(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】半導体製造プロセスにおける還元剤の添加システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/56 20060101AFI20241107BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B01D53/56 310
B01D53/68 200
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023143298
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2023-09-04
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】孫 嘉呈
(72)【発明者】
【氏名】鄭 瑞翔
(72)【発明者】
【氏名】粘 伊菱
(72)【発明者】
【氏名】郭 珈延
(72)【発明者】
【氏名】李 壽南
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-213596(JP,A)
【文献】特表2005-535435(JP,A)
【文献】特開2005-125285(JP,A)
【文献】特開2009-183828(JP,A)
【文献】特開2003-290630(JP,A)
【文献】実開昭56-076021(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/56
B01D 53/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造プロセス排ガスのために添加される還元剤の量を制御するために適用される半導体製造プロセスにおける還元剤添加システムであって、
前記半導体製造プロセス排ガス中の複数のプロセスガスの処理前濃度を検出する、処理前ガス濃度検出装置と、
前記半導体製造プロセス排ガスを浄化し、処理後ガスを放出する、プロセス排ガス処理装置と、
前記プロセス排ガス処理装置内に還元剤ガスを供給する、還元剤供給装置と、
前記複数のプロセスガスの処理後濃度、及び前記処理後ガス中の前記還元剤ガスの残留濃度を検出する、処理後ガス濃度検出装置と、
前記処理前濃度と前記処理後濃度に基づいて前記複数のプロセスガスの分解除去率を算出し、前記分解除去率と前記還元剤ガスの前記残留濃度に基づいて、添加される前記還元剤ガスの量を制御するため前記還元剤供給装置に信号を送信する、添加システム制御装置と
を含む、
半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム。
【請求項2】
各前記複数のプロセスガスは、設定値と、前記分解除去率の目標範囲とを有し、前記設定値は前記目標範囲の下限であり、
前記複数のプロセスガスの全ての前記分解除去率が前記設定値に達し、前記複数のプロセスガスのうちの少なくとも1つの前記分解除去率が前記目標範囲の上限を超えたことに応じて、前記添加システム制御装置は前記還元剤ガスの流量を減少させるため前記信号を送信する、
請求項1に記載の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム。
【請求項3】
前記分解除去率は、下記式(1)で表される、
DRE=1-(C
out/C
in)(Q
out/Q
in)・・・(1)
前記式(1)において、DREはプロセスガスの処理効率を表し、C
OUTは前記処理後濃度を表し、C
INは前記処理前濃度を表し、Q
OUTは前記プロセス排ガス処理装置の出口風量を表し、Q
INは前記プロセス排ガス処理装置の入口風量を表す、
請求項1に記載の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム。
【請求項4】
前記添加システム制御装置は、時間に伴い変化する前記処理前濃度、前記処理後濃度、前記還元剤ガスの前記残留濃度、及び前記分解除去率を表示するよう構成された、表示パネルを更に含む、
請求項1に記載の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム。
【請求項5】
前記処理前ガス濃度検出装置、前記処理後ガス濃度検出装置、及び前記添加システム制御装置と通信する、システム通信モジュールを更に含む、
請求項1に記載の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム。
【請求項6】
プロセス排ガス処理装置内に進入する前の半導体製造プロセスに排ガス中の複数のプロセスガスの処理前濃度を検出することと、
前記プロセス排ガス処理装置を用いて前記半導体製造プロセス排ガスを浄化することであって、還元剤ガスを前記プロセス排ガス処理装置内に添加することと、
