(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】発光装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20241107BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20241107BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20241107BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20241107BHJP
F21Y 103/10 20160101ALN20241107BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/60
H01L33/62
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21Y103:10
(21)【出願番号】P 2022539499
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027764
(87)【国際公開番号】W WO2022025065
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020131142
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】草野 民男
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067794(WO,A1)
【文献】特開2020-035838(JP,A)
【文献】特開2018-120959(JP,A)
【文献】特開2016-072269(JP,A)
【文献】特開2013-153069(JP,A)
【文献】特開2013-095782(JP,A)
【文献】特開2010-251441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0326480(US,A1)
【文献】特開2021-022605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F21V 19/00 - 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に接続された給電配線及び給電パッドを有する基板と、
前記給電配線の少なくとも一部を覆うよう前記給電配線上に位置する反射層と、
前記
基板が有する給電パッド
の少なくとも1つを介して前記給電配線に電気的に接続され、励起光を射出する発光素子と、
前記発光素子の上に位置し、前記励起光を照明光に変換する波長変換部材と、
前記基板の上に位置し、前記波長変換部材を囲むとともに、前記波長変換部材と接した枠部材と
を備え、
前記発光素子は、前記基板の平面透視において
、前記発光素子が電気的に接続している給電パッド
の少なくとも一部分を覆うよう
に位置し、
前記枠部材と前記反射層とは、同じ材料を含んで構成され、
前記枠部材の粘性は、前記反射層の粘性よりも高
く、
前記発光素子に電気的に接続している給電配線は、前記基板の平面透視において、前記発光素子が重なっている部分と重なっていない部分とを含み、
前記反射層は、前記基板の平面透視において、前記発光素子が前記給電配線に重なっている部分の少なくとも一部と前記発光素子が前記給電配線に重なっていない部分の少なくとも一部とを含む領域を覆う、
発光装置。
【請求項2】
前記発光素子は、前記基板の平面透視において、前記
発光素子が電気的に接続している給電パッドの全て
の部分を覆
うように位置している、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光素子に電気的に接続している給電配線は、複数の前記発光素子を電気的に直列に接続する、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板は、前記
基板が有する給電パッドが位置する
領域であって、前記基板の平面透視において前記枠部材で囲われた領域である第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを有し、
前記給電配線は、前記第1領域に位置するとともに前記
基板が有する給電パッドに電気的に接続される第1配線を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記反射層は、
前記基板の平面透視において、前記第1配線の全て
の部分を覆う、請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記反射層は、
前記基板の平面透視において、少なくとも前記第1領域のうち前記
基板が有する給電パッドを除く全ての領域を覆う、請求項4又は5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記給電配線は、前記第2領域に位置する第2配線を更に含み、
