(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ハチ捕獲器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/02 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A01M1/02 A
(21)【出願番号】P 2023131869
(22)【出願日】2023-08-14
(62)【分割の表示】P 2019148588の分割
【原出願日】2019-08-13
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-174964(JP,A)
【文献】特開2004-154017(JP,A)
【文献】米国特許第7093389(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の開口を形成する開口縁が設けられ、ハチを誘引又は殺虫するための薬剤を収容するための筒状の容器と、
前記開口縁に係合する係合部と、前記容器内にハチを侵入させるために上方を向いた捕獲口が形成され
た第1捕獲口形成部と、
前記第1捕獲口形成部から立設し、且つ前記開口縁上の2つの点を接続するように上面視において前記開口縁上の一方の前記点と前記開口中心と前記開口縁上の他方の前記点とを結ぶ内角が45度以上
となり135度以下となるように形成される第1壁部と、
上面視における前記開口中心の軸について前記第1捕獲口形成部と180度回転対称に形成された第2捕獲口形成部と、上面視における前記開口中心の軸について前記第1壁部と180度回転対称に形成され
、且つ前記第2捕獲口形成部から立設する第2壁部と
、を有する蓋体と、
前記捕獲口の上方に空間を隔てて配設される屋根体と
、を備え
、
前記第1壁部の上辺の少なくとも一部、及び前記第2壁部の上辺の少なくとも一部は、前記屋根体の内壁面と所定の間隙を隔てて前記屋根体の内壁面に沿って延びるように形成されている、
ハチ捕獲器。
【請求項2】
前記第1壁部は、
前記第1壁部の上辺として、前記開口縁に近づくほど高さが小さくなる2つの上辺を有し、
前記第2壁部は、
前記第2壁部の上辺として、前記開口縁に近づくほど高さが小さくなる2つの上辺を有する
請求項1に記載のハチ捕獲器。
【請求項3】
前記屋根体の前記蓋体と対向する面は、上方に窪むように形成されている
請求項1に記載のハチ捕獲器。
【請求項4】
前記薬剤が入っている袋をさらに備え、
前記屋根体は、使用前の状態において平坦に形成され、
前記蓋体は前記容器と分離可能に設けられている
請求項1に記載のハチ捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハチ捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ススメバチなどのハチを捕獲するためのハチ捕獲器が考案されている。
【0003】
特許文献1には、殺虫剤を配合した液状の害虫誘引捕獲組成物を用いた害虫誘引捕獲器
が開示されている。同文献の
図1に示されるように、液状の害虫誘引捕獲組成物を収納す
る容器の開口部に係合する蓋体には、害虫が容器内部に侵入するための捕獲口13が形成
されている。害虫は、害虫誘引捕獲組成物で誘引され捕獲口13から容器1内に入り込ん
だ後、液状の害虫誘引捕獲組成物中に落下して溺死する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬剤を収容する容器内に入り込んだハチを容器の外に逃さないようにす
るためには捕獲口の開口面積を小さくすることが好ましい一方で、捕獲口の開口面積が小
さ過ぎると揮発した薬剤を飛散させることが困難となってしまう。
【0006】
そこで本発明は、捕獲口の開口面積を大きくすることなく揮発した薬剤の揮散性を向上
させることが可能となるハチ捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、下記構造を備えるハチ捕獲
器を発明した。
【0008】
具体的には、本発明の一の実施態様は、開口縁を有し、ハチを誘引又は殺虫するための
薬剤を収容するための容器と、開口縁に係合する蓋体であって、容器の内部空間に連通す
る捕獲口が形成される平坦面と、平坦面から立設する壁面であって、開口縁上の2つの点
