(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241107BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241107BHJP
B62D 5/083 20060101ALI20241107BHJP
B62D 5/24 20060101ALI20241107BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20241107BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20241107BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D5/083
B62D5/24
B62D101:00
B62D119:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2022536120
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004208
(87)【国際公開番号】W WO2022014073
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020122421
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596148478
【氏名又は名称】クノールブレムゼ商用車システムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】望月 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正規
(72)【発明者】
【氏名】松村 達雄
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103556(WO,A1)
【文献】特開2020-114721(JP,A)
【文献】特開2018-158623(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055803(WO,A1)
【文献】特開2016-150644(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159107(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104401388(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
B62D 5/00 - 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵機構であって、操舵軸と、伝達機構を備え、
前記操舵軸は、入力軸と、中間軸と、出力軸と、前記入力軸と前記中間軸とを接続する第1トーションバーと、前記中間軸と前記出力軸とを接続する第2トーションバーとを備え、
前記伝達機構は、前記操舵軸の回転を転舵輪に伝達するボールねじ機構、セクタシャフトおよびピットマンアームを有する、
前記操舵機構と、
パワーシリンダであって、パワーシリンダ本体部と、前記ボールねじ機構の一部を構成するナットであるピストンと、第1液室と、第2液室を備え、前記伝達機構に対し転舵輪を転舵させる転舵力を付与するものであり、
前記ピストンは、前記パワーシリンダ本体部の内部に設けられ、前記パワーシリンダ本体部の内部空間を前記第1液室と前記第2液室に分割するものである、
前記パワーシリンダと、
ロータリバルブであって、前記第2トーションバーの捩れに応じて外部から供給される作動液を前記第1液室と第2液室に選択的に供給する、
前記ロータリバルブと、
電動モータであって、前記中間軸に回転力を付与する、
前記電動モータと、
操舵角を検出する操舵角センサと、
車速に関する信号を受信する車速信号受信部と、
前記操舵軸に設けられ、運転者の操舵負荷である操舵トルクを検出するトルクセンサと、
EPSコントローラであって、操舵指令信号生成部と、加算部と、モータ指令信号生成部とを備え、
前記操舵指令信号生成部は、前記操舵トルクおよび前記車速、または、前記操舵角および前記
EPSコントローラ
に接続されたADASコントローラによって出力された操舵角指令に基づき第1操舵指令信号を生成するものであり、
前記加算部は、前記第1操舵指令信号に操舵
指令信号補正値を加算することで、第2操舵指令信号を生成するものであり、
前記操舵指令信号補正値は、パワーシリンダおよび/またはロータリバルブの製造誤差が無いときの出力トルクと、パワーシリンダおよび/またはロータリバルブの製造誤差が有るときの出力トルクとの差分に基づき生成されるものであり、
前記モータ指令信号生成部は、前記第2操舵指令信号に基づきモータ指令信号を生成するものである、
前記
EPSコントローラと、
を有する、ステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、操舵指令信号補正値記憶部を備え、
前記操舵指令信号補正値記憶部は、前記操舵指令信号補正値を記憶するものであり、
前記
加算部は、前記操舵指令信号補正値記憶部に記憶された前記操舵指令信号補正値が、前記第1操舵指令信号に加算されることで、前記第2操舵指令信号を生成する、ステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記ロータリバルブに供給される作動液は、ポンプ装置から供給されるものであり、
前記EPSコントローラは、操舵指令信号補正値調整部をさらに備え、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記ポンプ装置の回転速度に関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する、ステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記ポンプ装置の回転速度に関する信号の値が高いほど、前記操舵指令信号補正値を小さくする、ステアリング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記第1液室または前記第2液室に供給される作動液の温度に関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する、ステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のステアリング装置であって、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記第1液室または前記第2液室に供給される作動液の温度に関する信号の値が低いほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする、ステアリング装置。
【請求項7】
請求項5に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、環境温度信号受信部を備え、
前記環境温度信号受信部は、車両に設けられた温度センサの出力信号を受信するものであり、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記温度センサの出力信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する、ステアリング装置。
【請求項8】
請求項5に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、モータ端子間抵抗値信号受信部を備え、
前記モータ端子間抵抗値信号受信部は、前記電動モータの出力端子の端子間抵抗値に関する信号を受信するものであり、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記端子間抵抗値に関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する、ステアリング装置。
【請求項9】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記車速が低いほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする、ステアリング装置。
【請求項10】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、積載重量に関する信号を受信する積載重量信号受信部を備え、
前記積載重量に関する信号は、車両の荷台または荷室に積載されている荷物の重量に関する信号であり、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記積載重量が大きいほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする、ステアリング装置。
【請求項11】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、操舵トルク信号受信部を備え、
前記操舵トルク信号受信部は、前記操舵トルクに関する信号である操舵トルク信号を受信するものであり、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記操舵トルクが大きいほど、前記操舵指令信号補正値を小さくする、ステアリング装置。
【請求項12】
請求項3に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、空気圧信号受信部を備え、
前記空気圧信号受信部は、前記転舵輪のタイヤの空気圧に関する信号である空気圧信号を受信するものであり、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記転舵輪のタイヤの空気圧が低いほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする、ステアリング装置。
【請求項13】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、転舵加速度信号受信部と、モータトルク信号受信部を備え、
