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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】二方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241107BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20241107BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20241107BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20241107BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/14
C22C38/60
H01F1/147 175
C21D8/12 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022537561
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2020018611
(87)【国際公開番号】W WO2021125857
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170756
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,セ イル
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ヒョンウ
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0078166(KR,A)
【文献】特開2007-031793(JP,A)
【文献】特開2005-179745(JP,A)
【文献】特開2008-106367(JP,A)
【文献】特開2007-262519(JP,A)
【文献】特表2019-506528(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0045504(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二方向性電磁鋼板であって、
重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.02%、Mn:0.05~0.3%、N:0.01%以下(0%を除く)、C:0.005%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ti:0.001~0.005%、Ca:0.0001~0.005%およびMg:0.0001~0.005%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、{100}<001>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が60~99%であり、{100}<025>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が1~30%であり、
下記式1を満足し、
平均結晶粒径が前記鋼板の厚さの20倍以上であることを特徴とする二方向性電磁鋼板。
〔式1〕
10×([Ti]+[Ca]+[Mg])≧[Al]
(式1中、[Ti]、[Ca]、[Mg]および[Al]は、それぞれTi、Ca、MgおよびAlの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
Sn:0.1重量%以下、Sb:0.001~0.1重量%およびMo:0.01~0.2重量%のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の二方向性電磁鋼板。
【請求項3】
Bi:0.01重量%以下、Pb:0.01重量%以下、As:0.01重量%以下、Be:0.01重量%以下およびSr:0.01重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の二方向性電磁鋼板。
【請求項4】
鋼板の基材の表面から基材の内部方向に形成された酸化層と、前記基材の表面上に形成された絶縁層とを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板。
【請求項5】
前記基材の表面と前記絶縁層とが当接したことを特徴とする請求項に記載の二方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記基材の表面および絶縁層の間に介在したフォルステライト層をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の二方向性電磁鋼板。
【請求項7】
圧延方向と圧延垂直方向のBrがすべて1.65T以上であり、円周方向のBrが1.58T以上であり、Brは下記式2で計算されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板。
〔式2〕
Br=7.87/(7.87-0.065×[Si]-0.1105×[Al])×B8
(式2中、[Si]および[Al]は、それぞれSiおよびAlの含有量(重量%)を示す。B8は、800A/mで誘起した時、誘導される磁場の強度(Tesla)を示す。)
【請求項8】
重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.02%、Mn:0.05~0.3%、N:0.02%以下(0%を除く)、C:0.05%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ti:0.001~0.005%、Ca:0.0001~0.005%およびMg:0.0001~0.005%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1を満足するスラブを製造する段階、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を圧延して鋼板を製造する段階、
