(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】超音波撮像におけるデータ伝送低減のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2022580512
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2021066538
(87)【国際公開番号】W WO2022002627
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-04-11
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブルターズ ルード
(72)【発明者】
【氏名】ベラ ディープ
(72)【発明者】
【氏名】ファン レンズ アントニア コルネリア
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090827(JP,A)
【文献】特開平10-033535(JP,A)
【文献】特開2015-071028(JP,A)
【文献】特開2018-102771(JP,A)
【文献】特開2013-141545(JP,A)
【文献】米国特許第05873830(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサーアレイとADCアレイとを含む超音波プローブを備える超音波システムを使用した超音波超音波撮像のための方法であって、前記超音波プローブが、撮像領域に超音波照射し、エコー信号を受信し、前記ADCアレイにより受信された前記エコー信号をデジタル化し、帯域幅の限られたチャンネルを介してデータ処理ユニットにデジタル化されたRFデータを伝送し、前記データ処理ユニットが、前記RFデータをビーム形成し、前記方法が、
前記撮像領域の少なくとも1つのスカウティング画像を獲得するステップであって、前記スカウティング画像が、関心のある解剖学的構造物を含む、当該獲得するステップと、
前記スカウティング画像内における少なくとも1つの関心領域を選択するステップであって、前記少なくとも1つの関心領域が、前記解剖学的構造物の一部を含む、当該選択するステップと、
前記撮像領域の超音波撮像のための送信スキームと受信スキームとを設定するステップであって、前記少なくとも1つの関心領域が、前記少なくとも1つの関心領域の外部の前記撮像領域とは異なる送信設定及び受信設定を使用して超音波照射される、当該設定するステップと、
前記送信スキームと前記受信スキームとに従って複数の超音波画像を獲得するステップと、
を有し、
前記超音波プローブが、前記少なくとも1つの関心領域により反射された規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する前記少なくとも1つの関心領域の深さ範囲に対応した受信された前記RFデータのみを前記データ処理ユニットに伝送し、及び、前記少なくとも1つの関心領域の外部の前記撮像領域により反射された前記受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する前記撮像領域の深さ全体に対応した受信された前記RFデータを伝送する、
方法。
【請求項2】
前記送信スキームと前記受信スキームとが、前記少なくとも1つの関心領域の外部の前記撮像領域に比べて、より高い時間分解能を使用して、及び/又は、異なる種類の送信ビームを使用して、及び/又は、異なるパルス繰り返しレートを使用して、前記少なくとも1つの関心領域に超音波照射するステップを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信スキームでは、前記少なくとも1つの関心領域に超音波照射する送信ビームの送信パワー及び/又は集束スキームが、前記少なくとも1つの関心領域に対し
て適応される、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信スキームと前記受信スキームとは、前記超音波プローブの撮像領域全体が超音波照射される2つの全体獲得サイクル間に、前記少なくとも1つの関心領域のみが超音波照射される、少なくとも1つの関心領域獲得サイクルをインターリーブするステップを有し、
前記受信スキームに従って、前記関心領域獲得サイクルでは、前記超音波プローブが、
前記少なくとも1つの関心領域により反射された前記規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する前記少なくとも1つの関心領域の深さ範囲に対応した受信された前記RFデータのみを伝送し、及び、前記全体獲得サイクルでは、前記超音波プローブが、前記超音波プローブの前記撮像領域全体の深さ範囲に対応した受信された前記RFデータを伝送する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記超音波プローブが、プローブ内メモリを備え
、前記方法が、
前記データ処理ユニットへの伝送のために前記少なくとも1つの関心領域により反射された前記規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する前記少なくとも1つの関心領域の前記深さ範囲に対応したデジタル化されたRFデータを選択するステップと、
所定の最大データレートを超えたとき、前記超音波プローブからの前記RFデータの伝送を遅延させるために、選択された前記デジタル化されたRFデータのうちの少なくとも幾つかを前記プローブ内メモリにバッファリングするステップと、
を更に有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル化されたRFデータが前記データ処理ユニットに伝送される前に、前記デジタル化されたRFデータが
、離散ウェーブレット変換を介して圧縮される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの関心領域により反射された前記デジタル化されたRFデータが、前記少なくとも1つの関心領域の外部の前記撮像領域により反射された前記デジタル化されたRFデータに比べて、異なるビット深さを使用して
、及び/又は、異なるサブサンプリングパターンを使用して、及び/又は、異なるウェーブレット圧縮を使用して、圧縮される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記送信スキーム及び前記受信スキームが、前記撮像領域を超音波照射するために複数の送信イベントを含むワイド送信ビーム撮像モードを使用し、前記複数の送信イベントの一部のみが、前記少なくとも1つの関心領域に超音波照射し、前記少なくとも1つの関心領域に超音波照射する前記送信イベントが、より高い時間分解能で実行される、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記送信スキームが、前記撮像領域を超音波照射するために複数の送信イベントを使用し、前記複数の送信イベントの一部が、前記少なくとも1つの関心領域に超音波照射し、空間的に同等な送信イベントが、前記少なくとも1つの関心領域獲得サイクルと前記全体獲得サイクルとにおいて同じ時間オフセットで開始される、
請求項4
、又は、請求項4を直接的に若しくは間接的に引用する請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
2つ以上の関心領域が、前記スカウティング画像内において選択され、前記2つ以上の関心領域の各々が、前記解剖学的構造物の一部を含み、
前記送信スキームと前記受信スキームとにおいて、前記2つ以上の関心領域が、前記2つ以上の関心領域の外部の前記撮像領域とは異なる送信設定及び受信設定を使用して超音波照射され、
少なくとも2つの異なる前記関心領域が、相互に異なる送信設定及び受信設定を使用して超音波照射される、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
関心領域獲得サイクルから関心領域画像を再構成する、及び、全体獲得サイクルから全体超音波画像を再構成するステップと、
前記関心領域画像に対するフレームレートと同じ、撮像領域全体に対する前記全体超音波画像のフレームレートを実現するために、前記全体超音波画像を時間的にアップサンプリングするステップと、
アップサンプリングされた前記全体超音波画像を前記関心領域画像と一緒に混合するステップと、
を更に有する、請求項3から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アップサンプリングが、補間を使用して実行され、前記補間が
