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特許7583822自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステムおよび方法並びに対応する車両および記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステムおよび方法並びに対応する車両および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/12 20120101AFI20241107BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241107BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W50/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547706
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2020085979
(87)【国際公開番号】W WO2021155982
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102020103200.5
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ラウバー・フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】プラッテン・フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】クルピアース・クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ハニヒ・グンター
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111392(JP,A)
【文献】特開2019-089400(JP,A)
【文献】特開2017-207859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0029501(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/12
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転のための運転支援システム(300)を備えた車両(10)のためのシステム(100)であって、
運転席(210)の電動式の座席調整のための調整モジュール(110)と、
車両(10)の自動運転モード中に、運転席(210)の座席調整を、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲内に維持するように構成されている制御モジュール(120)と、
を有し、
許容される座席調整の範囲は、前後位置、高さ位置およびリクライニング設定位置を含むグループまたはこれらからなるグループの中から選択された座席調整の二つ以上の成分によって与えられ、各成分に対し、可能な/許容された調整のための一つの部分範囲が与えられ、当該部分範囲は、相互に依存して定められ、
制御モジュール(120)は、車両(10)の自動運転モード中、座席調整が閾値に達するかまたは閾値に近づいたときに運転席(210)の座席調整を前記範囲に維持するように構成され、
前記閾値は、運転者を基準に個別に定められた相対的な閾値および/または変更可能な閾値である
システム。
【請求項2】
制御モジュール(120)は、運転席(210)の座席調整が範囲の限界に近づいたおよび/または限界に達したときに、聴覚的および/または視覚的な警告を出力するように構成されている請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
制御モジュール(120)は、車両(10)の自動運転モード中に前記範囲を超える運転席(210)の座席調整が不可能であるように調整モジュール(110)を制御するように構成されている請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲は、ステアリングホイール(220)および/またはペダル(230)に運転者が達することができるように定められている請求項1から3のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項5】
調整モジュール(110)は、運転席(210)の電動式の座席調整を行なうために、使用者によって操作可能である請求項1から4のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のシステム(100)を有する車両(10)、特に自動車。
【請求項7】
自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法(400)であって、
車両の自動運転モード中に、運転席(210)の電動式の座席調整のための調整モジュール(110)により、運転席の電動式の座席調整を実行(410)するとき、
制御モジュール(120)が、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲に座席調整を維持(420)するように調整モジュール(110)を制御する
方法であって、
