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  • 特許-打錠用乳化粉末、錠剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】打錠用乳化粉末、錠剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20241108BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241108BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241108BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241108BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A61K9/20
A61K47/44
A61K47/12
A61K47/36
A23L33/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020208173
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095071
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 真由美
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 厚徳
(72)【発明者】
【氏名】日下 仁
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-000163(JP,A)
【文献】特開2016-195557(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076164(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/020813(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/30
A23L 29/00-29/10
A23L 5/40-5/49
A23L 31/00-33/29
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点50~80℃の固体油脂(A)を2~20質量%、乳化剤(B)を5~30質量%、50%水溶液の50℃の粘度が80mPa・s以下の水溶性食物繊維(C)を20~93質量%含み、内部に固体油脂(A)が配置され、固体油脂(A)の外側が水溶性食物繊維(C)で被覆された粉末であることを特徴とする、打錠用乳化粉末。
【請求項2】
固体油脂(A)の脂肪酸組成における炭素数22の飽和脂肪酸の含量が30質量%以上である請求項1に記載の打錠用乳化粉末。
【請求項3】
50%水溶液の50℃の粘度が80mPa・s以下の水溶性食物繊維(C)がイヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イソマルトデキストリンのいずれか1種以上である請求項1又は2に記載の打錠用乳化粉末。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の打錠用乳化粉末を含有する錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
経口摂取するサプリメントの錠剤や錠菓に用いられる打錠用乳化粉末およびそれを用いた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サプリメントとは健康の維持・増進、食事で不足している栄養素の補給等を目的とし、ビタミンや乳酸菌などの機能性成分を錠剤やカプセルの形状に加工した食品であり、手軽に栄養を補給できることから消費者ニーズが近年高まっている。
サプリメントの形状には、顆粒剤、カプセル剤、錠剤などが挙げられる。中でも錠剤は圧縮成形されているため、顆粒剤、カプセル剤よりも摂取しやすいことから需要が高い。
サプリメントの錠剤や錠菓は打錠機を用い、ビタミンや乳酸菌などの機能性成分と添加剤を計量・篩過・混合した粉末を臼に充填し、上杵と下杵で圧縮成形されている。
機能性成分を錠剤化するために必要な添加剤として、結着性を付与する「結合剤」、錠剤を崩しやすくする「崩壊剤」、杵・臼から剥がしやすくする「滑沢剤」、希釈するための「賦形剤」が挙げられる。
錠剤の製造方法として、直接打錠法と間接打錠法が挙げられる。直接打錠法は機能性成分や結合剤や崩壊剤、賦形剤等を篩過・混合した混合粉末に、別で篩過した滑沢剤を混合し、圧縮成形する方法である。一方、間接打錠法は機能性成分と滑沢剤以外の結合剤や崩壊剤、賦形剤の混合品を造粒・篩過した粉末に、別で篩過した滑沢剤を混合して圧縮成形する方法である。
サプリメントに配合される機能性成分は、結着性が悪い成分、油状で溶けにくく、杵臼に付着しやすい成分などが多いため、先に挙げた添加剤を組合せて錠剤を製造する必要があるが、「滑沢剤」には結着性の低下、崩壊遅延をもたらす作用、また「崩壊剤」は結着性を低下する作用があるため、各添加剤をバランス良く配合する必要がある。そのため、複数の結合剤や賦形剤を組合せて錠剤化することが多く、原料の数が多くなるほど、計量・篩過、造粒工程に必要な作業時間が増えるため、製造に時間を要することが課題であった。
【0003】
