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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】樹脂用除去剤及び樹脂の除去方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20241107BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20241107BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C09D9/00
C11D7/26
C11D7/50
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023088161
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-06-01
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 真志
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02067827(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第105038375(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104804506(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103834225(CN,A)
【文献】米国特許第03737386(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101050323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103980761(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101684213(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を剥離するために用いられる樹脂用除去剤であって、
有機溶媒を含有し、
前記有機溶媒は、酢酸アルキル(A)及びアルコール(B)を含み、
前記酢酸アルキル(A)は、酢酸ブチルおよび酢酸プロピルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記アルコール(B)は、1-ブタノールおよびイソブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を少なくとも90質量%含有し、
前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)の総質量に対し、前記アルコール(B)を2質量%以上、70質量%以下の範囲で含む、樹脂用除去剤。
【請求項2】
前記アクリル樹脂は、架橋アクリル樹脂である、請求項に記載の樹脂用除去剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂用除去剤を用いて樹脂を剥離する、樹脂の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用除去剤及び樹脂の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂及びウレタン樹脂等の樹脂は、各種用途に広く適用されており、例えば、塗料、塗膜、成形体、ワニス、接着剤、バインダー等の原料として使用されている。このような樹脂を原料として使用する製品を製造するにあたっては、生産ラインや装置等に樹脂が付着するので、そのような樹脂を除去して洗浄する必要がある。従来、付着した樹脂や、樹脂の塗膜を除去及び洗浄するために各種の除去剤が使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、トルエン、キシレン、メタノールの少なくともいずれかを40重量%以上含有する塗料溶剤100重量部に対して、5~40重量部のアセトンが配合されてなることを特徴とした塗料剥離用洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-56171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の樹脂の除去剤は、樹脂の除去性能及び洗浄能力に改善の余地が残されており、とりわけ、架橋アクリル樹脂のような樹脂に対しては除去能力が十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、簡便な方法により短時間で樹脂を除去することを可能とする樹脂用除去剤及び樹脂の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の酢酸アルキル及び特定のアルコールを含む有機溶剤を使用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
樹脂を除去するための樹脂用除去剤であって、
有機溶媒を含有し、
前記有機溶媒は、酢酸アルキル(A)及びアルコール(B)を含み、
前記酢酸アルキル(A)のアルキル基は、炭素数が2以上、6以下であり、
前記アルコール(B)は、炭素数が3以上、6以下であり、
前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を少なくとも60質量%含有する、樹脂用除去剤。
項2
