(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241107BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241107BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241107BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
C23C16/458
(21)【出願番号】P 2023525984
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2022042044
(87)【国際公開番号】W WO2024100876
(87)【国際公開日】2024-05-16
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 隆二
(72)【発明者】
【氏名】森岡 育久
(72)【発明者】
【氏名】杉本 博哉
(72)【発明者】
【氏名】峯 慶太
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035446(JP,A)
【文献】特開2016-136552(JP,A)
【文献】特開2010-123809(JP,A)
【文献】特表2004-525513(JP,A)
【文献】特開2019-140211(JP,A)
【文献】特開平11-265931(JP,A)
【文献】特許第6703646(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0294197(US,A1)
【文献】特開2003-309167(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置部を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に接合され、冷媒流路を有する冷却プレートと、
前記冷却プレートの上面と前記冷媒流路との間に設けられたスペース層と、
前記冷却プレートのうち前記スペース層を取り囲むスペース層形成部と、
を備え、
前記スペース層形成部は、繋ぎ目を有し、
前記繋ぎ目は、シール部材を介在させることなく金属接合によって形成されている、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記スペース層は、平面視で前記冷媒流路の全体を覆っている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記スペース層には、前記スペース層形成部の天井面と底面とを繋ぐ複数の柱状部材が設けられている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記冷却プレートのうち前記柱状部材の直上又は直下には、前記スペース層とは別の空洞部が設けられている、
請求項3に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記スペース層には、前記スペース層形成部の天井面及び底面の少なくとも一方に高さが前記スペース層の厚みよりも短い複数の凸部が設けられている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のウエハ載置台であって、
前記スペース層に接続され、前記スペース層に対して流体の供給と排出を切り替え可能な流体切替機構
を備えたウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上面にウエハ載置部を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、セラミックプレートの下面側に配置され、冷媒流路を有する冷却プレートとを備えたウエハ載置台が知られている。この種のウエハ載置台において、特許文献1には、セラミックプレートと冷却プレートとの間にスペース層(熱伝達層)を設けることが記載されている。スペース層は、セラミックプレートと冷却プレートとの間に熱伝達流体を収容する熱伝達空間を提供する。スペース層は、環状のアウターシールによって取り囲まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、スペース層がアウターシールによって囲まれているため、長期にわたって使用していると、アウターシールが劣化して熱伝達流体の漏れが発生するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、スペース層からの流体の漏れを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハ載置部を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に接合され、冷媒流路を有する冷却プレートと、
前記冷却プレートの上面と前記冷媒流路との間に設けられたスペース層と、
