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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】物体検出装置および認証方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/023 20060101AFI20241107BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20241107BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B60R16/023 P
G01S15/931
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023531951
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2022025610
(87)【国際公開番号】W WO2023276969
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021108338
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崎内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐々 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍也
(72)【発明者】
【氏名】遠島 康平
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/024289(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/208956(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/209073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/023
G01S 15/931
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数個所に取り付けられて探査波を送受信する複数の送受信装置のそれぞれに対する前記車両における取り付け位置を一意に表す第1の識別コードを所定のタイミングで付与する付与部と、
前記複数の送受信装置のそれぞれから、前記複数の送受信装置のそれぞれを一意に表す第2の識別コードを前記所定のタイミングで読み出す読み出し部と、
前記所定のタイミングで付与された前記第1の識別コードと、前記所定のタイミングで読み出された前記第2の識別コードとの第1の組み合わせに基づいて、前記複数の送受信装置のそれぞれの認証を行う処理部と、
前記複数の送受信装置に予め付与された前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとを、前記複数の送受信装置のそれぞれについて紐づけたデータが記憶される記憶部と、を備え、
前記処理部は、
前記データにおける前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとの第2の組み合わせと、前記第1の組み合わせとが一致するか否かを照合して、前記複数の送受信装置のそれぞれの認証を行う、
物体検出装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記複数の送受信装置のうちの1つの送受信装置において、前記第1の組み合わせと前記第2の組み合わせとが一致していた場合には、前記1つの送受信装置の認証に成功したものと判定する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記複数の送受信装置のうちの1つの送受信装置において、前記第1の組み合わせと前記第2の組み合わせとが一致しなかった場合には、前記1つの送受信装置の認証に失敗したものと判定する、
請求項1または請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記1つの送受信装置の認証に失敗した場合は、前記1つの送受信装置についての照合結果を出力する、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記付与部は、
前記データに含めるため、少なくとも前記車両の工場出荷時に前記第1の識別コードを付与し、
前記読み出し部は、
前記データに含めるため、少なくとも前記車両の工場出荷時に前記第2の識別コードを読み出す、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記所定のタイミングは、
所定速度以上での前記車両の走行時間が所定時間を超えたタイミングである、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項7】
車両の周囲の物体を検出する物体検出装置によって実行される認証方法であって、