前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)の総質量に対し、前記アルコール(B)を2質量%以上、70質量%以下の範囲で含む、項1に記載の樹脂用除去剤。
項3
前記樹脂は、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1又は2に記載の樹脂用除去剤。
項4
前記アクリル樹脂は、架橋アクリル樹脂である、項3に記載の樹脂用除去剤。
項5
前記樹脂を剥離するために用いられる、項1~4のいずれか1項に記載の樹脂用除去剤。
項6
項1~5のいずれか1項に記載の樹脂用除去剤を用いて樹脂を除去する、樹脂の除去方法。
項7
前記樹脂は、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項6に記載の樹脂の除去方法。
項8
前記アクリル樹脂は、架橋アクリル樹脂である、項7に記載の樹脂用除去剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂用除去剤は、簡便な方法により短時間で樹脂を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本発明の樹脂用除去剤は、樹脂を除去するためのものであって、有機溶媒を含有し、前記有機溶媒は、酢酸アルキル(A)及びアルコール(B)を含み、前記酢酸アルキル(A)のアルキル基は、炭素数が2以上、6以下であり、前記アルコール(B)は、炭素数が3以上、6以下であり、前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を少なくとも60質量%含有する。
【0012】
本発明の樹脂用除去剤は、簡便な方法により短時間で樹脂を除去することができるものである。
【0013】
なお、本明細書において、「樹脂を除去する」とは必ずしも限定的な解釈を望むものではないが、樹脂を溶解して除去する態様、樹脂を剥離して除去する態様等を意味するものであり、また、樹脂を溶解して除去する態様、及び、樹脂を剥離して除去する態様等が同時に起こることも包含するものである。
【0014】
<酢酸アルキル(A)>
酢酸アルキル(A)は、炭素数が2以上、6以下であるアルキル基を有する化合物である。炭素数が2以上、6以下であるアルキル基をRと表記した場合、酢酸アルキル(A)は、CHCOORで表される。アルキル基の炭素数が3以上である場合、アルキル基は、直鎖状及び分岐状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状であることが好ましい。酢酸アルキル(A)において、前記アルキル基の炭素数が2未満及び6超過となると樹脂に対する除去性能が低下し、とりわけ架橋アクリル樹脂に対する除去性能が悪化しやすい。
【0015】
酢酸アルキル(A)としては、酢酸エチル、酢酸プロピル(酢酸n-プロピルを意味する)、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(酢酸n-ブチルを意味する)、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸アミル(酢酸n-ペンチルを意味する)、酢酸イソペンチル、酢酸ネオペンチル、酢酸ヘキシル(酢酸n-ヘキシルを意味する)等が例示される。
【0016】
中でも酢酸アルキル(A)は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル及び酢酸ヘキシルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、酢酸ブチルを含むことが特に好ましい。
【0017】
本発明の樹脂用除去剤に含まれる酢酸アルキル(A)は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。
【0018】
酢酸アルキル(A)は、公知の方法で製造することができ、あるいは、市販品等から入手することもできる。
【0019】
<アルコール(B)>
アルコール(B)は、炭素数が3以上、6以下であるアルコール化合物である。具体的には、アルコール(B)として、炭素数が3以上、6以下であるアルキル基を有するアルコール化合物を挙げることができる。アルコール(B)におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状であることが好ましいアルコール(B)において、前記アルキル基の炭素数が3未満及び6超過となると樹脂に対する除去性能が低下し、とりわけ架橋アクリル樹脂に対する除去性能が悪化しやすい。
【0020】
アルコール(B)としては、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール等が例示される。
【0021】
中でもアルコール(B)は、1-ブタノール、イソブチルアルコール、1-プロパノール、1-ペンタノール及び1-ヘキサノールからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、1-ブタノールを含むことが特に好ましい。
【0022】
本発明の樹脂用除去剤に含まれるアルコール(B)は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。
【0023】
アルコール(B)は、公知の方法で製造することができ、あるいは、市販品等から入手することもできる。
【0024】
(有機溶媒)
本発明の樹脂用除去剤に含まれる有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を少なくとも含有する。前述のように、前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を少なくとも60質量%含有する。これにより、本発明の樹脂用除去剤は、短時間で樹脂を除去することが可能になる。
