステーション13は、X線撮像装置2、3の隣に示されているが、本発明の実施形態はそのような特定の構成に限定されない。例えば、ワークステーション13は、離れた場所に設置され、他の実施形態に従ってネットワーク接続を介してアクセスされる場合もある。好ましくは、ワークステーション13はまた、器官6の灌流撮像中にX線撮像装置2及びPPG撮像装置3によって取得された画像シーケンス、利用可能であるならば器官に関して以前に獲得された画像又は画像情報(例えば以前に獲得されたX線走査、磁気共鳴撮像走査、超音波走査)を記憶するためのメモリを備える。或いは又は追加的に、器官6の灌流撮像中にX線撮像装置2及びPPG撮像装置3によって取得された画像シーケンス、又は器官に関して以前に獲得された画像又は画像情報を記憶するために、取り出す、又は送信するために、ネットワークインターフェースを介して外部メモリデバイスにアクセスする場合もある。
【0048】
灌流撮像システム1のディスプレイユニット5は、任意の好適な方法で、例えば有線又は無線で、ワークステーション13の出力ポート23に結合される。ディスプレイユニット5は、ワークステーション13の一部を形成する、又は別個に設けられる。本発明の例示の実施形態では、ディスプレイユニット5は、ディスプレイパネル、モニタ、対話型タッチスクリーンなどとして設けられる。器官深部組織及び表在組織の灌流特性に関する組み合わされた灌流マップが、ディスプレイユニット5によって単一の画像に表示される。
【0049】
灌流器官深部組織及び表在組織の場所に対して造影剤を送達するための送達デバイス9は、造影剤10で満たされた容器に取り外し可能に接続することが可能である。一例として、送達デバイス9は、カテーテルとして設けられ、その一方の端部部分において、灌流器官に血液を供給する血管に曝され、その他方の端部部分において液体を受け取り、受け取ると、液体を暴露された端部部分及び血管内に送達するように適合されている。X線灌流血管造影法のための造影剤10は、カテーテルの流体受け取り端部部分に接続された注射器又は灌流ポンプ内に提供される。
【0050】
典型的なPPG撮像装置3は、可視スペクトル及び/又は赤外線スペクトルで光を放出するための光源3a、例えば発光ダイオードなどと、光源3aによって放出された光を検出し、撮像中に器官6の表面又は器官の表面付近から反射される光を検出するためのカメラ3bとを含む。十分に明るい環境では、例えばカメラ3bでノイズフロアを超える反射信号を検出するのに十分強力な明るい周辺光などでは、光源3aは、明るい周辺光を生成する光源によって置き換えられる。PPG撮像装置3は、灌流器官表面上、又はその下に接近して、血液量の変化の非侵襲且つ非接触の撮像を可能にする。現在の実施例では、PPG撮像装置3は、反射モードで機能するように構成されており、カメラ3bは、器官の表面、例えば皮膚、又は表面付近から、例えば真皮又は皮下組織から、複数のPPG生信号として反射光を収集する。脚又は腕などの厚みのある末梢器官の場合、PPG撮像装置3の反射構成は、いずれの伝達された光信号も強力に減衰されるような、好ましい構成である。これは、本発明の実施形態を、PPG撮像装置3の反射構成のみに限定するものではない。当業者は、PPG撮像装置3は、灌流され撮像されるべき器官6の厚みが薄い場合、例えば指又はその一部などの場合、伝送モードで機能して、伝達された光の観察可能な量の検出を可能にするように構成されることを当業者は理解するであろう。
【0051】
器官6の灌流された表面組織付近で放出されるとき、造影剤10に含まれる蛍光色素によって蛍光性の光を検出するための蛍光透視撮像カメラ11もまた、
図1に例示されるように灌流撮像システムの一部である。蛍光色素は、PPG撮像装置3の光源3aと同じ光源である専用の光源によって活性化される、又は周辺光によって活性化される場合もある。蛍光透視撮像カメラ11は有利には、X線撮像装置2及びPPG撮像装置3によって取得された画像シーケンスに加えて、且つこれらと同時に第3の画像シーケンスを取得し、そこから、器官表在組織のさらなる灌流特性を推論することができる。本発明のいくつかの実施形態において、蛍光透視撮像カメラ11は、切り替え式のカラーフィルタで増強されたPPG撮像装置3のカメラ3aであってもよい。本発明の他の実施形態において、蛍光透視撮像カメラ11は、PPG撮像装置3のカメラ3aとは異なる視野角で位置決めされる、例えば、カメラ3によって撮像される器官表面の反対側の器官表面に向き、これを撮像するように位置決めされる。蛍光透視撮像カメラ11は、その捕捉された画像シーケンスをさらなる処理のために処理ユニット4に送達するためにワークステーション13の第3の入力ポート22に結合される。さらに、灌流撮像システム1は、膨張式カフなどの血液の保持及び解放手段12を含む。使用中、これは、PPG撮像装置3によって取得された画像シーケンスにおけるPPG像信号の振幅を変えることが可能な構造体を提供する。
