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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】運転支援方法及び車載運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20241107BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241107BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/04
G08G1/16 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022567412
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021061062
(87)【国際公開番号】W WO2021224077
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】102020112036.2
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】ブルーク、ウェダホ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ハイツマン
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010344(WO,A1)
【文献】特開2015-075889(JP,A)
【文献】特開2010-036862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/08
B60W 40/04
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象自動車車両(O)上の車載運転支援システムにおいて実施される、前記対象自動車車両(O)に対する運転支援方法(100)であって、
-前記対象自動車車両(O)上の前記車載運転支援システムが、多車線走行ゾーンにおいて、前記対象自動車車両(O)の環境内に初期時点において存在する複数の第三者車両(O~O、O~O)を検出する、検出ステップ(110)と、
-前記車載運転支援システムによる、前記対象自動車車両(O)に結び付けられた第1の座標系における前記初期時点に続く第1の予測時点に対する、セット内の各車両Oの第1の相対位置及び第1の相対速度の予測の第1の予測サイクルと、
を含み、前記第1の予測サイクルが、
〇前記初期時点に検出された前記第三者車両及び前記対象自動車車両(O)を含む1セットのK台の車両中の各車両Oの初期データを、前記車載運転支援システムのデータベースに格納するステップ(120)であって、前記初期データが、前記初期時点の前記第1の座標系における前記セット内の各車両Oの現在の車線、現在の相対位置、及び現在の相対速度に関する情報を含む、ステップ(120)と、
〇前記セット内の前記K台の車両Oに対して優先順位が割り当てられるソーティングステップ(130)であって、前記優先順位が、前記データベースに格納されている前記セット内の各車両Oの前記相対位置及び前記車線に従って決定され、かつ前記対象自動車車両(O)の最も遠くの前方の位置で検出された車両から始まる前記多車線走行ゾーン内で前記セット内の前記車両Oが互いに追従する順序に対応する、ソーティングステップ(130)と、
〇前記優先順位で前記セット内の各車両Oを選択する選択ステップ(140)と、
を含み、前記セット内の各選択された車両O*に対して、
-前記選択された車両O*に対する一次標的車両とすることができる前記セット内の別の車両を識別する第1のサブステップ(150)と、
-前記識別された一次標的車両、前記選択された車両O*のみに関する情報、及び前記選択された車両O*の現在の環境に関する情報に少なくとも基づいて、前記選択された車両O*によって進行中又は実行されようとしている操縦を推定する第2のサブステップ(160)と、
-前記選択された車両O*について推定された前記操縦に基づいて、前記初期時点と前記第1の予測時点との間の前記選択された車両O*の移動を推定する第3のサブステップ(170)と、
を含み、
前記第1の予測時点に対する前記選択された車両O*の前記第1の相対位置及び前記第1の相対速度が、前記推定された移動に基づいて予測されており、
前記第1のサブステップ(150)、前記第2のサブステップ(160)及び前記第3のサブステップ(170)が、前記選択された車両O*に結び付けられた二次元座標系に変換された位置及び速度データに基づいて実行される、
運転支援方法(100)。
【請求項2】
定された前記操縦が、可能性のある操縦の予め定義されたセットから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択された車両O*に対する可能性のある操縦の前記予め定義されたセットが、
-前記選択された車両O*の現在の車線を維持すること、
-前記選択された車両O*が左車線へ車線を変更すること、
-前記選択された車両O*が右車線へ車線を変更すること、
-前記選択された車両O*が前記選択された車両O*の現在の車線で停止すること、
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1のサブステップ(150)が、前記選択された車両O*の前方かつ最も近くの同じ車線に位置する前記セット内の車両を検索することを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された車両O*のみに関する前記情報が、前記選択された車両O*の横方向の移動、及び/又は前記選択された車両O*のインジケータのうちの1つのオン若しくはオフ状態、及び/又は前記選択された車両O*の格納された位置の履歴を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記選択された車両O*の前記現在の環境に関する前記情報が、前記選択された車両O*が位置する前記車線の標示線の種類、及び/又は前記選択された車両O*の前記現在の車線に隣接する車線の占有状態、及び/又は前記車線に割り当てられた現在の制限速度を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記車載運転支援システムによる、前記第1の座標系における前記第1の予測時点に続く第2の予測時点に対する、前記セット内の各車両Oの第2の相対位置{X;Y;θ}k,2及び第2の相対速度
【数1】