【0025】
前記有機溶媒中の、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)の含有割合が60質量%未満になると、樹脂を除去することが難しくなる。
【0026】
前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を65質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することが好ましく、75質量%以上含有することがさらに好ましく、80質量%以上含有することがよりさらに好ましく、85質量%以上含有することが特に好ましい。さらに、前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を90質量%以上含有してもよく、あるいは、95質量%以上含有してもよい。さらには、前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)のみからなるものであってもよい。
【0027】
前記有機溶媒が前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)以外を含む場合、高引火点の溶剤、例えば、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)よりも引火点が高い溶剤を、本発明の効果が阻害されない範囲で含むこともできる。高引火点の溶剤としては、トリデカン等の長鎖の炭化水素溶媒を挙げることができる。
【0028】
前記有機溶媒が前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)以外の他の溶剤を含む場合、その溶剤の含有割合は40質量%未満であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0029】
なお、本発明の効果が阻害されない程度である限り、前記有機溶媒は、酢酸アルキル(A)以外の酢酸アルキルを含むことができ、また、及びアルコール(B)以外のアルコール化合物を含むことができる。
【0030】
有機溶媒における前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)それぞれの含有割合は特に限定されない。本発明の樹脂用除去剤の除去性能が向上しやすい点で、前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)の総質量に対し、前記アルコール(B)を2質量%以上、70質量%以下の範囲で含むことが好ましい。
【0031】
前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)の総質量に対し、前記アルコール(B)を5質量%以上含むことがより好ましく、8質量%以上含むことがさらに好ましく、10質量%以上含むことが特に好ましく、また、60質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以下含むことがさらに好ましく、45質量%以下含むことが特に好ましい。
【0032】
(樹脂用除去剤)
本発明の樹脂用除去剤は、上述の有機溶媒を少なくとも含むものである。本発明の樹脂用除去剤は、前記有機溶媒を50質量%以上含むことができ、60質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。
【0033】
本発明の樹脂用除去剤は、有機溶媒のみからなるものであってもよく、実質的に有機溶媒からなるものであってもよく、また、本発明の効果が阻害されない程度で有機溶媒以外の溶媒、添加剤等を含むこともできる。有機溶媒以外の溶媒としては、水が挙げられる。水は、例えば、樹脂用除去剤を希釈するために本発明の樹脂用除去剤に添加することができる。
【0034】
前記添加剤としては、例えば、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、重合禁止剤、香料、顔料、着色剤、防カビ剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上が樹脂用除去剤に含まれていてもよい。
【0035】
本発明の樹脂用除去剤は、通常、液体であり、凝固した状態である場合は、適宜の方法で液化させて使用することができる。
【0036】
本発明の樹脂用除去剤を調製する方法は特に限定されず、例えば、所定の酢酸アルキル(A)及びアルコール(B)を、所定の配合割合で混合することで、本発明の樹脂用除去剤を調製することができる。
【0037】
本発明の樹脂用除去剤は、樹脂に対する除去性能に優れるものであり、簡便な方法により短時間で樹脂を除去することを可能とする。例えば、各種装置、反応容器、反応ライン等に付着した樹脂を本発明の樹脂用除去剤で除去することができる。あるいは、樹脂で形成された塗膜、すなわち、樹脂層の除去が必要な場合に、本発明の樹脂用除去剤で除去することができる。例えば、基板等の被着体どうしが樹脂接着剤で貼り合わされた積層体において、被着体を分離したい場合などに本発明の樹脂用除去剤によって樹脂接着剤を溶解する方法、あるいは、樹脂接着剤を被着体から剥離させる方法等によって、被着体を分離させることができる。
【0038】
前述のように、本発明の樹脂用除去剤は、樹脂を溶解させることができ、あるいは、樹脂を剥離させることができる性質を有するので、本発明の樹脂用除去剤は、樹脂を溶解するために用いられ、あるいは、樹脂を剥離するために用いられる。
【0039】