前記冷却プレートのうち前記スペース層を取り囲むスペース層形成部と、
を備え、
前記スペース層形成部は、繋ぎ目を有し、
前記繋ぎ目は、シール部材を介在させることなく金属接合によって形成されている、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、冷却プレートのうちスペース層を取り囲むスペース層形成部は、繋ぎ目を有しているが、その繋ぎ目は、シール部材を介在させることなく金属接合によって形成されている。そのため、このウエハ載置台を長期にわたって使用したとしても、スペース層形成部の繋ぎ目から流体が漏れ出すのを防止することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。また、「流体」は、気体であってもよいし液体であってもよい。
【0009】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記スペース層は、平面視で前記冷媒流路の全体を覆っていてもよい。こうすれば、スペース層が平面視で冷媒流路の一部を覆っている場合に比べて、冷媒流路の冷却効率をスペース層によって調整しやすい。
【0010】
[3]上述したウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記スペース層には、前記スペース層形成部の天井面と底面とを繋ぐ複数の柱状部材が設けられていてもよい。こうすれば、こうした柱状部材がない場合に比べて、スペース層の上下方向の熱抵抗が小さくなり、ウエハの熱を効率よく冷媒流路に逃がすことができる。
【0011】
[4]上述したウエハ載置台(前記[3]に記載のウエハ載置台)において、前記冷却プレートのうち前記柱状部材の直上又は直下には、前記スペース層とは別の空洞部が設けられていてもよい。柱状部材はスペース層形成部の天井面と底面とを繋ぐものであるため、ウエハのうち柱状部材の直上に相当する部分は冷却され過ぎるおそれがある。しかし、ここでは、冷却プレートのうち柱状部材の直上又は直下にスペース層とは別の空洞部が設けられているため、ウエハのうち柱状部材の直上に相当する部分が冷却され過ぎるのを、空洞部の断熱効果により抑えることができる。
【0012】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記スペース層には、前記スペース層形成部の天井面及び底面の少なくとも一方に高さが前記スペース層の厚みよりも短い複数の凸部が設けられていてもよい。こうすれば、こうした凸部がない場合に比べて、スペース層の上下方向の熱抵抗が小さくなり、ウエハの熱を効率よく冷媒流路に逃がすことができる。一方、凸部はスペース層形成部の天井面と底面とを繋ぐものではないため、スペース層を真空雰囲気(減圧雰囲気を含む、以下同じ)としたときのスペース層の断熱効果も十分得られる。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)は、前記スペース層に接続され、前記スペース層に対して流体の供給と排出を切り替え可能な流体切替機構を備えていてもよい。こうすれば、スペース層への流体の供給及びスペース層からの流体の排出を切り替えることにより、スペース層の熱抵抗を小さくしたり大きくしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】強プラズマ発生時におけるウエハ載置台10の使用例を示す説明図。
【
図6】弱プラズマ発生時におけるウエハ載置台10の使用例を示す説明図。
【
図7】上述した実施形態に柱状部材36eを設けた場合の説明図。
【
図8】上述した実施形態に柱状部材36e及び空洞部35を設けた場合の説明図。
【
図9】上述した実施形態に凸部36fを設けた場合の説明図。
【
図10】ウエハWを処理するプロセス中の時間とウエハWの温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1はウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面でウエハ載置台10を切断したときの断面図)、
図2は
図1の部分Aの拡大図、
図3は
図1のB-B断面図である。
【0016】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものである。ウエハ載置台10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、接合層40とを備えている。
【0017】
セラミックプレート20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成され、上面に円形のウエハ載置部22を有する。ウエハ載置部22には、ウエハWが載置される。ウエハ載置部22には、図示しないが、セラミックプレート20の上面の外縁に沿ってシールバンドが形成され、シールバンドの内側の全面に複数の扁平な円形小突起が形成されている。シールバンド及び円形小突起は同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。セラミックプレート20には、静電電極24とヒータ電極26とが埋設されている。
