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特許7583925単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/18 20220101AFI20241107BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20241107BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20241107BHJP
   C23C 18/44 20060101ALI20241107BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20241107BHJP
【FI】
B22F1/18
B01J2/00 B
C23C18/16 A
C23C18/44
B22F1/14 400
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023519895
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021054376
(87)【国際公開番号】W WO2021084140
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】20204367.5
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ゴック、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ベウムル、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】カルテ、エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター、リチャード
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125058(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0142276(KR,A)
【文献】特開2015-117434(JP,A)
【文献】特開2020-158864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0001370(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/18
B01J 2/00
C23C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を製造するための方法であって、以下の連続工程、すなわち、
a)水不溶性粒子状担体材料と、(i)溶解した銀前駆体を含む水溶液A及び溶解したルテニウム前駆体を含む水溶液B、又は(ii)溶解した銀前駆体及び溶解したルテニウム前駆体の両方を含む水溶液Cとを提供する工程、
b)前記水不溶性粒子状担体材料を、(i)水溶液A及び水溶液Bと、又は(ii)水溶液Cと接触させて、中間体を形成する工程、
c)前記中間体を、7~14の範囲のpHを有してヒドラジンを含む水溶液と接触させて、単体銀及び単体ルテニウムを含む塊を形成する工程、
d)任意で、工程c)の完了後に得られた前記塊を洗浄する工程、並びに
e)工程c)又はd)の完了後に得られた前記塊から水及び他のあり得る揮発性成分を除去する工程、を含む、方法。
【請求項2】
前記中間体が自由流動性含浸粒子状材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自由流動性含浸粒子状材料が、(i)水溶液A及び水溶液B、又は(ii)水溶液Cで含浸された粒又はフレークの形態を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記自由流動性含浸粒子状材料が、20℃で、PS Prozesstechnik GmbH製のRevolution Powder Analyzerを0.5rpmで使用し、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有する円筒を使用して、100mLの前記自由流動性含浸粒子状材料での回転法粉末分析によって決定される、40~80度の範囲の雪崩角を有する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記自由流動性含浸粒子状材料が、2つの雪崩の間の時間間隔が2~5秒の範囲であることを更に特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水不溶性粒子状担体材料が、水で膨潤可能であるか、又はヒドロゲルを形成することができる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水不溶性粒子状担体材料の材料が、ガラス、窒化物、酸化物、ケイ酸塩、プラスチック、変性又は未変性の天然由来ポリマー、炭