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  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図1
  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図2
  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図3A
  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図3B
  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図4
  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図5
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  • -蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241108BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 302A
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021044424
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143743
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041513(JP,A)
【文献】特開2003-282159(JP,A)
【文献】特開2011-041452(JP,A)
【文献】特開2017-184534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0235588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
G01R31/36-31/396
B60L1/00-3/12
B60L5/00-5/42
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置であって、
複数の蓄電セルと、
各前記蓄電セルを個別に放電させるバランサ回路と、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
いずれかの前記蓄電セルの電圧が上昇して、あるいはいずれかの前記蓄電セル間の電圧差が上昇して前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第1の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの前記蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第1の低減処理と、
前記第1の条件が成立していない期間に、前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第2の条件が成立したか否かを判断する判断処理と、
前記第2の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの前記蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第2の低減処理と、
前記第2の低減処理によって前記蓄電セルを放電させるときの放電電気量を、少なくとも前記第1の低減処理によって前記蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて決定する決定処理と、
を実行する、蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は、前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたときから、電気量が最大の前記蓄電セルと電気量が最小の前記蓄電セルとの電気量の差が所定値に達するまでの到達時間を、前記放電履歴から予測する予測処理を実行し、
前記第2の条件は、前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたときから前記到達時間が経過したことである、蓄電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は、前記決定処理において、前記蓄電セル毎に前記放電履歴に基づいて所定時間毎の放電電気量の合計値を求め、放電された時刻が新しい前記所定時間の合計値ほど重み付けを重くして平均することによって前記所定時間毎の合計値の重み付け平均を求め、前記第2の低減処理によって放電する各前記蓄電セルの放電電気量を、各前記蓄電セルの重み付け平均に基づいて決定する、蓄電装置。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記第2の条件は、前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたときからの経過時間が所定時間に達したことである、蓄電装置。
【請求項5】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は、各前記蓄電セルの電気量を前記放電履歴に基づいて逐次推定する推定処理を実行し、
前記第2の条件は、前記推定処理によって推定した各前記蓄電セルの電気量のうち最大の電気量と最小の電気量との差が所定値に達したことである、蓄電装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電セルは、充電状態の変化に対する電圧の変化が小さいプラトー領域を有する、蓄電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は、前記第2の条件が成立し、且つ、少なくとも1つの前記蓄電セルの電圧が前記プラトー領域にある場合に、前記第2の低減処理を実行する、蓄電装置。
【請求項8】
蓄電装置の制御方法であって、
前記蓄電装置は、
複数の蓄電セルと、
各前記蓄電セルを個別に放電させるバランサ回路と、
を備え、
当該制御方法は、
