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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】光学像変換ユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241108BHJP
   G02B 13/16 20060101ALI20241108BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20241108BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20241108BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20241108BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/02 E
G02B13/16
G03B5/00 J
G03B11/00
G03B17/14
G03B17/56 Z
H04N23/55
H04N23/68
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020199884
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078917
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】515333271
【氏名又は名称】株式会社三井光機製作所
(72)【発明者】
【氏名】三井 辰郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 景三
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-160312(JP,A)
【文献】特開2002-365517(JP,A)
【文献】特開2005-352160(JP,A)
【文献】国際公開第2006/106620(WO,A1)
【文献】特開2002-318104(JP,A)
【文献】特開2005-012497(JP,A)
【文献】特開2002-296502(JP,A)
【文献】特開2008-046415(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196389(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 17/14
G03B 5/00
G03B 11/00
G03B 17/56
G02B 13/16
H04N 23/55
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ系の第一結像面に結像された第一結像を第二結像面に結像させるリレーレンズ系を備え、
前記リレーレンズ系は第一リレーレンズ群および第二リレーレンズ群とからなり、
前記第一リレーレンズ群は、前記第一結像面の第一結像を平行光束として出射し、前記第二リレーレンズ群は前記第一リレーレンズより出射された前記平行光束を入射し、前記第二結像面に結像させ、前記第一リレーレンズ群と前記第二リレーレンズ群との間に光束絞りおよび光学フィルターを備え
前記第一リレーレンズ群および前記第二リレーレンズ群の焦点距離比率を変更することでサイズの異なる撮像素子に適応するように構成することを特徴とする光学像変換ユニット。
【請求項5】
対物レンズ系の第一結像面に結像された第一結像を第二結像面に結像させるリレーレンズ系を備え、
前記リレーレンズ系は、第一リレーレンズ群および第二リレーレンズ群とからなり、
前記第一リレーレンズ群は、前記第一結像面の第一結像を平行光束として出射し、前記第二リレーレンズ群は前記第一リレーレンズ群より出射された前記平行光束を入射し、前記第二結像面に結像させ、前記第一リレーレンズ群と前記第二リレーレンズ群との間に手ブレ補正手段を備え、
前記第一リレーレンズ群および前記第二リレーレンズ群の焦点距離比率を変更することでサイズの異なる撮像素子に適応するように構成することを特徴とする光学像変換ユニット。
【請求項6】
対物レンズ系と撮像装置本体との交換レンズマウントに挿入可能な光学変換ユニットであって、
該光学像変換ユニットは、前記対物レンズ系による第一結像を第二結像面に結像させるリレーレンズ系を備え
前記リレーレンズ系は、第一リレーレンズ群と第二リレーレンズ群とから成り、
