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特許7583923ホルダ、切削工具及び切削加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ホルダ、切削工具及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/02 20060101AFI20241107BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20241107BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B23B29/02 A
B23B27/00 C
B23C9/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023518649
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2022017231
(87)【国際公開番号】W WO2022234756
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021079250
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 義仁
(72)【発明者】
【氏名】首藤 智仁
(72)【発明者】
【氏名】権隨 佑知
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-305674(JP,A)
【文献】米国特許第03774730(US,A)
【文献】特表平06-505322(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02322426(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067787(US,A1)
【文献】特開2001-179510(JP,A)
【文献】特表2005-516780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 - 29/02
B23C 9/00
B23Q 11/00
F16F 7/00
F16F 15/02
F16F 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサートが取り付けられるホルダであって、
中心軸に沿って第1端面から第2端面にかけて延びた棒形状であって、前記中心軸に沿って延びた空洞を有する本体と、
前記空洞に挿入された内部部材と、を有し、
前記内部部材は、
前記第1端面の側から前記第2端面の側に向かって延びた円柱形状の錘と、
前記錘よりも前記第1端面の近くに位置する第1固定部材と、
前記錘及び前記第1固定部材の間に位置する第1弾性部材と、を有し、
前記中心軸に沿った断面において、前記第1弾性部材は、
前記中心軸に沿った方向及び前記中心軸に直交する方向において、それぞれ前記錘及び前記第1固定部材に挟まれ、且つ、
前記中心軸に沿った方向の幅は、前記中心軸に直交する方向の幅よりも大きい、ホルダ。
【請求項2】
前記中心軸に沿った断面において、前記第1弾性部材は、前記中心軸に沿った方向及び前記中心軸に直交する方向において、それぞれ前記錘及び前記第1固定部材に当接する、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記第1固定部材は、前記第1端面側に位置する先端部を有し、
前記中心軸に直交する方向において、前記先端部の寸法は、前記空洞の寸法よりも大きい、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記先端部の前記第1端面の周縁部に対向する部分が、前記第1端面に当接する、請求項3に記載のホルダ。
【請求項5】
前記内部部材は、
前記錘よりも前記第2端面の近くに位置する第2固定部材と、
前記錘及び前記第2固定部材の間に位置する第2弾性部材と、をさらに有し、
前記中心軸に沿った断面において、前記第2弾性部材は、
前記中心軸に沿った方向及び前記中心軸に直交する方向において、それぞれ前記錘及び前記第2固定部材に挟まれ、且つ、
前記中心軸に沿った方向の幅が、前記中心軸に直交する方向の幅よりも大きい、請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項6】
前記中心軸に沿った断面において、前記第2弾性部材は、前記中心軸に沿った方向及び前記中心軸に直交する方向において、それぞれ前記錘及び前記第2固定部材に当接する、請求項5に記載のホルダ。
【請求項7】