本発明の樹脂用除去剤で除去できる樹脂の種類は特に限定されず、例えば、公知の樹脂に対して本発明の樹脂用除去剤を広く適用することができる。樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
中でも、前記樹脂は、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの樹脂は、本発明の樹脂用除去剤で特に容易に除去することができるからであり、また、塗料用途等の各種用途で広く使用されている樹脂であるからである。
【0041】
アクリル樹脂の種類は特に限定されず、例えば、公知のアクリル樹脂を広く挙げることができる。アクリル樹脂は、架橋アクリル樹脂であってもよい。すなわち、アクリル樹脂は、架橋アクリル重合体であってもよい。もちろん、アクリル樹脂は、非架橋アクリル重合体であってもよい。また、アクリル樹脂は、アクリル単量体以外の単量体、例えば、スチレン単量体の構造単位を有する共重合体であってもよい。すなわち、本発明の樹脂用除去剤は、汎用のアクリル樹脂のみならず、アクリル-スチレン共重合体樹脂のような共重合体樹脂、アクリル-ウレタン樹脂に対しても優れた除去能力を有することができる。
【0042】
従って、本発明の樹脂用除去剤は、架橋アクリル樹脂用除去剤、アクリル共重合体(アクリル-スチレン共重合体、アクリル-ウレタン樹脂)に対する樹脂用除去剤としても使用することができる。樹脂が架橋アクリル樹脂である場合は、本発明の樹脂用除去剤に溶解しにくいものの、剥離は容易に起こり得る。
【0043】
一方、ウレタン樹脂の種類は特に限定されず、例えば、公知のウレタン樹脂を広く挙げることができる。ウレタン樹脂も架橋及び非架橋のいずれであってもよい。本発明の樹脂用除去剤は、ウレタン樹脂用除去剤として使用することができる。
【0044】
本発明の樹脂用除去剤の使用方法は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂用除去剤を用いて樹脂を除去する工程を備える方法によって、樹脂を除去することができる。例えば、除去の対象とする樹脂に対して樹脂用除去剤を接触させる方法、除去の対象とする樹脂に対して樹脂用除去剤を吹き付ける方法、除去の対象とする樹脂を樹脂用除去剤に浸漬する方法、樹脂用除去剤を染み込ませた紙、布等で除去の対象とする樹脂を拭き取る方法、除去の対象とする樹脂に樹脂用除去剤を含浸させてから樹脂を除去する方法、等を挙げることができる。
【0045】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0047】
下記に示す酢酸アルキル、アルコール及びその他溶剤から適宜の原料を選択して、樹脂用除去剤を調製した。
【0048】
<酢酸アルキル>
・酢酸ブチル(炭素数4)
・酢酸プロピル(炭素数3)
・酢酸アミル(炭素数5)
・酢酸ヘキシル(炭素数6)
・酢酸ヘプチル(炭素数7);比較用
・酢酸エチル(炭素数2)
・酢酸メチル(炭素数1);比較用
【0049】
<アルコール>
・1-ブタノール(炭素数4)
・イソブチルアルコール(炭素数4)
・1-プロパノール(炭素数3)
・1-ペンタノール(炭素数5)
・1-ヘキサノール(炭素数6)
・エタノール(炭素数2);比較用
・1-ヘプタノール(炭素数7);比較用
【0050】
<その他溶剤>
・トリデカン
【0051】
(実施例1)
表1の実施例1に示す原料を選択して、樹脂用除去剤を調製した。具体的には、酢酸ブチル65質量部と、1-ブタノール35質量部とを混合することで、樹脂用除去剤を得た。
【0052】
(実施例2~18)
表1の各実施例で示す原料を表1に示す配合量で使用したこと以外は実施例1と同様の方法で樹脂用除去剤を得た。
【0053】
(比較例1~9)
表1の各実施例で示す原料を表1に示す配合量で使用したこと以外は実施例1と同様の方法で樹脂用除去剤を得た。
【0054】
(除去性能評価)
樹脂用除去剤を使用したアクリル樹脂及びウレタン樹脂に対する除去性能を、下記それぞれの方法(計8種類の方法)で行った。
【0055】
(アクリル樹脂除去試験1)
スチレン87.83質量部と、アクリル酸n-ブチル64.85質量部と、ヒドロキシエチルメタクリレート21.95質量部と、アクリル酸12.15質量部と、重合開始剤としてパーブチル(登録商標)PV13.22質量部とを、200質量部のトルエンに溶解した原料Aを調製した。この原料Aを80℃で8時間にわたって重合反応を行い、アクリル樹脂溶液を得た。このアクリル樹脂溶液20mgを用いて、乾燥膜厚が35μmとなるようにアクリル樹脂の塗膜を基材(パルテック社「冷間圧延鋼板SPCC-SD」、70×150mm)上にキャストし、80℃で5分間乾燥した後、さらに120℃で12時間の乾燥処理を行い、除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を、25℃の樹脂用除去剤に浸漬させ、皮膜の状態を目視で観察して、下記判定基準1でアクリル樹脂に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
<判定基準1>
A:浸漬から10分以内で皮膜の溶解又は剥離が完了し、除去性能が極めて優れるものであった。
B:浸漬から10分超過後、30分以内で皮膜の溶解又は剥離が完了し、除去性能が優れるものであった。
C:浸漬から30分を超過後、1時間以内で皮膜の溶解又は剥離が完了し、除去性能としては良好であった。
D:浸漬から1時間経っても皮膜の溶解又は剥離が完了しない、皮膜を擦るとことで容易に剥がれ、実用上は許容される除去性であった。
E:浸漬から1時間経っても皮膜の溶解又は剥離が完了せず、擦っても剥離せず、除去性能に劣るものであった。
【0056】
(アクリル樹脂除去試験2)
