(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラード用の芯材
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
(21)【出願番号】P 2022014517
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2021050801
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592219569
【氏名又は名称】同和鍛造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大野 了史
(72)【発明者】
【氏名】田村 昌人
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1834700(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0078214(KR,A)
【文献】特開平09-111952(JP,A)
【文献】特開2006-028851(JP,A)
【文献】特開2002-317414(JP,A)
【文献】特開2005-036591(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0083997(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0129806(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1609982(KR,B1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2020-0002069(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
E01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道から歩道への走行車両の進入を阻止する目的で、公園の入り口など車道と歩道の境界に設置され、走行車両がボラードに衝突した際、車両がボラードを乗り越えて、歩行者に追突、死傷させないようにするための
地中に埋設されるボラードにおいて、
可撓性金属からなるボラードの支柱本体の地中部に少なくとも1カ所以上の支柱本体の径より小さい径で、
衝突時に曲がる位置となるくびれ部を設け、
前記可撓性金属からなるボラードの支柱本体が一体構造の鍛造鉄鋼品であり、前記くびれ部を鍛造により設けることにより靭性が高まり、くびれ部の高強度化を発揮できることを特徴とする耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラード用の芯材。
【請求項2】
車道から歩道への走行車両の進入を阻止する目的で、公園の入り口など車道と歩道の境界に設置され、走行車両がボラードに衝突した際、車両がボラードを乗り越えて、歩行者に追突、死傷させないようにするための
地中に埋設されるボラードにおいて、
可撓性金属からなるボラードの支柱本体の地中部に少なくとも1カ所以上の支柱本体の径より小さい径で、
衝突時に曲がる位置となるくびれ部を設け、かつ地上部の支柱本体に少なくとも1カ所以上の支柱本体の径より小さい径で、
衝突時に曲がる位置となるくびれ部を設け、
前記可撓性金属からなるボラードの支柱本体が一体構造の鍛造鉄鋼品であり、前記くびれ部を鍛造により設けることにより靭性が高まり、くびれ部の高強度化を発揮できることを特徴とする耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラード用の芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園の入り口や歩道と車道との境界部分などに設置されるボラード及びその地中埋設構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、公園の入り口や歩道と車道との境界部分などに設置されるボラードとしては、例えば、ゴムや弾性材料を利用したものは、自動車や通行人が接触した場合、適度に変形して自動車の損傷や通行人のけがを防止する機能を有するもの、或いは、コンクリート製の杭や金属製のパイプを地面に埋設した鋼体が一般的である。このような従来のボラードは走行中の車両、例えば、車両重量1.8t、速度45km/hが衝突した際、その衝撃に耐えられる強度を有しておらず、車両がボラードを乗り越えて、歩行者に追突、死傷させる問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、自動車や通行人が接触した場合、適度に変形して自動車の損傷や通行人のけがを防止する機能はあるが、衝突時の車の衝撃に耐える構造ではなく、車両がボラードを乗り越えて、歩行者に追突、死傷させる問題を有していた。
【0005】
従来は、自動車運転者や歩行者への視認性を考慮した外観上の工夫やコンクリート製の杭や金属製のパイプを地面に植設した鋼体はあるが、意匠性や視認性など外観を特徴とし、上記特許文献1同様に、走行車両の軽度の衝撃にしか耐えられない問題を有していた。
【0006】
従来は、素材によっては、例えば、コンクリート製、石材製などは、車両衝突時の衝撃で破損し、欠損した破片が飛散し歩行者に当たり死傷させる2次被害の問題を有していた。
【0007】
従来の非衝撃対応性ボラードの場合、埋設深度が浅く、車両衝突時の衝撃で抜け飛び、歩行者に当たり死傷させる2次被害の問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の車両と歩道の境界などに一部を地中に埋設されて設置される可撓性金属材からなる耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材は、鍛造鉄鋼品であり、地中部の支柱本体、あるいは地中部及び地上部の両方の支柱本体に支柱本体の径より小さい径のくびれ部を設けることで、車両衝突の衝撃からボラードの倒れ込みを防ぐことで解決した。
【発明の効果】
【0009】
