(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】共振装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/007 20060101AFI20241108BHJP
H03H 9/24 20060101ALI20241108BHJP
H03H 3/013 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H03H3/007 M
H03H9/24 B
H03H3/013
(21)【出願番号】P 2022579330
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035307
(87)【国際公開番号】W WO2022168363
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2021016700
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】福光 政和
(72)【発明者】
【氏名】樋口 敬之
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235339(WO,A1)
【文献】特開2006-186566(JP,A)
【文献】特開2016-152476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/007-3/06
H03H 9/00- 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが上部電極及び下部電極を有する複数の共振子を有する第1基板と、
前記複数の共振子を間に挟んで前記第1基板とは反対側に設けられた第2基板と、を備える集合基板であって、前記複数の共振子のそれぞれの上部電極に電気的に接続された複数の第1電源端子と、前記複数の第1電源端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第1連結配線と、を有する集合基板を準備することと、
前記集合基板を複数の共振装置に分割することと、
を含み、
前記複数の第1電源端子は、前記第2基板の前記第1基板とは反対側に設けられた第1金属層と、前記第1金属層を覆う第2金属層とからなり、
前記第1連結配線は、前記第1金属層のうち前記第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなり、
前記集合基板を複数の共振装置に分割することの前に、前記第1金属層のうち前記第2金属層に覆われた領域から延出した部分を除去することをさらに含む、
共振装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の共振子の周波数を調整することをさらに含み、
前記複数の共振子の周波数を調整することは、前記第1連結配線を通して前記複数の共振子に電圧を印加すること、又は、前記第1連結配線を通して前記複数の共振子の周波数を測定することを含む、
請求項1に記載の共振装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属層は、前記第2金属層をメッキによって設けるためのシード膜を有する、
請求項1又は2に記載の共振装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属層のうち前記第2金属層に覆われた領域から延出した部分を除去することは、前記第2金属層をマスクとして用いて前記第1金属層をエッチングすることを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の共振装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2基板は、半導体基板と、前記半導体基板と前記第1金属層との間に設けられた少なくとも1つの絶縁層とを有し、
前記少なくとも1つの絶縁層は、前記集合基板の分割ラインから離間した複数の中央領域と、前記分割ラインを横断する複数の連結領域とを有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の共振装置の製造方法。
【請求項6】
前記集合基板は、前記複数の共振子のそれぞれの上部電極に電気的に接続され且つ前記複数の第1電源端子とは絶縁された複数の第2電源端子と、前記複数の第2電源端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第2連結配線とをさらに備え、
前記複数の第2電源端子は、前記第1金属層と、前記第2金属層とからなり、
前記第2連結配線は、前記第1金属層のうち前記第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の共振装置の製造方法。
【請求項7】
前記集合基板は、前記複数の共振子のそれぞれの下部電極に電気的に接続された複数の接地端子と、前記複数の接地端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第3連結配線とをさらに備え、
前記複数の接地端子は、前記第1金属層と、前記第2金属層とからなり、
