(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
E03D11/08
(21)【出願番号】P 2023029575
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2024-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】岡部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥子
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-005594(JP,A)
【文献】特開2021-113497(JP,A)
【文献】特開2021-071009(JP,A)
【文献】特開2020-026681(JP,A)
【文献】特開2012-207504(JP,A)
【文献】特開2005-213883(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143029(WO,A1)
【文献】特開2015-168994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水により汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受ける汚物受け面と、この汚物受け面の上方に形成され内周面を持つリム部と、上記汚物受け面の下方に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部と、を備えたボウル部と、
上記リム部に設けられ、上記リム部の内周面に沿って前方へ洗浄水を吐水する第1リム吐水口を形成する第1吐水部と、
上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記第1吐水部に供給する第1導水路と、
上記リム部に設けられ、上記リム部の内周面に沿って後方へ洗浄水を吐水する第2リム吐水口を形成する第2吐水部と、
上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記第2吐水部に供給する第2導水路と、
上記ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有し、
上記リム部の上記第2リム吐水口の下流側の上方に、上記第2リム吐水口から吐水方向に沿って拡大する空間を形成する拡大部が設けられ
、
上記リム部の上記拡大部と上記第2リム吐水口との間には、上記第2リム吐水口の上端から連続して吐水方向に延びる上面が設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記第2導水路の上面は、第2導水路の底面よりも、上流から下流に向かってより下方へ傾斜している、請求項
1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記第2導水路の上面は、第1傾斜角で下方へ傾斜する上流側上面と、上記第1傾斜角よりも緩やかな第2傾斜角で下方へ傾斜する下流側上面とを備えている、請求項
2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記第2導水路の下流側上面の第2傾斜角は、水平方向に対して20~60度である、請求項
3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記第2リム吐水口は、その正面視で、その上端が内側から外側に向かって下方へ傾斜して延び、さらに、その内側の高さが外側の高さよりも大きく形成されている、請求項1乃至
4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係わり、特に、洗浄水源から供給される洗浄水により汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚物受け面、汚物受け面の上部に形成されたリム部、及び、汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部を備えるボウル部と、リム部に形成され、洗浄水を吐水する第1リム吐水口及び第2リム吐水口と、ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有する水洗大便器が、知られている。
【0003】
このような水洗大便器が、例えば特許文献1及び2に記載されている。特許文献1には、第1リム吐水口と、この第1リム吐水口よりも後方に設けられた第2リム吐水口とを有し、第2リム吐水口からの洗浄水を溜水面へ直接流入させるようにした水洗大便器が記載されている。また、特許文献2にも、特許文献1と同様に、第1リム吐水口及び第2リム吐水口を有し、分配給水管により分配した洗浄水を第2リム吐水口からの洗浄水を溜水面へ直接流入させるようにした水洗大便器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-113497号公報
