(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】弾性装着成形機、特にプレス機を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
B30B 15/14 20060101AFI20241107BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20241107BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B30B15/14 N
B30B15/00 A
F16F15/02 A
(21)【出願番号】P 2023506069
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2021062445
(87)【国際公開番号】W WO2022022871
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】102020120012.9
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514312549
【氏名又は名称】リゼガ エスエー
【氏名又は名称原語表記】LISEGA SE
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,グンナー
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290126(JP,A)
【文献】特開2014-40129(JP,A)
【文献】米国特許第4785732(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 15/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路結合又は力制御の弾性装着成形機(1)を動作させるための方法であって、
駆動装置に動作可能に接続されたラム装置(5)の作動ストロークが駆動装置(4a、4b)によって実行され、それぞれの作動ストローク中の前記ラム装置の運動により、前記ラム装置に位置する上側工具(6)と工具台に位置する下側工具(7)との相互作用において、所定の成形プロセスがワークピース上で実行され、
前記弾性装着成形機(1)の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が、機械ハウジング(3)と支持基礎(9)との間に位置する少なくとも1つの加速度センサ及び/又は運動センサによって、前記弾性装着成形機(1)の動作(T0)中に、支持基礎に対して検出され、
前記
弾性装着成形機(1)の動作が、機械制御部によって制御され、
前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))を検出するための前記少なくとも1つの運動センサの出力信号が、前記
弾性装着成形機(1)を制御するための機械制御部への入力信号として供給されて、
前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動に対抗するように慣性力及び/又は慣性モーメントを発生させるために、および、前記作動ストロークの開始及び/又は前記駆動装置の不均衡により動作中に発生する慣性力及び/又は慣性モーメントが少なくとも部分的に補償されるようにするために、前記作動ストロークの開始の時間が、前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))の瞬時位相位置に、前記機械制御部によって適合されて、
前記機械制御部が、前記作動ストロークの開始の時間に、及び/又は、前記駆動装置(4a、4b)と前記ラム装置(5)との動作接続を確立するために、前記駆動装置と前記ラム装置(5)との間に位置するカップリング装置を起動することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ラム装置(5)のクラッチ係合又は前記作動ストロークの開始の時間が、前記
弾性装着成形機(1)の剛体歪みの経過の最初の時間導関数の最大値の範囲の期間に合わせられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作動ストロークの開始が、前記
弾性装着成形機の前記剛体歪みの経過の最初の時間導関数が最大値に達する直前に実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が、前記支持基礎と前記
弾性装着成形機との間に位置する軸受装置(8)に位置する
運動センサによって検出されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が、前記支持基礎と前記
