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特許7583951切断装置用のインペラ、および該インペラを備えた切断装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】切断装置用のインペラ、および該インペラを備えた切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20241107BHJP
   B26D 3/26 20060101ALI20241107BHJP
   B26D 1/36 20060101ALI20241107BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B26D3/28 620F
B26D3/26 604
B26D1/36 Z
B26D7/18 D
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2023547602
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022016058
(87)【国際公開番号】W WO2022174007
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】63/148,698
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/668,550
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504444120
【氏名又は名称】アーシェル ラボラトリーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲレグ,ダスティン ジェイ.
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/232514(US,A1)
【文献】特開2009-172765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 3/26
B26D 1/36
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断ヘッド内に同軸に取り付けられ、該切断ヘッドの軸を中心に回転するように構成されたインペラであって、
該インペラは、
上面、下面、および外周を有する下側プレートと、
該インペラの回転時に、前記下側プレート上に置かれた材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるように前記下側プレートに備えられた複数のパドルであって、該複数のパドルのうちの少なくとも第1のパドルが、前記下側プレートの前記外周に隣接する該第1のパドルの径方向最外部を画定する径方向外側部を有している、複数のパドルと、
前記下側プレート内に配置され、前記下側プレートの前記上面と下面の間で連続し、かつ、前記下側プレートの前記外周に隣接し、前記下側プレートを貫通して、前記上面に接続された通路を画定し、前記上面にあるデブリが前記通路を通って前記インペラから排出されるように構成されている、少なくとも第1の凹部と、および、
前記第1のパドルの前記径方向外側部に配置され、前記第1のパドルに隣接する第1の開口部、前記第1の凹部に隣接する第2の開口部、および、該シュート内であって前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の通路を画定し、前記デブリは該通路を通過した後に、前記第1の凹部の前記通路を通って前記インペラから排出されるように構成されている、シュートと、
を備えたインペラ。
【請求項2】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、前記第1の凹部上に径方向に突出している、請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記第1の凹部は、第1の凹部部分と第2の凹部部分を有し、前記第1のパドルは、前記第1の凹部部分が前記第1のパドルの先行側に位置し、前記第2の凹部部分が前記第1のパドルの後行側に位置するように、前記第1の凹部部分と前記第2の凹部部分との間に位置している、請求項1に記載のインペラ。
【請求項4】
前記下側プレートは、前記第1の凹部部分と前記第2の凹部部分との間に部分的に延在する突出部を備え、前記第1のパドルは前記突出部に取り付けられ、前記第1のパドルの前記径方向外側部は前記突出部を超えて径方向に突出している、請求項3に記載のインペラ。
【請求項5】
前記下側プレートの前記上面から前記インペラの前記外周に向かって下方に傾斜する斜面をさらに備え、前記斜面は、前記第1の凹部部分と交差し、前記デブリを捕捉し、該デブリを前記第1の凹部部分に運ぶように構成されている、請求項3に記載のインペラ。
【請求項6】
前記第2の凹部部分は、前記第1の凹部部分よりも大きい、請求項3に記載のインペラ。
【請求項7】
前記シュートの前記第2の開口部は、該シュートに入る前記デブリが前記第2の凹部部分を通して前記インペラから排出されるように、前記第2の凹部部分を取り囲んでいる、請求項6に記載のインペラ。
【請求項8】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、該第1のパドルの最下部に少なくとも1つの空隙を画定する少なくとも1つの延長部を備えている、請求項1に記載のインペラ。
【請求項9】
前記空隙が、前記第1の凹部に隣接し、前記デブリが前記インペラから排出される際に通る前記シュートの前記通路の一部を画定する、請求項8に記載のインペラ。
【請求項10】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、前記第1のパドルの前記径方向最外部に沿って間隔を空けて配置された複数の延長部を備えており、該複数の延長部の間に複数の空隙が形成されている、請求項1に記載のインペラ。
【請求項11】
前記シュートは、前記第1のパドルの前記径方向外側部の前記複数の延長部のうちの少なくとも1つに取り付けられている、請求項10に記載のインペラ。