上記課題を解決するために、特許文献1では、結合剤及び崩壊剤、滑沢剤の機能を有する部分分解処理澱粉粒子が報告されている。本品は十分な硬度および優れた崩壊性を示すが、ビタミンCなど杵に付着しやすい(スティッキングしやすい)成分においては、滑沢性が弱くスティキングを抑えることができない。特許文献2には特定粒子のプロラミン蛋白粒子が結合剤、崩壊剤、滑沢剤の効果を有することが報告されているが、プロラミン蛋白粒子が小麦由来の場合はアレルギーがあるため幅広く使用することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-137230号公報
【文献】特開2002-322098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
錠剤の製造時には、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の複数の添加剤を使用するため、各添加剤を個別に計量・篩過する工程が必要となり製造に時間を要する。
本発明の課題は、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤の機能を兼ね備えた打錠用乳化粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の融点と比率の固体油脂を特定比率の乳化剤と特定の水溶性食物繊維を用いることで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は次の〔1〕~〔4〕である。
【0007】
〔1〕融点50~80℃の固体油脂(A)を2~20質量%、乳化剤(B)を5~30質量%、50%水溶液の50℃の粘度が80mPa・s以下の水溶性食物繊維(C)を20~93質量%含み、内部に固体油脂(A)が配置され、固体油脂(A)の外側が水溶性食物繊維(C)で被覆された粉末であることを特徴とする、打錠用乳化粉末。
〔2〕固体油脂(A)の脂肪酸組成における炭素数22の飽和脂肪酸の含量が30質量%以上である〔1〕に記載の打錠用乳化粉末。
〔3〕50%水溶液の50℃の粘度が80mPa・s以下の水溶性食物繊維(C)がイヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イソマルトデキストリンのいずれか1種以上である〔1〕又は〔2〕に記載の打錠用乳化粉末。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の打錠用乳化粉末を含有する錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤の機能を兼ね備えた打錠用乳化粉末を提供することができる。
結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤の機能を兼ね備えた本発明の打錠用乳化粉末を用いることで、各添加剤の計量・篩過工程、打錠前の造粒工程、滑沢剤の混合工程を省略することが可能となり、製造工程を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の態様の打錠用乳化粉末の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第2の態様の打錠用乳化粉末の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔打錠用乳化粉末〕
本発明の打錠用乳化粉末は、次の(A)~(C)の各成分を含有する。
(A)固体油脂
(B)乳化剤
(C)水溶性食物繊維
打錠用乳化粉末は、固体油脂(A)を乳化剤(B)と水溶性食物繊維(C)により乳化・粉末化することで、圧縮成形時にスティッキング・キャッピング等の打錠障害がなく、十分な硬度と良好な崩壊性を有する錠剤を提供することができる。さらに、複数の機能を兼ね備えた本発明の打錠用乳化粉末を錠剤に用いることで製造工程の簡素化を提供することができる。
【0011】
本発明の打錠用乳化粉末は、図1に示すように、内部に固体油脂(A)が配置され、固体油脂(A)の外側が水溶性食物繊維(C)で被覆された粉末である。また、固体油脂(A)の外周には、乳化剤(B)が配置されている。なお、図1では、打錠用乳化油脂の構造を簡略的に説明するものであり、1粒子中に含まれる固体油脂(A)の粒の数は、単一でも複数であってもよい。
【0012】
打錠用乳化粉末は、水溶性食物繊維(C)を溶解した温水中に固体油脂(A)を乳化し、得られた乳化液を乾燥することにより得ることができる。乳化剤(B)は、乳化液を調製する際、温水又は固体油脂(A)に添加することができる。
【0013】
また、本発明の打錠用乳化粉末は、図2に示すように、中空部Hを有する中空粒子でもよい。中空粒子とすることにより、打錠用乳化粉末が塑性変形し易くなり成形性を向上することができる。中空粒子は、スプレードライヤーで噴霧乾燥することにより得ることができる。噴霧乾燥では、液滴の周囲が乾燥して固化し、その後に内部の水分が乾燥することにより中空部Hが形成される。また、中空部Hの大きさは、噴霧する乳化液中の水分量を調整することにより調整することができる。
【0014】
以下に各成分について詳細に説明する。
<固体油脂(A)>
本発明において固体油脂(A)の融点は50~80℃で、常温(20℃)において固体の油脂である。固体油脂(A)の融点は、好ましくは55~75℃であり、より好ましくは60~70℃である。融点が50℃未満の場合、圧縮成形時に油の滲み出しが起き、滑沢性が弱くなり打錠障害(スティッキング・キャッピング)が発生しやすくなる。また、結着性も弱くなり硬度が出にくくなる。一方、融点が80℃より大きい場合、粉末の調整中に温度低下による油脂の析出が起こりやすくなり、粉末化が困難となる。
なお、固体油脂(A)の融点は、基準油脂分析試験法「2.2.4.2 融点(上昇融点)」に準じて測定することができる。
【0015】
また、本発明において固体油脂(A)の脂肪酸組成における炭素数22の飽和脂肪酸の含量が30質量%以上であることが好ましい。炭素数22の飽和脂肪酸を30質量%以上含有することにより、本発明の効果を一層発揮することができる。脂肪酸組成は、基準油脂分析試験法〈2.4.2.2-2013 脂肪酸組成〉に準じて測定することができる。