素基材及び木材からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水不溶性粒子状担体材料がセルロース粉末である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記銀前駆体及びルテニウム前駆体が、1種以上の銀(I)化合物、並びに、ルテニウム(II)化合物、ルテニウム(III)化合物及びルテニウム(IV)化合物からなる群から選択される1種以上のルテニウム化合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)で使用される前記水溶液Aと前記水溶液Bとの組み合わせにおける、又は前記水溶液Cにおける銀:ルテニウムの重量比が、銀1~2000重量部:ルテニウム1重量部の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液C中の銀+ルテニウムの重量分率が、0.5~20wt%の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドラジン水溶液のヒドラジン濃度が、0.1~5wt%の範囲である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記中間体に含まれる前記銀及びルテニウム前駆体を完全に還元するために化学量論的に必要な量以上で、前記ヒドラジン水溶液を前記中間体と接触させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって製造される単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料の使用であって、金属表面、コーティング剤、プラスター、成形コンパウンド、プラスチックフィルム、プラスチック部品又はプラスチック繊維の形態のプラスチック、合成樹脂製品、イオン交換樹脂、シリコーン製品、セルロース系製品、発泡体、織物、化粧品及び衛生用品の抗菌仕上げのための添加剤としての使用。
【請求項15】
前記セルロース系製品が、紙製品、板紙、木材繊維製品及び酢酸セルロースからなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記プラスチックが、ABSプラスチック、PVC、ポリ乳酸、PU、ポリ(メタ)アクリレート、PC、ポリシロキサン、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、それらのハイブリッドポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を製造するための効率的な方法に関する。
【0002】
国際公開第2007/139735(A2)号には、コア-シェル構造を有するナノ/マイクロ粒子を製造するための方法が開示されている。粒子は、遷移金属/貴金属のシェルを有する非金属コアを含む。遷移金属/貴金属は、銅、ニッケル、銀、パラジウム、白金、ルテニウム、金、オスミウム及びロジウムから選択される。粒子は、遷移金属塩/貴金属塩の溶液を提供する工程、ナノ/マイクロ粒子を塩溶液中に分散させる工程、溶媒を蒸発させてコーティングされたナノ/マイクロ粒子を含むスラリーを得る工程、還元剤をスラリーに加える工程、及びスラリーを乾燥させる工程によって製造することができる。
【0003】
国際公開第2007/142579(A1)号には、電子供与体と、パラジウム、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属粒子とを含む、ポリマーマトリックスが開示されている。電子供与体は、少なくとも1種の卑金属、例えば銀であってもよい。開示されている製造方法は、銀と、パラジウム、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群から選択される少なくとも1種の更なる金属との逐次堆積である。堆積は、各々の場合において、当該金属粒子の懸濁液から、ポリマーマトリックスと接触させることによって行われる。
【0004】
国際公開第2009/044146(A1)号には、多孔質多糖誘導体上に担持された金属ナノ粒子を含む材料が開示されており、当該ナノ粒子は1~30nmの直径を有する。ナノ粒子の金属は貴金属であってもよい。この材料は、多孔質多糖を溶媒に加える工程、当該金属の塩を加える工程、混合物を高温で撹拌する工程、及び担持されたナノ粒子を混合物から分離する工程によって製造することができる。
【0005】
本発明の目的は、単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を製造するための製造レベルまでスケールアップすることができる効率的な方法を提供することであった。このように装着された担体材料は、非常に多種多様な材料及び物質、例えば、金属表面、コーティング剤、プラスター、成形コンパウンド、プラスチック、合成樹脂製品、シリコーン製品、発泡体、織物、化粧品、衛生用品またその他のはるかに多くのものの中又は上の抗菌仕上げのための添加剤として使用することができる。
【0006】
