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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241107BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241107BHJP
   B60L 53/80 20190101ALI20241107BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241107BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60L50/60
B60L53/80
B60L58/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023036096
(22)【出願日】2023-03-09
(65)【公開番号】P2024127146
(43)【公開日】2024-09-20
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 公雄
(72)【発明者】
【氏名】山之内 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 直哉
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-199878(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235380(WO,A1)
【文献】特開2002-134084(JP,A)
【文献】特開2019-084843(JP,A)
【文献】特開2017-137002(JP,A)
【文献】特開2008-006904(JP,A)
【文献】特開2001-045606(JP,A)
【文献】特開2012-151916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
B60L 50/60
B60L 53/80
B60L 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能なバッテリの電力によって駆動する駆動部を備えた電動車両であって、
前記電動車両は、車室を囲み、且つ前記車室内と連通する車体開口部を有した車体と、
前記車体に設けられ前記車体の前記車体開口部を開閉可能なドアと、
前記車体において前記車室内の床面より下方に配置され、前記床面に開口する格納口を有し、前記格納口を通じて前記バッテリを内部に格納可能なバッテリ格納室と、
を備え、
前記電動車両の外部から前記車体開口部を介して前記バッテリ格納室に対して前記バッテリを着脱可能であり、
前記バッテリ格納室は、前記車室内において乗員が座るシートの後方に配置され、
前記車体開口部は、前記乗員が乗降可能であり前記車体における車幅方向の側面に開口する側部開口を有し、
前記側部開口は、
前記車体における前記車幅方向の右側に配置される右側開口と、
前記車体における前記車幅方向の左側に配置される左側開口と、
を備え、
前記バッテリ格納室は、
前記車幅方向において前記右側開口側に配置される右側格納部と、
前記車幅方向において前記左側開口側に配置される左側格納部と、
を有する、電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両において、
前記バッテリ格納室に前記バッテリが格納されたとき、前記車体開口部に対して前記バッテリの上端部が前記バッテリの下端部よりも近くなるように前記バッテリが鉛直方向に対して傾斜する、電動車両。
【請求項3】
請求項2記載の電動車両において、
前記車体開口部の開口方向から見たとき、前記格納口が、前記車体開口部の開口範囲内に配置される、電動車両。
【請求項4】
請求項2又は3記載の電動車両において、
前記ドアは、前記車体における前記車幅方向の右側に配置される右ドアと、
前記車体における前記車幅方向の左側に配置される左ドアと、
を備える、電動車両。
【請求項5】
請求項4記載の電動車両において、
前記右側格納部に格納される前記バッテリは右方向に傾斜し、
前記左側格納部に格納される前記バッテリは左方向に傾斜する、電動車両。
【請求項6】
請求項4記載の電動車両において、
前記バッテリ格納室は、前記右側格納部と前記左側格納部との間に配置され前記車幅方向と直交する車両前後方向に延在する収容空間を有し、
前記収容空間には、前記バッテリと前記駆動部とを電気的に接続するハーネスが収容される、電動車両。
【請求項7】
請求項2又は3記載の電動車両において、
前記車室内の調温を行う車両用空調装置を備え、
前記バッテリ格納室は、前記バッテリ格納室の前側に開口して前記バッテリ格納室の内部と連通し前記車室から空気が導入される導入口と、
前記バッテリ格納室の後側に配置され前記バッテリ格納室の内部に導入された前記空気を外部に排出する排出口と、
前記排出口に設けられ前記バッテリ格納室の内部の前記空気を前記排出口を通じて外部に送出する排出装置と、
を備える、電動車両。
【請求項8】
請求項2又は3記載の電動車両において、