前記反射層は、前記第2配線の少なくとも一部を覆う、請求項4から6までのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記給電配線は、前記第2領域に位置する第2配線を更に含み、
前記第2配線は、前記第1領域を囲んで位置する第1部分と、前記第1部分から外部の電源に延びた第2部分と、を含み、
前記枠部材は、
前記基板の平面透視において、前記第1部分の全てを覆う、請求項
4から
6までのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記枠部材は、前記基板の前記第2領域の上に位置する、請求項4から
8までのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記枠部材の上面は、曲面を含む、請求項1から
9までのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光素子は、前記基板に対してフリップチップ接合で実装される、請求項1から10までのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項1から11までのいずれか一項に記載の発光装置を備える、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
本出願は、日本国特許出願2020-131142号(2020年7月31日出願)の優先権を主張するものであり、当該出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、発光装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発光素子が実装される基板の表面に反射層を有する発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、互いに電気的に接続された給電配線及び給電パッドを有する基板と、前記給電配線の少なくとも一部を覆うよう前記給電配線上に位置する反射層と、前記給電パッドを介して前記給電配線に電気的に接続され、励起光を射出する発光素子と、前記発光素子の上に位置し、前記励起光を照明光に変換する波長変換部材とを備える。前記発光素子は、前記基板の平面透視において、電気的な接続関係にある前記給電パッドを覆うように前記給電パッドの上に位置する。
【0006】
本開示の一実施形態に係る照明装置は、少なくとも1つの前記発光装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る発光装置の構成例を示す斜視図である。
【
図5】発光素子がフリップチップ接合で実装されている基板の構成例の断面図である。
【
図6】発光素子が給電パッドよりも大きい構成例の平面図である。
【
図7】反射層が基板を覆っている構成例の平面図である。
【
図8】一実施形態に係る照明装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発光装置10の構成例)
図1、
図2、
図3及び
図4に示されるように、発光装置10は、素子基板2と、発光素子3と、波長変換部材6とを備える。発光装置10は、必須ではないが、枠部材4を更に備える。発光素子3は、素子基板2に実装されている。波長変換部材6は、発光素子3の上に位置する。発光装置10は、発光素子3が射出する光を波長変換部材6で変換した光を射出する。
【0009】
発光素子3は、360nm以上かつ430nm以下の波長領域にピーク波長を有する光を射出する。360nm以上かつ430nm以下の波長領域は、紫色光領域とも称される。
【0010】
波長変換部材6は、発光素子3から波長変換部材6に入射してきた光を、360nm以上かつ780nm以下の波長領域にピーク波長を有する光に変換し、変換した光を射出する。360nm以上かつ950nm以下の波長領域は、可視光領域とも称される。可視光領域は、紫色光領域を含むとする。可視光は、紫色光を含むとする。波長変換部材6は、発光素子3が射出する光によって励起されることによって、可視光領域にピーク波長領域を射出する。発光素子3が射出する光は、励起光とも称される。発光装置10が備える発光素子3は、励起光発光素子とも称される。
【0011】
以下、発光装置10の各構成が説明される。
【0012】
素子基板2は、単に基板とも称される。素子基板2は、例えば、絶縁性を有する材料で形成されてよい。素子基板2は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)若しくはムライト等のセラミック材料、ガラスセラミック材料、又は、これらの材料のうち複数の材料を混合した複合系材料等で形成されてよい。素子基板2は、熱膨張を調整することが可能な金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂材料等で形成されてもよい。素子基板2は、窒化アルミニウムまたは炭化ケイ素(シリコンカーバイド)を含んで構成されてもよい。これにより、素子基板2の熱伝導率を向上させることでき、発光装置10の放熱性能が向上する。
