(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ステントおよびステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/88 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A61F2/88
(21)【出願番号】P 2023545554
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2022032380
(87)【国際公開番号】W WO2023032905
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/032009
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】菅 一大
(72)【発明者】
【氏名】野口 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 完太
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 講
(72)【発明者】
【氏名】今岡 由佳
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/194506(WO,A1)
【文献】特開2004-344634(JP,A)
【文献】特開2003-102849(JP,A)
【文献】特開平08-196642(JP,A)
【文献】国際公開第2020/050292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを編み込んで形成されたステントであって、
少なくとも2つの前記ワイヤの直線部が交差することで構成され、前記ステントの周方向において互いに隣接するように配置されている複数の直線交差部と、
前記ワイヤが前記ステントの長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる山型屈曲部と、前記ワイヤが前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる谷型屈曲部と、が交差することで構成され、前記ステントの前記周方向において互いに隣接するように配置されている複数の掛合部と、
を備え、
前記掛合部と前記直線交差部は、前記長手軸方向において交互に配置され、
前記複数の直線交差部は、前記ワイヤの第一直線部と前記ワイヤの第二直線部とが交差する中央直線交差部を有し、
前記複数の掛合部は、
前記第一直線部の前記第一方向側に連なる前記山型屈曲部である第一山と、
前記谷型屈曲部である第一谷と、が交差する第一掛合部と、
前記第二直線部の前記第一方向側に連なる前記山型屈曲部である第二山と、
前記谷型屈曲部である第二谷と、が交差する第二掛合部と、
を有し、
前記第一掛合部と前記第二掛合部とは、前記長手軸方向において異なる位置に配置される、
ステント。
【請求項2】
前記複数の直線交差部が配置される第一領域と、前記複数の掛合部が配置される第二領域と、は前記長手軸方向において交互に配置され、
前記第一領域および前記第二領域は、前記長手軸方向に沿って螺旋状に配置される、
請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記第一領域において、前記複数の直線交差部は前記周方向の一周分配置され、
前記第二領域において、前記複数の掛合部は前記周方向の一周分配置される、
請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記ワイヤは、第一ワイヤと、前記第一ワイヤと異なる第二ワイヤと、を有し
前記第一谷と前記第二山とは、前記第一ワイヤにより形成され、
前記第一山と前記第二谷とは、前記第二ワイヤにより形成される、
請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記ワイヤは、第一ワイヤと、前記第一ワイヤと異なる第二ワイヤと、を有し
前記第一山と前記第一谷とは、前記第一ワイヤにより形成され、
前記第二山と前記第二谷とは、前記第二ワイヤにより形成される、
請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記中央直線交差部は、前記ステントの前記周方向において前記第一掛合部と前記第二掛合部との間に配置される、
請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記第一掛合部は、前記長手軸方向において前記第二掛合部と前記中央直線交差部との間に配置される、
請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記複数の掛合部は、
前記第一直線部の前記第二方向側に連なる前記谷型屈曲部である第三谷と、
前記山型屈曲部である第三山と、が交差する第三掛合部と、
前記第二直線部の前記第二方向側に連なる前記谷型屈曲部である第四谷と、
前記山型屈曲部である第四山と、が交差する第四掛合部と、
をさらに有し、
前記第三掛合部と前記第四掛合部とは、前記長手軸方向において異なる位置に配置される、
請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記中央直線交差部は、前記ステントの前記周方向において前記第三掛合部と前記第四掛合部との間に配置される、
請求項
8に記載のステント。
【請求項10】
前記第三掛合部は、前記長手軸方向において前記中央直線交差部と前記第四掛合部との間に配置される、
請求項
8に記載のステント。
【請求項11】
前記第一掛合部において、前記第一山と前記第一谷とは、第一交差部と前記第一交差部よりも前記中央直線交差部に近い第二交差部とにおいて交差し、
前記第三掛合部において、前記第三山と前記第三谷とは、第四交差部と前記第四交差部よりも前記中央直線交差部に近い第三交差部とにおいて交差し、
前記第一交差部において、前記第一山は前記第一谷の外側を通過し、
前記第二交差部において、前記第一山は前記第一谷の内側を通過し、
前記中央直線交差部において、前記第一直線部は前記第二直線部の外側を通過し、
前記第三交差部において、前記第三谷は前記第三山の内側を通過し、
前記第四交差部において、前記第三谷は前記第三山の外側を通過する、
請求項
8に記載のステント。
【請求項12】
前記第一掛合部において、前記第一山と前記第一谷とは、第一交差部と前記第一交差部よりも前記中央直線交差部に近い第二交差部とにおいて交差し、
前記第三掛合部において、前記第三山と前記第三谷とは、第四交差部と前記第四交差部よりも前記中央直線交差部に近い第三交差部とにおいて交差し、
前記第一交差部において、前記第一山は前記第一谷の内側を通過し、
前記第二交差部において、前記第一山は前記第一谷の外側を通過し、
前記中央直線交差部において、前記第一直線部は前記第二直線部の外側を通過し、
前記第三交差部において、前記第三谷は前記第三山の外側を通過し、
前記第四交差部において、前記第三谷は前記第三山の内側を通過する、
請求項
8に記載のステント。
【請求項13】
前記第一掛合部において、前記第一山と前記第一谷とは、第一交差部と前記第一交差部よりも前記中央直線交差部に近い第二交差部とにおいて交差し、
前記第三掛合部において、前記第三山と前記第三谷とは、第四交差部と前記第四交差部よりも前記中央直線交差部に近い第三交差部とにおいて交差し、
前記第一交差部において、前記第一山は前記第一谷の内側を通過し、
前記第二交差部において、前記第一山は前記第一谷の外側を通過し、
前記中央直線交差部において、前記第一直線部は前記第二直線部の外側を通過し、
前記第三交差部において、前記第三谷は前記第三山の内側を通過し、
前記第四交差部において、前記第三谷は前記第三山の外側を通過する、
請求項
8に記載のステント。
【請求項14】
前記第一掛合部において、前記第一山と前記第一谷とは、第一交差部と前記第一交差部よりも前記中央直線交差部に近い第二交差部とにおいて交差し、
前記第三掛合部において、前記第三山と前記第三谷とは、第四交差部と前記第四交差部よりも前記中央直線交差部に近い第三交差部とにおいて交差し、
前記中央直線交差部は、
前記第一交差部において、前記第一山は前記第一谷の外側を通過し、
前記第二交差部において、前記第一山は前記第一谷の内側を通過し、
前記中央直線交差部において、前記第一直線部は前記第二直線部の外側を通過し、
前記第三交差部において、前記第三谷は前記第三山の内側を通過
し、
前記第四交差部において、前記第三谷は前記第三山の外側を通過する、
第一直線交差部と、
前記第一交差部において、前記第一山は前記第一谷の内側を通過し、
前記第二交差部において、前記第一山は前記第一谷の外側を通過し、
前記中央直線交差部において、前記第一直線部は前記第二直線部の外側を通過し、
前記第三交差部において、前記第三谷は前記第三山の外側を通過
し、
前記第四交差部において、前記第三谷は前記第三山の内側を通過する、
第二直線交差部と、
を有する、
請求項
8に記載のステント。
【請求項15】
前記第一直線交差部は、前記長手軸方向に連続して配置され、
前記第二直線交差部は、前記長手軸方向に連続して配置される、
請求項
14に記載のステント。
【請求項16】
前記第一直線交差部および前記第二直線交差部は、前記長手軸方向に交互に配置される、
請求項
14に記載のステント。
【請求項17】
前記第一直線交差部は、前記周方向に連続して配置される、
請求項
14に記載のステント。
【請求項18】
前記周方向に所定の数だけ連続する前記第一直線交差部または前記第二直線交差部が前記長手軸方向に沿って螺旋状に配置される、
請求項
14に記載のステント。
【請求項19】
ワイヤを編み込んで形成されたステントであって、
少なくとも2つの前記ワイヤの直線部が交差することで構成され、前記ステントの周方向において互いに隣接するように配置されている複数の直線交差部と、
前記ワイヤが前記ステントの長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる山型屈曲部と、前記ワイヤが前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる谷型屈曲部と、が交差することで構成され、前記ステントの前記周方向において互いに隣接するように配置されている複数の掛合部と、
を備え、
前記掛合部と前記直線交差部は、前記長手軸方向において交互に配置され、
前記複数の掛合部は、
第五掛合部と、
前記第五掛合部と前記ステントの前記周方向において隣接する第六掛合部と、
前記第六掛合部と前記ステントの前記周方向において隣接する第七掛合部と、
を備え、
前記第五掛合部と前記第六掛合部との前記長手軸方向の位置は同じであり、
前記第六掛合部と前記第七掛合部との前記長手軸方向の位置は異なる、
ステント。
【請求項20】
前記複数の直線交差部は、
第三直線交差部と、
前記第三直線交差部と前記ステントの前記周方向において隣接する第四直線交差部と、
前記第四直線交差部と前記ステントの前記周方向において隣接する第五直線交差部と、
を備え、
前記第三直線交差部と前記第四直線交差部との前記長手軸方向の位置は同じであり、
前記第四直線交差部と前記第五直線交差部との前記長手軸方向の位置は異なる、
請求項
19に記載のステント。
【請求項21】
操作部と、
前記操作部から遠位側で延びるように構成される外筒部材と、
前記操作部から遠位側で延びるように構成され、前記外筒部材の内側にある内筒部材と、
前記外筒部材と前記内筒部材の間に収容され、ワイヤを編み込んで形成されたステントであって、
少なくとも2つの前記ワイヤの直線部が交差することで構成され、前記ステントの周方向において互いに隣接するように配置されている複数の直線交差部と、
前記ワイヤが前記ステントの長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる山型屈曲部と、前記ワイヤが前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる谷型屈曲部と、が交差することで構成され、前記ステントの前記周方向において互いに隣接するように配置されている複数の掛合部と、
を備え、
前記掛合部と前記直線交差部は、前記長手軸方向において交互に配置され、
前記複数の直線交差部は、前記ワイヤの第一直線部と前記ワイヤの第二直線部とが交差する中央直線交差部を有し、
前記複数の掛合部は、
前記第一直線部の前記第一方向側に連なる前記山型屈曲部である第一山と、
前記谷型屈曲部である第一谷と、が交差する第一掛合部と、
前記第二直線部の前記第一方向側に連なる前記山型屈曲部である第二山と、
前記谷型屈曲部である第二谷と、が交差する第二掛合部と、
を有し、
前記第一掛合部と前記第二掛合部とは、前記長手軸方向において異なる位置に配置される、
ステントと、
を備え、
前記操作部は、前記外筒部材または前記内筒部材を長手方向に移動させることで前記ステントを留置するよう構成される、
ステントデリバリーシステム。
【請求項22】
前記複数の直線交差部が配置される第一領域と、前記複数の掛合部が配置される第二領域と、は前記長手軸方向において交互に配置され、
前記第一領域および前記第二領域は、前記長手軸方向に沿って螺旋状に配置される、
請求項21に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項23】
前記第一領域において、前記複数の直線交差部は前記周方向の一周分配置され、
前記第二領域において、前記複数の掛合部は前記周方向の一周分配置される、
請求項22に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項24】
前記外筒部材は、内視鏡のチャネルに挿通可能に構成される、
請求項
21に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項25】
操作部と、
前記操作部から遠位側で延びるように構成される外筒部材と、
