(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】鋼球の流体力学とそれを用いた蓄電池とドアクローザ
(51)【国際特許分類】
F16F 7/01 20060101AFI20241107BHJP
E05F 1/00 20060101ALI20241107BHJP
E05F 3/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F16F7/01
E05F1/00 Z
E05F3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023182568
(22)【出願日】2023-10-24
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592106948
【氏名又は名称】岡本 耕一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 耕一
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-245265(JP,A)
【文献】特開2001-170340(JP,A)
【文献】特開平10-71265(JP,A)
【文献】特開2002-136758(JP,A)
【文献】特表昭62-502478(JP,A)
【文献】特許第7175838(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/01
E05F 1/00
E05F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部の流路は断面形状が底面と上面と2つの側面に囲まれる長方形であって、底面は水平面に対して傾斜し、底面上の鋼球は排出口に向かって下降し、上面は底面と平行な面で、底面と上面との間の向きには鋼球が2個以上並ばず、2つの側面の間の向きには鋼球が複数繋がれ、
容器上部は大きさが同じである鋼球を数多く収容し鋼球表層面を押圧しながら容器の内面に沿って移動可能なピストンを備え、容器上部に接続される容器下部は鋼球が自重で下降しながら少しずつ通過する排出口を備えて、ピストンが減速する減速器において、
容器下部においては、2つの側面の少なくとも片方は鋼球の下降方向と平行でない横断側面であって、横断側面の末端と2つの側面の他方との間が排出口であり、2つの側面の間の距離は排出口に近づくに従い次第に減少して、
横断側面に沿わない鋼球が横断側面に沿う複数の鋼球の間に下降しながら割り込み、鋼球が排出口から中断することなく排出口から排出し続ける減速器で、排出口は鋼球が同時に2個通過できて3個以上通過できない大きさであることを特徴とする減速器。
【請求項2】
大きさが同じの鋼球の横長流路は底面と上面と2つの側面に囲まれ断面形状が長方形であって、上面は底面と平行な面で、底面と上面との間の向きには鋼球が2個以上並ばず、2つの側面の間の向きには鋼球が複数繋がれ、
底面は固定部に設けられる水平の回転軸(Z)を軸に回転する円柱(PZ)の外周面に貼付され、底面に沿う鋼球の下降方向と平行ではない横断側面を円柱(PZ)内部に収容可能に備えて、ピストンは固定部に設けられる水平の回転軸(ZZ)を軸に回転し円柱(PZ)の最も高い位置と接触しない程度に僅かに離れて設置される円柱(PZZ)であり、ピストンは回転可能で移動せず、ピストンに沿って底面と横断側面とが上昇し、横断側面とピストンとの間の底面上にあって横断側面によって持ち上げられる多くの鋼球は排出口から少しずつ通過しながらピストンを押圧して、円柱(PZ)が減速する減速器であって、
横断側面はピストンを通過しないとき底面から上に突き出されて鋼球に当接する位置にあって、横断側面はピストンを通過するときピストンに押圧されて底面から下に収容されて鋼球に当接しない位置に退避する減速器。
【請求項3】
上記底面は上記
横断側面を複数備える請求項
2に記載する減速器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鋼球の流体力学とそれを用いた蓄電池とドアクローザに関する。
【背景技術】
【0002】
本願
図1(a)に示す減速器は特許文献1の
図11(b)に示す減速器であって、
減速器その1は、ピストンPSと、シリンダSLと、シリンダSL内に収容される粉粒体SAと、排出口Hsとを備え、上記排出口Hsの面積は上記粉粒体SAが止まることなく排出される大きさ以上であり、
【0003】
ピストンPSに押圧される粉粒体表層面SASから排出口HSまでの距離は、上記ピストンPSが粉粒体SA表層面SASを押圧する力の大きさによって、ピストンPSの移動速度がほぼ変化しない距離である減速器Dc1であって、
【0004】
上記粉粒体SAが自重によって落下して上記排出口HSから流出することにより上記ピストンPSが移動することを特徴とし、上記粉粒体SAがピストンPSとシリンダSL内壁との間の隙間に入り込まない大きさの鋼球SAである減速器。
【0005】
本願
図3(a2)に示す減速器は特許文献1の
図15に示す減速器であって、
減速器その2は、上記シリンダSLは距形断面の箱SLで、排出口Hsの断面形状が長方形であって、互いに直交する一方の辺に沿った向きには鋼球SAが2個以上並ばず、互いに直交する他方の辺に沿った向きには鋼球SAが複数繋がる減速器その1。
【0006】
本願は上記減速器Dcに関するもので、上記排出口HSから上記鋼球SAが継続して排出する時間を長くするためになされた発明である。
【0007】
上記鋼球が粉粒体である場合に関する文献は多く存在する。
【0008】
【文献】特許第7175838号公報
【文献】田口義弘著 重力下の粉粒体の動力学
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の容器SLに収容される鋼球SAは、大きさが同じの粒ぞろい変形しない球体であって、容器SLには内壁断面が円形である筒型容器と内壁断面が矩形である箱型容器とがあり、筒型容器とは上述の本願
図1(a)に示す減速器であり、箱型容器とは上述の本願
図3(a2)に示す減速器である。
【0010】
何れも上記鋼球SAを多く収容し流路断面積が変化しない容器上部と、流路断面積が次第に減少する容器下部SIBと、容器下部SLBの末端部であって鋼球SAを少しずつ排出する排出口HSと、鋼球表層面SASを押圧するピストンPSとを備える。
排出口HSから鋼球SAを少しずつ排出すると鋼球表層面SASはゆっくりと降下する。本発明は、ピストンPSがいくら強く鋼球表層面SASを押圧しても早く動かない減速器に関するものである。
【0011】
容器内の鋼球の全てが静止し、排出口HSから鋼球SAが排出されなくなるとき、「移動しない壁」が出来上がって、「移動しない壁」が排出口HS周辺の流路を塞ぐ。「移動しない壁」とは
図1に後述する崩れないドームやリングやアーチ、あるいは楔2球、楔3球である。
【0012】
「移動しない壁」は流路断面積が次第に減少する容器下部SIBと、鋼球SAを少しずつ排出する排出口HSの周辺とにおいて出来上がる。「移動しない壁」が出来ないようにすると、容器内の鋼球SAの全ては動き続けて、排出口HSから止まることなく排出される。
【0013】
鋼球SAを排出口HSから少しずつ排出して一瞬にして終了しないようにしてピストンを減速する減速器において、排出口HSを小さくしても、鋼球SAが排出口HSから排出されなくならないようにすることが課題であって、如何にして容器下部SIBにおいて「移動しない壁」が出来ないようにして、排出口HSから排出される鋼球SAを少しずつにするかが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
大きな力で動くピストンをゆっくりと動くようにする手段は以下の通りである。
本発明は砂時計の砂を複数の鋼球に入れ替えた減速器に関するもので、砂という粉粒体と複数の鋼球とでは物性が大きく異なり、
図2(c)に説明するように、
「容器SLは数多くの鋼球SAを収容し、上部の円筒状のシリンダSLと、シリンダSL内径が徐々に小さくなる下部のロート部SLBと、ロート部SLBの下部末端に設け上記鋼球SAを少しずつ排出する排出口HSと、上記鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSとを備え、上記排出口HSの直径DHSは上記鋼球SAの直径DSAの3倍より大きく4倍より小さいことを特徴とすることを特徴とする減速器1。」
【0015】
本願減速器は内容物の鋼球が自重で落下することによって動作する。内容物の鋼球の全ては何等かの力が働いて後ろから押されてではなく、地球の引力によってのみ移動する。
上記筒型容器において鋼球は主に鉛直方向に移動し、上記箱型容器においては鉛直方向だけでなく、上記箱型容器を略水平に傾けても移動する。
【0016】
「排出口HSから鋼球SAを少しずつ排出するかの手段」は、出来ることなら、排出口HSから鋼球SAを1個ずつ排出する手段であって、そのためには、排出口HSから排出される前に鋼球SAを1個ずつ数珠つなぎにして1列に整列させる必要がある。この1列を1列流という。
【0017】
上記箱型容器においては底面に乗っている鋼球は上下に2個重ならない1列路であって、容易に1列に整列させることが出来る。1列路とは至る所の間が距離を鋼球直径の1倍以上2倍未満に保たれる2面に挟まれる流路であって、上記「減速器その2」の流路のように流路断面が矩形に限らず円筒容器においても、鋼球SAが1面上に2個以上重なって並ばない流路を1列路言う。
【0018】
1列路は、
図9に後述するように、流路の高さ(流路高GH)が至る所が鋼球直径DSAの1倍以上で2倍以下の流路である。流路の幅も(流路幅GL)鋼球1個が辛うじて通過できる流路高GHである流路を1列溝と言う。
【0019】
上記筒型容器においては、
図5において説明するように、
「鋼球SAを多く収容し流路断面積が変化しない容器上部と、流路断面積が次第に減少する容器下部のロート部SIBと、容器下部SLBの末端部に少しずつ排出する排出口HSと上記鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSとを備え、
ロート部SIBに設けられる挿入体BBの球面とロート部SIBの内壁面との間の隙間は1個の鋼球が通過できて2個の鋼球が通過できない流路であることを特徴とする減速器2。」
【0020】
排出口周辺のドームができる場所に設置される球体B、円柱BC、半球体BH(挿入体)であって、排出口周辺の流路を1列路にする。
箱型容器は初めから矩形断面の1列路であって、筒型容器においては前作業として、1列路に並び変える必要がある。
【0021】
排出口HS周辺の1列路の断面は円環であって、端部のない1列溝で、1列溝を短くするために、円環の1列路の一部を切り取る。
図8に説明するように、
減速器3は、「上記挿入体BBの中心軸ZBBが上記シリンダSLの中心軸Zと一致しない上記減速器1或いは2。」
【0022】
また、
図9に説明するように、
減速器4は、「上記排出口HSを貫通し、上記挿入体BBの表面と上記容器下部SIBの内壁面との間の隙間の一部を占有する円柱の貫通体BFを備える上記減速器1~3。」
貫通体BFは上記挿入体BBを下から支える支柱でもある。減速器2,3において、挿入体BBは、排出口HS一部を塞いで排出口HSを三日月形にして、鋼球を1列にするだけではなく、三日月形の排出口HSSの中央部を2個或いは3個の鋼球が通過する大きさにする。
【0023】
図1(b)に説明するように、
減速器5は、「上記鋼球表層面SASを押圧するピストンPSの押圧面は鋼球表層面SASの鋼球を包含する上に凸の凹面である上記減速器1~4」
鋼球がピストンと容器内壁の間の隙間に入り込む大きさであっても、ピストンPSの押圧面が凹面であるピストンPSは鋼球表層面SASから深く沈みこまない。
【0024】
図12に説明するように、
減速器6は、「上記ピストンPSは鋼球表層面SASを押圧する押圧面から容器外に至る貫通穴を備える上記減速器1~5」
随時、容器外から容器内に鋼球を供給できる。
【0025】
円筒容器の排出口を小さくするためには排出口HSの周りを1列路にする必要があったが、初めから1列路である上記箱型容器においては、1列路において1列流に並び変える。
図17(a)に示すように、
減速器7は、「多くの鋼球を収容し排出口HSから少しずつ排出する容器において、上記鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSを備え、先細り流路は流路幅GLを減少させ、側面WSと底面WFとが交差する角度が鈍角であって、末端部に排出口HSを設けることを特徴とする減速器7。」
【0026】
図18(a)に示すように、
減速器8は、「多くの鋼球を収容し排出口HSから少しずつ排出する容器において、上記鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSを備え、先細り流路は流路幅GLを減少させ、側面WSに沿って1個の鋼球が通過できて2個の鋼球が通過できない溝Mが設けられ、末端部に排出口HSを設けることを特徴とする減速器8。」
【0027】
図17(c)に示すように、
減速器9は、「多くの鋼球を収容し排出口HSから少しずつ排出する容器において、上記鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSを備え、末端部に排出口HSを設ける流路は2つの側面と上面WCとの3面からなるV型流路であることを特徴とする減速器9」。
ここに、排出口HSと反対側の端部である容器入口INNにある鋼球SAの表層面SASを、以後鋼球表層面SASと言う。減速器7~8において、2個の鋼球が通過できない流路幅であっても、1列に並び変わり、「移動しない壁」が出来ない。
【0028】
筒型容器において、
図18(a)に示すように、
減速器10は、「容器SLは、上部の円筒状のシリンダSLと、流路の断面積を徐々に小さくしたロート部SLBと、それらに充填される数多くの鋼球SAと、ロート部SLBの下部末端に設ける排出口HSと上記鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSとを備え、排出口HSの外延部の接線上に設けた側面に沿って、1個の鋼球が通過できて2個の鋼球が通過できない溝Mを設けることを特徴とする減速器10。」
【0029】
減速器7~10において、筒型容器においても上記箱型容器においても、1列路内において1列溝に沿わない鋼球は1列溝に沿って下降する鋼球の列の間に割り込んで行き、1列溝の末端部に設けられる1個穴の排出口から排出される。
筒型容器についても箱型容器についても、課題を解決するための手段は、「排出口から排出される前に鋼球を1列に並ばせる手段」であって、共通している。
【0030】
1列に並んで排出口HSから排出される2個或いは3個の鋼球は、
図5(b)に説明するように、
減速器11は、「上記排出口HSの下の固定部Wに設置される平板BCであって、上記平板BCの大きさと排出口HSから平板BCまでの距離は、上記平板BC上の鋼球が上記平板BCの外延部から零れ落ちながら上記排出口HSまでに積み上がるために必要な大きさであることを特徴とする減速器1~10。」
【0031】
図9に説明するように、
減速器12は、「上記排出口HSから下に接続される鉛直の矩形断面の1列路RVであって、1列路RVの排出口の下に設けられる平板BCに、平板BC上の鋼球の一部が1列路RVの外部で上記平板BCの外延部から零れ落ちない位置に留める突起RVCを備える減速器1~10。」
また、
図15に説明するように、
【0032】
減速器13は、「長い流路底面WWFはドリル状であって、流路底面WWFは何重にも重なり、上の流路底面WWFの裏面は下の流路底面WWFの上面になる減速器1~10。」
円筒容器の排出口からに限らず箱型容器の排出口に連結する鉛直流路の末端部は、容器内の上記排出口から出る鋼球を減速する。
【0033】
減速器11~13は、円筒容器に限らず箱型容器においても、容器末端部の容器内排出口に接続される流路で、流路末端の容器外排出口から出る鋼球を減速する。
【0034】
図25(a)に説明するように、筒型容器において、容器内の鋼球をピストンPSで押し上げることはできない。
図1の減速器で繰り返し減速する場合、
図12の装置のように、下降した鋼球を元に戻す経路を容器外に設ける必要がある。
断面が矩形である箱型容器においては、容器内の鋼球をピストンPSで殆ど抵抗なく押し上げることが出来る。
図12の実施例のように、下降した鋼球を元に戻す経路を容器外に設ける必要がなく、容器内を往復させることが出来る。
【0035】
鋼球は筒型容器では鉛直方向に下降する。箱型容器では水平方向に近い下り坂を下降し、高低差が小さい容器内を往復する。下降した鋼球を容易に元の位置に戻すことが出来るので、繰り返し減速することができる。
このような利点を持つ筒型容器において、「排出口から排出される前に鋼球を1列に並ばせる手段」は
図25(b)に説明するように、
【0036】
減速器14は、「水平より僅かに傾いた筒体Mの内壁に沿って摺動するピストンPSは、ピストンPS1とそれと一定の距離を離して対面するピストンPS2と、ピストンPS1とピストンPS2とを連結する連結板PLとを備え、
ピストンPS1とピストンPS2と連結板PLと筒体Mの内壁とに囲まれる矩形断面の空間Gは複数の鋼球SAを収容する1列路であって、上記1列路内の筒体Mの内壁上に鋼球の下降方向と略直交して流路幅を減少させる横断流路WS3が設けられ、上記横断流路WS33の片方の端部は筒体Mの2つの側面の片方WS1に接して、上記横断流路WS3の他方の端部と2つの側面の他方WS2との隙間は上記鋼球が出入り可能な排出口HSを設ける減速器14。
【0037】
排出口HSを境にして空間Gが室R1と室R2に2分され、室R1から室R2下降する鋼球をピストンPS1が押圧して減速され、下降した鋼球をピストンPS2が室R2から室R1へ押し上げて復帰する。またピストンが止まれば室R2がすぐに満杯になって鋼球の下降も停止し、室R1内の鋼球が全部なくならない。
【0038】
図27、29に説明するように、
減速器15は、「上記筒体Mは固定部Wに設けられる支軸SWの周りに回転自在に軸支され、上記ピストンPSは固定部Wに設けられる枢軸Oの周りに回転自在に軸支される回転体Cと連結される減速器14。」ここに、固定部Wとは図面の紙面上で、図面の紙面上にWの記載は省略される。
【0039】
図32に説明するように、
減速器16は、「上記回転体Cと上記ピストンPSは連結棒CCを介して連結される減速器15。」
ピストンPSが筒体M内の鋼球を押圧すると筒体M内で停止して室R1を持ち上げる。押圧しないとき筒体M内を摺動して室R1を下げる。ドアが閉まると同時に減速し、開く或いは止まると同時に初期化される。
【0040】
図26の減速器は鉛直の1列路であって、鋼球は鉛直方向に下降し或いは持ち上げられる。
ドアが閉まるときだけでなく、急激にドアを開いた時にも減速する。
図26に説明するように、
減速器17は、「底面WFと上面WCと互いに平行で向かい合う2つの側面WS1,WS2とに囲まれる矩形断面の1列路の両端部を接続して形成される「筒状の1列路」は、上記底面WFと上面WCとは中心軸を共有する小さい筒の表面WFと大きい筒の内面WCであって、
【0041】
複数の鋼球を収容し、中央部に鋼球の下降方向と略直交して流路幅を減少させる横断流路WS33を備え、上記横断流路WS33の片方の端部は2つの側面の片方WS1に接して、上記横断流路WS3の他方の端部と2つの側面の他方WS2との隙間は上記鋼球が出入り可能な排出口HSを設ける1列路であって、
【0042】
小さい筒の表面WFと大きい筒の内面WCと2つの側面WS1とWS2とに同時に沿って摺動するピストンPS1とピストンPS2との間は、上記横断流路WS33を中間部に設ける一定の長さの1列路であって、一定の長さの1列路は上記横断流路WS33を境にして高い位置にある室R1と低い位置にある室R2に2分され、低い位置にあるピストンPS2が上昇して室R1から室R2に下降した鋼球を室2に持ち上げて戻すことを特徴とする減速器17。」
【0043】
減速器18は、「低い位置にある室R2から高い位置にある室R1に持ち上げて戻される鋼球の邪魔にならない位置に退避する上記横断流路WS33を備える上記減速器14~17。」
上記横断流路WS33は
図25に示すように底面の下に退避する。
図26に示すように一部が回転して排出口HSを大きくする。何れの場合も、上記横断流路WS33は上に移動する鋼球によって倒され或いは回転する。
図31の場合は、筒体Mが回転することによって内部に設ける上記横断流路WS33を外部に排除する。
【0044】
図27~
図30は連続回転する発電機を減速する減速器であって、
図29に説明するように、
減速器19は、「底面WFと上面WCと互いに平行で向かい合う2つの側面WS1,WS2とに囲まれる矩形断面の1列路の両端部を接続して形成される「筒状の1列路」の上記底面WFと上面WCとは中心軸Zを共有する小さい筒の表面と大きい筒の内面であって、
【0045】
複数の鋼球を収容し、鋼球の下降方向と略直交して流路幅を減少させる横断流路WS33を上記底面WF上に複数備えて、それぞれの上記横断流路WS33の片方の端部は2つの側面の片方WS1に接して、上記横断流路WS3の他方の端部と2つの側面の他方WS2との隙間は上記鋼球が出入り可能な排出口HSが設けられ、上記排出口HSのそれぞれは開閉する弁を備える1列路であって、
【0046】
「筒状の1列路」が固定部W設けられる上記中心軸Zを軸に回転して、上記底面WFは固定部Wの「筒状の1列路」の最も高い位置に設けられるピストンPSに沿って移動し、
上記横断流路WS33と上記弁は「筒状の1列路」内に収容されて鋼球と当接する位置と「筒状の1列路」外に退避して鋼球と当接しない位置との間を揺動し、
【0047】
ピストンPSが鋼球を押圧し始めるとき、上記弁33は鋼球と当接しない位置に退避し、ピストンPSに直近の上記横断流路WS33は鋼球と当接する位置にあって、上記横断流路WS33の下にある次の横断流路WS333と弁333が鋼球と当接する位置に出現し、ピストンPSが鋼球を押圧し終わるとき、横断流路WS33と上記弁33とが鋼球と当接しない位置に退避する減速器19。
【発明の効果】
【0048】
一般に大きな力で早く動く運動体を減速する減速器は大きな摩擦損失を伴い、小さな力では動かない特性があって、運動体を運動させる力が小さい場合に、減速機は運動体を停止したままの状態にしてしまう。本願発明の減速器は大きな力で動くものを抵抗少なく減速し、小さな力で動くものを減速して止めてしまわない減速器を提供する。
図30に説明するように、大きなエネルギを貯めて必要時に少しずつ消費するために必要な蓄電池に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】押圧面が上に凸の凹面であるピストンの説明図
【
図3】排出口にできる「移動しない壁」の動作説明図
【
図9】後続の鋼球に押されて出るようにする排出口の説明図
【
図10】位置エネルギを必要時に消費する蓄電池の説明図
【
図11】非常に小さな力でドアを開閉するドアクローザの減速器
【
図12】鋼球を供給する貫通穴を備えるピストンの説明図
【
図13】1列路と1列路内の鋼球の配列についての説明図
【
図14】1列路の流路断面積を次第に減少させる横断流路の説明図
【
図17】先細り1列路に設ける鈍角側面の動作説明図
【
図20】流路断面積を次第に減少させる側面の構造図
【
図21】先細り1列路にできる楔2球が崩れる動作説明図
【
図22】1個穴の排出口から1個ずつ排出される鋼球の動作説明図
【
図23】鋼球の下降方向と略直角に交差する横断流路の説明図
【
図24】
図25~33の1列路中間部に設けられる横断流路の説明図
【
図25】筒体に収容され2つのピストン間の鋼球が上下する減速器
【
図26】環状の1列に収容され2つのピストン間の鋼球が上下する減速器
【
図28】2つの動作が可能な不限定リンク装置の
図25の減速器
【
図29】回転軸を軸に連続回転する回転体を減速する減速器
【
図30】位置エネルギを少しずつ消費する蓄電池に用いられる減速器
【
図31】容器外に退避する
図25~33の横断流路の動作説明図
【
図33】遅れて動作するタイマーに用いられる減速器
【発明を実施するための形態】
【0050】
初めに、砂時計は容器内に大量に収容した砂をゆっくりと長時間にわたって排出する。容器内収容した砂が如何に大量であっても、砂の排出速度は一定であるという特徴があって、貯め込んだ大きな位置エネルギを少しずつ必要な時に運動エネルギに変換する。
本発明は大きな位置エネルギを砂に貯めるのではなく、砂の表層面を押圧するピストンに貯めるもので、持ち上げた大きな重量のピストンをゆっくりと下降させるものである。
【0051】
通常、運動体を減速するとき、大きな力が動く運動体を大きく減速するほど、大きな抵抗を伴うものであるが、
図1に示すように、ピストンPSが如何に強く砂の表層面SASを押圧しても、表層面SASの降下速度は一定で変化しない。ピストンPSが大きな力が動くとしても、大きく減速されて、大きな抵抗よって減速しない。
【0052】
本発明は上記砂時計の砂を複数の鋼球に入れ替えた減速器に関するもので、砂という粉粒体と複数の鋼球とでは物性が大きく異なる。複数の鋼球は固まって固体のように移動したり、崩れて液体のように流れたり、気体のように飛散したりするが、固体や液体と異なる現象を呈する。
【0053】
本発明は「鋼球を多く充填して少しずつ排出する容器とピストンPSで構成される減速器」に関すものであって、容器上部の大きな断面積であって断面積が変化しない円筒部に鋼球を多く充填して、小さな断面積の排出口から鋼球を少しずつ排出する。
容器SLには断面積が次第に小さくなるルート部SLBがあって、ルート部SLBを通過して断面内に収容される鋼球の数を少なくする。狭くなった流路に数を減らしながら通過するところに「移動しない壁」が出来上がる。
【0054】
ここに、鋼球SAとは、例えばベアリングの球であって、大きな力をもってしてもほとんど変形しない球体である。容器SLに充填される鋼球SAすべて同じ大きさであって、鋼球SA の大きさはシリンダSL内壁とピストンPS外周面との間に入り込まない大きさに限られる。
また、鋼球SAが固く摩耗が少ない材料で作られるなら、シリンダSL内壁とピストンPS外周面の摩耗も少なく、減速器の性能を長く安定させる。出来れば磁性の帯びないステンレス鋼製が望ましい。
【0055】
容器内の鋼球はいずれも下に空洞が出来れば必ず自重のみで落下して、留まって静止したままにならない。流路には鋼球が降下する落差があって、鋼球の落下に伴い鋼球は並び替えられ、より狭い流路により数少なく収容される。より狭い流路に入り込んで身動き取れない状態にはならない。
本発明は、断面積が次第に小さくなる流路において、落差を作る構造に関するものである。
【0056】
図1~4において、砂の代わりに鋼球SAを採用した砂時計によって、鋼球の流体力学を説明し、それに基づいて、
図5以降において、「大きさが同じの鋼球を多く充填して1つか2つずつ排出する容器とピストンPSで構成される減速器」に関する発明を提供する。
【0057】
図1(a)において、鋼球SAを容器に出来るだけ多く充填して、排出口HSから出来るだけ少しずつ排出するほど、ピストンPSの移動はゆっくりと、しかも長時間継続する。
円はもっとも大きな面積を最も小さな周長で包み込む図形で、円筒容器は小さくして鋼球SAを最も多く充填する容器である。
【0058】
図1(a)に示す減圧器DCの容器は、ピストンPSと、シリンダSLと、シリンダSL内に収容される鋼球SAと、排出口Hsとを備え、上記排出口Hsの面積は鋼球SAが止まることなく排出され続ける大きさ以上である。
【0059】
シリンダSLの長さは、上記ピストンPSが鋼球表層面SASを押圧する力の大きさによって、上記排出口Hsから鋼球SAが排出される速度が変化しない距離、即ち、ピストンPSの移動速度がほぼ変化しない距離以上である。ピストンPSに押圧されてではなく鋼球SAが自重によって落下して上記排出口HSから流出することにより、上記ピストンPSが移動することを特徴とし、ピストンPSを取り除くと単なる砂時計である。
【0060】
ピストンPSが運動体と連動すると、運動体の速度はピストンPSの移動速度に従う。ピストンPSが押圧する鋼球表層面SASは「ピストンPSの移動を止めながら後退する当たり」となる。ピストンPSが強いバネで高速回転するドアに連動すると、鋼球表層面SASは「ドアの回転を止めながら後退する当たり」になる。
【0061】
鋼球SAが自重によって排出口HSから流出することにより移動し、移動させる動力を必要としない。バネは一瞬にして復元するが、ドアを回転させるバネは、抵抗をつけなくてもゆっくりと伸縮するバネになる。
【0062】
一般に運動体に大きな力が作用するほど、運動体は大きな加速度を得て早く動く。大きな力が作用して早く動く運動体を減速する一般の減速器は減速比が大きくなるほど抵抗が大きくなる。
減速器は大きな摩擦損失を伴うもので、非常に小さな力では動かない。運動体を運動させる力が小さい場合に、一般の減速器では運動体を停止したままの状態にしてしまう。
【0063】
本願発明の減速器は自重で落下する鋼球によって動き、ピストンと連動する運動体とは全く無関係に動く。大きな力が作用して早く動く運動体にも、小さな力で動く運動体にも、影響されず所定の速度で後退し、「後退する当たり」は運動体に大きな力で押されても加速しない。
図1のピストンが運動体で、
図1の鋼球表層面SASが当たりとすると、運動体の速度は当たりの後退速度になる。
【0064】
図1は容器SLの断面図で、容器SLの上部は円筒状で下部はロート状のシリンダであって、容器SLの円筒状の部分を円筒部と言い、ロート状の部分をロート部と言う。
多くの「大きさも形も揃った鋼球」を内容する容器SLの下部末端にシリンダSL内径を小さくした排出口HSを備え、排出口HSから鋼球を少しずつ、しかもゆっくりと排出し続ける。鋼球SAの表層面SASを押圧するピストンPSを備えて減速器SLとする。
図1(a)において、容器内の鋼球の動作を説明し、主な用語を定義する。
【0065】
シリンダSLの内容物が「固体を細かく粉砕した粉粒体」或いは「大きさも形も揃った鋼球」である場合と、シリンダSLの内容物が液体または気体の流体の場合とでは大きく異なる。
内容物が液体または気体の流体の場合、ピストンPSで押圧すると気体は収縮し、シリンダSL内は至る所の液圧または気圧が一定して、液圧または気圧が大きくなるほど、断面積を小さくした排出口HSから流体が勢いよく噴出する。
【0066】
内容物が固体を細かく粉砕した粉粒体である場合も、
図1(a)に図示するように内容物が大きさも形も揃った鋼球の場合も、内容物は収縮せず、断面積を小さくした排出口HSから粉粒体或いは鋼球が勢いよく噴出しない。
【0067】
円筒部の長さが
図1(a)に示す長さLS以上であれば、ピストンPSが鋼球表層面SASを押圧する力の大きさによって、排出口HSから鋼球SAが排出される速度が変化しない。
鋼球表層面SASから距離LS離れた位置まで円筒部内の鋼球を、仮に、ピストンPSで下から押し上げたとしても、上記距離LSより小さい一定値を超えると、ピストンPSの力がいくら大きくても、円筒部内の鋼球は動かない。
【0068】
互いに接触し合う複数の鋼球を以後、塊りと言う。円筒部内の一定量を超えた大きな塊りは下から押されても移動しない。下に移動しても上に移動しない。液体のように、円筒内で下降した鋼球SAを持ち上げて元に戻すことはできない。
図1(a)に示すX―X断面より上の鋼球SAをピストンPSで下から上に持ち上げる場合、X―X断面より上の鋼球SAの重さよりはるかに大きな力で持ち上げても持ち上がらない。
【0069】
X―X断面が図示の長さLSより上にあって、鋼球SAの重さがより小さいときでも持ち上がらない。鋼球SAと円筒部内壁面との間の摩擦力は大きい。
図1(a)が示すように、ピストンPSが鋼球表層面SASを上から下に押圧するとき、X―X断面より上の鋼球SAの重さが押圧方向と同方向に働く。ピストンPSが押圧しても動かないためには、上述の鋼球SAを下から上に持ち上げても動かない場合より、大きな摩擦面が必要になって、図示の長さLSは長くなる。
【0070】
図1(a)において、鋼球表層面SASに近い円筒部では、隣り合う鋼球SAと鋼球SAの間の隙間も多く認められ、複数個の鋼球SAが乱雑に配される。鋼球表層面SASから遠い円筒部では、複数個の鋼球SAは割り込みあいながら互いに強く押し合い、円筒部では下に行くほど、複数個の鋼球SAは強く固められて「形を変えない塊」になる。
【0071】
円筒部の中の鋼球SAには「それより上にある鋼球SAの自重」が働き、鋼球SAと鋼球の間に割り込み、下に行くほど強くシリンダ内壁を押圧して、摩擦力が強く働く。鋼球表層面SASから遠く離れるほどでシリンダ内壁の摩擦面の面積が増加し、ピストンPSで鋼球表層面SASをいくら強く押圧しても、「形を変えない塊」は下に動かなくなる。
【0072】
断面積が一定の円筒部内の複数個の鋼球は、排出口HSから遠く離れるほど整然と整列する。鋼球は整列したまま下降する。複数個の鋼球で出来る「形を変えない塊」が、まるで固体であるかのように下降するところを、以後、固層と言う。
【0073】
排出口から鋼球が出た後に隙間ができ、隙間を埋めるように上の鋼球が下りて来る。上の鋼球が下りた後にできた隙間を埋めるように更に上の鋼球が下りて来る。このように、隙間は順次上へと伝播し、固層の先端部に至る。固層の先端部が崩落して固層の鋼球は上から押圧されてではなく自重によって下降する。
【0074】
断面積が次第に減少するルート部が円筒部に連続する。ルート部内においても断面内の複数個の鋼球の何れかが下にできた隙間を埋めて下降する。断面内に収容される鋼球の数を減らしながら、より小さな下の断面内に下降する。ルート部内の複数個の鋼球は配列を並び替えながら、まるで液体であるかのように形を変えて下降する。形を変えて下降するところを、以後、液相と言う。
【0075】
排出口から外の断面積は無限大で、排出口から外へ出る鋼球は、まるで気体であるかのように飛散する。排出口から外を、以後、気相と言う。
排出口から外へ出る鋼球は容器内に残る鋼球から離れる。容器外の気層の鋼球はどれも互いに接触し合わない。容器内の液相と固層の鋼球はどれも互いに接触し合ったまま下降する。
【0076】
固層と液相との境界は鋼球の配列が並び変わる処で、ルート部入り口であり、液相と気層の境界は容器内と容器外との境界の排出口である。
ルート部内ではどれも互いに接触し合う液相の鋼球で、液相の先頭の鋼球は容器内の液相の鋼球から離れ、液相の先頭の鋼球は気層の最後の鋼球であって、拡散した気層の鋼球は容器外にある。容器内と容器外との境界は排出口であって、液相と気層の境界でもある。
【0077】
液相内の鋼球は「隣接する鋼球」に沿って滑りながら、或いは「隣接する鋼球」の周りを公転しながら下降して、下に出来た隙間に移動する。下に出来た隙間に「隣接する鋼球」から離れずに接触を保って移動する。また、排出口HSから出る鋼球も含めてルート部内の鋼球は後ろから押されてではなく自重で下降する。
【0078】
図1(a)に示すように、複数の鋼球SAの中心をつないで複数の折れ線が出来上がる。複数の折れ線が複雑に絡み合い、いずれの鋼球SAの中心についても複数の折れ線が通過する。
複数の鋼球SAの中心をつないで出来上がる折れ線が、上に凸であれば形を変えにくい。下に凸であれば形は崩れやすい。
【0079】
図1(a)に折れ線で示すように、複数の鋼球SAが連鎖した曲線を以後、アーチといい、連鎖して出来上がる曲面を以後、ドームという。アーチやドームの末端の鋼球でルート部内壁に沿う鋼球はアーチやドームを支持し、以後、支持球と言う。ルート部内壁に沿ない鋼球でアーチやドームを構成する鋼球を、以後、内部球と言う。
【0080】