【0052】
上述の実施例において、撮像装置2、3は共に、単一のデバイスに組み合わされる、又は別個の装置として設けられる場合もある。後者のオプションは、より容易に、且つ削減されたコストで設置することができるPPG撮像装置3で既存のX線撮像装置2を補うことによって、かなりの設置コストを有する場合が多い既存のX線撮像装置2のアップグレードに特に適している。別個の装置として設けられた場合、X線撮像装置2及び/又はPPG撮像装置3は、追加の構造要素をなおも備える、及び/又は灌流撮像システム1は、追加の組立体を提供し、これは撮像中のX線撮像装置2及びPPG撮像装置3の相対的な位置決め、配向、位置合わせ及び安定性を促進する。例えば、追加の構造要素又は追加の組立体は、光源3a及びカメラ3bのためのホルダを備え、これは、X線撮像装置2或いは例えば手術室などの部屋の壁又は天井に締結された一端を有する1つ又は複数の可撓性アームに結合されている。さらに、本発明の実施形態は、
図1に示されるロボットCアームX線装置2に限定されない。ロボット又は非ロボットデバイス、コンピュータ断層撮影(CT)X線撮像システム、二次元蛍光透視X線撮像システム及びその他を含む、種々の他のX線撮像装置2が代わりに想定され提供される。本発明の実施形態では、処理ユニット4は、灌流器官6に対する、X線撮像装置2及び/又はPPG撮像装置3の構成要素の位置決め及び配向を制御するように構成される。さらに、処理ユニット4は、ロボット送達デバイス9の動作及び造影剤10の注入量を制御するように構成される。
【0053】
例えば脚又は腕などの灌流器官組織など、灌流に対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法が、
図2を参照して次に記載される。方法のステップは、医療従事者が独自の決定を行う際、又は関連する要因を診断により明らかにする際に彼らを助ける、例えば術前/術後処置判定又は診断の一部として、より詳細で、より複雑な医療処置のコンテキストにおいて実行される。より広いコンテキストにおけるより詳細な医療処置の一部のステップは、外科的な特徴である場合があり、本発明の実施形態による灌流対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法の直前に行われる、又はこの方法の後に続く。そのような場合、ステップは、典型的に、灌流に対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法の前に行われる、又はこの方法の後に続くこと、或いは前記方法と一緒に独立して行われる、すなわち特許請求の範囲によって定義されるような本発明の主題ではないことを理解されたい。
図2を参照して記載されるように、灌流に対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法のステップは、先に記載した、
図1における灌流撮像システムの要素によって実行することができる。したがって、以下の記載は、方法のステップを、方法を実施する包括的な実施例を提供するために灌流撮像システムの個々の要素に関連付けている。灌流撮像システムの要素に対する言及は、例示的特徴を有するのみであり、関連する撮像方法の範囲を限定するものではない。より広いコンテキストでは、灌流に対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法の実施形態を使用する医療用撮像処置は、手動で開始される、医療従事者がワークステーション又はコンソールと対話して開始コマンドを発行する、又は例えば整列に達したときに自動的に開始される場合もある。これは
