(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】3D印刷用の改良ポリマーを製造するための鎖開裂
(51)【国際特許分類】
C08G 69/48 20060101AFI20241107BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20241107BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241107BHJP
【FI】
C08G69/48
B29C64/314
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2022544107
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021019391
(87)【国際公開番号】W WO2021173651
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,ルーク
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00285692(EP,A1)
【文献】特表2009-529602(JP,A)
【文献】EICHHORN, K. J.,Characterization of low Molecular Weight Carboxyl-Terminated Polyamides Obtained by Reactive Extrusion of Polyamide 6 with Trimellitic Anhydride,Journal of Applied Polymer Science,1996年,62巻,2053-2060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/48
B29C 64/314
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部がキャッピングされたポリアミドポリマーを形成する方法において、
(i)端部キャッピング化合物の存在下で、分枝状または直鎖状であり、多くとも5g/10分(235℃で2.16kg)のメルトフローレートを有するポリアミドポリマーを加熱する工程であって、各端部キャッピング化合物が、開裂したポリアミドポリマーを形成するために1の官能価を有する工程、および
(ii)前記開裂したポリアミドポリマーの少なくとも一部を前記端部キャッピング化合物と反応させて、前記端部がキャッピングされたポリアミドポリマーを形成する工程であって、該開裂したポリアミドポリマーが、20gから200g/10分(235℃で2.16kg)のメルトフローレートを有し、該開裂したポリアミドポリマーおよび充填剤の30重量%から90重量%の充填剤の量を有
し、前記端部キャッピング化合物が無水物またはカルボン酸からなる、工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記端部キャッピング化合物が
無水物からなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記端部キャッピング化合物が無水物である、請求項
2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミドポリマーが、ポリアミド6、コポリアミド(6/66)、コポリアミド(6/66/12)、ポリアミド1012、ポリアミド11、またはコポリアミド(6/12)である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記端部がキャッピングされたポリアミドポリマーが、少なくとも50g/10分(235℃で2.16kg)のメルトフローレートを有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記端部がキャッピングされたポリアミドポリマーが、充填剤を、該ポリマーおよび該充填剤の少なくとも約50質量%から90質量%の量で有し、前記開裂したポリアミドポリマーが、前記ポリアミドポリマーの多分散性よりも1.2倍から10倍大きい多分散性を有し、該ポリアミドポリマーは、該開裂したポリアミドポリマーの重量平均分子量よりも1.2倍から10倍大きい重量平均分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミドポリマーの溶融温度より高く、分解温度より低い温度で行われる前記加熱する工程の最中に、スクリュー押出機内で前記ポリアミドポリマーを剪断する工程、および前記方法の少なくとも一部の最中に減圧下で水を除去する工程をさらに含む、請求項1から
6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記端部キャッピング化合物が、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水1,8-ナフタル酸、または無水物フタル酸の内の1つ以上からなる、請求項1から
6いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記端部キャッピング化合物の量が、前記ポリアミドポリマーおよび該端部キャッピング化合物の0.7質量%から5質量%である、請求項1から
6いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーおよび3D印刷にそれらを使用できるようにする方法に関する。詳しくは、本発明は、縮合ポリマー(例えば、ポリアミドおよびポリエステル)の開裂、3D印刷に有用な所望の安定なレオロジー特性を実現するための開裂したポリマーのキャッピングに関する。
【背景技術】
【0002】
