(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241107BHJP
A62C 2/00 20060101ALI20241107BHJP
A62C 3/07 20060101ALI20241107BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20241107BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241107BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241107BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
A62C2/00 Z
A62C3/07 Z
A62C3/16 C
H01M50/204 401F
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2023574299
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035524
(87)【国際公開番号】W WO2024062631
(87)【国際公開日】2024-03-28
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 義暢
(72)【発明者】
【氏名】上竹 悟史
(72)【発明者】
【氏名】澤田 久恵
(72)【発明者】
【氏名】青木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小林 世人
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135720(JP,A)
【文献】特開2019-64340(JP,A)
【文献】特表2014-531231(JP,A)
【文献】特開2018-133294(JP,A)
【文献】特表2020-528206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
A62C 2/00
A62C 3/07
A62C 3/16
H01M 50/204
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリを収容するバッテリケースと、
車両の前後方向に延在するプロペラシャフトと、
を備え、
前記プロペラシャフトは、プロペラシャフトケースによって覆われており、
前記プロペラシャフトケースの内部空間は、前記バッテリケースの内部空間と連通し、
前記車両には、前記プロペラシャフトケースの内部空間と連通する少なくとも1つの消火ホールが設けられている、
車両。
【請求項2】
前記プロペラシャフトケースの内部空間と、前記バッテリケースの内部空間とは、複数の連通箇所において連通しており、
前記車両は、
前記連通箇所の各々に設けられる電磁弁と、
1つまたは複数のプロセッサと、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有する制御装置と、
を備え、
前記プロセッサは、前記電磁弁の開閉動作を制御することを含む処理を実行する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記車両の衝突に関する情報に基づいて、前記電磁弁の開閉動作を制御することを含む処理を実行する、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記バッテリの温度に関する情報に基づいて、前記電磁弁の開閉動作を制御することを含む処理を実行する、
請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
前記車両には、互いに異なる位置に配置される複数の前記消火ホールが設けられている、
請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記消火ホールは、前記車両の前輪駆動系を覆う前輪駆動系ケースに設けられている第1消火ホールを含む、
請求項1または5に記載の車両。
【請求項7】
前記消火ホールは、前記車両の後輪駆動系を覆う後輪駆動系ケースに設けられている第2消火ホールを含む、
請求項1または5に記載の車両。
【請求項8】
前記消火ホールは、前記車両の側部に設けられている第3消火ホールを含む、
請求項1または5に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてモータのみを備える電気自動車等の車両には、バッテリが設けられている。衝突荷重等に起因してバッテリの火災が発生した場合、バッテリを適切に消化する必要がある。例えば、特許文献1には、車両の外部から内部に消火剤を注入してバッテリを消火するための構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリの火災時には、衝突荷重によって車両の変形が生じている場合が想定されるため、車両の外部からバッテリに消火剤を供給するための経路を確保することが困難となる場合がある。それにより、消火剤によるバッテリの消火が困難となる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、バッテリを適切に消火することが可能な車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態に係る車両は、
