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特許7583842モニタリングされる細胞成長のためのインキュベータ、システム、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】モニタリングされる細胞成長のためのインキュベータ、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241107BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12Q1/06
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000887
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2019562345の分割
【原出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2023033381
(43)【公開日】2023-03-10
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】17171182.3
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ボルフ ベンテ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヨリー
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/052716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタリングされる細胞培養成長のためのインキュベータ(1)であって、
成長中の細胞培養を含有する少なくとも1つの細胞培養容器(9)を収容するためのインキュベータチャンバ(2)と、
前記インキュベータチャンバの物理的状態を特徴付ける少なくとも1つのチャンバパラメータを、少なくとも1つの第1測定値の形で測定するためのセンサデバイス(2b;3)と、
前記細胞培養の細胞の成長を特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを、少なくとも1つの第2測定値の形で測定するための少なくとも1つの測定デバイス(30)であって、前記測定デバイスは細胞数測定デバイスであり、前記成長パラメータは前記細胞培養容器(9)の試験区分内の細胞の数を表す、少なくとも1つの測定デバイス(30)と、
データ記憶デバイス(4a)、及び前記少なくとも1つの第1測定値と前記少なくとも1つの第2測定値とを細胞モニタリングデータの形で検出するように、そして前記細胞モニタリングデータを前記データ記憶デバイス内に記憶するように構成されている、データ処理デバイス(4b)と
を有しており、
前記センサデバイス(2b)が、インキュベータ扉の開放及び/又は閉鎖を、前記少なくとも1つの第1測定値の形を成すチャンバパラメータとして検出するように構成され、前記チャンバパラメータは、前記インキュベータ扉の開放の期間を含む、インキュベータ。
【請求項2】
前記チャンバパラメータは、前記インキュベータ扉の開放の回数を含む、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項3】
前記データ処理デバイスは、前記細胞モニタリングデータの関数として細胞培養の成長目標を計算するためのプランニングプログラムを実行するように構成されている、請求項1又は2に記載のインキュベータ。
【請求項4】
前記成長パラメータが、
- 細胞培養容器内の細胞層のコンフルエンス、
- 細胞培養容器の試験区分内の細胞の数、
- 前記細胞層の細胞の形態、
- 細胞接着
を含む長パラメータの群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項5】
前記インキュベータ及び/又は前記インキュベータのデータ処理デバイス(4b)及び/又は前記インキュベータの制御デバイス(4)及び/又は前記少なくとも1つの測定デバイス(30)が、後述のコンフィギュレーション、すなわち
- 前記インキュベータによって確定されており、且つ/又は前記インキュベータのユーザーインターフェイスデバイスを介してユーザーによって影響を及ぼされているか又は確定されている、予め決められたタイムプランに基づく時点に細胞モニタリングデータを検出すること、
- 前記インキュベータによって確定されており、且つ/又は前記インキュベータのユーザーインターフェイスデバイスを介してユーザーによって影響を及ぼされているか又は確定されている規定の時間間隔を置いて細胞モニタリングデータを検出すること
のうちの少なくとも1つに基づいて、前記細胞モニタリングデータを検出するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項6】
前記インキュベータ及び/又は前記インキュベータのデータ処理デバイス(4b)及び/又は前記インキュベータの制御デバイス(4)及び/又は前記少なくとも1つの測定デバイス(30)が、下記事象、すなわち
〇 前記センサデバイスによって測定された第1測定値が規定の条件を満たすという事象、
〇 前記インキュベータによって認識された、ハードウェア又はソフトウェアに関する前記インキュベータのエラー状態の事象、
〇 前記インキュベータの制御デバイス又は前記測定デバイスの通信デバイスを介して、細胞モニタリングデータの検出を始動させる制御信号が受信され、前記制御信号が外部のデータ処理デバイスによって発動されるか、或いはユーザー入力によって発動され事象、
から成る群から選択された少なくとも1つの規定の事象に依存して、前記細胞モニタリングデータが検出されるように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項7】
前記インキュベータのデータ処理デバイス又は前記制御デバイス又は前記測定デバイスによって実行される制御プログラムが、前記制御プログラムによって採用された評価法が前に測定された第2測定値を評価した後で前記細胞モニタリングデータの測定を始動させるように、前記インキュベータ及び/又は前記インキュベータのデータ処理デバイス(4b)及び/又は前記インキュベータの制御デバイス(4)及び/又は前記少なくとも1つの測定デバイス(30)が構成されている、請求項に記載のインキュベータ。
【請求項8】
評価プログラムが、満たされた条件に基づいて細胞モニタリングデータの測定の始動を可能にし、前記条件が下記条件、すなわち
〇 前に測定された少なくとも1つの第2測定値が少なくとも1つの参照値から逸れているか、又は予め決められた範囲から外れている、
〇 前に測定された2つ又は複数の第2測定値から成る少なくとも1つの推移が、少なくとも1つの参照推移から逸れているか、又は予め決められた参照範囲から外れている、
という条件の群から選択することができる、請求項7に記載のインキュベータ。
【請求項9】
前記インキュベータがユーザーインターフェイスデバイス(8)を有しており、前記ユーザーインターフェイスデバイス(8)を介して、前記インキュベータも、前記少なくとも1つの測定デバイスも、ユーザーによって制御可能である、請求項1から8までのいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項10】
前記チャンバパラメータは、前記インキュベータ扉の全開放時間を含む、請求項1に記載のインキュベータ
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のインキュベータ内の少なくとも1つの細胞培養の成長をモニタリングするための方法であって、
前記インキュベータの前記インキュベータチャンバの少なくとも1つのチャンバパラメータを測定し、前記チャンバパラメータが、前記インキュベータの少なくとも1つのセンサデバイスによって、前記インキュベータチャンバの物理的状態を少なくとも1つの第1測定値の形で特徴付ける、ステップ(202a)と、
前記インキュベータの少なくとも1つの測定デバイスによって、前記細胞培養の細胞の成長を少なくとも1つの第2測定値の形で特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを測定するステップ(202b)と、
前記少なくとも1つの第1測定値と前記少なくとも1つの第2測定値とを、データ処理デバイスによって、細胞モニタリングデータの形で検出するステップ(203)と、
前記細胞モニタリングデータをデータ記憶デバイスによって記憶するステップ(205)と
を有する、インキュベータ内の少なくとも1つの細胞培養の成長をモニタリングするための方法。
【請求項12】
前記方法が、さらに、
- 前記細胞モニタリングデータに依存して、ユーザーインターフェイスデバイスによって細胞モニタリングデータに関する情報をユーザーに出力するか又はデータ記憶デバイス内に細胞モニタリングデータを記憶する、作業ステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、さらに、
細胞モニタリングデータ間の相関を決定し、前記相関に関する情報を記憶する
ステップを有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記作業ステップは、成長目標を計算するためのプランニングプログラムがデータ処理デバイスによって実行されるのを可能にする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記作業ステップは、細胞モニタリングデータに依存してデータ処理デバイス(4b;110a)によって計算された成長目標到達時点が、ユーザーインターフェイスデバイス(8)でーザーに示されるとを可能にする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタリングされる生体細胞成長のためのインキュベータに関する。本発明はさらに、モニタリングされる生体細胞成長のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなインキュベータによって、生物学的及び医学的ラボラトリにおいて細胞培養内の細胞が、制御された周囲条件下で保持され、ひいては生きている細胞の成長がイン・ビトロ(in vitro、「試験管内で」)で可能になる。このために、周囲から隔離されたインキュベータチャンバ内部の雰囲気の温度及びガス組成もしくは空気湿度が、インキュベータの器具デバイスによって所望の値に保持される。真核細胞はCO2インキュベータを必要とする。雰囲気は、所定のCO2含量及びO2含量と、所定の空気湿度とによって形成される。好適な温度はしばしば37℃である。