前記操作部から遠位側で延びるように構成され、前記外筒部材の内側にある内筒部材と、
前記外筒部材と前記内筒部材の間に収容され、ワイヤを編み込んで形成されたステントであって、
少なくとも2つの前記ワイヤの直線部が交差することで構成され、前記ステントの周方向において互いに隣接するように配置されている複数の直線交差部と、
前記ワイヤが前記ステントの長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる山型屈曲部と、前記ワイヤが前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる谷型屈曲部と、が交差することで構成され、前記ステントの前記周方向において互いに隣接するように配置されている複数の掛合部と、
を備え、
前記掛合部と前記直線交差部は、前記長手軸方向において交互に配置され、
前記複数の掛合部は、
第五掛合部と、
前記第五掛合部と前記ステントの前記周方向において隣接する第六掛合部と、
前記第六掛合部と前記ステントの前記周方向において隣接する第七掛合部と、
を備え、
前記第五掛合部と前記第六掛合部との前記長手軸方向の位置は同じであり、
前記第六掛合部と前記第七掛合部との前記長手軸方向の位置は異なる、
ステントと、
を備え、
前記操作部は、前記外筒部材または前記内筒部材を長手方向に移動させることで前記ステントを留置するよう構成される、
ステントデリバリーシステム。
【請求項26】
前記外筒部材は、内視鏡のチャネルに挿通可能に構成される、
請求項
25に記載のステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントおよびステントデリバリーシステムに関する。本願は、2021年08月31日に、PCT出願されたPCT/JP2021/032009号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
消化管等に生じた狭窄や閉塞(以下、「狭窄等」と称する。)に対して、ステントを留置して拡張する手技が知られている。ステントを狭窄等に留置するためにステントデリバリーシステムが用いられている。ステントデリバリーシステムは、内視鏡の処置具チャネルを挿通してステントを狭窄等まで搬送する。
【0003】
例えば特許文献1に記載されたステントは、1本のワイヤを治具に取り付けたピンに巻きかけてフェンス状に編むことで構成される。当該ステントは、二つの湾曲形状が互いに掛け合わされた箇所(かみ合わせ部60)が形成されるため、曲げられた場合であっても形状追従性が高く、留置する管腔内の地形に適合しやすいという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたステントは、1本のワイヤで編み込んで構成されるため、直線状のワイヤが互いに交差する部分(直線交差部70)がステントの周方向においてかみ合わせ部60に隣接する部分に位置している。ステントが曲げられる際に、かみ合わせ部60は追従して湾曲可能であるが、直線交差部70は曲げに反発する力(アキシャルフォース)を生じるため、ステント全体としての形状追従性を損なっている。特に、管腔内の形状が大きく屈曲している箇所では、ステントの留置が容易に行えない、または留置ができたとしても、管腔がステントの形状に倣おうとする状態になり管腔に負担をかけたり、ステントが留置位置から移動してしまうといった問題が生じ得る。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、曲げやすく、かつ、曲がった状態を維持しやすいステントおよび当該ステントを備えたステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るステントは、ワイヤを編み込んで形成されたステントであって、少なくとも2つの前記ワイヤの直線部が交差することで構成され、前記ステントの周方向において互いに隣接するように配置されている複数の直線交差部と、前記ワイヤが前記ステントの長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる山型屈曲部と、前記ワイヤが前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる谷型屈曲部と、が交差することで構成され、前記ステントの前記周方向において互いに隣接するように配置されている複数の掛合部と、を備え、前記掛合部と前記直線交差部は、前記長手軸方向において交互に配置され、前記複数の直線交差部は、前記ワイヤの第一直線部と前記ワイヤの第二直線部とが交差する中央直線交差部を有し、前記複数の掛合部は、前記第一直線部の前記第一方向側に連なる前記山型屈曲部である第一山と、前記谷型屈曲部である第一谷と、が交差する第一掛合部と、前記第二直線部の前記第一方向側に連なる前記山型屈曲部である第二山と、前記谷型屈曲部である第二谷と、が交差する第二掛合部と、を有し、前記第一掛合部と前記第二掛合部とは、前記長手軸方向において異なる位置に配置される。
【0008】
本発明の第二の態様に係るトデリバリーシステムは、操作部と、前記操作部から遠位側で延びるように構成される外筒部材と、前記操作部から遠位側で延びるように構成され、前記外筒部材の内側にある内筒部材と、前記外筒部材と前記内筒部材の間に収容される上記ステントと、を備え、前記操作部は、前記外筒部材または前記内筒部材を長手方向に移動させることで前記ステントを留置するよう構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステントは、曲げやすく、かつ、曲がった状態を維持しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るステントを備える内視鏡システムの全体構成を示す図である。
【
図3】同ステントを周方向に展開した展開図である。
【
図4】部分拡大図を含む同ステントの展開図である。
【
図5】第一直線部と他のワイヤとの交差を示す図である。
【
図7】同変形例における第一直線部と他のワイヤとの交差を示す図である。
【
図8】ワイヤの交差態様の他の変形例を示す図である。
【
図9】同変形例における第一直線部と他のワイヤとの交差を示す図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図11】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の変形例を示す図である。
【
図12】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である。
【
図13】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である。
【
図14】本発明の第三実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図15】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の変形例を示す図である。
【
図16】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である。
【
図17】本発明の第四実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図18】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の変形例を示す図である。
【
図19】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である。
【
図20】本発明の第五実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図21】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の変形例を示す図である。
【
図22】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である
【
図23】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である
【
図24】第一直線交差部と第二直線交差部の配置の他の変形例を示す図である
【
図25】複数の掛合部の配置態様の変形例を示す図である。
【
図26】本発明の第六実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図28】本発明の第七実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図31】本発明の第八実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図32】本発明の第九実施形態に係るステントを周方向に展開した展開図である。
【
図33】本発明の第十実施形態に係るステント製造方法において、編み込まれた第一ワイヤを周方向に展開した展開図である。
【
図34】同ステント製造方法において、編み込まれた第一ワイヤと第二ワイヤを周方向に展開した展開図である。
【
図35】本発明の第十一実施形態に係るステントを示す図である。
【
図37】同ステントの製造方法において、編み込まれた第一ワイヤを周方向に展開した展開図である。
【
図38】同ステントの製造方法において、編み込まれた第一ワイヤと第二ワイヤを周方向に展開した展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係るステント100を備える内視鏡システム300について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1は、内視鏡システム300の全体構成を示す図である。
【0012】
[内視鏡システム300]
内視鏡システム300は、内視鏡200と、内視鏡200のチャネルに挿通されるステントデリバリーシステム150と、を備える。
【0013】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の側視型の軟性内視鏡であり、長尺の挿入部210と、挿入部210の基端部に設けられた操作部220と、を備える。なお、内視鏡200は直視型の軟性内視鏡であってもよい。
【0014】
挿入部210は、先端部に設けられた先端硬質部211と、先端硬質部211の基端側に設けられた湾曲操作可能な湾曲部212と、湾曲部212の基端側に設けられた可撓管部213と、を有する。先端硬質部211の側面には、ライトガイド215およびCCDを有する撮像ユニット216が外部に露出した状態で設けられている。
【0015】
挿入部210には、ステントデリバリーシステム150等の内視鏡用処置具を挿通させるための処置具チャネル230が形成されている。処置具チャネル230の先端部230aは、先端硬質部211の側面において開口している。処置具チャネル230の基端部は、操作部220まで延びている。
【0016】
処置具チャネル230の先端硬質部211には、起上台214が設けられている。起上台214の基端部は、先端硬質部211に回転可能に支持されている。起上台214の先端部に固定された不図示の起上台操作ワイヤは、挿入部210内を通して基端側に延びている。
【0017】
湾曲部212は、上下方向や左右方向に湾曲自在に構成されている。湾曲部212の先端側に操作ワイヤの先端が固定されている。操作ワイヤは挿入部210内を通して操作部220まで延びている。
【0018】
操作部220の基端側には、操作ワイヤを操作するノブ223や撮像ユニット216等を操作するスイッチ224が設けられている。使用者は、ノブ223を操作することで湾曲部212を所望の方向に湾曲させることができる。
【0019】
操作部220の先端側には、処置具チャネル230に連通する鉗子口222が設けられている。使用者は、鉗子口222からステントデリバリーシステム150等の内視鏡用処置具を挿入することができる。鉗子口222には体液の漏れを防ぐために鉗子栓225が取り付けられる。
【0020】
[ステントデリバリーシステム150]
ステントデリバリーシステム150は、全体として細長に形成され、ステント100と、外筒部材110と、内筒部材120と、操作部140を備える。
【0021】
外筒部材110は、樹脂等で筒状に形成されており、可撓性を有する。外筒部材110は、内視鏡200の処置具チャネル230を挿通可能である。
【0022】
内筒部材120は、外筒部材110の内径よりも小さい外径を有し、外筒部材110の内部空間(ルーメン)に通すことができる。内筒部材120は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。内筒部材120の先端には、外筒部材110の外径よりも大きい外径を有するチップ130が設けられている。
【0023】
ステント100は、
図1に示すように、ステントデリバリーシステム150の先端部に収容される。ステント100は、内部に内筒部材120が通されて縮径した状態で、内筒部材120と外筒部材110との間の隙間に収容される。
【0024】
操作部140は、外筒部材110および内筒部材120の基端側に接続し、外筒部材110を内筒部材120に対して相対的に長手方向に移動可能に構成される。操作者は操作部を操作することにより、外筒部材110が内筒部材120に対して移動させることで収容されたステント100を露出させた結果、ステント100が留置することができる。また、ステントを露出させている際に、操作者が外筒部材110が内筒部材120に対して逆の方向に移動させるよう操作することで、ステント100を再収容させることもできる。
【0025】
[ステント100]
図2は、ステント100の全体構成を示す図である。
ステント100は、ワイヤを編み込んで形成されており、円筒形状を有する。ステント100は、胆管、食道、十二指腸、小腸、大腸等の消化器系体内管腔等に留置され、主として管腔を拡張・保持する目的で使用される。
【0026】