、訓練されたニューラルネットワークを使用することにより、前記少なくとも1つの関心領域と残りの前記撮像領域との間の動きを考慮する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記送信スキームにおいて、前記少なくとも1つの関心領域と前記少なくとも1つの関心領域の外部の前記撮像領域とが、送信ビームを重ねることにより超音波照射され、前記少なくとも1つの関心領域の外部の前記撮像領域に比べて、前記少なくとも1つの関心領域では多くの前記送信ビームが重なる、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの関心領域が、前記少なくとも1つのスカウティング画像において、及び/又は、複数の超音波画像において、コンピュータビジョン及び/又は人工知能アルゴリズムにより自動的に検出され、及び追跡される、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の方法を実施する超音波撮像システムであって、前記超音波撮像システムが、トランスデューサーアレイとADCアレイとを含む超音波プローブを備え、前記超音波プローブが、撮像領域に超音波照射し、エコー信号を受信し、受信された前記エコー信号をデジタル化し、データ処理ユニットに、帯域幅の限られたチャンネルを備えるインターフェースを介して、デジタル化されたRFデータを伝送し、前記データ処理ユニットが、前記RFデータを処理してビーム形成する、
超音波撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波(US)撮像システムにおけるデータ伝送低減のための方法及び対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波撮像では、90°の角度をカバーする平面内の200個の異なる方向に送信パルスを送信して約200回のパルスエコー測定を実施することにより、2D画像が取得される。したがって、各超音波送信イベントに対して、1つのラインが獲得される(1ライン獲得、SLA)。この手法により、130mmの撮像深さをもつ2D画像が、約30Hzのフレームレートで取得され得る。心臓の超音波撮像では、このようなフレームレートが心臓の全体的な運動を可視化するために十分である。しかし、幾つかの心臓フェーズは、継続期間が非常に短く、心筋及び弁の非常に速い運動及び変形と関連付けられたものとして知られている。これらの心臓フェーズの正確な観察はより高いフレームレートを必要とする。
【0003】
したがって、例えば平行ビーム形成(すなわち、複数ライン獲得、MLA)といった超高速超音波撮像技術が発展してきた。このアプローチでは、複数の画像ラインが各送信パルスに対して同時に再構成される。平行受信ビームの数の増加に対応するために、送信ビームが(例えば送信アパチャーを小さくすることにより)広げられなければならない。しかし、より小さいアパチャーはより小さいエネルギーを送信するので、平行受信ビームの最大数は制限されたまま留まる(例えば2、4、又は8)。代替例として、平面波又は分散波撮像が提案されている。この技術は高度の平行受信ビーム形成を可能にするが、非常に広い送信ビームに起因して、画像の空間分解能が大幅に低下する。この効果を補償するために、典型的には異なる送信ビームが合成され、フレームレートにおいて全体的な利得をもたらす。
【0004】
概して、超高速撮像は、許容可能な品質をもつ画像を生成するために、比較的多数の送信を必要とする(2D撮像の場合は10個より多く、3D撮像の場合は100個より多い)。通常、超高速撮像技術は1000Hzより高いフレームレートで動作させられる。したがって、1秒当たりの超音波照射数は、2Dの場合には104より大きく、3Dの場合には105より大きい。十分な侵入深さを実現するために、及び、深さにおける高調波撮像を行うために、使用される表面圧力は高い必要がある。例えば、それは、(30%の高電圧ドライバの電力効率、及び、0.2%のパルス発生器のオン・オフデューティサイクルを仮定して)200mm2のトランスデューサーアパチャーを使用して1.5MPaの表面圧力を生成するために約1.5W/mm2を必要とする。したがって、視野に超音波照射するために、大幅な量の音響エネルギーが必要とされる。高フレームレートで動作するとき、音響パワーは何度も生成される必要がある。
【0005】
これらの要求は、超音波(US)プローブにおいて、より多くの電力消費をもたらす。特に、小型の手持ち式及び/又は装着型(無線)撮像システムでは、プローブコスト及び電力消費を抑制することが重要である。典型的なUSB手持ち式プローブは、USB3インターフェースを介して電力を提供することができるように、電力消費を2~3Wに制限する。能動的な冷却を伴わない場合、2~3Wの制限は、(短時間の)皮膚加熱に関連した医療法規に準拠するために更に必要とされる。監視アプリケーションをするための無線パッチプローブも、電池寿命を守るために、及び、長時間の皮膚加熱を防ぐために電力消費を100mWに制限する。
【0006】
更に、超高速超音波技術はデータ伝送負荷の増加をもたらし、これは、標準的な技術ではまだサポートしていない。特に、1000個より多いトランスデューサー要素からなるマトリックストランスデューサーの場合、想定される無線周波(RF)データ量は非常に多い。高い空間分解能を実現するために、多くのトランスデューサー要素(チャンネル)の生データが独立して収集されること、及び処理されることが必要である。これは、例えば多Gbpsシリアルデータリンクといった、大消費量の及び場合によっては複雑なハードウェアをもたらす。
【0007】
したがって、超音波照射数と、生成され、処理され、及び伝送されるRFデータの量とを制限することが望ましい。より簡単なハードウェアコンポーネントが使用され得るので、そうすることが更にプローブコストを下げる。主な電力消費は超音波照射に起因するので、更なる超音波照射を不要にするために、全ての関連するエコー情報を収集することが更に重要である。
【0008】
従来技術において、関心領域ベースの画像圧縮が提案されている(例えば、Heng-Ming Tails、Men Long、Wei He、及びHao Yarg、「AN EFFICIENT REGION OF INTEREST CODING FOR MEDICAL IMAGE COMPRESSION」、Proceedings of the Second Joint EMEISEIMES Conference Houston、TX、USA*10月 2+26、2W2、及び、「Review on Region of Interest Coding Techniques for Medical Image Compression」、International Journal of Computer Applications(0975-8887)Volume 134-No.10、2016年1月)。このアプローチでは、画像の領域(関心領域、ROI)が、(典型的には損失の多い方法を使用して圧縮される)非ROI領域より高品質に(場合によっては無損失で)符号化される。これは通常、非ROI領域に比べてROIに、より多くのビットを割り当てることにより実現される。
【0009】
米国特許出願公開第2016/0262720(A1)号は、超音波撮像に関心を示しており、ボリューム全体とサブボリュームとを別々にスキャンすることを提案しており、サブボリュームはビーム形成パラメータに対する異なる設定を使用してスキャンされ、以て、ボリューム全体からのコンテキストを提供しながら、サブボリュームに対して、より高い画像品質を可能にする。したがって、ボリューム及びサブボリュームスライスは、インターリーブされる。
【0010】
米国特許第5873830(A)号は超音波システム及び方法を開示しており、関心領域は選択される。第1の撮像パラメータ集合が空間分解能を改善するために関心領域の内部に適用されるとともに、異なるパラメータ集合が関心領域の外部に適用される。次に関心領域と関心領域の外部の領域とを含む合成画像が組立てられる。
【0011】
しかし、このような高度な方法を使用しても、処理されること、及び伝送されることを必要とするデータ量は、関連するコストを最小化するための適用可能性及び目標に対して依然として阻害要因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、超音波プローブの電力消費及び伝送される必要があるデータ量を小さくすると同時に、十分な時間分解能及び空間分解能及び十分に広い視野のカバレッジを伴う高品質超音波画像を提供する超音波撮像のための方法及び関連するシステムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の超音波撮像のための方法、及び、請求項15に記載の超音波撮像システムにより実現され、又は超えられる。請求項に記載された方法に関連して本明細書において説明されている任意の特徴、利点、又は代替的な実施形態は、システムにも適用可能であり、逆も同様である。
【0014】
本発明によると、トランスデューサーアレイとアナログ・デジタルコンバーター(ADC)アレイとを含む超音波プローブを備える超音波システムを使用した超音波撮像のための方法であって、超音波プローブが撮像領域に超音波照射するように、及び、エコー信号を受信するように、及び、ADCアレイを使用して受信されたエコー信号をデジタル化するように、及び、帯域幅の限られたチャンネルを介してデータ処理ユニットにデジタル化された無線周波(RF)データを伝送するように構成され、データ処理ユニットが、RFデータをビーム形成するように適応され、方法が、以下のステップ、すなわち、
