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特許7583963付加製造に使用可能な水溶性支持材料製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】付加製造に使用可能な水溶性支持材料製剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20241107BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20241107BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241107BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241107BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20241107BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20241107BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20241107BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20241107BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/112
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y40/20
B29C64/314
C08L67/04
C08L71/02
C08K5/10
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023580796
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 IL2022050705
(87)【国際公開番号】W WO2023275877
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2024-08-21
(31)【優先権主張番号】63/216,684
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノ、レフ
(72)【発明者】
【氏名】ペリ、ダニ
(72)【発明者】
【氏名】ザドック、ウーリ
(72)【発明者】
【氏名】キメルブラット、ジャンキエル
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/143305(WO,A1)
【文献】特開2018-122499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/40
B29C 64/112
B33Y 70/00
B33Y 10/00
B33Y 40/20
B29C 64/314
C08L 67/04
C08L 71/02
C08K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体の付加製造に用いるための支持材料製剤であって、
親水性硬化性単官能材料、
00グラム/モル未満の分子量を有するポリオール、及び
400グラム/モル超又は500グラム/モル超の平均分子量を有するポリエステル材料、を含
前記ポリエステル材料の量が、前記支持材料製剤の総重量に対して10~20重量%の範囲内である、
支持材料製剤。
【請求項2】
前記ポリエステル材料が、室温で液体である、又は室温で前記支持材料製剤に可溶性である、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項3】
前記ポリエステル材料が、ポリカプロラクトンである、又はポリカプロラクトンを含む、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項4】
前記ポリオールが、分岐鎖状ポリオールである、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項5】
前記ポリオールの前記ポリエステル材料に対する重量比が、4:1以下又は3:1以下である、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項6】
前記ポリオール対前記ポリエステル材料の重量比が、:1~:1の範囲内である、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項7】
前記ポリオールの量が、前記支持材料製剤の総重量に対して30~60、又は30~50、又は35~45重量%の範囲内である、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項8】
前記ポリオールが、分岐鎖状のポリ(アルキレングリコール)ある、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項9】
前記親水性硬化性単官能材料が、光硬化性材料である、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項10】
光重合開始剤をさらに含む、
請求項9に記載の支持材料製剤。
【請求項11】
前記光重合開始剤の量が、前記支持材料製剤の総重量に対して0.5~3重量%の範囲内である、
請求項10に記載の支持材料製剤。
【請求項12】
表面活性剤をさらに含む、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項13】
重合禁止剤をさらに含む、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項14】
室温で静水に浸漬させた場合に溶解可能である固化された材料を提供することを特徴とする、
請求項1記載の支持材料製剤。
【請求項15】
3次元物体の製造方法であって、
前記物体の形状に対応する3次元印刷データを受け取ることと、
前記印刷データに従って、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッドを用いて、未硬化構築材料の液滴を、受け媒体上に層状に吐出することと、を含み、
前記未硬化構築材料は、少なくとも1つのモデル材料製剤及び少なくとも1つの支持材料製剤を含み、
前記支持材料製剤は、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の製剤である、
製造方法。
【請求項16】
前記吐出することに続いて、前記層を硬化条件に曝露し、それによって固化されたモデル材料及び固化された支持材料を提供することをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固化された支持材料を除去することをさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記固化された支持材料を除去することが、静水中に浸漬することによるものである、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記固化された支持材料を除去することが、循環水中に浸漬することによるものである、
請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記固化された支持材料を除去することが、水浴中に浸漬し、前記水浴に超音波を適用することによるものである、
請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記固化された支持材料を除去することが、洗剤を含まない水を用いた食器洗浄によるものである、
請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、全内容が参照により本明細書に援用される2021年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/216,684号の優先権の利益を請求するものである。
【0002】
本出願はまた、全内容が参照により本明細書に援用される2021年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/216,702号にも関する。
【0003】
本出願は、2021年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/216,702号の優先権の利益を請求する、代理人整理番号91989である「DISPOSAL OF WATER SOLUBLE WASTE IN ADDITIVE MANUFACTURING」と題するPCT国際特許出願と共に共出願(co-filed)され、その内容はすべて、その全体が本明細書に完全に記載されているかのように参照により援用される。
【0004】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造(AM、Additive Manufacturing、アディティブ・マニュファクチャリング、積層造形)に関し、より詳細には、限定されるものではないが、3次元インクジェット印刷などの付加製造において水溶性支持材料を形成する硬化性製剤、及びそれを利用した付加製造の方法に関する。
【背景技術】
【0005】
付加製造とは、一般に、3次元(3D、three-Dimensional)の物体を、前記物体のコンピュータモデルを利用して製造するプロセスである。このようなプロセスは、視覚化、デモンストレーション、及び機械的プロトタイピングを目的とした設計関連分野、さらには迅速生産(RM、Rapid Manufacturing、)など、様々な分野で用いられている。
【0006】
AMシステムの基本的な操作は、3次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすること、その結果を2次元の位置データに変換すること、及び前記データを、3次元構造を層ごとに製造する制御装置に供給することから成る。
【0007】
様々なAM技術が存在するが、中でも特には、ステレオリソグラフィ、デジタルライトプロセッシング(DLP、Digital Light Processing)、及び3次元(3D)印刷、特に3Dインクジェット印刷がある。このような技術は一般に、1又は複数の構築材料、典型的には光重合性(光硬化性)材料の層ごとの堆積及び固体化によって行われる。
【0008】
例えば、3次元印刷プロセスでは、構築材料が一組のノズルを有する印刷ヘッドから吐出されて、支持構造部上に層を堆積させる。前記構築材料に応じて、前記層はその後、所望に応じて適切なデバイスを用いて、固体化、固化、又は硬化され得る。
【0009】
様々な3次元印刷技術が存在し、例えば、いずれも同一譲受人であり、その内容が参照により本明細書に援用される米国特許第6,259,962号、同第6,569,373号、同第6,658,314号、同第6,850,334号、同第7,183,335号、同第7,209,797号、同第7,225,045号、同第7,300,619号、同第7,479,510号、同第7,500,846号、同第7,962,237号、及び同第9,031,680号に開示されている。
【0010】
付加製造に利用される印刷システムは、受け媒体(receiving medium)及び1又は複数の印刷ヘッドを含み得る。前記受け媒体は、例えば、前記印刷ヘッドから吐出された材料を保持するための水平面を含み得る製造トレイであり得る。前記印刷ヘッドは、例えば、前記印刷ヘッドの長手方向軸線に沿って1又は複数の列のアレイとして配列された複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドであり得る。前記印刷ヘッドは、その長手方向軸線が割り出し方向に対して実質的に平行となるように配置され得る。前記印刷システムは、予め定められたスキャンプラン(例:Stereo Lithography(STL)フォーマットに変換され、コントローラ中にプログラムされたCAD構成)に従った前記印刷ヘッドの移動を含む印刷プロセスを制御するためのマイクロプロセッサなどのコントローラをさらに含み得る。前記印刷ヘッドは、複数の噴射ノズルを含み得る。前記噴射ノズルは、材料を前記受け媒体上に吐出して、3D物体の断面を表す層を作り出す。
【0011】
前記印刷ヘッドに加えて、前記吐出された構築材料を硬化するために、硬化エネルギー源が存在し得る。前記硬化エネルギーは、典型的には、放射線、例えばUV放射線である。
【0012】
加えて、前記印刷システムは、堆積及び少なくとも部分的な固体化後の各層の高さを、続いての層の堆積の前に平坦化及び/又は確立するための平坦化デバイスを含み得る。
【0013】
前記構築材料は、モデル材料及び支持材料を含んでよく、これらは、前記物体、及び前記物体が構築されるに従って前記物体を支持する一時的支持構造体をそれぞれ形成する。
【0014】
前記モデル材料(1又は複数の材料を含む場合がある)は、所望の物体を製造するために堆積され、前記支持材料(1又は複数の材料を含む場合がある)は、モデル材料要素と共に又はモデル材料要素なしで用いられて、構築中に前記物体の特定の領域のための支持構造体を提供し、例えば物体が湾曲形状、負の角度、ボイドなどのオーバーハングの特徴又は形状を含む場合に、続いての物体層の適切な垂直方向の配置を確保する。
【0015】
前記モデル材料及び支持材料はいずれも、好ましくは、それらが吐出される作業温度で液体であり、その後、典型的には硬化条件への、典型的には硬化エネルギー(例:UV硬化)への曝露後に固化又は固体化して、必要とされる層形状を形成する。印刷の完了後、支持構造体が除去されて、製造された3D物体の最終形状が現れる。
【0016】
支持材料を除去する既知の方法としては、典型的には工具又はウォータージェットによって適用される機械的衝撃、さらには加熱あり又はなしでの溶媒への溶解などの化学的方法が挙げられる。前記機械的方法は、大きな労力を要するものであり、小さい複雑な部品には適さないことが多い。
【0017】
前記支持材料を溶解するために、前記製造された物体は、多くの場合、水中又は前記支持材料を溶解することができる溶媒中に浸漬される。前記支持材料の溶解に利用される前記溶液は、本明細書及び本技術分野において、「洗浄液」とも称される。しかし、多くの場合、支持材除去プロセスには、有害物質、手作業及び/又は熟練した人員を必要とする特殊な装置、保護服、並びに高コストな廃棄物処理が伴い得る。加えて、前記溶解プロセスは、通常、拡散動力学によって制限され、特に前記支持構造体が大きくかさ高い場合、非常に長い時間を必要とし得る。
【0018】
さらに、物体表面にある微量の「混合層」を除去するために、後処理が必要となる場合がある。「混合層」の用語は、製造されている前記物体の表面上の前記2つの材料間の界面において、モデル材料と支持材料とが両者の間の前記界面で互いに混合することによって形成される、モデル材料と支持材料とが混合、固化された残留層を意味する。物体の表面におけるこのような固化された混合物(「混合層」)は、比較的非反射性の外観を有することがあり、一般に「マット」と称されるが、一方、これと比較して、このような固化された混合物のない表面(例:上に支持材料製剤が適用されなかった表面)は、一般に「光沢」と称される。
【0019】
支持材料を除去するための機械的方法及び溶解方法はいずれも、使い易さ、清潔さ、及び環境安全性が主として考慮されるオフィス環境での使用には特に問題がある。
【0020】
3D印刷用の水溶性材料は、これまでに報告されている。例えば、米国特許第6,228,923号には、選択された材料のリボンをプレート上に高圧高温で押し出すことを含む3D構築プロセスにおける支持材料として使用するための水溶性熱可塑性ポリマー、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)が記載されている。
【0021】
米国特許第7,255,825号には、可融性結晶水和物を含む含水支持材料が記載されている。
【0022】
3D物体を構築する際の支持材に適する組成物は、例えば、すべて本譲受人に譲渡された米国特許第7,479,510号、同第7,183,335号、及び同第6,569,373号に記載されている。一般に、これらの特許に開示されている前記組成物は、少なくとも1つのUV硬化性(反応性)成分、例えばアクリル成分、少なくとも1つの非UV硬化性成分、例えばポリオール又はグリコール成分、及び光重合開始剤を含む。照射後、これらの組成物は、水、アルカリ性若しくは酸性溶液、又は洗浄剤水溶液に暴露すると溶解することができる半固体又はゲル状の物質を提供する。このような可溶性支持材料を用いる3D印刷法は、「可溶性支持材技術(Soluble Support Technology)」又はSSTとしても知られており、前記支持材料製剤は、多くの場合、「可溶性支持材料」又は「可溶性支持材料製剤」と称される。可溶性支持材料は、有益なことには、比較的短時間で除去されるように充分な水溶性、すなわち有害ではない洗浄液への充分な溶解性を特徴とするが、同時に、付加製造プロセスの過程で印刷された物体を支持するのに充分な機械的特性を呈するべきである。
【0023】
3Dインクジェット印刷システムで利用される市販の印刷ヘッドのほとんどに適合させるために、未硬化の構築材料は、以下の特性:作業(例:噴射)温度での比較的低い粘度(例:150cpsまで、又は100cpsまで、又は50cpsまで、又は35cpsまで、好ましくは8~25cpsのブルックフィールド粘度);約25~約55ダイン/cm、好ましくは約25~約40ダイン/cmの表面張力;並びにニュートン液体挙動、及び硬化条件への曝露時に、噴射された層の1分間以内、好ましくは20秒間以内の高速固体化を可能にする選択された硬化条件に対する高い反応性、を特徴とするべきである。追加の要件としては、低沸点溶媒(溶媒が用いられる場合)、例えば沸点が200℃未満又は190℃未満を特徴とするが、作業(例:噴射)温度での蒸発速度が低いことを好ましくは特徴とする低沸点溶媒が挙げられ、及び前記構築材料が固体粒子を含む場合は、これらは、2ミクロン以下の平均粒径を特徴とすべきである。
【0024】
さらなる背景技術には、すべて本譲受人によるものである国際公開第2017/050604号、国際公開第2018/055522号、及び国際公開第2018/055521号が含まれる。
【0025】
さらなる背景技術には、公開番号2003/0207959を有する米国特許出願、及び公開番号として国際公開第2016/142947号、国際公開第2017/029657号、及び国際公開第2017/122211号を有するPCT国際特許出願が含まれる。
【0026】
さらなる支持材料製剤は、例えば、国際公開第2016/142947号、国際公開第2017/029657号、及び国際公開第2019/130321号に記載されている。
【発明の概要】
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、3次元物体の付加製造において使用可能な又は使用するための支持材料製剤が提供され、前記製剤は、
親水性硬化性単官能材料、
1000グラム/モル未満又は800グラム/モル未満の分子量を有するポリオール、及び
400グラム/モル超又は500グラム/モル超の平均分子量を有するポリエステル材料、
を含む。
【0028】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料の量は、製剤の総重量に対して25重量%以下である。
【0029】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料の量は、製剤の総重量に対して10~20重量%の範囲内である。
【0030】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料は、室温で液体である、又は室温で前記製剤中に可溶性である。