バッテリと、
前記バッテリを収容するバッテリケースと、
車両の前後方向に延在するプロペラシャフトと、
を備え、
前記プロペラシャフトは、プロペラシャフトケースによって覆われており、
前記プロペラシャフトケースの内部空間は、前記バッテリケースの内部空間と連通し、
前記車両には、前記プロペラシャフトケースの内部空間と連通する少なくとも1つの消火ホールが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリを適切に消火することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る車両の第1消火ホールに注入された消火剤の経路を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る車両の第2消火ホールに注入された消火剤の経路を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る車両の第3消火ホールに注入された消火剤の経路を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る制御装置が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る制御装置が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
<車両の構成>
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の構成について説明する。
【0011】
図1は、車両1の概略構成を示す模式図である。車両1は、駆動源としてモータ(具体的には、
図1の走行用モータ5)のみを備える電気自動車である。ただし、車両1は、駆動源としてモータおよびエンジンを備えるハイブリッド車両等の電気自動車以外の車両であってもよい。
図1に示されるように、車両1は、左右一対の前輪2と、左右一対の後輪3と、バッテリ4と、走行用モータ5と、前輪駆動系6と、後輪駆動系7と、プロペラシャフト8とを備える。なお、
図1および後述する
図4、
図5では、理解を容易にするために、車両1の輪郭が一点鎖線で示されている。
【0012】
バッテリ4は、走行用モータ5へ供給される電力を蓄電する。バッテリ4として、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池または鉛蓄電池が用いられる。ただし、バッテリ4として、これら以外の電池が用いられてもよい。バッテリ4は、車両1の下方に配置される。具体的には、バッテリ4は、プロペラシャフト8よりも下方に配置される。
【0013】
走行用モータ5は、車両1の駆動輪である前輪2および後輪3を駆動するための動力を出力する。走行用モータ5は、例えば、三相交流モータであり、不図示のインバータを介してバッテリ4と接続されている。走行用モータ5には、バッテリ4から電力が供給される。走行用モータ5は、バッテリ4から供給される電力を用いて駆動される。
【0014】
前輪駆動系6は、走行用モータ5から出力される動力を前輪2に伝達する。前輪駆動系6は走行用モータ5と接続されており、走行用モータ5から前輪駆動系6に直接的に動力が伝達される。前輪駆動系6は、例えば、フロントディファレンシャル装置6aを含む。なお、前輪駆動系6は、ギアおよびシャフト等のフロントディファレンシャル装置6a以外の不図示の部材を含む。フロントディファレンシャル装置6aは、駆動シャフトを介して各前輪2とそれぞれ連結されている。前輪駆動系6に伝達された動力は、フロントディファレンシャル装置6aによって、各前輪2へ分配して伝達される。
【0015】
後輪駆動系7は、走行用モータ5から出力される動力を後輪3に伝達する。後輪駆動系7には、後述するように、前輪駆動系6からプロペラシャフト8を介して動力が伝達される。後輪駆動系7は、例えば、リヤディファレンシャル装置7aを含む。なお、後輪駆動系7は、ギアおよびシャフト等のリヤディファレンシャル装置7a以外の不図示の部材を含む。リヤディファレンシャル装置7aは、駆動シャフトを介して各後輪3とそれぞれ連結されている。後輪駆動系7に伝達された動力は、リヤディファレンシャル装置7aによって、各後輪3へ分配して伝達される。
【0016】
プロペラシャフト8は、前輪駆動系6と後輪駆動系7との間で動力を伝達する。プロペラシャフト8は、車両1の下方において、車両1の前後方向に延在する。プロペラシャフト8の前端が、前輪駆動系6のギアと接続されている。プロペラシャフト8の後端が、後輪駆動系7のギアと接続されている。前輪駆動系6からプロペラシャフト8に伝達された動力は、プロペラシャフト8を介して後輪駆動系7に伝達される。
【0017】
図1に示されるように、車両1は、バッテリケース11と、前輪駆動系ケース12と、後輪駆動系ケース13と、プロペラシャフトケース14とを備える。
【0018】