前記転舵加速度信号受信部は、前記転舵輪の転舵加速度に関する信号を受信するものであり、
前記モータトルク信号受信部は、前記電動モータのモータトルクに関する信号を受信するものであり、
前記EPSコントローラは、操舵指令信号補正値調整部をさらに備え、
前記操舵指令信号補正値調整部は、前記転舵輪の転舵加速度に関する信号および前記電動モータのモータトルクに関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する、ステアリング装置。
【請求項14】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記
EPSコントローラは、転舵角指令信号受信部と、転舵角信号受信部を備え、
前記転舵角指令信号受信部は、前記転舵輪の目標転舵角に関する信号である転舵角指令信号を受信し、前記転舵角指令信号を前記操舵指令信号生成部に送信するものであり、
前記転舵角信号受信部は、前記転舵輪の実際の転舵角に関する信号である転舵角信号を受信するものであり、
前記モータ指令信号生成部は、フィードバック制御部を備え、
前記フィードバック制御部は、前記第2操舵指令信号と前記転舵角信号に基づきフィードバック制御により前記モータ指令信号を生成する、ステアリング装置。
【請求項15】
請求項1に記載のステアリング装置であって、
前記操舵指令信号補正値は、右転舵用操舵指令信号補正値と、左転舵用操舵指令信号補正値を含み、
前記右転舵用操舵指令信号補正値と前記左転舵用操舵指令信号補正値は、互いに異なる値を有しており、
前記
加算部は、前記転舵輪が右転舵するとき、前記右転舵用操舵指令信号補正値に基づき、前記第1操舵指令信号を補正することで前記第2操舵指令信号を生成し、前記転舵輪が左転舵するとき、前記左転舵用操舵指令信号補正値に基づき、前記第1操舵指令信号を補正することで前記第2操舵指令信号を生成するものである、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置として、例えば以下の特許文献1に記載されたステアリング装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載のステアリング装置は、運転者からの操舵力を伝達する操舵機構と、操舵力に応じて転舵輪を転舵する転舵機構と、を備えている。転舵機構には、転舵輪に転舵力を付与可能なパワーシリンダが設けられている。このパワーシリンダへの作動液の供給は、ロータリバルブを介して行われる。
【0004】
一般に、複数の構成要素によって構成されるパワーシリンダやロータリバルブは、組立状態で、個体毎に異なる製造誤差を含んでいる。このため、ステアリング装置の製品間において、操舵機構に入力される操舵力が同じであっても、転舵機構には、各個体の製造誤差分の転舵力のばらつき、つまり出力特性のばらつきが生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、製品間において出力特性のばらつきを抑制することが可能なステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、その一態様として、操舵指令信号補正部が、操舵指令信号補正値に基づき、第1操舵指令信号を補正し、第2操舵指令信号を生成する。
【0008】
本発明によれば、ステアリング装置の製品間における出力特性のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態のステアリング装置の縦断面図である。
【
図2】
図1のステアリング装置の部分的な拡大断面図である。
【
図3】
図1のEPSコントローラの制御ブロック図である。
【
図4】(a)は、操舵軸への入力トルクに対する出力トルクを示したグラフ、(b)は、操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示したグラフである。
【
図5】第2の実施形態におけるEPSコントローラの制御ブロック図である。
【
図6】第3の実施形態におけるEPSコントローラの制御ブロック図である。
【
図7】第3の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第3の実施形態のグラフである。
【
図8】第4の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第4の実施形態のグラフである。
【
図9】第5の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第5の実施形態のグラフである。
【
図10】第6の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第6の実施形態のグラフである。
【
図11】第7の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第7の実施形態のグラフである。
【
図12】第8の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第8の実施形態のグラフである。
【
図13】第9の実施形態におけるEPSコントローラの制御ブロック図である。
【
図14】第9の実施形態における操舵軸への入力トルクに対する操舵指令信号補正値を示した第9の実施形態のグラフである。
【
図15】第10の実施形態におけるEPSコントローラの制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のステアリング装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
(ステアリング装置の構成)
図1は、第1の実施形態のステアリング装置の縦断面図である。
図2は、
図1のステアリング装置の電動モータ2を含む部分の部分的な拡大断面図である。
図1では、説明の便宜上、操舵軸7の回転軸Z方向のうち図示せぬステアリングホイールに連係する側(図中の上側)を「一端」とし、ピストン15に連係する側(図中の下側)を「他端」として説明する。
【0012】
ステアリング装置は、大型車両等に用いられるインテグラル型のステアリング装置であり、ステアリング装置本体1、電動モータ2およびEPSコントローラ(ECU)3から主に構成されている。
【0013】
ステアリング装置本体1は、操舵機構4と、セクタシャフト5と、パワーシリンダ6と、を備えている。
【0014】
操舵機構4は、図示せぬステアリングホイールからの回転力の入力に供するものであり、操舵軸7を有している。操舵軸7は、一部がハウジング8内に収容されており、入力軸9、中間軸10および出力軸11を備えている。入力軸9は、一端側がステアリングホイールに連係されており、運転者の操舵トルクの入力に供する。入力軸9は、他端部が中間軸10の一端側に形成された開口凹部10a内に挿入されている。中間軸10は、一端側が第1トーションバー12を介して入力軸9と相対回転可能に連結されるとともに、外周に連結される電動モータ2の駆動トルクの入力に供する。中間軸10は、出力軸11の一端側拡径部に形成された開口凹部11a内に挿入されている。出力軸11は、一端側が第2トーションバー13を介して中間軸10と相対回転可能に連結され、この中間軸10により入力される操舵トルクを、変換機構であるボールねじ機構14を介してピストン15に出力する。
【0015】
ボールねじ機構14は、他端側の外周部に螺旋溝であるボール溝14aが形成されたねじ軸としての上記出力軸11と、該出力軸11の外周側に設けられて内周部にボール溝14aに対応する螺旋溝であるボール溝14bが形成されたナットとしての上記ピストン15と、ピストン15と出力軸11との間に設けられた複数のボール14cと、から構成されている。
【0016】
中間軸10と出力軸11と間には、コントロールバルブとしての周知のロータリバルブ16が構成されている。ロータリバルブ16は、中間軸10および出力軸11の相対回転角より導き出される第2トーションバー13の捩れ量および捩れの方向に応じて車両に搭載されたポンプ装置17により供給される作動液を第1、第2液室(圧力室)P1,P2へと選択的に供給する。
【0017】
セクタシャフト5は、操舵軸7の他端側外周に設けられたピストン15の軸方向移動に伴って転舵に供する。セクタシャフト5は、図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係されている。
【0018】
上記ボールねじ機構14、セクタシャフト5およびピットマンアームは、操舵軸7に入力された回転力(操舵力)を転舵輪の転舵力へと変換させる伝達機構を構成する。なお、ボールねじ機構14等を用いずにステアリング装置が構成される場合には、上記伝達機構として、例えばラック&ピニオン機構を構成するラックバー、ピニオン軸等を用いることができる。
【0019】
パワーシリンダ6は、ハウジング8内において摺動可能に収容された筒状のピストン15が1対の液室である第1、第2液室P1,P2を画定することによって構成されており、操舵トルクを補助するアシストトルクを生成する油圧アクチュエータである。
【0020】
電動モータ(中空モータ)2は、入力軸9に回転トルクを付与する3相交流式のブラシレスモータとして構成されている。電動モータ2は、モータロータ18aおよびモータステータ18bから構成されるモータ要素18と、該モータ要素18を収容するモータハウジング19と、結合部材20を回転可能に支持する第1軸受B1および第2軸受B2と、を備えている。結合部材20は、該結合部材20の内周面に形成された溝部20aに、中間軸10の外周部に突出形成されたキー21を嵌め込んでなる周知のキー接続を介して中間軸10に固定されている。上記キー接続により、結合部材20は、中間軸10と一体に回転することが可能となっている。
【0021】
モータロータ18aは、入力軸9の外周部に筒状の結合部材20を介して一体回転可能に取り付けられている。モータステータ18bは、モータロータ18aの外周側に所定の隙間を介して配置されており、かつハウジング8外部のEPSコントローラ3に電気的に接続されている。
【0022】
なお、中空モータである電動モータ2に代えて、もしくはこの電動モータ2に加えて、ウォームシャフトやウォームホイールを有する減速機を介して操舵軸7にアシストトルクを付与可能な電動モータを用いるようにしても良い。
