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特許7583812複数の反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法
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  • 特許-複数の反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】複数の反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20241107BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20241107BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01N27/62 X
G01N27/62 D
G01N30/86 J
G01N30/72 C
G01N30/86 P
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022537002
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2020086409
(87)【国際公開番号】W WO2021122737
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】19216960.5
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】アレンス,ナジャ
(72)【発明者】
【氏名】ガイスタンガー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ヒルガー,アントン
(72)【発明者】
【氏名】インテルマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シャーリアリ,シリン
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05459677(US,A)
【文献】特表2016-523359(JP,A)
【文献】特開2003-194795(JP,A)
【文献】特表2014-522496(JP,A)
【文献】国際公開第2012/170549(WO,A1)
【文献】特表2019-505773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
G01N 30/86
G01N 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための方法であって、前記分析装置(112)が、複数のハードウェア構成要素(114)を備え、ハードウェア構成要素が、前記分析装置(112)の物理的および/または有形の部分であり、前記方法が、以下:
a)少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有する少なくとも1つの較正器サンプルiを提供するステップと、
b)少なくとも1つの測定ステップであって、前記測定ステップが、前記分析装置(112)を使用して前記較正器サンプルに対して少なくとも1つの測定を実行することを含み、少なくとも1つの検出器信号sijkが取得され、i=1,...I、I≧2であり、iが前記少なくとも1つの較正器サンプルのうちのi番目の較正器サンプルを指し、j=1,...J、J≧2であり、jが前記複数のハードウェア構成要素のうちのj番目のハードウェア構成要素を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kが前記測定ステップの反復回数を指す、少なくとも1つの測定ステップと、
c)少なくとも1つの較正ステップであって、前記検出器信号と前記分析物の前記濃度との間の関係が決定され、前記較正ステップが、
c.1:少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供することであって、前記パラメータ化された関数がパラメータのセットを有し、前記パラメータのセットが、前記パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含み、前記パラメータのセットが、前記パラメータ化された関数を前記ハードウェア構成要素(114)に調整するためのパラメータをさらに含む、パラメータ化された関数を提供することと、
c.2:前記パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定することと、
c.3:前記パラメータ化された関数の逆関数および決定された前記較正値に基づいて分析関数を決定することと
を含む、少なくとも1つの較正ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための方法であって、前記分析装置(112)が、複数のハードウェア構成要素(114)を備え、ハードウェア構成要素が、前記分析装置(112)の物理的および/または有形の部分であり、前記方法が、以下:
A)少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値と、少なくとも1つの較正器サンプルの理論信号が導出される平均較正曲線とを有する前記少なくとも1つの較正器サンプルiを提供するステップと、
B)少なくとも1つの測定ステップであって、前記測定ステップが、前記分析装置(112)を使用して前記較正器サンプルに対して少なくとも1つの測定を実行することを含み、少なくとも1つの検出器信号sijkが取得され、i=1,...I、I≧1であり、iが前記少なくとも1つの較正器サンプルのうちのi番目の較正器サンプルを指し、j=1,...J、J≧2であり、jが前記複数のハードウェア構成要素のうちのj番目のハードウェア構成要素を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kが前記測定ステップの反復回数を指す、少なくとも1つの測定ステップと、
C)少なくとも1つの較正ステップであって、前記検出器信号と理論信号値との間の関係が決定され、前記較正ステップが、
- 少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供することであって、前記パラメータ化された関数がパラメータのセットを有し、前記パラメータのセットが、前記パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含み、前記パラメータのセットが、前記パラメータ化された関数を前記ハードウェア構成要素(114)に調整するためのパラメータをさらに含む、パラメータ化された関数を提供することと、
- 前記パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定することと、
- 前記パラメータ化された関数の逆関数および前記決定された較正値に基づいて分析関数を決定することと
を含む、少なくとも1つの較正ステップと
を含む、方法。
【請求項3】
さらなるサンプルの少なくとも1つの測定を行うことをさらに含み、前記分析関数を使用することにより、前記さらなるサンプルの測定信号に基づいて前記さらなるサンプルの濃度が決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータのセットが、
【数1】
によって表され、nおよびrが正の整数であり、
【数2】
が、前記パラメータ化された関数の前記分析物特有の部分を記述する前記パラメータに対応し、
【数3】
が、前記パラメータ化された関数を前記ハードウェア構成要素(114)に調整するための前記パラメータを記述するベクトルを指し、前記較正値が、
【数4】
によって表される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出器信号と前記理論信号値との間の前記関係が決定され、前記パラメータ化された関数が信号調整関数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出器信号と前記分析物の前記濃度との間の前記関係が決定され、前記パラメータ化された関数が信号濃度関数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記信号濃度関数が一次関数である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記信号濃度関数が、ハードウェア部品固有の切片、ハードウェア部品固有の傾きの一方または双方を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記信号濃度関数が、ハードウェア部品固有の調整係数を有する一次関数である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析装置(112)が、質量分析装置(116)、具体的には液体クロマトグラフィ質量分析装置、免疫測定分析装置、測光測定装置、血液ガス分析装置、血液分析装置、DNA分析装置からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハードウェア構成要素(114)が、同等のハードウェア構成要素(114)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ハードウェア構成要素(114)が、カラム(122)、具体的には高速液体クロマトグラフィカラム、ストリーム、具体的には高速液体クロマトグラフィストリーム、サンプル注入装置、具体的には高速液体クロマトグラフィ注入装置、ポンプ、測定セル、検出器、具体的には質量分析検出器(126)からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記較正器サンプルが、前記ハードウェア構成要素(114)の一部もしくは全部を通過するか、または前記ハードウェア構成要素(114)の一部もしくは全部を介して移送される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための装置(110)であって、ハードウェア構成要素が、前記分析装置(112)の物理的および/または有形の部分であり、前記装置(110)が、