前記車両の複数個所に取り付けられて探査波を送受信する複数の送受信装置のそれぞれに対する前記車両における取り付け位置を一意に表す第1の識別コードを所定のタイミングで付与し、
記複数の送受信装置のそれぞれから、前記複数の送受信装置のそれぞれを一意に表す第2の識別コードを前記所定のタイミングで読み出し、
前記所定のタイミングで付与された前記第1の識別コードと、前記所定のタイミングで読み出された前記第2の識別コードとの第1の組み合わせに基づいて、前記複数の送受信装置のそれぞれの認証を行い、
前記複数の送受信装置に予め付与された前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとを、前記複数の送受信装置のそれぞれについて紐づけたデータを記憶しておき、
前記複数の送受信装置の認証を行うときは、
前記データにおける前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとの第2の組み合わせと、前記第1の組み合わせとが一致するか否かを照合する、
認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置および認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体検出装置は、車両の複数個所に取り付けられた複数の送受信装置から探査波の送受信結果を取得して車両の周囲の物体を検出する。物体検出装置は、複数の送受信装置のそれぞれに対し、例えば車両における取り付け位置を一意に表す識別コードを付与し、これらの識別コードによって、それぞれの送受信装置の取り付け位置を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-052386号公報
【文献】特開2003-152741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、識別コード付与後の送受信装置が車両に再組み付けされる場合があり、複数の送受信装置間で車両への取り付け位置が取り違えられてしまうことがある。また、他の車両に属する送受信装置が誤った車両に取り付けられてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、送受信装置の取り付けミスを検知することができる物体検出装置および認証方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の物体検出装置は、車両の複数個所に取り付けられて探査波を送受信する複数の送受信装置のそれぞれに対する前記車両における取り付け位置を一意に表す第1の識別コードを所定のタイミングで付与する付与部と、前記複数の送受信装置のそれぞれから、前記複数の送受信装置のそれぞれを一意に表す第2の識別コードを前記所定のタイミングで読み出す読み出し部と、前記所定のタイミングで付与された前記第1の識別コードと、前記所定のタイミングで読み出された前記第2の識別コードとの第1の組み合わせに基づいて、前記複数の送受信装置のそれぞれの認証を行う処理部と、前記複数の送受信装置に予め付与された前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとを、前記複数の送受信装置のそれぞれについて紐づけたデータが記憶される記憶部と、を備え、前記処理部は、前記データにおける前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとの第2の組み合わせと、前記第1の組み合わせとが一致するか否かを照合して、前記複数の送受信装置のそれぞれの認証を行う
【0007】
この構成によれば、送受信装置の取り付けミスを検知することができる。
【0008】
また、上記構成によれば、予め記憶されたデータと現行データとを比較するので、送受信装置の取り付けミスを高精度に検知することができる。
【0009】
また、上述の物体検出装置において、前記処理部は、前記複数の送受信装置のうちの1つの送受信装置において、前記第1の組み合わせと前記第2の組み合わせとが一致していた場合には、前記1つの送受信装置の認証に成功したものと判定する。この構成によれば、送受信装置が正しく取り付けられていることを判定することができる。
【0010】
また、上述の物体検出装置において、前記処理部は、前記複数の送受信装置のうちの1つの送受信装置において、前記第1の組み合わせと前記第2の組み合わせとが一致しなかった場合には、前記1つの送受信装置の認証に失敗したものと判定する。この構成によれば、送受信装置が間違って取り付けられていることを判定することができる。
【0011】
また、上述の物体検出装置において、前記処理部は、前記1つの送受信装置の認証に失敗した場合は、前記1つの送受信装置についての照合結果を出力する。この構成によれば、送受信装置が間違って取り付けられていることを保守作業員等に知らせることができる。
【0012】
また、上述の物体検出装置において、前記付与部は、前記データに含めるため、少なくとも前記車両の工場出荷時に前記第1の識別コードを付与し、前記読み出し部は、前記データに含めるため、少なくとも前記車両の工場出荷時に前記第2の識別コードを読み出す。この構成によれば、認証の根拠となるデータを正しく記憶させることができる。