弾性装着成形機との間に位置する軸受装置(8)に位置する加速度センサによって検出されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持基礎(9)に対する前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が、前記弾性装着成形機(1)の剛体シミュレーションモデルに基づいて計算され、前記作動ストロークの開始の時間が、前記少なくとも1つの運動学的変数の計算された瞬時値に応じて定義されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持基礎に対する前記弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が測定され、同期信号が、測定信号及び/又は機械監視装置からの動作信号に応じて導き出され、前記同期信号により、前記シミュレーションモデルによって計算された前記運動学的変数の時系列が、前記
弾性装着成形機(1)の実際の剛体運動に同期されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))に加えて、前記
弾性装着成形機(1)の前記ハウジング(3)に対する前記
弾性装着成形機の所定の部分の弾性変形運動の1つの変数が検出され、前記
ラム装置(5)のクラッチ係合の時間が、前記
弾性装着成形機の前記所定の部分の前記弾性変形運動に対抗するように、前記クラッチ係合中に慣性力及び/又は慣性モーメントを発生させるために、前記
弾性装着成形機(1)の前記所定の部分の前記
弾性変形運動の前記1つの変数の瞬時位相位置に適合されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))の現在の振幅値が、所定の閾値と比較され、前記現在の振幅値が前記所定の閾値よりも小さいときに、前記
弾性装着成形機のサイクル速度が増加されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記作動ストロークを開始するために操作者により、両手起動により引き起こされる信号の事象の追加の条件下で、前記作動ストロークが開始されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
駆動装置(4a、4b)と、
作動ストロークを実行するように前記駆動装置に動作可能に接続されたラム装置(5)とを備える
弾性装着成形機(1)であって、
それぞれの作動ストローク中の前記ラム装置の運動により、前記ラム装置に位置する上側工具(6)と工具台に位置する下側工具(7)との相互作用において、所定の成形プロセスをワークピース上で実行することができ、
前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が、運動センサによって検出され、
前記
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))を検出するための前記少なくとも1つの運動センサの出力信号が、前記
弾性装着成形機(1)を制御するための機械制御部への入力信号として供給されて、当該
弾性装着成形機(1)の前記剛体運動の前記少なくとも1つの運動学的変数(s(t)、v(t)、a(t))が決定されて、
前記運動センサは、前記支持基礎と前記
弾性装着成形機(1)との間に位置する軸受装置(8)に位置していて、
前記
弾性装着成形機(1)は、弾性的な前記軸受装置(8)によって前記支持基礎(9)上に弾性支持されていて、
前記
弾性装着成形機(1)の前記機械制御部は、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計され構成されていて、
前記駆動装置と前記ラム装置(5)の間に配置されたカップリング装置は、前記駆動装置(4a、4b)と前記ラム装置(5)の間の動作接続を確立するために設けられていることを特徴とする
弾性装着成形機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有する経路結合又は力制御された弾性装着成形機を動作させるための方法である。
【背景技術】
【0002】
このような経路結合又は力制御弾性装着成形機の動作又は制御が、当分野で周知である。このような機械は、実施形態に応じて、加圧成形用、引張圧縮成形用、曲げ成形用、又はスラスト成形用に構成され得る。経路結合成形機、例えば経路結合プレス機の場合、ラム装置(ベア)の移動は、機械の駆動装置の運動学によって決定される。駆動装置は、一般に、電気モータによって実行され、電気モータは、作動ストロークを開始するためにクラッチ係合によりラム装置に接続され得るフライホイールを駆動する。力制御成形機は、制御可能な駆動装置、特に静水圧駆動装置、例えばポンプ又はサーボモータ駆動装置を有し、それにより、駆動装置に恒久的に動作可能に接続されたラム装置が、駆動装置のそれぞれの起動後に、成形プロセスを実行するように作動ストロークを開始するために動かされる。操作者制御機械の作動ストロークの開始及び実行の時間は、一般に、いわゆる両手起動によって生じる。