【0016】
本発明において固体油脂(A)の含有量は2~20質量%、好ましくは、5~10質量%である。2質量%未満の場合、滑沢剤の性能が弱くなり打錠障害(スティッキング)を起しやすくなる。20質量%よりも大きい場合、結合剤の性能が弱くなり、十分な硬度が得られなくなる。また錠剤あたりの油脂が多くなるため崩壊性が悪くなる。
【0017】
本発明において固体油脂(A)に用いる油脂は食品として用いられるものであり、例えばナタネ油、大豆油、パーム油等の植物性油脂、豚脂、魚油等の動物性油脂それらの硬化油、分別油、エステル交換油等が挙げられる。これらの油脂は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0018】
<乳化剤(B)>
本発明において乳化剤(B)は、油脂(A)を乳化させられるものであれば特に限定されないが、常温(20℃)で固体であることが好ましい。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。また、カゼインナトリウムのような乳化力を有する蛋白質でもよい。これらの乳化剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
本発明において乳化剤(B)の含有量は5~30質量%、好ましくは10~20質量%である。5質量%未満の場合、固体油脂(A)を乳化することができないため、滑沢剤の性能が弱くなり打錠障害を起こしやすくなる。30質量%より大きい場合、結合剤の性能が弱くなり十分な硬度が得られなくなる。
【0020】
<水溶性食物繊維(C)>
本発明における50%水溶液の50℃の粘度が80mPa・s以下の水溶性食物繊維として例えばイヌリン、イソマルトデキストリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどが挙げられる。これらの水溶性食物繊維は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせてもよい。なお、「50%水溶液」の濃度は、水溶液の体積に対する水溶性食物繊維の質量(w/v)である。また、本発明の粘度はB型粘度計(東機産業製)にて測定した。
【0021】
水溶性食物繊維の50%水溶液の50℃における粘度は、80mPa・s以下であり、好ましくは60mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以下であり、更に好ましくは40mPa・s以下である。水溶性食物繊維の50%水溶液の50℃における粘度が80mPa・sを超えると、乳化粒子(油滴)が不揃いとなるため、得られた打錠用乳化粉末の滑沢性能が弱くなり打錠障害(スティッキング・キャッピング)が発生しやすくなる。
【0022】
本発明において水溶性食物繊維(C)の含有量は20~93質量%、好ましくは30~93質量%である。20質量%未満の場合、結合剤の性能が弱くなり、十分な硬度が得られなくなる。また、十分な硬度を得るために高い打錠圧力が必要となるため、崩壊性が悪くなる。
【0023】
<その他成分>
本発明における打錠用乳化粉末は、上記の(A)~(C)成分に加えて、水に溶解または分散するものであれば、その他の成分を配合することができる。例えば、糖アルコール、トレハロース、乳糖などの賦形剤が挙げられる。また崩壊剤として使用されている寒天、アルファー化澱粉、クロスポビドン、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0024】
[打錠用乳化粉末の製造方法]
本発明の打錠用乳化粉末の製造方法は、特に限定されないが、例えば、温水に乳化剤(B)と水溶性食物繊維(C)を撹拌しながら投入し、溶解させた後に固体油脂(A)を添加し、粗乳化させ、さらに均質化機で乳化した後、真空凍結乾燥機やスプレードライヤー等の乾燥機で水分を蒸発させることで得ることができる。
【0025】
より詳細には、本発明の打錠用乳化粉末の製造方法は、以下の工程を備える。
工程1:水溶性食物繊維(C)を温水に溶解する工程。
工程2:固体油脂(A)を温水に添加する工程。
工程3:均質化機で乳化する工程。
工程4:粉末化する工程。
【0026】
工程1における温水の温度は、特に限定されないが、例えば、40~100℃である。下限値として、好ましくは45℃以上である。上限値として、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0027】
工程1において、温水に乳化剤(B)を添加することが好ましい。乳化剤(B)を温水に溶解することにより、安定した乳化液を得ることができる。なお、乳化剤(B)は、固体油脂(A)に添加してもよい。
【0028】
工程2における温水の温度は、固体油脂(A)の融点以上であれば特に制限されないが、例えば、固体油脂(A)の融点の5℃以上の温度であり、好ましくは10℃以上である。温水の温度を固体油脂(A)の融点以上とすることにより、固体油脂(A)が溶解するため乳化することができる。
【0029】
工程3の均質化機としては、特に制限されないが、圧力処理能力が15~150MPaの均質化機が挙げられる。圧力の下限値としては、好ましくは20MPa以上、上限値としては、好ましくは100MPa以下である。上記処理圧力で乳化することにより、固体油脂(A)の粒子が小さくなるため、高強度で崩壊性に優れた錠剤を得ることができる。
【0030】
また、工程3における均質化機で乳化した乳化液の乳化粒子径(メジアン径)は、好ましくは0.01~50μmである。乳化粒子径の下限値としては、より好ましくは0.05μ以上である。また、乳化粒子径の上限値としては、より好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは20μm以下である。なお、乳化粒子径(メジアン径)は、レーザー回折式粒度分布計LA-950(堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0031】