この目的は、単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を製造するための方法によって実現され、方法は以下の連続工程、すなわち、
a)水不溶性粒子状担体材料と、(i)溶解した銀前駆体を含む水溶液A(簡潔にするために、以下の説明及び特許請求の範囲では単に「水溶液A」とも称する)及び溶解したルテニウム前駆体を含む水溶液B(簡潔にするために、以下の説明及び特許請求の範囲では単に「水溶液B」とも称する)、又は(ii)溶解した銀前駆体及び溶解したルテニウム前駆体の両方を含む水溶液(簡潔にするために、以下の説明及び特許請求の範囲では単に「水溶液C」とも称する)とを提供する工程、
b)当該水不溶性粒子状担体材料を、(i)水溶液A及び水溶液Bと、又は好ましくは(ii)水溶液Cと接触させて、中間体、好ましくは自由流動性含浸粒子状材料の形態の中間体を形成する工程、
c)当該中間体を、>7~14、好ましくは>11~14の範囲のpHを有してヒドラジンを含む水溶液と接触させて、単体銀及び単体ルテニウムを含む塊を形成する工程、
d)任意で、工程c)の完了後に得られた塊を洗浄する工程、並びに
e)工程c)又はd)の完了後に得られた塊から水及び他のあり得る揮発性成分を除去する工程、を含む。
【0007】
別の観点から、本発明による方法は、連続工程a)~e)を含む、単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料を提供するための方法として理解することもできる。
【0008】
工程a)~e)は連続工程であり、中間工程なしに直接に連続する工程であってもよい。
【0009】
本発明による方法の工程a)において、水不溶性粒子状担体材料と、(i)当該水溶液A及びB、又は(ii)当該水溶液Cとが提供される。水溶液Cを提供することが好ましい。粒子状担体材料が物質の固体状態で存在することは、当業者にとって言及するまでもないことである。
【0010】
担体材料粒子は、多種多様な粒子の形状を有することができる。例えば、それらは不規則な形状であってもよく、又はそれらは規定された形状、例えば球状、楕円状、小板状又は棒状を有していてもよい。担体材料粒子は、多孔質であってもよく、及び/又は空洞を有していてもよく、又はこれらのいずれでもなくてもよい。それらは、滑らかな、又は粗い、又は構造化された外表面を有することができる。担体材料粒子は、例えば20~100μmの範囲の平均粒径(d50)を有することができる。「平均粒径」という用語は、レーザー回折によって決定することができる平均粒径(d50)を意味する。レーザー回折測定は、対応する粒径測定装置、例えばマルバーン・インスツルメンツ(Malvern Instruments)製のMastersizer3000を用いて行うことができる。絶対粒径は概ね1μm以上であり、それらは概ね1000μmを超えない。
【0011】
水不溶性粒子状担体材料は、粒子間及び任意で粒子内、例えば粒子表面の細孔内及び/又はくぼみ内にも多かれ少なかれ大きな吸水能力を有する。水不溶性粒子状担体材料は、水で膨潤可能であってもよく、又は更には水とヒドロゲルを形成することができる。
【0012】
当業者には、「水不溶性担体材料」という用語から、水不溶性の実際の担体材料が、水だけでなく、本発明による方法において接触する化学物質に対しても不浸透性であること、そうでなければ、原理的に、担体材料の機能又は水不溶性担体材料の機能をうまく果たすことができないこと、は既に明らかである。それは、水によって、又は当該化学物質若しくは化学物質の組み合わせによって、攻撃されず、溶解されず、又は担体材料としてのその特性が損なわれないように、選択される。水不溶性の実際の担体材料それ自体は、好ましくは非撥水性材料である。それは、好ましくは親水性であるが、いずれの場合においても記載したように水不溶性である。実際の担体材料は、無機又は有機の物質又は材料から選択される材料であってもよく、各々の場合において、粒子の形態、例えば粉末であってもよい。誤解を避けるために、担体材料は、銀を含まずルテニウムを含まない物質、又は銀を含まずルテニウムを含まない材料である。例としては、ガラス、窒化物、例えば窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、高融点酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン、例えばシリカ又は石英の二酸化ケイ素、ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、プラスチック、例えば(メタ)アクリルホモポリマー及びコポリマー並びにポリアミド、変性又は未変性の天然由来ポリマー、例えば多糖類及び多糖類誘導体、特にセルロース及びセルロース誘導体、炭素基材、特に多孔質炭素基材及び木材が挙げられる。
【0013】
セルロース粉末は、特に、例えば10~1000μmの範囲の繊維長を有する線状セルロース繊維の形態で、好ましい粒子状担体材料である。
【0014】
工程a)(i)で提供される水溶液Aは溶解した銀前駆体を含み、工程a)(i)でまた提供される水溶液Bは溶解したルテニウム前駆体を含む。