の予測の第2の予測サイクルを含み、前記第2の予測サイクルが、
-前記データベースを更新する第1のステップであって、初期相対位置及び相対速度のデータが、前記セット内の各車両Oについて前記第1の予測サイクルで予測された前記第1の相対位置{X;Y;θ}k,1及び前記第1の相対速度
【数2】

に置き換えられる、第1のステップ、並びに
-前記初期時点が前記第1の予測時点に置き換えられており、かつ前記第1の予測時点が前記第2の予測時点に置き換えられている前記第1の予測サイクルの、前記ソーティングステップ(130)、前記選択ステップ(140)、前第1のサブステップ(150)、前記第2のサブステップ(160)及び前記第3のサブステップ(170)
を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、2よりも大きい、連続する予測サイクルの数Nを含み、各n番目の予測サイクルが、前記第1の座標系において、かつ先行する予測時点に続くn番目の予測時点に対して、前記セット内の各車両Oのn番目の相対位置{X;Y;θ}k,n及びn番目の相対速度
【数3】

を予測することを可能にし、各n番目の予測サイクルが、
-前記データベースを更新するステップであって、前記相対位置及び相対速度のデータが、前記セット内の各車両Oについて先行する予測サイクルで予測された相対位置及び相対速度に置き換えられる、ステップ、並びに
-前記初期時点が前記先行する予測時点に置き換えられており、かつ前記第1の予測時点が前記n番目の予測時点に置き換えられている前記第1の予測サイクルの、前記ソーティングステップ(130)、前記選択ステップ(140)、前第1のサブステップ(150)、前記第2のサブステップ(160)及び前記第3のサブステップ(170)
を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
連続する予測時点が、一定の時間ステップによって区切られることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Nが、33に等しく、かつ前記一定の時間ステップが、200msに等しい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実施する、対象自動車車両(O)上の車載運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自動車の分野に関し、より具体的には、自動車の運転支援に関する。
【背景技術】
【0002】
道路安全性を高めるために、半自律型自動車と呼ばれる特定の自動車には、部分自動化システム又は先進運転支援システム(頭字語ADASによって知られている)、特に運転者の代わりに車両の横方向の制御及び/又は縦方向の制御を実行するシステム、又は運転者が適時に反応することを可能にするために潜在的に危険な状況を運転者に少なくとも警告するシステムが装備されている。自動車を完全に自律的に、すなわち運転者なしにすることも実現される。
【0003】
自律型又は半自律型車両(以下、「対象車両」と呼ぶ)が危険な状況を検出し、かつ事故のリスクを回避又は低減するためにそれに応じて反応することを可能にするために、この車両の搭載運転支援システムは、他の自動車(車、トラック、オートバイ)等、車両の現在置かれた環境に存在する全ての動的物体(以下、「第三者車両」と呼ぶ)を検出することができるだけでなく、これらの第三者車両の将来の動きを予測することもできなければならない。
【0004】
記載のように、例えば、「A survey on motion prediction and risk assessment for intelligent vehicles」と題する文献(Lefevreら、Robomech Journal 2014.1:1 http://www.robometechjournal.com/content/1/1/1)では、既知の軌道予測方法は、以下の3つのタイプの動きモデルの中から選択された動きモデルに基づいている。
-物理ベースの動きモデル、
-操縦ベースの動きモデル、及び
-相互作用感知動きモデル。
【0005】
物理ベースの動きモデルは、車両の将来の動きが物理の法則のみに依存すると考えるため、最も単純である。これらのモデルは、対象車両の車載センサの精度に大きく依存しており、第三者車両が状態(速度又は方向)を変更しないと仮定する。その結果、これらのモデルは、例えば2秒を超える長期の予測を対象とした第三者車両の軌道を確実に予測することを可能にはしない。
【0006】
操縦ベースの動きモデルは、第三者車両の運転者が実行しようとする操縦も考慮に入れるため、物理ベースの動きモデルよりも少し洗練されている。それにもかかわらず、操縦が推定される対象車両及び第三者車両は、互いに独立して移動しているとみなされ、このことが特定の道路状況の誤った解釈につながり、対象車両のリスク評価に影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