【請求項12】
前記第1のパドルは、円弧凸形状のパドル面を画定する先行側を有している、請求項1に記載のインペラ。
【請求項13】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、凸状湾曲を有しており、前記切断ヘッドによるスライス中に前記材料の寸法が減少する間、前記インペラの回転によって生じる遠心力を受ける前記材料に一定の力が加わることを促進するように構成されている、請求項12に記載のインペラ。
【請求項14】
前記パドル面の前記凸状湾曲は、前記材料の寸法が減少するにつれて前記材料の接線と該パドル面との接触角度を増大させる、請求項13に記載のインペラ。
【請求項15】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、前記第1のパドルの前記径方向最外部に向かって曲率半径が次第に小さくなる凸状湾曲を有している、請求項12に記載のインペラ。
【請求項16】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、前記パドル面が前記材料に接触している間に前記材料が転がることを抑制するために前記パドル面上の摩擦を増やす方向に向けられた複数の溝を有している、請求項12に記載のインペラ。
【請求項17】
前記第1のパドルの径方向最内部から径方向内方に延在し、かつ、該インペラの回転方向に伸長するガイドをさらに備えている、請求項1に記載のインペラ。
【請求項18】
環状の切断ヘッドと、該切断ヘッド内に同軸に取り付けられ、該切断ヘッドに対する回転方向に前記切断ヘッドの軸を中心として回転するように構成されたインペラとを備える切断装置であって、
前記切断ヘッドは複数の刃部を有し、該複数の刃部のそれぞれは、前記インペラの回転方向とは反対方向に、前記インペラに向かって径方向内側に延びており、
前記インペラは、
上面、下面、および外周を有する下側プレートと、
該インペラの回転時に、前記下側プレート上に置かれた材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるように前記下側プレートに備えられた複数のパドルであって、該複数のパドルのうちの少なくとも第1のパドルが、前記下側プレートの前記外周に隣接する該第1のパドルの径方向最外部を画定する径方向外側部を有している、複数のパドルと、
前記下側プレート内に配置され、前記下側プレートの前記上面と下面の間で連続し、かつ、前記下側プレートの前記外周に隣接し、前記下側プレートを貫通して、前記上面に接続された通路を画定し、前記上面にあるデブリが前記通路を通って前記インペラから排出されるように構成されている、少なくとも第1の凹部と、および、
前記第1のパドルの前記径方向外側部に配置され、前記第1のパドルに隣接する第1の開口部、前記第1の凹部に隣接する第2の開口部、および、該シュート内であって前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の通路を画定し、前記デブリは該通路を通過した後に、前記第1の凹部の前記通路を通って前記インペラから排出されるように構成されている、シュートと、
を備えている、
切断装置。
【請求項19】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、前記第1の凹部上に径方向に突出している、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の凹部は、第1の凹部部分と第2の凹部部分を有し、前記第1のパドルは、前記第1の凹部部分が前記第1のパドルの先行側に位置し、前記第2の凹部部分が前記第1のパドルの後行側に位置するように、前記第1の凹部部分と前記第2の凹部部分との間に位置している、請求項18に記載のインペラ。
【請求項21】
前記下側プレートは、前記第1の凹部部分と前記2の凹部部分との間に部分的に延在する突出部を備え、前記第1のパドルは前記突出部に取り付けられ、前記第1のパドルの前記径方向外側部は前記突出部を超えて径方向に突出している、請求項20に記載のインペラ。
【請求項22】
前記下側プレートの前記上面から前記インペラの前記外周に向かって下方に傾斜する斜面をさらに備え、前記斜面は、前記第1の凹部部分と交差し、前記デブリを捕捉し、該デブリを前記第1の凹部部分に運ぶように構成されている、請求項20に記載の切断装置。
【請求項23】
前記第2の凹部部分は、前記第1の凹部部分よりも大きい、請求項20に記載の切断装置。
【請求項24】
前記シュートの前記第2の開口部は、該シュートに入る前記デブリが前記第2の凹部部分を通して前記インペラから排出されるように、前記第2の凹部部分を取り囲んでいる、請求項23に記載の切断装置。
【請求項25】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、該第1のパドルの最下部に少なくとも1つの空隙を画定する少なくとも1つの延長部を備えている、請求項18に記載の切断装置。
【請求項26】
前記空隙が、前記第1の凹部に隣接し、前記デブリが前記インペラから排出される際に通る前記シュートの前記通路の一部を画定する、請求項25に記載の切断装置。
【請求項27】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、前記第1のパドルの前記径方向最外部に沿って間隔を空けて配置された複数の延長部を備えており、該複数の延長部の間に複数の空隙が形成されている、請求項18に記載の切断装置。
【請求項28】
前記シュートは、前記第1のパドルの前記径方向外側部の前記複数の延長部のうちの少なくとも1つに取り付けられている、請求項27に記載の切断装置。
【請求項29】
前記第1のパドルは、円弧凸形状のパドル面を画定する先行側を有している、請求項18に記載の切断装置。
【請求項30】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、凸状湾曲を有しており、前記切断ヘッドによるスライス中に前記材料の寸法が減少する間、前記インペラの回転によって生じる遠心力を受ける前記材料に一定の力が加わることを促進するように構成されている、請求項29に記載の切断装置。
【請求項31】