- 撮像領域の少なくとも1つのスカウティング画像を獲得するステップであって、スカウティング画像が、関心のある解剖学的構造物を含む、当該獲得するステップと、
- スカウティング画像内における少なくとも1つの関心領域(ROI)を選択するステップであって、少なくとも1つのROIが、解剖学的構造物の一部を含む、選択するステップと、
- 撮像領域の超音波撮像のための送信(TX)スキームと及び受信(RX)スキームとを設定するステップであって、少なくとも1つのROIが、少なくとも1つのROIの外部の撮像領域とは異なるTX及びRX設定を使用して超音波照射される、当該設定するステップと、
- TXスキームとRXスキームとに従って複数の超音波画像を獲得するステップと、
を有する、方法が提供される。
【0015】
超音波プローブが、ROIから反射された規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する少なくとも1つのROIの深さ範囲に対応した受信されたRFデータのみをデータ処理ユニットに伝送するように構成され、及び、少なくとも1つのROIの外部の撮像領域により反射された受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する撮像領域の深さ全体に対応した受信されたRFデータを伝送するように構成される。
【0016】
TXスキーム及びRXスキームが任意の順序で構成されることを除いて、上述のステップは通常、それらが提示されている順序で実行される。
【0017】
本発明の重要な用途は心エコー検査である。心臓を高く動く物体の集合体と考えると、心臓の弁は心房壁/心室壁より速く動く。したがって、この用途及び他の用途において、動く解剖学的構造物の全ての部分が高速又は超高速撮像技術を必要とするわけではない。したがって、本発明は、例えば心臓全体といった関心のある解剖学的構造物のスカウティング画像と呼ばれる1つ又は複数の超音波画像がまず獲得される方法を提供する。この超音波画像に対して、好ましくは特定の関心のある部分、又は、解剖学的構造物の残りの部分より速く動く部分といった、解剖学的構造物の一部を含む関心領域が選択される。ROIは通常、スカウティング画像の撮像領域の一部、例えばその5%から40%をカバーする。好ましくは、ROIは、撮像領域の残りの部分に対するものに比べて、ROIから、より高い時間分解能及び/又はより良い品質を伴う画像を取得するために、特に(送信及び受信パラメータとも呼ばれる)異なる送信及び/又は受信設定といった異なるスキャン設定を使用して撮像される必要がある解剖学的構造物の一部を含む。TX及びRXスキームは、例えば、一般的な撮像/測定モード(例えば平面波、分散波、ドップラー撮像)、TX及びRXビームの数、タイプ、及び幅、フレームレート/時間分解能、送信パワー、パルス繰り返しレート、集束スキームなどの設定を含む。
【0018】
ROIは手動で、又は自動的に選択される。1つより多いROI、例えば2つから5つのROIが更に存在する。超音波プローブに関連した撮像領域内における1つ又は複数のROIの位置、及び、ROIに対する所望の画像品質又は時間分解能に基づいて、次に、撮像領域の超音波撮像のための送信及び受信スキームが、既定のユーザー仕様に従って、好ましくは自動的に設定され、送信及び受信スキームは、ROIの外部の撮像領域と比べて、異なるTX及びRX設定を使用した、特に、より高い時間分解能、コントラスト、電力、集束スキームを使用した、又は、おおむね異なる種類の送信ビームを使用したROIのスキャニングをもたらす。例えば、ROIの時空間位置に基づいて、ROIを照らす送信ビームが、より小さい時間インターバルでスケジューリングされ、したがって、RFデータがROIからより速いレートで獲得される。解剖学的構造物の他の部分に対して、規定の送信ビームは、それらの動きのより遅い速度に適合するようにより長い時間インターバルでスケジューリングされる。
【0019】
更に、受信スキームは、ROIから反射された規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する、すなわち、ROIの画像を再構成するために使用される受信ビームに対するROIの深さ範囲に対応した、受信されたRFデータのみをデータ処理ユニットに伝送するように超音波プローブを構成することを有する。深さ方向は、超音波プローブからの距離に対応する。対照的に、非ROI領域に対して、少なくとも幾つかの、好ましくは全ての受信ビームがデジタル化され、データ処理ユニット(DPU)に伝送される。言い換えると、受信スキームはサンプルを規定の送信ビームのROIに対応した深さ範囲のみに維持するために調節され得る。以て、DPUへのデータ伝送レートが大幅に低減される。デジタル化された後、RFデータは、超音波画像のビデオストリームを再構成するために時間的にシフトされ、及び必要に応じてインターリーブされる。
【0020】
したがって、本発明は、送信(TX)イベント数を減らし、好ましくはより速いフレームレートをもたらし、プローブからデータ処理ユニットに伝送される必要があるRFデータの量を減らし、以て更に実施される必要のあるビーム形成計算量を減らす方法を説明する。これは1)最適化された数の送信又はTX/RX設定、及び、2)RFデータ伝送負荷の低減をもたらす、限られた深さ範囲の再構成により、データ圧縮及び電力消費における改善を実現する適応的なTX-RXスキームにより実現される。
【0021】
これらの利点を実現するために、本発明は、デジタル超音波プローブ、すなわち受信されたエコー信号(RF信号)のプローブ内デジタル化を行う超音波プローブを使用して実行される。デジタル化されたRFデータがデータ処理ユニットに伝送される。次のステップにおいて、デジタル化されたRFデータは、処理され、及び、非ROI領域すなわちROIの外部の撮像領域と比べて、より良い画像品質をもつ、例えばより高い時間分解能をもつROI領域を示す連続ビデオストリームへと一緒に混合される。一実施形態において、データ処理ユニットは、複数の超音波画像にRFデータをビーム形成するように適応される。次のステップにおいて、複数の超音波画像がビデオストリームへと一緒に混合される。好ましい実施形態において、データ処理ユニットは超音波プローブの一部ではないが、主超音波システム内に位置し、デジタルインターフェースを介してプローブに接続される。このようなデジタルインターフェースは、例えば規定の最大数のGbpsを伴うシリアルデータリンクといった限られた帯域幅すなわち最大データレートをもつデータ接続又はチャンネルを備える。言い換えると、超音波プローブ及びデータ処理ユニット(DPU)は、好ましくはデータケーブルにより、又は更には無線データ接続により接続された別々のハウジングに収容される。したがって、本発明の方法は、簡略化されたデジタルフロントエンド、例えばデジタル超音波プローブにより実現され得る。
【0022】
スカウティング画像は、任意の撮像スキームを使用して、好ましくはBモードにおいて獲得され得、関与するデータレートを制限するためにより低い分解能又はより低いフレームレートをもつ。しかし、(解剖学的構造物を含む)撮像領域のスカウティング画像は、本発明の方法を実施することにより取得された複数の超音波画像のうちの1つ又は複数であってもよく、その中でROIの位置が同様に検出され、必要な場合は調節される。
【0023】
一実施形態において、解剖学的構造物の速く動く領域又は部分が、例えばコンピュータビジョン又は人工知能(AI)アルゴリズムにより自動的に検出され、及び関心領域(ROI)として選択され得るように、幾つかのスカウティング画像が獲得される。このようなアルゴリズムは、特に特定の臨床用途に適応される。代替的に、ROIは、例えば、スクリーンにスカウティング画像を表示する、及び関心部分に1つ又は複数の標識を設定するユーザーにより手動で選択される。ユーザーは更に、ROI上に例えば円又は正方形といったグラフィカルオブジェクトを引くこと、又はカーソルを使用してROIの境界を引くことにより、ROIの輪郭を描く。
【0024】
次に、ROIが与えられたとき、異なる送信及び受信設定は、ROI及びROIの外部の撮像領域(非ROI領域)に対して設定される。
【0025】
言い換えると、本発明の方法の実施形態に従った送信スキーム及び受信スキームは、撮像領域全体に対するタイプAと、ROIに対するタイプBとの2タイプの超音波照射を含む。
【0026】
タイプA:第1の一連の超音波照射では、対象の解剖学的構造物(例えば心臓)が例えば同一平面波送信を使用して超音波照射される。全てのトランスデューサー(例えば128個のチャンネル)からのRFデータが、撮像領域全体に対して使用される。デジタル化及びビーム形成が、収集されるデータ量を制限するために中程度の分解能で実施される。順次的な超音波照射又はスカウティング画像のデータを比較すること、及び解釈することにより、システム(特に超音波システムの制御装置)が速く動くエリア、例えば心臓弁を検出することができる。
【0027】