いずれかの前記蓄電セルの電圧が上昇して、あるいはいずれかの前記蓄電セル間の電圧差が上昇して前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第1の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの前記蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第1の低減工程と、
前記第1の条件が成立していない期間に、前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第2の条件が成立したか否かを判断する判断工程と、
前記第2の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの前記蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第2の低減工程と、
前記第2の低減工程によって前記蓄電セルを放電させるときの放電電気量を、少なくとも前記第1の低減工程によって前記蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて決定する決定工程と、
を含む、蓄電装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電装置、及び、蓄電装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの蓄電セルを複数備える蓄電装置は、蓄電セル間の自己放電電気量の違いなどに起因して蓄電セル間で電圧が不均等になることが知られている。以降の説明では電圧が不均等な状態のことを電気量の差が生じている状態という。
このため、従来、蓄電セル間の電圧の差(言い換えると電気量の差)をバランサ回路によって低減することが行われている(例えば、特許文献1参照)。一般にバランサ回路を備える蓄電装置は各蓄電セルの電圧を監視し、いずれかの蓄電セルの電圧が所定の電圧まで上昇するとその蓄電セルをバランサ回路によって放電させることによって電圧の差を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6540781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置は長期間放置されることがある。例えば車両に搭載される蓄電装置の場合、車両が長期間駐車されることによって蓄電装置が長期間放置され、充放電されないことがある。従来は、蓄電装置が長期間放置されているときに生じる蓄電セル間の電気量の差を低減することについて十分に検討されていなかった。
本明細書では、蓄電装置が放置されているときの蓄電セル間の電気量の差を低減する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
蓄電装置であって、複数の蓄電セルと、各前記蓄電セルを個別に放電させるバランサ回路と、管理部と、を備え、前記管理部は、いずれかの前記蓄電セルの電圧が上昇して、あるいはいずれかの前記蓄電セル間の電圧差が上昇して前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第1の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第1の低減処理と、前記第1の条件が成立していない期間に、前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第2の条件が成立したか否かを判断する判断処理と、前記第2の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの前記蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第2の低減処理と、前記第2の低減処理によって前記蓄電セルを放電させるときの放電電気量を、少なくとも前記第1の低減処理によって前記蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて決定する決定処理と、を実行する、蓄電装置。
【発明の効果】
【0006】
蓄電装置が放置されているときの蓄電セル間の電気量の差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る車両の電源システムの模式図
図2】蓄電装置の分解斜視図
図3A】蓄電素子の平面図
図3B図3Aに示すA-A線の断面図
図4】蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図5】バランサ回路の動作を説明するための模式図
図6】決定処理及び第2の低減処理のフローチャート
図7】プラトー領域を説明するための模式図
図8】蓄電セルの電圧ばらつきを説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施形態の概要)
(1)本発明の一局面によれば、蓄電装置は、複数の蓄電セルと、各前記蓄電セルを個別に放電させるバランサ回路と、管理部と、を備え、前記管理部は、いずれかの前記蓄電セルの電圧が上昇して、あるいはいずれかの前記蓄電セル間の電圧差が上昇して前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第1の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第1の低減処理と、前記第1の条件が成立していない期間に、前記蓄電セル間の電気量の差を低減すべき第2の条件が成立したか否かを判断する判断処理と、前記第2の条件が成立した場合に、前記バランサ回路によって少なくとも1つの前記蓄電セルを放電させることによって前記蓄電セル間の電気量の差を低減する第2の低減処理と、前記第2の低減処理によって前記蓄電セルを放電させるときの放電電気量を、少なくとも前記第1の低減処理によって前記蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて決定する決定処理と、を実行する。
【0009】
上記の「いずれかの前記蓄電セルの電圧」は、いずれか1つの蓄電セルの電圧であってもよいし、いずれか複数の蓄電セルの電圧であってもよい。上記の「蓄電セル間の電気量の差」は、蓄電セル間の残存電気量の差であってもよい。あるいは、蓄電セルの満充電容量(言い換えると満充電時の残存電気量)と現在の残存電気量との差をその蓄電セルの残りの充電可能な電気量と定義した場合、上記の「蓄電セル間の電気量の差」は蓄電セル間の残りの充電可能な電気量の差であってもよい。残りの充電可能な電気量の差は「放電深度(DOD:Depth of Discharge)の差」あるいは「蓄電装置の放電深度に対応した蓄電セルの電圧の差」と言い換えることもできる。