【0013】
また、上述の物体検出装置において、前記所定のタイミングは、所定速度以上での前記車両の走行時間が所定時間を超えたタイミングである。この構成によれば、送受信装置が不使用の状態において適宜、送受信装置の照合を行うことができる。
【0014】
実施形態の認証方法は、車両の周囲の物体を検出する物体検出装置によって実行される認証方法であって、前記車両の複数個所に取り付けられて探査波を送受信する複数の送受信装置のそれぞれに対する前記車両における取り付け位置を一意に表す第1の識別コードを所定のタイミングで付与し、記複数の送受信装置のそれぞれから、前記複数の送受信装置のそれぞれを一意に表す第2の識別コードを前記所定のタイミングで読み出し、前記所定のタイミングで付与された前記第1の識別コードと、前記所定のタイミングで読み出された前記第2の識別コードとの第1の組み合わせに基づいて、前記複数の送受信装置のそれぞれの認証を行い、前記複数の送受信装置に予め付与された前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとを、前記複数の送受信装置のそれぞれについて紐づけたデータを記憶しておき、前記複数の送受信装置の認証を行うときは、前記データにおける前記第1の識別コードと前記第2の識別コードとの第2の組み合わせと、前記第1の組み合わせとが一致するか否かを照合する
【0015】
この構成によれば、送受信装置の取り付けミスを検知することができる。また、予め記憶されたデータと現行データとを比較するので、送受信装置の取り付けミスを高精度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態にかかる物体検出システムの物理的な構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態にかかるECUの機能的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかる物体検出システムの複数の送受信装置が搭載された車両の工場出荷時の上面図である。
図4図4は、実施形態にかかる物体検出システムの複数の送受信装置が搭載された車両の所定のタイミングにおける上面図である。
図5図5は、実施形態にかかるECUが実行するデータ保存方法の手順の一例を示すフロー図である。
図6図6は、実施形態にかかるECUが実行する認証方法の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の例示的な実施形態等の同様の構成要素には共通の符号を付与して、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
(物体検出システムの構成例)
図1は、実施形態にかかる物体検出システム1の物理的な構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施形態の物体検出システム1は、ECU(Electronic Control Unit)20及び複数の送受信装置14a~14hを備える。
【0019】
ECU20及び複数の送受信装置14a~14hは、例えばCAN(Controller Area Network)等である車内ネットワークNTを介して、互いに信号およびデータの送受信が可能に接続されている。車内ネットワークNTには制動システム90も接続されており、ECU20との信号およびデータの送受信が可能に構成されている。
【0020】
複数の送受信装置14a~14hは、それぞれが車両の異なる位置に取り付けられており、超音波等の探査波を送受信するセンサまたはソナーとして構成されている。
【0021】
送受信装置14aは、送信部14sa、受信部14ra、及びメモリ14maを備える。以下、送受信装置14aの送信部14sa、受信部14ra、及びメモリ14maについて説明するが、送受信装置14b~14hも、送受信装置14aと同様、図示しない送信部、受信部、及びメモリをそれぞれ備え、送受信装置14aと同様の機能および構成を有している。
【0022】
送受信装置14aの送信部14saは超音波等の探査波を周囲に送信する。送受信装置14aの受信部14raは周囲の物体によって反射された探査波を受信する。送受信装置14aは、送信部14sa及び受信部14raによる探査波の送受信結果を、車内ネットワークNTを介してECU20へと送信する。
【0023】
送受信装置14aのメモリ14maは、例えば不揮発性のメモリ等であって、送受信装置14aの電源がオフされた場合であってもデータを維持する。メモリ14maには送受信装置14aに関する情報が格納されている。
【0024】
なお、1つの車両に取り付けられる送受信装置14a~14hの個数等は任意であって、図1の例に限定されない。また、これ以降、個々の送受信装置14a~14hを区別しない場合には単に送受信装置14とも記載する。
【0025】
物体検出装置としてのECU20は、例えばCPU(Central Proessing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、及びSSD(Solid State Drive)24を備えるコンピュータとして構成され、車両の周囲の障害物等を検出する。