タイプB:第2の一連の超音波照射では、例えば集束型送信ビームが送信され、限られた数のRF信号チャンネルからのデータが収集される。データは、比較的高い分解能でデジタル化され、及び伝送される。データ獲得及び伝送は、特定の関心領域にアクセスするために限られた深さ範囲に対応した限られた期間にわたってのみ行われる。例えば、獲得は、超音波照射イベントの50μs後に始まり、(リアルタイムで)20μs間続く。
【0028】
超音波照射タイプAのデータを伝送するために1000μsかかり、超音波照射タイプBのデータを伝送するために100μsかかる。制御装置は、プローブ内データ記憶容量(存在する場合)、及びプローブとDPUとの間の利用可能な送信レートを認識しており、新しい超音波照射要求に対するタイミングを相応に適応させる。(例えばタイプAのための)平面波超音波照射、及び標的を定めた超音波照射(タイプB)が、規則的な時間インターリーブ手法により生成される。しかし、インターリーブは不規則/動的であってもよく、及び/又は、一時的な信号特性によりトリガーされてもよい。一時的な信号特性は、撮像領域の特定の領域内において検出された特に動きの速度である。インテリジェント画像形成又はデータ検出をサポートするためにこれらの一時的な信号特性を認識するために人工知能が使用されてもよい。
【0029】
データ削減量は
図4に示されている。
図4に示されている直方体において、高速時間軸又は深さ軸が横方向に示され、縦軸は送信イベントを示し、第3の軸は受信要素軸である。複数角度平面波又は分散波撮像の場合、直方体全体が撮像領域の2D画像に対して獲得されるRFデータアレイ全体を示す。小さい方の立方体は、ROIスキャンのうちの少なくとも幾つかに対して伝送されるRFデータに対応する。ROIは典型的には完全なアジマスをカバーしないので、送信スキームは多くの場合、撮像領域全体に比べて、ROIを撮像するために少ない送信イベントを必要とするので、小さい方の立方体は深さ方向において、及び送信軸上において小さくされていることが明らかである。
【0030】
幾つかの実施形態において、ROIのために伝送されるRFデータを表す立方体は、受信要素軸においても小さくされる。言い換えると、ROIを照らす送信ビームからRFデータを受信したとき、受信要素の部分集合のみが有効であり、及び/又は、限られた数の信号チャンネルからのデータのみが収集され、及びデジタル化される。言い換えると、トランスデューサー要素の一部からのRFデータのみがROIを照らすTX/RXイベントのうちの少なくとも幾つかのためにDPUに伝送される。以て、データ伝送負荷は、更に低減され得る。
【0031】
特定の深さ範囲(d、高速時間とも呼ばれる)に対応したRFデータのみを、特定の送信角度への送信時にのみ伝送することにより、次式により、伝送されるデータ量を減らし得る。
【数1】
【0032】
よって、データ伝送レートは、大幅に低減され得る。例えば、128個のトランスデューサー要素を使用し、8GHzの音周波数を使用し、12ビットの分解能及び1波当たり4サンプルでサンプリングされる超音波プローブにおいて、結果として得られるデータレートは、8M×128×4×12ビット/秒=49Gbit/秒となる。ROIに関連したそれらのスキャンのために伝送されるデータ量を減らすことにより、プローブとDPUとの間のインターフェースのケーブルを通したデータレートは、例えば20Gbit/秒未満、より好ましくは10Gbit/秒未満に低減され得る。
【0033】
デジタル化及びDPUへの伝送後に、デジタル化されたRFデータが複数の超音波画像にビーム形成される。ROI領域からのデータはより少ないデータを含むので、ビーム形成計算は、演算的により低コストでもある。ROIの外部の深さ範囲に対応したデータに0を設定することによりROIからのRFデータにビーム形成を適用し得る。よって、非ROI領域を黒色にして撮像領域の画像を受信する。このタイプの画像は、撮像領域全体のビーム形成された超音波画像と簡単に混合される。代替的に、ROI領域のみをビーム形成して、より小さい画像をもたらすこともできる。これは、より少ないビーム形成計算をもたらすが、特に全体画像における正しい位置における混合に関連して、ビデオ混合ステップをより複雑にする。
【0034】
本方法の結果は、撮像領域全体を示すが、より良い品質で、異なる撮像又は測定モードで、及び/又は、より高い時間分解能でROIを示す複数の、特に時間的シーケンスの超音波画像である。非ROI領域に対する、より高い時間分解能は後で更に詳細に説明されるようにアップサンプリングにより実現され、したがって、より多くの情報は含まない。しかし、ROI領域は、幾つかの実施形態においてより高い時間分解能でサンプリングされており、したがって、解剖学的構造物の速く動く部分が分析され得る。したがって、超高速超音波撮像は、より低い要求されるデータ伝送レートで実現され得、フレームレートを犠牲にせずに、より少ない電力消費をもたらす。
【0035】
実施形態によると、少なくとも1つのROIの外部の撮像領域に比べて、より高い時間分解能を使用して、及び/又は、異なる種類の送信ビームを使用して、及び/又は、異なるパルス繰り返しレートを使用して少なくとも1つのROIが超音波照射されるように、TXスキームが構成される。好ましい実施形態において、ROIが非ROI領域より多くの頻度で超音波照射されるように、送信パラメータが構成される。本発明によると、約60~1000Hz、好ましくは120Hz~500HzのフレームレートがROIにおいて実現され得、これは超高速撮像に対応するが、撮像領域全体がこのような高フレームレートを使用して撮像されたと仮定したときに必要とされるような、より大きい電力消費及びデータ伝送レートを伴わない。加えて、又はそれに代えて、超音波プローブに関連したROIの位置に応じて、送信パワー及び/又は送信集束スキームが適応される。例えば、集束TXは、ROIにおける高調波撮像を行うことに役立つ。パルス繰り返しレートは、1秒当たりに出射される超音波パルスの数である。パルス繰り返しレートは、戻るエコー信号の重ね合わせを避けるために、例えば人体の組織又は解剖学的構造物といった媒体内の音速、及び、パルスがプローブから測定エリアまでの帰路において伝播する必要がある距離により制限される。したがって、トランスデューサーがROIからのエコーを聞いている間に異なる超音波照射から信号を受信しない限り、ROIに超音波照射するとき、例えば、ROI領域が超音波プローブの比較的近くにある場合、パルス繰り返しレートを上げることが考えられる。
【0036】
実施形態によると、ROIは、代替的な測定モードにより、例えばドップラーモードにより超音波照射され、すなわち、TX及びRXスキームは、ROIにおけるドップラーシフトを測定することを有する。これは、ドップラーゲート、及びドップラーシフトが測定される特定の領域、すなわち異なる送信/受信スキームが使用されるROIを選択することにより実行される。二重モードでは、全体フレームをドップラー測定とインターレースすることにより、ROI内の運動、特に血流を追跡し得、ドップラーゲートの位置を相応に調節し得る。よって、ドップラーモードにより解剖学的構造物、特に心臓又はその一部を動的に撮像するために本発明のデータ削減方法を更に使用し得、例えば弁機能又は他の血管の評価を可能にする。他の代替的な測定モードは、例えば心筋などの解剖学的構造物の一部の変形レートを測定することといったひずみ撮像、又は超音波弾性撮像を包含する。
【0037】
更に、送信スキームに従って受信スキームが構成され、すなわち、送信ビームにより照射された領域からビームを受信するように構成される。
【0038】
好ましい実施形態によると、ROI獲得は撮像領域全体の全体獲得とインターリーブされる。特に、TXスキームは、超音波プローブの撮像領域全体が超音波照射される2つの全体獲得サイクル間に少なくとも1つのROIのみが超音波照射される少なくとも1つのROI獲得サイクルをインターリーブすることを有し、RXスキームによると、ROI獲得サイクルでは、超音波プローブが、少なくとも1つのROIにより反射された規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する少なくとも1つのROIの深さ範囲に対応した受信されたRF信号のみを伝送するように構成され、全体獲得サイクルでは、超音波プローブが、超音波プローブの撮像領域全体に対応した受信されたRF信号を伝送するように構成される。例えば、1~8、好ましくは2~4つのROI獲得サイクルが、2つの全体獲得サイクル間にインターリーブされる。
【0039】