バッテリケース11は、バッテリ4を収容する。バッテリケース11は、車両1の下方に配置され、バッテリ4の全面を覆う。
【0019】
前輪駆動系ケース12は、前輪駆動系6を覆う。各前輪2と接続される駆動シャフトは、前輪駆動系ケース12から左右に突出している。なお、
図1の例では、走行用モータ5が前輪駆動系ケース12に覆われているが、走行用モータ5を覆うケースが前輪駆動系ケース12と異なるケースであってもよい。
【0020】
後輪駆動系ケース13は、後輪駆動系7を覆う。各後輪3と接続される駆動シャフトは、後輪駆動系ケース13から左右に突出している。
【0021】
プロペラシャフトケース14は、プロペラシャフト8を覆う。プロペラシャフトケース14は、バッテリケース11よりも上方において、車両1の前後方向に延在する。プロペラシャフトケース14は、筒形状を有しており、前端および後端に開口を有する。プロペラシャフト8は、プロペラシャフトケース14から前後に突出している。
【0022】
プロペラシャフトケース14の前端は、前輪駆動系ケース12の後部と接続されている。前輪駆動系ケース12の内部空間と、プロペラシャフトケース14の内部空間とは、プロペラシャフトケース14の前端の開口を介して互いに連通している。
【0023】
プロペラシャフトケース14の後端は、後輪駆動系ケース13の前部と接続されている。後輪駆動系ケース13の内部空間と、プロペラシャフトケース14の内部空間とは、プロペラシャフトケース14の後端の開口を介して互いに連通している。
【0024】
プロペラシャフトケース14の下部は、バッテリケース11の上部と接続されている。
図1の例では、バッテリケース11の上部のうち前端から後端に亘る部分が、プロペラシャフトケース14と接続されている。プロペラシャフトケース14の内部空間と、バッテリケース11の内部空間とは、電磁弁41を介して互いに連通している。
図1の例では、車両1の前後方向に間隔を空けて並ぶ3つの電磁弁41が示されている。ただし、電磁弁41の数および配置は、
図1の例に限定されない。各電磁弁41の設置位置が、プロペラシャフトケース14の内部空間と、バッテリケース11の内部空間との連通箇所である。電磁弁41は、電力を用いて駆動され、開閉可能である。
【0025】
図2は、
図1のA-A断面を示す断面図である。
図1および
図2に示されるように、車両1には、バッテリ4の火災時に、車両1の外部から消火剤を注入するための消火ホールとして、第1消火ホール21、第2消火ホール22および第3消火ホール23が設けられている。それにより、バッテリ4を適切に消火することが実現される。ただし、消火ホールの数および配置は、
図1および
図2に示される例に限定されない。例えば、消火ホールの数は1つであってもよく、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。また、例えば、消火ホールは、第1消火ホール21、第2消火ホール22および第3消火ホール23と異なる位置に設けられてもよい。
【0026】
図1に示されるように、第1消火ホール21は、前輪駆動系ケース12に設けられている。第1消火ホール21は、前輪駆動系ケース12の内部空間と外部空間とを連通する開口である。
図1の例では、第1消火ホール21は、前輪駆動系ケース12の前部に設けられている。ただし、前輪駆動系ケース12における第1消火ホール21の配置は、
図1の例に限定されない。
【0027】
第1消火ホール21には、逆止弁31が設けられている。逆止弁31は、前輪駆動系ケース12の外部空間から内部空間への第1消火ホール21を介した流体の流れを許容し、前輪駆動系ケース12の内部空間から外部空間への第1消火ホール21を介した流体の流れを規制する。
【0028】
図1に示されるように、第2消火ホール22は、後輪駆動系ケース13に設けられている。第2消火ホール22は、後輪駆動系ケース13の内部空間と外部空間とを連通する開口である。
図1の例では、第2消火ホール22は、後輪駆動系ケース13の後部に設けられている。ただし、後輪駆動系ケース13における第2消火ホール22の配置は、
図1の例に限定されない。
【0029】
第2消火ホール22には、逆止弁32が設けられている。逆止弁32は、後輪駆動系ケース13の外部空間から内部空間への第2消火ホール22を介した流体の流れを許容し、後輪駆動系ケース13の内部空間から外部空間への第2消火ホール22を介した流体の流れを規制する。
【0030】
図2に示されるように、第3消火ホール23は、車両1の側部(
図2の例では、左側部1a)に設けられている。具体的には、第3消火ホール23は、車両1の車体の左側部1aに露出して設けられている。バッテリケース11およびプロペラシャフトケース14は、車室の底部42よりも下方に配置される。プロペラシャフトケース14と第3消火ホール23とは、配管43を介して接続されている。配管43は、プロペラシャフトケース14の側部から側方に延在する。第3消火ホール23は、配管43の左側部1a側の開口である。プロペラシャフトケース14の内部空間と、第3消火ホール23とは、配管43を介して互いに連通している。
【0031】
プロペラシャフトケース14と配管43との接続箇所には、逆止弁33が設けられている。逆止弁33は、配管43の内部空間からプロペラシャフトケース14の内部空間への流体の流れを許容し、プロペラシャフトケース14の内部空間から配管43の内部空間への流体の流れを規制する。