前記本体及び前記第2固定部材の間に位置し、前記中心軸に直交する方向において、前記本体及び前記第2固定部材に当接する第3弾性部材をさらに有し、
前記第1固定部材が、前記空洞に圧入された、請求項5に記載のホルダ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のホルダと、
前記ホルダにおける前記第1端面の側に位置する切削インサートと、を有する切削工具。
【請求項9】
被削材を回転させる工程と、
回転している前記被削材に請求項8に記載の切削工具を接触させる工程と、
前記切削工具を前記被削材から離す工程と、を備えた切削加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属等の被削材を切削加工する際に用いられる切削工具のホルダ、切削工具、及び切削加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の被削材を切削加工する際に用いられる切削工具として、例えば特許文献1に記載の切削工具が知られている。特許文献1に記載の切削工具はホルダ及び切削インサートを有する。ホルダは、空洞を有する本体と、空洞の入口を塞ぐヘッドと、空洞に挿入された減衰部材である錘と、ヘッド及び錘の間に位置するOリングと、を有する。ホルダの振動は、本体内に本体とは固有振動数の異なる錘を収容して本体と錘とを異なる振動数で振動させることで、減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/049167号
【発明の概要】
【0004】
本開示における限定されない一例のホルダは、中心軸に沿って第1端面から第2端面にかけて延びた棒形状であって、前記中心軸に沿って延びた空洞を有する本体と、前記空洞に挿入された内部部材と、を有する。前記内部部材は、前記第1端面の側から前記第2端面の側に向かって延びた円柱形状の錘と、前記錘よりも前記第1端面の近くに位置する第1固定部材と、前記錘及び前記第1固定部材の間に位置する第1弾性部材と、を有する。前記中心軸に沿った断面において、前記第1弾性部材は、前記中心軸に沿った方向及び前記中心軸に直交する方向において、それぞれ前記錘及び前記第1固定部材に挟まれ、且つ、前記中心軸に沿った方向の幅が、前記中心軸に直交する方向の幅よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の限定されない実施形態における切削工具を示す斜視図である。
図2図1に示す切削工具の平面図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4図3の第1端面側の拡大図である。
図5図3の第2端面側の拡大図である。
図6】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
図7】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
図8】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示の一例である実施形態のホルダ、切削工具、及び切削加工物の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、ホルダ及び切削工具は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0007】
(切削工具)
図1は実施形態1に係る切削工具10を示す斜視図である。図2は切削工具10を示す平面図である。切削工具10は、図1のX軸方向に延びる丸棒状のホルダ1の先端側にヘッド2を取り付けた工具である。ヘッド2には、切削インサート(以下、インサートと称する)3が取り付けられている。
【0008】
切削工具10は例えば旋削工具であり、具体例としては、外径加工用の工具、内径加工用の工具、溝入れ加工用の工具、及び、突っ切り加工用の工具等が挙げられる。切削工具10は、工具側が回転する転削工具であってもよい。以下の説明では、切削工具10の、ヘッド2が位置する側を先端側と称し、先端側とは反対側を後端側と称する。
【0009】
(ホルダ)
図3図2のIII-III線矢視断面図である。図4図3の第1端面側の拡大図である。図5図3の第2端面側の拡大図である。
【0010】
図3に示すように、切削工具10のホルダ1は、本体11と、内部部材としての第1固定部材12、第1弾性部材17、錘13、第2固定部材16、第2弾性部材18、及び第3弾性部材14とを有する。ホルダ1の材質としては、ステンレス鋼等の鋼、鋳鉄、及びアルミニウム合金等が挙げられる。特に、これらの材質の中で鋼が用いられた場合には、ホルダ1の靱性を高めることができる。以下、各部材について詳述する。
【0011】