【0026】
CPU21は、ハードウェアプロセッサの一例であって、ROM22等に記憶されたプログラムを読み出して、そのプログラムにしたがって各種の演算処理および制御を実行する。
【0027】
ROM22は、各プログラム及びプログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。RAM23はCPU21の作業領域として機能する。SSD24は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であって、ECU20の電源がオフされた場合であってもデータを維持する。SSD24には、複数の送受信装置14a~14hの取り付け位置等に関する情報が格納されている。
【0028】
ただし、ECU20の上記機能の一部または全部は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)を含む回路等のハードウェアによって実現されていてもよい。
【0029】
制動システム90は、制動制御部91及び制動部92を備える。制動制御部91は、ECU等のコンピュータとして構成されており、ネットワークNTを介してECU20から取得した物体の検出結果に基づいて制動部92を制御する。制動部92は、例えば車両を停止させるブレーキ等である。
【0030】
(ECUの機能構成例)
次に、図2を用いて、実施形態のECU20の機能構成例について説明する。図2は、実施形態にかかるECU20の機能的な構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、実施形態のECU20は、検出部210、付与部220、読み出し部230、処理部240、及び記憶部250を備える。ECU20のこれらの機能部は、例えば上述のCPU21がROM22から読み出したプログラムをRAM23に展開して実行することで実現される。
【0032】
上記の各機能部を備えることにより、ECU20は、複数の送受信装置14a~14hから取得した探査波の送受信結果に基づいて、車両の周囲の障害物等の物体を検出する物体検出装置として機能する。
【0033】
検出部210は、複数の送受信装置14a~14dのそれぞれから探査波の送受信結果を取得する。探査波の送受信結果には、例えば複数の送受信装置14a~14dのそれぞれにおける探査波の送信時刻、受信時刻、及び受信した探査波の強度等の情報が含まれる。
【0034】
これらの情報に基づいて、検出部210は車両の周囲の物体を検出し、検出結果を制動制御部91に送信する。物体の検出結果には、例えば車両の周囲に障害物等の物体が存在するか否かの情報、物体が存在する場合の車両に対する物体の位置、及び車両から物体までの距離等の情報が含まれる。
【0035】
実施形態の物体検出システム1は、例えば所定の駐車スペースに車両を駐車する際に、周囲の障害物と車両とが衝突することを回避するよう構成されている。このため、複数の送受信装置14a~14dによる探査波の送受信、及び検出部210による物体検出処理等は、専ら車両が所定の速度未満で走行している際に実行される。
【0036】
制動制御部91は、ECU20から取得した物体の検出結果に基づいて制動部92に制御信号を送信する。例えばブレーキ等として構成される上記の制動部92は、制動制御部91からの制御信号に基づいて車両を停止させる。
【0037】
付与部220は、例えば車両が工場出荷される際、または工場出荷後の所定のタイミングで、車両の複数個所に取り付けられた複数の送受信装置14a~14hのそれぞれに対して位置IDを付与する。
【0038】
第1の識別コードとしての位置IDは、複数の送受信装置14a~14hの車両における取り付け位置を一意に表す数字、アルファベット、記号、及びその他の文字等の少なくともいずれかが組み合わせられた符号列である。位置IDは、例えば車種ごと、送受信装置のタイプごと、またはその他の規格に則ってパターンが定められている。
【0039】
付与部220は、例えば記憶部250に予め記憶された位置IDパターン251を読み出して、この位置IDパターン251にしたがって複数の送受信装置14a~14hのそれぞれに位置ID25Fa~25Fd,25Ra~25Rdを付与していく。
【0040】
読み出し部230は、例えば車両が工場出荷される際、または工場出荷後の所定のタイミングで、車両の複数個所に取り付けられた複数の送受信装置14a~14hのそれぞれから、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれが保有している固有IDを読み出す。
【0041】
第2の識別コードとしての固有IDは、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれを一意に表す数字、アルファベット、記号、及びその他の文字等の少なくともいずれかが組み合わせられた符号列である。より詳細には、固有IDによれば、複数の送受信装置14a~14hを含む送受信装置のそれぞれを一意に表すことが可能である。
【0042】