押出し、フイルムブロー成形、射出成形などの従来の方法によって造形品を形成するために、縮合ポリマーが使用されてきた。これらの過程において、ポリマーは、溶融され、実質的に剪断されて、ポリマーの開裂と分子量の未制御の損失が結果としてもたらされ、造形品(例えば、ブロー成形ボトルおよび押出管)の形成中に変形を生じる。一般に、それぞれ、特許文献1および2においてポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートについて記載されているように、分子量の損失を元に戻して、十分に高い溶融強度および溶融粘度を実現するために、鎖延長剤が添加される。
【0003】
熱可塑性ポリマーの付加製造では、典型的に、層状パターンの局部溶融を必要とし、この溶融により、その後、続く層が融合され、支持される。加熱されたノズルに引き込まれ、溶融され、次いで押し出される熱可塑性フィラメントを使用し、押し出されたフィラメントが冷却の際に互いに融合することによって、3D部品を形成するために、一般に、プラスチックジェットプリンティングとも呼ばれる溶融フィラメント製造(FFF)が使用されてきた(例えば、特許文献3および4を参照のこと)。
【0004】
同様に、粉末床内の粉末を選択的に焼結することによって、3D部品を製造するために、選択的レーザ焼結または溶融(SLSまたはSLM)が使用されてきた(例えば、特許文献5を参照のこと)。この方法において、高温に維持された粉末床は、CO2レーザまたは他の電磁放射線源を使用して選択的に焼結される。最初の層が一旦焼結されたら、さらなる粉末層が計量しながら供給され、所望の3D部品が製造されるまで、選択的焼結が繰り返される。粉末を焼結または溶融しなければならないので、SLSは、反りやスランピングなく焼結を行い、特に層間に所望の融合を達成できるようにする非常に際だった特徴を有する熱可塑性ポリマーの使用および複雑な装置の必要性により制限されてきた。これにより、一般に、適用可能性が、主に、ポリアミド(すなわち、ナイロン)またはナイロンを含有する複合粉末に限定されていた。
【0005】
しかしながら、局部加熱およびその後の層へと層内の融合の必要条件のために、ポリアミドなどの標準タイプの熱可塑性ポリマーでは、例えば、変形やスランピングなく層内と層間に十分な結合を実現するための、低いメルトフローレートにより、印刷速度が制限されてきた。レオロジー特性(例えば、低いメルトフローレート)のせいで、SLS熱可塑性粒子またはFFFフィラメントに、硬度および剛性などの特定の性質を実現するための他の成分(例えば、無機充填剤)を充填する能力が限定されるであろう。そして、典型的な3D製造(FFFおよびSLS)は、射出成形中に遭遇するような著しい剪断を伴わないので、加工中に望ましいレオロジー特性は、剪断のない状況で、開裂と冷却の際の戻りから生じないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4246378号明細書
【文献】米国特許第7544387号明細書
【文献】米国特許第5121329号明細書
【文献】米国特許第5503785号明細書
【文献】米国特許第5597589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、部品を3D印刷するために使用される場合、縮合ポリマーの問題に独特に適応された縮合ポリマーを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリアミドおよびポリエステルなどの縮合ポリマーであって、層内と層間でポリマーの融合を改善できる溶融レオロジー特性を望ましく有する縮合ポリマーを形成できることが見いだされた。このプロセスは、例えば、重量平均分子量を減少させつつ、それでも、所望の向上した溶融レオロジー特性を実現する所望の量の高分子量画分を維持し、またその高分子量画分の所望の特性を維持することができる。
【0009】
本発明の第1の態様は、付加製造に有用な端部がキャッピングされた縮合ポリマーを形成する方法であって、
(i)端部キャッピング化合物の存在下で縮合ポリマーを加熱して、開裂した縮合ポリマーを形成する工程、および
(ii)開裂した縮合ポリマーの少なくとも一部を端部キャッピング化合物と反応させて、端部がキャッピングされた縮合ポリマーを形成する工程、
を有してなる方法である。ある実施の形態において、二軸混練押出機により与えられるような、十分な量の力学的エネルギーを縮合ポリマーに与えることによって、十分な加熱を実現することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様により製造された端部がキャッピングされた縮合ポリマーの融合層からなる物品を形成する方法であって、その層は、付加製造方法によって、連続的に堆積され、有向の熱の印加により融合される、方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の方法により製造された端部がキャッピングされた縮合ポリマーからなる物品、または本発明の第2の態様の方法により製造された物品である。
【0012】
本発明の第4の態様は、端部キャッピング化合物の残基で端部がキャッピングされた縮合ポリマーからなるポリマーである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに提示された説明および解説は、当業者に本発明、その原理、およびその実用的応用を知らせることが意図されている。記載された本開示の具体的な実施の形態は、網羅的である、または本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0014】
本発明の方法により、端部キャッピング化合物の存在下で縮合ポリマーを加熱して、開裂した縮合ポリマーを形成することによって、付加製造に有用な端部がキャッピングされたポリマーが形成される。
【0015】