【文献】特開2018-204195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水洗大便器において、ボウル部への汚物の付着を抑制するために、乾燥面である汚物受け面の面積を小さくするために、溜水面を大きく形成することが考えられる。ここで、上述した特許文献1、2に記載されたような水洗大便器では、第2リム吐水口からの洗浄水を溜水面へ直接流入させているため、溜水面の特定の領域に強い洗浄水が流入することとなる。そのため、このような水洗大便器では、溜水面を大きく形成すると、溜水面の特定の領域のみに強い洗浄水が流入することで溜水面の表面が乱れてしまい、それにより、溜水面の表面に浮遊している浮遊系汚物を十分に排出できない可能性があることが判明した。
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、このような溜水面を大きく形成することにより生じる問題点を解決するため、即ち、溜水面に浮遊する浮遊系汚物を確実に排出するためには、リム吐水口から吐水される洗浄水により溜水面の各領域にかかる押圧力を一定にして、溜水面の表面の乱れを抑制することが必要である、と考えた。このために、第1リム吐水口及び第2リム吐水口を有する水洗大便器において、溜水面の各領域にかかる押圧力を一定にするための1つの方法として、例えば第2リム吐水口から吐水される洗浄水量を増加させて洗浄水を溜水面へ早期に流入させることが考えられる。
【0007】
しかしながら、第2リム吐水口から吐水される洗浄水量を増加させると、第2リム吐水口から洗浄水を吐水する際に「水跳ね」又は「水伝え」が生じる可能性があり、問題である。
【0008】
本発明者らは、水洗大便器において、溜水面を大きく形成することによる問題点を見出し、この問題点を解決するために、鋭意研究し、本発明をなし得たのである。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、第2リム吐水口から吐水される洗浄水量を増加させても、第2リム吐水口から洗浄水が吐水される際に生じる水跳ねや水伝えを抑制することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水により汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受ける汚物受け面と、この汚物受け面の上方に形成され内周面を持つリム部と、汚物受け面の下方に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部と、を備えたボウル部と、リム部に設けられ、リム部の内周面に沿って前方へ洗浄水を吐水する第1リム吐水口を形成する第1吐水部と、洗浄水源から供給される洗浄水を第1吐水部に供給する第1導水路と、リム部に設けられ、リム部の内周面に沿って後方へ洗浄水を吐水する第2リム吐水口を形成する第2吐水部と、洗浄水源から供給される洗浄水を第2吐水部に供給する第2導水路と、ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有し、リム部の第2リム吐水口の下流側の上方に、第2リム吐水口から吐水方向に沿って拡大する空間を形成する拡大部が設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、リム部の第2リム吐水口の下流側の上方に第2リム吐水口から吐水方向に沿って拡大する空間を形成する拡大部が設けられているので、この拡大部の空間内に第2リム吐水口から排出された空気が溜まって空気圧が生じ、第2リム吐水口から洗浄水が吐水された際に水跳ね又は水伝えが生じても、拡大部の空間内に生じた空気圧により水跳ね及び水伝えを抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、リム部の拡大部と第2リム吐水口との間には、第2リム吐水口の上端から連続して吐水方向に延びる上面が設けられている。
このように構成された本発明においては、リム部の拡大部と第2リム吐水口との間に第2リム吐水口の上端から連続して吐水方向に延びる上面が設けられているので、このリム部の上面により、第2リム吐水口から吐水されて上方へ流れようとする洗浄水を吐水方向へ導くことができ、水跳ね及び水伝えをより抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、第2導水路の上面は、第2導水路の底面よりも、上流から下流に向かってより下方へ傾斜している。