【0015】
当業者には、「水溶液A」という用語から、これが溶液であり、例えば分散系ではないこと、言い換えれば、水溶液Aは、典型的には、溶解していない物質を含まず、すなわち、堆積物又は沈殿物も含まないこと、は既に明らかである。水溶液Aは、溶媒としての水に加えて、その中に溶解した1種以上の銀(I)化合物も含むことを特徴とする。水溶液A中に存在する銀(I)化合物及び任意での全ての所望の物質又は望まない物質は、典型的には、水溶液Aがそのままで、好ましくはまた、水溶液Bと合わせて、又は接触して、堆積物又は沈殿物を含まず、またそのような堆積物又は沈殿物を形成しないように、選択される。
【0016】
当業者には、「水溶液B」という用語から、これが溶液であり、例えば分散系ではないこと、言い換えれば、水溶液Bは、典型的には、溶解していない物質を含まず、すなわち、堆積物又は沈殿物も含まないこと、は既に明らかである。水溶液Bは、溶媒としての水に加えて、その中に溶解した1種以上のルテニウム化合物も含むことを特徴とする。水溶液A中に存在するルテニウム化合物及び任意での全ての所望の物質又は望まない物質は、典型的には、水溶液Bがそのままで、好ましくはまた水溶液Aと合わせて、又は接触して、堆積物又は沈殿物を含まず、またそのような堆積物又は沈殿物を形成しないように、選択される。
【0017】
好ましくは、工程a)(ii)で提供される水溶液Cは、溶解した銀前駆体及び溶解したルテニウム前駆体の両方を含む。当業者には、「水溶液C」という用語から、これが溶液であり、例えば分散系ではないこと、言い換えれば、水溶液Cは、溶解していない物質を含まず、すなわち、堆積物又は沈殿物も含まないこと、は既に明らかである。水溶液Cは、溶媒としての水に加えて、その中に溶解した1種以上の銀(I)化合物及びその中に溶解した1種以上のルテニウム化合物も含むことを特徴とする。水溶液C中に存在する銀(I)化合物及びルテニウム化合物並びに任意での全ての所望の物質又は望まない物質は、水溶液Cが堆積物又は沈殿物を含まず、またそのような堆積物又は沈殿物を形成しないように、選択される。
【0018】
銀前駆体及びルテニウム前駆体は、1種以上の銀(I)化合物及び1種以上のルテニウム化合物である。1種以上のルテニウム化合物は、ルテニウム(II)化合物、ルテニウム(III)化合物及びルテニウム(IV)化合物からなる群から選択され、特に、それらはルテニウム(III)化合物である。
【0019】
銀前駆体及びルテニウム前駆体として機能する銀(I)化合物及びルテニウム化合物は、還元剤ヒドラジンによってそれから単体銀又は単体ルテニウムを生成することができる化合物である。例としては、酢酸銀、硝酸銀、硫酸銀、酢酸ルテニウム及びニトロシル硝酸ルテニウムが挙げられる。塩化ルテニウムは水溶液Bの成分として適しているが、その中では好ましくなく、それは、水溶液Cの成分として適していない。当該前駆体の特に好ましい組み合わせは、硝酸銀とニトロシル硝酸ルテニウムとの組み合わせであり、両方は、水溶液C中では一緒であり、水溶液Aと水溶液Bとの組み合わせである。
【0020】
別々に提供される水溶液AとBとは、工程b)において組み合わせて使用され、この組み合わせにおいて、例えば、銀1~2000重量部:ルテニウム1重量部の範囲の重量比である。
【0021】
水溶液A中の銀の重量分率は、例えば、0.5~20wt%(重量%)の範囲である。
【0022】
水溶液B中のルテニウムの重量分率は、例えば0.5~20wt%の範囲である。
【0023】
水溶液C中の銀:ルテニウムの重量比は、例えば、1~2000重量部の銀:1重量部のルテニウムの範囲であり、この場合、概して銀が著しく優勢である。この銀:ルテニウムの重量比はまた更に、工程e)の完了後に得られるプロセス生成物、すなわち単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状担体材料中においても見られる。
【0024】
水溶液C中の銀+ルテニウムの重量分率は、例えば、0.5~20wt%の範囲である。
【0025】
本発明による方法の工程b)において、水不溶性粒子状担体材料を、(i)水溶液A及びBと、又は、好ましくは(ii)水溶液Cと接触させて、中間体、好ましくは自由流動性含浸粒子状材料の形態の中間体を形成する。
【0026】
中間体は、水不溶性粒子状担体材料と、(i)水溶液A及びB、又は、好ましくは(ii)水溶液Cとの混合物である。混合比に応じて、中間体は、異なる形態、例えば、パルプ様、ペースト様若しくはパン生地様の塊の形態、又はスラリーの形態を有し得る。しかしながら、好ましい実施形態では、中間体は自由流動性含浸粒子状材料であり、工程b)はそれに従って設計される。
【0027】
本明細書で使用される「自由流動性含浸粒子状材料」という用語は、(i)水溶液A及びB、又は、好ましくは(ii)水溶液Cで含浸された粒又はフレークの形態の材料を説明し、その粒又はフレークの各々は、元の粒子状担体材料の1つ以上の粒子を含んでいてもよく、又はそれらからなっていてもよい。自由流動性含浸粒子状材料は、液体ではなく、液体分散液でも懸濁液でもなく、むしろ、それは自由流動性粉末のような自由流動性材料である。