複数の送受信装置14a~14hを含む送受信装置とは、複数の送受信装置14a~14hのみならず、例えば複数の送受信装置14a~14hと同型の送受信装置等であって、複数の送受信装置14a~14hと同型の車両等に取り付け可能な複数の送受信装置を指す。したがって、個々の送受信装置14が保有する固有IDは、例えば個々の送受信装置14に割り当てられたシリアル番号等に基づくことができる。
【0043】
図2の例では、複数の送受信装置14a~14hは、それぞれ固有ID15a~15hを保有する。これらの固有ID15a~15hは、例えば送受信装置14a~14hがそれぞれ備える上述のメモリ14ma(図1)等に保持されている。
【0044】
なお、複数の送受信装置14a~14hに対して位置IDが付与され、また、固有IDの読み出しが行われる上記所定のタイミングとは、例えば車両が所定の速度以上で走行しているタイミングである。車両が所定速度以上で高速走行している際には、例えばる物体検出処理は実行されず、複数の送受信装置14a~14hは不使用の状態となっている。
【0045】
車両が所定速度以上での走行を一定時間継続し、所定時間を超えた上記所定のタイミングで、付与部220は複数の送受信装置14a~14hに位置IDを付与し、読み出し部230は複数の送受信装置14a~14hから固有IDを読み出す。
【0046】
処理部240は、上記の位置ID及び固有IDに関わる各種の処理を実行する。
【0047】
具体的には、処理部240は、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれについて、例えば車両が工場出荷される際に付与された位置IDと、例えば車両が工場出荷される際に読み出された固有IDとを紐付けたデータを生成する。また、処理部240は、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれについてのデータを含むIDデータベース252を生成して記憶部250に格納する。
【0048】
また、処理部240は、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれについて、例えば上記所定のタイミングで付与された位置IDと、上記所定のタイミングで読み出された固有IDとの第1の組み合わせとしての組み合わせに基づいて、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれの認証を行う。
【0049】
より詳細には、処理部240は、所定のタイミングでの位置IDと固有IDとの組み合わせと、記憶部250に格納済みのIDデータベース252に含まれる位置IDと固有IDとの第2の組み合わせとしての組み合わせとが一致するか否かを、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれについて照合する。
【0050】
所定の送受信装置14において、これらの組み合わせが一致していた場合、処理部240はその送受信装置14の認証に成功したものと判定する。認証に成功した送受信装置14は、車両の所定箇所に正しく取り付けられた正規品であることを意味する。
【0051】
所定の送受信装置14において、これらの組み合わせが一致していない場合、処理部240はその送受信装置14の認証に失敗したものと判定する。認証に失敗した送受信装置14は、車両への取り付け位置が間違っており、または誤った車両に取り付けられてしまった非正規品であることを意味する。
【0052】
処理部240は、認証に失敗した送受信装置14があった場合には、その送受信装置14についての照合結果を出力する。処理部240は、認証失敗の照合結果を出力する場合、例えば車室内に設けられたモニタ等に表示してもよく、または、所定の送受信装置14に不具合があることを示す警告灯を車室内で点灯させるなどしてもよい。
【0053】
記憶部250は、例えば上述のROM22のプログラムを実行中のCPU21の制御下にあるSSD24等によって実現される機能部である。記憶部250には、例えば位置IDパターン251及びIDデータベース252が格納されている。
【0054】
位置IDパターン251には、例えば位置ID25Fa~25Fd,25Ra~25Rd等の位置IDのパターンが規定されている。IDデータベース252は、処理部240によって車両の工場出荷時の位置IDと固有IDとが紐づけられた複数の送受信装置14a~14hのそれぞれについてのデータを含む。
【0055】
(ECUの動作例)
次に、図3及び図4を用いて、実施形態のECU20の動作例について説明する。図3は、実施形態にかかる物体検出システム1の複数の送受信装置14a~14hが搭載された車両10の工場出荷時の上面図である。図3に矢印で示すように、運転席から見た前後左右方向を車両10の前後左右方向とする。
【0056】
図3に示すように、車両10の工場出荷時において、複数の送受信装置14a~14hは、車両10の外周部に設けられている。
【0057】
複数の送受信装置14a~14dは、例えば車両10の前部バンパ等に、車両10の左側から右側へと所定間隔でこの順に取り付けられている。具体的には、送受信装置14b,14cは、車両10前部中央の左右にそれぞれ配置され、送受信装置14a,14dは、送受信装置14b,14cの両側にそれぞれ配置されている。