前記複数のプロセスガスの処理後濃度、及び前記プロセス排ガス処理装置から放出された処理後ガス中の前記還元剤ガスの残留濃度を検出することと、
前記処理前濃度と前記処理後濃度に基づいて前記複数のプロセスガスの分解除去率を算出し、前記分解除去率と前記還元剤ガスの前記残留濃度に基づいて、添加される前記還元剤ガスの量を決定することと
を含む、
半導体製造プロセスにおける還元剤添加方法。
【請求項7】
各前記複数のプロセスガスは、設定値と、前記分解除去率の目標範囲とを有し、前記設定値は前記目標範囲の下限であり、
前記複数のプロセスガスの全ての前記分解除去率が前記設定値に達し、前記複数のプロセスガスのうちの少なくとも1つの前記分解除去率が前記目標範囲の上限を超えたことに応じて、前記還元剤ガスの流量を減少させる、
請求項6に記載の半導体製造プロセスにおける還元剤添加方法。
【請求項8】
前記分解除去率は、下記式(1)で表される、
DRE=1-(C
out/C
in)(Q
out/Q
in)・・・(1)
前記式(1)において、DREはプロセスガスの処理効率を表し、C
OUTは前記処理後濃度を表し、C
INは前記処理前濃度を表し、Q
OUTは前記プロセス排ガス処理装置の出口風量を表し、Q
INは前記プロセス排ガス処理装置の入口風量を表す、
請求項6に記載の半導体製造プロセスにおける還元剤添加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスにおける還元剤の添加システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造は、基本的に、フォトリソグラフィ、化学蒸着、イオン注入、化学機械研磨といった一連の処理工程を経るシリコンウェハにより開始される。これら処理において、通常、分子の解離及び結合のために多量の化学成分が用いられる。このため、半導体製造プロセスにおける各処理が完了した後、多量の残留したプロセス化学ガスが生成される。これらガスは、処理せずに放出された場合、大気環境及び人々の健康に多大な害を及ぼす可能性があり、このためプロセスガス処理装置により排除する必要がある。
【0003】
還元剤を添加することによってプロセスガス処理装置の処理効率を向上させることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、リアルタイムで還元剤の流量を制御するのは困難であるため、装置の処理効率が精確に維持されず、過度に高濃度の還元剤の放出を引き起こす可能性があり、これは還元剤使用の安全基準に違反することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態の1つによる半導体製造プロセスにおける還元剤の添加システムは、半導体製造プロセスの排ガスに対して添加される還元剤の量の制御に適用される。添加システムは、処理前ガス濃度検出装置と、プロセス排ガス処理装置と、還元剤供給装置と、処理後ガス濃度検出装置と、添加システム制御装置とを含む。処理前ガス濃度検出装置は、半導体製造プロセス排ガス中の様々なプロセスガスの処理前濃度を検出するために用いられる。プロセス排ガス処理装置は、半導体製造プロセス排ガスを浄化して処理後ガスを放出するために用いられる。還元剤供給装置は、プロセス排ガス処理装置に還元剤ガスを供給するために用いられる。処理後ガス濃度検出装置は、プロセスガスの処理後濃度、及び処理後ガス中の還元剤ガスの残留濃度を検出するために用いられる。添加システム制御装置は、処理前濃度と処理後濃度に基づいてプロセスガスの分解除去率(Destruction Removal Efficiency,DRE)を算出するため、及び、DREと還元剤ガスの残留濃度に基づいて、添加される還元剤ガスの量を制御するため還元剤供給装置に信号を送信するために用いられる。
【0006】
例示的な実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤の添加方法は、下記を含む。プロセス排ガス処理装置に進入する前の半導体製造プロセス排ガス中の様々なプロセスガスの処理前濃度を検出する。プロセス排ガス処理装置を用いて半導体製造プロセス排ガスを浄化することであって、還元剤ガスをプロセス排ガス処理装置内に添加する。プロセスガスの処理後濃度及びプロセス排ガス処理装置から放出される処理後ガス中の還元剤ガスの残留濃度を検出する。処理前濃度と処理後濃度に基づいてプロセスガスの分解除去率(DRE)を算出し、DRE及び還元剤ガスの残留濃度に基づいて添加される還元剤ガスの量を決定する。
【発明の効果】
【0007】
ここで導入される半導体製造プロセスにガスのための還元剤の添加システム及び方法は、様々なプロセスガスを含む半導体製造プロセス排ガスを同時に処理することを可能とする。このため、既存のプロセスガスのためのガス処理装置の処理効率を向上させることができ、還元剤の流量を監視して過度な還元剤の残留を防止することができる。
【0008】