このように構成された本発明においては、第2導水路の上面が、第2導水路の底面よりも、上流から下流に向かってより下方へ傾斜しているので、第2リム吐水口から吐水される洗浄水をより早期に溜水面に流入させることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第2導水路の上面は、第1傾斜角で下方へ傾斜する上流側上面と、第1傾斜角よりも緩やかな第2傾斜角で下方へ傾斜する下流側上面とを備えている。
このように構成された本発明においては、第2導水路の上面が、第1傾斜角で下方へ傾斜する上流側上面と、第1傾斜角よりも緩やかな第2傾斜角で下方へ傾斜する下流側上面とを備えているので、第2導水路に供給された洗浄水は、上流側上面によって圧損が抑制された状態で下方に向かって流れ、下流側上面によって整流された状態で第2リム吐水口から吐水される。これにより、本発明によれば、水跳ね及び水伝えをより抑制し、第2リム吐水口から吐水される洗浄水をより早期に溜水面に流入させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、第2導水路の下流側上面の第2傾斜角は、水平方向に対して20~60度である。
このように構成された本発明においては、第2導水路の下流側上面の第2傾斜角が、水平方向に対して20~60度であるので、この第2導水路の下流側上面により、圧損を抑制した状態で整流し、水跳ね及び水伝えをより抑制することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第2リム吐水口は、その正面視で、その上端が内側から外側に向かって下方へ傾斜して延び、さらに、その内側の高さが外側の高さよりも大きく形成されている。
このように構成された本発明においては、第2リム吐水口が、その正面視で、その上端が内側から外側に向かって下方へ傾斜して延び、さらに、その内側の高さが外側の高さよりも大きく形成されているので、第2リム吐水口から溜水面に流入する洗浄水の流れを形成し易くなる。また、第2リム吐水口の外側の高さが内側の高さよりも低くなっているので第2リム吐水口の外側に拡大部の空間を形成し易くなる。これらにより、本発明によれば、溜水面に流入する洗浄水の流れを形成しつつ、水跳ね及び水伝えをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水洗大便器によれば、第2リム吐水口から吐水される洗浄水量を増加させても、第2リム吐水口から洗浄水が吐水される際に生じる水跳ねや水伝えを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による水洗大便器の縦断面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って見た平面断面図である。
【
図3】
図2の第2リム吐水口の近傍を示す部分拡大図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿って見た部分断面図である。
【
図5】
図3のV-V線に沿って見た第2導水路の部分断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線に沿って見た第2リム吐水口の形状及び第2導水路の断面形状を示す断面図である。
【
図7】
図3のA-A線、B-B線、C-C線及びD-D線に沿って見た部分断面図である。
【
図8】本発明の実施形態による水洗大便器のボウル部を前方から見た部分断面図である。
【
図9】本発明の実施形態による水洗大便器のボウル部を前方斜め上方から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る水洗大便器について説明する。
先ず、
図1乃至
図3を参照して、本実施形態による水洗大便器の基本構造について説明する。
図1は本発明の実施形態による水洗大便器の縦断面図であり、
図2は
図1のII-II線に沿って見た平面断面図であり、
図3は
図2の第2リム吐水口の近傍を示す部分拡大図である。
なお、本明細書では、使用者から見て、水洗大便器の手前側を前側、奥側を後方、右側を右側、左側を左側、として説明する。
【0019】
図1乃至
図3に示すように、水洗大便器1は、床に配置される床排水式の水洗大便器である。また、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。
水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を供給する洗浄水を貯水する貯水タンク4とを備えている。便器本体2は、前方側にボウル部6を備え、後方上部には、その上流端に設けられた開口部7が貯水タンク4に連通する共通通水路8が形成されている。さらに、ボウル部6の後方下部に汚物を排出するための排水管路10が形成されている。
【0020】
上述した貯水タンク4は、排水弁12を備え、使用者が操作レバー(図示せず)を開操作することにより、排水弁12が開き、貯水タンク4内の洗浄水が便器本体2に供給され、後述する第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26から吐水されるようになっている。