下に隙間があっても落下しない鋼球は、隣接する2つ以上の鋼球に支持されて身動きできない鋼球であって、隣接する2つ以上の鋼球も含めて身動きできない状態である。身動きできない状態である鋼球は、直接あるいは間接的に身動きできない支持球に支持されている。
【0081】
身動きできない状態のアーチやドームを「崩れないアーチ」や「崩れないドーム」と言う。
崩れないアーチや崩れないドームの上に崩れないアーチ或いはドームがある場合があって、崩れないアーチやドームは、それより下のアーチ或いはドームが全部降下して、それより下が空洞になっても、崩れず降下しない。
【0082】
複数の鋼球SAが連鎖して形成される略円になる折れ線を以後、環、或いはリングと言う。円は周囲の長さが最も少なく最も大きな面積を包む多角形であって、これ以上小さくならない多角形である。これ以上小さくならないリングの複数の鋼球SAは強く押し合い、円の形を維持する。容器内には幾つものリングがあって、容器内壁に押されて、それぞれが小さくなろうとして、崩れないリングになろうとしている。
【0083】
アーチの端部でシリンダ内壁SLLに接する鋼球SAはシリンダ内壁SLLを垂直に押圧し、シリンダ内壁と鋼球SAとの間に摩擦力が発生する。円筒部内壁は鋼球の下降方向と平行で、円筒部内壁に接する鋼球には、摩擦力が鋼球SAの降下に抵抗して減速するが、自重による降下を阻止するほどではない。
摩擦の効果はシリンダ内壁SLLから離れるほど弱くなり、シリンダSLの中心軸ZSLに近づくほど鋼球SAは速く流れる。
【0084】
円は面積に対して周長さが最小である形で、シリンダ円筒部は、円筒内壁に接する鋼球数を少なくして数多くの鋼球を収容する。シリンダ円筒部に収容する鋼球の数が多く、シリンダ円筒部内壁に接する鋼球の摩擦は小さい。鋼球の移動に働く抵抗は小さい。
【0085】
アーチやドームの末端の支持球が動く、或いは内部球の1個でも抜け落ちると「崩れないアーチ」や「崩れないドーム」は崩れる。鋼球の下降方向と平行な円筒部内壁に沿う鋼球は支持球にならない。
鋼球の下降方向と平行でないルート部内壁に沿う鋼球は下降方向に動けず支持球になりうる。鋼球が身動き取れない状態はルート部でしか起きない。
【0086】
図1の減速器は多くの鋼球を容器内に蓄えて、排出口から少しずつ、しかもゆっくりと排出し続ける容器であって、円筒部は多くの鋼球を蓄えるための部分で、ルート部と排出口は鋼球を少しずつ、しかもゆっくりと排出し続けるための部分である。
【0087】
減速器が正常に動作するかどうかは、崩れないアーチやドームが出来ない容器であるかどうかであって、「移動しない壁」が出来上がないかどうかである。
崩れないアーチはルート部と排出口周辺で起きて、円筒部で起きないので、本発明において、円筒部を省略したルート部と排出口だけの容器で崩れないアーチやドームが出来ないかどうかについて検証する。
【0088】
排出口から鋼球の排出が継続する途中で、鋼球の排出を強制的に止めると、暫らくして容器内の全鋼球が静止したままになるが、容器内の何れの鋼球も下に隙間があれば下降する状態でありながら下に隙間がない状態であって、ぎっしりと詰め込まれて身動きできない状態になる。ぎっしりと詰め込まれて身動きできない状態を、以後、詰込状態と言う。
【0089】
容器内の何れの鋼球も下に隙間があれば下降する状態であれば隙間は出来ない。崩れないアーチの下には大きな隙間ができる。大きな隙間に降りていく鋼球はなく、崩れないアーチから上の鋼球は全て静止したままになる。
崩れないアーチの後ろに、より大きな崩れないアーチがある場合があって、一番下の崩れないアーチも含めて、後ろにある「より大きな崩れないアーチ」が必ず崩れる状態が、排出口から鋼球の排出が継続して容器内の全鋼球が排出される条件になる。
【0090】
鋼球の排出を再開して、排出口から鋼球の排出も容器内の全ての鋼球の移動も止まってしまうのは崩れないアーチが出来たからであって、容器内の何れかの鋼球が下に隙間があっても下降しない状態であれば、何れかの鋼球は崩れないアーチの中の1個の鋼球である。
【0091】
排出口から排出される鋼球の落下に抵抗する力はなく、容器内の残っている鋼球は互いに降下を牽制し合い抵抗しあっている。降下する方向の力は減じられ加速は小さい。下に移動して隙間を作る鋼球に遅れて上の鋼球が下りてくる。鋼球の排出を再開して、暫らくして鋼球表層面の降下が始まり、容器内の全ての鋼球が同時に移動する定常状態になる。
【0092】
ルート部内で鋼球の配列の並び替えがあって、隙間ができる。隙間ができるから、鋼球の配列が並び替わる。なのに、定常状態では隙間が見えない。下の鋼球に遅れて上の鋼球が下降するのではなく、下の鋼球も上の鋼球も同時に下降する。容器内の複数の鋼球の何れもが詰込状態の中で動き得る状態にあって、液相の鋼球はルート内で隙間を作る間もなく隙間を即座に埋めてしまう。隙間は鋼球の移動として目に見える。
【0093】
ルート部内では、下の断面内にある鋼球数はその上にある断面内にある鋼球数より少なく、「断面内にある1つの鋼球が動いて出来た隙間が埋まるときの鋼球の移動」は断面が上になるほど小さい。加速も小さく鋼球に働く力も小さい。隙間は鋼球の移動として目に見えにくい。
鋼球の下降を止める力が僅かでも働くと、鋼球は止まったままになるが、上部の容器内のアーチやドームは大きすぎて、互いに押し合ってアーチやドームを支持する力が余りにも弱く、鋼球は自由に移動する。埋まらない隙間を作らない。
【0094】
排出口から遠くなるほどルート面内壁が鉛直に近くなり、アーチやドームは大きくなって崩れ易くなる。排出口に近づくほど、アーチやドームは数少ない鋼球で作られ崩れにくく、ルート面側壁に沿う鋼球はわずかな抵抗がかかると支持球になる。
【0095】
上の鋼球が下2つの鋼球の隙間に割り込もうとして、或いは上の鋼球が下の鋼球と容器内壁との隙間に割り込もうとして、いわゆる楔効果を発揮する。鋼球同志の接点と鋼球と容器内壁との接点が一直線上に配されるほど、しっかりとかみ合い容器内壁SLLを強く押圧する。内壁SLLが鉛直に近くても、アーチやドームの末端の支持球は内壁SLLを押圧して動かない鋼球である。
崩れないドームを作らないためには内壁SLLに沿う鋼球SAが止まったままにならないことが必要である。
【0096】
ルート部の下に行くほど、内壁SLLに沿う鋼球SAの数も沿わない鋼球SAの数も少なくなり、アーチやドームは小さくなる。アーチやドームは小さくなるほど、鋼球SAが上から下に割り込んで入り込んだ時の膨張率は大きく、鋼球SAは小さな自重で内壁SLLを強く押圧する。アーチやドームが小さくなるほど、鋼球と鋼球が押しあう力が強くなるため、強固になり、崩れにくくなる。
【0097】
排出口近傍でとまってしまう2つの鋼球を、以後、楔2球と言う。2つの鋼球からなるアーチでもあり、通過できない小さな流路を無理やり押し広げて通過しようとする楔でもある。3つの鋼球で作られるアーチを、以後、楔3球と言う。
排出口直径DHSを小さくすると、鋼球の排出速度は小さくなるが、小さくしすぎて、排出口HSにできるアーチやドームが崩れず、鋼球SAの排出が止まらないようにしなければならない。
【0098】
ルート部の上に行くほど、アーチやドームが大きくなり、鋼球と鋼球が押しあう力が弱くなる。また、アーチあるいはドームは頂上に近づくほど鋼球が水平に並び、鋼球同志が押し合う力が落下方向と略直角になる。頂上付近から崩れる。
【0099】
図1の容器内の鋼球が粉粒体の場合、粉粒体の形状は複雑で、隣同士で強くかみ合って出来上がるドームは大きくなるまで崩れない。
容器の中心軸は幾層のも重なるドームの頂点の列で、容器の中心軸に近づくほど粉粒体は水平に連鎖して粉粒体は動きやすく、遠ざかるほどルート部内面に支持されて動きにくい。
【0100】
下のドームの頂点の周りの粉粒体に支持されていた上の頂点の周りの粉粒体は、下のドームの頂点の周りの粉粒体が抜け落ちると、抜け落ちる。上に行くほどドームは大きく、頂点の周りの粉粒体は抜け落ちやすく、容器の中心軸に近いところの粉粒体だけが動いて出ていくように見える。
【0101】
容器の中心軸に近づくほど速く流れる粉粒体の流れは、排出口から遠く離れた高い位置から小さく始まり、下に行くほど下のドームの粉粒体も巻き込んで、一緒に降りていく粉粒体が多くなる。容器と中心軸を共有する円錐状の部分だけが移動しているように見える。粉粒体の場合、鋼球の場合に比べて、排出口から出る粒子数は遥かに多く、多くが塊になって落ちていく。
【0102】
大きくなるまで崩れない粉粒体のドームが排出されるためには、大きな排出口が必要であるが、1つの鋼球が抜け落ちるだけで崩れる鋼球のドームは、大きくない排出口でも排出される。排出に必要な最小の排出口直径は、粉粒体の場合は粉粒体直径の6倍と言われ、鋼球の場合は
図2に後述するように鋼球直径の3倍である。
【0103】
粉粒体のように鋼球は隣同士が噛み合わないが、球体同志が強く押しあうことで動かないようになる。排出口HSから遠い位置では、複数個の鋼球が整然と整列する。整然と整列するほど鋼球が隙間に割り込んでも楔効果が弱くなり、シリンダ内壁面との摩擦が小さくなり動きやすくなる。
固層部の形を変えない塊は上部のまばらに配される部分は楔効果で動き難く遅く動く、固層部の先頭部の密に配される部分は動きやすく速く動く。先頭部だけが塊から離れやすく、はがれやすくなる。
【0104】
先行する鋼球が後続する鋼球より早く降下しなければ、後続する鋼球SAは降下できない。鋼球が排出口HSから出る速度は早く、それに遅れて次の鋼球が移動する。次のまた次の鋼球はさらに遅れて移動する。排出口HSから上に行くほど鋼球の移動距離が小さくなり遅く移動する。排出口HSから上に行くほど隙間はどんどん大きくなる理屈であるが、多くの鋼球が下にできた隙間を埋める。
【0105】
排出口HSから容器外に排出された鋼球の後に出来る隙間は、その後埋められず大きくなる。次の出る鋼球が隙間を作り始めるが、先に排出された鋼球の後に出来る隙間より小さい。排出口HSから排出される鋼球だけが容器内の鋼球と離れる。排出口より上の容器内の鋼球は接触し合っているから容器内には隙間がない。
容器内では上に行くほど即座に埋まる隙間が小さく、鋼球は移動距離が小さくなり遅く移動する。
【0106】
シリンダSLの円筒部の面積が排出口HSの面積よりはるかに大きくすると、排出口HSから大量にしかも高速に鋼球が排出されても、円筒部の中の動きは微量である。
複数個の鋼球SAで構成される塊は、排出口HS近傍の先頭部だけが崩れて、円筒部の塊は形を変えず、非常に少しずつ降下する。
【0107】
図1の容器内の鋼球が液体の場合でも、流路断面が小さい所ほど速く流れる。しかし、液体の場合ピストンPSで押すと流速を増すが、鋼球の場合押しても早くならない。
鋼球の場合、容器内壁との摩擦抵抗が大きいというだけでなく、それぞれの鋼球がまっすぐではなく隙間を縫ってそれぞれ違う方向に移動することが大きな抵抗になる。
【0108】
図1(a)において、あらゆる鋼球SAに働く力の作用線は全て、鋼球SAの中心SACを通り、鋼球SAと容器の内壁SLLとの接点PW、あるいは隣接する鋼球SAとの接点PBを通過する。
図1(a)において、表層面に近い円筒部内壁に接する鋼球をSA1、排出口に近いロート部に接する鋼球をSA2とし、それぞれが隣接する鋼球から押圧される力の作用線をF1,F2とする。作用線F2は鋼球SA2の中心と隣接して接触する鋼球SA3の中心と接点PB23を通過する。矢印は働く方向を示し、自重による力は図示しない。
【0109】
作用線F1,F2は容器内壁に垂直な分力FW1,FW2と、それと直角方向の分力FZ1,FZ2に分けられる。鋼球SA1に働く分力FZ1は自重方向と同方向であって、内壁SLLに沿っている。鋼球SA1と容器の内壁SLLとの間に摩擦力が働くが、円筒部内壁SLLに沿う鋼球SA1の降下を止めない。
【0110】
分力FZ2は鋼球SA2を持ち上げる方向に働き、鋼球SA2が分力FZ2方向に動こうとすると、接点PW2より上の内壁SLLが鋼球SA2の行く手を阻む。鋼球SA2がその場にとどまると、鋼球SA2に隣接する鋼球を支持して静止させる。
【0111】
何れにしても、ルート部内壁SLLに沿う鋼球SA1が下に移動すれば崩れないアーチやドームは崩れる。排出口HSから鋼球SAが止まることなく排出し続けるようにするためには、ルート部内壁SLLに沿う鋼球SA1が静止したままにならないようにする必要がある。
【0112】
図1(b)において鋼球SAは微細であって、ピストンPSの鋼球表層面SASを押圧する面は凹面PSSであり、押圧する鋼球SAを逃がすことなく凹面内に留める。凹面PSSが強く鋼球表層面SASを押圧しても、ピストンPSが鋼球表層面SASから深い位置まで沈み込まない。
【0113】
鋼球SAは小さくするほど、シリンダSL内壁とピストンPS外周面との間に入り込みやすくなる。ピストンPSが粉粒体表層面SASから深い位置まで沈み込むほど、ピストンPSを引き上げるときに抵抗を受ける。鋼球SAはシリンダSL内壁とピストンPS外周面との間に少量であれば入り込んでも、ピストンPSを引き上げることができれば構わないとする。
【0114】
ピストンPSを鉛直方向に移動する場合に限って、鋼球SAがシリンダSL内壁とピストンPS外周面との間に入り込んでも引き上げるときに落下する。鋼球SA の大きさをシリンダSL内壁とピストンPS外周面との間に入り込まない大きさに限らない。
矩形断面のピストンPSが略水平方向に移動する場合、鋼球SA が箱方容器内壁とピストンPS外周面との間に入り込んだ鋼球は落下しないので奥深く入り込んでピストンが動かなくなる。
【0115】
図2において、排出口直径DHSが鋼球直径DSAの3倍であるとき、鋼球SAは止まることなく排出されることについて説明する。
図2は
図1の排出口HS周辺を上から見た平面図で、排出口HS近傍は略水平面とする。
図2は排出口HSを小さくして、排出口HS周辺の複数個の鋼球SAが排出口HSから落下するどうかの説明図である。
【0116】
図2(a)に示すように、排出口HS周辺の複数個の鋼球SAが環状に連鎖する。複数個の鋼球SAの連鎖は環或いはリングであって端部がない。排出口HS周辺のロート内壁SLB上に留まるリングは、リングを構成する鋼球SAの何れもが排出口HSに嵌まり込まないとき、留まったままになる。
リングを構成する鋼球SAの何れか1つであっても、排出口HSに嵌まり込んで抜け落ちると、環の形が崩れて、1つ少ない新たなリングが再生する。
【0117】
ロート内壁SLB上に留まるリングの上にロート内壁SLB上にないリングが載り、さらにその上にリングが載って、幾層ものリングが載ってドームを形成する。
ドームの排出口HSを上から見て排出口HS内に嵌まり込んでいる鋼球は、排出口HS周辺のロート内壁SLB上に留まるリングの上に載っていて、排出口HSに嵌まり込まない。
【0118】
この場合、アーチ或いはドームの端部の鋼球SAはルート部内壁に留まって、アーチ或いはドームを支える支持球である。支持球はルート部内壁に沿い、ルート部内壁に沿って動かない。内部球は、支持球に直接あるいは間接的に支持され、支持球の内側にあってルート部内壁に沿わない。
【0119】
リングの中の1つの鋼球が排出口HSに嵌まり込んで抜け落ちると、リングを構成する残りの支持球或いは内部球も連鎖して排出口HSに落ち込む。リングは小さくなり、排出口の大きさが大きくなったことに同じで、鋼球の数がどんどん減っていくリングは排出口HSに向かって加速し、容易に落ち込むようになる。
【0120】
鋼球は粉粒体と異なり、容器内の鋼球は全て大きさが同じで、全て球形であって、粉粒体に比べて大きく重い。球体同志は噛み合わず、鋼球で出来上がるドームは、粉粒体で出来上がるドームと違って、大きくなる前に崩れる。
排出口から1個の鋼球の落下に複数の鋼球が連鎖して落下するが、粉粒体の場合、複数の粉粒体からなる塊りが面をなして落下する。
【0121】
球体同志は点で接触し、接触面積がゼロに近い。平面上に同じ大きさの球体が接触し合うとき、1つの球体の周りに
図2(c)では6個の接点があり、
図2(b)では4個の接点がある。接点を少なく持つ鋼球は周りから拘束されずに自由に動き、接点を多く持つ鋼球は身動きが取れず、周りの鋼球とより堅固に噛みあう。
接点を少なく持つ鋼球は1個ずつ抜け落ちていくが、接点を多く持つようになるほど、複数の鋼球が面をなして、或いは塊となって移動する。
【0122】
鋼球の中心をつないで
図2(b)では正方形になり、
図2(c)では正3角形になる。立体的には鋼球の塊りは立方体の集まりと正3角錐の集まりになる。鋼球と鋼球との間にできる隙間は
図2(b)が
図2(c)より大きく、動きやすい
図2(b)が隙間を小さくして
図2(c)の状態になる。
【0123】
形を崩して、平面的に正3角形、立体的に正3角錐の集まりになるが、
図2(b)では正方形は2つの2等辺3角形の集まりで、2等辺3角形の集まりが「これ以上小さくならない正3角形の集まり」になって体積を小さくしていく。これが、円筒部でもルート部でも下に行くほど整然と配列する動作でもあり、配列が並び代わりより小さな流路を通過する動作でもある。
【0124】
粉粒体より鋼球のほうが並び変わりやすく、より小さな排出口でも出ることになる。
図2(c)に示す「形が崩れない正3角形」は、3個の鋼球の包絡円HS3にすっぽりと嵌らなければ、抜け落ちないだけでなく、3個の鋼球とそれに隣接する複数の鋼球が面をなして抜け落ちない。
図2(b)に示す正方形は結合力が弱く、正3角形になって小さくなれる。4個の鋼球の包絡円HS1から抜け落ちる。
図2(c)に示す6個の正3角形は大きくなりすぎて面を保てず、
図2(b)に示す包絡円HS1からでも抜け落ちるときもある。
【0125】
抜け落ちたリングの上のリングは、連鎖して抜け落ちる場合もあり、その場に留まる場合もある。
整然と整列するほど隙間は小さくなり、鋼球が隙間に割り込めない。大きなドームやリングの隙間に鋼球が割り込んでも変形するだけで楔効果はない。楔効果は整然と整列する大きなドームやリングの下の小さく歪なドームやリングの隙間に鋼球が割り込んで容器内壁を押し広げるときに起きる。押し広げず落下すると、上の大きなドームも落ちる。
【0126】
ドームやリングの支持球にしても内部球にしても、隣接する鋼球と押し合ってドームやリングの形を保とうとする力とドームやリングから抜け出そうとする自重が働き、押し合う力より自重が大きいと移動し、押し合う力より自重が小さいと動かず留まる。動かない支持球と内部球は崩れないドーム或いはアーチになる。
【0127】
ドームやリングを形成するには数が少ない鋼球の塊りにおいては、支持球が容器内壁に支持されて動かないようにされる力より、容器内壁に沿って自重で下降しようとする力が小さいとき支持球となり、内部球を支持する。
何れにしても、内部球は複数のドーム或いはアーチに共通の内部球であって、複数の支持球に直接あるいは間接的に支持される。支持球が動けば、崩れないドーム或いはアーチは出来ない。
【0128】
図2において、環を作る鋼球のすべてを収容する排出口の外延を円HS1で図示し、円HS1より小さく環を作る鋼球のすべてが留まる排出口の外延を円HS2で示す。
図2(b)に示す排出口HS2に落ち込まないリングは4個の鋼球の中心をつないで出来る正4角形である。正4角形でない歪な4角形であれば、4個の鋼球のどれかは排出口HS2に収容される。
【0129】
4個の鋼球の中心をつないで出来る正方形を作る。すべての鋼球SAが
図2(b)に実線で示す排出口HS1内に収容出来れば、4個の鋼球の全部が同時に落下する。
歪な環を作る4個の鋼球は、排出口に全部収容されなくても1個の鋼球が収容されれば全部落ちる。
【0130】
しかし、4個の鋼球の外側の5個の鋼球からなるリングは崩れず、
図2(b)に実線で示す排出口HS1内に入り込まない。仮に排出口HSの大きさが5個の鋼球からなるリング全体を収容する大きさであれば、5個の鋼球の外側の6個の鋼球からなるリングは崩れないときもある。
【0131】
排出口HSの大きさが
図2(c)に実線で示す6個の鋼球からなるリング全体を収容する大きさであれば、6個の鋼球の外側の7個の鋼球からなるリングは必ず崩れる。排出口HSの大きさが
図2(c)に実線で示す鋼球直径の3倍の大きさであれば、容器内の鋼球の全てが中断することなく排出し続ける。
【0132】
歪な環を作るN個の鋼球SAを全部収容する排出口の大きさは、正N角形を作るN個の鋼球SAを収容する全部円の排出口HSの大きさより小さい。
よって、
図2(b)に示す排出口HS1は4個の鋼球を確実に排出する。4個の鋼球が落ちても、その上の6個の鋼球が落ちない場合があり、
図2(c)に示す排出口HS1は6個の鋼球を確実に排出する。6個の鋼球が落ちても、その上の6個以上の鋼球が落ちない場合はない。
【0133】
図2(c)に示すように、鋼球SAが3つ横1列に配され、真ん中の鋼球SACの周りに隣接する6個の鋼球が正6角形の環を作る。これらは同一水平面上にあって、互いに押し合う力の方向は内部球SACの落下方向と直角であって、内部球SACの落下に抵抗しない。真ん中の内部球SACが抜け落ちて、排出口の外延を円HS2の周りに6個の支持球が正6角形の環になって残る。正6角形の環は
図2(c)に示す排出口HS1より小さいと落ちないこともあるが、排出口HS1は確実に全部落ちる排出口である。
【0134】
排出口周辺にできる正7角形の環は変形して歪んだ7角形の環になる。排出口直径が鋼球直径の3倍以下の
図2(b)に実線で示す排出口HS1であっても、鋼球を排出し続けるに必要で十分である。正7角形の環が崩れて正6角形の環になっても、
図2(c)に示す排出口HS1は十分である。
【0135】
図2(c)に示す正6角形の環を作る6個の鋼球を収容する排出口の大きさは鋼球直径の3倍である。6個の鋼球に囲まれた正6角形の中心部分は1個の鋼球を収容する大きさであって、1個の鋼球は落下する。
「鋼球SAが途中で止まることがなく排出し続けるに必要で十分な排出口直径」が鋼球直径の略3倍であることの裏付けでもある。
【0136】
これに対して、
図2(b)に示す正4角形の環を作る4個の鋼球に囲まれた正4角形の中心部分は、1個の鋼球を収容できない大きさであって、4個の鋼球の上に乗る1個の鋼球は落下しない。また
図2(b)に示す円HS1の周りに5個の鋼球があって、5個の鋼球に囲まれた中心部分に1個の鋼球が載った場合も1個の鋼球は落下しない。
【0137】
排出口直径が鋼球直径の略3倍以下である場合、力に関係なく、幾何学的に排出しない排出口になりうる。排出口直径が鋼球直径の略3倍である場合、いびつな環を作る6個以上の鋼球SAを全部収容する排出口の大きさより小さくても、6個以上の鋼球SAからなる大きな環は力学的に崩れて排出されると推測する。
【0138】
水平の平板に開けられた直径15.5mmの穴から直径5mmの鋼球SAを排出する実験では、穴の中の鋼球は落ちても、水平の平板に開けられた穴の周辺に乗った鋼球SAは最後まで動かない。
水平の平板に開けられた直径12mmの穴から直径5mmの鋼球SAを排出する実験では、
水平の平板に開けられた穴の周辺に乗った鋼球SAだけではなく、上から見て排出口に収容される鋼球も落下しないときがある。
【0139】
半径Rの鋼球SAがN個連鎖して正N角形の環をつくり、N個の鋼球SAのすべてを収容する円の半径の最小値は(1+cosec(180/N))*Rである。
鋼球SA6個の場合、鋼球直径の3倍である。
【0140】
正4角形の環を作る4個の鋼球を収容する排出口直径は、鋼球直径が5mmのとき12mmである。鋼球直径が10mmのとき25mmである。
正6角形の環を作る6個の鋼球を収容する排出口直径は、鋼球直径が5mmのとき15mmである。鋼球直径が10mmのとき30mmである。
【0141】
頂点に排出口HSを設けた半球キャップの上下を逆転し、半球キャップの凹面に鋼球SAを充填して、排出口HSを空けて鋼球SAを排出する実験で、鋼球直径DSAを5mmにしたときの実験では、排出口直径DHSが15.5mmで、鋼球直径DSAの3倍であるとき、鋼球SAは止まることなく排出され、充填した鋼球SA全部が排出される。排出口直径DHSが12mmのとき、すぐに排出されなくなる。
【0142】
鋼球直径DSAを10mmにしたときの実験では、排出口直径DHSが30mmで、鋼球直径DSAの3倍であるとき、充填した鋼球SA全部が排出される。排出口直径DHSが25mmのとき、鋼球SAの排出が中断しないときもするときもある。鋼球直径DSAが大きいほど中断する確率が低くなる。
【0143】
球に働く重力と球の体積とは球の半径3乗に比例し、隣同士の鋼球が押し合う力の大きさも、容器側壁が鋼球を支持する力の大きさも、容器側壁と鋼球との間に働く摩擦力の大きさも鋼球直径に比例しない。
大きい鋼球と小さい鋼球とでは排出口から排出される運動が異なり、例えば、鋼球が止まることなく排出されるロート先端の排出口の直径が鋼球直径の何倍であるかという倍率は、鋼球直径が大きくなるほど小さくなる。いわゆる比例則が成立しない。
【0144】
鋼球直径に比例して装置の大きさを大きくしたとき、鋼球直径が小さいときの装置で得た同じ効果は得られない。
鋼球を4個収容する大きさの排出口から直径10mmの鋼球は排出し続けるときがあるが、直径5mmの鋼球は排出し続けない。大きな鋼球を採用した場合、装置を大きくしても収容できる鋼球の数は少なく、長時間にわたって減速できない。
【0145】
おおむね排出口直径DHSが鋼球直径DSAの3倍であるとき、鋼球SAは止まることなく排出されると、以下のように推測する。
5個の内部球が積み上がりその上に4個の内部球が積み上がりその上に3個の内部球が積み上がってドームになる。
このように内部球を1つずつ減らしながら積み上げなくてもドームはできるが、支持球の上に連続する内部球の数が多くなるほどドームの頂上は高くなる。
【0146】
内部球の数を多く積み上げられるとドームは大きくなり、内部球を減らすとより小さく低いドームができる。鋼球の排出が中断してすべての鋼球が止まったとき容器内に幾層もドームがある。
内部球は上に凸の曲面上にあって、下にある小さいドームの頂点は支持球が載る水平面から高く離れない。低く扁平なドームは落下して、高く盛り上がった崩れないドームが残される。
【0147】
鋼球の排出が中断して出来た崩れないドームは、たまたま出来上がった「最小の崩れないドーム」であって、それより上部のルート部の中に、それより大きな崩れないドームがある場合がある。
鋼球の排出が中断しないようにするには、排出口の大きさを、幾層ものドームの中の「最大の崩れないドーム」が崩れて落ちる大きさでなければならない。
【0148】
図2(c)に示すように、「排出口直径DHSが鋼球直径DSAの3倍である排出口」に7個の鋼球を収容するが、7個の鋼球が排出口外延の円HS1上に乗って正7角形の環となるとき落下しない。排出口HSの周りでは完全な正7角形の環ではなく、歪んだ7角形の環の1つが排出口HSに落ちて、歪んだ6角形の環になる。6個の鋼球SA、落ちた鋼球SAに隣接していた鋼球SAが後続して全部落ちる。
【0149】
図1に示す容器の中断せずに排出し続ける排出口の大きさは、粉粒体を充填した場合、紛流体粒子の大きさの6倍の大きさとされ、鋼球を充填した場合、鋼球直径の3倍である。容器に充填される粉粒体の数は多く、粉粒体は鋼球に比べて軽い。
鋼球も小さくなると軽くなり、容器に充填される鋼球の数は多くなるが、中断せずに排出し続ける排出口の大きさは、小さい鋼球の鋼球直径の3倍より僅かに大きく、大きな鋼球の鋼球直径の3倍より僅かに小さい。
【0150】
次に、ルート部の形状について説明する。
半球面のルート部と円錐形のルート部とでは出来上がるドームは異なる。排出口周辺の面が水平に近いか、鉛直に近いかによって、出来上がるドームは異なる。
排出口周辺が水平面に近い場合、排出口周辺に乗る鋼球が留まる傾向にあって、排出口HSが大きくなるほどドームは大きくなるが、排出口周辺の水平面から高く離れない低いドームができる。
【0151】
排出口周辺が水平面に近い場合、排出口周辺に乗る支持球が互いに押し合う力は弱く、互いに離反して排出口周辺の水平面上で大きく広がる。ドーム頂点周辺の鋼球SAの全部が同時に落下する。排出口HSの外延部に乗る鋼球SAは留まり、内部の鋼球SAが先に落下する。
【0152】
ロート部の形状が円錐であるときロート部内壁は鉛直面に近く、排出口HS周辺に留まって静止し難く落下しやすくなる。落下しながらより小さな流路断面内にひしめき合って互いに強く押し合って落ちなくなる。排出口HS周辺に留まって静止する複数個の鋼球SAが全部でなくても、そのうち1つが排出口HSから落下して、残り鋼球すべてが連鎖して落下する。
【0153】
ロート部の形状が円錐であるときは、「排出口HS周辺に数少ない鋼球がひしめき合って出来る塊り」が落下しても、排出口HSから離れたロート部内壁に崩れないドームが残る。排出口HSから離れるほどロート部断面積は大きくなり、大きな崩れないドームが残るが、排出口SAの大きさは「最大の崩れないドームが崩れる大きさ」が必要である。
【0154】
ロート部内壁が鉛直に近づく場合、内部球は、その下の支持球に落下しないように突き上げられ、その下の支持球が先に落ちてからでなければ落ちない。
最大の崩れないドームの大きさは、支持球が鉛直に近いルート部内壁に沿う場合、水平面に近いルート部内壁に沿う場合よりも小さく、排出口の大きさも小さい。ルート部が半球形の場合は円錐形である場合より排出口HSを大きくする必要がある。
【0155】
崩れないドームが崩れる形態は2つあって、支持球が鉛直に近いルート部内壁に沿う場合、支持球が内部球より先に落ちてドームが大きくなる前に崩れる。水平面に近いルート部内壁に沿う場合、支持球が残って内部球が先に落ちる。
前者の後者のドームは、ルート部が半球形の場合は大きくなるまで崩れず、円錐形である場合は大きくなる前に崩れる。
【0156】
直径が5mmの鋼球を半球形のロート部と円錐形のロート部に充填して、充填した鋼球SA全部は排出されるかどうかを比較した実験では、半球形のロート部の直径が18mmの排出口から全部排出されたが、円錐形のロート部の直径が16mmの排出口からは全部排出されなかった。直径が5mmの鋼球を採用した場合、半球形のロート部の実験結果と円錐形のロート部の実験結果とに、あまり差がない。
【0157】
円錐形のルート部において、内部球はドームを作らず、支持球は歪んだ環になって連鎖する。円錐形のロートにおいても半球面のロート部においてと同様に、排出口HSが大きい必要があり、排出口HSが大きい場合、内部球も支持球もすべての鋼球が排出口から同時に落ちる傾向がある。また、支持球がルート部内壁の抵抗を受けて内部球より低速に落下し、数多くの内部球が面をなして先に落ちる傾向にある。
【0158】
次に、ルート部の形状と鋼球表層面にまで達する窪みとの関係について説明する。
円筒部においてもルート部においても、内壁SLLに沿う鋼球SAは摩擦抵抗を受けながら下降し、沿わない鋼球SAは受けずに下降する。沿わない内部球が面をなして落ちる範囲が鋼球表層面にまで達するとき、鋼球表層面に窪みが現れる。
【0159】
円筒部の鋼球が少なくなると、鋼球表層面に窪みが現れる。支持球が内部球より先に落下する形態においては、排出口回りのドームは小さく、大きくなる前に崩れる。ルート部が円錐形である場合、鋼球表層面は面を保って降下し、鋼球表層面に窪みが現れない。
窪みが現れた鋼球表層面から排出口までの距離は、ルート部が半球形である場合は円錐形である場合よりも遥かに大きい。
【0160】
ルート部が半球形である場合も円錐形である場合も何れの場合も、単位時間内に排出口からの鋼球が排出される量は、充填された鋼球が全部排出される終了時に大きく増加するが、それまではほぼ一定している。
【0161】
鋼球表層面の降下速度は、半球形のルート部においては、断面内の鋼球収容量が上に行くほど大きくなるので、排出終了時に近づく前に顕著に速くなるが、ルート部が円錐形である場合、排出終了時に近づくまでは顕著ではない。初めから終わりまで略一定していて顕著な変化はない。
【0162】
ルート部が半球形であっても円錐形であっても、円筒部の鋼球表層面の降下速度の変化は殆どない。鋼球表層面に窪みが現れるまでは、ピストンPSが鋼球表層面を押圧する力の大きさによって、鋼球表層面の降下速度の変化は殆ど認められない。粉粒体の場合と異なり鋼球の場合は、ピストンPSの押圧力の殆どがルート部内壁面に支持され、円筒部が短くても、排出口からの鋼球の排出に変化は殆ど認められない。
【0163】
粉粒体の場合、ピストンPSの押圧力によって円筒部の鋼球表層面の降下速度が変化しないためには、円筒部の長さが一定以上の長さ以上ででなければならないとされるが、鋼球の場合は、円錐形のルート部に円筒部を取り付けると、円筒部が如何に短くても、「ピストンPSが鋼球表層面を押圧する力」の大きさによって、円筒部の鋼球表層面の降下速度は変化しない。
【0164】
鋼球が粉粒体のように風で舞い上がるような細かい粒子ではなく、大きく重い鋼球は小さく固まろうとする傾向が強い。
図1に示す容器に粉粒体を充填するとき、排出口から出る粉粒体はバラバラになって飛散するが、バラバラになる気層は排出口周辺に留まらずルート部内部に及ぶ。鋼球を充填するとき、鋼球が気層になる範囲は排出口周辺に限られ、ルート内部は全部液層であると言っても過言ではない。
【0165】
容器内に疎らに配された粉粒体の粒子は、押圧されて容積を大きく減らしてから固まる。鋼球の場合は容積を少し小さくするだけで、小さくならない固層になる。鋼球が整然と整列しても、まばらに配されたままでも、押しても小さくならない固層になる。
形も大きさも不揃いの粉粒体の集合体の実験結果を、重く大きな粒ぞろいの球体の集合体に適用できない。
【0166】
円錐形のルート部内において、排出口付近の鋼球の配列は疎らであっても、排出口付近から僅かに離れると鋼球の配列は疎らではなくなり、整然と整列した円錐台の固層になる。
円錐台の固層の先端部だけが崩れて配列を変える液相で、円錐台の固層は楔となる。ピストンの押圧力を含めて上から伝わる力は円錐形のルート部内壁面で支持され、円筒部においての固層より強力に上から伝わる力を支持する。
【0167】
排出口近傍の半球形のルート部内壁面は上から伝わる力をほぼ垂直に支持するが、円錐形のルート部に比べて液相に範囲が大きく高く円筒部に達する。
液層は固層と同様に、加圧によって容積は減らないが、配列が並び替わり変形する。半球形のルート部の液相は大きく配列が並び替わり変形して上から伝わる力を支持する力は小さい。
【0168】
「上から伝わる力を支持する円錐形のルート部」は上に連続する円筒部を必要としないが、半球形のルート部の場合、液相が届かない円筒部が必要になる。
【0169】
排出口HSに連続するルート部は円錐形が望ましいが、大きな断面積の円筒部につながるまでに長くなる。円錐形のルート部は排出口付近に限って、その上に半球形のルート部がつながることが望ましい。
図1に示す半球形のルート部に円錐形のルート部に連結されることが望ましい。このルート部は上に凸の曲面から下に凸の曲面に移行する反曲点がある。
【0170】
図2において、鋼球が面をなして連鎖するドームが崩れる現象を説明し、ロート部の排出口HS周辺に留まった鋼球SAが排出される現象を説明した。
図3、
図4において、鋼球が線上に連鎖するアーチが崩れる現象を説明し、
図3において、鋼球SAが排出口HS周辺に留まって動かなくなる現象を説明する。
図4において、排出口HS周辺に留まった鋼球SAが排出される現象を説明する。
【0171】
図3は断面が長方形の流路Gを示し、
図3(a1)は流路Gを上から見た平面図で、流路Gは下の末端に排出口HSを備える。
図3(a2)は流路Gの断面図で、
図3(a1)に記載するa-a矢視である。
図3(a3)は流路Gを横から見た側面断面図で、
図3(a1)に記載するb-b矢視である。
【0172】
図3(a2)に示すように、流路Gは底面WFとそれと向かい合う上面WCと両側面WSとに囲まれ断面は長方形である。長方形断面の横の長さGLを以後、流路幅GLという。長方形断面の縦の長さGHを以後、流路高GHという。流路高GHが鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さく、鋼球SAが2個縦に並ぶことなく、横1列に並んで通過する流路Gを一列路Gという。
【0173】
