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特許7583820新規銅触媒を用いたジアリールエーテル骨格を有するモルヒナン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】新規銅触媒を用いたジアリールエーテル骨格を有するモルヒナン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20241107BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241107BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
C07D471/08
A61K31/485
A61P25/04
A61P25/22
A61P25/24
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022545738
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031558
(87)【国際公開番号】W WO2022045301
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020145073
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療研究開発革新基盤創成事業」、「オピオイドδ受容体活性化を機序とする画期的情動調節薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅朗
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/035833(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136305(WO,A1)
【文献】WATANABE Yoshikazu et al.,Design and synthesis of novel δ opioid receptor agonists with an azatricyclodecane skeleton for imp,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2017年05月26日,Vol.27, No.15,pages 3495 to 3498,doi:10.1016/j.bmcl.2017.05.072
【文献】NEJATI Kamellia et al.,Diaryl ethers synthesis: nano-catalysts in carbon-oxygen cross-coupling reactions.,RSC Advances,2018年05月23日,Vol.8, No.34,pages 19125 to 19143,doi:10.1039/C8RA02818D
【文献】KIM Jee Young et al.,Cu2O Nanocube-Catalyzed Cross-Coupling of Aryl Halides with Phenols via Ullmann Coupling.,European Journal of Inorganic Chemistry,2009年09月21日,Vol.2009, No.28,pages 4219 to 4223,doi:10.1002/ejic.200900730
【文献】LINDERS J. T. M., et al.,Diels-Alder reaction of 6-demethoxy-β-dihydrothebaine with methyl vinyl ketone using microwave heat,Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas,1988年,Vol.107,pages 449 to 454
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(IV):
【化1】

(式中、R、C 3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を表し、
、-OR13(R13はヒドロキシ保護基を表す)を表し、
XはCH 表し、
YはCH 表し、
12はアミノ保護基を表す)
で表される化合物と、下記一般式(II):
【化2】

(式中、R14 、水素原子又はアルキル基を表し、 15 は、水素原子を表し、Halはハロゲン原子を表す)
で表される化合物とを、
塩基の存在下並びに1価の銅化合物及び0価の金属銅の存在下、又は1価の銅化合物の存在下かつ0価の金属銅の非存在下、有機溶媒中で反応させることを含む、
下記一般式(V):
【化3】

(式中、R、R、R12、X、Y、R14及びR15は前記と同じものを表す)
で表されるモルヒナン誘導体の製造方法であって、
該塩基が、アルカリ金属の塩であり、
該1価の銅化合物が、ヨウ化第一銅又は酸化第一銅であり、かつ
該有機溶媒が、非プロトン性極性溶媒である、
製造方法
【請求項2】
が、シクロプロピルメチル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
13が、メチル基、ベンジル基又はtert-ブチルジメチルシリル基である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
13が、メチル基である請求項または2に記載の製造方法。
【請求項5】
12が、ベンジル基である請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(IV)が