【0003】
細胞は、生物学、医学、及び薬学における種々様々な用途のために必要とされる。この場合重要なのは、細胞が所望の状態で、すなわち再現可能な形式で提供されることである。不死化細胞株がこれに特に適した前提条件を提供する。それというのも、これらの細胞株の場合、遺伝的に一致する細胞型、およびほぼ無制限の数の細胞分裂サイクルが可能であるからであり、また不死化細胞株は、-196℃で温度調節された長期貯蔵所における凍結(及び解凍)を可能にする。
【0004】
細胞の成長はインキュベータ内の周囲条件に特に決定的に依存する。インキュベータチャンバは従って一方では、定期的に清浄化・消毒処置によってハンドリングされる。他方では、インキュベータは特に高価値の電子系及びセンサ系を有している。センサは通常、定期的に較正される。しかしながら、実際には、必要なメンテナンス処置が正確に遵守されていると考えられるにもかかわらず、細胞成長は期待される結果を示さない。このことは不死化細胞株にさえ当てはまる。
【0005】
成長プロセスに関する情報を得るために、細胞培養もしくはその細胞は、視覚的検査及び形態的試験、並びに細胞カウントをインキュベータ外部で施される。このような処置はスナップショットをもたらす。スナップショットは、この時点までの細胞成長を判断するのに役立つことができる。しかし、このような処置は細胞成長を中断し、そして細胞培地の運動によって、そして少なくともラボラトリ空間雰囲気中の少なくとも一時的な暴露によって、成長を妨げる。このように試験された細胞が信頼性高くさらに発生することは疑わしい。さらに、インキュベータから細胞培養容器を取り出すと、インキュベータ扉の開放時にインキュベータ雰囲気が撹乱されることに基づき、インキュベータ内の他の細胞培養も撹乱されることになる。
【0006】
細胞培養の観察のための付属装置が知られている。これらの付属装置はインキュベータ内に配置され、これらの付属装置によって、外部コンピュータ上に、判定された細胞培養成長に関する情報を獲得することができる。この場合、付属装置はインキュベータチャンバから取り出す必要はない。こうして、ユーザーは、例えば画像伝送及び/又は画像評価によって、細胞培養成長の状態に関してコンピュータから情報を得ることができる。このような解決手段において満足度が低いと思われるのは、特に付属装置及びインキュベータの調達、これらのメンテナンスに関して、このようなシステムの設備的な手間が全体的に多くかかり、また、操作時にも多くの手間がかかることである。付属装置はさらに、インキュベータとは無関係に運転されるので、ユーザーによるインキュベータ又は付属装置の軽率な調整によって、装置の機能不良又は損傷を招くおそれがある。例えば、インキュベータの高温消毒時に温度感受性の装置をインキュベータチャンバ内に入れたままにすることがあり、もしくは温度非感受性の装置を不必要に取り出すこともある。また、一時的に使用していない付属装置をインキュベータチャンバ内に挿入したままにして、気候を攪乱するおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の根底を成す課題は、所望の状態の細胞を、より良好に再現可能且つ効率的に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を、請求項1に記載のインキュベータ、請求項10に記載のデータ交換システム、請求項11に記載のシステム、及び請求項12に記載の方法によって解決する。有利な構成が特に従属請求項の対象となっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明による、モニタリングされる細胞培養成長のためのインキュベータは、成長中の細胞培養を含有する少なくとも1つの細胞培養容器を収容するためのインキュベータチャンバと、前記インキュベータチャンバの物理的状態を特徴付ける少なくとも1つのチャンバパラメータを、少なくとも1つの第1測定値の形で測定するためのセンサデバイスと、前記細胞培養の細胞の成長を特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを、少なくとも1つの第2測定値の形で測定するための少なくとも1つの測定デバイスと、データ記憶デバイス、及び前記少なくとも1つの第1測定値と前記少なくとも1つの第2測定値とを細胞モニタリングデータの形で検出するように、そして前記細胞モニタリングデータを前記データ記憶デバイス内に記憶するように構成されている、データ処理デバイスとを有している。
【0010】
公知のインキュベータとは異なり、本発明のインキュベータによって、情報センターとして役立つ器具形式(Apparategattung)が導入される。この器具形式は、個々のインキュベータ内の細胞の成長に関する情報を収集し、そしてこのようにして、インキュベータ内の細胞培養のための標準化されたアプローチを可能にする参照データを獲得する。インキュベータの高価値で正確に較正されたセンサ系は、インキュベータの雰囲気条件下、特にCO2、O2、相対空気湿度、及び/又は扉開放の回数もしくは期間の条件下におけるこのインキュベータ内の細胞成長を特徴付ける信頼性高いデータセットを収集するための基礎を提供する。インキュベータ内部パラメータ、特にチャンバパラメータは、測定デバイスによって測定された成長パラメータと一緒に収集されるので、パラメータ値間の結果として生じる相関、及びこれらの変化を決定することが可能になる。こうして、インキュベータ内で細胞モニタリングデータが獲得される。細胞モニタリングデータは、将来的にインキュベータ内で成長するべき細胞培養の発生を評価するための参照データとして使用することができる。インキュベータの環境条件を第1測定値として、そして成長パラメータを第2測定値として同時に検出し、そして両測定値を記憶することによって、これらの情報はただ1つの装置内の中央に存在する。情報センターとしてのインキュベータの機能において、このようなインキュベータはネットワークに接続されていてもよく、そしてこのようなネットワークを介して、検出されたデータを、公にアクセス可能であるか又は定義されたユーザーサークルだけがアクセス可能であるデータバンクに送信し、そこに預託することができる。このようなデータの提供によって、検出された環境条件下の細胞成長に関する情報をあらゆるユーザーのために収集し、提供し、そしてまたドキュメント化することが初めて可能になる。このような細胞モニタリングデータを、インキュベータの検出された周囲条件データと関連付けることが可能である。細胞培養の標準化がこうして可能になる。また、検出された細胞データ及び周囲条件データを作業グループ間で伝達することも著しく容易になり、このことはグローバルでもある。このように、有効データ及びフィードバック可能な結果に基づいてユーザー間で連携することを支援することができる。これにより、細胞培養を再現可能にすることができる。特に、成長結果が悪いときに、原因分析を行うには細胞培養の測定値だけでは十分ではない。インキュベータのチャンバパラメータデータ、すなわち周囲条件データも利用可能であり、原因分析の際に影響を与え得ることにより、原因分析を容易にすることが今や初めて可能になる。
【0011】
閉じられたインキュベータチャンバの内部と、チャンバ内に設けられた部分とは1つの物理的システムを形成する。このシステムは最適な場合には、インキュベータによって正確に制御することができる。このためには特に、インキュベータの、正確に作業して好ましくは較正可能なセンサデバイスが役立つ。このような閉じられたシステムは、細胞培養の生存環境を定義する。これにより、このような閉じられたシステムの物理的状態の検出は、細胞培養の生存状況もしくは成長状況の正確な検出を可能にする。このような配置関係(Konstellation)はインキュベータをデータ収集センターとして使用するための理想的な前提条件をもたらす。特に、このような配置関係の利点は、インキュベータチャンバの全ての処置及び動作に関する正確な情報が存在しており、これらの処置及び動作がインキュベータもしくはインキュベータの電子制御デバイス自体によって制御され、すなわち特に始動されることである。
【0012】
インキュベータによって制御される、又は少なくとも好ましくはインキュベータのセンサによって検出される特に重要な動作は、インキュベータ扉、特にインキュベータチャンバのチャンバ扉の開放及び/又は閉鎖である。センサデバイスは、インキュベータ扉の開放及び/又は閉鎖を、チャンバパラメータとして検出するように構成されていることが好ましい。それというのも、インキュベータ扉の開放及び/又は閉鎖はインキュベータチャンバの物理的状態であるからである。このようなチャンバパラメータはその都度、時間依存的に記憶されることが好ましい。「扉開」及び/又は「扉閉」という情報は、特に時間依存的に、相応のインキュベータ扉パラメータの値の形で記憶することができる。経験によれば、インキュベータ扉の開放、及びこれに相応する、インキュベータチャンバ内部の雰囲気変化は、特に開放が頻繁に行われる場合(このことは、インキュベータがいくつかの細胞培養を備えている場合に生じ得る)に、細胞成長に著しい影響を及ぼす.従って、インキュベータ扉パラメータを成長パラメータと相関させることが、特に両者が時間依存的に記憶される場合には特に有用である。チャンバパラメータは特にインキュベータチャンバ内に存在する雰囲気条件、例えばCO2、O2、N2、相対空気湿度、及び/又は扉開放の回数もしくは期間である。
【0013】
インキュベータ自体によって制御される動作には、さらに「インキュベータ雰囲気の温度」という物理的状態に影響を及ぼす全ての温度調節ステップ、特に約100℃から120℃まで、又は180℃又は200℃までの高温相による自動消毒ステップも含まれる。これらのステップは空のインキュベータチャンバにおいて実施される。インキュベータもしくはその制御デバイスは、所定の時点に温度調節回路の目標温度として設定された温度、又は温度調節の結果検知された温度値を細胞モニタリングデータ中に記憶するように構成されることが好ましい。