本発明を詳細に説明するため、以下に図面と併せていくつかの例示的な実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は、更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は例示的な実施形態を表し、説明と併せて本発明の原理を説明する役割を果たす。
【
図1】本発明の第1の実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤添加システムのブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システムにおける表示パネルの概略図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤の添加のフロー図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤の添加のフロー図である。
【
図5A】実験例1におけるプロセスガスの分解除去率と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【
図5B】実験例1における還元剤の残留濃度と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【
図6A】実験例2におけるプロセスガスの分解除去率と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【
図6B】実験例2における還元剤の残留濃度と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【
図7A】実験例3におけるプロセスガスの分解除去率と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【
図7B】実験例3における還元剤の残留濃度と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤添加システムのブロック図である。
【0011】
図1を参照し、第1の実施形態の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム110は、半導体製造プロセス排ガスに添加される還元剤の量を制御するために用いられる。例えば、半導体製造プロセスにおいて2つのプロセスガスが用いられるとき、2つのプロセスガスはそれぞれ第1プロセスガスシリンダG1及び第2プロセスガスシリンダG2から半導体製造プロセス反応チャンバ100に供給される。半導体製造プロセス反応チャンバ100に進入する2つのプロセスガスの流量は、プロセスガスコントローラ106により制御されるマスフローコントローラ(MFC)102と104により決定される。次いで、半導体製造プロセスの完了後に生成される半導体製造プロセス排ガスが、ポンプ108を通じて半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム110に進入する。
図1は2つのプロセスガスのみを表しているが、本発明は2つ以上のプロセスガスを用いる半導体製造プロセスに適用することができ、
図1に表す装置に限定されないことを理解されたい。
【0012】
やはり
図1を参照し、本実施形態の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム110は、基本的に、処理前ガス濃度検出装置112と、プロセス排ガス処理装置114と、還元剤供給装置116と、処理後ガス濃度検出装置118と、添加システム制御装置120とを含む。処理前ガス濃度検出装置112は、半導体製造プロセス排ガス中の様々なプロセスガスの処理前濃度を検出するために用いられる。処理前ガス濃度検出装置112は、例えばガスセンサ又はフーリエ変換赤外線分光装置(FTIR)である。プロセス排ガス処理装置114は、半導体製造プロセス排ガスを浄化して処理後ガスを放出するために用いられる。プロセス排ガス処理装置114は、例えばスクラバ(scrubber)であってよい。還元剤供給装置116は、還元剤ガスをプロセス排ガス処理装置114に供給するために用いられる。還元剤供給装置116は、還元剤ガスシリンダG3と、還元剤ガスコントローラ124と、マスフローコントローラ(MFC)122とを含んでよいが、これらに限定されない。還元剤ガスコントローラ124は、添加システム制御装置120から信号を受信してよく、プロセス排ガス処理装置114に進入する還元剤ガスの流量を決定するため、MFC122を制御してよい。処理後ガス濃度検出装置118は、プロセス排ガス処理装置114から放出された処理後ガスを検出して、様々なプロセスガスの処理後濃度、及び処理後ガス中の還元剤ガスの残留濃度を取得するために用いられる。処理後ガス濃度検出装置118は、例えばガスセンサ又はFTIRである。例えば、本実施形態において、2つのプロセスガスと還元剤ガスが存在することから、前記2つのプロセスガスの処理後濃度、及び前記還元剤ガスの残留濃度が取得される。