相互作用感知動きモデルは、車両の動きが道路シーンに存在する他の車両の動きによって影響を受ける場合があるという事実を考慮しているため、現在最も進歩している。これらのモデルのほとんどは、いくつかの移動している車両間のペアワイズの依存性を考慮することを可能にする動的ベイジアンネットワークを使用する。これらのモデルは、信頼性が高くより長期的な予測を可能にするが、車両の全ての可能性があるペアに対して、車両の全ての潜在的な軌道を推定することができるようにかなりの演算時間リソースを必要とするため、対象車両にとってのリスクをリアルタイムで評価する必要性と互換性がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Lefevreら、Robomech Journal 2014.1:1 http://www.robometechjournal.com/content/1/1/1
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、特に、対象車両が移動している道路シーンに存在する各車両の少なくとも1つの将来の位置を演算時間の観点から確実かつ安価に予測することを可能にする簡略化された方法を提案することによって、先行技術の制限を克服することである。
【0010】
本発明の別の目的は、この簡略化された方法を使用して、物理ベースの動きモデルを使用する方法よりも長い予測時間にわたって第三者車両の環境内を移動している複数の車両の軌道を迅速に予測することである。
【0011】
したがって、本発明の1つの主題は、
対象自動車車両上の車載運転支援システムにおいて実施される、前記対象自動車車両に対する運転支援方法であって、
-前記対象自動車車両上の前記車載運転支援システムが、多車線走行ゾーンにおいて、前記対象自動車車両の環境内に初期時点において存在する複数の第三者車両を検出する、検出ステップと、
-前記車載運転支援システムによる、前記対象自動車車両に結び付けられた第1の座標系における前記初期時点に続く第1の予測時点に対する、セット内の各車両O の第1の相対位置及び第1の相対速度の予測の第1の予測サイクルと、
を含み、前記第1の予測サイクルが、
〇前記初期時点に検出された前記第三者車両及び前記対象自動車車両を含む1セットのK台の車両中の各車両O の初期データを、前記車載運転支援システムのデータベースに格納するステップであって、前記初期データが、前記初期時点の前記第1の座標系における前記セット内の各車両O の現在の車線、現在の相対位置、及び現在の相対速度に関する情報を含む、ステップと、
〇前記セット内の前記K台の車両O に対して優先順位が割り当てられるソーティングステップであって、前記優先順位が、前記データベースに格納されている前記セット内の各車両O の前記相対位置及び前記車線に従って決定され、かつ前記対象自動車車両の最も遠くの前方の位置で検出された車両から始まる前記多車線走行ゾーン内で前記セット内の前記車両O が互いに追従する順序に対応する、ソーティングステップと、
〇前記優先順位で前記セット内の各車両O を選択する選択ステップと、
を含み、前記セット内の各選択された車両O* に対して、
-前記選択された車両O* に対する一次標的車両とすることができる前記セット内の別の車両を識別する第1のサブステップと、
-前記識別された一次標的車両、前記選択された車両O* のみに関する情報、及び前記選択された車両O* の現在の環境に関する情報に少なくとも基づいて、前記選択された車両O* によって進行中又は実行されようとしている操縦を推定する第2のサブステップと、
-前記選択された車両O* について推定された前記操縦に基づいて、前記初期時点と前記第1の予測時点との間の前記選択された車両O* の移動を推定する第3のサブステップと、
を含み、
前記第1の予測時点に対する前記選択された車両O* の前記第1の相対位置及び前記第1の相対速度が、前記推定された移動に基づいて予測されており、
前記第1のサブステップ、前記第2のサブステップ及び前記第3のサブステップが、前記選択された車両O* に結び付けられた二次元座標系に変換された位置及び速度データに基づいて実行される、
運転支援方法である。
【0012】
1つの可能な実施形態では、推定された前記操縦が、可能性のある操縦の予め定義されたセットから選択される。
【0013】
1つの可能な実施形態では、選択された車両O* に対する可能性のある操縦の前記予め定義されたセットが、
-前記選択された車両O* の現在の車線を維持すること、
-前記選択された車両O* が左車線へ車線を変更すること、
-前記選択された車両O* が右車線へ車線を変更すること、
-前記選択された車両O* が前記選択された車両O* の現在の車線で停止すること、
を含む。
【0014】
1つの可能な実施形態では、前記第1のサブステップが、前記選択された車両O* の前方かつ最も近くの同じ車線に位置する前記セット内の車両を検索することを含む。
【0015】
1つの可能な実施形態では、前記選択された車両O* のみに関する前記情報が、前記選択された車両O* の横方向の移動、及び/又は前記選択された車両O* のインジケータのうちの1つのオン若しくはオフ状態、及び/又は前記選択された車両O* の格納された位置の履歴を含む。
【0016】
1つの可能な実施形態では、前記選択された車両O* の前記現在の環境に関する前記情報が、前記選択された車両O* が位置する前記車線の標示線の種類、及び/又は前記選択された車両O* の前記現在の車線に隣接する車線の占有状態、及び/又は前記車線に割り当てられた現在の制限速度を含む。
【0017】
1つの可能な実施形態では、前記方法が、前記車載運転支援システムによる、前記第1の座標系における前記第1の予測時点に続く第2の予測時点に対する、前記セット内の各車両O の第2の相対位置{X;Y;θ} k,2 及び第2の相対速度
【数1】