【0031】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料は、ポリカプロラクトンである又はポリカプロラクトンを含む。
【0032】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールは、分岐鎖状ポリオールである。
【0033】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールの平均分子量は、500~900、又は500~800、又は600~800グラム/モルの範囲内である。
【0034】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールの量は、前記製剤の総重量に対して30~60、又は30~50、又は35~45重量%の範囲内である。
【0035】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールは、分岐鎖状のポリ(アルキレングリコール)、例えば分岐鎖状のポリ(プロピレングリコール)である。
【0036】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオール対前記ポリエステル材料の重量比は、4:1以下又は3:1以下である。
【0037】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオール対前記ポリエステル材料の重量比は、約3:1~約2:1の範囲内である。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記親水性硬化性材料は、光硬化性材料である。
【0039】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、光重合開始剤をさらに含む。
【0040】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記光重合開始剤の量は、製剤の総重量に対して0.5~3重量%の範囲内である。
【0041】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、表面活性剤をさらに含む。
【0042】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、重合禁止剤をさらに含む。
【0043】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、室温で静水に浸漬した場合に溶解可能である固化された材料を提供することを特徴とする。
【0044】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、3次元物体のいずれの製造においても、又は3D材料噴射及び3Dインクジェット印刷を含むがこれらに限定されないいずれの付加製造プロセスにおいても使用するためである又は使用可能である。
【0045】
3D材料噴射は、インクジェット印刷、ナノ粒子噴射、ドロップ・オン・デマンドなど、支持材料製剤の使用が適用可能又は有利であるいかなる方法も包含する。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、3次元物体の製造方法が提供され、前記方法は、前記物体の形状に対応する3次元印刷データを受け取ることと、前記印刷データに従って、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッドを用いて、未硬化構築材料の液滴を、受け媒体上に層状に吐出することと、を含み、前記未硬化構築材料は、少なくとも1つのモデル材料製剤及び少なくとも1つの支持材料製剤を含み、前記支持材料製剤は、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される製剤である。
【0047】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記方法は、前記吐出に続いて、前記層を硬化条件に曝露し、それによって固化されたモデル材料及び固化された支持材料を提供することをさらに含む。
【0048】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記方法は、前記固化された支持材料を除去することをさらに含む。
【0049】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記固化された支持材料を除去することは、静水中に浸漬することによるものである。
【0050】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記固化された支持材料を除去することは、循環水中に浸漬することによるものである。
【0051】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記固化された支持材料を除去することは、水浴中に浸漬し、前記水浴に超音波を適用することによるものである。
【0052】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記固化された支持材料を除去することは、食器洗浄による(例:物体を食器洗浄機に入れることによる)ものであり、好ましくは洗剤を含まない水を使用する。
【0053】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される方法によって得ることができる3次元物体が提供される。
【0054】
特に定めのない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実践又は試験に用いることができるが、例示的な方法及び/又は材料について以下で述べる。矛盾がある場合は、定義を含む本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び例は、単なる例示であり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0055】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施には、選択されたタスクを手動、自動、又それらの組み合わせで行うこと又は完了することが含まれ得る。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の機器及び装置によると、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用して、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、若しくはファームウェアによって、又はそれらの組み合わせによって実施され得る。
【0056】
例えば、本発明の実施形態に従う選択されたタスクを行うためのハードウェアは、チップ又は回路として実装され得る。ソフトウェアの場合、本発明の実施形態に従う選択されたタスクは、適切ないずれかのオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的な実施形態に従う1又は複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって行われる。所望に応じて、前記データプロセッサは、命令及び/若しくはデータを記憶するための揮発性メモリ、並びに/又は命令及び/若しくはデータを記憶するための、磁気ハードディスク及び/若しくはリムーバブルメディアを例とする不揮発性記憶装置を含む。所望に応じて、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボード若しくはマウスなどのユーザー入力デバイスも、所望に応じて提供される。
【0057】
本明細書において、本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として記載する。次に前記図面を具体的に詳細に参照すると、示される詳細は例としてであり、本発明の実施形態の例示的な考察のためであることが強調される。この点に関して、記載内容を前記図面と合わせることで、本発明の実施形態が実践され得る方法が、当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1A図1A図1Dは、本発明のいくつかの実施形態に従う付加製造システムの模式図である。
図1B図1A図1Dは、本発明のいくつかの実施形態に従う付加製造システムの模式図である。
図1C図1A図1Dは、本発明のいくつかの実施形態に従う付加製造システムの模式図である。
図1D図1A図1Dは、本発明のいくつかの実施形態に従う付加製造システムの模式図である。
図2A図2A図2Cは、本発明のいくつかの実施形態に従う印刷ヘッドの模式図である。
図2B図2A図2Cは、本発明のいくつかの実施形態に従う印刷ヘッドの模式図である。
図2C図2A図2Cは、本発明のいくつかの実施形態に従う印刷ヘッドの模式図である。
図3A図3A及び図3Bは、本発明のいくつかの実施形態に従う座標変換を示す模式図である。
図3B図3A及び図3Bは、本発明のいくつかの実施形態に従う座標変換を示す模式図である。
図4図4は、本発明の様々な例示的実施形態に従う3次元物体のAMに適した方法のフローチャート図である。
図5図5は、参照支持材料及び本発明のいくつかの実施形態に従う例示的な水溶性支持材料の溶解時間を示す棒グラフである。
図6図6は、本発明に従う例示的な水溶性支持材料製剤を用いて得られた細かい細部要素を特徴とする物体の、固化された支持材料を除去した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造(AM)に関し、より詳細には、限定されるものではないが、3次元インクジェット印刷などの付加製造において水溶性支持材料を形成する硬化性製剤、及びそれを利用した付加製造の方法に関する。
【0060】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、以下の記述に示される、並びに/又は図面及び/若しくは実施例に例示される構成要素の構造の詳細及び配置並びに/又は方法に必ずしも限定されないことは理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能である、又は様々な方法での実践若しくは実施が可能である。
【0061】
上記で考察したように、3Dインクジェット印刷などの付加製造において、ボイド、オーバーハング、ブリッジなどを特徴とする物体の製造を確実に成功させるために、支持材料が多くの場合用いられる。
【0062】
したがって、前記モデル材料製剤及び前記支持材料製剤を含む構築材料(未硬化)が、製造プロセスの過程で吐出され、その後固化されて、必要に応じて固化された支持材料と、所望される物体の形状を特徴とする固化されたモデル材料とが提供される。
【0063】
固化された支持材料を除去すると、支持材料とモデル材料製剤との固化された混合物を含む固化された混合層が現れる。物体の表面におけるこのような固化された混合物は、典型的には、比較的非反射性の外観を有し、「マット」表面としても知られるが、一方、このような固化された混合物のない表面(例:上に支持材料製剤が適用されなかった表面)は、「光沢」として知られる。物体の前記マット表面と光沢表面との外観の違いは、不均一な外観をもたらす。
【0064】
均一な外観を特徴とする物体を提供するために、これらの制限を克服する1つの方法は、前記物体全体を支持材料で覆うことである。しかし、この技術的解決策は、手間もコストもかかり、最終物体に悪影響を及ぼす可能性があり、及び本明細書に記載のマットな外観を特徴とする物体が得られる結果となることから、所望される外観を実現するために研磨などの後工程処理が必要となり得る。
【0065】
本発明者らは、ここで、混合層を形成して(マットモード)除去された後に、支持材料と接触していなかった前記物体の部分(光沢モード)と実質的に類似する外観を特徴とするモデル部分を提供するものである新規な水溶性支持製剤を設計し、良好に実践した。
【0066】
したがって、本発明の実施形態は、3Dインクジェット印刷などの付加製造に使用可能である新規な支持材料製剤、及びこれらの製剤を利用した付加製造に関する。
【0067】
本明細書全体を通して、「物体」の用語は、前記付加製造の最終製品を表す。この用語は、本明細書に記載の方法によって得られた、前記支持材料を除去した後の製品を意味する。したがって、「物体」は、固化された(例:硬化された)モデル材料から本質的に成る(少なくとも95重量%)。
【0068】
本明細書全体を通して、「物体」又は「印刷された物体」又は「製造された物体」の用語は、付加製造プロセスの製品を表す。この用語は、本明細書に記載の方法によって得られた、前記硬化された支持材料を除去する前の製品を意味する。したがって、印刷された物体は、固化された(例:硬化された)モデル材料及び固化された(例:硬化された)支持材料から、又は集合的に、固化された構築材料から構成される。
【0069】
「印刷された物体」の用語は、本明細書全体を通して用いられる場合、印刷された物体全体又はその一部を意味する。
【0070】
「モデル」の用語は、本明細書で用いられる場合、前記製造プロセスの最終製品を表す。この用語は、本明細書に記載の方法によって得られた、前記支持材料を除去した後の製品を意味する。したがって、モデルは、特に断りのない限り、硬化されたモデル材料から本質的に成る。この用語は、本明細書において、「モデル物体」、「最終物体」、又は単に「物体」とも称される。
【0071】
「モデル」、「モデル物体」、「最終物体」、及び「物体」の用語は、本明細書全体を通して用いられる場合、物体全体又はその一部を意味する。
【0072】
本明細書全体を通して、「構築材料製剤」、「未硬化構築材料」、「未硬化構築材料製剤」、「構築材料」、及びこれらの他の変化形の語句は、本明細書に記載されるように、層を順次形成するように吐出される材料を集合的に表す。この語句は、前記物体を形成するように吐出される未硬化材料、すなわち1又は複数の未硬化モデル材料製剤、及び支持を形成するように吐出される未硬化材料、すなわち未硬化支持材料製剤、を包含する。
【0073】
本明細書全体を通して、「モデル材料製剤」の語句は、本明細書において互換的に「モデル製剤」又は単に「製剤」とも称されるが、本明細書に記載されるように、前記モデル物体を形成するように吐出される前記未硬化構築材料の一部を表す。前記モデル製剤は、未硬化モデル製剤であり、これは、硬化エネルギーに曝露されると、最終物体又はその一部を形成する。
【0074】
未硬化構築材料は、1又は複数のモデル製剤を含んでよく、前記モデル物体の異なる部分が、異なるモデル製剤を硬化して製造されることによって異なる硬化されたモデル材料から又は硬化されたモデル材料の異なる混合物から構成されるように、吐出することができる。
【0075】
本明細書全体を通して、「支持材料製剤」の語句は、本明細書において互換的に「支持製剤」とも称されるが、本明細書に記載されるように、前記支持材料を形成するように吐出される前記未硬化構築材料の一部を表す。前記支持材料製剤は、未硬化製剤であり、これは、硬化エネルギーに曝露されると、固化された支持材料を形成する。
【0076】
本明細書全体を通して、「硬化されたモデル材料」及び「固化されたモデル材料」の語句は、互換的に用いられ、本明細書において定められるように、前記吐出された構築材料を硬化に曝露し、前記硬化された支持材料が存在する場合はそれを除去した後にモデル物体を形成する前記構築材料の部分を表す。前記硬化されたモデル材料は、本明細書に記載されるように、本方法で用いられる前記モデル材料製剤に応じて、単一の硬化された材料又は2つ以上の硬化された材料の混合物であってもよい。
【0077】
本明細書全体を通して、「固化された支持材料」の語句は、本明細書において互換的に「硬化された支持材料」又は単に「支持材料」とも称され、前記製造プロセスの過程で製造された最終物体を支持することを意図し、前記プロセスが完了して固化されたモデル材料が得られると除去される前記固化(硬化)された構築材料の部分を表す。
【0078】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、未硬化製剤(構築材料、支持材料、及びモデル材料)は、典型的には、硬化性製剤であり、硬化すると固化された材料を形成する。
【0079】
本明細書全体を通して、「硬化性製剤」の用語は、本明細書に記載されるように、硬化エネルギーに曝露された場合に、固体化又は固化して、本明細書で定める硬化された材料を形成する材料の混合物を表す。硬化性製剤は、1又は複数の硬化性材料を含み、所望に応じて、1又は複数の非硬化性材料、開始剤、及び他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0080】
前記構築材料を形成する製剤(モデル材料製剤及び支持材料製剤)は、硬化条件に曝露された場合に固化された(硬化された)材料を形成する1又は複数の硬化性材料を含む。
【0081】
本明細書全体を通して、「硬化性材料」とは、本明細書に記載されるように、硬化条件に曝露された場合に、固体化又は固化して硬化された材料を形成する化合物(典型的にはモノマー又はオリゴマー化合物であるが、所望に応じてポリマー材料でもよい)である。硬化性材料は、典型的には重合性材料であり、これは、適切な硬化条件(例:適切なエネルギー源)に曝露された場合に重合及び/又は架橋を起こす。
【0082】
本明細書において、「硬化エネルギーに曝露する」、「硬化に曝露する」、「硬化条件に曝露する」、及び「硬化に影響を与えるエネルギー源に曝露する」という語句、並びにこれらの文法的変化形は、互換的に用いられ、未硬化構築材料の吐出層が前記硬化エネルギーに曝露されることを意味し、前記曝露は、典型的には、前記吐出層に硬化エネルギーを適用することによって行われる。
【0083】
「硬化エネルギー」としては、典型的には、放射線の適用又は熱の適用が挙げられる。
【0084】
前記放射線は、硬化されるべき材料に応じて、電磁放射線(例:紫外線又は可視光)、又は電子ビーム放射線、又は超音波放射線、又はマイクロ波放射線であってよい。前記放射線の適用(又は照射)は、適切な放射線源によって行われる。例えば、本明細書に記載されるように、紫外線ランプ又は可視光ランプ又は赤外線ランプ又はキセノンランプが用いられ得る。
【0085】
本実施形態によると、硬化性材料はまた、硬化エネルギーに曝露されるのではなく、硬化条件(例えば、化学試薬へ曝露されたとき)、又は単に環境に曝露されたときに固化又は固体化(硬化)する材料も包含する。
【0086】
本明細書で用いられる場合、「硬化性」及び「固体化性」の用語は、交換可能である。
【0087】
重合は、例えば、フリーラジカル重合、カチオン重合、又はアニオン重合であってよく、各々、本明細書に記載されるように、例えば放射線、熱などの硬化エネルギーに曝露された場合に誘導され得る。
【0088】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、硬化性材料は、光重合性材料であり、これは、本明細書に記載されるように、放射線に曝露されると重合し、及び/又は架橋を起こし、いくつかの実施形態において、前記硬化性材料は、UV硬化性材料であり、これは、本明細書に記載されるように、UV放射線に曝露されると重合する、及び/又は架橋を起こす。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の硬化性材料は、光誘起フリーラジカル重合を介して重合する光重合性材料である。別の選択肢として、前記硬化性材料は、光誘起カチオン重合を介して重合する光重合性材料である。
【0090】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー、又は短鎖ポリマーであってよく、各々、本明細書に記載されるように重合性及び/又は架橋性である。
【0091】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、硬化性材料は、硬化条件(例:放射線)に曝露された場合、鎖伸長及び架橋のいずれか1つ又は組み合わせによって固化する(硬化を起こす)。