走行車両の衝撃、例えば、車両重量1.8t 速度45km/hから歩行者を守るには、耐衝撃性ボラードは堅牢でなくてはならない。そのための素材は可撓性金属でより好ましくは鍛造鉄鋼品がよい。衝撃エネルギーはボラードの特定箇所に集まるため、本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の地下部又は地上部、又はその両方に少なくとも1か所以上の「くびれ」を設け、少なくとも1本以上の本発明の耐衝撃性ボラードにより、本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の本体の変形量をコントロールすることで、衝突時のエネルギーを吸収し、埋設する本発明の耐衝撃性ボラードを固定するための、例えば、コンクリート製の地中の埋設構造物及び車両への衝撃を和らげることができる。
【0010】
本発明の耐衝撃性ボラードを固定するための埋設構造物を使用せずに地中に埋設するタイプは、土壌条件により衝撃時の本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の倒れこみ量が変わるため、地面接触部にリング状の「鍔」を設置することで本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材を倒れこみ難くし、地中埋設部への応力を分散させ、かつ軽減することができる。
【0011】
本発明の耐衝撃性ボラードを固定するための埋設構造物を使用せずに地中に埋設するタイプの引張試験の結果、表1の通り「くびれ」付近に応力を集め、変形量をコントロールすることで、応力が集中する箇所を分散させ、耐荷重を増加させることができることを確認した。
【表1】
倒れ角度とは、地面垂直に一部を地中に埋設されて設置された本発明の耐衝撃性ボラードの支柱本体地上部に、表1の荷重を地面並行の衝撃又は引張試験で負荷後にもとの垂直の位置から本発明の耐衝撃性ボラード支柱本体の倒れ込んだ角度。湾曲変形寸法とは、地面垂直に一部を地中に埋設されて設置された本発明の耐衝撃性ボラードの支柱本体地上部に、表1の荷重を地面並行の衝撃又は引張試験で負荷後にもとの本発明の耐衝撃性ボラードの支柱本体中心線から湾曲部までの計測数。
【0012】
地中の埋設構造物を利用し埋設した本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材は、支柱本体の地上部に少なくとも1か所以上のくびれにより、特定箇所に集まる応力を分散し本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の変形量をコントロールすることができる。
【0013】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の素材を鍛造鉄鋼品とすると、鍛造による「くびれ」の加工及び地中先端形状の加工により、加工コストは切削より軽減できる。
【0014】
鍛造鉄鋼品とした場合は、形状が簡易かつ強度があるため、他の素材と比較して細径化が可能なため芯材として従来の中空の非耐衝撃性ボラード品を外装として被せて使用し、既存品を耐衝撃性ボラードとして応用ができる。
【0015】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材は、一体構造の可撓性の金属素材のため、例えば、コンクリート製、石材製などと違い、車両衝突時の衝撃で破損し、欠損した破片が飛散し歩行者に当たり死傷させる2次被害の問題はない。
【0016】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材は、耐衝撃性のボラードとして設計しているため、必要十分な埋設深度、或いは、地中の埋設構造物を利用するため、車両衝突時の衝撃でボラードが抜け飛び、歩行者に当たり死傷させる2次被害の問題はない。
【0017】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材用のコンクリートブロック製の地中埋設構造物は、施工場所に既埋設物があり、十分な埋設深度が取れない場合であっても、土中埋設より浅い深度で設置できるように、地中埋設構造物でボラードを支持する。このコンクリートブロック製の地中埋設構造物は、衝突車両進入方向に対しコンクリートブロックが長手を形成するように配置されることで構造的な強度を有することができるため、現場の施工条件に応じて、Iの字及び、Lの字及び、Tの字で配列選択し、施工場所周りの障害物を避け、かつ耐衝撃に最適な配列構造で埋設することができる。
【0018】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材用のコンクリートブロック製の地中埋設構造物は複数のコンクリートブロックを配列したものであり、埋設時に一体化させるため、複数のコンクリートブロックの各ブロック間の接面にズレ防止の凹凸を設け、かつ、ボルト、ナット等の連結具で強固に相互連結することが可能である。
【0019】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材用の地中埋設構造物は、規定衝撃に耐える強度を有するため、非耐衝撃ボラードの基礎構造体より、容積・重量ともに過大となる。本発明の耐衝撃性ボラード用のコンクリートブロック製の地中埋設構造物は、複数のコンクリートブロックを配列したものであり、一体物の基礎構造体、例えば質量420kgと比べ、例えば、分割構造は三個組とする場合、一個の質量140kgとなるため、施工時に搬送用の大型トラックや大型重機が不要で、設置に伴う道路占有による交通障害等による地域社会への影響が少ない。
【図面の簡単な説明】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐衝撃性ボラードの構成を示す図である。
【
図2】上記一実施形態における地中の埋設構造物を利用した場合の構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る耐衝撃性ボラードの施工事例を示す図である。
【
図4】上記施工事例に車両重量1.0t車が速度40Km/hで衝突した際のシミュレーション結果である。