前記鋼板を1次再結晶焼鈍する段階、および
1次再結晶焼鈍された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、
前記熱延板を製造する段階での全体圧下率は95%以上であり、
前記熱延板を製造する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が50%以下であり、
製造された二方向性電磁鋼板は、{100}<001>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が60~99%であり、{100}<025>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が1~30%であり、
平均結晶粒径が前記鋼板の厚さの20倍以上であることを特徴とする二方向性電磁鋼板の製造方法。
〔式1〕
10×([Ti]+[Ca]+[Mg])≧[Al]
(式1中、[Ti]、[Ca]、[Mg]および[Al]は、それぞれTi、Ca、MgおよびAlの含有量(重量%)を示す。)
【請求項9】
スラブは、下記式3を満足することを特徴とする請求項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
〔式3〕
[C]/[Si]≧0.0067
(式3中、[C]および[Si]は、それぞれスラブ中のCおよびSiの含有量(重量%)を示す。)
【請求項10】
前記熱延板を製造する段階は、700℃以上の温度で行うことを特徴とする請求項又はに記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記鋼板を製造する段階は、熱延板を1次圧延する段階;中間焼鈍する段階、および中間焼鈍された鋼板を2次圧延する段階を含むことを特徴とする請求項乃至10のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記1次圧延する段階および2次圧延する段階は、それぞれ圧下率が75%以下であることを特徴とする請求項11に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記1次圧延する段階および2次圧延する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が45%以下であることを特徴とする請求項11又は12に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記1次圧延する段階および2次圧延する段階は、50℃以上および700℃未満の温度で行うことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記1次再結晶焼鈍する段階で、50~70℃の露点温度で脱炭する段階を含むことを特徴とする請求項乃至14のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記1次再結晶焼鈍する段階で、窒化段階を含み、窒化量が0.01~0.03重量%であることを特徴とする請求項乃至15のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項17】
前記1次再結晶焼鈍する段階の後、1次再結晶焼鈍された鋼板の平均結晶粒の粒径が30~50μmであることを特徴とする請求項乃至16のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項18】
前記1次再結晶焼鈍する段階の後、焼鈍分離剤を塗布する段階をさらに含むことを特徴とする請求項乃至17のいずれか一項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項19】
前記2次再結晶焼鈍する段階の後、鋼板の表面に形成されたフォルステライト層を除去する段階をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、合金組成中におけるTi、Mg、Caの含有量を適切に制御し、圧延条件を調節して、{100}<001>方位を有する結晶粒の分率を高めることによって、圧延方向および圧延垂直方向の磁性が非常に優れた二方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板の磁束密度を向上させるためには、鋼の集合組織を向上させて磁化方向に<100>軸を平行に整列させる方法が最も効果的であると知られており、追加的に鋼の合金量を減らしてFe原子が鋼中に占める分率を向上させることで飽和磁束を純鉄に近づけることにより、磁束密度を向上させる方法が使用される。このうち、方向性電磁鋼板の場合、Goss方位と呼ばれる{110}<001>方位を用いるもので、通常、スラブ-熱延-熱延板焼鈍-冷延-1次再結晶中の脱炭-窒化-2次高温焼鈍過程により得ることができる。しかし、これは、圧延方向(Rd方向)にのみ磁性に優れ、圧延垂直方向(TD方向)では磁性が極めて劣り、磁化の方向が圧延方向に定められている変圧器以外は使用が困難である。そのため、これとは異なる集合組織で磁化方向と<100>軸を平行にする集合組織を制御した電磁鋼板の製造が要求されている。
【0003】
回転機器における磁化方向は、通常、板面内で回転するため、<100>軸は板面に平行でなければならないが、その条件下での方位のうち、鉄鋼材料でよく観察される方位は{100}<011>方位である。これは、圧延方向から45度圧延垂直方向(TD方向)にずれた方向に<100>軸が平行であるため、磁化方向が板の圧延方向で45度の時、最も磁性に優れた特徴がある。しかし、この方位は冷間圧延の安定方位で、再結晶焼鈍時にはすべて無くなる特徴があり、電磁鋼板素材で活用されていない。
これと類似して{100}<001>方位があるが、これは、Cube方位としてかつてから有用性が認められてきたが、交差圧延をしたり、真空焼鈍をするなど、実際の大規模工業生産が不可能な器具により製造する方法だけが知られている。
特に、交差圧延法は、素材の連続生産が不可能なことから活用できないが、大型発電機の場合、数mの直径の円筒形態のコアを製造しなければならないため、板面でコアを数個から数十個に分割してこれを組み立てる形態で作る工程に適用できず、生産性も極めて低くなる。
【0004】