前記パドル面の前記凸状湾曲は、前記材料の寸法が減少するにつれて前記材料の接線と該パドル面との接触角度を増大させる、請求項30に記載の切断装置。
【請求項32】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、前記第1のパドルの前記径方向最外部に向かって曲率半径が次第に小さくなる凸状湾曲を有している、請求項29に記載の切断装置。
【請求項33】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、前記パドル面が前記材料に接触している間に前記材料が転がることを抑制するために前記パドル面上の摩擦を増やす方向に向けられた複数の溝を有している、請求項29に記載の切断装置。
【請求項34】
前記第1のパドルの径方向最内部から径方向内方に延在し、かつ、該インペラの回転方向に伸長するガイドをさらに備えている、請求項18に記載の切断装置。
【請求項35】
前記第1のパドルの前記径方向外側部は、該第1のパドルの前記径方向最外部に沿って間隔を空けて配置された複数の延長部を備え、該複数の延長部の間に複数の空隙を画定し、前記第1のパドルの前記径方向外側部は前記切断ヘッドの刃部とゲートに近接しており、前記ゲートは、前記インペラの回転を受ける材料が前記刃部に当たる前に前記ゲートの表面を横切るように前記刃部に対して位置決めされており、前記ゲートの後行縁と前記刃部の刃先が、前記刃部によって生産される前記材料のスライスの厚さを決定するゲート開口部を画定し、前記ゲートの前記表面は、前記刃部に向かって前記ゲートの前記表面を横切って移動する前記材料の移動方向と平行な複数の溝を有し、前記ゲートの前記表面には、前記溝よりも深く、前記ゲートの前記後行縁と隣接しており、前記第1のパドルの前記径方向最外部の前記複数の空隙のそれぞれと対向する複数の逃げ部が設けられている、請求項18に記載の切断装置。
【請求項36】
切断ヘッド内に同軸に取り付けられ、該切断ヘッドの軸を中心に回転するように構成されたインペラであって、
該インペラは、
上面、下面、および外周を有する下側プレートと、
該インペラの回転時に、前記下側プレート上に置かれた材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるように前記下側プレートに備えられた複数のパドルと、
を備え、
前記複数のパドルのうちの少なくとも第1のパドルが、前記下側プレートの前記外周に隣接する該第1のパドルの径方向最外部を画定する径方向外側部を有しており、前記第1のパドルは、円弧凸形状のパドル面を画定する先行側を有している、
インペラ。
【請求項37】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、凸状湾曲を有しており、前記切断ヘッドによるスライス中に前記材料の寸法が減少する間、前記インペラの回転によって生じる遠心力を受ける前記材料に一定の力が加わることを促進するように構成されている、請求項36に記載のインペラ。
【請求項38】
前記パドル面の前記凸状湾曲は、前記材料の寸法が減少するにつれて前記材料の接線と該パドル面との接触角度を増大させる、請求項37に記載のインペラ。
【請求項39】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、前記第1のパドルの前記径方向最外部に向かって曲率半径が次第に小さくなる凸状湾曲を有している、請求項36に記載のインペラ。
【請求項40】
前記パドル面の前記円弧凸形状は、前記パドル面が前記材料に接触している間に前記材料が転がることを抑制するために前記パドル面上の摩擦を増やす方向に向けられた複数の溝を有している、請求項36に記載のインペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月12日出願の米国仮出願第63/148,698号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、広くは、食品のスライス装置などの製品の切断装置に関する。より具体的には、本発明は、切断装置に用いられるインペラに関する。
【背景技術】
【0003】
野菜、果実、乳製品、肉製品などの食品をスライスし、細断し、粒状にするためのさまざまな装置が知られている。このような目的に広く使用されている装置は、アーシェル・ラボラトリーズ,インク.から市販されており、これには、「モデルCC(Model CC(登録商標))」のブランド名で販売されている装置が含まれる。モデルCCシリーズの装置は、遠心タイプのスライサで、さまざまな食品のスライスを高い生産能力で行うことができる。モデルCCシリーズの装置は、特に、均一なスライス、千切り、細断、および粒状化を行うのに適している。モデルCCシリーズの装置の構成および態様に関しては、米国特許第3,139,128号公報、米国特許第3,139,129号公報、米国特許第5,694,824号公報、米国特許第6,968,765号公報、米国特許第7,658,133号公報、米国特許第8,161,856号公報、米国特許第9,193,086号公報、米国特許第10,456,943号公報、および、米国特許第10,632,639号公報において明示されており、これらのすべての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
図1は、モデルCCシリーズの装置10を模式的に示す断面図である。装置10は、略環状の切断ヘッド12と、切断ヘッド12内に同軸に取り付けられたインペラ14とを有する。インペラ14は、切断ヘッド12の中心軸と一致する回転軸17を有し、ハウジング18内に収容され、かつ、ギアボックス16に連結されたシャフト(図示せず)を介して、回転軸17を中心に回転駆動される。切断ヘッド12は、ギアボックス16の上方にあるサポートリング15に取り付けられ、インペラ14が回転する際には静止している。製品は、インペラ14の上方に位置する送りホッパ11を介して、切断ヘッド12およびインペラ14に運ばれる。作動時に、ホッパ11が製品をインペラ14に運ぶと、遠心力により、製品は外方に移動し、切断ヘッド12の外周に沿って取り付けられた切断刃部(図示せず)と係合する。インペラ14は、全体として径方向を向いたパドル13を備え、それぞれのパドル13は、インペラ14が回転するにしたがって、製品と係合し、かつ、製品を径方向外方に向けさせ、切断ヘッド12の刃部に接触させるための面を有する。モデルCCシリーズの装置の構成および操作に関するその他の特徴に関しては、その種々の実施形態も含め、参照により本明細書に組み込まれた上記特許文献から理解できる。