【0092】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件(例:硬化エネルギー)に曝露された場合に重合反応によってポリマー材料を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書においてモノマー硬化性材料とも称される。
【0093】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件(例:硬化エネルギー)に曝露された場合に重合反応によってポリマー材料を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書においてオリゴマー硬化性材料とも称される。
【0094】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマー又はオリゴマー又はポリマーであるかにかかわらず、単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料であり得る。
【0095】
本明細書において、単官能硬化性材料は、硬化条件(例:放射線などの硬化エネルギー)に曝露された場合に重合を起こすことができる1つの官能基を含む。
【0096】
多官能硬化性材料は、硬化条件(例:硬化エネルギー)に曝露された場合に重合を起こすことができる2つ以上の、例えば2、3、4、又はそれ以上の官能基を含む。多官能硬化性材料は、例えば、二官能、三官能、又は四官能硬化性材料であってよく、これらは、それぞれ、重合を起こすことができる2、3、又は4つの基を含む。多官能硬化性材料中の前記2つ以上の官能基は、典型的には、本明細書において定められるように、連結部分によって互いに連結される。前記連結部分がオリゴマー部分又はポリマー部分である場合、多官能基は、オリゴマー又はポリマーの多官能硬化性材料である。多官能硬化性材料は、硬化条件(例:硬化エネルギー)に供された場合に重合を起こすことができる、及び/又は架橋剤として作用することができる。
【0097】
本明細書全体を通して、硬化性製剤の実施形態の文脈で「重量パーセント」の語句が示される場合は常に、本明細書に記載される製剤の総重量に対する重量パーセントを意味する。
【0098】
「重量パーセント」の語句は、本明細書において、「重量%(% by weight)」又は「重量%(% wt.)」又は「重量%(wt. %)」とも称される。
【0099】
本発明の実施形態は、3次元物体の付加製造に使用可能である新規な支持材料製剤に関する。
【0100】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、典型的には50℃~100℃を含み、例えば70℃である噴射温度において、150センチポアズ以下、又は100センチポアズ以下、又は50センチポアズ(cPs又はcps)以下の粘度を特徴とし、この場合の前記粘度は、本技術分野で公知の標準的手順に従って、及び/又は後述する実施例のセクションに記載されるように特定される。
【0101】
本発明の実施形態はさらに、本明細書に開示される新規な支持材料製剤が包装されたキットにも関する。
【0102】
本発明の実施形態はさらに、本明細書に記載の支持材料製剤を用いて3次元物体を付加製造する方法にも関する。
【0103】
本実施形態の方法は、本明細書に記載されるように、前記物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、層ごとに3次元物体を製造する。
【0104】
方法は、一般に、前記物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を順次形成することによって行われ、その場合、前記層の少なくともいくつかの各々又は前記層の各々の形成は、本明細書に記載されるように、1又は複数のモデル材料製剤及び1又は複数の支持材料製剤を含む構築材料(未硬化)を吐出することと、前記吐出されたモデル材料を硬化条件(例:硬化エネルギー)に曝露することとを含み、それによって、以下でさらに詳細に記載されるように、印刷された物体が形成される。
【0105】
前記最終3次元物体は、前記モデル材料、又はモデル材料の組み合わせ、又はモデル材料と支持材料との組み合わせ、又はそれらの改変(例:硬化し、前記固化された支持材料を除去した後)から製造される。これらの操作はすべて、固体自由形状造形(solid freeform fabrication)の分野の当業者に公知である。
【0106】
支持材料製剤:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、3次元物体の付加製造で用いるための支持材料製剤が提供される。
【0107】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される1又は複数の親水性硬化性単官能材料;それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるポリオール;及びそれぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるポリエステル材料を含む。
【0108】
ポリオール:
本明細書及び本技術分野において、「ポリオール」の用語は、2つ以上の遊離ヒドロキシ基、典型的には約10から数十又は数百の遊離ヒドロキシ基を特徴とするポリマー材料を表す。ポリオールの代表例としては、限定されるものではないが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びウレタンポリオールが挙げられる。好ましくは、前記ポリオールは、例えばポリ(アルキレングリコール)などのポリエーテルポリオールである。
【0109】
前記ポリオールは、直鎖状ポリオール又は非直鎖状ポリオール(例:分岐鎖状ポリオール)であってもよい。
【0110】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールは、分岐鎖状ポリオールである。
【0111】
「分岐鎖状ポリオール」とは、3つ以上の末端遊離ヒドロキシ基を特徴とする本明細書において定められるポリオール材料を意味し、すなわち、それが、少なくとも3つ、場合によっては少なくとも4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の、各々が遊離ヒドロキシ基を末端とする相互結合した(共有結合による)ポリマー鎖から構成されていることを意味する。前記ポリマー鎖の1若しくは複数、又はすべては、ペンダント基としての遊離ヒドロキシ基をさらに特徴とし得る。例示的な分岐鎖状ポリオールでは、前記3つ以上のポリマー鎖は、本明細書に記載されるように、分岐単位から延びる。例示的な実施形態では、前記分岐単位は、脂肪族である。
【0112】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(エチレングリコール)又はポリ(プロピレングリコール)又これらの混合物である。いくつかの実施形態では、前記ポリオールは、ポリ(プロピレングリコール)である、又はポリ(プロピレングリコール)を含む。
【0113】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオールは、1000グラム/モル未満又は800グラム/モル未満の平均分子量を有する。
【0114】
前記ポリオールは、約400~約1000、若しくは約400~約900、若しくは約400~約800、若しくは約500~約1000、若しくは約500~約900、若しくは約500~約800、若しくは約600~約1000、若しくは約600~約900、若しくは約600~約800グラム/モルの範囲内、又は約700グラム/モルの、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む平均分子量を有し得る。
【0115】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記分岐鎖状ポリオールは、分岐鎖状ポリ(アルキレングリコール)、例えば、分岐鎖状ポリ(エチレングリコール)又は分岐鎖状ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態では、前記ポリオールは、分岐鎖状ポリ(プロピレングリコール)である、又は分岐鎖状ポリ(プロピレングリコール)を含む。
【0116】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記分岐鎖状ポリオールは、1000グラム/モル未満又は800グラム/モル未満の平均分子量を有する。
【0117】
前記分岐鎖状ポリオールは、約400~約1000、若しくは約400~約900、若しくは約400~約800、若しくは約500~約1000、若しくは約500~約900、若しくは約500~約800、若しくは約600~約1000、若しくは約600~約900、若しくは約600~約800グラム/モルの範囲内、又は約700グラム/モルの、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む平均分子量を有し得る。
【0118】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、本明細書に記載の前記ポリオールは、本明細書において定められるように、水混和性又は水溶性である。
【0119】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオール(例:分岐鎖状)の量は、製剤の総重量に対して30~60、又は30~50、又は35~45重量%の範囲内であり、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む。
【0120】
ポリエステル材料:
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記製剤は、1又は複数のポリエステル材料を含み、各々独立して、直鎖状又は非直鎖状(例:分岐鎖状)であってもよい。
【0121】
「ポリエステル材料」とは、ポリエステル骨格(例:繰り返し単位がエステル部分-C(=O)-O-を介して互いに連結しているポリエステル主鎖)を特徴とする化学物質を意味する。ポリエステルの前記繰り返し主鎖単位は、様々であり得、典型的には、前記ポリエステルを形成するために用いられる出発モノマー材料に依存し得る。本発明の実施形態によると、前記ポリエステルは、所望に応じて、(前記ポリエステルを本質的に形成する置換基に加えて)ペンダント基又は末端基として置換されていてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態によると、前記ポリエステル材料は、非直鎖状(例:分岐鎖状)ポリエステルである、又は非直鎖状(例:分岐鎖状)ポリエステルを含む。
【0123】
分岐鎖状ポリエステルは、いくつかの実施形態では、ポリエステル鎖がそこから延びる分岐単位を特徴とし得る。
【0124】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料は、400グラム/モル超、又は500グラム/モル超の平均分子量を有する。
【0125】
前記ポリエステル材料は、約400~約2000、若しくは約400~約1500、若しくは約400~約1200、約500~約2000、若しくは約500~約1500、若しくは約500~約1200、若しくは約700~約1500、若しくは約700~約1200、若しくは約700~約1000、若しくは約800~約1200、若しくは約800~約1000グラム/モルで、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む平均分子量、又は約900グラム/モルの平均分子量を特徴とし得る。
【0126】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料は、室温で液体である、又は室温で前記製剤中において溶解可能及び/若しくは安定であるようなものである(例:前記ポリエステルは、前記製剤中で結晶化も沈殿もしない)。
【0127】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料は、1又は複数、好ましくは2つ以上の遊離ヒドロキシ基を特徴とし、例えば、1つ、2つ、又はそれ以上の遊離ヒドロキシ基を末端に有する。
【0128】
本明細書に記載の平均分子量を有し、本明細書に記載されるように室温で液体である並びに/又は室温で前記製剤中において溶解可能及び/若しくは安定である例示的なポリエステル材料は、ポリカプロラクトンである、又はポリカプロラクトンを含む材料である。例示的な実施形態では、前記ポリエステル材料は、直鎖状若しくは分岐鎖状のε-ポリカプロラクトンである、又はそれを含む。
【0129】
例示的なポリエステル材料は、直鎖状ε-ポリカプロラクトンであり、これは、所望に応じて、1又は複数の化学基、例えばヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシレート基、アミド基、アルキレングリコール基、及びこれらのいずれかの組み合わせによって置換(例:末端置換)されてもよい。
【0130】
例示的なポリエステル材料は、非直鎖状ポリカプロラクトン、例えば、分岐鎖状ε-ポリカプロラクトンであり、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上のポリエステル主鎖がそこから延びる脂肪族又は芳香族分岐単位を特徴とする。このような例示的なポリエステル材料は、好ましくは、例えば末端基として、1つ、2つ、又はそれ以上の遊離化学基を特徴とし、これらは例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシレート基、アミド基、アルキレングリコール基、及びこれらのいずれかの組み合わせであり得る。
【0131】
例示的な実施形態によると、前記ポリエステル材料は、分岐鎖状ε-ポリカプロラクトンであり、遊離ヒドロキシ基を各々末端基とする3つのポリエステル主鎖がそこから延びる脂肪族分岐単位を特徴とする。例示的なこのようなポリエステル材料は、CAPA(登録商標)3091の商品名で市販されている。
【0132】
例示的な実施形態によると、前記ポリエステル材料は、分岐鎖状ε-ポリカプロラクトンであり、アルキレングリコール基を各々末端基とする5つのポリエステル主鎖がそこから延びる脂肪族又は芳香族の分岐単位を特徴とする。
【0133】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料は、本明細書において定められるように、水混和性又は水溶性の材料である。
【0134】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリエステル材料の量は、前記製剤の総重量に対して25重量%以下である。いくつかの実施形態では、前記ポリエステル材料の量は、前記製剤の総重量に対して10~20重量%の範囲内であり、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む。
【0135】
単官能硬化性材料:
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記製剤は、1又は複数の単官能硬化性材料を含む。
【0136】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記単官能硬化性材料の1若しくは複数、又は各々は、本明細書において定められるように、親水性材料である。
【0137】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記単官能硬化性材料の1若しくは複数、又は各々は、本明細書において定められるように、水混和性又は水溶性の材料である。
【0138】
本明細書全体を通して、「親水性」の用語は、典型的には水素結合を介した水分子との結合の一過的な形成を引き起こす化合物又は化合物の一部分(例:化合物中の化学基)の物理的特性を表す。
【0139】
親水性化合物又は化合物の一部分(例:化合物中の化学基)は、典型的には、電荷分極しており、水素結合が可能なものである。
【0140】
親水性化合物又は親水性基は、典型的には、水分子と強い水素結合を形成する1又は複数の電子供与性ヘテロ原子を含む。このようなヘテロ原子としては、限定されるものではないが、酸素及び窒素が挙げられる。好ましくは、親水性化合物又は親水性基中の炭素原子の数対ヘテロ原子の数の比は、10:1又はそれ以下であり、例えば、8:1、より好ましくは7:1、6:1、5:1、若しくは4:1、又はそれ以下であってもよい。化合物及び基の親水性は、前記化合物又は化学基中の疎水性部分と親水性部分との比にも起因する場合があり、上述の比のみに依存するものではないことには留意されたい。
【0141】
親水性化合物は、油又は他の疎水性溶媒中よりも水中の方がより容易に溶解する。親水性化合物は、例えば、50℃未満、又は40℃未満、又は35℃未満、又は30℃未満の温度で、例えば25℃で、LogPがオクタノール相及び水相中で特定される場合における、0.5未満のLogPを有するとして決定され得る。
【0142】
別の選択肢として、親水性化合物は、例えば溶媒としての水との相互作用について計算した場合のハンセンパラメータによって、50℃未満、又は40℃未満、又は35℃未満、又は30℃未満の温度で、例えば25℃で、1より大きい相対エネルギー距離(RED、Relative Energy Distance)を有するとして決定され得る。
【0143】
親水性化合物は、前記化合物を親水性にする1又は複数の親水性基を有し得る。このような基は、典型的には極性基であり、酸素及び窒素などの1又は複数の電子供与性ヘテロ原子を含む。前記親水性基は、例えば、モノマーである単官能硬化性材料の1若しくは複数の置換基、又はオリゴマーである単官能硬化性材料の2つ以上の置換基若しくは介在基(interrupting groups)であり得る。前記親水性基は、例えば、モノマーである多官能硬化性材料の1若しくは複数の置換基、又はモノマーである多官能硬化性部分の連結部分の1若しくは複数の置換基又は介在基であり得る。前記親水性基は、例えば、オリゴマーである多官能硬化性材料中のオリゴマー連結部分の2つ以上の置換基又は介在基であり得る。
【0144】
例示的な親水性基としては、限定されるものではないが、電子供与性ヘテロ原子、カルボキシレート、チオカルボキシレート、オキソ(=O)、直鎖状アミド、ヒドロキシ、(C1~4)アルコキシ、(C1~4)アルコール、ヘテロ脂環式(例:本明細書において定められる炭素原子対ヘテロ原子の比を有する)、ラクトンなどの環状カルボキシレート、ラクタムなどの環状アミド、カルバメート、チオカルバメート、シアヌレート、イソシアヌレート、チオシアヌレート、ウレア、チオウレア、アルキレングリコール(例:エチレングリコール又はプロピレングリコール)、及び親水性ポリマー又はオリゴマー部分(これらの用語は本明細書において以下で定められる通りである)、並びにこれらのいずれかの組み合わせ(例:示される親水性基の2つ以上を含む親水性基)が挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、前記親水性基は、電子供与性ヘテロ原子、カルボキシレート、ヘテロ脂環式、アルキレングリコール、及び/又は親水性オリゴマー部分である、又はこれらを含む。
【0146】
本明細書で用いられる場合、親水性のポリマー又はオリゴマー部分は、本明細書において定められる親水性基を含むポリマー鎖を含む。前記親水性基は、例えばポリ(アルキレングリコール)の場合のように前記ポリマー部分の主鎖内にあるヘテロ原子、又は親水性ペンダント基であり得る。本発明のいくつかの実施形態によると、ポリマー又はオリゴマー部分は、好ましくは10~40の繰り返し主鎖単位、より好ましくは10~20の繰り返し主鎖単位を有する。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態によると、親水性単官能硬化性材料は、式Iで表されるビニル含有化合物であってよく:
【化1】

式中、R及びRの少なくとも1つは、本明細書において定められる親水性基である及び/又は親水性基を含む。
式I中の(=CH)基は、重合性基を表し、典型的には、前記材料がUV硬化性材料となるようなUV硬化性基である。
例えば、Rは、本明細書において定められる親水性基であり、Rは、前記化合物が本明細書で定められるように親水性である限り、非親水性基、例えば、水素、C(1~4)アルキル、C(1~4)アルコキシ、又は他のいずれかの置換基である。
【0148】
いくつかの実施形態では、Rは、カルボキシレート基、-C(=O)-OR’、であり、Rは、水素であり、前記化合物は、単官能アクリレートモノマーである。これらの実施形態のいくつかでは、Rは、メチルであり、前記化合物は、単官能メタクリレートモノマーである。他の実施形態では、Rは、親水性置換基であり、すなわち、本明細書に記載の親水性基である又は親水性基を含む置換基である。
【0149】
これらの実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、カルボキシレート基、-C(=O)-OR’、は、親水性基であるR’を含む。例示的なR’基としては、限定されるものではないが、本明細書に記載されるように、ヘテロ脂環式基(炭素原子対電子供与性ヘテロ原子の比が5:1以下である、モルホリン、テトラヒドロフラン、オキサリジンなど)、ヒドロキシル、C(1~4)アルコキシ、チオール、アルキレングリコール、又はポリマー若しくはオリゴマー部分が挙げられる。例示的なモノマー単官能アクリレートは、アクリロイルモルホリン(ACMO)である。
【0150】
いくつかの実施形態では、Rはアミドであり、いくつかの実施形態において、それはラクタムなどの環状アミドであり、前記化合物はビニルラクタムである。いくつかの実施形態では、Rは、ラクトンなどの環状カルボキシレートであり、前記化合物はビニルラクトンである。
【0151】
及びRの一方又は両方が、本明細書において定められるように、ポリマー又はオリゴマー部分、例えば親水性オリゴマー部分を含む場合、式Iの前記単官能硬化性化合物は、例示的なオリゴマー単官能硬化性材料である。そうでなければ、それは、例示的なモノマー単官能硬化性材料である。
【0152】
例示的なオリゴマー単官能硬化性材料としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリル化ウレタンオリゴマー誘導体、モノ(メタ)アクリル化ポリオールオリゴマー、親水性置換基を有するモノ(メタ)アクリル化オリゴマー、及びモノ(メタ)アクリル化ポリエチレングリコール(例:メトキシポリエチレングリコール)が挙げられる。(メタ)アクリル化とは、前記オリゴマー又はポリマーがアクリレート又はメタクリレート官能基を含んでいることを意味する。
【0153】
いくつかの実施形態では、Rは、カルボキシレートであり、R’は、本明細書において定められるポリ(アルキレングリコール)である。例示的なそのような親水性単官能硬化性材料は、ヘキサ(エチレングリコール)アクリレート(6-PEA)である。
【0154】
いくつかの実施形態では、Rは、本明細書において定められる親水性ヘテロ脂環式基である。例示的なそのような親水性単官能硬化性材料は、ACMOである。
【0155】
いくつかの実施形態では、単官能硬化性材料が2つ以上ある場合、前記単官能硬化性材料のすべてが、親水性及び/又は水溶性若しくは水混和性材料であり、いくつかの実施形態では、これらの材料のうち1つだけが、親水性及び/又は水溶性若しくは水混和性材料である。
【0156】
いくつかの実施形態では、前記単官能硬化性材料の1又は複数は、それ自体が固化された場合、水溶性である材料を提供する。例示的なそのような材料は、ACMOである。
【0157】
いくつかの実施形態では、前記単官能硬化性材料の各々は、それ自体が固化された場合、水混和性又は水溶性である材料を提供する。
【0158】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記親水性単官能硬化性材料の量は、前記製剤の総重量に対して約30~約60、又は約40~約60、又は約40~約60重量%の範囲内であり、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む。
【0159】
例示的な製剤:
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は:
1又は複数の親水性硬化性単官能材料、
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、1000グラム/モル未満又は800グラム/モル未満の分子量を有する分岐鎖状ポリオール、及び
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、400グラム/モル超又は500グラム/モル超の平均分子量を有するポリエステル材料、を含む。
【0160】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は:
本明細書に記載の式Iで表される1又は複数の親水性硬化性単官能材料、
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、1000グラム/モル未満又は800グラム/モル未満の分子量を有する分岐鎖状ポリ(アルキレングリコール)、及び
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、400グラム/モル超又は500グラム/モル超の平均分子量を有し、室温で液体である、又は室温で前記製剤中において溶解可能及び/若しくは安定であるポリエステル材料、を含む。
【0161】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は:
本明細書に記載の式Iで表される1又は複数の親水性硬化性単官能材料、
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、500~800グラム/モルの分子量を有する分岐鎖状ポリ(アルキレングリコール)、及び
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、約600グラム/モル~約1000グラム/モルの範囲内の平均分子量を有し、室温で液体であり、又は室温で前記製剤中において溶解可能及び/若しくは安定であり、1又は複数の遊離ヒドロキシ基を特徴とするポリエステル材料、を含む。
【0162】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は:
本明細書に記載の式Iで表される1又は複数の親水性硬化性単官能材料、
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、500~800グラム/モルの分子量を有する分岐鎖状ポリ(アルキレングリコール)、例えば分岐鎖状ポリ(プロピレングリコール)、及び
それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される、約600グラム/モル~約1000グラム/モルの範囲内の平均分子量を有し、室温で液体であり、又は室温で前記製剤中において溶解可能及び/若しくは安定であり、1又は複数の遊離ヒドロキシ基を特徴とする分岐鎖状ポリカプロラクトン、例えば分岐鎖状ポリ-ε-カプロラクトン、を含む。
【0163】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記親水性単官能硬化性材料の量は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、前記製剤の総重量に対して、約40~約60又は約40~約50重量%の範囲内であり、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される前記ポリオールの量は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、前記製剤の総重量に対して約30~約50又は約35~約45重量%の範囲内であり、及び、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される前記ポリエステル材料の量は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、前記製剤の総重量に対して約10~約20重量%の範囲内である。
【0164】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記ポリオール対前記ポリエステル材料の重量比は、4:1以下又は3:1以下である。いくつかの実施形態によると、前記ポリオール対前記ポリエステル材料の重量比は、約3:1~約2:1の範囲内である。
【0165】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記親水性単官能硬化性材料と前記ポリオールとの重量比は、約2:1~約1:2、又は約1.5:1~約1:1.5、又は約1.2:1~約1:1.2の範囲である。
【0166】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記製剤は、多官能硬化性材料を含まない、又はそのような材料が存在する場合は、その量は、前記製剤の総重量に対して10%以下、又は5%以下、又は2%以下、又は1%以下である。
【0167】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記親水性硬化性材料は、光硬化性材料であり、例えば、本明細書において式Iで表されるアクリル材料である。
【0168】
これらの実施形態のうちのいくつかによると、前記製剤は、光重合開始剤をさらに含む。
【0169】
これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、前記光重合開始剤の量は、例えば、前記製剤の総重量に対して0.5~3重量%、又は1~3重量%、又は0.5~2.5重量%、又は0.5~2重量%、又は1~2重量%の範囲内であり、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む。
【0170】
前記光重合開始剤は、フリーラジカル光重合開始剤、カチオン光重合開始剤、又はこれらのいずれかの組み合わせであってよい。
【0171】
フリーラジカル光重合開始剤は、紫外線又は可視光線などの放射線に曝露されるとフリーラジカルを生成し、それによって重合反応を開始させるいかなる化合物であってもよい。適切な光重合開始剤の限定されない例としては、アルキル/シクロアルキルフェニルケトンなどのフェニルケトン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、及びキサントンなどのベンゾフェノン類(芳香族ケトン);2,4,6-トリメチルベンゾリジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzolydiphenyl phosphine oxide)(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(TEPO)、及びビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)などのアシルホスフィンオキシド型光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類及びベンゾインアルキルエーテル、などが挙げられる。光重合開始剤の例は、アルファ-アミノケトン、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例:Irgacure(登録商標)184として市販されている)である。
【0172】
フリーラジカル光重合開始剤は、単独で、又は共開始剤と組み合わせて用いられてもよい。共開始剤は、UV系において活性であるラジカルを生成するために第2の分子を必要とする開始剤と共に用いられる。ベンゾフェノンは、硬化性ラジカルを生成するためにアミンなどの第2の分子を必要とする光重合開始剤の一例である。ベンゾフェノンは、放射線を吸収した後、水素引き抜きによって三級アミンと反応して、アクリレートの重合を開始するアルファ-アミノラジカルを生成する。共開始剤の種類の限定されない例は、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンである。
【0173】
適切なカチオン性光重合開始剤としては、例えば、重合を開始するのに充分な紫外線及び/又は可視光線に曝露されると、非プロトン酸又はブレンステッド酸を形成する化合物が挙げられる。用いられる前記光重合開始剤は、単一の化合物、2つ以上の活性化合物の混合物、又は2つ以上の異なる化合物の組み合わせ、すなわち共開始剤、であってもよい。適切なカチオン性光重合開始剤の限定されない例としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩などが挙げられる。例示的なカチオン性光重合開始剤は、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の混合物である。
【0174】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかにおいて、前記製剤は、前記製造プロセスにおいて有益に用いられる1又は複数の追加の剤をさらに含んでもよい。そのような剤としては、例えば、表面活性剤、禁止剤、及び安定剤が挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の支持材料製剤は、表面活性剤を含む。表面活性剤は、前記製剤の表面張力を、典型的には約30ダイン/cmである噴射又は他の印刷プロセスにおいて必要とされる値まで低下させるために用いられ得る。例示的なそのような剤は、BYKファミリーとして市販されている表面剤などのシリコーン表面添加剤であるが、これらに限定されない。
【0176】
表面活性剤の量は、前記製剤の総重量に対して約0.01~0.2重量%、又は0.01~1重量%、又は0.05~1重量%の範囲であってよく、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の支持材料製剤は、禁止剤をさらに含み、これは、前記硬化性材料が、前記製造プロセス中及び硬化条件に供される前に予備重合することを阻害する。例示的な安定剤(禁止剤)は、トリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩(NPAL)である。禁止剤の量は、前記製剤の総重量に対して、約0.01~5重量%、又は0.01~3重量%、又は0.1~3重量%、又は0.5~3重量%、又は0.1~2重量%、又は0.5~2.5重量%、又は0.5~1.5重量%の範囲内であってよく、これらの間のいずれの中間値及びサブ範囲も含む。
【0178】
適切な安定剤としては、例えば、高温で前記製剤を安定化させる熱安定剤が挙げられる。
【0179】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記支持材料製剤は、固化された場合(例:本明細書に記載されるように硬化条件に曝露された場合)、水混和性又は水溶性である固化された支持材料を提供する。いくつかの実施形態によると、前記固化された支持材料は、前記物体の形状に応じて、室温で1~48時間にわたって静水又は循環水中に浸漬された場合に溶解可能である。
【0180】
モデル製造:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、3次元モデル物体を付加製造する方法が提供され、この方法は、本明細書に記載の製剤を支持材料製剤として用いる。前記方法は、本明細書において、製造プロセス又はモデル製造プロセスとも称される。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を順次形成するように、未硬化の構築材料を吐出することを含む。いくつかの実施形態では、前記(未硬化)構築材料は、1又は複数のモデル材料製剤及び1又は複数の支持材料製剤を含み、前記支持材料製剤の1又は複数は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される製剤である。
【0181】
前記モデル材料製剤は、3Dインクジェット印刷などの付加製造に使用可能であるいかなるモデル材料製剤であってもよく、好ましくは、前記支持材料製剤が硬化可能であるのと同じ条件下で硬化可能である。
【0182】
本発明のいくつかの実施形態によると、前記製造方法は、3次元モデル物体の付加製造である。
【0183】
この態様のいくつかの実施形態によると、各層の形成は、少なくとも1つの未硬化構築材料を吐出することと、前記吐出された構築材料を硬化条件(例:硬化エネルギー)に曝露することとによって行われ、それによって、硬化されたモデル材料と硬化された支持材料とから構成される硬化された構築材料が形成される。
【0184】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのうちのいくつかによると、前記付加製造は、好ましくは3次元インクジェット印刷によるものである。
【0185】
本実施形態の方法は、前記物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、層ごとに3次元物体を製造する。
【0186】
各層は、2次元表面をスキャンし、それをパターン化する付加製造装置によって形成される。スキャン中、前記装置は、2次元の層又は表面上の複数の目標位置まで動き、各目標位置又は目標位置の一群について、前記目標位置又は目標位置の群が構築材料によって占有されるべきかどうか、及びどの種類の構築材料(例:モデル材料製剤又は支持材料製剤)がそこに供給されるべきかを決定する。前記決定は、前記表面のコンピュータ画像に従って成される。
【0187】
前記AMが3次元印刷によるものである場合、本明細書において定められる未硬化構築材料が、一式のノズルを有する吐出ヘッドから吐出されて、構築材料を支持構造部上に層状に堆積させる。このようにして、前記AM装置は、占有されるべき目標位置に構築材料を吐出し、他の目標位置はボイドのまま残す。前記装置は、典型的には、複数の吐出ヘッドを含み、その各々は、異なる構築材料を吐出するように構成することができる。したがって、異なる目標位置が、異なる構築材料(例:本明細書において定められるモデル製剤及び/又は支持製剤)によって占有され得る。
【0188】
本発明のいくつかの実施形態に従う物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ限定されない例を図1Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを備えた吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、以下で述べる図2A図2Cに示されるように、ノズル122の1又は複数のアレイを備え、それを通して液体構築材料124が吐出される。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態によると、装置114は、50℃を超えない温度、又は40℃を超えない温度、又は35℃を超えない温度で作動する。
【0190】
必須ではないが、好ましくは、装置114は、3次元インクジェット印刷装置であり、この場合、前記吐出ヘッドは、印刷ヘッドであり、前記構築材料は、ノズルの1又は複数のアレイを有する印刷ヘッドからインクジェット技術によって吐出されて、支持構造部上に構築材料製剤が層状に堆積される。いくつかの用途では、前記付加製造装置が3次元印刷技術を用いる必要がない場合もあることから、これが必ずしも当てはまる必要はない。本発明の様々な例示的実施形態に従って企図される付加製造装置の代表例としては、限定されるものではないが、熱溶解積層装置(fused deposition modeling apparatus)及び熱溶解材料堆積装置(fused material deposition apparatus)が挙げられる。