前記第3連結配線は、前記第1金属層のうち前記第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の共振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造されたデバイスが普及している。このデバイスは、例えば集合基板(ウエハ)に複数のデバイスを形成した後、ウエハを分割して各デバイスに個片化(チップ化)している。
【0003】
例えば特許文献1には、個片化した状態で、共振子に所定の駆動電圧を印加して共振周波数を調整する周波数調整工程を行う共振装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法で製造される共振装置では、周波数調整工程のために、各共振装置の端子にプローブを接続して駆動電圧を印加する必要があり、全ての共振装置に対して周波数調整を行うのに時間がかかっていた。
【0006】
周波数調整の時間を短縮し生産性を向上させる方法として、ウエハ上の各共振装置の端子を電気的に接続する連結配線を設け、各共振装置に分割する前に一括で周波数調整を行うことが考えられる。しかしながら、各共振装置の端子と連結配線とを別々に形成した場合、製造工程の増加により生産性が低下する。また、各共振装置の端子と連結配線とを一体的に形成した場合、各共振装置に分割する工程で分割ライン上の連結配線が変形する。このとき、変形した連結配線と共振装置の別の端子とがショートし、不良品の発生により生産性が低下する場合がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、生産性が向上した共振装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る共振装置の製造方法は、
それぞれが上部電極及び下部電極を有する複数の共振子を有する第1基板と、第1基板の複数の共振子側に接合された第2基板と、を備える集合基板であって、複数の共振子のそれぞれの上部電極に電気的に接続された複数の第1電源端子と、複数の第1電源端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第1連結配線と、を有する集合基板を準備することと、
集合基板を複数の共振装置に分割することと、
を含み、
複数の第1電源端子は、第2基板の第1基板とは反対側に設けられた第1金属層と、第1金属層を覆う第2金属層とからなり、
第1連結配線は、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなり、
集合基板を複数の共振装置に分割することの前に、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分を除去することをさらに含む。
【0009】
本発明の他の側面に係る共振装置は、
上部電極及び下部電極を有する共振子を有する第1基板と、
第1基板の共振子側に接合された第2基板と、
を備え、
第2基板は、
半導体基板と、
半導体基板の第1基板とは反対側に設けられ、上部電極の一部に電気的に接続され且つ互いに絶縁された第1電源端子及び第2電源端子と、
半導体基板の第1基板とは反対側に設けられ、下部電極に電気的に接続された接地端子と、
半導体基板と第1電源端子との間、及び、半導体基板と第2電源端子との間に設けられた絶縁層と、
を有し、
第2基板の第1基板とは反対側を平面視したとき、絶縁層は、第2基板の外縁から離間する中央領域と、中央領域から延出し第2基板の外縁に到達する連結領域と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性が向上した共振装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態における共振装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した共振装置の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した共振子の構造を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図1に示した共振装置のIV-IV線に沿った断面の構造を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図1に示した共振子及びその周辺の配線を概略的に示す平面図である。
【
図6】
図1に示した上蓋の構造を概略的に示す平面図である。
【
図7】一実施形態における集合基板の外観を概略的に示す分解斜視図である。
【
図8】
図7に示した領域Aを拡大した部分拡大図である。
【
図9】
図7に示した領域Bを拡大した部分拡大図である。
【
図10】一実施形態における共振装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】上側基板と下側基板とを接合した直後の集合基板の構造を概略的に示す断面図である。
【
図12】分割する直前の集合基板の構造を概略的に示す断面図である。
【
図13】一実施形態における集合基板の構造を概略的に示す断面図である。
【