【化4】

で表される化合物であり、
一般式(II)が
【化5】

(式中、R14は、水素原子又はtert-ブチル基を表す)で表される化合物であり、そして、
一般式(V)が
【化6】

(式中、R14は、水素原子又はtert-ブチル基を表す)で表されるモルヒナン誘導体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
1価の銅化合物を一般式(IV)で表される化合物に対して0.01~2.0当量用いる請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
1価の銅化合物及び0価の金属銅の存在下で反応させる、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
0価の金属銅を一般式(IV)で表される化合物に対して0.01~2.0当量用いる請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
1価の銅化合物と0価の金属銅との換算モル比(1価の銅:0価の銅)が、1:0.2~1:6である請求項又は請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
0価の金属銅の非存在下、かつ、1価の銅化合物の存在下で反応させる、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
非プロトン性極性溶媒が、ピリジン及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
アルカリ金属の塩が、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
反応温度が、50℃~150℃である請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
1価の銅化合物が粉末の酸化第一銅であり、粉末の粒径10~100nmがある、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な銅触媒を用いて、モルヒナン誘導体のフェノール性水酸基をウルマンカップリングによりフェノールエーテル結合に変換する、ジアリールエーテル骨格を有するモルヒナン誘導体の製造方法に関する。
本願は、2020年8月28日に、日本に出願された特願2020-145073号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
オピオイド受容体にはμ、δ、κの3種のサブタイプがあることが知られており、μ受容体に対して強い親和性を示すモルヒネは古くから鎮痛薬として使用されている。モルヒネの鎮痛作用は強力なものであるが、このμ受容体を介して、依存形成、呼吸抑制、便秘等の有害事象を引き起こすことも知られている。
一方、δ受容体を介した鎮痛作用も知られているが、δ受容体アゴニストはモルヒネで見られる有害事象には関与しないことが知られている。
従って、δ受容体に選択的なアゴニストはモルヒネよりも優れた鎮痛薬になる可能性があると考えられ、その創製に関する研究が盛んに行われている。しかしながら、治療又は予防薬としての承認を受けたδ受容体アゴニストは未だ存在しない。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、次式で示す優れたδ受容体アゴニスト活性を有する誘導体が開示されている。
【0004】
【化1】
【0005】
これらの誘導体の製造においては多段階にわたる合成を必要としており、そのため1反応における収率や各反応により得られる目的化合物の純度が高いことが望まれる。
例えば、特許文献1の段落[0025]には、モルヒナン誘導体の4位フェノール体(b-1)へ、ウルマン反応によりフェニル基を導入して(m)とした後、4位の酸素官能基を除去し(n)へと導く手法が開示されている。
【0006】
【化2】
【0007】
ここで、上記ウルマン反応では、モルヒナン誘導体にフェニル基を導入するにあたり、銅粉末(0価の銅)が使用されている。
【0008】
他方、非特許文献1には、モルヒナン誘導体に対してウルマン反応によりフェニル基を導入してジアリールエーテルを構築するにあたり、2価の銅(酢酸銅(II))を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2013/035833号
【文献】国際公開第2016/148232号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Helvetica Chimica Acta 1990, 73(2), 326-336
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の実施例2によると、ウルマン反応によりフェニル基を導入するにあたり、銅粉末を理論当量で添加しても反応が完了せず、途中で銅粉末を追加しなければならないという再現性に問題があり、工業化に不向きな製法と言わざるを得ない。
よって、本発明の1つの目的は、ジアリールエーテル骨格を有するモルヒナン誘導体を製造する方法であって、工業化製法に適用可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ウルマン反応によるジアリールエーテルの製造における触媒系として、これまで知られていなかった1価の銅化合物を用いる系、特に1価の銅化合物と0価の金属銅とを同時に用いる新規触媒系を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0013】
[1]
下記一般式(I):