【0191】
各吐出ヘッドへの供給は、所望に応じて及び好ましくは、温度制御ユニット(例:温度センサー及び/又は加熱デバイス)及び材料レベルセンサーを所望に応じて含んでよい構築材料貯留部を介して成される。前記構築材料を吐出するためには、例えば圧電インクジェット印刷技術の場合のように、電圧シグナルが前記吐出ヘッドに印加されて、前記吐出ヘッドノズルを介して材料の液滴を選択的に堆積させる。各ヘッドの吐出速度は、ノズルの数又はノズルのアレイの数、ノズルの種類、及び印加される電圧シグナル速度(周波数)に依存する。このような吐出ヘッドは、固体自由形状造形の分野の当業者に公知である。
【0192】
必須ではないが好ましくは、吐出ノズル又はノズルアレイの全体の数は、前記吐出ノズルの半分が支持材料を吐出するように指定され、前記吐出ノズルの半分がモデル材料を吐出するように指定されるように、すなわち、モデル材料を噴射するノズルの数が支持材料を噴射するノズルの数と同じになるように選択される。図1Aの代表例では、4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、及び16dが示されている。ヘッド16a、16b、16c、及び16dの各々は、ノズルアレイを有する。この例では、ヘッド16a及び16bが、モデル材料用に指定されてもよく、ヘッド16c及び16dが、支持材料用に指定されてもよい。したがって、ヘッド16aは、第1のモデル材料を吐出してもよく、ヘッド16bは、第2のモデル材料を吐出してもよく、ヘッド16c及び16dは、共に支持材料を吐出してもよい。別の選択肢としての実施形態では、ヘッド16c及び16dは、例えば、支持材料を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドにまとめられてもよい。さらなる別の選択肢としての実施形態では、前記印刷ヘッドのいずれか1つ以上が、2つ以上の材料製剤を堆積させるための2つ以上のノズルアレイを有してもよく、例えば、2つの異なるモデル材料製剤、又は1つのモデル材料製剤と1つの支持材料製剤とを、各製剤を異なるアレイ又は異なる数のノズルを介することで堆積させるための2つのノズルアレイである。
【0193】
しかし、本発明の範囲を限定することを意図するものではないこと、及びモデル材料用印刷ヘッド(モデル用ヘッド)の数と支持材料用印刷ヘッド(支持用ヘッド)の数とが異なってもよいことは理解されたい。一般に、モデル材料製剤を吐出するノズルのアレイ数、支持材料製剤を吐出するノズルのアレイ数、及びそれぞれの各アレイ内のノズルの数は、前記支持材料製剤の最大吐出速度とモデル材料製剤の最大吐出速度との間の所定の比率aを提供するように選択される。所定の比率aの値は、好ましくは、形成された各層において、モデル材料の高さが支持材料の高さと確実に等しくなるように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0194】
例えば、a=1の場合、支持材料の全体としての吐出速度は、ノズルの前記アレイすべてが作動する場合の前記モデル材料の全体としての吐出速度と概ね同じである。
【0195】
例えば、装置114は、各々がp個のノズルのm個のアレイを有するM個のモデル用ヘッドと、各々がq個のノズルのs個のアレイを有するS個の支持用ヘッドとを、M×m×p=S×s×qとなるように備え得る。M×m個のモデル用アレイ及びS×s個の支持用アレイの各々は、別個の物理的ユニットとして製造することができ、これらは、組み立て及びアレイの群からの分解が可能である。この実施形態では、このような各アレイは、所望に応じて及び好ましくは、それ自体の温度制御ユニット及び材料製剤レベルセンサーを備え、その作動のために個別に制御された電圧を受ける。
【0196】
いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのアレイの前記温度制御ユニットは、45℃又は40℃又は35℃を超えないように構成される。
【0197】
装置114は、固化デバイス324をさらに備えてよく、これは、堆積された材料の固化を引き起こすことができる光、熱などを放出するように構成されたいずれかのデバイスを含み得る。例えば、固化デバイス324は、1又は複数の放射線源を備えてよく、これは、例えば、用いられる前記モデル材料に応じて、紫外線ランプ又は可視光ランプ又は赤外線ランプ又は他の電磁放射線源又は電子ビーム源であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、固化デバイス324は、前記モデル材料を硬化又は固体化させるのに役立つ。
【0198】
本明細書で用いられる場合、「吐出ヘッド」又は「堆積ヘッド」の用語は、3Dインクジェット印刷などの3D印刷で使用可能な吐出ヘッドである印刷ヘッドを包含する。
【0199】
吐出ヘッド及び放射線源は、好ましくは、作業面として作用するトレイ360上を往復運動するように好ましくは作動可能であるフレーム又はブロック128に搭載される。本発明のいくつかの実施形態では、前記放射線源は、前記吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料を少なくとも部分的に硬化又は固体化させるために、前記吐出ヘッドの後を追うように前記ブロックに搭載される。トレイ360は、水平に配置される。一般的な慣例に従って、X-Y平面がトレイ360に対して平行となるようにX-Y-Z直交座標系が選択される。トレイ360は、好ましくは、垂直方向に(Z方向に沿って)、典型的には下向きに移動するように構成される。本発明の様々な例示的実施形態において、装置114は、1又は複数の平坦化デバイス132、例えばローラー326をさらに備える。平坦化デバイス326は、新たに形成された層の上に後続の層を形成する前に、新たに形成された層の厚さを整える、平坦化する、及び/又は確立するのに役立つ。平坦化デバイス326は、好ましくは、平坦化の過程で発生する余分な材料を回収するための廃棄物回収デバイス136を備える。廃棄物回収デバイス136は、前記材料を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジへと送るいかなる機構を備えていてもよい。
【0200】
使用時、ユニット16の前記吐出ヘッドは、本明細書においてX方向と称されるスキャン方向に移動し、トレイ360上を通過しながら、所定の構成で構築材料を選択的に吐出する。前記構築材料は、典型的には、1又は複数種類の支持材料及び1又は複数種類のモデル材料を含む。ユニット16の前記吐出ヘッドの通過に続いて、放射線源126による前記モデル材料の硬化が行われる。堆積されたばかりの層における出発点に前記ヘッドが戻る逆方向の通過時に、所定の構成に従って構築材料の追加の吐出が行われてもよい。前記吐出ヘッドの前記順方向及び/又は逆方向の通過時に、このようにして形成された層は、前記吐出ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動時の経路に好ましくは従う平坦化装置326によって整えられ得る。前記吐出ヘッドは、X方向に沿って出発点に戻ると、本明細書においてY方向と称される割り出し方向に沿って別の位置へと移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層の構築を継続し得る。別の選択肢として、前記吐出ヘッドは、順方向移動と逆方向移動との間に、又は2回以上の順方向-逆方向移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために前記吐出ヘッドが行う一連のスキャンは、本明細書において単一スキャンサイクルと称される。
【0201】
前記層が完成すると、トレイ360は、続いて印刷されるべき層の所望される厚さに従って、所定のZレベルまでZ方向に下げられる。この手順が繰り返されて、3次元物体112が層ごとに形成される。
【0202】
別の実施形態では、トレイ360は、前記層でのユニット16の前記吐出ヘッドの順方向通過と逆方向通過との間で、Z方向に変位され得る。このようなZ方向の変位は、前記平坦化デバイスと前記表面との接触を一方向で引き起こし、逆方向での接触を防止するために行われる。
【0203】
システム110は、所望に応じて及び好ましくは、構築材料容器又はカートリッジを備え、複数の構築材料を製造装置114に供給する構築材料供給システム330を備える。
【0204】
制御ユニット152は、製造(例:印刷)装置114を制御し、所望に応じて及び好ましくは供給システム330も制御する。制御ユニット152は、典型的には、制御操作を実施するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、好ましくは、Standard Tessellation Language(STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ可読媒体上に表されたCAD構成を例とするコンピュータオブジェクトデータに基づく製造命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。典型的には、制御ユニット152は、本明細書に記載されるように、各吐出ヘッド又はノズルアレイに印加される前記電圧、及びそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイ中の前記構築材料の温度を制御する。
【0205】
前記製造データが制御ユニット152にロードされると、制御ユニット152は、ユーザーの介入なしに作動可能である。いくつかの実施形態では、制御ユニット152は、例えばデータプロセッサ154を用いて、又はユニット152と通信するユーザーインターフェース116を用いて、オペレーターからの追加の入力を受け取る。ユーザーインターフェース116は、限定されるものではないが、キーボード、タッチスクリーンなど、本技術分野で公知のいかなる種類であってもよい。例えば、制御ユニット152は、追加の入力として、1又は複数の構築材料の種類、並びに/又は色、特徴的な変形及び/若しくは転移温度、粘度、電気的特性、磁気的特性などであるがこれらに限定されない属性を受け取ることができる。他の属性及び属性の群も企図される。
【0206】
本発明のいくつかの実施形態に従う物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ限定されない例が、図1B図1Dに示される。図1B図1Dは、システム10の上面図(図1B)、側面図(図1C)、及び等角図(図1D)を示す。
【0207】
本実施形態では、システム10は、トレイ12と、それぞれ1又は複数の離間したノズルを備えたノズルの1又は複数のアレイを各々が有する複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は、ディスクの形状を有してよく、又は環状であってもよい。非円形の形状も企図され、垂直軸を中心に回転可能であればよい。印刷ヘッド16は、システム110に関して上述した前記印刷ヘッドのいずれであってもよい。
【0208】
トレイ12及びヘッド16は、所望に応じて及び好ましくは、トレイ12とヘッド16との間で相対的に回転運動を可能とするように搭載される。これは、(i)ヘッド16に対して、垂直軸14を中心に回転するようにトレイ12を構成すること、(ii)トレイ12に対して、垂直軸14を中心に回転するようにヘッド16を構成すること、又は(iii)垂直軸14を中心に回転するが、異なる回転速度(例:反対方向の回転)であるようにトレイ12及びヘッド16の両方を構成すること、によって実現され得る。以下の実施形態は、前記トレイがヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)に特に重点を置いて記載されているが、本出願が構成(ii)及び(iii)も企図することは理解されたい。本明細書に記載の実施形態のいずれか1つは、構成(ii)及び(iii)のいずれにも適用可能であるように調整することができ、本明細書に記載の詳細事項が提供された当業者であれば、そのような調整を行う方法が分かるであろう。
【0209】
以下の記述において、トレイ12に対して平行であり、軸14から外側に向いた方向は、半径方向rと称され、トレイ12に対して平行であり、半径方向rに対して垂直である方向は、本明細書において周方向φと称され、トレイ12に対して垂直である方向は、本明細書において垂直方向zと称される。
【0210】
本明細書で用いられる場合、「半径方向位置」の用語は、軸14から特定の距離にあるトレイ12上の位置又はトレイ12の上方の位置を意味する。前記用語が印刷ヘッドに関連して用いられる場合、前記用語は、軸14から特定の距離にある前記ヘッドの位置を意味する。前記用語がトレイ12上の点に関連して用いられる場合、前記用語は、半径が軸14からのその特定の距離であり、中心が軸14にある円である点の軌跡に属するいずれかの点に対応する。
【0211】
本明細書で用いられる場合、「周方向位置」の用語は、所定の基準点に対して特定の周方向角であるトレイ12上の位置又はトレイ12の上方の位置を意味する。したがって、半径方向位置は、前記基準点に対して特定の周方向角を形成する直線である点の軌跡に属するいずれかの点を意味する。
【0212】
本明細書で用いられる場合、「垂直位置」の用語は、特定の点で垂直軸14と交差する平面上の位置を意味する。
【0213】
トレイ12は、3次元印刷のための支持構造部として作用する。1又は複数の物体がその上で印刷される作業領域は、必須ではないが典型的には、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、前記作業領域は環状である。前記作業領域は26で示される。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中を通して同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回、回転方向を反転させる(例:振動するように)。トレイ12は、所望に応じて及び好ましくは、取り外し可能である。トレイ12の取り外しは、システム10のメンテナンスのためであってよく、又は所望される場合、新しく物体を印刷する前に前記トレイを交換するためであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、1又は複数の異なる交換用トレイ(例:交換用トレイのキット)を備え、この場合、2つ以上のトレイが、異なる種類の物体用(例:異なる重量)、異なる作動モード用(例:異なる回転速度)などとして指定される。トレイ12の前記交換は、所望に応じて、手動又は自動であってよい。自動交換が用いられる場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下の位置から取り外して、それを交換用トレイ(図示せず)で交換するように構成されたトレイ交換デバイス36を備える。図1Bの代表的な図では、トレイ交換デバイス36は、トレイ12を引くように構成された可動アーム40を有する駆動装置38として図示されているが、他の種類のトレイ交換デバイスも企図される。
【0214】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態が、図2A図2Cに示されている。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない上述したAMシステムのいずれにおいても用いることができる。
【0215】
図2A図2Bは、1つ(図2A)及び2つ(図2B)のノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16を示す。前記アレイ中のノズルは、好ましくは、直線に沿って直線状に整列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の直線状ノズルアレイを有する実施形態では、前記ノズルアレイは、所望に応じて及び好ましくは、互いに対して平行であり得る。印刷ヘッドがノズルの2つ以上のアレイを有する場合(例:図2B)、前記ヘッドのすべてのアレイに同じ構築材料製剤が供給されてもよく、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる構築材料製剤が供給されてもよい。
【0216】
システム110に類似のシステムが用いられる場合、すべての印刷ヘッド16は、所望に応じて及び好ましくは、前記スキャン方向に沿ったそれらの位置が互いにオフセットされた状態で、前記割り出し方向に沿って配向される。
【0217】
システム10に類似のシステムが用いられる場合、すべての印刷ヘッド16は、所望に応じて及び好ましくは、それらの周方向位置が互いにオフセットされた状態で、半径方向(前記半径方向に対して平行)に配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドの前記ノズルアレイは、互いに対して平行ではなく、むしろ互いに対して角度をなしており、この角度は、前記それぞれのヘッド間の周方向のオフセットにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドが、半径方向に配向され、周方向位置φに配置されてよく、別のヘッドが、半径方向に配向され、周方向位置φに配置されてもよい。この例では、2つのヘッド間の周方向オフセットは、φ-φであり、2つのヘッドの直線状ノズルアレイ間の角度も、φ-φである。
【0218】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドが、印刷ヘッドのブロックに組み立てられてもよく、この場合、前記ブロックの印刷ヘッドは、典型的には、互いに対して平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが、図2Cに示されている。
【0219】
いくつかの実施形態では、システム10は、トレイ12がサポート構造部30とヘッド16との間にあるように、ヘッド16の下に配置されたサポート構造部30を備える。サポート構造部30は、インクジェット印刷ヘッド16の作動中に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するのに役立ち得る。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、好ましくはサポート構造部30も、サポート構造部30が常にヘッド16の真下にある(ヘッド16とトレイ12との間にトレイ12がある)ように、回転する。
【0220】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、所望に応じて及び好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変化させるように、垂直軸14に対して平行な前記垂直方向zに沿って移動するように構成される。前記垂直方向に沿ってトレイ12を移動させることによって前記垂直距離を変化させる構成では、好ましくはサポート構造部30も、トレイ12と一緒に垂直方向に移動する。トレイ12の垂直位置を固定した状態で維持して、前記垂直方向に沿ったヘッド16によって前記垂直距離を変化させる構成では、サポート構造部30も、固定された垂直位置に維持される。
【0221】
垂直運動は、垂直駆動部28によって確立され得る。層が完成すると、トレイ12とヘッド16との間の前記垂直距離は、続いて印刷されるべき層の所望される厚さに応じて、所定の垂直ステップ分増加され得る(例:トレイ12がヘッド16に対して下降される)。この手順が繰り返されて、3次元物体が層ごとに形成される。
【0222】
インクジェット印刷ヘッド16の作動、並びに所望に応じて及び好ましくはシステム10の1又は複数の他の構成要素の作動、例えばトレイ12の移動も、コントローラ20によって制御される。前記コントローラは、電子回路及びその回路によって読み取り可能な不揮発性メモリ媒体を有してよく、前記メモリ媒体は、前記回路によって読み取られた場合に、以下でさらに詳述するような制御作動を前記回路に実行させるプログラム命令を記憶する。