【0023】
モータハウジング19は、金属材料、例えばアルミニウム合金から形成されている。モータハウジング19は、モータ要素18や後述する第1、第2レゾルバ22,23を収容する有底筒状のハウジング本体部24と、電動モータ2側からハウジング本体部24の開口部を閉塞する第1閉塞部25と、電動モータ2と反対側から拡張部24aの開口部を閉塞する第2閉塞部26と、を備えている。
【0024】
ハウジング本体部24は、入力軸9や結合部材20を挿入可能に形成された概ね円盤状の底部24bと、該底部24bの外周縁部から操舵軸7の他端側に立ち上がる円筒状の筒部24cと、底部24bの外周縁部から操舵軸7の一端側に立ち上がる円筒状の拡張部24aと、を有している。
【0025】
筒部24cの開口部は、入力軸9や結合部材20を挿入可能に形成された概ね円盤状の第1閉塞部25によって閉塞されている。第1閉塞部25は、固定部材、例えばボルト27を介して、筒部24cの開口端面24dに取付固定されている。第1閉塞部25、底部24b、筒部24cおよび結合部材20によって囲まれた空間は、モータ要素18を収容するモータ収容部28となっている。また、第1閉塞部25は、固定部材、例えばボルト29によってアダプタ部材30に取付固定されている。このアダプタ部材30を介して、第1閉塞部25は、ハウジング8に固定されている。
【0026】
さらに、拡張部24aの開口部は、入力軸9や結合部材20を挿入可能に形成された概ね円盤状の第2閉塞部26によって閉塞されている。第2閉塞部26は、固定部材、例えばボルト31を介して、拡張部24aの開口端面24eに取付固定されている。第2閉塞部26、底部24b、拡張部24aおよび入力軸9によって囲まれた空間は、第1トーションバー12に生じた操舵トルクTrの演算に供するトルクセンサ32を収容するトルクセンサ収容部33となっている。第2閉塞部26と入力軸9との間は、環状のシール部材34によって気密にシールされている。
【0027】
トルクセンサ32は、トルクセンサ収容部33内において結合部材20の外周側に設けられた第1レゾルバ22と、トルクセンサ収容部33内において入力軸9の外周側に設けられた第2レゾルバ23と、によって構成されている。
【0028】
第1レゾルバ22は、結合部材20の一端側の外周に固定された第1レゾルバロータ22aと、該第1レゾルバロータ22aの外周側に設けられ、固定部材、例えばねじ部材35によって底部24bに取付固定された第1レゾルバステータ22bと、を備えている。第1レゾルバステータ22bは、操舵軸7の回転軸Z方向においてセクタシャフト5とオーバーラップする底部24bの厚肉部24fの内周面24gに突き当てられた状態で、ねじ部材35によって底部24bに取付固定されている。第1レゾルバステータ22bは、図示せぬ出力配線を介してEPSコントローラ3に電気的に接続されている。EPSコントローラ3には、第1レゾルバ22によって検出される中間軸10の後述する中間軸回転角θaが入力される。
【0029】
第2レゾルバ23は、第1レゾルバステータ22bよりも一端側の位置で入力軸9の外周に固定された第2レゾルバロータ23aと、該第2レゾルバロータ23aの外周側に設けられ、固定部材、例えばねじ部材36によってスペーサ37を介して厚肉部24fに取付固定された第2レゾルバステータ23bと、を備えている。第2レゾルバステータ23bは、第1レゾルバステータ22bと同様に、図示せぬ出力配線を介してEPSコントローラ3に電気的に接続されている。EPSコントローラ3には、第2レゾルバ23によって検出される入力軸9の後述する入力軸回転角θhが入力される。
【0030】
第1、第2レゾルバ22,23によって構成されるトルクセンサ32は、第2レゾルバ23によって検出される入力軸9の入力軸回転角θhと、第1レゾルバ22によって検出される中間軸10の中間軸回転角θaとの差分に、第1トーションバー12の捩りバネ定数g1を乗ずることにより、操舵トルクTrを演算する。
【0031】
なお、第1、第2レゾルバ22,23においては、第1、第2レゾルバステータ22b,23bが「第1レゾルバロータ22aの1回転あたりの振幅数Ax<360°/(所定角θx×2)」を満足する正弦波信号および余弦波信号を出力し、各出力信号に基づいてEPSコントローラ3において入力軸9および電動モータ2等の回転角を演算する。
【0032】
第1軸受B1は、底部24bの内周縁部付近から操舵軸7の他端側に突出形成された環状の第1軸受保持部24hの内周面に設けられており、結合部材20の一端側を回転可能に支持している。
【0033】
同様に、第2軸受B2は、第1閉塞部25の内周縁部付近から第1軸受保持部24hと対向するように突出形成された環状の第2軸受保持部24iの内周面に設けられており、結合部材20の他端側を回転可能に支持している。
【0034】
EPSコントローラ3は、マイクロコンピュータ等の電子部品を備えて構成されている。また、EPSコントローラ3は、運転者が自動運転用スイッチをオンにしたときに駐車やレーンキープ等の車両の自動運転(自動操舵)の制御に供するADASコントローラ38に電気的に接続されている。EPSコントローラ3は、運転者からの操舵トルクTrの入力に基づく手動操舵の場合に、操舵トルクTrおよび車速V(
図3参照)に基づいて電動モータ2を駆動制御し、一方、自動操舵の場合に、操舵角θr(
図3参照)に基づいて電動モータ2を駆動制御する。EPSコントローラ3は、請求の範囲に記載の「コントローラ」に該当する。
【0035】
ADASコントローラ38は、図外のレーダー(例えばミリ波や赤外線レーザ)からの検出信号や図外のカメラからの映像等に基づいて車両の周囲状況を把握するとともに、GPS等からの自車位置情報に基づいて自車位置を把握する。そして、ADASコントローラ38は、自動操舵時に、例えば車両のレーンキープを行う際に、上記周囲状況および自車位置に基づいて、所定のレーン内に車両を維持するための目標の操舵角となる操舵角指令θrc(
図3参照)を演算する。また、ADASコントローラ38は、運転者が自動運転用スイッチをオンにしたときに自動運転要求信号Xを生成し、CAN通信によりEPSコントローラ3へ送信するようになっている。
【0036】
ハウジング8は、一端側が開口し他端側が閉塞されてなる筒状を呈し、第1、第2液室P1,P2を画定する第1ハウジング39と、該第1ハウジング39の一端開口部を閉塞するように設けられ、内部にロータリバルブ16を収容する第2ハウジング40と、から構成されている。第1、第2ハウジング39,40同士は、これらの外周部に適宜設けられる図示せぬ複数の固定手段、例えばボルトによって締結されている。
【0037】
第1ハウジング39の内部には、操舵軸7の回転軸Z方向に沿って形成されたパワーシリンダ本体部39aと、該パワーシリンダ本体部39aと直交するように、かつ、一部がパワーシリンダ本体部39aへと臨むように形成されたシャフト収容部39bと、が設けられている。パワーシリンダ本体部39a内には、出力軸11に連係するピストン15が収容されることで、該ピストン15をもって一端側の第1液室P1と他端側の第2液室P2とが画定されている。また、シャフト収容部39b内には、軸方向一端側がピストン15に連係すると共に他端側が図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係されるセクタシャフト5が収容されている。
【0038】
ピストン15およびセクタシャフト5の各外周部には、相互に噛合可能な歯部15a,5aが設けられている。両歯部15a,5aが噛み合うことによりピストン15の軸方向移動に伴ってセクタシャフト5が回動し、これにより、ピットマンアームが車体幅方向に引っ張られることで、転舵輪の向きが変更される。なお、この際、シャフト収容部39bには、第1液室P1内の作動液が導かれ、これにより、両歯部15a,5a間の潤滑が行われる。
【0039】
第2ハウジング40の内周側には、互いに重なり合う中間軸10および出力軸11が挿入される軸挿入孔40aが、一端側から他端側へと回転軸Z方向に沿って段差縮径状に貫通している。そして、一端側の大径部には出力軸11を回転可能に支持する軸受Bnが設けられている。一方、他端側の小径部には、ポンプ装置17と連通する導入ポート41と、該導入ポート41より導入された液圧を各液室P1,P2に給排する給排ポート42と、該給排ポート42を介して各液室P1,P2から排出された作動液をリザーバタンク43へ排出する排出ポート44と、が設けられている。なお、給排ポート42は、出力軸11の一端側拡径部に設けられた第1給排通路L1を介して第1液室P1と連通するとともに、第1ハウジング39内部に設けられた第2給排通路L2等を介して第2液室P2と連通している。
【0040】
かかる構成から、ステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操舵すると、ポンプ装置17より圧送された作動液がロータリバルブ16を介して操舵方向に応じた一方側の液室P1,P2に供給されるとともに、他方側の液室P1,P2から供給量に対応する作動液(余剰分)がリザーバタンク43へと排出される。そして、当該液圧によりピストン15が駆動される結果、ピストン15に作用する液圧に基づいたアシストトルクがセクタシャフト5へと付与される。
【0041】
図3は、
図1のEPSコントローラ3の制御ブロック図である。
図3では、説明の便宜上、第1、第2切り換え部46,47が自動操舵モードに接続された状態を示してある。
【0042】
EPSコントローラ3は、操舵指令信号生成部45、第1切り換え部46、第2切り換え部47、操舵指令信号補正部48、モータ制御部49およびモータ指令信号出力部50によって、主に構成されている。
【0043】
操舵指令信号生成部45は、手動操舵時のトルク指令信号である第1手動時操舵指令信号(以下、「第1手動時操舵指令」と呼ぶ)Aを生成する手動時操舵指令信号生成部45aと、自動操舵時のトルク指令信号である第1自動時操舵指令信号(以下、「第1自動時操舵指令」と呼ぶ)Bを生成する自動時操舵指令信号生成部45bと、を備えている。
【0044】
EPSコントローラ3のインターフェースには、外部入力として、操舵トルク信号受信部51、車速信号受信部52、操舵角指令信号受信部53および操舵角信号受信部54が設けられている。
【0045】