【0032】
上記のように、第1消火ホール21、第2消火ホール22および第3消火ホール23は、プロペラシャフトケース14の内部空間とそれぞれ連通する。そして、プロペラシャフトケース14の内部空間は、バッテリケース11の内部空間と連通する。ゆえに、第1消火ホール21、第2消火ホール22および第3消火ホール23は、プロペラシャフトケース14の内部空間を介してバッテリケース11の内部空間と連通する。それにより、後述するように、各消火ホール21、22、23に注入された消火剤をバッテリケース11の内部空間に供給することが実現される。
【0033】
図1に示されるように、車両1は、温度センサ51と、荷重センサ52と、制御装置61とを備える。
【0034】
温度センサ51は、バッテリ4の温度を検出する。
図1の例では、車両1の前後方向に間隔を空けて並ぶ3つの温度センサ51が示されている。ただし、温度センサ51の数および配置は、
図1の例に限定されない。各温度センサ51は、設置位置におけるバッテリ4の温度を検出する。
【0035】
荷重センサ52は、車両1に入力される衝突荷重を検出する。
図1の例では、車両1の前端および後端に設けられる2つの荷重センサ52が示されている。ただし、荷重センサ52の数および配置は、
図1の例に限定されない。各荷重センサ52は、設置位置における衝突荷重を検出する。
【0036】
制御装置61は、1つまたは複数のプロセッサ61aと、プロセッサ61aに接続される1つまたは複数のメモリ61bと、を有する。プロセッサ61aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ61bは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0037】
制御装置61は、電磁弁41、温度センサ51および荷重センサ52等の車両1内の各装置と通信を行う。制御装置61と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0038】
図3は、制御装置61の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、
図3に示されるように、制御装置61は、取得部611と、制御部612とを有する。なお、取得部611または制御部612により行われる以下で説明する処理を含む各種処理は、プロセッサ61aによって実行され得る。詳細には、メモリ61bに記憶されているプログラムをプロセッサ61aが実行することにより、各種処理が実行される。
【0039】
取得部611は、各種情報を取得し、制御部612へ出力する。例えば、取得部611は、温度センサ51および荷重センサ52から情報を取得する。
【0040】
制御部612は、電磁弁41の開閉動作を制御する。具体的には、制御部612は、各電磁弁41の開閉動作をそれぞれ独立して制御する。電磁弁41の開状態は、当該電磁弁41の設置位置において、プロペラシャフトケース14の内部空間と、バッテリケース11の内部空間とが当該電磁弁41により遮られていない状態である。電磁弁41の閉状態は、当該電磁弁41の設置位置において、プロペラシャフトケース14の内部空間と、バッテリケース11の内部空間とが当該電磁弁41により遮られている状態である。
【0041】
<車両の動作>
続いて、
図4~
図8を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の動作について説明する。
【0042】
後述するように、制御装置61の制御部612は、特定の条件が満たされる場合に、一部の電磁弁41のみを開状態にし、特定の条件が満たされない場合には、全ての電磁弁41を開状態にする。ただし、制御部612は、特定の条件が満たされない場合に、全ての電磁弁41を閉状態にしてもよい。また、制御部612は、特定の条件が満たされるか否かによらず、全ての電磁弁41を開状態にしてもよい。
【0043】
以下、
図4~
図6を参照して、各消火ホール21、22、23に注入された消火剤の経路について説明する。
図4~
図6では、破線矢印によって、消火剤の経路が示されている。なお、
図4~
図6では、全ての電磁弁41が開状態になっている場合が示されている。
【0044】
図4は、第1消火ホール21に注入された消火剤の経路を示す模式図である。第1消火ホール21は、前輪駆動系ケース12の内部空間、および、プロペラシャフトケース14の内部空間を介して、バッテリケース11の内部空間と連通している。第1消火ホール21に注入された消火剤は、前輪駆動系ケース12の内部空間を通って、プロペラシャフトケース14の内部空間に送られる。そして、プロペラシャフトケース14の内部空間に送られた消火剤は、プロペラシャフトケース14の内部空間を通って、電磁弁41の設置位置である連通箇所を介して、バッテリケース11の内部空間に送られる。
【0045】