縮合ポリマーは、当業者に公知で市販のものなど、どの適切な縮合ポリマーであってもよい。有用なポリマーの例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せが挙げられる。ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、またはポリカーボネートであることが望ましい。縮合ポリマーは、直鎖状であっても、分岐していてもよい。縮合ポリマーが直鎖状であることが望ましい。ポリアミドの例としては、ポリアミド6、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、およびポリアミド6/12共重合体などの宇部興産株式会社から入手できるものが挙げられる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレートおよび商標名CELANEXでCelaneseから入手できるものなど、他の市販のポリエステルが挙げられる。ポリカーボネートの例としては、商標名CALIBREでTrinseo S.A.から入手できるものが挙げられる。
【0016】
端部キャッピング化合物は、開裂した縮合ポリマーと反応し、それを端部キャッピングするのに有用な、どの端部キャッピング化合物であってもよく、特定の縮合ポリマーに応じて様々であってよい。端部キャッピング化合物の例としては、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルからなるものが挙げられる。端部キャッピング化合物が無水物またはカルボン酸であることが望ましい。ポリアミドおよびポリイミドを端部キャッピングするのに特に有用な無水物の例としては、無水フタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水スルホフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸が挙げられる。ある実施の形態において、端部キャッピング剤は、難燃性、紫外線抵抗性、もしくは異なるポリマーまたは反応基とのさらなる反応を経る能力のような他の機能性など、所望の特性または特徴を与える有用な化学基を導入することができる。例えば、端部キャッピング化合物(例えば、無水物)は、以下のように様々な官能価を有することがある。端部キャッピング化合物(例えば、無水物)は、ポリアミドと一度だけ反応することができる(1の官能価)が、ポリエステルとは2の官能価を有し、それゆえ、ポリアミドをキャッピングする端部キャッピング化合物は、所望であれば、その化合物をポリエステルと反応させる残りの官能価を有することができる。
【0017】
ある実施の形態において、端部キャッピング化合物は、縮合ポリマーを加熱し、開裂させるのに使用される温度より高い沸点を有する液体または固体である。説明すると、その沸点は、少なくとも約250℃、275℃、300℃、またはそれより高いことが望ましいであろう。
【0018】
端部キャッピング剤の量は、端部がキャッピングされた縮合ポリマーにとって望ましい特徴に応じて、どの有用な量であってもよい。典型的に、その量は、縮合ポリマーと端部キャッピング剤の約0.001質量%、0.01質量%、0.1質量%から約5質量%、3質量%または1質量%であることがある。
【0019】
加熱は、どの有用な温度までであってもよく、端部をキャッピングすべき特定の縮合ポリマーに依存するであろう。実例として、その温度は、縮合ポリマーの溶融温度の約50℃以内であることがある。ある実施の形態において、加熱は、縮合ポリマーの溶融温度の約40℃、30℃、または25℃以内の温度までであることがある。実例として、その温度は、一般に、約150℃または200℃から300℃または250℃までであることがある。
【0020】
ポリマーを加熱し、ブレンドするのに公知の方法など、縮合ポリマーおよび端部キャッピング剤を加熱するのに有用な、どの方法を用いてもよい。加熱するときに、ポリマーおよび端部キャッピング剤に剪断を与えて、縮合ポリマーを混合し、その開裂をさらに促進させることも望ましいであろう。ある実施の形態において、当該技術分野に公知のものなど、加熱された単軸または二軸押出機を利用することができる。剪断の量は、特定の装置に望ましい開裂および端部キャッピングを実現するのにどの有用な量であってもよい。押出機は、1つの温度に保持されても、または所望の開裂および端部キャッピングを促進するために、押出機の長さに沿って勾配を有してもよい。
【0021】
端部がキャッピングされた縮合ポリマーを形成するのを支援するために、水などの、端部キャッピング反応中に形成される副生成物は、この方法の少なくとも一部の最中に、除去することができる。そのような副生成物を除去するために、例えば、真空に引くことを含むどの方法を使用してもよい。
【0022】
前記方法を説明するために、ポリアミドは、下記に示されるような無水トリメリット酸により表される端部キャッピング剤と共に加熱される。その説明から、ポリアミドの端部キャッピングにより、ここに記載されるように、除去することが望ましいであろう水が生成され得ることが明白である。
【0023】
【0024】
または
【0025】
【0026】
別の説明において、ポリエステルは、下記に示されるように単官能性アルコール端部キャッピング剤を使用して端部キャッピングすることができる。この例において、PET(ポリエチレンテレフタレート)において鎖を開裂させるために、商標名EXXAL 13の炭素数が13の分岐アルコールを使用した。縮合反応は可逆性であるので、単官能性アルコールはエステル結合を開裂し、分子量が減少したPET鎖と短鎖アルコールで端部がキャッピングされたPET鎖を生じることができる。EXXAL 13は、どのような追加の官能基も有さないので、鎖の開裂が完了したときに、追加の反応は起こらない。
【0027】
【0028】
対照的に、ポリエステルを端部キャッピングするために、端部キャッピング剤の無水フタル酸が使用される場合、無水フタル酸は、分子量を減少させずに、分子量を増加させる鎖延長剤として働く。
【0029】