鋼球SAは底面WFに支持され、底面WF上を下降する。底面WFに垂直方向を以後、縦と言い、底面上で下降方向を以後、側と言い、底面上で下降方向に直角方向を以後、横と言う。
図3(a2)に示す図中矢印イ方向は横、ロ方向は縦、
図3(a3)に示す図中矢印ハ方向は側である。鋼球が横に1列に並んだ状態を以後、横1列と言い、縦に1列に並んだ状態を以後、縦1列と言い、側に1列に並んだ状態を以後、側1列と言う。
【0174】
図3(a3)に示すように、一列路Gは水平面h-hに設置されず、如何なる鋼球SAも、後ろの鋼球SAに押されなくても、自重だけで末端の排出口HSに向かって下降する。一列路Gにおいては、何れの鋼球SAも後ろの鋼球SAに押されて側面WSあるいは上面WCあるいは底面WFを押圧しながら下降し、前の鋼球SAが下降すれば、前の鋼球SAと接触したまま必ず下降する。
【0175】
図3(a1)に示すように、排出口HSに近づくに従い両側面WSが互いに近づき、流路Gの断面積が次第に減少する。流路Gの断面積が減少するルート部では、必ず複数の鋼球SAが連鎖してアーチが出来る。鋼球SAの流れはアーチが崩れて動きだし、崩れないとき止まってしまう。
【0176】
楔3球は、2つの鋼球SAが余裕をもって通過できても3つの鋼球SAは通過出来ない流路にできる「3つの鋼球SAからなる崩れないアーチ」である。
図3(b)は
図3(a1)の流路Gの断面積が減少するルート部に代わって流路Gの断面積が変化しない流路の出口に隅角部を設けた流路の平面図である。
【0177】
図3(a1),(b)は、排出口HS近傍に崩れないアーチができた状態を示す。内部球SA3がアーチ両端の2つの支持球SA2の間に割り込んで、2つの支持球SA2に降下方向と反対方向の力FZが働く。支持球SA2は分力FZ2方向に動けない。アーチは「アーチの上のすべての鋼球SA」を下ろさない。
【0178】
1つの鋼球SAが余裕をもって通過できても2つの鋼球SAは通過出来ない流路には、2つの鋼球SAからなる崩れないアーチができる。例えば、
図3(a3)において、鋼球SA2は先頭の鋼球SA1を後ろから追い越そうとして鋼球SA1の上に乗り上げる。鋼球SA1と鋼球SA2とは、2つの鋼球SAからなる崩れないアーチになる。アーチとは言いにくいので、楔2球という。
【0179】
楔2球とは2球がどちらも側面或いは底面などの2つの平面に支持されて動かない状態で、どちらか1球が動けば楔2球は崩れる。
図3(a3)において、下になる方が止まっても上になる方が動いていれば下も動く。上になる方が止まっても下になる方が動いていれば上も動く。
【0180】
図3(a3)において、鋼球SA2は鋼球SA1と上面WCとの間に割り込む楔である。鋼球SA2と鋼球SA1は流路高GHを押し広げて身動きできない楔2球である。楔2球の前方が下降して空洞ができても下降しない。楔2球の後方にある全部の鋼球SAは下降できない。
楔2球は流路高GHが鋼球直径DSAの1倍より僅かに大きく2倍より遥かに小さい一列路に出来ない。また、1個の鋼球が辛うじて通過できる流路高GHであっても、流路幅GLが鋼球直径DSAの1倍より僅かに大きく2倍より遥かに小さい一列路にも起こりうる。この場合、楔2球は、流路幅GLを押し広げて身動きできない
【0181】
図3(a3)において、鋼球SA2と鋼球SA1とが楔2球になるときは、2球が流路高GHを押し広げて身動きできないときである。流路高GHが大きいとき或いは上面WCがないとき楔2球にならない。一列路の勾配が緩く水平面h-hより僅かに傾くときも、鋼球SA2が鋼球SA1の上に乗り上げる力は小さく、鋼球SA3が鋼球SA2を後ろから押す力も小さい。それぞれが下降する力が小さく楔2球にならない。
【0182】
一列路の勾配が水平面h-hより大きく傾き、一列路が鉛直に立てられるとき、2球が流路高GHも流路幅GLを押し広げて身動きできない。楔2球になる。
勾配が水平面h-hより僅かに傾く一列路は最も詰まり難い流路である。
【0183】
図3(a3)を複数の鋼球が1列の並んでつながり坂道を下降する動作説明図として、先頭の鋼球SA1が後ろの鋼球SA2から離ようとする状態を示すものとする。鋼球SA2と鋼球SA3は接点P1において、鋼球SA3と鋼球SA4は接点P2で接触している。図中矢印方向は、それぞれの下降する鋼球の自転方向を示す。前後の鋼球が接触しあう接点P1、P2において、前の鋼球と後ろの鋼球の回転は互いに反対方向で互いに制動しあう。
【0184】
前の鋼球SA1が離れた鋼球SA2より前後の接点P2で自転を止められる鋼球SA3のほうが転がりにくい。鋼球SA3に後続する鋼球は後ろに行くほど、回転せずに滑走するだけであって、先頭部から遠く離れた後ろの複数の鋼球が塊になって滑走し、形を崩さず下降していく。
【0185】
鋼球が中断せず下降し続けるとき、容器内の何れの鋼球もその下の鋼球がすべてなくなったとき、動かず止まったままにならない。下に隙間が出来れば必ず隙間を埋める移動をする。排出口HS付近で先頭部とそれに後続する鋼球が次々とに剥がれ落ちて行く。
【0186】
排出口から遠く離れたルート部にできる隙間は小さく、排出口に近いルート部で、通過する鋼球の数が減る割合が多い処にできる隙間は大きく、形も不揃いである。下にできた隙間を上の鋼球が埋めながら移動するが、鋼球は下の隙間に移動するとき後続の鋼球と離反しない。複数の鋼球が形を変えながら下降する際、隙間が様々な形に変化している。それが液相の状態である。
【0187】
排出口HSから出る先頭の鋼球SA1が最も高速で、それに後続する鋼球SA2は鋼球SA1より遅く、鋼球SA3は更に遅い。鋼球SA3は鋼球SA2が動いてできた隙間を埋めようと加速する。鋼球SA2が排出口から出ると、鋼球SA3は更に加速して、排出口HSから出るとき最も高速になる。
【0188】
容器内の何れの鋼球も、容器内壁との摩擦や互いに摩擦しあうことによって減速されるが、止まったり動いたりを繰り返したとしても、概ね加速の一途をたどる。容器内のすべての鋼球が排出するために必要な時間は、排出口HSから出る鋼球の排出速度が小さいほど長くなり、短くするためには、加速を出来るだけ小さくするだけである。
【0189】
ルート部内の何れの鋼球も、容器内壁から大きな抵抗を受け移動方向をランダムに変えながら下降する。容器内壁との摩擦や互いに摩擦しあう摩擦は大きく、鋼球が自由に落下しようとする力を減じるが、常に自重のほうが大きいから、鋼球は止まったままにならない。自重のほうが小さいと鋼球は止まったままになる。
【0190】
減速とは動かないようにする力が動こうとする力より大きく、鋼球は止まったままになる。どの鋼球は止まったままにならずに全鋼球が排出するから、減速はなく加速を小さくするだけである。また、力が作用している以上加速し続ける。減速はなく、加速を小さくするだけである。
【0191】
壁や障害物は摩擦で減速するものではない。減速するものであれば楔2球や崩れないアーチが出来る。ブレーキが掛かっても、加速を小さくして鋼球の進路を変えるものであって、鋼球は壁に沿って移動し、或いは障害物の周りを公転して、楔2球や崩れないアーチが出来ないように移動する。
【0192】
図4に図示するアーチが落下すると、「図示するアーチの上にある全ての鋼球SA」が落下する。
図4(a1),(b1)は、鋼球SA3とアーチ両端の2つの鋼球SA2とが一直線上に並んで配される状態を示し、
図4(a2),(b2)は、鋼球SA3とアーチ両端の2つの鋼球SA2とが下に凸の折れ線を作る状態を示す。
何れの場合も鋼球SA3が下降可能で、鋼球SA3が下降して出来る隙間に、アーチ両端の2つの鋼球SA2が移動し、側面WSから離れて落下する。
【0193】
図4(a1),(b1)に図示する「排出口HSから落下しようとするアーチ」の上には、より大きな「図示しない上のアーチ」があって、一直線上あるいは下に凸の折れ線上に配され、より大きく崩れやすい。図示のアーチが落下すると、「図示しない上のアーチ」は崩れ落ちて、鋼球が3個の小さなアーチとなって、図示するように、一直線上に並んで配される。或いは、下に凸の折れ線を作る。
図4に示す排出口HSの大きさが鋼球直径の3倍であると、容器内SL内の鋼球SAの全ては途中で止まることなく排出し続ける。
【0194】
図4に示す支持球SA2は容器内部の図示しない複数の鋼球SAと連なっている。複数の鋼球SAと連なって出来る環の中の1つでもある。
「内部球SA3が落下して、支持球SA2を含めて次から次と多くの鋼球SAが連鎖して落下する現象」は、「複数の鋼球SAと連なって端部がない環の中の1つが落下して始まる現象」でもあって、「リングの中の1つが落下して始まる現象」である。
【0195】
容器SL内に至る所にリングがあって、容器SLに充填されるすべての鋼球SAは連鎖してリングになっている。鋼球SAが連鎖して出来るアーチも両端が繋がれば、弧がリングになる。リングは末端部がない無限の長さのアーチともいえる。
形は円であったり、楕円であったり、1部にへこみがある楕円であったりする。水平断面内に限らず、あらゆる断面内において、例えば容器中心軸Zと直角方向にも平行方向にも鋼球SAが連なってリングが出来る。また同一平面上に乗るリングもあれば、曲面上に乗るリングもあって、多様である。
【0196】
断面
図5に示す減速器は、排出口直径DHSを3倍以下に小さくして、鋼球SAを少しずつ排出しつづけるようにするために、
図1の容器内に球体Bを挿入するものである。
図5(a)、
図5(c)に示す球体Bは、
図1の容器SL内のドームが作られる場所に挿入されて、排出口HSの周りに上に凸のドームができないようにしている。
【0197】
以後、排出口HS周辺のドームが形成される場所に設置される球体B、円柱BC、半球体BHなどを総称して以後、挿入体という。挿入体の表面と断面が円である容器の内面SLLとの間の流路は環状の1列路で、鋼球1個通過できて2個通過できない流路である。
【0198】
図5(b)は
図5(a)、
図5(c)に示す球体Bに代わって、円柱BCの上下両端部に半球体BHを装着する挿入体BBが挿入される。何れの場合も、球体Bは排出口HS周辺にドームができる領域に入り込み、排出口HS周辺に
図5(a)に鎖線ARで示すドームを形成させない。
【0199】
図5(a)に示す球体BBの表面と円筒の内面SLLとの間の流路と、
図5(b)に示す円柱BBの表面と円筒の内面SLLとの間の流路を以後、環状の流路Gと言う。挿入体は環状の流路G内にあるリングを支持しないので、環状の流路G内にあるリングの鋼球は支持球にも内部球にもならない。
【0200】
図5(a)に示すh-h断面内の流路高さと
図5(b)に示す円柱BBの表面と円筒の内面SLLとの間の流路高さは、1個の鋼球が辛うじて通過できる大きさであって、この部分の環状の流路Gは流路幅GLが無限の長さの1列路である。この部分の環状の流路G内にあって内部球を収容しないリングを以後、空リングという。空リングを収容する流路を以後、環状の一列路と言う。
【0201】
環状の流路Gは、球体BBの上半分の頂上付近では、球体BBが円の中心部を小さく塞いで、太い環状の流路Gができる。球体BBの赤道付近では円の中心部を大きく塞いで、細い環状の流路Gができる。
太さの違いがあっても環の大きさは変わらず大きな環状の流路で、下が何もない空洞になると、上の鋼球が落ちずにそのまま動かない状態にならない。
【0202】
球体BBの下半分では、下に行くほど大きさが次第に小さくなって太さが変わらない環状の流路で、排出口HSから落下するリングが一番小さい。排出口HS周辺に何もない空洞ができると、空洞より大きな上のリングの鋼球が落ちずにそのまま動かない状態にならない。
【0203】
図5(a),(b),(c)において、球体Bあるいは半球体BHとロート部内壁の半球面の中心Oは共通で、
図2(a)において球体Bの下半分とロート部半球面SLBとの間の距離は至る所均一で、
図5(b)において円柱BCとロート部半球面SLBとの間の距離、および円柱BC下端部半球体BHとロート部半球面LBとの間の距離は、至る所均一である。
球体Bの表面と排出口HS外延部との間の距離も至る所均一である。
【0204】
図5(c)に示す排出口HS近傍のロート部SLBは
図5(a),(b)のロート部SLBの半球面の一部であって、このロート部SLBの上に円錐形のロートが連続する。球体Bと円錐形のロートとの間の距離との間の距離は上に行くほど漸次増加する。
図5(d)に図示する球体Bは
図5(a)に示す球体Bより小さく球体Bの中心OOは中心Oより下にある。
【0205】
図5(a),(b),(c)において、図示のh-hで切断した水平面h-hより下では、球体Bの表面と容器内壁面との間の隙間は均一で鋼球SAが1個だけ辛うじて通過する距離で、鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい。環状の一列路であって端部がない。
【0206】
球体Bの表面と排出口HS外延部との間の距離は
図5(a),(b),(c)においてと同様に、
図5(d)においても
図5、均一であって、鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい。球体Bの表面と容器内壁面との間の距離は上に行くほど大きくなるが、球体Bの表面と排出口HS外延部との間で2個の鋼球が楔にならない。
【0207】
円筒部では鋼球表層面SASに近づくほど、容器内の鋼球の配列は疎らで、鋼球に囲まれる隙間は大きい。鋼球表層面SASから遠ざかるほど、隙間に鋼球に鋼球が割り込んで、隙間は小さくなり、鋼球の配列は密になる。
【0208】
図5(a)に示すj-j切断面上の容器内では円内にギッシリと数多くの鋼球が詰め込まれるが、h-h切断面上の環内には数少ない鋼球が詰め込まれる。j-j切断面からh-h切断面に近づくに従い環の内側の円が大きくなり、環内に収容される鋼球の数は次第に減少する。鋼球の数が多い部分では、次第に減少しても「移動しない壁」は出来ない。
【0209】
図5(a)に示すように、鋼球SA1と鋼球SA2とが
図5(a)が示す紙面上に描かれる断面上だけを移動するのであれば、鋼球SA1と鋼球SA2とが楔2球になって、止まったままになる。
【0210】
2個の鋼球が1個の鋼球しか通過できない流路を通過しようとするのではなく、仮にj-j切断面で環内に6個の鋼球が収容されるとすれば、6個の鋼球は5個の鋼球が通過できる環内を通過しようとしている。2個から1個減らす場合は通過できなくても、数多くから1個を減らす場合は通過できる。
挿入体BB周りの環内に収容される鋼球SAは、環内に収容する鋼球の数を減らして、より小さな環内に下降する。
【0211】
j-j切断面上で容器内壁に沿う鋼球の配列が完全な円としても、そこにあった鋼球の1つでも円から押し出されなければ、下にある隙間を埋めることはできない。鋼球が環から押し出されて環の配列が崩れて、より小さな環が下にできる。この「より小さな環」から鋼球が押し出されて、この「より小さな環」の下に「さらに小さな環」ができる。
h-h切断面から下においても、下に行くに従い、環の内側の円も外側の円も小さくなり、環内に収容される鋼球の数は次第に減少する。j-j切断面から排出口まで、小さな環の下に、より小さく固まった環を作るようになる。
【0212】
この小さく固まった環を作るところまで鋼球の加速度は減少の一途をたどったが、環が小さくならないところから先では加速の一途をたどる。
図5(a)に示すロート部末端の排出口HSから鋼球が排出されて、出来た隙間に上の鋼球が入りこみ、さらに上の鋼球が下にできた隙間に降りてくる。上に行くほど、鋼球と鋼球との間の隙間が小さくなり、鋼球の移動は僅かになる。
排出口HSの面積に比べてh-h切断面上の環の流路の面積は大きく、そこを通過する鋼球は略止まって見える。
【0213】
図5に示すシリンダSL円筒部と球体Bの上半分との間の流路Gの断面積は下に行くに従い急激に減少し、鋼球SAの移動速度は下に行くに従い遅くなるが、遅くなった鋼球の上にある鋼球は更に遅い。液体がノズルを通るときと異なり、断面積が急激に減少するところを多くの鋼球が通過するとき加速は小さい。通過するときの摩擦が大きいだけ加速度は小さくなる。
【0214】
水平面h-hから下においても、流路Gの断面積は下に行くほど減少し、下に行くほど複数個の鋼球SAがより強固に固まる。
空リングの中の鋼球SA同士が押しあって、容器内壁に沿って移動したり留まったりする。下に空洞ができてその場にとどまらない空リングは楕円状に連鎖していて、何れかの1つの鋼球SAがリングから欠落して空リング全体が崩れて、新たにできる鋼球数を減らした空リングになる。排出口の大きさは、下に空洞ができてもその場にとどまる空リングの大きさ以上でなければならない。
【0215】
シリンダSL円筒部と球体Bのとの間の流路Gの至る所において、上にあるリングは大きく、下の減少した流路Gの断面積に収容しきれない。リングの下に大きな空洞が出来たと仮定して、 その場に留まることが出来ない大きさである。
大きなリングの中の1つの鋼球は落下して形を崩して降下する。落下した位置に次の鋼球SAが送り込まれることによって、シリンダSL円筒部と球体Bのとの間の流路Gの至る所は常に、鋼球SA で完全に埋め尽くされる。
【0216】
排出口HSの周りの鋼球SAは排出口HSへと高速に落下する。その上の鋼球SAは上に行くほど低速になるが、上方の固まって動かない塊より早く移動する。球体Bの周りの鋼球は加速の一途をたどる。排出口付近から急激に加速する。
【0217】
排出口付近では鋼球がまばらに配される。
複数個の鋼球SAは在る処までは固まり、在る処から崩れる。上記の固まって動かない塊は先端部だけが剥がれ落ちて、先端部から上に行くほど崩れず動かないようになる。
【0218】
リングの中の1つの鋼球SAは、そのリングとは別のリングの中の1つの鋼球SAでもあって、複数のリングに共有される。1つの鋼球が排出口から排出されてできた空洞に入り込もうとする鋼球SAは、複数のリングが連鎖して崩れることであって、1つのリングが排出口HS内に入り込む途中は、それとは別のリングも排出口HS内に入り込む途中でもある。
【0219】
大きな排出口HSから数多くの鋼球が1度に排出される場合、大きな塊が落下し、排出口HSから遠く離れたところでも塊の落下が認められる。
小さな排出口HSから1個か2個ずつ排出する場合は、鋼球SAの並び代わりが排出口周辺に限られ、排出口HSから遠く離れないところで、多くの鋼球が塊となって下降する。
【0220】
排出口HSの穴から排出される鋼球SAとそれに続く鋼球SAは後ろから押されてというよりも自重で自ら落下し、落下した位置に次の鋼球SAが送り込まれることによって、上に行くほど隙間がなくなる。
このようにして出来た「崩れず動かないようになる塊」は上からいくら強く押しても加速しない。この塊の上に充填される鋼球SAが多くなっても、鋼球表層面SASをピストンPSが強く押圧しても塊は加速しない。鋼球表層面SASの降下速度も変わらない。
【0221】
排出口HSから1個の鋼球SA3が落ちて、全ての鋼球SAが連鎖して落ちることになれば、排出口HSを小さくできるが、小さなリングの中の1つの鋼球SAの重心が排出口HSの中にあるとしても、リングの中の鋼球SAが互いに押し合ってリングの形を保つ力によって、落下しない。
また、環状の1列路にあって、小さなリングの中の1つの鋼球SAの重心が排出口HSの中にあるとしても、リングが上に凸に歪む場所にある鋼球SAは両隣の鋼球によって押しあげられて落ちない。
【0222】
排出口HSから落下しようとする鋼球SAが同一平面上に、
図2(b)に示すように、正4角形を形成すれば、実線で示される円HS1より僅かに小さい排出口HSから落下しない。この場合の4個の鋼球が
図2(a)に示すように、正4角形が形を崩せば、4個の鋼球に高低差ができ、低い鋼球が排出口HS内に押し出されれば落下する。正4角形が形を崩して菱方になって、4個の鋼球に高低差ができても、低い鋼球が排出口HS内に押し出されなければ落下しない。
【0223】
排出口HSから落下しようとする鋼球SAが作る正N角形のリングが、同一平面上に留まって形を維持する最大の正N角形のリングであるとして、最大の正N角形のリングが形を崩して、N角形のリングの中の何れかの1つの鋼球が押し出されるとして、排出口HSの大きさは押し出された鋼球を収容できる大きさであれば、N角形のリングの中の多くの鋼球も排出口HSから排出される。
【0224】
1つずつではなく多くの鋼球が略同時に排出される。挿入体を備える容器であっても、鋼球の排出が中断しないためには、排出口の大きさが、少なくとも4個の鋼球SAを1度に包含する大きさでなければならない。
大きな排出口HSから数多くの鋼球が排出されるとき、1度に全部が排出されるときと、1つか2つずつ排出するときとが入れ替わる。この入れ替わりが繰り返される。
【0225】
鋼球SAの並び代わりが排出口周辺に限られた場合、排出口周辺にだけ出来る大きな塊が落下するときがある。排出口HSから遠く離れたところでより大きなリングが認められるようになるが、上にできる大きなリングは崩れる大きさである。排出口周辺にだけ出来る大きな塊は、この崩れる大きさの大きなリングの下の部分で、まばらに配される複数の鋼球が固まって落ちる塊である。
【0226】
図5(a)に図示する「排出口HSの下に設置される平板BC」は、排出口HSから零れ落ちる鋼球SAを減速する減速弁BCであって、減速弁BCの上に零れ落ちた鋼球SAが積みあがって山を築き、山の頂上は排出口HSを塞ぐ。
排出口HSを塞ぐと、減速弁BCの外延部の山の裾野から零れ落ちる鋼球SAを供給できなくなって、山の裾野から零れ落ちる鋼球SAがなくなり、山の形は山の頂上が排出口HSを塞ぐ形のままになる。
【0227】
山の裾野から零れ落ちる鋼球SAなくならない場合、山の頂上が低くなり、排出口HSから出る鋼球は山の頂上の鋼球に受け止められる。排出口HSから出る鋼球も含めて減速弁BCの上に積み上がった鋼球は全て液相の鋼球で、山の裾野から零れ落ちる鋼球は気層の鋼球である。
【0228】
減速弁BCの外延部の山の裾野から鋼球SAが零れ落ちることによって、山の頂上が排出口HSを塞ぐ高さまで積み上がらない場合は、山の裾野から鋼球SAが零れ落ちることに関係なく、排出口HSから鋼球SAが途切れることなく排出する。この場合、排出口HSから出る鋼球は容器内の鋼球と離反し、離反する鋼球の速度は、離反した鋼球のその後に無関係になる。
【0229】
排出口HSから出る鋼球が数少なく、山の裾野の鋼球SAが数多くても、排出口HSから出る数少ない鋼球の速度より遥かにゆっくりと山の裾野から零れ続けるとすれば、排出口HSから出る鋼球が容器内の鋼球と離反することなく、排出口HSから出る鋼球も容器内の鋼球も減速弁BCの上に積みあがった鋼球も、全ての鋼球が隣りあう鋼球と接し合い、排出口HSから出る鋼球の数と速度は、山の裾野から零れ続ける鋼球SAの数と速度に従う。
【0230】
減速弁BCの外延部の山の裾野の大きさは、積み上がった鋼球が排出口HSから出る鋼球に押し出される大きさである。排出口HSから出る鋼球は押し出す仕事をして加速度を小さくするが、排出口HSから出る押し出す鋼球が排出口HSから出ない押し出す鋼球に後続する鋼球と離れない状態でなければならない。
【0231】
減速弁BCの大きさは鋼球が外延部から押し出される大きさで、排出口HSまでの距離は減速弁BC上に積み上がった鋼球の最も高い鋼球が離れてHSを塞ぐ長さでなければならない。
【0232】
容器内の何れの鋼球SAもその上の鋼球SAと接触して支持し、その下の鋼球SAにも接触して上から伝わる力を下に伝える。容器内の上から下まで、こうした力の伝達を切断する鋼球SAはない。
【0233】
減速弁BCがないとき、排出口HSから落下する鋼球SAはその上の鋼球SAと接触しない。この場合、力の伝達を切断する。
減速弁BCがあるとき、排出口HSから零れ落ちる鋼球SAはその上の容器内の鋼球SAと接触したまま、しかも減速弁BCの上に零れ落ちた鋼球SAが積みあがる山の頂上の鋼球SAとも接触したままであって、上から伝わる力を減速弁BCに伝える。
【0234】
「ある処」を境にして上の鋼球は減速し下の鋼球が加速すると、ある処は空洞になり、力の伝達は切断される。下の鋼球SAが早く落下し、上の鋼球が下の鋼球SAの速さについていけないとき、上の鋼球SAと下の鋼球とが離反して、力の伝達が切断される。上の鋼球SAと下の鋼球との間に空洞ができる「ある処」が排出口になる。
【0235】
排出口HSから出ようとする先頭の鋼球が最も早い、排出口HSから出てから減速弁BCで減速しても、排出口HSから出た速度に変化がなければ、減速弁BCは要らない。
小さいほうに変化するとき、排出口HSから出る鋼球の数の減少速度は、減速弁BCにおいての鋼球の数の減少速度より大きく、排出口HSは排出口(減速弁BCの外延部)に至る途中の流路でしかない。
【0236】
流路途中で空洞になる処があれば、そこが排出口になる。空洞から下に追加される流路はあっても意味がない。減速弁BCを追加するとき、排出口HSから減速弁BCの外延部まで、鋼球SAで埋め尽くされ空洞が出来ないようにしなければならない。
容器内は全て液相であって隙間がない詰込み状態である。気層は容器外であって、排出口は液相が気層になる処である。鋼球は初めて後続の鋼球と離反して気層になる。
【0237】
減速弁BCがないとき、鋼球は排出口周辺で急に加速したが、減速弁BCがあるとき、排出口周辺は鋼球で埋め尽くされ、急に加速しない。排出口HSは流路途中であって、減速弁BCの外延部が排出口となる。
【0238】
図5(a)に示す排出口HSの大きさが鋼球を1つずつ排出する大きさであるより、2つずつ排出する大きさである方が、減速弁BCの外延部からこぼれ落ちていく鋼球の数が増える。減速弁BCの外延部からこぼれ落ちていく鋼球の数を少なくするために排出口HSの大きさを小さくする方が良い。
【0239】
図5(b)の減速弁BCは排出口HSの中心を通る中心線Zを軸にして回転し、攪拌棒BCCを装着する。攪拌棒BCCは排出口HSの外周を移動して、排出口HS周辺に留まる鋼球SAを攪拌する。鋼球STが小さい排出口HS周辺に留まって動かなくなった鋼球を動き出すようにする。攪拌棒BCCは出来るだけ排出口HSから遠くに離れた鋼球に届くようにすることが望ましい。
【0240】
図6は排出口HS近傍の鋼球の流れについての説明図で、
図6は球体BHに沿って下降する鋼球SAの展開図で、
図5(a)に示す球体BHの下半分とロート内壁SLBとの間を下降する鋼球SAを平面に展開したもので、図示される線分HSの両端をつないでできる円は
図5において排出口HSの外延部である。
【0241】
図6の展開立面図において、鋼球の中心をつないでできる波を、下からW1,W2,W3とし、例えば、波W1の両端の2つの鋼球がつながって、
図5において排出口から出ようとするリングになる。
波W1の上の波W2の両端の2つの鋼球がつながって、「排出口から出ようとするリングの」より大きなリングである。横に連鎖する鋼球の数は上に行くほど多くなる。
【0242】
波W1の上にある鋼球SA3は、上の波W3の下でもあって、鋼球SA3の上に隣接する上2つの鋼球SA2によって下に押し出されても、鋼球SA3の下に隣接する下2つの鋼球SA1によって押し上げられない。鋼球SA3は鋼球SA1の周りを公転しながら降下する。もしくは鋼球SA1だけが降下して取り残される。
【0243】
波W1が一直線状であっても排出口HSから出る。その上の波W2が一直線状のままであるなら、その上の波W2は下降しない。
4個の鋼球は歪な4角形を構成するとき、その上の5個或いは6個のリングは歪な円になる。波W1の1個の鋼球が落下して出来た空洞に、波W2の鋼球が1つでも空洞に向かって抜け落ちて、波W2がより小さな波W1になる。
【0244】
排出口HS周辺が環状の1列路であって、排出口HSの大きさが4個の鋼球を収容する大きさであれば鋼球の排出は止まらない。4個の鋼球の上の流路断面積の大きさによって5個或いは6個のリングは歪な円になる。
【0245】
ルート部の形状よっては完全な円になる。5個或いは6個のリングは大きくて概ね崩れるが、歪ではない円になるようなルート部の形状は鋼球の排出を止めるかもしれない。
5個或いは6個のリングの鋼球が1つでも抜け落ちれば、全ての上の波Wはより小さな波になりながら下降する。容器内の鋼球が止まることなく排出し続ける。
【0246】
排出口HSから鋼球が1つでも抜け落ちなければ、容器内の鋼球が止まることなく排出し続けられない。
図7は鋼球が1つでも抜け落ちる排出口HSの説明図である。
図7(a)は、
図5(a)において球体BBのh-h切断面から下の半球体を取り除いた減速器SLであって、h-h切断面から下のルート部の空間SLBが復旧する。
【0247】
N個の鋼球がh-h切断面を通過するとして、h-h切断面を通過したN個の鋼球は、N個以上の多くの鋼球を収容する大きな空間SLB内に収容され、排出口HSから排出される。
h-h切断面を通過したN個の鋼球が排出口HSからより早く排出されれば、大きな空間SLB内に鋼球が貯まらない。
【0248】
貯まらない場合、
図1に示す鋼球表層面SASの降下速度は、h-h切断面を通過したN個の鋼球の通過速度に従い、排出口HSをより早く通過したN個の鋼球の通過速度に従わない。大きな空間SLBと排出口HSはあっても意味がなく、h-h切断面より下はあっても意味がない。h-h切断面と排出口HSは「直列に連続する2個の排出口」であって、実際の排出口はh-h切断面である。
【0249】
2個の排出口を直列に連続して、最初の排出口を「単位時間内に通過する鋼球の数」より最後の排出口を「単位時間内に通過する鋼球の数」が少なくなければ大きな空間SLB内に貯まらない。
貯まる場合は、容器内は排出口まで液相であって、最初の排出口は「単位時間内に通過する鋼球の数」を次第に少なくする流路途中でしかない。
【0250】
最初の排出口で気層になって、再び液相にして最後排出口から排出しても、途中気層になったところより、「単位時間内の排出する鋼球の数」を少なくできない。 少なくできれば、最初の排出口で気層にならない。途中気層にならないならば、排出口は最後の排出口1個で十分である。
【0251】
鋼球表層面SASの降下速度は単位時間内に排出口HSから排出される鋼球の数に従う。
大きな排出口から鋼球が例えば1秒に2個ずつゆっくりと排出される場合と、小さな排出口から鋼球が0.5秒に1個ずつ速く排出される場合と、鋼球表層面SASの降下速度は同じである。大きな排出口から鋼球が2個ずつゆっくりと排出される場合より、小さな排出口から鋼球が1個ずつ速く排出される場合のほうが、鋼球表層面SASの降下速度は遅いと考えても良さそうである。
【0252】
挿入体BBは単位時間内に排出口HSから排出される鋼球の数を少なくするためのものであって、排出口HSを小さくしても、「楔2球や崩れないアーチ」が出来ないようにするものである。
図7(a)において、水平面h-hより下では容器内壁面との間の隙間は鋼球SAが1個だけ辛うじて通過する距離で、環状の一列路である。鋼球SAが互いに押し合ってリングの形を保ち落下しない場合が起きても、「楔2球や崩れないアーチ」は出来ない。
【0253】
図2(b)において、正4角形が形を崩して菱方になって4個の鋼球に高低差ができても、低い鋼球が押し出されなければ落下しない。上から見て排出口HS内にある鋼球がそれと隣接する鋼球に支持されて静止する場合がある。
【0254】
図7(b)に示す円柱BBの中心軸Zは容器SLの中心軸Zに一致し、排出口周辺から排出口HSに入る鋼球の流路だけを1列流にする。排出口周辺から排出口HSに入らない鋼球の流路を1列流にしない。ゆえに、排出口周辺から排出口HSに入らない鋼球は円柱BBと隣接する鋼球に支持されて静止する場合がある。
【0255】
図7(c)に示すように排出口HSは、突起部BBBの外面の周りに正4角形の形成する4個の鋼球を収容する。排出口HSは円柱BBの先端部に装着される突起部BBBの外面は
図2(b)に示す正4角形を構成する4個の鋼球全部と接点を持つが、「上から見て排出口HS内にある鋼球」は突起部BBBの外面に沿って移動し支持球にはならない。最大で4個の鋼球を止まることなく排出し続ける排出口HSになる。
【0256】
図2(c)に示すように、「鋼球を止まることなく排出し続ける排出口の直径」は鋼球直径DSAの3倍であるが、6個の鋼球からなるリングが抜け落ちる大きさでなくても、
図2(b)に示すように4個の鋼球からなるリングが抜け落ちる大きさは、
図7に示す円柱BBと突起部Bbによって、鋼球直径の(1+ルート2)倍となる。
【0257】
しかしながら、排出口周辺から排出口HSに入らない鋼球は円柱BBと隣接する鋼球に支持されて静止する場合をなくすためには。
図7に示す円柱BBとではなく、
図5に示す球体BBと突起部Bbによって、鋼球直径の(1+ルート2)倍となる。
【0258】
図1のピストンPSの降下速度は排出口HSから鋼球が1個ずつ排出される場合のほうが、4個ずつ排出される場合より遅くなるが、
図8(a)、(b)、(c)に示す三日月形排出口HSSは「2個或いは3個ずつ排出する排出口HS」である。
図8(d)に示す流路入り口INNはこの三日月形排出口HSSで、1個ずつ排出される流路出口OUTは最終の排出口OUTである。
【0259】
最終の排出口OUTの外部は、複数の鋼球が互いに離反し押し合っていない気層である。複数の鋼球が流路HH内で自由に動き回れえるならば、流路HH内は気層で、容器内の三日月形排出口HSSが最終の排出口である。容器SLに流路HHを連結しても意味がない。
【0260】
図8は「鋼球を2個ずつ排出する減速器」に関するもので、円形の排出口HSの一部を塞いで小さくなった排出口HSSから複数の鋼球SAが横一列に並んで排出される。排出口HSSに連結される流路HHは横一列に並んだ鋼球を側1列に並び変えて、流路HH末端部OUTから鋼球が1個ずつ排出される。
【0261】
図5(b)に示す挿入体BBは円柱上下両端部に半球体BHが連続し、中心軸ZBBがシリンダSLの中心軸Zと一致するが、
図8(a)において、
図5(b)に示した挿入体BBの中心軸ZBBがシリンダSLの中心軸Zから離れている。
【0262】
図8において、挿入体BBは、排出口HS一部を塞ぐだけではなく、排出口HS周辺の流路高さを鋼球が1個だけ辛うじて通過する大きさにする。
図8(a)において、挿入体BBの円柱部とシリンダ内壁SLLとの間の隙間は、右側が狭く左側は広い。右側の隙間に1個の鋼球SAも収容できなく、左側の隙間の幅が鋼球直径DSAの2倍以上である。挿入体BBの左側の流路は一列路Gではなく、多くの鋼球SAが収容される。
【0263】
図8(b)は排出口HSを上から見た平面図で、
図8(a)に示すa-aで切断した切断面である。円Bhは挿入体BBの半球体BHの切断面である。
排出口HSは挿入体BBに塞がれて、
図8(b)の上から見た平面図では、排出口HSから円Bhを取り除いた部分HSSは、中央から左右両端に行くほど狭くなる三日月形に見える。
【0264】
図8(b)に図示する三日月形の部分を、以後、三日月形排出口HSSという。三日月形排出口の中央部の最も広い部分は、
図8(c)に斜線で塗りつぶした部分であって、「排出口HSの外延と略平行に1列に連鎖する2個の鋼球」を収容できる大きさの穴Hssである。排出口HSの周方向と平行に2個の鋼球SAを収容でき、径方向と平行には2個の鋼球を収容出来ない。
【0265】
また、三日月形排出口の中央部の最も広い部分の流路高GH(穴Hssと半球体BH表面との間の距離)は辛うじて1個の鋼球SAが通過できて2個の鋼球SAが通過できない高さである。排出口周辺の鋼球の上に乗り上げる鋼球はなく、楔2球は出来ない。
穴Hssから必ず1個の鋼球SA1は落下し、1個の鋼球SA1が落下すると、隣接の鋼球SA2も落下する。鋼球SA1も鋼球SA2も支持球にならない。
【0266】
排出口HSが水平面上にあっても、三日月形排出口HSSの中央から左右両端に行くほど狭くなる部分に乗る鋼球SAは三日月形排出口HSSの中央部に向かって下り坂を下る。中央から左右両端に向かって登坂である。三日月形排出口HSSの下り坂を下る鋼球SAは、三日月形の穴の中に収容されながら中央部に向かって移動し、中央部に至って穴Hssから落下する。
【0267】