また、均質化機による乳化の前処理として、粗乳化処理をすることが好ましい。粗乳化処理は、プロペラ撹拌などの撹拌機を用いて、15分以上撹拌する工程であり、好ましくは20分以上である。撹拌時間の上限値は、例えば、80分以下であり、好ましくは40分以下である。
【0032】
工程4の粉末化する工程は、水分を乾燥して固形化し、さらに粉砕等により粉末化する工程である。例えば、真空凍結乾燥機により乾燥後、粉砕機にて粉末化することができる。また、スプレードライヤーにより乾燥と粉末化を同時に行ってもよい。
【0033】
<本発明の錠剤>
本発明の錠剤は上記の(A)~(C)成分を含有する打錠用乳化粉末と機能性成分の他に、必要により、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤を配合することができる。賦形剤としては、例えば、デンプン、デキストリン、乳糖、糖アルコール等が挙げられる。結合剤としては、結晶セルロース、粉末セルロース等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、寒天、アルファー化澱粉、クロスポビドン、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。機能性成分については特に限定されず、適宜、目的に応じて選択することができる。
【0034】
〔錠剤の製造方法〕
本発明において錠剤の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の打錠用乳化粉末と機能性成分を混合機へ投入し混合後、混合粉体を打錠機にて打錠する方法が挙げられる。打錠機は単発式の堅型成形機、連続式のロータリー式成形機のどちらも使用可能である。また、錠剤の形状は特に限定されない。目的、用途に応じて適宜、臼・杵、重量を選択して所望の形状とすることができる。
【実施例
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例に記載の「粘度」については50%水溶液の50℃の粘度を示す。
(実施例1)
〔打錠用乳化粉末の製造〕
乳化剤(B)としてオクテニルコハク酸澱粉ナトリウム(オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム:イングレディオン・ジャパン(株)製)262.5g(打錠用乳化粉末の含有量として17.5質量%)、水溶性食物繊維(C)として難消化性デキストリン(ファイバーソル2:松谷化学工業(株)製、粘度:35mPa・s、)1162.5g(77.5質量%)を約50℃の温水1.5Lに撹拌しながら溶解した。その後、約75℃に加温し固体油脂(A)としてハイエルシン菜種極度硬化油(融点61℃、炭素数22の飽和脂肪酸50質量%:日油(株)製)を75g(5.0質量%)添加し、粗乳化させ、さらにホモジナイザー(三和機械(株)製)で均質化した後、スプレードライヤーにて噴霧・乾燥し打錠用乳化粉末を得た。
〔錠剤の製造〕
得られた打錠用乳化粉末790g(79質量%)と機能性素材としてビタミンC(ビタミンC TypeS:扶桑化学工業(株)製)200g(20質量%)、その他原料として微粒二酸化ケイ素(サイロページ720:富士シリシア化学(株)製)10g(1質量%)を手混合し、目開き850μmの篩いで手篩いした後、回転式ロータリー打錠機(商品名「VELA5」、(株)菊水製作所製)を用いて打錠した。打錠条件は臼・杵φ9.0mm、R7.5、重量350mg/粒、タレット回転数20rpm、打錠圧力5~20kNで行った。
【0036】
(実施例2)
実施例1の固体油脂(A)の含有量を15.0質量%、水溶性食物繊維(C)の含有量を67.5質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0037】
(実施例3)
実施例1の固体油脂(A)をパーム極度硬化油脂(日油(株)製、融点:55℃)に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0038】
(実施例4)
実施例1の固体油脂(A)を菜種極度硬化油脂(日油(株)製、融点:67℃)に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0039】
(実施例5)
実施例1の乳化剤(B)にグリセリン脂肪酸エステル(エマルジーMS:理研ビタミン(株)製)を用い、打錠用乳化粉末あたりの含有量を10.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0040】
(実施例6)
実施例1の乳化剤(B)にポリグリセリン脂肪酸エステル(ポエムJ-0021:理研ビタミン(株)製)を用い、打錠用乳化粉末あたりの含有量を10.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0041】
(実施例7)
実施例1の乳化剤(B)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を8.5質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0042】
(実施例8)
実施例1の乳化剤(B)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を25.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0043】
(実施例9)