【0058】
複数の送受信装置14e~14hは、例えば車両10の後部バンパ等に、車両10の左側から右側へと所定間隔でこの順に取り付けられている。具体的には、送受信装置14f,14gは、車両10後部中央の左右にそれぞれ配置され、送受信装置14e,14hは、送受信装置14f,14gの両側にそれぞれ配置されている。
【0059】
ただし、これら複数の送受信装置14の車両10における取り付け位置および取り付け数は任意であって図3の例に限られない。
【0060】
なお、複数の送受信装置14a~14hには、これらの送受信装置14a~14hが製作された後、車両10に取り付けられるまでの間に固有ID15a~15hがそれぞれ設定される。
【0061】
この状態において、ECU20の付与部220は、例えば記憶部250の位置IDパターン251を参照し、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれに対し位置ID25Fa~25Fd,25Ra~25Rdを付与する。
【0062】
図3の例では、車両10の前部に取り付けられた複数の送受信装置14a~14dには、それぞれの取り付け位置を一意に表す位置ID25Fa~25Fdが付与される。また、車両の後部に取り付けられた複数の送受信装置14e~14hには、それぞれの取り付け位置を一意に表す位置ID25Ra~25Rdが付与される。
【0063】
また、読み出し部230は、上記の状態において、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれから、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれが保有する固有ID15a~15hを読み出す。
【0064】
処理部240は、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれについて、位置IDと固有IDとが紐づけられたデータを生成し、IDデータベース252として記憶部250に格納する。
【0065】
すなわち、IDデータベース252には、位置ID25Faと固有ID15aとが紐づけられた送受信装置14aについてのデータ、位置ID25Fbと固有ID15bとが紐づけられた送受信装置14bについてのデータ、位置ID25Fcと固有ID15cとが紐づけられた送受信装置14cについてのデータ、及び位置ID25Fdと固有ID15dとが紐づけられた送受信装置14dについてのデータが含まれる。
【0066】
さらに、IDデータベース252には、位置ID25Raと固有ID15eとが紐づけられた送受信装置14eについてのデータ、位置ID25Rbと固有ID15fとが紐づけられた送受信装置14fについてのデータ、位置ID25Rcと固有ID15gとが紐づけられた送受信装置14gについてのデータ、及び位置ID25Rdと固有ID15hとが紐づけられた送受信装置14hについてのデータが含まれる。
【0067】
図4は、実施形態にかかる物体検出システム1の複数の送受信装置14a~14hが搭載された車両10の所定のタイミングにおける上面図である。
【0068】
上述のように、車両10が工場から出荷された後、ECU20は、例えば所定のタイミングごとに、複数の送受信装置14a~14hの現行における位置IDと固有IDとの組み合わせと、記憶部250のIDデータベース252のデータとの照合を行う。図4は、そのような所定のタイミングのひとつにおいて、複数の送受信装置14a~14hの幾つかが再組み付けをされた後の状態を示す。
【0069】
車両10の工場出荷後、任意の数の送受信装置14が一旦、車両10から取り外された後に再組み付けされる場合がある。このような送受信装置14の再組み付けは、例えば送受信装置14の修理もしくは保守を行ったり、または送受信装置14近傍の車両10のパーツの修理もしくは保守を行ったりする場合に行われ得る。
【0070】
送受信装置14の再組み付けの際、車両10の複数個所に取り付けられる複数の送受信装置14a~14h間で、取り付け位置の取り違いが生じてしまうことがある。また、他の車両に属する送受信装置、あるいは開発品等の正規品ではない送受信装置が間違って当該車両10に取り付けられてしまうことも起こり得る。
【0071】
図4の例では、複数の送受信装置14a~14hのうち、送受信装置14aと送受信装置14cとが入れ違いに取り付けられ、また、送受信装置14fが取り付けられるべき個所に、他の車両に属する送受信装置54fが取り付けられている。送受信装置54fは、例えば固有ID55fを保有しているものとする。
【0072】
このような状況下において、車両10が所定速度以上での走行を継続して所定時間が経過すると、ECU20の付与部220は、例えば記憶部250の位置IDパターン251を参照し、複数の送受信装置14a~14e,54f,14g,14hに対して位置ID15Fa~15Fd,15Ra~15Rdをそれぞれ付与する。
【0073】
また、読み出し部230は、上記状況下において、複数の送受信装置14a~14e,54f,14g,14hから固有ID15a~15e,55f,15g,15hをそれぞれ読み出す。