前記車体の車幅方向と直交する車両前後方向から見たとき、前記バッテリ格納室から前記バッテリを抜き始めてから前記バッテリの下端が前記格納口に到達するまでの前記バッテリの移動軌跡が、前記車体開口部と重ならないように、前記バッテリ格納室に格納される前記バッテリの傾斜角度が設定されている、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力によって走行可能な電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。特許文献1には、ユーザが交換可能なバッテリを搭載した電動作業機が開示されている。電動作業機の機体内にバッテリが収納される。ユーザがバッテリを交換するとき、機体上方に配置された蓋部材を開いて機体上方に開口した開口部からバッテリを上方に取り出す。ユーザが開口部を通じて機体内にバッテリを収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-113638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動化技術に関する特許文献1のような交換可能なバッテリを搭載した電動車両でバッテリの交換を行う場合、電動車両の周囲にユーザがバッテリを取り出すための広いスペースが求められ、周囲のスペースが狭い場合に作業効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のため、ユーザが車室内に乗り込んで交換作業を行う必要がなく、容易なバッテリの交換作業の達成を目的としたものである。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、交換可能なバッテリの電力によって駆動する駆動部を備えた電動車両であって、前記電動車両は、車室を囲み、且つ前記車室内と連通する車体開口部を有した車体と、前記車体に設けられ前記車体の前記車体開口部を開閉可能なドアと、前記車体において前記車室内の床面より下方に配置され、前記床面に開口する格納口を有し、前記格納口を通じて前記バッテリを内部に格納可能なバッテリ格納室と、を備え、前記電動車両の外部から前記車体開口部を介して前記バッテリ格納室に対して前記バッテリを着脱可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交換可能なバッテリを搭載した電動車両において、ユーザがバッテリの交換作業を行うとき、ドアによって開放された車体開口部を介して車室外から容易にバッテリにアクセスできる。そのため、ユーザが車室内に乗り込んでバッテリの交換作業を行う必要がなく、バッテリの交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電動車両の全体側面図である。
図2図2は、電動車両におけるバッテリ格納部の断面図である。
図3図3は、図1に示す電動車両を車室内から見た平面図である。
図4図4は、電動車両の駆動部とハーネスとの接続状態を示す平面説明図である。
図5図5は、ユーザがバッテリを交換する場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるように、本実施形態に係る電動車両10は、バッテリ12の電力によって駆動する電動機を備えた電気自動車(EV)である。なお、電動車両10は、電気自動車に限定されるものではない。バッテリ12を用いる車両であれば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)又は燃料電池自動車(FCV)等の種々の電動車両10に適用可能である。
【0010】
電動車両10は、車体14と、車体14の車体開口部16に開閉可能に配置されるドア18と、車体14に設けられ電力が供給されることで回転駆動する電動機である駆動部20と、車室24内の温度調整を行う車両用空調装置22とを備える。
【0011】
車体14は、車室24と、車体開口部16と、バッテリ12を格納可能なバッテリ格納部26とを備える。車室24は、車体14に囲まれ乗員が乗車可能な空間である。車体14の前後方向における車室24の前方部には、乗員が座るシート28が設けられる。車体14の前後方向における車室24の略中央部から後方には、荷物等を積載可能な荷台30が設けられる。シート28は、電動車両10の前輪32Fと後輪32Rとの間に設けられる。車室24の下部には、車体14の前後方向に沿った床面34が設けられる。床面34は、車両の後方に向けて荷台30まで延在する。地上からの床面34の高さHは、例えば、610mm以下に設定される。床面34の高さは、例えば、背の低いユーザU(図5参照)が腕を伸ばした状態でバッテリ12を把持して上方に引き出せる高さに設定される。
【0012】
車体開口部16は、車室24と連通する開口である。車体開口部16は、車体14において車幅方向の側面に開口する側部開口36と、車体14の後方に開口する後部開口38とを備える。車体開口部16は、車室24と車体14の外部とを連通する。
【0013】
側部開口36は、車室24内に乗員が乗降するときに主に使用される開口である。図2に示すように、側部開口36は、電動車両10の車幅方向一方(車両後方から前方に向けて見たときの右側)の側面に開口する右側開口40Rと、車幅方向において右側開口40Rとは反対側となる車幅方向他方(車両後方から前方に向けて見たときの左側)の側面に開口する左側開口40Lとを備える。側部開口36の開口方向は、車体14の幅方向である。例えば、電動車両10の車幅方向一方(右側)は運転席側であり、電動車両10の車幅方向他方(左側)は、助手席側である。
【0014】
図1に示すように、右側開口40R及び左側開口40Lの各々は、前方に配置される第1開口部421と、第1開口部421の後方に配置される第2開口部422とを備える。第1開口部421及び第2開口部422は、車体14の前後方向に開口する。後部開口38は、荷台30の後方に開口し、例えば荷台30に荷物を積載するときに使用される開口である。後部開口38の開口方向は、車体14の前後方向である。