しかしながら、鋼球SAは三日月形排出口HSSの左右の端部に近づくほど三日月形の穴から離れる。
図8(b)において、鋼球SA1は円Bhに接しているが、鋼球SA2も鋼球SA3も鋼球SA1から遠くなるに従い円Bhから大きく離れる。鋼球SA1から遠くなるほど容器中心軸Zから遠くなり、ルート部SLB内面の高さは高くなって、鋼球SA2も鋼球SA3も高く持ち上げられる。挿入体BBの半球体BHの切断面である円Bhは上に行くほど大きくなるから、鋼球SA2も鋼球SA3も円Bhから離れる。
【0268】
鋼球SA がルート部SLB内面に沿って下降すると球体BH表面に近づく。
図8(b)に示すように複数の鋼球が半球体BH表面に沿って連鎖する。
複数個の鋼球SAは、三日月形排出口の中央部の1個の鋼球SA1を頂点にして、半球体BHに沿って上昇しながら連鎖し、下に凸のアーチを形成する。
【0269】
図8(b)に示す鋼球SA3は鋼球SA2が穴から落ちた位置に向かって下降して、穴から落ちる。鋼球SA4も鋼球SA5も順次落ちる。下に凸のアーチを形成する何れの鋼球もルート部SLB内面と球体BH表面とに同時に支持されるが移動可能で支持球にはならない。
【0270】
図8(b)に図示する下に凸のアーチは1列流であって、複数の鋼球があたかも側壁WSに沿うように、球体BH表面に沿って列をなす。列の先頭が穴から落ちて、止まることがない1列流になる。
【0271】
半球体BHに沿わなくルート部内壁に沿う複数の鋼球が上記下に凸のアーチの上に何層も重なる「
図8(b)に図示しない下に凸のアーチ」になる。半球体BHに沿わなくルート部内壁に沿う何層もの下に凸のアーチも止まらず穴に落ちて、ルート部SLB内面に沿う複数の鋼球も半球体BHに沿う複数の鋼球もそれらの間に介在する複数の鋼球も止まらず穴に落ちていく。
【0272】
挿入体BBの半球体部BHとシリンダ内壁SLLとの間は上に行くほど大きくなって、1列路ではないが、環状の流路になる。何れの鋼球SAも三日月形排出口HSSの中央部に向かって次々と移動して落下し、容器内SL内の鋼球SAの全てが排出される。
排出口HSは鋼球を中断せずに排出し続ける大きさの排出口であったが、三日月形排出口HSSの一部である穴Hssは、排出口HSの面積を更に減らしても鋼球を中断せずに排出し続ける排出口である。
【0273】
三日月形排出口HSSの中央部の大きさが2個の鋼球を収容する大きさではなく、3個の鋼球を収容する大きさであれば、鋼球の排出速度は増すが、排出口周辺で鋼球が詰まって排出されなくなる心配はなくなる。
【0274】
図8の実施例に限らず、容器SLの排出口HSから排出される鋼球の数を「さらに減ずる流路HH」を容器SLの排出口HSに接続すると、容器SLの排出口HSが如何に大きくても、流路HHから排出される鋼球の速さに影響しない。流路HHの出口OUTは最終の排出口であって、三日月形排出口HSSから排出さされる鋼球数が2個或いは1個増えて3個でも、最終の排出口から排出される鋼球の速さに影響しない。
【0275】
図8(d)に示す流路HHの入り口INN の開口部の大きさは穴Hss全体を包含する大きさであって、流路HHは容器SLの底に接続される。
流路HHは鉛直の1列路であって、矩形断面の流路で断面積が全長に渡って一定で、紙面に垂直の流路高GHは鋼球1個が通過できて2個通過できない大きさであって、流路幅GLは2個或いは3個の鋼球SAが通過できる大きさである。横1列に並んだ2個或いは3個の鋼球の中の2個の鋼球が両側の側壁WSに同時に接することはない。流路内で楔2球或いは楔3球は起きない。
【0276】
流路HHの鉛直部HH1に流路方向を鉛直から略水平にする隅角部HH2を接続し、隅角部HH2に、
図8(d1)に示す水平部HH3を接続する。鉛直部HH1の流路幅GLは水平部HH3の流路高GHになる。水平部HH3では鋼球は自重で移動しない。水平部HH3では先頭の鋼球SA1は後続の鋼球に押されて、流路出口OUTから落下する。
【0277】
図8(d2)においては、水平部HH3に変わって長い下り坂HH4を接続する。長い下り坂HH4の勾配は縦1列に並んだ複数の鋼球の何れもが後ろから押されてではなく、自重で
下降する。
【0278】
長い下り坂HH4の紙面に垂直の流路幅は、鋼球1個が通過できて2個通過できない大きさであって、長い下り坂HH4では鋼球の並びが縦1列から側1列に変わって、流路出口OUTから鋼球SAが1個ずつ排出される。
【0279】
容器SLの三日月形排出口HSSは単に流路途中となり、容器の排出口HSは通過する鋼球の数を2個或いは3個に減少させる役割を果たし、排出口HSは通過する鋼球の速度は流路HH末端部OUTでの鋼球の排出速度に従う。
容器の排出口HSのように流路途中の排出口を以後、容器内排出口と言い、流路HH末端部OUTのように最終の排出口を、以後、容器外排出口と言う。
【0280】
容器外排出口を塞いで暫らくして全ての鋼球が静止したとき、全ての鋼球が押し合って身動きとれない詰込状態になる。
容器外排出口を開けば、詰込状態が容器外排出口から崩れて、容器内排出口HSSの詰込状態が遅れて崩れ始める。
【0281】
排出口から出た鋼球は、次に出る鋼球から離れる。 排出口周辺の複数の鋼球は、排出口から出た鋼球に影響され、次から次へと動くことになる。ルート内の鋼球は排出口から離れるほど遅れて動き出し僅かに移動する。容器外排出口を開いて暫らくすると、容器内の全鋼球が動いている。ルート内の鋼球は排出口に近づくほど加速するが、何れの鋼球も前後の鋼球と隣接したまま移動し、前後の鋼球と離反しない。
【0282】
形を崩さず下降する複数の鋼球の塊りを固層と言い、配列を変えながら下降する複数の鋼球の塊を液層と言うが、固層先端部の整列が乱れたところは液相である。前後の鋼球が離反するところは気層である。
【0283】
円筒部では整然と整列したまま下降できても、流路が次第に狭くなるルート部では下にできた隙間に無理矢理割り込んでいく状態になり、塊が固まって、下に隙間ができても落ちない状態になりかねない。部分的に崩れる部分と崩れない部分とが入り乱れた配列になる。
【0284】
砂時計の場合、容器内の排出口の直前にドームが出来て空洞ができる。ドームの頂上部分が崩れて数多くの砂が排出口の直前で加速し始め、勢い良く排出口から出ていく。数多くの砂は排出口の直前で気層になる。容器内で気層になる。
砂が鋼球の場合、排出口の直後の容器外で気層になる。排出口の直前の容器内で気層にならない。数少ない鋼球がゆっくりと排出口から出ていく。
【0285】
砂の形は不揃いで、鋼球同士の接触が1つの点であるのに対して、砂同士は多くの接触面でかみ合って壁を作る。また大きさが揃っているがゆえに鋼球と鋼球の間に隙間ができるのに対して、大きさが不揃な砂は、粒子と粒子の間に隙間がないほど強く結びつく。
形と大きさの揃った鋼球で作られる崩れないドームは小さく、形と大きさが揃わない砂は頂上に穴があくまで大きく成長するドームを作る。
【0286】
図9の三日月形排出口HSSは貫通体BFを排出口HSの下から差し込んで作るもので、排出口HSの開口部は三日月形排出口HSSだけになる。
三日月形排出口HSSに鉛直の通路RVが連結され、鉛直の通路RVの最下端が容器外排出口になる。容器外排出口に
図5において説明した減速弁BCが設けられる。
【0287】
図9(a1)は減速器の円筒容器SLの立面断面図で、円筒容器SLの中心線Zを含む断面を表している。
図9(a2)は
図9(a1)において水平面a-aから見た水平断面図である。
図9(b1)、
図9(b2)はそれぞれ
図9(a1)、
図9(a2)に鋼球SAを書き加えた図である。
【0288】
図9に例示する貫通体BFは円柱で、排出口HSとルート部SLBと挿入体BBを貫通する。貫通体BFの一部あるいは全部が排出口HSに収容される。挿入体BBは排出口HS周辺の流路高さを鋼球が1個だけ辛うじて通過する大きさにし、貫通体BFは、排出口HS一部を塞いで、排出口HSを小さくする。
【0289】
図9はルート部SLBを円錐形とする実施例で、円錐形に限ることなく半球形であってもよい。挿入体BBの上半分は半球部で下半分は円錐部BEである。円錐部BEと円錐形のルート部SLBとの間の流路は1個の鋼球が辛うじて通過できる円環の1列路である。
円錐部BEは排出口HS周辺に崩れないドームができる領域に入り込み、排出口HS周辺に崩れないドームを形成させない。
【0290】
貫通体BFは排出口HSを貫通して円形の排出口HSの一部を塞ぎ、円錐部BEとルート部SLB内壁との間の円環の1列路を貫通して挿入体BBの円錐部BEと交わる。
図2(c)に示した鋼球直径の3倍の排出口において、
図2(c)に示す鋼球SA0が「排出口HSと中心を共有する貫通体BF」の断面とすると、貫通体BFの周りに円環状の排出口が出来る。貫通体SA0の周りの6個の鋼球は落下するリングで、そこに留まらない。
【0291】
ちなみに、
図7に示すようにルート部SLBに挿入体BBをつけた場合には、
図2(b)に示す大きさの排出口から4個の鋼球が落下する。直径が鋼球直径の3倍でなくても全球落下する。
【0292】
貫通体BFが排出口HSと中心を共有せず、貫通体BFを大きくしていくと、円環状の排出口は
図9(a2)に示すように、
図8において説明した三日月形排出口HSSとになる。
図8において説明したと同様に、排出口HSから2個の鋼球SAを横一列(鋼球が流路を移動する方向と直角に底面WF上に1列に並ぶ状態を横一列と言う。)に並べて排出する。
【0293】
底面WF上で鋼球の移動方向と直角方向を横(方向)とし、底面WFに垂直な面上で鋼球の移動方向と直角方向を縦(方向)とし、底面WF上で鋼球の移動方向を側(方向)とする。また、鋼球が横に並んで横1列と言い、縦に並んで縦1列と言い、側方向に並んで側1列と言う。
【0294】
三日月形排出口HSSの流路幅GLが最も大きい中央部(穴Hss)が、鋼球1個が通過できて2個通過できない大きさであれば、排出口HSS上で互いに押し合う2個の鋼球の何れかが排出口HSSに落下しなければ2個共落下しないままになる。
中央部が、鋼球2個が通過できる大きさであれば、2個の鋼球の何れかが中央部付近の穴HSSから落下して2個共落下する。
【0295】
鋼球2個が通過できる大きさの三日月形排出口HSSの中央部の穴Hssから互いに押し合う2個の鋼球が落下する。2個の鋼球が落下して、互いに押し合う3個の鋼球は落下する。3個落下すると4個も落下する。
鋼球2個通過できて3個通過できない大きさの穴Hssは、鋼球SAを排出し続ける排出口HSになる。
【0296】
図8において説明した三日月形排出口HSSは水平面上にあって、流路幅が最も大きな中央部から遠ざかるほど流路幅GLは小さくなる。鋼球SAは中央部に向かって少しずつ沈んでいきながら下り勾配を下降する。
図9のように貫通体BFがある場合、
図9(b1)に示すように、鋼球SAは貫通体BF側面に沿う鋼球SAは三日月形排出口HSSの中央部から遠ざかるほど上昇し、中央部に向かって下り勾配を下降する
【0297】
中央部付近の穴Hssは鋼球2個通過できて3個通過できない鉛直流路RV(底面WFが鉛直面である流路を以後、鉛直流路、鉛直1列路と言う。)に連続する。鉛直の通路RVを2個の鋼球が横に並んで落下する。
【0298】
図9(b2)に示すように、鉛直流路RVの入り口INNの鋼球SA5の上には鋼球がなく、鋼球SA5は上から押圧されず自重だけで落下する。鉛直流路RVの出口OUTにある鋼球SA1には、鋼球SA1の上にある全ての鋼球SAの重量が押圧力になって働く。
【0299】
鉛直の通路RVの最下端部に、僅かに上り勾配で略水平の流路BCが連続する。略水平の流路BCは
図5において減速弁BCであって、略水平の流路BC上の鋼球SA1は自力で水平方向に移動できない。流路BCが僅かに上り勾配なら、なおさら鉛直流路RVの出口OUTから脱出できない。
【0300】
鉛直流路RVと略水平の流路BCとが交差する部分に突起RVCがあって、鉛直流路出口OUTからまさに出ようとする先頭の鋼球SA1は進行方向を略直角に変えて略水平の流路BCの上に停留する。略水平の流路BCから受ける反力F1と上にある鋼球の全ての重量による押圧力F2とは働く方向が互いに反対方向であって、一直線上になく、先頭の鋼球SA1は略水平の流路BCの上を略水平に押し出される。
【0301】
図8においても、
図9においても、挿入体BBによって、鉛直流路RVの入り口INNの鋼球SA5の上には鋼球がなく、鉛直流路RVの入り口INNより上部の影響を全く受けない。鉛直流路RVの入り口INNの鋼球SA5は容器SL内の鋼球と容器SL内の鋼球を押圧するピストンPSとの影響を全く受けない。容器SL内の鋼球の全てが排出されるまでの時間(以後、全鋼球排出所要時間と言う。)は、鉛直流路RVの入り口INNから出口OUTの範囲の構造だけに関係する。
【0302】
壁や障害物に当たって鋼球は行く手を阻まれて進路を変えるとき抵抗を受ける。鋼球の下降が加速しないようにするには壁や障害物を設けることが必要で、鋼球が下降に伴って数を減らすための壁や障害物でも、鋼球の下降を止めてしまう壁や障害物にしてはならない。
【0303】
鉛直流路RVの出口OUTからは鋼球が1個ずつではなく2個ずつ排出されても、略水平の流路BCの上り勾配を大きく、鉛直流路RVを短くして、「鉛直流路RV内にあって出口OUTの鋼球SA1の上にある鋼球」の総数を小さくするほど、略水平の流路BCからの鋼球の排出速度は小さくなる。
【0304】
流路内排出口HSから鋼球を1個ずつ排出しなくて、容器外に
図5に示す減速弁BCを追加する場合は、流路内排出口HSから鋼球が1個ずつ排出して、容器外に
図5において減速弁BCを追加しない場合より、全鋼球排出所要時間を長くすると期待できる。
【0305】
図10は
図1に示した減速器で、重量物CWがゆっくりと下降する減速器の構造図で、テコAW1の片方の端部は固定部Wに設けられる支軸PW1に回転自在に軸支される。ピストンPSの図中矢印イ方向の僅かな下降量は、テコAW1を滑車BWによって重量物CWの大きな下降量に変換される。
【0306】
例えば夜間電力で重量物CWを高く持ち上げ、鋼球SAを容器内に充填する。高く持ち上げられた重量物CWが下りていくとき、位置エネルギは運動エネルギになって電気エネルギを生み出す。バッテリーは、こうして作られた電気エネルギを蓄えて必要時に放出するものであるが、必要時に充電エネルギと放電エネルギに差があって、差はエネルギ損失になる。
図10の位置エネルギは滑車BWの回転になり、必要時に発電して同時にモータを回す。電気エネルギを蓄えない。
【0307】
重量物Wの重力はテコAW1と滑車BWを介してピストンPSに伝わり、シリンダSLに収容される複数の鋼球SAを介してシリンダ上部の内壁SLLに支持される。排出口HSから排出される鋼球SAの排出速度は重量物CWの重力に影響されないので、鋼球SAの排出速度に従って、重量物CWはゆっくりと下降する。
【0308】
リンクAW2は固定部Wに設けられる支軸PW2に回転自在に軸支され、押しバネU2によって図中矢印イと反対方向に付勢される。リンクAW2の先端部に弁BCが装着され、弁BCは排出口HSを塞いでいる。リンクAW4はピストンPSやテコAW1の上下動に関係なくリンクAW3を介してリンクAW2と連動し、リンクAW4の図中矢印イと反対方向の動きは、排出口HSを塞いでいる弁BCによって止められる。
【0309】
レバーAW4を図中矢印イ方向に押し下げると、連結棒AW3を介してリンクAW2を図中矢印イ方向に押し下げられる。排出口HSを塞いでいた弁BCは排出口HSから離れて、排出口HSから鋼球SAが排出される。
図10は排出口HSが閉じた状態を示す。
【0310】
排出口HSが塞がれているとき、排出口HSから鋼球SAが排出されない。ピストンPSもリンクAW1も静止して、重量物CWも静止している。
レバーAW4を手動で図中矢印イ方向に押し下げている間は、リンクAW3とリンクAW2を介して排出口HSを塞いでいる弁BCが開く。レバーAW4から手を離すと押しバネU2によってリンクAW2の先端部に弁BCが排出口HSを塞ぐ。
【0311】
鋼球の流れを再開して排出口付近に楔2球ができていれば、容器内の何れの鋼球も静止したままになる。排出口付近に楔2球ができていなくても、排出口から離れたところに楔2球ができていれば、楔2球ができている位置から後方に隙間を作る動きがなくなる。
排出口付近と排出口から離れたところにも楔2球や崩れないアーチができている場合もある。
図10の攪拌部BCCは排出口から離れたところにできる崩れないアーチに届いている。
【0312】
図10は重量物CWの大きな位置エネルギを必要時に少しずつ運動エネルギに変換するダム式蓄電池のようなもので、液体をポンプで上げるより、固体の重量物を上げて位置エネルギを蓄える方が、エネルギロスが少なく、装置が簡単になる。必要時以外は鋼球SAの排出を含めて全ての動作を停止したままにして、必要時にため込んだ位置エネルギを消費することが出来る。
【0313】
図11は「ドアを軽く開閉するドアクローザ」の構造図で、ドアが全開したときの状態図である。
リンクAW4はドアDと連動し、付勢バネU1に付勢されて図中矢印イ方向に回転する方向はドアが閉止する方向である。「リンクAW4の装着される当たりG4」はリンクAW1と当接離反し、リンクAW1にピストンPSが連結される。
【0314】
図11において、ドアDの速さはピストンPSの下降速度に従い、ドアは常にゆっくりと閉まる。ピストンPSはドアの回転を阻止する当たりで、ドアの回転を阻止しながら後退する。ピストンPSは鋼球の排出で動き、持ち上がった鋼球の位置エネルギを動力とする。付勢バネU1の復元力はドアを閉める以外に使われない。
【0315】
ドアクローザはドアを開くときに付勢バネU1を伸縮して、付勢バネU1の復元力でドアを閉止するものである。バネで動くドアは加速しながら閉まり、全閉時に大きな衝撃音を伴う。通常のドアクローザは抵抗を用いて減速する。
「油圧シリンダを備えるドアクローザ」はドアと油圧シリンダ内のピストンと連動し、ドアが早く動くと、ピストンが早く動いて、大量の油を短時間内に小さな穴から押し出す。小さな穴から噴射された油の粘性抵抗はドアの速さに比例し、ドアが遅いとき抵抗は少なく、早いと大きくなる。
【0316】
「油圧シリンダを備えるドアクローザ」は、付勢バネU1を油圧シリンダに内蔵し、付勢バネU1の復元力はドアを閉める力と「油を押し出す力」に使われる。ドアを開くとき、ドアを閉める力以上の力を付勢バネU1に蓄える必要であって、ドアが重たく感じられる欠点があった。
図11のドアクローザは、ドアを開くときドアを閉める力と「鋼球を持ち上げる力」が必要で、「鋼球を持ち上げる力」は「油を押し出す力」に比べて遥かに小さい。
【0317】
鉛直の回転軸を持つドアは、鉛直の回転軸回りの摩擦抵抗より大きな力があれば回転する。
ドアクローザなしでドアを開け閉めする力は「非常に小さい力」である。
図11のドアクローザのバネに蓄える力は略上記「非常に小さい力」で、大きな「油を押し出す力」を蓄えない。
図11のドアクローザは、まるでバネがないかのようなドアにする。
【0318】
図11のドアクローザはドアD が閉まるときだけ鋼球が排出され、ドアD が止まっているとき鋼球の排出も止まる必要がある。
図11(a)に示すように、ドアが閉まり始める前は、当たりG4はリンクAW1と離反して、「リンクAW2の先端部に装着される弁BC」が排出口HSを塞いでいる。
【0319】
ドアが閉まり始める前だけではなく、ドアが閉まる途中で止まったときも、当たりG4はリンクAW1と離反していて、ピストンPSもリンクAW1も静止していて、ドア閉まり始めると、リンクAW4だけが動いてリンクAW1に近づき、当たりG4がリンクAW1と当接して、弁BCが排出口HSを開く。
【0320】
ドアが閉まり続けるとき、当たりG4がリンクAW1と当接したままで、弁BCが排出口HSを開いたままである。ドアDとピストンPSは相対的に一体になって動いている。
ドアが止まって暫らくは、ドアが閉まるときと同じく鋼球の排出が継続し、リンクAW1だけが動いてリンクAW4から遠ざかる。当たりG4がリンクAW1と離反して弁BCが排出口HSを塞ぐ。
【0321】
鋼球の排出は停止したままになり、リンク装置の全てのリンクは停止したままになる。リンクAW1もリンクAW4も静止したままで、当たりG4がリンクAW1と離反したまままで、ドアが再び動き始めるまで、
図11(a)に示すように待機状態になる。
【0322】
当たりG4がリンクAW1と当接離反する位置は移動し、弁BCが排出口HSを塞ぐ位置は動かない。上記2つの位置の間隔は変化し、当たりG4とリンクAW1との間の距離の変化を、弁BCが排出口HSを塞ぐ動作に如何に伝達するかが課題になる。
【0323】
図11(a)はドアの全開時の機構図で、当たりG4はリンクAW1と離反し弁BCが排出口HSを塞いでいる。
図11(b)は閉止途中の機構図で、当たりG4はリンクAW1にトプ接して、弁BCが排出口HSを開いている。
弁BCは排出口HSを塞ぐ位置と開く位置との間を揺動する。
【0324】
固定部Wに容器SLが固定され、固定部Wに設けられる固定支軸PW1,PW2,PW3のそれぞれの周りにリンクAW1とリンクAW4の中間部、リンクAW2、摺動体Kが回転自在に軸支される。
【0325】
リンクAW1とAW4のそれぞれの端部に連結軸P1とP4とが設けられ、支軸P1と、連結軸P1とP4と、車輪の回転軸Ibは4節回転機構のリンク装置を構成し、リンク装置の4つのリンクの長さは全て同じである。
リンクAW4とリンクAW1との間の角度が開いたり閉じたりすることによって、支軸PW1と車輪の回転軸IBとの間が小さくなったり大きくなったりする。
【0326】
「支軸PW1と車輪の回転軸IBとの間の距離」は、
図11(b)に示すように、当たりG4がリンクAW4に当接して車輪Bが「摺動体Kに設けられる円弧の摺動面KK」を押圧して静止するときが最大値MAXである。
図11(a)に示すように当たりG1がリンクAW1に当接して車輪Bが円弧の摺動面KKから離れるとき最小である。
【0327】
図11(b)に実線で示す摺動面KKは、支軸PW1を中心として半径が上記最大値MAXの円の一部で、
図11(b)に示す破線は、車輪Bが離れたときの円弧の摺動面KKを示す。
図11(b)に示す破線は
図11(a)に示す実線である。
図11(b)に実線で示すように、摺動面KKは車輪Bが摺動面KKを押圧して派出口を開ける位置と、
図11(b)に破線で示すように、車輪Bが円弧の摺動面KKから離れて、弁BCが排出口HSを塞ぐ位置との間の位置との間を揺動する。
【0328】
リンクAW2は
図11(a)に示すように、バネU2に付勢されて弁BCが排出口HSを塞いで静止する。
図11(b)に示すように、摺動体Kの回転はリンクAW3を介してリンクAW2に伝達されて、弁BCが排出口HSから離れて静止する。
【0329】
このように、摺動体Kの揺動は排出口HSの開閉と連動する。
図11は容器SLが静止して弁BCが動いて排出口HSが開閉する機構であるが、弁BCが静止して容器SLが上下に動いて排出口HSが開閉する機構も考えられる。鋼球或いは粉粒体を収容する容器は弁BCに比べて遥かに重いので、採用しない。
【0330】
油圧シリンダを備えるドアクローザもドアを閉めるときにだけ油の流出がある。
図11のドアクローザもドアを閉めるときにだけ鋼球の排出がある。ドアが全閉する以前に全鋼球が排出され尽くすことはない。
【0331】
排出口HSを開閉する弁BCの一部は「ルート部に侵入する突起部BCC」である。突起部BCCは排出口HSが閉鎖されるときルート部内にあって、開放されるときルート部外にある。突起部BCCが引き抜かれた後にルート部に隙間ができて、
図5(b)に示す攪拌棒BCCと同様に、ルート部内の鋼球SA を攪拌する。
【0332】
図11(a)に示す折れ線d1は排出口周辺にできる「最もおおきな崩れないドームd1」を示し、突起部BCCが「崩れないドームd1の最上部」に届けば、突起部BCCを引き抜いたとき「最も大きな崩れないドームd1」を含めてその上の複数のドームも崩れる。最も大きなドームd1」が崩れず残ったとしても空洞ができているから、弁BCが上昇して攪拌棒BCCが「崩れないドームd1の最上部」に届くまで上昇する。
【0333】
排出口HSを塞ぐ弁が開き、ルート部にあった突起部BCCが急激に引き抜かれると、突起部BCCがあったルート部に空洞ができる。鋼球SAがこの空洞に流れ込む。ルート部内の鋼球SAに働いた静止摩擦力が運動摩擦力に転じる。
【0334】
運動摩擦力は静止摩擦力よりはるかに大きく、排出は始まると止まりにくく、一旦止まると排出し始めない。
弁BCによって容器内のすべての鋼球が静止したあと、弁BCを開いてこの動かない塊が崩れて流れ出すと、再び動かない塊が出来上がることはない。
【0335】
この動かない塊には静止摩擦力が働いていて、運動摩擦力よりはるかに大きな力で崩れないようにしている。この動かない塊は崩れると、崩れないようにする静止摩擦力がなくなり、支えきれない運動摩擦力が働く。閉まりだすと全閉まで途中で止まらない。
ドアクローザは弁BCを開いたとき、動かない塊が出来上がったままにならなければよい。
【0336】
図12に示す減速器は繰り返し使用する減速器であって、
図12(a)はピストンPSが上昇しきった状態を、
図12(b)は下降しきった状態を示す。ピストンPSが上昇しきった時から下降しきった時までに排出口HSから排出された鋼球は、ポンプPOとチェインコンベアPCCによって持ち上げられて流路PSLを通過して貫通部HPS内部に投入される。
貫通穴HPS内部は多くの鋼球SAを収容する大きさである。
図12(b)において、ピストンPS内部の貫通穴HPS内に貯められる。
【0337】
容器SLとポンプPOと両者の間の流路PSLと流路SLPは固定部Wに固定される。
「排出口HSとポンプPOとの間の流路SLP内にある鋼球SAの数」を測定する図示しないセンサーが設けられて、ポンプPOは「上記鋼球SA」の数が予め設定された数を上回ると回転し、下回ると回転停止する。
【0338】
鋼球SAが排出口HSから排出されピストンPSが下降すると、ポンプPOの稼働を強制的に停止しない限り、鋼球SAは排出口HSから止まることなく排出し続けるようにしている。排出口HSに近いロート部内壁面SLBは排出口HSに近づくに従い下に凸の内壁面SLBから上に凸内壁面SLBBに移行している。
【0339】
ピストンPSを引き上げると
図12(a)に示すように、貫通穴HPS内に貯められた鋼球はピストンPSの下の容器内に下降する。
図12(b)に示すピストンPSが下降しきった状態から、
図12(a)に示すピストンPSが上昇しきった初期状態に戻される。
【0340】
ピストンPSは容器SLの中心軸Zの周りに回転せずに上下する。ピストンPSは中心部に円形の貫通穴HPSを備える肉厚鋼管であって、肉厚鋼管の中心軸Z方向に貫通する貫通部HPSは流路PSLの管に沿って上下する。
ピストンPSの底面の貫通穴HSPの部分を除く底面WPSは鋼球表層面SASを押圧するが、鋼球表層面SASより下に深く沈みこまないようにする面積を備える。
【0341】
ピストンPSが鋼球表層面SASより下に深く沈むことによって、鋼球SAが底面の穴HPSの部分から貫通部HPSの中へ入って盛り上がるが、鋼球SAが鋼球表層面SASより上に高く盛り上がらない。
図12(b)に図示される貫通穴HPS内部に収容される鋼球SAは、ポンプPOによって貫通穴HPS内部に持ち込まれた鋼球SAであって、ピストンPSがピストンPSの鋼球SAの中に沈み込んでの結果ではない。
【0342】
貫通部HPSの断面積が一定であれば、ピストンPSを上に持ち上げるとき貫通部HPS内壁に接する鋼球SAを少し持ち上げることになるが、貫通部HPSは下に行くほど断面積が大きくなっていて、ピストンPSを上に持ち上げるとき、貫通穴HPS内部に収容された鋼球SAを持ち上げることなく、ピストンPS だけを上に持ち上げられるようにしている。
【0343】
ピストンPS だけを上に持ち上げると、貫通穴HPS内部に収容された鋼球SAは素早く底面WPSの下に送り込むようになる。ピストンPSが下に移動するとき常にピストンPSが鋼球表層面SASを押圧する状態を保っている。
【0344】
ピストンPSを上に持ち上げるとき、貫通穴HPS内部に収容された鋼球SAは底面WPSの穴HSPの部分から排出され、また、ピストンPSが鋼球表層面SASを押圧することによって吸い込まない。貫通穴HPS内部に収容された鋼球SAは下降方向にのみ移動が制限される。穴HSPに逆止弁を設けなくても、穴HSPは逆止弁の機能を発揮している。
【0345】
歯車GAと歯車GBは、それぞれ固定部Wに設けられた支軸GAWと支軸GBWの周りに回転自在に軸支される。
ピストンPSの僅かな上下動はリンクAを介して歯車機構GAにより、歯車GBの大きな回転に変換される。歯車GBにモーターと発電機を連結すると、モーターで持ち上げたピストンPSが下降するとき、発電機が回転して発電し、位置エネルギは電気エネルギに変換される。
【0346】
夜間電力でくみ上げた水を必要時に排出して発電するダムと同様に、夜間電力でモーターを回転させて、ピストンPSを高い位置に持ち上げる。同時にバネUを伸縮させて、大きなポテンシャルエネルギを持つようにする。ダムの水位の上昇がピストンPSの上昇に相当し、ダムの水位の下降はピストンPSの下降に相当する。
必要時にピストンPSをゆっくりと下降させると、発電機が回転して、長時間にわたって発電する。
【0347】
また、ハイブリッド車のように、自動車の高速運転時にエンジンの力でピストンPSを持ちあげて強力なバネを伸縮させてポテンシャルエネルギを蓄え、自動車の発進時にピストンPSが下がって強力なバネが復元して自動車が動き出すようにできる。
自動車が発進して、鋼球が少しずつ比較的長時間にわたって排出口HSから排出され、エンジンの力を借りずに比較的長時間にわたって自動車が動く。排出口の大きさとアクセルペタルが連動して、短時間に多くの鋼球を排出してピストンPSが高速に下降するようにすれば、短時間に大きな力で自動車が動くようになる。
【0348】
夜間電力によってピストンPSを持ちあげる必要と、発電と同時にポンプPOで鋼球SAを持ち上げる必要があるが、鋼球SAを持ち上げる電力は、ピストンPSを持ちあげるために必要な電力や下降によって得られる電力量に比べて無視できるほどの小さい。
ポンプPOは発電時にだけ稼働し、発電しないときとピストンPSが下降しきったときは待機している。ポンプPOの停止時はピストンPSも停止している。
【0349】
このように、「粒揃いの鋼球を数多く収容して、排出口から数少なく排出する容器」の減速器は、ピストンPSをゆっくりと下降することによって、蓄えた大きなエネルギを必要な時に長時間にわたって供給することが出来る。ピストンPSがいくら重くても、ゆっくりと下ろすときに抵抗が作用しない。ポテンシャルエネルギがいくら大きくても、殆どロスなしに電気エネルギ或いは運動エネルギに変換される。
【0350】
水平面に置かれた鋼球は水平面を少し傾けると移動するが、粉粒体は移動しない。少し傾けた「流路断面が矩形の1列路」は鋼球でしか成立しない。わずか2球で流路を塞ぐ楔2球も鋼球でしか起こりえない
【0351】
図13(a)は容器が円筒状ではなく「流路断面が矩形の1列路」の平面図で、矩形断面は至る所一定で、流路幅GLも流路高GHも至る所一定である。流路入り口INが流路出口OUTより高い下り勾配の底面WFと互いに平行な両側面WS1,WS2とからなる。
【0352】
図13(a)は流路出口OUTを高く持ち上げて流路入り口INに数多くの鋼球SAを集めて、流路入り口INを流路出口OUTより高くした瞬間の状態を示す。側面WS2と底面WFと交わる線をZ軸とする。底面WF上のZ軸に直行する線X-Xは水平線である。鋼球の下降方向に直角な底面WF上の線が水平線である1列路を以後、横長流路、横長1列路と言う。
【0353】
図13(b)は
図13(a)に示すX-X矢視で、横長流路の断面図である。横長1列路においては、底面に垂直方向が流路高さで、1個の鋼球が辛うじて通過する大きさである。また、鋼球の降下方向と両側面WS1,WS2とが互いに平行であって、楔2球や楔3球を含む崩れないアーチを支持できない。両側面WS1,WS2の沿う鋼球も何れの鋼球も留まらず降下する。
【0354】
両側面WS1,WS2に沿って下降する複数の鋼球SAは互いに制動しあっていて、両側面WSに沿わない鋼球SAから押圧されることもあって自転しにくく、回転するというより滑りながら底面WFと側面WSに同時に沿って下降する。動きにくい複数の鋼球SAが両側面WSに沿って1列に並ぶ。
両側面WSから離れて、流路中心付近に近づくほど鋼球SAは動きやすくなる。
図1の容器内の鋼球SAが容器の中心軸周辺の鋼球から先に下降する状態に似ている。
【0355】
図13(c)は、
図13(b)の底面WFを側面WS2のZ軸を軸に少しだけ回転し
た1列路の断面図である。両側面WS1,WS2の何れか片方WS1が高く他方WS2が低い1列路を以後、斜め流路、斜め1列路と言う。
図13(d)は底面WFが鉛直面になるまで回転した1列路(以後、縦長流路、縦長1列路と言う。)の断面を示す。
図13(c)と
図13(d)のそれぞれに示されるX―Xは水平線である。
【0356】
流路幅が一定の1列路であっても、両側面WS1,WS2の何れか片方WS1が高く他方WS2が低ければ、流路入り口INから入り込んだ数多くの鋼球は、低いほうの側面WS2に偏りながら下降して、流路出口OUTでは数少なく排出される。流路が長ければ、流路出口OUTから鋼球を1個ずつ排出するようになる。
【0357】
勾配が小さい横長1列路では、全ての鋼球が流路の底面WFから離れて浮き上がることなく降下する。横長1列路から斜め1列路へと、また縦長1列路へと移行する過程において、低いほうの側壁WS2が底面WWFになっていく。
斜め1列路と縦長1列路とにおいては、側壁WS2(底面WWF)に沿って配されている鋼球SAと、側面WS2(底面WWF)から離れて浮き上がる鋼球SAとがある。
【0358】
流路が長い斜め1列路と縦長1列路とにおいては、側面WS2(底面WWF)に沿わない高い位置にある鋼球SAが側壁WSに沿う低い位置に配されている鋼球SAの列の間に割り込んで降下する。
長い斜め1列路或いは縦長1列路の末端は、鋼球を1個ずつ排出する排出口HSである。
【0359】
側面WS2(底面WWF)に沿って移動する低い位置の鋼球と側面WS2(底面WWF)に向かって移動する高い位置の鋼球と移動方向が異なる鋼球が高さ方向に数を減らしながら並び変わり、複数の鋼球は横1列(底面WF上で鋼球の移動方向と直角方向を横(方向)と言う。)から側1列(底面WF上で鋼球の移動方向を側(方向)と言う。)に並び変わる。
【0360】
円筒容器において、流路断面が次第に減少するルート部内においても、ルート部内壁に沿う鋼球と沿わない鋼球とでは移動方向が異なり数を減らしながら並び変わるが、楔2球や崩れないドームは出来ない。
【0361】
斜め1列路と縦長1列路とにおいては、側面WS2(底面WWF)に沿う側1列に並ぶ鋼球の上に側1列に並ぶ鋼球が載って、側方向に並ぶ層が何層もできる。側面WS2(底面WWF)に沿わない上の層にある鋼球は側面WS2(底面WWF)に向かって下降し下の層のある鋼球の中に割り込んでいく。
【0362】
図13(d)は縦長流路断面図で、
図13(b)に示す底面WFとそれと向かい合う上面WCが両側面WWSになり、側面WS2が底面WWFになる。
図13(d1)は
図13(d)は縦長流路の入口IN付近に複数の鋼球SAが積み上げられた山が崩れはじめた状態を示し、山が崩れて入り口から離れた処に裾野が出来た状態を示す。
図13(d2)は山が崩ながら下降していく状態を示す。底面WWFは僅かに下り勾配で、Y-Yは水平線である。
【0363】
図13(d1)に示す断層面Dを境にして下のD1の領域内にある鋼球は略そのまま残留し、上方のD2の領域内にある鋼球が下方のD3の領域に移動する。
図13(d1)が示す山が崩れる過程において、山の表層面だけが下降して、底面WWF上に裾野を作る。
図1のルート部内壁に沿う鋼球がゆっくりと下降し、容器中心軸Zに沿う鋼球が高速に下降する様子と類似する。
【0364】