本実施形態のステント100は、その外周面側を樹脂フィルム等で被覆したいわゆるカバードステントではなく、フィルム等で被覆されないアンカバードステントである。ただし、ステント100は、樹脂フィルム等で被覆してカバードステントとして用いることもできる。
【0027】
以降の説明において、ステント100の長手軸方向(軸方向)Aの一方を「第一方向A1」といい、ステント100の長手軸方向Aの他方を「第二方向A2」という。
【0028】
図3は、ステント100を周方向Cに展開した展開図である。
ステント100は、屈曲を繰り返しながら周方向Cに傾いて延びるワイヤWにより、網目を周面に有する円管状に形成されている。ステント100は、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。
【0029】
図4は、部分拡大図を含むステント100の展開図である。
直線交差部1は、ワイヤWの直線部10が直線交差して形成される。直線部10は、ワイヤWの略直線状の部分であり、ゆるやかに湾曲している部分も含む。
【0030】
掛合部(絡合部)2は、山型屈曲部3と、谷型屈曲部4とが交差して形成される。山型屈曲部(山)3は、周方向Cに傾いて延びるワイヤWが長手軸方向Aに折り返して屈曲し、第一方向A1側に凸となる凸部である。谷型屈曲部(谷)4は、周方向に傾いて延びるワイヤWが長手軸方向Aに折り返して屈曲し、第二方向A2側に凸となる凸部(第一方向A1側に凹となる凹部)である。掛合部2において、山型屈曲部3と谷型屈曲部4とがフック状に交差することで、山型屈曲部3と谷型屈曲部4とは、分離不能ではあるが相対移動可能に連結される。
【0031】
図3に示すように、複数の直線交差部1が配置される第一領域E1と、複数の掛合部2が配置される第二領域E2とは、長手軸方向Aにおいて交互に配置される。第一領域E1は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。また、第二領域E2は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。
【0032】
ステント100の第二方向A2側の端部領域E3は、谷型屈曲部4が山型屈曲部3と交差することなく、周方向Cに沿って配置される。また、ステント100の第一方向A1側の端部領域(図示省略)は、山型屈曲部3が谷型屈曲部4と交差することなく、周方向Cに沿って配置される。
【0033】
端部領域E3における谷型屈曲部4の第二方向A2側の端部は、
図3にように山型屈曲部3と交差することなく螺旋状に配置されていてもよいし、長手軸方向Aに対する位置を揃えて配置されていてもよい。また、ステント100の第一方向A1側の端部領域(図示省略)における山型屈曲部3の第一方向A1側の端部についても同様である。例えば、後述する
図34に示すステント100や
図38に示すステント100Kの端部領域ように、端部領域における山型屈曲部3および谷型屈曲部4の長手軸方向Aの長さを調整することで、長手軸方向Aに対する端部の位置を揃えることができる。
【0034】
[中央直線交差部1A]
直線部10である第一直線部11と第二直線部12とは、
図4に示すように、直線交差部1である「中央直線交差部1A」において交差する。具体的には、ステント100の径方向R(
図2参照)から見て、第一直線部11と第二直線部12とは、中央直線交差部1Aにおいて交差する。中央直線交差部1Aにおいて、第一直線部11は第二直線部12の径方向Rにおける外側を通過する。
【0035】
[第一掛合部21]
第一直線部11の第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第一山31」が連なっている。第一山31は、谷型屈曲部4である第一谷41と交差して掛合部2である「第一掛合部21」を形成する。
【0036】
具体的には、ステント100の径方向Rから見て、第一山31と第一谷41とは、第一交差部C1と第一交差部C1よりも中央直線交差部1Aに近い第二交差部C2とにおいて交差する。第一交差部C1において、第一山31は第一谷41の径方向Rにおける外側を通過する。第二交差部C2において、第一山31は第一谷41の径方向Rにおける内側を通過する。
【0037】
[第二掛合部22]
第二直線部12の第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第二山32」が連なっている。第二山32は、谷型屈曲部4である第二谷42と交差して掛合部2である「第二掛合部22」を形成する。
【0038】
具体的には、ステント100の径方向Rから見て、第二山32と第二谷42とは、第五交差部C5と第五交差部C5よりも中央直線交差部1Aに近い第六交差部C6とにおいて交差する。第五交差部C5において、第二山32は第二谷42の径方向Rにおける内側を通過する。第六交差部C6において、第二山32は第二谷42の径方向Rにおける外側を通過する。
【0039】
[第三掛合部23]
第一直線部11の第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第三谷43」が連なっている。第三谷43は、山型屈曲部3である第三山33と交差して掛合部2である「第三掛合部23」を形成する。
【0040】
具体的には、ステント100の径方向Rから見て、第三山33と第三谷43とは、第四交差部C4と第四交差部C4よりも中央直線交差部1Aに近い第三交差部C3とにおいて交差する。第三交差部C3において、第三谷43は第三山33の径方向Rにおける内側を通過する。第四交差部C4において、第三谷43は第三山33の径方向Rにおける外側を通過する。
【0041】
[第四掛合部24]
第二直線部12の第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第四谷44」が連なっている。第四谷44は、山型屈曲部3である第四山34と交差して掛合部2である「第四掛合部24」を形成する。
【0042】
具体的には、ステント100の径方向Rから見て、第四山34と第四谷44とは、第八交差部C8と第八交差部C8よりも中央直線交差部1Aに近い第七交差部C7とにおいて交差する。第七交差部C7において、第四谷44は第四山34の径方向Rにおける外側を通過する。第四交差部C4において、第四谷44は第四山34の径方向Rにおける内側を通過する。
【0043】
[直線交差部1と掛合部2の配置]
第一掛合部21と第二掛合部22とは、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第二掛合部22は、長手軸方向Aにおいて第一掛合部21よりも第一方向A1側に配置される。また、第一掛合部21は、長手軸方向Aにおいて第二掛合部22と中央直線交差部1Aとの間に配置される。
【0044】
第三掛合部23と第四掛合部24とは、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第三掛合部23は、長手軸方向Aにおいて第四掛合部24よりも第一方向A1側に配置される。また、第三掛合部23は、長手軸方向Aにおいて中央直線交差部1Aと第四掛合部24との間に配置される。
【0045】
中央直線交差部1Aは、周方向Cにおいて第一掛合部21と第二掛合部22との間に配置される。また、中央直線交差部1Aは、周方向Cにおいて第三掛合部23と第四掛合部24との間に配置される。
【0046】
[ワイヤW]
第一山31と第一直線部11と第三谷43とは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部であり、
図4において破線で示したワイヤWの一部である。
図4において破線で示したワイヤWを「第一ワイヤW1」ともいう。
【0047】
第二山32と第二直線部12と第四谷44とは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部であり、
図4において実線で示したワイヤWの一部である。
図4において実線で示したワイヤWを「第二ワイヤW2」ともいう。
【0048】
第一ワイヤW1と第二ワイヤW2とは、一本の連続するワイヤであってもよいし、異なるワイヤであってもよい。
【0049】
[ワイヤWの交差]
図5は、第一直線部11と他のワイヤWとの交差を示す図である。
第一直線部11は、第一方向A1側に連なる第一山31が、第二交差部C2において、第一谷41の径方向Rにおける内側を通過する。また、第一直線部11は、第二方向A2側に連なる第三谷43が、第三交差部C3において、第三山33の径方向Rにおける内側を通過する。そのため、
図5に示すように、第二交差部C2と第三交差部C3とに挟まれた第一直線部11は凸状になる。その結果、第二交差部C2、第三交差部C3および中央直線交差部1Aにおいて交差するワイヤWの摩擦力が大きくなり、ステント100は曲がった状態を維持しやすい。
【0050】
[他の直線交差部1および掛合部2]
中央直線交差部1Aと、中央直線交差部1Aに連なる4個の掛合部2(第一掛合部21、第二掛合部22、第三掛合部23および第四掛合部24)は、上記の構成を備える。ステント100における他の直線交差部1と当該直線交差部1に連なる4個の掛合部2も同様の構成を備える。
【0051】
[ステントデリバリーシステム150の動作]
ステントデリバリーシステム150を含む内視鏡システム300を用いたステント留置方法を、胆管内にステント100を留置する手技を例として説明する。
【0052】
術者は口等の自然開口から患者の体腔内に内視鏡200の挿入部210を挿入する。その際、術者は必要に応じてノブ223等を操作して湾曲部212を湾曲させる。
【0053】
術者は、内視鏡200の処置具チャネル230にガイドワイヤを通し、内視鏡200で観察しながらガイドワイヤを胆管内に挿入する。続いて術者は、X線透視下でガイドワイヤを操作して胆管内の狭窄部位を突破させ、ガイドワイヤの先端部を狭窄部位(目標位置)よりも肝臓側に移動させる。
【0054】
術者は、内視鏡200の鉗子栓225から突出したガイドワイヤの基端部を、ステントデリバリーシステム150のチップ130の貫通孔に挿入する。
【0055】
術者は、ガイドワイヤを保持しながらステントデリバリーシステム150を押し込むことにより、ガイドワイヤに沿ってステントデリバリーシステム150を前進させる。ステントデリバリーシステム150の先端部が内視鏡200の処置具チャネル230の先端部から突出する。ステントデリバリーシステム150の先端部が狭窄部位(目標位置)を突破したら、術者はステントデリバリーシステム150を進退させて、ステント100の留置位置を決定する。なお、術者はガイドワイヤを用いずにステントデリバリーシステム150を処置具チャネル230に挿入してもよい。
【0056】
ステント100の目標位置を決定したら、術者は、外筒部材110を内筒部材120に対して後退させる。その結果、
図1に示すように、ステント100が先端側から徐々に露出して拡張する。
【0057】
ステント100が完全に露出すると、ステント100は、全体において拡張し、ステント100の内径が、内筒部材120の外径よりも大きくなる。これに伴い、ステント100と内筒部材120との係止が解除される。
【0058】
ステント100と内筒部材120との係止が解除された後、術者が内筒部材120を後退させると、ステント100は留置位置に留まり、内筒部材120がステント100から抜去される。
【0059】
術者は、ステント100を除くステントデリバリーシステム150を体外に引き出すと、ステント100の留置手技が終了する。
【0060】
本実施形態に係るステント100によれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高い。また、
図5に示すように、第二交差部C2と第三交差部C3とに挟まれた第一直線部11は凸状であるため、第二交差部C2、第三交差部C3および中央直線交差部1Aにおいて交差するワイヤWの摩擦力が大きくなり、ステント100は曲がった状態を維持しやすい。その結果、ステント100は、曲げやすく、かつ、曲がった状態を維持しやすい。
【0061】
本実施形態に係るステント100によれば、第二領域E2は螺旋状に配置されているため、第二領域E2に直線交差部1を配置することなくステント100を編むことができる。すなわち、ステント100において、周方向Cにおいて掛合部2と隣接する位置に直線交差部1を配置する必要がない。そのため、ステント100は、第二領域E2において、形状追従性が高い掛合部2のみが配置されており、曲げやすい。一方、交差するワイヤWの摩擦力(係止力)が大きい直線交差部1が配置される第一領域E1は、長手軸方向Aにおいて第二領域E2と交互に配置される。そのため、ステント100は曲がった形状を好適に維持できる。
【0062】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0063】
(変形例1-1)
ワイヤWの交差態様は、
図5に示した交差態様に限定されない。
図6は、ワイヤWの交差態様の変形例を示す図である。
図7は、変形例における第一直線部11と他のワイヤWとの交差を示す図である。
図6および
図7に示す変形例においては、第一直線部11は、第一方向A1側に連なる第一山31が、第二交差部C2において、第一谷41の径方向Rにおける外側を通過する。また、第一直線部11は、第二方向A2側に連なる第三谷43が、第三交差部C3において、第三山33の径方向Rにおける外側を通過する。そのため、
図7に示すように、第二交差部C2と第三交差部C3とに挟まれた第一直線部11は円弧状になる。その結果、第二交差部C2、第三交差部C3および中央直線交差部1Bにおいて交差するワイヤWの摩擦力が上記の実施形態と比較して小さくなり、ステント100はより曲がりやすくなる。
【0064】
(変形例1-2)
図8は、ワイヤWの交差態様の他の変形例を示す図である。
図9は、他の変形例における第一直線部11と他のワイヤWとの交差を示す図である。
図8および
図9に示す変形例においては、第一直線部11は、第一方向A1側に連なる第一山31が、第二交差部C2において、第一谷41の径方向Rにおける外側を通過する。また、第一直線部11は、第二方向A2側に連なる第三谷43が、第三交差部C3において、第三山33の径方向Rにおける内側を通過する。その結果、第二交差部C2、第三交差部C3および中央直線交差部1Cにおいて交差するワイヤWの摩擦力が上記の実施形態と比較して小さくなり、変形例1-1と比較して大きくなる。