発電機の場合、一般のタービン発電機は、各国の商用電気周波数である50Hz、あるいは60Hzに合わせて電気を生産するため、50Hzおよび60Hzにおける磁気的性質が重要であるが、風力発電機などの回転速度が遅い発電機では、このようなDCおよび30Hz以下での磁気的特性が重要である。
したがって、前記の機器では、交流磁気で発生する鉄損よりも、磁化の程度を示す磁束密度特性がより重要な特性であるが、一般にB8磁束密度でこれを評価する。B8磁束密度は、磁場の強度が800A/mでの鋼板の磁束密度値を意味するが、これは、主に50Hzの交流磁気で測定するが、場合によっては、直流で測定したり、50Hz以下の周波数で測定したりもする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、二方向性電磁鋼板およびその製造方法の提供であり、より詳しくは、合金組成中におけるTi、Mg、Caの含有量を適切に制御し、圧延条件を調節して、{100}<001>方位を有する結晶粒の分率を高めることによって、圧延方向および圧延垂直方向の磁性が非常に優れた二方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.02%、Mn:0.05~0.3%、N:0.01%以下(0%を除く)、C:0.005%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ti:0.001~0.005%、Ca:0.0001~0.005%およびMg:0.0001~0.005%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、{100}<001>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が60~99%であり、{100}<025>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が1~30%であることを特徴とする。
【0007】
本発明の二方向性電磁鋼板は、下記式1を満足する。
〔式1〕
10×([Ti]+[Ca]+[Mg])≧[Al]
(式1中、[Ti]、[Ca]、[Mg]および[Al]は、それぞれTi、Ca、MgおよびAlの含有量(重量%)を示す。)
【0008】
本発明の二方向性電磁鋼板は、Sn:0.1重量%以下、Sb:0.001~0.1重量%およびMo:0.01~0.2重量%のうちの1種以上をさらに含むことができる。
本発明の二方向性電磁鋼板は、Bi:0.01重量%以下、Pb:0.01重量%以下、As:0.01重量%以下、Be:0.01重量%以下およびSr:0.01重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
本発明の二方向性電磁鋼板は、平均結晶粒径が前記鋼板の厚さの20倍以上であってもよい。
本発明の二方向性電磁鋼板は、鋼板の基材の表面から基材の内部方向に形成された酸化層と、基材の表面上に形成された絶縁層とを含むことができる。
基材の表面と前記絶縁層とが当接できる。
基材の表面および絶縁層の間に介在したフォルステライト層をさらに含むことができる。
【0009】
本発明の二方向性電磁鋼板は、圧延方向と圧延垂直方向のBrがすべて1.65T以上であり、円周方向のBrが1.58T以上であってもよい。Brは下記式2で計算される。
〔式2〕
Br=7.87/(7.87-0.065×[Si]-0.1105×[Al])×B8
(式2中、[Si]および[Al]は、それぞれSiおよびAlの含有量(重量%)を示す。B8は、800A/mで誘起した時、誘導される磁場の強度(Tesla)を示す。)
【0010】
本発明の二方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.02%、Mn:0.05~0.3%、N:0.02%以下(0%を除く)、C:0.05%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ti:0.001~0.005%、Ca:0.0001~0.005%およびMg:0.0001~0.005%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなるスラブを製造する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を圧延して鋼板を製造する段階、鋼板を1次再結晶焼鈍する段階、および1次再結晶焼鈍された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、熱延板を製造する段階での全体圧下率は95%以上であり、熱延板を製造する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が50%以下である。
スラブは、下記式3を満足できる。
〔式3〕
[C]/[Si]≧0.0067
(式3中、[C]および[Si]は、それぞれスラブ中のCおよびSiの含有量(重量%)を示す。)
【0011】
熱延板を製造する段階は、700℃以上の温度で行うことができる。
鋼板を製造する段階は、熱延板を1次圧延する段階;中間焼鈍する段階、および中間焼鈍された鋼板を2次圧延する段階を含むことができる。
【0012】
1次圧延する段階および2次圧延する段階は、それぞれ圧下率が75%以下であってもよい。
1次圧延する段階および2次圧延する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が45%以下であってもよい。
1次圧延する段階および2次圧延する段階は、50℃以上および700℃未満の温度で行うことができる。
【0013】
1次再結晶焼鈍する段階で、50~70℃の露点温度で脱炭する段階を含むことができる。
1次再結晶焼鈍する段階で、窒化段階を含み、窒化量が0.01~0.03重量%であってもよい。
1次再結晶焼鈍する段階の後、1次再結晶焼鈍された鋼板の平均結晶粒の粒径が30~50μmであってもよい。
1次再結晶焼鈍する段階の後、焼鈍分離剤を塗布する段階をさらに含むことができる。
2次再結晶焼鈍する段階の後、鋼板の表面に形成されたフォルステライト層を除去する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二方向性電磁鋼板は、合金組成中におけるTi、Mg、Caの含有量を適切に制御し、圧延条件を調節して、圧延方向および圧延垂直方向の磁性が非常に優れている。