【0013】
素子基板2は、Z軸の正の方向を向く上面2Aを有する。素子基板2の上面2Aに、発光素子3が実装されている。素子基板2は、上面2Aに、発光素子3等の部品を電気的に導通する第1配線31を備える。第1配線31は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、又は銅等の導電材料で形成されてよい。第1配線31は、例えば、タングステンの粉末に有機溶剤が添加された金属ペーストを、素子基板2となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層して、焼成することにより形成されてよい。第1配線31は、その表面に酸化防止のために形成された、例えばニッケル又は金等のめっき層を含んでよい。第1配線31は、給電配線とも称される。
【0014】
素子基板2は、第1配線31の上に位置する反射層40を更に備える。反射層40は、第1配線31の少なくとも一部を覆うように、第1配線31の上に位置する。反射層40は、例えば、シリコーン樹脂ベースの材料に酸化チタン等の白色材料を添加した材料で形成されてよい。反射層40は、この例に限られず、反射層40の反射率が第1配線31の反射率よりも高くなるように、形成されてよい。第1配線31の上に反射層40が位置することによって、発光素子3から射出される励起光、及び、波長変換部材6で変換される照明光が第1配線31で吸収されにくくなる。その結果、励起光及び照明光が発光装置10の外部へ高効率で射出され得る。
【0015】
図3に示されるように、素子基板2の上面2Aは、第1配線31が位置する第1領域21と、その周囲の第2領域22とを含む。本実施形態において、第1領域21は、円形状を有するが、他の種々の形状を有してよい。素子基板2は、上面2Aの第2領域22に位置する第2配線32を更に備える。第2配線32は、外部の電源と、給電パッド33との間を電気的に接続する。このとき、第2配線32は、第1配線31が位置する第1領域21を囲んで位置する第1部分321と、第1部分321から外部の電源に接続するように延びた第2部分322とを有している。第2配線32は、第1配線31とあわせて給電配線とも総称される。つまり、給電配線は、第1配線31と第2配線32とを含んでよい。反射層40は、第2配線32の少なくとも一部を覆うように第2配線32の上に位置してもよい。なお、給電配線は、上述した給電パッド33同士を繋ぐ第1配線31の他に、第2配線32と給電パッド33を接続する第3配線35を有していてもよい。第3配線35は、一部が反射層40に覆われている。また、第3配線35は、反射層40にすべて覆われていてもよいし、一部露出していてもよい。また、第3配線35は、後述する枠部材4に一部が覆われている。
【0016】
本実施形態において、発光素子3は、LED(Light Emission Diode)であるとする。LEDは、P型半導体とN型半導体とが接合されたPN接合中で、電子と正孔とが再結合することによって、外部へと光を発光する。発光素子3は、LEDに限られず、他の発光デバイスであってもよい。
【0017】
発光素子3は、素子基板2の上面2A上に実装される。発光素子3は、素子基板2の上面2Aに、第1配線31に電気的に接続するように設けられている給電パッド33に、例えば、ろう材又は半田等を介して、電気的に接続される。発光素子3は、素子基板2の上面2Aの平面透視において、給電パッド33の少なくとも一部を覆うように給電パッド33の上に位置する。給電パッド33は、第1配線31と同一又は類似の材料で形成されてよい。給電パッド33は、第1配線31と一体に形成されてもよい。このとき、発光素子3は、平面透視において給電パッド33よりも大きくてもよい。
【0018】
給電パッド33は、発光素子3の正及び負それぞれの電極に接続するように、2つを1組として設置されている。例えば、給電パッド33は、他の箇所よりも幅が広いものであってもよい。第1配線31は、ある1組の給電パッド33の正の電極と、他の1組の給電パッド33の負の電極とを電気的に接続する。給電パッド33に発光素子3が実装された場合、発光素子3は、第1配線31によって電気的に直列に接続される。このようにして、複数の発光素子3が直列に接続される、1本の直列の電気回路が形成される。第1配線31は、素子基板2に複数の直列の電気回路が形成されるように配置される。複数の直列の電気回路のそれぞれは、両端で第2配線32に接続されることによって、電源から電力の供給を受けることができる。つまり、直列の電気回路が第2配線32の間で電気的に並列に接続される。
【0019】
図5に示されるように、発光素子3は、半田ボール又は半田ペーストなどの半田材34を介して素子基板2の上に位置する給電パッド33に電気的に接続されるように実装されてよい。つまり、発光素子3は、素子基板2にフリップチップ接合で実装されてよい。発光素子3がフリップチップ接合で実装される場合、給電パッド33に電気的に接続するための半田材34は、素子基板2の上面2Aの平面視において、発光素子3に覆われるように位置する。半田材34が発光素子3に覆われることによって、発光素子3から射出される励起光、又は、波長変換部材6で変換された照明光が半田材34に入射しにくくなる。これによって、励起光又は照明光が素子基板2で吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率がより一層高められ得る。