【0018】
静電電極24は、セラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域に埋設された平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。静電電極24に直流電圧が印加されると、ウエハWは静電吸着力によりウエハ載置部22(具体的にはシールバンドの上面及び円形小突起の上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置部22への吸着固定が解除される。ヒータ電極26は、セラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域に、一端から他端まで一筆書きの要領で形成された抵抗発熱体である。ヒータ電極26は、図示しないヒータ電源からの電力を供給可能となっている。
【0019】
冷却プレート30は、アルミニウム、アルミニウム合金などに代表される金属で形成された円板部材である。冷却プレート30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。冷媒流路32は、セラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域に、一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領で形成されている。本実施形態では、冷媒流路32は、
図3に示すように、平面視で渦巻き状に形成されている。冷媒は、図示しない冷媒循環装置から冷媒流路32の一端(入口)に供給され、冷媒流路32を通過したあと冷媒流路32の他端(出口)から排出されて冷媒循環装置に戻る。冷媒循環装置は冷媒を所望の温度に調節することができる。冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性の液体であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。
【0020】
接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合する。本実施形態では、接合層40は、樹脂接着層である。樹脂接着層としては、例えば両面に有機接着剤が塗布された接着シートをセラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面との間に挟んで硬化させたものなどが挙げられる。
【0021】
冷却プレート30は、スペース層34を有している。スペース層34は、冷却プレート30の上面と冷媒流路32との間に設けられている。スペース層34は、平面視で冷媒流路32の全体を覆うように設けられている。冷却プレート30のうちスペース層34を取り囲む部分をスペース層形成部36と称する。スペース層形成部36は、底面36a、天井面36b及び側壁36cで構成されている。底面36a及び天井面36bは平面視で円形の面であり、側壁36cは円筒の側面である。スペース層34の厚み(底面36aと天井面36bとの間の距離)は、0.1mm以上1mm以下が好ましく、0.1mm以上0.2mm以下がより好ましい。冷却プレート30には、冷却プレート30の下面からスペース層形成部36の底面36aに至るようにガス供給通路38及びガス排出通路39が設けられている。ガス供給通路38は、ガスをスペース層34へ供給する通路であり、ガス排出通路39は、スペース層34内のガスを排出する通路である。本実施形態では、ガス供給通路38とガス排出通路39はそれぞれ1つずつ設けられている。ガス供給通路38とガス排出通路39は、流体切替機構60に接続されている。
【0022】
スペース層形成部36は、
図2に示すように、繋ぎ目36dを有している。繋ぎ目36dは、天井面36bと側壁36cの上面との境界である。この繋ぎ目36dは、Oリングなどのシール部材を介在させることなく金属接合によって形成されている。金属接合としては、例えば溶接、ロウ接合、拡散接合、TCB(Thermal compression bonding)などが挙げられる。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0023】
流体切替機構60は、ガス供給通路38を介してスペース層34にガス(例えばHeガスなどの熱伝導ガス)を供給したり、ガス排出通路39を介してスペース層34内のガスを排出したりする。流体切替機構60は、ガス供給通路38からスペース層34にガスを供給したあとガス供給通路38及びガス排出通路39を閉じることにより、スペース層34内にガスを封入することができる。また、流体切替機構60は、ガス供給通路38を閉じた状態でガス排出通路39からガスを排出することにより、スペース層34を真空雰囲気にすることもできる。更に、流体切替機構60は、ガスをガス供給通路38からスペース層34に供給し続けると共にガス排出通路39から排出し続けることにより、ガスをスペース層34に流すこともできる。