図2におけるフローチャートの「開始」ブロックに相当する。その後、灌流に対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法の実施形態のステップに先行する、医療用撮像処置のいくつかのステップが典型的には後に続き、制御信号が発行され送達デバイスに伝達されて、「造影剤を送達する」として指定されるように、流体を含む所定の量の造影剤の注入をトリガする。その後まもなく、別の制御信号が発行され、X線撮像装置及びPPG撮像装置に伝達されて、2つの時間相関ブロック「X線」及び「PPG」によって指定されるように、第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスそれぞれの同時の取得をトリガする。制御信号の発行及びタイミングは典型的には、ワークステーションの処理ユニットによって扱われ、処理ユニットがそれらを生成する。X線撮像装置及びPPG撮像装置、及び任意選択で蛍光透視撮像カメラによる同時の画像取得は一般に、造影剤ボーラスが撮像された器官組織関心領域に接近するのを考慮するために、送達デバイスによる造影剤の送達に関する遅延を伴って開始される。そのような遅延は、既存のX線血管造影撮像プロトコルから知られている、又はそのようなプロトコルから推定することができる。取得した第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスの画像、及び任意選択の第3の蛍光像シーケンスの画像は、ネットワーク接続を介する画像シーケンスのアクセスのために、ワークステーションのメモリデバイスに、又はワークステーションに接続可能なメモリデバイスに記憶される。より一般的な医療用撮像処置が開始するそのときには、例示の送達デバイスのカテーテルは、当然払うべき注意を伴って既に設置されている。造影剤の投与は、医療従事者によって管理され、灌流に対する末梢器官組織に関連する灌流特性を撮像するための方法の実施形態のステップより前に行われる。さらには末梢位置(例えば膝窩動脈)に静脈注射で投与された場合でも、造影剤の送達は、わずかな健康リスク及び付随する副作用しか伴わない、ほとんどそういったものがない、安全な臨床慣例処置とみなされる。詳細には、薬剤物質自体に基づくアレルギーは、患者の個人的な健康状態及び対応する物質の選択の予備診断によって排除することができ、例えば非イオン系ヨウ化造影剤は、ほとんど、又は全くアレルギー副反応を示さないため広く容認されている。送達デバイスの一部としてのカテーテルの導入及び造影剤の注入は、それらが、例えば灌流されるべき器官の訓練モデルに対して実行された場合、又は仮想訓練現実環境において実行された場合、対象者のいかなる健康リスクにも関連付けられることはないことに留意されたい。追加として、灌流器官における血液の供給は、一時的に、局所的に又は全体として阻止されるが、後に、圧力カフ又は圧力部品を備えた圧縮ストリップなどの血液保持及び解放手段によって回復される。撮像中に灌流されるべき器官組織に供給される血液量に関連付けられた動的な変化は、結果として生じる取得された画像シーケンスにおいて観察可能である。
【0054】
次に、灌流に対する末梢器官組織に関する灌流特性を撮像するための方法の実施形態のステップが記載される。2つのブロック「シーケンス1」及び「シーケンス2」は、取得した第1の画像シーケンス及び取得した第2の画像シーケンスを提供するステップにそれぞれ対応する。ここで、取得した第1の画像シーケンスは、撮像中に灌流器官深部組織に対する灌流状態を示す複数の二次元X線投影像を有する画像シーケンスを指し、取得した第2の画像シーケンスは、撮像中に灌流された同じ器官の表面組織又は表面付近の組織に対する灌流状態を示す複数の二次元PPG像を有する画像シーケンスを指す。各PPG像は、複数の像点を有し、例えば個々のピクセル、ピクセルクラスタ又はセグメント化された画像エリアを有し、これらは、例えば四肢の皮膚上の異なる位置、脚、足首及び足に沿った異なる位置及びその他などの器官表面上の対応する複数の異なる空間位置において血液量の値に関連付けられている。第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスは、それらが同時に取得されたという事実によってさらに特徴付けられる。取得の同時性は、例えば2つの画像シーケンスに含まれる、又は2つの画像シーケンスと関連付けられたデータレコード構造における開始時間及び終了時間によって定義される撮像間隔を重ねることによって、又は第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスの複数の画像の各々の画像に対して注釈が付けられたタイムスタンプを比較することによって確認することができる。蛍光透視撮像カメラによって獲得された第3の画像シーケンス、又はさらなる画像シーケンスが存在する場合、この第3の画像シーケンス又はさらなる画像シーケンスも同様に提供され、その取得の同時性を検証することができる。画像シーケンスを提供するステップは、取得した画像を、例えばビデオストリームとして直接受け取るステップを含む。例えば灌流撮像システムのワークステーションは、X線撮像装置及び/又はPPG撮像装置に直接接続されて、装置から取得した画像をデータストリームとして、例えばビデオストリームとして直接受け取る。