好ましい実施形態によると、超音波プローブはプローブ内メモリを備え、プローブ内メモリは特にADCアレイと統合される。本方法は、データ処理ユニットへの伝送のために少なくとも1つのROIにより反射された規定の受信ビームのうちの少なくとも幾つかに対する少なくとも1つのROIの深さ範囲に対応したデジタル化されたRFデータを選択するステップ、所定の最大データレートを超えたとき、超音波プローブからのRFデータの伝送を遅延させるために、選択されたデジタル化されたRFデータのうちの少なくとも幾つかをプローブ内メモリにバッファリングするステップを更に有する。よって、幾つかの実施形態において、一定の出力データレートが実現される。ADCアレイは好ましくはトランスデューサーアレイに対応する。デジタル超音波プローブは、例えばADCが12~40MHzの周波数でサンプリングして最大50Gbpsの要求されるデータ伝送レートをもたらす場合、プローブからシステム(DPU)に伝送可能なものより多くのデータを簡単に生成し得るのに対し、帯域幅の限られたチャンネルにより規定されたデータリンク速度はわずか3~6Gbpsの場合がある。したがって、プローブとDPUとの間のデータ接続は、多くのシステムにおいて阻害要因となる。したがって、インターフェースの利用可能な最大データレートをできる限り使用することが重要である。したがって、本発明を実行するこの実施形態は、関連するRFデータを選択すること、及び他のデジタル化されたRFデータ、特に例えばROI獲得サイクルにおいてROIから反射されたビームに対するROI領域の外部の深さ範囲に対応したRFデータを破棄することを伴う。これは、超音波プローブが既に次の獲得を行っている間に、関連するRFデータを流し切ることを可能にする。より高い時間分解能でROIに超音波照射する場合、インターフェースは単純に、1つ又は複数のROI獲得サイクルと1つの全体獲得サイクルとを有するサイクル全体で全てのデジタル化された(撮像領域全体及びROIの)RFデータを伝送することができなければならない。しかし、インターフェースは、ネイティブなADCデータレートでRFデータを伝送することができる必要があるとは限らない。プローブ内メモリは好ましくはADCアレイと統合されているか、又はADCアレイにあり、その理由は、これが多くの場合、よりエネルギー効率が高いからである。
【0040】
したがって、まず全ての受信されたRFデータをデジタル化し、次にROIの深さ範囲に対応した関連データを選択することが可能である。代替的に、ROIを照らす規定の送信ビーム(又はROIから反射された規定の受信ビーム)に対するROIの深さ範囲に対応した受信信号のみだけがデジタル化されるように、ADCアレイを制御することが可能である。したがって、ADCアレイは、要求された深さ範囲においてのみオンに切り替えられる。この実施形態において、そもそも必要なRFデータのみがデジタル化されるので、プローブ内メモリは使用されても使用されなくてもよいが、一定のデータレートを実現することが依然として有益である。
【0041】
実施形態によると、デジタル化されたRFデータがデータ処理ユニットに伝送される前に、デジタル化されたRFデータが処理され、特に圧縮される。例えば、ウェーブレット圧縮及び/又は離散ウェーブレット変換(DWT)といった高密度RFアレイ/テンス/バッファを圧縮し得るデータ圧縮方法が使用される。このような圧縮方法の例は、MPEGデータ圧縮プロトコルである。
【0042】
ROI領域及び非ROI領域からのデジタル化されたRFデータは、異なる形態により符号化され/処理されてもよい。特に、少なくとも1つのROIにより反射されたデジタル化されたRFデータは、少なくとも1つのROIの外部の撮像領域により反射されたデジタル化されたRFデータと比べて、異なるビット深さで、特により大きいビット深さを使用して、及び/又は、例えば異なるサンプリングレートでRFデータをサンプリングすることといった異なるサブサンプリングパターンを使用して、及び/又は、異なるウェーブレット圧縮を使用して圧縮されてもよい。特に、限られた帯域幅のチャンネルを介してデータレートを下げるために、ROIの外部からのRFデータはROIからのデータより大きく圧縮されると同時に、1つ又は複数のROI内からのRFデータを十分に高い品質に維持する。ROIの外部からのRFデータに対するものと比べて、ROIからのRFデータに対して異なる符号化アルゴリズムを使用することも考えられる。
【0043】
実施形態によると、送信及び受信スキームは、撮像領域を超音波照射するために複数の送信イベントとともに、例えば、分散波、平面波、又は角度指定平面波撮像モードといったワイド送信ビーム撮像モードを使用する。例えば、平面波撮像は、異なる方向に10~50個の送信ビーム、例えば1°~5°の送信ビームを送信することにより実現され得、そこから複数の受信ビームが再構成される。これらの送信イベントの一部のみが少なくとも1つのROIに超音波照射する。好ましくは、少なくとも1つのROIに超音波照射する送信イベントは、より高い時間分解能で実行される。例えば、角度指定平面波撮像モードでは、異なる送信ビームは異なる方向に向けられる。ROIのサイズに応じて、送信ビームの部分集合のみがROIを撮像するために必要とされる。この例では、ROI獲得サイクルは送信イベントの部分集合のみを含むのに対し、全体獲得サイクルは、例えば90°といったアジマス角度全体をカバーする全ての方向における送信イベントを含む。実施形態によると、TXスキームにおいて、特にROI獲得サイクルにおいてROIに超音波照射する送信ビームの送信パワー及び/又は集束スキームは、ROIに対して、特に超音波プローブに対するROIの位置に対して適応される。例えば、送信ビームは、ROIの深さ範囲に最良の焦点をもつように集束され得る。更に、送信パワーは、超音波プローブからROIの距離に調節され得、例えば距離が長いほど高い電力が必要とされる。
【0044】
実施形態によると、2つ以上の関心領域(ROI)がスカウティング画像内において選択され、2つ以上のROIの各々が解剖学的構造物の一部を含み、送信(TX)スキーム及び受信(RX)スキームにおいて、2つ以上のROIは、2つ以上のROIの外部の超音波プローブの撮像領域とは異なるTX及びRX設定を使用して超音波照射される。実施形態によると、少なくとも2つの異なるROIは、相互に異なるTX及びRX設定を使用して超音波照射される。言い換えると、例えば非常に高いレベル-中レベル-低レベルといった関心のある様々なグレード又はアスペクトをもつ2つ以上の異なるROIの選択からの各ROIの超音波照射に対して、異なるTX及びRX設定が適用される。これは、例えば各々が異なる性質、例えば異なる移動速度を有する、又は、計画された医療分析に対する異なる重要度をもつことからそれらを適切に撮像するために異なる測定設定、例えば異なる時間分解能を必要とする、解剖学的構造物の幾つかの異なる部分同士を判別することを可能にする。
【0045】
デジタル化されたRFデータは、好ましくは非ROI領域より高い時間分解能を使用してROI領域を示す一連の画像(ビデオストリーム)に一緒に混合される。実施形態によると、これは、ROIの外部の撮像領域から獲得されたRFデータを、ROIから獲得されたRFデータの時間分解能まで時間的にアップサンプリングするステップを更に有する。全体獲得サイクルとインターリーブされた1つ又は複数のROI獲得サイクルの場合、まず、ROI画像及び全体超音波画像を再構成するために画像をビーム形成する。次に全体画像が、ROIフレームレートと同じフレームレートまで時間的にアップサンプリングされる。次のステップにおいて、ROI画像のフレームレートで全体超音波画像のシーケンスを生成するために、時間的にアップサンプリングされた全体超音波画像がROI画像と一緒に混合される。1つの実施形態において、単純な線形な時間的アップサンプリング/補間方法が使用され、2つの全体超音波画像間の欠如したデータが利用可能な全体超音波画像からデータを複製すること、又は、隣接したものから線形補間を適用することにより取得される。画像を一緒に混合するために、単純なマスクベースの混合方法が適用される。好ましくは、混合は浮動小数点を使用して、すなわちソフトマスク境界を使用して行われる。例えば、線形の、又は半径方向の勾配が、画像を混合するために境界に適用される。その中で、ROI領域に対応したマスクが撮像領域内に規定され、ROI画像が、アップサンプリングされた全体超音波画像においてこのマスク内にコピーされる。この実施形態によると、混合は、デカルト画像平面において、又は極平面、例えばr-シータにおいて画像領域内において実施される。全体画像及びROI画像が極座標で表される場合、全体画像及びROI画像が一緒に混合されたとき、好ましくは、ビーム形成後及びスキャン変換前に混合が行われる。
【0046】
代替的な実施形態によると、混合ステップは、ビーム形成された画像においてではなく、RF領域において行われる。
【0047】
実施形態によると、アップサンプリング補間は少なくとも1つのROIと非ROI領域との間の運動を考慮するという点で、アップサンプリング補間はより複雑である。これは、例えば解剖学的構造物及び/又は解剖学的構造物の一部の運動といった物体の運動、及び/又は、複数の獲得サイクル間の患者の運動を補償することに役立つ。このようなアルゴリズムは例えば運動をより滑らかに見せるためにビデオストリーミング技術において使用されるPhilips natural motionとして知られる。代替的に、例えばニューラルネットワークに基づくAI方法が使用される。例えば、https://heartbeat.fritz.ai/research-guide-for-video-frame-interpolation-with-deep-learning-519ab2eb3ddaにおいて、又は、SuperSloMo:High Quality Estimation of Multiple Intermediate Frames for Video Interpolation、Huaizu Jiang、Dequing Sun、Varun Jampani、Ming-Hsuan Yang、Erik Learned-Miller、Jan Kautz、https:/arxiv.org/abs/1712.00080v2において説明される方法が使用される。