この方法で生じる分子量の減少の程度に、様々な要因が影響し得る。例えば、端部キャッピング反応体の濃度、押出機中の滞留時間(例えば、スクリュー速度の関数)、押出機の温度、ポリマーの含水率、圧力(例えば、押出機で引かれている真空)、および/または押出機中の剪断速度が、分子量の減少の程度に影響し得る。押出機のスクリュー速度を遅くすると、ポリマーと端部キャッピング反応体が互いに反応しなければならない滞留時間を増加させることができ、それにより、例えば、端部キャッピング反応体の全てが反応するまで、滞留時間を増加させると、平均分子量を低下させることができる。端部キャッピング反応体の濃度を増加させると、所定の滞留時間について、開裂したポリマーの反応部位に結合する端部キャッピング反応体の統計的確率を増加させることもできる。剪断を増加させ、温度を上昇させると、押出機内で生じる鎖の開裂速度を増加させ、それによって、より多くの分子が開裂され、端部キャッピング反応体が存在する場合により低い平均分子量をもたらすことができる。1種類以上の端部キャッピング反応体を、化学量論的未満(端部キャッピング反応体の全てが反応により消費されるように)、化学量論的、または化学量論的に過剰に加えることができる。
【0030】
この方法を実施するときに、端部がキャッピングされた縮合ポリマーは、出発縮合ポリマーよりも小さい重量平均分子量Mw並びに増加した多分散性およびより高いメルトフローレーサを有する。一般に、Mwが減少し、多分散性が増加すると、縮合ポリマーのMw/端部がキャッピングされた縮合ポリマーのMwの比が、1より大きくなり、典型的に、少なくとも約1.2、1.5、2から10または5までとなる。同様に、多分散性が増加すると、縮合ポリマーの多分散性と比べた端部がキャッピングされた縮合ポリマーの比が、1より大きくなり、典型的に、少なくとも約1.2、1.5、2から10または5までとなる。
【0031】
この方法は、溶融ブロー成形物品および付加製造物品を製造するのに望ましいメルトフローレートおよびレオロジー特性を有する、低いメルトフローレート(MFR)の縮合ポリマーを製造するのに特に有用である。ここで典型的に測定される(例えば、235℃で2.16kg[g/10分])などの所定の温度での低いメルトフローレートは、約10または5未満である(ASTM D1238)。この方法により、MFRを、どの実際に有用なMFRに対しても少なくとも2、5、10、20またさらには50倍(例えば、500倍まで)増加させることができる。ある実施の形態において、端部がキャッピングされた縮合ポリマーのMFRは、上述の条件で、少なくとも約10、20、30、50、またはさらには75から200である。
【0032】
端部がキャッピングされたポリマーをどの有用な添加剤と混合して、当該技術分野で公知のものなどの物品を製造してもよい。説明すると、端部がキャッピングされたポリマーは、物品を製造するときに有用であり得るさらに別の成分と混合することができる。さらに別の成分は、1種類以上の染料、顔料、強化剤、レオロジー改質剤、充填剤、補強剤、増粘剤、乳白剤、阻害剤、蛍光マーカー、熱分解低下剤、耐熱性付与剤、界面活性剤、湿潤剤、または安定剤であってよい。
【0033】
ある実施の形態において、端部がキャッピングされた縮合ポリマーは、充填剤と混合される(例えば、溶融され、ブレンドされる)。充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融も、分解もしない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀物および籾殻の粉または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、酸窒化物、酸炭化物の組合せ、またはそれらの組合せが挙げられる。特定の実施の形態において、充填剤は、タルク、粘土鉱物、細断無機ガラス、金属、または炭素繊維、ムライト、マイカ、珪灰石、もしくはその組合せなどの針状充填剤を含む。特別な実施の形態において、充填剤はタルクからなる。
【0034】
充填剤の量は、付加製造物品などの物品を製造するのにどの有用な量であってもよい。例えば、充填剤は、端部がキャッピングされたポリマーおよび充填剤の20質量%、30質量%、40質量%、または50質量%から90質量%の量で存在することがある。より高いMFRおよび望ましいレオロジーを実現する能力のために、より高い充填量の充填剤を利用でき、それでもまだ、ポリアミドなどの縮合ポリマーの良好な印刷挙動を実現できることが判明した。
【0035】
ある実施の形態において、端部がキャッピングされたポリマーは、SLSまたはFFFなどの付加製造に有用な粉末またはフィラメントに形成され、次に、端部がキャッピングされた縮合ポリマーからなる付加製造物品を製造するために使用される。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、前記方法およびそれにより形成されたポリマーを説明するために与えられているが、その範囲を限定することは意図されていない。全ての部および百分率は、特に明記のない限り、質量による。
【0037】
実施例および比較例の各々を、下記に示されるような例について詳述されたポリアミド、端部キャッピング化合物、および端部キャッピング化合物の濃度で、毎時60ポンド(約27kg)で装填された毎分400回転で27mmの二軸押出機/混練機内で行った。押出機の長さ/直径比は40であり、温度は、ダイを通じて入口から出口まで押出機の長さに沿って280℃と240℃の間であった(すなわち、始めから終わりまでいくぶん線形勾配がある)。圧力(真空)は、約800ミリバール(約80kPa)に維持された。
【0038】
実施例1(AからD)および比較例1:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、UBE 6434のタイプ6/66/12である。端部キャッピング化合物は、実施例および比較例の各々のMFRと共に表1に示されたように、無水フタル酸である。
【0039】
【0040】