【0015】
図2に示すように、バッテリ格納部26は、車体14における車室24の下部に配置される。バッテリ格納部26は、車体14の床面34より下方に設けられる。以下、車体14の前後方向(矢印A方向)の略中央部にバッテリ格納部26が配置される場合について説明する。なお、バッテリ格納部26は、車体14の前後方向の略中央部に設けられる場合に限定されない。例えば、バッテリ格納部26が、車体14の前後方向における後方に設けられてもよい。
【0016】
バッテリ格納部26は、バッテリ12が格納されるバッテリ格納室44と、バッテリ格納室44の格納口46を覆う蓋部材48とを備える。バッテリ格納室44は、床面34に対して下方に突出した箱状のハウジング50の内部に形成される。ハウジング50及びバッテリ格納室44は、車幅方向中央に対して車幅方向一方及び車幅方向他方に配置される。ハウジング50の上部が、床面34の下方に配置されるフロア(不図示)に固定される。ハウジング50の上部が開口する。格納口46は、車室24の床面34に開口してバッテリ格納室44と連通する。格納口46がバッテリ格納室44の内部と車室24とを連通する。図1に示すように、側部開口36の開口方向から車体14を見たとき、バッテリ格納部26の格納口46が、側部開口36の開口範囲内に配置される。電動車両10の外部からユーザUが側部開口36を介してバッテリ格納室44に対してバッテリ12を着脱可能である。
【0017】
図3に示すように、バッテリ格納室44は、複数のバッテリ12を格納可能に形成される。以下、8個のバッテリ12がバッテリ格納室44に格納される場合について説明する。なお、バッテリ格納部26(バッテリ格納室44)に格納されるバッテリ12の数は8個に限定されるものではない。1つのバッテリ12が格納される構成であってもよいし、9個以上の複数のバッテリ12が格納される構成であってもよい。
【0018】
図2に示すように、バッテリ格納室44は、電動車両10の車幅方向において右側に配置される右側格納部52Rと、車幅方向において左側に配置される左側格納部52Lと、右側格納部52Rと左側格納部52Lとの間に配置される収容空間54とを備える。
【0019】
右側格納部52Rと左側格納部52Lとが、車幅方向中央に対して対称形状に形成される。なお、右側格納部52Rと左側格納部52Lとが対称形状に形成される場合に限定されるものではない。右側格納部52Rと左側格納部52Lとが異なる形状であってもよい。
【0020】
右側格納部52R及び左側格納部52Lの各々には、ホルダ56を介して複数のバッテリ12が格納され保持される。右側格納部52Rに格納されるバッテリ12の数と、左側格納部52Lに格納されるバッテリ12の数とが同数である。以下、右側格納部52R及び左側格納部52Lの各々に、4個のバッテリ12が格納される場合について説明する。なお、右側格納部52Rに格納されるバッテリ12の数と、左側格納部52Lに格納されるバッテリ12の数とが異なる数であってもよい。
【0021】
右側格納部52Rには、バッテリ12が格納される右側格納孔58Rを有する。右側格納孔58Rは、バッテリ格納室44に配置されたホルダ56に設けられる。右側格納孔58Rの上端が開口すると共に、上端が車室24側に配置される。右側格納孔58Rの上端が床面34に開口した格納口46に向かい合う。右側格納孔58Rの下端は、ハウジング50の底部側に配置される。右側格納孔58Rの下端には、第1車体側端子60Rが配置される。車体14の鉛直方向(仮想線L)に対して、右側格納孔58Rの上端が右方向に傾斜する。仮想線Lに対する右側格納孔58Rの傾斜角度は、例えば、30°~45°である。すなわち、右側格納孔58Rの上端が右側開口40Rに向かうように右側格納孔58Rが傾斜して形成される。図3に示すように、右側格納孔58Rは、車幅方向に並列し、且つ車体14の前後方向に並列する。ここでは、車体14の車幅方向及び前後方向にそれぞれ一組ずつの右側格納孔58Rを備える場合について説明する。
【0022】
図2に示すように、左側格納部52Lには、バッテリ12が格納される左側格納孔58Lを有する。左側格納孔58Lは、バッテリ格納室44に配置されたホルダ56に設けられる。左側格納孔58Lの上端が開口すると共に、上端が車室24側に配置される。左側格納孔58Lの上端が床面34に開口した格納口46に向かい合う。左側格納孔58Lの下端は、ハウジング50の底部側に配置される。左側格納孔58Lの下端には、第2車体側端子60Lが配置される。車体14の鉛直方向(仮想線L)に対して、左側格納孔58Lの上端が左方向に傾斜する。仮想線Lに対する左側格納孔58Lの傾斜角度は、例えば、30°~45°である。すなわち、左側格納孔58Lの上端が左側開口40Lに向かうように左側格納孔58Lが傾斜して形成される。図3に示すように、左側格納孔58Lは、車幅方向に並列し、且つ車体14の前後方向に並列する。ここでは、車体14の車幅方向及び前後方向にそれぞれ一組ずつの左側格納孔58Lを備える場合について説明する。車体14の車幅方向において、複数の右側格納孔58Rと複数の左側格納孔58Lとが対称に配置される。
【0023】
車体14の車幅方向において、右側格納孔58Rの上端と左側格納孔58Lの上端とが互いに離間する方向に右側格納孔58R及び左側格納孔58Lが傾斜して配置される。
【0024】