【0024】
次に、ウエハ載置台10のうち冷却プレート30の製造例について
図4を用いて説明する。まず、金属円板である冷却プレート第1層301を用意し、冷却プレート第1層301の上面に冷媒流路溝321を形成すると共に、冷却プレート第1層301を厚さ方向に貫通する2つの貫通孔381,391を形成する(
図4A)。これと並行して、金属円板である冷却プレート第2層302を用意し、冷却プレート第2層302の下面に冷媒流路溝322を形成すると共に、冷却プレート第2層302を厚さ方向に貫通する2つの貫通孔382,392を形成する(
図4A)。
【0025】
続いて、冷却プレート第1層301の上面と冷却プレート第2層302の下面とが互いに接触するように両者を積層し、得られた積層体に上下方向から圧力を加えつつ両者の母材の融点以下の所定の温度で加熱し、冷却プレート第1層301と冷却プレート第2層302とを拡散接合する(
図4B)。これにより、冷却プレート第1層301と冷却プレート第2層302との接触面は金属が原子レベルで接合されて、冷却プレート下層30Lが得られる(
図4C)。冷却プレート下層30Lは、2つの冷媒流路溝321,322により冷媒流路32が形成され、2つの貫通孔381,382によりガス供給通路38が形成され、2つの貫通孔391,392によりガス排出通路39が形成される。
【0026】
続いて、金属円板である冷却プレート上層30Uを用意し、冷却プレート上層30Uの下面に平面視で円形の凹溝341を形成する(
図4D)。そして、冷却プレート下層30Lの上面と冷却プレート上層30Uの下面とが互いに接触するように両者を積層し、得られた積層体に上下方向から圧力を加えつつ両者の母材の融点以下の所定の温度で加熱し、冷却プレート下層30Lと冷却プレート上層30Uとを拡散接合する。これにより、冷却プレート下層30Lと冷却プレート上層30Uとの接触面は金属が原子レベルで接合されて、冷却プレート30が得られる(
図4E)。冷却プレート30には、凹溝341と冷却プレート下層30Lの上面によりスペース層34が形成される。また、繋ぎ目36dは、金属接合によって形成される。
【0027】
このようにして得られた冷却プレート30の上面に、別途作製したセラミックプレート20の下面を接着シートを介して接合することにより、ウエハ載置台10を得る。
【0028】
次に、ウエハ載置台10の使用例について説明する。半導体プロセス用のチャンバ(図示せず)の内部に、ウエハ載置台10を固定する。ウエハ載置部22には、ウエハWが載置される。この状態で、静電電極24に直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置部22に吸着させる。それと共に、冷媒流路32に冷媒を流通させる。また、ヒータ電極26に電力を供給してヒータ電極26を発熱させてウエハWを加熱する。そして、チャンバの内部を所定の真空雰囲気になるように設定し、チャンバの天井部に設けられたシャワーヘッドからプロセスガスを供給しながら、冷却プレート30にRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッドとの間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。スペース層34に熱伝導ガスを封入して熱抵抗を低くするか、スペース層34を真空雰囲気にして熱抵抗を高くするかは、状況に応じて適宜切り替える。
【0029】
例えば、
図5に示すように、ウエハWの上方で発生するプラズマが強プラズマの場合、スペース層34に熱伝導ガスが封入されるように流体切替機構60を調整する。これにより、冷却プレート30の上面と冷媒流路32との間の熱抵抗が低くなる。このとき、ウエハWには強プラズマから比較的大きな入熱がある。そのため、冷媒流路32を流れる冷媒によってウエハWの温度が所定温度になるように冷却する必要があるが、冷却プレート30の上面と冷媒流路32との間の熱抵抗が低くなっているため、スムーズにウエハWを冷却することができる。なお、冷媒による温度調整は応答性がよくないため、ウエハWが所定温度を下回る場合にはヒータ電極26によってウエハWが所定温度になるように微調整する。
【0030】
一方、
図6に示すように、ウエハWの上方で発生するプラズマが弱プラズマの場合、スペース層34が真空雰囲気になるように流体切替機構60を調整する。これにより、冷却プレート30の上面と冷媒流路32との間の熱抵抗が高くなる。このとき、ウエハWには弱プラズマから比較的小さな入熱がある。そのため、冷媒流路32を流れる冷媒によってウエハWの温度が所定温度になるように冷却する必要があるが、冷媒による温度調整は応答性がよくないためウエハWが冷えすぎるおそれがある。ここでは、冷却プレート30の上面と冷媒流路32との間の熱抵抗が高くなっているため、ウエハWの温度は冷媒によって下がり過ぎることはない。この場合も、ヒータ電極26によってウエハWが所定温度になるように微調整するが、ヒータ電極26の発熱量はスペース層34が設けられていない場合に比べて少なくて済む。
【0031】