本体11の外観はX軸方向に延びた丸棒状であり、ヘッド2側の第1端面11a及び後端側の第2端面11bは夫々、中央部が開口した構造であってもよい。本体11は、内部に、第1端面11aから第2端面11bに向かい、ホルダ1の中心軸(軸心)Lに沿って(X軸方向に)延びた空洞11cを有する。空洞11cは、第1端面11a側に位置する大径部11dと、大径部11dに連なり、第2端面11bに向かって延びた小径部11eとから構成される。
【0012】
空洞11cは、円柱状の上述の材質からなる基材を穿孔することにより設けられている。小径部11eの内径は、大径部11dの内径より小さい。大径部11d及び小径部11eは夫々、円筒形状であり、小径部11eと比較して大径部11dは薄肉である。図2においては、大径部11dはホルダ1の略2/3の長さ、小径部11eはホルダ1の略1/3の長さであるが、大径部11dと小径部11eとの長さの比は、この場合に限定されない。
【0013】
大径部11d内に、第1固定部材12、第1弾性部材17、錘13、第2固定部材16、第2弾性部材18、及び第3弾性部材14が収容されている。
【0014】
第1固定部材12は本体11の第1端面11aから大径部11d内に圧入され、第1端面11aに形成された開口を閉塞する蓋体として機能する。第1固定部材12の材質としては、鋼、鋳鉄、及びアルミニウム合金等が挙げられる。図4に示すように、第1固定部材12は第1孔12cを有する略円筒形状をなし、大径部11d内に、軸心を中心軸Lに合わせた状態で圧入され、本体11の外周面にピン(不図示)により固定されている。
【0015】
第1固定部材12は、凹部12bと、第1孔12cと、突起部12d、先端部12eとを有する。先端部12eは第1端面11a側に位置し、中心軸Lに直交する方向(Z軸方向)において、先端部12eの寸法(直径)は、大径部11dの寸法(直径)よりも大きい。
【0016】
先端部12eのヘッド2に対向する端面にはセレーションが設けられている。先端部12eは、外周部に径方向の外側に突出するように設けられた鍔部12aを有する。鍔部12aの第1端面11aに対向する面、即ち後端側の面は第1端面11aに当接する。これにより、第1固定部材12が本体11の内部に入り込むことが規制されている。
【0017】
凹部12bは、第1固定部材12のヘッド2に対向する端面の中央部から後端側に向かって丸孔状に設けられている。凹部12bには、ヘッド2の後述する筒状の凸部24が挿入される。凹部12bと凸部24との間にはリング状の第4弾性部材15が介在する。第4弾性部材15は例えばOリング、又はバネであり、材質としては、NBR(acrylonitrile butadiene rubber)、AU(polyester urethane rubber)等のゴム、エポキシ樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。
【0018】
凸部24は第4弾性部材15を介し凹部12bに固定される。突起部12dは、第1固定部材12の後端側の端面から後端に向かって突出するように設けられ、中心軸Lを軸心とする円筒形状をなす。第1孔12cは、軸心を中心軸Lに合わせて、凹部12bから第2端面11b側に向かって延び、突起部12dを貫通する。
【0019】
図3に戻ると、錘13は、ホルダ1の径方向に沿って生じるホルダ1の振動を低減するために本体11に収容されている。錘13は減衰部材である。錘13は、第2孔13cを有する略円柱形状(より正確には略円筒形状)をなし、大径部11d内に、軸心を中心軸Lに合わせた状態で、第1固定部材12に隣接するように配置されている。錘13は、大径部11d内に、大径部11dの内周面との間にわずかに隙間を有する状態で収容されている。
【0020】
錘13の材質としては、ハイス(高速度鋼:high-speed steel)、超硬合金、及びサーメット等の高剛性材が挙げられる。超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられる。WC-Coは、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成される。WC-TiC-Coは、WC-Coに炭化チタン(TiC)添加したものである。WC-TiC-TaC-Coは、WC-TiC-Coに炭化タンタル(TaC)を添加したものである。
【0021】
また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料である。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)又は窒化チタン(TiN)等のチタン化合物を主成分としたものが挙げられる。
【0022】
錘13は、凹部13aと、凹部13bと、第2孔13cとを有する。凹部13aは、錘13の先端側の端面の中央部に丸穴状に設けられている。凹部13bは、錘13の後端側の端面の中央部に丸穴状に設けられている。第2孔13cは、凹部13aと凹部13bとを連通するように設けられている。第2孔13cには、内部をクーラントが通流する通流管19が挿入されている。