許容される座席調整の範囲は、前後位置、高さ位置およびリクライニング設定位置を含むグループまたはこれらからなるグループの中から選択された座席調整の二つ以上の成分によって与えられ、各成分に対し、可能な/許容された調整のための一つの部分範囲が与えられ、当該部分範囲は、相互に依存して定められ、
制御モジュール(120)は、車両(10)の自動運転モード中、座席調整が閾値に達するかまたは閾値に近づいたときに運転席(210)の座席調整を前記範囲に維持するように構成され、
前記閾値は、運転者を基準に個別に定められた相対的な閾値および/または変更可能な閾値である方法。
【請求項8】
一つまたは複数のプロセッサ上で実行され、それにより請求項7に記載の方法(400)を実行するように構成されたソフトウェア・プログラムを含む記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステム、そのようなシステムを備えた車両、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法およびその方法を実行するための記憶媒体に関する。特に、本開示は、自動運転のための運転支援システムの安全性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転のための運転支援システムがますます重要になっている。自動運転は、さまざまな自動化レベルで行なわれる。例示的な自動化レベルは、支援運転、部分自動運転、高度自動運転ないし完全自動運転である。これらの自動化レベルは、連邦交通制度協会(Bundesanstalt fuer Strassenwesen)(BASt)によって定義がなされた(BASt公報「Forschung kompakt(リサーチコンパクト)」,2012年11月刊行を参照)。例えば、レベル4の車両は、都市モードでは完全に自律的に運行する。
【0003】
高度自動運転の間、運転者は、走行中の出来事に注意を払う必要はなく、理屈の上ではどんな他所事にも専念できる。ただし、運転者は、どんなときでも数秒以内に車両を再び安全に引き継ぐことができる体勢になければならないという制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、運転者がいつでも自分の車両の制御を引き継げることを確実にできる、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステム、そのようなシステムを備えた車両、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法および方法を実行するための記憶媒体を提供することを課題とする。特に、本開示は、自動運転のための運転支援システムの安全性を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施態様は、下位請求項に挙げられている。
【0006】
本開示の独立的な態様により、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステムが挙げられる。このシステムは、運転席の電動式の座席調整のための調整モジュールと、車両の自動運転モード中に、運転席の座席調整を、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲内に維持するように構成されている制御モジュールと、を有している。
【0007】
本発明により、システムは、運転席の座席調整が、運転者によるコントロールの引き継ぎを可能にする或いは難しくしないかせめて邪魔しない安全な範囲に留まることを保証する。一例では、システムは、運転者が運転席を調整して安全な範囲の限界に達した場合には、運転者に警告を発することができる。補足的または代替的に、システムは、安全な範囲を超えて運転席を動かすことを運転者にできなくするために、(可能な)座席調整を安全な範囲に制限することができる。
【0008】
これにより、運転者が、例えば、高度自動運転中に自分の座席を移動させて、車両のステアリングホイールやペダルに運転者がアクセスするにはもはや最適とは言えない位置にすることを防止することができる。こうして、引き継ぎ可能性が保たれ続ける。さらに、高度自動運転中にシート調整の単純な制止が行なわれないので、安全上のリスクを回避することができる。高度自動運転の起動の(少し)前または起動中に座席を移動する場合であれば、運転者は、引き継ぎに備えるのに最も適した位置に移動する手段を単純な制止で禁止されるからである。
【0009】
好ましくは、運転席以外の例えば助手席などの全ての席は、例えば手動運転(またはレベル1ないし2のシステム)と同様に制限なく機能する。運転者の引き継ぎ可能性を損なうのには該当しない全ての運転席の機能も制限なく機能し得る。
【0010】
運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲は、ステアリングホイールとペダルに運転者が達する(アクセスする)(ステアリングホイールに運転者の手が届く及びペダルに運転者の足が届く)ことができるように定められていることが好ましい。
【0011】
特に、(安全な)範囲は、一つ又は複数の態様を考慮して適切に定めることができる。その態様には、例えば、車両タイプ、座席タイプ、座席とテアリングホイールの間の車両固有の相対位置および座席とペダルの間の車両固有の相対位置が含まれるが、ただしこれらに限定されることはない。この範囲は例えば、経験的な観察および/または経験を考慮して定めることもできる。
【0012】
許容される座席調整の範囲は、座席調整の少なくとも一つの成分について定義されていてもよい。座席調整の少なくとも一つの成分は、前後位置、高さ位置およびリクライニング設定位置(傾き)を含むグループまたはこれらからなるグループの中から選択されているのでもよい。