【0014】
インキュベータ自体によって制御される動作は、さらにガス交換動作を含むことができる。これらのガス交換動作に際しては、時間当たりで所定の体積を有する体積流に基づいて、インキュベータ雰囲気の部分が交換され、これにより、特にインキュベータ扉の開放後に望ましくない形でガス組成が変化した場合に、特に調節動作の構成部分としてインキュベータ雰囲気の所望のガス組成を調整する。相応する被測定物理的状態は、この場合には、相対ガス濃度、又は相対空気湿度である。インキュベータもしくはその制御デバイスは、所定の時点に温度調節回路の目標値として設定された相対ガス濃度、又は相対ガス濃度の結果検知されたガス値、特にCO2及び/又はO2値を細胞モニタリングデータ中に記憶するように構成されることが好ましい。このようなガス調節のために、空気湿度の調節を考えに入れることもできる。空気湿度の調節は、センサデバイスの空気湿度センサによって、特に相対空気湿度を測定するためのセンサによって行われる。
【0015】
インキュベータ自体によって制御される動作は、さらにガス移動動作を含むことができる。これらのガス移動動作において、例えば時間当たり所定の体積を有する体積流に基づいて、そして特にインキュベータチャンバ内の1つ又はいくつかの可変又は一定の流れ方向で、インキュベータ雰囲気の部分が移動させられる。このことは特に、インキュベータチャンバ内部の均一な雰囲気をもたらすことにより、特に異なる位置にある細胞培養容器に時間的に平均して、同じ雰囲気を供給することができる。
【0016】
測定デバイスは、このような細胞培養の細胞の成長を特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを測定するように構成されている。成長パラメータは、測定デバイスが少なくとも1つのpH検知器を有しており、pH検知器によって、培地のpH値を測定又は評価することができるときには、細胞培養の細胞培地のpH値であってよい。pH検知器は、これが例えば細胞培養の光学測定、特に細胞培地の色認識に基づくことにより、非侵襲性であってよい。培地はpH依存性色素を備えていることにより、pH値の視覚的な検査が可能になる。このような状況は記載のように光学器具による測定のためにも利用することができる。
【0017】
測定デバイスが細胞カウント測定デバイスとして構成されている場合には、成長パラメータは、細胞培養容器の試験区分内の細胞の数を表すことができる。このために、測定デバイスは好ましくは画像取得センサ、例えばCMOSセンサを有している。このセンサによって、カウントされるべき細胞の画像又はフィルムが取得される。画像とは好ましくは、特に画像センサの感光性エレメントによって受信された光強度の値を含有するデータのデータセットを意味する。しかしながら、本発明の枠内において、画像が光学的画像、特に細胞培養の画像を表すことは必ずしも必要でない。画像は次いで、好ましくは構成部分として本発明によるインキュベータ又はシステム内へ組み込まれている、ソフトウェアベースの画像認識によって、特に粒子認識及び粒子カウントによって評価することができる。さらに、測定デバイスの構成部分として光源が設けられていてよい。光源の光線は好ましくは細胞培養をとらえ、そして特にこの細胞培養に向けられる。さらに、測定デバイスの構成部分として、光源から放射された光、及び/又はセンサによって検出された光に影響を与える少なくとも1つの手段が設けられていてよい。光学系によって、反射光顕微鏡分析、特に位相差顕微鏡分析又は暗視野顕微鏡分析を実現することができる。
【0018】
成長パラメータは、細胞培養容器内の細胞層(Zellrasens)のコンフルエンス(Konfluenz)、すなわち細胞密度を表すことができる。このためには、測定デバイスはコンフルエンス測定デバイスとして構成されていることが好ましい。これを目的として、測定デバイスは、光学センサを有することが好ましく、また、測定デバイスの構成部分として光源を有することが好ましい。光源の光線は好ましくは細胞培養をとらえ、そして特にこの細胞培養に向けられる。さらに、測定デバイスの構成部分として、光源から放射された光、及び/又はセンサによって検出された光に影響を与える少なくとも1つの手段が設けられていてよい。このような手段は、レンズ、プリズム、光学フィルタ、ミラーエレメント、光ファイバーを含む有利な手段の群から選択されている。光学系によって、反射光顕微鏡分析、特に位相差顕微鏡分析又は暗視野顕微鏡分析を実現することができる。このようなセンサは好ましくは空間解像センサ、例えばCMOSセンサ又はカメラであることが好ましい。このように1つのセンサによって、特に細胞層の画像を取得することができる。このような画像は次いで、ソフトウェアベースの画像認識によって、特にエッジによって取り囲まれた構成物のエッジ検知、及びエッジカウントによって評価することができる。これらの構成物は、細胞層の接着細胞と解釈することができる。
【0019】
測定デバイスはこのために、細胞培養の細胞層で電気的測定を行うことによって、特に成長中の細胞層の電気抵抗もしくはインピーダンスを測定することによって、特に時間解像測定によって、コンフルエンスを測定するように構成されていてよい。細胞層は、その特徴付けのために使用し得る電気容量を形成する。このために、細胞培養容器は好ましくは電極、特に平坦電極を有している。この電極の上方に細胞層が形成される。このような電極はインキュベータの測定デバイスに電気的に接続可能に形成されている。このような測定技術は特にインピディメトリもしくはECIS(英語:electric cell-substrate impedance sensing(電気的細胞-基質間インピーダンス感知))という呼称で知られている。
【0020】
細胞培養容器の基質上の細胞層のコンフルエンス状態を判定するための別の方法は、細胞を放射性マーキングし、且つ/又は細胞染色によってマーキングし、そして反射光顕微鏡分析、特に位相差顕微鏡分析又は暗視野顕微鏡分析によって観察することを含むことができる。コンフルエンス分析のための蛍光顕微鏡分析も可能である。この場合、蛍光でマーキングされたタンパク質/粒子によって細胞をマーキングし、そしてこのようにして可視化する。
【0021】
成長パラメータはさらに、細胞層の細胞の形態を表すことができる。細胞形態は、細胞の所定の成長段階に関して特徴的であり得る。懸濁液中の非接着細胞は大抵の場合球状に形成されているのに対して、これらは平坦基質に接着すると偏平になり、基質側ではほぼ平面状に形成される。細胞形態は細胞種もしくは細胞株に関して特徴的であり得、形態測定によって識別することができる。細胞形態はさらに、形態測定によって特定可能な、細胞のアポトーシス状態又は壊死状態を表すこともできる。
【0022】
従って、測定デバイスは、形態測定デバイスとして構成されていることが好ましい。これを目的として、測定デバイスは光学センサを有することが好ましく、また、測定デバイスの構成部分として光源を有することが好ましい。光源の光線は好ましくは細胞培養をとらえ、そして特にこの細胞培養に向けられる。さらに、測定デバイスの構成部分として、光源から放射された光、及び/又はセンサによって検出された光に影響を与える少なくとも1つの手段が設けられていてよい。このような手段は、レンズ、プリズム、光学フィルタ、ミラーエレメント、光ファイバーを含む有利な手段の群から選択されている。光学系によって、反射光顕微鏡分析、特に位相差顕微鏡分析又は暗視野顕微鏡分析を実現することができる。このようなセンサは好ましくは空間解像センサ、例えばCMOSセンサ又はカメラであることが好ましい。このように1つのセンサによって、特に細胞層の画像を取得することができる。このような画像は次いで、ソフトウェアベースの画像認識によって、特にエッジによって取り囲まれた構成物のエッジ検知、及びエッジカウントによって評価することができる。これらの構成物は、細胞層の接着細胞と解釈することができる。
【0023】
測定デバイスは、少なくとも1つの第2測定値、すなわち少なくとも1つの成長パラメータの測定値をデジタル化し、細胞モニタリングデータとして提供するために、アナログ-デジタル変換器を有することが好ましい。測定デバイスは、好ましくは特に第2データ処理デバイスとも呼ばれる(固有の)データ処理デバイス、特にマイクロプロセッサと、好ましくは特に第2データ記憶デバイスとも呼ばれる固有のデータ記憶デバイスとを有している。測定デバイスは、インキュベータのデータ処理デバイスとは無関係に少なくとも1つの第2測定値を測定するように、もしくはこのような測定の実施を、特に第2データ処理デバイスによって実行される固有制御プログラム(第2制御プログラム)に基づいて制御するように構成されていることが好ましい。
【0024】
しかしながら、インキュベータのデータ処理デバイス(第1データ処理デバイス)が、少なくとも1つの第2測定値の測定実施を制御することも可能であり、そして特に有利である。これにより、エネルギー消費量の少ない、効率的な細胞モニタリングデータ検出を実現することができる。実施時には、インキュベータチャンバ内部の電気デバイスの作動が場合によっては廃熱をもたらすことに注意しなければならない。この廃熱はチャンバ雰囲気を許容できない程度に加熱する。従って、インキュベータの制御デバイスは、電気デバイス、特にインキュベータチャンバ内部の少なくとも1つの測定デバイス及び/又はハンドリングデバイスの作動を、温度センサによって検出されたチャンバ雰囲気の温度に依存して制御するように特に構成されていてよい。インキュベータの制御デバイスは、少なくとも1つの温度調節デバイスによるチャンバ雰囲気の温度調節と、インキュベータチャンバ内部の電気デバイスの作動とを互いに依存させた状態で制御することにより、チャンバ雰囲気の不所望の加熱を補償するように特に構成されていてよい。
【0025】
第1測定値及び第2測定値の検出、及び/又はこれらの記憶は、好ましくはインキュベータのデータ処理デバイスもしくは制御デバイスによって制御されて、特にモニタリングプログラムの規定値に基づいて行われる。モニタリングプログラムは、インキュベータの制御プログラムの構成部分、特にサブプログラムであってよい。
【0026】