【0020】
比較例として、発光素子3がワイヤボンディングで素子基板2に実装される場合、ワイヤの少なくとも一部は、発光素子3に覆われない。この場合、励起光又は照明光がワイヤに吸収され得る。本実施形態に係る発光装置10は、発光素子3が素子基板2にフリップチップ接合で実装されることによって、比較例のようにワイヤボンディングされるよりも励起光又は照明光が吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率がより一層高められ得る。
【0021】
素子基板2の上面2A上に実装される発光素子3の個数は、
図2において3個であるが、特に限定されるものではなく、2個以下であってもよいし、4個以上であってもよい。素子基板2の上面2Aの平面視において、発光素子3は、枠部材4よりも内側に位置する。発光素子3の個数が2個以上である場合、各発光素子3は、上面2Aの平面視において互いに重ならないように位置する。
【0022】
発光素子3は、透光性基体と、透光性基体上に形成される光半導体層とを含んでよい。透光性基体は、例えば、有機金属気相成長法、又は分子線エピタキシャル成長法等の化学気相成長法を用いて、その上に光半導体層を成長させることが可能な材料を含む。透光性基体は、例えば、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化ケイ素(シリコンカーバイド)、シリコン(Si)、又は二ホウ化ジルコニウム等で形成されてよい。透光性基体の厚みは、例えば、50μm以上1000μm以下であってよい。
【0023】
光半導体層は、透光性基体上に形成される第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とを含んでよい。第1半導体層、発光層、及び第2半導体層は、例えば、III族窒化物半導体、ガリウム燐若しくはガリウムヒ素等のIII-V族半導体、又は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム若しくは窒化インジウム等のIII族窒化物半導体等で形成されてよい。
【0024】
第1半導体層の厚みは、例えば、1μm以上5μm以下であってよい。発光層の厚みは、例えば、25nm以上150nm以下であってよい。第2半導体層の厚みは、例えば、50nm以上600nm以下であってよい。
【0025】
枠部材4は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化イットリウム等のセラミック材料で形成されてよい。枠部材4は、多孔質材料で形成されてよい。枠部材4は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化イットリウム等の金属酸化物を含む粉末を混合した樹脂材料で形成されてよい。枠部材4は、これらの材料に限られず、種々の材料で形成されてよい。
【0026】
枠部材4は、素子基板2の上面2Aに、例えば、樹脂、ろう材又は半田等を介して、接続されてもよいし、枠部材4が有する接着性を用いて接続されてもよい。枠部材4は、発光素子3と間隔を空けて、発光素子3を取り囲むように素子基板2の上面2A上に設けられる。枠部材4の内壁面は、発光素子3が発光する光を反射させる反射面として機能する。枠部材4の内壁面は、例えば、タングステン、モリブデン、又はマンガン等の金属材料で形成される金属層と、金属層を被覆し、ニッケル又は金等の金属材料で形成されるめっき層とを含んでよい。めっき層は、発光素子3が発光する光を反射する。
【0027】
枠部材4の内壁面は、平面視において、素子基板2の上面2Aの第1領域21の端部に沿ってよい。本実施形態において、枠部材4の内壁面は、第1領域21の端部に沿う円形状であるとする。内壁面の形状が円形状であることによって、枠部材4は、発光素子3から射出される光を、上方に向かって略一様に反射させることができる。枠部材4は、素子基板2の上面2Aの第2領域22の上に位置してもよい。
【0028】
枠部材4は、上面4Aを有する。上面4Aは、上に凸の曲面を含む。上面4Aが上に凸の曲面を含むことによって、波長変換部材6で変換された照明光が上方(Z軸の正の方向)に向かいやすくなる。
【0029】
枠部材4は、反射層40を構成する材料と同じ材料を含んで構成されてよい。このようにすることで、枠部材4の屈折率と反射層40の屈折率との差が低減され得る。その結果、枠部材4と反射層40との間における光の屈折等の問題が生じにくくなる。また、枠部材4は、枠部材4の粘性が反射層40の粘性よりも高くなるように構成されてもよい。このようにすることで、枠部材4は、波長変換部材6をせき止めやすくなる。なお、粘性については、成分濃度の解析、粘弾性測定等から特定できる。