【0005】
図2は、図1に模式的に示した装置10を含む、モデルCCシリーズのスライス装置に使用されてきた切断ヘッド12の具体的かつ非限定的な例を取り出して示す図である。図2に示した切断ヘッド12について、図1を参照して説明されるインペラ14を備えた、図1に示した装置10を参照しつつ説明する。切断ヘッド12およびインペラ14の同軸配置に基づいて、「軸方向」、「周方向」、「径方向」などの相対的な用語、および、これらに関連する表現が、図2に示された切断ヘッド12を説明するために以下で使用される。
【0006】
図2に示されるように、切断ヘッド12は、略環状で、その外周に沿って周方向に間隔を空けて取り付けられた切断刃部20を備える。図2では、刃部20は、フラットなスライスを生産するために直線状の刃先を備えた「フラットな」刃部からなるが、切断ヘッド12には、波形、千切り、細断、あるいは粒状の製品を生産するために、他の形状の刃部、たとえば、刃先方向から見て山部と谷部を交互に備えた正弦波形状などの周期的パターンによって特徴付けられる「波形刃部」も使用することができる。それぞれの刃部20は、切断ヘッド12内でのインペラ14の回転方向と略逆方向であって、径方向内方に突出し、刃部の径方向最内部には刃先が設けられている。切断ヘッド12は、図2にリング22およびリング24として示されている上部支持部材および下部支持部材をさらに備え、これらの間には、周方向に間隔をあけて配置された支持セグメント(以下、シュー26と称す)がファスナ36で固定されている。
【0007】
また、図2に示すように、刃部20をそれぞれのシュー26に接続することができ、この場合、シュー26は切断ヘッド12の切断ステーションと称される。図2に示すように、切断ヘッド12の刃部20は、クランプアセンブリ28によってそれぞれのシュー26に固定されている。それぞれのクランプアセンブリ28は、支持リング22および24の間に取り付けられた刃部ホルダ30と、それに刃部20を固定するために刃部ホルダ30の径方向外側を向く側面に配置されたクランプ32とを含む。それぞれの刃部20は、1つの刃部ホルダ30の径方向外側の面によって支持され、対応するクランプ32は刃部ホルダ30上にあるため、刃部20は、刃部ホルダ30の外側面と、刃部ホルダ30と向き合うクランプ32の径方向内側の面との間に位置する。クランプ32に対して刃部ホルダ30の方向に向けて力を加えることにより、クランプ32は、刃部20のうちの刃先に隣接する部分にクランプ力を付与する。図2は、それぞれのシュー26に固定されたゲート40をさらに示す。食品は、ゲート40を横切ってから、後続するシュー26に取り付けられた刃部20に当たる。刃部20の刃先および先行するゲート40の後縁により、刃部20によって生産されるスライスの厚さを決定するゲート開口部が形成される。
【0008】
図3は、図1に模式的に示した装置10を含む、モデルCCシリーズのスライス装置に使用されるインペラ14の具体的かつ非限定的な例を取り出して示す。図3に示すように、異なる数のパドル13をインペラ14の別の位置に取り付けることができるよう、追加の取付孔34が設けられている。取付孔34の配置により、インペラ13の径方向に対するそれぞれのパドル面の向きまたはピッチが決定される。本明細書では、パドル面は、パドル13の先行する表面に配置された(すなわち、インペラの回転方向を向いている)パドル13の表面を意味し、したがって、インペラ14の回転によって生じる遠心力の影響下で製品がインペラ14の径方向外側へ移動する際に、パドル面が製品と係合して、製品を切断ヘッド12の刃部20に向かって移動させ、刃部20に押し当てる。
【0009】
遠心タイプのモデルCCシリーズの装置は、その用途に対して最適に機能するが、装置のメンテナンスに関する改良を含む、さらなる改良が継続的に要求かつ追及されている。非限定的な例として、刃部20の交換が挙げられる。刃部20の刃先は、ジャガイモなどの食品に頻繁に付着するか食品内に入り込んだ、石や砂、その他の異物デブリとの衝突などによって損傷を受けやすい。図3および図4は、インペラ14のパドル13に、パドル13の径方向外側部に沿って間隔を空けて配置された複数のポスト42を備え、隣接するポスト42の間に空隙44を形成するアプローチを示している。これらの空隙を通じて、石やその他の異物デブリが、パドル13の径方向最外部を避けて通過し、インペラ14のパドル13または切断ヘッド12の刃部20を損傷することなく切断ヘッド12から出ることができる。ポスト42は、それぞれのパドル13の径方向外側部の面にねじ込むことによって、交換可能である。図3および図4に示したように、パドル13の最上部および最下部にはポスト42は存在しておらず、その代わりに、切断ヘッド12の外周におけるデブリの蓄積を抑制する上部剪断縁46および下部剪断縁48を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、食品をスライスするのに適した遠心タイプのスライス装置などのさまざまな製品の切断装置を少なくとも部分的に提供し、かつ、そのような装置での使用に適したインペラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、切断ヘッド内に同軸に取り付けられて、前記切断ヘッドの軸を中心に回転するのに適したインペラが提供される。前記インペラは、上面、下面、および外周を有する下側プレートと、該インペラの回転時に、前記下側プレート上に置かれた材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるように前記下側プレートに備えられた複数のパドルとを有する。少なくとも第1のパドルは、前記下側プレートの前記外周に隣接する該第1のパドルの径方向最外部を画定する径方向外側部を有する。少なくとも第1の凹部が前記下側プレート内に配置され、前記下側プレートの前記上面と前記下面の間で連続し、かつ、前記下側プレートの前記外周に隣接している。該第1の凹部は、前記下側プレートを貫通して、前記上面に接続された通路を画定し、前記上面にあるデブリが前記通路を通って前記インペラから排出されることを可能にする。前記第1のパドルの前記径方向外側部にシュートが配置され、該シュートは、前記第1のパドルに隣接する第1の開口部、前記第1の凹部に隣接する第2の開口部、および、該シュート内であって前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の通路を画定し、前記デブリが該通路を通過した後に、前記第1の凹部の前記通路を通って前記インペラから排出されるように構成されている。