特に、風力発電機などの回転速度が遅い発電機に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板の断面の模式図である。
図2】本発明の他の実施例による二方向性電磁鋼板の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「上に」あると言及した場合、これは直に他の部分の上にあるか、その間に他の部分が伴ってもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及した場合、その間に他の部分が介在しない。
他に定義しないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0017】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施例において、追加元素をさらに含むとの意味は、追加元素の追加量だけ、残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0018】
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.02%、Mn:0.05~0.3%、N:0.01%以下(0%を除く)、C:0.005%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ti:0.001~0.005%、Ca:0.0001~0.005%およびMg:0.0001~0.005%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなる。
まず、二方向性電磁鋼板の成分限定の理由から説明する。
【0019】
Si:2.00~4.00重量%
シリコン(Si)は、熱間圧延ではオーステナイトを形成する元素で、スラブ加熱温度付近と熱延板焼鈍温度付近で10%前後のオーステナイト分率をもたせるために添加量を制限する必要がある。また、2次再結晶焼鈍では、フェライト単相であってこそ、焼鈍時に2次再結晶微細組織の形成が円滑に起こるため、フェライト単相になる成分に制限する必要がある。純鉄では2.0重量%以上添加する時にフェライト単相が形成され、これにCの添加によりオーステナイト分率が調節可能なため、Si含有量の下限を2.0重量%に限定することができる。さらに、4重量%超過時、冷間圧延が困難で、飽和磁束に劣るため、これを制限する。より具体的には、Siは2.2~3.3重量%含まれる。さらに詳しくは、磁束密度の高い鋼板を得るためには、Siは2.4~2.9重量%含まれる。
【0020】
Al:0.010~0.040重量%
アルミニウム(Al)は、AlNを形成して2次再結晶のインヒビターとして使用される。本発明の一実施例では、通常の方向性電磁鋼板の窒化工程以外のインヒビターの使用時にもCube集合組織を得ることができるため、Alの添加量は、通常の方向性電磁鋼板より広い範囲で制御可能である。ただし、0.01重量%未満の添加時には、鋼中の酸化物が大きく増加して磁性を劣らせ、また、2次再結晶温度を変化させてCube方位の形成を妨げるため、その下限を0.01重量%とする。0.04重量%を超えると、2次再結晶温度が大きく増加して工業的生産が困難である。さらに具体的には、Alは0.015~0.035重量%含まれる。
【0021】
S:0.0004~0.0200重量%
硫黄(S)は、鋼中のCuやMnと結合してMnSを微細に形成し、微細に形成された析出物は2次再結晶を助けるため、その添加量を0.0004~0.02重量%とすることができる。Sは、過剰添加時には、Sの偏析によって2次再結晶時に鋼中のGoss分率が増加し、熱延板での析出物が制御されず、2次再結晶時の所望の集合組織が得られないことがある。さらに具体的には、Sは0.0005~0.006重量%含まれる。
【0022】
Mn:0.05~0.30重量%
マンガン(Mn)は、不可避に溶鋼に存在するものであるが、少量入ると、析出物として使用可能であり、FeSの形成後にMnSに変化する元素として鋼中に添加することができる。ただし、過度に多く添加する時には、高温焼鈍でもMnはSとの結合が強く維持されて、微細な析出物を形成するMg、CaとSの結合を妨げる。逆に、過度に少なく含まれると、2次再結晶時の集合組織の制御が困難になりうる。したがって、Mnは0.05~0.3重量%含まれる。さらに具体的には、Mnは0.08~0.2重量%含まれる。
【0023】
N:0.0100重量%以下
窒素(N)は、AlNを形成する元素で、AlNをインヒビターとして使用するので、適切な含有量を確保する必要がある。Nを過度に少なく含む時、冷間圧延時に組織の不均一変形度を十分に増加させて、1次再結晶時にCubeの成長を促進し、Gossの成長を抑制できなくなる。Nを過剰に含む時、熱延後の工程で窒素の拡散によるブリスター(blister)のような表面欠陥を誘発するだけでなく、熱延鋼板状態で過剰の窒化物が形成されるため、圧延が容易でなく、製造単価が上昇する原因になる。
スラブ中においてNは0.02重量%以下が含まれる。本発明の一実施例において、1次再結晶焼鈍時、窒化する過程が含まれているが、熱延鋼板で0.01重量%~0.02重量%添加される時には、この窒化過程を省略しても十分なインヒビターを作ることができる。2次再結晶焼鈍時に一部のNが除去されるので、スラブと最終的に製造された電磁鋼板のN含有量は異なる。
【0024】
C:0.0050重量%以下
炭素(C)は、2次再結晶焼鈍後にも多量含まれると、磁気時効を起こして鉄損が大きく増加するため、上限は0.005重量%とする。より具体的には、Cを0.0001~0.005重量%含むことができる。
スラブ中においてCは0.05重量%以下で含まれる。これによって、熱延板内の応力集中とGoss形成を抑制することができ、析出物を微細化することができる。また、Cは、冷間圧延時に組織の不均一変形度を増加させて、1次再結晶時にCubeの成長を促進し、Gossの成長を抑制することができる。ただし、過剰添加されると、熱延板内の応力集中は解消できるものの、Goss形成を抑制できず、析出物の微細化も困難である。冷間圧延時にも冷間圧延性を大きく劣らせるため、その添加量は限界を有する。本発明の一実施例において、1次再結晶焼鈍時、脱炭する過程が含まれるので、スラブと最終的に製造された電磁鋼板のC含有量は異なる。