原料Aにさらにカルボジイミド系架橋剤(カルボジライト(登録商標)V-04PF)をカルボキシル基に対して0.25当量添加したこと以外は、アクリル樹脂除去試験1と同様の方法で、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、前記判定基準1でアクリル樹脂(架橋アクリル樹脂)に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
【0057】
(アクリル樹脂除去試験3)
原料Aにさらにカルボジイミド系架橋剤(カルボジライト(登録商標)V-04PF)をカルボキシル基に対して0.5当量添加したこと以外は、アクリル樹脂除去試験1と同様の方法で、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、前記判定基準1でアクリル樹脂(架橋アクリル樹脂)に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
【0058】
(アクリル樹脂除去試験4)
第一工業製薬社のニューフロンティア(登録商標)R-1220に対し、重合開始剤としてOmnirad 184(IGM Resins B.V.)をモノマー又はオリゴマーに対して3質量%の割合で添加した原料Bを調製した。この原料Bを20mg用いて、乾燥膜厚が35μmとなるように、基材(パルテック社「冷間圧延鋼板SPCC-SD」、70×150mm)上にキャストして塗膜を作製し、80℃で1分間乾燥した後、紫外線を積算照度600mJ/cmで照射し、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、皮膜の状態を目視で観察して、下記判定基準2でアクリル樹脂(アクリル-ウレタン樹脂)に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
<判定基準2>
A:浸漬から30分以内で皮膜の剥離が始まり、剥離性能が極めて優れるものであった。
B:浸漬から30分超過後、60分以内で剥離が始まり、剥離性能が優れるものであった。
C:浸漬から60分を超過後、1.5時間以内で剥離が始まり、剥離性能としては良好であった。
D:浸漬から1.5時間経っても剥離しないが、皮膜を擦るとことで容易に剥がれ、実用上は許容される剥離性であった。
E:浸漬から1.5時間経っても剥離せず、擦っても剥離せず、剥離性能に劣るものであった。
【0059】
(アクリル樹脂除去試験5)
ニューフロンティア(登録商標)R-1220の代わりに、ニューフロンティア(登録商標)R-1204B-Hに変更して原料Bを調製したこと以外は、アクリル樹脂除去試験4と同様の方法で、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、前記判定基準2でウレタン樹脂に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
【0060】
(アクリル樹脂除去試験5)
ニューフロンティア(登録商標)R-1220の代わりに、ニューフロンティア(登録商標)GX-8803Dに変更して原料Bを調製したこと以外は、アクリル樹脂除去試験4と同様の方法で、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、前記判定基準2でウレタン樹脂に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
【0061】
(ウレタン樹脂除去試験1)
第一工業製薬社のスーパーフレックス(登録商標)SF-210(20mg)を乾燥膜厚が35μmとなるように基材(パルテック社「冷間圧延鋼板SPCC-SD」、70×150mm)上にキャストして塗膜を作製し、80℃で10分間乾燥した後、さらに120℃で10分加熱し、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、上記判定基準1でウレタン樹脂に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
【0062】
(ウレタン樹脂除去試験2)
第一工業製薬社のF-2170D(20mg)を乾燥膜厚が35μmとなるように基材(パルテック社「冷間圧延鋼板SPCC-SD」、70×150mm)上にキャストして塗膜を作製し、80℃で10分間乾燥した後、さらに120℃で10分加熱し、基材上に除去試験用皮膜を得た。該皮膜が形成された基材を樹脂用除去剤に浸漬させ、上記判定基準1でウレタン樹脂に対する樹脂用除去剤の除去性能を評価した。
【0063】
表1には、実施例及び比較例で調製した樹脂用除去剤の配合条件及び樹脂用除去剤の除去性能評価の結果を示している。なお、表1の配合条件において、空欄はその原料を使用していないことを意味する。
【0064】
表1から、炭素数が2以上、6以下のアルキル基を有する酢酸アルキル(A)及び炭素数が3以上、6以下であるアルコール(B)を少なくとも60質量%含有する有機溶媒を含む樹脂用除去剤は、各種アクリル樹脂及び各種ウレタン樹脂のいずれに対しても優れた除去性能を有するものであることがわかる。
【0065】
【表1】
【要約】
【課題】簡便な方法により短時間で樹脂を除去することを可能とする樹脂用除去剤及び樹脂の除去方法を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂を除去するための樹脂用除去剤であって、有機溶媒を含有し、
前記有機溶媒は、酢酸アルキル(A)及びアルコール(B)を含み、前記酢酸アルキル(A)のアルキル基は、炭素数が2以上、6以下であり、前記アルコール(B)は、炭素数が3以上、6以下であり、前記有機溶媒は、前記酢酸アルキル(A)及び前記アルコール(B)を少なくとも60質量%含有する。
【選択図】なし