【0021】
本実施形態おいては、洗浄水源として、貯水タンク4のほかに、水道水直圧式のものや、フラッシュバルブを用いたものでもよく、さらに、ポンプを使用して洗浄水を供給するものであってもよい。
【0022】
なお、水洗大便器1は、洗い落し式便器であるが、サイホン作用を利用してボウル部6内の汚物を排水管路から外部に排出するサイホン式の水洗大便器であってもよい。
【0023】
便器本体2のボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上方に形成され内周面を持つリム部18と、汚物受け面16の下方に形成されその内部に溜水面20が形成されるツボ部22と、を有する。ここで、ツボ部22の溜水面20は、略三角形であり、上面視で前後方向が160mm~180mm、幅方向が125mm~145mmであり、従来の水洗大便器の溜水面よりも大きく(拡大されて)形成されている。また、ツボ部22は、縦面22aを備え、例えば、上面視で前後方向が200mm~240mmであり、横方向が150mm~190mmの大きさで、溜水面20よりも卵型(前側が先細の楕円形状)の略三角形を形成している。
【0024】
また、ボウル部6のリム部18には、前方から見て左側の前方側に、洗浄水を吐水する第1リム吐水口24が形成され、前方から見て右側の後方側に、洗浄水を吐水する第2リム吐水口26が形成されている(
図2及び
図3参照)。詳しくは、第1リム吐水口24は、溜水面20の前端よりも前方に設けられ、第2リム吐水口26は、溜水面20の後端よりも後方に設けられている。また、ボウル部6には、このような第2リム吐水口26から延びる凹部28が更に形成されている(
図1乃至
図3)。
【0025】
上述した共通通水路8は、下流側に向けて、第1導水路30と第2導水路32とに分岐し、第1導水路30は第1リム吐水口24まで延び、第2導水路32は第2リム吐水口26まで延び、貯水タンク4に貯水された洗浄水を第1リム吐水口24と第2リム吐水口26に供給するようになっている。ここで、第1リム吐水口24と第2リム吐水口26は、同一の方向に旋回する旋回流を形成する向きに洗浄水を吐水するようになっている。本実施形態の場合は、反時計回りの旋回流を形成している。
【0026】
次に、
図4により、第2リム吐水口26の下流側の構造について説明する。
図4は
図2のIV-IV線に沿って見た部分断面図である。
図4に示すように、第2導水路32の底面32aがほぼ平らな面で延びており、一方、第2リム吐水口26の下流側のボウル部6の凹部28は円弧形状に湾曲した形状となっている。この第2導水路32の底面32aと凹部28の湾曲形状との境目を垂直方向に上方に延ばした箇所が、第2リム吐水口26である。この第2リム吐水口26は、
図4において、破線で示されている。さらに、この第2リム吐水口26は、
図3において、破線で示すように、平面視で、内側に傾斜し、後述するように、溜水面20を指向している。
【0027】
図4に示すように、リム18の第2リム吐水口26の下流側には、第2リム吐水口26の上端から連続して吐水方向に沿って下方に傾斜して延びる上面34が形成されている。この上面34の下流側には、第2リム吐水口26の吐水方向に沿って、上方に拡大する空間を形成する拡大部36が形成されている。
【0028】
次に、
図5により、第2導水路32について説明する。
図5は
図3のV-V線に沿って見た第2導水路の部分断面図である。
図5に示すように、第2導水路32は、下面32aと上面32bを備えている。上面32bは、上流側上面32cと下流側上面32dからなり、上流から下流に向かって、上流側上面32cは下方に第1傾斜角である角度θ1だけ傾斜し、下流側上面32dは下方に第2傾斜角である角度θ2だけ傾斜している。ここで、第2傾斜角θ2は、水平方向に対して、20度~60度の範囲が好ましく、さらに、30度が最も好ましい。一方、下面32aは、上流から下流に向かって下方に角度θ3だけ傾斜している。これらの傾斜角は、θ1>θ2>θ3の関係となるように形成されている。
【0029】
このように、本実施形態においては、第2導水路32の上面32bは、第2導水路32の底面32aよりも、上流から下流に向かって、より下方に傾斜している。さらに、第2導水路32の上面32bは、上流から下流に向けて、第1傾斜角θ1で下方へ傾斜する上流側上面32cと、第1傾斜角θ1よりも緩やかな第2傾斜角θ2で下方へ傾斜する下流側上面32dとを備えている。
【0030】
次に、
図6により、第2リム吐水口の形状及び第2導水路の断面形状について説明する。
図6は
図3のVI-VI線に沿って見た第2リム吐水口の形状及び第2導水路の断面形状を示す断面図である。
図6に示すように、第2リム吐水口26は、正面視で、略矩形形状であり、さらに、その上端(上面)26aが内側から外側に向かって下方に傾斜して延び、さらに、その内側の高さH1が外側の高さH2よりも大きくなるように形成されている。