を接続するように開口中心に向かって窪むように湾曲し、開口縁から離れるほど高さが大
きくなる壁面と、を有する蓋体と、を備えるハチ捕獲器を提供する。
【0009】
ただし、本発明における「開口縁上の」「点」とは、開口に対向する方向から見たとき
に、開口縁直上の点のみならず、開口縁直上の点から離れた開口縁側の領域(開口中心と
の距離よりも開口縁との距離の方が小さい領域)にある点を含む。
【0010】
また、開口は、円形でなくてもよい。たとえば、多角形であってもよい。また、開口縁
は、連続的に蓋体と係合していなくてもよい。たとえば、一部が底面方向に凹んでいるた
め、蓋体と係合する部分と蓋体と係合しない部分が存在してもよい。
【0011】
また、平坦面と壁面の接続部は、開口中心に向かって凸となる曲線を含んでもよい。た
だし壁面は、一部に平面を含んでいてもよく、その場合、壁面と平坦面を接続する線は、
直線と曲線から構成される場合がある。
【0012】
蓋体は、上記構造を具備する平坦面及び壁面をそれぞれ2個又は3個以上備えてもよい
。蓋体は、たとえば、開口中心を通過する直線に対し180度回転対称に、2つの平坦面
及び2つの壁面を備えてもよい。その場合、蓋体は、容器の内部空間に連通する第2捕獲
口が形成される第2平坦面と、第2平坦面から立設する壁面であって、開口縁上の2つの
位置を接続するように開口中心に向かって窪むように湾曲し、開口縁から離れるほど高さ
が大きくなる第2壁面と、を更に備える。ここで開口中心とは、開口をなす図形の幾何中
心をいう。開口が円形の場合、開口中心は、円の中心である。
【0013】
蓋体は、開口縁から離れるほど高さが大きくなる壁面の上部に接続する傾斜面を備えて
もよい。この傾斜面は、円錐面の一部を含んでもよい。
【0014】
更にハチ捕獲器は、捕獲口及び傾斜面の上方に空間を隔てて配設される屋根体を更に備
えてもよい。この屋根体は、蓋体の傾斜面と間隙をおいて対向する傾斜面を有してもよい
。屋根体の蓋体と対向する面を上方に窪むように形成した場合、蓋体と屋根体との間隙に
誘引剤を充満させることが可能になる。
【0015】
また、本発明の他の実施態様は、ハチを誘引又は殺虫するための薬剤を収容するための
容器と、容器に係合する蓋体であって、揮発した薬剤を容器外部に排出するための捕獲口
が形成される平坦面と、平坦面から立設する壁面と、壁面と平坦面で囲まれる領域に滞留
する薬剤を、壁面から離れる方向に進行させるために、壁面と接続して設けられる傾斜面
と、を備えるハチ捕獲器を提供する。
【0016】
なお、本明細書における、容器、蓋体、屋根体等の各構成要素の位置関係は、ハチ捕獲
器として使用する際の位置関係を示している。これら各構成要素は、ハチ捕獲器として使
用する前の時点において、上述した位置関係を有さずに分解されていてもよい。
【0017】
また、本明細書におけるハチの捕獲は、広義に、容器内部でハチを殺すこと、ならびに
、容器内部で毒餌剤をハチに摂食させ帰巣後にハチを殺すことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】屋根体16を取り外したハチ捕獲器10の斜視図
【
図3】屋根体16を取り外したハチ捕獲器10の側面図
【
図4】屋根体16を取り外したハチ捕獲器10の平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を
説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るハチ捕獲器10の斜視図である。
図2は、ハチ捕獲器10
の正面図、
図3は、ハチ捕獲器10の側面図、
図4は、ハチ捕獲器10の平面図(上面図
)である。ただし、
図2は、
図1等に示されるハチ捕獲器10に屋根体16を取り付けた
態様のハチ捕獲器10を示している。
【0021】
本実施形態に係るハチ捕獲器10は、容器12、蓋体14及び屋根体16を備えている
。容器12は、
図2及び
図3に示されるように、底面から離れるほど径大となる逆テーパ
状の側面を備える筒状の容器である。容器12の上端には、
図1及び
図4において鎖線で
示されるように、円形の開口を形成する開口縁12Aが設けられている。容器12の底面
から上端までの高さは、たとえば、50mm乃至200mmである。また、開口の直径は
、たとえば、50mm乃至100mmである。
【0022】