また、枠部材4は、第2配線32のうち、第1部分321を全て覆っていてもよい。このようにすることで、第2配線32に入射する励起光又は照明光が減少する。入射する光が減少することによって、光が第2配線32で吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率がより一層高められ得る。なお、このとき、第2配線32の第1部分321の全てを覆うには、枠部材4の接合時における誤差により覆われていない箇所がある状態も含まれていてもよい。発光素子3からの光の反射に影響が出ない範囲、例えば枠部材4に覆われていない第1部分321が光を吸収することにより、発光素子3からの発光効率の低下が3%未満の影響であれば、誤差に含めることができる。
【0030】
波長変換部材6は、素子基板2の上面2Aの上の、枠部材4の内壁面に囲まれた空間に充填されている。言い換えれば、枠部材4は、波長変換部材6を囲むとともに、波長変換部材6と接している。波長変換部材6は、その上面が枠部材4の上面4Aと面一になるように充填されていてもよい。波長変換部材6は、発光素子3の上の空間を満たすことによって、発光素子3を封止する。発光素子3から射出された励起光は、波長変換部材6に直接入射する。波長変換部材6は、入射してきた励起光としての紫色光を、360nm以上かつ780nm以下の波長領域に含まれるピーク波長を有する光に変換し、変換した光を射出する。
【0031】
波長変換部材6は、透光性を有する透光部材60と、蛍光体61とを備えてよい。
【0032】
透光部材60は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂若しくはエポキシ樹脂等の光透過性を有する絶縁樹脂材料、又は光透過性を有するガラス材料、等で形成されてよい。透光部材60の屈折率は、例えば、1.4以上1.6以下に設定されていてよい。
【0033】
蛍光体61は、透光部材60の内部に含有されているとする。蛍光体61は、透光部材60の内部で略均一に分散されていてよい。蛍光体61は、入射してきた紫色光を種々のピーク波長を有する光に変換する。
【0034】
蛍光体61は、紫色光を、例えば400nmから500nmまでの波長領域内にピーク波長を有するスペクトルで特定される光、つまり青色の光に変換してよい。この場合、蛍光体61は、例えば、BaMgAl10O17:Eu、又は(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu,(Sr,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu等の材料を含んでよい。
【0035】
蛍光体61は、紫色光を、例えば450nmから550nmまでの波長領域内にピーク波長を有するスペクトルで特定される光、つまり青緑色の光に変換してよい。この場合、蛍光体61は、例えば、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu,Sr4Al14O25:Eu等の材料を含んでよい。
【0036】
蛍光体61は、紫色光を、例えば500nmから600nmまでの波長領域内にピーク波長を有するスペクトルで特定される光、つまり緑色の光に変換してよい。この場合、蛍光体61は、例えば、SrSi2(O,Cl)2N2:Eu、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu2+、又はZnS:Cu,Al、Zn2SiO4:Mn等の材料を含んでよい。
【0037】
蛍光体61は、紫色光を、例えば600nmから700nmまでの波長領域内にピーク波長を有するスペクトルで特定される光、つまり赤色の光に変換してよい。この場合、蛍光体61は、例えば、Y2O2S:Eu、Y2O3:Eu、SrCaClAlSiN3:Eu2+、CaAlSiN3:Eu、又はCaAlSi(ON)3:Eu等の材料を含んでよい。
【0038】
蛍光体61は、紫色光を、例えば680nmから800nmまでの波長領域内にピーク波長を有するスペクトルで特定される光、つまり近赤外光に変換してよい。近赤外光は、680から2500nmまでの波長領域の光を含んでよい。この場合、蛍光体61は、例えば、3Ga5O12:Cr等の材料を含んでよい。
【0039】
波長変換部材6が含有する蛍光体61の種類の組み合わせは、特に限定されない。蛍光体61は、上述の材料に限られず、他の種々の材料を含んでもよい。
【0040】
上述したように、発光素子3から波長変換部材6に入射した紫色光は、蛍光体61によって異なるピーク波長を有する光に変換される。変換された光のピーク波長は、可視光領域に含まれ得る。波長変換部材6に含まれる蛍光体61の組み合わせによって、変換された光は、複数のピーク波長を有し得る。例えば、蛍光体61が青色の蛍光を放射する材料、青緑色の蛍光を放射する材料、及び緑色の蛍光を放射する材料を含む場合、変換された光は、青色、青緑色及び緑色それぞれの波長をピーク波長として有する。蛍光体61が1種類の材料のみを含む場合、変換された光は、その材料のピーク波長を有する。蛍光体61は、これらの例に限られず、種々の組み合わせの材料を含んでもよい。波長変換部材6から放射される光の色彩は、蛍光体61に含まれる材料の種類に基づいて決定される。つまり、変換された光は、種々のスペクトルを有し得る。