残存電気量の差を低減することは「下合わせ」と称され、残りの充電可能な電気量の差を低減することは「上合わせ」と称されることもある。例えば蓄電セル間で満充電容量に差がある場合や、高い充電状態(SOC:State Of Charge)で電気量の差を低減する場合は「上合わせ」によって電気量の差を低減し、蓄電セル間で満充電容量に差がない場合や、低い充電状態で電気量の差を低減する場合は「下合わせ」によって電気量の差を低減してもよい。
【0010】
蓄電セルは放置されていても自己放電によって電圧が低下する。蓄電セルの自己放電電気量[Ah]は蓄電セルによって異なるため、蓄電装置が放置されているときも蓄電セル間の自己放電電気量の違いによって蓄電セル間で電気量の差が生じる。蓄電装置が放置されているときに生じる電気量の差は前述した第1の低減処理では低減されない。その理由は、蓄電装置が放置されているときは蓄電セルが充電されないため、蓄電セルの電圧が上昇しないことによって第1の条件が成立せず、第1の低減処理が実行されないからである。
【0011】
第1の条件が成立していない期間にもバランサ回路によって蓄電セルを放電させるようにすれば、蓄電装置が放置されているときの電気量の差を低減できる。しかしながら、各蓄電セルの放電電気量を不適切に決定すると却って差が増長される可能性がある。
これについて検討した本願発明者は、第1の条件が成立していない期間にバランサ回路によって蓄電セルを放電させるとき、少なくとも第1の低減処理によって蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて各蓄電セルの放電電気量を決定すれば、蓄電セル間の電気量の差が低減されるように各蓄電セルの放電電気量を決定できることを見出した。
【0012】
上記の蓄電装置によると、第1の条件が成立していない期間に蓄電セル間の電気量の差を低減するとき、少なくとも第1の低減処理によって蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて各蓄電セルの放電電気量を決定するので、蓄電セル間の電気量の差が低減されるように各蓄電セルの放電電気量を決定できる。このため上記の蓄電装置によると、蓄電装置が放置されているときの蓄電セル間の電気量の差を低減できる。
【0013】
(2)本発明の一局面によれば、前記管理部は、前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたときから、電気量が最大の前記蓄電セルと電気量が最小の前記蓄電セルとの電気量の差が所定値に達するまでの到達時間を、前記放電履歴から予測する予測処理を実行し、前記第2の条件は、前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたときから前記到達時間が経過したことであってもよい。
【0014】
上記の「前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたとき」は、「前回前記バランサ回路によって前記蓄電セル間の電気量の差を低減させたとき」と言い換えることもできる。
上記の蓄電装置によると、電気量が最大の蓄電セルと電気量が最小の蓄電セルとの電気量の差が所定値に達したと予測されるときに蓄電セルを放電させる。このため、蓄電装置が放置されているときの蓄電セル間の電気量の差を所定値以下に抑制できる。
上記の「前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたとき」は、前回第1の低減処理によって放電させたときであってもよいし、前回第1の低減処理によって放電させたとき及び前回第2の低減処理によって放電させたときの両方を含んでもよい。「前回第2の低減処理によって放電させたとき」も含めると、前回第1の低減処理によって放電させたときだけに比べて放電履歴の件数が多くなるので、到達時間をより精度よく予測できる。
【0015】
(3)本発明の一局面によれば、前記管理部は、前記決定処理において、前記蓄電セル毎に前記放電履歴に基づいて所定時間毎の放電電気量の合計値を求め、放電された時刻が新しい前記所定時間の合計値ほど重み付けを重くして平均することによって前記所定時間毎の合計値の重み付け平均を求め、前記第2の低減処理によって放電する各前記蓄電セルの放電電気量を、各前記蓄電セルの重み付け平均に基づいて決定してもよい。
【0016】
蓄電セルの自己放電電気量は蓄電セルの状態(温度や電圧など)によって変化する。このため、所定時間毎の放電電気量の合計値が大きく変化することもある。
上記の蓄電装置によると、放電された時刻が新しい所定時間の合計値ほど重み付けを重くするので、蓄電セルの最新の状態を放電電気量の決定により反映できる。
【0017】
(4)本発明の一局面によれば、前記第2の条件は、前回前記バランサ回路によって前記蓄電セルを放電させたときからの経過時間が所定時間に達したことであってもよい。
【0018】
上記の蓄電装置によると、前回バランサ回路によって蓄電セルを放電させたときから所定時間が経過すると蓄電セルを放電させるので、蓄電装置が放置されているときの蓄電セル間の電気量の差を低減できる。
上記の蓄電装置は電気量の差が所定値に達するまでの到達時間を放電履歴から予測することは行わないので、到達時間を放電履歴から予測する場合に比べて処理を簡素にできる。
【0019】
(5)本発明の一局面によれば、前記管理部は、各前記蓄電セルの電気量を前記放電履歴に基づいて逐次推定する推定処理を実行し、前記第2の条件は、前記推定処理によって推定した各前記蓄電セルの電気量のうち最大の電気量と最小の電気量との差が所定値に達したことであってもよい。
【0020】
上記の蓄電装置によると、蓄電装置が放置されているときの蓄電セル間の電気量の差を所定値以下に抑制できる。
【0021】
(6)本発明の一局面によれば、前記蓄電セルは、充電状態の変化に対する電圧の変化が小さいプラトー領域を有してもよい。
【0022】