【0025】
スラブ中のCとSi含有量は、式3を満足できる。
〔式3〕
[C]/[Si]≧0.0067
(式3中、[C]および[Si]は、それぞれスラブ中のCおよびSiの含有量(重量%)を示す。)
Cが過度に少なく含まれたり、Siがあまりにも過剰に含まれる場合、Cubeの成長を促進し、Gossの成長を抑制することが困難になりうる。さらに具体的には、式3の左辺は0.0083以上であってもよい。
【0026】
P:0.005~0.150重量%
リン(P)は、鋼の比抵抗を向上させ、2次再結晶時にCubeの分率を向上させる役割を果たし、冷間圧延時に不均一変形量も増加させるため、少なくとも0.005重量%以上は添加することが好ましい。ただし、0.15重量%超過で添加する時に冷間圧延性が極めて弱くなるため、その添加量を制限する。さらに具体的には、Pを0.01~0.08重量%含まれる。
【0027】
Ca:0.0001~0.0050重量%およびMg:0.0001~0.0050重量%
カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)は、すべて鋼中で反応性が非常に優れた合金元素で、微量添加時にも鋼の性質に大きな影響を及ぼす。適正量のSが添加されている鋼では、CaおよびMgがSと結合して高温で微細な硫化物を形成する。これは、低い温度でも安定しているため、このような微細な析出物が熱延板で形成されると、2次再結晶時に集合組織制御のためのインヒビターの役割を果たす。ただし、CaおよびMgを過剰添加時には、鋼中の酸素とも結合して酸化物を形成し、このような酸化物を表面欠陥、磁性不良の原因になりうる。したがって、Ca:0.0001~0.005重量%およびMg:0.0001~0.005重量%含む。さらに具体的には、Ca:0.001~0.003重量%およびMg:0.0005~0.0025重量%含む。
【0028】
Ti:0.0010~0.0050重量%
チタン(Ti)は、鋼中で反応性が非常に優れた合金元素で、鋼中のC、N、Oなどと反応して、連鋳から急速に介在物および析出物を形成する。Tiの添加によって、先に鋼中の固溶酸素が除去され、次に、C、Nなどの固溶度が減少する。Cubeの成長のために鋼中の固溶酸素量を制御する必要があるため、その添加量は0.001重量%以上が好ましい。これに対し、鋼中の圧延中の変形に影響を及ぼすC、Nの固溶度を低減する役割を果たさないためには、0.005重量%以下で添加することが好ましい。さらに具体的には、Tiは0.002~0.004重量%含むことができる。
【0029】
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、下記式1を満足できる。
〔式1〕
10×([Ti]+[Ca]+[Mg])≧[Al]
(式1中、[Ti]、[Ca]、[Mg]および[Al]は、それぞれTi、Ca、MgおよびAlの含有量(重量%)を示す。)
【0030】
CaとMgはSと結合して微細な硫化物になった時、インヒビターとしての2次再結晶に役割を果たすことができる。また、Tiも、OあるいはC、N、Sなど鋼中の多くの不純物との結合が非常に容易で、インヒビターとしての役割を果たす。このようなインヒビターの役割のためには、十分な量が適当な大きさで、分布の偏差が少なく位置しなければならない。他のインヒビターであるAlは、主に窒素と結合してAlNを形成し、再結晶成長を抑制する役割を果たす。AlNは2次再結晶を円滑に起こるが、Goss方位でないCube方位で2次再結晶が起こるようにするためには、インヒビターの分解による結晶成長速度を遅らせる必要がある。2次再結晶時の異常結晶粒成長は爆発的な結晶粒成長であるため、これを抑制することが非常に難しく、これはAlN以外のインヒビターの使用が多く必要である。したがって、Ti、Ca、Mgによるインヒビターの量が前述した式1を満足するように、十分に鋼中に存在する必要がある。より具体的には、CaとMg、Tiの合計の5倍が鋼中のAlの量以上であることが好ましい。つまり、5×([Ti]+[Ca]+[Mg])≧[Al]であることが好ましい。
【0031】
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、Sn:0.1重量%以下、Sb:0.001~0.1重量%およびMo:0.01~0.2重量%のうちの1種以上をさらに含むことができる。
Sn:0.10重量%以下
スズ(Sn)は、圧延中のGoss方位の安定度が低くなって、Gossの圧延後の分率が減少し、Cube方位の分率が増加する役割を果たす。また、再結晶時にはSnがGossを増加させる役割を果たす。したがって、適切な圧下率でGoss方位を除去し、再結晶後にもGoss分率を低くするためには、Snの添加量を0.1重量%以下にする必要がある。
【0032】
Snは、再結晶速度を遅らせ、再結晶時の結晶成長を抑制する効果があり、結晶粒界で急速に成長する結晶粒界の成長速度を結晶粒内で再結晶して成長する結晶粒の成長速度に一致させることに効果的であるため、その添加量を調節することができる。さらに具体的には、Snを0.001~0.1重量%含むことができる。さらに詳しくは、Snを0.01~0.05重量%含むことができる。
【0033】
Sb:0.0010~0.1000重量%、Mo:0.0100~0.2000重量%
アンチモン(Sb)は、1次再結晶集合組織制御のために添加することが可能な元素である。また、0.001重量%以上添加すると、酸化層の形成厚さを変化して圧延垂直方向と圧延方向の磁性差を低減する元素であるが、0.1重量%超過で添加する時には、冷間圧延時にロールでのスリップが大きく増加するので、これを制限する。さらに具体的には、Sb:0.005~0.05重量%が適合する。Moは、添加時に鋼中の炭化物および窒化物の高温相安定性に役立つ元素で、2次再結晶温度を上昇させ、連鋳および熱延板焼鈍で析出物をより微細にするのに役立つことができる。したがって、その添加量を0.01~0.2重量%に限定する。
さらに具体的には、Moを0.02~0.05重量%含むことができる。
【0034】