【0028】
自由流動性含浸粒子状材料の自由流動性は、回転法粉末解析によって調べることができる。この目的のために、円筒形の測定ドラムを所定の体積の自由流動性含浸粒子状材料で満たすことができる。測定ドラムは所定の直径及び所定の深さを有する。測定ドラムは、所定の一定速度で水平に配向された円筒軸の周りを回転する。円筒形の測定ドラム内に充填された自由流動性含浸粒子状材料を共に囲む円筒の2つの端面のうちの1つは透明である。測定開始前に、測定ドラムを60秒間回転させる。実際の測定では、その後、回転中に、自由流動性含浸粒子状材料の画像を、測定ドラムの回転軸に沿って、例えば5~15画像/秒の高フレームレートでカメラを使用して撮影する。カメラのパラメータは、材料-空気の界面において可能な限り高いコントラストが得られるように選択され得る。測定ドラムの回転中、自由流動性含浸粒子状材料は、重力に抗して特定の高さまで運ばれ、その後、ドラムの下部に落下する。落下は滑り落ちるよう(不連続)に生じ、雪崩とも呼ばれる。測定は、統計的に適切な数の雪崩、例えば200~400回の雪崩の滑り落ちが記録されたときに終了する。続いて、自由流動性含浸粒子状材料のカメラ画像をデジタル画像解析によって評価する。回転法粉末解析では、「雪崩角」及び2つの雪崩の間の時間間隔(「雪崩時間」)を、自由流動性に特徴的なパラメータとして決定することができる。雪崩角は、雪崩が落下するときの材料表面の角度であり、したがって、自由流動性含浸粒子状材料が、この積み上げが雪崩の様式で崩壊する前に積み上がる高さの尺度を表す。2つの雪崩の間の時間間隔は、2つの雪崩の発生の間に経過した時間に相当する。当該回転法粉末解析を実施し、雪崩角及び2つの雪崩の間の時間間隔を決定するための適切なツールは、PS Prozesstechnik GmbH(Neuhausstrasse 36、CH-4057 Basel製のRevolution Powder Analyzerである。機器に含まれている操作説明書及び推奨事項に従う必要がある。典型的には、測定は、室温又は20℃で行われる。本発明による方法の工程b)において形成された自由流動性含浸粒子状材料は、100mLの試験量の当該自由流動性含浸粒子状材料を用いて、当該装置を0.5rpmで使用し、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有する円筒を使用して決定される、40~80度の範囲の雪崩角を有することができ、この場合、2つの雪崩の間の時間間隔は、例えば2~5秒の範囲内であってもよく、自由流動性含浸粒子状材料の自由流動性の別の特徴を表すことができる。
【0029】
粒子状担体材料は、水溶液A及び/又は水溶液Bに加えることができ、逆もまた同様である。最初に入れた粒子状担体材料への水溶液A及びBの逐次的、交互の、又は同時の添加が好ましい。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も、例えば撹拌によって行われる。
【0030】
水溶液Cを用いて作業する好ましい場合には、粒子状担体材料を水溶液Cに加えてもよく、逆もまた同様である。ここで、水溶液Cを、最初に入れた粒子状担体材料に加えることが好ましい。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も、例えば撹拌によって行われる。
【0031】
自由流動性含浸粒子状材料の形態の中間体の形成の好ましい実施形態では、工程b)の完了後に、パルプ様、ペースト様又はパン生地様の塊も、またスラリーも生じず、むしろ自由流動性含浸粒子状材料が、巨視的に見たときに均質な生成物の形態で形成されるように、工程b)を進めることが重要である。自由流動性含浸粒子状材料の自由流動性は、例えば、その粒径、その粒子の表面特性、及び水溶液A+水溶液B又は水溶液Cに対する粒子の含有量に依存し得る。
【0032】
工程b)を行うとき、粒子状担体材料と、(i)水溶液A及び水溶液B、又は(ii)水溶液Cとの混合に十分な時間を与えることが適切である。例えば、添加が終了した後に十分な時間混合すること、特に撹拌することが適切である。自由流動性含浸粒子状材料の形態の中間体の形成の好ましい実施形態の場合、混合は、巨視的に見たときに混合材料が均質な、特に視覚的に均質な状態になるまでが適切である。実際の添加は、例えば、混合しながらの計量添加として行ってもよい。計量添加速度及び混合時間に関する全般的に適用できる時間の情報は、関連するバッチサイズ及び混合する成分のタイプ、特に粒子状担体材料のタイプに依存するため、ここでは特定することができない。
【0033】