図7に示すように、蓄電セルの中には充電状態(SOC)の変化に対する蓄電セルの開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の変化が小さいプラトー領域を有するものがある。プラトー領域は、具体的には例えばSOCの変化量に対するOCVの変化量が2[mV/%]以下の領域である。プラトー領域を有する蓄電セルとしては、例えば正極活物質にLiFePO(リン酸鉄リチウム)が含有され、負極活物質にGr(グラファイト)が含有されたLFP/Gr系(所謂鉄系)のリチウムイオン二次電池が例示される。
【0023】
図8に示すように、プラトー領域を有する蓄電セルは、SOCがプラトー領域にあるときは充電が進行しても電圧が上昇し難い。このため、蓄電セルが高SOC領域まで充電されたとき(言い換えると残存電気量が多いとき)にしか各蓄電セルの電気量を精度よく計測できない。しかしながら、蓄電セルが放置されているときは高SOC領域まで充電されないので、電気量の差を精度よく計測することができず、差が生じていることを検出することが難しい。
【0024】
上記の蓄電装置によると、少なくとも第1の低減処理によって蓄電セルを放電させたときの放電履歴に基づいて各蓄電セルの放電電気量を決定するので、電圧を計測しなくても蓄電セル間の電気量の差が低減されるように各蓄電セルの放電電気量を決定できる。このため、プラトー領域を有する蓄電装置(言い換えると放置中に電気量の差を正確に検出することが困難な蓄電装置)の場合に特に有用である。
【0025】
(7)本発明の一局面によれば、前記管理部は、前記第2の条件が成立し、且つ、少なくとも1つの前記蓄電セルの電圧が前記プラトー領域にある場合に、前記第2の低減処理を実行してもよい。
【0026】
いずれの蓄電セルの電圧も非プラトー領域(急峻領域)にある場合は各蓄電セルの電圧をある程度正確に計測できる。その場合は各蓄電セルの電圧を計測して電気量の差を求めることにより、各蓄電セルの放電電気量を決定できる。これに対し、少なくとも1つの蓄電セルの電圧がプラトー領域にあるときは電気量の差を正確に求めることが困難である。
上記の蓄電装置によると、第2の条件が成立し、且つ、少なくとも1つの蓄電セルの電圧がプラトー領域にある場合に第2の低減処理を実行するので、少なくとも1つの蓄電セルの電圧がプラトー領域にある場合の蓄電セル間の電気量の差を低減できる。
【0027】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0028】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図6によって説明する。以降の説明では同一の構成部材には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0029】
(1)蓄電装置
図1を参照して、実施形態1に係る蓄電装置1について説明する。蓄電装置1は自動車などの車両に搭載されるものであり、車両ECU(Engine Control Unit)14と通信可能に接続されている。蓄電装置1は車両が備えるエンジン始動装置10(セルモータ)や補器類12(パワーステアリング、ブレーキ、ヘッドライト、エアコン、カーナビゲーションなど)に電力を供給する。蓄電装置1は車両発電機13(オルタネータ)によって供給される電力によって充電される。
【0030】
(2)蓄電装置の構成
図2に示すように、蓄電装置1は収容体71を備える。収容体71は合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は底面部75と4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0031】
収容体71は複数の蓄電セル30Aからなる組電池30と回路基板ユニット72とを収容する。回路基板ユニット72は組電池30の上部に配置されている。
蓋体74は本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち一方の隅部に正極の外部端子80Pが固定され、他方の隅部に負極の外部端子80Nが固定されている。
【0032】
蓄電セル30Aは繰り返し充放電可能な二次電池であり、具体的にはリチウムイオン二次電池である。より具体的には、蓄電セル30AはSOCの変化に対するOCVの変化が小さいプラトー領域を有するリチウムイオン二次電池である。プラトー領域を有するリチウムイオン二次電池としては、正極活物質に鉄が含有された鉄系のリチウムイオン二次電池が例示される。鉄系のリチウムイオン二次電池としては、正極活物質にLiFePO(リン酸鉄リチウム)、負極活物質にGr(グラファイト)が含有されたLFP/Gr系のリチウムイオン二次電池が例示される。
【0033】
図3A及び図3Bに示すように、蓄電セル30Aは直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。ケース82はケース本体84とその上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に負極活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に正極活物質を塗布した正極要素との間に多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状であり、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0034】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が接続されており、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89が接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は平板状の台座部90とこの台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0035】
図3Aに示すように、蓋85は圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95はケース82の内圧が制限値を超えた時に開放してケース82の内圧を下げる。
【0036】
(3)蓄電装置の電気的構成
図4に示すように、蓄電装置1は組電池30、BMU31(管理装置の一例)及び通信コネクタ32を備える。組電池30はパワーライン34Pによって正極の外部端子80Pに接続されており、パワーライン34Nによって負極の外部端子80Nに接続されている。
【0037】
組電池30は12個の蓄電セル30Aが3並列で4直列に接続されている。図4では並列に接続された3つの蓄電セル30Aを1つの電池記号で表している。