前述したように、追加元素を含む場合、残部のFeを代替して含む。例えば、Sbを0.001~0.1重量%さらに含む二方向性電磁鋼板の組成は、重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.002%、Mn:0.05~0.3%、N:0.005%以下(0%を除く)、C:0.005%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ca:0.0001~0.005%、Mg:0.0001~0.005%およびSb:0.001~0.1%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなる。
【0035】
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、Bi:0.0100重量%以下、Pb:0.0100重量%以下、As:0.0100重量%以下、Be:0.0100重量%以下およびSr:0.0100重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、砒素(As)、ベリリウム(Be)およびストロンチウム(Sr)は、鋼中に酸化物、窒化物、炭化物が微細に形成される元素で、2次再結晶に役立つ元素であり、追加添加可能である。ただし、0.01重量%超過で添加する時には、2次再結晶の形成が不安定になる問題をもたらすため、その添加量を制限する必要がある。
また、本発明の二方向性電磁鋼板は、前述した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。ただし、本発明の作用効果を阻害しない範囲内であれば、他の元素の含有を排除するものではない。
【0036】
このように本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、合金組成を精密に制御して、キューブ集合組織を多数形成させる。具体的には、{100}<001>から15°以内の方位を有する結晶粒の面積分率が60~99%であってもよい。この時、99%を超えるのは、2次再結晶中に不可避に形成されるIsland grainの形成を抑制し、また、析出物を完全に除去することを意味するが、このためには、高温での焼鈍時間が大きく増加するため、これを60~99%に限定する。さらに具体的には、70~97%であってもよい。さらに詳しくは、80~95%であってもよい。
【0037】
また、{100}<025>方位を有する結晶粒の場合、{100}<001>から約22.5°回転した方位であって、この方位が増加することによって、鋼板は二方向性特性が減少し、円周方向の特性が均一化するため、二方向性特性の確保のためには、前記方位を有する結晶粒の面積分率が30%以内であってもよい。一方、前記方位は、鋼板面に{100}面が平行で磁性に及ぼす悪影響が少なく、{100}<001>から22.5°回転しているため、一部の{100}<001>から15°以内の方位を有する結晶粒が{100}<025>の15°以内の結晶粒と見なされて、面積分率が0%になり得ない。15°のガウシアン分布を仮定する時、最小限の値が1%以上を含むことができる。さらに具体的には、3~20%であってもよい。さらに詳しくは、5~15%であってもよい。{100}<001>および{100}<025>でない結晶粒は10%以下で含むことができる。
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、平均結晶粒径が前記鋼板の厚さの20倍以上であってもよい。本発明の一実施例では、2次再結晶を用いるが、2次再結晶の結晶粒径は、板の厚さに比べて20倍を超えるものが所望の方位を得るのに有利である。結晶粒径は、鋼板の圧延面(ND面)と平行な面を基準として測定できる。粒径は、結晶粒と同一の面積を有する仮想の円を仮定して、その円の直径を意味する。
【0038】
図1は、本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板100の断面の模式図である。
図1に示されるように、鋼板の基材10の表面から基材10の内部方向に形成された酸化層11と、鋼板の表面上に形成された絶縁層30とを含むことができる。この時、鋼板の基材10の表面とは、鋼板の一面または両面(上面および下面)を意味することができる。
酸化層11は、基材の内部に酸素が浸透して形成される。具体的には、前述した鋼板の組成に加えて、酸素(O)を10重量%以上含むことができる。酸素含有量の面で基材10と酸化層11とは区別可能である。酸化層11は、5μm以下の厚さに存在することができる。酸化層11が過度に厚く存在する場合、鋼中の酸素分率によってCube結晶粒の成長が抑制されて、Cubeの分率が低くなり、窮極的に磁性が劣化する。さらに具体的には、酸化層11の厚さは0.01~2.5μmであってもよい。
基材10の表面上には絶縁層30が形成される。絶縁層30は、絶縁性の確保に役立つ。絶縁層30は、有機または無機コーティング組成物から形成され、場合によっては、有機-無機複合コーティング組成物から形成される。絶縁層30の厚さは0.2~8μmであってもよい。厚さが過度に薄い場合、要求される絶縁特性を満たすことが困難である。厚さが過度に厚い場合、表面磁化時に磁区の移動が困難になる理由から磁化が容易に行われないため、窮極的に磁性が劣化しうる。絶縁層30が基材10の両面に形成される場合、両面に形成された絶縁層30それぞれが前述した厚さ範囲を満足できる。さらに具体的には、絶縁層30の厚さは0.4~5μmであってもよい。
【0039】
図2には、本発明の他の実施例による二方向性電磁鋼板100の断面の模式図を示す。図2に示されるように、本発明の一実施例において、基材10の表面および絶縁層30の間に介在したフォルステライト層20をさらに含むことができる。方向性電磁鋼板は、圧延方向に張力を付与するために、フォルステライト(MgSiO)を含む酸化層を表面から2~3μmの厚さに形成し、これと母材の熱膨張係数との差を利用して張力を付与する。しかし、本発明の一実施例の場合、圧延方向への張力は、すなわち圧延垂直方向への圧縮を意味するので、これを極めて低減することが好ましい。2.0μm以内の薄いフォルステライト層20は、張力付与効果が極めて低下するので、このような薄いフォルステライト層20を形成して板全体にかかる張力を除去することができる。フォルステライト層20は、2次再結晶焼鈍前に塗布した焼鈍分離剤から形成される。焼鈍分離剤は、MgOを主成分として含み、これについては広く知られたとおりであるので、詳しい説明は省略する。 2次再結晶焼鈍後、フォルステライト層20が除去可能であり、この場合、図1に示されるように、基材10の表面上に絶縁層30が当接して形成される。