工程b)が好ましい実施形態に従って実施される場合、(i)水溶液A及び水溶液Bの体積又は(ii)水溶液Cの体積は、それらと接触させる量の粒子状担体材料の関連する濃度及び水溶液に対するその吸収挙動によって選択することができる。このような手順は、その後の工程c)において、単体銀及び単体ルテニウムを可能な限り完全に、粒子状担体材料中に堆積させ、及び/又は粒子状担体材料に付着させることができるという事実に寄与することができる。過度に大きい体積を選択した場合には、自由流動性含浸粒子状材料という好ましい形態の中間体ではなく、上述のあまり好ましくない、又は更には望まないパルプ、ドウ、ペースト又はスラリーが生じる。当業者は、実験室の実験の適用において、対応する水溶液に対する関連する粒子状担体材料の吸収挙動を容易に決定することができ、したがって、自由流動性をなんら損ねることなく、粒子状担体材料1キログラム当たりの水溶液のリットル数の上限を決定することができる。(i)水溶液A及びB、又は(ii)水溶液Cに対する粒子状担体材料の吸収挙動に関する全般的に適用できる情報は、混合する成分の性質に依存するため、特に粒子状担体材料の性質に依存するため、ここでは作成することができない。
【0034】
好ましくは、連続工程b)及びc)は、中間工程のない、特にその間で行われる中間体からの水の除去のない直接の連続工程であり、その中間体は、好ましくは自由流動性含浸粒子状材料の形態で存在する。
【0035】
本発明による方法の工程c)において、工程b)の完了後に得られた中間体、又は好ましい自由流動性含浸粒子状材料を、>7~14、好ましくは>11~14の範囲のpHを有してヒドラジンを含む水溶液(簡潔にするために、以下の説明及び特許請求の範囲において単に「ヒドラジン水溶液」とも呼ばれる)と接触させて、単体銀及び単体ルテニウムを含む塊を形成する。
【0036】
ヒドラジン水溶液のpHは、特に好ましくは12~14の範囲である。
【0037】
ヒドラジン水溶液の塩基性pHは、強塩基、特に対応する量のアルカリ金属水酸化物、中でも水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで調整することができる。
【0038】
ヒドラジン水溶液の調製において、ヒドラジンはそのままで、より正確にはヒドラジン水和物として、又はヒドラジニウム塩として、例えば塩化ヒドラジニウム、若しくは好ましくは硫酸ヒドラジニウムとして加えることができ、ヒドラジンは強塩基によってそれから放出される。
【0039】
ヒドラジン水溶液のヒドラジン濃度は、例えば、概ね0.1~5wt%の範囲、典型的には0.2~1wt%の範囲である。
【0040】
概して、ヒドラジン水溶液は、水、ヒドラジン及び塩基以外のいかなる他の成分も含まない。ヒドラジンがヒドラジニウム塩に由来する場合、塩基とヒドラジニウム塩とから形成される対応する塩も含まれる。
【0041】
1モルの還元剤ヒドラジンは、還元効果を有する4モルの電子を送達することができ、したがって、還元時に1モルのNを放出する。したがって、例えば、1モルのAgを還元するためには0.25モルのヒドラジンが必要であり、1モルのRu3+を還元するためには0.75モルのヒドラジンが必要である。
【0042】
中間体又は自由流動性含浸粒子状材料中に含有される銀及びルテニウム前駆体を完全に還元するために、化学量論的に必要とされる量以上であるが、好ましくは化学量論的に必要とされる量の110%以下で、ヒドラジン水溶液を中間体又は自由流動性含浸粒子状材料と接触させる。
【0043】
この場合、ヒドラジン水溶液を中間体若しくは自由流動性含浸粒子状材料に加えてもよく、又はその逆でもよい。最初に入れた中間体又は最初に入れた自由流動性含浸粒子状材料にヒドラジン水溶液を加えることが好ましい。添加は、例えば15~50℃の範囲の温度で行うことができる。銀及びルテニウム前駆体の単体銀及び単体ルテニウムへの還元はヒドラジンとの接触時に直接生じる。銀及びルテニウム前駆体の還元は同時に生じる。添加中、及び好ましくは更に添加の終了後に、例えば添加の終了後1時間まで、例えば混練及び/又は撹拌によって、通常は混合を行う。概して、還元の終了は、窒素がもはや放出されなくなることによって認識することができる。
【0044】
工程c)で形成された単体銀及び単体ルテニウムを含む塊が懸濁液又はスラリーであるように、本方法を行うことができる。しかしながら、工程c)で形成された単体銀及び単体ルテニウムを含む塊が少量の遊離液体のみを含むか、又は更には遊離液体を全く含有しないように、本方法を行なってもよく、例えば、この目的のために、濃度によって調整した体積のヒドラジン水溶液で作業してもよい。「遊離液体を含有しない」とは、単体銀及び単体ルテニウムを含む塊が、静止状態において、10分後であっても、別個の水相が単体銀及び単体ルテニウムを含む塊の上に上澄みとして形成されるという意味での、相分離を生じないことを意味する。
【0045】
本発明による方法の任意であるが好ましい工程d)において、工程c)の完了後に得られた単体銀及び単体ルテニウムを含む塊を、特に水で洗浄することによって洗浄してもよい。この場合、水溶性成分、例えば塩基、全ての過剰のヒドラジン及び他の水溶性成分を除去することができる。
【0046】
本発明による方法の工程e)において、水及び存在する全ての他の揮発性成分を、工程c)の完了後に得られた塊から、又は工程d)の完了後に得られた洗浄された塊から除去する。
【0047】
水の除去は、実質的に完全な水の除去という意味で、又は所望の残留含水量に達するまでの水の除去という意味で行うことができる。この目的のために、例えば20~150℃の範囲の温度で、任意で減圧によって補助される乾燥の前に、大部分の水を、圧搾、加圧濾過、濾し取り、遠心分離又は同様に作用する他の方法などの通常の方法によって最初に除去してもよい。