【化3】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいC1-10アルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよいC3-6シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基又はアミノ保護基を表し、
、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は任意の置換基を表すか、
又は前記一般式(I)の
【化4】
部分に関して、
及びRが互いに結合して、
【化5】
(式中、実線と破線からなる二重線は、単結合又は二重結合を表し、
ここで、AB間の実線と破線からなる二重線が単結合の場合、A及びBは、同一又は異なって、CR、C=O又はNRを表し、ここで、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、-C(=O)-R又は-CR10(OH)-R11を表し、R~R11は、水素原子又は任意の置換基を表し、
AB間の実線と破線からなる二重線が二重結合の場合、A及びBは、同一又は異なって、CR又はNを表し、ここで、R、R~R11は前記と同じものを表し、
DD間の実線と破線からなる二重線が、単結合の場合、DはCHを表し、二重結合の場合、DはCHを表す)を表すか、
もしくはR~Rが互いに結合して、
【化6】
(式中、XはCH、NR(Rは水素原子又は任意の置換基を表す)又はOを表し、YはCH又はC=Oを表し、R12はアミノ保護基又はアシル基を表す)を表し、
は、水素原子、ヒドロキシ基又は-OR13(R13はヒドロキシ保護基を表す)を表す。)
で表される化合物と、下記一般式(II):
【化7】
(式中、R14及びR15は、同一又は異なって、水素原子又は任意の置換基を表し、Halはハロゲン原子を表す)
で表される化合物とを、
塩基、1価の銅化合物及び/又は0価の金属銅の存在下、有機溶媒中で反応させることを含む、
下記一般式(III):
【化8】
(式中、R~R15、A、B、D、X及びYは前記と同じものを表す)
で表されるモルヒナン誘導体の製造方法に関する。
[2]
AB間の実線と破線からなる二重線が単結合を表し、A及びBが、同一又は異なって、CRを表し、R及びRが、同一又は異なって、水素原子又は-C(=O)-Rを表し、Rが、C1-10アルキル基、C1-10アルコキシル基、C6-10アリール基又はNHBnを表す、DD間の実線と破線からなる二重線が二重結合を表し、DがCHを表す、上記[1]に記載の製造方法に関する。
[3]
AB間の実線と破線からなる二重線が単結合を表し、A及びBが、同一又は異なって、CRを表し、R及びRが、同一又は異なって、水素原子又は-C(=O)-Rを表し、Rが、C1-10アルキル基、C1-10アルコキシル基、C6-10アリール基又はNHBnを表し、DD間の実線と破線からなる二重線が単結合を表し、DがCHを表す、上記[1]に記載の製造方法に関する。
[4]
AB間の実線と破線からなる二重線が単結合を表し、A及びBが、同一又は異なって、CRを表し、R及びRが、同一又は異なって、水素原子又は-CR10(OH)-R11を表し、R10及びR11が、同一又は異なって、水素原子、C1-10アルキル基、C6-10アリール基又はヘテロアリール基を表し、DD間の実線と破線からなる二重線が単結合を表し、DがCHを表す、上記[1]に記載の製造方法に関する。
[5]
一般式(I)が下記一般式(IV):
【化9】
(式中、R~R13、X及びYは前記と同じものを表す)で表される化合物であり、
一般式(III)が下記一般式(V):
【化10】
(式中、R~R15、X及びYは前記と同じものを表す)で表されるモルヒナン誘導体である請求項1に記載の製造方法に関する。
[6]
が、メチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、ベンジル基又はアリル基である上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[7]
が、シクロプロピルメチル基である上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[8]
が、メチル基である上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[9]
が、ヒドロキシ基又は-OR13(R13はヒドロキシ保護基を表す)である上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[10]
が、-OR13であって、R13が、メチル基、ベンジル基又はtert-ブチルジメチルシリル基である上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[11]
が、-OR13であって、R13が、メチル基である上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[12]
Xが、CHである上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[13]
Yが、CHである上記[1]~[12]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[14]
12が、ベンジル基である上記[1]~[13]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[15]
12が、1~3個のフッ素で置換されたC1-10アルキル基若しくは置換されていないC1-10アルキル基から選択される1~4個の置換基で置換されていても良いピリジン 1-オキシドカルボニル、又は1~3個のフッ素で置換されたC1-10アルキル基若しくは置換されていないC1-10アルキル基から選択される1~4個の置換基で置換されていても良いピリジン-2(1H)-オンカルボニルである上記[1]~[13]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[16]