【0040】
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板は、圧延方向と圧延垂直方向の磁性がすべて優れている。具体的には、圧延方向と圧延垂直方向のBrがすべて1.65T以上であり、円周方向のBrが1.58T以上であり、Brは下記式2で計算される。
〔式2〕
Br=7.87/(7.87-0.065×[Si]-0.1105×[Al])×B8
(式2中、[Si]および[Al]は、それぞれSiおよびAlの含有量(重量%)を示す。B8は、800A/mで誘起した時、誘導される磁場の強度(Tesla)を示す。)
大型発電機の場合、環状フレームの直径が数メートルであり、T字状の歯(Teeth)で電磁鋼板を切断して環状フレームを形成する。この時、T字状のTeeth部位を圧延垂直方向とし、環状のフレームに圧延方向をおいたり、逆にT字状のTeeth部位を圧延方向とし、環状のフレームに圧延垂直方向をおくことができる。このような設計の変更は、Teethの長さと環状フレームの直径の長さ、また、環状フレームの幅によって決定される。通常、Teeth部位は発電機の稼働時に大きな磁束が流れる部位であり、このような磁束が環状部位に抜け出る。この時の発生するエネルギーを考慮して、圧延方向と圧延垂直方向をTeeth部位とするか、環状部位とするかを決定するが、Brがすべて1.63T以上と非常に高い磁束密度を有する材料の場合、このような圧延方向と圧延垂直方向がどの部位に使用されるかの区分を必要とせず、どちらにしても非常に高いエネルギー効率を有するようになる。また、円周方向のBr磁束密度が1.56T以上と高くなると、T字のTeeth部位と環状フレームの連結部位での磁束によるエネルギー損失が著しく減少する。これによって、発電機の効率を向上させたり、環状フレームの幅とTeeth部位の大きさを減少させて、小さいサイズのコアでも高い効率の発電機を作ることができる。
【0041】
本発明の一実施例による二方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0~4.0%、Al:0.01~0.04%、S:0.0004~0.02%、Mn:0.05~0.3%、N:0.02%以下(0%を除く)、C:0.05%以下(0%を除く)、P:0.005~0.15%、Ti:0.001~0.005%、Ca:0.0001~0.005%およびMg:0.0001~0.005%を含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなるスラブを製造する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を圧延して鋼板を製造する段階、鋼板を1次再結晶焼鈍する段階、および1次再結晶焼鈍された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含む。
以下、各段階別に具体的に説明する。
【0042】
まず、スラブを製造する。スラブ中の各組成の添加比率を限定した理由は、前述した二方向性電磁鋼板の組成の限定理由と同一であるので、繰り返しの説明を省略する。後述する熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、1次再結晶焼鈍、2次再結晶焼鈍などの製造過程でC、N以外のスラブの組成は実質的に変動しないので、C、N以外のスラブの組成と二方向性電磁鋼板の組成が実質的に同一である。
スラブは、薄物スラブ法またはストリップキャスティング法を利用して製造することができる。スラブの厚さは200~300mmになってもよい。スラブは必要に応じて加熱することができる。
【0043】
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。
熱延板を製造する段階での全体圧下率は95%以上であり、熱延板を製造する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が50%以下である。
前述のように、圧下率を制御してこそ、微細組織の大きさ分布と析出物分布を制御することができ、適切な大きさ分布において各結晶粒の隣接結晶粒との関係から、圧延後に再結晶になる時に目標とする集合組織が得られるように制御することができる。
圧下率は、([圧下前の鋼板の厚さ]-[圧下後の鋼板の厚さ])/[圧下前の鋼板の厚さ]で計算される。例えば、熱延板を製造する段階での全体圧下率は、([スラブの厚さ]-[熱延板の厚さ])/[熱延板の厚さ]で計算される。
熱延板を製造する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が50%以下であってもよい。この時、パスとは、1台の圧延機で圧延することを意味する。具体的には、熱延板を製造する段階は、3~12パスを含むことができる。前述したように、熱延板を製造する段階でのすべてのパスでの圧下率が50%以下であってもよい。
さらに具体的には、熱延板を製造する段階での全体圧下率は97.0%~99.9%であり、各パスでの圧下率が30~50%であってもよい。
【0044】
熱延板を製造する段階で、スラブを粗圧延する段階と、粗圧延されたバーを加熱する段階と、加熱されたバーを仕上圧延する段階とを含み、加熱する段階で、1050℃以上の温度で10分~300分間維持できる。維持時間が過度に短ければ、スラブの析出物が適切に配置されて、熱延板での必要な水準の析出物の分布をなし得ないため、後続工程のために均一な微細組織を得ることができない。これに対し、維持時間が過度に長ければ、析出物が非常に粗大化され、スラブ中のCがスラブ再加熱中に酸素などと反応してCの量が減少することができる。
熱間圧延終了温度は1050℃以下になってもよい。熱間圧延終了温度が高い時は、より多くのShear変形が熱延時に加えられるのに対し、再結晶および結晶成長速度が速いため、再結晶されたCube方位を有する結晶粒をより多く確保することができる。これによって、熱延板焼鈍時にCubeの分率が増加することができる。
【0045】