【0065】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について、
図10を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第二実施形態に係るステント100Bは、第一実施形態に係るステント100と同様に、ステントデリバリーシステム150に収容される。
【0066】
第一実施形態に係るステント100は、直線交差部1と直線交差部1に連なる4個の掛合部2とにおけるワイヤWの交差態様は、いずれの場所においても同じであった。一方、第二実施形態に係るステント100Bは、直線交差部1と直線交差部1に連なる4個の掛合部2とにおけるワイヤWの交差態様は、場所により異なる。
【0067】
[第一直線交差部1A]
第一実施形態に係るステント100の中央直線交差部1Aを、以降の説明において「第一直線交差部1A」という。具体的には、
図5に示すように、第一直線交差部1Aを形成する第一直線部11は、第一方向A1側に連なる第一山31が、第二交差部C2において、第一谷41の径方向Rにおける内側を通過する。また、第一直線交差部1Aを形成する第一直線部11は、第二方向A2側に連なる第三谷43が、第三交差部C3において、第三山33の径方向Rにおける内側を通過する。
【0068】
[第二直線交差部1B]
第一実施形態の変形例1-1に示す中央直線交差部1Bを、以降の説明において「第二直線交差部1B」という。具体的には、
図7に示すように、第二直線交差部1Bを形成する第一直線部11は、第一方向A1側に連なる第一山31が、第二交差部C2において、第一谷41の径方向Rにおける外側を通過する。また、第二直線交差部1Bを形成する第一直線部11は、第二方向A2側に連なる第三谷43が、第三交差部C3において、第三山33の径方向Rにおける外側を通過する。
【0069】
なお、第二直線交差部1Bは、変形例1-2において示す中央直線交差部1C等の異なるワイヤWの交差態様を備える直線交差部1であってもよい。
【0070】
図10は、ステント100Bを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Bは、第一実施形態に係るステント100と同様に、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。複数の直線交差部1は、第一直線交差部1Aと、第二直線交差部1Bと、を含む。
【0071】
第一直線交差部1Aは、長手軸方向Aに連続して配置される。第一直線交差部1Aは、周方向Cに2個または3個連続して配置される。また、第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに連続して配置される。第二直線交差部1Bは、周方向Cに2個または3個連続して配置される。さらに、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bとは、周方向Cにおいて交互に配置される。
【0072】
ステント100Bにおいて、第一直線交差部1Aの数と、第二直線交差部1Bの数とは略等しい。
【0073】
本実施形態に係るステント100Bによれば、交差するワイヤWの摩擦力が高い第一直線交差部1Aが長手軸方向Aに連続して配置される。また、交差するワイヤWの摩擦力が低い第二直線交差部1Bが長手軸方向Aに連続して配置される。さらに、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bとは、周方向Cにおいて交互に配置される。その結果、ステント100Bは、高い形状追従性と高い形状維持性とを両立できる。
【0074】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0075】
(変形例2-1)
第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置は、
図10に示す配置に限定されない。
図11は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100B1を示す図である。ステント100B1においては、第一直線交差部1Aの数は、第二直線交差部1Bの数より多い。そのため、ステント100B1は、ステント100Bと比較して、交差するワイヤWの摩擦力が高くなり、長手軸方向Aにつぶれにくくなる。
【0076】
(変形例2-2)
図12は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100B2を示す図である。第一直線交差部1Aは、周方向Cに2個連続して配置される。また、第二直線交差部1Bは、周方向Cに2個連続して配置される。
【0077】
(変形例2-3)
図13は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100B3を示す図である。第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bとは、周方向Cにおいて交互に一つずつ配置される。ステント100B3は、ステント100Bと比較して、形状追従性および形状維持性が高い。
【0078】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態について、
図14を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第三実施形態に係るステント100Cは、第二実施形態に係るステント100Bと比較して第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置のみが異なる。
【0079】
図14は、ステント100Cを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Cは、第一実施形態に係るステント100と同様に、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。複数の直線交差部1は、第一直線交差部1Aと、第二直線交差部1Bと、を含む。
【0080】
第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに交互に一つずつ配置される。また、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bは、周方向Cに交互に一つずつ配置される。
【0081】
本実施形態に係るステント100Cによれば、交差するワイヤWの摩擦力が高い第一直線交差部1Aと、交差するワイヤWの摩擦力が低い第二直線交差部1Bとが、長手軸方向Aにも周方向Cにも交互に配置されるため、高い形状追従性と高い形状維持性とを両立できる。
【0082】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0083】
(変形例3-1)
第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置は、
図14に示す配置に限定されない。
図15は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100C1を示す図である。ステント100C1において、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに交互に一つずつ配置される。
【0084】
ステント100C1は、一個の第一直線交差部1Aと連続する二個の第二直線交差部1Bとが周方向Cに配列する第二領域E2Aと、連続する二個の第一直線交差部1Aと一個の第二直線交差部1Bとが周方向Cに配列する第二領域E2Bと、を有する。第二領域E2Aと第二領域E2Bとは、長手軸方向Aに交互に一つずつ配置される。ステント100C1は、ステント100Cと比較して、形状追従性が高い。
【0085】
(変形例3-2)
図16は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100C2を示す図である。第一直線交差部1Aは、周方向Cに3個または4個連続して配置される。また、第二直線交差部1Bは、周方向Cに3個または4個連続して配置される。ステント100C2は、高い形状追従性と高い形状維持性とを両立できる。
【0086】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態について、
図17を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第四実施形態に係るステント100Dは、第二実施形態に係るステント100Bと比較して第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置のみが異なる。
【0087】
図17は、ステント100Dを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Dは、第一実施形態に係るステント100と同様に、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。複数の直線交差部1は、第一直線交差部1Aと、第二直線交差部1Bと、を含む。
【0088】
第一直線交差部1Aは、周方向Cに連続して配置される。また、第二直線交差部1Bは、周方向Cに連続して配置される。第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bとは、長手軸方向Aに交互に配置される。
【0089】
本実施形態に係るステント100Dによれば、交差するワイヤWの摩擦力が高い第一直線交差部1Aが周方向Cに連続して配置されるため、一定の形状維持性を保ちやすい。その結果、ステント100Dは、一定の形状維持性を保ちつつ、形状追従性が非常に高い部分を部分的に保有することができる。
【0090】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0091】
(変形例4-1)
第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置は、
図17に示す配置に限定されない。
図18は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100D1を示す図である。ステント100D1において、第一直線交差部1Aは、周方向Cに交互に配置される。一方、ステント100D1において、第二直線交差部1Bだけが周方向Cに連続して配置されない。第二直線交差部1Bは、第一直線交差部1Aと周方向Cに交互に一つずつ配置される。ステント100D1は、一定の形状維持性を保ちつつ、形状追従性が非常に高い部分を部分的に保有することができる。
【0092】
(変形例4-2)
図19は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100D2を示す図である。ステント100D2において、第一直線交差部1Aは、周方向Cに連続して配置される。一方、ステント100D2において、第二直線交差部1Bだけが周方向Cに連続して配置されない。連続する5個の第二直線交差部1Bは、連続する5個の第一直線交差部1Aと周方向Cに隣り合って配置される。ステント100D2において、交差するワイヤWの摩擦力が低い第二直線交差部1Bを一部に集中的に配置された部分は、湾曲しやすい部分となる。ステント100D2は、湾曲した状態での形状維持性を高く保ったまま、部分的に形状追従性を高めることができる。
【0093】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態について、
図20を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第四実施形態に係るステント100Eは、第二実施形態に係るステント100Bと比較して第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置のみが異なる。
【0094】
図20は、ステント100Eを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Eは、第一実施形態に係るステント100と同様に、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。複数の直線交差部1は、第一直線交差部1Aと、第二直線交差部1Bと、を含む。
【0095】
周方向Cに連続する2個の第一直線交差部1Aは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。また、周方向Cに連続する3個の第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。
【0096】
本実施形態に係るステント100Eによれば、第一直線交差部1Aおよび第二直線交差部1Bが長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されているため、捻じれに対する形状追従性を非常に高めることができる。
【0097】
以上、本発明の第五実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0098】
(変形例5-1)
第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置は、
図20に示す配置に限定されない。
図21は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100E1を示す図である。周方向Cに連続する2個の第一直線交差部1Aは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。また、周方向Cに連続する2個の第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。