【0074】
処理部240は、複数の送受信装置14a~14e,54f,14g,14hのそれぞれについて、現行における位置IDと固有IDとの組み合わせが、記憶部250に格納済みのIDデータベース252中の各データにおける位置IDと固有IDとの組み合わせと一致しているか否かを照合する。
【0075】
複数の送受信装置14a~14e,54f,14g,14hのうち、送受信装置14b,14d,14e,14g,14hは、車両10に属する送受信装置であって、かつ、車両10の正しい位置にそれぞれ取り付けられている。
【0076】
したがって、これらの送受信装置14b,14d,14e,14g,14hについて、現行の位置IDと固有IDとの組み合わせと、IDデータベース252における位置IDと固有IDとの組み合わせとは一致する。よって、処理部240は、これらの送受信装置14b,14d,14e,14g,14hの認証に成功したものと判定する。
【0077】
複数の送受信装置14a~14e,54f,14g,14hのうち、送受信装置14aと送受信装置14cとは、車両10に属する送受信装置ではあるものの、取り付け位置が入れ替わっている。
【0078】
したがって、位置ID25Faの取り付け位置において、IDデータベース252中の固有ID15aと現行の固有ID15cとが一致しないこととなり、処理部240は、位置ID25Faの取り付け位置に取り付けられた送受信装置14cの認証に失敗したものと判定する。
【0079】
また、位置ID25Fcの取り付け位置において、IDデータベース252中の固有ID15cと現行の固有ID15aとが一致しないこととなり、処理部240は、位置ID25Fcの取り付け位置に取り付けられた送受信装置14aの認証に失敗したものと判定する。
【0080】
複数の送受信装置14a~14e,54f,14g,14hのうち、送受信装置54fは車両10に誤って取り付けられた他の車両の送受信装置である。
【0081】
したがって、位置ID25Rbの取り付け位置において、IDデータベース252中の固有ID15fと現行の固有ID55fとが一致しないこととなり、処理部240は、位置ID25Rbの取り付け位置に取り付けられた送受信装置54fの認証に失敗したものと判定する。
【0082】
処理部240は、送受信装置14a,14c,54fについての認証が失敗したことを示す照合結果を出力する。これにより、車両10のオーナーまたは保守作業員等が、位置ID25Fa,25Fc,25Rbの取り付け位置に誤った送受信装置が取り付けられていることを知ることができる。
【0083】
(ECUにおける処理例)
次に、図5及び図6を用いて、実施形態のECU20が実行する各種処理の例について説明する。図5は、実施形態にかかるECU20が実行するデータ保存方法の手順の一例を示すフロー図である。図5に示す処理は、例えば車両10が工場出荷される際に実施される。
【0084】
図5に示すように、ECU20の付与部220は、例えば記憶部250に格納された位置IDパターン251にしたがって、車両10の所定位置に取り付けられた送受信装置14に対し、その取り付け位置に応じた位置IDを付与する(ステップS101)。
【0085】
読み出し部230は、上記の送受信装置14から、その送受信装置14が保有する固有IDを読み出す(ステップS102)。
【0086】
処理部240は、上記の送受信装置14に付与された位置IDと、上記の送受信装置14から読み出された固有IDとを紐づけたデータを生成し、IDデータベース252に含める形で記憶部250に格納する(ステップS103)。
【0087】
ECU20は、車両10に取り付けられた複数の送受信装置14a~14hのうち、未処理の送受信装置14がある場合には(ステップS104:Yes)、ステップS101からの処理を繰り返す。未処理の送受信装置14がない場合には(ステップS104:No)処理を終了する。
【0088】
以上により、実施形態のECU20が実行するデータ保存処理が終了する。
【0089】
図6は、実施形態にかかるECU20が実行する認証方法の手順の一例を示すフロー図である。図6に示す処理の前に、ECU20の記憶部250には予めIDデータベース252が記憶されているものとする。
【0090】
図6に示すように、ECU20は、所定速度以上での車両10の走行時間が所定時間を超えた所定のタイミングとなるまで待機する(ステップS201:No)。所定のタイミングとなると(ステップS201:Yes)、ECU20の付与部220は、例えば記憶部250に格納された位置IDパターン251にしたがって、車両10の所定位置に取り付けられた送受信装置14に対し、その取り付け位置に応じた位置IDを付与する(ステップS202)。
【0091】
読み出し部230は、上記の送受信装置14から、その送受信装置14が保有する固有IDを読み出す(ステップS203)。
【0092】
処理部240は、上記の送受信装置14について、現行データと記憶部250のデータとを照合する(ステップS204)。すなわち、処理部240は、ステップS202の処理で上記の送受信装置14に付与された位置IDと、ステップS203の処理で上記の送受信装置14から読み出された固有IDとの組み合わせと、記憶部250のIDデータベース252に含まれる上記の送受信装置14についてのデータにおける位置IDと固有IDとの組み合わせとを照合する。