の予測の第2の予測サイクルを含み、前記第2の予測サイクルが、
-前記データベースを更新する第1のステップであって、初期相対位置及び相対速度のデータが、前記セット内の各車両O について前記第1の予測サイクルで予測された前記第1の相対位置{X;Y;θ} k,1 及び前記第1の相対速度
【数2】

に置き換えられる、第1のステップ、並びに
-前記初期時点が前記第1の予測時点に置き換えられており、かつ前記第1の予測時点が前記第2の予測時点に置き換えられている前記第1の予測サイクルの、前記ソーティングステップ、前記選択ステップ、前記第1のサブステップ、前記第2のサブステップ及び前記第3のサブステップ、
を含む。
【0018】
1つの可能な実施形態では、前記方法が、2よりも大きい、連続する予測サイクルの数Nを含み、各n番目の予測サイクルが、前記第1の座標系において、かつ先行する予測時点に続くn番目の予測時点に対して、前記セット内の各車両O のn番目の相対位置{X;Y;θ} k,n 及びn番目の相対速度
【数3】

を予測することを可能にし、各n番目の予測サイクルが、
-前記データベースを更新するステップであって、前記相対位置及び相対速度のデータが、前記セット内の各車両O について先行する予測サイクルで予測された相対位置及び相対速度に置き換えられる、ステップ、並びに
-前記初期時点が前記先行する予測時点に置き換えられており、かつ前記第1の予測時点が前記n番目の予測時点に置き換えられている前記第1の予測サイクルの、前記ソーティングステップ、前記選択ステップ、前記第1のサブステップ、前記第2のサブステップ及び前記第3のサブステップ、
を含む。
【0019】
1つの可能な実施形態では、連続する予測時点が、一定の時間ステップによって区切られる。
【0020】
1つの可能な実施形態では、Nが、33に等しく、かつ前記一定の時間ステップが、200msに等しい。
【0021】
本発明の別の主題は、本発明による方法を実施する、対象自動車車両上の車載運転支援システムである。
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して提示される以下の説明を考慮してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の原理を示すのに役立つ道路シーンの一例を平面図で概略的に示す。
図2図1の道路シーンの例について、本発明による方法によって予測された軌道を概略的に示す。
図3】本発明による検出方法の第1の実施形態に従って実施することができるステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
具体的な概念を提示するために、ここで本発明を、図1の平面図に概略的に示す道路シーンの非限定的な例の文脈で説明する。
【0025】
この図1では、本発明による先進運転支援システム(図示せず)を有する対象車両Oが、3つの車線L、L、Lを備える走行ゾーン内を移動している。他の5台の車両O~O及びO、Oもまた、対象車両Oの環境内を移動している。簡略のために、走行ゾーンは2つの車線L、Lを有する高速道路の一部に対応し、車線Lは支線道路に対応し、全ての車両は、フランスの交通規則(左からの追い越し及び130km/hに制限された速度)に従って、同じ方向(図1の左から右)に走行していると非限定的に仮定する。非限定的な例では、第三者車両O、O、及びOは全て自動車であり、第三者車両Oはオートバイであり、第三者車両Oはトラックである。さらに、この例では、トラックOは静止しており、第三者車両Oのブレーキ灯は、その運転者が制動しているために点灯している。対象車両の環境内に存在する第三者車両の性質は、本発明の原理に影響を及ぼさない。換言すれば、第三者車両は、従来の車両、半自律型車両、又は自律型車両のいずれかであってもよい。
【0026】
以下では、対象車両Oは、
-一方では対象車両Oの環境内に存在する第三者車両O~O及びO、O、他方では道路シーンの幾何学的形状に関する情報(特に、標示線、交通標識等)を対象車両Oが検出することを可能にする、異なる性質の様々なセンサ(図示せず)(例えば、画像センサ、レーダ、ライダ)と、
-検出された情報を処理して、適切な決定(対象車両Oの運転者に対する警告並びに/又は対象車両Oの横方向及び縦方向の制御)を行うことを可能にするADAS(図示せず)と、が装備されていると仮定する。
【0027】
本発明による完全な運転支援方法は、初期時点tに様々な第三者車両の存在を検出することと、対象車両Oについて及び初期時点tにその存在が検出された全ての第三者車両について、所定の全予測期間にわたる将来の軌道(又は予測された軌道)を予測することと、で構成される。
【0028】
以下では、以下の表記が使用され、
-Oは、対象車両O及び初期時点tに検出された全ての第三者車両を含む、1セットのK台の車両中の車両を表す。したがって、図1の例では、セットは合計6台の車両、すなわち検出された第三者車両O~O及びO、O、並びに以下の基準O又はOを交換可能に担うこととなる対象車両Oを含み、
-P(0)は、初期検出時点tにおけるK台の車両のセット内の車両Oと関連付けられた点を表し、この点P(0)は、従来の方式で、
・対象車両O図1を参照)に結び付けられた第1の二次元座標系における車両Oの現在の相対位置{X;Y;θ}k,0(ここで、θは、第1の座標系Oに対する車両Oのラジアンでの相対的な向きを表す)と、
・対象車両Oに結び付けられたこの同じ第1の二次元座標系における車両Oの現在の相対速度
【数4】

(ここで、
【数5】

は、第1の座標系Oに対する車両Oの相対的な向きの変化をラジアン/秒で表す)と、に関連付けられており、
-P(n)は、t=t+nΔt
となるような予測時点tにおける、K台の車両のセット内の車両Oについての予測された軌道の点を表し、
この点P(n)もまた、従来の方式で、
・対象車両Oに結び付けられた第1の座標系において予測時点tで予測された車両Oの相対位置{X;Y;θ}k,nと、
・対象車両Oに結び付けられたこの同じ第1の座標系において予測時点tで予測された車両Oの相対速度
【数6】