図3に示すように、バッテリ格納室44は、バッテリ格納室44の前側に開口する導入口62と、バッテリ格納室44の後側に配置される排出口64とを備える。導入口62は、バッテリ格納室44の車幅方向の略中央部に配置される。導入口62は、車両用空調装置22の送風ダクト66と接続される。送風ダクト66は、車体14の前後方向に延在し、且つ車幅方向の中央部に配置される。車両用空調装置22と導入口62とが送風ダクト66によって接続される。車両用空調装置22によって調温された空気が送風ダクト66及び導入口62を通じてバッテリ格納室44の内部に供給される。
【0025】
排出口64は、導入口62からバッテリ格納室44の内部に導入された空気を車室24内に排出可能である。排出口64は、例えばバッテリ格納室44の車幅方向における両側に配置される。排出口64は、バッテリ格納室44の内部と連通すると共に、バッテリ格納室44の外部である車室24と連通する。すなわち、排出口64は、バッテリ格納部26の外部に開放される。
【0026】
排出口64には、バッテリ格納室44の内部の空気を排出口64を通じて車室24内に送出する排出装置68を備える。排出装置68は、排出口64に対してバッテリ格納室44の内部に配置される。排出装置68は、例えば電力によって回転駆動する送風ファンである。
【0027】
なお、導入口62は、送風ダクト66に接続される場合に限定されるものではない。例えば、導入口62に送風ダクト66を接続せずに、車室24内と連通するように導入口62を開放させてもよい。この構成では、排出装置68(送風ファン)を作動させたとき、送風ファンで生じる気流によって導入口62を通じて車室24内の空気がバッテリ格納室44内に導入される。導入口62を通じてバッテリ格納室44内に導入される空気によって、バッテリ12を冷却可能である。
【0028】
図2に示すように、バッテリ12は、交換可能な低電圧式のバッテリである。バッテリ12は、取り扱い資格を有していない一般のユーザU(図5参照)が取り扱い可能である。バッテリ12は、ケース70と、バッテリコア72と、コネクタ部74とを備える。バッテリ12は、上下方向に長尺な形状を有する。ケース70の上部は、ユーザUが把持可能なハンドル76を有する。ユーザUがバッテリ12を持ち運ぶときにハンドル76を把持する。ケース70の下部には、コネクタ部74が設けられる。コネクタ部74は、ケース70の外部に露出する接続端子741を有する。ケース70の内部において、接続端子741とバッテリコア72とが電気的に接続されている。
【0029】
右側格納部52Rの各右側格納孔58Rにバッテリ12が収納される。バッテリ12の接続端子741が、第1車体側端子60Rに電気的に接続される。以下、右側格納部52R(右側格納孔58R)に格納されるバッテリ12を第1バッテリ12Rという。右側格納孔58Rに収納された第1バッテリ12Rは、車体14の鉛直方向(仮想線L)に対して右方向に傾斜して配置される。第1バッテリ12Rの上端部121が、車体14の右側開口40Rに向かうように傾斜して収納される。換言すれば、右側開口40Rに対して、第1バッテリ12Rの上端部121が第1バッテリ12Rの下端部122よりも近くなるように第1バッテリ12Rが鉛直方向(仮想線L)に対して傾斜する。
【0030】
左側格納部52Lの各左側格納孔58Lにバッテリ12が収納される。バッテリ12の接続端子741が、第2車体側端子60Lに電気的に接続される。以下、左側格納部52L(左側格納孔58L)に格納されるバッテリ12を第2バッテリ12Lという。左側格納孔58Lに収納された第2バッテリ12Lは、車体14の鉛直方向(仮想線L)に対して左方向に傾斜して配置される。第2バッテリ12Lの上端部121が、車体14の左側開口40Lに向かうように傾斜して収納される。換言すれば、左側開口40Lに対して、第2バッテリ12Lの上端部121が第2バッテリ12Lの下端部122よりも近くなるように第2バッテリ12Lが鉛直方向(仮想線L)に対して傾斜する。
【0031】
バッテリ格納部26は、バッテリ12の固定状態を切替可能な図示しないロックレバーを備える。バッテリ格納室44に第1バッテリ12R及び第2バッテリ12Lが格納された状態で、図示しないロックレバーによって第1バッテリ12R及び第2バッテリ12Lの取り外しが規制される。図示しないロックレバーを解除することで、バッテリ格納室44から第1バッテリ12R及び第2バッテリ12Lを取り出し可能となる。
【0032】
右側格納部52Rに第1バッテリ12Rが格納され、左側格納部52Lに第2バッテリ12Lが格納された状態で、バッテリ格納室44における第1バッテリ12Rと第2バッテリ12Lとの間に収容空間54が設けられる。
【0033】
収容空間54は、車体14の前後方向に延在する空間である(図4参照)。収容空間54は、バッテリ格納室44の上部に配置される。車体14の前後方向から見たとき、収容空間54は、車幅方向に互いに離間する第1バッテリ12Rの上部と第2バッテリ12Lの上部との間に設けられる。図2に示す車体14の前後方向から見たとき、収容空間54が上方に向けて徐々に車幅方向に拡がる。
【0034】
蓋部材48は、床面34の格納口46を開閉可能に設けられる。蓋部材48は、右側格納部52Rを覆う右側カバー78Rと、左側格納部52Lを覆う左側カバー78Lとを備える。右側カバー78R及び左側カバー78Lは略同一形状である。右側カバー78R及び左側カバー78Lの各々は、カバー本体80と、カバー本体80の端部に設けられる支持部82とを有する。カバー本体80は平板状に形成され格納口46に向かい合う。支持部82は、カバー本体80の幅方向一端に設けられる。支持部82は、車体14の車幅方向の略中央部に配置される。支持部82は、車体14の床面34に対して回動自在に支持される。支持部82は、車体14の前後方向に沿って支持される。