図14】一実施形態における集合基板の構造を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0013】
<共振装置>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る共振装置1の概略構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における共振装置の外観を概略的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示した共振装置の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、共振装置1は、共振子10と、共振子10が振動する振動空間を形成する下蓋20及び上蓋30と、を備えている。すなわち、共振装置1は、下蓋20と、共振子10と、後述する接合部60と、上蓋30とが、この順で積層されて構成されている。なお、本実施形態のMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)は本発明の「第1基板」の一例に相当し、本実施形態の上蓋30は本発明の「第2基板」の一例に相当する。
【0015】
以下において、共振装置1の各構成について説明する。なお、以下の説明では、共振装置1のうち上蓋30が設けられている側を上(又は表)、下蓋20が設けられている側を下(又は裏)、として説明する。
【0016】
共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS振動子である。共振子10と上蓋30とは、接合部60を介して接合されている。また、共振子10と下蓋20は、それぞれシリコン(Si)基板(以下、「Si基板」という)を用いて形成されており、Si基板同士が互いに接合されている。なお、共振子10及び下蓋20は、SOI基板を用いて形成されてもよい。
【0017】
上蓋30はXY平面に沿って平板状に広がっており、その下側に例えば平たい直方体形状の凹部31が形成されている。凹部31は、側壁33に囲まれており、共振子10が振動する空間である振動空間の一部を形成する。なお、上蓋30は、凹部31を有さずに平板状の形状であってもよい。また、上蓋30の凹部31の共振子10側の面に、アウトガスを吸着するためのゲッター層が形成されていてもよい。
【0018】
上蓋30の上面には、2つの電源端子ST1,ST2と、接地端子GTと、ダミー端子DTと、が設けられている。各電源端子ST1,ST2は、共振子10に駆動信号(駆動電圧)を与えるためのものである。各電源端子ST1,ST2は、後述する共振子10の上部電極125A,125B,125C,125Dに電気的に接続される。接地端子GTは、共振子10に基準電位を与えるためのものである。接地端子GTは、後述する共振子10の下部電極129に電気的に接続される。これに対し、ダミー端子DTは、共振子10に電気的に接続されていない。なお、本実施形態の電源端子ST1は本発明の「第1電源端子」の一例に相当し、本実施形態の電源端子ST2は本発明の「第2電源端子」の一例に相当する。
【0019】
電源端子ST1,ST2、接地端子GT及びダミー端子DTは、金属層ML1と、金属層ML2とが、SiウエハL3側からこの順で積層されて構成されている。金属層ML1は、貫通電極V1,V2に接続し、金属層ML2は金属層ML1を覆っている。金属層ML1は、メッキ用のシード膜であり、例えば、スパッタによって形成されたCuシードとTiバリアメタルとが、SiウエハL3側からこの順で積層されて構成されている。金属層ML1は本発明の「第1金属層」の一例に相当し、金属層ML2は本発明の「第2金属層」の一例に相当する。
【0020】
下蓋20は、XY平面に沿って設けられる矩形平板状の底板22と、底板22の周縁部からZ軸方向、つまり、下蓋20と共振子10との積層方向、に延びる側壁23と、を有している。下蓋20には、共振子10と対向する面において、底板22の上面と側壁23の内面とによって形成される凹部21が形成されている。凹部21は、共振子10の振動空間の一部を形成する。なお、下蓋20は、凹部21を有さずに平板状の形状であってもよい。また、下蓋20の凹部21の共振子10側の面に、アウトガスを吸着するためのゲッター層が形成されてもよい。
【0021】
次に、
図3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る共振装置1における共振子10の概略構成について説明する。
図3は、
図1に示した共振子の構造を概略的に示す平面図である。
【0022】
図3に示すように、共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS振動子である。共振子10は、
図3の直交座標系におけるXY平面に広がる上面及び下面を有し、XY面に対して面外屈曲振動する。なお、共振子10は、面外屈曲振動モードを用いた共振子に限定されるものではない。共振装置1の共振子は、例えば、広がり振動モード、厚み縦振動モード、ラム波振動モード、面内屈曲振動モード、表面波振動モードを用いるものであってもよい。これらの振動子は、例えば、タイミングデバイス、RFフィルタ、デュプレクサ、超音波トランスデューサー、ジャイロセンサ、加速度センサ等に応用される。また、アクチュエーター機能を持った圧電ミラー、圧電ジャイロ、圧力センサ機能を持った圧電マイクロフォン、超音波振動センサ等に用いられてもよい。さらに、静電MEMS素子、電磁駆動MEMS素子、ピエゾ抵抗MEMS素子に適用してもよい。