【0003】
経路結合成形機及び力制御成形機に共通するのは、これらの成形機が、成形プロセスの実行中に発生する慣性力及び/又は慣性モーメントを受けることである。慣性力及び/又は慣性モーメントは、例えば、恒久的に回転する駆動軸により、ラム装置のクラッチ係合及び切離しにより、又は力制御成形機の駆動装置の不均衡により生じ、成形機の転動及び/又は傾動につながることがある。このような運動は、機械の機械的応力を増大させ、場合によっては、成形されるワークピースの寸法公差の不適合につながることがある。発生した慣性力又は慣性モーメントは、支持基礎、例えば基礎地盤における成形機の弾性軸受により、成形機及び弾性軸受によって規定されるこの振動システムの剛体モードを励起し、それにより、成形機が弾性軸受によって載る基礎に対する、記載された機械の転動及び/又は傾動を生じさせる。
【0004】
このような成形機の本体全体の望ましくない運動に対して作用する有効な対策、特に、当分野でダンパと呼ばれる適切に適合された追加の振動システムを、固定すべき質量体に設置することによる振動現象の根絶が、当分野で知られている。例えば、特許出願公開DE102008046763A1は、慣性モーメント補償を伴う一般的な高速プレス機に関し、ラムの反力を引き受けるように機能する釣合い重りが設けられ、釣合い重りの運動の位相が、ラムの運動の位相に適合される。特許出願公開DE2806584も、一般的な偏心プレス機に関し、可動質量部を有する補償装置が質量平衡のために配置され、偏心軸に対して維持された角度を有する逆位相で質量部を駆動するための駆動要素を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それぞれの成形機にこのような補償装置を設けることは、装置の費用増加に関連する。
【0006】
特許出願公開JP2008290126Aはプレス機の成形動作に関する。このプレス機は、基礎上のスプリングダンパシステムに支持される。メインフレームの移動は、変位センサによって検出される。さらに、第1の時間導関数を検出するために速度センサが設けられる。クランクドライブの角速度と角位置は、プレス機の振動を低減するために影響を受ける制御変数である。
【0007】
本発明の目的は、従来の弾性装着成形機について、従来技術で必要とされる装置に対する多額の費用をかけることなく、少なくとも動作中の成形機の、記載された剛体運動の減衰を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、方法に関して、請求項1の特徴を有する弾性装着成形機を制御するための方法により達成される。
【0009】
本発明による方法によれば、駆動装置に動作可能に接続されたラム装置の作動ストロークが実行され、この作動ストロークで、それぞれの作動ストローク中のラム装置の運動により、特に、ラム装置に位置する上側工具と工具台に位置する下側工具との相互作用において、所定の成形プロセスがワークピース上で実行され、作動ストロークの開始及び/又は駆動装置の不均衡により動作中に発生する慣性力及び/又は慣性モーメントが、少なくとも部分的に補償される。本発明による方法は、弾性装着成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数が、弾性装着成形機の動作中に検出され、特に連続して検出され、成形機の剛体運動に対抗するような慣性力及び/又は慣性モーメントを発生させるために、作動ストロークの開始の時間が、剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数、特に経路s(t)、速度v(t)、及び/又は加速度a(t)の瞬時位相位置に適合されることを特徴とする。
【0010】
本発明による方法は、成形機の転動及び/又は傾動の振幅を減少させる。成形機のこのような転動又は傾動は、成形機の剛体運動を実質的に構成し、この剛体運動は、成形機自体と成形機を支持基礎に弾性装着する弾性軸受装置とにより形成される振動システムにおいて発生する慣性力及び/又は慣性モーメントによって励起される。本発明によれば、従来技術で必要とされる装置に対する多額の費用をかけることなく、この振動の低減を提供することができる。
【0011】
代わりに、本発明による方法において、作動ストロークの開始の制御は、振動システムの成形機の現在の剛体運動に応じて行われ、それにより、成形機の現在の剛体運動に対抗するように、ラム装置のクラッチ係合及び/又は駆動装置の不均衡により生じる慣性力及び/又は慣性モーメントが、作動ストロークの位相正確な開始によって、成形機の剛体運動の振動システムに導入される。剛体運動の励起は、発生する慣性力及び/又は慣性モーメントによって行われ、例えば、所定の振幅及び期間を有する衝撃型であり得る。