データ処理デバイスは、インキュベータの機能を制御する、インキュベータの制御デバイスの構成部分であることが好ましい。制御デバイスの機能は特に電子回路によって発揮される。制御デバイスはマイクロプロセッサを有することができる。マイクロプロセッサは、データ処理デバイスを含むことができる。制御デバイス及び/又はデータ処理デバイスは、制御ソフトウェア又は制御プログラムとも呼ばれる制御方法を実施するように形成されていることが好ましい。インキュベータ及び/又は制御デバイスの機能は方法ステップで記述することができる。これらは、制御プログラムの構成部分として、特に制御プログラムのサブプログラムとして実現することができる。
【0027】
制御デバイスは本発明の枠内では概ね、特にデータ処理デバイス、特にデータを処理するための計算ユニット(CPU)及び/又はマイクロプロセッサを有しているか、又はデータ処理デバイスである。インキュベータの制御デバイスのデータ処理デバイスはまた、ハンドリングプロセス及び/又は個々のハンドリングを制御するように構成されていても有利である。これらの個々のハンドリングはインキュベータの1つ又はいくつかの、特に任意のハンドリングデバイスによって実施される。
【0028】
データ処理デバイスは或いは、インキュベータ外部にインキュベータから分離されて配置された装置であることが好ましい。このような装置は外部装置、もしくは外部データ処理デバイスとも呼ばれる。データ処理デバイスとインキュベータとはデータ接続されていることが好ましく、そしてデータ交換のためのネットワークの構成部分であることも好ましい。データ処理デバイス及びインキュベータは、この事例では特に、細胞培養の成長をモニタリングするための本発明によるシステムの構成部分である。このようなネットワーク構成部分はここではネットワーク機器とも呼ばれる。少なくとも1つの測定デバイスもネットワーク機器として構成されていてよい。データ交換のためのネットワークは、主として非階層的なネットワーク、特にそのパーティシパント(Teilnehmer)、つまりネットワーク機器が少なくとも部分的又は全体的にピアツーピア型ネットワークアーキテクチャを形成する、ネットワークであることが好ましい。ピアツーピア型ネットワークにおいて、全てのパーティシパントは同等の資格を有しており、サービスを利用することも、提供することもできる。テータ交換のためのネットワークは好ましくはイーサネット(登録商標)技術を利用し、好ましくはイーサネット(登録商標)・ネットワークである。
【0029】
システム、インキュベータ、及び/又は制御デバイス、及び/又はデータ処理デバイス、及び/又は少なくとも1つの測定デバイスは、後述のコンフィギュレーション、すなわち
- 前記インキュベータによって確定されていてよい、且つ/又は前記インキュベータのユーザーインターフェイスデバイスを介してユーザーによって影響を及ぼされていてよい又は確定されていてよい、予め決められたタイムプランに基づく時点に細胞モニタリングデータを検出し、時点のこのような指定は絶対的な日付指定及び時刻指定を含み、これらの指定を、インキュベータは任意に且つ好ましくはインキュベータに提供可能な時計のデータと比較することによって活用すること、
- 前記インキュベータによって確定されていてよい、且つ/又は前記インキュベータのユーザーインターフェイスデバイスを介してユーザーによって影響を及ぼされるか又は確定されていてよい規定の時間間隔、特に規則的な時間間隔、例えば時間間隔dt=10分~20分などを置いて細胞モニタリングデータを検出すること
- 好ましくは下記事象、すなわち、
〇 前記センサデバイスによって測定された第1測定値が規定の条件、例えば、例えば開かれたインキュベータ扉に起因し得るインキュベータチャンバ内の目標温度(37℃)からの許容し得ない偏差、又はインキュベータチャンバ内の相対ガス濃度、例えばCO2及び/又はO2値及び/又はN2値の許容し得ない偏差という条件を満たし、インキュベータチャンバ内の典型的なCO2値は5%であるという事象、
〇 前記インキュベータによって認識された、ハードウェア又はソフトウェアに関する前記インキュベータのエラー状態の事象、
〇 前記インキュベータの制御デバイス又は前記測定デバイスの通信デバイスを介して、細胞モニタリングデータの検出を始動させる制御信号が受信され、前記制御信号が特に外部のデータ処理デバイスによって発動されてよく、或いはユーザー入力によって発動されてよい事象、
から成る群から選択された少なくとも1つの規定の事象に依存して、前記細胞モニタリングデータを検出すること、
- 前記インキュベータのデータ処理デバイス又は前記制御デバイス又は前記測定デバイスによって実行される制御プログラムが、前記制御プログラムによって採用された評価法が前に測定された第2測定値を評価した後で前記細胞モニタリングデータの測定を始動させ、前記評価プログラムが、満たされた条件に基づいて細胞モニタリングデータの測定の始動を可能にし、前記条件が下記条件、すなわち
〇 前に測定された少なくとも1つの第2測定値が少なくとも1つの参照値から逸れているか、又は予め決められた範囲から外れている、
〇 前に測定された2つ又は複数の第2測定値から成る少なくとも1つの推移が、少なくとも1つの参照推移から逸れているか、又は予め決められた参照範囲から外れており、前記参照推移又は参照範囲が、特に他のパラメータ、特に細胞種、又は当該細胞培養のために使用される細胞培地に関する情報に依存し得る既知の基準推移又は基準範囲であってよい、
という条件の群から選択することができること、
のうちの少なくとも1つのコンフィギュレーションに基づいて、前記細胞モニタリングデータを検出するように構成されていることが好ましい。
【0030】
システム、インキュベータ、及び/又は制御デバイス、及び/又はデータ処理デバイス、及び/又は少なくとも1つの測定デバイスは、細胞識別データに依存して細胞モニタリングデータを検出するように構成されていることが好ましい。細胞識別データは、予めユーザーによって例えばインキュベータのユーザーインターフェイスデバイスを介して入力しておくことができる。インキュベータ又はシステムは、細胞培養容器又は細胞培養を認識するために識別デバイスを含んでもよい。特に、インキュベータには、細胞識別データと予め用意されたマーキングとから成る相関に関する相関データ情報が存在していてよい。マーキングは、細胞培養容器に取り付けられていてよく、インキュベータ又はシステムの読み取りデバイスを介して機械可読であってよい。マーキングはコード、特にバーコード、二次元コード、又は機械可読標識又は標識列であってよい。
【0031】
細胞識別データに依存して細胞モニタリングデータを検出することにより、細胞種、特に細胞株に依存してデータコレクションを設定し、記憶することができる。こうして特に、規定の細胞試料もしくは細胞株試料、及び試料の継代によって得られた副次培養の成長履歴を検出することができる。このような履歴成長データを有する電子細胞ファイルを検出することができる。
【0032】
場合によっては継代され、凍結され、そして再び解凍された個々の細胞試料もしくは細胞株試料の発生とは無関係に、細胞種もしくは細胞株種の成長挙動を追跡することができる。この場合、好ましくはさらに、使用される個々のインキュベータ、インキュベータの製造ロット、インキュベータタイプ、又は他の情報に依存して、このような細胞種もしくは細胞株種の細胞モニタリングデータをいくつかの個々の細胞試料もしくは細胞株試料から繰り返し検出する。このような検出は本発明によるシステム内で、特に局所的又はグローバルに分布されたインキュベータを介して、もしくは国規模で、そして世界規模で行うことができる。こうして、細胞種もしくは細胞株種に関するこのような履歴成長形式から電子細胞ファイルを用意することができる。このことから、有益な参照データ及び情報相関を導き出すことができ、特に基準推移及び基準範囲を確定することができる。これらの基準推移及び基準範囲は、本発明によるインキュベータ又はシステムによって基準データとして使用することができる。
【0033】
情報相関は例えば、規定の細胞株が規定の継代過程数になったときから、以前とは異なる特徴的な成長状態をどのように有するか、もしくは成長推移が継代数にどのように依存するかを含むことができる。情報相関は例えば、規定の細胞株の成長推移が、インキュベータ扉の開放回数又はインキュベータ扉の全開放時間、又はインキュベータ扉の開放に関する他の統計情報にどのように依存するかを含むこともできる。情報相関は例えば、規定の細胞株の成長推移が、細胞培養の栄養培地の交換の回数及び/又は交換の形式にどのように依存するかを含むこともできる。情報相関は例えば、細胞が成長する細胞培養容器のタイプが、成長推移にどのような影響を与えるかを含むこともできる。インキュベータはこれを目的として、使用される細胞培養容器タイプ、又は細胞培養容器の個々の識別番号に関する情報を、ユーザーによってユーザーインターフェイスで細胞培養容器データを検出することによって取得することができる。注文番号及びロット番号をここで一緒に検出することもできる。これにより特に、このタイプの細胞培養容器、又はこのようなタイプの製造バッチの成長表面が申し分なく機能したかどうかを逆追跡することができる。
【0034】
特に、本発明によるインキュベータ又はシステムによって、このような参照データに依存して、少なくとも1つの制御パラメータを確定することができる。制御パラメータはインキュベータの制御方法に影響を与える。このような影響は、制御方法が制御パラメータに依存してユーザーインターフェイスデバイスを介して情報をユーザーに出力することにある。この情報は、ユーザーによって望まれる所定の成長パラメータ、例えば細胞の接着、容器内の細胞数、細胞密度、形態が存在するためには、細胞培養容器をインキュベータからどの時点で取り出さなければならないかに関する情報である。
【0035】