この容器12の内部空間には、たとえば、ハチ目スズメバチ科のハチであるスズメバチ
又はアシナガバチを誘引するためのハチ誘引剤(「薬剤」の一例)を収容することが可能
になる。ハチ誘引剤は、たとえば、果汁成分又は樹液成分など、ハチを誘引する効果があ
ると知られている成分を含む液状の誘引剤を用いることができる。ハチ誘引剤は、ハチを
殺虫するための殺虫成分と混合されてもよい。
【0023】
蓋体14は、蓋部14Lと、蓋部14Lに接続される2つの第1ポート部14P1及び
第2ポート部14P2(
図2)を備える。本実施形態において、蓋部14L、第1ポート
部14P1等は、樹脂成形により一体的に形成されている。しかしながら、これら部品を
それぞれ分離可能な別部品から構成してもよい。第1ポート部14P1等は、ハチ捕獲器
10周辺に飛来したハチが容易に着地するための部位である。ただし蓋体14は、第1ポ
ート部14P1等を備えなくてもよい。
【0024】
蓋部14Lは、蓋体14のうち、容器12に係合し、容器12の開口を覆う機能を有す
る部分である。また、蓋部14Lには、容器12内にハチを侵入させるための2つの捕獲
口H1及び捕獲口H2が形成される。具体的には、蓋部14Lは、容器12と係合する係
合部14A(
図1)と、
図4に示されるように、捕獲口H1が形成される第1平坦部14
B1と、捕獲口H2が形成される第2平坦部14B2と、第1平坦部14B1から立設す
る第1壁部14C1と、第2平坦部14B2から立設する第2壁部14C2と、第1壁部
14C1の傾斜する上辺と第2壁部14C2の傾斜する上辺とを接続する傾斜面部14D
を備える。
【0025】
係合部14Aは、容器12の開口を形成する開口縁12Aと係合する部分である。蓋部
14Lと容器12を係合するための手段として、様々な手段を用いることができる。たと
えば、いずれかに凸部を形成し、他方にこの凸部が係合するノッチを設け、蓋部14Lを
容器12に対して相対的に回転させるか、蓋部14Lが容器12に近づくように相対的に
移動させると、凸部がノッチに係合し、蓋部14Lが容器12に装着され、容器12が蓋
部14Lに対して相対的に移動することを抑制するようにしてもよい。また、蓋部14L
に雌ねじを形成し、容器12の上縁部にこの雌ねじに螺合する雄ねじを形成してもよい。
また、容器12の内部空間にハチ誘引剤を収納させた状態で、接着剤等で両者を接着させ
てもよい。回転することにより蓋部14Lと容器12を係合する場合、容器12の開口は
円形であることが好ましい。回転せずに蓋部14Lと容器12を係合する場合、容器12
の開口は円形に限られず、たとえば、矩形、六角形等の多角形であってもよい。開口中心
軸C1は、開口の幾何中心を通過し開口を含む面に垂直方向に進行する直線である。また
、容器12(又は蓋部14L)の一方に、蓋部14L方向(又は容器12方向)に突出す
る係合爪を設け、蓋部14L(又は容器12)に、係合爪と嵌合する係合穴を設け両者を
嵌合することにより係合させてもよい。
【0026】
第1平坦部14B1は、上方を向いた平坦面を備える。また第1平坦部14B1には、
上方を向いて開口する捕獲口H1が形成される。
図4に示されるように、第1平坦部14
B1は、上面視において扇形状に形成され、容器12の開口中心軸C1近傍の位置から径
方向外側に伸びて容器12の開口縁12A上の点12A1に到達する一辺と、開口縁12
A上の他の点12A2に到達する他の一辺を有する。上面視において、点12A1、開口
中心軸C1、点12A2を結ぶ内角は、45度以上135度以下であることが好ましく、
本実施形態では、約100度である。内角が小さすぎる場合、ハチが進入するのに十分な
大きさの捕獲口H1を形成することが困難である。一方で、内角が大きすぎる場合、後に
詳述するように、十分な周方向長さを有する傾斜面部14Dを形成することができなくな
るため、第1壁部14C1と第1平坦部14B1で囲まれる領域に滞留する揮発した薬剤
を、第1壁部14C1の壁面から離れる方向に揮散させることが困難になる。
【0027】
捕獲口H1は、上面視において、開口縁12Aから離間して形成される。捕獲口H1は
、開口縁12Aとの距離(捕獲口H1の縁部と開口縁12Aとの最小距離)よりも、開口
中心軸C1との距離(捕獲口H1の縁部と開口中心軸C1との最小距離)の方が小さいよ
うに、開口中心軸C1側に形成される。捕獲口H1の直径は、捕獲したいハチの大きさを