画像シーケンスを提供するステップはまた、1つ又は複数の画像シーケンスが記憶されるデータ記憶デバイスへのアクセスを提供するステップを含む。例えば、第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンス、或いはその両方が、取得ステップ中に記憶のために送信されるワークステーションのメモリにアクセスする。第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスはまた、例えばリモートサーバ又は分散記憶システムなど、ワークステーションにリモートに接続されるメモリデバイスからアクセスされ得る、又はCD、DVD、USBデバイス、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、SDカード、磁気記憶媒体上などの、コンピュータ読み取り可能キャリア媒体上に記憶されたデータとして提供される場合もある。
【0055】
以下のステップは、例えば、コンピュータプログラムの命令に従うときにワークステーションの処理ユニットによって実行することができる。処理ユニットは単一のプロセッサ又はコントローラに限定されないが、複数のプロセッサ、複数の共有プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、分散処理要素又は他の好適なデータ処理手段を記述するのにより一般的に使用される。処理ユニットは、以下のステップにおいて言及される機能を実行するための専用ハードウェア、又は定義された機能性を果たすセグメントを備えるコンピュータソフトウェアを実行するためのハードウェアを備える。さらに、処理ユニットには、コンピュータソフトウェアセグメント、例えばソフトウェアモジュールをロードし記憶することができるその独自のメモリが備わっている。好ましくは、PPG像の第2の画像シーケンス、並びに提供された場合、蛍光像の第3の画像シーケンスは、運動アーチファクトを補償するための運動補償モジュールに適用され、運動補償モジュールによって処理され、これは、例えば、ワークステーションのメモリにロードされたコンピュータソフトウェアのソフトウェアモジュール及び処理ユニットによって実行される命令である。運動アーチファクトは、撮像中の灌流器官、又はその少なくとも一部の望まれていない、又は未制御の運動によって生じる場合が多い。例えば、血圧の増大に応答する小さな筋肉の収縮又は動脈の変形だけでなく、器官支持構造又は固定手段を介する灌流器官に達する灌流撮像装置の振動もまた、PPG撮像装置に対する、例えば、所定の関心領域が第2の画像シーケンスの各々の画像について定義された光検出カメラに対する、灌流され、撮像された器官又はその表面の相対運動を招く場合がある。相対運動が大きくなった場合、各PPG像における複数の像点、例えば血液量の値が関連付けられる各PPG像における個々のピクセル、ピクセルクラスタ又はセグメント化された画像エリアと、例えば参照PPG像(例えば第2の画像シーケンスの第1のPPG像)において決められた器官表面上の複数の別個の空間位置との間の対応関係が失われる。第2の画像シーケンスの一部又はその全体にわたる対応関係のこの潜在的な損失は、運動補償モジュールによって改善することができる。この目的のために、運動補償モジュールは、所定の閾値を超えるPPG像における器官又は器官表面運動を検出して、PPG参照像に関して、又は先行するPPG像に関して各検出された運動について運動ベクトルを決定し、決定された運動ベクトルに基づいて器官表面上の複数の別個の空間位置に対して、各PPG像における複数の像点を再度マッピングすることによって各検出された運動を補償し、これによって対応関係を回復するように適合される。運動補償モジュールのそれぞれのステップを達成するのに、当分野で知られる運動推定アルゴリズム、例えば、オプティカルフロー、ブロックマッチング、例えば特徴選択及びトラッキングを含む画像レジストレーション技術が使用される。PPG撮像装置のカメラによって提供された第2の画像シーケンスに加えて、蛍光透視撮像カメラが第3の画像シーケンスを提供する場合、2つのカメラは、取得した第3の画像シーケンス及び取得した第2の画像シーケンスにおいてそれぞれ特定された場合、対応する像点を、基本行列を推定するのに使用することができる、ステレオカメラの対を形成し、この基本行列はまた、運動検出及び運動ベクトルの決定も可能にする。器官又はその一部の運動が第2の画像シーケンスにおいて検出された場合、この運動は、運動補償モジュールによって補償され(「補償する」)、結果として「シーケンス2の安定」として指定されるように、安定化された第2の画像シーケンスとなる。運動が全く検出されない場合、元の第2の画像シーケンスは、これもまた安定化された第2の画像シーケンスとして修正されずに使用される。提供された場合、任意選択の第3の画像シーケンス又はさらなる画像シーケンスについても同様である。本発明の実施形態は、例えば、より正確に測定された灌流特性を改善するために、必要であれば、第1の画像シーケンスが運動アーチファクトに対して補償される場合もあることを排除しない。