【0048】
本発明による方法の、すなわち工程e)の完了後の直接の生成物として、単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状材料又は担体材料が得られる。最初に使用した粒子状担体材料の性質に応じて、銀及びルテニウムは、最初の銀を含まずルテニウムを含まない担体材料粒子の内表面(細孔及び/又は空洞内)及び/又は外表面に存在して、例えば、連続又は不連続な層及び/又は小さな銀若しくはルテニウム粒子を形成することができる。この場合、銀及びルテニウムは合金の形態では存在せず、むしろランダムに分布する。銀及びルテニウムが、その表面に単体金属銀以外の種の銀及び単体金属ルテニウム以外の種のルテニウム、例えば対応する酸化物、ハロゲン化物及び/又は硫化物を含み得ることは、当業者には明らかである。そのような種は、本発明による方法が実施されている間に、又はその後に、例えばプロセス生成物の貯蔵、使用又は更なる処理中に形成され得る。プロセス生成物の銀+ルテニウムの重量分率は、広い限度の中で、例えば0.1~50wt%、好ましくは1~40wt%の範囲内で変化してもよく、同時に、プロセス生成物は、例えば、銀1~2000重量部:ルテニウム1重量部の範囲の銀:ルテニウムの重量比を有し得る。当業者であれば、本明細書の開示を読んだ後に、所望のバッチサイズ、例えば1桁のトンのスケールで、所望の銀:ルテニウムの重量比で所望の銀+ルテニウムの重量分率を有するプロセス生成物を製造するために、本発明による方法を実施する際に、どの可変パラメータ及びどの変更の可能性がそれらに適用できるかを理解する。水溶液Cを使用して本方法を実施する好ましい方法の例を用いると、そのような可変パラメータとしては、特に、
工程b)で使用される粒子状担体材料のタイプ及び量、
工程b)で使用される水溶液Cの体積、
水溶液C中の銀:ルテニウムの重量比、
水溶液C中の銀+ルテニウムの重量分率、並びに
工程e)の完了後に得られたプロセス生成物の残留水分が挙げられる。
【0049】
したがって、当業者の最初のステップは、先ず、粒子状担体材料のタイプの選択と、最終生成物中の銀及びルテニウムの含有量の目標値の決定とである。その後、当業者は、バッチサイズを決定し、本発明による手順に従って単体銀及び単体ルテニウムを有するようになる粒子状担体材料の対応する量を選択する。これらの選択を行うとすぐに、それらに応じて他の可変パラメータを規定することができ、水溶液Cを用いて本発明による方法を実施することができる。水溶液AとBとを用いて本方法を実施する場合も、同様の考察が適用される。
【0050】
例えば、セルロース粉末を粒子状担体材料として使用する場合、本発明による方法を使用して、バッチサイズが例えば最大5トンの範囲で、効率的には銀:ルテニウムの重量比が例えば1~2000重量部の銀:1重量部のルテニウムの範囲の場合に、例えば0.1~50wt%、好ましくは1~40wt%の範囲の銀+ルテニウムの重量分率の単体銀及び単体ルテニウムを有する、セルロース粉末を製造することができる。
【0051】
本発明はまた、本発明による方法によって製造された、生成物、並びにその使用であって、金属表面、コーティング剤、プラスター、成形コンパウンド、プラスチックフィルム、プラスチック部品又はプラスチック繊維の形態のプラスチック、合成樹脂製品、イオン交換樹脂、シリコーン製品、セルロース系製品、発泡体、織物、化粧品、衛生用品及び多くの他の物品の抗菌仕上げのための添加剤としての使用に関する。セルロース系製品は、例えば、紙製品、板紙、木材繊維製品及び酢酸セルロースからなる群から選択することができ、プラスチックは、例えば、ABSプラスチック、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリ乳酸、PU(ポリウレタン)、ポリ(メタ)アクリレート、PC(ポリカーボネート)、ポリシロキサン、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、それらのハイブリッドポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0052】
実施例1(単体銀18.3wt%及び単体ルテニウム0.2wt%を有するセルロース粉末の製造):