複数のハードウェア構成要素(114)を備える少なくとも1つの分析装置(112)であって、前記分析装置(112)が、少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有する較正器サンプルiに対して少なくとも1つの測定を実行するように構成され、前記分析装置(112)が、少なくとも1つの検出器信号sijkを取得するように構成され、i=1,...I、I≧2であり、iがi番目の較正器サンプルを指し、j=1,...J、J≧2であり、jが前記複数のハードウェア構成要素のうちのj番目のハードウェア構成要素を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kが測定ステップの反復回数を指す、少なくとも1つの分析装置(112)と、
少なくとも1つの評価装置(128)であって、前記評価装置(128)が、少なくとも1つの較正ステップを実行するように構成され、前記検出器信号と前記分析物の前記濃度との間および/または前記検出器信号と理論信号値との間の関係が決定され、前記評価装置(128)が、少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供するように構成され、前記パラメータ化された関数がパラメータのセットを有し、前記パラメータのセットが、前記パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含み、前記パラメータのセットが、前記パラメータ化された関数を前記ハードウェア構成要素(114)に調整するためのパラメータをさらに含み、前記評価装置(128)が、前記パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定するようにさらに構成され、前記評価装置(128)が、前記パラメータ化された関数の逆関数および前記決定された較正値に基づいて分析関数を決定するようにさらに構成される、少なくとも1つの評価装置(128)と
を備える、装置(110)。
【請求項15】
少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、前記プロセッサが、少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための方法を参照する請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための方法のステップb)からc)および/またはB)からC)を実行するように適合される、コンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されている間に、少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための方法を参照する請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの分析装置(112)を較正するための方法のステップb)からc)および/またはB)からC)を実行するように適合される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法、少なくとも1つの分析装置を較正するための装置、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
一般に、分析装置を較正するためのいくつかの方法が知られている。具体的には、分析装置から濃度値を取得するために、分析装置を較正する必要がある。特に、分析装置の生信号と濃度との間の関係が確立される必要がある。そうするために、「較正器」と呼ばれる既知の濃度値を有するサンプルが分析装置で測定され、得られたデータに関数が適合される。
【0003】
fを較正関数とする:
f:濃度→信号
(濃度)=信号、
ここで、p=(p,p,...,p)であり、n≧lであり、nは較正モデル内のパラメータの数を指し、pは較正関数のパラメータを指す。一般に、較正モデルが複雑になるほど、完全較正モデルの確立にはより多くの較正器レベルが必要とされる。質量分析アッセイの較正曲線は、多くの場合、3から8つの較正器レベルに基づく。例えば、「Liquid Chromatography-Mass Spectrometry Methods」;Approved Guideline,Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI),document C62-A,Vol.34 No.16 2014が参照される。
【0004】
一般に、新たな液体クロマトグラフィ-質量分析機器は、一部のハードウェア部品が機器上で反復されるハードウェア設定を有する場合がある。一例は、システムのスループットを高めるための高速液体クロマトグラフィ(HPLC)多重化の使用である。現在、較正には2つのオプションが知られており、(1)各高速液体クロマトグラフィ多重化ストリームに対して個別に適合された較正関数を使用するか、または(2)全てのストリームに対して単一の平均関数を使用する。ここで、特定のハードウェア部品が個々の較正関数(オプション(1))を必要とする場合、関数fは、一般に、各部品に個別に適合され、推定パラメータ値
【数1】
の異なる値)、
【数2】
が得られ、J≧1であり、Jはハードウェア構成要素の数を指す)。
【0005】
双方のオプションには明確な欠点があり得る。高速液体クロマトグラフィ多重化ストリームが完全に比較可能でない場合、平均較正関数は、個々のストリームで得られた分析結果に対して常にバイアスを生成する。一方、個々のストリームごとの専用の較正は、非常に高い較正負荷をもたらし、実現不可能な場合さえある。
【0006】
解決すべき課題
したがって、本発明の目的は、既知の方法、装置、コンピュータおよびコンピュータプログラムの上述した欠点を回避する、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための装置、コンピュータまたはコンピュータネットワークおよびコンピュータプログラムを提供することである。特に、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための装置、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、およびコンピュータプログラムは、反復ハードウェア構成要素を有する分析装置の較正負荷を低減するものとする。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
この課題は、独立請求項の特徴を有する、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための装置、コンピュータまたはコンピュータネットワークおよびコンピュータプログラムによって解決される。単独で、または任意の組み合わせで実現されてもよい本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
以下において使用される場合、用語「有する」、「備える」もしくは「含む」またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0009】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、決して特許請求の範囲を制限することを意図したものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関する制限がなく、本発明の範囲に関する制限がなく、およびそのような方法で導入された特徴を、本発明の他の任意または非任意の特徴と組み合わせる可能性に関する制限がない任意の特徴であることを意図する。
【0010】
本発明の第1の態様では、分析装置が複数のハードウェア構成要素を備える、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法が開示される。
【0011】
本明細書で使用される「分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの分析検出を実行するように構成された任意の装置を指すことができる。さらに本明細書で使用される場合、「検出」という用語は、サンプル中の少なくとも1つの分析物の存在および/または量および/または濃度を決定するプロセスを指す。したがって、検出は、少なくとも1つの分析物の存在または少なくとも1つの分析物の非存在を単に決定する定性的検出であってもよく、もしくはそれを含んでもよく、ならびに/あるいは少なくとも1つの分析物の量および/または濃度を決定する定量的検出であってもよく、もしくはそれを含んでもよい。
【0012】
具体的には、分析装置は、流体中などのサンプル中の分析物の濃度を決定するための装置とすることができる。「分析物」という用語は、一般に、サンプル中に存在することがある任意の元素、成分または化合物を指し、その存在および/または濃度は、ユーザ、患者または医師などの医療スタッフにとって関心があり得る。特に、分析物は、少なくとも1つの代謝産物など、ユーザまたは患者の代謝に関与することがある任意の化学物質または化学化合物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。少なくとも1つの分析物の検出は、具体的には、分析物特異的検出とすることができる。しかしながら、他の種類の分析物も可能とすることができる。
【0013】
本明細書で使用される「濃度」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、溶液中の溶質および/または溶媒などの混合物の総体積で割った成分の存在量を指すことができる。濃度は、質量濃度、モル濃度、数濃度または体積濃度などの異なる種類の量によって記載されることができる。