【0012】
操作者制御機械の場合、その限りにおいて、操作者による両手起動後に、前述した本発明による方法が、成形機の動作を制御するために実行され、すなわち、2つの起動後に、弾性装着成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数が、弾性装着成形機の動作中に検出され、成形機の剛体運動に対抗するように慣性力及び/又は慣性モーメントを発生させるために、作動ストロークの開始の時間が、剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数の瞬時位相位置に適合されてよい。本発明によれば、しかしながら、操作者制御機械の場合、成形機の動作を制御するための本発明による方法は、成形機の動作開始後に恒久的に実行され又は恒久的に行われ、その間に、弾性装着成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数が検出され、成形機の剛体運動に対抗するように慣性力及び/又は慣性モーメントを発生させるために、作動ストロークの開始の時間が、剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数の瞬時位相位置に適合され、作動ストロークを開始するために操作者により両手起動が実行された後にのみ、作動ストロークが開始されてもよい。ここでは、本発明による成形機の動作を制御するように装備され構成されている成形機の制御装置は、操作者の両手起動によって誘発される信号を、特に電気信号として検出し、本発明による方法を実施するためにその信号を処理することができる。
【0013】
したがって、本発明による方法は、制御されない動作モードに比べて、成形機の歪みを大幅に低減させる。弾性装着成形機を動作させるための本発明による方法は、より小さい運動の伸び又は振幅を有する成形機の状態をより迅速に実現することを可能にする。したがって、場合によっては、次の作動ストロークをより早く開始することができ、動作中のサイクルシーケンスがより高速であるという利点を有し、これは、それぞれのワークピースを正確に位置決めする必要がある成形機の自動送給に特に有利であり得る。さらに、成形機の弾性軸受の応力が小さいため、存在する軸受の寿命を延ばすことができ、又は、より小さい寸法の軸受を使用することができる。
【0014】
弾性装着成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数は、例えば、それぞれの静止位置からの経路若しくは角度歪み、これらの変数の時間導関数、或いは、それぞれの速度及び/若しくは加速度を決定するために成形機の動作の前に又は成形機の動作と同時に実行された、成形機の剛体運動の数値シミュレーションの対応する結果であってよいことに留意すべきである。弾性装着成形機の運動を説明するために、適切な運動学的変数を、特にシステムの異なるモードに関して定義することができる。本発明による方法を、基本的に成形機の剛体運動のすべての自由度に適用することができる。
【0015】
したがって、剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数の検出が、例えば、運動センサによる測定によって、及び/又は、特に成形機の剛体運動のシミュレーションの範囲内での計算によって実行されることが、本発明の範囲に含まれる。
【0016】
本発明のさらなる有利な特徴及びさらなる発展が、以下の一般的な説明、図面、図面の説明、及び従属請求項に示される。
【0017】
成形機の動作は、機械制御部によって制御されることが適切であり得、機械制御部は、場合によっては、作動ストロークの開始時に操作者により誘発される両手起動信号の存在後に成形プロセスを実行するために駆動装置を起動し、及び/又は、成形プロセスを実行するように、駆動装置とラム装置との動作接続を確立するために駆動装置とラム装置との間に位置するカップリング装置を起動する。第1の場合は、駆動装置がラム装置に恒久的に接続される力制御成形機の成形機であり得、第2の場合は、駆動装置とラム装置との動作接続を、制御可能なカップリングにクラッチ係合することによって確立することができ、クラッチの切離し時に解放することができる、経路結合成形機であり得る。
【0018】
説明したように、弾性装着成形機は、発生する慣性力及び/又は慣性モーメントにより励起される剛体運動を実行することができる。励起、特に剛体運動の励起が作動ストロークの開始中又はクラッチ係合中に実質的に実行される、特にストローク駆動成形機の動作中に、作動ストロークを開始するため又はラム装置にクラッチ係合するための最適な時間を調節するように、時間範囲を適切に選択することができることが明らかになっており、この時間範囲には、成形機の歪みの経過の最初の時間導関数の最大値が位置する。