【0013】
前後位置はここで、車両の走行方向に沿っておよび/または運転席とステアリングホイールの間の距離に基づいて定義されている。高さ位置は、垂直方向に定義されている。リクライニング設定位置は、垂直に対する(或いは水平に対する)傾きとして定義されている。“水平”という用語は、“垂直”とは異なるものとして捉えられるべきである。垂直方向は、略重力に平行としてよい。
【0014】
第一の例では、範囲は、運転席の前後位置など、専ら一つの成分によってのみ与えられる。言い換えれば、範囲は、運転席の特定の前後位置が範囲の限界を示すように定義することができる。特定の前後位置は、車両操縦を安全に引き継ぐことができる運転者とステアリングホイール(および/またはペダル)の間の最大距離に対応するものとすることができる。
【0015】
第二の例では、範囲は、前後位置および/または高さ位置および/またはリクライニング設定位置など、二つ以上の成分によって与えられる。言い換えれば、各成分に対し、可能な/許容された調整のための一つの部分範囲が与えられ、それらが一緒になって、許容された座席調整の範囲を形成するのでもよい。
【0016】
これらの部分範囲は、独立に定められてもよいし、相互に依存して定められてもよい。部分範囲が依存している一例では、前後位置の部分範囲は、リクライニング設定位置が傾いていればいるほど小さくなる。同様に、前後位置の部分範囲は、リクライニング設定位置が真っ直ぐであればあるほど大きくなる。これにより、運転者がいつでもステアリングホイールを自分の手で握れるように保証できる。
【0017】
好ましくは、制御モジュールは、運転席の座席調整が範囲の(外側の)限界に近づいたおよび/または(外側の)限界に達したときに、聴覚的および/または視覚的な警告を出力するように構成されている。この警告では、運転者は例えば、文章および説明のグラフィックを通じて、ステアリングホイールとペダルへの到達可能性の例に即して引き継ぎ可能性の考え方について教示される。
【0018】
車両は、警告を発するために、少なくとも一つの視覚的な出力ユニットおよび/または少なくとも一つのスピーカ・ユニットを有することができる。視覚的な出力ユニットは例えば、例えばインフォテインメントシステムのディスプレイなどの表示装置とすることができる。通常、ディスプレイは、車両のダッシュボード内に取り付けられているかダッシュボード上に取り付けられている。ディスプレイは例えば、ヘッドユニットであってもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイはLCDディスプレイ、プラズマディスプレイ、またはOLEDディスプレイである。
【0019】
補足的または代替的に、制御モジュールは、車両の自動運転モード中に上記範囲を超える運転席の座席調整が不可能であるように調整モジュールを制御するように構成されている。言い換えれば、安全な範囲を超えて運転席を動かすことが運転者にできないようにするために、(可能な)座席調整を安全な範囲に制限することができる。警告は、安全な範囲を超えて座席の位置を動かさないように運転者に指示するだけである(疑わしければ運転者はそれでもなおそれを実行できる)一方、制御モジュールは、座席調整を積極的に制限することで、安全な範囲を超えて座席を動かす手段を運転者に禁ずることができる。
【0020】
好ましくは、制御モジュールは、車両の自動運転モード中、座席調整が閾値に達するかまたは閾値に近づいたときに運転席の座席調整を上記範囲に維持するように構成されている。例えば、制御モジュールは、車両の自動運転モード中、座席調整が(例えば水平方向、すなわち前後位置に対応する)少なくとも一つの空間方向において設定された閾値に達するかまたは設定された閾値に近づいたときに運転席の座席調整を上記範囲に維持するように構成されていてもよい。設定された閾値は例えば、運転席とステアリングホイールおよび/またはペダルの間の(前後方向の)許容された最大限の距離を示すものであってもよい。
【0021】
例えば、引き継ぎ可能性を損なうことに適う全ての機能、すなわち、運転者の足とペダルの間の隔たりまたは運転者の手とステアリングホイールの間の隔たりに理論上変更をもたらし得る全ての機能は、閾値に達した際(閾値は0でもよい。)、警告および/または運転者による座席調整の手段の積極的な制限をもたらし得る。
【0022】
閾値は、相対的な閾値および/または変更可能な閾値とすることができる。特に、閾値は、運転者を基準に定めることができる。例えば、運転者は、室内カメラなどの室内センサ類により検出することができる。検出されたデータに基づいて、例えば、運転者の大きさ、腕の長さ、脚の長さなどを割り出すことができ、閾値は、それに基づいて相対的および/または変更可能に、つまり、運転者に対して個別に定めることができる。
【0023】
或いは、閾値は固定的な閾値であってもよい。言い換えれば、閾値は、運転者の身体に無関係であってもよい。例えば、運転席の前後位置(x位置)の位置変更が、ステアリングホイールまでの運転席の距離に関する特定の値を上回ると、システムが起動し、運転者に警告を発するおよび/または運転席の位置変更の可能性を制限することができる。
【0024】
好ましくは、調整モジュールは、運転席の電動式の座席調整を行なうために、使用者によって操作可能である。例えば、調整モジュールは、少なくとも一つの操作要素を(例えば、座席そのものに、ドアの中に、或いはセンターコンソールの中に)有することができ、その操作を通じて、座席を所望の方向に動かす少なくとも一つのモータを作動させる。
【0025】
本開示のさらに他の態様により、車両、特に自動車が挙げられる。車両は、本開示の実施形態によるシステムを有している。