実施例1の水溶性食物繊維(C)をイヌリン(Fuji FF:フジ日本精糖(株)製、粘度:20mPa・s)に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0044】
(実施例10)
実施例1の水溶性食物繊維(C)をポリデキストロース(プロミタ―85:TATE & Lyle社製、粘度:25mPa・s)に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0045】
(実施例11)
実施例1にその他原料のトレハロース(トレハ:(株)林原製)を38.5質量%追加した以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0046】
(実施例12)
実施例1にその他原料の還元麦芽糖水飴(アマルティMR50:三菱商事ライフサイエンス(株)製)を38.5質量%追加した以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0047】
(実施例13)
実施例1にその他原料のセルロース(セオラスFD-101:旭化成(株)製)を5.0質量%追加した以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0048】
(実施例14)
実施例1にその他原料の寒天(崩壊用精製寒天:伊那食品工業(株)製)を2.0質量%追加した以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0049】
(比較例1)
実施例1の固体油脂(A)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を1.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0050】
(比較例2)
実施例1の固体油脂(A)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を30.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0051】
(比較例3)
実施例1の固体油脂(A)をパーム硬化油(日油(株)製:融点42℃)に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0052】
(比較例4)
実施例1の乳化剤(B)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を5.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0053】
(比較例5)
実施例1の乳化剤(B)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を40.0質量%に変えた以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0054】
(比較例6)
実施例1の水溶性食物繊維(C)の打錠用乳化粉末あたりの含有量を10.0質量%に変え、他原料のトレハロース(トレハ:(株)林原製)を67.5質量%追加した以外は実施例1と同じ方法で打錠用乳化粉末および錠剤を得た。
【0055】
以下に示す試験方法により得られた錠剤を評価した。
(1)錠剤硬度
回転式ロータリー打錠機(商品名「VELA5」、(株)菊水製作所製)を用い、打錠圧力5、10、15、20kNで打錠した際の錠剤硬度10粒の平均値を算出し、最大の硬度を錠剤硬度とした。
打錠条件:臼・杵φ9.0mm、R7.5、重量350mg/粒、打錠圧力5~20kN
(2)崩壊時間
錠剤硬度80~90Nの錠剤の崩壊時間を測定した。試験方法は、第十七改正日本薬局方(6.09崩壊試験法 2.1即放性製剤)に準じた。
(3)打錠障害の有無
本発明の打錠用乳化粉末79質量%、ビタミンC20質量%、微粒二酸化ケイ素1質量%を手混合し、回転式ロータリー打錠機(商品名「VELA5」、(株)菊水製作所製)を用い200g打錠し、打錠障害の有無を目視にて評価した。
打錠条件:臼・杵φ9.0mm、R7.5、重量:350mg/粒、打錠圧力10kN
【0056】
【表1】
【0057】
以上の結果から、本発明の打錠用乳化粉末は、圧縮成形時にスティッキング・キャッピング等の打錠障害がなく、輸送時に割れ欠けを起こさない十分な硬度(80N以上)と良好な崩壊性(30分以内)を有する錠剤を提供することができる。よって、本発明の打錠用乳化粉末を用いることで、各添加剤の計量・篩過工程、打錠前の造粒工程、滑沢剤の混合工程が不要となり、製造工程を簡素化することができた。
【0058】
一方、比較例1は、固体油脂(A)の含有量が2.0%未満のため、滑沢剤の性能が弱くなり、圧縮成形時にスティッキングした。
比較例2は、固体油脂(A)の含有量が20.0%よりも多いため、結合剤の性能が弱くなり、圧縮成形時に硬度が出にくく、キャッピングした。また、錠剤あたりの油脂が多いため崩壊時間も長かった。
比較例3は固体油脂(A)の融点が50℃未満のため滑沢剤の性能が弱くなり、圧縮成形時にスティッキングした。さらに、圧縮成形時に油が滲み出たため、結着剤の性能が弱くなり十分な硬度も得られず、キャッピングもした。
比較例4は、乳化剤(B)の含有量が5.0%未満のため、固体油脂(A)を十分に乳化することがでず、滑沢剤の性能が弱くなりスティッキングを起こした。さらに、結着剤の性能が弱くなり十分な硬度も得られなかった。
比較例5は、乳化剤(B)の含有量が30.0%よりも多いため、結着剤の性能が落ち十分な硬度が得られなかった。
比較例6は、水溶性食物繊維(C)の含有量が20.0%よりも少ないため、結着剤の性能が落ち十分な硬度が得られなかった。
【符号の説明】
【0059】
(P1),(P2) 打錠用乳化粉末
(H)中空部
(A)固体油脂
(B)乳化剤
(C)水溶性食物繊維
図1
図2