【0099】
(変形例5-2)
図22は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100E2を示す図である。周方向Cに連続する3個の第一直線交差部1Aは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。また、周方向Cに連続する3個の第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。
【0100】
(変形例5-3)
図23は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100E3を示す図である。周方向Cに連続する3個の第一直線交差部1Aは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。また、周方向Cに連続する1個の第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。
【0101】
(変形例5-4)
図24は、第一直線交差部1Aと第二直線交差部1Bの配置の変形例であるステント100E4を示す図である。周方向Cに連続する3個または2個の第一直線交差部1Aは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。また、周方向Cに連続する2個の第二直線交差部1Bは、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。
【0102】
(変形例5-5)
上記実施形態において、複数の掛合部2は長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置されている。周方向Cに隣り合う掛合部2の間の長手軸方向Aの距離Dは略同じであった。しかしながら、複数の掛合部2の配置態様はこれに限定されない。
図25は、複数の掛合部2の配置態様の変形例を示す図である。周方向Cに隣り合う掛合部2の間の長手軸方向Aの距離Dは一定の距離でなくてもよい。また、複数の掛合部2は全体として螺旋状に配置されていればよい。複数の直線交差部1についても同様である。
【0103】
図25に示すように、複数の掛合部2は、第五掛合部25と、第六掛合部26と、第七掛合部27と、を備える。第六掛合部26は、周方向Cにおいて第五掛合部25と隣接する。第七掛合部27は、周方向Cにおいて第六掛合部26と隣接する。第五掛合部25と第六掛合部26との長手軸方向Aの位置は略同じであり、第六掛合部26と第七掛合部27との長手軸方向Aの位置は異なる。
【0104】
図25に示すように、複数の直線交差部1は、第三直線交差部13と第四直線交差部1F4と、第五直線交差部15と、を備える。第四直線交差部14は、周方向Cにおいて第三直線交差部13と隣接する。第五直線交差部15は、周方向Cにおいて第四直線交差部14と隣接する。第三直線交差部13と第四直線交差部14との長手軸方向Aの位置は略同じであり、第四直線交差部14と第五直線交差部15との長手軸方向Aの位置は異なる。
【0105】
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態について、
図26から
図27を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第六実施形態に係るステント100Fは、第一実施形態に係るステント100と同様に、ステントデリバリーシステム150に収容される。
【0106】
図26は、ステント100Fを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Fは、屈曲を繰り返しながら周方向Cに傾いて延びるワイヤWにより、網目を周面に有する円管状に形成されている。ステント100Fは、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。
【0107】
図26に示すように、複数の直線交差部1が配置される第一領域E1と、複数の掛合部2が配置される第二領域E2とは、長手軸方向Aにおいて交互に配置される。第一領域E1は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。また、第二領域E2は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。
【0108】
ステント100Fの第二方向A2側の端部領域において、谷型屈曲部4の第二方向A2側の端部は、
図26にように山型屈曲部3と交差することなく螺旋状に配置されていてもよいし、長手軸方向Aに対する位置を揃えて配置されていてもよい。また、ステント100Fの第一方向A1側の端部領域における山型屈曲部3の第一方向A1側の端部についても同様である。例えば、後述する
図34に示すステント100や
図38に示すステント100Kの端部領域ように、端部領域における山型屈曲部3および谷型屈曲部4の長手軸方向Aの長さを調整することで、長手軸方向Aに対する端部の位置を揃えることができる。
【0109】
[第一直線交差部1F1]
図27は、
図26に示す領域R3の拡大図である。
直線部10である第一直線部11Fと第二直線部12Fとは、ステント100Fの径方向Rから見て、直線交差部1である「第一直線交差部1F1」において交差する。
【0110】
[第二直線交差部1F2]
直線部10である第一直線部11Fと第三直線部13Fとは、ステント100Fの径方向Rから見て、直線交差部1である「第二直線交差部1F2」において交差する。第二直線交差部1F2は、第一直線交差部1F1に対して第二方向A2側に配置されている。
【0111】
[第三直線交差部1F3]
直線部10である第三直線部13Fと第四直線部14Fとは、ステント100Fの径方向Rから見て、直線交差部1である「第三直線交差部1F3」において交差する。第三直線交差部1F3は、第二直線交差部1F2に対して第一方向A1側に配置されている。
【0112】
[第四直線交差部1F4]
直線部10である第二直線部12Fと第五直線部15Fとは、ステント100Fの径方向Rから見て、直線交差部1である「第四直線交差部1F4」において交差する。第四直線交差部1F4は、第一直線交差部1F1に対して第二方向A2側に配置されている。
【0113】
第一直線交差部1F1と第二直線交差部1F2と第三直線交差部1F3と第四直線交差部1F4とは、同じ第一領域E1に配置されている。
【0114】
[第一掛合部21F]
第一直線部11Fの第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第一山31F」が連なっている。第一山31Fは、谷型屈曲部4である第一谷41Fと交差して掛合部2である「第一掛合部(上側掛合部)21F」を形成する。
【0115】
[第二掛合部22F]
第二直線部12Fおよび第四直線部14Fの第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第二山32F」が連なっている。第二山32Fは、谷型屈曲部4である第二谷42Fと交差して掛合部2である「第二掛合部22F」を形成する。
【0116】
[第三掛合部23F]
第三直線部13Fの第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第三山33F」が連なっている。第三山33Fは、谷型屈曲部4である第三谷43Fと交差して掛合部2である「第三掛合部23F」を形成する。
【0117】
[第四掛合部24F]
第一直線部11Fの第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第四谷44F」が連なっている。第四谷44Fは、山型屈曲部3である第四山34Fと交差して掛合部2である「第四掛合部(下側掛合部)24F」を形成する。
【0118】
[第五掛合部25F]
第三直線部13Fおよび第五直線部15Fの第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第五谷45F」が連なっている。第五谷45Fは、山型屈曲部3である第五山35Fと交差して掛合部2である「第五掛合部25F」を形成する。
【0119】
[第六掛合部26F]
第二直線部12Fの第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第六谷46F」が連なっている。第六谷46Fは、山型屈曲部3である第六山36Fと交差して掛合部2である「第六掛合部26F」を形成する。
【0120】
[第一直線部11Fの交差]
第一直線部11Fは、第一方向A1側において第一掛合部(上側掛合部)21Fと連なり、第二方向A2側において第四掛合部(下側掛合部)24Fに連なる。第一直線部11Fは、第一掛合部(上側掛合部)21Fと第四掛合部(下側掛合部)24Fとの間において、他の2本の直線部10(第二直線部12F、第三直線部13F)とそれぞれ直線交差部1(第一直線交差部1F1、第二直線交差部1F2)を構成する。
【0121】
[第一掛合部21Fと第二掛合部22Fと第三掛合部23Fの配置]
第一掛合部21Fと第二掛合部22Fと第三掛合部23Fとは、周方向Cに沿って配列しており、同じ第二領域E2に配置されている。
【0122】
第一掛合部21Fと第二掛合部22Fとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第二掛合部22Fは、長手軸方向Aにおいて第一掛合部21Fより第一方向A1側に配置される。
【0123】
第二掛合部22Fと第三掛合部23Fとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第三掛合部23Fは、長手軸方向Aにおいて第二掛合部22Fより第一方向A1側に配置される。
【0124】
[第四掛合部24Fと第五掛合部25Fと第六掛合部26Fの配置]
第四掛合部24Fと第五掛合部25Fと第六掛合部26Fとは、周方向Cに沿って配列しており、同じ第二領域E2に配置されている。
【0125】
第四掛合部24Fと第五掛合部25Fとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第五掛合部25Fは、長手軸方向Aにおいて第四掛合部24Fより第二方向A2側に配置される。
【0126】
第五掛合部25Fと第六掛合部26Fとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第六掛合部26Fは、長手軸方向Aにおいて第五掛合部25Fより第二方向A2側に配置される。
【0127】
[ワイヤW]
第一山31Fと第一直線部11Fと第四谷44Fとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第一ワイヤWF1)である。また、第六谷46Fと第二直線部12Fと第二山32Fと第四直線部14Fとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第二ワイヤWF2)である。また、第五直線部15Fと第五谷45Fと第三直線部13Fと第三山33Fとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第三ワイヤWF3)である。第一ワイヤWF1と第二ワイヤWF2と第三ワイヤWF3は、一本の連続するワイヤであってもよいし、異なるワイヤであってもよい。
【0128】
本実施形態において、第二谷42Fと第四山34Fとは第一ワイヤWF1、第三谷43Fと第六山36Fとは第二ワイヤWF2、第一谷41Fと第五山35Fとは第三ワイヤWF3で形成されている。
【0129】
[他の直線交差部1および掛合部2]
直線交差部1(第一直線交差部1F1と第二直線交差部1F2と第三直線交差部1F3と第四直線交差部1F4)と、直線交差部1に連なる6個の掛合部2(第一掛合部21F、第二掛合部22F、第三掛合部23F、第四掛合部24F、第五掛合部25Fおよび第六掛合部26F)は、上記の構成を備える。
図26に示すように、ステント100Fにおける他の直線交差部1に連なる掛合部2は、上記の構成と同様の構成を備える。
【0130】
本実施形態に係るステント100Fによれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高い。ステント100Fは、周方向Cにおいて掛合部2と隣接する位置に直線交差部1を配置する必要がないため、曲げに反発する力(アキシャルフォース)が低減される。さらにステント100Fは、第一実施形態のステント100と比較して多くの直線交差部1を備えているため、ステント全体を屈曲させたときにおいて直線交差部1と掛合部2との間でストラットの摩擦が起きやすく、形状維持性が高い。
【0131】
以上、本発明の第六実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0132】
(第七実施形態)
本発明の第七実施形態について、
図28から
図29を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第七実施形態に係るステント100Gは、第一実施形態に係るステント100と同様に、ステントデリバリーシステム150に収容される。
【0133】
図28は、ステント100Gを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Gは、屈曲を繰り返しながら周方向Cに傾いて延びるワイヤWにより、網目を周面に有する円管状に形成されている。ステント100Gは、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。
【0134】
図28に示すように、複数の直線交差部1が配置される第一領域E1と、複数の掛合部2が配置される第二領域E2とは、長手軸方向Aにおいて交互に配置される。第一領域E1は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。また、第二領域E2は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。