図5は、第2消火ホール22に注入された消火剤の経路を示す模式図である。第2消火ホール22は、後輪駆動系ケース13の内部空間、および、プロペラシャフトケース14の内部空間を介して、バッテリケース11の内部空間と連通している。第2消火ホール22に注入された消火剤は、後輪駆動系ケース13の内部空間を通って、プロペラシャフトケース14の内部空間に送られる。そして、プロペラシャフトケース14の内部空間に送られた消火剤は、プロペラシャフトケース14の内部空間を通って、電磁弁41の設置位置である連通箇所を介して、バッテリケース11の内部空間に送られる。
【0046】
図6は、第3消火ホール23に注入された消火剤の経路を示す模式図である。第3消火ホール23は、配管43、および、プロペラシャフトケース14の内部空間を介して、バッテリケース11の内部空間と連通している。第3消火ホール23に注入された消火剤は、配管43を通って、プロペラシャフトケース14の内部空間に送られる。そして、プロペラシャフトケース14の内部空間に送られた消火剤は、プロペラシャフトケース14の内部空間を通って、電磁弁41の設置位置である連通箇所を介して、バッテリケース11の内部空間に送られる。
【0047】
以上説明したように、車両1では、各消火ホール21、22、23に注入された消火剤は、プロペラシャフトケース14の内部空間を通って、バッテリケース11の内部空間に送られる。このように、車両1では、車両1の外部からバッテリ4に消火剤を供給するための経路として、プロペラシャフトケース14の内部空間が利用される。ここで、バッテリ4の火災時には、衝突荷重によって車両1の変形が生じている場合が想定される。しかしながら、プロペラシャフトケース14の周囲にはフレーム部材が配置されており、衝突荷重はプロペラシャフトケース14まで伝達しづらい。ゆえに、プロペラシャフトケース14の変形は生じにくくなっている。よって、プロペラシャフトケース14の内部空間を消火剤の経路として利用することによって、各消火ホール21、22、23に注入された消火剤をバッテリケース11の内部空間に適切に供給することができるので、バッテリ4を適切に消火することができる。
【0048】
以下、
図7および
図8を参照して、制御装置61の制御部612が行う電磁弁41の開閉制御に関する処理例として、第1の処理例および第2の処理例を順に説明する。
【0049】
図7は、制御装置61が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。
図7に示される制御フローは、例えば、予め設定された時間間隔で繰り返される。
【0050】
図7に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、制御部612は、車両1の衝突が発生したか否かを判定する。ステップS101の判定は、例えば、荷重センサ52の検出結果に基づいて行われる。例えば、制御部612は、車両1に入力された衝突荷重が基準値より大きい場合に、車両1の衝突が発生したと判定する。
【0051】
車両1の衝突が発生していないと判定された場合(ステップS101でNOと判定された場合)、ステップS102に進む。ステップS102において、制御部612は、全ての電磁弁41を開状態にする。ステップS102の次に、
図7に示される制御フローは終了する。
【0052】
一方、車両1の衝突が発生したと判定された場合(ステップS101でYESと判定された場合)、ステップS103に進む。ステップS103において、制御部612は、衝突箇所に対応する電磁弁41のみを開状態にし、その他の電磁弁41を閉状態にする。ステップS103の次に、
図7に示される制御フローは終了する。衝突箇所は、車両1において衝突が発生した箇所を意味する。
【0053】
ステップS103では、例えば、制御部612は、荷重センサ52の検出結果に基づいて衝突箇所を特定する。例えば、前側の荷重センサ52により検出された衝突荷重が基準値より大きい場合、制御部612は、衝突箇所が車両1の前部であると特定する。この場合、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、前側の電磁弁41のみを開状態にし、中央および後側の電磁弁41を閉状態にする。ただし、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、前側の電磁弁41に加えて中央の電磁弁41を開状態にしてもよい。
【0054】
一方、後側の荷重センサ52により検出された衝突荷重が基準値より大きい場合、制御部612は、衝突箇所が車両1の後部であると特定する。この場合、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、後側の電磁弁41のみを開状態にし、中央および前側の電磁弁41を閉状態にする。ただし、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、後側の電磁弁41に加えて中央の電磁弁41を開状態にしてもよい。
【0055】
以上説明したように、第1の処理例では、制御部612は、車両1の衝突に関する情報(上記の例では、荷重センサ52の検出結果)に基づいて、電磁弁41の開閉動作を制御する。それにより、衝突箇所に近い電磁弁41のみを開くことによって、バッテリ4のうち衝突荷重によって火災が発生している箇所、または、火災が発生する可能性が高い箇所に対して、消火剤を集中的に供給することができる。ゆえに、バッテリ4をより適切に消化することができる。
【0056】