実施例2(AからD)および比較例2:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、UBE 6434のタイプ6/66/12である。端部キャッピング化合物は、実施例および比較例の各々のMFRと共に表2に示されたように、無水ヘキサヒドロフタル酸である。
【0041】
【0042】
実施例3(AからD)および比較例3:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、UBE 6434のタイプ6/66/12である。端部キャッピング化合物は、実施例および比較例の各々のMFRと共に表3に示されたように、無水トリメリット酸である。この実施例におけるようにポリアミドが分岐している場合でさえ、この方法は、所望のMFRを実現する上で効果的である。
【0043】
【0044】
実施例4(AからD)および比較例4:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、RILSAN Polyamide 11(Arkema)である。端部キャッピング化合物は、実施例および比較例の各々のMFRと共に表4に示されたように、無水ヘキサヒドロフタル酸である。実施例のMFRは、高すぎて測定できなかった。何故MFRがそのように急激に増加したのかは、完全には理解されていないが、どのようにも限定するものではないが、おそらく、さらなる可塑剤の機能を果たす残留モノマーの存在のためであろう。
【0045】
【0046】
実施例5(AからC)および比較例5:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、NYLENE 615NP PA6(Nylene Polymer Solutions)である。端部キャッピング化合物は、実施例および比較例の各々のMFRと共に表5に示されたように、無水ヘキサヒドロフタル酸である。
【0047】
【0048】
実施例6(AからC)および比較例6:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、Shadong GuangyinのタイプPA 1012である。端部キャッピング化合物は、実施例および比較例の各々のMFRと共に表6に示されたように、無水ヘキサヒドロフタル酸である。
【0049】
【0050】
実施例7(AからC)および比較例7:
これらの実施例および比較例において、使用したポリアミドは、EMS Grilamid L16 nat PA12(EMS-Grivory)である。端部キャッピング化合物は、端部がキャッピングされたポリアミドに測定されたMFRと共に表7に示されたように、無水ヘキサヒドロフタル酸である。
【0051】
【0052】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0053】
実施形態1
端部がキャッピングされた縮合ポリマーを形成する方法であって、
(i)端部キャッピング化合物の存在下で縮合ポリマーを加熱して、開裂した縮合ポリマーを形成する工程、および
(ii)前記開裂した縮合ポリマーの少なくとも一部を前記端部キャッピング化合物と反応させて、前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーを形成する工程、
を有してなる方法。
【0054】
実施形態2
前記端部キャッピング化合物が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルからなる、実施形態1に記載の方法。
【0055】
実施形態3
前記端部キャッピング化合物が無水物またはカルボン酸である、実施形態1または2に記載の方法。
【0056】
実施形態4
前記端部キャッピング化合物が無水物である、実施形態3に記載の方法。
【0057】
実施形態5
前記縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せである、実施形態1から4いずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態6
前記縮合ポリマーが、前記ポリアミド、前記ポリエステル、前記ポリカーボネートまたはその組合せである、実施形態5に記載の方法。
【0059】
実施形態7
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーおよび前記縮合ポリマーの各々が、該端部がキャッピングされた縮合ポリマーの重量平均分子量(Mw)が該縮合ポリマーのMwより小さく、該端部がキャッピングされた縮合ポリマーの多分散性が該縮合ポリマーの多分散性より大きくなるような、Mwおよび多分散性を有する、実施形態1から6いずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態8
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーのMwに対する前記縮合ポリマーのMwの比が1より大きく、該縮合ポリマーの多分散性に対する害端部がキャッピングされた縮合ポリマーの多分散性の比が1より大きい、実施形態7に記載の方法。
【0061】
実施形態9
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、少なくとも20g/10分(235℃で2.16kg)のメルトフローレートを有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態10
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せである、実施形態9に記載の方法。
【0063】
実施形態11
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、前記ポリアミド、前記ポリエステル、またはその組合せである、実施形態10に記載の方法。
【0064】
実施形態12