【0056】
さらなるステップにおいて、経時的な灌流状態における第1の変化及び第2の変化が、取得した第1の画像シーケンス及び取得した第2の画像シーケンスからそれぞれ抽出され、同様に時間的に器官組織の灌流状態を決定する各さらなる取得した画像シーケンスから抽出される。器官の運動が検出された場合、取得され安定化された画像シーケンスが経時的な対応する灌流状態の変化の抽出のために使用される。経時的な第1の灌流状態の変化は、例えば最初の通過中、器官深部組織内に拡散され、そこから抜き取られる送達された造影剤の増減する密度に関連する。X線参照像として第1の画像シーケンスのX線投影像を選択することで、第1の灌流状態の変化が、X線参照像における対応する複数の画像信号に対する、第1の画像シーケンスの各X線投影像における複数の画像信号の各々の測定可能な定量化された変動として抽出される。複数のそのように抽出された画像信号の1つの画像信号は、個々のピクセル値又はピクセル値のグループ、例えば第1の画像シーケンスのX線投影像におけるセグメント化されたエリア又は関心領域にわたって統合されたピクセル値に対応する。それ故に、第1の画像シーケンスの参照X線像に関して定義された各抽出されたX線像信号に対して、第1の時間順序シーケンス又は時間曲線を生成することができ、その中で、所与の画像数又は所与の画像取得時間での画像信号の変動の量、すなわち経時的な灌流状態の抽出された第1の変化が、所与の画像数又は所与の画像取得時間に割り当てられる。画像取得時間は、注釈付きのタイムスタンプから取り出される、又は画像シーケンスの取得開始時間及び取得フレームレートに基づいて計算され、これは、画像シーケンスデータレコード又はワークステーションのメモリデバイスに記憶される。経時的な第2の灌流状態の変化は、送達された造影剤が、例えば第1の通過中に、器官表面組織又は器官の表面付近の組織に到達し、その中に拡散し、そしてそこから抜き取られるときの置き換えられた、又は希釈された血液の増減する量に関連する。造影剤による血液の置換え又は希釈の量は、PPG参照信号が選択されるという条件で、第2の画像シーケンスの各PPG像に対する複数の画像信号の各々における空間分解変動として観察可能である。取得した第1の画像シーケンスに対する経時的な灌流状態の第1の抽出された変化に対する類推において、各PPG像に対する複数の抽出された画像信号のうちの1つの画像信号は、個々のピクセル値又はピクセル値のグループに対応し、例えば、第2の画像シーケンスのPPG像におけるセグメント化されたエリア又は関心領域にわたって統合されたピクセル値に対応する。それ故、第2の画像シーケンスの参照PPG像に関して定義された各抽出されたPPG像信号に対して、第2の時間順序シーケンス又は時間曲線を生成することができる。各PPG像信号について包絡線信号を抽出することが有益である場合が多く、その理由は、種々のPPG像信号は典型的には、振動によって特徴付けられており、これは、心拍の回数での血圧振動の結果であるためである。次に、「降下を検出する」ステップが、X線像信号及びPPG信号又は抽出されたPPG包絡線信号の振幅の低下を検出する。この振幅の低下は、所定の信号振幅比と等しい、又はこれを超える減少として、或いは時間曲線の所定のスロープと等しい、又はこれを超える減少として、所定の閾値を下回る減少として検出される。灌流器官組織を通るその最初の通過において、造影剤は、濃縮されたボーラスとして現れ、これは、灌流器官の大きな血管系又は微小血管系に到達すると、その中の血液循環に迅速に置き換わり、それによりPPG撮像装置によって検出可能な血液量も急激に降下し、吸収作用を受けずにX線撮像装置のX線検出器に到達するX線の量も急激に降下する。X線信号及びPG信号の両方について信号振幅が低下するため、急激な低下は、経時的な、灌流状態において抽出された第1の変化及び第2の変化を一時的な整列させるため、例えばX線信号とPPG(包絡線)信号を時間的に整列させるための整列マーカーとして有利に機能することができる。