【0014】
具体的には、分析装置は、質量分析装置、具体的には液体クロマトグラフィ質量分析装置、免疫測定分析装置、測光測定装置、血液ガス分析装置、血液分析装置、DNA分析装置からなる群から選択されることができる。しかしながら、他の種類の分析装置も可能とすることができる。
【0015】
本明細書でさらに使用される場合、「質量分析(MS)装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量電荷比に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された質量分析器を指すことができる。質量分析装置は、少なくとも1つの四重極質量分析装置とすることができ、またはそれを備えることができる。LC装置とMSとを結合する界面は、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を備えることができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ(LC)装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析装置を用いて1つ以上の分析物を検出するために、サンプルの1つ以上の目的の分析物をサンプルの他の成分から分離するように構成された分析モジュールを指すことができる。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよいし、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、目的の分析物を分離および/または溶出および/または移送するために移動相が圧送される固定相を有することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、液体クロマトグラフィと質量分析との組み合わせを指すことができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置とすることができるか、またはそれを備えることができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、液体クロマトグラフィ(LC)装置および質量分析(MS)装置を備えることができ、LC装置およびMSは、少なくとも1つの界面を介して結合される。
【0018】
分析装置は、具体的には、複数の反復ハードウェア構成要素などの反復ハードウェア構成要素を備える分析システムとして具現化されることができる。具体的には、分析装置は、複数のハードウェア構成要素を備えることができる。「構成要素」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析装置の一部、特に分析システムを指すことができる。構成要素は、例えば、システムの少なくとも1つの共通の機能を果たすために、別の構成要素と相互作用するように構成されてもよい。構成要素は、独立して処理されてもよく、または互いに結合、接続可能、もしくは統合可能であってもよい。「ハードウェア」という用語は、一般に、分析装置の物理的および/または有形の部分を指すことができる。「ハードウェア構成要素」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析装置の一部、具体的には物理的および/または有形の部分を指すことができる。ハードウェア構成要素は、ハードウェア部品とも呼ばれることがある。「反復ハードウェア構成要素」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析装置のハードウェア構成要素が少なくとも2回存在するという事実を指すことができる。例えば、分析装置は、HPLC多重化装置とすることができる。「多重化」という用語は、複数のLCシステムが単一の質量分析装置内で同時に実行されることを指すことができる。各LCシステムは、個別であってもよく、および/または他のLCシステムから分離していてもよい。例えば、分析装置は、単一の質量分析装置を用いた複数の同時HPLC分離を含んでもよい。ハードウェア構成要素は、カラム、具体的には高速液体クロマトグラフィカラム、ストリーム、具体的には高速液体クロマトグラフィストリーム、サンプル注入装置、具体的には高速液体クロマトグラフィ注入装置、ポンプ、測定セル、検出器、具体的には質量分析検出器からなる群から選択されることができる。また、他の構成要素も可能とすることができる。
【0019】
ハードウェア構成要素は、同等のハードウェア構成要素であってもよい。「同等」という用語は、実施形態および/または2つ以上の装置の機能における等価性を指すことができる。したがって、分析装置の第1のハードウェア構成要素および第2のハードウェア構成要素は、同じ機能を果たすことができ、および/またはその構造および/または構造において同一とすることができる。例示的には、第1のハードウェア構成要素は、高速液体クロマトグラフィカラムであってもよく、第2のハードウェア構成要素は、同様に高速液体クロマトグラフィカラムであってもよい。具体的には、較正器サンプルは、ハードウェア構成要素の一部または全部を通過してもよく、またはハードウェア構成要素の一部または全部を介して移送されてもよい。しかしながら、他の実施形態も可能とすることができる。
【0020】
「較正」および「較正すること」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。これらの用語は、具体的には、限定されないが、質量分析装置などの分析装置によって決定された分析物の生信号と分析物の濃度との間の関係を決定するための操作または操作プロセスを指すことができる。具体的には、較正は、指定された条件下で、第1のステップにおいて、測定規格によって提供される測定の不確実性を有する量の値と、関連する測定の不確実性を有する対応する指示、具体的には較正された機器または二次標準の指示との間の関係を確立し、第2のステップにおいて、指示から測定結果を取得するための関係を確立するためにこの情報を使用する動作または動作プロセスとすることができるか、または動作または動作プロセスを含むことができる。具体的には、「較正」および「較正すること」という用語は、サンプルの測定信号に基づくサンプルの濃度の決定および/または測定信号とサンプルの濃度との間の関数相関の決定を含むことができる。反復ハードウェア構成要素、例えばHPLC装置を有する分析装置を較正するための既知の方法では、各ハードウェア構成要素、例えば各HPLC多重化ストリームに対する個別に適合された較正関数、または全てのハードウェア構成要素、例えば全てのストリームに対する単一の平均関数が使用される。双方のオプションには明確な欠点があり得る。HPLC多重化ストリームが完全に比較可能でない場合、平均較正関数は、個々のストリームで得られる分析結果に対して常にバイアスを生成する。一方、個々のストリームごとの専用の較正は、非常に高い較正負荷をもたらし、実現不可能な場合さえある。本発明は、連結較正プロセスを提案する。この手法では、機器の較正負荷は、一般的な個々の流れの較正よりも低い。他方では、各ストリームの較正機能の調整が保証されることができる。本発明を簡略化して、ストリーム個別調整係数を有する全てのストリームにわたる平均較正関数を提案する。
【0021】
本方法は、例として、所与の順序で実行されてもよい以下のステップを含む。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを同時にまたは適時に重複して実行することが可能である。本方法は、記載されていないさらなる方法ステップを含むことができる。
【0022】
本方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有する少なくとも1つの較正器サンプルiを提供するステップと、
b)少なくとも1つの測定ステップであって、測定ステップが、分析装置を使用して較正器サンプルに対して少なくとも1つの測定を実行することを含み、少なくとも1つの検出器信号sijkが取得され、i=1,...I、I≧2であり、iが較正器サンプルの数を指し、j=1,...J、J≧2であり、jがハードウェア構成要素の数を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kが測定ステップの反復回数を指す、少なくとも1つの測定ステップと、
c)少なくとも1つの較正ステップであって、検出器信号と分析物の濃度との間、および/または検出器信号と理論信号値との間の関係が決定され、較正ステップが、
c.1:少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供することであって、パラメータ化された関数がパラメータのセットを有し、パラメータのセットが、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含み、パラメータのセットが、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータをさらに含む、提供することと、
c.2:パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定することと、
c.3:パラメータ化された関数の逆関数および決定された較正値に基づいて分析関数を決定することと
を含む、少なくとも1つの較正ステップと
を含む。
【0023】