システム、インキュベータ、及び/又は制御デバイス、及び/又はデータ処理デバイス、及び/又は少なくとも1つの測定デバイスは、電子ドキュメント化ファイルを形成するために細胞モニタリングデータを使用するように構成されていることが好ましい。電子ドキュメント化ファイルにおいて、細胞培養容器内の個々の細胞試料の成長、又は細胞培養容器内のいくつかの細胞培養の成長がプロトコル化されドキュメント化される。このようなドキュメント化ファイルは次いでデータ記憶デバイス内に記憶される。細胞モニタリングデータが周囲条件に対する逆推論を可能にするので、一方では、細胞の培養のための所定の標準プロトコルの遵守を証明することができる。他方では、このような標準プロトコルからの偏差を後から決定し、且つ/又は情報相関を決定することができる。このようなデータの検出によって、細胞ベースのラボラトリ作業、もしくは医学的、生物学的、及び製薬的方法の質を著しく改善し、信頼性高くすることができる。細胞ベースのラボラトリ作業の再現性を高めることができ、基準特性からの偏差を早期に認識することにより、試験の補正又は早期の繰り返しの可能性をユーザーに与える。ドキュメント化ファイルは、データ交換を介して、制御デバイスからユーザー又は外部データ処理デバイスに提供することができる。例えば裁判との関連を有する、又は高い価値の細胞が培養されるような特に重要な用途においては、このようなドキュメント化は特に有意義である。
【0036】
本発明は特に、細胞培養内の細胞の成長推移の標準化を達成するのに役立ち、これによりユーザーは、それぞれ成長目標とも呼ばれる、ユーザーによって所望される成長結果、特に例えば細胞の解凍後のような規定の細胞接着、細胞培養内の細胞の数、細胞密度、及び/又は細胞の形態に到達する。このことは特に、特に細胞モニタリングデータの第1測定値及び/又は第2測定値に対する細胞成長の依存性が検出されることによって達成される。細胞成長は特に少なくとも1つの成長パラメータによって表される。特に第2測定値の所定の時間毎の検出は、プランニングプログラムを用いながら、成長目標に達するために用いることができる。本発明によるインキュベータは特に、細胞培養において所望の成長パラメータに達するためのアプローチの統一(標準化)のツールとして役立つ。細胞モニタリングデータは、特に第1測定値及び第2測定値によって決定することができる細胞モニタリングデータの相関(情報相関)、又は、特に細胞種、特に細胞株に依存する細胞モニタリングデータ間の因果関係に基づき、データベースを形成する。例えば、成長パラメータがインキュベータ扉パラメータにどのように依存するかを決定することができる。このように決定された相関、又はこのように決定された関係は、1つの細胞培養に対して1つのプランニングプログラムを確定するように確定することができる。例えば、特に所定の細胞種の場合、細胞の播種及び/又はインキュベーションの開始の後の細胞コンフルエンスが、細胞の播種及び/又はインキュベーションの開始からの、定義された時間におけるインキュベータ扉の所定の開放回数に依存すること、特に、細胞成長がこのような扉開放によって遅くなることを確認することができる。このような関係から、例えば、ユーザーが、インキュベータによって既知の相関から算出された、細胞播種からの所定の時点及び/又はインキュベーション開始からの所定の時点から初めて、所望のコンフルエンスへの到達を予期し得ると推論することができる。
【0037】
インキュベータ及び/又は制御デバイス及び/又は制御デバイス及び/又はデータ処理デバイスは、細胞モニタリングデータに依存して少なくとも1つの作業ステップを実施するように構成されていることが好ましい。このような構成は、機能を有利に拡大する。有利な構成では、このような作業ステップは、ユーザーインターフェイスデバイスによって細胞モニタリングデータに関する情報をユーザーに出力し、又はデータ記憶デバイス内に細胞モニタリングデータを記憶することを含む。
【0038】
好ましくは、インキュベータ又はシステム又は外部データ処理デバイスの制御プログラムは、プラニングプログラム、特に時間プラニングプログラムを含む。このプランニングプログラムによって、成長プランは、細胞モニタリングデータに依存するプランニングデータの形で算出することができる。このような成長パラメータは、細胞モニタリングデータによって少なくとも1つの成長パラメータ、特にそれ自体の時間的推移を算出することができる。時点又は時間区分、すなわちその時点又は時間区分で/時点又は時間区分後に成長パラメータが規定の条件、例えば規定の値を満たすことができる、時点又は時間区分/時点を算出することもできる。このような成長パラメータは特に、細胞接着(例えば、細胞培養容器の基質に接着されている細胞培養容器内の細胞の数)、細胞分裂後に存在する、細胞培養容器内の細胞の数、細胞密度(基質面積当たりの、細胞分裂後に存在する、細胞培養容器内の細胞の数)、倍増時間、又は細胞形態(例えば、所定の形態学的特性、例えば1つの細胞によって占有される基質面積、形状輪郭、例えば球形類似性、基質に対する鉛直方向間隔の高さなどによって、特にそれぞれ画像取得又は画像評価を介して絶対的に決定することができるような形態学的特性を有する細胞培養容器内に存在する細胞に関する統計的情報)であってよい。成長パラメータはさらに、例えば細胞栄養培地の光吸収測定を介して決定された細胞栄養培地のpH値を含有することができる。
【0039】
特に、インキュベータの電子アクセス遮断デバイスが、ユーザーがインキュベータの少なくとも1つの機能へアクセスするのをいつ自動的に阻止するかを、プラニングプログラムによって算出することもできる。インキュベータ扉はアクセス遮断デバイスとして特に電子制御可能なロックを有することができる。このロックによって、インキュベータ扉の開放が阻止される。アクセス遮断デバイスは特に制御プログラムの構成部分であってよい。この制御プログラムによって、インキュベータのソフトウェア制御型機能を活性化/不活性化することができる。こうして、インキュベータ内の細胞培養の成長を鋭敏な段階において、雰囲気の撹乱から保護することができる。
【0040】
好ましくは、インキュベータ又はシステム又は外部データ処理デバイスの制御プログラムは、少なくとも1つの予測アルゴリズムを含むことによって、細胞モニタリングデータにより少なくとも1つの成長パラメータ、特にそれ自体の時間的推移を算出する。予測アルゴリズムは、成長パラメータの既知の基準推移が細胞モニタリングデータに依存して変化することを表すことが好ましい。
【0041】
細胞モニタリングデータに依存して実施される作業ステップに先行して、評価法の構成部分として、細胞モニタリングデータを参照データと比較することができる。このような参照データは予め同じインキュベータによって決定しておくか、又はデータ接続によって、評価されるべきインキュベータへ伝達しておくことができる。
【0042】
細胞モニタリングデータに依存して実施される作業ステップは、ユーザーインターフェイスデバイスを介して特にプランニングデータに関する情報をユーザーに出力し、又はインキュベータの通信デバイスを介して、データ、特にプランニングデータを外部データ処理デバイスに伝送することを可能にする。
【0043】
細胞モニタリングデータに依存して実施される作業ステップは、インキュベータチャンバ内の雰囲気の調整もしくは調節に関する少なくとも1つの制御パラメータの制御を、細胞モニタリングデータに依存して行うことを可能にする。細胞モニタリングデータに依存して実施される作業ステップは、処理デバイスによる処理の制御を、細胞モニタリングデータに依存して行うことを可能にする。
【0044】
制御方法は、規定の成長目標に達するようにインキュベータを細胞モニタリングデータに依存して作動させるように構成されていることが好ましい。
【0045】
インキュベータはラボラトリ用インキュベータ、ひいては装置、すなわちこの装置によって、種々の生物学的発生プロセス及び成長プロセスのための制御された気候条件を形成し、これらを維持することができるような装置である。インキュベータは特に、インキュベータチャンバ内のガス湿度条件、及び/又は空気湿度条件、及び/又は温度条件が調節された微気候の形成及び維持に役立つ。このようなハンドリングは時間依存性であってよい。ラボラトリ用インキュベータ、特にラボラトリ用インキュベータのハンドリングデバイスは、特にタイマー(Zeitgeber)、特にタイマースイッチ(Zeitschaltuhr)、加熱/冷却デバイス、及び有利にはインキュベータチャンバに供給される交換ガスの調節のための調整デバイス、特に、ガス含量、つまりCO2及び/又はO2及び/又はN2の含量を調整するための、インキュベータのインキュベータチャンバ内のガスの組成のための調整デバイス、及び/又はインキュベータのインキュベータチャンバ内の空気湿度を調整するための調整デバイスを有する。インキュベータ、特にインキュベータのハンドリングデバイスは特に、インキュベータチャンバを有しており、さらに好ましくは少なくとも1つの調節回路を備えた調節デバイスを有している。調節回路には、調整部材として少なくとも1つの加熱/冷却デバイスが、そして測定部材として少なくとも1つの温度測定デバイスが対応配置されている。調節回路によって、インキュベータ内の温度を調節することができる。実施形態によっては、さらに空気湿度も調節することができる。インキュベータチャンバ内の、水を満たされたトラフを加熱又は冷却することにより、蒸発を介して空気湿度を調整することができる。CO2インキュベータは、特に動物もしくは人間の細胞の培養に役立つ。インキュベータは、少なくとも1つの細胞培養容器を方向転換するための方向転換デバイス、及び/又は少なくとも1つの細胞培養容器を振盪もしくは運動させるための振盪デバイスを有することができる。
【0046】
制御装置は、インキュベータのプログラムパラメータ又は制御パラメータが自動的に細胞モニタリングデータに依存して選択されるように構成することができる。制御パラメータによって制御される、少なくとも1つの細胞培養容器内の少なくとも1つの細胞培養のハンドリングは、1つのインキュベータにおいて、特にこの少なくとも1つの細胞培養が受ける気候ハンドリングに相当する。可能なパラメータ、特にプログラムパラメータ、特に気候ハンドリングに影響を与えるために使用されるユーザーパラメータは、特に少なくとも1つの試料がインキュベートされるインキュベータ空間の温度、インキュベーション内部空間内のO2及び/又はCO2及び/又はN2の相対ガス濃度、インキュベーション内部空間内の空気湿度、及び/又はいくつかのステップから成るインキュベーションハンドリングプログラムの経過、特に順序に影響を与えるか、又はこれを定義する少なくとも1つの経過パラメータを定義する。
【0047】
センサデバイスは特に少なくとも1つの温度センサ、好ましくは複数の温度センサを有する。温度センサは例えばPt100又はPt1000温度フィーラであってよい。センサデバイスは好ましくは相対濃度を決定するためのセンサ、特にCO2及び/又はO2及び/又はN2の含量を決定するためのセンサを有している。センサデバイスは、相対空気湿度を決定するためのセンサを有していることが好ましい。