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、少なくとも20g/10分(235℃で2.16kg)のMFRを有する、実施形態9から11いずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態13
前記加熱する工程の最中に、前記縮合ポリマーを剪断する工程をさらに含む、実施形態1から12いずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態14
前記加熱する工程が、前記縮合ポリマーの溶融温度より高く、分解温度より低い温度で行われる、実施形態1から13いずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態15
前記加熱する工程が、スクリュー押出機内で行われる、実施形態1から14いずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態16
前記方法の少なくとも一部の最中に水を除去する工程をさらに含む、実施形態1から15いずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態17
前記方法を減圧下で行うことによって、水が除去される、実施形態16に記載の方法。
【0070】
実施形態18
前記端部キャッピング化合物が、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸、無水物フタル酸、または無水スルホフタル酸の内の1つ以上からなる、実施形態1から17いずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態19
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが粉末またはフィラメントに形成される、実施形態1から18いずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態20
前記端部キャッピング化合物の量が、前記縮合ポリマーおよび該端部キャッピング化合物の0.01質量%から5質量%である、実施形態1から19いずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態21
実施形態1から20いずれか1項記載の方法により製造された前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーの融合層からなる物品を形成する方法であって、該層は、付加製造方法によって、連続的に堆積され、有向の熱の印加により融合される、方法。
【0074】
実施形態22
前記付加製造方法がSLSまたはFFFである、実施形態21に記載の方法。
【0075】
実施形態23
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、充填剤を、該ポリマーおよび該充填剤の少なくとも約25質量%から90質量%の量で有する、実施形態21または22に記載の方法。
【0076】
実施形態24
実施形態1から20いずれか1つに記載の方法により製造された端部がキャッピングされた縮合ポリマーからなる物品。
【0077】
実施形態25
実施形態1から20いずれか1つに記載の前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーからなるポリマー。
【0078】
実施形態26
実施形態21から23いずれか1つに記載の方法により製造された物品。
【0079】
実施形態27
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、少なくとも10のMFRを有する、実施形態25に記載のポリマー。
【0080】
実施形態28
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルの反応生成物により端部がキャッピングされている、実施形態26に記載の物品。
【0081】
実施形態29
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、前記カルボン酸または前記無水物の反応生成物により端部がキャッピングされている、実施形態28に記載の物品。
【0082】
実施形態30
前記端部がキャッピングされた縮合ポリマーが、前記無水物で端部がキャッピングされたポリアミドである、実施形態29に記載の物品。
【0083】
実施形態31
端部キャッピング化合物の残基で端部がキャッピングされた縮合ポリマーからなるポリマー。
【0084】
実施形態32
前記縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せである、実施形態31に記載のポリマー。
【0085】
実施形態33
前記縮合ポリマーが、ポリアミド、ポリエステルまたはポリカーボネートである、実施形態32に記載のポリマー。
【0086】
実施形態34
前記縮合ポリマーがポリアミドである、実施形態33に記載のポリマー。
【0087】
実施形態35
前記端部キャッピング化合物が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルである、実施形態31から34いずれか1つに記載のポリマー。
【0088】
実施形態36
前記端部キャッピング化合物が無水物であり、前記縮合ポリマーがポリアミドである、実施形態35に記載のポリマー。
【0089】
実施形態37
前記無水物が、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸、無水物フタル酸、または無水スルホフタル酸である、実施形態36に記載のポリマー。
【0090】
実施形態38
前記ポリマーが、少なくとも約10g/10分(235℃で2.16kg)のメルトフローレートを有する、実施形態36または37に記載のポリマー。
【0091】
実施形態39
前記端部キャッピング化合物が、可変の官能価を有する、実施形態1に記載の方法。