BMU31は電流センサ33、電圧計測回路35、温度センサ36、バランサ回路38、電流遮断装置39及び管理部37を備えている。
【0038】
電流センサ33は組電池30の負極側に位置し、負極のパワーライン34Nに設けられている。電流センサ33は組電池30の充放電電流[A]を計測して管理部37に出力する。
電圧計測回路35は信号線によって各蓄電セル30Aの両端にそれぞれ接続されている。電圧計測回路35は各蓄電セル30Aの電池電圧[V]を計測して管理部37に出力する。組電池30の総電圧[V]は直列に接続された4つの蓄電セル30Aの合計電圧である。
【0039】
温度センサ36は接触式あるいは非接触式であり、蓄電セル30Aの温度[℃]を計測して管理部37に出力する。図4では省略しているが、温度センサ36は2つ以上設けられている。各温度センサ36は互いに異なる蓄電セル30Aの温度を計測する。
バランサ回路38は各蓄電セル30Aのうち相対的に電圧が高い蓄電セル30Aを放電させることによって各蓄電セル30Aの残存電気量の差を低減するパッシブ方式のバランサ回路38である。バランサ回路38は蓄電セル30A毎に放電抵抗38Aとスイッチ素子38Bとを有している。放電抵抗38Aとスイッチ素子38Bとは直列に接続されており、対応する蓄電セル30Aと並列に接続されている。スイッチ素子38Bは管理部37によって通電状態(閉状態、オン状態、クローズ状態)と遮断状態(開状態、オフ状態、オープン状態)とが切り替えられる。スイッチ素子38Bが通電状態になると対応する蓄電セル30Aの電力が放電抵抗38Aによって放電される。
【0040】
電流遮断装置39はパワーライン34Pに設けられている。電流遮断装置39としてはリレーなどの有接点スイッチ(機械式)や、FET(Field Effect Transistor)などの半導体スイッチなどを用いることができる。電流遮断装置39は管理部37によって通電状態と遮断状態とが切り替えられる。
【0041】
管理部37はCPUやRAMなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ37A、記憶部37B及び通信部37Cを備える。記憶部37Bはデータを書き換え可能な記憶媒体であり、各種のプログラムやデータなどが記憶されている。マイクロコンピュータ37Aは記憶部37Bに記憶されているプログラムを実行することによって蓄電装置1を管理する。通信部37CはBMU31が車両ECU14と通信するための回路である。
通信コネクタ32はBMU31が車両ECU14と通信するための通信ケーブルが接続されるコネクタである。
【0042】
(4)管理部によって実行される処理
管理部37によって実行される以下の4つの処理について説明する。
・第1の低減処理
・記録処理
・決定処理
・第2の低減処理
【0043】
(4-1)第1の低減処理
図5に示すように、蓄電装置1は各蓄電セル30Aの自己放電電気量のばらつきに起因して蓄電セル30A間で残存電気量の差が生じることがある。便宜上、図5では4つの蓄電セル30Aに1~4の符号を付している。第1の低減処理は、蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減する処理である。
具体的には、管理部37はいずれか1つの蓄電セル30Aの電圧が所定の電圧まで上昇すると、バランサ回路38を制御して、その蓄電セル30Aの電圧が、他の蓄電セル30Aのうち電圧が最も低い蓄電セル30Aの電圧と略同じになるようにその蓄電セル30Aを放電させる。これにより蓄電セル30A間の残存電気量の差が低減される。
いずれか1つの蓄電セル30Aの電圧が所定の電圧まで上昇することは第1の条件の一例である。第1の条件はいずれか2以上の蓄電セル30Aの電圧が所定の電圧まで上昇することであってもよい。
【0044】
ここで、電圧が最も低い蓄電セル30Aの電圧がプラトー領域にあった場合は電圧が最も低い蓄電セル30Aの電気量を正しく計測できない可能性があるので、残存電気量の差が低減されたか否かを正確に判断することは難しい。しかしながら、残存電気量の差が残っている場合は蓄電セル30Aがまた充電された際に第1の低減処理が再び実行されることになる。このため、何度も第1の低減処理が繰り返されることになり、いずれ残存電気量が揃うことになる。
【0045】
(4-2)記録処理
記録処理は、第1の低減処理によって各蓄電セル30Aを放電させたときに、放電させた電気量(以下、バランサ放電電気量[Ah]という)をバランサ放電履歴(放電履歴の一例)として記憶部37Bに記録する処理である。
具体的には、管理部37は、バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させるとき、放電させた電気量(バランサ放電電気量)を計測する。管理部37はある蓄電セル30Aを放電させるとき、電圧計測回路35によってその蓄電セル30Aの電圧を計測する。管理部37は、その蓄電セル30Aの電圧と、その蓄電セル30Aに対応する放電抵抗38Aの抵抗値とから、オームの法則によりバランサ回路38によって放電される電流を所定期間毎に計算して積算することで、バランサ放電電気量を計測する。管理部37は、計測したバランサ放電電気量と計測した時刻とを、放電させた蓄電セル30Aに対応付けて記憶部37Bに記録する。
所定期間におけるバランサ放電電気量は、その間のセル自己放電電気量と等価である。バランサ放電電気量の履歴に基づき、セル自己放電電気量を推測することができる。
【0046】
(4-3)決定処理
蓄電装置1が放置されているときとは、蓄電装置1が搭載されている車両が長期間駐車されているとき、あるいは、車両の走行時間が駐車期間に比べて極めて短く、蓄電装置1が長期間満充電されないときのことをいう。車両が駐車される前は車両発電機13によって蓄電セル30Aが充電されていたことから、蓄電装置1が放置されているとき、記憶部37Bには蓄電装置1が放置される前に実行された第1の低減処理のバランサ放電履歴が記録されている。
【0047】
蓄電装置1が放置されているときはいずれの蓄電セル30Aも電圧が所定の電圧(第1の低減処理が実行される電圧)まで上昇しない。管理部37は、いずれの蓄電セル30Aの電圧も所定の電圧未満である期間(言い換えると蓄電装置1が放置されている期間)に、蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減すべき第2の条件が成立したか否かを判断する(判断処理の一例)。第2の条件については後述する。管理部37は、第2の条件が成立したと判断した場合は、後述する第2の低減処理によって蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減する。