【0093】
上記の送受信装置14について、現行データにおける位置IDと固有IDとの組み合わせと、記憶部250のデータにおける位置IDと固有IDとの組み合わせとが一致した場合には(ステップS205:Yes)、処理部240は、その送受信装置14について認証に成功したものと判定する(ステップS206)。
【0094】
上記の送受信装置14について、現行データにおける位置IDと固有IDとの組み合わせと、記憶部250のデータにおける位置IDと固有IDとの組み合わせとが一致しなかった場合には(ステップS205:No)、処理部240は、その送受信装置14について認証に失敗したものと判定する(ステップS207)。
【0095】
処理部240は、その送受信装置14についての認証が失敗したことを示す照合結果を出力する(ステップS208)。
【0096】
ECU20は、車両10に取り付けられた複数の送受信装置14a~14hのうち、未処理の送受信装置14がある場合には(ステップS209:Yes)、ステップS202からの処理を繰り返す。未処理の送受信装置14がない場合には(ステップS209:No)処理を終了する。
【0097】
以上により、実施形態のECU20が実行する認証処理が終了する。
【0098】
(概括)
送受信装置からの探査波の送受信結果に基づいて、車両の周囲の物体を検出する物体検出装置が知られている。車両の外周部に取り付けられた複数の送受信装置をそれぞれ識別するため、物体検出装置は、例えばそれらの送受信装置の取り付け位置を示すID等を個々の送受信装置に付与する。
【0099】
送受信装置の修理または保守等のため、送受信装置が一旦取り外された後に再び車両に取り付けられる際、取り付け位置を間違って送受信装置が再組み付けされてしまう場合がある。この場合、送受信装置のIDは、実際の取り付け位置とは異なる取り付け位置を示すこととなり、物体検出装置は、例えば実際の位置とは異なる位置に物体があるなどと誤検出してしまうことがある。
【0100】
上述の特許文献1の技術によれば、複数の超音波センサは、車両の工場出荷時にECUによって付与された本IDを保有している。本来の位置と異なる位置にこれらのセンサが誤って設置されていないか判定する際には、ECUが個々のセンサに対して仮IDを付与する。個々のセンサは、自身が保有する本IDと新たに付与された仮IDとが一致するか否かを判定する。これにより、複数のセンサ間で取り付け位置の誤りが生じた場合、これを検知することができる。
【0101】
しかしながら、工場出荷時にECUが本IDを付与する場合、所定のIDパターンにしたがうIDが付与されるのが一般的である。このため、異なる車両間で共通の本IDを有する複数のセンサが存在する可能性があり、特許文献1の技術では、車両間でのセンサの取り違いを検知することができない。
【0102】
実施形態のECUによれば、車両10における取り付け位置を一意に表す位置IDと、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれを一意に表す固有IDとの組み合わせに基づいて、複数の送受信装置14a~14hのそれぞれの認証を行う。これにより、同一の車両10内で取り付け位置の取り違いが生じた場合のみならず、車両間での取り違いが生じた場合であっても、送受信装置14の取り付けミスを検知することができる。
【0103】
なお、上述の実施形態では、記憶部250に記憶する位置IDの付与と固有IDの読み出しは、車両10の工場出荷の際に行われることとした。しかし、記憶部250に記憶する位置IDの付与と固有IDの読み出しは、この他にも例えば送受信装置14が初期化されるタイミングで行われてもよい。
【0104】
送受信装置14の初期化は、例えば送受信装置14に動作異常等が発生した場合にECU20によって行われることがある。また、送受信装置14の初期化は、故障した送受信装置14が他の送受信装置14に交換された場合等にも、例えば保守作業員等によって手動で行われることがある。このような送受信装置14の初期化のタイミングでも位置IDの付与と固有IDの読み出しを行って、記憶部250のデータを適宜更新することで、個々の送受信装置14について、位置IDと固有IDとの正しい組み合わせの情報を維持することができ、ECU20による認証処理の精度を高めることができる。
【0105】
また、上述の実施形態では、車両10の1つの箇所には1つの送受信装置14が取り付けられることとしたが、1つの箇所に複数の送受信装置14が取り付けられる場合であっても、上述の実施形態を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1…物体検出システム
10…車両
14a~14h…送受信装置
15a~15h…固有ID
20…ECU
25Fa~25Fd,25Ra~25Rd…位置ID
90…制動システム
210…検出部
220…付与部
230…読み出し部
240…処理部
250…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6