操舵トルク信号受信部51は、トルクセンサ32(
図2参照)から出力された操舵トルク信号(以下、「操舵トルク」と呼ぶ)Trを受信する。
【0046】
車速信号受信部52は、図外の車速センサから出力された車速信号(以下、「車速」と呼ぶ)Vを受信する。
【0047】
操舵角指令信号受信部53は、ADASコントローラ38から出力され、操舵軸7の目標となる操舵角に関する信号である操舵角指令信号(以下、「操舵角指令」と呼ぶ)θrcを受信する。
【0048】
操舵角信号受信部54は、図示せぬ操舵角センサによって検出され、操舵軸7に付与された実際の操舵角に関する信号である操舵角信号(以下、「操舵角」と呼ぶ)Trを受信する。
【0049】
手動時操舵指令信号生成部45aは、トルクセンサ32によって検出された操舵トルクTrと、車速センサによって検出された車速Vとに基づいて、第1手動時操舵指令Aを生成する。つまり、手動時操舵指令信号生成部45aは、操舵トルクTr並びに車速Vと第1手動時操舵指令Aとの相関関係を表す
図3に示すマップを参照することにより、第1手動時操舵指令Aを生成する。
【0050】
また、自動時操舵指令信号生成部45bは、PI制御部(比例積分制御部)として構成されている。自動時操舵指令信号生成部45bは、ADASコントローラ38によって自動運転要求信号Xが生成されたときに、ADASコントローラ38から出力された操舵角指令θrcと、図外の操舵角センサによって検出された操舵角θrとの偏差を算出し、比例積分を行うことにより、第1自動時操舵指令Bを生成する。
【0051】
なお、第1手動時操舵指令Aおよび第1自動時操舵指令Bは、請求の範囲に記載の「第1操舵指令信号」に該当する。
【0052】
第1切り換え部46は、自動運転要求信号XがEPSコントローラ3へ入力されたか否かに基づいて、手動操舵モードと自動操舵モードとの切り換えを行う。自動運転要求信号Xが入力されていない場合には、第1切り換え部46は、手動操舵モードであるとしてラインCL1とラインCL2とを接続し、ラインCL2へ第1手動時操舵指令Aを出力する。一方、運転者が自動運転用スイッチをオンにすることで、
図3に示すように自動運転要求信号Xが入力された場合には、第1切り換え部46は、自動操舵モードであるとしてラインCL3とラインCL2とを接続し、ラインCL2へ第1自動時操舵指令Bを出力する。
【0053】
同様に、第2切り換え部47は、自動運転要求信号XがEPSコントローラ3へ入力されたか否かに基づいて、手動操舵モードと自動操舵モードとの切り換えを行う。自動運転要求信号Xが入力されていない場合には、第2切り換え部47は、手動操舵モードであるとしてラインCL4とラインCL5とを接続し、絶対値生成部55へ操舵トルクTrを出力する。一方、運転者が自動運転用スイッチをオンにすることで、
図3に示すように自動運転要求信号Xが入力された場合には、第2切り換え部47は、自動操舵モードであるとしてラインCL6とラインCL5とを接続し、絶対値生成部55へ第1自動時操舵指令Bを出力する。
【0054】
第1手動時操舵指令Aに基づいて後述する第2操舵指令Dを生成するプロセスと、第1自動時操舵指令Bに基づいて第2操舵指令Dを生成するプロセスとは基本的に同じプロセスであるので、以下では、代表して後者のプロセスについて説明する。
【0055】
第1切り換え部46を介して出力された第1自動時操舵指令Bは、加算器56に入力されるとともに、符号判定部57に入力される。符号判定部57では、第1自動時操舵指令Bの正または負の符号が判定される。符号判定部57での判定結果は、補正値出力部58に入力される。
【0056】
また、第2切り換え部47を介して出力された第1自動時操舵指令Bは、絶対値生成部55において、絶対値とされる。つまり、第1自動時操舵指令Bは、絶対値生成部55によって正の値をとるようになる。正の値である第1自動時操舵指令Bは、操舵指令信号補正部48に入力される。操舵指令信号補正部48は、第1自動時操舵指令Bに基づいて、操舵指令信号補正値Cを生成する。操舵指令信号補正値Cは、電動モータ2に第3操舵指令信号が入力されたときの第3操舵指令信号に対するパワーシリンダ6の出力に応じて生成される。第3操舵指令信号としては、EPSコントローラ3から出力された信号が用いられる。また、工場内で電動モータ2の指令信号の補正が行われる場合には、工場内の設備から電動モータ2に第3操舵指令信号を出力するようにしても良い。なお、操舵指令信号補正値Cの算出方法については、
図4(a),
図4(b)を参照して後述する。操舵指令信号補正値Cは、補正値出力部58に入力される。
【0057】
そして、加算器56において、第1切り換え部46を介して出力された第1自動時操舵指令Bに、操舵指令信号補正部48から出力された操舵指令信号補正値Cが加算されることで、第2操舵指令信号(以下、「第2操舵指令」と呼ぶ)Dが生成される。
【0058】
モータ制御部49は、モータ指令信号生成部59、第1、第2減算器60,61、第1、第2PI制御部62,63、2相3相変換部64、電圧-PWMデューティ変換部65、3相2相変換部66および角度-速度算出処理部67を備えている。
【0059】
モータ指令信号生成部59は、第2操舵指令Dと、角度-速度算出処理部67から出力されたモータ回転数Nmとに基づいて、モータ指令信号であるq軸目標電流Iq*と、同じくモータ指令信号であるd軸目標電流Id*を生成する。
【0060】
第1減算器60は、q軸目標電流Iq*から、3相2相変換部66から出力されたq軸実電流Iqrを減算し、q軸電流偏差ΔIqを生成する。
【0061】
第2減算器61は、d軸目標電流Id*から、3相2相変換部66から出力されたd軸実電流Idrを減算し、d軸電流偏差ΔIdを生成する。
【0062】
第1PI制御部62は、q軸電流偏差ΔIqを比例積分することで、電動モータ2を制御するためのq軸電圧指令Vq*を生成する。
【0063】
第2PI制御部63は、d軸電流偏差ΔIdを比例積分することで、電動モータ2を制御するためのd軸電圧指令Vd*を生成する。
【0064】
なお、第1、第2PI制御部62,63は、請求の範囲に記載の「フィードバック制御部」に該当する。また、第1、第2PI制御部62,63によってフィードバック制御を行わずに、図示せぬ第1、第2PID制御部によってフィードバック制御を行うようにしても良い。
【0065】
2相3相変換部64は、2相の電圧指令Vq*,Vd*と、モータ回転角センサ68によって検出されたモータ回転角θmとに基づいて、3相のブラシレスモータとして構成された電動モータ2のU,V,W相の指令信号である指令Vu*,Vv*,Vw*を演算する。
【0066】
電圧-PWMデューティ変換部65は、指令Vu*,Vv*,Vw*を、U,V,W相のデューティ比Du,Dv,Dwに変換し、モータ指令信号出力部50へ出力する。
【0067】
3相2相変換部66は、モータ電流センサ69,70によって検出されたU,V相の実供給電流Iur,Ivrと、モータ回転角センサ68によって検出されたモータ回転角θmとに基づいて、上述した実電流Iqr,Idrを演算する。
【0068】
角度-速度算出処理部67は、モータ回転角θmに基づいて、電動モータ2の回転数であるモータ回転数Nmを算出し、モータ指令信号生成部59に出力する。
【0069】
モータ指令信号出力部50は、スイッチング素子、例えばFETをブリッジ接続したスイッチング回路によって構成されており、デューティ比Du,Dv,Dwに基づいてスイッチング素子を作動させることにより、電源71の直流電圧を3相の交流電圧に変換して電動モータ2に供給する。
【0070】
図4(a)は、操舵軸7への入力トルクに対する出力(操舵補助)トルクを示したグラフ、
図4(b)は、操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示したグラフである。
図4(a)に実線で示した基準出力トルク72は、パワーシリンダ6やロータリバルブ16の製造誤差が無いときに得られるステアリング装置の望ましい出力トルクである。また、
図4(a)に破線で示した計測出力トルク73は、パワーシリンダ6やロータリバルブ16の製造誤差が有るステアリング装置の出力を計測したときに得られる出力トルクである。さらに、
図4(a)および
図4(b)の横軸に示した入力トルクは、これらの図の右側にいくほど大きな値となり、また、縦軸に示した出力トルクおよび操舵指令信号補正値Cは、上側にいくほど大きな値となる。
【0071】
まず、操舵軸7の入力トルク(手動操舵時は操舵トルク、自動操舵時はモータトルク)に対する出力トルク(出力の静的特性)の計測について説明する。この計測の際には、例えば工場内の計測室において、操舵軸7にトルク計測装置を設け、さらに、端部を固定した状態のピットマンアームに歪みゲージを設けておく。そして、操舵軸7に回転力を付与し、これに伴い、ピットマンアームに車幅方向の力を作用させることで、トルク計測装置により操舵トルクやモータトルクを検出し、歪みゲージにより計測された歪み量に基づいて転舵力である計測出力トルク73を検出する。
【0072】
図4(a)に示すように、基準出力トルク72は、計測出力トルク73よりも高い値となっており、両者とも二次関数的に増加している。
図4(a)に示すように、基準出力トルク72に基づいて所定の出力トルクToを得るためには第1入力トルクTiaが必要であるのに対し、計測出力トルク73に基づいて同じ出力トルクToを得るためには第1入力トルクTiaよりも大きい値である第2入力トルクTibが必要となる。つまり、計測出力トルク73に基づいて出力トルクToを得るためには、基準出力トルク72に基づいて出力トルクToを得る場合と比べて、入力トルクTiaと入力トルクTibとの差分Tib-Tiaだけ入力トルクを多く入力する必要がある。
【0073】
基準出力トルク72と計測出力トルク73との間の入力トルクの差分(例えば、差分Tib-Tia)を、計測出力トルク73によって基準出力トルク72と同等の出力トルクを得るための補正値に換算して、操舵指令信号補正値Cとして示すと、
図4(b)のグラフのようになる。
【0074】
入力トルクが比較的小さいときには、
図4(a)の右側にいくにつれて基準出力トルク72と計測出力トルク73との間で入力トルクの差分が大きくなるので、操舵指令信号補正値Cは、
図4(b)に示すように直線的に増加している(符号R1で示す部分)。一方、入力トルクが比較的大きいときには、