【0048】
インキュベータチャンバはチャンバ壁と少なくとも1つの開口とを有している。この開口を介して、細胞培養容器は、インキュベータチャンバの内部に位置決め可能であり且つ取り出し可能である。このようなチャンバ開口は、インキュベータチャンバに運動可能に結合された閉鎖エレメント、特にインキュベータチャンバに蝶番によって運動可能に組み付けられたインキュベータ扉、特に1つ又はいくつかのチャンバ扉によって閉鎖することができる。チャンバ開口の閉位置では、インキュベータチャンバの内部は周囲に対して隔離されて、インキュベータによって制御される所望の雰囲気を調整可能にする、特に調節可能にするようになっていることが好ましい。チャンバ開口の開位置では、このような開口を介して、インキュベータの周囲とインキュベータチャンバの内部との間でガスを交換することができる。チャンバ開口は典型的にはインキュベータチャンバの前壁に位置している。
【0049】
インキュベータチャンバはいくつかの壁を有することが好ましい。これらの壁は特に一体的に、且つ特にエッジなしに互いに結合されていてよい。これらの壁はほぼ平面状に形成されていることが好ましいが、しかし全て又は一部が湾曲形状を有してもよい。インキュベータチャンバは好ましくは直方体状に形成されているが、しかし他の形状、例えば球形、楕円形、多面体として形成されていてもよい。壁は腐食の少ない材料、特にステンレス鋼、銅、真鍮、又はプラスチック、特に複合プラスチックから製作されている。これにより、チャンバ内部の清浄化/消毒が容易になる。細胞培養容器の装備/取り出しに役立つ開口とは無関係に、インキュベータチャンバは、インキュベータチャンバの内部からその外側へ、又はインキュベータの周囲へケーブル接続を行うためのポートを有することができる。
【0050】
インキュベータはただ1つのインキュベータチャンバを有することができるが、しかしいくつかのインキュベータチャンバを有することもできる。これらのインキュベータチャンバの雰囲気(温度、相対ガス濃度、空気湿度)は特に個別に又はまとめて調整可能であってよい。1つのインキュベータチャンバの内部の典型的な大きさは50~400リットルである。
【0051】
インキュベータチャンバは、1つ又はいくつかの棚板挿入体(Regalblecheinsaetze)又は挿入可能な機器を保持するための保持フレームを有することができる。この代わりに、又はこれに加えて、インキュベータチャンバの内壁の少なくとも1つは、1つ又はいくつかの棚板挿入体又は挿入可能な機器を保持するように構成されていてもよい。このために、壁に組み込まれた保持構造、特に1つ又はいくつかの突起、溝、又はウェブが設けられていてよい。棚板挿入体はインキュベータチャンバ内の設置面積を大きくする。内部に挿入可能な機器がモジュールとして形成されていてよく、好ましくはインキュベータ扉が閉じられているときにも、この機器は内部における自動的な作業ステップの実施を可能にする。保持フレームも好ましくは非腐食性材料、好ましくはステンレス鋼から製作されている。保持フレームは好ましくは直立した物体として構成されていることが好ましい。この場合、保持フレームは少なくとも1つのソケット区分を有しており、このソケット区分はインキュベータチャンバの底壁上に位置している。しかしながら、ソケット区分はインキュベータチャンバの側壁に支持されていてもよく、且つ/又はインキュベータチャンバの天井壁に懸吊されていてもよい。
【0052】
インキュベータはハウジングを有することができる。ハウジングはインキュベータチャンバを部分的又は完全に取り囲んでいる。ハウジングはほぼ直方体状に形成されていてよく、特に、インキュベータを積み重ね得るように形成されていてよい。
【0053】
有利には、インキュベータは、少なくとも1つの細胞培養容器をハンドリングするためのハンドリングデバイスを有している。「ハンドリング(Behandlung)」という概念は、細胞培養又は細胞培養容器が動かされ、且つ/又は搬送され、且つ/又は調査され、且つ/又は変化させられ、特に物理的、化学的、生化学的、又は他の形式で変化させられることを意味する。
【0054】
ハンドリングデバイスは運動デバイスであってよい。運動デバイスによって、細胞培養は、好ましくは制御プログラムによって制御される運動プログラムを介して少なくとも1つの細胞培養容器内で運動を保たれる。運動デバイスは振盪デバイス又は旋回デバイスであってよい。運動デバイスは好ましくは支持体デバイス、特に板を有している。この支持体デバイス上に1つ又はいくつかの細胞培養容器が置かれ且つ/又は固定される。運動デバイスは好ましくは駆動デバイスを有しており、特に振盪デバイスの場合には例えばオシレータ駆動装置を有しており、この駆動装置により、所望の運動プログラムが実行される。運動プログラムの構成は、細胞培養の細胞の成長プログラム状態に依存することができ、細胞種、特に細胞株に依存することができる。ハンドリング、特に運動プログラムの構成及び/又は制御は、細胞モニタリングデータに依存することができる。1つのハンドリングデバイスは旋回デバイスであってよい。旋回デバイスによって、少なくとも1つの細胞培養容器が旋回させられる。旋回デバイスの構成部分は、振盪デバイスの構成部分に相当するが、しかし旋回運動のために構成されている。
【0055】
ハンドリングデバイスは搬送デバイスであってもよい。搬送デバイスによって、少なくとも1つの細胞培養容器がインキュベータチャンバ内で搬送されるようになっている。搬送デバイスは支持体デバイスを有する持ち上げデバイスであってよい。支持体デバイス上に、少なくとも1つの細胞培養容器を位置決めすることができる。持ち上げデバイスは好ましくは運動機構及び/又は運動機構の駆動のための電気的に制御可能な駆動メカニズムを有している。搬送デバイスはさらに、少なくとも1つの細胞培養容器を把持して保持するための運動可能且つ電気的に制御可能な把持アームであってよい。搬送デバイスは、その上に位置決めされた少なくとも1つの細胞培養容器を動かすためのコンベアベルトを有することができる。搬送デバイスによって、インキュベータチャンバ内の少なくとも1つの細胞培養容器を、特にインキュベータチャンバ内の処理ステーションの処理位置へ移動させることができ、そしてこのような処理位置から離れるように移動させることができる。制御デバイスは、搬送デバイスを細胞モニタリングデータに依存して制御するように構成されていてよい。
【0056】
処理ステーションは少なくとも1つの測定デバイスを有することにより、このような細胞培養の細胞の成長を特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを測定することができる。少なくとも1つの細胞培養容器が搬送デバイスによってインキュベータ内で運動可能である場合、いくつかの細胞培養容器の細胞培養はただ1つの又は数少ない測定デバイスによって相前後して測定することができる。しかし、いくつかの又は多数の測定デバイスを設けることにより、いくつかの細胞培養の成長を並行して観察することもできる。
【0057】
測定デバイスはこのために搬送デバイスに固定可能であってよい。測定デバイスは位置決め機構に固定可能であってよく、又は固定されていてよい。位置決め機構によって、測定デバイスをインキュベータチャンバ内で運動させることができ、位置決めすることができる。位置決め機構は、運動可能なロボットアームを含むことができ、好ましくは、特に制御デバイスの制御プログラムによって電気的に制御することができる。こうして、いくつかの細胞培養容器の細胞の成長は、1つ又は数少ない測定デバイスによって相前後して測定することができる。位置決め機構は、インキュベータチャンバ内へ挿入可能な構成部分として形成されていてよい。このような構成部分のエネルギー供給は、好ましくは壁開口、例えばポートを介した、インキュベータとのケーブル接続を介して、又は外部電圧源とのこのようなケーブル接続を介して行うことができる。制御装置は、位置決め機構を細胞モニタリングデータに依存して制御するように構成することができる。
【0058】
ハンドリングデバイスは、インキュベータチャンバの温度調節デバイスと解釈することもできる。温度調節デバイスによって、インキュベータチャンバ内部の雰囲気を所望の値、特に37℃に調節する。温度調節(Temperieren)という概念は、加熱及び冷却によって雰囲気温度を上昇・下降させることに関する。好ましくは、内部の温度はインキュベータの壁の温度変化を介して調整される。相応する温度調節デバイスの温度センサは、インキュベータの内部の少なくとも1つの位置にあり、且つ/又はインキュベータチャンバの外部、特にインキュベータチャンバの1つの壁に分布されている。
【0059】
インキュベータは好ましくはユーザーインターフェイスデバイスを有している。このユーザーインターフェイスデバイスを介して、ユーザーはデータ処理デバイスもしくは制御デバイスにデータを入力することができ、且つ/又はこのユーザーインターフェイスデバイスを介して、ユーザーにデータを出力することができる。インキュベータもしくはこのようなユーザーインターフェイスデバイスは、ユーザーが、少なくとも1つの測定デバイスを作動させるための少なくとも1つの作動パラメータをこのようなユーザーインターフェイスデバイスに入力することができ、もしくはユーザーインターフェイスデバイスから情報を得ることができるように構成されている。このようにして、インキュベータ及び少なくとも1つの測定デバイスに影響を与えるか又はこれを制御するために、或いはこれらから情報を得るために、ただ1つのユーザーインターフェイスデバイスをユーザーによって使用することができる。特に、インキュベータのユーザーインターフェイスデバイスによって行われるユーザーの問い合わせに対して細胞モニタリングデータをユーザーに示すように、特にコンフルエンス、細胞数、及び/又は細胞モニタリングデータから導き出された統計的情報、及び/又は少なくとも1つの細胞培養の光学的画像を示すように、測定デバイスは構成されていてよい。
【0060】