図8は、制御装置61が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。
図8に示される制御フローは、例えば、予め設定された時間間隔で繰り返される。
【0057】
図8に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS201において、制御部612は、バッテリ4の温度上昇が発生したか否かを判定する。バッテリ4の温度上昇は、バッテリ4を消化する必要性が生じる程度に大きな温度の上昇を意味する。ステップS201の判定は、例えば、温度センサ51の検出結果に基づいて行われる。例えば、制御部612は、いずれかの温度センサ51により検出されたバッテリ4の温度が基準値より高い場合に、バッテリ4の温度上昇が発生したと判定する。
【0058】
バッテリ4の温度上昇が発生していないと判定された場合(ステップS201でNOと判定された場合)、ステップS202に進む。ステップS202において、制御部612は、全ての電磁弁41を開状態にする。ステップS202の次に、
図8に示される制御フローは終了する。
【0059】
一方、バッテリ4の温度上昇が発生したと判定された場合(ステップS201でYESと判定された場合)、ステップS203に進む。ステップS203において、制御部612は、温度上昇箇所に対応する電磁弁41のみを開状態にし、その他の電磁弁41を閉状態にする。ステップS203の次に、
図8に示される制御フローは終了する。温度上昇箇所は、バッテリ4において温度上昇が発生した箇所を意味する。
【0060】
ステップS203では、例えば、制御部612は、温度センサ51の検出結果に基づいて温度上昇箇所を特定する。例えば、前側の温度センサ51により検出された温度が基準値より高い場合、制御部612は、温度上昇箇所がバッテリ4の前部であると特定する。この場合、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、前側の電磁弁41のみを開状態にし、中央および後側の電磁弁41を閉状態にする。ただし、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、前側の電磁弁41に加えて中央の電磁弁41を開状態にしてもよい。
【0061】
一方、後側の温度センサ51により検出された温度が基準値より高い場合、制御部612は、温度上昇箇所がバッテリ4の後部であると特定する。この場合、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、後側の電磁弁41のみを開状態にし、中央および前側の電磁弁41を閉状態にする。ただし、制御部612は、3つの電磁弁41のうち、後側の電磁弁41に加えて中央の電磁弁41を開状態にしてもよい。
【0062】
以上説明したように、第2の処理例では、制御部612は、バッテリ4の温度に関する情報(上記の例では、温度センサ51の検出結果)に基づいて、電磁弁41の開閉動作を制御する。それにより、温度上昇箇所に近い電磁弁41のみを開くことによって、バッテリ4のうち火災が発生している箇所、または、火災が発生する可能性が高い箇所に対して、消火剤を集中的に供給することができる。ゆえに、バッテリ4をより適切に消化することができる。
【0063】
上記では、車両1の衝突に関する情報に基づいて電磁弁41の開閉動作を制御する第1の処理例と、バッテリ4の温度に関する情報に基づいて電磁弁41の開閉動作を制御する第2の処理例とをそれぞれ説明した。ただし、制御部612は、車両1の衝突に関する情報、および、バッテリ4の温度に関する情報の双方を加味して、電磁弁41の開閉動作を制御してもよい。
【0064】
<車両の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る車両1の効果について説明する。
【0065】
本実施形態に係る車両1は、バッテリ4と、バッテリ4を収容するバッテリケース11と、車両1の前後方向に延在するプロペラシャフト8と、を備える。そして、プロペラシャフト8は、プロペラシャフトケース14によって覆われており、プロペラシャフトケース14の内部空間は、バッテリケース11の内部空間と連通し、車両1には、プロペラシャフトケース14の内部空間と連通する少なくとも1つの消火ホール(上記の例では、第1消火ホール21、第2消火ホール22および第3消火ホール23)が設けられている。それにより、消火ホールに注入された消火剤を、プロペラシャフトケース14の内部空間を通して、バッテリケース11の内部空間に送ることができる。このように、車両1では、車両1の外部からバッテリ4に消火剤を供給するための経路として、衝突荷重による変形が生じにくいプロペラシャフトケース14の内部空間が利用される。ゆえに、消火ホールに注入された消火剤をバッテリケース11の内部空間に適切に供給することができるので、バッテリ4を適切に消火することができる。さらに、プロペラシャフトケース14を消火剤の経路として有効利用することによって、追加の部材の増加を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態に係る車両1では、プロペラシャフトケース14の内部空間と、バッテリケース11の内部空間とは、複数の連通箇所において連通しており、車両1は、当該連通箇所の各々に設けられる電磁弁41と、1つまたは複数のプロセッサ61aと、プロセッサ61aに接続される1つまたは複数のメモリ61bと、を有する制御装置61と、を備え、プロセッサ61aは、電磁弁41の開閉動作を制御することを含む処理を実行することが好ましい。