が、-OR13であって、R13が、メチル基又はその他のヒドロキシ保護基、そして、
XがCH又はOを表す、上記[5]に記載の製造方法に関する。
[17]
が、シクロプロピルメチル基又はメチル基、そして、
XがCH又はOを表す、上記[5]に記載の製造方法に関する。
[18]
一般式(I)が
【化11】
で表される化合物であり、
一般式(II)が
【化12】
(式中、R14は、水素原子又はtert-ブチル基を表す)で表される化合物であり、そして、
一般式(III)が
【化13】
(式中、R14は、水素原子又はtert-ブチル基を表す)で表されるモルヒナン誘導体である、上記[1]に記載の製造方法に関する。
[19]
1価の銅化合物が、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、酸化第一銅及び第一銅錯体からなる群から選択される少なくとも一つである上記[1]~[18]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[20]
1価の銅化合物が、ヨウ化第一銅又は酸化第一銅である上記[1]~[18]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[21]
1価の銅化合物を一般式(I)で表される化合物に対して0.01~2.0当量用いる上記[1]~[20]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[22]
1価の銅化合物及び0価の金属銅の存在下で反応させる、上記[1]~[21]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[23]
0価の金属銅を一般式(I)で表される化合物に対して0.01~2.0当量用いる上記[22]に記載の製造方法に関する。
[24]
1価の銅化合物と0価の金属銅との換算モル比(1価の銅:0価の銅)が、1:0.2~1:6である上記[22]又は上記[23]に記載の製造方法に関する。
[25]
0価の金属銅の非存在下、かつ、1価の銅化合物の存在下で反応させる、上記[1]~[21]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[26]
有機溶媒が、非プロトン性極性溶媒である上記[1]~[25]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[27]
非プロトン性極性溶媒が、ピリジン及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも一つである上記[26]に記載の製造方法に関する。
[28]
塩基が、アルカリ金属の塩である上記[1]~[27]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[29]
アルカリ金属の塩が、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩からなる群から選択される少なくとも一つである上記[28]に記載の製造方法に関する。
[30]
反応温度が、50℃~150℃である上記[1]~[29]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
[31]
1価の銅化合物が粉末の酸化第一銅であり、粉末の粒径10~100nmがある、上記[1]~[30]のいずれか一つに記載の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い変換率かつ高純度でモルヒナン誘導体をフェノールエーテル化することができるという利点を有する。よって、本発明の製造方法によって、ジアリールエーテル骨格を有するモルヒナン誘導体を工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本明細書において用いられる用語の意味を記載し、本発明について更に詳細に説明する。なお、以下の用語の説明は本発明を何ら限定するものではない。
【0016】
用語「C1-10アルキル基」とは、1から10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の非環式飽和炭化水素を意味する。アルキル基は、好ましくは、1~6個の炭素原子を、より好ましくは1~4個の炭素原子を含むことが好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基若しくはヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
用語「C2-6アルケニル基」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、2から6個の炭素原子を有する直鎖および分枝の非環式不飽和炭化水素を意味する。アルケニル基としては、例えば、エテニル基、アリル基、1-プロペン-2-イル基、2-プロペン- 1-イル基、1,3-ブタジエン-1-イル基、1,3-ブタジエン-2-イル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数2~4個のC2-4アルケニル基である。
【0018】
用語「C3-6シクロアルキル基」とは、3から6個の炭素原子を有する飽和単環式及び多環式炭化水素基を意味し、多環式炭化水素基は、スピロ環、縮合環及び架橋環を含み得る。単環式シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