インキュベータの装置制御型ハンドリングはプログラム制御型ハンドリング、すなわち、プログラムによって制御されるハンドリングであることが好ましい。試料のプログラム制御型ハンドリングとは、ハンドリング動作が主として、複数又は多数のプログラムステップの処理によって行われることを意味する。好ましくは、プログラム制御型ハンドリングは、少なくとも1つのプログラムパラメータ、特にユーザーによって選択された少なくとも1つのプログラムパラメータを使用することによって行われる。ユーザーによって選択されたパラメータは、ユーザーパラメータとも呼ばれる。プログラム制御型ハンドリングは、好ましくは、特に制御デバイスの構成部分であるデジタルデータ処理デバイスによって行われる。データ処理デバイスは少なくとも1つのプロセッサ、すなわちCPU、及び/又は少なくとも1つのマイクロプロセッサを有することができる。プログラム制御型ハンドリングは、好ましくはプログラム、特に制御プログラムの規定値に相応して制御され、且つ/又は実施される。特に、プログラム制御型ハンドリングの場合、少なくともユーザー側で必要なプログラムパラメータを検出した後は、ユーザーの活動はほとんど必要でない。
【0061】
プログラムパラメータとは、変数であって、プログラム内部又はサブプログラム内部で、プログラム又はサブプログラムの少なくとも1つの実行(起動)に有効であるように、予め決められた形式で調整することができる変数を意味する。プログラムパラメータは例えばユーザーによって確定され、プログラム又はサブプログラムを制御し、そしてこのようなプログラムパラメータに依存してデータ出力をもたらす。特に、プログラムパラメータは装置の制御手段に影響を与え且つ/又は制御し、且つ/又はプログラムによって出力されたデータは装置の制御手段、特に少なくとも1つのハンドリングデバイスによるハンドリングの制御手段を制御する。
【0062】
プログラムは特にコンピュータプログラムを意味する。プログラムは、特に宣言(Deklarationen)と命令(Instruktionen)とから成る一連の指令(Anweisungen)であって、これにより、デジタルデータ処理デバイス上で所定の機能、タスク又は問題を処理且つ/又は解決することができる。プログラムは通常ソフトウェアとして存在する。ソフトウェアはデータ処理デバイスと一緒に使用される。プログラムは特にファームウェアとして存在してよく、本発明の場合には、特に、インキュベータ又はシステムの制御デバイスのファームウェアとして存在する。プログラムは大抵の場合、実行可能なプログラムファイルとしてデータキャリア上に、しばしばいわゆるマシンコードで存在している。プログラムファイルは実行のためにデータ処理デバイスの計算機の作業記憶装置内へローディングされる。プログラムは一連の機械コマンド、すなわちプロセッサコマンドとして、コンピュータのプロセッサによって処理され、ひいては実行される。「コンピュータプログラム」とは特にプログラムのソーステキストをも意味し、このソーステキストから、ラボラトリ装置の制御経過において実行可能なコードが生じ得る。
【0063】
ユーザーインターフェイスデバイスは、インキュベータの構成部分、又はモジュールであってよい。ユーザーインターフェイスデバイスはそれぞれ好ましくは、ユーザーインターフェイスデバイスのための制御デバイス、ラボラトリ装置、特にインキュベータとのデータ接続をそれ自体のインターフェイスデバイスを介して形成するための通信デバイス、ユーザーのユーザー入力を検出するための入力デバイス、情報をユーザーに出力するための出力デバイス、特に表示装置及び/又はディスプレイ、特にタッチセンサ式ディスプレイを有している。ユーザーインターフェイスデバイスの制御装置は好ましくは、データ接続を介して、インキュベータの制御デバイスによってデータを交換するように構成されていることが好ましい。
【0064】
細胞培養容器は特に、プラスチック、特にPE又はPSから製作されており、そして特に平面状の床板を有している。床板は成長面を形成する。成長面は、細胞の接着を促進するための表面処理手段を有することができる。細胞培養容器は、PEキャップ又はガス交換キャップ、特にフィルタが任意に含まれる蓋で閉鎖可能であってよく、もしくはこれを備えていてよい。細胞培養容器は特に積み重ね可能である。好適なのは特にエッペンドルフ型細胞培養フラスコである。
【0065】
本発明は特にデータ交換システムであって、本発明による少なくとも1つのインキュベータと、少なくとも1つの外部データ処理デバイスとを有しており、前記少なくとも1つのインキュベータと、前記少なくとも1つの外部データ処理デバイスとが、データ接続を介してデータ交換するように構成されており、そして特に細胞モニタリングデータを交換する、データ交換システムに関する。このようなデータ交換システムによって、特にデータコレクションを効果的に形成することにより、複数又は多数の本発明によるインキュベータによって細胞モニタリングデータを収集することができ、特に、外部データ処理デバイスによって中央に収集することができる。外部データ処理デバイスは、多数の収集された細胞モニタリングデータから、少なくとも1つの統計的な方法によって、1つの細胞種又は細胞株の成長の参照データを、細胞モニタリングデータに依存して獲得することによって、特にこのような細胞種又は細胞株の所定の成長目標のために、所定の第1及び第2測定値もしくは細胞モニタリングデータに対する依存性を決定するように構成されていてよい。
【0066】
本発明はさらに、モニタリングされる細胞培養成長のためのシステムであって、少なくとも1つのインキュベータを有しており、前記インキュベータが少なくとも、成長中の細胞培養を含有する少なくとも1つの細胞培養容器を収容するためのインキュベータチャンバと、前記インキュベータチャンバの物理的状態を特徴付ける少なくとも1つのチャンバパラメータを、少なくとも1つの第1測定値の形で測定するためのセンサデバイスと、前記細胞培養の細胞の成長を特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを、少なくとも1つの第2測定値の形で測定するための少なくとも1つの測定デバイスと、を有しており、前記システムがさらに、- データ記憶デバイスと、- 前記少なくとも1つの第1測定値と前記少なくとも1つの第2測定値とを細胞モニタリングデータの形で検出するように、そして前記細胞モニタリングデータを前記データ記憶デバイス内に記憶するように構成されている、データ処理デバイスとを有している、モニタリングされる細胞培養成長のためのシステムに関する。このことは、第1測定値及び第2測定値の検出及び合体は、ここでは必ずしもインキュベータ内で行われるのではなく、インキュベータの構成部分ではない、システムの外部データ処理デバイス内で行われることを意味する。このようにして、特に、ラボラトリ及び企業ラボラトリ装置ネットワーク内でデータ接続されたいくつかのインキュベータによって、細胞モニタリングデータは外部データ処理デバイスによって中央に収集し記憶することができる。
【0067】
本発明はさらに、インキュベータ内の少なくとも1つの細胞培養の成長をモニタリングするための方法であって、前記インキュベータの前記インキュベータチャンバの少なくとも1つのチャンバパラメータを測定し、前記チャンバパラメータが、前記インキュベータの少なくとも1つのセンサデバイスによって、少なくとも1つの第1測定値の形で、前記インキュベータチャンバの物理的状態を特徴付ける、ステップと、前記細胞培養の細胞の成長を特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを、前記インキュベータの少なくとも1つの測定デバイスによって、少なくとも1つの第2測定値の形で測定するステップと、前記少なくとも1つの第1測定値と前記少なくとも1つの第2測定値とを、インキュベータ又はシステムのデータ処理デバイスによって、細胞モニタリングデータの形で検出するステップと、前記細胞モニタリングデータをインキュベータ又はシステムのデータ記憶デバイスによって記憶し、前記システムが前記インキュベータを有するステップとを有する、インキュベータ内の少なくとも1つの細胞培養の成長をモニタリングするための方法に関する。方法のさらなる任意のステップは、前記細胞モニタリングデータに依存して前記インキュベータの少なくとも1つの作業ステップを実施することにある。本発明による方法は好ましくは、本発明によるインキュベータ又はシステムによって実施可能である。本発明による方法は好ましくはプログラムコードとして存在する。プログラムコードが本発明によるインキュベータ又はシステムのデータ処理デバイス上で実行されると、プログラムコードは上記ステップを生じさせる。本発明によるインキュベータ又はシステムは、本発明による方法又はプログラムコードを実施するように構成されていることが好ましい。
【0068】
本発明によるインキュベータ及びその有利な構成の説明から、本発明による方法のさらなる有利な構成を推定することができる。さらに、図面における実施例から、本発明のさらなる構成選択肢が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1a図1aは、実施例に基づく本発明によるインキュベータの前面を示す斜視図である。
図1b図1bは、図1aのインキュベータの背面を示す斜視図である。
図2図2は、さらなる実施例に基づく本発明によるインキュベータを示す概略図である。
図3図3は、実施例に基づく本発明の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1aは、モニタリングされる細胞培養成長のためのインキュベータ1、ここでは、真核細胞の成長のためのCO2インキュベータを示している。インキュベータは、成長中の細胞培養を含有する少なくとも1つの細胞培養容器9を収容するためのインキュベータチャンバ2(図2参照)と、チャンバパラメータの温度、相対CO2ガス濃度、及び相対空気湿度を測定するためのセンサデバイス3とを有している。このようなチャンバパラメータの値はインキュベータの制御デバイス4の制御プログラムによって定期的に読み込まれる。インキュベータ1はさらに、成長パラメータ「細胞培養容器内の細胞層のコンフルエンス」を第2測定値として測定するための測定デバイス30を有している。このことは、規則的な時間間隔で制御装置4によって促される、細胞層の照明及び検知によって、もしくは任意には細胞層の画像形成によって行われる。細胞層の画像は、ソフトウェア支援型の画像分析法によって制御デバイス4のデータ処理デバイスによって評価され、細胞密度が決定される。
【0071】