抽出された第1の変化及び第2の変化の整列ステップ「整列させる」は、低下/降下が最初に検出された器官深部組織の一部における時間値と、低下/降下が最初に検出された、器官表面又は表面付近の組織の対応する隣接する部分における時間値とを比較するステップを含む。例えば、輪郭を合わせた画像上で画像レジストレーションを使用することによって、視覚的に識別された、又はアルゴリズムにより識別された灌流器官の深部組織及び表在組織の隣接する部分を、抽出された第1の変化及び抽出された第2の変化それぞれにおける振幅の突然の低下の最初の発生に対して分析することができる。第1の取得された画像シーケンス及び第2の取得された画像シーケンスについて検出された時間値が一致しない場合、第1の画像シーケンス又は第2の画像シーケンスのいずれか一方が、時間的に前後にシフトされ、一致が生じ2つのシーケンスが一時的に整列されるまで、シフトされた画像シーケンスの画像の各々に割り当てられた時間値を均一に増減させる。整列ステップは、例えば、取得のための2つのフレームレートが異なる場合、或いは、深部組織と表在組織との間の拡散時間定数が考慮された場合、第1の画像シーケンス及び/又は第2の画像シーケンスの2つ以上の取得された画像間の内挿ステップを含むことで、時間的に精密な整列を実現する。
【0057】
蛍光性化合物も含む造影剤は、第3の画像シーケンスを取得する蛍光透視撮像カメラによって捕捉される蛍光性の光の量の急な増加をもたらす。したがって、第3の画像シーケンスが提供された場合、第3の画像シーケンスの画像内の蛍光像信号は好ましくは、降下の代わりにバースト又はスパイクを検出することによってX線信号及びPPG像信号と整列される。
【0058】
「信号を導き出す」ステップにおいて、整列されたX線時間曲線及びPPG時間曲線から、器官組織の灌流特性に関連する種々の量が導き出され、例えば時間曲線は、所定の関心領域にわたって平均する、又は統合することができる、或いは時間曲線の大きさでの到着時間又はピーク時間を決定することができる。本発明の実施形態は、例として列挙される特有の量に限定されず、灌流状態の変化を判定するための他の量が有益であることを証明している。例えば、灌流伝播速度は、抽出され整列されたX線時間曲線とPPG時間曲線の個別の差別化、及び高速の通常の伝播速度と低速の伝播速度とを区別するために適用される複数の閾値に基づいて推定される。
【0059】
「マージ」ステップ中、利用可能であるならば、灌流撮像中に灌流される器官の以前に獲得した3Dビューが、灌流特性の獲得した2Dビューとマージされる、すなわち一時的に整列された第1の画像シーケンス及び整列された(安定化された)第2の画像シーケンス又はその任意の導き出された量における抽出された二次元画像信号とマージされる。器官の3Dビューは、以前に取得された三次元画像データセット、例えば、同じ器官の術前CTスキャンからのCT投影データの3D復元として獲得される(「3Dビュー」ステップ)。器官の3Dビューは、3Dオブジェクトデータとしてワークステーションのメモリデバイス又はワークステーションにアクセス可能なメモリデバイスに記憶される。以前に獲得された3Dビューと2Dビューのマージングは、3Dビューの3Dオブジェクトデータにおけるデータポイント(例えば3Dスペースにおけるボクセル又は2D投影スペースにおけるピクセル)と、2Dビューに関連するデータポイント(例えば第1の画像シーケンスの種々の一時的に整列された投影像及び第2の画像シーケンスの種々の一時的に整列されたPPG像のセグメント化された領域のピクセル要素又は輪郭)との対応関係を生成する。知られた2D/3D画像レジストレーションアルゴリズム(例えば剛体又は非剛体変換或いはアフィン変換、ポイントセットマッチング、機能ベースメッシュなど)がこの目的のために提供され、第1の画像シーケンス又は第2の画像シーケンスの2D画像は、そうする必要がある場合、より高い解像度で再度サンプリングされる。マージングステップの結果として、3Dスペースにおける二次元表面である器官表面(例えば皮膚)の上、又はそのすぐ下の点に関連するPPG像信号は、器官の外側表面も同様に表す器官の3Dビューにおけるデータポイント(例えばボクセル)に結びつけることができ、それにより欠けている深さ成分を獲得することができる。
【0060】