考慮して、たとえば、15~25mmに形成される。なお、第1平坦部14B1には、捕
獲口H1以外の穴が形成されていてもよい。たとえば、捕獲口H1等と第1ポート部14
P1等との間隙に1又は複数の小孔を形成し、薬剤がその小孔からも揮散するように構成
してもよい。
【0028】
第1壁部14C1は、第1平坦部14B1から立設して形成される。第1壁部14C1
と第1平坦部14B1を接続する部分は、上面視において、開口縁12A上の離間する二
つの点である点12A1及び点12A2を接続し、開口中心軸C1に向かって凸となる曲
線となる。第1壁部14C1は、開口中心軸C1方向に窪む湾曲した曲面を有する。ただ
し第1壁部14C1は、一部に一又は複数の平面部分を含んでいてもよい。その場合、二
つの点である点12A1及び点12A2を接続する線は、曲線と直線から構成される場合
がある。
【0029】
図3の側面視に示されるように、第1壁部14C1は、捕獲口H1近傍において最大の
高さを有し、捕獲口H1から離れ開口縁12Aに近づくほど高さが小さくなり、開口縁1
2A上で高さがほぼゼロになるように傾斜する2つの上辺を有する。同図に示されるよう
に、本実施形態において、第1壁部14C1の上辺は、側面視において直線状をなす。第
1平坦部14B1の平坦面に対する傾斜角の平均値は、30度以上75度以下であること
が好ましい。本実施形態において、第1壁部14C1の上辺の傾斜角は、約45度である
。しかしながら、第1壁部14C1の上辺は、曲線的に傾斜してもよい。
【0030】
なお、第1壁部14C1の端部、すなわち、第1壁部14C1の上辺が第1平坦部14
B1に接続する位置(第1壁部14C1の高さがゼロになる位置)は、開口縁12Aの直
上でなくてもよい。たとえば、開口縁12A側の領域(開口中心軸C1との距離よりも開
口縁12Aとの距離の方が小さい外径側の領域)内において、第1壁部14C1の上辺が
第1平坦部14B1に接続するように、第1壁部14C1を設けてもよい。
【0031】
図4に示されるように、第2平坦部14B2、捕獲口H2、第2壁部14C2、第2ポ
ート部14P2は、第1平坦部14B1、捕獲口H1、第1壁部14C1、第1ポート部
14P1と、上面視における開口中心軸C1について180度回転対称に形成される。ま
た、上面視において、第2壁部14C2が開口縁12Aに接続する点12A3及び点12
A4は、開口中心軸C1について点12A1及び点12A2の180度回転対称の位置に
相当する。このため、これらについて詳細な説明を省略する。また、第1平坦部14B1
及び第2平坦部14B2など、同等の構成を要する部分を、第1平坦部14B1等などと
称する。
図4に示されるように、上面視において、第1ポート部14P1の開口縁から最
も離れた先端と、第2ポート部14P2の開口縁から最も離れた先端を結ぶ直線(開口中
心軸C1と交差し、
図4における紙面左右方向に進む直線)は、捕獲口H1及び捕獲口H
2を通過する。
【0032】
蓋体14の上端部の開口中心軸C1上には、上方に向かって突出する吊部14Eが形成
される(
図1、
図3)。吊部14Eには、ハチ捕獲器10を吊り下げるための穴が形成さ
れている。
【0033】
また、
図4に示されるように、第1壁部14C1の傾斜する上辺を含む上部と、周方向
に隣接する第2壁部14C2の傾斜する上辺を含む上部を接続するように傾斜面部14D
(
図3、
図4)は設けられている。傾斜面部14Dは、開口中心軸C1を通過する断面に
おいて、開口縁12Aから離れ開口中心軸C1に近づくほど高くなる傾斜面を備えている
。本実施形態において、傾斜面部14Dは、開口中心軸C1を軸とする円錐面状の傾斜面
を備えている。第1壁部14C1等を複数設ける場合、傾斜面部14Dは、互いに離間し
て複数設けられてもよい。
【0034】
更にハチ捕獲器10は、屋根体16を備えている。屋根体16は、捕獲口H1、捕獲口
H2、傾斜面部14Dの上方を覆うように設けられている。本実施形態における屋根体1
6は、上面視において捕獲口H1及び捕獲口H2を含む蓋部14L全体を覆う一方、第1
ポート部14P1及び第2ポート部14P2の先端は、屋根体16から突出する。屋根体
16の中心部には、係合孔が形成されている。吊部14Eは、この係合孔を貫通して、屋
根体16と係合する。屋根体16の表面のうち、蓋体14と対向する内壁面は、開口中心