前記第一リレーレンズ群は、前記第一結像を平行光束として出射し、前記第二リレーレンズ群は、前記第一リレーレンズ群よりの平行光束を入射し前記第二結像面に結像させ、
前記第一リレーレンズ群と前記第二リレーレンズ群との間に光束分離手段を備え、
前記第一リレーレンズ群および前記第二リレーレンズ群の焦点距離比率を変更することでサイズの異なる撮像素子に適応するように構成することを特徴とする光学像変換ユニット。
【請求項7】
前記光束分離手段は、赤外光分離プリズムまたは赤外光分離ビームスプリッターであることを特徴とする請求項記載の光学像変換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズ系の一部を光学像変換ユニットとして構成し、交換レンズマウントや光学系の中間部に取り外し可能なアダプターとすることで撮像装置の利用範囲を拡大し、撮像素子のサイズと交換レンズに伴う制約を軽減し、撮像装置の多機能化を図る光学像変換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラや静止画カメラの光学レンズは、採用する撮像素子(以下、センサーとも称する)のイメージサイズに応じて設計されている。センサーはそのセンサーに適合するレンズの結像面に配置され、当然センサーのイメージサイズに画像周囲(アパーチャーサイズ)が収まるように組み合わせてレンズ設計されている。そのため所定のレンズとセンサーを有する撮像装置において、異なるレンズまたは違うセンサーとの組み合わせでは、アパーチャーサイズが変化し、センサーイメージに適合した画像は撮像できず、不足または余剰部分が生じ、ケラレなどの画像欠陥が生じたりする。
【0003】
このように同一レンズで異なるサイズのセンサーに対応したり、特定サイズのセンサーで異なるレンズサイズに対応したりするケースとしては業務用カメラなどで統一された所定のレンズ・センサー基準設計に対し、異なる多種多様なセンサーサイズに対応する画像を得る場合、または同じセンサーで異なる画角像を得たい場合などに必要となる。また、業務用カメラで計測用、軍需用、医療用などのカメラでは、可視光だけでなく赤外帯域から紫外帯域までに及ぶ異なる波長帯域の画像を取得したり、高輝度被写体の撮影、特定光学波長帯域画像を取り出したりする場合など、そのような撮影対象や撮影条件に適した撮像装置が必要となる。
【0004】
しかし、このようなそれぞれの撮影条件に応じて適切なカメラを個別に準備して用いることは現実的ではない。また、そのような特殊環境にも適用しうる撮像装置は高額な特殊レンズや高解像度のセンサーを使用しているため、同じ撮像装置を使って種々の撮影環境に適応させ、多機能に流用できれば極めて利便性の高いものとなる。同じ1台のカメラを多機能化するには、固定焦点レンズの望遠レンズ化またはズーム化、種々の所定光学帯域画像(例えば、赤外光像、紫外光像、限定された可視光帯域画像)を取り出すことなどが想定される。固定焦点レンズの望遠レンズ化にはレンズマウントとカメラ本体との間にアダプターを挿入し望遠レンズの機能を取得したり、また所定光学帯域を取り出すためにその光学帯域を取り出すフィルターをレンズマウント間に挿入し取り出すことが行われている。
【0005】
特許文献1においては、一眼レフカメラ用レンズをビデオカメラで用いるためのレンズアダプターが開示されている。このアダプターはビデオカメラのレンズマウントに取り付けてビデオカメラレンズとは異なる別の一眼レフレンズを利用可能としているだけの機能である。また、特許文献2では望遠レンズ内部にエクステンダーレンズを挿入して望遠範囲を変倍したり、収差補正を行う工夫が示されている。この技術では同一レンズを変倍化する機能のみであり、またレンズ内に挿入されためレンズにエクステンダーレンズを出し入れするマウントなどの機能を有している必要がある。また、特許文献3では、望遠鏡のレンズマウントに装着するアタッチメントによりズーム機能をもたせる技術が開示されている。このような構成では、アタッチメント内のリレーレンズの一部を光軸方向に移動させることでズーム機能を行っているが、カメラの多機能化を意図したものではない。
【0006】