本方法は、具体的には、コンピュータ実装方法とすることができる。本明細書で使用される「コンピュータに実装された方法」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/または少なくとも1つのコンピュータネットワークを含む方法を指すことができる。コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークは、本発明にかかる方法の方法ステップのうちの少なくとも1つを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備えることができる。好ましくは、方法ステップのそれぞれは、コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークによって実行される。本方法は、完全に自動的に、具体的にはユーザ相互作用なしに実行されてもよい。本明細書で使用される「自動的に」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって、特に手動の動作および/またはユーザとの相互作用なしに完全に実行されるプロセスを指すことができる。
【0024】
方法ステップb)からc)は、全自動で実行されてもよい。例えば、方法ステップは、少なくとも1つのコンピュータ実行可能処理ラインによって実行されてもよい。
【0025】
「ステップ」という用語は、一般に、作業ステップ、プロセスステップ、または動作もしくは手順の段階を指すことができる。したがって、「較正ステップ」という用語は、較正の実行を含む動作の段階を指すことができる。さらに、「測定ステップ」という用語は、測定の実行を含む動作の段階を指すことができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試験サンプルとも呼ばれる生物学的サンプル、品質管理サンプルなどの任意のサンプルを指すことができる。サンプルは、1つ以上の目的の分析物を含むことができる。例えば、サンプルは、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水液、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む生理学的液からなる群から選択されてもよい。サンプルは、それぞれの供給源から得られたものとして直接使用されてもよく、または前処理および/またはサンプル調製ワークフローの対象であってもよい。例えば、内部標準を添加することによって、および/または別の溶液で希釈することによって、および/または試薬などと混合することによってサンプルが前処理されることができる。例えば、目的の分析物は、一般に、ビタミンD、依存性薬物、治療薬、ホルモン、および代謝産物とすることができる。
【0027】
「較正器」とも呼ばれる「較正器サンプル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、既知の濃度値を有する任意のサンプルを指すことができる。較正器サンプルは、既知の目標値を有する。本明細書で使用される場合、「既知の目標値」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、較正器サンプルの1つ以上のパラメータの既知の値、具体的には既知の物質濃度を指すことができる。物質は、目的の分析物と同一であってもよく、または反応もしくは誘導体化によって目的の分析物と同一の分析物を生成する分析物であってもよく、および/または濃度が既知の分析物であってもよく、および/または目的の分析物を模倣するか、そうでなければ目的の特定の分析物と相関があることができる物質であってもよい。
【0028】
本方法は、少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値と、少なくとも1つの較正器サンプルの理論信号が導出される平均較正曲線とを有する少なくとも1つの較正器サンプルiを提供することを含むことができる。平均較正曲線は、分析装置の信号と機器固有ではない分析物の濃度との間の関係とすることができる。例えば、複数の基準分析装置で測定を行い、複数の較正曲線を決定することができる。較正曲線に基づいて、平均較正曲線を計算することができる。
【0029】
分析装置を較正する方法は、少なくとも1つの測定ステップb)を含む。具体的には、ステップb)は、ハードウェア構成要素のそれぞれに対して行われてもよい。上記で概説したように、ステップb)は、少なくとも1つの検出器信号を取得することを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「検出器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、到来するイオンを検出するように構成された装置を指すことができる。検出器は、荷電粒子を検出するように構成されることができる。検出器は、少なくとも1つの電子増倍器とすることができ、またはこれを備えることができる。検出器は、検出されたイオンの少なくとも1つの質量スペクトルを決定するように構成されることができる。本明細書で使用される場合、「質量スペクトル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、電荷対質量比m/zに対する信号強度の二次元表現を指すことができ、信号強度は、それぞれのイオンの存在量に対応する。質量スペクトルは、ピクセル化画像とすることができる。質量スペクトルのピクセルの結果として生じる強度を決定するために、特定のm/z範囲内で検出器によって検出された信号が積分されることができる。サンプル中の分析物は、少なくとも1つの評価装置によって識別されることができる。具体的には、評価装置は、既知の質量を識別された質量と相関させるように、または特徴的な断片化パターンによって構成されることができる。したがって、「検出器信号」という用語は、検出器によって取得された信号を指すことができる。検出器信号は、具体的には生信号と呼ぶことがある。検出器信号は、所望の較正器サンプルについて取得されることができる。したがって、較正器サンプルのそれぞれまたは少なくともいくつかについて、別個の検出器信号が取得されることができる。さらに、検出器信号は、所望のハードウェア構成要素上で取得および/または測定されることができる。上記で概説したように、分析装置は、複数のハードウェア構成要素を備える。検出器信号は、所望のハードウェア構成要素について取得されることができる。したがって、ハードウェア構成要素のそれぞれまたは少なくともいくつかについて、別個の検出器信号が取得されることができる。さらに、特に所望の較正器サンプルおよび/または所望のハードウェア構成要素に対する検出器信号の取得は、数回行われてもよく、例えば、検出器信号の取得は、繰り返し行われてもよい。
【0030】
上記で概説したように、検出器信号は、sijkで表すことができる。iは、較正器サンプルの数を指す。具体的には、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法は、数回行われてもよい。それにより、各手順について、新たな較正器サンプルが利用されることができる。具体的には、較正器サンプルの数は、処置の数に対応することができる。しかしながら、異なるアプローチも可能とすることができる。さらに、jはハードウェア構成要素の数を指す。jは、分析装置の全てのハードウェア構成要素の数を指すことができ、または分析装置の全てのハードウェア構成要素の一部の数を指すことができる。具体的には、jは、いくつかの同等のハードウェア構成要素を指すことができる。kは、測定ステップの反復回数を指す。測定ステップ、具体的にはステップb)は、数回繰り返されてもよい。具体的には、ステップc)が行われる前に、ステップb)が数回繰り返されてもよい。
【0031】
ステップc.1では、パラメータ化された関数が提供される。「関数」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、数学的関数を指すことができる。関数は、1つ以上の変数、および任意に1つ以上のパラメータを含むことができる。具体的には、関数は、関数値に値を割り当てることができる。関数は、例示的に、一次関数または二次関数とすることができる。しかしながら、他の実施形態も可能とすることができる。「パラメータ」という用語は、一般に、数学的関数の出力または挙動に影響を及ぼすが一定に保持されているとみなされる任意の量を指す。したがって、パラメータは、数学的関数の挙動を決定するように構成されることができる。逆に、数学的関数の変数は、パラメータを変化させることが、典型的には変化しないか、またはよりゆっくりと変化するかのいずれかであるとみなされることができる。「パラメータのセット」という用語は、一般に、単一の数学的関数の複数のパラメータを指すことができる。「パラメータ化された関数」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのパラメータ、具体的には少なくとも2つのパラメータを有する任意の数学的関数を指すことができる。
【0032】
パラメータのセットは、少なくとも2つのグループを含むことができる。パラメータのセットの第1のグループは、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータに対応することができる。パラメータのセットの第2のグループは、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータに対応することができる。
【0033】
したがって、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータ、およびパラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータは、異なるパラメータによって表現されることができる。パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータと、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータとを含むパラメータの全セットは、以下によって表されることができる。
【数3】
ここで、nおよびrは正の整数であり、
【数4】
は、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータに対応し、
【数5】
は、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータを記述するベクトルを指す。