と、に関連付けられている。
【0029】
したがって、検出された第三者車両と対象車両とを含むセットから得られた各車両Oに対する予測された軌道は、初期時点tに測定された初期点P(0)から開始して、nが1~Nに変化する時間ステップΔtで連続的に推定されたN個の点P(n)の連続によって形成される。
【0030】
一実施態様の一例では、時間ステップΔtは、予測された軌道の各連続点間で一定である。例として、200msに等しい時間ステップΔtが選択され、かつ数Nが33に等しく設定され、これにより、初期時点tから数えて7秒の合計予測時間にわたって各車両Oに対する軌道予測を行うことが可能になる。図2は、以下で詳述される本発明の原理による様々な車両Oに対する様々な予測された軌道の部分の一例を示している。例えば、車両Oに対する予測された軌道は、点P(0)から始まる初期点と、予測時点tにおける点P(5)及び予測時点t10における点P(10)等の一連の予測された点と、を含み、車両Oに対する予測された軌道は、点P(0)から始まる初期点と、予測時点tにおける点P(7)及び予測時点t19における点P(19)等の一連の予測された点と、を含む。
【0031】
図3を参照して、本発明による方法100であって、対象車両O(O)上の車載システムが、各車両Oについて、点P(0)に基づいて第1の点P(1)を予測することを可能にする少なくとも1つの第1の予測サイクルを含む方法100について説明する。
【0032】
方法100は、初期検出ステップ110を含み、この初期検出ステップ110の間に、対象自動車車両O上の車載システムは、多車線走行ゾーンにおいて、初期時点tに対象自動車車両Oの環境内に存在する複数の第三者車両を検出する。したがって、図1及び図2の例では、対象車両O上の車載システムは、初期時点tにおいて、第三者車両O~O、O、及びOの存在を検出すると仮定する。
【0033】
上記の表記に従って、この第1の予測サイクルの目的は、対象車両O上の車載システムが、第1の点P(1)に関連付けられたパラメータ、すなわち、対象車両に関連付けられた座標系において、かつ初期時点tに続く第1の予測時点tに対して、各車両Oの第1の相対位置{X;Y;θ}k,1及び第1の相対速度
【数7】

を予測することを可能にすることである。
【0034】
この目的のために、第1の予測サイクルは、初期時点tに検出された第三者車両及び対象車両Oを含む1セットのK台の車両中の各車両Oの初期データを、車載システムのデータベースに格納するステップ120から始まる。初期データは、
-一方における、各初期点P(0)に関連付けられた上記のパラメータであって、すなわち、初期時点tにおけるセット内の各車両Oの現在の相対位置{X;Y;θ}k,0及び現在の相対速度
【数8】

であり、かつ対象車両Oに結び付けられた第1の座標系で表された、パラメータ、並びに
-他方における、対象車両O上の車載システムによって推定されたものとしての初期時点tにおける各車両Oの現在の車線(例えば、対象車両Oの中心と各車線L、L、及びLの中心との間で計算されたY軸に沿った横方向距離が最小である車線を識別することで構成される従来の推定)を含む。
【0035】
以下の表1は、図1及び図2に示す道路シーンの検出時点tにおけるデータベースの内容の一例を提示している。
【表1】
【0036】
本発明の重要な特徴によれば、第1の予測サイクルは、セット内のK台の車両O対して優先順位が割り当てられるソーティングステップ130に続き、優先順位は、データベースに格納されているセット内の各車両Oの位置及び車線に従って決定され、かつ対象車両Oの最も遠くの前方の位置で検出された車両から始まる走行ゾーン内でセット内の車両Oが互いに追従する順序に対応する。図1及び図2に例として提示されている道路シーンの場合、各車両の後部に置かれた数字によって示すように、トラックOが考慮すべき第1の車両として現れ、オートバイO、次いで車両O、対象車両O、車両O、最後に車両Oが続く。
【0037】
以下の表2は表1を示しており、その列は、図1及び図2の道路シーンの例に対応する優先順位に従って並べ替えられている。
【表2】