【0048】
決定処理は、後述する第2の低減処理によって放電するバランサ放電電気量をバランサ放電履歴に基づいて蓄電セル30A毎に決定する処理である。以下、第2の条件、及び、蓄電セル30A毎のバランサ放電電気量の決定について説明する。
【0049】
(4-3-1)第2の条件
第2の条件は、前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときから次に説明する到達時間が経過したことである。ここで、「前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたとき」とは、前回第1の低減処理が実行された後に後述する第2の低減処理が実行されていない場合は、前回第1の低減処理が実行されたときのことをいう。前回第1の低減処理が実行された後に後述する第2の低減処理が実行されている場合は、前回第2の低減処理が実行されたときのことをいう。
【0050】
以下の表1を参照して、到達時間について説明する。表1は直近10000時間に第1の低減処理によって放電されたバランサ放電電気量を蓄電セル30A毎に合計した値を示している。便宜上、表1では4つの蓄電セル30Aに1~4の符号を付している。
【表1】
【0051】
到達時間は、前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときから、残存電気量が最大の蓄電セル30Aと残存電気量が最小の蓄電セル30Aとの残存電気量の差が所定の最大許容値(所定値の一例)に達すると予測される時間である。前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときは、前回第1の低減処理によって放電させたときであってもよいし、前回第1の低減処理によって放電させたとき及び前回後述する第2の低減処理によって放電させたときの両方を含んでもよい。
【0052】
管理部37は、上述した到達時間をバランサ放電履歴に基づいて予測する(予測処理の一例)。具体的には、表1に示す例の場合、10000時間が経過した時点でバランサ放電電気量が最大の蓄電セル30Aは蓄電セル2であり、バランサ放電電気量が最小の蓄電セル30Aは蓄電セル4である。蓄電セル2が蓄電セル4よりも10000時間当たり50mAh(=120mAh-70mAh)多く放電されていることから、蓄電セル2と蓄電セル4とには10000時間当たり50mAhの残存電気量の差が生じると想定できる。
【0053】
前述した所定の最大許容値が5mAhであるとした場合、5mAhは50mAhの1/10(=5mAh/50mAh)である。このため、前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときから、残存電気量が最大の蓄電セル30Aと残存電気量が最小の蓄電セル30Aとの残存電気量の差が最大許容値(5mAh)に達するまでの到達時間は、10000時間の1/10である1000時間であると予測される。このため、管理部37は以下の式1によって到達時間を予測する。
到達時間=10000時間/(50mAh/5mAh)=1000時間 ・・・ 式1
【0054】
(4-3-2)蓄電セル毎のバランサ放電電気量の決定
管理部37は、上述した到達時間(ここでは1000時間)が経過した時点の各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量をバランサ放電履歴に基づいて予測する。表1に示す例の場合、1000時間が経過した時点の各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量は以下のように予測される。
【0055】
蓄電セル1=105mAh/10
蓄電セル2=120mAh/10
蓄電セル3=80mAh/10
蓄電セル4=70mAh/10
【0056】
管理部37は、各蓄電セル30Aのうち1000時間が経過した時点の予測されるバランサ放電電気量が最小の蓄電セル30Aを基準とし、予測されるバランサ放電電気量が最小の蓄電セル30Aの予測されるバランサ放電電気量と、他の蓄電セル30Aの予測されるバランサ放電電気量との差を、1000時間が経過した時点での他の蓄電セル30Aの必要なバランサ放電電気量として決定する。
【0057】
具体的には、表1に示す例では予測されるバランサ放電電気量が最小の蓄電セル30Aは蓄電セル4である。この場合、1000時間経過時点での他の蓄電セル1~3の必要なバランサ放電電気量は以下のように決定される。
蓄電セル1=(105mAh-70mAh)/10=3.5mAh
蓄電セル2=(120mAh-70mAh)/10=5mAh
蓄電セル3=(80mAh-70mAh)/10=1mAh
蓄電セル4(基準セル)=0mAh
【0058】
(4-4)第2の低減処理
第2の低減処理は、バランサ回路38を制御して、各蓄電セル30Aをそれぞれ上述した決定処理で決定したバランサ放電電気量だけ放電させる処理である。
管理部37は、第2の低減処理によって各蓄電セル30Aを放電させた場合もバランサ放電電気量をバランサ放電履歴として記録してもよい。管理部37は、その後に決定処理を実行するとき、第2の低減処理によって放電させたときの放電履歴もバランサ放電電気量の決定に用いてもよい。
【0059】
(5)決定処理及び第2の低減処理のフローチャート
図6を参照して、決定処理及び第2の低減処理のフローチャートについて説明する。以降の説明では決定処理及び第2の低減処理のことを本処理という。本処理は、前回第1の低減処理が実行された後、所定の時間間隔(例えば1時間間隔)で繰り返し実行される。
【0060】
S101では、管理部37は前述した予測処理を実行することによって到達時間を予測する(決定処理)。
S102では、管理部37は前述した第2の条件(前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときから到達時間が経過したこと)が成立したか否かを判断する(判断処理)。管理部37は、第2の条件が成立した場合はS103に進み、成立していない場合は本処理を終了する。
【0061】
S103では、管理部37は、各蓄電セル30Aについて、到達時間が経過した時点のバランサ放電電気量をバランサ放電履歴に基づいて予測する(決定処理)。