【数6】
は、パラメータベクトルに対応することができる。各パラメータベクトル
【数7】
は、Lが正の整数であるL個のパラメータのセットとすることができる。より多くのパラメータが利用されるほど、データのより正確な適合が行われることができる。したがって、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータの第1のグループと、パラメータ化された関数の調整のためのパラメータの第2のグループとへのパラメータのセットの分離は、改善された適合結果をもたらすことができる。
【0034】
パラメータのセットは、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含む。「分析物特異的部分を記述するパラメータ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析物の生信号と濃度との間の関係を反映するパラメータを指すことができるが、特定のハードウェア設定に基づく調整を指すものではない。例えば、複数の化合物が分析されることができる場合、個々の化合物のパラメータは異なることができる。
【0035】
「パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、特定のハードウェア設定に基づく調整を反映するパラメータを指すことができる。パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータは、分析装置の個々のハードウェア構成要素によって引き起こされる検出器信号への影響に関する。これらのパラメータを決定するために、較正器サンプルが個々のハードウェア構成要素ごとに測定されることができ、信号がどのハードウェア構成要素から到来するかの情報も適合プロセスに入力されることができる。全てのハードウェア構成要素が適合プロセスのために一緒に考慮されることができるため、各ハードウェア構成要素が個別に考慮される既知の手法と比較して、全てのハードウェア構成要素の信頼性の高い較正曲線を得るために、較正器を用いたより少ない測定が必要とされることができる。さらに、異なるハードウェア構成要素にわたる信号の品質チェックを行うことができ、これは、各ハードウェア構成要素の個別の較正の場合には不可能である。
【0036】
上記で概説したように、ステップc.2は、パラメータ化された関数に基づいて較正を行うことによって較正値を決定することを含む。ステップc.2は、具体的には、パラメータのセットのパラメータの値の決定を含むことができる。また、具体的には、検出器信号の適合を行ってもよい。
【0037】
本明細書でさらに使用される「値」という用語は、数学的関数のパラメータの値を指すことができる。本明細書でさらに使用される「較正値」という用語は、任意の較正関数のパラメータの値を指すことができる。具体的には、較正値は、パラメータ化された関数のパラメータのセットのパラメータのうちの1つの値を指すことができる。「パラメータ化された関数に基づいて較正を実行する」という用語は、パラメータ化された関数を使用して較正を実行することを指すことができる。具体的には、適合、例えば、一連のデータ点、具体的には検出器信号の数学的関数の構築を行うことができる。したがって、数学的関数のパラメータの値が取得されることができる。具体的には、較正値は、
【数8】
によって表されることができる。
【0038】
ステップc.3では、較正ステップは、パラメータ化された関数の逆関数および決定された較正値に基づいて分析関数を決定することをさらに含む。分析関数を介して、検出器信号から濃度が決定されることができる。「分析関数」という用語は、一般に、測定された検出器信号から濃度などのサンプルのパラメータを決定するように構成された任意の関数を指すことができる。したがって、分析関数は、濃度などのサンプルのパラメータと測定された検出器信号との間の関係を記述することができる。分析関数は、較正関数に基づいて決定されてもよい。具体的には、分析関数は、較正関数の逆関数によって形成されてもよい。
【0039】
決定された較正値を有するパラメータ化された関数は、較正関数または信号濃度関数と呼ばれることがある。較正関数は、以下によって定義されることができる。
【数9】
【0040】
較正関数は、具体的には、一次関数とすることができる。較正関数は、ハードウェア構成要素固有の切片、ハードウェア構成要素固有の傾きの一方または双方を含むことができる。
【0041】
例えば、較正関数は、以下によって表されることができる。
【数10】
ここで、
【数11】
は、平均0および分散
【数12】
で正規分布するランダム領域に対応する。
【数13】
は、検出器信号に対応し、
【数14】
は、i番目の較正器サンプルの目標値に対応し、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を示し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を示し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を示す。
【0042】
さらに、例示的に、較正関数は、以下によって表されることができる。
【数15】
ここで、
【数16】
は、平均0および分散
【数17】
で正規分布するランダム領域に対応する。
【数18】
は、検出器信号に対応し、
【数19】
は、i番目の較正器サンプルの目標値に対応し、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を示し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を示し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を示す。
【0043】
さらに、例示的に、較正関数は、以下によって表されることができる。
【数20】
ここで、
【数21】
は、平均0および分散
【数22】
で正規分布するランダム領域に対応する。
【数23】
は、検出器信号に対応し、
【数24】
は、i番目の較正器サンプルの目標値に対応し、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を示し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を示し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を示す。
【0044】
さらに、例示的に、較正関数は、以下によって表されることができる。
【数25】
ここで、
【数26】
は、検出器信号に対応し、
【数27】
は、i番目の較正器サンプルの目標値に対応し、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を示し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を示し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を示す。
【数28】
は、分析物特有の較正パラメータを記述し、
【数29】
は、ハードウェア部品固有の調整係数を記述する。
【数30】
は、平均0および分散
【数31】
で正規分布するランダム領域に対応する。
【0045】
本発明にかかる方法は、分析装置の完全較正および再較正手法に関連することができる。
【0046】
例えば、ステップc)は、分析装置の完全較正に対応することができる。完全較正は、検出器信号と分析物の濃度との間の関係の決定を含むことができる。完全較正は、例えば、分析装置の初期セットアップ中に実行されてもよい。完全校正は、繰り返し行われてもよい。
【0047】
さらに、ステップc)は、分析装置の再較正に対応することができる。この場合、信号調整関数のみが分析装置上で決定される。信号調整関数は、以下によって定義されることができる。
【数32】
したがって、追加的または代替的に、較正ステップ中に、検出器信号と理論信号との間の関係が決定されることができる。「理論信号値」および「理論信号」という用語は、一般に、基準分析装置などの1つ以上の異なる分析装置を介して1つ以上の測定を実行することによって、および1つ以上の測定に基づいて平均信号値を決定することによって決定される信号を指すことができる。例えば、較正プロセスは、第1のステップおよび第2のステップの少なくとも2つのステップを含むことができる。第1のステップは、分析装置の信号と機器固有ではない分析物の濃度との間の関係の決定を含むことができる。例えば、この目的のために、3つの基準分析装置で測定を行い、3つの異なる較正曲線を決定する。3つの異なる較正曲線に基づいて、平均較正曲線が計算されることができる。第2のステップは、較正される分析装置に対する調整を含むことができる。したがって、検出器信号の理論信号への調整が行われる。したがって、パラメータ化された関数は、信号調整関数とすることができる。例示的には、信号調整関数は、以下によって表されることができる。
【数33】
ここで、
【数34】
は、検出器信号に対応し、
【数35】
は、i番目の較正器サンプルの理論信号に対応し、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を示し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を示し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を示す。
【数36】
は、分析物特有の較正パラメータを記述し、
【数37】
は、ハードウェア部品固有の調整係数を記述する。
【数38】
は、平均0および分散
【数39】
で正規分布するランダム領域に対応する。
【0048】
上記で概説したように、検出器信号と分析物の濃度との間および/または検出器信号と理論信号値との間の関係は、ステップc)において決定される。分析装置の試運転中に、完全較正が実行されることができる。後の時点で、特に分析装置の使用中に、再較正が行われてもよい。任意に、分析装置の使用中などの後の時点で、完全較正が実行されてもよい。