多環式炭化水素基におけるスピロ環としては、例えば、スピロ[2.2]ペンチル基、スピロ[2.3]ヘキシル基、スピロ[3.3]ヘプチル基、スピロ[3.5]ノニル基、スピロ[4.5]デカニル基等が挙げられる。
多環式炭化水素基における縮合環としては、例えば、ビシクロ[4.2.0]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル基、デカヒドロナフチル基、オクタヒドロインデニル基等が挙げられる。
多環式炭化水素基における架橋環としては、例えば、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0019】
用語「C3-6シクロアルキルC1-6アルキル基」とは、1から6個の炭素原子を有する前記アルキル基に前記シクロアルキル基が置換したものを意味する。シクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロブチルプロピル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
【0020】
用語「C6-10アリール基」とは、6~10個の炭素原子を有し、少なくとも一部が芳香族環構造である単環式又は多環式の芳香族炭化水素を意味する。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダニル基、インデニル基、アズレニル基等が挙げられる。
【0021】
用語「ヘテロアリール基」とは、単環式又は多環式であり、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでおり、窒素原子および硫黄原子は、種々の酸化状態に場合により酸化されていてもよい、単環式又は多環式の複素環式芳香環を意味する。
単環式ヘテロアリール基としては、例えばフラニル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピリミジル基等の6員環ヘテロアリール基が挙げられる。
多環式のヘテロアリール基としては、例えばキノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾピリジニル基、ピラゾロピリジニル基等の多環性ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0022】
用語「ヘテロアリールアルキル基」とは、前記アルキル基に前記ヘテロアリール基が置換したものを意味する。ヘテロアリールアルキル基としては、例えば、フラニルメチル基、ピリジルメチル基、キノリルメチル基等が挙げられる。
【0023】
用語「アラルキル基」とは、前記アルキルに、フェニル基等のアリール基が置換したものを意味する。アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル等が挙げられる。
【0024】
用語「アシル基」とは、置換基を有するカルボニルであって、アルカノイル基及びアロイル基等を意味する。アルカノイル基には、-C(O)-前記アルキル、-C(O)-前記シクロアルキル、-C(O)-前記アラルキルが含まれ、アロイル基には、-C(O)-前記アリール、-C(O)-前記ヘテロアリールが含まれ、前記アルキルやアリール等は置換基を有していてもよい。アシル基としては、例えば、ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基等のC2-6アルカノイル基;シクロプロパンカルボニル基、シクロブタンカルボニル基、シクロペンタンカルボニル基等のC4―7シクロアルカンカルボニル基;ベンゾイル基、ナフトイル基等のアロイル基;フロイル基、チオフェンカルボニル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等の5~6員環のヘテロアロイル基等が挙げられる。
また、ピリジン 1-オキシドカルボニルとしては、ピリジン 1-オキシド-2-カルボニル、ピリジン 1-オキシド-3-カルボニル、ピリジン 1-オキシド-4-カルボニルがあり、ピリジン-2(1H)-オンカルボニルとしては、ピリジン-2(1H)-オン-3-カルボニル、ピリジン-2(1H)-オン-4-カルボニル、ピリジン-2(1H)-オン-5-カルボニル、ピリジン-2(1H)-オン-6-カルボニルがある。
【0025】
用語「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示す。
【0026】
用語「アミノ保護基」とは、アミノ基を化学反応に対して保護するのに適しており、所望の化学反応が行われた後に除去することができる基を意味する。アミノ保護基としては、メトキシメチル基、ベンジル基、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、tert-ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されず、例えば、Green’s Protective Groups in Organic Synthesis, 5th ed.等に記載の保護基を用いることができる。
【0027】
用語「ヒドロキシ保護基」とは、ヒドロキシ基を化学反応に対して保護するのに適しており、所望の化学反応が行われた後に除去することができる基を意味する。ヒドロキシ保護基としては、メチル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基等の置換基を有してもよいアルキル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、トリチル基等の置換基を有していてもよいアラルキル基、アセチル基等のアルカノイル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等の置換基を有するシリル基等が挙げられるが、これらに限定されず、例えば、Green’s Protective Groups in Organic Synthesis, 5th ed.等に記載の保護基を用いることができる。