【0012】
本発明の別の態様によれば、環状の切断ヘッドと、該切断ヘッド内に同軸に取り付けられて、前記切断ヘッドに対する回転方向に該切断ヘッドの軸を中心として回転するインペラとを備える、切断装置が提供される。前記切断ヘッドは、複数の刃部を有し、該複数の刃部のそれぞれは、前記インペラの回転方向とは反対方向に、該インペラに向かって径方向内側に延びている。前記インペラは、上面、下面、および外周を有する下側プレートと、該インペラの回転時に、前記下側プレート上に置かれた材料を該インペラの径方向外方に向けて移動させるように前記下側プレートに備えられた複数のパドルとを有する。少なくとも第1のパドルは、前記下側プレートの前記外周に隣接する該第1のパドルの径方向最外部を画定する径方向外側部を有する。少なくとも第1の凹部が前記下側プレート内に配置され、前記下側プレートの前記上面と前記下面の間で連続し、前記下側プレートの前記外周に隣接している。該第1の凹部は、前記下側プレートを貫通して、前記上面に接続された通路を画定し、前記上面にあるデブリが前記通路を通って前記インペラから出ることを可能にする。前記第1のパドルの前記径方向外側部にシュートが配置され、該シュートは、前記第1のパドルに隣接する第1の開口部、前記第1の凹部に隣接する第2の開口部、および、前記シュート内であって前記第1の開口部と前記第2の開口部との間の通路を画定し、前記デブリが該通路を通過した後に、前記第1の凹部の前記通路を通って前記インペラから出るように構成されている。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、切断ヘッド内に同軸に取り付けられて、前記切断ヘッドの軸を中心に回転するのに適したインペラが提供される。前記インペラは、上面、下面、および外周を有する下側プレートと、該インペラの回転時に、前記下側プレート上に置かれた材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるように前記下側プレートに備えられた複数のパドルとを有する。少なくとも第1のパドルは、前記下側プレートの前記外周に隣接する該第1のパドルの径方向最外部を画定する径方向外側部を有する。前記第1のパドルは、円弧凸形状のパドル面を画定する先行側を有する。
【0014】
上述のインペラと該インペラを備えた切断装置の技術的な特徴により、ジャガイモなどの食品を含む切断される材料または製品に、付着するかまたはそれらの中に入り込んだ石やその他の異物デブリとの衝突によって、切断装置の刃部および刃部ホルダが損傷する可能性を低減させることができる。
【0015】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、模式的に示した従来の遠心タイプのスライス装置の部分断面側面図である。
図2図2は、図1に示したタイプのスライス装置に使用された切断ヘッドの詳細を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示したタイプのスライス装置に使用されたタイプのインペラと、図2に示した切断ヘッドとを示す斜視図である。
図4図4は、図3のインペラに取り付けた1つのパドルの詳細側面図である。
図5図5は、図1に示した遠心タイプのスライス装置および図2に示した切断ヘッドで使用可能なインペラの非限定的実施形態を示す斜視図である。
図6図6は、図5のインペラの下側プレートを取り出して示す平面図である。
図7図7は、図5のインペラの詳細斜視図であり、インペラのパドルとシュートを示す。
図8図8は、図5のインペラの代替実施形態の詳細斜視図である。
図9図9は、図5のインペラの代替実施形態の詳細斜視図である。
図10図10は、図5のインペラのシュートの詳細斜視図である。
図11図11A図11Cは、図10のシュートを取り出して示す斜視図である。
図12図12は、図5のインペラの下側プレート、パドル、およびシュートを示す詳細平面図であり、パドルのパドル面の明確な凸状湾曲を明示している。
図13図13Aおよび図13Bは、図5のインペラのパドルを取り出して示す斜視図と平面図である。
図14図14は、図5のインペラの詳細斜視図であり、切断ヘッドのゲートと刃部に近接したパドルの径方向外側部を示す。
図15図15は、図14のゲートと刃部の詳細斜視図である。
図16図16は、図5のインペラの下側プレート、2個のパドル、および2個のシュートを示す平面図であり、インペラの回転により製品に遠心力が作用した結果生じるインペラ内における製品の移動を表す。
図17図17Aおよび図17Bは、図13Aおよび図13Bに示すパドルの面の凸状湾曲の効果を数学文法的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の以下の詳細な説明およびそこで採用されている語法および用語の意図する目的は、発明の1以上の非限定的な実施形態の描写を含む図面に示された内容を説明し、また図面に示された実施形態の特定の特徴(すべての特徴ではない)を説明することである。また、以下の詳細な説明は、図面に示された実施形態の特定の代替手段(すべての代替手段ではない)を特定するものである。したがって、詳細な説明ではなく、添付の請求の範囲は、詳細な説明に記載された特徴と代替手段のうちの特定の内容(必ずしもすべての内容ではない)を含む、発明とみなされる主題を特定的に指摘することを意図している。
【0018】