最近、交換レンズ用にCマウントやCSマウントが多用されており、これらのフランジバック長は小型化のため比較的短かく設計されている(Cマウント;17.526mm、CSマウント;12.5mm)。そのためCマウントやCSマウントなどのフランジバックやバックフォーカスの短い撮像装置では、1台のカメラを用いてレンズマウントにアダプターを挿入して特定光学帯域像やモニター像を取り出すには困難性がある。これらのバックフォーカスの短いレンズマウントにおいて各種フィルターを使用したり、所定の波長帯域像を取り出すユニットやアダプターがあれば極めて利便性が高まることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-286109号公報
【文献】特開平7-325252号公報
【文献】特開2008-136404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、以下のようなユニットおよびアタッチメントの提供を目的とする。
(1)バックフォーカスの短いレンズマウントでも、各種撮影バリエーションに対応し、多機能化が可能となる光学アタッチメントおよび光学像変換ユニット。
(2)基準設計の撮像装置を用いて異なるセンサーサイズに対応しうる光学アタッチメントおよび光学像変換ユニット。
(3)通常の画像取得に加えて異なる波長帯域画像を取得しうる光学アタッチメントおよび光学像変換ユニット。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、この発明に係る光学像変換ユニットは、対物レンズ系の第一結像面に結像された第一結像を第二結像面に結像させるリレーレンズ系を備え、前記リレーレンズ系は第一リレーレンズ群および第二リレーレンズ群とからなり、前記第一リレーレンズ群は、前記第一結像面の第一結像を平行光束として出射し、前記第二リレーレンズ群は前記第一リレーレンズより出射された前記平行光束を入射し、前記第二結像面に結像させ、前記第一リレーレンズ群と前記第二リレーレンズ群との間に光束絞りおよび光学フィルターを備え、前記第一リレーレンズ群および前記第二リレーレンズ群の焦点距離比率を変更することでサイズの異なる撮像素子に適応するように構成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光学像変換ユニットは、前記対物レンズ系の第一結像面または前記第一リレーレンズ群の近傍側に配置されたフィールドレンズを備えていても良い。
【0011】
また、本発明の光学像変換ユニットは、対物レンズ系と撮像装置本体との交換レンズマウント間に着脱可能とする接合機構を有していても良い。
【0013】
また、本発明の光学像変換ユニットは、前記第リレーレンズ群、光軸方向に移動可能であり、ズーム変倍構成としても良い。
【0014】
また、本発明の光学像変換ユニットは、対物レンズ系の第一結像面に結像された第一結像を第二結像面に結像させるリレーレンズ系を備え、前記リレーレンズ系が、第一リレーレンズ群および第二リレーレンズ群とからなり、前記第一リレーレンズ群は、前記第一結像面の第一結像を平行光束として出射し、前記第二リレーレンズ群は前記第一リレーレンズ群より出射された前記平行光束を入射し、前記第二結像面に結像させ、前記第一リレーレンズ群と前記第二リレーレンズ群との間に手ブレ補正手段を備え、前記第一リレーレンズ群および前記第二リレーレンズ群の焦点距離比率を変更することでサイズの異なる撮像素子に適応するように構成することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の光学像変換ユニットは、対物レンズ系と撮像装置本体との交換レンズマウントに挿入可能な光学変換ユニットであって、該光学像変換ユニットは、前記対物レンズ系による第一結像を第二結像面に結像させるリレーレンズ系を備え、前記リレーレンズ系は、第一リレーレンズ群と第二リレーレンズ群とから成り、前記第一リレーレンズ群は、前記第一結像を平行光束として出射し、前記第二リレーレンズ群は、前記第一リレーレンズ群よりの平行光束を入射し前記第二結像面に結像させ、前記第一リレーレンズ群と前記第二リレーレンズ群との間に光束分離手段を備え、前記第一リレーレンズ群および前記第二リレーレンズ群の焦点距離比率を変更することでサイズの異なる撮像素子に適応するように構成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の光学像変換ユニットは、前項における光束分離手段が、赤外光分離プリズムまたは赤外光分離ビームスプリッターであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光学系の途中に本発明による光学像変換ユニットを挿入することで種々の用途や撮影のバリエーションに対応しうる多機能撮像装置を得ることができる。具体的には、通常の可視光カメラに赤外光カメラなどの追加的撮影装置機能を容易に付加することが出来たり、また、基準設計の撮像装置に対し異なるサイズのセンサーにも対応可能となり、設計の標準化が図られ、使用部品、材料および設計コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による第一の実施例を示す概略説明図である。