【0048】
ROI獲得サイクルを実施するとき、実施形態によると、ROIに超音波照射する送信イベントは、全体獲得サイクルの場合と同じ時間オフセットで開始しなければならない。言い換えると、撮像領域全体が複数の送信イベントを必要とする場合、及び、送信イベントの一部のみがROI獲得サイクルにおいてROIに超音波照射する場合、同様の(空間的に同等な)送信イベント、すなわち同じ方向への送信イベントが、全体獲得サイクルよりROI獲得サイクルにおいて同じ時間オフセットで開始される。ROI及び非ROI超音波照射が規則的な時間インターリーブ手法により生成されるので、それが混合を比較的単純にするので、これは有益である。更に、特に測定されたフレーム間のオフセットが不規則に変えられる場合、別の手法であれば生成されたビデオシーケンスのフレームレートと実際の測定のフレームレートとの間の相違に起因して発生する可能性のある運動の激しい振動を、それが防止する。したがって、一定の時間オフセット、すなわち対応する送信イベント間の一様なインターバルは、滑らかな運動を提供する。
【0049】
実施形態によると、少なくとも1つのROI及びROIの外部の撮像領域が送信ビームを重ねることにより超音波照射され、非ROI領域に比べて少なくとも1つのROIにおいて多くの送信ビームが重なる。言い換えると、例えば、撮像領域全体に超音波照射するために3~8つの送信イベントのみが必要であるように、大きい重なる送信ビームを使用する。これは、縁部に比べて、全ての送信ビームが重なるゾーンにおいてはるかに高い時間分解能をもたらす。ROIゾーン付近において最大の重なりをもたらすように送信パターンを調節することにより、ROIの改善された(時間)サンプリングが実現される。
【0050】
実施形態によると、少なくとも1つのROIが、コンピュータビジョン又はAIアルゴリズムにより自動的に検出され、及び追跡される。これは、スカウティング超音波画像に対して、しかし特に方法自体を使用して獲得された複数の超音波画像に対して行われ、したがって、少なくとも1つのROIの位置は自動的に調節される。
【0051】
本発明は更に、本発明による方法を実行するように適応された超音波撮像システムに関する。超音波システムは、超高速撮像するために適応される。しかし、本発明は、超高速超音波システムのための使用に限定されず、平均速度及び/又は低コストシステムにも適用され得る。本発明は、概して、撮像領域内におけるROIにおける撮像品質及び/又はフレームレートを改善することに適する。システムは、トランスデューサーアレイとADCアレイとを含んだ、及び、撮像領域に超音波照射するように、及び、エコー信号を受信するように、及び、受信されたエコー信号をデジタル化するように、及び、DPUにデジタル化されたRFデータを伝送するように構成された超音波プローブを備え、DPUは、ビーム形成するように、及び、任意選択的にRFデータを処理するように適応される。本発明の超音波プローブは、好ましくはハイエンドプローブであり、例えば、プローブはデジタル化のための適切な集積回路を含む。本発明は、最大2~3Wの低電力消費で超高速撮像を実現することを可能にする。トランスデューサーアレイは、1D又は2D(マトリックス)アレイ、例えば線形アレイ又は32~128個のトランスデューサー要素(チャンネル)を含むフェーズドアレイである。超音波プローブはプローブ内デジタル化のために具備されており、すなわち、トランスデューサー要素はADCのアレイに接続されている。任意選択的に、プローブ内メモリが、ADCからのデジタル化されたRFデータを一時的に記憶するために利用可能である。実施形態によると、ADCのアレイはエンコーダに接続され、エンコーダは、DPUに接続された復号器まで、例えばシリアルデータリンク及び/又は帯域幅の限られたチャンネルといったデータインターフェースを通してRFデータを流すように適応され、DPUは、超音波プローブの一部であるが、好ましくは超音波プローブの外部にあり、超音波システムの主制御ハードウェアの一部である。このような制御ハードウェアは、ユーザーが複数の超音波画像を見ること、及び場合によっては必要な場合にROIを選択することを可能にするグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を更に備える。
【0052】
DPUは、デジタル化されたRFデータをビーム形成するように適応される。ビーム形成の前又は後に、ROI獲得と非ROI獲得との混合が実施される。ADC、プローブ内メモリ、及びエンコーダは、1つ又は複数の集積回路により実現される。更に、デコーダ及びDPUは、集積回路により実現される。
【0053】
本発明の有用な実施形態が、以下で添付図面を参照しながら説明される。同様の要素又は特徴は、図中で同じ参照符号により示される。示される異なる実施形態は、別様に記載されていない限り組み合わされることが明示的に可能にされる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】マーキングされた関心領域を含む全体超音波(超音波)画像を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による関心領域を含む角度指定平面波撮像モードの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による関心領域を含む代替的な角度指定平面波撮像モードの概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による受信スキームの例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による方法を表すフロー図である。
【
図6】本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
【
図7】本発明の実施形態による方法の更なるフロー図である。
【
図8】本発明の実施形態による方法の更なるフロー図である。
【
図9】
図2に示されているものと同様の撮像モードを使用して取得されたデータに基づいて本発明の実施形態によりROI獲得を全体獲得とインターリーブする概念を示す図である。
【
図10】
図9に示されているものと同様にデータに基づいて全体超音波画像をROIフレームレートと同じフレームレートまでアップサンプリングする概念を示す図である。
【
図11】
図3に示されている撮像モードを使用して取得されたデータに基づいて本発明の実施形態によりROI獲得を全体獲得とインターリーブする概念を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態による超音波システムの別の概略表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、超音波プローブの撮像領域に対応した全体超音波(超音波)画像18aを概略的に示す。超音波画像18aは、ヒトの心臓30の4心腔図を示す。この全体超音波画像18a内において、関心領域(ROI)16がマーキングされている。弁などの心臓の幾つかの部分は、心室27又は心房壁などの他の部分より速く動く。弁28の速い動きを解像するために、例えば超高速超音波撮像といった十分に速い撮像技術を適用することが必要とされる。また一方では、解剖学的構造物の他の部分は、このような高速撮像技術を必要としない。したがって、この例では速く動く弁28を含むROI16を選択した後、ROI16の内部の領域は、ROI16の外部の領域より高いフレームレートにより撮像される。臓器30の他の部分に対して、超音波プローブ10の対応する送信は、それらの(より遅い)動きの速度にマッチングするように、より大きいインターバルでスケジューリングされる。結果として、低速時間及び高速時間獲得が存在する。このような適応的なTX-RXスキームは、十分に高いフレームレートを使用して速く動く弁28のデータを獲得することを依然として可能にしながら、固定のTX-RXスキームに比べてラジオ周波(RF)データ伝送負荷を減らすことに役立つ。
【0056】
図2は、本発明による角度指定平面波撮像モードの概略図を示し、TX1、TX2、TX3、…、TX7と番号の付された異なる送信イベント、すなわち異なる送信ビーム22が異なる方向に向けられており、各送信ビームが例えば5°から15°のアジマス角度を張る。この実施形態では、連続した送信ビーム22が互いに近接するように送信ビーム22が伝播し、撮像領域全体18に対応した所定のエリアの各セクターが、1つの送信ビームによりカバーされる。この例では、送信ビームTX4、TX5、及びTX6のみがROI16をカバーする。したがって、7つの送信ビーム22のうちの3つのみがROI16を撮像するために必要とされる。
【0057】
ROIの超音波照射に対する送信及び受信パラメータは、撮像領域全体に対するものと異なる。例えば、送信パワー及び/又は送信集束スキームは、ROI16の位置に応じて適応される。集束TXは、ROI16における高調波撮像を行うことに役立つ。更に、ROI16(TX4~TX6)をカバーする送信ビーム22は、撮像領域18の残りの送信ビーム22より高い周波数を使用して送信される。