【0023】
通流管19の材質としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、例えば、銅、鋼、ステンレス及びアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピエン、ポリスチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。クーラントとしては、例えば油性型、不活性極圧型、及び活性極圧型の切削油等の不水溶性油剤、エマルジョン型、ソリューブル型、及びソリューション型の切削油等の水溶性油剤が挙げられる。
【0024】
図4に示すように、錘13の凹部13aの内側には、リング状の第1弾性部材17を外嵌めした状態で、第1固定部材12の突起部12dが挿入されている。第1弾性部材17は、第4弾性部材15と同様の材質を有していてもよい。第1弾性部材17が第1固定部材12の突起部12dと、錘13の凹部13aとの間に挟まれ、押しつぶされることにより、その反発力で錘13の先端側が第1固定部材12に固定される。
【0025】
第1弾性部材17は、図4における断面(中心軸Lに沿った断面)において、中心軸Lに沿った方向(X軸方向)で、第1固定部材12の後端面と錘13の凹部13aの底面とに挟まれている。このように、第1弾性部材17が、X軸方向において第1固定部材12及び錘13に挟まれている場合には、第1固定部材12から錘13へとX軸方向に加わる切削負荷(例えば背分力)を第1弾性部材17において和らげることができる。
【0026】
第1弾性部材17は、中心軸Lに沿った断面において、中心軸Lに直交する方向(Z軸方向)で、突起部12dの外周面と、凹部13aの内周面と、に挟まれている。このように、第1弾性部材17が、Z軸方向において第1固定部材12及び錘13に挟まれている場合には、第1固定部材12から錘13へとZ軸方向に加わる切削負荷(例えば主分力及び送り分力)を第1弾性部材17において和らげることができる。
【0027】
上記した通り、錘13は、ホルダ1の径方向に沿って生じるホルダ1の振動を低減するために本体11に収納されている。ここで、図4に示すような中心軸Lに沿った断面において、第1弾性部材17のX軸方向の幅aがZ軸方向の幅bよりも大きい場合には、第1弾性部材17において切削負荷を和らげつつ錘13による振動を低減する効果を高めることができる。第1弾性部材17のX軸方向の幅aがZ軸方向の幅bよりも大きいとは、第1弾性部材17がX軸方向に細長い扁平形状である、と言い換えてもよい。
【0028】
Z軸方向の幅bが相対的に小さい場合には、Z軸方向における第1弾性部材17の変形量が小さい。そのため、Z軸方向における錘13の振動に際して、錘13における第1弾性部材17に接する端部がいわゆる固定端として機能しやすい。そのため、錘13の損傷を避けつつ錘13による振動を低減する効果を高めることができる。さらに、単に中心軸Lに沿った断面における第1弾性部材17の面積を小さくするのではなく、X軸方向の幅aが大きいため、第1弾性部材17が劣化しにくく、第1弾性部材17による切削負荷を和らげる効果も確保できる。幅bに対する幅aの比a/bは1.1以上、3以下であってもよい。
【0029】
図5に示すように、空洞11cの大径部11d内において、錘13の後端側に、第2固定部材16が配置されている。第2固定部材16は、第3弾性部材14を介して、錘13を大径部11dの内周面に対して固定する。第2固定部材16は、通流管19が挿入される空洞部を有する略円筒形状をなし、軸心を中心軸Lに合わせた状態で大径部11d内に配置されている。
【0030】
第2固定部材16の材質としては、第1固定部材12の材質としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、例えば、鋼、鋳鉄、及びアルミニウム合金等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピエン、ポリスチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0031】
第2固定部材16は、突起部16aと、凹溝16bとを有する。突起部16aは第2固定部材16の、錘13と対向する端面の中央部から、錘13に向かって突出するように設けられ、円筒形状をなす。凹溝16bは、大径部11dの内周面に対向する、第2固定部材16の外周面に周方向に一巡して設けられている。
【0032】
第2固定部材16の凹溝16bに、第3弾性部材14が嵌められている。第3弾性部材14は例えばOリングであり、第4弾性部材15と同様の材質を有していてもよい。