図2】本発明による第一の実施例の他の応用を示す概略説明図である。
図3】本発明による第二の実施例を示す概略説明図である。
図4】本発明による第二の実施例の他の応用を示す概略説明図である。
図5】本発明による第三の実施例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る光学像変換ユニットの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの図面も本発明の説明用に概略的または模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、構成要素の光学系構成、寸法、材質、形状、その相対配置および用途としては動画または静止画の業務用または民生用カメラを想定しているが特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
近年の撮像装置の多機能化、高精細度化によりカメラの利用範囲は格段に進歩している。特に、業務用カメラでは、その利用分野が測定用、軍需用、医療用など多岐にわたると共に、取得する画像の測定、監視、分析、比較などの目的により取得する波長帯域は可視光、赤外光、紫外光などと異なっている。また、製造現場での工程監視、半導体製造時の欠品監視、交通監視、悪天候や夜間での撮像など環境や撮影条件が異なるのに対応するため、種々の光学フィルターを変更したり、撮影する波長帯域に応じた可視光、赤外光、紫外線センサー、または解像度の異なる種類のセンサーを選択して利用している。
【0022】
このようなカメラの設計はできるだけ利用目的や使用範囲を特定し、その利用特性に適合するカメラを構成している。そのため、部品・材料の共通化も困難で設計上も個々のレンズ設計、センサー設計など目的に適合する範囲で個別に行われている。特に、1台の基準となるカメラ設計で多機能化を図るには、同一レンズで異なるセンサーサーサイズに対応させること、センサーサイズは同じで焦点距離の異なるレンズに対応させることが必要となる。本発明ではそれらを光学像変換ユニット化することにより種々の撮影環境に適用できるようにする。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明による第一実施例を示す概略説明図で、撮像装置(カメラ)の光学レンズ系全体1を示している。このレンズ系は、撮影対象を対物レンズ系2で集光し、リレーレンズ系3を介して、最終結像面に配置された撮像装置の撮像素子(センサー)9またはフィルム上に投影する。撮像装置では、対物レンズ系2をカメラ本体10との間で着脱可能とするレンズマウントによりレンズ交換可能であり、そのレンズマウントに規定されたバックフォーカスの距離面に撮像素子9が配置されている。リレーレンズ系3は、光軸(A―B)上に、対物レンズ系2の結像面(第一結像面)または第一リレーレンズの近傍側に配置されたフィールドレンズ4、その後段に第一リレーレンズ群5(RL1)、第二リレーレンズ群6(RL2)を備えている。
【0024】
フィールドレンズ4は、対物レンズ系2から後部に出射される光束をより多く第一リレーレンズ群へ入射させるためのレンズであり、特に斜め入射光束などによる周辺面の光量が不足する場合などに配置するのが望ましいが必須ではない。フィールドレンズの配置は、対物レンズ系2の第一結像面(下向き矢印)に配置されるが、ゴミ傷などが目立つ場合など第一結像面の近傍側で若干ずらして配置する。
【0025】
第一リレーレンズ群5は、凸型レンズで構成され、その焦点距離を第一結像面に合わせることで、第一結像を第二リレーレンズへ平行光束として出射する。第二リレーレンズ群6では、第一リレーレンズ群5から出射された平行光束を受けて第二結像面に収束させる。第二結像面(上向き矢印)には、撮像素子9が配置され、画像を光電変換し、映像信号として出力する。第一リレーレンズ群5および第二リレーレンズ群6との間の平行光束空間内には、光束絞り7および光学フィルター8が配置されている。この光束絞り7は、対物レンズ系2の絞りとは別に独立して光量調整が可能である。また、光学フィルター8は、第一リレーレンズ群5側であっても、第二リレーレンズ群6側であってもよく、また両方(8および8‘)に設けても良い。