【0019】
クラッチ係合時間は、この最大値に達する直前に位置することが好ましい。調和振動に関して、直前とは、実施形態に応じて、成形機の歪みの経過の最初の時間導関数におけるこの最大値に達する前の「<30°」、「<20°」、特に「<10°」を意味し得る。励起の瞬間は、成形機の歪みの経過の最初の時間導関数におけるこの最大値に達するのに完全に一致してもよい。基本的に、ラム装置のクラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間は、成形機の運動が、成形機の一時的な歪みの反対方向である方向に生じるように、すなわち、励起が反対位相で行われるべきであるように選択される。
【0020】
特に力制御成形機の動作中、剛体運動の励起が、ラム装置の作動ストローク及び/又は戻りストローク中に駆動装置の不均衡により実質的に生じ、特に作動ストローク及び/又は戻りストローク中に衝撃的に生じ得る成形機の剛体運動の励起が、成形機の歪みの経過の最初の時間導関数の最大値が位置する期間内に発生する慣性力及び/又は慣性モーメントにより生じるように、作動ストロークを開始する時間を適切に選択することができることが明らかになった。作動ストロークの開始の時間は、剛体運動の励起の時間がこの最大値に達する直前に位置するように生じ得ることが好ましい。剛体運動の場合におおよそ想定され得る剛体運動の調和振動に関して、「直前」とは、実施形態に応じて、成形機の歪みの経過の最初の時間導関数におけるこの最大値に達する前の「<30°」、「<20°」、特に「<10°」を意味し得る。励起の時間は、成形機の歪みの経過の最初の時間導関数におけるこの最大値に達するのに完全に一致してもよい。基本的に、剛体運動の励起の時間は、成形機の運動が、成形機の一時的な歪みの反対方向である方向に生じるように、すなわち、励起が反対位相で行われるべきであるように選択される。
【0021】
ラム装置のクラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間の制御に必要な情報を提供するために、支持基礎に対する成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数を、少なくとも1つの運動センサによって検出する。この運動センサは、例えば、変位センサ、速度センサ、又は加速度センサなどの歪みセンサとして構成されてよい。実施形態に応じて、運動センサは、特に成形機自体又は軸受装置に配置されてよい。運動センサ、特に加速度センサは、軸受装置の弾性変形、例えばエラストマーの弾性変形の大きさを検出することができ、その大きさから、ラム装置の最適な時間的クラッチ係合又は作動ストロークの開始について、成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数を決定することができ、特に計算することができる。
【0022】
本発明による方法を実施するための運動センサとして、特に成形機の剛体運動の歪み、速度、及び/又は加速度を検出する多数のセンサが基本的に可能である。運動センサは、例えば、プランジャコイルセンサ又は抵抗センサとして構成されてよい。運動センサを光学センサとして構成することも可能である。
【0023】
少なくとも運動センサのそれぞれの出力信号が、対応する信号を提供するための成形機の機械制御部の入力信号として、成形機に関連付けられた制御装置に供給される。この信号供給は無線であってもよい。複数の運動センサを設けることができると好ましく、これらの運動センサは、成形機の剛体運動の1つ又は複数の運動学的変数を検出、特に測定し、例えば、本発明による方法を実行するために、それらの運動学的変数を、成形機の機械制御部などの中央制御装置に提供する。
【0024】
特に成形機が複雑な剛体運動を実行する実施形態において、支持基礎に対する成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数が、剛体シミュレーションモデルに基づいて計算され、クラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間が、少なくとも1つの運動学的変数の測定され計算された瞬時値に応じて定義されると適切であり得る。例えば、クラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間は、基本的に計算された運動学的変数の後に調節されてよく、測定された瞬時値は制御変数として使用され、所定の差分値がある場合、制御は安全上の理由で中断され、動作は終了する。しかしながら、クラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間は、測定された運動学的変数の後に調節されてもよく、計算された瞬時値は制御変数として使用され、所定の差分値がある場合、制御は安全上の理由で中断され、動作は終了する。
【0025】