【0058】
図3は、本発明の一実施形態による代替的な角度指定平面波TXスキームの概略図を示す。この実施形態では、部分的に重なる3つの送信イベント(TX1、TX2、及びTX3)が存在する。これは、1つの送信ビーム22(それぞれTX1及びTX3)のみによりカバーされる縁部に比べて、全ての送信ビーム22が重なるゾーンにおいてはるかに高い時間分解能をもたらす。ROI16ゾーン付近で最も多くの重なりを提供するように送信パターンを調節することにより、ROI16の改善されたサンプリングが実現される。この例では、ROI16を含む中央ゾーンが、縁部における2つのゾーンに比べて3倍多い頻度で、すなわち全部で3つの送信ビーム22(TX1~TX3)により撮像される。
【0059】
図4は、本発明の実施形態による受信スキームの例を示す。受信スキームはサンプルを規定の送信ビーム22のROI16に対応した深さ範囲のみに維持するために調節され得る。この図では、撮像領域全体18は大きい立方体により表されており、横軸は深さ軸(高速時間軸とも呼ばれる)であり、縦軸Txは送信イベントに対応し、第3の軸Rxは受信要素に対応する。ROI16は大きい方の立方体内の、小さい方の立方体により表される。ROI獲得サイクル中に分析システム40に転送されるRFデータ14を減らすために、特定の深さ範囲、この場合にはd
startからd
stopまでの範囲に対応したRFデータ14のみが転送される。更に、RFデータ14は、ROI16をカバーする特定の送信角度に送信するときにのみ転送される。
図4では、この範囲の送信角度はtx
startからtx
stopの間である。このスキームによると、RFデータの量14は次式分だけ低減され得る。
【数2】
【0060】
図5は、本発明の実施形態による方法を表す図を示す。第1のステップとして、患者の解剖学的構造物、例えば心臓のスカウティング超音波画像が獲得される(15)。関与するデータレートを制限するために、スカウティング超音波画像15はより低い分解能をもち、又は、実際のデータ分析のために後で獲得される画像より低いフレームレートをサポートする。次のステップとして、スカウティング超音波画像15内のROIが選択される(116)。ROI16は特に、心臓の弁28などの解剖学的構造物の速く動く部分をカバーする。ROI16の選択は、例えば、ユーザーにより手動で実行され、又は、ROI16は、AIにより自動的に検出される。
【0061】
次に、送信スキーム及び受信スキームは、システムの超音波プローブ10に対するROI16の位置に基づいて超音波撮像システム114に適応される。送信スキームは、例えば、ROI16の外部の撮像領域18と比べて、より高い時間分解能を使用して、及び/又は、異なる種類の送信ビーム22を使用してROIに超音波照射することを有する。また一方では、受信スキームは、
図4に示される実施形態によるものであり、すなわち、送信スキームに対応した事前に規定された時間インターバルで、ROI16の深さ範囲に対応した受信されたRFデータ14のみが処理される。ROI16において、例えば8ビットの精度であるROI16の外部の領域とは異なるビット深さ、例えば12ビットの精度を適用すること、又は、ROI16の外部ではなくROI16内のドップラーシフトを測定することも考えられる。次のステップは、RF全体フレームデータを獲得すること(118)、及びROIフレームデータを獲得すること(120)であり、送信スキームによると、ROI16は、例えば、ROI16の外部の撮像領域18より高い時間分解能を使用して超音波照射される。これは、1つ又は複数のROI獲得サイクルをインターリーブすることにより実現され、この場合、撮像領域全体18が超音波照射される2つの全体獲得サイクル間にROI16のみが超音波照射される。したがって、獲得されたRF全体フレームデータ集合118の各々に対して、ROIフレームのみを含む少なくとも1つの他のデータ集合が更に獲得される(120)。受信スキームによると、ROI獲得サイクルでは、超音波プローブ10は、ROI16から反射された規定の受信ビーム24に対するROI16の深さ範囲に対応した受信されたRF信号のみを伝送するように構成され、全体獲得サイクルでは、超音波プローブ10は、撮像領域全体18に対応した受信されたRF信号を伝送するように構成される。
【0062】
次のステップは、全体フレームデータをビーム形成すること(119)、及び、ROIフレームデータをビーム形成すること(121)である。次に、ROI画像16a及び全体超音波画像18aが画像のシーケンスへと一緒に混合されて、撮像領域の時間的シーケンス、すなわちビデオを生成する。したがって、一連の超音波画像26が生成される。任意選択的に、超音波プローブ10とROI16との間の相対的な動きに対応するためにROI16を調節するために、更なるスカウティング超音波画像15として、混合された画像のうちの1つ又は複数を使用することが考えられる。したがって、この方法のステップは、複数の画像を生成するために、循環的な手法により繰り返され、ROI16の位置が継続的に調節される。
【0063】
図6は、本発明の実施形態によるシステムの概略図を示す。システムは、解剖学的構造物のスカウティング超音波画像15を獲得するように、及び、スカウティング超音波画像15内の解剖学的構造物の一部を含むROI16を自動で又は手動で選択するように構成される。更に、システムは、獲得されたスカウティング超音波画像15及び選択されたROI16に基づいて送信及び受信スキームを設定するように構成される。システムは、送信ビーム22を出射するように、及び
図6に示されるように受信ビーム24を検出するように適応されたトランスデューサーアレイ8を含む受信要素34を備える。
【0064】
更に、各トランスデューサー要素に対して1つのアナログ・デジタルコンバーター(ADC)又は、好ましくはADCアレイ32が提供される。ADCは、受信されたエコー信号をデジタル化するように、及び、RFデータ14としてそれらをエンコーダ42に転送するように適応される。エンコーダ42は、例えば、例えば本明細書に説明されている受信スキームによるROIの深さ範囲に対応したRFデータといった関連データを一時的に記憶するように適応されたプローブ内メモリ50を備える特定用途向け集積回路(ASIC)である。エンコーダ42は、分析システム40にインターフェース36を介して選択されたRFデータ14を転送するように構成される。システムにより設定された受信スキームによると、エンコーダ42は、特にROI獲得サイクルの送信ビーム22に対応した受信ビーム24といった、ROI16から反射された規定の受信ビーム24のうちの少なくとも幾つかに対するROI16の深さ範囲に対応した受信されたRFデータ14のみを転送するように適応される。エンコーダ42は、特に全体獲得サイクルの送信ビーム22に対応した受信ビーム24といった、ROI16の外部のFOVにより反射された受信ビーム24のうちの少なくとも幾つかに対する撮像領域18の深さ全体に対応した受信されたRFデータ14を伝送するように更に構成される。
【0065】
インターフェース36は、データの伝送に関して限られた容量をもつので、エンコーダ42は好ましくは、インターフェース36を介して転送されるデータストリームを制御するために、及び均一化するために、バッファとしてプローブ内メモリ50を使用するように適応される。例えば、ROI16が、ROI16の外部の領域より高い周波数を使用して撮像される場合、転写されるデータ量は時間に応じて変わり、ROI16のみが撮像されるときに比べて、撮像領域全体18が撮像されるときは常に大きい。このバランスをとるために、データを留めること、すなわち、多量のRFデータ14が生成されたとき、生成されたRFデータ14のうちの幾つかをプローブ内メモリ50に記憶し、全体的に比較的少量のRFデータ14が生成されたとき、その比較的少量の現在生成されたRFデータ14と一緒に、記憶されたデータを転送することにより、データがバッファリングされる。したがって、データピークを一切伴わずにデータの均一なストリームが転送される。好ましくは、全ての関連データが、比較的一定のデータストリームで少なくとも1つのROI獲得サイクルと1つの全体獲得サイクルとの両方を含む1つのサイクル全体内において伝送され得、特にデータレートが所定の閾値より高くならない。有益には、エンコーダ42は、転送されるデータの更なる最小化を実現するために、例えばウェーブレット圧縮といったRFデータ14を圧縮する手段を更に備える。
【0066】
システムは、伝送されたRFデータ14を受信するように、及び、場合によっては伝送されたRFデータ14を圧縮解除するように、及び、伝送されたRFデータ14を、ビーム形成部を含むデータ処理ユニット12に提供するように構成されたデコーダ44を含む分析システム40を更に備える。データ処理ユニット12を使用することにより、分析システム40は、RFデータ14を処理するように、及び超音波画像26を生成するように適応される。
【0067】
図7及び
図8は、本発明の実施形態による方法の別の概略表現を示す。