【0026】
このようなレンズ構成ユニットにおいて、第一リレーレンズ群5の焦点距離をf、第二リレーレンズ群6の焦点距離をfとし、第一リレーレンズ群5と第二リレーレンズ群6との比率f/fを適切に選定することでサイズの異なるセンサーに対応した画像の拡大、縮小ができることとなる。
【0027】
撮像素子9のセンサーサイズは、前述の通り多種多様であり、種々のサイズが汎用サイズとして利用されている。主要なセンサーとしては1/4インチセンサーからフルサイズのセンサーまで10種類程度が入手可能である。例えば、レンズ変換ユニットのそれぞれのリレーレンズ群の焦点距離がf>fである場合、既存設計の2/3インチのセンサーサイズのカメラにfを50mm、fを200mmのレンズ変換ユニットに合わせて適合させるとすると、2/3インチセンサーの対角径は11mmであり、第二結像面のセンサーアパーチャーサイズはf/fで4倍の44mmとなり、フルサイズセンサーの対角43.26mmにほぼ合致し適用することができる。
【0028】
上記とは逆に、それぞれのリレーレンズ群の焦点距離がf<fのレンズ変換ユニットであれば第二結像面の径は、第一結像面大記載より縮小されたものとなり、既存設計のセンサーサイズより縮小されたセンサーサイズに対応させることができる。
【0029】
このような構成によるレンズ変換ユニットでは、第一リレーレンズ群5と第二リレレンズ群6との間に独立して光束絞り7と光学フィルター8を働かせるため、高輝度・高照明環境での撮影に利用できる。例えば、溶鉱炉監視カメラや太陽光観測などでは、極めて高輝度での撮影環境となるため、既存のカメラのレンズ系にこの変換ユニットを挿入し、フィルター8にNDフィルターを挿入し、光束絞り7と併せ使用することにより高輝度環境での撮影を行うことができる。この場合フィルター8および8‘の両方にNDフィルターに光濃度ND4のフィルターとND8のフィルターを使用した場合、その光濃度はND4xND8となり光濃度ND32に相当する光高濃度NDフィルター効果が得られる。
【0030】
前記フィルターは、NDフィルターの他に、紫外線カットフィルター、赤外線カットフィルター、近赤外取出しフィルター、紫外線取出しフィルター、偏光フィルター又はシフター、特殊波長用バンドパスフィルターを含む吸収型フィルターなど利用目的に応じた各種フィルターを適用することができ、フィルター機能を有する光学像変換ユニットとしても構成することができる。
【0031】
図2は、手ブレ補正手段として利用するために第一リレーレンズ5と第二リレーレンズ6との間に手ブレ補正手段20を挿入した説明図である。図1と同じ部品構成には同じ番号が付してある。監視カメラなどでは、固定設置の利用が多いため手ブレ補正機能を具備していない場合がある。このようなカメラに手ブレ補正機能をユニットとして装着、交換できるようであれば利便性が高まる。手ブレ補正の構成としてはカメラ本体内で電子的に補正する方式とレンズ内で補正するレンズシフト方式があるが、図2に示すようにハーフミラー21を手ブレ補正量に応じて変化させて手ブレ補正画像をとりだす方式が利用できる。
【0032】
図2に示す手振れ補正手段20の一例では、ハーフミラー21を用いて補正画像を取り出す構成となっている。手ブレ補正を行うには、上下、左右の手ブレを別途設けられた角度検知センサーにより変位量(手ブレ補正駆動信号)を取得し、その駆動信号に応じて手ブレ補正手段20をマイクロモータなどの補正駆動手段(図示せず)により上下、左右に補正をかけることが出来る。なお、この手ブレ補正手段20は、図1に示す光学フィルターや絞りに追加して配置しても良いし、フィルターや絞りに代えて手ブレ補正用ガラスだけを配置しても良い。
【実施例2】
【0033】
図3は、交換レンズ22とカメラ本体30との間に本発明の光学像変換ユニット23を取り付けた説明概略図である。光学像変換ユニット23は、交換レンズマウント24および31によりカメラ本体30に着脱出来る構成となっている。変換ユニット23の前後にはその交換レンズマウントに適合するレンズマウント24および31がそれぞれに設けられ、種々の交換レンズ22や異なる機能のカメラ本体30を着脱、交換する事ができる。
【0034】