S104では、管理部37は各蓄電セル30Aのうち到達時間が経過した時点の予測されるバランサ放電電気量が最小の蓄電セル30Aを基準とし、他の蓄電セル30Aの必要なバランサ放電電気量を決定する(決定処理)。
S105では、管理部37はバランサ回路38を制御して、他の蓄電セル30AをそれぞれS104で決定したバランサ放電電気量だけ放電させる(第2の低減処理)。
【0062】
上述したS101、S103及びS104は必ずしも本処理の中で実行されなくてもよい。例えばS101の場合、前回第1の低減処理が実行された後、最初に本処理が実行される前に到達時間を予測し、本処理ではその予測された到達時間を用いてもよい。あるいは、本処理の中でS101を実行する場合であっても、必ずしも毎回S101を実行しなくてもよい。具体的には、前回第1の低減処理が実行された後、最初に本処理を実行するときだけS101を実行し、その後に本処理を実行するときは最初に予測した到達時間を用いてもよい。S103及びS104についても同様である。
【0063】
(6)実施形態の効果
実施形態1に係る蓄電装置1によると、いずれの蓄電セル30Aの電圧も所定の電圧未満である期間(言い換えると蓄電装置1が放置されている期間)に蓄電セル30Aの残存電気量の差を低減するとき、バランサ放電履歴に基づいて各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を決定するので、蓄電セル30A間の残存電気量の差が低減されるように各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を決定できる。このため蓄電装置1によると、蓄電装置1が放置されているときの蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減できる。
【0064】
蓄電装置1によると、残存電気量が最大の蓄電セル30Aと残存電気量が最小の蓄電セル30Aとの残存電気量の差が所定の最大許容値に達したと予測されるときに蓄電セル30Aを放電させる。このため、蓄電装置1が放置されているときの蓄電セル30A間の残存電気量の差を最大許容値以下に抑制できる。
【0065】
蓄電装置1によると、第1の低減処理によって蓄電セル30Aを放電させたときのバランサ放電履歴に基づいて各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を決定するので、電圧を計測しなくても蓄電セル30A間の残存電気量の差が低減されるように各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を決定できる。このため、プラトー領域を有する蓄電装置1(言い換えると放置中に電圧差を精度よく検出することが困難な蓄電装置1)の場合に特に有用である。
【0066】
<実施形態2>
実施形態2は実施形態1の変形例である。実施形態2に係る管理部37は、決定処理において、第2の低減処理によって放電する各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を以下の手順によって決定する。
手順1:管理部37は、バランサ放電履歴に基づいて、蓄電セル30A毎に所定時間毎の放電電気量の合計値を求める。
手順2:管理部37は、放電された時刻が新しい所定時間の合計値ほど重み付けを重くして平均することによって所定時間毎の合計値の重み付け平均を求める。
手順3:管理部37は、第2の低減処理によって放電する各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を、各蓄電セル30Aの重み付け平均に基づいて決定する。
【0067】
表2を参照して具体的に説明する。表2に示す例では所定時間を2000時間とし、各蓄電セル30Aについて、バランサ放電履歴として記録されているバランサ放電電気量を2000時間毎に合計した結果を示している。
【表2】
【0068】
表2に示す例では、放電された時刻が新しい所定時間の合計値ほど重み付けを重くしている。具体的には、0~2000時間までの合計値の重みを5とし、2000~4000時間までの重みを4、4000~6000時間までの重みを3、6000~8000時間までの重みを2、8000~10000時間までの重みを1としている。
【0069】
表2に示す蓄電セル1を例に説明すると、蓄電セル1の所定時間(2000時間)毎の合計値の重み付け平均は以下の式2によって計算される。
重み付け平均=(25mAh×1+19mAh×2+18mAh×3+17mAh×4+17mAh×5)/15=18mAh ・・・ 式2
【0070】
同様に、蓄電セル2の重み付け平均は29.8mAh、蓄電セル3の重み付け平均は18.53mAh、蓄電セル4の重み付け平均は15.33mAhとなる。
この場合、重み付け平均が最小の蓄電セル30Aは蓄電セル4であるので、管理部37は蓄電セル4を基準にして、1000時間経過時点での各蓄電セル30Aの必要なバランサ放電電気量を決定する。具体的には、蓄電セル1を例に説明すると、2000時間当たりの蓄電セル4との差は2.67mAh(=18mAh-15.33mAh)である。この場合、1000時間経過時点での蓄電セル1の必要なバランサ放電電気量は以下のように決定される。
放電電気量=2.67mAh×(1000/2000)=1.3mAh
同様に、1000時間経過時点での蓄電セル2の必要なバランサ放電電気量は7.2mAh、蓄電セル3のバランサ放電電気量は1.6mAhとなる。
【0071】
実施形態2に係る蓄電装置1によると、放電された時刻が新しい所定時間の合計値ほど重み付けを重くするので、蓄電セル30Aの最新の状態をバランサ放電電気量の決定により反映できる。
【0072】
<実施形態3>
実施形態3に係る第2の条件は、前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときからの経過時間が所定時間に達したことである。
前述した実施形態1では所定の最大許容値に基づいて到達時間を予測し、到達時間が経過すると蓄電セル30Aを放電させる。これに対し、上述した所定時間は最大許容値とは無関係に任意に決定できる。例えば前述した表1に示す例の場合に、所定時間を500時間としてもよいし、1500時間としてもよいし、2000時間としてもよい。
【0073】
例えば表1に示す例において所定時間を2000時間にしたとする。2000時間は10000時間の1/5(=2000/10000)であることから、2000時間経過時点での各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量は以下のように決定される。