成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数は、弾性装着成形機の剛体シミュレーションモデルに基づいて、支持基礎に対して計算され、ラム装置の作動ストロークの開始又はクラッチ係合の時間は、シミュレーションによって計算された少なくとも1つの運動学的値の瞬時値に応じて定義されてもよい。シミュレーションを成形機の実際の動作につなげるために、支持基礎に対する弾性装着成形機の剛体運動の運動学的変数が測定され、同期信号が、測定信号及び/又は機械監視装置からの動作信号に応じて導き出され、この同期信号により、シミュレーションモデルによって計算された運動学的変数の時系列が、成形機の実際の剛体運動に同期されることが好ましい。
【0026】
振動システムに導入された慣性力及び/又は慣性モーメントが成形機の瞬時の剛体運動に対抗するように、前述したラム装置のクラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間を定義するために、特に成形機の剛体運動又は他の動作パラメータの1つ又は複数の運動学的変数を測定するように配置され得る、従来の成形機に設けられた機械監視装置の出力信号を、成形機の剛体運動のシミュレーションの結果と共に使用してもよい。したがって、本発明による方法は、従来の成形機を制御するための従来の方法と比べて、装置に対する追加の費用をかけることなく、弾性装着成形機を制御するように実行され得る。
【0027】
特定の成形機及びその動作に応じて、成形機は、作動ストロークの実行中に、機械のある部分又は部品に対して弾性変形を受けることもある。本発明による成形機の動作を制御するようにそのような弾性変形運動を少なくとも部分的に低減させるために、成形機のハウジング又は機械基礎に対する歪みなどの、成形機の所定の部分又は部品の弾性変形の変数を検出してもよく、ラム装置のクラッチ係合又は作動ストロークの開始の時間は、成形機の所定の部分又は部品の弾性変形運動に対抗するように、クラッチ係合又は作動ストロークの開始中に慣性力及び/又は慣性モーメントを発生させるために、成形機の所定の部分又は部品の変形運動の1つの変数の瞬時位相位置に適合される。そのような部分又はそのような部品は、例えば、エラストマー体若しくはショックアブソーバなどの減衰要素、又はさらには成形機内で発生する応力に起因する弾性曲げ線部分も含んでよく、したがって、そのような部分又はそのような部品は、成形機内に位置し、その限りにおいて、成形機を支持基礎に弾性支持する軸受装置とは異なる。
【0028】
ラム装置の位相正確クラッチ係合又は作動ストロークの開始による、記載された成形機の剛体運動と、同様に成形機内の弾性変形運動とを低減させてもよく、運動の低減は、成形機の剛体運動又は成形機の部分若しくは部品の弾性変形運動に対して優先的に設定され、或いは、両方の運動又は歪みをほぼ等量で低減させるように妥協する。ここでは、等量とは、成形機の剛体運動及び弾性変形のそれぞれの歪み振幅が、機械内で実質的に等しく低減されることを意味し得る。
【0029】
成形機を動作させるため又は成形機の動作を制御するための本発明による方法は、成形機の剛体運動又は成形機の部分若しくは部品の弾性変形を低減させ、特に、この方法を使用して、従来の方法と比べて高い作業サイクル速度を調節することにより、本発明による方法を実施するときに、成形される製品のより高い製造速度を実現することができる。動作中に、運動検出器若しくはセンサにより測定された、又はシミュレーションによって計算された、成形機の剛体運動の少なくとも1つの運動学的変数、例えば所定の方向への歪みの現在の振幅値が、所定の振幅閾値と比較され、現在の振幅値が所定の閾値よりも小さいときに成形機のサイクル速度を増加させてもよい。成形機を動作させるための本発明による方法は、そのような歪み振幅の調整を含んでもよく、歪み振幅の記載された閾値が、例えば基準変数として使用され、作動ストロークのサイクル速度が調整の制御変数を表すことができる。
【0030】
さらに、本発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている成形機、特にプレス機に関する。例えば、そのような成形機構は、実施形態に応じて、クランクギア又はカムギアを有することのできる経路結合成形機構であってよい。特にプレス機の設計において、駆動装置は電気モータを備えることができ、電気モータは、記載したクランクギア又はカムギアである主ギアに、カップリング装置によってエネルギーを送るフライホイールを駆動する。例示的な成形機は、スライダクランクプレス機、偏心プレス機、及びトグルプレス機である。さらに、本発明による成形機は、力制御成形機であってもよく、駆動装置は、例えばトルクモータとも呼ばれる電気サーボモータにより直接駆動装置として提供されてもよく、又は、圧力媒体に貯蔵されたエネルギーが、ポンプ駆動装置上のシリンダによって機械エネルギーに変換される静水圧駆動装置を備える。本発明の命名では、力制御成形機及び経路結合成形機の場合に、機械の上側工具を保持するラム装置が、駆動装置によって動かされる。