【0049】
本方法は、未知の濃度の少なくとも1つの分析物を有するサンプルの少なくとも1つの測定を行うことをさらに含むことができる。分析関数を使用することによって、サンプルの測定信号に基づいてサンプルの濃度が決定されてもよい。測定信号は、検出器信号とすることができる。具体的には、測定信号は、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)において得られた検出器信号に対応することができる。しかしながら、測定信号はまた、別個の測定ステップにおいて得られた検出器信号に対応してもよい。さらなるサンプルは、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップa)において利用される較正器サンプルに対応することができる。しかしながら、さらなるサンプルはまた、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップa)において利用される較正器サンプルとは異なるサンプルに対応する。
【0050】
本発明のさらなる態様では、反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための装置が開示される。装置は、複数のハードウェア構成要素を備える分析装置を備える。分析装置は、少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有するiによる較正器サンプルに対して少なくとも1つの測定を実行するように構成される。分析装置は、少なくとも1つの検出器信号sijkを取得するように構成され、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を指し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を指す。
【0051】
さらに、装置は、少なくとも1つの評価装置を備える。評価装置は、少なくとも1つの較正ステップを行うように構成され、検出器信号と分析物の濃度との間および/または検出器信号と理論信号値との間の関係が決定される。さらに、評価装置は、少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供するように構成され、パラメータ化された関数は、パラメータのセットを有する。パラメータのセットは、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含む。パラメータのセットは、ハードウェア構成要素に対するパラメータ化された関数の調整のためのパラメータをさらに含む。評価装置は、パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定するようにさらに構成される。評価装置は、パラメータ化された関数の逆関数および決定された較正値に基づいて分析関数を決定するようにさらに構成される。
【0052】
装置は、上述したように、または以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を実行するように構成されてもよい。
【0053】
「評価装置」という用語は、一般に、好ましくは少なくとも1つのデータ処理装置を使用することによって、より好ましくは少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、上述した方法ステップを実行するように適合された任意の装置を指す。したがって、一例として、少なくとも1つの評価装置は、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理装置を備えることができる。評価装置は、名前付き操作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または方法ステップのうちの1つ以上を実行するために実行されるソフトウェアを1つ以上のプロセッサに提供することができる。
【0054】
さらなる態様では、コンピュータプログラムが開示される。コンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク、具体的にはプロセッサ上で実行されている間に、上述したように、または以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合される。コンピュータプログラムは、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を実行するための、具体的にはステップb)からc)を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むことができる。
【0055】
したがって、一般的に言えば、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態において、本発明にかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムがさらに開示および提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ媒体に記憶されてもよい。したがって、具体的には、上述したような方法ステップの1つ、2つ以上、または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行されてもよい。コンピュータは、具体的には、質量分析装置に完全にまたは部分的に統合されてもよく、コンピュータプログラムは、具体的には、ソフトウェアとして具体化されてもよい。あるいは、しかしながら、コンピュータの少なくとも一部がまた、質量分析装置の外に配置されてもよい。
【0056】
さらなる態様では、コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、上述したように、または以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するためのプログラム手段を含むコンピュータプログラムが開示される。具体的には、プログラム手段は、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよい。
【0057】
さらなる態様では、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品が開示される。プログラムコード手段は、上述したように、またはプログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するために、記憶媒体に記憶されることができるか、または記憶媒体に記憶される。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアに記憶されることができる。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリア上に存在することができる。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワークを介して配布されることができる。
【0058】
さらなる態様では、少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークが開示される。プロセッサは、上述したように、または以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合される。
【0059】
さらなる態様では、データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、上述したように、または以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造が開示される。
【0060】
さらなる態様では、データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造が、コンピュータもしくはコンピュータネットワークのメイン記憶装置および/またはワーキング記憶装置にロードされた後に、上述したようにまたは以下にさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合された記憶媒体が開示される。記憶媒体は、具体的には、データキャリアを指すことができる。データ構造は、コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークにロードされることができ、本方法が実行されることができる。
【0061】
本発明にかかる、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法、少なくとも1つの分析装置を較正するための装置、コンピュータまたはコンピュータネットワークおよびコンピュータプログラムは、既知の方法、装置、コンピュータおよびコンピュータプログラムを超える多数の利点を提供することができる。
【0062】
提案された手法では、分析装置の較正負荷は、一般的な個々のストリーム較正手法よりも低くなることができる。さらに、ストリームごとの較正関数の調整が保証されることができる。単純化すると、提案された手法は、ストリーム個別調整係数を有する全てのストリームにわたる平均較正関数としてみなされることができる。
【0063】
パラメータ化された関数を適合させることができるようにするために、較正器サンプルは、個々のハードウェア構成要素ごとに測定されてもよく、信号がどのハードウェア構成要素から到来するかの情報も適合プロセスに入力されることができる。全てのハードウェア構成要素が適合プロセスのために一緒に考慮されることができるため、各ハードウェア構成要素が個別に考慮される一般的な従来技術の手法と比較して、全てのハードウェア構成要素の信頼性のある較正曲線を得るために必要な較正器測定値が少なくなることができる。さらに、異なるハードウェア構成要素にわたる信号の品質管理チェックを行うことができるが、これは、通常、各ハードウェア構成要素の個別の較正の場合には不可能である。