【0038】
第1の予測サイクルは、対象車両の車載システムによってセット内の車両Oの各々(対象車両Oを含む)に対して実行される個別の予測処理に続く。より具体的には、対象車両O上の車載システムは、ステップ130で割り当てた優先順位で各車両Oを選択する(ステップ140)。優先順位順に選択された各車両は、その後O*と示される。したがって、図1及び図2に示す道路シーンの例では、個別の予測処理が最初にトラックOに対応する選択された車両O*に対して実行され、次にオートバイOに対応する選択された車両O*に対して実行され、以下同様に、車両Oに対応する表2から最後の車両O*が選択されるまで実行される。
【0039】
各選択された車両O*に対して実行される個別の処理は、本質的に以下のサブステップを含み、以下でより詳細に説明する。
-選択された車両O*に対する一次標的車両とすることができる該セット内の別の車両を識別するサブステップ150、
-サブステップ150で識別された一次標的車両、選択された車両O*のみに関する情報、及び選択された車両O*の現在の環境に関する情報に少なくとも基づいて、選択された車両O*によって進行中又は実行されようとしている操縦を推定するサブステップ160、並びに
-選択された車両O*についてサブステップ160で推定された操縦に基づいて、初期時点tと第1の予測時点tとの間の選択された車両O*の移動を推定するサブステップ170。
【0040】
計算を簡略化するために、サブステップ150、160、及び170は、対象車両Oに結び付けられた第1の座標系で表されたデータ(処理が選択された車両である車両Oに関する場合を除く)ではなく、選択された車両O*に結び付けられた二次元座標系に変換されたデータに基づいて実行されることが好ましい。したがって、全ての予測処理は、対象車両O上の車載システムが実際に選択された車両O*に搭載されているかのように実行される。したがって、システムは、選択された車両O*に関連する各予測処理について、並べ替えられた初期データベースに格納された全てのデータを選択された車両O*に関連付けられた座標系に事前に(回転及び並進によって)変換し、かつこの情報を選択された車両O*を表示する一時データベースに格納しなければならない。
【0041】
例として、以下の表3は、サブステップ150~170による処理に対して選択された車両O*がトラックO(優先順位に従った第1の処理)に対応するときに取得された一時データベースを提示しており、以下の表4は、サブステップ150~170による処理に対して選択された車両O*が車両O(優先順位に従った第2の処理)に対応するときに取得された一時データベースを提示している。
【表3】


【表4】

【0042】
上記の表3及び表4において、
-{X;Y;θ}*k,0は、選択された車両O*に結び付けられた二次元座標系に変換された後の各車両Oの現在の相対位置を表し、

【数9】

は、対象車両O*に結び付けられた二次元座標系に変換された後の各車両Oの現在の相対速度を表す。
【0043】