図5図16は、図1に示した遠心タイプのスライス装置10および図2に示した切断ヘッドを含むさまざまな切断装置に使用可能なインペラとその部品、および、該装置のためのインペラの交換および変更についての非限定的な実施形態を示す。便宜上、インペラとその部品の非限定的な実施形態は、図1および図2を参照して説明されたような環状の切断ヘッド12を備える、図1のスライス装置10を参照して例示し、説明する。したがって、以下の説明は、スライス装置10および切断ヘッド12を参照して説明されるインペラの特定の特徴に主に焦点を当てているが、以下に詳述しないその他の特徴については、構造、機能、材料などを含めて、図1図3、および図4のインペラを参照して説明したのと実質的に同様である。ただし、本発明の教示は、その他のタイプの切断装置にも全般的に適用可能である。さらに、かかる装置は、特に食品のスライスに最適であるが、本明細書に記載のインペラを他のタイプのさまざまな材料を切断する切断装置に適用することも本発明の範囲内である。
【0019】
図示した実施形態に関する以下の説明を容易にするため、図1に示した装置10の切断ヘッド12およびインペラ14と同様に、相対的な用語は、切断ヘッド12内にあるインペラの方向に関連づけて使用される。図1における切断ヘッド12とインペラ14の同軸配置に基づき、「軸方向」、「周方向」、「径方向」などを含む相対的な用語、およびこれらと関連する表現も、図示された非限定的な実施形態を説明するために以下で使用される。そのような相対的な用語はすべて、図示された実施形態を説明するために有用であるが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、本明細書では、「先行」(およびこれと関連する表現)は、切断ヘッドに取り付けられ、かつ、切断ヘッド内で回転する際の、インペラにおける該インペラの回転方向において他のものよりも前にある、すなわち先に来る位置を表し、「後行」(およびこれと関連する表現)は、インペラにおける該インペラの回転方向において他のものに続く、すなわち後に来る位置を表す。
【0020】
図5は、本発明の第1の非限定的な実施形態によるインペラ60を模式的に示し、図6は、インペラ60の下側プレート66を模式的に示し、図7は、インペラ60の一部を模式的に示す。図1図3、および図4に示したインペラ14と同様に、インペラ60は、略径方向を向いたパドル62を備え、それぞれのパドル62は、それらの先行表面に位置するパドル面64(図7)を備えており、インペラ60が切断ヘッド12内でその回転軸を中心に回転するにともない、パドル面64が製品に係合して、該製品を切断ヘッド12の刃部20に向けて径方向外方に導く。より具体的には、インペラ60に入った製品は、インペラ60の回転により発生した遠心力によって径方向外方に移動され、製品がパドル62に接触すると、径方向外方に移動していた製品は、パドル面64によって、切断ヘッド12に向かって移動される。図5の非限定的な実施形態におけるパドル62は、下側プレート66と、環状の上側プレート68との間に配置されている。インペラ60は、下側プレート66と上側プレート68との間に取り付けられ固定された、個別に形成されたパドル62から構成されているものとして示されているが、パドル62は、下側プレート66および/または上側プレート68と一体の部品としてキャスト成形することもできる。前者の場合は、インペラ60およびその部品はキャスト成形以外の工程によって形成することができ、さまざまな材料で形成することができる。
【0021】
図5図7に示した非限定的な実施形態では、パドル62は、下側プレート66と上側プレート68に機械加工された、それぞれ対応する取付孔74(図6および図7)にボルト70およびピン72で個別に取り付けられているように示されている。ただし、下側プレート66と上側プレート68とが、ポストまたは接続ロッドなど、任意の適切な手段によって連結された結果として、パドル62のいずれかが下側プレート66あるいは上側プレート68の一方のみに直接的に取り付けられ、下側プレート66あるいは上側プレート68の他方に間接的に取り付けられている構造も、本発明の範囲内である。取付孔74の配置は、インペラ60の径方向に対するそれぞれのパドル62のパドル面64の向きまたはピッチを少なくとも部分的に決定する。取付孔74の配置は、パドル面64のピッチが、インペラ60の径方向に対して負、中立、または、正となるように選択することができる。
【0022】
図6に示すように、インペラ60の下側プレート66が画定する外周67は、プレート66内の凹部76によって中断されているが、下側プレート66はその連続する円周67Aを画定する。凹部76は、下側プレート66の上面と下面との間で連続しており、また、円周67Aと一致する下側プレート66の最も外側の径方向縁部に隣接しており、これにより、凹部76は、下側プレート66の外周67において開口し、外周67にスロットを構成している。それぞれの凹部76は、下側プレート66を貫通して、下側プレート66の上面に接続された通路を画定しており、上面にある異物デブリは、該通路を通ってインペラ60から出ることができる。本明細書で使用される「異物デブリ」および「デブリ」という用語は、インペラ60を用いて切断される材料または製品に付着したおよび/またはそれらの中に入り込んだ石およびその他の混入物を含む。
【0023】
下側プレート66の外周67にあるそれぞれの凹部76の位置は、対応するパドル62の位置と対応している。それぞれの凹部76は、径方向内側に延びた少なくとも2個の凹部部分76Aおよび76Bを含む。図6におけるパドル62の輪郭によって示されるように、それぞれのパドル62は、対応する凹部76の凹部部分76Aおよび76Bの間に位置し、パドル62の先行側に凹部部分76Aが位置し、パドル62の後行側に凹部部分76Bが位置するように、下側プレート66に取り付けられる。図6に示すように、凹部部分76Aおよび76Bは、下側プレート66の一部によって部分的に分離されている。この下側プレート66の一部は、全体として、外周67の円周67Aに向かって延在する突出部80を画定する。なお、図示の非限定的実施形態では、突出部80は円周67Aと交差しない。それぞれのパドル62は、その径方向外側部77が、突出部80を超えて凹部76上に突出して、それぞれのパドル62の径方向最外部78が、外周67の円周67Aに近接する、あるいは、図6に示すように外周67の円周67Aと交差するように、対応する突出部80に取り付けられる。
【0024】