【0023】
共振子10は、振動部120と、保持部140と、保持腕110と、を備える。共振子10は、例えば、YZ面と平行な仮想平面Pに対して面対称に形成されている。つまり、振動部120、保持部140及び保持腕110のそれぞれの形状は、仮想平面Pを対称面として略面対称である。
【0024】
振動部120は、保持部140の内側に設けられており、振動部120と保持部140との間には、所定の間隔で空間が形成されている。
図3に示す例では、振動部120は、基部130と4本の振動腕135A~135D(以下、まとめて「振動腕135」ともいう)と、を有している。なお、振動腕の数は、4つに限定されるものではなく、例えば3つ以上の任意の数に設定される。本実施形態において、各振動腕135A~135Dと、基部130とは、一体に形成されている。
【0025】
基部130は、共振子10の上面を平面視(以下、単に「平面視」という)したときに、X軸方向に延在する長辺131a、131b、Y軸方向に延在する短辺131c、131dを有している。長辺131aは、基部130の前端の面(以下、「前端面131A」ともいう)の一つの辺であり、長辺131bは基部130の後端の面(以下、「後端面131B」ともいう)の一つの辺である。短辺131cは、基部130の一方の側端の面(以下、「左端面131C」ともいう)の一つの辺であり、短辺131dは、基部130の他方の側端の面(以下、「右端面131D」ともいう)の一つの辺である。基部130において、前端面131Aと後端面131Bとは、互いに対向するように設けられ、左端面131Cと右端面131Dとは互いに対向するように設けられている。
【0026】
基部130は、前端面131Aにおいて、振動腕135に接続され、後端面131Bにおいて、後述する保持腕110に接続されている。長辺131a,131bのそれぞれの中点は、仮想平面P上に位置している。なお、基部130は、
図3に示す例では平面視において、略長方形の形状を有しているがこれに限定されるものではない。基部130は、仮想平面Pに対して略面対称に形成されていればよい。例えば、基部130は、長辺131bが131aより短い台形であってもよいし、長辺131aを直径とする半円の形状であってもよい。また、基部130の各面は平面に限定されるものではなく、湾曲した面であってもよい。
【0027】
基部130において、前端面131Aから後端面131Bに向かう方向における、前端面131Aと後端面131Bとの最長距離である基部長は35μm程度である。また、基部長方向に直交する幅方向であって、基部130の側端同士の最長距離である基部幅は265μm程度である。
【0028】
振動腕135は、Y軸方向に延び、それぞれ同一のサイズを有している。振動腕135は、それぞれが基部130と保持部140との間にY軸方向に平行に設けられ、一端は、基部130の前端面131Aと接続されて固定端となっており、他端は開放端となっている。また、振動腕135は、それぞれ、X軸方向に所定の間隔で、並列して設けられている。なお、振動腕135は、例えばX軸方向の幅(以下、単に「幅」ともいう)が50μm程度、Y軸方向の長さ(以下、単に「長さ」ともいう)が450μm程度である。
【0029】
例えば、振動腕135の開放端からY軸方向に150μm程度の部位の幅が、振動腕135の他の部位の幅よりも広くなっている。この幅が広くなった部位は、錘部Gと呼ばれる。錘部Gは、例えば、振動腕135の他の部位よりも、X軸方向に沿って左右に10μmずつ突出し、例えば錘部Gの幅は70μm程度である。錘部Gは、振動腕135と同一プロセスによって一体形成される。錘部Gが形成されることで、振動腕135における単位長さ当たりの重さが、固定端側よりも開放端側の方で重くなっている。従って、振動腕135のそれぞれが開放端側に錘部Gを有することで、各振動腕における上下方向の振動の振幅を大きくすることができる。
【0030】
振動部120の上面(上蓋30に対向する面)には、その全面を覆うように後述の保護膜235が形成されている。また、振動腕135A~135Dの開放端側の先端における保護膜235の上面には、それぞれ、周波数調整膜236が形成されている。周波数調整膜236は、例えば、錘部Gの上面側の略全面に設けられている。保護膜235及び周波数調整膜236を上面側からトリミングする除去加工によって、振動部120の共振周波数を調整することができる。
【0031】
保持部140は、XY平面に沿って振動部120の外側を囲むように、矩形の枠状に形成される。保持部140は、振動部120の+Y軸方向側に設けられた前枠体141aと、振動部120の-Y軸方向側に設けられた後枠体141bと、振動部120の-X軸方向側に設けられた左枠体141cと、振動部120の+X軸方向側に設けられた右枠体141dと、を有している。なお、保持部140は、振動部120の周囲の少なくとも一部に設けられていればよく、枠状の形状に限定されるものではない。
【0032】