熱延板の厚さは1~3.5mmになってもよい。熱延板を製造する段階は、700℃以上の温度で行うことができる。
熱延板を製造する段階の後、熱延板を焼鈍する段階をさらに含むことができる。
熱延板を焼鈍する段階の焼鈍温度は1000~1200℃であってもよい。
次に、熱延板を圧延して鋼板を製造する。
【0046】
鋼板を製造する段階は、熱延板を1次圧延する段階、中間焼鈍する段階、および中間焼鈍された鋼板を2次圧延する段階を含むことができる。
1次圧延する段階は、熱延板を冷間または温間圧延して、その厚さを0.5~1.8mmに圧延することができる。
1次圧延する段階で、圧下率が75%以下であってもよい。また、1次圧延する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が45%以下であってもよい。圧下率が過度に大きくなると、再結晶後にGoss分率が増加する。具体的には、1次圧延する段階は、2~8パスを含むことができる。
さらに具体的には、1次圧延する段階で、圧下率が60~75%であり、各パスでの圧下率が35~45%であってもよい。
【0047】
中間焼鈍する段階は、1000~1200℃で焼鈍することができる。
2次圧延する段階は、1次圧延された鋼板を冷間または温間圧延して、その厚さを0.15~0.65mmに圧延することができる。
2次圧延する段階で、圧下率が75%以下であってもよい。また、2次圧延する段階は、複数のパスを含み、各パスでの圧下率が45%以下であってもよい。圧下率が過度に大きくなると、再結晶後にGoss分率が増加する。具体的には、2次圧延する段階は、1~6パスを含むことができる。
さらに具体的には、2次圧延する段階で、圧下率が60~75%であり、各パスでの圧下率が35~45%であってもよい。
1次圧延する段階および2次圧延する段階は、50℃以上および700℃未満の温度で行うことができる。
【0048】
1次再結晶焼鈍する段階で、50~70℃の露点温度で脱炭する段階を含むことができる。炭素は2次再結晶焼鈍後にも多量含まれると、磁気時効を起こして鉄損が大きく増加しうるため、1次再結晶焼鈍する段階で、脱炭を経て炭素を一部除去することができる。50℃~70℃の露点温度および水素および窒素混合雰囲気で行われる。
1次再結晶焼鈍する段階で、窒化量が0.01~0.03重量%であってもよい。窒化量が適切に確保されない場合、2次再結晶が円滑に形成されず、磁性の劣化する問題が発生しうる。
脱炭および窒化は、同時にまたは順次に行われる。順次に行われる場合、脱炭後、窒化されるか、窒化後、脱炭することができる。
1次再結晶焼鈍する段階の後、1次再結晶焼鈍された鋼板の平均結晶粒の粒径が30~50μmであってもよい。1次再結晶焼鈍された鋼板の平均結晶粒の粒径を適切に確保できない場合、2次再結晶が円滑に形成されず、磁性の劣化する問題が発生しうる。
1次再結晶焼鈍は、800~900℃の温度範囲で実施される。
1次再結晶焼鈍する段階の後、MgOを含む焼鈍分離剤を塗布する段階をさらに含むことができる。
焼鈍分離剤の塗布によって形成されるフォルステライト層については前述したものと同一であるので、重複する説明は省略する。
【0049】
2次再結晶焼鈍は、適正な昇温率で昇温して{100}<001>Cube方位の2次再結晶を起こし、後の不純物除去過程である純化焼鈍を経た後に冷却する。その過程で、焼鈍雰囲気ガスは、通常の場合のように、昇温過程では、水素と窒素との混合ガスを用いて熱処理し、純化焼鈍では、100%水素ガスを用いて長時間維持して不純物を除去する。2次再結晶焼鈍の温度は1000~1300℃になってもよいし、時間は10~25時間になってもよい。
本発明の一実施例において、フォルステライト層は、前述したように、薄いか、除去されるのが有利であり得る。したがって、2次再結晶焼鈍後、鋼板の表面に形成されたフォルステライト層を除去する段階をさらに含むことができる。除去方法は、物理的または化学的方法を使用することができる。
【0050】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実験例1]
表1および表2に示す成分および残部はFeおよび不可避不純物からなるスラブを製造し、1200℃で加熱後、8パスで熱間圧延して2.3mmの厚さの熱延コイルを製造した。熱延板は、1050℃~1140℃で30秒間焼鈍し、930℃で90秒間焼鈍後に急冷した熱延焼鈍板を200℃、3パスで1.3mmの厚さに1次圧延した。この時の圧下率は40%である。これを再び1050℃~1140℃で30秒間焼鈍し、930℃で90秒間焼鈍後に急冷した焼鈍板を、200℃、4パスで表4に示された厚さに2次圧延した。
圧延した板は、表3に重量%で示して表示された質量だけ窒化し、同時に露点は表3に示された雰囲気を水素75体積%雰囲気として脱炭する1次再結晶焼鈍工程を経た。その後、結晶粒径を測定して表3に示した。以後、MgO成分を含む焼鈍分離剤を塗布するか、しないようにし、時間あたり20℃の昇温速度で1200℃まで昇温した後、20時間2次再結晶焼鈍を実施した。冷却された板は、MgO焼鈍分離剤を除去した後に、フォルステライト層を除去するか、除去せずに磁性を測定して、表3にまとめた。表3に熱間圧延(700℃以上圧延)および1次/2次冷間/温間圧延(700℃未満圧延)での圧下率および圧下率が最大であるパスの圧下率をまとめた。1次/2次冷間/温間圧延(700℃未満圧延)での圧下率は、中間焼鈍を基準として分けられた1次圧延および2次圧延それぞれにおいて圧下率が大きい場合を表したものである。
表4にCubeの分率({100}<001>方位を有する結晶粒の面積分率)およびBr値を測定してまとめた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
表1~表4に示すとおり、本発明の合金組成を満足し、圧下率を適切に調節した発明例は、平均結晶粒径が大きく、Cubeの分率が高くて、磁性に優れていることを確認できる。これに対し、本発明の合金組成を満足しなかったり、圧下率を適切に調節していなかったりする比較例は、平均結晶粒が小さく、Cubeの分率が低く、磁性に劣ることを確認できる。
【0057】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0058】
10:鋼板の基材
11:酸化層
20:フォルステライト層
30:絶縁層
100:二方向性電磁鋼板

図1
図2