図13(d2)において、裾野末端の1個の鋼球SA1に隣接する鋼球SA2と、鋼球SA2に隣接する鋼球SA3は、それぞれ高さと順位が違うが、鋼球SA2が鋼球SA1と鋼球SA3の間に割り込んで下降し、最後に全ての鋼球が底面WSに沿って側1列になる。
斜め流路と縦長流路では、割り込んで落ちた鋼球SA2が持ち上げられることなく、先頭部の側1列になった鋼球が縦に並ぶことはない。
【0365】
図13(d2)において、山全体が塊となって坂道WFを下降する。山の頂上SAMの後ろ側にも裾野ができるが、入口INから鋼球が絶え間なく供給されると後ろ側の裾野は埋め尽くされ、頂上SAMは入口INまで後退する。
何れにしても、
図13(d)に示す上面WS1に接触する鋼球はなく、何れの鋼球も下降を阻止されない。容器SL内部の鋼球が前に隙間が出来て初めて動き出すような動きではなく、隙間がなくても動いていて、何れの球も加速の一途をたどっている。
【0366】
裾野において、鋼球SA1が鋼球SA2から離れて、鋼球SA2が新しく裾野末端の1個の鋼球SA1になり、鋼球SA2に隣接していた鋼球SA3が新しく鋼球SA2になる。何れの鋼球もすでに動いている状態で、前進を阻む前の鋼球が動いてさらに加速する。
全ての鋼球は減速することなく加速の一途をたどっている。
【0367】
流路が
図13(d)のように縦長流路でなくても、斜め流路であれば、同様の動作と同様の効果が認められ,側1列に並ぶ鋼球が何層にも積み重なる鋼球の塊りは、山の高さを低くしながら、高さ方向の鋼球の数を減らしながら下降する。山の裾野では高い位置にある鋼球SAが低い位置になる鋼球SAの上に乗り上げることはなく、側壁WSに沿って鋼球SAが1列に並ぶようになると、末端部は鋼球SAを1個ずつ排出する排出口になる。
【0368】
長い斜め流路や縦長流路流路において、降下する鋼球の山は崩れて裾野では側1列になる。入口INから鋼球が絶え間なく供給されると、山の形は時間が経過しても変化しなくなる。
時間が経過しても変化しなくなる山の形に沿って天井(上面WC)をつけるとすれば、流路高さが次第に減少する先細りの流路になる。
【0369】
時間が経過しても変化しなくなる山の表層面の鋼球は少なからず上下しながら下降する。
また、末端の出口を塞ぐと、鋼球の塊りは天井(上面WC)を突き上げる。上記先細りの流路には、崩れないアーチや楔2球が出来る箇所が存在する。
天井(上面WC)をつけない縦長流路を以後、トユ流路と言う。楔2球や崩れないドームは2つの支持球を支持する2つの壁が必要で、トユ流路にはこの2つの壁がない。
【0370】
上記先細りの流路において、容器内の全ての鋼球は移動を阻止する壁に包囲され、行く手を塞がれて、末端の出口を塞がなくても身動きできない詰込状態でありながら、下に隙間に割り込んで行く状態になる。
【0371】
前方にある壁が鋼球の移動を阻止する度合いは、排出口に近づくほど大きくなり、前方の隙間は大きくなる。容器内の鋼球は排出口に近づくほど大きく移動する。
排出口から近いルート部では鋼球が大きく移動して、すでに動いている状態から更に加速する。
【0372】
排出口では、全ての鋼球が塊りとなって同時に移動するのではなく、鋼球の塊りの一番下の鋼球SA1が後続する鋼球SA2 から離れて降下して、後方に隙間を残す。鋼球SA2は鋼球SA1に遅れて動き初めて、前方に新しくできた隙間を埋めて、その後に遅れて後方に隙間を作る。後方に隙間を作る動きが後ろへ後ろへと伝播する。前方の隙間を埋めて動き始めた鋼球は止まることなく動き続けるので、短い時間が経過するとすぐに全ての鋼球が動いている状態になる。
【0373】
鋼球SA1が作った隙間に鋼球SA2が入り込むと同時に鋼球SA2に隣接する鋼球も僅かに降下する。後方に行くに従い前方の鋼球の移動に伴う鋼球の数はネズミ算的に多くなり、後方にできる隙間は多く小さくなっていく。鋼球表層面の降下は殆ど目に見えない。
【0374】
鋼球は隙間を埋めると同時に隙間を作っていて、排出口から遠く離れたルート部や円筒部では鋼球は隙間を埋める鋼球と隙間を作る鋼球とが同時に動く。全ての鋼球が互い接触しあい離反せずに動いている。
【0375】
排出口に近づくほど鋼球の前にできる隙間は大きく、大きく加速する鋼球と小さく加速する鋼球とがあって、同時にではなく遅れて加速する。排出口から遠ざかるほど同時に動く鋼球の数が多くなり、それぞれの鋼球の前にできる隙間は小さく、鋼球は小さく移動し小さく加速する。
【0376】
流路内で減速する鋼球はない。「動こうとする力より大きな抵抗」がかかると鋼球が減速し、かかり続けると止まってしまい、容器全体の鋼球を止めてしまう。壁は鋼球数を減らしながら下降するためのもので、減速するものではなく、加速を小さくするためのものである。
【0377】
鋼球の排出が継続しているとき容器内の全ての鋼球は運動中である。排出口近くの数少ない鋼球は容器内壁をほとんど押圧せずに運動する。排出口から遠く離れた数多くの鋼球は容器内壁を押圧しながら運動する。何れの鋼球も前に隙間が出来れば自重だけに隙間に移動するが、後ろから押されたり前から移動を阻止されたりしている。
【0378】
鋼球が降下しようとする力は容器内壁を押圧する力と前から移動を阻止する力によって減じられ運動加速度が減じられる。排出口から遠く離れるほど多く減じられ、略加速しなくなる。
排出口から出る鋼球が容器内壁を押圧しながら、そして前の鋼球に前進を阻まれながら運動加速度を減じると、全鋼球排出所要時間が大きく増加する。
【0379】
数を減らしながら下降するとき摩擦が加速度江御減じる。排出口を「鋼球を1個ずつ排出する排出口」にしようとするのは、流路断面積を2個通過できる大きさから出来ない大きさにすることによって、鋼球が容器内壁面と摩擦しながら通過して、落下する力を減じて運動加速度を減じる効果を狙っている。
【0380】
長いトユ流路では天井(上面WC)がなくても、上の鋼球が下の鋼球と鋼球の隙間に入り込む摩擦と底面との摩擦とで運動加速度を減じる。トユ流路出口の鋼球に働く運動加速度は小さくそれ以前のトユ流路入り口の鋼球に働く運動加速度は更に小さい。
【0381】
トユ流路に限らず、流路出口の鋼球に働く運動加速度をゼロに限りになく近づいた最小値にすることが目的で、移動しない壁が出来ないよう鵜にすることは難しい。容器内排出口を「鋼球を1個ずつ排出する排出口」にしようとするより容器外の流路構造で運動加速度を減じようとする方がよさそうである。
鋼球を1個ずつ排出する排出口にしなくても
図5(a)や
図9(a)に示す減速弁BCによって目的は達成される。容器外排出口を追加した装置は装置が大きくなるのが欠点である。
【0382】
図1(a)が示すように、鋼球表層面SAS上にある数多くの鋼球SAをピストンPSが押圧しても、排出口から出る鋼球SAは比較にならないほどは数少ない。容器内SLが液体である場合、ピストンPSの小さな押圧力でだけで、排出口HSから液体が高圧で噴出する。
容器内SLが鋼球SAである場合、ピストンPSの大きな押圧力は、液圧のように排出口HSに届かず、排出口HSから落下する鋼球SAには自重だけが働いている。
【0383】
ピストンPSの大きな押圧力と全鋼球SAに働く重力は、鋼球SAと円筒部内壁との間の摩擦力とルート部内面が鋼球を支持する力と釣り合い、排出口HSから落下する鋼球SAに作用しない。鋼球SAは自重だけで落下する。
【0384】
全鋼球SAが移動して排出されるが、排出口HSから前方に何もない先頭の鋼球SA1が後ろから押されるのではなく、自重だけで転がり始めなければならない。坂道にたった1個の鋼球を置いて転がり始める転がりやすさが基本になる。坂道面と鋼球球面との双方に凹凸が少なく、坂道面と鋼球球面との間に磁性を帯びないように鋼球はステンレス製が好ましい。
【0385】
容器内のあらゆる鋼球は下にできた隙間に移動する。鋼球が下にできた隙間に移動して上に隙間ができるので、下にできた隙間は上の隙間になる。楔2球や3個以上の鋼球からなる崩れないアーチの下は隙間になるが、その上に隙間が出来ない。
仮に楔2球と楔2球の上に楔3球が同時に出来たとしても、楔2球が崩れない限り楔3球の下に隙間は出来ない。
【0386】
楔2球や崩れないアーチの上の流路内においては、流路内に身動き取れない鋼球がぎっしりと詰まっている詰込状態であって、身動き取れない鋼球は下にある鋼球によって行く手を阻まれ下降できない状態である。下にある楔2球や崩れないアーチが崩れても、より大きな崩れないアーチが出現する可能性がある。
【0387】
鋼球の排出口からの排出を止めれば容器内はどこもぎっしりと詰まった詰込状態になる。容器内はどの鋼球も動けない。このとき、鋼球の何れもが前方に隙間が新しくできれば移動する状態であれば、崩れないアーチや楔2球が出来ない。
前方に隙間が新しくできても動けない状態は崩れないアーチや楔2球が出来る状態である。先細りの流路には、崩れないアーチや楔2球が出来る箇所が1箇所に限らず存在し、閉じた排出口を開いても、鋼球の排出口からの排出は再開しない。
【0388】
底面WWFが大きく下り勾配になり鉛直面になれば、何れの鋼球は鉛直方向に落下して、横長流路や斜め流路や縦長流路に認められる鋼球の進路変更は認められない。両側面WWSも側面WS2が底面WWFも上面WCもすべての壁面は鉛直容器内壁面になる(以後、鉛直流路、鉛直1列路と言う。)。
【0389】
図14(a)に図示する入り口INNを
図1の容器の排出口に、或いは
図8の三日月形排出口に、或いは
図9の2個の鋼球が通過できる排出口に連結すれば、これらの排出口の大きさが大きくても、数多くの鋼球は横断流路WS3に沿って数を減らしながら下降し、最後に1列の数珠つなぎ状態になり、鋼球を1個ずつ排出するように出来る。
【0390】
斜め流路も縦長流路も、一個の鋼球が底面上を下降する方向と側面WSとが互いに平行でない流路であって、側面WSに沿わない鋼球は、側面WSに沿って下降する鋼球の列より高い位置にあって、側面に沿って下降する鋼球の列の中に割り込んで、最後にすべての鋼球が側面WSに沿って1列の数珠つなぎ状態で下降する。
【0391】
以後、数珠つなぎ状態で下降する1列の流れを1列流と言い、1列流の通り道を1列流路と言う。1列流路の流路幅GLは鋼球1個が通過できる幅であるが、1列流は「鋼球1個が通過できる幅の溝」のように両側の壁に沿う場合に限らず、片側の壁に沿って下降する場合も1列流である。1列流の先頭の鋼球が、末端部の排出口から出れば、1列流は止まらない。
【0392】
図14(a)において、「側面WS1と側面WS2の間に挟まれる部分」は、
図13(a)に示した横長流路であって、側面WS1と側面WS2は鋼球が下降する方向と平行である。
図14に示す「鋼球が下降する方向と平行でない側面WS3」を、以後、横断側面WS3と言い、複数の鋼球が横断側面WS3に沿って移動する。横断側面WS3に沿って複数の鋼球が移動する流路を以後、横断流路と言い、横断側面WS3に沿う流路に1列流路がある。横断側面WS3を設置する底面WFと「側面WS1と側面WS2の間に挟まれる部分」の底面WFとは同一平面である。
【0393】
横長流路において横断側面WS3に沿う流路も、横長流路を傾けて斜め流路にしたとき、横長流路の側面WS2に沿う流路も横断流路である。
側面WS1と側面WS2の間に挟まれる横長流路の複数の鋼球は、横断側面WS3に向かって下降し、横断側面WS3に沿って下降する鋼球と横断側面WS3に沿わない鋼球とに分かれる。
【0394】
横断側面WS3に沿わない鋼球は横断側面WS3に沿って下降する鋼球の列の中に割り込んで、1列流になる。
隅角部に連続する流路(横断側面WS3に沿う1列路)の勾配ΘX(X-Xは水平線)を小さくするだけで、排出口HSから排出される鋼球SA1の速度は低速になる。
【0395】
以後、鋼球SAの降下方向と直角ではない方向を斜めと言い、1列に連鎖して並ぶ方向が鋼球SAの降下方向と直角ではない状態を斜め1列と言う。側面WS1と側面WS2の間に挟まれる横長流路を横1列に並んだ鋼球は、横断側面WS3に沿って斜め1列に並ぶ。
横1列以外の斜め1列においても側1列においても、連鎖して1列に並ぶ何れ鋼球も水平面からの距離が異なり、1列に並ぶそれぞれの鋼球で隣り合う2つの鋼球は、下の鋼球は押圧しながら下の鋼球と離れず移動し、下の鋼球は上の鋼球に押されなくても自重で下降出来る。
【0396】
1列流の排出口に近いほど鋼球の下降速度は速く、1列流の後方では側面に沿わない鋼球が、側面に沿って下降する1列流列の中に割り込んで1列流の下降速度を遅くする。鋼球が1列流列の中に割り込むことによって、「流路を通過する鋼球の数」が減り、最後に「流路を通過する鋼球の数」は1になる。1列流は「流路を通過する鋼球の数」が1で、流路幅が1個の鋼球が通過できる大きさである。
横断流路WS3に沿う鋼球は数を減らしながら下降し最後に1列流になる。円筒容器のルート部に似ている。
【0397】
1列流の先頭の鋼球で排出口から出ようとする鋼球の速度が最も高速である。後続の鋼球は先行する鋼球より低速で、1列流の後方の鋼球は止まっているかのように見える。1列流の後方に上から割り込んでくる鋼球はさらに止まっているかのように見える。
この止まっているかのように見える部分から上の鋼球は「排出口から出ようとする鋼球の速度」に影響しないが、排出口に近い鋼球は「排出口から出ようとする鋼球」を後ろから押して加速するので影響する。
【0398】
横断側面WS3に沿う流路が斜め流路であって、十分に長くすれば、入り口INから入り込む複数の鋼球からなる塊は、出口OUTに近づくところで1列の数珠つなぎ状態になるが、最後に1列の数珠つなぎ状態になるためには、高い位置にある鋼球SA2が低い位置にある鋼球SA1と鋼球SA3の間に割り込む力が必要で、直径が大きい鋼球ほど間に割り込む力が大きい。鋼球の直径が大きいほど「最後に1列の数珠つなぎ状態になるために必要な流路の長さ」は小さくなる。
【0399】
直径が5mmの鋼球と直径が10mmの鋼球が同じ勾配の坂道を下るときを比較する。
直径が5mmの場合と10mmの場合とでは、
図14(a)に示す「鋼球SA0の接地点P」と「鋼球の重心Gを通る重力の作用線Fg」との間の距離Lgが2倍でも、働く重力は2の3乗倍であって、鋼球が転んで落ちる力は直径の大きさに比例しない。
直径が大きい鋼球が下り始めるとき坂道の勾配は、直径が小さい鋼球が下り始めるときの坂道の勾配より小さい。
【0400】
横断流路WS3に沿って、数多くの鋼球が次第に低くなる山の裾野を形成する。山の裾野を形成する運動が長く継続すると、定常状態になり山の裾野の形は変化しなくなる。山の裾野の形に沿って上面WCを「鋼球の塊りの表層面」と隙間を空けて取り付けても鋼球の流れは止まらないが、上面WCをつけて鋼球の流れを強制的に止めると、強制的に止めた位置で上記定常状態の山の裾野の形は盛り上がって上面WCを押圧する。
【0401】
横断流路WS3に破線で示す上面WCをつけて鋼球の流れを強制的に止めるときだけでなく、上記定常状態の山の裾野の形になるまでの途中に、上面WCを押圧して、
図14(b1)
図14(b2)に示す楔2球や楔3球が出来る状態になりかねない。しかし、上面WCをつけて排出口から鋼球がゆっくりと排出し続けていれば、鋼球の流れを強制的に止めても流れを再開すると、また排出し続ける。
【0402】
排出口から鋼球がゆっくりと排出し続けていれば、鋼球の流れを強制的に止めても山の裾野の形は殆ど同じであって殆ど盛り上がらない。盛り上がるのは鋼球が自重だけではなく後ろから押されているからであって、強制的に止めて後ろから押す力が山の裾野を盛り上げる。上記定常状態の山の裾野の形に沿って上面WCをつけても、上面を押し上げる力は小さければ楔2球が出来ない。
【0403】
鋼球の排出を再開して暫らくの間は、排出口手前の鋼球の塊りも容器内の鋼球の塊りも全体が同時に移動するのではなく、鋼球の塊りの1個の鋼球が前方に新しくできた隙間を埋めて、その後に遅れて後方に隙間を作る動きが後ろへ後ろへと伝播する。
容器内の鋼球の何れも前方に隙間が新しくできれば移動するが、前方の隙間を埋める移動には下降を伴う。盛り上がった山の裾野は低くなり、上面を押し上げる力はなくなる。鋼球の排出を再開して楔2球が出来ない状態に戻る。
【0404】
定常状態では、容器内に隙間がなく、それでも容器内の全ての鋼球が常に移動している。円筒容器内上部の円筒部では、複数の鋼球が集まって塊りとなり塊全体が形を変えず移動する固層、容器内下部のルート部では形を変える塊りの液相になる。固層先端部が液相で、液相が終わる処は塊りが飛び散る気層であって、気層は排出口から僅かに容器内であるが容器外である。容器内の何れの鋼球も接触し合っていて、容器外の鋼球は接触し合っていない。
【0405】
楔2球は前方の流路幅が小さく、2個の鋼球が前方の流路幅を押し広げなければ通過できないときに起こりえる。楔3球を含めて3個以上の鋼球からなる崩れないアーチはアーチの真ん中の鋼球がそれと隣接する複数の鋼球を押し広げて通過できないときに起こりえる。
【0406】
上面WCと底面WFに挟まれる流路は流路幅GLが次第に減少する先細りの流路であって、先細りの流路には必ず
図14(b1)に示すように楔2球ができる流路幅GLの箇所と、
図14(b2)に示すように楔3球ができる流路幅GLの箇所とが存在する。
図14(b1)に示す流路幅GLは鋼球直径の2倍より僅かに小さく、
図14(b2)に示す流路幅GLは鋼球直径の2倍より大きい。
【0407】
排出口HSに至る途中の流路において、
図14(b1)或いは
図14(b2)に示す箇所があれば、その下が空洞になって、全ての鋼球は静止したままとなる。
図14(a)に破線で示す上面WCをつけて流路幅GLが鋼球直径の2倍以上であれば
図14(b1)に示すように楔2球は出来ないが、2つの鋼球SA1やSA2の間に1つの鋼球SA3が割り込んで
図14(b2)に示すようにすると楔3球(崩れない3個のアーチ)ができてしまう。流路幅GLは鋼球直径の2倍以上で、且つ楔3球ができる大きさ以下でなければならない。
【0408】
鋼球に働く力の作用線は鋼球の中心と「壁との接点或いは隣り合う鋼球との接点」とを通る直線である。
対面する側壁が平行でなく、2つの側壁の交差角度が大きくなるほど、2つの側壁が鋼球を押圧する力の作用線(鋼球の中心と壁との接点とを通る直線)の交差角度が大きくなり、対面する2つの側壁が2つの鋼球を支持して楔2球になる。
【0409】
対面する側壁が平行であっても、流路幅GLが鋼球直径の2倍より極僅かに小さく、互いに隣接しあう2つの鋼球の何れもが側壁に接触するとき、2つの鋼球の中心と隣り合う鋼球との接点と鋼球の中心と壁との接点とが略1直線状になる。このとき楔2球になる。
【0410】
3個の鋼球がアーチを構成して、3つの鋼球のうち真ん中の鋼球に働く2つ力の作用線の交差角度が大きいほど崩れやすく、1直線状になるほど楔3球ができやすい。
真ん中の鋼球に働く2つ力の作用線の交差角度が大きくても、また,側壁と支持球との接点と、支持球の中心と、真ん中の鋼球の中心との3点が略一直線上に配されるときも楔3球ができる。
【0411】
実験結果ではあるが、排出口HS周辺と排出口HSに至る途中の流路が先細りの流路であって、対面する側壁が略平行であり、流路幅が鋼球直径の2.4倍から2.1倍に減少し、流路高さが1.7倍から1.1倍に減少する流路は、
図14(b1)に示すような楔2球も、
図14(b2)に示すような楔3球ができない。鋼球直径の2.1倍の流路幅は2個の鋼球が通過し、1個だけ通過する流路ではない
【0412】
側面WS1と側面WS2とに挟まれる横長流路と横断側面WS3に沿う横断流路との交差部分は平行でない2つの壁(側壁WS2、横断側面WS3)が交差するところで、進行方向が異なる鋼球が合流するところで以後、隅角部RCと言う。流路方向が変化する隅角部Rでは、整列が乱れてアーチが形成され、崩れないアーチができる可能性がある。
【0413】
隅角部の流路幅GLを十分に大きくすると、まだ隅角部を通過しないアーチa2は大きく、崩れるアーチになる。「隅角部を通過したアーチa1の片方の支持球」を支持する上面WCがないとき、隅角部を通過したところで崩れないアーチは出来ない。
隅角部の流路幅GLは崩れないアーチが出来ないようにして出来るだけ小さくする。
【0414】
横断側面WS3に沿う1列路の勾配ΘX(X-Xは水平線)を小さくすると、排出口HSから排出される鋼球SA1の速度は低速になる。横断側面WS3に沿う鋼球より隅角部を通過する前の横長流路を降下する鋼球のほうが転びやすいので、隅角部に連続する流路だけの勾配ΘXを小さくせずに大きいままで、底面WF全体の勾配を小さくすれば、排出口HSから排出される鋼球SA1の速度は低速になる。隅角部の流路幅GLを出来るだけ小さくしなくても、底面WF全体の勾配を小さくすればよい。
【0415】
図14に示す上面WCがない横断流路は
図1(a)示す容器からルート部を取り除いた円筒部を通過する鋼球のすべてを減速弁BC(横断側面WS3)が受け止めたのと同じである。横断側面WS3はルート部と同様に零れ落ちる鋼球SAを支持するが、ルート部と異なり、隅角部の流路断面積も通過する鋼球の数も減らさない。また上面WCがない流路断面積は無限に大きい。
【0416】
図14(a)に上面WCをつけない部分は密閉容器内ではないが、
図14(a)に示す横断側面WS3に受け止められた全ての鋼球は隣の鋼球と離れることないので、上面WCをつけない
図14(a)に示す横断流路は液相であって、容器内である。容器内で液相であるから、強制的に鋼球の下降を止めた箇所より上の鋼球の全ては静止する。下降を再開すると全ての鋼球は下降する。横断流路の末端部が排出口である。
【0417】
横断側面WS3は、
図5(a)に図示する減速弁BCが排出口HSから零れ落ちる鋼球SAを抵抗するように、横長流路から零れ落ちる鋼球SAに抵抗する。横長流路の末端部の排出口HSから排出される先頭の鋼球SA1を低速になり、後続する鋼球は更に低速になる。隅角部RCを通過する鋼球は更にもっと低速なる。
【0418】
横断流路末端部での鋼球の排出速度を小さくすれば、横断流路末端部から遠い所の隅角部で急激に流路断面積を減少させる必要はないが、横断流路末端部で鋼球の排出速度を如何に小さくためならば、急激に流路断面積を減少させる隅角部も必要になる。
しかし、
図14(a)減速器に関しては、排出口HSから遠い隅角部の流路幅GLを出来るだけ小さくしなくても、底面WF全体の勾配を小さくすればよい。
【0419】
図14(a)の紙面上全体は横長流路であって、入り口INから出口OUTへ下り勾配である。
図14(a)の紙面全体を回転させて側面WS2を側面WS1より高くなるようにすると横長流路は斜め流路になる。鋼球の塊りは側面WS1に向かって下降して1列流がおきる。鋼球の塊りが
図14(a)において横長流路に設置される横断側面WS3に向かって下降して1列流が起きると同様である。
【0420】
図15(a)に示す中心線Zは、
図14(a)に示す直線RCの延長線上の点PZを通る鉛直線である。
図14(a)の横長流路において、底面WF上の交点P1は底面WF上の交点P2より低い位置にある。直線RCは「底面WF上の側面WS1と横断側面WS3との交点P1」と「底面WF上の側面WS2と破線の上面WCとの交点P2」を通って、水平線ではない。点PZを通り放射状に存在する図示しない数多くの直線で、底面WF上の上面WCと底面WF上の横断側面WS3を横切る直線も水平ではない。
【0421】
図15(a)に示す鉛直線Zを軸に
図14(a)の横長流路と横断流路を巻き付けると、
図15(a)の姿図に示す螺旋流路WWFが出来上がる。この勾配が小さく十分に長い螺旋状の流路は例えば
図1の容器の排出口に連結される。
【0422】
図15(b)は上から覗いた平面図で、側面WS2と上面WCは鉛直線Zを中心軸とする円柱PZの外面WWC上にあって、側面WS1と横断側面WS3は鉛直線Zを中心軸とする
図15(b)に示す円筒PPZの内面WWS上にある。
【0423】
螺旋流路の底面WWFは斜め流路であって、
図14(a)に破線で示す上面WCと横断側面WS3との間の流路は、流路幅が次第に減少する流路(以後、先細りの流路、先細りの1列路と言う。)で、底面WWFは先細りの流路である。
先細り流路が横長流路である場合崩れないアーチや楔2球が起きるが、斜め流路と縦長流路では起きないようにできる。
【0424】
図15(c)は中心軸Zを通る鉛直面で切断した断面図で、円柱PZの外面WWCと内面WWSの間に挟まれる流路底面WWFの断面図である。流路底面WWFは鉛直線Zに直行する水平線X―X上になく、
図15(a)においては、外面WWC側が低く、内面WWS側が高いが、
図15(c)においては、外面WWC側が高く、内面WWS側が低く変更される。
【0425】
下降する鋼球の塊りは中心軸Zに向かう渦流に巻き込まれる。最後に1列流になるまでの流路の長さは長く流路は高さ短い。
螺旋流路WWFの勾配を小さくして且つ十分に長くすると、鋼球を長時間にわたって排出し続ける。しかも
図14の長い横断流路WS3と同様の効果が得られる。
【0426】
長い流路底面WWFはドリル状であって、流路底面WWFは何重にも重なり、上の流路底面WWFの裏面は下の流路底面WWFの上面になる。流路高GHと流路幅GLが次第に減少する先細りの流路にすることもでき、螺旋流路WWFの勾配を小さく十分に長くして鋼球を長時間にわたって排出し続けることもできる。
【0427】
流路高GHと流路幅GLが次第に減少する流路は先細りの流路であって、楔2球が出来そうで出来ない状態であればあるほど、鋼球の流れに大きな抵抗がかかる。
長い螺旋流路WWFにおいて、
図14(b1)、
図14(b2)に示す楔2球が出来る範囲を長くして、上の流路底面WWFの裏面が鋼球に接触しても、楔2球が崩れるようにする。
【0428】
粉粒体同志と異なり鋼球同志は噛み合うことなく容器の中で押し合って塊りになる。数多くの粉粒体が集まって出来上がる塊は大きくなっても崩れない。鋼球の塊はたった2~5個の排出口を塞ぎ、それ以上大きな塊は崩れる。数少ない鋼球で出来上がる塊りが小さな排出口から排出される。
【0429】
たった2個の排出口を塞ぐ現象は鋼球であるが故の特殊な現象である。鋼球同志は接点で滑りあい、縦に並んだり横に並んだりする。数少ない鋼球で出来上がる塊りは並び代わりながら狭い流路を通過するが、数少ない粉粒体で出来上がる塊りは粉粒体同志が滑りあうことも並び代わることもなく、狭い流路を通過できない。
【0430】
鋼球の大きさは粉粒体粒子と同じ大きさにすると、或いは粉粒体粒子を球体にすると、どちらも小さな排出口から排出され続けるが、重い鋼球のほうがより小さな排出口から排出され続けることが出来る。また、一般に光るものの物性は固く摩擦係数が小さい。
【0431】
図16は、横長流路の先細り1列路において、鋼球の流れが止まる状態の説明図である。
図16(a)は平面図、
図16(b)は断面図で、
図16(a)に示すb-b矢視図である。
図16(a)に示すa―aは排出口で、流路幅GLが鋼球直径の1.1倍の箇所で1個の鋼球SAが通過できて楔2球ができない箇所である。
図16(a)に示すb―bは、流路幅GLが鋼球直径の2.1倍の箇所で2個の鋼球SAが底面の中心線Zに直角に横に並んで通過できて楔2球ができない箇所である。
【0432】
両側の側壁がほぼ平行で壁の交差角度ΘWSが略ゼロでない限り、先細りの流路は如何に長くても楔2球や楔3球ができる箇所が必ずある。排出口に近いルート部で通過する鋼球の数を減らすために、流路幅GLを減少すると楔2球や楔3球が起こりうる。
【0433】
b―bより下の流路幅GLが鋼球直径の1.9倍の箇所は2個の鋼球SAが底面の中心線Zに直角に横に並んで通過できなくて楔2球ができる箇所である。
鋼球直径の2.1倍の箇所は2個の鋼球SAが通過できて楔3球ができない箇所であって、c―cで示す2.9倍の箇所は3個の鋼球SAが底面の中心線Zに直角に横に並んで通過できなくて楔3球ができる箇所である。
【0434】
流路幅GLが鋼球直径の整数倍より整数倍より僅かに小さい値ではなく僅かに大きい流路は鋼球SAが詰まることなく通過できる流路であるが、この整数倍は1倍と2倍だけに限られる。
例えば、d-d示す流路幅が鋼球直径の3.1倍の箇所は3個の鋼球SAが通過できて4個の崩れないアーチができる箇所である。2.9倍の箇所は楔3球ができる箇所である。流路幅の整数倍の整数が3以上の場合、その整数以上の個数の鋼球SAが崩れないアーチを作る。
【0435】
互いに接触しあった2個の鋼球SA1とSA2は、流路幅が鋼球直径の1.1倍である箇所a-aから1.1倍よりより大きいある値の箇所al-alまでの範囲で楔2球にならない。箇所al-alから流路幅が鋼球直径の2倍より僅かに小さい箇所bl-blまでの範囲で楔2球になりえる。
【0436】
排出口HSから楔2球ができない範囲の後ろに楔2球ができる範囲があって。その後ろに3個の崩れないアーチができない範囲であって、その後ろに3個の崩れないアーチができる範囲がある。
【0437】
互いに接触しあった2個の鋼球SA1とSA2が流路の中心線Zに略直角に並ぶときより、直角より僅かに傾いて2個の鋼球SA1とSA2が僅かに前後するときのほうが、小さい流路幅を通過できる。大きい流路幅では後者の方が楔2球になりにくい。
【0438】
互いに接触しあった2個の鋼球SA1とSA2が楔2球になるかならないかは、2個の鋼球が中心線Zに直角より傾いて前後する度合と、2個の鋼球を支持する両側の壁の交差角度ΘWSの度合いとに関係する。
【0439】
互いに接触しあった2個の鋼球SA1とSA2には、排出口に至る先細りの流路において、楔2球や3個の崩れないアーチができる箇所を、ならない度合いで通過するものと、なる度合いのまま通過できないものとがあって、先細りの流路が十分に長ければ、楔2球ができない範囲において、楔2球になる度合いから楔2球にならない度合いに変化して、楔2球ができる範囲に至って楔2球にならずに通過できる。
【0440】
先細り流路が1列路である場合、崩れないアーチや楔2球が起きるが、斜め流路と縦長流路では起きないようにできる。
先細り1列路が横長流路ではなく斜め流路や縦長流路であれば、楔2球ができる範囲において、楔2球になる度合いから楔2球にならない度合いに変化しやすく、流路が長ければ楔2球にならずに通過できる。
【0441】
図16において、流路の中心線Zに直角な底面WF上の線が水平でないとき、3個の鋼球が中心線Zに直角に横に並んで通過するとき、楔3球ができるところでも、横1列から斜め1列(鋼球SAの降下方向と並ぶ方向が直角ではない状態を斜めと言う。)に並び変わって通過する。
【0442】
流路の中心線Zに直角な底面上の線が水平のとき、楔2球にならなくも、並び変わって楔2球になる可能性がある。水平から大きく傾き鉛直に近づくほど、一度楔2球にならないようになればそのままで、楔2球に戻らない。
底面上の流路の中心線Zに直角な線が水平から大きく傾いて鉛直に近い場合、楔2球が出来る範囲の前にある出来ない範囲が十分に長ければ、楔2球にならずに楔2球が出来る範囲を通過する。
【0443】
図16、
図17は、下に行くほど流路の幅が狭くなる溝に沿って下降する複数の鋼球の動作説明平面図である。両側面WSは下に行くほど互いに接近していく。
両側面WSに沿って1列に並んで下降する複数の鋼球は、互いに制動しあっていて、両側面WSに沿わない鋼球から押圧されることもあって自転しにくく、滑りながら底面WFと側面WSに沿って下降する。
【0444】
両側面WSに沿って1列に並び略動かない複数の鋼球に隣接する鋼球は動きにくく、溝中心Z付近の鋼球だけが動きやすくなる。排出口HS近傍の容器の中心軸周辺の鋼球から先に下降する。
【0445】
図17(a)に示す先細り流路は1列路であり、両側面WSと底面WFとの間の角度Θfsが鈍角である流路であって、以後、鈍角流路と言う。また、底面WFとの間の角度Θfsが鈍角である側面を以後、鈍角斜面と言う。破線は両側面WSと底面WFとが交わる境界線である。
【0446】
鈍角斜面の効果は3つあって、鈍角流路の底面の流路幅が2個の鋼球が通過できない流路幅であっても、鋼球が鈍角斜面WSに沿って駆け上がって通過できる幅になる。このように流路幅が見掛け以上である効果と、鈍角斜面WSを沿って駆け上がった鋼球が斜面を降りて横1列に並んだ2つの鋼球が側1列に並び変わる効果がある。
【0447】
また、側面WSが底面WFに垂直である場合、側面WSに押圧される力の作用線は底面WFに平行で、隣接する鋼球に押される力の作用線と同一平面上にあるが、鈍角斜面WSを沿って駆け上がった鋼球は斜面に垂直に押圧力を受けて、隣接する鋼球と互いに押し合う力と同一平面上になく、押し合う力が弱くなる効果がある。
【0448】
図17(b)に破線で示す上面WCを底面WFに向かい合って設けた場合、両側面WSと 上面WCとの間の角度は鋭角になる。鋼球は鈍角斜面WSに沿って駆け上がることが出来るが、上面WCで制限される。鋭角部分は2面に支持されて留まりやすい。
【0449】
両端の支持球の片方の鋼球は上面WCと鈍角斜面WSとに拘束されて支持球になるが、他方の鋼球は鈍角斜面WSと底面WFとに拘束されず支持球にならない。上面をつけた鈍角流路は楔2球ができるところでも楔2球ができない。
【0450】
底面WFの中心線Zに直角に横1列に並んで下降する鋼球が通れない流路幅の箇所(崩れないアーチや楔2球ができる流路幅の箇所)を通過しようとするとき、角度Θfsが直角である場合と異なり、底面WFと側面WSに同時に沿って下降する鋼球が底面WFから離れて鈍角斜面WSに沿って浮き上がる。
【0451】
図17(b)の断面図は
図17(a)に示すb-b矢視で、
図17(a)において、横1列に並んだ3個の鋼球からなるアーチa1が先細りの流路を下降してアーチa2になる場合、
図17(b)に示すように、アーチa2の側面WSに沿う支持球は側面WSに沿って浮き上がって、アーチa2は楔3球にならない。
【0452】
鈍角流路の両側面WSに沿う鋼球は崩れないアーチや楔2球の支持球にならない。
図17(b)に示すように、支持球が側面WSから受ける力の作用線Fwsと隣接する鋼球と作用しあう力の作用線Fsaとが一直線上になく、アーチや楔2球を維持する力が弱い。
【0453】
3個のアーチa1の2個の鋼球は底面上に残って、1個の鋼球は浮き上がって2個の鋼球と高さに差ができる。浮き上がった1個の鋼球は鈍角斜面WSを下降して2個の鋼球の前か後ろに回り込む。横1列に並ぶ3個が2個になって、鋼球の塊りは数を減らしながら下降する。
鈍角流路において、横1列に並んだ複数の鋼球に高さの違いが生まれて、側面WSの上方に浮き上がった鋼球が側面WSの下方に沿う列に割り込んで、側1列に並び変わる。
【0454】
図17(c)に示すように、鈍角流路は流路高さGHが鋼球直径以上であって、流路幅は底面WFの幅GLF以上で上面WCの幅GLC以下である。
底面WFが急勾配になるほど、鋼球は底面WFから離れて側面WSに沿って上方に浮き上がり鈍角斜面WSと上面WCとに同時に支持され、楔2球の片方の支持球になる。止まってしまって楔2球になる。
【0455】
底面WFが緩い勾配であるとき、横1列から側1列に並び変わる途中において、2個の鋼球のうちの1個の鋼球は、側面WSに沿って高く浮き上がらず、上面WCに接触する前に横1列から側1列に並び変わる。両側面WSが鈍角斜面でなくても片面だけが鈍角斜面であれば、横1列から側1列に並び変わる。
【0456】
同様に、
図17(c)の断面図は
図17(a)に示すc-c矢視で、2個の鋼球が底面WFの中心軸Zと直角に横1列に並んで下降するとき、2個の鋼球の何れか片方は浮き上がって、他方の鋼球は底面上に残って、2個の鋼球の高さに差ができる。浮き上がった鋼球は側面に沿って下降して他方の鋼球の前か後ろに回り込む。
横1列に並んで下降する2個の鋼球は側1列に並び代わり、鋼球を1個ずつ排出する排出口に向かう。
【0457】
鈍角流路において、底面WFの中心軸Zと直角に横1列に並んだまま下降する2個の鋼球が上面WCに同時に当接すると下降できなくなる。2個の鋼球が同時ではなく、2個の鋼球の片方が底面WFに向かって降りて2個の鋼球に前後の順位が出来れば、2個の鋼球は楔2球にならない。
また、
図17(c)に示すように破線で示す上面WCと側面WS2に当接する鋼球は縦に並んだ楔2球の支持球になることもある。
【0458】