【0026】
“車両”という用語には、人や物などを輸送するために使用される乗用車、トラック、バス、トレーラーハウス、オートバイなどが含まれる。特に、この用語には、旅客輸送用の自動車が含まれる。
【0027】
車両は、自動運転のための運転支援システムを有している。本書面の文脈において、“自動運転”という用語は、進行方向または横方向の自動操縦による走行、または進行方向および横方向の自動操縦による自律走行を意味する。自動運転は、例えば、高速道路を比較的長い時間走行したり、駐車や操車の一環として限られた時間運転したりすることであってもよい。“自動運転”という用語には、あらゆる自動化レベルでの自動運転が含まれる。自動化レベルの例は、支援運転、部分自動運転、高度自動運転ないし完全自動運転である。これらの自動化レベルは、連邦交通制度協会(Bundesanstalt fuer Strassenwesen)(BASt)によって定義がなされた(BASt公報「Forschung kompakt(リサーチコンパクト)」,20212年11月刊行を参照)。
【0028】
支援運転では、運転者が進行方向または横方向の操縦を継続的に実行しながら、システムが一定の制限内で他の機能を担う。部分自動運転(TAF)では、システムが一定期間および/または特殊な状況のもとで進行方向および横方向の操縦を担うが、支援運転時のように運転者がシステムを常に監視していなければならない。高度自動運転(HAF)では、運転者がシステムを常に監視する必要なしにシステムが一定期間進行方向および横方向の操縦を担うが、運転者は、一定時間内に車両の操縦を引き継ぐことができなければならない。完全自動運転(VAF)では、或る特化した利用例についてシステムがいかなる状況でも自動で運転を管理し、この利用例についてはもはや運転者を必要としない。
【0029】
上述した四つの自動化レベルは、SAE J3016規格(SAE-Society of Automotive Engineering(自動車技術者協会))のSAE-レベル1-4に対応する。例えば、高度自動運転(HAF)は、SAE J3016規格のレベル3に対応する。また、SAE J3016には、BAStの定義に含まれていない最高の自動化レベルとしてSAEレベル5が設けられている。SAEレベル5は無人運転に対応し、その場合には、システムは、全走行期間中、人間の運転者であるかのようにあらゆる状況に自動で対処することができ、基本的にもはや運転者を必要としない。
【0030】
本開示の実施形態は、SAE-レベル1-3、特にSAE-レベル3に関する。
【0031】
本開示のさらに他の態様により、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法が挙げられる。この方法は、車両の自動運転モード中に、運転席の電動式の座席調整を実行すること、および、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲に座席調整を維持することを有している。
【0032】
この方法は、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のために、本書面で述べたシステムの態様を実装することができる。
【0033】
さらに他の独立した態様により、ソフトウェア(SW)プログラムが挙げられる。このSWプログラムは、一つまたは複数のプロセッサ上で実行されることにより本書面で述べられている自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法を実行するように構成することができる。
【0034】
さらに他の独立した態様により、記憶媒体が挙げられる。この記憶媒体は、一つまたは複数のプロセッサ上で実行されることにより本書面で述べられている自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法を実施するように構成されているSW(ソフトウェア)プログラムを含むことができる。
【0035】
本開示の実施例は、図に表されており、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示の実施形態による自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステムを概略的に示す図である。
図2】本開示の実施形態による運転席の調整を概略的に示す図である。
図3】本開示の実施形態による自動運転のための運転支援システムを備えた車両を示す図である。
図4】本開示の実施形態による自動運転のための運転支援システムを備えた車両のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、特に明記されていない限り、同じ効果を奏する同一の部材に対して同じ符号を用いる。
【0038】
図1は、本開示の実施形態による自動運転のための運転支援システムを備えた車両のためのシステム100を概略的に示している。
【0039】
システム100は、運転席の電動式の座席調整のための調整モジュール110と、車両の自動運転モード中に、運転席の座席調整を、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲に制限するまたは一定範囲に維持するように構成されている制御モジュール120とを有している。
【0040】
調整モジュール110および/または制御モジュール120は、一つの共通のソフトウェアモジュールおよび/またはハードウェアモジュールに実装することができる。これに代わるものとして、調整モジュール110および/または制御モジュール120は、それぞれ別々のソフトウェアモジュールおよび/またはハードウェアモジュールに実装されていてもよい。