【0223】
コントローラ20はまた、例えばStandard Tessellation Language(STL)若しくはStereoLithography Contour(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、Additive Manufacturing File(AMF)フォーマット、Drawing Exchange Format(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、3D Manufacturing Format(3MF)、オブジェクトファイルフォーマット(OBJ)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した他のいずれかのフォーマットの形態で、コンピュータオブジェクトデータに基づく製造命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。前記オブジェクトデータフォーマットは、典型的には、直交座標系に従って構造化される。これらの場合、コンピュータ24は、好ましくは、前記コンピュータオブジェクトデータ中の各スライスの座標を、直交座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、所望に応じて及び好ましくは、変換された座標系に関しての製造命令を送信する。別の選択肢として、コンピュータ24は、前記コンピュータオブジェクトデータによって提供されたままの元の座標系に関しての製造命令を送信してもよく、この場合、座標の変換は、コントローラ20の前記回路によって実行される。
【0224】
前記座標変換によって、回転するトレイ上での3次元印刷が可能となる。固定トレイを備えた非回転システムでは、前記印刷ヘッドは、典型的には、直線に沿って前記固定トレイの上を往復移動する。このようなシステムでは、前記ヘッドの吐出速度が均一であれば、印刷解像度は、前記トレイ上のどの点でも同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッド先端(head points)のすべてのノズルが同じ時間の間にトレイ12上の同じ距離をカバーするわけではない。前記座標変換は、所望に応じて及び好ましくは、異なる半径方向位置での余分な材料の量が確実に等しくなるように実行される。本発明のいくつかの実施形態に従う座標変換の代表的な例が、物体の3つのスライス(各スライスは、前記物体の異なる層の製造命令に対応する)を示す図3A図3Bに提供され、図3Aは、直交座標系におけるスライスを示し、図3Bは、それぞれのスライスに座標変換手順を適用した後の同じスライスを示す。
【0225】
典型的には、コントローラ20は、前記製造命令に基づいて、及び以下に記載されるように、記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0226】
一般に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上に3次元物体を印刷するように、構築材料の液滴を層状に吐出するように、印刷ヘッド16を制御する。
【0227】
システム10は、所望に応じて及び好ましくは、1又は複数の放射線源18を備え、これは、例えば、用いられる前記モデル材料に応じて、紫外線ランプ又は可視光ランプ又は赤外線ランプ又は他の電磁放射線源又は電子ビーム源であってもよい。放射線源としては、限定されるものではないが、発光ダイオード(LED)、デジタルライトプロセッシング(DLP)システム、抵抗ランプなどを含むいかなる種類の放射線放出デバイスも挙げられ得る。例示的な実施形態では、前記放射線源はLEDである。放射線源18は、前記モデル材料及び/又は支持材料を硬化又は固体化させるのに役立つ。本発明の様々な例示的実施形態では、放射線源18の作動は、放射線源18を作動及び非作動とすることができ、所望に応じて放射線源18によって発生される放射線の量も制御することができるコントローラ20によって制御される。
【0228】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラー又はブレードとして製造され得る1又は複数の平坦化デバイス32をさらに備える。平坦化デバイス32は、新たに形成された層の上に後続の層を形成する前に、前記新たに形成された層を整えるのに役立つ。いくつかの実施形態では、平坦化デバイス32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面が前記トレイの表面に対して平行であるように配置された円錐形ローラーの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図(図2C)に示されている。
【0229】
前記円錐形ローラーは、円錐又は円錐台の形状を有し得る。
【0230】
前記円錐形ローラーの開き角は、好ましくは、その軸34に沿ったいずれの位置においても、円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間の比が一定となるように選択される。この実施形態では、ローラー32は、前記ローラーが回転する間、前記ローラー表面上の任意の点pが、点pの鉛直下の点における前記トレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有することから、効率的に層を平坦化することができる。いくつかの実施形態では、前記ローラーは、高さh、軸14から最も近い距離での半径R、及び軸14から最も遠い距離での半径Rを有する円錐台の形状を有し、パラメータh、R、及びRは、R/R=(R-h)/hの関係を満たし、式中、Rは、軸14からの前記ローラーの最も遠い距離である(例えば、Rは、トレイ12の半径であり得る)。
【0231】
平坦化デバイス32の作動は、所望に応じて及び好ましくは、平坦化デバイス32を作動及び非作動とすることができ、所望に応じて、垂直方向(軸14に対して平行)及び/又は半径方向(トレイ12に対して平行であり、軸14に向かう又は軸14から離れる方向)に沿ったその位置も制御することができるコントローラ20によって制御される。
【0232】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、前記半径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さが、トレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。前記半径方向に沿ったヘッド16の運動は、所望に応じて及び好ましくは、コントローラ20によって制御される。
【0233】
いくつかの実施形態は、(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)ノズルの異なるアレイから異なる材料を吐出することによる物体の製造を企図している。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料から材料を選択し、選択された材料及びそれらの特性の所望される組み合わせを定める能力を提供する。本実施形態によると、層による各材料の堆積の空間位置は、異なる材料による異なる3次元空間位置の占有を実現するために、又は層内での前記材料の堆積後の空間的組み合わせを可能とするように、2つ以上の異なる材料による実質的に同じ3次元位置若しくは隣接する3次元位置の占有を実現し、それによってそれぞれの位置で複合材料を形成するために、定められる。
【0234】
モデル材料のいかなる堆積後の組み合わせ又は混合も企図される。例えば、ある特定の材料が吐出されると、それは、元の特性を保存し得る。しかし、それが、別のモデル材料、又は同じ位置若しくは近傍の位置に吐出される他の吐出材料と同時に吐出された場合、前記吐出された材料とは異なる1又は複数の特性を有する複合材料が形成される。
【0235】
本実施形態に適するAMシステムの原理及び操作に関するさらなる詳細は、米国特許第9,031,680号及び国際公開第2016/009426号に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に援用される。
【0236】
したがって、本実施形態は、材料の幅広い組み合わせの堆積を可能とし、及び物体の各部分を特徴付けるために所望される特性に応じて、前記物体の異なる部分において材料の複数の異なる組み合わせから成り得る物体の製造を可能とする。
【0237】
図4は、本発明のいくつかの実施形態に従う3次元物体の付加製造の方法のフローチャート図である。前記方法は、200から開始し、所望に応じて及び好ましくは、201に進み、そこでは、上述のコンピュータオブジェクトデータフォーマットのいずれかである3D印刷データが取得される。
【0238】
前記方法は、1又は複数の未硬化構築材料製剤の液滴が吐出されて層が形成される202に進み得る。前記構築材料製剤は、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載のモデル材料製剤及び本明細書に記載の支持材料製剤を含む。
【0239】
前記モデル材料製剤は、好ましくは、前記物体の形状に対応する構成パターンで、及び前記コンピュータオブジェクトデータに従って、吐出される。他の構築材料製剤は、好ましくは、前記コンピュータオブジェクトデータに従って吐出されるが、これらの構築材料製剤は、典型的には犠牲的(本明細書に記載されるように支持材料として役立つ)であるため、必ずしも前記物体の形状に従って吐出される必要はない。
【0240】
所望に応じて、吐出される前に、前記未硬化構築材料又はその一部(例:前記構築材料の1又は複数の製剤)は、吐出される前に加熱される。これらの実施形態は、3Dインクジェット印刷システムの作業チャンバの作動温度において比較的高い粘度を有する未硬化構築製剤に特に有用である。前記製剤の加熱は、好ましくは、3Dインクジェット印刷システムの印刷ヘッドのノズルを通して前記それぞれの製剤を噴射可能である温度までである。本発明のいくつかの実施形態では、前記加熱は、前記それぞれの製剤がXセンチポアズ以下の粘度を呈する温度までであり、Xは、約30センチポアズ、好ましくは約25センチポアズ、より好ましくは約20センチポアズ、又は18センチポアズ、又は16センチポアズ、又は14センチポアズ、又は12センチポアズ、又は10センチポアズ、又はさらにはそれよりも低い。必須ではないが、特に、前記インクジェット印刷ヘッドが高粘度製剤を吐出するように適合されている場合には、より高い粘度も適用可能であり得ることには留意されたい。したがって、前記製剤を、前記それぞれの製剤が100、150、さらには200センチポアズまでの粘度を呈する温度に加熱することも企図される。
【0241】
前記加熱は、前記AM(例:3Dインクジェット印刷)システムの印刷ヘッドに前記それぞれの製剤を充填する前に、又は前記製剤が前記印刷ヘッド内にある間に、又は組成物が前記印刷ヘッドのノズルを通過する間に実行され得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、前記加熱は、前記それぞれの製剤を前記吐出(例:インクジェット印刷)ヘッドに充填する前に実行され、それによって、前記製剤の粘度が高すぎる場合における、前記製剤による前記吐出(例:インクジェット印刷)ヘッドの目詰まりが回避される。
【0243】
いくつかの実施形態では、前記加熱は、少なくとも、前記モデル材料製剤を前記吐出(例:インクジェット印刷)ヘッドのノズルに通過させる間に、前記吐出(例:インクジェット印刷)ヘッドを加熱することによって実行される。
【0244】
いくつかの実施形態では、新たに吐出された層は、所望に応じて、例えば所望に応じて及び好ましくは回転可能である平坦化デバイス32又は132を用いて、整えられる。
【0245】
前記方法は、所望に応じて及び好ましくは、203に進み、そこでは、例えば本明細書に記載の放射線源を例とする固化デバイスによって、前記堆積された層が硬化条件に曝露される(例:硬化エネルギーが適用される)。好ましくは、硬化は、個々の層に対して、前記層の堆積の後、及び前の層の堆積の前に、適用される。所望に応じて、前記堆積された(吐出された)層は、化学試薬との接触又は環境への曝露などがあるがこれらに限定されない硬化エネルギー以外の硬化条件に曝露される。
【0246】
操作202~203、及びいくつかの実施形態では操作201も、複数の層が順次吐出され固体化されるように、好ましくは複数回順次実行される。これは、図4に、操作203から操作201及び202へ向かうループして戻る矢印として示されている。前記層は、モデル材料製剤から構成されるモデル層のスタックと、本明細書に記載されるものなどの支持材料製剤から構成される犠牲構造とを形成するように吐出され、前記モデル層のスタックと前記犠牲構造とは、変形することなく前記モデル層のスタックの形状及びサイズを維持する方法で互いから分離可能である。
【0247】
本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記層の少なくとも1つのために、デジタル材料製剤を吐出する。
【0248】
本明細書及び本技術分野において用いられる場合、「デジタル材料製剤」の語句は、ある特定の材料製剤の印刷ゾーンが、別の材料製剤のボクセル、又は少数のボクセル、又はボクセルブロックによって少なくとも部分的に囲まれたボクセル、又は少数のボクセル、又はボクセルブロックを占有するように、互いに交絡した2つ以上の材料製剤の組み合わせを表す。このようなデジタル材料製剤は、材料製剤の種類の選択並びに/又は2つ以上の材料製剤の比率及び相対的空間分布によって影響を受ける新しい特性を呈し得る。
【0249】
例示的なデジタル材料製剤では、硬化すると得られる各ボクセル又はボクセルブロックのモデル材料製剤又は支持材料製剤は、硬化すると得られる隣接するボクセル又はボクセルブロックのモデル材料製剤又は支持材料製剤とは独立しており、それによって、各ボクセル又はボクセルブロックが、異なるモデル材料製剤又は支持材料製剤であるという結果となり得、複数の異なるモデル材料製剤のボクセルレベルでの空間的組み合わせの結果、物体全体の新しい特性が得られる。
【0250】
本発明の様々な例示的実施形態では、操作202~203は、層の少なくとも一部分について、交絡した位置に異なる構築材料製剤を含有するボクセル要素を形成するために実行される。
【0251】
いくつかの実施形態では、前記層の少なくとも1つ、又は少なくともいくつか(例:少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、又はそれ以上)は、2つ以上の構築材料製剤の液滴を、各構築材料製剤を異なるノズルアレイから、交絡した位置に吐出することによって形成される。これらの構築材料製剤は、(i)それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される2つ以上のモデル材料製剤、(ii)それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される少なくとも1つのモデル材料製剤及び少なくとも1つの支持材料製剤、又は(iii)それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される2つ以上の支持材料製剤、を含み得る。
【0252】
いくつかの実施形態では、前記方法は、204へと続き、そこでは、固化された支持材料が印刷物体から除去され、それによって最終物体が現れる。除去204は、2つ以上の方法で行うことができる。
【0253】
本発明のいくつかの実施形態では、除去204は、前記印刷物体を水又は水溶液と接触させることによる。好ましくは、前記水溶液は、洗剤を含まない。好ましくは、前記水溶液は、アルカリ性物質を含まない。
【0254】
前記接触は、前記印刷物体を静水若しくは水溶液に浸漬することによって、又は前記印刷物体を循環水、例えばジャクージに浸漬することによって、又は前記印刷物体を超音波水浴に浸漬することによって、又は前記印刷物体を、洗剤を含まない水若しくは水溶液での機械的食器洗浄に掛けることによって行われ得る。
【0255】
前記方法は205で終了する。
【0256】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、その実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載される方法によって製造された3次元モデル物体が提供される。
【0257】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に記載の3Dモデル物体が提供される。
【0258】
本発明のいくつかの実施形態によると、前記物体は、それが製造された様式にかかわらず、均一な外観、例えば均一な「光沢」外観又は均一な「マット」外観を特徴とすることによって特徴付けられる。
【0259】
本明細書で用いられる場合、「約」の用語は、±10%又は±5%を意味する。
【0260】
用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」、及びこれらの活用形は、「含むが限定されない」を意味する。
【0261】
「から成る」の用語は、「含み、限定される」を意味する。
【0262】
「本質的に成る」の用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含んでもよいが、前記追加の成分、工程、及び/又は部分が、請求される組成物、方法、又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0263】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限りは、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」の用語は、その混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0264】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態が、範囲の形式で提示される場合がある。範囲形式での記述は、単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する変えることのできない限定として解釈されるべきではないことは理解されたい。したがって、範囲の記述は、すべての可能なサブ範囲、さらにはその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのサブ範囲、さらにはその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したものと見なされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0265】
本明細書において数値範囲が示される場合は常に、前記示された範囲内のいずれの引用数値(分数又は整数)も含むことを意味する。第1の示された数値と第2の示された数値との「間の範囲内の/範囲内である」、及び第1の示された数値「から」第2の示された数値「までの範囲内の/範囲内である」の語句は、本明細書において互換的に用いられ、前記第1及び第2の示された数値、並びにその間のすべての分数及び整数の数値を含むことを意味する。
【0266】
本明細書で用いられる場合、「方法」の用語は、所与のタスクを達成するための方式、手段、技術、及び手順を意味し、化学、薬学、生物学、生化学、及び医学の専門家によって、公知であるか又は既知の方式、手段、技術、及び手順から容易に開発されるかのいずれかである方式、手段、技術、及び手順を含むが、これらに限定されない。
【0267】