レンズマウント毎に定められたレンズマウント24の基準位置からフランジバック長(FB)が交換レンズの結像点であり、第一結像面となる。このフランジバック長(FB)はCマウントでは、17.526mm、CSマウントでは、12.5mmである。第一リレーレンズ群26は、第一結像面の画像を入射光として集光し、平行光束を出射するように配置されている。フィールドレンズ25は、第一リレーレンズ群26の入射光側の第一結像面の近傍位置に配置される。このフィールドレンズの役割は図1におけるフィールドレンズ4と同様である。第一リレーレンズ群26は、第一結像面の第一結像を平行光束として出射し、出射された平行光束は第二リレーレンズ群27へ入射する。第一リレーレンズ群26と第二リレーレンズ群27との間には、光束絞り28が配置されており、変換ユニット23の外側の円筒リング29により光束量を絞り込み調整することができる。
【0035】
カメラ本体30内の第二結像面は、交換レンズ31の基準面からフランジバック長(FB)の位置にあるため、第二リレーレンズ群27の焦点距離は、このフランジバック長を考慮して定められる。つまり、第二リレーレンズ群27は、カメラ本体30に装着された状態でセンサー32が第二結像面となるように焦点距離は定められる。このような構成において、第一リレーレンズ群26および第二リレーレンズ群27のそれぞれの焦点距離の割合を変化させることで、カメラ本体30における異なるサイズの各種撮像素子(センサー)32に対応したレンズ系を構成することができ、実施例1と同様の光学像変換ユニットの機能を交換レンズマウントへの着脱により容易に達成することができる。
【0036】
ここで、第二リレーレンズ群27にズーム機能を持たせることもできる。変換ユニット23の円筒状外側にはズームリング33を回動させ、ソレノイド等の機構により第二リレーレンズ群27またはその一部を光軸方向の前後に移動させ、焦点距離を可変としてズーム構成とする。このズーム構成により変換ユニット23の焦点距離は変化し、第二結像面におけるサイズが変更されることとなり、カメラ本体30における異なるサイズの各種撮像素子(センサー)32に対応したレンズ系を構成がより容易に達成することができる。また、固定焦点におけるリレーレンズ群の種類は限られているため、ズーム機能を利用することにより、多くのセンサーサイズに精密に対応することが可能となる。
【0037】
図3においては、カメラ本体30に単板のセンサーを使用した例を示しているが、本発明においてフランジバック(FB)の距離を利用して光学像変換ユニットは、光束分解プリズムにより多板(2板、3板、4板など)センサーカメラ本体に対応することも可能である。図4(A)は、本発明の他の適用例として可視光波長帯域をR、G、Bの3板センサーに分解する3板式光束分解プリズム群40をカメラ本体48側に備えている場合を示す概要説明図である。3板式の光束分離プリズム群40は、可視光での光束から青色(B)帯域を反射し、赤色(R)帯域および緑色(G)帯域を通過させ、青色帯域像を青色センサー42へ出射させる青色分離プリズム41,青色分離プリズム41から赤色(R)帯域を反射し、緑色(G)帯域を通過させ、赤色帯域像を赤色センサー44へ出射させる赤色分離プリズム45,および赤色分離プリズム45を通過した光束(緑色帯域)を緑色センサー46へ出射させる緑色用プリズム47により構成されている。
【0038】
ここで、交換レンズマウントの基準面とR、G、Bそれぞれのセンサー42,44,46の基準面(第二結像面)との距離はレンズマウントに定められた所定のフランジバック長(FB)を保っている。これにより、3板式光束分離プリズム40を備えたカメラ本体48は、交換レンズマウント31を介して光学像変換ユニット23に着脱し、変換ユニット23の出射像をR、G、B 信号として取り出すことができる。
【0039】
図4(A)において光束分解プリズム40は、R、G、Bの可視光3板センサーを例示しているが、可視光R、G、Bの3板の光束分離だけでなく、光束分離プリズムや光束分離スプリッタにより、赤外光センサーと2種類の可視光センサー、デュアルグリーン方式への応用など3つの偏光光像をとりだす種々の3板式カメラへ応用することができる。
【0040】
図4(B)は、赤外光像と可視光像とを取り出す2板式光束分離プリズム50の一例を示している。2板式カメラ本体49の光束分離プリズム50は、入射光から赤外帯域光を分離し、可視光帯域を透過させ、赤外光像を赤外像センサー51へ出射する赤外光分離プリズム52および赤外分離プリズム51を透過した可視光を可視光像センサー53へ出射するプリズム54から成っている。この2板式光束分離プリズム50も3板式分離プリズムと同様、交換レンズマウント31を有するカメラ本体49に取り付けられ、レンズマウントとそれぞれのセンサーとの距離をレンズマウント所定のフランジバック長(FB)に設定することで、レンズマウント31を介して光学像変換ユニット23に取り付けて使用することができる。以上、2板および3板撮像素子用の光束分離プリズムに本発明の光学像変換ユニットを適用する例を示したが、それ以上の多板撮像素子用プリズムであってもフランジバック長内に収納できれば同様に構成することができる。