【0041】
制御モジュール120は、運転席の座席調整が範囲の(外側の)限界に近づいたおよび/または(外側の)限界に達したときに、聴覚的および/または視覚的な警告を出力するように構成することができる。これに関して、システム100は、少なくとも一つの視覚的な出力ユニット130および/または少なくとも一つのスピーカ・ユニット140を有し、警告を発することができる。視覚的な出力ユニット140は例えば、車両のインフォテインメントシステムのディスプレイなどを例とする表示装置とすることができる。
【0042】
補足的または代替的に、制御モジュール120は、車両操縦の自動運転モード中に、安全な範囲を超える運転席の座席調整が不可能である若しくは阻止するように調整モジュール110を制御するように構成されている。言い換えれば、安全な範囲を超えて運転席の位置を変更することが運転者にできないようにするために、(可能な)座席調整を安全な範囲に制限することができる。
【0043】
図2は、本開示の実施形態による運転席210の調整を概略的に示している。
【0044】
調整モジュール110は、運転席210の電動式の座席調整を行なうために、使用者によって操作可能である。例えば、調整モジュール110は、少なくとも一つの操作要素を(例えば、座席そのものに、ドアの中に、或いはセンターコンソールの中に)有することができ、その操作を通じて、運転席210を所望の方向に動かす少なくとも一つのモータを作動させる。
【0045】
座席調整には、少なくとも一つの(空間)成分が含まれ得る。座席調整の少なくとも一つの成分は、前後位置1、高さ位置2およびリクライニング設定位置3(傾き)を含むグループまたはこれらからなるグループの中から選択することができる。
【0046】
前後位置1は、運転席210とステアリングホイール220の間の距離および/または運転席210とペダル230の間の距離に基づいて定義されていてもよい。距離を定義するための基準点は、任意に若しくは適切に定めることができる。つまり、図2の基準点は単なる一例に過ぎない。
【0047】
高さ位置2は、垂直方向に定義されている。リクライニング設定位置3は、垂直(或いは水平)に対する傾きとして定義されている。
【0048】
運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した座席調整の範囲は、ステアリングホイール220とペダル230に運転者が達することができるように定められている。
【0049】
一例では、範囲は、運転席210の前後位置1など、専ら一つの成分によってのみ与えられている。言い換えれば、範囲は、運転席の特定の前後位置210が範囲の限界を示すように定義されていてよい。特定の前後位置は、車両操縦を安全に引き継ぐことができる運転席210とステアリングホイール220(および/またはペダル230)の間の最大距離(例えば、距離d)に対応するものとすることができる。
【0050】
さらに他の例では、範囲は、前後位置1およびリクライニング設定位置3など、二つ以上の成分によって与えられている。言い換えれば、各成分に対し、可能な/許容された調整のための一つの部分範囲が与えられ、それらが一緒になって、許容された座席調整の範囲を形成するのでもよい。
【0051】
これらの部分範囲は、独立に定められてもよいし、相互に依存して定められてもよい。部分範囲が相関している一例では、前後位置1の部分範囲は、リクライニング設定位置3が傾いていればいるほど小さくなる。同様に、前後位置1の部分範囲は、リクライニング設定位置3が真っ直ぐであればあるほど大きくなる。これにより、運転者がいつでもステアリングホイール220を自分の手で握れるように保証できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、制御モジュールは、車両の自動運転モード中、座席調整が閾値に達するかまたは閾値に近づいたときに運転席210の座席調整を上記範囲に維持するように構成されている,例えば、制御モジュールは、車両の自動運転モード中、座席調整が(例えば水平方向、すなわち前後位置2に対応する)少なくとも一つの空間方向おいて設定された閾値に達するかまたは閾値に近づいたときに運転席の座席調整を上記範囲に維持するように構成されていてもよい。設定された閾値は例えば、運転席210とステアリングホイール220の間の(前後方向の)許容された最大限の距離(例えば、距離d)および/または運転席210とペダル230の間の許容された最大限の距離(例えば、距離d´)を示すものであってもよい。
【0053】
閾値は、相対的な閾値および/または変更可能な閾値とすることができる。特に、閾値は、運転者を基準に個別に定めることができる。例えば、運転者は、室内カメラなどの室内センサ類により検出することができる。検出されたデータに基づいて、例えば、運転者の大きさ、腕の長さ、脚の長さなどを割り出すことができ、閾値は、それに基づいて相対的および/または変更可能に、つまり、運転者に対して個別に定めることができる。
【0054】
或いは、閾値は固定的な閾値であってもよい。言い換えれば、閾値は、運転者の身体に無関係であってもよい。例えば、運転席の前後位置210(例えば、x位置)の位置変更が、ステアリングホイール220までの運転席210の距離に関する特定の値を上回ると、システムが起動し、運転者に警告を発するおよび/または運転席210の位置変更の可能性を制限することができる。
【0055】
図3は、本開示の実施形態による自動運転のための運転支援システム300を備えた車両10を概略的に示している。
【0056】