図4(a)に示すように基準出力トルク72と計測出力トルク73との間で入力トルクの差分がほぼ一定であるため、操舵指令信号補正値Cは、
図4(b)に示すように横ばいとなっている(符号R2で示す部分)。
【0075】
操舵指令信号補正値Cについては、例えば
図4(a)のような差分Tib-Tiaと、パワーシリンダ6やロータリバルブ16の成形に関する基準値と測定値との差分との間の相関関係を把握しておくことで、上記基準値と測定値との差分から推定することができる。操舵指令信号補正値Cは、例えば、上記基準値と測定値との差分を含むステアリング装置のロットに対して用いられる。操舵指令信号補正値Cに関する情報は、ADASコントローラ38から操舵指令信号補正部48へ入力されるようになっている。
【0076】
[第1の実施形態の効果]
従来技術のステアリング装置では、種々の構成要素からなるパワーシリンダやロータリバルブが組立状態で製造誤差を含んでいる。つまり、上記種々の構成要素の各々の成形時に生じる寸法誤差や、工場内で各構成要素を組み付ける際の組み付け誤差等があるため、パワーシリンダやロータリバルブは、組立状態で製造誤差を含んでいる。この製造誤差により、ステアリング装置の入力トルクに対する出力トルクが、製造誤差が無い場合の出力トルクの基準値から外れてしまう虞がある。
【0077】
また、製造誤差が異なる種々のステアリング装置の製品間で見れば、各ステアリング装置に同じ入力トルクが入力されたとしても、この入力トルクによって生じる出力トルクには、パワーシリンダやロータリバルブの製造誤差分のばらつきが生じる虞がある。
【0078】
これに対し、第1の実施形態では、ステアリング装置は、その一つの態様において、操舵機構4であって、操舵軸7と、伝達機構を備え、操舵軸7は、入力軸9と、出力軸11と、入力軸9と出力軸11とを接続するトーションバー12,13を備え、伝達機構は、操舵軸7の回転を転舵輪に伝達するものである、操舵機構4と、パワーシリンダ6であって、パワーシリンダ本体部39aと、ピストン15と、第1液室P1と、第2液室P2を備え、伝達機構に対し転舵輪を転舵させる転舵力を付与するものであり、ピストン15は、パワーシリンダ本体部39aの内部に設けられ、パワーシリンダ本体部39aの内部空間を第1液室P1と第2液室P2に分割するものである、パワーシリンダ6と、ロータリバルブ16であって、第2トーションバー13の捩れに応じて外部から供給される作動液を第1液室P1と第2液室P2に選択的に供給する、ロータリバルブ16と、電動モータ2であって、入力軸9に回転力を付与する、電動モータ2と、EPSコントローラ3であって、操舵指令信号生成部45と、操舵指令信号補正部48と、モータ指令信号生成部59と、モータ指令信号出力部50を備え、操舵指令信号生成部45は、第1自動時操舵指令B(第1手動時操舵指令A)を生成するものであり、操舵指令信号補正部48は、操舵指令信号補正値Cに基づき、第1自動時操舵指令Bを補正し、第2操舵指令Dを生成するものであり、操舵指令信号補正値Cは、電動モータ2に第3操舵指令信号が入力されたときの第3操舵指令信号に対するパワーシリンダ6の出力に応じて生成されるものであり、モータ指令信号生成部59は、第2操舵指令Dに基づきモータ指令信号を生成するものであり、モータ指令信号出力部50は、電動モータ2に対しモータ指令信号を出力するものである、EPSコントローラ3と、を有する。
【0079】
より詳細には、工場で製造されたパワーシリンダ6やロータリバルブ16の製造誤差分による出力トルクのずれを吸収するための操舵指令信号補正値Cが設けられ、この操舵指令信号補正値Cに基づいて、第1自動時操舵指令Bが第2操舵指令Dへ補正される。そして、この第2操舵指令Dに基づいて、モータ指令信号が生成されて、電動モータ2が駆動される。従って、ロータリバルブ16等の製造誤差分の出力トルクのずれを吸収し、ステアリング装置の稼動直後から入力トルクに対して所望の出力トルク(出力特性)を得ることができる。
【0080】
仮に、上記の操舵指令信号補正値Cによる第1自動時操舵指令Bが無かったとしても、本実施形態では、第1、第2PI制御部62,63によりフィードバック制御を行っているので、所定の時間が経過すれば、所望の出力トルクを得ることができる。
【0081】
しかし、本実施形態のように、操舵指令信号補正値Cにより補正された第2操舵指令Dに基づいてモータ指令信号を生成することにより、ステアリング装置の稼動直後から所望の出力特性を得ることができる。
【0082】
また、製造誤差が異なる種々のステアリング装置に同じ入力トルクを入力したとしても、各製造誤差に応じた操舵指令信号補正値による補正を行うことで、ステアリング装置の製品間における出力特性のばらつきを抑制することができる。
【0083】
さらに、ステアリング装置の製品間に出力特性のばらつきがあっても各製造誤差に応じた操舵指令信号補正値により出力トルクを補正することができるので、パワーシリンダ6やロータリバルブ16の寸法公差を狭くしなくて済む。よって、パワーシリンダ6やロータリバルブ16の製造が容易となり、製造コストの増大を抑制することができる。
【0084】
また、第1の実施形態では、操舵指令信号補正値Cは、電動モータ2に第3操舵指令信号が入力されたときのパワーシリンダ6の出力と、基準出力トルク72との差に基づき生成されるものである。
【0085】
このため、基準出力トルク72を所望の出力特性の値に設定することで、ステアリング装置の所望の出力特性を得ることができる。また、ステアリング装置毎の出力特性を基準出力トルク72に合わせて補正することで、ステアリング装置の製品間の出力特性のばらつきを効率良く抑制することができる。
【0086】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態におけるEPSコントローラの制御ブロック図である。
【0087】
第2の実施形態では、操舵指令信号補正部48が、操舵指令信号補正値Cを記憶する操舵指令信号補正値記憶部74を備えている。操舵指令信号補正値記憶部74は、不揮発性メモリ、例えばEEPROMである。操舵指令信号補正値記憶部74には、出荷段階での個々のステアリング装置の入力トルクに対する出力トルクの計測結果に基づいて取得された操舵指令信号補正値Cについてのマップが格納されている。このマップは、各ステアリング装置について上述した
図4(b)のグラフのような結果を取得することにより構成されている。
【0088】
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態では、EPSコントローラ3は、操舵指令信号補正値記憶部74を備え、操舵指令信号補正値記憶部74は、操舵指令信号補正値Cを記憶するものであり、操舵指令信号補正部48は、操舵指令信号補正値記憶部74に記憶された操舵指令信号補正値Cに基づき、第1自動時操舵指令B(第1手動時操舵指令A)を補正し、第2操舵指令Dを生成する。
【0089】
このため、出荷段階での個々のステアリング装置について、
図4(a)で説明した出力特性の計測方法によって出力特性を精密に測定しておき、この測定結果に応じた操舵指令信号補正値を用いて出力トルクの補正を行うことで、ステアリング装置の製品間における出力特性のばらつきを効率的に抑制することができる。
【0090】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態におけるEPSコントローラ3の制御ブロック図である。
図7は、第3の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第3の実施形態のグラフである。
図7では、線76は、ポンプ回転数Npが比較的大きいときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線77は、ポンプ回転数Npが比較的小さいときの操舵指令信号補正値Cを示している。
【0091】
第3の実施形態では、EPSコントローラ3は、エンジン回転数Neに比例して増減するポンプ回転数Npを演算するポンプ回転数演算部75を備えている。なお、ポンプ回転数Npは、ポンプ回転数Npに相当するもの、例えばポンプ装置17の駆動軸の回転速度、ポンプ装置17を駆動する電動モータ2の回転速度に基づいて演算されても良い。ポンプ回転数Npは、請求の範囲に記載の「ポンプ装置の回転速度」に該当する。
【0092】
操舵指令信号補正部48は、ポンプ回転数演算部75から出力されたポンプ回転数Npに基づいて操舵指令信号補正値Cを調整する操舵指令信号補正値調整部78を備えている。
【0093】
操舵指令信号補正値Cは、
図7に示すように、ポンプ回転数Npが大きいほど小さくなるように設定されている。また、ポンプ回転数Npに応じてポンプ装置17の吐出量が増減するので、操舵指令信号補正値Cは、ポンプ装置17からの作動液の吐出量(流量)が大きいときほど小さくなる。
【0094】
また、EPSコントローラ3のインターフェースには、外部入力として、作動液温度信号受信部93、積載重量信号受信部94、空気圧信号受信部95、環境温度信号受信部96、モータ端子間抵抗値信号受信部97、右転舵用操舵信号補正値受信部98および左転舵用操舵指令信号補正値受信部99が設けられている。
【0095】
作動液温度信号受信部93は、第1液室P1または第2液室P2に供給される作動液の温度Tkに関する信号を受信する。
【0096】
積載重量信号受信部94は、車両の荷台または荷室に積載されている荷物の重量である積載重量Wに関する信号を受信する。
【0097】
空気圧信号受信部95は、転舵輪の空気圧Apに関する信号を受信する。
【0098】
環境温度信号受信部96は、環境温度Txに関する信号を受信する。
【0099】
モータ端子間抵抗値信号受信部97は、電動モータ2の出力端子の端子間抵抗値Rに関する信号を受信する。
【0100】
右転舵用操舵信号補正値受信部98は、転舵輪が右転舵するときの補正値である右転舵用操舵信号補正値Rxを受信する。
【0101】
左転舵用操舵指令信号補正値受信部99は、転舵輪が左転舵するときの補正値である左転舵用操舵指令信号補正値Lxを受信する。
【0102】
[第3の実施形態の効果]