また、図6に示すように、下側プレート66は、溝を有している。この溝は、下側プレート66の上面からインペラ60の外周67に向かって下方に傾斜しており、パドル面64に沿って配置される(パドル面64に隣接させてもよい)凹部部分76Aと交差する斜面82を形成する。斜面82は、デブリを捉え、そのデブリを凹部部分76Aに運ぶ。斜面82と凹部部分76Aにより、インペラ60のパドル62および切断ヘッド12の刃部20と刃部ホルダ30が損傷する危険性を回避することが可能となる、あるいは、少なくともその危険性を減少させることが可能となる。デブリの大きさおよびそれが径方向外側へどの程度速く移動するかに応じて、デブリは、凹部部分76A(凹部部分76Bよりも小さい)を通って下方に落下するか、あるいは、大きな凹部部分76Bに向けて移動を続けることになる。図6に示すように、それぞれの斜面82の径方向最内部は、対応するパドル62の径方向最内部79よりも伸長し、それぞれの斜面82と対応する凹部部分76との交差部は、対応するパドル62の径方向最外部78と径方向最内部79との間の中間点にほぼ位置し、かつ、パドル62のパドル面64の全体が斜面82または凹部部分76Aに隣接する。図5は非限定的実施形態を示しており、たとえば、凹部76およびそれらの凹部部分76Aおよび76Bの数、寸法、構成、および位置、並びに、図8に示すように、小さい方の凹部部分76B、突出部80、および斜面82が存在しない(この場合、パドル62の径方向外側部77は凹部76上に突出しない)ことを含めて、その他の構成も適用可能である。
【0025】
図5および図7に示すように、凹部76上まで突出するパドル62の径方向外側部77(図6参照)は、径方向最外部78に沿って間隔を空けて配置された複数の延長部84を備え、複数の空隙86(図7および図13A)が形成されている。異物デブリは、パドル62または切断ヘッド12の刃部20および刃部ホルダ30を損傷することなく空隙86を通過することができる。延長部84は、たとえば、パドル62の径方向外側部77を機械加工によって空隙86を形成することにより、パドル62の残部と一体的に形成されている。ただし、延長部84を別個に形成してパドル62に取り付けることも可能である。延長部84の先端は、それぞれのパドル62の径方向最外部78を画定している。図5図7および図13Aから明らかなように、それぞれのパドル62の最下部には延長部84が設けられておらず、最下部の空隙86は他の空隙よりも大きく、下側開口部を画定している。比較的大きなデブリは該下部開口物を通過して、パドル62およびその径方向外側部77を避けることができる。図5は非限定的実施形態を示しており、延長部84の数および位置を含めて、その他の構成(たとえば、単一の延長部84によって最下部の空隙86のみが画定されている図9に示す構成)を適用することも可能である。
【0026】
小さい凹部部分76Aが存在しない場合、あるいは、凹部76の小さい凹部部分76Aを通ってデブリが落下しない場合を考慮して、図5に示すように、それぞれのパドル62にはシュート88が設けられる。個々のシュート88は図7図12により詳細に示されている。シュート88は、デブリを凹部76の大きい凹部部分76Bを通って落下させることを補助する。図示のように、シュート88は、図7により最も容易に理解されるが、延長部84はシュート88に当接し、シュート88が延長部84間の空隙86をそれらの最も外側で閉じるように、パドル62の径方向最外部78に取り付けられている。図5および図10から理解されるように、シュート88は、パドル62の後行面(パドル面64と反対側)と、大きい凹部部分76Bの縁に沿って下側プレート66とに取り付けられている。シュート88は、取り付けられているパドル62の実質的に全高にわたって延在する垂直開口部90と、大きい凹部部分76Bの円周方向全範囲を実質的に横断する水平開口部92とを画定している。図10および図12に示すように、シュート88は、大きい凹部部分76Bを囲み、かつ、シュート88内に、垂直開口部90と水平開口部92の間に通路を形成する。デブリはこの通路を通過し、その後に切断ヘッド12と当たることなく、大きい凹部部分76Bを通ってインペラ60を出ることが可能である。シュート88と大きい凹部部分76Bにより、インペラ60のパドル62および切断ヘッド12の刃部20と刃部ホルダ30が損傷する危険性をより回避することが促進される、あるいは、少なくともその危険性をより低減させることが促進される。
【0027】
図10および図12に特に示されるように、シュート88の上端94は開いており、シュート88およびシュート88の水平開口部92を通して下側プレート66内の大きい凹部部分76Bに至る、障害物のない通路が形成される。これにより、インペラ60の清掃が容易となる。また、図12に示すように、交換可能なエッジ要素96がシュート88にその垂直開口部90に沿って取り付けられる。エッジ要素96は、シュート88の垂直開口部90に沿ってシュート88の端縁を超えて延在する斜面を画定する先行縁部96Aを有している。この斜面は、インペラ60の外周67からデブリを逸らせて、大きい凹部部分76Bに向かわせ、かつ、大きなデブリが凹部部分76Bに留まった場合の過剰な損傷から切断ヘッド12を保護する。図示のように、エッジ要素96は、三角形の断面形状を有しており、第2の斜面を備える。したがって、エッジ要素96の先行縁部96Aが損傷した場合には、エッジ要素96をシュート88から取り外して、上下を逆に回転させて、シュート88に再び取り付けるだけで、エッジ要素96の再利用が可能となる。図12に示すように、パドル62の径方向最外部78は凹んでいて、エッジ要素96の三角断面形状に対して相補的な形状となっているため、エッジ要素96を、シュート88によってパドル62の径方向最外部78に固定することが可能である。
【0028】
図14は、切断ヘッド12の刃部20とゲート40に近接している、図5のインペラ60のパドル62の径方向外側部77を示す詳細斜視図であり、図15は、刃部20に近接している図14のゲート40の詳細斜視図である。製品は刃部20に当たる前にゲート40を横切る。刃部20の刃先と隣接するゲート40の後行縁とによって、刃部20によって作られるスライスの厚さを決定するゲート開口部40A(図15)が画定される。ゲート40の表面は、製品がゲート40の表面を横切って刃部20に向かって移動する方向と平行な溝40Bを有している。図14および図15では、ゲート40は、その表面に逃げ部87を有するように構成されており、逃げ部87は、溝40Bよりも深く、ゲート40の後行縁と隣接しており、図14から理解されるように、パドル62内の空隙86とそれぞれ対向しており、デブリがそれらの間を通過しやすくしている。