【0013】
図1において、添加システム制御装置120は、処理前濃度と処理後濃度に基づいてプロセスガスの分解除去率(DRE)を算出するため、及び、DREと還元剤ガスの残留濃度に基づいて、添加される還元剤ガスの量を制御するため還元剤供給装置116に信号を送信するために用いられる。
【0014】
DREは、以下の式(1)で表すことができる。
DRE=1-(Cout/Cin)(Qout/Qin)・・・(1)
【0015】
前記式(1)において、DREはプロセスガスの処理効率を表し、COUTは処理後濃度を表し、CINは処理前濃度を表し、QOUTはプロセス排ガス処理装置114の出口風量を表し、QINはプロセス排ガス処理装置114の入口風量を表す。QINとQOUTは使用者により入力されるか、測定によって取得されてよい。
【0016】
1つの実施形態において、添加システム制御装置120は、還元剤ガスの残留濃度が設定値を超えたとき、還元剤ガスの流量をシステム設定初期値まで減少させるため、還元剤供給装置116へ信号を送信してよい。
【0017】
各プロセスガスは、設定値と、DREの目標範囲を有する。設定値は、目標範囲の下限である。1つの実施形態において、全てのプロセスガスのDREが設定値に達し、プロセスガスのうちの少なくとも1つのDREが目標範囲の上限を超えたとき、添加システム制御装置120は、還元剤ガスの流量を減少させるため、還元剤供給装置116へ信号を送信する。もう1つの実施形態において、プロセスガスのうちの少なくとも1つのDREが設定値未満であるとき、添加システム制御装置120は、還元剤ガスの量を増加させるため、還元剤供給装置116へ信号を送信する。
【0018】
図1を参照し、半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム110は、処理前ガス濃度検出装置112、処理後ガス濃度検出装置118、及び添加システム制御装置116(の還元剤ガスコントローラ124)と通信するシステム通信モジュールCMを更に含んでよい。システム通信モジュールCMは、処理前ガス濃度値のフィードバックを提供するためプロセスガスコントローラ106と更に通信してよく、プロセスガスコントローラ106は半導体製造プロセス反応チャンバ100に進入するプロセスガスの流量を調整する。システム通信モジュールCMの確立は、システムの機能及び目的を達成するために添加システム制御装置120がシステムのコンポーネントから信号を受信したり、コンポーネントへコマンドを発することを可能とする。システム通信モジュールCMの確立はまた、ハードウェア又はソフトウェアによる通信のフォーマットを統一化し、システム機能の更なる応用及び拡張を容易にする。例えば、通信フォーマットは、制御装置に応じてModbus、Ethercat等を含んでよく、ハードウェアフォーマットは、制御装置に応じてRJ45、RS232、RS485等を含んでよい。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0019】
第1の実施形態の半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム110は、
図2に表すように、表示パネル200を更に含んでよい。表示パネル200は、使用者がリアルタイムの情報を取得できるよう、添加システム制御装置120に取り付けられてよい。
【0020】
図2を参照し、プロセスガスが、NF
3とN
2O、及び、CH
4を含む還元剤ガスを含むと仮定する。表示パネル200は、時間に伴い変化する、NF
3とN
2Oの処理前濃度、NF
3とN
2Oの処理後濃度、及び還元剤ガスとしてのCH
4の濃度を表示する、処理前濃度濃度表示領域202、並びにプロセスガス処理効率表示領域204を含んでよい。濃度表示領域202は、濃度をグラフ表示する。ただし、濃度は、数字、又はグラフと数字の両方で表示されてよい。表示パネル200は、プロセス排ガス処理装置(114)の出口風量と入口風量を表示する風量表示領域206を更に含んでよい。表示パネル200は、様々なプロセスガスのためのDREの目標範囲と、還元剤ガスの残留濃度の設定値を表示する、条件設定領域208を更に含んでよく、その数値範囲は使用者が必要に応じて調整可能である。表示パネル200は、いくつかの情報を省略してよい、又は、
図2に示すように、サンプリング頻度、還元剤(ガス)添加頻度、流量といった他の情報を表示してよい。
【0021】
図3は、本発明の第2の実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤の添加のフロー図である。
【0022】
ステップ300にて、プロセス排ガス処理装置に進入する前の半導体製造プロセス排ガス中の様々なプロセスガスの処理前濃度を検出する。プロセスガスは2つ以上存在し、検出装置は、例えばガスセンサ又はFTIRである。
【0023】