【0031】
さらに、
図6に示すように、第2リム吐水口26は、正面視で、その外側の下部角部26bが第1曲率半径R1で形成され、その内側の下部角部26cが第2曲率半径R2で形成されている。さらに、この第1曲率半径R1が第2曲率半径R2より大きく(R1>R2)なるように形成されている。
【0032】
図6に示すように、第2導水路32の流路断面は、その外側の下部角部32eと内側の下部角度32fが同一の曲率半径R3で形成されている。
【0033】
次に、
図7により、第2リム吐水口26の形状と第2リム吐水口26の下流側のボウル部6の凹部28の形状との関係について説明する。
図7は
図3のA-A線、B-B線、C-C線及びD-D線に沿って見た部分断面図である。
図7において、A-A線断面は、第2リム吐水口26の内側下部の形状を示し、B-B線、C-C線及びD-D線は、第2リム吐水口26の下流側のボウル部6の凹部28の断面形状(表面形状)を示している。
【0034】
この
図7に示されているように、本実施形態においては、第2リム吐水口26の下流側のボウル部6の凹部28は、第2リム吐水口32の外側の下方角部26bと連続して形成され、吐水方向に向かって、上述した第2リム吐水口32の外側の下方角部26bの第1曲率半径R1から徐々に大きくなる曲率半径R4、R5、R6で形成されている。なお、曲率半径R4R5及びR6は、それぞれ複数の曲率半径の平均値である。
【0035】
次に、
図8及び
図9により、本実施形態における第2リム吐水口26からの洗浄水の吐水方向について説明する。
図8は本実施形態による水洗大便器のボウル部6を前方から見た部分断面図であり、
図9は本実施形態による水洗大便器のボウル部6を前方斜め上方から見た部分斜視図である。
【0036】
図8及び
図9に示すように、第2リム吐水口26の上流側にある第2導水路32の底面32aは、上述したように、上流から下方に向けて下方に角度θ3だけ傾斜している。本実施形態においては、この下方に傾斜した第2導水路32の底面32aの延長線Aが、洗浄中における溜水面20の最大上昇水位Bよりも上方のツボ部22の両側の縦面22aに交差公差するようになっている。
【0037】
さらに、
図3及び
図9に示すように、第2リム吐水口26は、第2リム吐水口26の反対側であるツボ部22の左側の縦面22aに指向するように形成されている。
【0038】
上述した本実施形態による水洗大便器1は、リム部18に設けられた第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26を備え、各リム吐水口から供給される洗浄水のみで洗浄動作を行う大便器である。しかしながら、本実施形態においては、リム吐水口以外の洗浄水吐水、例えばゼット吐水等を行う水洗大便器にも適用可能である。
【0039】
次に、本実施形態による水洗大便器1の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態のよる水洗大便器1においては、リム部18の第2リム吐水口26の下流側の上方に第2リム吐水口26から吐水方向に沿って拡大する空間を形成する拡大部36が設けられているので、この拡大部36の空間内に第2リム吐水口26から排出された空気が溜まって空気圧が生じ、第2リム吐水口26から洗浄水が吐水された際に水跳ね又は水伝えが生じても、拡大部36の空間内に生じた空気圧により水跳ね及び水伝えを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態のよる水洗大便器1においては、リム部18の拡大部36と第2リム吐水口26との間に、第2リム吐水口26の上端から連続して吐水方向に延びる上面34が設けられているので、このリム部18の上面34により、第2リム吐水口26から吐水されて上方へ流れようとする洗浄水を吐水方向へ導くことができ、水跳ね及び水伝えをより抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態のよる水洗大便器1においては、第2導水路32の上面32bが、第2導水路32の底面32aよりも、上流から下流に向かってより下方へ傾斜しているので、第2リム吐水口26から吐水される洗浄水をより早期に溜水面に流入させることができる。
【0042】
また、本実施形態のよる水洗大便器1においては、第2導水路32の上面32bが、第1傾斜角θ1で下方へ傾斜する上流側上面32cと、第1傾斜角θ1よりも緩やかな第2傾斜角θ2で下方へ傾斜する下流側上面32dとを備えているので、第2導水路32に供給された洗浄水は、上流側上面32cによって圧損が抑制された状態で下方に向かって流れ、下流側上面32dによって整流された状態で第2リム吐水口26から吐水される。これにより、本実施形態によれば、水跳ね及び水伝えをより抑制し、第2リム吐水口26から吐水される洗浄水をより早期に溜水面に流入させることができる。
【0043】