保持腕110は、保持部140の内側に設けられ、振動部120と保持部140とを接続する。保持腕110は、基部130が面外屈曲振動できるように、振動部120を保持している。保持腕110は、左保持腕110aと、右保持腕110bとを有している。例えば、左保持腕110aの一端は基部130の後端面131Bに接続し、左保持腕110aの他端は保持部140の左枠体141cに接続している。右保持腕110bの一端は基部130の後端面131Bに接続し、右保持腕110bの他端は保持部140の右枠体141dに接続している。左保持腕110a及び右保持腕110bのそれぞれの基部130に接続する部分の幅は、基部130の幅よりも小さい。
【0033】
次に、
図4を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る共振装置1の積層構造について説明する。
図4は、
図1に示した共振装置1のIV-IV線に沿った断面の構造を概略的に示す断面図である。
【0034】
図4に示すように、共振装置1は、下蓋20上に共振子10が接合され、さらに共振子10と上蓋30とが接合される。このように下蓋20と上蓋30との間に共振子10が保持され、下蓋20と上蓋30と共振子10の保持部140とによって、振動部120が振動する振動空間が形成される。
【0035】
下蓋20は、シリコン(Si)ウエハ(以下、「Siウエハ」という)L1によって、一体的に形成されている。Z軸方向に規定される下蓋20の厚みは、例えば150μm程度である。なお、SiウエハL1は、縮退されていないシリコンを用いて形成されており、その抵抗率は、例えば16mΩ・cm以上である。
【0036】
共振子10における、保持部140、基部130、振動腕135、及び保持腕110は、同一プロセスで一体的に形成される。共振子10は、基板の一例であるシリコン(Si)基板(以下、「Si基板」という)F2の上に、Si基板F2の上面を覆うように下部電極129が形成されている。下部電極129の上には、下部電極129を覆うように圧電薄膜F3が形成されている。圧電薄膜F3の上には、4つの上部電極125A,125B,125C,125D(以下、まとめて「上部電極125」ともいう)が積層されている。上部電極125の上には、上部電極125を覆うように保護膜235が積層されている。保護膜235の上には、互いに電気的に離間するように、導電層CL、上部配線UW1,UW2が設けられている。
【0037】
下部電極129は、Si基板F2の上面において略全体に形成され、共振子10の外縁まで延在している。これにより、個片化(チップ化)する前の、後述する集合基板100の状態において、隣り合う共振装置1の下部電極129を互いに接続させることで、複数の共振装置1の下部電極129を導通することが可能となる。
【0038】
Si基板F2は、例えば、厚さ6μm程度の縮退したn型シリコン(Si)半導体から形成されていてもよい。縮退シリコン(Si)は、n型ドーパントとしてリン(P)やヒ素(As)、アンチモン(Sb)等を含むことができる。Si基板F2に用いられる縮退シリコン(Si)の抵抗値は、例えば16mΩ・cm未満であり、より好ましくは1.2mΩ・cm以下である。なお、Si基板F2の上面及び下面の少なくとも一方に、温度特性補正層の一例として、酸化ケイ素(例えばSiO2)層が形成されていてもよい。
【0039】
このように、Si基板F2が、縮退シリコン(Si)であることにより、例えば低抵抗値である縮退シリコン基板を用いることで、Si基板F2自体が下部電極の役割を兼ねることが可能であり、下部電極129を省略することができる。この場合、集合基板100の状態において、隣り合う共振装置1でSi基板F2を共用することで、複数の共振装置1のSi基板F2、つまり、下部電極を導通することが可能となる。
【0040】
また、下部電極129及び上部電極125は、厚さが、例えば0.1μm以上0.2μm以下程度であり、エッチング等によって所望の形状にパターニングされる。下部電極129及び上部電極125は、結晶構造が体心立方構造である金属が用いられる。具体的には、下部電極129及び上部電極125は、Mo(モリブデン)、タングステン(W)等を用いて形成される。
【0041】
圧電薄膜F3は、電気的エネルギーと機械的エネルギーとを相互に変換する圧電体の薄膜である。圧電薄膜F3は、結晶構造がウルツ鉱型六方晶構造を持つ材料を用いて形成されており、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)等の窒化物や酸化物を主成分とすることができる。なお、窒化スカンジウムアルミニウムは、窒化アルミニウムにおけるアルミニウムの一部がスカンジウムに置換されたものであり、スカンジウムの代わりにマグネシウム(Mg)及びニオブ(Nb)やマグネシウム(Mg)及びジルコニウム(Zr)等の2元素で置換されていてもよい。また、圧電薄膜F3は、例えば1μmの厚さを有するが、0.2μm以上2μm以下程度の厚さを有することも可能である。
【0042】
圧電薄膜F3は、下部電極129及び上部電極125によって圧電薄膜F3に印加される電界に応じて、XY平面の面内方向のうちY軸方向に伸縮する。この圧電薄膜F3の伸縮によって、振動腕135は、下蓋20及び上蓋30の内面に向かってその自由端を変位させ、面外の屈曲振動モードで振動する。
【0043】