【0135】
ステント100Gの第二方向A2側の端部領域において、谷型屈曲部4の第二方向A2側の端部は、
図28にように山型屈曲部3と交差することなく螺旋状に配置されていてもよいし、長手軸方向Aに対する位置を揃えて配置されていてもよい。また、ステント100Gの第一方向A1側の端部領域における山型屈曲部3の第一方向A1側の端部についても同様である。例えば、後述する
図34に示すステント100や
図38に示すステント100Kの端部領域ように、端部領域における山型屈曲部3および谷型屈曲部4の長手軸方向Aの長さを調整することで、長手軸方向Aに対する端部の位置を揃えることができる。
【0136】
[第一直線交差部1G1]
図29は、
図28に示す領域R4の拡大図である。
直線部10である第一直線部11Gと第二直線部12Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第一直線交差部1G1」において交差する。
【0137】
[第二直線交差部1G2]
直線部10である第一直線部11Gと第三直線部13Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第二直線交差部1G2」において交差する。第二直線交差部1G2は、第一直線交差部1G1に対して第二方向A2側に配置されている。
【0138】
[第三直線交差部1G3]
直線部10である第一直線部11Gと第四直線部14Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第三直線交差部1G3」において交差する。第三直線交差部1G3は、第二直線交差部1G2に対して第二方向A2側に配置されている。
【0139】
[第四直線交差部1G4]
直線部10である第三直線部13Gと第五直線部15Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第四直線交差部1G4」において交差する。第四直線交差部1G4は、第二直線交差部1G2に対して第一方向A1側に配置されている。
【0140】
[第五直線交差部1G5]
直線部10である第三直線部13Gと第六直線部16Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第五直線交差部1G5」において交差する。第五直線交差部1G5は、第二直線交差部1G2に対して第二方向A2側に配置されている。
【0141】
[第六直線交差部1G6]
直線部10である第二直線部12Gと第六直線部16Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第六直線交差部1G6」において交差する。第六直線交差部1G6は、第一直線交差部1G1に対して第二方向A2側、第五直線交差部1G5に対して第一方向A1側に配置されている。
【0142】
[第七直線交差部1G7]
直線部10である第四直線部14Gと第五直線部15Gとは、ステント100Gの径方向Rから見て、直線交差部1である「第七直線交差部1G7」において交差する。第七直線交差部1G7は、第四直線交差部1G4に対して第二方向A2側、第三直線交差部1G3に対して第一方向A1側に配置されている。
【0143】
第一直線交差部1G1と第二直線交差部1G2と第三直線交差部1G3と第四直線交差部1G4と第五直線交差部1G5と第六直線交差部1G6と第七直線交差部1G7とは、同じ第一領域E1に配置されている。
【0144】
[第一掛合部21G]
第一直線部11Gの第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第一山31G」が連なっている。第一山31Gは、谷型屈曲部4である第一谷41Gと交差して掛合部2である「第一掛合部(上側掛合部)21G」を形成する。
【0145】
[第二掛合部22G]
第二直線部12Gおよび第五直線部15Gの第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第二山32G」が連なっている。第二山32Gは、谷型屈曲部4である第二谷42Gと交差して掛合部2である「第二掛合部22G」を形成する。
【0146】
[第三掛合部23G]
第三直線部13Gの第一方向A1側には、山型屈曲部3である「第三山33G」が連なっている。第三山33Gは、谷型屈曲部4である第三谷43Gと交差して掛合部2である「第三掛合部23G」を形成する。
【0147】
[第四掛合部24G]
第一直線部11Gの第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第四谷44G」が連なっている。第四谷44Gは、山型屈曲部3である第四山34Gと交差して掛合部2である「第四掛合部(下側掛合部)24G」を形成する。
【0148】
[第五掛合部25G]
第四直線部14Gおよび第六直線部16Gの第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第五谷45G」が連なっている。第五谷45Gは、山型屈曲部3である第五山35Gと交差して掛合部2である「第五掛合部25G」を形成する。
【0149】
[第六掛合部26G]
第三直線部13Gの第二方向A2側には、谷型屈曲部4である「第六谷46G」が連なっている。第六谷46Gは、山型屈曲部3である第六山36Gと交差して掛合部2である「第六掛合部26G」を形成する。
【0150】
[第一直線部11Gの交差]
第一直線部11Gは、第一方向A1側において第一掛合部(上側掛合部)21Gと連なり、第二方向A2側において第四掛合部(下側掛合部)24Gに連なる。第一直線部11Gは、第一掛合部(上側掛合部)21Gと第四掛合部(下側掛合部)24Gとの間において、他の3本の直線部10(第二直線部12G、第三直線部13G、第四直線部14G)とそれぞれ直線交差部1(第一直線交差部1G1、第二直線交差部1G2、第三直線交差部1G3)を構成する。
【0151】
[第一掛合部21Gと第二掛合部22Gと第三掛合部23Gの配置]
第一掛合部21Gと第二掛合部22Gと第三掛合部23Gとは、周方向Cに沿って配列しており、同じ第二領域E2に配置されている。
【0152】
第一掛合部21Gと第二掛合部22Gとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第二掛合部22Gは、長手軸方向Aにおいて第一掛合部21Gより第一方向A1側に配置される。
【0153】
第二掛合部22Gと第三掛合部23Gとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第三掛合部23Gは、長手軸方向Aにおいて第二掛合部22Gより第一方向A1側に配置される。
【0154】
[第四掛合部24Gと第五掛合部25Gと第六掛合部26Gの配置]
第四掛合部24Gと第五掛合部25Gと第六掛合部26Gとは、周方向Cに沿って配列しており、同じ第二領域E2に配置されている。
【0155】
第四掛合部24Gと第五掛合部25Gとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第五掛合部25Gは、長手軸方向Aにおいて第四掛合部24Gより第二方向A2側に配置される。
【0156】
第五掛合部25Gと第六掛合部26Gとは、周方向Cにおいて隣り合っており、長手軸方向Aにおいて異なる位置に配置される。具体的には、第六掛合部26Gは、長手軸方向Aにおいて第五掛合部25Gより第二方向A2側に配置される。
【0157】
[ワイヤW]
第一山31Gと第一直線部11Gと第四谷44Gとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第一ワイヤWG1)である。また、第六谷46Gと第三直線部13Gと第三山33Gとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第二ワイヤWG2)である。また、第二直線部12Gと第二山32Gと第五直線部15Gとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第三ワイヤWG3)である。また、第六直線部16Gと第五谷45Gと第四直線部14Gとは、周方向Cに沿ってジグザグに延びるワイヤWの連続する一部(第四ワイヤWG4)である。第一ワイヤWG1と第二ワイヤWG2と第三ワイヤWG3と第四ワイヤWG4とは、一本の連続するワイヤであってもよいし、異なるワイヤであってもよい。
【0158】
本実施形態において、第一谷41Gと第四山34Gとは第一ワイヤWG1、第三谷43Gと第六山36Gとは第二ワイヤWG2、第二谷42Gは第三ワイヤWG3、第五山35Gは第四ワイヤWG4で形成されている。
【0159】
[他の直線交差部1および掛合部2]
直線交差部1(第一直線交差部1G1と第二直線交差部1G2と第三直線交差部1G3と第四直線交差部1G4と第五直線交差部1G5と第六直線交差部1G6と第七直線交差部1G7)と、直線交差部1に連なる6個の掛合部2(第一掛合部21G、第二掛合部22G、第三掛合部23G、第四掛合部24G、第五掛合部25Gおよび第六掛合部26G)は、上記の構成を備える。
図28に示すように、ステント100Gにおける他の直線交差部1に連なる掛合部2は、上記の構成と同様の構成を備える。
【0160】
本実施形態に係るステント100Gによれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高い。ステント100Gは、周方向Cにおいて掛合部2と隣接する位置に直線交差部1を配置する必要がないため、曲げに反発する力(アキシャルフォース)が低減される。さらにステント100Gは、第六実施形態のステント100Fと比較してさらに多くの直線交差部1を備えているため、ステント全体を屈曲させたときにおいて直線交差部1と掛合部2との間でストラットの摩擦が起きやすく、形状維持性がより高い。
【0161】
以上、本発明の第七実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0162】
(変形例7-1)
第六実施形態では、第一直線部11Fは、第一掛合部(上側掛合部)21Fと第四掛合部(下側掛合部)24Fとの間において、他の2本の直線部10(第二直線部12F、第三直線部13F)とそれぞれ直線交差部1(第一直線交差部1F1、第二直線交差部1F2)を構成する。第七実施形態では、第一直線部11Gは、第一掛合部(上側掛合部)21Gと第四掛合部(下側掛合部)24Gとの間において、他の3本の直線部10(第二直線部12G、第三直線部13G、第四直線部14G)とそれぞれ直線交差部1(第一直線交差部1G1、第二直線交差部1G2、第三直線交差部1G3)を構成する。しかしながら、第一直線部の態様はこれに限定されない。第一直線部は、第一掛合部(上側掛合部)と第四掛合部(下側掛合部)との間において、他の4本以上の直線部10とそれぞれ直線交差部1を構成してもよい。
【0163】
(変形例7-2)
図30は、ステント100Gの変形例であるステント100G1の展開図である。
ステント100G1は、ステント100Gにおいて直線交差部1であった箇所が、掛合部2(以降、「置換掛合部1R」ともいう)に置き換えられている。例えば、
図30に示すように第一ワイヤWG1と第四ワイヤWG4の経路を変更することで、一部の直線交差部1を置換掛合部1Rに置き換えることができる。
【0164】
ステント100G1の第二方向A2側の端部領域において、谷型屈曲部4の第二方向A2側の端部は、
図30にように山型屈曲部3と交差することなく螺旋状に配置されていてもよいし、長手軸方向Aに対する位置を揃えて配置されていてもよい。また、ステント100G1の第一方向A1側の端部領域における山型屈曲部3の第一方向A1側の端部についても同様である。例えば、後述する
図34に示すステント100や
図38に示すステント100Kの端部領域ように、端部領域における山型屈曲部3および谷型屈曲部4の長手軸方向Aの長さを調整することで、長手軸方向Aに対する端部の位置を揃えることができる。
【0165】
(第八実施形態)
本発明の第八実施形態について、
図31を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第七実施形態に係るステント100Hは、第一実施形態に係るステント100と同様に、ステントデリバリーシステム150に収容される。
【0166】
図31は、ステント100Hを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Hは、屈曲を繰り返しながら周方向Cに傾いて延びるワイヤWにより、網目を周面に有する円管状に形成されている。ステント100Hは、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。
【0167】
図31に示すように、複数の直線交差部1が配置される第一領域E1と、複数の掛合部2が配置される第二領域E2とは、長手軸方向Aにおいて交互に配置される。第一領域E1は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。また、第二領域E2は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。
【0168】
図31に示すように周方向Cに展開して状態において、長手軸方向Aに沿って第二方向A2に向かって交互に並ぶ第一領域E1と第二領域E2を、第二領域E2(0)、第一領域E1(1)、第二領域E2(1)、第一領域E1(2)、第二領域E2(2)、第一領域E1(3)、第二領域E2(3)、第一領域E1(4)、第二領域E2(4)、として区別する。第二領域E2(n)を挟んで長手軸方向Aの両側には、第一方向A1側に第一領域E1(n)が配置され、第二方向A2側に第一領域E1(n+1)が配置される。nは整数である。
【0169】
第一領域E1(1)には、第一実施形態のステント100と同様に、2本のワイヤW(第一ワイヤWH1と第二ワイヤWH2)にて直線交差部1が形成されている。