選択された車両を表示する一時データベースに格納された、変換された情報に基づいて、車載システムは、K台の車両のセット内に選択された車両O*に対する一次標的が存在するかどうかを識別することができることとなる(上述のサブステップ150)。そのような潜在的な一次標的は、従来の方式で、選択された車両O*を表示する一時データベースに格納された変換された情報に従って、選択された車両O*の前方かつ最も近くの同じ車線に位置するセット内の車両を検索することによって、対象車両の車載システムによって識別される。この検索は、従来の方式で、選択された車両O*との衝突までの推定時間(すなわちTTC)が最も短い車両を検索することによって実行される。
【0044】
図1及び図2に示す道路シーンの例では、トラックO、オートバイO、又は車両Oに対応する選択された車両に対して実行されるサブステップ150の間、これらの車両のすぐ前方かつ同じ車線には車両が位置していないため、一次標的は検出されないこととなる。一方、サブステップ150の終わりに検出されこととなる一次標的は、
-処理のために選択された車両が車両Oに対応する場合のトラックO
-処理のために選択された車両が対象車両Oに対応する場合の車両O、及び
-処理のために選択された車両が対象車両Oに対応する場合のオートバイO、である。
【0045】
次いで、車載システムは、特に以下を使用して、選択された車両O*によって進行中又は実行されようとしている操縦を推定することができることとなる(上述のサブステップ160)。
-選択された車両O*に対する前のサブステップ150で識別された一次標的(又は一次標的の不在)、
-選択された車両O*のみに関する情報、例えば、
・その横方向の移動、及び/又は
・そのインジケータのうちの1つのオン若しくはオフ状態、及び/又は
・その格納された位置の履歴、
-選択された車両O*の現在の環境に関する情報、例えば、
・選択された車両O*が位置する車線の標示線の種類(点線若しくは実線)、及び/又は
・選択された車両O*の現在の車線に隣接する車線の占有状態、及び/又は
・車線に割り当てられた現在の制限速度(例えば、GPSシステム若しくは車載システムに予め記録されたデジタル地図に由来する、又は対象車両上の車載カメラによって取り込まれた交通標識の画像から抽出される)。
【0046】
選択された車両O*に対して予測される操縦は、好ましくは、例えば、以下のような可能性のある操縦の予め定義されたセットの一部を形成する。
-KL、すなわちその現在の車線を維持:選択された車両O*は、その現在の走行車線を運転し続ける、
-LLC、すなわち左車線への車線変更:選択された車両O*は、その現在の走行車線の左の隣接車線に移動することとなる、
-RLC、すなわち右車線への車線変更:選択された車両O*は、その現在の走行車線の右の隣接車線に移動することとなる、
-S、すなわち現在の車線で停止:選択された車両O*は、その現在の走行車線で停止することとなる。
【0047】
前述の操縦は限定的ではない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の道路構成(例えば、環状交差点又は交差点への到達)に対してより適した他の操縦が想定され得る。
【0048】
以下の表5は、特に、サブステップ160の終わりにおける、予測時点tに対する図1及び図2に示す道路シーンにおける様々な車両について取得された一次標的、予測される操縦、現在の車線、及び目標車線を提示している。
【表5】