【0064】
本発明にかかる方法は、検出器ユニットまたは試薬容器などの任意の多重化システム物品に適用されることができ、一般にほとんどの分析技術に適用されることもできる。
【0065】
要約すると、さらなる可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態が想定されることができる。
【0066】
実施形態1:反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための方法であって、分析装置が複数のハードウェア構成要素を備え、方法が、
a)少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有する少なくとも1つの較正器サンプルiを提供するステップと、
b)少なくとも1つの測定ステップであって、測定ステップが、分析装置を使用して較正器サンプルに対して少なくとも1つの測定を実行することを含み、少なくとも1つの検出器信号sijkが取得され、i=1,...I、I≧2であり、iが較正器サンプルの数を指し、j=1,...J、J≧2であり、jがハードウェア構成要素の数を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kが測定ステップの反復回数を指す、少なくとも1つの測定ステップと、
c)少なくとも1つの較正ステップであって、検出器信号と分析物の濃度との間、および/または検出器信号と理論信号値との間の関係が決定され、較正ステップが、
c.1:少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供することであって、パラメータ化された関数がパラメータのセットを有し、パラメータのセットが、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含み、パラメータのセットが、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータをさらに含む、提供することと、
c.2:パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定することと、
c.3:パラメータ化された関数の逆関数および決定された較正値に基づいて分析関数を決定することと
を含む、少なくとも1つの較正ステップと
を含む、方法。
【0067】
実施形態2:パラメータのセットが、
【数40】
によって表され、nおよびrが正の整数であり、
【数41】
が、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータに対応し、
【数42】
が、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータを記述するベクトルを指し、較正値が、
【数43】
によって表される、実施形態1に記載の方法。
【0068】
実施形態3:検出器信号と理論信号値との間の関係が決定され、パラメータ化された関数が信号調整関数である、実施形態1から2のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態4:信号調整関数が、
【数44】
によって定義される、実施形態3に記載の方法。
【0070】
実施形態5:検出器信号と分析物の濃度との間の関係が決定され、パラメータ化された関数が信号濃度関数である、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態6:信号濃度関数が、
【数45】
によって定義される、実施形態5に記載の方法。
【0072】
実施形態7:信号濃度関数が一次関数である、実施形態5から6のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態8:信号濃度関数が、ハードウェア部品固有の切片、ハードウェア部品固有の傾きの一方または双方を含む、実施形態7に記載の方法。
【0074】
実施形態9:信号濃度関数が、少なくとも1つのハードウェア部品固有の調整係数を有する一次関数である、実施形態6から8のいずれか1項に記載の方法。
【0075】
実施形態10:分析装置が、流体中の分析物の濃度を決定するための装置である、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態11:分析装置が、質量分析装置、具体的には液体クロマトグラフィ質量分析装置、免疫測定分析装置、測光測定装置、血液ガス分析装置、血液分析装置、DNA分析装置からなる群から選択される、実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態12:ハードウェア構成要素が、同等のハードウェア構成要素である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態13:ハードウェア構成要素が、カラム、具体的には高速液体クロマトグラフィカラム、ストリーム、具体的には高速液体クロマトグラフィストリーム、サンプル注入装置、具体的には高速液体クロマトグラフィ注入装置、ポンプ、測定セル、検出器、具体的には質量分析検出器からなる群から選択される、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態14:較正器サンプルが、ハードウェア構成要素の一部もしくは全部を通過するか、またはハードウェア構成要素の一部もしくは全部を介して移送される、実施形態1から13のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態15:ステップb)が、ハードウェア構成要素のそれぞれに対して行われる、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態16:反復ハードウェア構成要素を有する少なくとも1つの分析装置を較正するための装置であって、
複数のハードウェア構成要素を備える少なくとも1つの分析装置であって、分析装置が、少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有する較正器サンプルiに対して少なくとも1つの測定を実行するように構成され、分析装置が、少なくとも1つの検出器信号sijkを取得するように構成され、i=1,...I、I≧2であり、iが較正器サンプルの数を指し、j=1,...J、J≧2であり、jがハードウェア構成要素の数を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kが測定ステップの反復回数を指す、少なくとも1つの分析装置と、
少なくとも1つの評価装置であって、評価装置が、少なくとも1つの較正ステップを実行するように構成され、検出器信号と分析物の濃度との間および/または検出器信号と理論信号値との間の関係が決定され、評価装置が、少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供するように構成され、パラメータ化された関数がパラメータのセットを有し、パラメータのセットが、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含み、パラメータのセットが、パラメータ化された関数をハードウェア構成要素に調整するためのパラメータをさらに含み、評価装置が、パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定するようにさらに構成され、評価装置が、パラメータ化された関数の逆関数および決定された較正値に基づいて分析関数を決定するようにさらに構成される、少なくとも1つの評価装置と、を備える、装置。
【0082】
実施形態17:前記装置が、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する請求項1から15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を実行するように構成される、実施形態16に記載の装置。
【0083】
実施形態18:少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、プロセッサが、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する実施形態1から15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合される、コンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【0084】
実施形態19:データ構造がコンピュータ上で実行されている間に少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する実施形態1から15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合される、コンピュータロード可能データ構造。
【0085】
実施形態20:コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータ上で実行されている間に少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する実施形態1から15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合される、コンピュータプログラム。
【0086】
実施形態21:コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されている間に少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する実施形態1から15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するためのプログラム手段を含むコンピュータプログラム。