ディスプレイ上で見るための画像が、ステップ「生成する/表示のために送信する」において生成され、ディスプレイユニットに、例えばワークステーションのディスプレイに伝送される。処理ユニットは、専用のグラフィックプロセッサを備え、これは、組み合わされた灌流マップに基づいて画像を生成しており、例えば、共通のスケールで、表示されるべき画像の種々のピクセル要素で、器官深部組織及び表在組織の灌流状態の一時的に整列された第1の変化及び一時的に整列された第2の変化の大きさを表すための色分けされたヒートマップを生成する。好ましくは、生成された画像が、灌流器官の2Dビューと3Dビューの組み合わせの結果である場合、表示するための画像は、画像の各ピクセル要素で明度を決定するために、アルファブレンディングなどの2D/3Dブレンドアルゴリズムを使用することによって生成される。例えば、処理ユニットは、シーン照明、見ている視野及び深さオーバーラッピング画像オブジェクト(例えば一致したオブジェクトの重なり合う多角形)の関数として、各ピクセルの飽和値又はアルファチャネル値を決定する。これは、マージングモジュールによって提供されるような器官の3Dビューと2Dビューとの間に確立された対応関係を使用して、色分けされ組み合わされた灌流マップが、オーバーレイ画像として器官の3D復元画像に示される、表示用の画像の生成を可能にする。組み合わされた灌流マップをオーバーレイ画像として器官の3D復元に提示することは、配向を促進し、画像を見ている人による視覚的検査体験を改善する。画像は、見ている状況の変化に応答して、例えば3D復元画像を、異なる視野角に従って、組み合わされた灌流マップオーバーレイと共に対話形式で回転させるとき、表示される画像において可能にされるべき、又は無効にされるべき灌流器官組織の一部(例えば皮膚又は深部組織)を対話形式で選択するとき、又は経時的な灌流状態の整列された第1の変化及び整列された第2の変化における変化を反映する、異なる導き出された量(例えばピークまでの時間、到着時間、曲線より下の面積など)を対話形式で切り替えるとき、見ている人に規則的な画像更新を提供するために、対話形式でさらに生成される。
【0061】
本発明の実施形態は、末梢動脈疾病のための、とりわけ、提案される灌流撮像システム及び灌流撮像方法が切断法又は血管再生介入を行うことを決定するなどの重大な決定を採用する際に確実に助けとなる重症下肢虚血(CLI)のためのスクリーニング、診断及び治療処置において正常に適用可能であり得る。CLIに関する従来のリスク判定要因は、例えば血圧測定及び関連する足関節血圧又は足関節上腕血圧比は、大きな血管系の健康状態についてのデータを提供するが、これは、動脈石灰化については、不正確に又は不十分にしか明らかにしない場合がある。また、微小循環の健康状態は良好な組織灌流にとって重要であるが、これも検出されないままである。CLIのコンテキストにおいて、灌流されるべき器官は脚であり、所定の関心領域は、足首及び足の周りの定義された領域に相当する。その後X線撮像装置及びPPG撮像装置は、X線血管造影投影像の第1の画像シーケンス及びPPG像の第2の画像シーケンスを同時に取得し、これにより、経時的に、関心領域内の器官深部組織及び表在組織内に送達された造影剤の通過、拡散及び抜き取りを捕らえる。器官深部組織及び表在組織の灌流状態のこのような変化は、第1の画像シーケンスのX線投影像及び第2の画像シーケンスのPPG像それぞれにおける、時間につれて変動する画像信号によって表される。したがって、第1の画像シーケンスのX線投影像及び第2の画像シーケンスのPPG像における時間につれて変動する画像信号を抽出することで、経時的な、皮膚の下の器官組織灌流並びに皮膚の灌流の正常なマッピングを可能にする。一方の深部組織灌流で、及び他方の表在皮膚灌流での2つの灌流測定値を組み合わせ相関させるために、第1の画像シーケンスのX線投影像及び第2の画像シーケンスのPPG像における種々の抽出された時間につれて変動する画像信号が時間的に整列される。これは、例えば、関心領域にわたって統合された、X線投影像における時間につれて変動する画像信号振幅の急な減少が起こる時間内のその瞬間を検出し、それを、関心領域にわたって統合された、PPG像における時間につれて変動する画像信号振幅の急な減少が生じる時間内の同様に検出された瞬間と比較することによって達成することができる。比較が時間の2つの瞬間が互いに異なることを示す場合、第1の画像シーケンス又は第2の画像シーケンスのいずれか一方が時間的にシフトされて時間内の2つの瞬間を互いに等しくさせる。例えば、第1の画像シーケンス及び第2の画像シーケンスの注釈付きの画像のタイムスタンプは、時間内の2つの瞬間が一致するまでまとめて増減される。X線投影像及びPPG像における整列された時間につれて変動する画像信号から種々の量を導き出すことができる。例えば、関心領域に関する時間密度曲線は、皮膚の下及び皮膚における灌流状態の変化をそれぞれ適切に表現する。時間密度曲線は、関心領域にわたってX線投影像における画像信号並びにPPG像における画像信号を統合することによって獲得される。