【0029】
図16は、図5に示すインペラ60にその回転軸に沿って垂直に入り、インペラ60の回転によって発生する遠心力の影響で、下側プレート66の上面を横切って略径方向に水平移動する製品100A、100B、100Cの移動経路を例示している。図16は、パドル62の径方向最内部79から径方向内方に延びるガイド98の利点を示す。また、ガイド98は、インペラ60の回転方向(R)に延在し、そのパドル62に関連した斜面82上を横断している。図16は、切断ヘッド12の刃部(図示せず)によってスライスされるためにパドル62のパドル面64に位置決めされた製品100Aを示している。切断ヘッド12の内面は、インペラ60の外周67とほぼ一致する破線で示されている。スライス中の製品100Aが接触しているパドル62に取り付けられたガイド98および製品100Aより先行する(回転方向前方にある)パドル62に取り付けられたガイド98が協働して、次の製品100Bが、スライスされている製品100Aに近づき最終的に接触する方向を制御する。すなわち、製品100Bが製品100Aに近づく方向は、インペラ60の回転方向Rと反対方向であり、製品100Bは、製品100Aがスライスされている間、製品100Aがパドル62および切断ヘッド12の内面に押し付けられた状態で保持され安定化することを補助する。このような構成によって、製品100Bが製品100Aをパドル62または切断ヘッド12から離れる方向に押してしまう可能性の減少が図られている。同様にして製品100Aをパドル62から離れる方向に押してしまうであろう製品100Cは、ガイド98によって、製品100Aに係合しているパドル62の後に続く(回転方向後ろ側の)パドル62に向けてその進行方向が逸らされる。
【0030】
さらに、図16は、パドル62のパドル面64が円弧凸形状を有する(図13B参照)ことの効果を示している。パドル面64の円弧凸形状は、切断ヘッド12の円周に沿う刃部(図示せず)によって製品が順次スライスされている間、製品を切断ヘッド12の内面に押し付けた状態で保持する力がより一定になるように構成されている。スライス中の製品は、インペラ60の回転によって生じる遠心力を受けるが、切断ヘッド12の内面に対する法線方向の力によって切断ヘッド12の内面からの反力を受ける。このため、正確で再現性のあるスライスを生産するためには十分な力が必要とされるが、過剰な力はスライス中の製品を損傷させる可能性がある。製品の寸法はスライス中に減少するため、その重量も減少し、それに伴って遠心力も減少する。パドル面64が下側プレート66の外周67に対して一定の角度であると仮定すると、製品の寸法が減少するにつれて、パドルとその接線の接触角度も減少し、パドル62が製品に加える力が減少する。このように遠心力とパドル力が製品の寸法の減少に伴って減少すると、切断ヘッド12の内面に製品を押し付けた状態に保持するための法線方向の力(これがスライスの厚さを制御する)も製品寸法の減少につれて減少することになる。
【0031】
図17Aおよび図17Bに数学文法的に示されているように、図13Bおよび図16に示される凸状に湾曲したパドル面64を備えることにより、製品の寸法の減少にともなって、接線パドル接触の角度(F_py)を増加させ、かつ、パドル力(F_p)を増加させるように構成することが可能となる。パドル面64の湾曲度を適切に調整することにより、遠心力(F_c)が減少するのとほぼ同じ比率でパドル力(F_p)を増加させることができ、製品寸法が減少する間、法線方向の力(F_N)が実質的に一定のままとなる。この目的のために、曲率半径が切断ヘッド12に向かって次第に減少するように、パドル面64の湾曲度を意図的に変化させることも可能である。非限定的な例として、図13Bは、パドル62の径方向最内部79に隣接するパドル面64の曲率半径(r)が、パドル62の径方向最外部78に隣接するパドル面64の曲率半径(r)よりも大きいことを示している(縮尺は正しくない)。
【0032】
パドル面64を円弧曲面により構成することによる利点は、パドル面64に複数の溝102を設けて、パドル面64上の摩擦力を増加させて、スライス中にパドル面64が製品に接触することで製品が転がってしまうことを抑制することで、さらに高めることが可能である点にある。たとえば、図16では、固定の切断ヘッド12に対する時計方向へのインペラ60の図示の回転(R)が、製品100Aの反時計方向の転がりを引き起こすが、これは、製品100Aと係合しているパドル面64上の溝102(輪郭として表されている)によって抑制される。図5図7図9図13A図13B、および図14に示すように、溝102は、略垂直方向、すなわちインペラ60の軸と平行に方向付けられており、製品100Aの回転に対向する摩擦成分を発生させる。
【0033】
以上のように、本発明について、特定の実施形態に関して説明を行ったが、本発明の代替態様についても、当業者によって採用可能であることは明らかである。たとえば、スライス装置10、切断ヘッド12、インペラ60、およびこれらそれぞれの部品は、本明細書中で説明し図面に示した実施形態と外見および構造が異なっていてもよい。スライス装置10、切断ヘッド12、および/またはインペラ60の特定の部品の機能は、異なる構造を有するが機能が類似する(必ずしも同等でなくてもよい)部品により達成されてもよく、これらの製造においては、さまざまな材料を採用することができる。さらに、本発明は、特定の実施形態の1つ以上の特徴または特性を有していない、あるいは、開示された異なる実施形態の2つ以上の特徴または特性を組み合わせた、追加的または代替的な実施形態を包含する。したがって、本発明は、本明細書に記述された実施形態または図示された実施形態に限定されない。また、上記の詳細な説明およびそこで使用した語法および用語の目的は、図面に示された例示の実施形態を説明することであり、必ずしも、本発明の範囲を限定することではない。したがって、本発明の範囲は本願の特許請求の範囲のみによって限定される。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A-17B】