【0028】
用語「置換基を有していてもよい」とは、無置換であるか、又は任意の置換基で置換されていることを意味する。置換基の個数、置換位置は特に限定されず、2個以上の置換基が存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
用語「任意の置換基」とは、水素原子以外の基であればいずれでもよく、典型的な置換基は、限定されないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコシキ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、アルキルスルフィニル基、スルホンアミド基、アルカンスルホンアミド基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、アミノカルボニル基、アミノスルホニル基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボニルアミノ基、アシルオキシ基、オキソ基、チオオキソ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アラルキルチオ基等が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法は、一般式(I)で表されるモルヒナン誘導体と一般式(II)で表されるハロベンゼン誘導体を用いて、一般式(III)で表されるモルヒナンのジアリールエーテル誘導体を製造することができる。
【0031】
【化14】
【0032】
一般式(I)で表されるモルヒナン誘導体は、特許文献1に記載の方法、又はそれらに準ずる方法で製造可能である。また、市販のもの(例えば、テバイノンやケトルファノール)を公知の方法で調整して用いることもできる。
【0033】
一般式(II)で表されるハロベンゼン誘導体は、市販のものを用いることができる他、当業者が周知の方法で製造することもできる。
【0034】
反応に加える「塩基」としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、あるいは炭酸水素塩;リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、リン酸水素塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;またはフッ化カリウム、フッ化セシウム等のハロゲン化金属等を用いることができる。好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウムあるいはリン酸カリウムであり、より好ましくはリン酸カリウムである。
【0035】
本発明における銅触媒としては、特に限定されるものではなく、ウルマン反応に使用されている公知のものが使用できる。
「1価の銅化合物」としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化銅、酸化第一銅や第一銅錯体などを挙げることができる。配位子が反応後の不純物となることなく精製が容易になることから、CuI(ヨウ化銅)あるいはCuO(酸化銅(I))が好ましい。粒子径が10~100nm、30~70nm、特に50nmであるいわゆるナノパーティクルのCuOが好ましい。
第一銅錯体としては、ピリジン-2-カルボン酸、ジピバロイルメタン、N,N-ジメチルグリシン、1,10-フェナントロリン、プロリン、2-チオフェンカルボン酸、2,2’-ビピリジル、2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル、3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン、N,N-ジメチルエチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0036】
「0価の銅」としては、金属銅、銅錯体を挙げることができる。金属銅の形状としては、粉体状、メッシュ状、棒状、板状、釜状などが挙げられるが、比表面積が相対的に大きくなる粉体状のものが好ましい。粉体状のものは一般的に市販されているものをそのまま用いることができる。
【0037】
1価の銅化合物は、一般式(I)で表される化合物に対して、例えば、0.01~2.0当量、0.02~2.0当量、0.05~1.5当量、0.1~1.0当量、0.15~1.0当量、0.2~1.0当量、0.25~1.0当量、0.3~1.0当量、0.5~1.0当量で用いることができる。
【0038】
0価の金属銅は、一般式(I)で表される化合物に対して、例えば、0.01~2.0当量、0.1~1.5当量、0.2~1.0当量、0.45~1.0当量、0.5~1.0当量、0.6~1.0当量、0.85~1.0当量で用いることができる。
【0039】
1価の銅化合物と0価の金属銅とを同時に使用する場合、両者の換算モル比(1価の銅:0価の銅)が、例えば、1:0.2、1:0.45、1:0.5、1:1、1:1.33、1:2、1:4、1:5.67、1:6、より好ましくは1:4で用いることができる。
【0040】