また、本実施形態のよる水洗大便器1においては、第2導水路32の下流側上面32dの第2傾斜角θ2は、水平方向に対して20~60度であるので、この第2導水路32の下流側上面32dにより、圧損を抑制した状態で整流し、水跳ね及び水伝えをより抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態のよる水洗大便器1においては、第2リム吐水口26が、その正面視で、その上端が内側から外側に向かって下方へ傾斜して延び、さらに、その内側の高さH1が外側の高さH2よりも大きく形成されているので、第2リム吐水口26から溜水面20に流入する洗浄水の流れを形成し易くなる。また、第2リム吐水口26の外側の高さH2が内側の高さH1よりも低くなっているので第2リム吐水口26の外側に拡大部36の空間を形成し易くなる。これらにより、本実施形態によれば、溜水面20に流入する洗浄水の流れを形成しつつ、水跳ね及び水伝えをより抑制することができる。
【0045】
また、従来の水洗大便器においては、第2リム吐水口の外側の下方角部と内側の下方角部の曲率半径が同一であり、第2リム吐水口から吐水された洗浄水はリム部の内周面を旋回するだけであった。
しかしながら、本実施形態においては、第2リム吐水口26が、正面視で、その外側の下部角部26bが第1曲率半径R1で形成され、その内側の下部角部26cが第2曲率半径R2で形成され、さらに、第1曲率半径R1が第2曲率半径R2より大きくなるように形成されている。そのため、第2リム吐水口26の外側においては、曲率半径が大きい角部26bにより、洗浄水がボウル部6の凹部28を駆け上がり、溜水面20へ落とし込むエネルギーをもった流れを形成する。さらに、第2リム吐水口26の内側においては、曲率半径の小さい角部26cにより、第2リム吐水口26の外側よりも駆け上がりが小さい緩やかな流れを溜水面20に向けて吐水させることができる。したがって、第2リム吐水口26から吐水される洗浄水量を増加させた場合でも、第2リム吐水口26から吐水した洗浄水を溜水面20へ流入させることができる。
【0046】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、第2導水路32の流路断面が、外側の下部角部32eと内側の下部角度32fが同一の曲率半径R3で形成されているので、第2導水路32内の洗浄水が乱れることなく第2リム吐水口26に向かって流れることができる。
【0047】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、第2リム吐水口26の下流側のボウル部6が、第2リム吐水口26の外側の下方角部26bと連続して形成され、洗浄水の吐水方向に向かって第1曲率半径R1から徐々に大きくなる曲率半径(R4、R5、R6)により形成されているので、第2リム吐水口26から吐水された洗浄水の多くを溜水面へ導くことができる。
【0048】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、第2導水路32の上面32bが、上流から下流に向かって下方へ傾斜しているので、第2リム吐水口26から吐水される洗浄水を溜水面20に向けて吐水することができる。
【0049】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、第2導水路32の底面32aが、第2リム吐水口26から吐水される洗浄水の吐水方向に沿って下方へ傾斜し、この底面32aの延長線Aが、洗浄中における溜水面20の最大上昇水位Bよりも上方のツボ部22の縦面22aに交差するように構成されているので、第2リム吐水口26から吐水された洗浄水を溜水面20に早期に流入させることができ、さらに、上昇した溜水面20の上方からかぶさるように洗浄水を溜水内へ流入させることができる。これにより、本実施形態によれば、ツボ部22内で縦旋回の流れを形成することができると共に、浮遊系汚物の排出タイミングを早くすることができる。
【0050】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、第2リム吐水口26が、溜水面20を指向するように形成されているので、第2リム吐水口26から吐水される洗浄水を溜水面20に向けて吐水することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 貯水タンク
6 ボウル部
10 排水管路
16 汚物受け面
18 リム部
20 溜水面
22 ツボ部
22a 縦面
24 第1リム吐水口
26 第2リム吐水口
26a 上端
26b 外側の下部角部
26c 内側の下部角部
28 凹部
30 第1導水路
32 第2導水路
32a 底面
32b 上面
32c 上流側上面
32d 下流側上面
32e 外側の下部角部
32f 内側の下部角部
34 上面
36 拡大部
θ1、θ2、θ3 傾斜角
R1~R6 曲率半径
H1、H2 高さ
A 延長線
B 溜水面の最大上昇水位