【0170】
第一領域E1(2)には、第一実施形態のステント100と同様に、2本のワイヤW(第三ワイヤWH3と第四ワイヤWH4)にて直線交差部1が形成されている。第一領域E1(2)を形成する2本のワイヤWは、第一領域E1(1)を形成するワイヤWとどちらも異なっている。
【0171】
第一領域E1(3)には、第一実施形態のステント100と同様に、2本のワイヤW(第一ワイヤWH1と第二ワイヤWH2)にて直線交差部1が形成されている。第一領域E1(3)を形成する2本のワイヤWは、第一領域E1(1)を形成するワイヤWとどちらも同じである。
【0172】
第一領域E1(4)には、第一実施形態のステント100と同様に、2本のワイヤW(第三ワイヤWH3と第四ワイヤWH4)にて直線交差部1が形成されている。第一領域E1(4)を形成する2本のワイヤWは、第一領域E1(2)を形成するワイヤWとどちらも同じである。
【0173】
すなわち、第一領域E2を挟んで長手軸方向Aの両側に配置される第一領域E1は、異なるワイヤWにより形成されている。本実施形態においては、異なるワイヤW群で形成される第一領域E1が長手軸方向Aに交互に配列している。
【0174】
ステント100Hの第一方向A1側の端部領域において、山型屈曲部3の第一方向A1側の端部は、
図31のE2(0)領域にように谷型屈曲部4と交差することなく螺旋状に配置されていてもよいし、長手軸方向Aに対する位置を揃えて配置されていてもよい。また、ステント100Hの第二方向A2側の端部領域における谷型屈曲部4の第二方向A2側の端部についても同様である。例えば、後述する
図34に示すステント100や
図38に示すステント100Kの端部領域ように、端部領域における山型屈曲部3および谷型屈曲部4の長手軸方向Aの長さを調整することで、長手軸方向Aに対する端部の位置を揃えることができる。具体的には、本実施形態のように2つのワイヤ群がある場合、ステント100Hの一方の端部領域の端部は、一方のワイヤ群の長さを調整することで位置を揃えることができる。また、ステント100Hの他方の端部領域の端部は、他方のワイヤ群の長さを調整することで位置を揃えることができる。
【0175】
本実施形態に係るステント100Hによれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高い。ステント100Hは、周方向Cにおいて掛合部2と隣接する位置に直線交差部1を配置する必要がないため、曲げに反発する力(アキシャルフォース)が低減される。
【0176】
以上、本発明の第八実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0177】
(変形例8-1)
上記実施形態において、異なるワイヤW群で形成される2種類の第一領域E1が長手軸方向Aに交互に配列している。しかしながら、異なるワイヤW群で形成される第一領域E1の配列態様はこれに限定されない。異なるワイヤW群で形成される3種類以上の第一領域E1が長手軸方向Aに交互に配列していてもよい。異なるワイヤW群で形成される2種類以上の第一領域E1が長手軸方向Aに不規則に配列していてもよい。
【0178】
(第九実施形態)
本発明の第九実施形態について、
図32を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第七実施形態に係るステント100Iは、第一実施形態に係るステント100と同様に、ステントデリバリーシステム150に収容される。
【0179】
図32は、ステント100Iを周方向Cに展開した展開図である。
ステント100Iは、屈曲を繰り返しながら周方向Cに傾いて延びるワイヤWにより、網目を周面に有する円管状に形成されている。ステント100Iは、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。
【0180】
図32に示すように、複数の直線交差部1が配置される第一領域E1と、複数の掛合部2が配置される第二領域E2とは、長手軸方向Aにおいて交互に配置される。第一領域E1は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。また、第二領域E2は、長手軸方向Aに沿って螺旋状に配置される。
【0181】
図32に示すように周方向Cに展開して状態において、長手軸方向Aに沿って第二方向A2に向かって交互に並ぶ第一領域E1と第二領域E2を、第二領域E2(0)、第一領域E1(1)、第二領域E2(1)、第一領域E1(2)、第二領域E2(2)、第一領域E1(3)、第二領域E2(3)、第一領域E1(4)、第二領域E2(4)、として区別する。第二領域E2(n)を挟んで長手軸方向Aの両側には、第一方向A1側に第一領域E1(n)が配置され、第二方向A2側に第一領域E1(n+1)が配置される。nは整数である。
【0182】
第一領域E1(1)には、第一実施形態のステント100と同様に、2本のワイヤW(第一ワイヤWI1と第二ワイヤWI2)にて直線交差部1が形成されている。
【0183】
第一領域E1(2)には、第六実施形態のステント100Fと同様に、3本のワイヤW(第三ワイヤWI3と第二ワイヤWI4と第五ワイヤWI5)にて直線交差部1が形成されている。第一領域E1(2)を形成するワイヤWは、第一領域E1(1)を形成するワイヤWと異なっている。第一領域E1(2)を形成するワイヤWの重なり本数(3本)は、第一領域E1(1)を形成するワイヤWの重なり本数(2本)と異なっている。
【0184】
第一領域E1(3)には、第一実施形態のステント100と同様に、2本のワイヤW(第一ワイヤWI1と第二ワイヤWI2)にて直線交差部1が形成されている。第一領域E1(3)を形成する2本のワイヤWは、第一領域E1(1)を形成するワイヤWとどちらも同じである。第一領域E1(3)を形成するワイヤWの重なり本数(2本)は、第一領域E1(1)を形成するワイヤWの重なり本数(2本)と同じである。
【0185】
第一領域E1(4)には、第六実施形態のステント100Fと同様に、3本のワイヤW(第三ワイヤWI3と第二ワイヤWI4と第五ワイヤWI5)にて直線交差部1が形成されている。第一領域E1(4)を形成する3本のワイヤWは、第一領域E1(2)を形成するワイヤWと同じである。第一領域E1(4)を形成するワイヤWの重なり本数(3本)は、第一領域E1(3)を形成するワイヤWの重なり本数(3本)と同じである。
【0186】
すなわち、第一領域E2を挟んで長手軸方向Aの両側に配置される第一領域E1は、異なるワイヤWにより形成されており、異なるワイヤWの編み方により形成されている。本実施形態においては、異なるワイヤWの編み方で形成される第一領域E1が長手軸方向Aに交互に配列している。
【0187】
ステント100Iの第一方向A1側の端部領域において、山型屈曲部3の第一方向A1側の端部は、
図32のE2(0)領域にように谷型屈曲部4と交差することなく螺旋状に配置されていてもよいし、長手軸方向Aに対する位置を揃えて配置されていてもよい。また、ステント100Iの第二方向A2側の端部領域における谷型屈曲部4の第二方向A2側の端部についても同様である。例えば、後述する
図34に示すステント100や
図38に示すステント100Kの端部領域ように、端部領域における山型屈曲部3および谷型屈曲部4の長手軸方向Aの長さを調整することで、長手軸方向Aに対する端部の位置を揃えることができる。具体的には、本実施形態のように2つのワイヤ群がある場合、ステント100Iの一方の端部領域の端部は、一方のワイヤ群の長さを調整することで位置を揃えることができる。また、ステント100Iの他方の端部領域の端部は、他方のワイヤ群の長さを調整することで位置を揃えることができる。
【0188】
本実施形態に係るステント100Iによれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高い。ステント100Iは、周方向Cにおいて掛合部2と隣接する位置に直線交差部1を配置する必要がないため、曲げに反発する力(アキシャルフォース)が低減される。さらに、ステント100Iは、ワイヤWの編み方を第一領域E1ごとに変更することにより、場所に応じて選択的に形状維持性を変化させることができる。さらにステント100Iは、拡張力、場所に応じて選択的にセルサイズ等も変化させることができる。例えば、ステント100Iは、セルサイズを小さくしてイングロースに対する対応性を高めたり、セルサイズを大きくしてステントインステントなどの特殊な手技を実施しやすくしたりできる。
【0189】
以上、本発明の第九実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0190】
(変形例9-1)
上記実施形態において、異なるワイヤWの編み方で形成される2種類の第一領域E1が長手軸方向Aに交互に配列している。しかしながら、異なるワイヤWの編み方で形成される第一領域E1の配列態様はこれに限定されない。異なるワイヤWの編み方で形成される3種類以上の第一領域E1が長手軸方向Aに交互に配列していてもよい。異なるワイヤWの編み方で形成される2種類以上の第一領域E1が長手軸方向Aに不規則に配列していてもよい。
【0191】
(第十実施形態)
本発明の第十実施形態について、
図33から
図34を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0192】
本実施形態に係るステント製造方法は、第一実施形態に係るステント100、第二実施形態に係るステント100B、第三実施形態に係るステント100C、第四実施形態に係るステント100D、第五実施形態に係るステント100Eを製造する方法である。以降、第一実施形態に係るステント100の製造方法を主に説明する。
【0193】
本実施形態に係るステント製造方法において、ステント100を形成する第一ワイヤW1および第二ワイヤW2(
図4参照)は、2本の異なるワイヤWである。
【0194】
本実施形態に係るステント製造方法において、米国特許第6974472号明細書に記載されているような治具を使用する。治具は、円柱状に形成されており、外周に複数の突出ピンを備える。本実施形態において使用する治具は、突出ピンがステント100の掛合部2が形成される箇所に設けられており、長手軸方向に沿って螺旋状に配置されている。
【0195】
<第一ワイヤ編み込みステップ>
図33は、編み込まれた第一ワイヤW1を周方向Cに展開した展開図である。
作業者は、複数の突出ピンが螺旋状に設けられた円柱状の治具に沿って第一ワイヤW1を編み込む。作業者は、第一領域E1(n)を挟んで長手軸方向Aの両側の第二領域E2(n-1)および第二領域E2(n)の掛合部2の一部を形成するように第一ワイヤW1をジグザグに編み込む。
【0196】
具体的には、作業者は、第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を、突出ピンに第一ワイヤW1を引っ掛けて第一ワイヤW1を湾曲させることにより形成する。次に、作業者は、直近に形成した山型屈曲部3と直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を、同様に形成する。次に、作業者は、直近に形成した谷型屈曲部4と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を同様に形成する。次に、作業者は、直近に形成した山型屈曲部3と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を同様に形成する。作業者は、以降これを繰り返して山型屈曲部3と谷型屈曲部4とを交互に形成して、第一ワイヤW1を長手軸方向Aに沿って編み進める。
【0197】
第一ワイヤW1の編み込みが完了したとき、
図33に示すように、ワイヤWの重なりは生じておらず、直線交差部1も掛合部2も形成されていない。
【0198】
<第二ワイヤ編み込みステップ>
図34は、編み込まれた第一ワイヤW1と第二ワイヤW2を周方向Cに展開した展開図である。作業者は、複数の突出ピンが螺旋状に設けられた円柱状の治具に沿って第二ワイヤW2を編み込む。作業者は、第一領域E1(n)を挟んで長手軸方向Aの両側の第二領域E2(n-1)および第二領域E2(n)の掛合部2の残部を形成するように第二ワイヤW2をジグザグに編み込む。
【0199】
具体的には、作業者は、第一ワイヤW1によって形成されていない山型屈曲部3であって第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を、突出ピンに第二ワイヤW2を引っ掛けて第二ワイヤW2を湾曲させることにより形成する。次に、作業者は、第一ワイヤW1によって形成されていない谷型屈曲部4であって直近に形成した山型屈曲部3と直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を、同様に形成する。次に、作業者は、第一ワイヤW1によって形成されていない山型屈曲部3であって直近に形成した谷型屈曲部4と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を同様に形成する。次に、作業者は、第一ワイヤW1によって形成されていない谷型屈曲部4であって直近に形成した山型屈曲部3と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を同様に形成する。作業者は、以降これを繰り返して山型屈曲部3と谷型屈曲部4とを交互に形成して、第二ワイヤW2を長手軸方向Aに沿って編み進める。
【0200】
作業者は、第二ワイヤW2を編み込むとき、掛合部2が構成されるように第一ワイヤW1に対して第二ワイヤW2を交差させる。山型屈曲部3と谷型屈曲部4とが交差して第一ワイヤW1と第二ワイヤW2とが交差する掛合部2が構成される。また、作業者は、第二ワイヤW2を編み込むとき、直線交差部1が構成されるように第一ワイヤW1に対して第二ワイヤW2を交差させる。第一ワイヤW1の直線部10と第二ワイヤW2の直線部10とが交差することで直線交差部1が構成される。
【0201】
<マーカー取付ステップ>