本明細書全体を通して、「水混和性」の用語は、少なくとも部分的に水に溶解可能又は分散可能であり、すなわち、室温で混合すると分子の少なくとも50%が水中に移動する材料を表す。この用語は、「水溶性」及び「水分散性」の用語を包含する。
【0268】
本明細書全体を通して、「水溶性」の用語は、室温で等体積又は等重量の水と混合された場合に、均質な溶液が形成される材料を表す。
【0269】
本明細書全体を通して、「水分散性」の用語は、室温で等体積又は等重量の水と混合された場合に、均質な分散体を形成する材料を表す。
【0270】
本明細書全体を通して、「分岐単位」の用語は、脂肪族、脂環式、又は芳香族であってもよい多価基(multi-radical group)を表す。「多価基」とは、前記単位が、2つ以上の原子及び/又は基若しくは部分の間をそれが連結するように2つ以上の結合点を有することを意味する。
【0271】
いくつかの実施形態では、前記分岐単位は、2つ、3つ、又はそれ以上の官能基を有する化学部分から誘導される。いくつかの実施形態では、前記分岐単位は、本明細書において定められる分岐鎖状のアルキル又はシクロアルキル(脂環式)又はアリール(例:フェニル)である。
【0272】
本明細書全体を通して、「連結部分」又は「連結基」の語句は、化合物中の2つ以上の部分又は基を結合する基を表す。連結部分は、典型的には、二官能又は三官能の化合物から誘導され、それぞれ、その2個又は3個の原子を介して、2つ又は3つの他の部分に結合された、二価又は三価の部分と見なされ得る。
【0273】
例示的な連結部分としては、本明細書において定められるように、所望に応じて1若しくは複数のヘテロ原子が介在する炭化水素部分若しくは炭化水素鎖、及び/又は連結基として定められる場合、以下に列挙される化学基のいずれかが挙げられる。
【0274】
化学基が本明細書において「末端基」と称される場合、それは置換基として解釈されるべきであり、その1個の原子を介して別の基に結合されている。
【0275】
本明細書全体を通して、「炭化水素」の用語は、主として炭素原子及び水素原子から構成される化学基を集合的に表す。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルから構成されてよく、各々、置換又は非置換であってよく、1又は複数のヘテロ原子が介在していてもよい。炭素原子の数は、2~20個の範囲内であってよく、より少ないことが好ましく、例えば、1~10、又は1~6、又は1~4個である。炭化水素は、連結基又は末端基であってもよい。
【0276】
ビスフェノールAは、2つのアリール基と1つのアルキル基から構成される炭化水素の一例である。
【0277】
本明細書で用いられる場合、「アミン」の用語は、-NR’R’’基及び-NR’-基の両方を表し、式中、R’及びR’’は、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は、本明細書において以下で定められる通りである。
【0278】
したがって、前記アミン基は、R’及びR’’の両方が水素である第一級アミン、R’が水素であり、R’’がアルキル、シクロアルキル、若しくはアリールである第二級アミン、又はR’及びR’’の各々が独立してアルキル、シクロアルキル、若しくはアリールである第三級アミンであってもよい。
【0279】
別の選択肢として、R’及びR’’は、各々独立して、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。
【0280】
「アミン」の用語は、本明細書において以下で定められるように、前記アミンが末端基である場合は、-NR’R’’基を表すために本明細書において用いられ、前記アミンが連結基である又は連結部分の一部である場合は、-NR’-基を表すために本明細書において用いられる。
【0281】
「アルキル」の用語は、直鎖基及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、前記アルキル基は、1~30個、又は1~20個の炭素原子を有する。「1~20」を例とする数値範囲が本明細書に記載される場合は常に、この場合はアルキル基である前記基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから20個を含む最大20個までの炭素原子を含有してもよいことを示唆する。前記アルキル基は、置換又は非置換であってもよい。置換アルキルは、1又は複数の置換基を有していてもよく、その場合、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。
【0282】
前記アルキル基は、末端基であってよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、この場合、それは隣接する単一の原子に結合し、又は連結基であってもよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、これは、その鎖中の少なくとも2個の炭素を介して、2つ以上の部分を結合する。前記アルキルが連結基である場合、それは、本明細書において「アルキレン」又は「アルキン鎖」とも称される。
【0283】
本明細書において、本明細書において定められる親水性基で置換されたC(1-4)アルキルは、本明細書での語句「親水性基」に含まれる。
【0284】
本明細書で用いられる場合、アルケン及びアルキンは、それぞれ1又は複数の二重結合又は三重結合を含有する本明細書において定められるアルキルである。
【0285】
「シクロアルキル」の用語は、環の1又は複数が完全に共役したπ電子系を有しない、全炭素単環式環又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子の対を共有する環)の基を表す。例としては、限定されないが、シクロヘキサン、アダマンチン、ノルボルニル、イソボルニルなどが挙げられる。前記シクロアルキル基は、置換又は非置換であってもよい。置換シクロアルキルは、1又は複数の置換基を有していてもよく、その場合、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。前記シクロアルキル基は、末端基であってよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、この場合、それは隣接する単一の原子に結合し、又は連結基であってもよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を結合する。
【0286】
本明細書で定められる2つ以上の親水性基で置換された1~6個の炭素原子のシクロアルキルは、本明細書での語句「親水性基」に含まれる。
【0287】
「ヘテロ脂環式」の用語は、環に窒素、酸素、及び硫黄などの原子を1又は複数有する単環式環基又は縮合環基を表す。前記環はまた、1又は複数の二重結合を有していてもよい。しかし、前記環は、完全に共役したπ電子系を有しない。代表例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、オキサリジンなどである。
【0288】
前記ヘテロ脂環式は、置換又は非置換であってもよい。置換ヘテロ脂環式は、1又は複数の置換基を有していてもよく、その場合、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。前記ヘテロ脂環式基は、末端基であってよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、この場合、それは隣接する単一の原子に結合し、又は連結基であってもよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を結合する。
【0289】
窒素及び酸素などの電子供与性原子を1又は複数含み、炭素原子対ヘテロ原子の数比が5:1以下であるヘテロ脂環式基は、本明細書での語句「親水性基」に含まれる。
【0290】
「アリール」の用語は、完全に共役したπ電子系を有する全炭素単環式基又は縮合環多環式基(すなわち、隣接する炭素原子の対を共有する環)を表す。前記アリール基は、置換又は非置換であってもよい。置換アリールは、1又は複数の置換基を有していてもよく、その場合、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。前記アリール基は、末端基であってよく、この用語は本明細書において上記で定められる通りであり、この場合、それは隣接する単一の原子に結合し、又は連結基であってもよく、この用語は本明細書において上記で定められる通りであり、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を結合する。
【0291】
「ヘテロアリール」の用語は、例えば窒素、酸素、及び硫黄などの1又は複数の原子を環内に有し、加えて完全に共役したπ電子系を有する単環式基又は縮合環基(すなわち、隣接する原子の対を共有する環)を表す。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、及びプリンが挙げられる。前記ヘテロアリール基は、置換又は非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは、1又は複数の置換基を有していてもよく、その場合、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。前記ヘテロアリール基は、末端基であってよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、この場合、それは隣接する単一の原子に結合し、又は連結基であってもよく、この語句は本明細書において上記で定められる通りであり、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を結合する。代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0292】
「ハライド」及び「ハロ」の用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を表す。
【0293】
「ハロアルキル」の用語は、1又は複数のハライドでさらに置換された上記で定められるアルキル基を表す。
【0294】
「サルフェート」の用語は、-O-S(=O)-OR’末端基を表し、この用語は本明細書において上記で定められる通りであり、又は-O-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0295】
「チオサルフェート」の用語は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基又は-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0296】
「サルファイト」の用語は、-O-S(=O)-O-R’末端基又は-O-S(=O)-O-基である連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0297】
「チオサルファイト」の用語は、-O-S(=S)-O-R’末端基又は-O-S(=S)-O-基である連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0298】
「スルフィネート」の用語は、-S(=O)-OR’末端基又は-S(=O)-O-基である連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0299】
「スルホキシド」又は「スルフィニル」の用語は、-S(=O)R’末端基又は-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0300】
「スルホネート」の用語は、-S(=O)-R’末端基又は-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において定められる通りである。
【0301】
「S-スルホンアミド」の用語は、-S(=O)-NR’R’’末端基又は-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0302】
「N-スルホンアミド」の用語は、R’S(=O)-NR’’-末端基又は-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0303】
「ジスルフィド」の用語は、-S-SR’末端基又は-S-S-連結基を意味し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において定められる通りである。
【0304】
「ホスホネート」の用語は、-P(=O)(OR’)(OR’’)末端基又は-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0305】
「チオホスホネート」の用語は、-P(=S)(OR’)(OR’’)末端基又は-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0306】
「ホスフィニル」の用語は、-PR’R’’末端基又は-PR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0307】
「ホスフィンオキシド」の用語は、-P(=O)(R’)(R’’)末端基又は-P(=O)(R’)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0308】
「ホスフィンスルフィド」の用語は、-P(=S)(R’)(R’’)末端基又は-P(=S)(R’)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0309】
「ホスファイト」の用語は、-O-PR’(=O)(OR’’)末端基又は-O-PH(=O)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0310】
本明細書で用いられる場合、「カルボニル」又は「カーボネート」の用語は、-C(=O)-R’末端基又は-C(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’は本明細書において定められる通りである。
【0311】
本明細書で用いられる場合、「チオカルボニル」の用語は、-C(=S)-R’末端基又は-C(=S)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’は本明細書において定められる通りである。
【0312】
本明細書で用いられる場合、「オキソ」の用語は、(=O)基を表し、酸素原子は、示された位置の原子(例:炭素原子)と二重結合によって連結されている。
【0313】
本明細書で用いられる場合、「チオオキソ」の用語は、(=S)基を表し、硫黄原子は、示された位置の原子(例:炭素原子)と二重結合によって連結されている。
【0314】
「オキシム」の用語は、=N-OH末端基又は=N-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りである。
【0315】
「ヒドロキシル」の用語は、-OH基を表す。
【0316】
「アルコキシ」の用語は、本明細書において定められるように、-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を表す。
【0317】
「アリールオキシ」の用語は、本明細書において定められるように、-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0318】
「チオヒドロキシ」の用語は、-SH基を表す。
【0319】
「チオアルコキシ」の用語は、本明細書において定められるように、-S-アルキル基及び-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0320】
「チオアリールオキシ」の用語は、本明細書において定められるように、-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0321】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書において「アルコール」とも称され、ヒドロキシ基で置換された、本明細書において定められる通りのアルキルを表す。
【0322】
「シアノ」の用語は、-C≡N基を表す。
【0323】
「イソシアネート」の用語は、-N=C=O基を表す。
【0324】
「イソチオシアネート」の用語は、-N=C=S基を表す。
【0325】
「ニトロ」の用語は、-NO基を表す。
【0326】
「アシルハライド」の用語は、-(C=O)R’’’’基を表し、式中、R’’’’は、本明細書において上記で定められるハライドである。
【0327】
「アゾ」又は「ジアゾ」の用語は、-N=NR’末端基又は-N=N-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0328】
「ペルオキソ」の用語は、-O-OR’末端基又は-O-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’は本明細書において上記で定められる通りである。
【0329】
本明細書で用いられる場合、「カルボキシレート」の用語は、C-カルボキシレート及びO-カルボキシレートを包含する。
【0330】
「C-カルボキシレート」の用語は、-C(=O)-OR’末端基又は-C(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’は本明細書において定められる通りである。
【0331】
「O-カルボキシレート」の用語は、-OC(=O)R’末端基又は-OC(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’は本明細書において定められる通りである。
【0332】
カルボキシレートは、直鎖状又は環状であってもよい。環状である場合、C-カルボキシレートでは、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成し、この基は、ラクトンとも称される。別の選択肢として、O-カルボキシレートでは、R’とOとが一緒に連結して環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、前記形成された環の原子が別の基と連結している場合、連結基として機能し得る。
【0333】
本明細書で用いられる場合、「チオカルボキシレート」の用語は、C-チオカルボキシレート及びO-チオカルボキシレートを包含する。
【0334】
「C-チオカルボキシレート」の用語は、-C(=S)-OR’末端基又は-C(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において定められる通りである。
【0335】
「O-チオカルボキシレート」の用語は、-OC(=S)R’末端基又は-OC(=S)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’は本明細書において定められる通りである。
【0336】
チオカルボキシレートは、直鎖状又は環状であってもよい。環状である場合、C-チオカルボキシレートでは、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成し、この基は、チオラクトンとも称される。別の選択肢として、O-チオカルボキシレートでは、R’とOとが一緒に連結して環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、前記形成された環の原子が別の基と連結している場合、連結基として機能し得る。
【0337】
本明細書で用いられる場合、「カルバメート」の用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0338】
「N-カルバメート」の用語は、R’’OC(=O)-NR’-末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0339】