【0035】
カバー本体80の幅方向他端は、カバー本体80に対して直交方向に延出する。カバー本体80の幅方向他端は、把持部86(図3参照)を備える。把持部86は、蓋部材48を開閉するときにユーザUが把持可能である。
【0036】
支持部82を支点として蓋部材48(右側カバー78R、左側カバー78L)を格納口46に向けて回動させると、カバー本体80が車体14の車幅方向に沿うように水平状態に配置され、右側カバー78R及び左側カバー78Lの各カバー本体80によって格納口46が閉塞される。バッテリ格納室44の側方の一部が延出部位によって覆われる。蓋部材48を閉めて蓋部材48によってバッテリ格納部26の格納口46を閉塞したとき、蓋部材48と車体14の床面34とが略同一平面となる。蓋部材48は床面34と共に荷台30の一部を構成する。これにより、バッテリ格納部26の上部を荷台30として使用でき、広い荷室空間が確保される。
【0037】
支持部82を支点として蓋部材48(右側カバー78R、左側カバー78L)が格納口46から離間する方向に向けて回動すると(図2中、二点鎖線形状参照)、カバー本体80の幅方向他端が上方となるように蓋部材48が傾斜し、カバー本体80が格納口46から離間して格納口46が開放される。このとき、車体14とカバー本体80とを支持する支持ロッド87によって、蓋部材48が開放状態で保持される。支持ロッド87によって、蓋部材48が自重によって格納口46側に向けて回動することが防止される。
【0038】
図2に示すように、ドア18は、車体14における車幅方向の右側に配置される右ドア88Rと、車体14における車幅方向の左側に配置される左ドア88Lと、車体14の後方に配置される後方ドア88B(図1参照)とを備える。
【0039】
図1に示すように、右ドア88Rは、右側開口40Rの第1開口部421に配置されるフロントドア881と、第2開口部422に配置されるリアドア882とを備える。左ドア88Lは、左側開口40Lの第1開口部421に配置されるフロントドア881と、第2開口部422に配置されるリアドア882とを備える。
【0040】
各フロントドア881は、第1開口部421の前方に回動可能に支持される。各フロントドア881は、前端が車体14に支持されたヒンジ式のドアである。各フロントドア881を回動させることで、第1開口部421を開閉可能である。
【0041】
各リアドア882は、車体14の側面に沿って前後方向にスライド可能なスライド式のドアである。各リアドア882が前方にスライドした状態で、右側開口40R及び左側開口40Lの第2開口部422が閉塞される。第2開口部422を閉塞しているリアドア882を後方にスライドさせると、車体14に沿ってリアドア882が後方に移動して第2開口部422が開放される。第2開口部422が車体14の前後方向に開放される。図1に示す側部開口36の開口方向から見たとき、車体14の前後方向において、バッテリ格納部26の格納口46が、第2開口部422の開口範囲内に配置される。
【0042】
図1に示すように、後方ドア88Bは、後部開口38の上端に回動可能に支持される。後部開口38の上端は、例えば車体14のルーフ部分である。後方ドア88Bの上端を支点として後方ドア88Bの下端が下方に向かうように回動させることで、後方ドア88Bが鉛直方向に配置されて後部開口38が閉塞される。後方ドア88Bの上端を支点として後方ドア88Bの下端が上方に向かうように回動させることで、後部開口38が後方に向けて開放される。
【0043】
図4に示すように、駆動部20は、電装部94によって複数のバッテリ12と電気的に接続される。駆動部20は、前輪32Fの各々を駆動する前輪用モータ901、902と、後輪32Rを駆動する後輪用モータ92とを備える。前輪用モータ901、902は、車体14の前方側に配置される。前輪用モータ901、902の駆動シャフト(不図示)が各前輪32Fに連結される。後輪用モータ92は、車体14の後方側に配置される。後輪用モータ92の駆動シャフト(不図示)が後輪32Rに連結される。
【0044】
電装部94は、ハーネス96と、中継部材98(ジャンクションボックス)とを備える。ハーネス96は、前輪用モータ901、902に接続される第1モータ用導線1001と、後輪用モータ92に接続される第2モータ用導線1002と、複数のバッテリ12の接続端子741の各々に接続される複数のバッテリ用導線102とを備える。第1モータ用導線1001は、一対の前輪用モータ901、902の各々に電気的に接続される。第2モータ用導線1002は車体14の前後方向に沿って延在し、後輪用モータ92に電気的に接続される。複数のバッテリ用導線102は、8個の接続端子741にそれぞれ電気的に接続される。
【0045】
中継部材98は、車体14の前後方向における略中央部に配置される。中継部材98は、バッテリ用導線102が接続されるバッテリ用端子104と、第1及び第2モータ用導線1001、1002が接続されるモータ用端子106とを備える。複数のバッテリ用導線102によって複数のバッテリ12の接続端子741とバッテリ用端子104とが電気的に接続される。第1モータ用導線1001によって前輪用モータ901、902とモータ用端子106とが電気的に接続される。第2モータ用導線1002によって後輪用モータ92とモータ用端子106とが電気的に接続される。
【0046】