ステップ302にて、半導体製造プロセス排ガスを第1の実施形態のプロセス排ガス処理装置114といったプロセス排ガス処理装置を用いて浄化する。還元剤ガスをプロセス排ガス処理装置内に添加する。
【0024】
ステップ304にて、プロセス排ガス処理装置から放出された処理後ガスにおける処理後濃度を検出する。ステップ306にて、還元剤ガスの残留濃度を検出する。上述した検出ステップにおいて用いる装置は、例えばガスセンサ又はFTIRである。
【0025】
ステップ308にて、ステップ300にて測定した処理前濃度とステップ304にて測定した処理後濃度に基づいて、プロセスガスの分解除去率(DRE)を算出する。DREは、第1の実施形態中の式(1)により表されてよく、その説明はここでは省略する。
【0026】
次いで、ステップ308にて取得したDRE、及びステップ306にて測定した還元剤ガスの残留濃度に基づいて、添加する還元剤ガスの量を決定するステップ310を実行する。
【0027】
ステップ312にて、ステップ310の結果に基づいて還元剤ガスを添加する。即ち、ステップ310にて還元剤ガスの流量を減少させることを決定した場合、浄化ステップ(302)のために添加する還元剤ガスの流量を減少させる。逆に、ステップ310にて還元剤ガスの流量を増加させることを決定した場合、浄化ステップ(302)のために添加する還元剤ガスの流量を増加させる。第2の実施形態において、ステップ300~310を通してリアルタイム測定が可能である。例えば、秒毎に様々な濃度値を測定することができ、還元剤ガスは、リアルタイム又はステップ310の結果に応じた時間に添加されてよい。
【0028】
図4は、本発明の第3の実施形態による半導体製造プロセスにおける還元剤の添加のフロー図であり、ステップ300~308は第2の実施形態のステップと同一であり、第2の実施形態の説明を参照して理解することができる。ステップ310の詳細を説明する。
【0029】
図4を参照し、ステップ400にて、全てのプロセスガス(第1~第Nプロセスガス、Nは1より大きい)の分解除去率(DRE)が設定値に達した場合、後続の処理方法を決定するため、ステップ402を実行する。プロセスガスのうちの少なくとも1つのDREが設定値に達していない場合、ステップ408を実行する。本実施形態において、各プロセスガスは設定値及びDREの目標範囲を有し、設定値は目標範囲の下限である。
【0030】
ステップ402にて、プロセスガスのうちの少なくとも1つのDREが上限を超えた場合、ステップ404を実行する。プロセスガスのうちのいずれのDREも上限を超えていない場合、処理はステップ312へ戻り、還元剤ガスは流量を調整する必要なく直接添加される。
【0031】
ステップ404にて、還元剤ガスの流量を減少させることを決定する。この決定に基づき、ステップ312を実行し、添加される還元剤ガスの流量を減少させる。
【0032】
ステップ406にて、還元剤ガスの残留濃度が設定値を超えた場合、ステップ404を実行する。1つの実施形態において、還元剤ガスの流量はシステム設定初期値まで減少される。還元剤ガスの残留濃度が設定値を超えていない場合、処理はステップ312へ戻り、還元剤ガスは流量を調整する必要なく直接添加される。
【0033】
ステップ408にて、添加される還元剤ガスの量を増加させることを決定する。この決定に基づき、ステップ312を実行し、添加される還元剤ガスの流量を増加させる。
【0034】
本発明のシステムの動作を表すため、以下の実験を提供する。ただし、本発明は下記内容に限定されない。
【0035】
<実験例1>
【0036】
実験例1において、プロセスガスは、NF
3とN
2O、及びCH
4を含む還元剤ガスを含み、NF
3のDREの目標範囲は85%~99%であり(即ち、NF
3のDREの設定値は85%)、N
2OのDREの目標範囲は70%~85%であり(即ち、N
2OのDREの設定値は70%)、CH
4の残留濃度の設定値は4000ppmとした。
図1に示すようなシステムを採用した。浄化のためプロセス排ガス処理装置114のチャンバ温度は570℃に設定した。一定時間の後、
図5Aと
図5Bが得られた。
【0037】
図5Aは、実験例1におけるプロセスガスの分解除去率と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
図5Bは、実験例1における還元剤の残留濃度と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
図5Aと
図5Bから、プロセスガスとしてのNF
3とN
2Oの両方のDREが設定値に達しておらず、還元剤ガスの残留濃度が設定値である4000ppmを超えていないとき、
図5Aの左側の矢印により示されるように、還元剤の流量は継続的に増加することが分かる。プロセスガスとしてのNF
3とN
2Oの両方のDREが設定値に達し、N
2OのDREが上限85%を超えたとき、エネルギー節約のため、