第3の実施形態では、ロータリバルブ16に供給される作動液は、ポンプ装置17から供給されるものであり、操舵指令信号補正部48は、操舵指令信号補正値調整部78を備え、操舵指令信号補正値調整部78は、ポンプ回転数Npに関する信号に基づき、操舵指令信号補正値Cを調整する。具体的には、第3の実施形態では、操舵指令信号補正値調整部78は、ポンプ回転数Npに関する信号の値が高いほど、操舵指令信号補正値Cを小さくする。
【0103】
より詳細には、ポンプ回転数Npに応じてポンプ装置17の吐出量が増減するので、これにより、パワーシリンダ6の第1、第2液室P1,P2に流入する作動液の量を算出することによって、パワーシリンダ6の出力を求めることができる。また、ステアリング装置の出力は、パワーシリンダ6の出力と電動モータ2の出力(モータトルク)とを合計したものである。そして、ポンプ回転数Npが高く、ポンプ装置17の吐出量が大きくなるほど、ステアリング装置の全体の出力に占めるパワーシリンダ6の出力の割合が大きくなり、電動モータ2の出力の割合が小さくなる。そこで、ポンプ回転数Npが高く、パワーシリンダ6の出力の割合が大きい場合には、パワーシリンダ6の出力の増加分だけ操舵指令信号補正値Cを小さくして電動モータ2の出力を抑えることで、ステアリング装置の全体の出力を所望の値に維持することができる。
【0104】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第4の実施形態のグラフである。
図8では、線79は、作動液の温度Tkが比較的高いときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線80は、作動液の温度Tkが比較的低いときの操舵指令信号補正値Cを示している。なお、第4の実施形態は、
図6に示す実施形態と同様のEPSコントローラ3によって制御されるものであり、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0105】
具体的な図示は省略するが、第4の実施形態では、第1~第3の実施形態と異なり、第1液室P1または第2液室P2に供給される作動液の温度Tkが、作動液温度信号受信部93から操舵指令信号補正部48に入力される。作動液の温度Tkは、図示せぬ作動液温度センサによって検出される。
【0106】
操舵指令信号補正部48に設けられた操舵指令信号補正値調整部78は、作動液の温度Tkに基づいて操舵指令信号補正値Cを調整する。操舵指令信号補正値Cは、
図8に示すように、作動液の温度Tkが低くなるほど大きくなるように設定されている。
【0107】
[第4の実施形態の効果]
第4の実施形態では、操舵指令信号補正値調整部78は、第1液室P1または第2液室P2に供給される作動液の温度Tkに関する信号に基づき、操舵指令信号補正値Cを調整する。具体的には、第4の実施形態では、操舵指令信号補正値調整部78は、第1液室P1または第2液室P2に供給される作動液の温度Tkに関する信号の値が低いほど、操舵指令信号補正値Cを大きくする。
【0108】
より詳細には、作動液の温度Tkが比較的低いときには、作動液の粘性抵抗が大きいので、パワーシリンダ6の出力が低くなる。また、上述したようにステアリング装置の全体の出力はパワーシリンダ6の出力と電動モータ2の出力とを合計したものである。そこで、作動液の温度Tkが低く、パワーシリンダ6の出力が低下した場合であっても、操舵指令信号補正値Cを大きくして電動モータ2の出力を高くすることで、ステアリング装置の全体の出力を維持することができる。
【0109】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第5の実施形態のグラフである。
図9では、線81は、車速Vが比較的高いときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線82は、車速Vが比較的低いときの操舵指令信号補正値Cを示している。なお、第5の実施形態は、
図6に示す実施形態と同様のEPSコントローラ3によって制御されるものであり、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0110】
具体的な図示は省略するが、第5の実施形態では、第1~第4の実施形態と異なり、車速センサによって検出された車速Vが、車速信号受信部52から操舵指令信号補正部48に入力される。操舵指令信号補正部48に設けられた操舵指令信号補正値調整部78は、車速Vに基づいて操舵指令信号補正値Cを調整する。操舵指令信号補正値Cは、
図9に示すように、車速Vが低いほど大きくなるように設定されている。
【0111】
[第5の実施形態の効果]
第5の実施形態では、EPSコントローラ3は、車両速度の信号(車速V)を受信する車速信号受信部52を備え、操舵指令信号補正値調整部78は、車速Vが低いほど、操舵指令信号補正値Cを大きくする。
【0112】
より詳細には、車速Vが低いときは、路面から転舵輪に作用する摩擦力が大きいので、この摩擦力に抗して転舵輪を転舵させるには、ステアリング装置の出力を高くする必要がある。そこで、操舵指令信号補正値Cを大きくして電動モータ2の出力を高くすることにより、ステアリング装置の全体の出力が高められ、前記増大した摩擦力に対抗可能なステアリング装置の出力を得ることができる。換言すれば、所望のステアリングフィール(操舵性)を維持することができる。
【0113】
[第6の実施形態]
図10は、第6の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第6の実施形態のグラフである。
図10では、線83は、積載重量Wが比較的多いときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線84は、積載重量Wが比較的少ないときの操舵指令信号補正値Cを示している。なお、第6の実施形態は、
図6に示す実施形態と同様のEPSコントローラ3によって制御されるものであり、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0114】
具体的な図示は省略するが、第6の実施形態では、第1~第5の実施形態と異なり、車両の荷台または荷室に積載されている荷物の重量である積載重量Wが、積載重量信号受信部94から操舵指令信号補正部48に入力される。積載重量Wは、荷台または荷室に設けられた積載重量計量装置によって計量される。操舵指令信号補正部48に設けられた操舵指令信号補正値調整部78は、積載重量Wに基づいて操舵指令信号補正値Cを調整する。操舵指令信号補正値Cは、
図10に示すように、積載重量Wが多いほど大きくなるように設定されている。
【0115】
[第6の実施形態の効果]
第6の実施形態では、EPSコントローラ3は、積載重量に関する信号(積載重量W)を受信する積載重量信号受信部94を備え、積載重量に関する信号は、車両の荷台または荷室に積載されている荷物の重量に関する信号であり、操舵指令信号補正値調整部78は、積載重量Wが多いほど、操舵指令信号補正値Cを大きくする。
【0116】
より詳細には、積載重量Wが多いときは、この積載重量W分の負荷が転舵輪に多く作用するので、上記積載重量W分の負荷に抗して転舵輪を転舵させるのに、ステアリング装置がより高い出力を必要とする。そこで、上記積載重量W分の負荷分だけ操舵指令信号補正値Cを大きくして電動モータ2の出力を高くすることにより、ステアリング装置の全体の出力が高められ、積載重量Wに対抗可能なステアリング装置の出力を得ることができる。換言すれば、所望のステアリングフィール(操舵性)を維持することができる。
【0117】
[第7の実施形態]
図11は、第7の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第7の実施形態のグラフである。
図11では、線85は、操舵トルクTrが比較的大きいときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線86は、操舵トルクTrが比較的小さいときの操舵指令信号補正値Cを示している。なお、第7の実施形態は、
図6に示す実施形態と同様のEPSコントローラ3によって制御されるものであり、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0118】
第7の実施形態では、第1~第6の実施形態と異なり、操舵力、つまりトルクセンサ32によって検出された操舵トルクTrが、操舵トルク信号受信部51から操舵指令信号補正部48に入力される。操舵指令信号補正部48に設けられた操舵指令信号補正値調整部78は、操舵トルクTrに基づいて操舵指令信号補正値Cを調整する。操舵指令信号補正値Cは、
図11に示すように、操舵トルクTrが大きくなるほど小さくなるように設定されている。
【0119】
[第7の実施形態の効果]
第7の実施形態では、ステアリング装置は、トルクセンサ32を備え、トルクセンサ32は、操舵軸7に設けられ、運転者の操舵負荷である操舵トルクTrを検出するものであり、EPSコントローラ3は、操舵トルク信号受信部51を備え、操舵トルク信号受信部51は、操舵トルクに関する信号である操舵トルクTrを受信するものであり、操舵指令信号補正値調整部78は、操舵トルクTrが大きいほど、操舵指令信号補正値Cを小さくする。
【0120】
このように操舵トルクTrが大きいときには、運転者が積極的にステアリングホイールを操舵している状況にあるから、操舵指令信号補正値Cを大きくすると運転者の操舵操作を妨害することになる。そこで、操舵トルクTrが大きいときには、運転者の操舵操作を優先させるため、操舵指令信号補正値Cを小さくすることにより、運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0121】
[第8の実施形態]
図12は、第8の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第8の実施形態のグラフである。
図12では、線87は、転舵輪の空気圧Apが比較的高いときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線88は、転舵輪の空気圧Apが比較的低いときの操舵指令信号補正値Cを示している。なお、第8の実施形態は、
図6に示す実施形態と同様のEPSコントローラ3によって制御されるものであり、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0122】