【0041】
本実施形態に係る発光装置10は、蛍光体61に含まれる材料の組み合わせによって、種々のスペクトルを有する光を射出できる。発光装置10は、例えば、太陽からの直射日光のスペクトル、海中の所定の深さまで到達した日光のスペクトル、ろうそくの炎が発する光のスペクトル、又は、蛍の光のスペクトル等を有する光等を射出できる。言い換えれば、発光装置10は、種々の色を有する光を射出できる。また、発光装置10は、種々の色温度を有する光を射出できる。
【0042】
図4に示されるように、素子基板2の上面2Aの平面視において、反射層40は、第1配線31の少なくとも一部を覆う。発光素子3から射出された励起光、又は、波長変換部材6で変換された照明光の反射層40における反射率は、第1配線31における反射率よりも高いとする。このようにすることで、励起光又は照明光は、上面2Aに入射した際に吸収されにくくなるとともに、上面2Aで反射されて発光装置10の上方に向けて進みやすくなる。その結果、発光装置10の発光効率が高められ得る。
【0043】
また、素子基板2の上面2Aの平面視において、発光素子3は、電気的な接続関係にある給電パッド33を覆う。ここでいう、覆うとは、例えば給電パッド33の80%以上が覆われている状態を指してもよい。言い換えれば、給電パッド33は、発光素子3で覆われる。給電パッド33は、発光素子3と電気的に接続されるために、原則として反射層40で覆われていない。給電パッド33が発光素子3で覆われることによって、給電パッド33に入射する励起光又は照明光は減少する。給電パッド33に入射する光が減少することによって、給電パッド33で励起光又は照明光が吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率が高められ得る。
【0044】
図6に示されるように、反射層40は、第1配線31の全てを覆ってもよい。このようにすることで、第1配線31に入射する励起光又は照明光が減少する。入射する光が減少することによって、光が第1配線31で吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率がより一層高められ得る。なお、このとき、第1配線31の全てを覆うという状態には、反射層40の形成時における誤差により覆われていない箇所がある状態も含まれていてもよい。発光素子3からの光の反射に影響が出ない範囲、例えば反射層40に覆われていない第1配線31が光を吸収することによって、発光素子3からの発光効率の低下が3%未満にとどまる影響であれば、誤差に含まれてよい。
【0045】
また、発光素子3は、素子基板2の上面2Aの平面透視において、給電パッド33の全て覆って給電パッド33の上に位置してもよい。このようにすることで、給電パッド33に励起光又は照明光がより一層入射しにくくなる。入射する光が減少することによって、光が給電パッド33で吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率がより一層高められ得る。なお、このとき、給電パッド33の全てを覆うという状態には、発光素子3の実装時における誤差により覆われていない箇所がある状態も含まれていてもよい。誤差には、例えば、給電パッド33が発光素子3に95%以上覆われている状態が含まれていてもよい。発光素子3からの光の反射に影響が出ない範囲、例えば発光素子3に覆われていない給電パッド33が光を吸収することによって、発光素子3からの発光効率の低下が3%未満にとどまる影響であれば、誤差に含まれてよい。
【0046】
反射層40は、素子基板2の平面透視において、発光素子3と重なる領域の一部を覆っていてもよい。さらに、反射層40は、給電パッド33と発光素子3との間の電気的な接続が妨げられない限りにおいて、給電パッド33の一部を覆ってもよい。このようにすることで、給電パッド33に励起光又は照明光がより一層入射しにくくなる。入射する光が減少することによって、光が給電パッド33で吸収されにくくなる。その結果、発光装置10の発光効率がより一層高められ得る。
【0047】
図7に示されるように、反射層40は、素子基板2の上面2Aの第1領域21のうち、平面透視において発光素子3に覆われていない領域を全て覆ってもよい。このようにすることで、素子基板2の上面2Aの全体における反射率が高められ得る。その結果、発光装置10の発光効率が高められ得る。
【0048】
また、反射層40は、素子基板2の上面2Aの第1領域21のうち、少なくとも給電パッド33が位置する領域を除く領域を全て覆ってもよい。このようにすることでも、素子基板2の上面2Aの全体における反射率が高められ得る。その結果、発光装置10の発光効率が高められ得る。
【0049】
以上述べてきたように、本実施形態に係る発光装置10は、発光効率を高めることができる。
【0050】
(照明装置100の構成例)