軸C1を軸とする円錐面状の傾斜面を備えている。本実施形態において、傾斜面部14D
に含まれる円錐面からなる円錐の頂角と、これに対向する屋根体16の内壁面に含まれる
円錐面からなる円錐の頂角は略等しい。このため、開口中心軸C1を通過する断面におい
て、両者の母線は、ほぼ平行になる。したがって、傾斜面部14Dと屋根体16との間隔
がほぼ一定となる間隙が形成される。一方で、第1平坦部14B1は、平坦面を備えてい
る。このため、傾斜面部14Dと屋根体16との間隙(傾斜面部14Dの屋根体16に対
向する傾斜面と、屋根体16の傾斜面部14Dに対向する内壁面との高さ方向の距離)は
、捕獲口H1等及び第1平坦部14B1等の平坦面と屋根体16との間隙(捕獲口H1等
と、屋根体16の捕獲口H1等に対向する内壁面との高さ方向の距離)より小さい。
【0035】
以上のようなハチ捕獲器10の使用方法の一例について以下に説明する。
【0036】
使用者は、袋等に入っているハチ誘引剤を開封して容器12内に入れ、水で薄めること
により、ハチを誘引するために適切な濃度を有する液状のハチ誘引剤を容器12内に収容
させることが可能になる。
【0037】
次いで使用者は、蓋体14を容器12と係合させた後、蓋体14に屋根体16を係合さ
せる。たとえば、使用者が蓋体14を容器12に対して回転させ容器12に設けた凸部を
蓋体14に設けた切欠き等のノッチに係合させることにより、蓋体14と容器12を係合
させることが可能になる。次いで使用者は、ハチが飛来しそうな場所において、吊部14
Eの穴に紐等を通してハチ捕獲器10を吊り下げることにより、ハチ捕獲器10を設置す
る。
【0038】
その後、容器12内のハチ誘引剤は、揮発して捕獲口H1及び捕獲口H2から容器12
の外部に排出される。捕獲口H1及び捕獲口H2の上方には屋根体16が設けられている
ため、揮発したハチ誘引剤の一部は、屋根体16と蓋体14との間隙の空間に滞留する。
【0039】
上述したように傾斜面部14Dと屋根体16との間隙は、捕獲口H1又は捕獲口H2と
屋根体16との間隙より小さいため、傾斜面部14Dと屋根体16との狭い空間を傾斜面
に沿って流れる気流は、第1平坦部14B1等、第1壁部14C1等及び屋根体16で囲
まれる空間に流れ込むことを促進すると推察される。このため、もともとこの空間に滞留
していた誘引剤を第1ポート部14P1等に向かって排出させることが可能になる。
【0040】
ハチ捕獲器10の周囲を飛んでいるハチは、第1平坦部14B1等と屋根体16との間
隙から排出されるハチ誘引剤に誘引されて、第1平坦部14B1又は第2平坦部14B2
に近づく。このとき、第1平坦部14B1等には第1ポート部14P1等が接続される。
このため、第1ポート部14P1等が無い場合と比較して、ハチは、蓋体14に着地しや
すくなる。したがって、着地することなくハチが飛び去ってしまう場合を抑制することが
可能になる。
【0041】
その後ハチは、捕獲口H1等から容器12内に侵入する。容器12内には、液状のハチ
誘引剤が満たされている。また、容器12の内壁には、水滴等が付着している。このため
ハチは、容器12の内壁を上って外に出ることができず、やがて溺死する。ここで捕獲口
H1が開口縁12Aから離間して形成されている場合、仮に容器12の内壁面をハチが上
ることができても、捕獲口H1に到達することができないため、ハチを捕獲する可能性を
高めることが可能になる。更に第1壁部14C1等は開口縁12Aから離れるほど高さが
大きくなるように、第1壁部14C1等の上辺は傾斜しているから、開口縁12A側の領
域上方に滞留しているハチ誘引剤のみならず、開口中心軸C1付近に滞留しているハチ誘
引剤もハチ捕獲器10の外方に排出させることが可能になると推察される。
【0042】
なお、捕獲口H1等と開口縁12Aとの距離(捕獲口H1等の縁部と開口縁12Aとの
最小間隔)より、第1壁部14C1等の端部と開口縁12Aとの距離(第1壁部14C1
等の端部と開口縁12Aとの最小間隔)の方が小さくなるように構成することが好ましい
。このように構成することによって、捕獲口H1等を囲むように第1壁部14C1等を設
けることが可能になる。
【0043】
なお、屋根体16は、使用前の状態において平坦に形成し、使用する際、使用者が立体
的に形成できるように構成してもよい。また、屋根体16の表面のうち、蓋体14と対向
する対向面の形状は、様々なものを適用することができる。ただし使用時に、蓋体14と