以上説明したウエハ載置台10では、冷却プレート30のうちスペース層34を取り囲むスペース層形成部36は、繋ぎ目36dを有しているが、その繋ぎ目36dは、シール部材を介在させることなく金属接合によって形成されている。そのため、このウエハ載置台10を長期にわたって使用したとしても、スペース層形成部36の繋ぎ目36dからガスが漏れ出すのを防止することができる。
【0032】
また、スペース層34は、平面視で冷媒流路32の全体を覆っている。そのため、スペース層34が平面視で冷媒流路32の一部を覆っている場合に比べて、冷媒流路32の冷却効率をスペース層34によって調整しやすい。
【0033】
更に、流体切替機構60を用いてスペース層34へのガスの供給及びスペース層34からのガスの排出を切り替えることにより、スペース層34の熱抵抗を小さくしたり大きくしたりすることができる。
【0034】
更にまた、ウエハWの上方で発生するプラズマが強プラズマの場合、スペース層34を熱伝導ガスで充填するため、冷媒によるウエハWの冷却効率が向上する。一方、ウエハWの上方で発生するプラズマが弱プラズマの場合、スペース層34を真空雰囲気にするため、冷媒によるウエハWの冷却が抑制され、少ないヒータ電極26の発熱量でウエハWを所定の温度に調整することができる。そのため、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0036】
上述した実施形態において、
図7に示すように、スペース層34には、スペース層形成部36の天井面36bと底面36aとを繋ぐ複数の柱状部材36eが設けられていてもよい。
図7Aはこのウエハ載置台の縦断面図、
図7Bは
図7AのC-C断面図である。
図7では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。こうすれば、上述した実施形態(柱状部材36eがない場合)に比べて、スペース層34の上下方向の熱抵抗が小さくなり、ウエハWの熱を効率よく冷媒流路32に逃がすことができる。柱状部材36eの熱伝導率の方が熱伝導ガスの熱伝導率よりも高いからである。この場合、平面視でスペース層34に占めるすべての柱状部材36eの面積率が50%以下であることが好ましい。この面積率が50%を超えると、スペース層34を真空雰囲気にしたときの断熱効果(熱抵抗を高める効果)が十分得られないおそれがあるからである。
【0037】
上述した実施形態において、柱状部材36eを備えるようにした場合、
図8に示すように、冷却プレート30のうち柱状部材36eの直下には、スペース層34とは別の空洞部35が設けられていてもよい。
図8Aはこのウエハ載置台の縦断面図、
図8Bは
図8AのD-D断面図である。
図8では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付したが、流体切替機構60の図示は省略した。柱状部材36eはスペース層形成部36の天井面36bと底面36aとを繋ぐものであるため、ウエハWのうち柱状部材36eの直上に相当する部分は冷却され過ぎるおそれがある。しかし、ここでは、冷却プレート30のうち柱状部材36eの直下にスペース層34とは別の空洞部35(平面視で円形の空洞)が設けられているため、ウエハWのうち柱状部材36eの直上に相当する部分が冷却され過ぎるのを、空洞部35の断熱効果により抑えることができる。
図8Aの部分拡大図は、模式的に熱の流れを矢印で示したものであり、熱の流れは空洞部35によって遮られる。なお、空洞部35を冷却プレート30のうち柱状部材36eの直下に設ける代わりに、柱状部材36eの直上に設けてもよい。
【0038】
上述した実施形態において、
図9に示すように、スペース層34には、スペース層形成部36の底面36aに高さがスペース層34の高さ(厚み)よりも低い複数の凸部36fが設けられていてもよい。
図9Aはこのウエハ載置台の縦断面図、
図9Bは
図9AのE-E断面図である。
図9では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。こうすれば、上述した実施形態(こうした凸部36fがない場合)に比べて、スペース層34の上下方向の熱抵抗が小さくなり、ウエハWの熱を効率よく冷媒流路32に逃がすことができる。一方、凸部36fはスペース層形成部36の天井面36bと底面36aとを繋ぐものではないため、スペース層34を真空雰囲気としたときのスペース層34の断熱効果も十分得られる。なお、凸部36fを底面36aに設ける代わりに、天井面36bに設けてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、プラズマの強弱に応じてスペース層
34に熱伝導ガスを封入するか真空雰囲気にするかを切り替える例を示したが、特にこれに限定されない。例えば、ウエハWを処理するプロセスでは、ウエハWの温度の昇降を繰り返し行うが、昇温のタイミングでスペース層
34を真空雰囲気にしてもよい。
図10は、ウエハWを処理するプロセスにおける時間とウエハWの温度との関係を示すグラフである。この場合、プロセスを開始した時点でスペース層