【0033】
図5に示すように、凹部13bの内側には、リング状の第2弾性部材18を外嵌めした状態で、第2固定部材16の突起部16aが挿入されている。第2弾性部材18は、第4弾性部材15と同様の材質を有していてもよい。
【0034】
第2弾性部材18が第2固定部材16の突起部16aと錘13の凹部13bとに挟まれ、押しつぶされたことによる反発力により、錘13の後端側が第2固定部材16に固定される。第2固定部材16は、第3弾性部材14が、空洞11cの大径部11dの内周面と接触し、押しつぶされたことによる反発力により、大径部11dに固定される。即ち、錘13は、大径部11dに固定された第1固定部材12と、第3弾性部材14を介して大径部11dに固定された第2固定部材16と、に両端部を保持されることで、第1固定部材12及び第2固定部材16と一体化し、大径部11dに対して固定されている。
【0035】
第2弾性部材18は、図5における断面(中心軸Lに沿った断面)において、X軸方向で、錘13の凹部13bの底面と、第2固定部材16における先端側の面と、に挟まれている。このように、第2弾性部材18が、X軸方向において第2固定部材16及び錘13に挟まれている場合には、第2固定部材16から錘13へとX軸方向に加わる切削負荷(例えば背分力)を第2弾性部材18において和らげることができる。
【0036】
第2弾性部材18は、Z軸方向で、凹部13bの内周面と突起部16aの外周面とに挟まれている。このように、第2弾性部材18が、Z軸方向において第2固定部材16及び錘13に挟まれている場合には、第2固定部材16から錘13へとZ軸方向に加わる切削負荷(例えば主分力及び送り分力)を第2弾性部材18において和らげることができる。
【0037】
上記した通り、錘13は、ホルダ1の径方向に沿って生じるホルダ1の振動を低減するために本体11に収納されている。ここで、図5に示すような中心軸Lに沿った断面において、第2弾性部材18のX軸方向の幅cがZ軸方向の幅dよりも大きい場合には、第2弾性部材18において切削負荷を和らげつつ錘13による振動を低減する効果を高めることができる。第2弾性部材18のX軸方向の幅cがZ軸方向の幅dよりも大きいとは、第2弾性部材18がX軸方向に細長い扁平形状である、と言い換えてもよい。
【0038】
Z軸方向の幅bが相対的に小さい場合には、Z軸方向における第2弾性部材18の変形量が小さい。そのため、Z軸方向における錘13の振動に際して、錘13における第2弾性部材18に接する端部がいわゆる固定端として機能しやすい。そのため、錘13の損傷を避けつつ錘13による振動を低減する効果を高めることができる。さらに、単に中心軸Lに沿った断面における第2弾性部材18の面積を小さくするのではなく、X軸方向の幅aが大きいため、第2弾性部材18が劣化しにくく、第2弾性部材18による切削負荷を和らげる効果も確保できる。幅dに対する幅cの比c/dは1.1以上、3以下であってもよい。
【0039】
図3に示すように、本体11の第2端面11bの開口の直径は、小径部11eの直径と略一致する。該開口からクーラントが小径部11eに注入される。該開口は栓20により閉塞される。図4に示すように、通流管19の先端部は、第1孔12c内に進入し、第1孔12cと第2孔13cとは接続されている。注入されたクーラントは通流管19を通って、加工時に、後述するヘッド2の噴出部23から噴出する。
【0040】
(ヘッド)
図1図3に示すように、ヘッド2は、略円柱形状をなす取付部21と、取付部21の先端面からX軸方向に突出するように設けられ、多面体状をなす装着部22とを有する。取付部21は、軸心をホルダ1の中心軸Lに合わせた状態で、ホルダ1の先端部に取り付けられる。取付部21のホルダ1側の端面にはセレーションが設けられている。取付部21に設けられたセレーションは、上述の第1固定部材12の先端側の端面に形成されたセレーションに嵌め合わせられる。これらのセレーションが嵌め合わせられた状態において、ネジ(不図示)等を用いてヘッド2がホルダ1に取り付けられる。
【0041】
取付部21の先端面には、開口部を有し、当該開口部からクーラントが噴出する噴出部23が設けられている。取付部21の後端側の端面の中央部には、凸部24が、第1固定部材12に向けて突出した状態で設けられている。凸部24の先端部と噴出部23とは接続されている(不図示)。上述したように、凸部24の内部空間は第1固定部材12の第1孔12cを介して通流管19の内部空間と連通している。小径部11eに注入されたクーラントは、通流管19を介し凸部24内を流れ、加工時に、噴出部23から被削材に向けて噴出される。
【0042】
装着部22をZ軸方向から平面視した場合のY軸方向の一方の端部にはポケット22aが設けられている。ポケット22aは、インサート3の底面を載置する座面(不図示)と、インサート3の2側面が当接して拘束される拘束側面とを有する。インサート3の形状は特定の構成に限定されない。例えば、インサート3の形状は、棒形状、多角板形状または多角柱形状の構成であってもよい。本実施形態においてインサート3は、図1に示すように、菱形板状である。