具体的な図示は省略するが、第8の実施形態では、第1~第7の実施形態と異なり、転舵輪の空気圧Apが操舵トルク信号受信部51から操舵指令信号補正部48に入力される。操舵指令信号補正部48に設けられた操舵指令信号補正値調整部78は、転舵輪の空気圧Apに基づいて操舵指令信号補正値Cを調整する。操舵指令信号補正値Cは、
図12に示すように、転舵輪の空気圧Apが低いほど大きくなるように設定されている。
【0123】
[第8の実施形態の効果]
第8の実施形態では、EPSコントローラ3は、空気圧信号受信部95を備え、空気圧信号受信部95は、転舵輪のタイヤの空気圧Apに関する信号である空気圧信号を受信するものであり、操舵指令信号補正値調整部78は、転舵輪のタイヤの空気圧Apが低いほど、操舵指令信号補正値Cを大きくする。
【0124】
より詳細には、転舵輪の空気圧Apが低いときには、転舵輪の外周面と路面との接触面積が大きくなり、路面から転舵輪に作用する摩擦力も大きくなるので、転舵輪を転舵し難くなる。このため、摩擦力に抗して転舵輪を転舵させるために、ステアリング装置においてより高い出力が必要となる。そこで、操舵指令信号補正値Cを大きして電動モータ2の出力を大きくすることにより、ステアリング装置の出力が高められ、前記増大した摩擦力に対抗可能なステアリング装置の出力を得ることができる。換言すれば、所望のステアリングフィール(操舵性)を維持することができる。
【0125】
[第9の実施形態]
図13は、第9の実施形態におけるEPSコントローラ3の制御ブロック図である。
図14は、第9の実施形態における操舵軸7への入力トルクに対する操舵指令信号補正値Cを示した第9の実施形態のグラフである。
図14では、線89は、後述する補正パラメータPが比較的大きいときの操舵指令信号補正値Cを示しており、線90は、補正パラメータPが比較的小さいときの操舵指令信号補正値Cを示している。
【0126】
第9の実施形態では、第1~第8の実施形態と異なり、EPSコントローラ3のインターフェースに、モータトルク信号受信部101および転舵加速度信号受信部102が設けられている。モータトルク信号受信部101は、電動モータ2のモータトルクTmに関する信号を受信する。転舵加速度信号受信部102は、転舵輪の転舵加速度Qに関する信号を受信する。転舵加速度Qは、転舵角θs(
図15参照)やモータ回転角θm等に基づいて算出される。モータトルクTmおよび転舵加速度Qは、EPSコントローラ3に設けられた補正パラメータ演算部100に入力される。補正パラメータ演算部100は、転舵加速度QをモータトルクTmで除算することで補正パラメータPを生成し、操舵指令信号補正部48へ出力する。この補正パラメータPは、パワーシリンダ6の出力トルクのゲインに相当する。操舵指令信号補正部48は、
図14に示すように、補正パラメータPが大きいほど小さくなるように設定されている。
【0127】
なお、モータトルクTmの信号としては、トルクセンサ32からの出力信号を用いても良く、または電動モータ2に流れる電流や電動モータ2への指令信号を用いても良い。
【0128】
[第9の実施形態の効果]
第9の実施形態では、EPSコントローラ3は、転舵加速度信号受信部102と、モータトルク信号受信部101を備え、転舵加速度信号受信部102は、転舵輪の転舵加速度Qに関する信号を受信するものであり、モータトルク信号受信部101は、電動モータ2のモータトルクTmに関する信号を受信するものであり、操舵指令信号補正部48は、操舵指令信号補正値調整部78を備え、操舵指令信号補正値調整部78は、転舵輪の転舵加速度Qに関する信号およびモータトルクTmに基づき、操舵指令信号補正値Cを調整する。具体的には、操舵指令信号補正値Cは、転舵加速度Qを電動モータ2のモータトルクTmで除算してなる補正パラメータPが大きいほど小さくなるように設定されている。
【0129】
パワーシリンダ6の経年劣化、例えばピストン15のシール性の悪化によりフリクションが低下したときには転舵加速度Qが高くなる。すると、転舵加速度QをモータトルクTmで除算してなる補正パラメータPは大きくなる。補正パラメータPは、パワーシリンダ6の出力トルクのゲインに相当するものであるから、補正パラメータPが大きいときには、パワーシリンダ6の出力トルクのゲインも大きくなる。このような場合には、経年劣化によるフリクションの低下分、つまり転舵加速度Qの増加分だけ操舵指令信号補正値Cを小さくして電動モータ2の出力トルクを低くすることで、ステアリング装置の全体の出力が抑えられる。これにより、ステアリング装置の出力を所望の値に維持することができる。
【0130】
[第10の実施形態]
図15は、第10の実施形態におけるEPSコントローラ3の制御ブロック図である。
【0131】
第10の実施形態では、第1~第9の実施形態において操舵指令信号生成部45のインターフェースに設けられた操舵角指令信号受信部53および操舵角信号受信部54が、転舵角指令信号受信部91および転舵角信号受信部92に置き換えられている。
【0132】
転舵角指令信号受信部91は、転舵輪の目標となる転舵角に関する信号である転舵角指令信号(以下、「転舵角指令」と呼ぶ)θscを受信する外部入力である。
【0133】
転舵角信号受信部92は、転舵輪の実際の転舵角に関する信号である転舵角信号(以下、「転舵角」と呼ぶ)θsを受信する外部入力である。転舵角θsは、転舵輪に接続された転舵軸に設けられ、転舵軸のストローク位置を検出する図示せぬ転舵角センサによって検出される。
【0134】
また、転舵角θsは、第1、第2トーションバー12,13の捩れトルクやモータトルクTmに基づいて演算されても良い。
【0135】
さらに、転舵角θsとして、電動モータ2のモータ回転角θmに基づいて推定したものを用いるようにしても良い。
【0136】
図15に示すように、転舵角指令θscおよび転舵角θsは、自動時操舵指令信号生成部45bを介して第1自動時操舵指令Bに変換される。そして、この第1自動時操舵指令Bは、加算器56において操舵指令信号補正値Cが加算されることで、第2操舵指令Dに変換される。この第2操舵指令Dは、モータ回転数Nmとともに、モータ指令信号生成部59に入力される。そして、モータ指令信号生成部59は、転舵角指令θscおよび転舵角θsに基づいて取得された第2操舵指令Dと、モータ回転数Nmとに基づいてq軸目標電流Iq*およびd軸目標電流Id*を生成する。目標電流Iq*,Id*から実電流Iqr,Iqrを減算することで、電流偏差ΔIq,ΔIdが生成される。電流偏差ΔIq,ΔIdは、フィードバック制御部である第1、第2PI制御部62,63にそれぞれ入力される。
【0137】
[第10の実施形態の効果]
第10の実施形態では、EPSコントローラ3は、転舵角指令信号受信部91と、転舵角信号受信部92を備え、転舵角指令信号受信部91は、転舵輪の目標転舵角に関する信号である転舵角指令θscを受信し、転舵角指令θscを操舵指令信号生成部45に送信するものであり、転舵角信号受信部92は、転舵輪の実際の転舵角θsに関する信号である転舵角θsを受信するものであり、モータ指令信号生成部59は、第1、第2PI制御部62,63を備え、第1、第2PI制御部62,63は、第2操舵指令Dと転舵角θsに基づきフィードバック制御によりモータ指令信号を生成する。
【0138】
自動操舵での運転、例えばレーンキープの際には、ADASコントローラ38からモータ指令信号生成部59へ操舵トルクTrが入力され、この操舵トルクTrに基づいて演算された指令信号によってフィードバック制御を介さずに電動モータ2が駆動される場合がある。この場合には、所定の転舵角やアシストトルクが出力されることを想定して操舵トルクTrを入力しており、所謂オープンループの制御となっている。従って、電動モータ2を精度良く制御することができない虞がある。
【0139】
しかし、本実施形態のように、転舵角θsを用いて演算された第2操舵指令Dに基づいて目標電流Iq*,Id*を生成し、これらを減算処理して得られる電流偏差ΔIq,ΔIdを第1、第2PI制御部62,63に入力してフィードバック制御することで、上記のオープンループの制御の場合と比べ、電動モータ2を精度良く制御することができる。
【0140】
また、第2操舵指令Dを生成するための第1自動時操舵指令Bについて、操舵角θrではなく転舵角θsを用いることで、パワーシリンダ6のゲインに合わせて効率的に電動モータ2を制御することができる。
【0141】
[他の実施形態]
他の実施形態では、例えば第3の実施形態のステアリング装置において、EPSコントローラ3が、環境温度信号受信部96を備えており、環境温度信号受信部96は、車両に設けられた温度センサの出力信号を受信し、さらに、操舵指令信号補正値調整部78が、温度センサの出力信号に基づき、操舵指令信号補正値Cを調整するようにしても良い。
【0142】
このため、CAN通信により環境温度信号受信部96から環境温度Txを取得し、この環境温度Txに基づいて、第1液室P1または第2液室P2に供給される作動液の温度Tkを推定することにより、ステアリング装置に作動液温度センサを設けなくても、作動液の温度Tkを得ることができる。従って、ステアリング装置の製造コストが削減される。
【0143】
また、別の実施形態では、例えば第3の実施形態のステアリング装置において、EPSコントローラ3は、モータ端子間抵抗値信号受信部97を備えており、モータ端子間抵抗値信号受信部97は、電動モータ2の出力端子の端子間抵抗値Rに関する信号を受信し、操舵指令信号補正値調整部78は、モータ端子間抵抗値Rに関する信号に基づき、操舵指令信号補正値Cを調整するようにしても良い。
【0144】
端子間抵抗値Rが環境温度Txに応じて変化するので、端子間抵抗値Rに基づいて、作動液の温度Tkを推定することによっても、ステアリング装置に作動液温度センサを設けずに、作動液の温度Tkを得ることができる。従って、ステアリング装置の製造コストが削減される。
【0145】
さらに、別の実施形態では、例えば第3の実施形態のステアリング装置において、操舵指令信号補正値Cは、右転舵用操舵指令信号補正値Rxと、左転舵用操舵指令信号補正値Lxを含んでおり、右転舵用操舵指令信号補正値Rxと左転舵用操舵指令信号補正値Lxは、互いに異なる値を有するようにし、操舵指令信号補正部48は、転舵輪が右転舵するとき、右転舵用操舵指令信号補正値Rxに基づき、第1自動時操舵指令B(第1手動時操舵指令A)を補正することで第2操舵指令Dを生成し、転舵輪が左転舵するとき、左転舵用操舵指令信号補正値Lxに基づき、第1自動時操舵指令B(第1手動時操舵指令A)を補正することで第2操舵指令Dを生成するようにしても良い。