【実施例3】
【0041】
図5は、赤外光像を取り出す機能を有する光学像変換ユニットの一例を示す。図1との相違は、第一リレーレンズ群5と第二リレーレンズ群6との間に赤外光ビームスプリッター61が挿入され、第三リレーレンズ62を介して赤外光像を取り出している点であり、図1と同じ部品構成には同じ番号が付してある。光学変換ユニット3内において、第一リレーレンズ群5は、第一結像面に焦点距離を合致させて平行光束を出射する凸レンズであり、第二リレーレンズ群6は、入射した平行光束を第二結像面に出射凸レンズである。第二結像面には、撮像素子9が配置されており、可視光(カラー)像を光電変換する。赤外光ビームスプリッター61にでは、第一リレーレンズの平行光束から赤外光帯域が反射され、第三リレーレンズ(RL3)62に入射し、第三リレーレンズ62の焦点に配置された赤外センサー63により、赤外光像として光電変換されて出力する。この場合第三リレーレンズ62は、赤外光用リレーレンズを用いるのが望ましい。また、この第三リレーレンズ(RL3)を光軸方向に移動可能とすることで、赤外センサー63との焦点距離を変化させ、第一リレーレンズ群5と第三リレーレンズ群62との焦点距離の比率を適切に選定することでサイズの異なるセンサーに対応した画像の拡大、縮小ができることも可能である。
【0042】
図4(B)においては、交換レンズのフランジバック長の間(カメラ本体内)に赤外光分離プリズムを挿入して赤外光像と可視光像とを分離しているが、最近の業務用カメラでは小型、軽量化のためバックフォーカス(フランジバック)長が短いレンズを用いることがあるため、赤外光ビームスプリッターなどが挿入できない場合が生じる。このような場合、リレーレンズ群の中間に赤外光ビームスプリッターを挿入して赤外光像を分離することができる。また、多くのカメラでは可視光帯域のカラー像を取得するのみで、赤外光像は、暗視カメラ、温度測定、皮膚の病理診断、霧中・雲中の撮影など特殊な環境での撮影に用いられる。そのため、この赤外像取得機能を光学像変換ユニットとして用意することで、撮影のバリエーションを広げたり、赤外カメラを準備しなくても可視光カメラに光学像変換ユニットとして取り付けて流用できるなどの利点を有する。
【0043】
図5の実施例では、赤外ビームスプリッターを用いて赤外光像を分離する光学像変換ユニットの例であるが、このビームスプリッターをハーフミラーとしてモニター像を取得したり、偏光スプリッターとしてS波またはP波などの偏光像として取り出し、測定、分析など種々の撮影に利用することも可能である。
【0044】
以上、本発明によれば、対物レンズとカメラ本体との間に配置した2個のリレーレンズ群による焦点距離を変化させることで種々のセンサーサイズに対応しうる光学像変換ユニットを形成することができ、それら2個のリレーレンズ群の間に絞り、フィルター、手ブレ補正ガラス、ビームスプリッターなどを挿入して種々の機能を有する変換ユニットとすることができる。更に、このような光学像変換ユニットを交換レンズマウントとカメラ本体との間に挿入して用いることができるが、レンズマウント用変換ユニットに限らず、このような光学像変換ユニットを各種用意することで、カメラ・レンズ系の設計や部品・部材の共通化や、標準設計のカメラに対して変換ユニットによる多機能化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によりカメラの多機能化、撮影バリエーションの拡大が可能となり、種々の撮影環境における取得した画像の計測、分析、比較、画質加工を容易に行うことが可能となり、広く民生用、業務用、医療用、工業分野などで産業上の利用可能性が広がる。
【符号の説明】
【0046】
2 対物レンズ系
3 リレーレンズ系
4 フィールドレンズ
5、26 第一リレーレンズ群
6、27 第二リレーレンズ群
7、28 光束絞り
8 フィルター
9、32、63 撮像素子(センサー)
20 手ブレ補正用ガラス
23 光学像変換ユニット
24、31 レンズマウント
10、30、48、49 カメラ本体
40 3板用光束分離プリズム
50 2板用光束分離プリズム
61 ビームスプリッター
図1
図2
図3
図4
図5