複数のバッテリ用導線102及び第2モータ用導線1002は、中継部材98に接続される途中において車体14の車幅方向の中央部に配置されバッテリ格納部26の収容空間54に挿通される。複数のバッテリ用導線102及び第2モータ用導線1002は、収容空間54に車体14の前後方向に沿って収容される。すなわち、バッテリ格納部26において、複数のバッテリ用導線102及び第2モータ用導線1002は、右側格納部52Rのバッテリ12と左側格納部52Lのバッテリ12との間に収納される。
【0047】
中継部材98を介して複数のバッテリ12の電力がバッテリ用導線102及び第1及び第2モータ用導線1001、1002を通じて前輪用モータ901、902及び後輪用モータ92へと供給される。
【0048】
図3に示すように、車両用空調装置22は、車体14の車内においてシート28の前方に配置される。車両用空調装置22は、外気又は車内の空気の温度を調整して車内に送風する。車室24には、車両用空調装置22からの送風が供給される送風口(不図示)を有する。車両用空調装置22には、送風の一部が供給される送風ダクト66が設けられる。送風ダクト66は管状であり、車幅方向の略中央部に配置され車体14の前後方向に延在する。送風ダクト66は、車両用空調装置22から後方に向かって延在し、バッテリ格納部26の導入口62と接続される。車両用空調装置22で調温された送風の一部が送風ダクト66を通じてバッテリ格納室44へと供給される。
【0049】
次に、電動車両10においてバッテリ12を交換する作業を行う場合について説明する。ここでは、電動車両10の左側格納部52Lの第2バッテリ12Lを交換する場合について説明する。なお、右側格納部52Rの第1バッテリ12Rを交換する交換作業は、左側格納部52Lの第2バッテリ12Lの交換作業と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
図5に示すように、電動車両10における左ドア88Lのリアドア882に向かい合う位置にユーザUが立ち、図1に示すように、左側開口40Lに対してリアドア882を後方にスライドさせて左側開口40Lを開放する。図5に示すように、ユーザUは、把持部86を把持して蓋部材48の左側カバー78Lを支持部82を支点として幅方向他端が上方に向かうように回動させる。左側カバー78Lが回動することで格納口46が開放される。これにより、格納口46を通じて左側格納部52Lの第2バッテリ12Lの上端部121が視認可能となる。支持ロッド87によって左側カバー78Lが開いた状態で保持される。このとき、左側カバー78Lは、車体14の床面34に対して略直角となるまで回動して保持され、格納口46の上方が開放された状態となる。
【0051】
次に、左側開口40Lを通じてユーザUが車室24内に上半身を入れ、図示しないロックレバーを操作して第2バッテリ12Lのロック状態を解除する。ユーザUは、第2バッテリ12Lのハンドル76を把持し、左側格納孔58Lに沿って第2バッテリ12Lを上方に向けて引き出す。第2バッテリ12Lが左側格納孔58Lに沿ってスライドし、それに伴って、第2車体側端子60Lと接続端子741との接続が解除される。
【0052】
第2バッテリ12Lの下端部122が、左側格納孔58Lの上端より上方に到達した後、格納口46より上方に到達することで、第2バッテリ12Lがバッテリ格納室44から車室24内へと取り出される。このとき、車体14の前後方向から見たとき、バッテリ格納室44の左側格納孔58Lから第2バッテリ12Lを抜き始めてから第2バッテリ12Lの下端部122が格納口46に到達するまでの第2バッテリ12Lの移動軌跡ML(図2参照)が左側開口40Lと重ならない。バッテリ格納室44の左側格納孔58Lから第2バッテリ12Lを抜き始めてから第2バッテリ12Lの下端が格納口46に到達するまでの取り出し作業を、車室24内で行うことが可能である。すなわち、第2バッテリ12Lの移動軌跡MLと左側開口40Lとが重ならないように、バッテリ格納室44に格納される第2バッテリ12Lの傾斜角度が設定されている。
【0053】
車室24内に取り出した第2バッテリ12Lを、ユーザUが左側開口40Lを通じて電動車両10の外部へと取り出す。すなわち、ユーザUが車室24内に乗り込んで第2バッテリ12Lの交換作業を行う必要がなく、電動車両10の外部(車室外)に立った状態で交換作業が可能である。
【0054】
新たな第2バッテリ12Lをバッテリ格納部26に格納する場合は、電動車両10の左側開口40Lを通じてユーザUが車室24内に第2バッテリ12Lを移動させる。バッテリ格納室44において空いている左側格納孔58Lの上方に第2バッテリ12Lを移動させた後、第2バッテリ12Lを下端部122から左側格納孔58Lに挿入する。このとき、第2バッテリ12Lの下端部122に対して上端部121が左側開口40Lに向かうように傾けて挿入する。
【0055】
左側格納孔58Lに沿って第2バッテリ12Lが傾斜した状態で左側格納孔58Lに格納される。第2バッテリ12Lの接続端子741と第2車体側端子60Lとが電気的に接続される。第2バッテリ12Lの格納状態を確認した後、ユーザUは、図示しないロックレバーを操作して第2バッテリ12Lをバッテリ格納部26に対して固定する。
【0056】
なお、バッテリ格納部26は、車体14の前後方向の略中央部に配置され、且つ側部開口36の開口範囲内に配置される場合に限定されない。例えば、バッテリ格納部26を、車体14の後部である荷台30に配置し、後部開口38の開口範囲内に配置してもよい。この場合、後部開口38の開口範囲の幅方向は、車体14の車幅方向である。この構成では、バッテリ格納部26にバッテリ12が格納された状態で、バッテリ12の下端部122に対してバッテリ12の上端部121が後部開口38に向けて傾斜して格納される。後部開口38を通じてバッテリ12の交換作業を行うことが可能である。