それにより、バッテリ4のうち火災が発生している箇所に対して、消火剤を集中的に供給することができる。ゆえに、バッテリ4をより適切に消化することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る車両1では、プロセッサ61aは、車両1の衝突に関する情報に基づいて、電磁弁41の開閉動作を制御することを含む処理を実行することが好ましい。それにより、バッテリ4のうち衝突荷重に起因して火災が発生している箇所、または、火災が発生する可能性が高い箇所に対して、消火剤を集中的に供給することが適切に実現される。ゆえに、バッテリ4をより適切に消化することが適切に実現される。
【0068】
また、本実施形態に係る車両1では、プロセッサ61aは、バッテリ4の温度に関する情報に基づいて、電磁弁41の開閉動作を制御することを含む処理を実行することが好ましい。それにより、バッテリ4のうち火災が発生している高温の箇所、または、火災が発生する可能性が高い箇所に対して、消火剤を集中的に供給することが適切に実現される。ゆえに、バッテリ4をより適切に消化することが適切に実現される。
【0069】
また、本実施形態に係る車両1では、車両1には、互いに異なる位置に配置される複数の消火ホール(上記の例では、第1消火ホール21、第2消火ホール22および第3消火ホール23)が設けられていることが好ましい。それにより、衝突荷重によって車両1の変形が生じて一部の消火ホールを利用できない場合であっても、他の消火ホールを利用して消火剤をバッテリケース11の内部空間に供給することができる。例えば、車両1の前部が衝突箇所であり、第1消火ホール21を利用できない場合には、第2消火ホール22または第3消火ホール23を利用できる。また、例えば、車両1の後部が衝突箇所であり、第2消火ホール22を利用できない場合には、第1消火ホール21または第3消火ホール23を利用できる。また、例えば、車両1の側部が衝突箇所であり、第3消火ホール23を利用できない場合には、第1消火ホール21または第2消火ホール22を利用できる。
【0070】
また、本実施形態に係る車両1では、消火ホールは、車両1の前輪駆動系6を覆う前輪駆動系ケース12に設けられている第1消火ホール21を含むことが好ましい。それにより、バッテリ4の火災時において、車両1の前方から消火剤を注入することができる。ゆえに、車両1の後部または側部が衝突箇所である場合において、消火剤をバッテリケース11の内部空間に適切に供給することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る車両1では、消火ホールは、車両1の後輪駆動系7を覆う後輪駆動系ケース13に設けられている第2消火ホール22を含むことが好ましい。それにより、バッテリ4の火災時において、車両1の後方から消火剤を注入することができる。ゆえに、車両1の前部または側部が衝突箇所である場合において、消火剤をバッテリケース11の内部空間に適切に供給することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る車両1では、消火ホールは、車両1の側部(上記の例では、左側部1a)に設けられている第3消火ホール23を含むことが好ましい。それにより、バッテリ4の火災時において、車両1の側方から消火剤を注入することができる。ゆえに、車両1の前部または後部が衝突箇所である場合において、消火剤をバッテリケース11の内部空間に適切に供給することができる。
【0073】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0074】
例えば、上記では、
図1および
図2を参照して車両1の概略構成について説明した。ただし、上記の例に対して、車両1の構成要素の追加、削除または変更等が適宜行われてもよい。例えば、上記の例では、走行用モータ5が車両1の前部に配置されているが、走行用モータ5は車両1の後部に配置されていてもよい。また、例えば、
図2の例では、プロペラシャフトケース14の断面形状が台形であるが、プロペラシャフトケース14の断面形状は円形状または楕円形状等であってもよい。
【0075】
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 車両
1a 左側部(側部)
2 前輪
3 後輪
4 バッテリ
5 走行用モータ
6 前輪駆動系
6a フロントディファレンシャル装置
7 後輪駆動系
7a リヤディファレンシャル装置
8 プロペラシャフト
11 バッテリケース
12 前輪駆動系ケース
13 後輪駆動系ケース
14 プロペラシャフトケース
21 第1消火ホール(消火ホール)
22 第2消火ホール(消火ホール)
23 第3消火ホール(消火ホール)
31 逆止弁
32 逆止弁
33 逆止弁
41 電磁弁
42 底部
43 配管
51 温度センサ
52 荷重センサ
61 制御装置
61a プロセッサ
61b メモリ
611 取得部
612 制御部