【0043】
インサート3の菱形状の一角は切り欠かれ、切刃3aとされている。インサート3の材質としては、超硬合金、及びサーメット等が挙げられる。超硬合金、及びサーメットは、上記錘13の材質の超硬合金、及びサーメットと同様の組成を有していてもよい。インサート3の中央部には貫通孔が設けられ、菱形の底面を座面に載置し、該貫通孔にネジを挿通して座面にネジ止めすることによってインサート3がポケット22aに固定されている。
【0044】
(切削加工物の製造方法)
次に、実施形態の切削加工物の製造方法について図面を用いて説明する。図6は、限定されない一例における切削加工物103の製造方法の一工程を示す概略図である。図7は、限定されない一例における切削加工物103の製造方法の一工程を示す概略図である。図8は、限定されない一例における切削加工物103の製造方法の一工程を示す概略図である。
【0045】
切削加工物103は、被削材101を切削加工することによって作製される。実施形態においては、切削加工として外径加工を例示する。実施形態における切削加工物103の製造方法は、以下の工程を含む。すなわち、
(1)被削材101を回転させる工程と、
(2)回転している被削材101に上記の実施形態に代表される切削工具10を接触させる工程と、
(3)切削工具10を被削材101から離す工程と、
を含む。
【0046】
より具体的には、まず、図6に示すように、被削材101を軸Dの周りでD1方向に回転させる。また、切削工具10をD2方向に動かすことによって、被削材101に切削工具10を相対的に近付ける。次に、図7に示すように、切削工具10における切刃3aを被削材101に接触させて、被削材101を切削する。
【0047】
このとき、切削工具10をD3方向に動かしながら被削材101を切削することによって外径加工を行うことができる。そして、図6に示すように、切削工具10をD4方向に動かすことによって、切削工具10を被削材101から相対的に遠ざける。
【0048】
図6においては、軸Dを固定するとともに被削材101を回転させた状態で切削工具10を近付けている。また、図7においては、回転している被削材101にインサート3の切刃3aを接触させることによって被削材101を切削している。また、図8においては、被削材101を回転させた状態で切削工具10を遠ざけている。
【0049】
上述したように、本実施形態においては、第1弾性部材17及び第2弾性部材18の断面が中心軸Lに沿った方向に細長く、扁平形状であるので、中心軸Lに直交する方向における本体11の振動が低減されている。
【0050】
実施形態の製造方法における切削加工では、切削工具10を動かすことによって、切削工具10を被削材101に接触させている。さらに、切削工具10を動かすことによって、切削工具10を被削材101から離している。しかしながら、実施形態の製造方法は、この場合に限定されない。
【0051】
例えば、(1)の工程において、被削材101を切削工具10に近付けてもよい。(3)の工程において、被削材101を切削工具10から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、切削工具10を回転させた状態を保持して、被削材101の異なる箇所にインサート3を接触させる工程を繰り返せばよい。
【0052】
被削材101の材質の代表例としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属等が挙げられる。
【0053】
以上、本開示に係る発明について、諸図面及び実施形態に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、上記した実施形態においては、切削工具10のホルダ1が丸棒状である場合につき説明しているが、角棒状であってもよい。また、第1弾性部材17及び第2弾性部材18の両方が、断面が中心軸Lに沿った方向に細長い扁平形状である場合につき説明しているが、いずれか一方が扁平形状であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ホルダ
11 本体
11a 第1端面
11b 第2端面
11c 空洞
12 第1固定部材
12a 鍔部
12d 突起部
13 錘
13a、13b 凹部
14 第3弾性部材
15 第4弾性部材
16 第2固定部材
17 第1弾性部材
18 第2弾性部材
16a 突起部
16b 凹溝
2 ヘッド
24 凸部
3 インサート
3a 切刃
10 切削工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8