反応に用いる溶媒は、有機溶媒であれば特に制限はないが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルアセタミド、ジメチルアタセミド(DMAC)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、エチルメチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、スルホラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ニトロベンゼンまたはピリジン等が挙げられる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を組合せて用いることもできる。本発明では、DMSO、ピリジンが好ましく、より好ましくはピリジンである。
【0041】
反応温度は、原料化合物、反応試薬又は使用される溶媒の種類によって異なるが、例えば、室温から溶媒の沸点の範囲で行うことができるが、例えば、20℃~200℃、25℃~200℃、50℃~180℃、50℃~150℃、80℃~150℃、100℃~130℃、より好ましくは110℃~120℃で行われる。
【実施例
【0042】
以下に参考例及び実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにするが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例化合物および参考例化合物の命名はケンブリッジソフト社製 ChemDraw ver.14又はver.18を用いて描画した構造式を同ソフトウェア搭載の命名アルゴリズムによって英語名として変換した後に日本語翻訳した。
【0043】
生成物の同定は、HPLC分析により標品の溶出時間との一致で判断した。また、反応の変換率、純度は残存原料及び生成物のピーク面積から算出した。
<HPLC条件>
・カラム:ZORBAX Bonus-RP(Agilent)、4.6×150mm、粒子径3.5μm
・カラム温度:35℃
・検出:204nm(DAD)
・流速:1.0mL/分
・移動相:A液=0.05%TFA水溶液、B液=0.05%TFAアセトニトリル
・グラジエント条件:
0分~12分 A液:B液=95:5 ~ A液:B液=10:90(グラジエーション)
12分~16分 A液:B液=10:90(継続)
・保持時間:
(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール 約5.4分
(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-11-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール 7.2~7.3分
1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-11-フェノキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール 約6.3分
【0044】
(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-11-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドールの合成
【化15】
【0045】
実施例1
(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (286g,1当量)をピリジン(4.3L)に溶解し、窒素で10分間バブリングした。リン酸三カリウム(259g,2当量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、銅粉末(39.0g,1当量)、酸化第一銅(平均粒子径50 nm,22.0g,0.25等量)および4-tert-ブチルブロモベンゼン(650g,5当量)を95-105℃で攪拌しながら加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率99.35%、純度96.14%であった。
反応混合物を室温まで冷却後、シリカゲルパッドで濾過し不溶物を除去した。濾液を濃縮後、シリカゲルパットをメチルtert-ブチルエーテルで2回(4.3L、430mL)洗浄し、有機層に加えた。その後合わせた有機層を8.3%-9.3%アンモニア水で3回(2.86L×3)洗浄した。水層を合わせてメチルtert-ブチルエーテルにて1回(1.43L)抽出した。有機層を合わせて水で3回(2.86L×3)洗浄した。有機層に水(4.3L)を加え4規定塩酸を加えて水層のpHを2-3とし、有機層を分離した。
水層をメチルtert-ブチルエーテルで2回(1.43L×2)洗浄し、残留メチルtert-ブチルエーテルを除く目的で濃縮した。
水層に25-28%アンモニア水を加え、pH9とした後に室温で30分攪拌し、析出物をろ取し、水(858mL)で洗浄した。得られた固体を乾燥することで表題化合物(315g,81.63%収率,純度92.90%)を得た。
【0046】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.10-7.35(m,7H),6.97(d,1H,J=8Hz),6.77(d,1H,J=8Hz),6.67(d,2H,J=8Hz),3.70(d,1H,J=13Hz),3.68(s,3H),3.55(d,1H,J=13Hz),2.90-3.20(m,6H),2.60-2.70(m,1H),2.46(dd,1H,J=4,12Hz),2.29(d,2H,J=6Hz),1.99(dt,1H,J=3,13Hz),1.75(dt,1H,J=5,13Hz),1.50-1.65(m,3H),1.30(s,9H),1.20-1.35(m,1H),1.10-1.20(m,1H),1.00-1.10(m,2H),0.70-0.85(m,2H),0.40-0.50(m,2H),0.00-0.15(m,2H).