2つの時間密度曲線は、単一のグラフに組み合わされ、医師に提示することができる。例えば、関心領域内のX線投影像における各画像信号から、並びにPPG像における各関連する画像信号から、関心領域における各ピクセルに対して獲得された時間密度曲線より下の面積を統合することも可能である。器官深部組織及び表在組織の灌流状態を定量化するために導き出すことができる別の対象の量は、ピークまでの時間強度である。画像がその後生成され表示され、この画像は、導き出された対象の量を、例えば足及び足首の色分け灌流マップ(ヒートマップ)として表示される組み合わされた灌流マップとして医師に示す。好ましい実施形態では、以前に獲得された器官の3DX線像は、オーバーレイとして組み合わされた灌流マップで拡大され、これは表示される灌流マップに示される結果の空間配向及び視覚的検査を促進させる。表示されるマップは、循環流が、例えば通常の速度範囲(ピークまでの時間)内であるかどうか、又は足首からつま先までの速度において病気に起因する低下があるかどうか、或いは濃染の何らかの証拠があるかどうかを示す。それに加えて、表示されるマップはまた、大循環流、及び微小循環流の3D分布を決定することも可能であり、例えばそれは、例えば、治癒のために増大した血液供給を必要としている潰瘍などの傷が発見される、又は傷が進行するリスクがある足の皮膚表面が灌流されているかどうかを適切に示す。
【0062】
本発明の実施形態では、送達デバイスによって送達される造影剤は、非イオン系ヨウ化造影剤物質(例えばイオジキサノール320mgヨウ素/ml)を有し、これは、最初の通過中、灌流器官の細胞間の空間に大いに拡散し、これにより微小循環の灌流特性の改善された検出を可能にするという利点を有する。好ましくは、非イオン系ヨウ化造影剤物質は、蛍光染料、例えばインドシアニングリーン(ICG)などの蛍光剤と組み合わされる。これにより、器官の表在組織の灌流特性、例えば皮膚の灌流特性をさらにモニタするために、蛍光透視撮像カメラによる、すなわち染料によって放出される蛍光性の光を検出するカメラによるPPG像と蛍光像の同時の取得が可能になる。器官の表在組織における染料分子のウォッシュインおよびウォッシュアウトは、このようなやり方で検出される。
【0063】
本発明の実施形態では、PPG撮像装置は、例えば、加圧カフによる灌流器官に流れ込む血液を一時的に阻止し、その後、カフを解放したときの灌流器官への血流の回復と組み合わせて、PPG像の追加の画像シーケンスを取得するためにX線撮像装置なしで使用される場合がある。加圧カフによって生じる制限された血流は、造影剤ボーラスの通過の1つに対して、よく似ているが、全く同じではないPPG像信号振幅の減少を誘発する。例えば、加圧カフの十分に制御された加圧率、例えば膨張及び減圧、例えば収縮率は、ボーラスの通過では獲得できない多くの異なるやり方で血流パターンを生み出すための有利な様式で使用される。そのやり方で生み出される流れパターンの非制限的な例は、カフ圧のゆっくりとした解放と、カフ圧の迅速な低下であり、これは、異なる時間スケールで進展する器官の灌流特性に追加の洞察を提供する。さらに、カフは、繰り返し、且つ制御された中断を伴って加圧及び減圧することができるのに対して、造影剤物質のボーラスの複数の通過の可能性は、一方で同じ投与されたボーラスの複数の通過に関する濃度の広がり方及び濃度の低下によって、他方で複数の投与されたボーラスに関する、対象者に対して、とりわけ対象者の腎臓に課される負担によって極めて制限される。
【0064】
さらに、本発明の実施形態は、強化された第1の画像シーケンスのX線投影像を強化されたコントラストを有する差分画像として取得し、例えば、灌流撮像システムのX線撮像装置は、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)モードで動作するように構成される。
【0065】
本発明を図面及び上述の記載において詳細に例示し、記載してきたが、そのような例証及び記載は、例示またな一例と見なすべきであり、限定と見なすべきでない。開示される実施形態に対するその他の変形形態も、特許請求される発明を実施する当業者によって理解され、成し遂げることが可能である。特定の措置は、相互に異なる従属クレームに列挙されているという単なる事実は、これらの措置の組み合わせを、利益をもたらすために使用することができないということは示していない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、その範囲を限定するように解釈されるべきではない。