【0031】
以下で、添付図面を参照しながら、実施形態及びその変形例の記載により、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による方法を実行するための、プレス機としての本発明による成形機の正面図である。
【
図2】
図1の機械の傾動/転動を記号的に示す図である。
【
図3】本発明による方法の実施形態のプロセスチャートである。
【
図4a】本発明によるラム装置の位相最適化クラッチ係合のために本発明による方法を実行するときの、動作中における、剛体運動中の成形機の歪みs(t)及び時間導関数v(t)の時系列を示す図である。
【
図4b】ラム装置の非位相最適化クラッチ係合の場合の、
図4aに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、弾性装着成形機の動作を制御するための本発明による方法を実行するように、本発明により設計され構成されている、弾性装着プレス機1の構造の正面図である。この成形機は、機械フレーム3に載るスタンド2を備える。記載された実施形態において、ここでは電気モータ4aとモータにより駆動される振動質量体4bとを備える駆動装置が、制御可能なカップリング装置(図において隠れている)上のラム装置5又はベアと協働し、作動ストロークを実行するために、駆動装置4a、4bと制御可能なカップリング上のベア5との動作接続を調節することができ、次の作動ストロークの準備をするために動作接続を切り離すことができる。ラム装置は、その端部で上側工具6を保持し、上側工具6は、機械フレーム3に位置する下側工具7と協働して、ワークピース(図示せず)の成形プロセスを実施する。機械フレームは、スタンド2を介して駆動装置とベアとを保持し、それ自体が、記載された実施形態においてエラストマー体を各々含む複数の弾性軸受要素8によって、基礎地盤又は支持基礎9に載っている。別の実施形態、特に経路結合成形機において、プレス機は、ラム装置5に剛性接続されたサーボモータを有する駆動装置を備えてもよい。
【0034】
そのような成形機のすべての実施形態において、プレス機1の転動及び/又は傾動は、一般に、駆動装置とラム装置とを接続するためのクラッチ係合中、又は作動ストロークの開始中、及び/又は作動ストロークの実行中に、例えば駆動装置の不均衡のために、慣性力又は慣性モーメントそれぞれの発生により生じる。
【0035】
力制御成形機の場合、成形機の剛体運動を励起するこのような慣性力又は慣性モーメントは、特に駆動装置の不均衡により発生し得、その限りにおいて、成形機のラム装置の作動ストロークの時間範囲全体の間に発生する。経路結合成形機の場合、成形機の剛体運動を励起するこのような慣性力又は慣性モーメントは、特に、駆動装置とラム装置との間に位置するカップリングのクラッチ係合中、又は作動ストロークの開始中に発生し得る。駆動装置が不均衡を受ける場合、追加の励起トルク又は励起力が発生し得る。
【0036】
図2は、
図1のプレス機の起こり得る傾動Kを振動として記号的に示す。弾性軸受要素8により基礎地盤9に支持されたプレス機1によって形成される振動システムの剛体運動の起こり得るモードが、基本的に励起され得る。
【0037】
説明したように、
図1のプレス機は、経路結合成形機として構成され、成形機の剛体運動を励起する慣性力又は慣性モーメントが、駆動装置とラム装置との動作接続を調節するためのカップリングのクラッチ係合中に発生する。記載された実施形態において、
図1の成形機の動作は、作動ストロークの開始の時間に、駆動装置とカップリングとの動作接続を確立するために駆動装置とラム装置との間に位置するカップリング装置を制御する機械制御部によって制御される。
【0038】
本発明による方法又は本発明による成形機の動作を実行するために、弾性装着成形機1の剛体運動、例えば歪みの少なくとも1つの運動学的変数が、動作中に検出され、ここでは1つ又は複数の運動センサである対応するセンサによって測定され、作動ストロークの開始の時間、ここでは駆動装置とラム装置との動作接続を生じさせる時間が、クラッチ係合中に発生する慣性力及び/又は慣性モーメントが成形機の剛体運動に対抗するように調節されることが重要である。別の実施形態において、剛体運動、例えば歪みの少なくとも1つの運動学的変数が、成形機の剛体運動のシミュレーションによって計算されてもよく、運動センサの出力信号が、成形機の運動を検出するために使用されてよく、又は別の動作信号が、成形機の実際の運動とシミュレーションとを同期させるために使用されてよい。
【0039】
図1に示すプレス機のカップリングの位相正確クラッチ係合のための本発明による方法が、