34を真空雰囲気に設定し、ウエハWの温度がT1に上昇するまでスペース層
34を真空雰囲気のまま維持し、ウエハWの温度がT1に達した時点でスペース層
34に熱伝導ガスを供給し封入する。そして、ウエハWの温度をT1で所定時間保持したあとT2(<T1)に降下させ、その後、温度T2で所定時間保持するまでの間、スペース層
34に熱伝導ガスを封入した状態を維持する。その後、スペース層
34を真空雰囲気に設定し、ウエハWの温度がT2からT1に昇温するまで、スペース層
34を真空雰囲気に維持する。
図10の折れ線グラフのうち太線部分(昇温区間)では、スペース層
34を真空雰囲気に設定する。こうすることにより、ウエハWを昇温する際に冷媒流路32に熱が奪われにくくなるため、速やかにウエハWを昇温させることができる。
【0040】
上述した実施形態では、スペース層34にガスを供給可能としたが、ガスの代わりに液体を供給可能としてもよい。液体としては、例えば冷媒流路32に流す冷媒と同じものを用いることができる。
【0041】
上述した実施形態において、スペース層36に熱伝導ガスを封入した状態における、スペース層36の上下方向の熱抵抗を、接合層40の上下方向の熱抵抗よりも高くなるようにしてもよい。こうすれば、スペース層36に熱伝導ガスを封入して冷却プレート30の上面と冷媒流路32との熱伝導を促進させたい場合であっても、過剰な熱伝導を抑えることができる。特に接合層40として金属接合層や高熱伝導接着層を採用した場合にこうした構成を適用するのが好ましいことがある。あるいは、スペース層36に熱伝導ガスを封入した状態における、スペース層36の上下方向の熱抵抗を、接合層40の上下方向の熱抵抗よりも低くなるようにしてもよい。こうすれば、スペース層36に熱伝導ガスを封入して冷却プレート30の上面と冷媒流路32との熱伝導を促進させたい場合に、熱伝導をより促進させることができる。
【0042】
上述した実施形態では、冷却プレート30にガス供給通路38とガス排出通路39をそれぞれ1つずつ設けたが、特にこれに限定されない。例えば、ガス供給通路38を冷却プレート30と同心円となる円周に沿って複数設けてもよい。こうすれば、スペース層34にガスを均一に供給しやすくなる。
【0043】
上述した実施形態において、ウエハWを効率よく冷却したい場合にはスペース層36に熱伝導ガスを流通させてもよい。こうすれば、スペース層36を一種の冷媒流路として用いることができる。
【0044】
上述した実施形態では、冷却プレート30として金属で形成された円板部材を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、冷却プレート30は、金属とセラミックとの複合材料で形成された円板部材であってもよい。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al2O3とTiCとの複合材料などが挙げられる。
【0045】
上述した実施形態では、冷媒流路32を平面視で渦巻き状に形成したが、特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路32を平面視でジグザグ状に形成してもよい。
【0046】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極として、静電電極とヒータ電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、これらの電極に加えてRF電極を内蔵してもよい。
【0047】
上述した実施形態において、ウエハ載置台10には、ウエハWをウエハ載置部22から持ち上げるためのリフトピンを挿通可能なリフトピン穴が形成されていてもよいし、ウエハWの裏面にバックサイドガスを供給するガス穴が形成されていてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、ヒータ電極26をセラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域に設けたが、セラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域を複数のゾーンに分け、ゾーンごとにヒータ電極を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えばウエハをプラズマ処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、22 ウエハ載置部、24 静電電極、26 ヒータ電極、30 冷却プレート、30L 冷却プレート下層、30U 冷却プレート上層、32 冷媒流路、34 スペース層、35 空洞部、36 スペース層形成部、36a 底面、36b 天井面、36c 側壁、36d 繋ぎ目、36e 柱状部材、36f 凸部、38 ガス供給通路、39 ガス排出通路、40 接合層、60 流体切替機構、301 冷却プレート第1層、302 冷却プレート第2層、321,322 冷媒流路溝、341 凹溝、381,382,391,392 貫通孔、W ウエハ。