【0057】
次に、バッテリ格納部26に格納されたバッテリ12の冷却について説明する。
【0058】
図3に示すように、車両用空調装置22によって車室24の車内温度の調整が行われるとき、調温された空気が送風口を通じて車室24内に送風される。調温された空気の一部は、車両用空調装置22から冷却風として送風ダクト66及び導入口62からバッテリ格納室44の内部に導入される。冷却風の温度は、例えば外気温と同等又は外気温より低い。なお、冷却風の温度は、外気温以上でもよい。なお、導入口62に送風ダクト66を接続せずに、車室24内と連通するように導入口62を開放することで、導入口62を通じて車室24内の空気をバッテリ格納室44内に導入してバッテリ12を冷却してもよい。
【0059】
図2に示すように、バッテリ格納室44において、冷却風は、第1及び第2バッテリ12R、12Lとハウジング50の内壁面との間の隙間Sに沿って後方に向けて流れる。バッテリ12(第1及び第2バッテリ12R、12L)のケース70に冷却風が触れることで、冷却風によってバッテリ12が冷却される。冷却風は、バッテリ格納室44内の隙間Sを通じてバッテリ格納室44の後部まで流れた後、車幅方向両側に分かれて一対の排出口64から車室24内に排出される。このとき、排出装置68が作動することで、バッテリ格納室44内の冷却風が滞留することなく排出口64から好適に車室24内へと排出される。
【0060】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0061】
図1に示すように、電動車両10は、車室24を囲み、且つ車室24内と連通する車体開口部16を有した車体14と、車体14に設けられ車体14の車体開口部16を開閉可能なドア18と、車体14において車室24内の床面34より下方に配置され、床面34に開口する格納口46を有する。電動車両10は、格納口46を通じてバッテリ12を内部に格納可能なバッテリ格納室44を備え、電動車両10の外部から車体開口部16を介してバッテリ格納室44に対してバッテリ12を着脱可能である。
【0062】
この構成によれば、ユーザUがバッテリ12の交換作業を行うとき、ドア18によって開放された車体開口部16を介して車室24の外部から容易にバッテリ12にアクセスすることができる。そのため、ユーザUが車室24内に乗り込んでバッテリ12の交換作業を行う必要がなく、バッテリ12の交換作業を容易に行うことができる。低電圧のバッテリ12を使用することで、取り扱い資格を有していない一般のユーザUが工具等を用いることなく容易に交換作業を行うことができる。
【0063】
図2に示すように、バッテリ格納室44にバッテリ12が格納されたとき、車体開口部16に対してバッテリ12の上端部121がバッテリ12の下端部122よりも近くなるようにバッテリ12が鉛直方向(仮想線L)に対して傾斜する。これにより、電動車両10の車室24外におけるドア18の側方が狭いスペースであっても、ユーザUがバッテリ12を交換するときに車室24外からバッテリ12に対して容易にアクセスしてバッテリ格納室44からバッテリ12を取り出しやすい。バッテリ格納室44にバッテリ12を格納するとき、ユーザUが車室24内に向けてバッテリ12を斜めに移動させればよいためバッテリ格納室44にバッテリ12を格納しやすい。バッテリ格納室44においてバッテリ12を傾斜させて格納することで、車室24における床面34の高さH(図1参照)を効果的に抑制することができ、背の低いユーザUであってもバッテリ12の着脱作業が容易である。床面34の高さHを抑制できるため、床面34に対して荷物を無理なく積み下ろしすることができる。
【0064】
図1に示すように、車体開口部16の開口方向から見たとき、車体14の前後方向において、格納口46が車体開口部16の開口範囲内に配置されているため、バッテリ12の交換作業時におけるバッテリ12の移動を最小限とすることができ、バッテリ12を交換する際の作業性が良好である。
【0065】
図2に示すように、ドア18は、車体14における車幅方向の右側に配置される右ドア88Rと、車体14における車幅方向の左側に配置される左ドア88Lとを備えており、バッテリ格納室44は、車幅方向において右側に配置される右側格納部52Rと、車幅方向において左側に配置される左側格納部52Lとを有している。この構成によれば、車幅方向の両側に配置された右側格納部52R及び左側格納部52Lの各々にバッテリ12(第1バッテリ12R、第2バッテリ12L)を格納することで、左ドア88L及び右ドア88R側のいずれからもバッテリ12の着脱作業を行うことができる。そのため、単一のバッテリ格納室に格納されたバッテリを、車幅方向一方のみに配置された車体開口部を通じて交換作業を行う構造と比較し、車体開口部16とバッテリ12との距離が近いため効率的に交換作業を行うことができる。
【0066】
右側格納部52Rに格納される第1バッテリ12Rが右方向に傾斜し、左側格納部52Lに格納される第2バッテリ12Lが左方向に傾斜するため、限られた車室24内のスペースに複数のバッテリ12(第1バッテリ12R、第2バッテリ12L)を効率的に格納することが可能である。右ドア88R側からの第1バッテリ12Rの交換作業が容易であると共に、左ドア88L側からの第2バッテリ12Lの交換作業が容易である。バッテリ格納室44を車体14の下部に備えた構造であっても、車室24における床面34の高さHを効果的に抑制できる。
【0067】