「O-カルバメート」の用語は、-OC(=O)-NR’R’’末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0340】
カルバメートは、直鎖状又は環状であってもよい。環状である場合、O-カルバメートでは、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成する。別の選択肢として、N-カルバメートでは、R’とOとが一緒に連結して環を形成する。環状カルバメートは、例えば、前記形成された環の原子が別の基と連結している場合、連結基として機能し得る。
本明細書で用いられる場合、「カルバメート」の用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0341】
本明細書で用いられる場合、「チオカルバメート」の用語は、N-チオカルバメート及びO-チオカルバメートを包含する。
【0342】
「O-チオカルバメート」の用語は、-OC(=S)-NR’R’’末端基又は-OC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0343】
「N-チオカルバメート」の用語は、R’’OC(=S)NR’-末端基又は-OC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0344】
チオカルバメートは、カルバメートについて本明細書に記載されるように、直鎖状又は環状であってもよい。
【0345】
本明細書で用いられる場合、「ジチオカルバメート」の用語は、S-ジチオカルバメート及びN-ジチオカルバメートを包含する。
【0346】
「S-ジチオカルバメート」の用語は、-SC(=S)-NR’R’’末端基又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0347】
「N-ジチオカルバメート」の用語は、R’’SC(=S)NR’-末端基又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0348】
本明細書において「ウレイド」とも称される「ウレア」の用語は、-NR’C(=O)-NR’’R’’’末端基又は-NR’C(=O)-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’及びR’’は本明細書において定められる通りであり、R’’’は本明細書においてR’及びR’’について定められる通りである。
【0349】
本明細書において「チオウレイド」とも称される「チオウレア」の用語は、-NR’-C(=S)-NR’’R’’’末端基又は-NR’-C(=S)-NR’’-連結基を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書において定められる通りである。
【0350】
本明細書で用いられる場合、「アミド」の用語は、C-アミド及びN-アミドを包含する。
【0351】
「C-アミド」の用語は、-C(=O)-NR’R’’末端基又は-C(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0352】
「N-アミド」の用語は、R’C(=O)-NR’’-末端基又はR’C(=O)-N-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0353】
アミドは、直鎖状又は環状であってもよい。環状である場合、C-アミドでは、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成し、この基は、ラクタムとも称される。環状アミドは、例えば、前記形成された環の原子が別の基と連結している場合、連結基として機能し得る。
【0354】
「グアニル」の用語は、R’R’’NC(=N)-末端基又は-R’NC(=N)-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’及びR’’は本明細書において定められる通りである。
【0355】
「グアニジン」の用語は、-R’NC(=N)-NR’’R’’’末端基又は-R’NC(=N)-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’、R’’、及びR’’’は本明細書において定められる通りである。
【0356】
「ヒドラジン」の用語は、-NR’-NR’’R’’’末端基又は-NR’-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’、R’’、及びR’’’は本明細書において定められる通りである。
【0357】
本明細書で用いられる場合、「ヒドラジド」の用語は、-C(=O)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=O)-NR’-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’、R’’、及びR’’’は本明細書において定められる通りである。
【0358】
本明細書で用いられる場合、「チオヒドラジド」の用語は、-C(=S)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=S)-NR’-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書において上記で定められる通りであり、式中、R’、R’’、及びR’’’は本明細書において定められる通りである。
【0359】
本明細書で用いられる場合、「アルキレングリコール」の用語は、-O-[(CR’R’’)-O]-R’’’末端基又は-O-[(CR’R’’)-O]-連結基を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書において定められる通りであり、zは1~10の整数、好ましくは2~6、より好ましくは2又は3であり、yは1以上の整数である。好ましくは、R’及びR’’は、いずれも水素である。zが2であり、yが1である場合、この基はエチレングリコールである。zが3であり、yが1である場合、この基はプロピレングリコールである。yが2~4である場合、前記アルキレングリコールは、本明細書においてオリゴ(アルキレングリコール)と称される。
【0360】
yが4よりも大きい場合、前記アルキレングリコールは、本明細書においてポリ(アルキレングリコール)と称される。本発明のいくつかの実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)基又は部分は、zが10~200、好ましくは10~100、より好ましくは10~50であるように、10~200の繰り返しアルキレングリコール単位を有し得る。
【0361】
「シラノール」の用語は、-Si(OH)R’R’’基、又は-Si(OH)R’基、又は-Si(OH)基を表し、R’及びR’’は本明細書に記載される通りである。
【0362】
「シリル」の用語は、-SiR’R’’R’’’基を表し、R’、R’’、及びR’’’は、本明細書に記載される通りである。
【0363】
本明細書で用いられる場合、「ウレタン」又は「ウレタン部分」又は「ウレタン基」の用語は、Rx-O-C(=O)-NR’R’’末端基又は-Rx-O-C(=O)-NR’-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書において定められる通りであり、Rxはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール、又はこれらのいずれかの組み合わせである。好ましくは、R’及びR’’は、いずれも水素である。
【0364】
「ポリウレタン」又は「オリゴウレタン」の用語は、その繰り返し主鎖単位中に、本明細書に記載の少なくとも1つのウレタン基を、又は前記その繰り返し主鎖単位中に、少なくとも1つのウレタン結合、-O-C(=O)-NR’-を含む部分を表す。
【0365】
明瞭性のために別々の実施形態の文脈で記載される本発明のある特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることは理解される。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は適切ないずれかのサブ組み合わせで、又は本発明に記載の他のいずれかの実施形態において適切であるようにも提供され得る。様々な実施形態の文脈で記載されるある特定の特徴は、前記実施形態がそれらの要素なしで無効とならない限り、それらの実施形態の必須の特徴であると見なされるべきではない。
【0366】
本明細書において上記で示され、以下の特許請求の範囲において請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の例において実験的裏付けを得る。
【実施例
【0367】
次に、以下の実施例を参照するが、これらは、上記の記述と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示すものである。
【0368】
実施例1
支持材料製剤の設計
水(好ましくは、洗剤を含まない水)に浸漬した場合又は接触した場合に容易に除去することができる一方で、製造の過程で支持材料と接触した印刷物体の部分の外観(例:光沢のある外観、細かい細部など)に影響を与えることのない固化された支持材料を提供する支持材料製剤の探索において、本発明者らは、支持材料製剤の非硬化性成分を操作することを考えた。
【0369】
本発明者らは、本明細書に記載の親水性硬化性単官能(モノマー)材料とポリオールとをベースとする充分な製剤の試験を、前記ポリオールの性質(その分子量、直鎖度)を操作し、及び様々な量の様々な非硬化性添加剤の効果を試験しながら行った。
【0370】
前記試験した製剤のほとんどは、3D印刷プロセス中に浸出又は溶融し、ローラーを汚染し、モデル材料から剥離し(固化されたモデル材料との接着性が悪い)、及び/又はそれぞれの部分がマット外観となることで失敗であったが、本発明者らは、ある特定の組み合わせ及び種類のポリオール及びポリエステルをある特定の濃度範囲で用いた場合に、前記印刷プロセス及び前記物体の外観に悪影響を及ぼすことなく容易に除去することができる固化された支持材料を得ることができることを明らかにした。
【0371】
より具体的には、本発明者らは、本明細書に記載の親水性硬化性単官能(モノマー)材料と、約400~約1000グラム/モルの分子量を有するポリオール、好ましくは分岐鎖状ポリオールであるそのようなポリオールと、室温で液体である(例:加工温度よりも低い、好ましくは室温より低い融点を有する)又は室温で前記製剤中において溶解可能及び/若しくは安定である(結晶化、沈殿、又は凝集を起こさない)、400グラム/モル超又は500グラム/モル超の分子量を有するポリエステル材料とを含む製剤において良好な性能が得られることを明らかにした。そのような製剤は、噴射温度(例:70℃)での適切な粘度、すなわち、20センチポアズ未満又は15センチポアズ未満の粘度(ブルックフィールド粘度計で測定した場合);製造プロセス中における前記固化されたモデル材料への良好な接着性;製造中におけるシステムとの良好な適合性(例:浸出、溶融、及びローラー汚染がない);及び前記物体の外観への悪影響がないこと、を特徴とする。
【0372】
本発明者らはさらに、前記ポリオール対前記ポリエステルの重量比が、4:1未満又は3:1未満、例えば2:1~3:1の範囲であることが好ましいことを明らかにした。
【0373】
実施例2
実験データ
以下の表1は、改良された製剤の探索時に試験した例示的な支持材料製剤、及びその性能を示す。性能は、前記モデル材料からの剥離がないこと(前記モデル材料への良好な接着性)、良好な表面品質、及び良好な印刷性を特徴とする製剤の場合に、良好であるとして示し、前記印刷性は、例えば、浸出、溶融、及びローラー汚染が実質的にないことを特徴とする。性能は、上記のパラメータのうちの1つが満たされなかった場合、「0」として示され、「不合格」と見なされる。
【0374】
前記試験した製剤の性能は、J55システム(Stratasys Ltd.,Israel)をVero(商標)モデル材料製剤(例:VeroBlackPlus(商標))と組み合わせた3Dインクジェット印刷に関するものである。固化された支持材料の除去は、静水中に1時間~数時間浸漬することによって行った。
【0375】
【表1】
【0376】
MWが1000グラム/モル未満であることを特徴とするポリオール、好ましくは分岐鎖状ポリオールとポリエステル材料との、ある特定の量及び/又は比率での組み合わせを選択することで、改善された性能が得られることが分かる。
【0377】
本実施形態に従う製剤を用いながら得られた固化された支持材料は、室温で静水に浸漬した場合、室温で循環水(ジャクージ)による浴に浸漬した場合、超音波を適用しながら40℃の水に浸漬した場合、及び40℃の洗剤を含まない水による食器洗浄機に入れた場合に、良好に除去された(データは示さず)。
【0378】
図5は、J55システムで製造した同一の印刷モデルからの、液体循環を伴うジャクージ中における、「REF」と示す参照支持材料(固化)及び「WSS」と示す本実施形態に従う例示的支持材料の溶解時間(単位は時間)を示す棒グラフである。
【0379】
図6は、本実施形態に従う例示的な支持材料製剤を用いて得られた細かい細部要素を特徴とする物体の、固化された支持材料を除去した後の写真である。用いたモデル材料は、StratasysによってVero(登録商標)及びVeroUltra(商標)の商品名で市販されているファミリーの1つに由来する。そのようなモデルタイプは、典型的には、支持材除去中に破損するか、又はそのような細部を全く見ることができないか(例えば、除去することができなかった可能性のある支持材料残留物が存在することによって)のいずれかである。
【0380】
本発明をその具体的な実施形態と併せて記載してきたが、多くの別の選択肢、改変、及び変更が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって、本発明は、添付の請求項の趣旨及び広い範囲に含まれるすべてのそのような別の選択肢、改変、及び変更を包含することを意図している。
【0381】
本出願者は、本明細書において参照されるすべての刊行物、特許、及び特許出願が、参照される際に個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により本明細書に援用されることになると具体的かつ個別に記載されているかのように、その全内容が参照により本明細書に援用されることになることを意図している。加えて、本出願におけるいずれの参考文献の引用又は識別も、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈してはならない。セクションの見出しが用いられる範囲内において、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、本出願のいずれの優先権書類も、その全内容が参照により本明細書に援用される。
[1]
3次元物体の付加製造に用いるための支持材料製剤であって、
親水性硬化性単官能材料、
1000グラム/モル未満又は800グラム/モル未満の分子量を有するポリオール、及び
400グラム/モル超又は500グラム/モル超の平均分子量を有するポリエステル材料、を含む、
支持材料製剤。
[2]
前記ポリエステル材料の量が、前記製剤の総重量に対して25重量%以下である、
前記[1]に記載の支持材料製剤。
[3]
前記ポリエステル材料の量が、前記製剤の総重量に対して10~20重量%の範囲内である、
前記[1]又は[2]に記載の支持材料製剤。
[4]
前記ポリエステル材料が、室温で液体である、又は室温で前記製剤に可溶性である、
前記[1]~[3]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[5]
前記ポリエステル材料が、ポリカプロラクトンである、又はポリカプロラクトンを含む、
前記[1]~[4]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[6]
前記ポリオールが、分岐鎖状ポリオールである、
前記[1]~[5]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[7]
前記ポリオールの前記ポリエステル材料に対する重量比が、4:1以下又は3:1以下である、
前記[1]~[6]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[8]
前記ポリオール対前記ポリエステル材料の重量比が、約3:1~約2:1の範囲内である、
前記[1]~[6]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[9]
前記ポリオールの平均分子量が、500~900、又は500~800、又は600~800グラム/モルの範囲内である、
前記[1]~[8]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[10]
前記ポリオールの量が、前記製剤の総重量に対して30~60、又は30~50、又は35~45重量%の範囲内である、
前記[1]~[9]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[11]
前記ポリオールが、分岐鎖状のポリ(アルキレングリコール)、例えば分岐鎖状のポリ(プロピレングリコール)である、
前記[1]~[10]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[12]
前記親水性硬化性材料が、光硬化性材料である、
前記[1]~[11]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[13]
光重合開始剤をさらに含む、
前記[12]に記載の支持材料製剤。
[14]
前記光重合開始剤の量が、前記製剤の総重量に対して0.5~3重量%の範囲内である、
前記[13]に記載の支持材料製剤。
[15]
表面活性剤をさらに含む、
前記[1]~[14]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[16]
重合禁止剤をさらに含む、
前記[1]~[15]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[17]
室温で静水に浸漬させた場合に溶解可能である固化された材料を提供することを特徴とする、
前記[1]~[16]のいずれかに記載の支持材料製剤。
[18]
3次元物体の製造方法であって、
前記物体の形状に対応する3次元印刷データを受け取ることと、
前記印刷データに従って、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッドを用いて、未硬化構築材料の液滴を、受け媒体上に層状に吐出することと、を含み、
前記未硬化構築材料は、少なくとも1つのモデル材料製剤及び少なくとも1つの支持材料製剤を含み、
前記支持材料製剤は、前記[1]~[17]のいずれかに記載の製剤である、
製造方法。
[19]
前記吐出することに続いて、前記層を硬化条件に曝露し、それによって固化されたモデル材料及び固化された支持材料を提供することをさらに含む、
前記[18]に記載の方法。
[20]
前記固化された支持材料を除去することをさらに含む、
前記[19]に記載の方法。
[21]
前記固化された支持材料を除去することが、静水中に浸漬することによるものである、
前記[20]に記載の方法。
[22]
前記固化された支持材料を除去することが、循環水中に浸漬することによるものである、
[21]記載の方法。
[23]
前記固化された支持材料を除去することが、水浴中に浸漬し、前記水浴に超音波を適用することによるものである、
前記[21]記載の方法。
[24]
前記固化された支持材料を除去することが、洗剤を含まない水を用いた食器洗浄によるものである、
前記[21]記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6