図17(d)は底面WFが中心軸Zを軸に回転したときの断面図で、X-Xは水平線である。底面WFと側面WS2の2つの斜面からなる流路(以後、V型流路と言う。)は断面がV型で、排出口に向かう鋼球の塊りは側面WS1から離れて。鋼球の塊りと側面WS1との間の隙間は排出口に向かうほど大きくなり、底面WFと側面WS2に沿って下降する。
【0459】
底面WFと側面WS2からなるV型流路では、底面WF上の鋼球も側面WS2上の鋼球もV型断面の底WFVに向かって下降する。V型流路は流路幅がゼロでも、V型流路の2面は互いに向き合って平行で、鋼球の塊りの両側を支持する壁はなく、楔2球も楔3球もできない。
図14の隅角部に連続する上面のない横断流路はV型流路が望ましい。
【0460】
V型流路の片方の斜面だけが鉛直に近いより、両方の斜面が鉛直に近いほうが底面に沿って横1列に並ぶ複数の鋼球は、側面WS2に沿って側1列に並び変わりやすい。
また、底面WFと側面WS2となす角度Θfsが直角である場合のほうが、鈍角である場合より、横1列から側1列に並び変わりやすい。
【0461】
V型流路では鋼球の塊りの大きさと無関係に、楔2球も楔3球もできずに、側1列に並び代わって 鋼球は「鋼球を1個ずつ排出する排出口」に向かう。
【0462】
底面WFを中心軸Zを軸に更に回転して底面WFと上面WCとが鉛直面になると、流路は縦長流路になる。入口で
図17(d)に示すV型流路であって出口で縦長流路になる流路においては、側1列に並び代わりやすくなり、 鋼球は「鋼球を1個ずつ排出する排出口」に向かう。
【0463】
縦長流路において、後ろの鋼球が前の鋼球の下に潜り込んだり上に乗り上げたりする。1列流には積み上がった鋼球の高さが変動する場所と、落ちた鋼球が上昇することはない場所とがあって、坂の勾配によってそれらの範囲は広がったり狭くなったりする。
【0464】
縦長流路の排出口近傍においては、積み上がった鋼球の高さが次第に低くなる山の裾野の形状になる。鋼球の排出が長く継続すると定常状態になって、裾野の形状は概ね一定する。
縦長流路の鋼球の排出が停止すると、前の停止した鋼球の下に潜り込んだり上に乗り上げたりするので裾野の形は一変する。
【0465】
鋼球の排出が停止するときもしないときも、定常状態であるときも定常状態でないときも裾野の形は僅かながらでも変動し、縦長流路に上面WCをつけた場合、上面WCに鋼球が触れないようにしなければ、楔2球が出来ないようにすることはできない。鋼球が触れない上面WCは無いに等しい。
【0466】
鋼球の流速は流路断面積の減少によって小さくなるが、上面WCを取り付けないとき、流路断面積は無限大であって流路断面積の減少はなく、1列流が止まることはない。楔2球は起きない。縦長流路に上面WCを取り付けて鋼球の流速を小さくしようとしないほうが良い。
【0467】
V型の流路に限らず流路出口近傍で側1列に並ぶようになるには流路が長くなければならない。それだけではなく、出口で側1列に並ぶ鋼球の下降速度は遅くなければならない。
「鋼球を1個ずつ排出する出口」を塞いだ瞬間に、流路内に残った全ての鋼球が身動きできない状態でなく、長く動き続けるならば、流路入口の多くの鋼球の通過速度を減じる効果は大きくない。入口以降の流路はなくても同じである。排出口が入口INであるのとほとんど差がない。
【0468】
以上の1列流路は1つの底面WF上に設けられ、1列流路と1列流路を除く底面WFとに段差がない。
図18に示す流路は、高さの異なる2つの底面WFと底面WFMとを備え、底面WFM は「先細りの横長流路の片方の側壁WS2」に沿って設けられ、底面WFより低い別の底面であって、鋼球SAが1個だけ通過できる溝M(以後、1列溝と言う。)である。
【0469】
溝Mbは断面を
図18(b)示すように、底面WFの切り欠き部分で、切り欠きの幅GLMは排出口HSに近づくほど増加する。溝Mbには底がない。
溝Mcは断面を
図18(c)に示すように溝幅GLが一定の矩形断面の溝で、溝の底の深さが排出口HSに近づくほど増加する。1列溝Mcの底WFMと1列溝Mを除く底面WFとに段差が出来る。
【0470】
【0471】
境界線WM は1列溝Mと1列溝Mを除く底面WFとの境界線である。境界線WMbは底面WWFと1列溝Mbとの境界線で、境界線WMcは底面WWFと1列溝Mcとの境界線である。
図17の1列路においても、側面WS2に沿って駆け上がる鋼球と、底面WFに沿って下降する鋼球とに段差ができるが、
図18の1列路においては、鋼球が下降する通路は別々であって、別々の通路との間には段差がある。
【0472】
図18(a)に示すように、1列溝Mを除く底面WFは先細りの横長流路で、略三角形である。入り口IN側が三角形の底辺で流路幅GLが最も大きく、流路出口OUT側が三角形の頂点で流路幅GLがゼロになる。
先細りの底面WFは下に行くほど鋼球を収容する断面積を小さくなるので、底面WF 上の鋼球SAの数は下に行くに従い減少して、流路出口OUTではゼロになる。
【0473】
底面WF上の鋼球が下降しながら、溝Mに沿って下降する鋼球の列(1列流)に割り込んでいくことによって、底面WF上に乗る鋼球の数は少なくなる。
1列溝Mに沿わない鋼球SAは1段高い底面WFから1段低い溝Mに落下して溝M に沿って下降する1列流に呑み込まれる。
【0474】
図18(a)に示す溝Mbは三角形の底面WFを途中から切り取ってできる三角形の穴であって、三角形の穴の片方の辺WMは底面WFの切り口で、他方の辺は側面WS2である。
溝Mbの流路入り口INに近いほうが三角形の頂点で、流路出口OUT三角形の底辺で溝Mの幅GLMは最も広く、鋼球直径DSAより僅かに大きい。溝流路幅GLMは始点から終点まで流路幅が同じではなく、ゼロから次第に増加して、三角形の穴は流路出口OUTで鋼球SAが下に1個だけ抜け落ちる幅GLMになる。
【0475】
三角形の穴の幅GLMは流路出口OUTに近づくほど大きくなるので、側面WS2に沿って下降する鋼球は、三角形の穴の片方の辺の底面Wの切り口WMと他方の辺の側面WS2とに支持されながら、出口OUTに近づくほど、より深く三角形の穴に嵌まり込んで沈んでいく。
流路出口OUTで片方の辺の底面Wの切り口WMに支持されなくなった鋼球は、底面WFから下に落ちる。
【0476】
断面
図18(b2)に示すように流路出口OUT近傍では、底面WF上にある鋼球SA2が側面WS1に押し出されて、底面WFの切り口WMを中心に公転しながら溝Wbに沿って下降して1列流の上に移動する。
図18(b)、
図18(c)に示すように、上面WCRは底面WFの切り口WMを中心とする円弧で、上面WCに連続するようにする。
【0477】
流路の流路幅が鋼球直径DSAの2.1倍であれば、2個の鋼球SAが詰まることなく通過できる。2個の鋼球SAが詰まることなく通過できる場所においては両側の側面WSは2個の鋼球SAを支持しない。
図18の先細り流路の上から見た流路幅が小さく、2個の鋼球SA通過できないように見える場所において、流路は高さの異なる2つの底面を備えて、1列溝Mの深さを大きくすることで流路断面積を大きくすることが出来る。2個の鋼球SAが詰まることなく通過できる場所にすることが出来る。
【0478】
溝流路幅GLMがゼロから次第に増加して、鋼球SAが下に1個だけ抜け落ちない範囲において、上の段の流路幅をGL1、段差をGLH、下の段の流路幅をGL2とし、鋼球直径を1とすると、常にGL1+GL2+GLH=2.1であれば、2個の鋼球SAが詰まることなく通過できる。GL2=1ゆえにGL1+GLH=1.1であればよい。
【0479】
図18(a)に破線で示すように溝流路幅GLMが一定でGL2=1である場合、GL1+GLH=2.1 であれば、2個の鋼球SAが詰まることなく通過できる。
何れの場合もGL1が次第に減少しGLHが次第に増加するようにする。下の段の流路は鋼球SAが詰まることなく必ず通過する流路であれば楔2球は出来ない。
【0480】
3個の鋼球SAが通過できて4個の崩れないアーチができない流路幅は鋼球直径の3.1倍の流路であって、GL1+GLH=3.1であれば、2個の鋼球SAが詰まることなく通過できる。段差は必ずしも底面に垂直な面に限らず底面に斜めの斜面も含まれる。
【0481】
底面WFが次第に狭くなっていくと溝Mは次第に深くなる。1個の鋼球が底面WFに辛うじて乗り、1個の鋼球が1列溝Mに嵌まり込んでいる断面においては、流路断面積は2個の鋼球が縦1列に並んで通過できるときの断面積になる。
図18(b)、
図18(c)に示す流路断面は、実線で示す鋼球SAfと鋼球SAmとを横1列或いは縦1列に並んだ状態で余裕をもって収容している。
【0482】
図18(b)、
図18(c)において、溝Mに取り付けた上面WCは溝M内の鋼球の上下動を阻止しない。溝M内で縦に楔2球や楔3球にならない。破線で示す円は鋼球SAfと鋼球Samが横1列或いは縦1列に並ばないときの状態を示し、流路断面は2つの鋼球SAfと鋼球SAmとを更に余裕をもって収容する。
【0483】
流路幅が鋼球直径の2.1倍であっても、0.1倍は隙間にならない。流路内は常に流路口を塞いだ時の詰込み状態であって、
図18に示す流路は、楔2球が出来ることなく、横1列に並ぶ2個の鋼球を縦1列に並び変える流路である。
【0484】
底面WFが緩い勾配であるとき、段差に上の鋼球と下の鋼球とが横1列から側1列に並び変わる途中において、それぞれの底面から浮き上がらずに下降し、上面WCに接触しない。鋼球は上面WCに接触せず上面から押圧力を受けないから摩擦力は働かない。摩擦力によって鋼球の速度が遅くなる効果はない。鋼球が接触しない上面は不要になる。
【0485】
図18(d)、
図18(e)は
図18(a)において中心線Zを通る鉛直面での切断した側面断面図である。
図18(d)、
図18(e)はそれぞれ
図18(b)、
図18(c)の出口OUT付近の流路側面図で、2個の鋼球が横1列から縦1列に並び変わったあとに、縦長流路において楔2球ならないことについて説明する。X-Xは水平面を示す。
【0486】
図18(d1)において縦長流路は略直角に曲げられ、上面WCrは溝M末端部Meを中心として半径が鋼球直径の2倍を僅かに上回る大きさの円弧で、上面WCに連続する。出口OUTで縦長流路断面積は2個の鋼球が余裕をもって通過出来る大きさである。
【0487】
図18(d)において、底面WF上の鋼球SAfが下降しながら、溝Mに沿って下降する鋼球SAmの列(1列流)に割り込んでいくとき、鋼球SAfが鋼球SAmの上に乗り上げるときも、鋼球SAmが鋼球SAfの下に潜り込んで鋼球SAfを持ち上げるときもあるが、2個の鋼球SAfと鋼球Samは円弧の上面WCrに接触しても、楔2球にならない。
【0488】
1列流の全ての鋼球がゆっくりと下降し、溝底面に沿って整然と連鎖するときは、1列流に割り込もうとして下降する鋼球は上昇することがないが、排出口HS近傍で鋼球の加速が大きすぎると、1列流の整列が乱れる。
上の底面WFから溝Mの底に向かって下降する鋼球や、溝M内の鋼球でも「溝底面から浮き上がっている鋼球」は、後続の鋼球に持ち上げられれば上昇することがある。
【0489】
図18(d2)に示すように、円弧の上面WCrが途中から直線部WClになって、流路断面積が2個の鋼球が通過できない大きさに減少するとき、後続の鋼球に持ち上げられた鋼球は円弧の上面WCに支持されて楔2球の支持球になる。後続の鋼球も止まってしまう。
【0490】
しかし、両側面の交差角度Θwsが小さい先細り流路では、
図18(a)において、上の底面WFから溝Mの底に向かって下降する鋼球は底面WFの先端部に至る前に落下し、鋼球SA2のように、後続のSA3の前に降りる鋼球は存在しない。鋼球SA4のように、後続のSA3の後ろに降りる鋼球が存在する。
【0491】
流路出口OUT近傍で辛うじて底面WF上にある鋼球が、側面WS1に押し出されて溝Mに並ぶ鋼球の列に割り込むとき、
図18(a)に示すように溝Mに沿って下降する鋼球は1列に並んで繋がっているが、流路出口OUTから出ようとする先頭の鋼球はそれに連続する鋼球から離れて自由に動き、それに連続する鋼球との間は鋼球が割り込みやすい。またそれに連続する鋼球とその次に連続する鋼球の間も割り込みやすい。
【0492】
鋼球SA4が後続の鋼球SA5の前に下降して、鋼球SA3は鋼球SA4から離れる。鋼球SA4が後続の鋼球SA5に押し上げられたままで溝Mに落ちないまま移動するとしても、円弧の上面WCrが途中から直線部WClになっている位置までの距離は長く、楔2球になる度合いが小さくなって、直線部WClに沿って、斜め1列に並んだ鋼球が側1列に並び変わる。鋼球が1個ずつ排出される。
【0493】
図18(e)においては、出口OUTにおいて流路断面積や排出口の大きさを鋼球1個通過できて2個通過できない大きさにしない。排出口HSの真上の位置に上面WCに取り付けた突起WCCで流路断面積を鋼球が1個ずつ排出する大きさに減じても、排出する鋼球が触れることがない突起WCCに意味がない。
【0494】
図18(e)において、勾配のある溝Mは、末端部Meを過ぎて「溝Mの底面MWFが水平である溝MM」に接続される。
1列流の先頭の鋼球SAmは自ら前進する力はなく、後ろから多くの鋼球によって押されて「底面MWFが水平である溝MM」の末端部MMeから落下する。
【0495】
鋼球SAmは十分に低速であり、排出口HSの位置にある鋼球を含めて「末端部MMeから末端部Meの間に乗っている全ての鋼球」とそれに連続する1列流の鋼球は、隙間を開けずに連鎖し同じ速度で移動する。鋼球SAmを低速にすることによって、容器内の全ての鋼球がそれより低速にすることが出来る。
【0496】
図19に、半球体或いは円錐形のルート部に1列溝を設けた実施例を示す。
図19(a)は展開図の1例で、「円の一部を切り取った残りの部分の4分の3円RO」の2つの切断線r1,r2は円の中心Oを通過し、切断線r1とr2を接合して円錐形のルートが形成される。円錐形の内側はルート部の底面WFである。
図19(b)は円錐形のルートを上から見た平面図である。
【0497】
図19(a)に実線で示す半円形の切断線WSOは切断線r2に連続する。破線で示す折り曲げ線r3は半円WSOに連続し、折り曲げ線r3で切断線r2と切断線WSOとを上に折り曲げると、破線r3と切断線r2に囲まれる3角形部分が底面WFに立ち上がって側面WS2になる。
【0498】
図18(a)において直線WS1とWS2とを接合すると円錐形のルートが形成される。
図19(a)の展開図は
図18(a)と同じであって、
図18(a)の側面WS1と側面WS2は
図19(a)の側面WS2の表裏になる。
【0499】
上記3角形部分に取り付く半円部WSOは切断線WSOから切り離されるが、切り離された半円部WSOの外延部を無理矢理に切断線WSOに接合すると、
図19(b)に示すように半円部WSO は略半球部WSOになり3角形部分は中心Oの近づくほど湾曲する。側面WS2は略半球部WSOを含む。
【0500】
側面WS1が立ち上がって底面WFに3角形の穴Mbができる。穴Mbは円の中心Oに近づくほど流路幅GLMが大きくなる3角形である。
半円部WSOが立ち上がって底面WFに半円の穴WSOが開く。半円の穴WSOは排出口HSで3角形の穴Mbの末端部で、3角形の溝Mは半円の穴WSOを含む。
【0501】
図18(a)においても三角形の穴の片方の辺WMは底面WFの切り口で、
図19(a)において直線r1である。
図18(a)において三角形の穴の他方の辺の側面WS2は、
図19(b)において立ち上がった
底面WFの裏面である。
図19(a)において
立ち上がった底面WFの表面は
図18(a)において側面WS1である。
【0502】
側面WSは側面WSに沿う鋼球を支持球にする働きがあって、1列路において鋼球の移動を阻止する側面が2つあると、2個の鋼球がそれぞれの側面の支持されて1列路において楔2球や3個以上の鋼球からなる崩れないアーチになる。
図19において、側面WS2の裏表は対面しあう2つの側面で、3個以上の鋼球からなる崩れないアーチの両端の支持球は側面WS2を間に挟んで隣接している。
【0503】
図18(a)においての溝Mと側壁WS1との間の底面WFが、
図19(a)においては3角形の穴Mbがない底面WFの部分で、
図18(a)においてより大幅に広い。
図19(a)においては側面WS2の裏表は
図18(a)において対面しあう2つの側面で、側面WS2の裏表は崩れないアーチを支持しない。
【0504】
図19(c)は姿図で、ルート部内に、
図7(b)に示した挿入体BBを挿入する。挿入体BBは排出口周辺の流路高GHを1個の鋼球が辛うじて通過できる1列路にする。
図19(a)において三角形の穴は1列溝であって、底面WFの切り口の段差は1列溝に沿う鋼球が支持球にならないようにする。
【0505】
側面WS2は中心Oに近づくほど低くなる。略半球部WSOの外延部も側面WS2の一部であって、中心Oに近づくほど低くなる。
図19(b)に示す図中矢印方向は鋼球の下降方向を示し、側壁WS2を境にして側壁WS2表面に沿う鋼球と側壁WS2裏面に沿う鋼球とは隔離され、楔2球にならない。
鋼球は側壁WS2に沿って下降し、円WS略半球部WSO の外延部に沿って渦を巻きながら排出口HSの穴に入る。
【0506】
図19(c)に示す挿入体BBを省略しても、
図19に示す排出口HSの直径を大きくして、
図14に示す螺旋流路を連続すると、鋼球を止まることなく排出し続ける排出口の直径を鋼球直径の(1+ルート2)倍より小さくすることが出来る。
【0507】
図7(c)において円の中心Oに集まってできるリングの4個の鋼球は、
図19(c)に示す排出口HSから出る螺旋状の渦であって、渦が始まる始点の鋼球と、1周回った位置の鋼球とで高さが違う。4個の鋼球の何れもが同じ高さに揃うことなく、終点と始点が繋がってリングになることはない。
リングの1個の鋼球が排出口HSから落下するから4個の鋼球からなるリングは出来ない。
【0508】
図20は、先細り流路内の鋼球の動作説明図である。
図20(a)において横断側面WS3に沿って下降する鋼球の動作説明図である。
横断側面WS3に近い鋼球ほど横断側面WS3の抵抗が影響して低速で下降し、横断側面WS3から離れるほどほど高速になる。横断側面WS3に近い鋼球は塊りとなって横断側面WS3に沿って形を崩れずそのままの形を保って下降し、横断側面WS3から遠い表層面の鋼球は「形を保って下降する部分」の上を滑走する。
図20(b)は表層面の鋼球の動作説明図である。
【0509】
側面WS1と側面WS2は平行で、側面WS1と横断側面WS3 の間の流路は先細りの1列路である。底面WFと「それに対面しそれと平行な上面WC」との間は1個の鋼球が辛うじて通過する。側面WS1と側面WS2と横断側面WS3は底面WFに垂直である。
【0510】
排出口HSは側面WS1の末端部に設けられ、鋼球は側面WS1と平行に降下して、その後、降下方向は横断側面WS3に沿う方向に変わる。
図20(a1)、
図20(a2)
図20(a3)はそれぞれ、側面WS1と横断側面WS3 の間の交差角度Θwsが60度以下のとき、60度のとき、60度以上の90度に近いときの鋼球の配列図である。
【0511】
側面WSは側面WSに沿う鋼球を支持球にする働きがあって、鋼球の降下方向の移動を阻止する側面が2つあると、それぞれの側面の支持される2個の鋼球が1列路において楔2球や3個以上の鋼球からなる崩れないアーチになる。
【0512】
図20(a1)において3個の鋼球からなる崩れないアーチができる。
図20(a2)において4個の鋼球からなる崩れないアーチができる。
図20(a3)において、5個の鋼球からなる崩れないアーチができる。破線で示す鋼球は排出口から出る鋼球で、排出口から出られない鋼球を実線で示す。
【0513】
上記崩れないアーチの片方で側面WS1に沿う支持球が留まっている部分を側面WS1から切り取って排出口HSを大きくする。側面WS1を切り取って大きくなった排出口の大きさは
図20(a1)において鋼球直径の3倍で3DSAで、
図20(a2)において4DSAで、
図20(a3)において5DSAである。それぞれ側面WS1の末端と横断側面WS3との間の最短距離である。
【0514】
側面WS1を切り取ると、上記崩れないアーチの側面WS1に沿う支持球が留まらず降下し、上記崩れないアーチは崩れ落ちる。それぞれの円R3,R4,R5は側面WS1の末端O1を中心にして横断側面WS3に接している。排出口HSより下の流路幅は上記最短距離以上の大きさで、全鋼球は途中で止まらず排出される。
【0515】
鋼球の配列は、いずれの場合も排出口HSに近いところが疎らで、交差角度Θwsが小さいときほど顕著に疎らになる。また、側面WS1と横断側面WS3のそれぞれに沿って1列流或いは2段流(以後、1列流の上に1列流が載って出来る2段の塊りを2段流という。1列流として横断側面WS3に沿って下降する。)が認められる。
【0516】
1列流或いは2段流は、交差角度Θwsが大きいとき、2列流の上に1列流が載って3段の塊りが出来、3段の塊りの上に1列流が載って4段の塊りができる。側面WS1と横断側面WS3との交差角度Θwsが大きいときほど、1列流が何層も積み上がった塊りが横断側面WS3に沿って下降する。
【0517】
横断側面WS3に沿う1列流の上に1列流が載って2段流が認められるが、交差角度Θwsが60度のとき、「横断側面WS3に沿って互いに離れず接しあう2つの鋼球SA1とSA3」と、「その2つの鋼球の上に載ってその2つの鋼球の間に嵌まり込んだ鋼球SA1」とがあって、3つの鋼球のそれぞれの中心を結んで正3角形ができる。正3角形はそれ以上小さくならず、形を崩さない。
【0518】
交差角度Θwsが60度のとき、まばら所はなく至る所上記正3角形ができ、全鋼球は整然と整列する。
交差角度Θwsが60度以下のとき横断側面WS3に沿う2段流は、横断側面WS3に沿う鋼球は隣の鋼球と離れてまばらになる。代わりに側面WS1に沿う鋼球は隣の鋼球と接触し合うようになり、4つの鋼球のそれぞれの中心を結んで正方形ができる。鋼球は排出口HSに近い所で鋼球は整列を乱し遠い所で整列する。
【0519】
交差角度Θwsが60度以上のとき、横断側面WS3に沿う正3角形が重なり合う2段流は維持され、側面WS1に沿う鋼球は疎らに配される。交差角度Θwsが90度に近づくと、側面WS1に沿う鋼球は疎らな範囲が広がり、3つの鋼球のそれぞれの中心を結んで正3角形ができる範囲が次第に小さくなる。
【0520】
交差角度Θwsに関係なく、何れの場合も、側面WS1に沿って降下する鋼球が、横断側面WS3に沿う鋼球の塊りの表層面の上に載って降下する。
【0521】
図20(a2)の場合を例にして、排出口HSから排出される鋼球の動作を、
図20(b)において説明する。
横断側面WS3に近い鋼球ほど横断側面WS3の抵抗が影響して低速で下降し、横断側面WS3から離れるほどほど高速になる。横断側面WS3に近い鋼球は塊りとなって横断側面WS3に沿って形を崩れずそのままの形を保って下降し、横断側面WS3から遠い表層面の鋼球は「形を保って下降する部分」の上を滑走する。
図20(b)は表層面の鋼球の動作説明図である。
【0522】
図20(b1)において円R4は 半径が4DSAの円で、側面WS1の末端O1を中心にして横断側面WS3に接点P1で接する。
線分O1P1を横切る4個の鋼球を下からSA1,SA2,SA3,SA4とする。下の方の鋼球ほど図示しない後続の鋼球から離れて移動し、上の方の鋼球ほど移動しない。
図20(b1)に実線で示すように、一直線に並んだ4個の鋼球は末端O1を中心に公転しながら移動し、破線で示すように、下に凸の凹面に湾曲する。
【0523】
鋼球SA1が横断側面WS3に沿って下降し、鋼球SA4が末端O1から離れる。鋼球SA4が末端O1から離れた距離L4は円R4上の点Qが横断側面WS3から離れた距離L1でもある。横断側面WS3に垂直だった4個の鋼球は次第に傾き下に凸の凹面に湾曲して、
図20(b1)に図示する点OO1と点PP1との間を通過する。
【0524】
任意の半径上の点OO1と横断側面WS3上の点PP1との間は4個の鋼球を収容する距離であって、点OO1と点PP1との間の距離を4*DSAで一定とすると、常に「点O1と点OO1との間の距離L4」は「任意の半径と円R4の交点Qと点PP1との間の距離L1」と等しい。
【0525】
点OO1は鋼球SA4の端部で点PP1は鋼球SA1の端部である。4個の鋼球が側面WS1の末端O1を中心にする任意の半径上に湾曲せずに並んで、任意の半径上の点OO1と点PP1との間に収容される。任意の半径上の点OO1と点PP1との間は4個の鋼球を収容する流路幅が一定の流路断面であって、回転しながら横断側面WS3に沿って下降する。
4個の鋼球は上や下に凸の凹面に湾曲しながら点OO1と点PP1との間に収容され、流路幅は余裕をもって、崩れないアーチを作らない大きさである。下に凸の曲線ROOは点OO1の軌跡で、横断側面WS3に対面して点OO1の軌跡に沿って図示しない側面を設けても崩れないアーチは出来ない。
【0526】
図20(b1)において一直線に並んだ4個の鋼球は、鋼球SA4が
図20(b2)に示す上に凸の側面WCに沿って移動すると、横断側面WS3に沿って縦1列に並んだ4個の鋼球は横1列になり、「1個の鋼球が辛うじて通過する排出口」を通過できる。
【0527】
図20(b2)において、破線WSSは横断側面WS3に平行で、「接点P1を中心にして半径が4*DSAの円RR4」と破線との間の領域EEは、円R4と横断側面WS3との間の領域Eと合同である。鋼球SA4が円RR4に沿って下降するとして、鋼球SA4が破線WSSから離れる距離LL4と円RR4上の点Qが横断側面WS3から離れる距離LL1と同じある。
【0528】
鋼球SA4が円RR4に沿って下降し、鋼球SA1が横断側面WS3に沿って移動して、下降距離LL4の中に収容されていた何個かの鋼球は流路高さが距離LL4の流路に収容される。
図20(b1)においてのように、鋼球SA4が任意の半径上の点OO1でなくても、円RR4に沿って下っても崩れないアーチは出来ない。
【0529】
図20(b3)において流路幅を減じた位置で減じられた流路幅を半径とする円RRR4を描くと、円RRR4は流路幅をさらに減じる円であって、野の操作を繰り返して流路幅を漸次減じる円を多く細かく描くと側面WCが出来上がる。側面WCは長い下に凸の或いは短い上に凸の側面WS4になる。
このようにして、先細りの流路を崩れないアーチは出来ない流路にすることが出来る。
【0530】
図20(b)は横断側面WS3に沿って下降する「形を保って下降する鋼球の塊り」の上を1列に並んで滑走する「表層面の鋼球」の動作説明図であるが、
図21は楔2球や楔3球にならない先細りの通路の説明図である。
横断側面WS3に対面して側面WS4を設けて先細りの通路にすると、「形を保って下降する鋼球の塊り」が上に乗る「表層面の鋼球」を押し上げて、楔2球や楔3球になる。
【0531】
図21は
図20において鋼球が隅角部を経てより狭い流路を通過する動作説明図で、縦1列に並んだ2つの鋼球が側1列に並び変わって楔2球にならないようにする。
図20(b3)において、側面WS4と横断側面WS3との間の流路WF43は側面WS1と側面WS2との間の底面WFと同一平面で、横断側面WS3に向かって下り勾配で、流路WF43上の鋼球は側面WS4から横断側面WS3に近づこうとする。
【0532】
横断側面WS3に沿う流路は下り勾配で、交差角度Θwsが90度に近づくほど、横断側面WS3は次第に水平になり、横断側面WS3に沿う鋼球の降下する力は小さくなる。
交差角度Θwsが90度より小さくなるほど横断側面WS3は急勾配になり、流路WF43は、側面WS3側が低く側面WS4側が高い斜め流路になる。
広い斜め流路は横断側面WS3に沿って縦1列に並んだ数多くの鋼球を横1列に並び変えるが、狭くなった斜め流路は横断側面WS3に沿って縦1列に並んだ2つの鋼球を横1列に並び変えず楔2球にする。
【0533】
緩い下り勾配の流路上の鋼球は底面WFの摩擦だけでも静止する。側壁に接触すると更に止まってしまうようになる。本願の底面WFは緩い下り勾配でも、底面WF上の鋼球が後続の鋼球に押されてではなく自重だけで下降するものとする。
【0534】
図21において、縦1列に並んだ2つの鋼球SA1,SA2は、
図21(a1)に示すように、交差角度Θwsの2等分線を中心に左右対称である。
側面WS4と横断側面WS3との間の先細りの流路で、底面WFの下り勾配が緩いときは、
図21(a1)に示すように、2つの鋼球SA1,SA2が縦1列に並んだまま移動し、流路幅が鋼球直径DSAの2倍より僅かに小さい所を通過できない状態が起こりえる。
【0535】
流路幅が鋼球直径DSAの2倍より僅かに大きい範囲を長くすると、鋼球SA1とSA2とが縦1列に並んだまま長く移動できず、上の鋼球SA1は鋼球SA2の前か後ろに下降する。下降した鋼球SA1が鋼球SA2の上に乗り上げることはない。
【0536】
底面WFの下り勾配が緩くないとき、横断側面WS3に向かって下る鋼球SA1も、横断側面WS3に沿って下る鋼球SA2も転ぶ力が強く、2つの鋼球SA1,SA2が縦1列に並んだままの状態は維持できない。
横断側面WS3が急な下り勾配の流路である場合、縦1列に並んだ2つの鋼球SA1,SA2は後続の鋼球に押されて、強く横1列に並び変わる。同時に、2つの鋼球SA1,SA2同志が強く押し合って、2つの壁によって移動が阻止されると楔2球になる。
【0537】
縦1列に並んだ2つの鋼球SA1,SA2の前にある鋼球は、自由であって鋼球SA2から離れてその場から立ち去る。上の鋼球SA1が鋼球SA2の前に降りてしまえば、楔2球にならない。後ろに回り込んで、鋼球SA2と鋼球SA2の後続の鋼球SA3との間に嵌まり込んでしまうと、楔2球にならない。楔2球は上の鋼球SA1が横断側面WS3に降りる途中に起きる。
【0538】
図21(a2)は、上の鋼球SA1が後続の鋼球SA2の後ろに回り込んで、横断側面WS3に沿う前に、上の鋼球SA1が後続の3個のアーチに支持されて楔2球になった状態を示す。
図21(a3)は上の鋼球SA1が後続の鋼球SA2の前に回り込んで、鋼球SA2が鋼球SA1の下に潜り込むとき、鋼球SA1が持ち上げられて、楔2球が起きる状態を示す。
【0539】
何れにしても、流路幅が2つの鋼球SA1,SA2が通過できない所を、略縦1列に並んで通過しようとすると、楔2球が起きる。
横断側面WS3が鈍角斜面であれば、横断側面WS3に沿う一列流の鋼球SA2が鈍角斜面WS3を駆け上がる。横断側面WS3に沿わない一列流の上の鋼球SA1が側面WS4に届かないと、鋼球同志が押し合うまでにならなくなり、楔2球や崩れないアーチができない。
【0540】
横断側面WS3が鈍角斜面であれば、2つの鋼球が通過できない流路幅の所がもっと前方になり、流路幅が鋼球直径DSAの2倍より僅かに大きい範囲を長くした効果がある。
楔2球や崩れないアーチは、両端の2つの鋼球が同時に支持球にならなければ起きない。2つの鋼球が同時に支持球にするには2つの側面が必要で、側面WS1も鈍角斜面である場合は、両端の2つの鋼球が同時に支持球になりにくい。
鈍角斜面は、流路幅を大きくする効果と縦1列に並んだ2つの鋼球を横1列に並び変える効果がある。
【0541】
先頭の2つの鋼球SA1,SA2の後方には2つの鋼球SA1,SA2を後ろから押して互いに密着しあう鋼球の塊りがある。先頭の2つの鋼球SA1,SA2を
図21(a)に実線で示し、後続の鋼球の塊りを破線で示す。
横断側面WS3に沿う楔2球の支持球が通過し、それの後続する楔3球の支持球も通過すれば、それの後続する崩れないアーチの支持球も通過し、横断側面WS3に沿う1列流は止まらない。
【0542】
図21(b)に、横断側面WS3に沿う2つの鋼球SA2とSA3との間に鋼球SA1が乗って、3つの鋼球のそれぞれの中心を結んで正3角形ができるときの状態を実線で示す。縦1列に並んだ2つの鋼球SA1,SA2が側1列に並び変わる途中の状態である。
横断側面WS3から「鋼球SA1と上面WCとの接点」までの距離は、3つの鋼球の中心を結んでできる正3角形の高さと鋼球直径DSAとの和であって、鋼球直径DSAの(1+ルート3/2)倍で、約1、87倍である。
【0543】
側面WS4と横断側面WS3との間は先細りの流路であるから、鋼球SA1が側面WS4に押圧されて2つの鋼球SA2とSA3とを引き離していく。
図21(b)に、上記正3角形が崩れて、高さが低い2等辺3角形になる状態を破線で示す。2等辺3角形の高さは次第に低くなりゼロになる。楔2球は流路幅が鋼球直径2倍より小さく約1、87倍より大きい所で起こりうる。
【0544】
流路高さが鋼球直径DSAの約1、87倍である箇所は既に「鋼球を2個ずつではなく1個ずつ排出する排出口HS」であるが、その後の流路は先細り流路であっても楔2球は起きない。鋼球直径DSAの2倍よりはるかに小さく1倍より僅かに大きい大きさになる。2個の鋼球SA1,SA2は液相の鋼球の塊りで、先細り流路で形を変えて低速になる。
【0545】
図5に紹介した球形の挿入体BBは、崩れないドームが出来る場所に設置されて崩れないドームが出来ないようにするが、球体Bの表面と容器内壁面との間の隙間は環状の一列路であって端部がない。環状の一列路の中に支持球はないので、複数の鋼球は数を減らしながら「環状で先細りの一列路」を通過する。
【0546】
矩形断面の一列路Gに挿入体を設置して崩れないアーチが出来ないようにしても、挿入体に沿う鋼球が2つの支持球の片方になって、崩れないアーチが出来る。挿入体に沿う鋼球が2つの支持球の片方にならなければ崩れないアーチが出来ない。
図22において、
図20に示す隅角部以前の流路の一列路Gの崩れないアーチが出来るところに挿入体を設置して、通過する鋼球の数を減らしている。
【0547】
図20に説明したように、鋼球の進路を略直角に変える隅角部は縦1列に並んだ鋼球を横1列に、或いは横1列に並んだ鋼球を縦1列に並び変える効果があって、隅角部を複数設ければ、複数の隅角部を通過する度に、並び変わらなかった複数の鋼球は次の隅角部を通過したとき並び変わって、最後に1列流になる。
【0548】
図22は、
図20において「側面WS1とWS2との間の流路」に半円形の挿入体WBを設置して、「半円形の挿入体WB」の周りに沿って「鋼球が進路を変える隅角部」を設けるものである。
図22(a1)において、側面WS1に「半円形の挿入体WB」が繋がり、さらに「半円形の挿入体WBの接線である側面WS4」が連続する。
【0549】
図中a3-a3部の流路幅は3個の鋼球が通過できる大きさで、半円形の挿入体WBに沿う鋼球は、図中a3-a3部以前において、崩れないアーチの支持球になりうるが、3個以上の鋼球からなる大きなアーチの支持球にならない。
図中a2-a2部は「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3との間の流路であって、流路幅は2個の鋼球が通過できる大きさで、図中a3-a3部以後において、流路幅は3個の鋼球が通過できる大きさから2個の鋼球が通過できる大きさに減少する。
【0550】
図中a3-a3部の3個の鋼球が下降しながら上に凸あるいは下の凸のアーチになっていくので、3個の鋼球のWBに沿わない2個の鋼球は、半円形の挿入体WB下半分に沿う3個の鋼球の1個の鋼球を下から持ち上げようとはせずに、3個の鋼球のアーチの支持球は半円形の挿入体WBに沿って移動し、崩れないアーチができない。
図中a2-a2部以前で、楔3球を含めて「その後ろにできる3個以上の鋼球からなる崩れないアーチ」も出来ない。
【0551】
半円形の挿入体WBは底面WF に垂直であるが、
図22(a2)の側面断面図に示すように半球体を底面WF に埋め込むと、半円形の挿入体WBに沿う鋼球を半球体の挿入体WBが押圧する力の作用線は底面に平行にならず、鈍角斜面に沿う鋼球のように、半球体の挿入体WBに沿う鋼球は崩れないアーチの支持球にならない。
【0552】
図中a3-a3部以後で、横断側面WS3が底面WF に垂直ではなく横断側面WS3が鈍角斜面ならば、半球体の挿入体WBと横断側面WS3との間の流路は鈍角流路で、横断側面WS3に沿う鋼球を、横断側面WS3が押圧する力の作用線は底面に平行にならず、横断側面WS3に沿う鋼球を崩れないアーチの支持球にしない。
横断側面WS3に沿って1列溝を設ければ、楔2球も崩れないアーチも出来ない。
【0553】
図22(a1)は、
図5(a)の断面図の一部でもあるが、