【0047】
実施例2
反応装置にピリジン(4mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (0.4g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(0.36g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、酸化第一銅(0.12g,1等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(0.91g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率100%、純度76.99%であった。
【0048】
実施例3
反応装置にピリジン(10mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (1.0g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(0.90g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、酸化第一銅(61.3mg,0.2等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(2.27g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率92.8%、純度76.71%であった。
【0049】
実施例4
反応装置にピリジン(20mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (2.0g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(1.80g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、銅粉末(54.6mg,0.2等量)、酸化第一銅(92mg,0.15等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(4.54g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率99.18%、純度83.33%であった。
【0050】
実施例5
反応装置にピリジン(20mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (2.0g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(1.80g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、銅粉末(54.6mg,0.2等量)、ヨウ化銅(0.81g,1等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(4.54g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率92.4%、純度84.66%であった。反応装置に銅粉末(68mg,0.25等量)を加え、その後110-120℃で4時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率99.1%、純度88.78%であった。
【0051】
実施例6
反応装置にピリジン(50mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (5.0g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(4.51g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、銅粉末(0.41g,0.6等量)、酸化第一銅(0.23g,0.15等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(11.33g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率90.20%、純度85.54%であった。反応装置に銅粉末(0.17g,0.25等量)を加え、その後110-120℃で3時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率93.58%、純度86.93%であった。反応装置に銅粉末(0.17g,0.25等量)を加え、その後110-120℃で2時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率97.88%、純度91.27%であった。
反応混合物を室温まで冷却後、シリカゲルパッドで濾過し不溶物を除去した。シリカゲルパットをメチルtert-ブチルエーテル(10mL)で洗浄し、有機層に加えた。その後合わせた有機層を5-10mLまで濃縮しメチルtert-ブチルエーテル(75mL)を加え暗茶色の懸濁液とした。その後、有機層を13%-14%アンモニア水で3回(50mL×3)洗浄した。水層を合わせてメチルtert-ブチルエーテル(25mL)にて抽出した。有機層を合わせて水(50mL)で洗浄した。有機層に水(75mL)を加えた後、4規定塩酸を加えて水層のpHを3-4とし、有機層を分離した。
水層をメチルtert-ブチルエーテル(25mL)で洗浄し、残留メチルtert-ブチルエーテルを除く目的で濃縮した。水層を50-55度まで加熱した後、25-28%アンモニア水を加え、pHを8-9とした後に室温に戻し、析出物をろ取した後に水(10mL)で洗浄し、乾燥することで表題化合物(5.2g,81.98%収率,純度93.95%)の収率で得た。
【0052】
実施例7
反応装置にピリジン(4mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (0.4g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(0.36g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、2-チオフェンカルボン酸(11mg,0.1等量)、ヨウ化銅(16mg,0.1等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(0.91mg,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率89.8%、純度75.8%であった。
【0053】
実施例8
反応装置にDMSO(2mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (0.2g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(0.18g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、2-チオフェンカルボン酸銅(I)(8.1mg,0.1等量)及び4-tert-ブチルブロモベンゼン(0.45g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率95.92%、純度45.60%であった。
【0054】
(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-11-フェノキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドールの合成
【化16】
【0055】
実施例9
反応装置にピリジン(20mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (2.0g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。カリウムtert-ブトキシド(0.48g,1等量)及びリン酸三カリウム(0.9g,1等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、銅粉末(54.6mg,0.2等量)、酸化第一銅(92mg,0.15等量)及びブロモベンゼン(3.33g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率99.6%、純度95.61%であった。
【0056】
実施例10
反応装置にピリジン(50mL)を加え窒素で10分間バブリングした。(1S,3aR,5aS,6R,11bS,11cS)-3-ベンジル-14-(シクロプロピルメチル)-10-メトキシ-2,3,3a,4,5,6,7,11c-オクタヒドロ-1H-6,11b-(エピミノエタノ)-1,5a-メタノナフト[1,2-e]インドール-11-オール (5.0g,1当量)を反応装置に加え溶解させた。リン酸三カリウム(4.51g,2等量)を加え、窒素で3回置換した後に15分間バブリングした。95-105℃にて1時間攪拌した後、銅粉末(0.68g,1等量)、酸化第一銅(0.38g,0.25等量)及びブロモベンゼン(8.35g,5当量)を95-105℃で加え、その後110-120℃で16時間攪拌した。反応液のHPLCを測定したところ変換率99.4%、純度92.88%であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によって、ジアリールエーテル骨格を有するモルヒナン誘導体の工業的な製造方法が提供される。