図3に示され、記載された実施形態において、成形機の中央機械制御部によって実行される。ここでは、成形機が動作モードになることから始まり、解放信号が提供された後、特に操作者により誘発された両手起動信号の後に、ラム装置の作動ストロークがクラッチ係合によって開始され、作動ストローク中に、ラム装置又はラム装置により保持される上側工具と工具台に位置する下側工具との相互作用において、所定の成形プロセスがワークピース上で実行され、ラム装置は次の戻りストロークで戻り、さらなる解放信号が提供された後にさらなる作動ストロークがクラッチ係合により開始されるまで、駆動装置とラム装置との動作接続は、クラッチの切離しによって抑制される。
【0040】
記載された実施形態において、クラッチ係合は、運動学的変数の位相位置、ここでは静止位置からの成形機の歪みに適合される。
図3に示す方法ステップの開始点は、駆動装置がラム装置から分離されている動作状況であり、解放信号が提供された後に、クラッチ係合の時間が決まり、成形機は、実施形態に応じて、実行される先行の励起によって生じる剛体運動を実行し、この剛体運動は、特に、軸受要素の減衰特性により異なって減衰される。完全自動成形機を用いて本発明による方法を実行するときには、解放信号の存在の確認が不要になり得ることに留意すべきである。
【0041】
図3の方法ステップにおいて、ステップ100で、成形機1の剛体運動の現在の歪みが、運動センサにより測定され、ステップ110で、機械制御部は、歪みの経過の最初の時間導関数、すなわち速度が剛体運動の最大値の範囲に位置するかどうかを確認するように設計される。最大値の範囲に位置していない場合、駆動装置とラム装置との動作接続を調節するためのラム装置のクラッチ係合は行われず、代わりに、ステップ100に戻り、すなわち、成形機の歪みのさらなる測定を実行する。この測定及び確認ループは、開始前に、速度が
図3に示す経過で決定された速度の最大値の範囲に位置するまで行われ、それにより、次にステップ120で、成形機の現在の剛体運動に対抗するように、励起された慣性力及び/又は慣性モーメントの位相適合導入により、実質的に反対位相で作動ストロークを開始することができる。ステップ120の作動ストロークの開始により、ステップ130で、所定の成形プロセスを実行するために作動ストロークが実行される。その後、ステップ140で、さらなる作動ストロークの準備をするために、ラム装置の戻りストローク並びにラム装置と駆動装置との動作接続の切離しが行われる。動作が終了した場合、成形機は停止され、そうでなければ、測定ループの開始、すなわちステップ100に飛ぶ。
【0042】
図1の成形機の剛体運動の例示的な経過が、
図4a、
図4bに示されている。ここでは、それぞれの上のグラフは動作中の成形機の歪みの経過を示し、下の時間的経過は結果として得られる歪みの速度を示す。両方の図において、時間的経過は、時間T0又はT0’より前に、成形機1の剛体運動、駆動装置とラム装置との動作接続の切離し、これによる弱く減衰された振動を示す。時間T0又はT0’で、カップリングのクラッチ係合を介した駆動装置とラム装置との動作接続の確立により、設計関連及び適用関連の励起、ここではおおよそ衝撃型の励起が、期間(T1-T0)又は(T
1’-T
0’)に行われ、それにより、支持基礎9上の弾性軸受要素8により弾性装着された成形機1によって形成される振動システムが、励起エネルギーを受ける。
【0043】
図4a、
図4bは、ラム装置のクラッチ結合中における慣性力又は慣性モーメントの導入中及び導入後の時間的経過を示す。剛体運動の外部励起は、
図4aの経過について、剛体運動の速度がおおよそ最大である時間に生じることがわかる。さらに、励起は、成形機の反対位相運動を発生させるように生じ、成形機の次の運動の振幅を低減させる。一方、
図4bは、
図4aと同一の励起の結果を示す。しかしながら、クラッチ係合の時間が、実際に速度の最大値に達した後に再び位置するが、励起は現在の歪みと同一位相で実行され、それにより、外乱が弱まった後、
図4aの状況と比べてかなり大きい振幅を有する剛体運動となる。
【0044】
図4a及び
図4bの曲線は、動作中の弾性装着成形機の剛体運動を低減させるための、本発明による方法及び/又は本発明により構成された成形機の効率を示す。実施形態に応じて、成形機の動作サイクル内で異なる時間に複数の励起が生じてもよい。このような場合、前述した利点により、本発明による方法を、成形機の剛体運動を低減させるために基本的に適用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 成形機、プレス機
2 スタンド
3 機械基礎、機械フレーム、機械ハウジング
4a 電気モータ
4b 振動質量体
5 ラム装置、ベア
6 上側工具
7 下側工具
8 弾性軸受要素、軸受装置
9 基礎地盤、支持基礎
K 傾動
s 歪み、ストローク
v 速度
T0、T0’ 作動ストローク又は駆動装置とラム装置との動作接続の調節の開始時間
T1、T1’ 動作接続の切離し