【
図5】上記施工事に使用する耐衝撃性ボラードの支持基礎構造体の埋設配列のIの字を示す図である。
【
図6】上記施工事に使用する耐衝撃性ボラードの支持基礎構造体の埋設配列のLの字を示す図である。
【
図7】上記施工事に使用する耐衝撃性ボラードの支持基礎構造体の埋設配列のTの字を示す図である。
【
図8】上記施工事に使用する耐衝撃性ボラードの支持基礎構造体の分割構造の各ブロック間の接面の例を示す図である。
【
図9】上記施工事に使用する耐衝撃性ボラードの支持基礎構造体の分割構造の各ブロック間のボルト、ナット、プレート等の連結具を使用した状態の例を示す図である。
【
図10】本発明の耐衝撃性ボラードと他の鋼材ボラードと地中に加わる応力の違いを示す図である。
【符号の説明】
10:支柱本体
11:地上くびれ
12:地中くびれ
13:地中先端形状
14:下端
15:鍔(リング)
16:鍔上面(リング)
17:衝突車両
18:車両バンパー
19:地中
20:埋設構造物(地中)
21:埋設配列Iの字
22:車両の進入方向
23:埋設配列Lの字
24:施工場所周辺の障害物
25:埋設配列Tの字
26:基礎構造体の分割構造の各ブロック
27:分割構造の各ブロック間の接面
28:分割構造の各ブロックを連結するボルト、ナット、プレート等の連結具
29:二重管鋼材ボラード
30:単管鋼材ボラード
31:くびれあり鍛造ボラード
32:応力分布
33:地中の応力の方向と強弱
GL:地面又は床面
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の耐衝撃性ボラードの一実施形態について説明する。
図1は本実施形態の地中埋設の耐衝撃性ボラードの構成の一例を示す図面である。
【0021】
図1、
図2、
図3に示すように、本実施形態の耐衝撃性ボラードは1本の支柱本体10を地上くびれ11、地中くびれ12と地中先端形状13を鍛造加工した一体もので、下端14を最底部とし地中埋設する。地中埋設部には地中先端形状13からGL地面または床面までの間に地中くびれ12がある。GL地面または床面に、鍔(リング)15,16があり、GL地面また床面から地上部にくびれ11がある。地上部のくびれの位置は衝突車両17のバンパー18の高さより低い位置が好ましい。
図4に示すように衝突の際、衝突車両は車両バンパー18から支柱本体10にぶつかり、その衝撃により本体の径より小さい径となる「弱箇所」であるくびれ11,12に応力が集中し、くびれが曲がることで、地中への衝撃と車両への衝撃を弱められ、本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の倒れ込みを防ぐ。
図10に示すように、二重管鋼材ボラード29は強度があり靭性がないため、応力分布32がGL付近に集中する。そのため、地中の応力の方向と強弱33が地中に過大になり衝撃を吸収する前に地中が負けてしまい、ボラードが先に傾倒し地中から倒れ込むので、埋設深度を更に深くして倒れ込みを防ぐか、或いは埋設構造物(地中)20を強固にする必要がある。単管鋼材ボラード30は二重管鋼材ボラード29より強度がなく靭性がないため、規定以上の衝撃が加わった場合、GL付近で座屈する。くびれあり鍛造ボラード31は靭性があり、GL付近以外にも応力が分散するため、地中の応力の方向と強弱33が弱まり、ボラードの地中での倒れ込みを防ぐ。
本発明であるくびれを設けた耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材は、強度のある鍛造鉄鋼品に敢えて構造的に弱い箇所(くびれ)を設け、曲がる位置と変形量をコントロールし、本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材を使用したボラードを一本以上並列させて衝突時のエネルギーを吸収する。
【0022】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の支柱本体10はパイプ状又は丸棒体、四角柱、三角柱など多様な形状でもよいが円形に近い形状のものがより好ましい。
【0023】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材を使用したボラードの鍔(リング)15、16は衝撃応力が最も多くかかるGL地面付近の接地面を増やすことで、特に地盤が弱い条件下で倒れ込みを防ぐ効果がある。
【0024】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の地中先端形状13については、土中に埋設し易く、かつ倒れ込み難い形状であれば良く、図面の形状に限定するものではない。
【0025】
本発明の耐衝撃性ボラード及び耐衝撃性ボラードの芯材の地上くびれ11と地中くびれ12は、ボラードの支柱本体の径より小さい径であればよく、図面の形状に限定するものではない。
【0026】
本発明の耐衝撃性ボラード及び衝撃性ボラード用の芯材を鍛造鉄鋼品とした場合は、形状が簡易でかつ強度があるため、他の素材と比較して細径化が可能なため、特に複数本設置した場合、設置上の景観に影響を与えない。かつ、細径のため芯材として活用ができ、従来の非耐衝撃性ボラード品の様々な素材、例えばプラステックやゴム、や意匠外形加工品の被覆用カバーを被せて使用することが可能である。
【0027】
本発明の耐衝撃性ボラード及び衝撃性ボラード用の地中埋設構造物の施工場所周りに障害物がない場合は、
図5に示すように、衝突車両進入方向に対しコンクリートブロックが長手を形成するようにIの字型に配列し、障害物がある場合は、
図6、
図7に示すように、衝突車両進入方向に対しコンクリートブロックが長手を形成するようにしつつ、障害物を避けるようにLの字型や、Tの字型に配列し、耐衝撃に最適な配列構造で埋設する。
【0028】
本発明の耐衝撃性ボラード及び衝撃性ボラード用の地中埋設構造物を複数のコンクリートブロックを配列したものとするのが好ましく、
図8に示すように、埋設時にブロック同士の凹凸面を合わせ、ズレを防止する。そして、各ブロックは、
図9に示すようにボルト、ナット等の連結具で結合し一体化しても良いし、あらかじめ設置状況に応じたIの字型、Lの字型やTの字型に成形されていても良い。