図22(a1)において1列路内の鋼球が3個であっても、
図5(a)において環状の流路内の鋼球は数多く、数多い中から1個を容易に減らすことが出来る。3個から2個に減少させる場合は
図5(a)においても容易ではない。
【0554】
図22(b1)に示す流路は、流路幅が2個の鋼球が通過できる大きさのままで、末端部が側面WS5で塞がれている。先頭の鋼球SA1が側面WS1とWS5と底面WFとに支持され静止する。流路末端部の「図中斜線で塗りつぶした部分」は1個穴であって、2個の鋼球の片方は1個穴から抜け落ちて、楔2球は出来ない。しかし、図示するように、3個の崩れないアーチが出来る。
【0555】
図22(b2)に示す側面WS2と側面WS4との間の流路は先細りの流路であって、「側面WS5で塞がれている末端部」には先頭の鋼球SA1を支持する底面WFがなく、先頭の鋼球SA1は1個穴から鉛直方向に落下して退避する。
図22(b1)に示す3個のアーチは崩れる。
1個穴は「鋼球を1個ずつ、途中で止まることなく排出し続ける排出口」になる。
【0556】
図22(a1)において、a2-a2部の前方の流路幅は2個の鋼球が通過できる大きさのままで、側面WS5で流路は塞がれている。図中斜線で塗りつぶした3角形の部分は1個穴であって、
図22(b2)の場合に同じく、1個穴から鉛直方向に落下して退避する。先細りの流路の末端部に隣接する1個穴は「1個ずつ鋼球を排出する排出口」になる。
【0557】
図22(c)に示す流路は、
図22(a)において「半円形の挿入体WB」を取り除いた流路であって、底面WFとそれに垂直な壁面WS1と横断側面WS3からなる先細りの1列路である。
図22(c1)は、排出口近傍で「4個の鋼球からなる崩れないアーチ」が出来た状態を示す。
側面WS1と横断側面WS3とが直角に交差するようになるほど、4個の鋼球は横断側面WS3に垂直に並ぶ。
【0558】
図22(c1)において、側面WS1と横断側面WS3とが底面WFに垂直ではなく、ともに、底面WFとの間の交差角度が鈍角である鈍角斜面である場合、鈍角斜面に沿う鋼球は支持球にならない。「4個の鋼球からなる崩れないアーチ」も、楔2球や3個以上の鋼球からなるアーチは出来ない。図中破線は鈍角斜面の側面WS1と横断側面WS3のそれぞれと底面WFとの境界線である。
先細りの鈍角流路の末端部は「1個の鋼球が辛うじて通過できる排出口」になる。
【0559】
鈍角斜面に沿う鋼球が鈍角斜面を駆け上がるから支持球にならない。鋼球同志が押し合ってではなく、鋼球の自重だけで鋼球が鈍角斜面を駆け上がる場合、駆け上がるとはいっても上り坂を上っているのではなく、鈍角斜面上の下り坂を降りている。鈍角斜面上に下り坂があるようになるには底面WFが急激な下り坂でなければならない。
【0560】
図22(c1)において、側面WS1と横断側面WS3とがともに、底面WFと垂直である場合、側面WS1或いは横断側面WS3に沿って「底面WFより低く1個の鋼球が通過する溝M」を設けると、溝Mに沿う鋼球は支持球にならない。
図22(c2)に示す流路は、側面WS1に沿って「底面WFより低く1個の鋼球が通過する溝M」を設けたものである。図中破線は底面WFと溝Mとの段差を示す。
図22(c2)においては、側面WS1と横断側面WS3とがともに、底面WFと垂直であってもなくてもよい。
【0561】
図22(c1)に示す「4個の鋼球からなる崩れないアーチ」の片方の支持球は、
図22(c2)において溝M溝M内にあって、残りの3個の鋼球と切り離される。残りの3個の鋼球はアーチのまま下に移動して、アーチの両端の片方は溝M内に嵌まり込む。支持球になれず、残りの3個のアーチは崩れる。
【0562】
図22(c2)に示す排出口HSは、横断側面WS3が溝Mに到達するところで、横断側面WS3の末端から側面WS1までは「1個の鋼球が通過する溝M」になり、横断側面WS3の末端では底面WFがない。
【0563】
溝M内の鋼球は支持球にはならず止まることはないとはいうものの、交差角度Θwsが大きくなるほど、「溝Mに沿う1列流の鋼球」の上に「横断側面WS3に沿って底面WFから降下する鋼球」が載って、図示するように、楔2球になり止まってしまう。双方ともに排出口HSの位置まで到達しないことになる。
【0564】
図22(c3)において側面WS1と横断側面WS3とが結合し流路の排出口が塞がれる。流路末端部分は底面WFがなくなり全体が溝Mになる部分であるが、溝M内に「2個の鋼球が嵌まり込まない大きさで、1個の鋼球が嵌まり込むには十分すぎる大きさの1個穴」を設ける。図中斜線で塗りつぶした部分は1個穴である。
【0565】
図22(c2)において「楔2球になり、排出口HSの位置まで到達しない溝M内の鋼球」が
図22(c3)において1個穴に嵌まり込んで落下する。
図22(c2)において溝M内の鋼球は横断側面WS3に沿う鋼球を下から支持して楔2球になる。
図22(c3)において溝M内の楔2球になる鋼球は側面WS1と横断側面WS3とが結合するところに到達する前に落下する。
【0566】
1個穴は側面WS1と横断側面WS3とが結合するところから離れた位置に設けられ、側面WS1と横断側面WS3とが結合するところも含めると、2個の鋼球を収容する大きさとなるが、「1個の鋼球が嵌まり込むには十分すぎる大きさの1個穴」である。
【0567】
図23(b)において、底面には下り勾配の緩い底面WFと下り勾配の急な底面WFMとがあって、2つの底面の境界線は段差部WMで示される。
図23(a)は底面WFMの断面図で、
図23(a1)は鉛直の底面WFM、
図23(a2)は凸面の底面WFM、
図23(a3)は斜面の底面WFMを示す。h-hは水平面である。Mは溝を示す。
【0568】
図23(b)は底面WFMが斜面である場合の平面図である。段差部WMは鋼球の図中矢印イ方向に示す下降方向と直角で、図中破線で示される。
破線MVは溝の底であって、底面WFMと横断側面WS3とはV型流路の2つの斜面であって、図中矢印イ方向の下降方向の勾配が急になる部分である。横断側面WS3鋼球の図中矢印イ方向に示す下降方向に直角であるほど、1列溝の図中矢印ロ方向に示す勾配が緩くなるので、図中矢印イ方向は急勾配にする必要がある。
【0569】
互いに平行な側面WS1とWS2の間に囲まれる底面WFは減速装置の大部分を占め、下り勾配は緩く、装置全体を大きく傾けなくても鋼球は止まらないようにはしている。これに対して、流路断面積が減少する底面WFMは急勾配で、鋼球の配列に並び替えが起きて楔2球が出来かねない。装置全体をではなく、底面WFMだけを大きく傾ける必要がある。
【0570】
側面WS1に側面WS4が連続し、側面WS4と横断側面WS3との間は先細り流路になっていて、鋼球を1個ずつ排出する排出口HSにつながる。
側面WS4と横断側面WS3とはV型流路を構成する。側面WS4は底面WFMであってV型流路の2つの斜面の片方で、横断側面WS3は他方の斜面である。破線MVは溝の底であって側面WS4と横断側面WS3との境界線である。
【0571】
V型流路では鋼球同志が強く押し合って横断側面WS3を駆け上がり、縦1列に並んだ2つの鋼球を横1列に強く並び変える効果がある。
【0572】
横断側面WS3の幅は側面WS2と横断側面WS3との連結部でゼロで、連結部から遠ざかるに従い大きくなる。また、連結部から遠ざかるに従い破線MVは低くなり、横断側面WS3に沿う1列溝MVは排出口HSに向かって下り勾配になる。
横断側面WS3に沿う1列溝MVの下り勾配が急であるほど1列流は止まり難く、横断側面WS3に沿う1列流の鋼球は支持球にならない。底面WFMの下り勾配は急であるほど鋼球の配列の並び替えが容易になる。
【0573】
図23(a)において、1列溝Mに図示しない上面WCを設ける場合、底面WFMの排出口HS周辺では、1列溝Mに沿う鋼球の上に底面WFMを下る鋼球が乗り上げて、楔2球が出来やすくなる。楔2球の2つの鋼球が鉛直に並ぶほど楔2球になりやすく、
図23(a1)の鉛直の底面WFMや
図23(a2)の凸面の底面WFMより、
図23(a3)の斜面の底面WFMのほうが楔2球になりにくい。
【0574】
楔2球の2つの鋼球が鉛直に並ぶとしても、底面WFMの排出口周辺の1列溝M末端部に
図22(c3)に示した1個穴を設ければ、1列溝Mに沿う鋼球は1個穴に落ちて退避し、楔2球は起きない。
【0575】
図22(a)において、側面WS1とWS2との間の横長流路は1列路であって、流路高GHは鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい。横長流路に多くの鋼球を蓄えるには横長流路の長さを大きくしなければならない。
図24は、
図22(a)において、a3―a3断面より下は1列路のままにして、a3―a3断面より上の流路高GHを鋼球直径DSAの2倍以上に大きくした容器で、多くの鋼球を蓄える。
【0576】
図22(a)において、a3―a3断面の流路幅を1個の鋼球が通過して2個の鋼球が通過できない大きさに小さくすると、楔2球が出来るが、
図22(a)において、底面WFとそれと向かい合う上面WCとの間の距離(流路高GH)を鋼球直径DSAの4倍以上にすると、楔2球が出来ない。a3―a3断面より上に多く蓄えられた鋼球は全てa3―a3断面より下の1列路に送り込まれる。
【0577】
図24(a)は容器の断面図、
図24(b)は姿図、
図24(c)は正面図である。
図22(a)において「半円形の挿入体WB」は
図24において半径rの「半円柱の挿入体WB」になる。
図24(a3)の姿図に示す水平面aは、「半円柱の挿入体WB」の中心軸Zを通過し、
図24(a1)に示すa―aは
図24(a2)に示す水平面aの断面である。
【0578】
図24(a2)の姿図に示すように、流路入り口INNは横の長さGLが鋼球直径DSAの4倍以上で縦の長さGHが鋼球直径DSAの2倍以上の矩形断面で、a―a断面から流路出口OUTまでの流路断面は、縦の長さGHHが鋼球直径DSAの1倍以上かつ2倍未満の矩形断面である。
図24(a)、(b)、(c)のそれぞれにおいて、a―a断面より下は1列路の鉛直流路で、上は1列路ではない。
【0579】
図24(b)の姿図に示すように、「半円柱の挿入体WB」の両端の切り口は互いに平行な側壁WS1と側壁WS2に接している。また、「半円柱の挿入体WB」の底は底面WFに接している。側面WS1と側面WS2と底面WFと底面WFに対面する上面WCは全て鉛直面で、流路は鉛直流路である。
【0580】
側面WS1と側面WS2と底面WFと底面WFに対面する上面は全て鉛直面であって、鋼球の下降方向と平行でそれに沿う鋼球は支持球にならない。「半円柱の挿入体WB」についても楔2球や楔3球の支持球ができる部分は鉛直面に近似しているので、「半円柱の挿入体WB」に沿う鋼球も同様に支持球になりにくい。「半円柱の挿入体WB」は楔2球や楔3球を作らずに流路断面を狭めている。
【0581】
楔2球は必ず同一平面上にあって当該同一平面が側面WSと直交すると崩れにくい。楔3球は必ずしも同一平面上になく当該同一平面が側面WSと直交しても崩れやすい。
図24(a1)に示す断面図が1列路であれば、楔3球は同一平面上にあって、崩れ難く、
図24(a2)
図24(a3)に示すように、1列路でなくなるほど、楔3球は同一平面上になく、崩れやすくなる。
【0582】
図24(a1)に示す断面は側面WS1或いは側面WS2に平行であって楔2球や楔3球を支持しない。楔2球や楔3球は「半円柱の挿入体WB」と上面WCに挟まれて出来る。上面WCは鉛直であって、「半円柱の挿入体WB」に沿う楔2球や楔3球の支持球は
図24(c)に示すように大きなアーチの内部球であれば落下する。
【0583】
図24の容器には落下する支持球を落下しないように指示する水平に近い底面はない。底がない鉛直流路であって、大きな鉛直流路では、楔2球や楔3球が出来たとしても、楔2球や楔3球の鋼球が隣り合う鋼球も含めて大きな塊を下降を阻止するほどではない。隣り合う鋼球は楔2球や楔3球が崩れないように支えた鋼球であって、これがなくなると楔2球や楔3球も崩れる。
【0584】
図24(a2)、
図24(a3)に示すように、楔2球や楔3球の2球や3球が互いに押し合って鉛直の壁との摩擦で下降しないようにしている。
楔2球や楔3球の支持球は「半円柱の挿入体WB」と上面WCと側面WS1或いは側面WS2との3面で支持される部分にできやすい。流路両端部の側面WS1或いは側面WS2に支持球が出来なければ容器内の鋼球は全部落下する。
【0585】
楔2球や楔3球は、
図24(a2)、
図24(a3)に示すように、側面WS1と側面WS2との間の距離が長くなるほどできにくい。
図24の容器の流路入り口INNの矩形断面の横の長さGLを鋼球直径DSAの4倍以下にすると、a―a断面より上の鋼球は全て下に送り込まれない。この場合、a―a断面から流路出口OUTまでの縦の長さGHHを鋼球直径DSAの2倍以上にすると、全て下に送り込まれるが、2倍未満では送り込まれない。
【0586】
図24(a3)は
図24(a2)の姿図の正面図で、流路入り口INNの矩形断面の横の長さGLを30mmとし、a―a断面から流路出口OUTまでの矩形断面の縦の長さGHHを18mmとした時の状態図で、鋼球直径を10mm、「半円柱の挿入体WB」の半径rを25mm、としたとき崩れないドームが出来た状態を示している。
流路入り口INNの矩形断面の横の長さGLを40mm以上にすると、
図24(c)に示す崩れないドームは崩れる。
【0587】
図24(b)は、
図24(a)に示すa―a断面より下の1列路に横断側面WS3と
図22(a)に示した「半円形の挿入体WB」を設けたものである。
図24の容器は、a―a断面より上に鋼球を多く蓄えて、a―a断面より下の1列路から少しずつ排出する減速器となる。
【0588】
図23は1列路の断面図であるが、
図23に示す上面WCを上面WCCのようにして、
図23に示す底面WFも上面WCCも
図24(a2)と
図24(a3)と同様に大きな平面にして、流路を鉛直流路にすると、
図23の容器も、段差部WMより上に鋼球を多く蓄えて、段差部WMより下の1列路から少しずつ排出する減速器となる。
【0589】
図24(b)は矩形断面の1列路のおける「半円形の挿入体WB」についての説明図である。
図24(b1)に示すアーチa3は「半円形の挿入体WB」を設けない場合に起きる楔3球である。
【0590】
排出口の大きさLHSを鋼球直径DSAの2倍にすると楔2球は起きない。後方に楔3球が出来るが、横断側面WS3を鈍角斜面にすると後方に出来る楔3球は崩れる。「半円形の挿入体WB」を設けなくても、楔2球や楔3球は出来ない。
「半円形の挿入体WB」を設けると、排出口の大きさLHSを鋼球直径DSAの2倍以下にすることが出来る。
【0591】
図24(b1)において、側面WS1に沿う楔3球の支持球SA3がある部分に、
図24(b2)、
図24(b3)において、「半円形の挿入体WB」を設置すると、楔3球は排出口HSから後方に後退する。
図24(b2)において、実線で示すように楔3球の支持球SA1が横断側面WS3の先端部に残る場合も、破線で示すように楔3球の支持球SA3が「半円形の挿入体WB」の下端部E3に残る場合も、何れの場合も楔3球は崩れる。これら以外の楔3球はもっと後方にあって崩れやすい。
【0592】
「半円形の挿入体WB」に沿う支持球SA3は崩れるアーチの端部の鋼球である。
「半円形の挿入体WB」が支持球SA3を押圧する力の作用線は、「半円形の挿入体WB」の中心Oと支持球SA3の中心を通り、
図24(b2)、
図24(b3)に示すように、「半円形の挿入体WB」に沿う支持球SA3の力の作用線の方向は、「半円形の挿入体WB」の上部を通るほど水平方向になる。水平方向に並ぶ楔3球はなく鉛直方向に並び半円形の挿入体WB」に沿う支持球SA3は「半円形の挿入体WB」によって崩れるアーチの端部の鋼球になる。
【0593】
図24(a3)に示すように、横断側面WS3をより水平に近づけて、「半円形の挿入体WB」との間の流路を狭めると、破線で示すように水平に並ぶ楔2球は崩れて、実線で示す鉛直に並ぶ楔2球は鉛直から水平に移行し、楔2球は2球ともに横断側面WS3上に並んで排出口HSから出る。排出口HSは1個の鋼球が辛うじて通過する大きさになる。
【0594】
図24(b3)に示す減速側面WS33に沿う流路は下り勾配の横断流路であって、鋼球は減速側面WS33に沿って自重で下降する。
減速側面WS33の終端部E33から落下する鋼球の速度VE33は、横断側面WS3の終端部E3から出たときの初速から加速して終端部に至って最大値になる。
速度VE33が
図24(b1)、(b2)の減速側面WS33がない場合に、横断側面WS3の終端部E3から出たときの速度VE3より速いとすると、減速側面WS33上は気層になって、減速側面E3を追加する効果はない。
【0595】
図24(b3)に示すように、減速側面WS33がある場合に、減速側面WS33上が液相であれば、横断側面WS3の終端部E3から出たときの初速は速度VE3より遅い。減速側面WS33上の鋼球の加速が小さいと、速度VE33が速度VE3より小さくなる。
図24(b3)に示すように横断流路を複数追加して、鋼球が何度も進行方向を変え蛇行しながら下降すると、最終の減速路WS33の終端部から落下する鋼球の速度は更に小さくなる。
【0596】
図25(a)に示す矩形断面の1列路は鉛直流路で、
図25(a2)は姿図で、
図25(a3)は断面図である。
図25(a1)、
図25(a2)に示す容器SLは、それぞれ鉛直に立てた円筒容器と矩形断面の1列路の容器である。それぞれに同数の鋼球を入れた場合、円筒内で低く積み上げられ、1列路では高く積み上げられる。鋼球の自重がそれぞれの底面を押圧する圧力は1列路のほうが高い。しかしながら、内圧を受ける側面の面積は円筒のほうが遥かに少ない。
【0597】
円は断面図内に多くの鋼球を収容し、周囲の長さ(円周)が最も短く、1列路の矩形断面は断面図内に収容する鋼球は少なく、周囲の長さ(矩形断面の各辺の総和)が最も長い。
また、矩形断面内の鋼球は周囲の辺に平行に並びやすいが、円内の鋼球は全てが円周に平行に並ばない。円筒容器において、1つの上の鋼球が2つ以上の下の鋼球の間に割り込んで円周を押し広げる力が働くが、1列路の矩形断面内の鋼球が側面を押し広げる力は小さい。
【0598】
円筒容器のほうが矩形断面の1列路の容器より、側面が受ける内圧は大きく、側面に大きな摩擦力が働く。円筒容器内壁には、鋼球の自重だけで大きな摩擦力が働くが、矩形断面の1列路の容器内壁には、鋼球の自重だけでは大きな摩擦力が働かない。
【0599】
図25(a1)、
図25(a2)それぞれにおいて、円のピストンPSと矩形断面のピストンPSが下から鋼球を押し上げる。円筒部内の鋼球は、少量であっても下から押し上げられないが、矩形断面の1列路内の鋼球は相当多量でない限り下から押し上げられ
る。
図25(a3)矩形断面の1列路が鉛直であるときの断面図で、矩形断面の1列路においては、下に移動した鋼球を元あった場所まで押し上げることが出来る。
【0600】
図25(a1)、
図25(a2)それぞれにおいて、ピストンPSを下に移動すると、上の鋼球もピストンPSと共に下降する。ピストンPSを瞬時に引き抜くと鋼球は一気に落下する。容器の下部に流路断面積が減少するルート部或いは先細りの流路を設けなければ、ゆっくりと落下するものではなく、鋼球は一気に落下する。
容器の下部に流路断面積が減少するルート部或いは先細りの流路を設けることによって、鋼球の配列が乱れて、上の鋼球が下の鋼球の間に割り込んで減少した流路断面積を押し広げる力が働く。
【0601】
鉛直流路が
図1の容器のように円筒容器であっても先端部に流路断面積が減少するルート部があって初めて、排出口から排出される鋼球がピストンの押圧力に影響されないようになる。
矩形断面の1列路においても、流路断面積が減少させる先細りの流路であれば、排出口から排出される鋼球がピストンの押圧力に影響されないようになる。
【0602】
鋼球の内圧で容器内壁は押し広げる力は、鋼球の下降に抵抗する。
図1に示すようなルート部を備える円筒容器においては、鋼球表層面をピストンPSで押圧しても、単位時間内の排出口からの鋼球排出量は変化しない。
このような傾向は、横断側面を備える矩形断面の1列路において顕著ではない。先細りの1列路においてはルート部を備える円筒容器においてより、内圧で容器内壁は押し広げる力が弱い。
【0603】
図25(a2)において、流路高GHを1個の鋼球が辛うじて通過する大きさではなく、2個の鋼球が辛うじて通過できない大きさにすると、
図25(a3)の側面断面図に示すように、楔2球に近似する鋼球の配列が多く存在して、内圧で容器内壁は押し広げる力が強くなる。
水平から僅かに傾けるだけで鋼球が下降する矩形断面の1列路は、下降した鋼球を元あった位置まで簡単に戻すことが出来る。緩い勾配では元の高さまで戻すエネルギは少ない。
「鋼球表層面をピストンPSで押圧しても、単位時間内の排出口からの鋼球排出量は変化しない。」という傾向は少ないとしても、横断側面を設けることによって挽回できる。
【0604】
図25(b)、(c)はドアクローザの動作説明図で、僅かに傾けるだけで鋼球が下降する矩形断面の1列路を採用する。
図13(a)に示した横長流路の略中央部に
図24に示した横断側面WS3が設けられる。
ドアクローザはピストンPSが少なくとも数秒の間移動し続ける必要があり、鋼球を容器に出来るだけ多く充填して排出口HSから出来るだけ少しずつ排出する必要がある。
【0605】
横断側面WS3を設けることによって少しずつ排出するとともに、ピストンが移動する部分を長くして鋼球を多く充填する。円筒容器の場合のように出来るだけ多く充填して排出口HSから出来るだけ少しずつ排出することはできない。しかし、用途をドアクローザに限れば十分である。
【0606】
クランクCはドアDと連動し、矩形断面のピストンPS(後述の棒体Bと同じ)は連結棒CCを介してクランクCに連結され、「固定部Wに固定して設けられる矩形断面の筒体M」に挿入され、筒体Mの内壁に沿って摺動する。筒体M内部は「下り勾配の矩形断面の1列路」である。ドアDの開閉はピストンPSの往復になる。ドアを開くことによって持ち上げられた鋼球はドアが閉まるとき、自重で降下する。
【0607】
ピストンPSは2つの矩形断面のピストンPS1とPS2を備え、2つのピストンPS1とPS2とを連結する部分は「筒体Mの上面WCに沿って移動する連結板PL」であって、連結板PLの下は複数の鋼球SAを収容する矩形断面の空間Gであり、空間G は1列路である。
鋼球SAはピストンPS1とピストンPS2との間に挟まれ、ドアの開閉は鋼球SAの登坂と下降とになる。
【0608】
筒体Mの底面WFの中央部に横断側面WS3が設けられ、2つのピストンPS1とPS2との間に設けられる。
2つのピストンPS1とPS2は何れも往復運動して、横断側面WS3 に近づいたり遠ざかったりするが、横断側面WS3に当接するまで近づかない。
【0609】
横断側面WS3の片方の端部は側面WS1に接し、他方の端部と側面WS2との間は2個の鋼球が通過できる排出口HSである。横断側面WS3から上方の底面WF上に
図24(b)に示す「半円形の挿入体WB」が設置される。「半円形の挿入体WB」は半円ではなくてもよく、半円の一部であって、小さくしても楔3球は起きない。
【0610】
図24(b)、(c)はそれぞれドアクローザの側面断面図と平面断面図で、
図24(b1)、(c1)はドアDを開くとき、クランクCが図中矢印イ方向に回転してピストンPS2によって鋼球が引き上げられる状態を示し、
図24(b2)、(c2)はドアDが閉まるときとき、クランクCが図中矢印イと反対方向に回転してピストンPS1が「自重で下降する鋼球」を押し下げられる状態を示す。
【0611】
連結板PLの下の空間Gは横断側面WS3を境にして上の室R1と下の室R2に区分され、空間G内の鋼球は排出口HSを通って、室R1と室R2とを出入りする。横断側面WS3は断面が概ね3角形の棒状の回転体の1面WS33であって、3角形の棒状の回転体は逆止弁である。
逆止弁は
図24(b1)に示すように上昇する鋼球SAによって倒されて鋼球の上昇に抵抗しない位置で静止する。また、
図24(b2)に示すように、下降する鋼球SAによって起こされて鋼球の下降に抵抗する位置で静止する。
【0612】
図25(b1)、(c1)はドアDが開くとき、面WS33は底面WFの下に退避する状態を示し、面WS33が図中矢印ロ方向に回転し、鋼球SAが抵抗を受けずに室R2から室R1へ送り込まれる状態を示す。
図25(b2)、(c2)はドアDが閉まるとき、面WS33が図中矢印ロと反対方向に回転する状態を示し、面WS33が底面WF上に出現して、鋼球が排出口HSを通過して室R1から室R2へ送り込まれる状態を示す。
【0613】
3角形の棒状の回転体は倒されて底面WFの一部となる面WFFと、起こされて横断側面WS3となる面WS33とを備え、3角形断面の頂点付近を通る回転軸Zを軸に回転する。
3角形の棒状の回転体はバネU に付勢され、ドアDが閉まるとき、当たりG33が底面WFに当接して静止し、面WS33が底面WF上に出現して、鋼球の下降に抵抗する。
【0614】
図25(c1)と
図25(c2)は流路平面図で、それぞれ
図25(b1)と
図25(b2)に対応する。
図25(c1)は、
ドアDが開いて面WS33が底面WFの下に退避した状態を示し、鋼球は流路幅が減少しない1列路を上昇する。
図25(c2)はドアDが閉まるとき、面WS33が底面WF上に出現した状態を示し、鋼球は流路幅が減少した1列路を下降する
【0615】
室R1と室R2との両方の室の容積の和には余裕があって、空間Gは余裕をもって全鋼球を収容する。ドアが閉止している間は、ピストンPS2が下降しながら、鋼球は室1から室2へ送り込まれて室2に貯まるが、室R2が満杯になって排出口HSを塞ぐまでには至らない。
【0616】
ドアDが全閉する途中で止まった場合、ピストンPS2も止まるので、室R2内の大きさは大きくなる途中の状態で止まり、鋼球の排出が暫らく続いても、直ぐに室R2に鋼球が貯まって満杯になる。満杯になった鋼球が排出口HSを塞ぎ、それ以上鋼球は室R1から室R2へ送り込まれない。ドアが再び閉まりだすと、ピストンPS2は後退して、室R2内が大きくなり鋼球が自重で室R1から室R2下降する。ピストンPS1は室R1内の鋼球が少なくなる分だけ移動し、ピストンPS2も同じ距離を移動して室R2を少しずつ大きくする。
【0617】
ドアDが全閉する途中で止まっても排出口が開いたままで、鋼球の排出が室1が空になるまで続くことはない。
両方の室の容積の和に全鋼球を収容する余裕を小さくすると、ドアDが止まってピストンPS1とピストンPS2が止まると略同時に全鋼球は停止する。
【0618】
図25(b)において、1列路の流路高GHは2個の鋼球が辛うじて通過できない大きさで高く、連結板PLと上面WCとの間の隙間に押しバネUUが挿入され、連結板PLは押しバネUUに付勢されて上下する。底面上の鋼球SAがピストンPSに押されて底面WCから離れて浮き上がるとき、連結板PLを跳ね上げて流路高GHを大きくする。
【0619】
ドアDを開くとき、面WS33が底面WFの下に退避していて、底面上の鋼球SAがピストンPS2に押されて上昇するとき、底面WCから離れて浮き上がることはなく、連結板PLを跳ね上げることはない。連結板PLはバネUUに押圧されて静止状態を保つ。
【0620】
図25(b)に示す流路が鉛直になると、底面WF上の鋼球は底面WFから離れて連結板PLに接触する。容器内の鋼球の何れもが隣接する鋼球と側面WSと底面WF或いは連結板PLに接触し、多く接触点を持つことによって容器内壁を押圧する内圧が生まれる。
しかし、ピストンPSに大きく抵抗せず、ピストンPSの動きを止めるまでに至らない。
【0621】
ドアが閉まるとき、横断流路を備えた矩形断面の1列路の底面WFが水平になったとしても、横断側面WS3で前進を阻まれた鋼球は後続の鋼球の前進を阻んで、底面WF上の鋼球は浮き上がって連結板PLに接触し、容器内の鋼球はピストンPSに抵抗する。楔2球に近似する鋼球の配列が多く存在して、内圧で容器内壁は押し広げる力が強くなっても、楔2球にならない。
【0622】
ドアを開くとき、底面WFには横断流路がない。底面WFが水平面で、容器内の鋼球が詰込状態であっても、ピストンPSで後ろから押されると加速し、ピストンPSに抵抗しない。底面WF上の鋼球は浮き上がって連結板PLに接触することはない。
流路が鉛直に近づく従い、容器内の鋼球の自重がピストンPSに抵抗する。
【0623】
図26は、突風によってもドアが開くときにも急激に回転しないドアクローザの動作説明図である。
回転体Cは図示しないドアDと連動し、「固定部Wに固定して設けられる回転体Cの回転軸Z」から等距離の2つの棒状のピストンPS1とピストンPS2とを備える。
図26(a)、(b)の断面図と
図26(c)の姿図に示すように、ピストンPS1とピストンPS2は「筒状の1列路」の底面WFと上面WCとの間を往復する。
【0624】
「筒状の1列路」の底面WFと上面WCとは中心軸を回転体Cの回転軸とし、固定部Wに固定して設けられる。
筒状の1列路の流路幅GLは1列路の両側の側壁WS1,WS2の間にピストンPS1とピストンPS2を収容する長さである。
図26の筒状の1列路は半分しか使わないため、かまぼこ状の1列路である。かまぼこ状の1列路は湾曲した略鉛直な流路である。
【0625】
かまぼこ状の1列路の底面WFの略中央付近に2面体WSSが固定される。
図25と同様にピストンPS1とピストンPS2は何れも往復運動して2面体WSS に近づいたり遠ざかったりするが、2面体WSSに当接する位置まで近づかない。
2面体WSSは「筒状の1列路」の底面WF上に設けられ側面WS1に接続される。2面体WSSの2面は横断壁面WS3とWS33とであって、それぞれピストンPS1とPS2 に対面する。横断流路WS3は鋼球SAの下降に抵抗し、横断流路WS33は鋼球SAの上昇に抵抗する。
【0626】
逆止弁WGは2面体WSSの頂点付近に回転軸ZZが底面WFに垂直に設けられ回転軸ZZを軸に回転する。
逆止弁WGと「上記側面WS1に対面する側面WS2」との間の隙間が、
図24(b)と同様に、2個の鋼球が通過できる排出口HSである。また、
図24(b)と同様に、側面WS2には2つの「半円形の挿入体WB」が、側面体WSSを間に挟んで設置される。
【0627】
「底面WFと上面WCとの間の「筒状の1列路」の一部で、上下をピストンPS1とピストンPS2に挟まれ、左右を側面WS1と側面WS2とに挟まれた空間G」は排出口HSを境にして上の室R1と下の室R2に区分される。空間Gが上下に揺動して室R1と室R2の容積は増加或いは減少して、空間G内の鋼球は排出口HSを通って、室R1と室R2との間を出入りする。
【0628】
図25と同様に、「筒状の1列路」で2つのピストンPS1とPS2との間の空間Gに鋼球SAが略詰込み状態で収容される。ピストンPS1とピストンPS2との間に挟まれた鋼球SAはドアDの開閉に伴い登坂と下降とを繰り返す。
図25の場合と同様に、ドアDが停止して下の室R2が鋼球SA で埋め尽くされると、全鋼球SAは 停止する。
【0629】
ドアDが閉まるときの動作を断面
図26(a1)と平面
図26(b1)に示し、ドアDが開くときの動作を断面
図26(a2)と平面
図26(b2)に示す。
断面
図26(a1)と平面
図26(b1)に示すように、ドアDが閉まるとき回転体Cが図中矢印イ方向に回転し、逆止弁WGが図中矢印ロ方向に回転して、排出口HSは最小になる。ピストンPS1が室R1内の鋼球を室R2に送り込む。室R2に送り込まれた鋼球が自重で略鉛直に落下する。
【0630】
断面
図26(a2)と平面
図26(b2)に示すように、ドアDが開くとき、回転体Cが図中矢印イと反対方向に回転し、逆止弁WGが図中矢印ロと反対方向に回転して、排出口HSは最大になる。ピストンPS2が室R2内の鋼球を略鉛直に持ち上げて室R1に送り込む。
【0631】
図25の場合と異なり横断壁面一部が逆止弁で、全体が逆止弁にならない。
図26の場合は、ドアが開くときにも横断流路の一部を除く大部分が退避せず、鋼球の急激な上昇に抵抗するが、低速に開く通常の使用において抵抗は殆ど感じられない。
【0632】
逆止弁WGはトグルバネVに付勢されて、排出口HSが小さくなる静止位置と大きくなる静止位置との間を揺動する。それぞれの静止位置に逆止弁WGが当接離反する当たりWGGが設置される。
【0633】
図26(d)に示すように、トグルバネVの片方の端部は逆止弁WGに設けられる支軸S33に可動支持され、他方の端部は固定部Wに設けられる支軸SWに固定支持される。支軸SWは逆止弁WS33の回転軸ZZを中間にして支軸S33と反対側の固定部Wに設けられる。
トグルバネVが逆止弁WGの回転軸ZZを横切るたびに、トグルバネVが逆止弁WS33を付勢する方向が逆転する。
【0634】
図26(b1)に示すように、ドアDが閉まるとき、逆止弁WGは、下降する鋼球に押圧されて図中矢印ロ方向に少し回転して、トグルバネVが回転軸ZZ横切った後は、当たりWGGに当接するまでトグルバネVに付勢されて回転し続ける。
同様に
図26(b2)に示すように、ドアDが開くとき逆止弁WGは、上昇する鋼球に押圧されて図中矢印ロと反対方向に少し回転して、トグルバネVが回転軸ZZ横切った後は、当たりG1に当接するまでトグルバネVに付勢されて回転し続ける。
【0635】
逆止弁WGは、ドアDが閉まる途中であっても、ドアDがどの位置にあっても、ドアDが開くとき排出口を大きくする位置に静止し、また、ドアDが開く途中であっても、ドアDがどの位置にあっても、ドアが閉まるときは排出口を小さくする位置に静止する。逆止弁WGはドアDが開く或いは閉まると同時に動作して静止し、その後静止したままの状態が継続する。
【0636】
図27に図示する回転体Cは図中矢印イ方向に連続回転する。
図25,
図26の往復運動ではなく
図27は回転運動を減速する減速器の動作説明図である。
図27(a)に示す減速器は往復スライダ機構のリンク装置であって、回転体Cの回転運動が棒体Bの往復運動に変換される。
【0637】
図27(a)において、棒体Bを収容する筒体Mを断面図で示す。矩形断面の棒体Bは連結軸Pcbによって回転体Cに連結され、矩形断面の筒体M内壁に沿って挿入される。棒体Bは2つの矩形断面のピストンPS1とPS2を備え、2つのピストンPS1とPS2は「筒体Mの上面WCに沿って移動する連結板PL」で連結され、相対的に一体になる。連結板PLと 2つのピストンPS1とPS2は何れも棒体Bの一部である。
【0638】
筒体Mの端部は固定部Wに設けられる固定支軸SWの周りに回転自在に軸支され、回転体Cの回転によって、筒体Mは固定支軸SWを軸にして上下に振り子運動をする。ピストンPS1とPS2の往復に、筒体M内の鋼球の往復が伴う。
【0639】
連結軸Pcbと回転体Cの回転軸Oと固定支軸SWとが1つの水平線X上に配されるときは2か所あって、連結軸Pcbが水平線Xより上にあるとき、
図27(a1)に示すように、筒体Mは固定支軸SWに向かって下り勾配になり、連結軸Pcbが水平線Xより下にあるとき、
図27(a2)に示すように、固定支軸SWに向かって上り勾配になる。
【0640】
図27(a1)は棒体Bが筒体M内を固定支軸SWに向かって押し込まれる途中の状態を示し、
図27(a2)は、固定支軸SWから引き離される状態を示す。回転体Cが更に回転して
図27(a3)は、固定支軸SWから最も遠くに引き離される状態を示し、連結軸Pcbと回転体Cの回転軸Oと固定支軸SWとが1つの水平線X上に配されるときの状態を示す。
【0641】
連結板PLは棒体Bの一部で、連結板PL両端部に2つのピストンPS1とPS2とが装着され、連結板PLは筒体Mの上面WCに沿って移動する。連結板PLの下で筒体Mの底面WFより上の空間G はピストンPS1とPS2とに挟まれて、空間Gに複数の鋼球SAが詰込まれる。
2つのピストンPS1とPS2は相対的に一体となって、回転体Cの回転によって、筒体M内を往復し、
図27(a1)においても、
図27(a2)においても、下り勾配を鋼球SAと共に下降する。
【0642】
連結板PLの下は鋼球SAを収容する矩形断面の空間Gであり、空間G は1列路であって、