測定デバイス30はここではネットワーク機器である。ネットワーク機器はインキュベータのイーサネット(登録商標)・スイッチ6のプラグ6aを介して、制御デバイスもしくはそのイーサネット(登録商標)・アダプタ4cとデータ接続6cされている。細胞培養容器9は、インキュベータチャンバに固定された棚板20上に配置されている。インキュベータチャンバ2は、インキュベータ扉2aを介してアクセス可能である。インキュベータ扉の開放はセンサ2bを介して制御デバイスによって検出することができる。
【0072】
制御装置4はデータ記憶デバイス4aと、データ処理デバイス4bとを有している。これらのデバイスは、少なくとも1つの第1測定値と少なくとも1つの第2測定値とを、細胞モニタリングデータの形で検出するように、そして細胞モニタリングデータをデータ記憶デバイス内に記憶するように構成されている。
【0073】
インキュベータ1は、このようにインキュベータチャンバ2内の細胞の成長に関する情報を収集し、そしてこのようにして、インキュベータ内の細胞培養のための標準化されたアプローチを可能にする参照データを獲得する。インキュベータの高価値で正確に較正されたセンサ系3は、このようなインキュベータ内の細胞成長を特徴付ける信頼性高いデータセットを収集するための基礎を提供する。インキュベータ内部パラメータ、特にチャンバパラメータは、測定デバイスによって測定された成長パラメータと一緒に収集されるので、パラメータ値間の結果として生じる相関、及びこれらの変化を決定することが可能になる。こうして、インキュベータ内で細胞モニタリングデータが獲得される。細胞モニタリングデータは、将来的にインキュベータ内で成長するべき細胞培養の発生を評価するための参照データとして使用することができる。
【0074】
ユーザーはCO2インキュベータ内の真核細胞を有する細胞培養内で作業する。試験システム内のこのような細胞の再現可能な挙動は従来技術では、形態学的検査による主観的印象、又はエンドポイント判定(細胞カウント)によってしばしば支援される。これに加えて、インキュベータ1に直接に提供される周囲条件と関連して、インキュベータ内の細胞の結果を自動的にドキュメント化することはできない。培養のこの古典的顕微鏡分析は、細胞の完全なモニタリングをカバーするのではなく、スナップショットしか形成しない。これに加えて、スナップショットは、大抵の場合、定量化可能なステートメントを提供しない。従来技術のこのような細胞カウントは、成長中には行われない破壊的プロセスである。
【0075】
インキュベータ1はさらに、制御デバイス4の制御プログラムによって、プラニングプログラムを実行するように構成されている。このプラニングプログラムは、細胞モニタリングデータと既知の参照データとから、時間依存性の成長推移(コンフルエンス)を予測し、そしてユーザーインターフェイスデバイス8を介して、所望の成長目標の達成に関する情報、ここではユーザーによって規定されたコンフルエンスをユーザーにディスプレイにおいて表示する。
【0076】
細胞モニタリングデータはさらに任意には、インキュベータもしくはその制御デバイスによって、イーサネット(登録商標)・インターフェイス6a’を介して外部データ処理デバイス110へ伝送される。この外部データ処理デバイスも場合によっては同じネットワーク100のさらなるインキュベータ(図示せず)によって、細胞モニタリングデータを収集し記憶する。これにより、細胞モニタリングデータを外部装置内の中央で合体して統計的に評価することにより、所定の細胞種又は細胞株の基準成長に対応する参照データを獲得することができる。
【0077】
本発明の別の実施態様の場合、第1測定値を第2測定値と共に検出すること、もしくは細胞モニタリングデータの形でこれらを合体することは、インキュベータのデータ処理デバイス4b内で行われるのではなく、第2外部データ処理デバイス110内で行われる。このようにして、測定デバイス30は、特にインキュベータ1又はその制御デバイス4とは無関係に、第2測定値を外部データ処理デバイス110へ、特に測定のタイムスタンプと一緒に伝送することができ、そして制御デバイス4は、センサデバイス3によって測定された第1測定値を、特に測定のタイムスタンプと一緒に外部データ処理デバイス110へ伝送することができる。外部データ処理デバイスは、第1測定値及び第2測定値から細胞モニタリングデータを形成し、これらを記憶する。記憶された細胞モニタリングデータ、又はこれからデータ処理デバイス110によって獲得された参照データは、ネットワークのネットワーク機器、特にインキュベータを再び提供する。こうして、成長目標の達成を標準化された状態で達成することができるデータ交換システムもしくは本発明によるシステムが提供される。
【0078】
図3に示された、インキュベータ内の少なくとも1つの細胞培養の成長をモニタリングする方法200は下記ステップを有する。
【0079】
インキュベータ内の少なくとも1つの細胞培養の成長をモニタリングする方法は下記ステップ、すなわち、
特にユーザーによって一義的に規定された細胞株において、ユーザーインターフェイスデバイスを介してユーザーによって入力された成長目標、例えば所望のコンフルエンスを検出し(201)、
インキュベータのインキュベータチャンバの少なくとも1つのチャンバパラメータを測定し、チャンバパラメータが、インキュベータの少なくとも1つのセンサデバイスによって、インキュベータチャンバの物理的状態を少なくとも1つの第1測定値の形で特徴付けし(202a)、
インキュベータの少なくとも1つの測定デバイスによって、このような細胞培養の細胞の成長を少なくとも1つの第2測定値の形で特徴付ける少なくとも1つの成長パラメータを測定し(202b)、
少なくとも1つの第1測定値と少なくとも1つの第2測定値とを、データ処理デバイスによって、細胞モニタリングデータの形で検出し(203)、そしてここでは既知の基準データと比較することによって細胞モニタリングデータを評価し(204)、
成長目標が達成されるまで、もしくは細胞成長がユーザーによって終了されるまで、ステップ202a,202b,203,204を繰り返し、
細胞モニタリングデータをデータ記憶デバイスによって記憶し(205)、
細胞モニタリングデータによって新しい基準データを確定し(206)、
将来的なインキュベーションのためにインキュベータに対応する新しい基準データを提供する(207)
ステップを有する。
【0080】
インキュベータ1内の細胞のモニタリング、及び成長中の細胞培養の運動及び記憶の考察は、インキュベータ1の機能の一部であり、インキュベータによって制御することができる。さらに、周囲条件(第1測定値)を細胞結果(第2測定値)に自動的に関連付け、任意にはドキュメント化する。これにより、細胞の成長挙動を迅速且つ容易に標準化することができる。
【0081】
CO2インキュベータは測定ステーション3を備えている。測定ステーションは細胞の成長に関する情報(コンフルエンス及び任意には細胞数)を自動的に受信する。このような情報はインキュベータ1内に直接に、又はシステムによって記憶され、従って周囲条件(第1測定値)の情報に加えてインキュベータ内に存在する。従って、インキュベータの情報は細胞データ(第2測定値)に直接に関連付けられている。
【0082】
このようなインキュベータもしくはシステムによる細胞培養の標準化を最適化するためのさらなる方法が好ましい。
【0083】
細胞の解凍プロセス後に、ユーザーは、全ての細胞又は定義された比率の細胞が細胞容器の表面上にいつ接着されるか、その時を決定することができる。ユーザーはこのような時点で情報を得る。既知の基準値からのその偏差はユーザーに送信されるか、又はデータとして記憶されることが好ましい。
【0084】
ユーザーは、播種後又は解凍プロセス後に付着状態で存在する細胞の量に関する情報を得る。総細胞数が入力されると、生存率を決定することもできる。ユーザーは、例えば細胞を操作するために、所望の細胞コンフレンスにいつ到達するか、その通知を受け、そして標準化に達するために、このような値を既に記憶された値と比較することができる。
【0085】
ユーザーは、測定される試料の数が定義されたものになってから、細胞株の典型的な測定値が存在しなければならない帯域幅もしくは参照範囲を自動的に決定することができる。
【0086】
ユーザーはインキュベータを活用することにより、細胞成長をモニタリングすることができる。ユーザーはインキュベータの操作ユニット8で測定デバイス30を直接に制御し、細胞成長の結果と周囲条件、並びにインキュベータのイベントログとを関連づけてドキュメント化することができる。このことは好ましくは自動的に行われる。結果がインキュベータに直接に記憶されて存在していることにより、成長曲線を標準化した状態で記録することができる。ユーザーがその細胞タイプを指定すると、実際の成長曲線が履歴データと直接に比較され、ドキュメント化される。ユーザーは偏差を評価アルゴリズムによって良い又は悪いと自動的に評価させることができる。期待された結果から偏差がある場合、ユーザーは直接にハンドリングし、これを後でドキュメント化することができる。測定デバイス30がインキュベータの部分であることにより、細胞培養の周囲条件の一対一の記録が保証される。
【0087】
これに加えて、インキュベータ1は任意にはネットワーク100内に組み込まれており、第1測定値と第2測定値とを外部処理デバイスのデータバンクに送信するようになっている。インキュベータもしくはシステムがこのような細胞モニタリングデータを記憶すると、これらのデータはネットワークの全てのユーザーに利用可能になる。細胞モニタリングデータが例えばクラウド内に記憶されると、これらのデータはグローバルネットワークの全てのユーザーにアクセス可能にすることができる。これにより、細胞データと周囲条件データとの組み合わせを全世界にわたる作業グループ間で自動的に伝達することができる。このことは、ユーザー間の連携が学術部門において極めて重要なので特に好ましい。細胞モニタリングデータもしくは参照データが有効になればなるほど、そして結果のフィードバック可能性が増大すればするほど、容易且つ迅速にこのような分野における協働が信頼性高い結果をもたらすことになる。細胞培養は、方法の標準化及び結果の再現可能性が本質的に、且つ目下のところ最適ではないことが知られている。本発明に基づき、細胞モニタリングデータとして信頼性高く決定される組み合わされた細胞データ及び周囲条件データのグローバルデータバンクは、これらのデータが信頼性高いインキュベータデータに基づいているので、プロトコルと結果との効率的な伝達を可能にする。
図1a
図1b
図2
図3