蓄電セル1=(105mAh-70mAh)/5=7mAh
蓄電セル2=(120mAh-70mAh)/5=10mAh
蓄電セル3=(80mAh-70mAh)/5=2mAh
蓄電セル4(基準セル)=0mAh
【0074】
実施形態3に係る蓄電装置1によると、前回バランサ回路38によって蓄電セル30Aを放電させたときから所定時間が経過すると蓄電セル30Aを放電させるので、蓄電装置1が放置されているときの蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減できる。
実施形態3に係る蓄電装置1は電気量の差が所定の最大許容値に達するまでの到達時間を放電履歴から予測することは行わないので、到達時間を放電履歴から予測する場合に比べて処理を簡素にできる。
【0075】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0076】
(1)上記実施形態では第1の条件としていずれかの蓄電セル30Aの電圧が所定の電圧まで上昇することを例に説明したが、第1の条件はこれに限られない。例えば、いずれかの蓄電セル30A間の電圧差が所定の電圧差まで上昇することであってもよい。
【0077】
(2)上記実施形態では、蓄電セル30Aの電圧と、その蓄電セル30Aに対応する放電抵抗38Aの抵抗値とから、オームの法則によりバランサ回路38によって放電される電流を所定期間毎に計算して積算することで、バランサ放電電気量を計算する場合を例に説明したが、バランサ放電電気量を計測する方法はこれに限られない。例えば、管理部37は、電圧計測回路35によって蓄電セル30Aの電圧を計測し、その蓄電セル30Aの電圧が、電圧が最も低い蓄電セル30Aの電圧と同じ電圧まで低下すると、放電前の電圧と放電後の電圧との電圧差を所定の計算式(あるいはテーブル)によって放電電気量[Ah]に換算してもよい。
あるいは、放電前の電圧から蓄電セル30Aの残存電気量[Ah]を推定するとともに、放電後の電圧から蓄電セル30Aの残存電気量を推定し、それらの差をバランサ放電電気量としてもよい。
【0078】
あるいは、管理部37に、バランサ回路38の放電抵抗38Aの抵抗値を記憶させ、逐次的に電圧変化を計測することで、放電電気量を積算してもよい。具体的には、以下の式8~10からバランサ放電電気量を計算してもよい。
【0079】
時間t1でのバランサ電流I1=t1時点のセル電圧/放電抵抗値 ・・・ 式8
時間t2でのバランサ電流I2=t2時点のセル電圧/放電抵抗値 ・・・ 式9
時間t1と時間t2の区間でのバランサ放電電気量=(I2-I1)×(t2-t1) ・・・ 式10
【0080】
あるいは、バランサ回路38が動作する通常の電圧(例えば3.5V)と放電抵抗38Aとから、バランサ電流の平均値を記憶させてもよい。そして、管理部37は、バランサ動作時間とバランサ電流の平均値との乗算によってバランサ放電電気量を計算してもよい。
【0081】
(3)上記実施形態では、蓄電装置1が放置されているときは、第2の条件が成立したとき、各蓄電セル30Aの電圧がプラトー領域であるか否かによらず第2の低減処理によって放電させる場合を例に説明した。しかしながら、いずれの蓄電セル30Aの電圧も非プラトー領域(急峻領域)にある場合は各蓄電セル30Aの電圧差をある程度正確に計測できる。このため、第2の条件が成立したとき、いずれの蓄電セル30Aの電圧も非プラトー領域にある場合は、各蓄電セル30Aの電圧を計測して電圧差を求め、求めた電圧差から各蓄電セル30Aのバランサ放電電気量を決定してもよい。これにより蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減できる。一方、いずれかの蓄電セル30Aの電圧がプラトー領域にあるときは電圧差を正確に計測することが困難であるため、少なくとも1つの蓄電セル30Aの電圧がプラトー領域にある場合は前述した第2の低減処理によって放電させてもよい。これにより、少なくとも1つの蓄電セル30Aの電圧がプラトー領域にある場合の蓄電セル30A間の残存電気量の差を低減できる。
【0082】
(4)上記実施形態では蓄電装置1が車両に搭載された後にバランサ放電履歴を記録する場合を例に説明したが、車両に搭載される前に試験を行ってバランサ放電履歴を予め記憶部37Bに記憶させておいてもよい。
【0083】
(5)上記実施形態では電気量の差として蓄電セル30A間の残存電気量の差を例に説明した。これに対し、蓄電セル30Aの満充電容量(満充電時の残存電気量)と現在の残存電気量との差を残りの充電可能な電気量と定義した場合、電気量の差は蓄電セル30A間の残りの充電可能な電気量の差(所謂上合わせ)であってもよい。
【0084】
(6)上記実施形態では残存電気量が最大の蓄電セル30Aと残存電気量が最小の蓄電セル30Aとの電気量の差が所定の最大許容値に達するまでの到達時間を放電履歴から予測し、予測した到達時間が経過した場合に残存電気量の差を低減する場合を例に説明した。これに対し、管理部37は、各蓄電セル30Aの残存電気量を放電履歴に基づいて逐次推定する推定処理を実行し、推定処理によって推定した各蓄電セル30Aの残存電気量のうち最大の残存電気量と最小の残存電気量との電気量の差が所定の最大許容値に達した場合に残存電気量の差を低減してもよい。このようにすると、蓄電装置1が放置されているときの蓄電セル30A間の残存電気量の差を所定の最大許容値以下に抑制できる。
【0085】
(7)上記実施形態では自動車などの車両に搭載される蓄電装置1を例に説明したが、蓄電装置1は車両に搭載されるものに限定されるものではなく、任意の目的に用いることができる。
【0086】
(8)上記実施形態ではバランサ回路38としてパッシブ方式のバランサ回路38を例に説明した。これに対し、バランサ回路38は電圧が高い蓄電セル30Aによって電圧が低い蓄電セル30Aを充電することによって差を低減するアクティブ方式のバランサ回路38であってもよい。
【0087】
(9)上記実施形態では蓄電セル30Aとしてリチウムイオン二次電池を例に説明したが、蓄電セル30Aは電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…蓄電装置
30A…蓄電セル
37…管理部
38…バランサ回路
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8