【0087】
実施形態22:プログラム手段がコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体上に記憶された、実施形態21に記載のプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
【0088】
実施形態23:記憶媒体であって、データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークのメイン記憶装置および/またはワーキング記憶装置にロードされた後に少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する実施形態1から15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するように適合される、記憶媒体。
【0089】
実施形態24:プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されると、少なくとも1つの分析装置を較正するための方法を参照する実施形態1から15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの分析装置を較正するための方法のステップb)からc)を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶されることができる、または記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラム製品。
【図面の簡単な説明】
【0090】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。その中で、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方法で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態に限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。実施形態では、これらの図における同一の参照符号は、同一または機能的に同等の要素を指す。
図では以下のとおりである:
図1図1は、少なくとも1つの分析装置を較正するための装置の例示的な実施形態を示している。
図2A図2Aは、様々な実験結果を示している。
図2B図2Bは、様々な実験結果を示している。
図2C図2Cは、様々な実験結果を示している。
図2D図2Dは、様々な実験結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0091】
特定の実施形態
図1は、少なくとも1つの分析装置112を較正するための装置110を示している。具体的には、分析装置112は、質量分析装置、具体的には液体クロマトグラフィ質量分析装置、免疫測定分析装置、測光測定装置、血液ガス分析装置、血液分析装置、DNA分析装置からなる群から選択されることができる。しかしながら、他の種類の分析装置も可能とすることができる。
【0092】
分析装置112は、複数のハードウェア構成要素114を備える。分析装置112は、具体的には、複数の反復ハードウェア構成要素114などの反復ハードウェア構成要素114を備える分析システムとして具現化されることができる。ハードウェア構成要素114は、独立して処理されてもよく、または互いに結合、接続可能、もしくは統合可能であってもよい。
【0093】
分析装置112は、例示的に、質量分析装置116であってもよい。例えば、分析装置112は、HPLC多重化装置であってもよい。分析装置112は、単一の質量分析装置に同時に実行される複数のLCシステムであってもよく、またはそれを備えてもよい。各LCシステムは、個別であってもよく、および/または他のLCシステムから分離していてもよい。例えば、分析装置112は、単一の質量分析装置を用いた複数の同時HPLC分離を含んでもよい。ハードウェア構成要素114は、カラム、具体的には高速液体クロマトグラフィカラム、ストリーム、具体的には高速液体クロマトグラフィストリーム、サンプル注入装置、具体的には高速液体クロマトグラフィ注入装置、ポンプ、測定セル、検出器、具体的には質量分析検出器からなる群から選択されることができる。また、他の構成要素も可能とすることができる。
【0094】
図1では、例示的に、分析装置112は、第1のハードウェア構成要素118および第2のハードウェア構成要素120を備えるように示されている。第1のハードウェア構成要素118および第2のハードウェア構成要素120は、例示的に、カラム122とすることができる。さらに、分析装置112は、さらなるハードウェア構成要素124を備えることができる。さらなるハードウェア構成要素124は、ハードウェア構成要素118および第2のハードウェア構成要素120とは異なることができる。例示的に、さらなるハードウェア構成要素124は、質量分析検出器126とすることができる。
【0095】
分析装置112は、少なくとも1つの分析物の濃度の既知の目標値を有する較正器サンプルiに対して少なくとも1つの測定を実行するように構成される。分析装置112は、少なくとも1つの検出器信号sijkを取得するようにさらに構成され、i=1,...I、I≧2であり、iは較正器サンプルの数を指し、j=1,...J、J≧2であり、jはハードウェア構成要素の数を指し、k=1,...Kij、Kij≧1であり、kは測定ステップの反復回数を指す。
【0096】
さらに、装置110は、少なくとも1つの評価装置128を備える。評価装置128は、少なくとも1つの較正ステップを行うように構成され、検出器信号と分析物の濃度との間および/または検出器信号と理論信号値との間の関係が決定される。さらに、評価装置128は、少なくとも1つのパラメータ化された関数を提供するように構成され、パラメータ化された関数は、パラメータのセットを有する。パラメータのセットは、パラメータ化された関数の分析物特有の部分を記述するパラメータを含む。パラメータのセットは、ハードウェア構成要素に対するパラメータ化された関数の調整のためのパラメータをさらに含む。評価装置128は、パラメータ化された関数に基づいて較正を実行することによって較正値を決定するようにさらに構成される。評価装置128は、パラメータ化された関数の逆関数および決定された較正値に基づいて分析関数を決定するようにさらに構成される。
【0097】
図2Aから図2Dは、様々な実験結果を示している。図2Aでは、2つのHPLCポンプおよび2つの異なるHPCLカラムを備えた機器で取得された、CA005、CA006およびCA007と示される3つの異なるサンプルの検出器信号、特に面積比が示されている。計4つの異なるHPLCストリームが機器上に存在するように、2つのポンプおよびカラムが一緒に切り替えられることができる。各サンプルプロットについて左から右に進むと、第1のデータ点は、カラムC1およびポンプP1に対応するストリーム1で測定された検出器信号であり、第2のデータ点は、カラムC1およびポンプP2に対応するストリーム2で測定された検出器信号であり、第3のデータ点は、カラムC2およびポンプP1に対応するストリーム3で測定された検出器信号であり、第4のデータ点は、カラムC2およびポンプP2に対応するストリーム4で測定された検出器信号である。ストリーム2および4の検出器信号は、ストリーム1および3で取得された検出器信号よりも高いことが分かる。
【0098】
図2Bは、検出器信号に基づく分散成分分析の結果を示している。ハードウェア構成要素の違いに起因する変動の主な原因を分析するために分散成分分析を行い、異なる濃度範囲の複数のサンプルCA001からCA007のシステムの再現性、すなわち誤差の構成要素に関して設定した。サンプル数が多いほど濃度が高くなる。図2Bでは、全変動性に対する各成分の割合が示されている。変動成分ポンプが存在すること、すなわち、2つの異なるポンプ間、したがって4つのHPLCストリーム間で検出器信号に有意な変動があることが分かる。
【0099】
図2Cは、異なる分散ソースの変動係数CVを%で示している。HPLCストリームの一部である2つのポンプ間の検出器信号の変動に起因して、全てのサンプルについてCVに有意な寄与があることが分かる。本発明にかかる較正方法では、読み取り濃度のストリーム差を最小限に抑えることが可能であり得る。
【0100】
図2Dは、以下の場合のサンプルCA005、CA006およびCA007の総%のパーセンテージ(左列)ならびに変動係数CV(右列)を示している。
- 個々の流れの較正を行った場合(図2Dにおいて「完全較正」と表記されている)。
- 流れ固有のパラメータを用いない較正を行った場合(図2Dにおいて「システム較正」と表記されている)。
- 流れ固有の傾きを用いた較正を行った場合(図2Dにおいて「傾き較正」と表記されている)。
- 流れ固有係数を用いら較正を行った場合(図2Dにおいて「係数較正」と表記されている)
後の2つは本発明にかかる方法である。流れ固有の傾き較正を用いたモデルについて、流れと異なる傾きとの間の共通の切片を用いて、一次関数を適合した。流れ固有の傾き較正を用いたモデルについて、流れと異なる傾きとの間の共通の切片を用いて、一次関数を適合した。流れ固有の係数較正を用いたモデルについて、流れ固有の乗算調整係数とともに流れ間の共通の切片および傾きを用いて、一次関数を適合した。
【0101】
本発明にかかる双方の方法が、個々の流れの較正と同程度またはさらに良好な結果をもたらし、濃度値の流れの差を最小化することを可能にすることが分かる。双方の方法により、濃度値のポンプ間変動を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0102】
110 装置
112 分析装置
114 ハードウェア構成要素
116 質量分析装置
118 第1のハードウェア構成要素
120 第2のハードウェア構成要素
122 カラム
124 さらなるハードウェア構成要素
126 質量分析検出器
128 評価装置
図1
図2A
図2B
図2C
図2D