図8に示されるように、一実施形態に係る照明装置100は、少なくとも1つの発光装置10を備え、発光装置10が射出する光を照明光として射出する。照明装置100は、複数の発光装置10を備える場合、各発光装置10が射出する光の強度を独立に制御してもよいし、関連づけて制御してもよい。各発光装置10が射出する光のスペクトルは、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。照明装置100は、各発光装置10が射出する光の強度を関連づけて制御することによって、各発光装置10が射出する光を合成した光のスペクトルを制御してもよい。各発光装置10が射出する光を合成した光は、合成光とも称される。照明装置100は、合成光を照明光として射出してもよい。照明装置100は、複数の発光装置10の少なくとも一部を選択して照明光を射出させてもよい。
【0051】
照明装置100は、発光装置10が実装された実装板110をさらに備えてよい。照明装置100は、実装板110を収容する溝状の部分を有する筐体120と、筐体120の短辺側の端部を塞ぐ一対の端板130とをさらに備えてよい。実装板110に実装されている発光装置10の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。発光装置10は、実装板110において、一列に並ぶように実装されてもよいし、格子状又は千鳥格子状に並ぶように実装されてもよい。発光装置10は、これらのパターンに限られず、種々の配列パターンで実装板110に実装されてよい。
【0052】
実装板110は、配線パターンを有する回路基板を含んでもよい。回路基板は、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板又はリジッドフレキシブル基板等のプリント基板を含んでよい。回路基板は、発光装置10を制御する駆動回路を含んでもよい。
【0053】
実装板110は、発光装置10が発する熱を外部に放散させる機能を有している。実装板110は、例えば、アルミニウム、銅若しくはステンレス鋼等の金属材料、有機樹脂材料、又はこれらを含む複合材料等で構成されてよい。
【0054】
実装板110は、平面視において細長い長方形状を有してよい。実装板110の形状は、これに限られず他の種々の形状であってもよい。
【0055】
照明装置100は、筐体120の内部に収容されている実装板110及び発光装置10を封止する蓋部140をさらに備えてよい。蓋部140は、透光性を有する材料で構成されることによって、発光装置10が射出する照明光を照明装置100の外部に透過してよい。蓋部140は、例えば、アクリル樹脂等の樹脂材料又はガラス等によって構成されてよい。蓋部140は、平面視において細長い長方形状を有してよい。蓋部140の形状は、これに限られず他の種々の形状であってもよい。照明装置100は、蓋部140と筐体120との間にシーリング部材をさらに備えてもよい。このようにすることで、筐体120の内部に水又は塵埃等が侵入しにくくなる。その結果、照明装置100が設置される環境にかかわらず、照明装置100の信頼性が向上しうる。照明装置100は、筐体120の内部に吸湿剤をさらに備えてもよい。
【0056】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0057】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。また、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに留意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば、本開示にかかる実施形態において、枠部材4の内壁は傾斜を有していないとして記載されている。発光装置10のサイズによっては、枠部材4は、内壁面が、素子基板2の上面2Aから遠ざかるほど、外方に向かって広がるように傾斜していてもよい。この場合に内壁面は、発光素子3が発光する光を反射させる反射面として機能する。
【0058】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1変換光は、第2変換光と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【0059】
本開示において、X軸、Y軸、及びZ軸は、説明の便宜上設けられたものであり、互いに入れ替えられてよい。本開示に係る構成は、X軸、Y軸、及びZ軸によって構成される直交座標系を用いて説明されてきた。本開示に係る各構成の位置関係は、直交関係にあると限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
10 発光装置
2 素子基板(2A:上面、21:第1領域、22:第2領域)
3 発光素子
4 枠部材
6 波長変換部材(60:透光部材、61:蛍光体)
31 第1配線
32 第2配線(321:第1部分、322:第2部分)
33 給電パッド
34 半田材
35 第3配線
40 反射層
100 照明装置(110:実装板、120:筐体、130:端板、140:蓋部)