バッテリ格納室44は、右側格納部52Rと左側格納部52Lとの間に配置され車幅方向と直交する車両前後方向に延在する収容空間54を有し、収容空間54には、バッテリ12と駆動部20とを電気的に接続するハーネス96が収容される。この構成によれば、右側格納部52Rに格納されたバッテリ12と左側格納部52Lに格納されたバッテリ12とが互いに離間する方向に傾斜して配置されることで、右側格納部52Rのバッテリ12(第1バッテリ12R)と左側格納部52Lのバッテリ12(第2バッテリ12L)との間に好適に収容空間54が形成される。そのため、収容空間54を利用してハーネス96を収容することで、車両前後方向に沿ったハーネス96の取り回しを効率的に行うことができる。バッテリ格納部26を利用して車体14における床面34の下部にハーネス96を収納できるため、車体14の下部にハーネス96を露出させて配置する構成と比較し、チッピング等を防ぐための保護部品を不要とすることができる。そのため、電動車両10の製造コストを削減することができる。
【0068】
図3に示すように、車室24内の調温を行う車両用空調装置22を備え、バッテリ格納室44は、バッテリ格納室44の前側に開口してバッテリ格納室44の内部と連通し車室24から空気が導入される導入口62と、バッテリ格納室44の後側に配置されバッテリ格納室44の内部に導入された空気を外部(車室24内)に排出する排出口64と、排出口64に設けられバッテリ格納室44の内部の空気を排出口64を通じて車室24内に送出する排出装置68とを備える。
【0069】
この構成によれば、電動車両10に搭載された車両用空調装置22の送風を利用してバッテリ格納室44内のバッテリ12を冷却できるため、バッテリ12を冷却するための冷却構造を別に備える必要がなく、簡素な構成でバッテリ12の冷却を効果的に行うことができる。バッテリ12の冷却構造を設ける必要がないため製造コストの削減を図ることができる。
【0070】
図5に示すように、車体14の車幅方向と直交する前後方向から見たとき、バッテリ格納室44からバッテリ12を抜き始めてからバッテリ12の下端が格納口46に到達するまでのバッテリ12の移動軌跡MLが、車体開口部16と重ならないように、バッテリ格納室44に格納されるバッテリ12の傾斜角度が設定されている。この構成によれば、バッテリ格納室44からバッテリ12を取り出した際、バッテリ12が車室24内に留まり車室24の外に出ることがないため、狭い駐車スペースに電動車両10を駐車した場合であってもバッテリ12の交換作業を容易に行うことができる。
【0071】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0072】
上記の実施形態は、交換可能なバッテリ(12)の電力によって駆動する駆動部(20)を備えた電動車両(10)であって、前記電動車両は、車室(24)を囲み、且つ前記車室内と連通する車体開口部(16)を有した車体(14)と、前記車体に設けられ前記車体の前記車体開口部を開閉可能なドア(18)と、前記車体において前記車室内の床面(34)より下方に配置され、前記床面に開口する格納口(46)を有し、前記格納口を通じて前記バッテリを内部に格納可能なバッテリ格納室(44)と、を備え、前記電動車両の外部から前記車体開口部を介して前記バッテリ格納室に対して前記バッテリを着脱可能である。
【0073】
前記バッテリ格納室に前記バッテリが格納されたとき、前記車体開口部に対して前記バッテリの上端部(121)が前記バッテリの下端部(122)よりも近くなるように前記バッテリが鉛直方向に対して傾斜する。
【0074】
前記車体開口部の開口方向から見たとき、前記格納口が、前記車体開口部の開口範囲内に配置される。
【0075】
前記ドアは、前記車体における車幅方向の右側に配置される右ドア(88R)と、前記車体における前記車幅方向の左側に配置される左ドア(88L)と、を備え、前記バッテリ格納室は、前記車幅方向において右側に配置される右側格納部(52R)と、前記車幅方向において左側に配置される左側格納部(52L)と、を有する。
【0076】
前記右側格納部に格納される前記バッテリは右方向に傾斜し、前記左側格納部に格納される前記バッテリは左方向に傾斜する。
【0077】
前記バッテリ格納室は、前記右側格納部と前記左側格納部との間に配置され前記車幅方向と直交する車両前後方向に延在する収容空間(54)を有し、前記収容空間には、前記バッテリと前記駆動部とを電気的に接続するハーネス(96)が収容される。
【0078】
前記車室内の調温を行う車両用空調装置(22)を備え、前記バッテリ格納室は、前記バッテリ格納室の前側に開口して前記バッテリ格納室の内部と連通し前記車室から空気が導入される導入口(62)と、前記バッテリ格納室の後側に配置され前記バッテリ格納室の内部に導入された前記空気を外部に排出する排出口(64)と、前記排出口に設けられ前記バッテリ格納室の内部の前記空気を前記排出口を通じて外部に送出する排出装置(68)と、を備える。
【0079】
前記車体の車幅方向と直交する車両前後方向から見たとき、前記バッテリ格納室から前記バッテリを抜き始めてから前記バッテリの下端が前記格納口に到達するまでの前記バッテリの移動軌跡(ML)が、前記車体開口部と重ならないように、前記バッテリ格納室に格納される前記バッテリの傾斜角度が設定されている。
【0080】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0081】
10…電動車両
12…バッテリ
14…車体
16…車体開口部
18…ドア
20…駆動部
24…車室
26…バッテリ格納部
34…床面
44…バッテリ格納室
46…格納口
図1
図2
図3
図4
図5