図26(b)で説明した2面体WSSが1列路の中央部の底面WFを貫通して出入りする。2面体WSSは出入りを調節して筒体Mに固定される。2面体WSSの2つの斜面は固定支軸SWから遠い横断側面WSS1と固定支軸SWに近い横断側面WSS2である。ピストンPS1とPS2はそれぞれ横断側面WSS1とWSS2に対面する。
【0643】
2面体WSSは筒体Mの片方の内壁の「空間Gの側面WS1」に固定され、2面体WSSの先端部とは「空間Gの他方の側面WS2」との間は、2個の鋼球が通過できる大きさの隙間HSで排出口HSである。また、隙間HSを中間にして隙間HSの両側の側面WS2に、
図24と同様の2つの半円形の挿入体WB1とWB2とが設置され、楔3球の発生を防いでいる。
【0644】
空間Gは隙間HSを境にして固定支軸SWから遠い側の室R1と固定支軸SWに近い室Rに区分される。筒体Mが固定支軸SWに向かって下り勾配から固定支軸SWに向かって上り勾配と変化する間に、空間G内の全ての鋼球SAは室R1内と室R2内の間を往復する。空間G内の全ての鋼球SAの下降方向は入れ替わるが、常に下り勾配を下降している。
【0645】
図27(a1)において、ピストンPS1が下降して、室R1内の鋼球に抵抗される。
図27(a2)において、ピストンPS2が下降して、室R2内の鋼球に抵抗される。ピストンPS1の速度もピストンPS
2の速度も、2面体WSSの抵抗を受けながら下降する鋼球の速度に従う。棒体Bの往復運動の往も復も2面体WSSの抵抗を受けながら下降する鋼球の速度に従う。回転体Cの回転速度も排出口HSから下降する鋼球に従う。
【0646】
室R1内と室R2内の間を往復する鋼球は隙間HSをゆっくりと通過して、ピストンPS1或いはピストンPS2は常に下降する鋼球SAを押圧しながら鋼球SAの下降方向にゆっくりと移動する。回転体Cもゆっくりと回転する。ピストンPS1もピストンPS2も鋼球SAを押し上げることはない。ゆえに、空間G内が1列路である必要はなく、筒状の1列路の底面WFと上面までの距離が鋼球直径の2倍以上であってもよい。
【0647】
図27(a3)に示すように、連結軸Pcbと回転体Cの回転軸Oと固定支軸SWとが1つの水平線X上に配されるとき筒体Mは水平で、その前後は、鋼球の動きが止まって隙間HSを通過しない。ピストンPS1とピストンPS2は鋼球SAを押圧せずに空走し、回転体Cは減速されない。
【0648】
図27(a3)に示す連結軸Pcbの位置を0度とし、連結軸Pcbの最も高い位置を90度とし、最も低い位置を270度とし、回転体Cが図中矢印イ方向に1回転した連結軸Pcbの位置を360度としたとき、連結軸Pcbが90度の位置から270度の位置まで図中矢印イ方向に回転する間は、筒体Mが鋼球を持ち上げることはない。連結軸Pcbが270度の位置から90度の位置まで図中矢印イ方向に回転する間は、筒体Mによって鋼球SAは持ち上がるが、ピストンPS1或いはPS2は鋼球SAを押し下げている。
【0649】
連結軸Pcbが0度の位置から90度の位置まで図中矢印イ方向に回転する間は、鋼球が持ち上げられて、鋼球を下降する方向にピストンPS1が押しはじめ、その後連結軸Pcbが90度の位置から180度の位置まで回転する間も、下り勾配を下る鋼球を押し続ける。その後連結軸Pcbが180度の位置から360度の位置まで回転する間も、ピストンPS2が下り勾配を下降する鋼球の表層面を押し続ける。
【0650】
連結軸Pcbが180度の位置から270度の位置まで図中矢印イ方向に回転する間は、固定支軸SWに近づく方向に下り勾配を下り切った鋼球が固定支軸SWから遠ざかる方向に新たに作られる下り勾配を下る。ピストンPS2が固定支軸SWから遠ざかりながら下降する鋼球を押圧する。
連結軸Pcbが270度の位置から360度の位置まで図中矢印イ方向に回転する間は、鋼球は持ち上げられ続けるが、ピストンPS2が固定支軸SWから遠ざかる方向に下降する鋼球を押し続ける。ピストンPS1或いはPS2が常に下り勾配を下降する鋼球の表層面を押し続ける。
【0651】
図1のピストンPSが下降する鋼球表層面を押し続けるように、ピストンPS1とピストンPS2の何れかが、常に下り勾配を下降する鋼球の表層面を押し続ける。回転体Cが何回も回転するので、下降する鋼球の表層面を押し続けて終わりがない。
【0652】
鋼球SAはピストンPS1或いはPS2に押圧されて僅かに加速されるが、ほとんど影響されずに下降して回転体Cを減速する。
回転体Cは常に下り勾配を下降する鋼球によって減速されるが、持ち上げる仕事をしながら減速される。
鋼球SAを持ち上げる仕事によって回転体Cが減速する大きさは、下り勾配を下降する鋼球によって減速する大きさに比べて十分に小さい。
【0653】
図27において、筒体Mが水平になるたびに、ピストンPS1とピストンPS2は鋼球SAを押圧せずに空走する。回転体Cは減速されるときとされないときとがあって、常に減速されていない。
図28に示す減速器は
図27(a)に示した減速装置と同じ3つ減速装置が同時に動作する減速器である。
図28において鋼球の図示を省略する。
【0654】
図28(a)に示すように3つの連結軸Pcb1、PC2、PC3は中心線Zを中心とする円周上に等分に配されて、中心線Zの周りを同じ速度で公転する。3つの連結軸Pcb1、PC2、PC3はそれぞれ中心線Zの周りを回転するクランクC1,C2,C3の先端部に装着され、それぞれに棒体B1,B2,B3が連結される。棒体B1,B2,B3それぞれは筒体M1,M2,M3に収容され、筒体M1,M2,M3は共通の固定支軸SWの周りに回転自在に軸支される。
【0655】
図28(b)において、回転体Cの回転は3本のチェーンCH1,CH2,CH3 によってクランクC1,C2,C3に伝達され、クランクC1,C2,C3の軸芯線ZC1,ZC2,ZC3は互いに隣り合う軸芯線と常に120度の交差角度を保っている。軸芯線とはリンク両端の連結軸を通る直線である。回転体Cが図中矢印イ方向に回転して、棒体B1,B2,B3それぞれは図中矢印方向に移動している。
【0656】
3つの連結軸Pcb1、PC2、PC3のそれぞれに
図27(a)に示した減速装置と同じ減速装置が取り付き、3つの同じ減速装置が同時に動作する。
図27において、連結軸Pcbが0度の位置と180度の位置にあるとき、回転体Cは減速されない。1回転で2回減速されない。
図28において、連結軸Pcb1が0度の位置から60度回転する度に回転体Cは減速されない。1回転で6回減速されない。
【0657】
図27(a)に示した減速装置と同じ4つ減速装置が同時に動作する減速器では1回転で8回減速されない。
回転体Cの回転軸Oを中心とする円周上に、等分に複数の連結軸Pcbが配せられ、
図27(a)に示した減速装置Aと同じ減速装置を複数個取り付けて、多くの減速装置が同時に動作するほど減速されない回数が増える。同時に減速される回数も増えて、回転体Cは減速されて一定速度で回転する。回転体Cの回転速度が脈動しなくなる。
【0658】
鋼球SAがピストンPS1或いはPS2に押圧されて僅かに加速されることによって回転体Cが減速する大きさと、鋼球SAを持ち上げる仕事によって回転体Cが減速する大きさは、ピストンPS1或いはPS2が「下り勾配を下降する鋼球SA」を押圧して回転体Cが減速する大きさに比べて十分に小さい。
【0659】
図29は回転体の1方向の連続回転を減速する減速器の動作説明図である。
図29(a)の平面図に示す横長流路は巻き付け可能なベルト上に設けられ、上記ベルトはロール成形されて、
図29(b)の姿図に示すように円柱PZの外周面PZ上となる。円柱PZは水平の回転軸Zを軸に回転し、水平の回転軸Zは「図示しない容器」の固定部Wに設けられる。
【0660】
図29(a)の平面図は円柱PZに巻き付けられる上記ベルトの展開図である。
横長流路の底面WF上に
図24(b3)に示した横断側面WS3と減速側面WS33とが設けられる。横断側面WS3は側面WS2と鈍角に交差し、横断側面WS3の末端部と側面WS1との間は2個或いは3個の鋼球が通過可能な排出口HS3である。
【0661】
減速側面WS33は側面WS1と鈍角に交差し、減速側面WS33の末端部と側面WS2との間は2個或いは3個の鋼球が通過可能な排出口HS33である。横断側面WS3と減速側面WS33とは向きが違うだけで同じ長さの同じ横断側面である。
【0662】
図29(a)の平面図に示す上記ベルトは、上端の入口INNと下端の出口OUTとが接続されてロール成形されて、
図29(b)の姿図に示す円柱PZの外周面上に巻き付けられる。円柱PZの外周面上は「横断側面WS3と減速側面WS33を備える底面WF」であって、底面WFと平行に
図29(c)の断面図に図示し
図29(b)の姿図に図示しない上面WCが設けられる。
【0663】
図29(c)に示すように、底面WFと上面WCとは同心円で、底面WFと上面WCとの間は筒状の1列路で、筒状の1列路に複数の鋼球SAが収容される。
筒状の1列路は流路断面が矩形の1列路で、矩形断面は至る所一定で、流路幅GLも流路高GHも至る所一定であって、底面WFと上面WCと互いに平行な両側面WS1、WS2とに囲まれる。
【0664】
図29(b)に示すように、ピストンPSは細い円柱PZZであって、円柱PZZ(ピストンPS )は「図示しない容器」の固定部Wに設けられる水平の回転軸ZZの周りに回転自在に軸支される。円柱PZZ(ピストンPS )は円柱PZの最も高い位置と接触しない程度に僅かに離れて設置される。
【0665】
水平の回転軸ZZは移動しない。ピストンPS は移動しない。円柱PZが回転して、
図29(a)の平面図に示す横長流路がピストンPSの下を通過する。
横断側面WS3と減速側面WS33はバネUに付勢されて底面WFから上に突き出されて、ピストンPSが鋼球SAに当接する位置で当たりGwに当接して静止している。
【0666】
図29(a)に示すように、ピストンPSは端部に行くに従い細くなる円柱で、横断側面WS3と減速側面WS33と斜めに交差するので、ピストンPSが横断側面WS3と減速側面WS33を横切るとき、ピストンPSはバネUを伸縮させながら横断側面WS3或いは減速側面WS33の上を通過する。横断側面WS3或いは減速側面WS33は徐々に底面WFから下に収容される。ピストンPSの通過を阻止しないようになる。
【0667】
図29(a)の平面図において、流路入り口INNは流路出口OUTより高く。鋼球SAは上から下に下降する。図中矢印イ方向は鋼球の下降方向である。
ピストンPSは下り勾配の最も高い位置の入口INN の位置に固定され、
図29(b)の姿図において、上記ベルト上の横断側面WS3と減速側面WS33とが図中矢印イと反対方向に移動する。
【0668】
ピストンPSは固定されていて、横断側面WS3と減速側面WS33は下から上に移動するので、ピストンPSが鋼球表層面SASを押圧して、底面WFの移動を減速する。
底面WFが移動する速度は、排出口HS3から単位時間内に排出される鋼球SAの量に従う。
図29(b)、(c)において、円柱PZの回転速度も排出口HS3から単位時間内に排出される鋼球SAの量に従う。
【0669】
排出口HS3と排出口HS33のそれぞれは排出口を図中破線で示す塞ぐ弁BHS3と弁BHS33とを備え、排出口HS3を塞ぐ弁BHS3はピストンPSが鋼球表層面SASを押圧し始めるとき底面WFから下に収容されて、排出口HS3を開く。減速側面WS33と弁BHS33とは底面WFの上にあって、弁BHS33はピストンPSが減速側面WS33と弁BHS33とによって受け止められた鋼球表層面SASを押圧するまで開かない。排出口HS3と横断側面WS3とはピストンPSがその上を通過した後に底面WFの上に再び出現する。
【0670】
或いは、ピストンPSが鋼球表層面SASを押圧し始めるとき排出口HS3を塞ぐ弁BHS3は底面WFから下に収容されて、減速側面WS33と弁BHS33とが底面WFの上に出現する。
排出口HS3から排出された鋼球SAは減速側面WS33と塞がれた排出口HS33によって受け止められ、ピストンPSが横断側面WS3を底面WFの下に収容すると、減速側面WS33
が次の横断側面となり、弁BHS33が底面WFの下に収容される。横断側面WS33より下にあって次の横断側面WS3が減速側面になって、弁BHS3と共に底面WFの上に出現する。
【0671】
横断側面WS3と減速側面WS33が底面WFから上に突き出されて鋼球SAに当接する位置と底面WFから下に収容されて鋼球に当接しない位置との間を揺動するように、同様の機構によって、排出口HS3、排出口HS33を塞ぐ弁BHSは塞ぐ位置と塞がない位置との間を揺動する。
【0672】
このような弁BHSがなくても、排出口HS3から排出された鋼球SAは、一部が排出口HS33から排出されても、大部分の鋼球SAは減速側面WS33によって受け止められる。
図29の減速器の始動時には、複数の鋼球は
図29(b)の姿図に示す円柱PZの外周面の最下部で筒状の1列路の底に貯まっている。
図29(a)の平面図において、入口INNと出口OUTとの間の中央部にたまっている。
図29(b)の姿図に示す円柱PZが高速に回転し始めて、複数の鋼球が持ち上げられて、最も高い位置にある鋼球がピストンPSに当接する。
【0673】
図29(a)の平面図において、「横断側面WS3と減速側面WS33とを備える流路」が上記ベルト上に複数追加される。
ピストンPSと横断側面WS3或いは減速側面WS33の間に挟まれ鋼球は、横断側面WS3或いは減速側面33に沿って移動する度に何度も進行方向を変えて蛇行しながら下降し、低速に移動する。
図29(b)の姿図に示す円柱PZは、低速に移動する鋼球に従って低速に回転する。
【0674】
図29(c)の断面図に示すように、横断側面WS3と減速側面WS33は円柱PZの外周面と垂直であっても、円柱PZの外周面上の横断側面WS3と減速側面WS33は下に行くほど水平面に近づき、最下端で鉛直になる。横断側面WS3と減速側面WS33が水平面になるとき排出口HSは鋼球が鉛直に落下する2個穴になる。
【0675】
横断側面WS3と減速側面WS33が水平面に近づくとき、円柱PZの外周面上の鋼球は円柱PZの外周面から離れて横断側面WS3或いは減速側面WS33を駆け上がる。横断側面WS3と減速側面WS33は鈍角側面と同様になる。また、排出口HSは2個穴になって、鋼球は2個穴から鉛直方向に落下する。
【0676】
図27~29に示す減速器は回転体の1方向の連続回転を減速する。
図27~29に示す回転体Cの回転軸は、
図30(d)において鉄の塊りWTを最上階まで上げるウィンチのモータの回転軸Cでもあり発電機の回転軸Cでもある。鉄の塊りWTはワイヤーWiをウィンチに巻き付けて最上階まで上げられ、下降して発電機の回転軸Cを図中矢印イ方向に回転させる。
【0677】
最上階まで上げた鉄の塊りWTを落下させて発電機を回すとき、発電機はすぐに超高速運転になる。発電機が回ることによって鉄の塊りWTの落下速度は減速するが、所定の速度で回すことはできない。減速機は必要になって、最上階まで上げた鉄の塊りWTのエネルギは発電機と減速器とを回すことに使われる。減速器を回すことに使われるエネルギは出来るだけ小さいほうが良い。
【0678】
通常の減速器は大きく減速するほど抵抗が大きくなる欠点がある。本発明の減速器は抵抗を用いずに大きく減速して、摩擦損失がほとんどない。本発明の減速器は減速時のエネルギロスを大幅に小さくする。
【0679】
図1において、ピストンPSを鉄の塊りWTと考えると、鋼球表層面SASを押圧する鉄の塊りWTの下降速度は、単位時間内に排出口から排出される鋼球の量に従う。鋼球表層面SASは鉄の塊りWTの落下を阻止する当たりであって、「当たり」が後退する。鉄の塊りWTが如何に重くても「後退する当たり」が鉄の塊りWTを支持し、鉄の塊りWTによって加速されない。
【0680】
ここで、鉄の塊りWTの落下で発電機を回すとすると、鉄の塊りWTが早く落下出来ないので発電機は速く回らない。逆に遅く回ると、鉄の塊りWTは鋼球表層面SASから離れる。このとき鉄の塊りWTの力は100パーセント発電機まわす力になる。ゆえに、鉄の塊りWTの位置エネルギは100パーセント電力に変わる。
【0681】
通常、発電機をゆっくりと回転させるために必要な力は、発電機だけではなく減速器をも回す力がいるが、本発明の「後退する当たりによる減速」では、発電機だけを回す力があればよいことになる。
【0682】
例えば、油圧シリンダを備える通常のドアクローザでは、ドアを付勢するバネには、ドアを回す力とシリンダ内の油を押し出す力が必要であり、シリンダ内の油を押し出す力がドアを回す力よりはるかに大きい欠点がある。上記鉄の塊りでドアを回す場合、ドアは鋼球表層面SASの降下速度より速く回らない。また、上記鉄の塊りの重力はドアを減速するためには使われず、100パーセントでドアを回す力になる。
【0683】
油圧シリンダを備える通常のドアクローザのように、ドアを付勢するバネにドアを回す力とシリンダ内の油を押し出す力が必要ではなく、ドアを回す力だけあればよく、ドアを開くときドアが重たく感じられない。
【0684】
鉄の塊りWTは「鉄の塊りの自重」を動力1にして動き、鋼球表層面SASは「容器内の鋼球の自重を動力2にして動く。それぞれの動力を別々である。
大きな動力1で動く物体A(鉄の塊り)は、小さな動力2で動く物体B(鋼球表層面)を加速させて自ら減速するが、鋼球表層面SASは加速されず鉄の塊りは減速する。小さな動力2で動く「後退する当たり」(鋼球表層面SAS)は、鉄の塊りに全く影響されずに所定の速度で後退する。
【0685】
このように抵抗を用いず、鉄の塊りWTは減速する。摩擦によるエネルギロスはないが、
図1において、排出された鋼球を容器に戻さなければ、莫大な量の鋼球が必要になる。
図27~29に示す減速器は容器内の鋼球を繰り返し使い、莫大な量の鋼球を必要としない。
【0686】
図27~29に示す減速器は回転体の1方向の連続回転を減速する。
図27~29に示す回転体Cの回転軸は、
図30(c)において鉄の塊りWTを最上階まで上げるウィンチのモータの回転軸Cでもあり発電機の回転軸Cでもある。鉄の塊りWTはワイヤーWiをウィンチに巻き付けて最上階まで上げられ、下降して発電機の回転軸Cを図中矢印イ方向に回転させる。
【0687】
例えば
図28に示す減速器において、回転体Cが上記発電機の回転軸Cに連動するものとすると、
図28に示す減速器において、下り坂を自重で下降する鋼球が大きな力で動こうとするピストンPSを阻止しながら後退し、回転体Cが減速して上記発電機の回転軸Cが減速する。
下り切った鋼球を持ち上げる僅かな力がエネルギロスになるが、鉄の塊りWTの位置エネルギを電気エネルギに変換するときのエネルギロスとしては非常に小さいと言っても過言ではない。
【0688】
このようにして最上階まで上げた鉄の塊りWTを非常にゆっくりと下降させることが出来る。発電機はすぐに超高速運転にならずに非常にゆっくりと回転する。このゆっくりとした回転を高速回転に変換して発電する。
【0689】
図30(a)、(b)に示す減速器は
図29に示した減速装置と同じ減速装置を3つ備え、3つの減速装置が同時に動作する減速器である。
図30に示す減速器において、円柱PZの回転が上記発電機の回転に連動するものとする。
図30(a)は側面図で、
図30 (b)は正面図で 、
図30(c)は
図30(a)に示す円柱PZの外面に貼り付けられる「
図29(a)示すベルト上の1列路」の展開図である。
図30において鋼球の図示を省略する。
【0690】
横断側面WS3から上方の底面WF上に
図24(
b)に示す「半円形の挿入体WB」が設置される。「半円形の挿入体WB」は半円ではなく半円の一部であって、小さくしても楔3球は起きない。
【0691】
図30(c)に示す底面WF1,WF2,WF3のそれぞれにおいて、横断側面WS3と側面WS2との交点を交点P1,P2,P3とすると、
図30(a)において、円柱PZが60度回転する度に交点P1,P2,P3の何れかがピストンPS1,PS2,PS3の何れかの下を通過する。円柱PZが1回転する度に6回排出口HSを下降する鋼球によって減速され、上記発電機は6回減速される。
【0692】
鉄の塊りWTはワイヤーWiをウィンチに巻き付けて最上階まで上げられるが、最上階が低い低層の建物においては、例えば、3個の鉄の塊りWTを3個のワイヤーWiでウィンチに巻き付けて最上階まで上げれば、3倍の高さの高層ビルの最上階に持ち上げたときと同じ大きさの位置エネルギを蓄えることになる。3個のうち1個の鉄の塊りWTを3個のうち1個のワイヤーWiで下降して発電機の回転軸Cを図中矢印イ方向に回転させる。
【0693】
図28に示す減速器が上記発電機を減速するときと同様に、
図30に示す減速器が上記発電機を減速するときも、鋼球を持ち上げるときのエネルギロスがあるが、鉄の塊りWTの位置エネルギを電気エネルギに変換するときのエネルギロスとしては非常に小さいと言っても過言ではない。
【0694】
図1に示す減速器は繰り返し使用するためには、下降して排出された鋼球SAを元あった場所に戻す作業が必要であるが、容器の上下を逆さまにして鋼球を戻そうとすると、排出口HSを入口にして鋼球を入れることになる。
図31に示すドアクローザは鋼球を戻すとき排出口HSをなくすものである。
【0695】
図31は「
図25に示し説明した筒体M」がピストンPSの往復とともに揺動し、ドアDが閉まるとき、筒体MがピストンPSの押圧方向に下り勾配になり、ドアDが開くとき、筒体MがピストンPSを引き戻す方向に下り勾配になるドアクローザの動作説明図である。また、下降した鋼球を収容した室R2を持ち上げて鋼球を室R1に戻すとき筒体Mから横断流路WS3が離れて鋼球SAにもピストンPSにも当たらない位置に退避する。
【0696】
図27において、回転体Cが図示しないドアDの開閉に連動して図中270度の位置から90度の位置の間を上下に往復するだけで、筒体Mが上下に揺動し筒体内の鋼球SAは往復するようにしている。
側面断面図の
図31(a1)、(a2)、(a3)に示す動作は側面断面図の
図27(a2)、(a3)、(a1)に示す動作と同じである。
図31の装置の構造と
図27の装置の構造とは、ピストンPS1とPS2との連結部分が異なり、「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3との設置にも違いがある。
【0697】
図27において、2つのピストンPS1とPS2は「筒体Mの上面WCに沿って移動する連結板PL」で連結されるが、
図31において、「筒体Mの底面WFに沿って移動する底面WFF」で連結される。ピストンPS1とPS2と底面WFとは筒体Mの内壁に沿って摺動する棒体Bの一部である。
蓋WCCはバネUに付勢されて、当たりGWに当接して筒体Mが水平になるとき筒体Mの上面WCになる位置に静止して、待機している。
【0698】
蓋WCCには
図24(c)に示す「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3とが設けられる。
図31(a)において筒体Mの上面WCの黒く塗りつぶした部分は蓋WCCが嵌まり込む開口部で、開口部に蓋WCCが嵌まり込んで、ピストンPS1とPS2との間の1列路に「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3とが設けられるようになる。
【0699】
横断側面WS3の片方の端部は筒体Mの側面WS1に接するようになり、他方の端部と筒体Mの側面WS2との間は2個の鋼球が通過できる排出口HSである。ピストンPS1とPS2と底面WFと筒体Mの両側面WS1、WS2とに囲まれる空間Gは1列路で、排出口HSを境にしてピストンPS1側の室R1とピストンPS2側の室R2とに区分される。
【0700】
横断側面WS3から上方の底面WF上に
図24(c)に示す「半円形の挿入体WB」が設置される。「半円形の挿入体WB」は半円ではなく半円の一部であって、小さくしても楔3球は起きない。
【0701】
回転体CはドアDと連動し、固定部Wに設けられる枢軸Oを軸に回転する。筒体Mは固定部Wに設けられる固定支軸SWの周りに回転自在に軸支され、棒体Bを収容する。
矩形断面の棒体Bは連結棒CCを介してクランクCに連結され、矩形断面の筒体Mに挿入され、筒体Mの内壁に沿って摺動する。ドアDの開閉はピストンPSの往復になる。
ピストンPS1とPS2と底面WFとに囲まれる筒体M内の空間Gに複数の鋼球SAが収容され、鋼球SAは下り勾配に沿って移動する。
【0702】
図31(a)に示すように、ドアが閉まるときに、回転体Cが図中矢印イ方向に回転して、筒体Mは図中矢印ロ方向に回転する。
また、ドアを開くとき、回転体Cが図中矢印イと反対方向に回転して、筒体Mは図中矢印ロと反対方向に回転する。
【0703】
図27(a2)、(a3)と
図31(a1)、(a2)に示すように、ドアDの全開時に回転体Cが図中270度の位置にあって、ドアDが閉まりだして図中0度の位置まで図中矢印イ方向に回転すると、鋼球SAは全て室R1に収容される。
図31(a)において1点鎖線h-hは水平面の断面を示す。
【0704】
筒体Mが水平になるときから室R1が室R2より高くなる間は蓋WCCが筒体Mの上面WCになる。蓋WCCが備える「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3は室2内の鋼球SAの下降を低速にする。ピストンPS1は低速になり、閉止するドアDは低速になる。
【0705】
図31(a3)に示すように、ドアDの全閉時には回転体Cが図中90度の位置にあって、ドアDを開き始めて回転体Cが図中90度の位置から図中0度の位置まで図中矢印イと反対方向に回転するまで、鋼球SAは
図31(b)の平面図に示すように、全て室R2に収容されたままであるが、図中0度の位置で筒体Mが水平になるまで、鋼球SAは室R1に戻る方向に移動しない。蓋WCCは筒体Mの上面WCになったままである。
【0706】
図中0度の位置からドアDを開き続けて図中270度の位置まで図中矢印イと反対方向に回転する間は、鋼球SAは室R1に戻る方向に移動し、蓋WCCは筒体Mの上面WCから離れる。鋼球SAは「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3が退避してなくなった1列路を下降して全て室R1に戻される。
【0707】
図31おいて、ドアDが閉まりだして途中まではドアDは減速されず、鋼球を戻す作業になる欠点があり、全閉位置から開く途中までは鋼球が戻されない欠点があった。
図32はこの欠点を除去するドアクローザの動作説明図である。
図32(a)において1点鎖線h-hは水平面の断面を示す。
図32(a1)はドアを閉めるときの側面図で棒体Bと筒体Mの断面図である。
【0708】
側面断面図の
図32(a)に示す動作は側面断面図の
図31(a)に示す動作と同じである。
図31の装置の構造と
図32の装置の構造とは、
図31の装置の室R1が1列路ではないことと、
図31の装置の回転体Cと棒体Bとが連結棒CCを介して連結されることに違いがある。その他は同じである。
【0709】
図32(a1)に示すように、ドアが閉まるときに、ピストンPS1が室R1内の鋼球SAを押圧するようになると、棒体Bが筒体M内で摺動しないようになり、棒体Bが筒体Mとが相対的に一体となる。
図32のリンク装置は4節回転機構になる。
図31(a1)において、回転体Cが図中矢印イ方向に回転して、筒体Mは図中矢印ロ方向に回転する。
【0710】
図32(a2)に示すように、ドアの全開位置からでも、全閉位置に至る途中の位置からであっても、ドアを開いたとき、或いはドアが止まって、ピストンPS1が室R1内の鋼球SAを押圧しないようになると、棒体Bが筒体M内で摺動するようになる。
回転体Cが図中矢印イと反対方向に回転してもしなくても、ピストンPS2が室R2内のまばらに収容される鋼球SAを押圧するようになるまで、筒体Mは図中矢印ロと反対方向に回転する。
【0711】
図32(a2)に示すように、筒体Mはドアを開いたと略同時に、自重で落下し図中矢印ロと反対方向に回転して、筒体Mが水平位置を通り過ぎる。蓋WCCは当たりGWに当接して静止し、筒体Mの上面WCから離れる。鋼球SAは「半円形の挿入体WB」と横断側面WS3が退避してなくなった1列路を下降して全て室R1に戻される。
【0712】
図中当たりGCCは棒体Bと連結棒CCとの交差角度ΘBCCを180度未満に維持する当たりで、連結棒CCの端部に装着され、
図32(a2)に示すように棒体Bに当接すると、交差角度ΘBCCはそれ以上大きくならない。交差角度ΘBCCが180度未満であれば、回転体Cが図中矢印イ方向に回転すると交差角度ΘBCCが減少する。交差角度ΘBCCが180度を超える、回転体Cが図中矢印イ方向に回転しても交差角度ΘBCCが増加する。
【0713】
空間Gは横断側面WS3を境にして、固定支軸SWから遠い室R1と固定支軸SWに近い室R2とを備え、室R1は流路幅GLが鋼球直径DSAの4倍以上で流路高GHが鋼球直径DSAの2倍以上の矩形断面の流路である。
横断流路R3が設けられる室R2入口付近の流路は、流路高GHHが鋼球直径DSAの1倍以上かつ2倍未満の矩形断面になる。
【0714】
図32(b1)は
図24(a)に示すa―aから下の容器の鉛直の1列路の部分だけを水平にした容器の断面図である。
図32(b2)は
図32(b1)に示す容器から「半円柱の挿入体WB」を取り除いた容器の断面図である。
図32(b1)において排出口HSの大きさLHSを鋼球直径DSAの2倍とすると、楔2球が出来ないだけでなく楔3球もできない。
【0715】
図32(b2)は排出口HSの大きさLHSを鋼球直径DSAの2倍から2倍未満にする容器断面図で、2倍から僅かに小さくすると、排出口HSは2個の鋼球が通過できず1個の鋼球が通過する排出口になる。僅かに小さくする高さhhを大きくするだけ長さllを大きくすればよい。容器内で楔2球が出来ないだけでなく楔3球もできない。
図32(a)に示す室R1と室R2の流路高の違う部分と同じである。
【0716】
図32(b2)の排出口HSにつながる流路は流路高GHが鋼球直径DSAの2倍未満の1列路であって、排出口HSから出る鋼球は側1列に並び変わり楔2球が出来ない。楔2球が出来そうな高さで、楔2球が崩れる高さが鋼球の下降速度が小さい。
【0717】
室R1と室R2の流路高の違いによって、筒体Mの上面WCに段差ができ、室R1と室R2のそれぞれの上面はWC1とWC2になる。ピストンPS1は大きくなる。
室R1はピストンPS1が摺動する範囲において1列路でなく、出口付近で1列路になる。
【0718】
ドアを開いた後にドアが閉まり始める当初は、
図32(a2)に示すように、室R2が高く室R1が低い状態で待機する。鋼球SAは室R1に貯まっていて、ピストンPS1が鋼球SAを押し上げようとするとき、室R1が1列路であれば殆ど抵抗なくピストンPS1が移動し、鋼球SAを押し上げる。しかしながら、室R1は余り持ち上がらない。
【0719】
室R1が1列路でないので、ピストンPS1は大きな抵抗を受けて室R1内で停止する。筒体Mと棒体Bとは1つのリンクになって、リンク装置は4節回転機構になる。筒体Mは固定支軸SWを軸に回転する。室R1は容易に持ち上がる。
【0720】
図32(a1)に示すように、室R1が室R2より高くなると、連結棒CCに設けられる当接面GCCが回転体Cに当接して、連結棒CCと回転体Cとが相対的に一体になって、1つのリンクになる。リンク装置は
図31と同じく、往復スライダクランク機構になって、ピストンPS1が鋼球SAを押し続ける。
鋼球SAが自重で下降して横断流路WS3の抵抗を受けながら室R1から室R2へ移動する。回転体Cはゆっくりと回転する。
【0721】
図33は、ドアの全閉時にだけ動作して全閉時のドアの激しい衝撃音を発しないようにするドアクローザの動作説明図である。
【0722】
図33において、運動体Dと移動体Iは、ともに溝Mに沿って移動する。回転体Cは移動体Iに設けられる枢軸Oの周りに回転自在に軸支され、トグルバネVに付勢され、移動体Iに設けられる当たりGiに当接して静止している。トグルバネVは片方の連結軸は回転体C移動体Iに設けられる支軸Siに固定支持され、他方の連結軸は回転体Cに設けられる支軸Scに可動支持される。
【0723】
図33(a1)は運動体Dが図中矢印イ方向に移動して、運動体Dに装着される車輪BBが「待機位置に待機する回転体C」に設けられる当接面Gbbに衝突して、回転体Cが枢軸Oを軸に図中矢印ロ方向に回転し始める状態を示している。
ラチェット爪Riは押しバネUiに付勢され回転体Cに設けられる当たりGrに当接して静止していて、固定部Wに設けられるラチェット歯Rwから離れている。ラチェット爪Riとラチェット歯Rwとは移動体Iの図中矢印イと反対方向の移動を阻止する1方向動作手段である。
【0724】
図33(a2)はトグルバネVが枢軸Oを横切ると、回転体Cは図中ロ方向に回転し続ける。ラチェット爪Riは当たりGrから離れてラチェット歯Rwの上に乗る。
棒体Bは支軸Scの周りに回転自在に軸支され、筒体Mは移動体Iに設けられる支軸Imの周りに回転自在に軸支され、棒体Bは筒体M内に挿入される。
【0725】
移動体Iと回転体Cと筒体Mと棒体Bからなるスライダクランク機構の構造と動作は
図31の減速装置と同じで、回転体Cは当たりGiから離れてゆっくりと回り始める。
状態図を省略するが、運動体Dが更に図中矢印イ方向に移動して、運動体Dに設けられる摺動面Kmが車輪Brに当接すると、運動体Dと移動体Iは相対的に一体になって溝Mに沿って図中矢印イ方向に移動する。
【0726】
車輪Brは枢軸Oの周りに回転自在に軸支されるリンクRbの先端部に装着され、リンクRbはバネVbに付勢されて移動体Iに設けられる当たりGrに当接して静止している。車輪Brが摺動面Kmに沿って移動しない限り、移動体Iは押しバネUを伸縮して運動体Dは減速する。押しバネUの片方の連結軸は固定部Wに設けられる支軸SUwに固定支持され、他方の連結軸は移動体Iに設けられる支軸SUiに可動支持される。
【0727】
移動体Iと運動体Dとが押しバネUを縮めながら更に図中矢印イ方向に移動して十分に減速すると停止する。押しバネUの復元力によって図中矢印イと反対方向に移動しようとする。ラチェット歯Rw上を滑走していたラチェット爪Riはラチェット歯Rwとかみ合って、移動体Iと運動体Dとを図中矢印イと反対方向に移動しないようにする。
【0728】
運動体Dが停止しても、「運動体Dを付勢する図示しないバネUd」は運動体Dを押し続けている。回転体Cは回り続けて、
図33(a3)に示すように、回転体Cに設けられる当たりGriがリンクRbを図中矢印ロ方向に回転させる。車輪Brが摺動面Kmに沿って移動すると、運動体Dが車輪Brを摺動面Kmに沿って更に移動させながら図中矢印イ方向に移動する。運動体DがドアDであれば全閉に至る。
【0729】
回転体Cと筒体Mと棒体Bからなるスライダクランク機構はドアDが全閉直前で停止するに遅れて動作するタイマーであって、移動体Iと運動体Dとが相対的に一体になって移動し始めてか停止するまでより長い時間経過後に動作するように設定され、移動体Iと運動体Dとの力の伝達を切断する。
【0730】
図33(a4)は装置を初期化する動作説明図で、運動体Dが図中矢印イと反対方向に移動する状態を示す。
車輪Brが摺動面Kmから離れて、バネVbがリンクRbを当たりGriに当接するまで図中矢印ロと反対方向に回転させる。車輪BBが移動体Iに設けられる摺動面Kiに沿って移動して、回転体Cを図中矢印ロと反対方向に回転させる。トグルバネVが枢軸Oを横切ると、トグルバネVが回転体Cを図中矢印ロと反対方向に回転させて、装置は
図33(a1)に示す初期状態に戻る。
【符号の説明】
【0731】
PS ピストン
SL シリンダ
SLB ロート部
SA 鋼球
HS 排出口
G 隙間
DSA 鋼球直径
【要約】
【課題】夜間電力で鉄の塊りをビルの最上階まで上げて蓄えた位置エネルギを必要時に電力に変換する発電機の回転速度を所定の速度に制御する減速器を提供する。
【解決手段】砂時計の砂の表層面をピストンで押すと、いくら重いピストンでも降下速度は所定の速度に保たれる。全くといってよいほど発電機の減速にエネルギを消費しない。
【選択図】
図30