図7は、ROI16が選択される、及び、対応するTX及びRXスキームが設定される第1のステージを示す。その中でまず、TXビーム形成パターン38aがトランスデューサーアレイ8に送信される。トランスデューサーアレイ8は送信ビーム22を出射し、対応する受信ビーム24を検出し、対応する受信ビーム24は、RXビーム形成部38bを介してデジタル化され、及び処理される。次に、対応するBモード画像52がROI16を選択するために使用される。次に、選択されたROI16に従って、対応するTX及びRXスキーム46、48が選択され(148)、トランスデューサーアレイ8に再度向けられる。
図8に示されるように、TXスキーム46が次にトランスデューサーアレイ8を介したTXビーム形成38aのために使用され、トランスデューサーアレイ8により受信された入来信号が設定されたRXスキーム48に従ってRXビーム形成部38bを介してデジタル化され、及び処理される。このRXスキーム48により、撮像領域18の1つ又は複数のROI画像16aと全体超音波画像18aとが生成される。次に、これらの画像が、一連の超音波画像26を生成するために最終ステップ122において混合される。
【0068】
図9は、本発明の実施形態によりROI獲得を全体獲得とインターリーブする概念を示す。本概念は、より低い周波数を使用する、すなわち単位時間当たりにより少ない全体超音波画像18aを取得することによるのではあるが撮像領域全体18が撮像されることも維持しながら、より高い周波数においてROI16の画像を取得するもの、すなわち単位時間当たりにより多くのROI画像16aを取得するものである。この実施形態では、全体超音波画像18aごとに3つのROI画像16aが存在する。時間軸145は、画像が取得される順序を示す。したがって、各全体超音波画像18aの後、次の全体超音波画像18aが取得される前に、3つのROI画像16aが連続して取得される。好ましくは、獲得された画像の各々における対応するTX及びRXイベントの間の時間オフセットは一定である。これは、画像を一緒に混合すること、及び、対応する結果として得られるビデオの滑らかな動きを実現することをより容易にする。概して、1つの全体超音波画像18aとn-1個のROI画像16aとを織り交ぜることにより、及び、前述の低減因子R
frameに基づいて、データレートの全体的な低減が次式の低減因子R
totにより説明される。
【数3】
【0069】
したがって、
図9に示される例におけるデータレートの総低減はR
tot=(3R
frame+1)/4である。特定のROIのサイズに応じて、2から5の間の総データ低減因子R
totが結果的に実現され得る。
【0070】
図10は、
図9に示されるデータに基づいており、全体超音波画像18aはROIフレームレートと同じフレームレートまでアップサンプリングされる。バーのハッチング部分が測定されたRFデータ14に対応するのに対し、バーの空いた部分はアップサンプリングされたデータに対応する。全体超音波画像18aのアップサンプリングは、単純な線形な時間的補間方法により実現される。したがって、前の及び後の獲得された全体超音波画像18aに基づいて補間された全体画像18bが、獲得されたROI画像16aの時間ステップに対応した時間ステップで生成される。したがって、ROI画像16aが存在するので、補間された全体画像18bと元の測定された全体超音波画像18aとを含む同数の撮像領域全体の画像が生成される。次に、アップサンプリングされた全体フレーム画像が、撮像領域18の全体ビデオシーケンスを生成するために、ROI画像16aと混合される。結果として得られるビデオは、ROI16の外部の領域に比べて、ROI16において質が高く、すなわち、それは時間的により正確である。画像の補間中、ROI16とROI16の外部の領域との間の動きが考慮されることが考えられる。これは、ニューラルネットワークを使用することによりサポートされる。更に、混合は上述のように、すなわち2つの画像の強度を加算すること、又は平均化することによりピクセルベースで画像領域内において実施され、又は、混合はガウシアン強度プロファイル、特に重み付けされたガウシアン強度プロファイルを使用することにより、実際の画像が生成される前にRF領域において実施されてもよい。画像領域における混合は超音波画像取得システムの形状から生じる自然座標である極座標において行われ、又は、混合はスキャン変換中に極座標から計算されたデカルト座標において行われ得る。
【0071】
図9及び
図10に示されている画像は、例えば、分散波により、又は、
図2に示されているものと同様の角度指定平面撮像モードにより獲得される。異なる送信イベントが重なる
図3に示されている実施形態により画像を獲得するとき、
図11に示されるインターリーブスキームが適用される。同様に、バーのハッチングエリアが実際に測定されたRFデータ14を表すとともに、バーの空いた部分は画像の補間によりもたらされる。ROI16に対応する時間軸154に近い中央エリアでは、全部で3つの異なる送信ビーム22(TX1、TX2、及びTX3)によりもたらされる画像データが重なるのに対し、ROI16の外部のエリアに対応した図の上部(TX3)及び下部(TX1)では、1つの送信ビーム(それぞれTX1及びTX3)のみが実際の画像データに寄与する。
図9及び
図10に示されている実施形態と同様に、残りの空いた空間は補間により充填され、よって、画像が各時間ステップにおいてエリア全体を示すようにアップサンプリングされる。同様に、次に、補間された全体画像18bがビデオシーケンスを生成するために一緒に混合され、ROI16は時間的により正確に表される。
【0072】
図12は、本発明の実施形態による、及び本発明の方法を実施するように構成された超音波システム200の概略図を示す。超音波システム200は、特に、
図5に概略的に示されているように動作するように構成される。超音波システム200は、CPU204、GPU206、及びデジタル記憶媒体208、例えばハードディスク又はソリッドステートディスクを備える通常の超音波ハードウェアユニット202を含む。コンピュータプログラムが、CD-ROM210から、又はインターネット212を介してハードウェアユニットにロードされる。ハードウェアユニット202は、キーボード216と任意選択的にタッチパッド218とを備えるユーザーインターフェース214に接続されている。タッチパッド218は、撮像パラメータを表示するためのディスプレイデバイスとしても機能する。ハードウェアユニット202は、トランスデューサーアレイ8と任意選択的にプローブ内メモリ50(図示されていない)とを含む超音波プローブ10に接続されている。超音波プローブ10は、撮像領域に超音波照射するように、及び、エコー信号を受信するように、及び、受信されたエコー信号をデジタル化するように、及び、デジタル化されたRFデータをデータ処理ユニット12に伝送するように構成され、データ処理ユニット12は、CPU204及び/又はGPU206の一部である。獲得された超音波画像26は例えばスクリーン、テレビセット、フラットスクリーン、プロジェクターなどの任意の市販のディスプレイユニットであるスクリーン226に表示される。
【0073】
上述の説明は本システムの例示に過ぎないことを意図したものであり、添付の特許請求の範囲を任意の特定の実施形態又は一群の実施形態に限定すると解釈されてはならない。したがって、本システムは例示的な実施形態を参照しながら特に詳細に説明されているが、後述の特許請求の範囲に記載された本発明のより広い及び意図される趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更例及び代替的な実施形態が当業者により考えられてもよいことも理解されなければならない。したがって、本明細書及び図面は例示的な手法と考えられ、添付の請求項の範囲を限定することを意図したものではない。
【符号の説明】
【0074】
8 トランスデューサーアレイ
10 超音波プローブ
12 データ処理ユニット
14 RFデータ
15 スカウティング超音波画像
16 ROI
16a ROI画像
18 撮像領域
18a 全体超音波画像
18b 補間された全体画像
22 送信ビーム
24 受信ビーム
26 一連の超音波画像
27 心室
28 弁
30 心臓
32 ADCアレイ
34 受信要素
34a 受信要素軸
35a 送信イベント軸
36 インターフェース
38 ビーム形成部
38a TXビーム形成部
38b RXビーム形成部
40 分析システム
42 エンコーダ
44 デコーダ
46 TXスキーム
48 RXスキーム
50 プローブ内メモリ
52 Bモード
114 TX/RXスキームを適応させる
116 ROIを選択する
118 RF全体フレームを獲得する
119 全体フレームをビーム形成する
120 ROIフレームを獲得する
121 ROIフレームをビーム形成する
122 ビデオ/画像の混合
148 TX及びRXスキームを選択する
154 時間軸
200 超音波システム
202 超音波ハードウェアユニット
204 CPU
206 GPU
208 デジタル記憶媒体
210 CD-ROM
212 インターネット
214 ユーザーインターフェース
216 キーボード
218 タッチパッド
226 スクリーン