車両10は、自動運転のための運転支援システム300を有している。自動運転では、車両10の進行方向および/または横方向の操縦が自動的に行われる。こうして、運転支援システム300は、車両操縦を引き受ける。この目的のために、運転支援システム300は、不図示の中間ユニットを介して駆動部20、トランスミッション22、油圧式サービスブレーキ24およびステアリング26を制御する。
【0057】
自動運転を計画し実行するために、車両周辺を監視する周辺センサ類の周辺データが運転支援システム300により受信される。特に、車両は、車両周辺を示す周辺データを記録するように設けられている少なくとも一つの周辺センサ12を有することができる。少なくとも一つの周辺センサ12には、例えば、LiDARシステム、一つ又は複数のレーダーシステムおよび/または一つ又は複数のカメラが含まれ得る。
【0058】
図4は、本開示の実施形態による、自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法400のフローチャートを概略的に示している。この方法400は、一つ又は複数のプロセッサ(例えば、CPU)により実行可能な然るべきソフトウェアにより実装することができる。
【0059】
方法400は、車両の自動運転モード中に、運転席の電動式の座席調整を実行することをブロック410に有し、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲に座席調整を維持することをブロック420に有している。
【0060】
本発明により、システムは、運転席の座席調整が、運転者によるコントロールの引き継ぎを可能にする或いは難しくしないかせめて邪魔しない安全な範囲に留まることを保証する。これにより、運転者が、例えば、高度自動運転中に自分の座席を移動させて、車両のステアリングホイールやペダルに運転者がアクセスするにはもはや最適とは言えない位置にすることを防止することができる。
【0061】
こうして、引き継ぎ可能性が保たれ続ける。さらに、高度自動運転中にシート調整の単純な制止が行なわれないので、安全上のリスクを回避することができる。高度自動運転の起動の(少し)前または起動中に座席を移動する場合であれば、運転者は、引き継ぎに備えるのに最も適した位置に移動する手段を単純な制止で禁止もされるからである。
【0062】
本発明を好ましい例示的な実施例によってより詳細に例示および説明してきたが、本発明は、開示された実施例によって限定されず、当業者は、本発明の保護範囲から逸脱することなくそこから他の変形例を導き出すことができる。従って、可能な変形例が多数存在することは明らかである。同様に、例として挙げられた実施形態は、実際には単なる例であり、いかなる態様であれ、本発明の保護範囲、用途の可能性または構成を限定するものとして捉えられるべきでないことも明らかである。むしろ、前述の明細書の記載および図面の説明により、当業者は、例示的な実施形態を具体的に実施することができ、開示された発明の思想に知見を得た当業者であれば、例えば、請求項並びにその法的同等物(明細書におけるさらなる説明など)により規定される保護範囲を離れることなく、例示的な実施形態において挙げられた個々の要素の機能や配置に関して、多様な変更を行なうことができる。
1.
自動運転のための運転支援システム(300)を備えた車両(10)のためのシステム(100)であって、
運転席(210)の電動式の座席調整のための調整モジュール(110)と、
車両(10)の自動運転モード中に、運転席(210)の座席調整を、運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲内に維持するように構成されている制御モジュール(120)と、
を有したシステム。
2.
制御モジュール(120)は、運転席(210)の座席調整が範囲の限界に近づいたおよび/または限界に達したときに、聴覚的および/または視覚的な警告を出力するように構成されている上記1に記載のシステム(100)。
3.
制御モジュール(120)は、車両(10)の自動運転モード中に前記範囲を超える運転席(210)の座席調整が不可能であるように調整モジュール(110)を制御するように構成されている上記1または2に記載のシステム(100)。
4.
運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲は、ステアリングホイール(220)および/またはペダル(230)に運転者が達することができるように定められている上記1から3のいずれかに記載のシステム(100)。
5.
制御モジュール(120)は、車両(10)の自動運転モード中、座席調整が閾値に達するかまたは閾値に近づいたときに運転席(210)の座席調整を前記範囲に維持するように構成されている上記1から4のいずれかに記載のシステム(100)。
6.
前記閾値は、相対的な閾値または固定的な閾値である上記5に記載のシステム(100)。
7.
調整モジュール(110)は、運転席(210)の電動式の座席調整を行なうために、使用者によって操作可能である上記1から6のいずれかに記載のシステム(100)。
8.
上記1から7のいずれかに記載のシステム(100)を有する車両(10)、特に自動車。
9.
自動運転のための運転支援システムを備えた車両のための方法(400)であって、
車両の自動運転モード中に、運転席の電動式の座席調整を実行(410)すること、および
運転者による車両操縦の引き継ぎを可能にするのに適した範囲に座席調整を維持(420)すること
を有した方法。
10.
一つまたは複数のプロセッサ上で実行され、それにより上記9に記載の方法(400)を実行するように構成されたソフトウェア・プログラムを含む記憶媒体。
図1
図2
図3
図4