【0146】
一般に、インテグラル型のステアリング装置では、第1液室P1と第2液室P2との容積の違いや、第1液室P1の受圧面積と第2液室P2の受圧面積との違いにより、第1液室P1への作動液の供給時(例えば、右転舵)と、第2液室P2への作動液の供給時(例えば、左転舵)とで、パワーシリンダ6の出力特性に差が生じる場合がある。
【0147】
従って、本実施形態では、上記の左右転舵時のパワーシリンダ6の出力特性の差を補うために、操舵指令信号補正部48は、右転舵時には右転舵用操舵指令信号補正値Rxを用いて第2操舵指令Dを生成し、左転舵時には左転舵用操舵指令信号補正値Lxを第2操舵指令Dを生成する。
【0148】
なお、上記各実施形態では、パワーシリンダ6の静的特性のばらつきを抑制する例を開示したが、パワーシリンダ6の動的特性のばらつきを抑制する構成も本発明に適用することができる。
【0149】
以上説明した実施形態に基づくステアリング装置としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0150】
ステアリング装置は、その一つの態様において、操舵機構であって、操舵軸と、伝達機構を備え、前記操舵軸は、入力軸と、出力軸と、前記入力軸と前記出力軸とを接続するトーションバーを備え、前記伝達機構は、前記操舵軸の回転を転舵輪に伝達するものである、前記操舵機構と、パワーシリンダであって、パワーシリンダ本体部と、ピストンと、第1液室と、第2液室を備え、前記伝達機構に対し転舵輪を転舵させる転舵力を付与するものであり、前記ピストンは、前記パワーシリンダ本体部の内部に設けられ、前記パワーシリンダ本体部の内部空間を前記第1液室と前記第2液室に分割するものである、前記パワーシリンダと、ロータリバルブであって、前記トーションバーの捩れに応じて外部から供給される作動液を前記第1液室と第2液室に選択的に供給する、前記ロータリバルブと、電動モータであって、前記入力軸に回転力を付与する、前記電動モータと、コントローラであって、操舵指令信号生成部と、操舵指令信号補正部と、モータ指令信号生成部と、モータ指令信号出力部を備え、前記操舵指令信号生成部は、第1操舵指令信号を生成するものであり、前記操舵指令信号補正部は、操舵指令信号補正値に基づき、前記第1操舵指令信号を補正し、第2操舵指令信号を生成するものであり、前記操舵指令信号補正値は、前記電動モータに第3操舵指令信号が入力されたときの前記第3操舵指令信号に対する前記パワーシリンダの出力に応じて生成されるものであり、前記モータ指令信号生成部は、前記第2操舵指令信号に基づきモータ指令信号を生成するものであり、前記モータ指令信号出力部は、前記電動モータに対し前記モータ指令信号を出力するものである、前記コントローラと、を有する。
【0151】
前記ステアリング装置の好ましい態様において、前記コントローラは、操舵指令信号補正値記憶部を備え、前記操舵指令信号補正値記憶部は、前記操舵指令信号補正値を記憶するものであり、前記操舵指令信号補正部は、前記操舵指令信号補正値記憶部に記憶された前記操舵指令信号補正値に基づき、前記第1操舵指令信号を補正し、前記第2操舵指令信号を生成する。
【0152】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記操舵指令信号補正値は、前記電動モータに前記第3操舵指令信号が入力されたときの前記パワーシリンダの出力と、基準出力との差に基づき生成されるものである。
【0153】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記ロータリバルブに供給される作動液は、ポンプ装置から供給されるものであり、前記操舵指令信号補正部は、操舵指令信号補正値調整部を備え、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記ポンプ装置の回転速度に関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する。
【0154】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記ポンプ装置の回転速度に関する信号の値が高いほど、前記操舵指令信号補正値を小さくする。
【0155】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記第1液室または前記第2液室に供給される作動液の温度に関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する。
【0156】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記第1液室または前記第2液室に供給される作動液の温度に関する信号の値が低いほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする。
【0157】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、環境温度信号受信部を備え、前記環境温度信号受信部は、車両に設けられた温度センサの出力信号を受信するものであり、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記温度センサの出力信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する。
【0158】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、モータ端子間抵抗値信号受信部を備え、前記モータ端子間抵抗値信号受信部は、前記電動モータの出力端子の端子間抵抗値に関する信号を受信するものであり、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記モータ端子間抵抗値に関する信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する。
【0159】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、車両速度の信号を受信する車速信号受信部を備え、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記車両速度が低いほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする。
【0160】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、積載重量に関する信号を受信する積載重量信号受信部を備え、前記積載重量に関する信号は、車両の荷台または荷室に積載されている荷物の重量に関する信号であり、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記積載重量が大きいほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする。
【0161】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、ステアリング装置は、トルクセンサを備え、前記トルクセンサは、前記操舵軸に設けられ、運転者の操舵負荷である操舵トルクを検出するものであり、前記コントローラは、前記操舵トルク信号受信部を備え、前記操舵トルク信号受信部は、前記操舵トルクに関する信号である操舵トルク信号を受信するものであり、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記操舵トルクが大きいほど、前記操舵指令信号補正値を小さくする。
【0162】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、空気圧信号受信部を備え、前記空気圧信号受信部は、前記転舵輪のタイヤの空気圧に関する信号である空気圧信号を受信するものであり、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記転舵輪のタイヤの空気圧が低いほど、前記操舵指令信号補正値を大きくする。
【0163】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、転舵加速度信号受信部と、モータトルク信号受信部を備え、前記転舵加速度信号受信部は、前記転舵輪の転舵加速度に関する信号を受信するものであり、前記モータトルク信号受信部は、前記電動モータの出力トルクに関する信号を受信するものであり、前記操舵指令信号補正部は、操舵指令信号補正値調整部を備え、前記操舵指令信号補正値調整部は、前記転舵輪の転舵加速度に関する信号および前記モータトルク信号に基づき、前記操舵指令信号補正値を調整する。
【0164】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、転舵角指令信号受信部と、転舵角信号受信部を備え、前記転舵角指令信号受信部は、前記転舵輪の目標転舵角に関する信号である転舵角指令信号を受信し、前記転舵角指令信号を前記操舵指令信号生成部に送信するものであり、前記転舵角信号受信部は、前記転舵輪の実際の転舵角に関する信号である転舵角信号を受信するものであり、前記モータ指令信号生成部は、フィードバック制御部を備え、前記フィードバック制御部は、前記第2操舵指令信号と前記転舵角信号に基づきフィードバック制御により前記モータ指令信号を生成する。
【0165】
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記操舵指令信号補正値は、右転舵用操舵指令信号補正値と、左転舵用操舵指令信号補正値を含み、前記右転舵用操舵指令信号補正値と前記左転舵用操舵指令信号補正値は、互いに異なる値を有しており、前記操舵指令信号補正部は、前記転舵輪が右転舵するとき、前記右転舵用操舵指令信号補正値に基づき、前記第1操舵指令信号を補正することで前記第2操舵指令信号を生成し、前記転舵輪が左転舵するとき、前記左転舵用操舵指令信号補正値に基づき、前記第1操舵指令信号を補正することで前記第2操舵指令信号を生成するものである。