作業者は、必要に応じて、X線視認性マーカを第一ワイヤW1および第二ワイヤW2の所定の箇所に取り付ける。
【0202】
<洗浄ステップ>
作業者は、必要に応じて、編み込まれた第一ワイヤW1および第二ワイヤW2を洗浄する。
【0203】
<熱処理ステップ>
作業者は、編み込まれた第一ワイヤW1および第二ワイヤW2に対して熱処理を行い、第一ワイヤW1および第二ワイヤW2に対して形状記憶処理を施す。第一ワイヤW1および第二ワイヤW2は、例えば、NiTiを主材料とする超弾性合金である。NiTiを主材料とする超弾性合金は、編み込んだ時点では永久変形をしておらず、編み込んだ状態で熱処理を加えることで編み込み形状が記憶される。
【0204】
<接合ステップ>
作業者は、第一ワイヤW1の端部と第二ワイヤW2の端部とを、カシメやレーザー溶接や密着巻き等によって接合する。作業者は、第一ワイヤW1および第二ワイヤW2を治具から外してから、第一ワイヤW1の端部と第二ワイヤW2の端部とを接合してもよい。作業者は、第一ワイヤW1および第二ワイヤW2を治具から外す前に、第一ワイヤW1の端部と第二ワイヤW2の端部とを接合してもよい。
【0205】
本実施形態に係るステント製造方法により作成したステント100は、第二領域E2(n)ごとに偶数個の掛合部2が配置される。
図34に例示するステント100は、第二領域E2(n)ごとに12個の掛合部2が配置される。本実施形態に係るステント製造方法によるステントの編み方を「偶数編み」ともいう。
【0206】
本実施形態に係るステント製造方法により作成したステント100は、
図4に示すように、第一谷41と第二山32とは、第一ワイヤW1により形成される。第一山31と第二谷42とは、第二ワイヤW2により形成される。
【0207】
第二実施形態に係るステント100B、第三実施形態に係るステント100C、第四実施形態に係るステント100D、および第五実施形態に係るステント100Eも、同様の製造方法により製造できる。
【0208】
本実施形態に係るステント製造方法によれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高いステント100等を製造できる。
図4に示すように、第一谷41と第二山32は第一ワイヤW1により形成され、第一山31と第二谷42は第二ワイヤW2により形成される。そのため、本実施形態に係るステント製造方法(偶数編み)により形成されたステント100等は、骨格が強固であり、イングロースの発生やマイグレーションを低減できる。
【0209】
以上、本発明の第十実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0210】
(第十一実施形態)
本発明の第十実施形態について、
図35から
図38を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0211】
図35は、本実施形態に係るステント100Kを示す図である。
ステント100Kは、第一実施形態に係るステント100と比較して、第一ワイヤW1および第二ワイヤW2が異なっている。ステント100Kは、第一ワイヤWK1と、第一ワイヤWK1と異なる第二ワイヤWK2と、を編み込んで形成されている。
【0212】
ステント100Kは、屈曲を繰り返しながら周方向Cに傾いて延びる第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2により、網目を周面に有する円管状に形成されている。ステント100Kは、複数の直線交差部1と、複数の掛合部2と、を有する。
【0213】
ステント100Kの直線交差部1は、第一実施形態に係るステント100と同様に、第一ワイヤWK1の直線部10と第二ワイヤWK2の直線部10とが交差して形成される。
【0214】
ステント100Kの掛合部2は、第一実施形態に係るステント100とは異なり、第一ワイヤWK1どうしが交差した掛合部2(以降、掛合部2K1ともいう)と、第二ワイヤWK2どうしが交差した掛合部2(以降、掛合部2K2ともいう)と、を有する。ステント100Kにおいては、
図4に示す第一掛合部21を形成する第一山31と第一谷41とは、第一ワイヤWK1により形成される。ステント100Kにおいては、
図4に示す第二掛合部22を形成する第二山32と第二谷42とは、第二ワイヤWK2により形成される。
【0215】
図36は、縮径させたステント100Kを示す図である。
ステント100Kにおいて編み込まれた第一ワイヤWK1と第二ワイヤWK2とは、掛合部2において交差していないため、長手軸方向Aに対して相対的に移動可能である。そのため、例えば
図36に示すようにステント100Kを縮径させてステントデリバリーシステム150に収容させるとき、第一ワイヤWK1どうしが交差した掛合部2K1と、第二ワイヤWK2どうしが交差した掛合部2K2と、を長手軸方向Aにずらすことで、ステント100Kの外径がより小さくなる。そのため、ステント100Kは、縮径動作や拡径動作がスムースであり、ステントデリバリーシステム150に対するリリースやリキャプチャが実施しやすい。
【0216】
次に、ステント100Kの製造方法について説明する。本実施形態に係るステント製造方法において、第十実施形態と同様の治具を使用する。
【0217】
<第一ワイヤ編み込みステップ>
図37は、編み込まれた第一ワイヤWK1を周方向Cに展開した展開図である。
作業者は、複数の突出ピンが螺旋状に設けられた円柱状の治具に沿って第一ワイヤWK1を編み込む。作業者は、第一領域E1(n)を挟んで長手軸方向Aの両側の第二領域E2(n-1)および第二領域E2(n)の掛合部2を形成するように第一ワイヤWK1をジグザグに編み込む。
【0218】
具体的には、作業者は、第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を、突出ピンに第一ワイヤWK1を引っ掛けて第一ワイヤWK1を湾曲させることにより形成する。次に、作業者は、直近に形成した山型屈曲部3と直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を、同様に形成する。次に、作業者は、直近に形成した谷型屈曲部4と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を同様に形成する。次に、作業者は、直近に形成した山型屈曲部3と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を同様に形成する。作業者は、以降これを繰り返して山型屈曲部3と谷型屈曲部4とを交互に形成して、第一ワイヤWK1を長手軸方向Aに沿って編み進める。
【0219】
作業者は、第一ワイヤWK1を編み込むとき、掛合部2が構成されるように第一ワイヤWK1どうしを交差させる。第一ワイヤWK1の山型屈曲部3と第一ワイヤWK1の谷型屈曲部4とが交差して第一ワイヤWK1どうしが交差する掛合部2K1が構成される。
【0220】
第一ワイヤWK1の編み込みが完了したとき、
図37に示すように、掛合部2は形成されるが、直線交差部1は形成されない。
【0221】
<第二ワイヤ編み込みステップ>
図38は、編み込まれた第一ワイヤWK1と第二ワイヤWK2を周方向Cに展開した展開図である。作業者は、複数の突出ピンが螺旋状に設けられた円柱状の治具に沿って第二ワイヤWK2を編み込む。作業者は、第一領域E1(n)を挟んで長手軸方向Aの両側の第二領域E2(n-1)および第二領域E2(n)の掛合部2を形成するように第二ワイヤWK2をジグザグに編み込む。
【0222】
具体的には、作業者は、第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を、突出ピンに第二ワイヤWK2を引っ掛けて第二ワイヤWK2を湾曲させることにより形成する。次に、作業者は、直近に形成した山型屈曲部3と直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を、同様に形成する。次に、作業者は、直近に形成した谷型屈曲部4と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n-1)の山型屈曲部3を同様に形成する。次に、作業者は、直近に形成した山型屈曲部3と他の直線部10を経由して連なる第二領域E2(n)の谷型屈曲部4を同様に形成する。作業者は、以降これを繰り返して山型屈曲部3と谷型屈曲部4とを交互に形成して、第二ワイヤWK2を長手軸方向Aに沿って編み進める。
【0223】
作業者は、第二ワイヤWK2を編み込むとき、掛合部2が構成されるように第二ワイヤWK2どうしを交差させる。第二ワイヤWK2の山型屈曲部3と第二ワイヤWK2の谷型屈曲部4とが交差して第二ワイヤWK2どうしが交差する掛合部2K2が構成される。また、作業者は、第二ワイヤWK2を編み込むとき、直線交差部1が構成されるように第一ワイヤWK1に対して第二ワイヤWK2を交差させる。第一ワイヤWK1の直線部10と第二ワイヤWK2の直線部10とが交差することで直線交差部1が構成される。
【0224】
<マーカー取付ステップ>
作業者は、必要に応じて、X線視認性マーカを第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2の所定の箇所に取り付ける。
【0225】
<洗浄ステップ>
作業者は、必要に応じて、編み込まれた第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2を洗浄する。
【0226】
<熱処理ステップ>
作業者は、編み込まれた第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2に対して熱処理を行い、第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2に対して形状記憶処理を施す。第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2は、例えば、NiTiを主材料とする超弾性合金である。NiTiを主材料とする超弾性合金は、編み込んだ時点では永久変形をしておらず、編み込んだ状態で熱処理を加えることで編み込み形状が記憶される。
【0227】
<第一接合ステップ>
作業者は、第一ワイヤWK1の端部を、第一ワイヤWK1のいずれかの部分にカシメやレーザー溶接や密着巻き等によって接合する。作業者は、第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2を治具から外してから、第一ワイヤWK1の端部を接合してもよい。作業者は、第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2を治具から外す前に、第一ワイヤWK1の端部を接合してもよい。
【0228】
<第二接合ステップ>
作業者は、第二ワイヤWK2の端部を、第二ワイヤWK2のいずれかの部分にカシメやレーザー溶接や密着巻き等によって接合する。作業者は、第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2を治具から外してから、第二ワイヤWK2の端部を接合してもよい。作業者は、第一ワイヤWK1および第二ワイヤWK2を治具から外す前に、第二ワイヤWK2の端部を接合してもよい。
【0229】
本実施形態に係るステント製造方法により作成したステント100Kは、第二領域E2(n)ごとに奇数個の掛合部2が配置される。
図38に例示するステント100Kは、第二領域E2(n)ごとに11個の掛合部2が配置される。本実施形態に係るステント製造方法によるステントの編み方を「奇数編み」ともいう。
【0230】
本実施形態に係るステント100Kによれば、複数の掛合部2を備えており、曲げられた場合であっても形状追従性が高い。ステント100Kは、周方向Cにおいて掛合部2と隣接する位置に直線交差部1を配置する必要がないため、曲げに反発する力(アキシャルフォース)が低減される。さらにステント100Kは、編み込まれた第一ワイヤWK1と第二ワイヤWK2とは、長手軸方向Aに対して相対的に移動可能である。そのため、ステント100Kは、縮径動作や拡径動作がスムースであり、ステントデリバリーシステム150に対するリリースやリキャプチャが実施しやすい。
【0231】
以上、本発明の第十一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0232】
(変形例11-1)
図39は、ステント100Kの変形例であるステント100Mを示す図である。
ステント100Mは、長手軸方向Aの中央部が奇数編みで編まれており、長手軸方向Aの両端部が偶数編みで編まれている。奇数編みで編まれた中央部は、ステント100Kと同様に縮径動作がスムースであり、ステントデリバリーシステム150に対するキャプチャしやすい。偶数編みで編まれた両端部は、第十実施形態において述べたように、骨格が強固であり、イングロースの発生やマイグレーションを低減できる。このように特性がことなる二種類の編み方(奇数編み、偶数編み)を混在させることで、ステント100Mは場所ごとに異なった特性を保有できる。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明は、ワイヤ等を編み込んで形成されるステントに適用することができる。
【符号の説明】
【0234】
300 内視鏡システム
200 内視鏡
150 ステントデリバリーシステム
110 外筒部材
120 内筒部材
130 チップ
100,100B,100C,100D,100E ステント
1 直線交差部
10 直線部
11 第一直線部
12 第二直線部
1A 中央直線交差部,第一直線交差部
1B 中央直線交差部,第二直線交差部
1C 中央直線交差部
13 第三直線交差部
14 第四直線交差部
15 第五直線交差部
2 掛合部(絡合部)
21 第一掛合部
22 第二掛合部
23 第三掛合部
24 第四掛合部
25 第五掛合部
26 第六掛合部
27 第七掛合部
3 山型屈曲部(山)
31 第一山
32 第二山
33 第三山
34 第四山
4 谷型屈曲部(谷)
41 第一谷
42 第二谷
43 第三谷
44 第四谷