図5Aの右側の矢印により示されるように、還元剤の流量は減少する。
【0038】
<実験例2>
【0039】
浄化のためプロセス排ガス処理装置114のチャンバ温度を540℃に変更したことを除き、実験例1のものと同一の条件を採用した。一定時間の後、
図6Aと
図6Bが得られた。
【0040】
図6Aは、実験例2におけるプロセスガスの分解除去率と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
図6Bは、実験例2における還元剤の残留濃度と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
図6Aから、プロセスガスとしてのNF
3のDREが設定値に達したが、N
2OのDREが設定値に達していないとき(
図6Aにおける矢印により示す)、還元剤の流量は増加することが分かる。ただし、
図6Bから、還元剤ガスの残留濃度が設定値4000ppmを超えたとき、還元剤ガスの流量を次のサイクルのためシステム設定初期値である4LPMに減少させる必要があることが分かる。ただし、
図6Aを参照することにより、還元剤ガスの流量が減少したとき、N
2OのDREは設定値に達していないことが見て取れる。
【0041】
このため、実験例2から、残留濃度4000ppmといった厳格な条件において、プロセス排ガス処理装置114のチャンバ温度が540℃に設定された場合、システムにおけるバランスを達成することができないことが見て取れる。このため、チャンバ温度を上げるか、還元剤ガスの残留濃度の放出基準を緩くする必要がある可能性がある。
【0042】
<実験例3>
【0043】
還元剤ガスとしてのCH
4の残留濃度の設定値を10000ppmに変更したことを除き、実験例2のものと同一の条件を採用した。一定時間の後、
図7Aと
図7Bが得られた。
【0044】
図7Aは、実験例3におけるプロセスガスの分解除去率と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
図7Bは、実験例3における還元剤の残留濃度と還元剤の流量との間の関係を表すグラフである。
【0045】
図7Aから、プロセスガスとしてのNF
3のDREが設定値に達したが、N
2OのDREが設定値に達していないとき、
図7Aの左側の矢印により示されるように、還元剤の流量は継続的に増加することが分かる。
【0046】
図7Bから、
図7Bにおける矢印により示されるように、還元剤ガスの残留濃度が設定値10000ppmを超えたとき、還元剤ガスの流量を次のサイクルのためシステム設定初期値4LPMに減少させる必要があることが分かる。
【0047】
図7Aから、プロセス排ガス処理装置114における還元剤ガスとプロセスガスとの間の反応は時間に伴いDREを徐々に増加させ、システムにおける還元剤の流量(即ち、添加される還元剤ガスの量)が徐々に安定し、これによりシステムにおけるバランスを達成することが見て取れる。
【0048】
まとめると、本発明による半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム及び方法において、プロセス排ガス処理装置におけるプロセスガスのDREが向上し、還元剤の過度な残留が防止され、還元剤の残留濃度は安全基準を満たす。このため、エネルギー効率及び安全性を達成することができる。
【0049】
本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、開示された実施形態の構造に対して様々な改変及び変形を行うことができることは当業者にとって明らかであろう。上記を考慮し、本発明は、下記の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り、本発明の改変及び変形を包含することを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による半導体製造プロセスにおける還元剤添加システム及び方法は、半導体製造プロセスのプロセスガス処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100:半導体製造プロセスに反応チャンバ
102、104、122:マスフローコントローラ(MFC)
106:プロセスガスコントローラ
108:ポンプ
110:還元剤添加システム
112:処理前ガス濃度検出装置
114:プロセス排ガス処理装置
116:還元剤供給装置
118:処理後ガス濃度検出装置
120:添加システム制御装置
124:還元剤ガスコントローラ
200:表示パネル
202:濃度表示領域
204:プロセスガス処理効率表示領域
206:風量表示領域
208:条件設定領域
300、302、304、306、308、310、312、404、408:ステップ
400、402、406:決定の条件
CM:システム通信モジュール
G1:第1プロセスガスシリンダ
G2:第2プロセスガスシリンダ
G3:還元剤ガスシリンダ