【0049】
次いで、車載システムは、選択された車両O*の座標系において、一次標的(又は一次標的の不在)及び選択された車両O*についての推定された操縦に基づいて、初期時点tと第1の予測時点tとの間の選択された車両O*の位置及び速度の観点から予測される移動を推定し得る(サブステップ170)。以下の表6は、優先順位に従って、選択されたセット内の全ての車両に対して前述の予測処理が順番に実行された場合のこのように推定された移動の一例を提示している。
【表6】

【0050】
次いで、前述の結果は、対象車両Oに結び付けられた座標系で表されるために再び変換され(並進及び回転)、その結果、計算された移動に基づいて、各車両の予測時点tに対する予測される位置及び速度を提示することが可能であり(ステップ180、図3)、この位置及びこの速度は、対象車両Oの座標系で表現される。例えば、トラックOの場合、点P(1)に関連する、第1の予測サイクルの終わりに取得される相対位置{X;Y;θ}3,1及び速度
【数10】

は、以下の計算に由来する。
【数11】

【数12】

【数13】
【0051】
上記の第1の予測サイクルと同様の第2の予測サイクル(図示せず)は、第1の時点tから時間ステップΔtだけ離れた第2の予測時点tにおいてセット内のK台の車両の各々によって占有される点P(2)を予測するために、すなわち、該第1の座標系において、かつ第2の予測時点に対して、該セット内の各車両Oの第2の相対位置{X;Y;θ}k,2及び第2の相対速度
【数14】

を推定するために、対象車両O上の車載システムによって実行され得る。この目的のために、第2の予測サイクルは、
-データベースを更新する第1のステップであって、初期相対位置及び相対速度のデータが、セット内の各車両Oについて第1の予測サイクルで予測された第1の相対位置{X;Y;θ}k,1及び第1の相対速度
【数15】

に置き換えられる、第1のステップと、
-初期時点t0が第1の予測時点tに置き換えられており、かつ第1の予測時点tが第2の予測時点tに置き換えられている第1の予測サイクルの、ソーティングステップ130、選択ステップ140、及びサブステップ150~170と、
を含む。
【0052】
前述の原理を一般化することにより、2よりも大きい、連続する予測サイクルの数Nを有する方法を完了するための提供が行われてもよく、各n番目の予測サイクルは、対象車両に結び付けられた第1の座標系において、かつ先行する予測時点tn-1に続くn番目の予測時点tに対して、初期セット内の各車両Oのn番目の相対位置{X;Y;θ}k,n及びn番目の相対速度
【数16】

を予測することを可能にし、さらにn番目の予測サイクルごとに、
-データベースを更新するステップであって、初期相対位置及び相対速度のデータが、セット内の各車両Oについて先行する予測サイクルで予測された相対位置{X;Y;θ}k,n-1及び相対速度
【数17】

に置き換えられる、ステップと、
-初期時点tが先行する予測時点tn-1に置き換えられており、かつ第1の予測時点がn番目の予測時点tに置き換えられている第1の予測サイクルの、ソーティングステップ130、選択ステップ140、及びサブステップ150~170と、
を含む。
図1
図2
図3