対向する対向面を上方に窪むように形成することによって、揮発したハチ誘引剤を蓋体1
4と屋根体16との間隙の空間に充満させることが可能になる。ただし、屋根を有する施
設にハチ捕獲器10を設置する場合、屋根体16は必ずしも設けなくてもよい。
【0044】
ただし、屋根体16を設け、傾斜面部14Dの傾斜面と同じ方向に傾斜する内壁面を有
する屋根体16を設けることにより、風通しが良くなり屋根体16と傾斜面部14Dの間
隙を進行する気流の発達を促進することが可能になるため、ハチ誘引剤の揮散を促進する
ことが可能になる。
【0045】
以上述べたように、本実施形態に係るハチ捕獲器10の蓋体14は、第1平坦部14B
1等の平坦面に形成される捕獲口H1から排出されるハチ誘引剤を、第1平坦部14B1
等から立設する第1壁部14C1等の壁面の、傾斜する上辺から流入する気流によって離
散することが可能になるので、捕獲口H1等の開口面積を大きくせずとも、揮発したハチ
誘引剤の揮散性を向上させることが可能になると推察される。
【0046】
[比較実験]
以下、本実施形態に係るハチ捕獲器10と、比較例に係る2種類のハチ捕獲器を用いて
実施されたハチの捕獲実験について説明する。
【0047】
図5左は、第1比較例に係るハチ捕獲器の蓋体24及び屋根体26を示している。
図5
右下は、第2比較例に係るハチ捕獲器の蓋体34を示し、右上は、蓋体34の屋根体36
を示している。
【0048】
図5左に示されるように、蓋体24には蓋体14と同一径の捕獲口H1が形成されてい
る。また、屋根体26によって、捕獲口H1に連通し四方が壁面で囲まれるハチ誘引剤を
排出するための流路が形成される。また、反対側にも同様の捕獲口及びハチ誘引剤排出用
の流路が形成されている。
【0049】
図5右下に示されるように、蓋体34には捕獲口H1及び捕獲口H2が形成されている
。また、蓋体34には、捕獲口H1及び捕獲口H2にそれぞれ連通する渦巻き状の流路C
H1及び流路CH2が形成される。蓋体34に屋根体36を係合させると、四方が壁面で
囲まれるハチ誘引剤を排出するための流路CH1及び流路CH2が形成される。
【0050】
同一の容器に同一のハチ誘引剤を収容し、第1実施形態に係る蓋体14及び屋根体16
を設けたハチ捕獲器と、第1比較例に係る蓋体24及び屋根体26を設けたハチ捕獲器と
、第2比較例に係る蓋体34及び屋根体36を設けたハチ捕獲器を3個ずつ用意し、3メ
ートル間隔をおいて12日間放置した。
【0051】
その結果、第1実施形態に係る蓋体14及び屋根体16を設けたハチ捕獲器は、それぞ
れ、19匹、12匹、15匹のハチを捕獲することができた。一方で、第1比較例に係る
ハチ捕獲器は、それぞれ、5匹、5匹、8匹のハチを捕獲することができた。第2比較例
に係るハチ捕獲器は、それぞれ、5匹、2匹、3匹のハチを捕獲することができた。
【0052】
したがって、本実施形態に係るハチ捕獲器10は、同一の捕獲口H1及び捕獲口H2を
備える構成の中で、最もハチの誘引効果が高いことが実証された。第1比較例及び第2比
較例に係るハチ捕獲器は、壁面を多く設け過ぎたために、かえって揮散性が低下したと考
えられる。本実施形態に係るハチ捕獲器10は、自然風を利用することによりハチ誘引剤
の揮散性を向上させることができたと考えられる。
【0053】
なお、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば
、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実
施形態に追加することが可能である。また、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実
施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することが可
能である。
【符号の説明】
【0054】
10 ハチ捕獲器
12 容器
12A 開口縁
12A1乃至12A4 開口縁12A上の点
13 捕獲口
14 蓋体
14A 係合部
14B1 第1平坦部
14B2 第2平坦部
14C1 第1壁部
14C2 第2壁部
14D 傾斜面部
14E 吊部
14L 蓋部
14P1 第1ポート部
14P2 第2ポート部
16 屋根体
C1 開口中心軸
CH1 流路
CH2 流路
H1 捕獲口
H2 捕獲口