132.45gの硝酸銀水溶液(銀含有量36.24wt%、445mmolのAg)及び2.60gのニトロシル硝酸ルテニウム水溶液(ルテニウム含有量19.0wt%、4.9mmolのRu)を364.5gの脱塩水に加え、このようにして得られた前駆体水溶液を211.2gのセルロース粉末(J.Rettenmaier and Soehne GmbH&Co KG製Vitacel(登録商標)L-600)と均一に混合して、橙色の自由流動性含浸粒子状材料を得た。100mLのこの材料に対して、0.5rpmのPS Prozesstechnik GmbH(Neuhausstrasse 36、CH-4057 Basel)製のRevolution Powder Analyzerによって、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有する円筒を使用し、20℃で回転法粉末解析を行ない、フレームレートを10画像/秒として、300回の雪崩を記録した。このようにして決定された雪崩角は75度であり、2つの雪崩の間の時間間隔は3.6秒であった。自由流動性含浸粒子状材料に、pHが14の705mLのヒドラジン水溶液[3.68g(115mmol)のヒドラジンと71.82gの32wt%水酸化ナトリウム溶液(575mmolのNaOH)、残りは水]を、室温で、撹拌しながら30mL/分の計量添加速度で添加した。時間の経過と共に、撹拌がますます容易になる黒色の均質なパルプが形成された。計量添加の完了後、窒素の放出がもはや観察され得なくなるまで、撹拌を30分間続けた。続いて、材料を濾し取り、合計1000mLの水で洗浄し、105℃/300mbarの乾燥キャビネット内で15wt%の残留含水量まで乾燥させた。ICP-OESによって、最終生成物(0wt%の残留水分を基準として)の銀含有量が18.3wt%、及びルテニウム含有量が0.19wt%と測定された。
【0053】
実施例2(単体銀10.9wt%及び単体ルテニウム0.2wt%を有するセルロース粉末の製造):
97.96gの硝酸銀水溶液(銀含有量36.24wt%、329mmolのAg)及び3.68gのニトロシル硝酸ルテニウム水溶液(ルテニウム含有量19.0wt%、6.9mmolのRu)を554.9gの脱塩水に加え、このようにして得られた前駆体水溶液を299.2gのセルロース粉末(J.Rettenmaier and Soehne GmbH&Co KG製Vitacel(登録商標)L-600)と均一に混合して、橙色の自由流動性含浸粒子状材料を得た。100mLのこの材料に対して、0.5rpmのPS Prozesstechnik GmbH(Neuhausstrasse 36、CH-4057 Basel)製のRevolution Powder Analyzerによって、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有する円筒を使用し、20℃で回転法粉末解析を行ない、フレームレートを10画像/秒として、300回の雪崩を記録した。このようにして決定された雪崩角は68度であり、2つの雪崩の間の時間間隔は3.0秒であった。自由流動性含浸粒子状材料に、pHが13.8の999.9mLのヒドラジン水溶液[2.80g(88mmol)のヒドラジンと54.66gの32wt%水酸化ナトリウム溶液(437mmolのNaOH)、残りは水]を、室温で、撹拌しながら30mL/分の計量添加速度で添加した。時間の経過と共に、撹拌がますます容易になる黒色の均質なパルプが形成された。計量添加の完了後、窒素の放出がもはや観察され得なくなるまで、撹拌を30分間続けた。続いて、材料を濾し取り、合計1000mLの水で洗浄し、105℃/300mbarの乾燥キャビネット内で15wt%の残留含水量まで乾燥させた。ICP-OESによって、最終生成物(0wt%の残留水分を基準として)の銀含有量が10.88wt%、及びルテニウム含有量が0.21wt%と測定された。
【0054】
実施例3(単体銀18.9wt%及び単体ルテニウム1.0wt%を有するセルロース粉末の製造):
75.6g(445mmol)の硝酸銀固体及び13.94gのニトロシル硝酸ルテニウム溶液(ルテニウム含有量19.0wt%、26.2mmolのRu)を416.8gの脱塩水に溶解し、このようにして得られた前駆体水溶液を211.2gのセルロース粉末(J.Rettenmaier and Soehne GmbH&Co KG製Vitacel(登録商標)L-600)と均一に混合して、橙色の自由流動性含浸粒子状材料を得た。100mLのこの材料に対して、0.5rpmのPS Prozesstechnik GmbH(Neuhausstrasse 36、CH-4057 Basel)製のRevolution Powder Analyzerによって、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有する円筒を使用し、20℃で回転法粉末解析を行ない、フレームレートを10画像/秒として、300回の雪崩を記録した。このようにして決定された雪崩角は73度であり、2つの雪崩の間の時間間隔は3.5秒であった。自由流動性含浸粒子状材料に、pHが13.9の705mLのヒドラジン水溶液[4.19g(131mmol)のヒドラジンと81.81gの32wt%水酸化ナトリウム溶液(654.51mmolのNaOH)、残りは水]を、室温で、撹拌しながら30mL/分の計量添加速度で添加した。時間の経過と共に、撹拌がますます容易になる黒色の均質なパルプが形成された。計量添加の完了後、窒素の放出がもはや観察され得なくなるまで、撹拌を30分間続けた。続いて、材料を濾し取り、合計1000mLの水で洗浄し、105℃/300mbarの乾燥キャビネット内で15wt%の残留含水量まで乾燥させた。ICP-OESによって、最終生成物(0wt%の残留水分を基準として)の銀含有量が18.9wt%、及びルテニウム含有量が1.0wt%と測定された。