本実施形態では、外側の振動腕135A,135Dの上部電極125A,125Dに印加される電界の位相と、内側の振動腕135B,135Cの上部電極125B,125Cに印加される電界の位相とが互いに逆位相になるように設定される。これにより、外側の振動腕135A,135Dと内側の振動腕135B,135Cとが互いに逆方向に変位する。例えば、外側の振動腕135A,135Dが上蓋30の内面に向かって自由端を変位すると、内側の振動腕135B,135Cは下蓋20の内面に向かって自由端を変位する。これにより、外側の振動腕135Aと内側の振動腕135Bとの間をY軸方向に延びる回転軸を中心とした第1の回転モーメントが発生する。また、外側の振動腕135Dと内側の振動腕135Cとの間をY軸方向に延びる回転軸を中心とした、第1の回転モーメントとは逆向きの第2の回転モーメントが発生する。第1及び第2の回転モーメントは基部130にも作用し、基部130は、下蓋20及び上蓋30の内面に向かってその左端面131C及び右端面131Dを変位させ、面外の屈曲振動モードで振動する。
【0044】
保護膜235は、上部電極125の酸化を防ぐ。保護膜235は、エッチングによる質量低減の速度が周波数調整膜236より遅い材料によって形成されることが好ましい。質量低減速度は、エッチング速度、つまり、単位時間あたりに除去される厚みと密度との積により表される。保護膜235は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)等の圧電膜の他、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミナ(Al2O3)等の絶縁膜で形成される。保護膜235の厚さは、例えば0.2μm程度である。
【0045】
周波数調整膜236は、振動部120の略全面に形成された後、エッチング等の加工によって所定の領域のみに形成される。周波数調整膜236は、エッチングによる質量低減の速度が保護膜235より速い材料により形成される。具体的には、周波数調整膜236は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等の金属を用いて形成される。
【0046】
なお、保護膜235と周波数調整膜236とは、質量低減速度の関係が前述の通りであれば、エッチング速度の大小関係は任意である。
【0047】
導電層CLは、下部電極129に接触するように形成される。具体的には、導電層CLと下部電極129との接続にあたり、下部電極129が露出するように、下部電極129上に積層された圧電薄膜F3及び保護膜235の一部が除去され、ビアが形成される。このビアの内部に下部電極129と同様の材料が充填され、下部電極129と導電層CLとが接続される。
【0048】
上部配線UW1は、図示しない下部配線(後述する下部配線LW1)を介して、内側の振動腕135B,135Cの上部電極125B,125Cに電気的に接続している。上部配線UW2は、図示しない下部配線(後述する下部配線LW21,LW22)を介して、外側の振動腕135A,135Dの上部電極125A,125Dに電気的に接続している。上部配線UW1,UW2は、例えばアルミニウム(Al)、金(Au)、錫(Sn)等の金属を用いて形成される。
【0049】
共振子10と上蓋30との間には、接合部60が、XY平面に沿って略矩形の環状に形成される。接合部60は、共振子10の振動空間を封止するように、MEMS基板50と上蓋30とを接合する。これにより、振動空間は気密に封止され、真空状態が維持される。
【0050】
接合部60は、導電性を有しており、例えばアルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)とゲルマニウム(Ge)とが共晶接合した合金等の金属を用いて形成される。なお、接合部60は、金(Au)膜及び錫(Sn)膜等によって形成されてもよいし、金(Au)とシリコン(Si)、金(Au)と金(Au)、銅(Cu)と錫(Sn)等の組合せで形成されてもよい。また、密着性を向上させるために、接合部60は、積層された層間に、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)等が薄く挟まれていてもよい。
【0051】
接合部60は、MEMS基板50(下蓋20及び共振子10)の上面において、外縁から所定の距離、例えば20μm程度を空けて配置されている。これにより、接合部60が所定の距離を空けない場合に発生し得る分割不良に伴う突起(バリ)やダレ等の共振装置1の製品不良を抑制することができる。
【0052】
上蓋30は、所定の厚みのSiウエハL3によって形成されている。SiウエハL3は、本発明の「半導体基板」の一例に相当する。上蓋30は、その周辺部(側壁33)で、接合部60によって共振子10と接合されている。上蓋30において、電源端子ST1,ST2及び接地端子GTが設けられる上面、共振子10に対向する下面、及び貫通電極V1,V2の側面は、酸化ケイ素膜L31に覆われていることが好ましい。酸化ケイ素膜L31は、例えばSiウエハL3の表面の酸化や、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって、SiウエハL3の表面に形成される。
【0053】
なお、上蓋30の上面において、酸化ケイ素膜L31はその全面を覆う必要はなく、少なくとも、SiウエハL3と電源端子ST1との間、SiウエハL3と電源端子ST2との間、SiウエハL3と接地端子GTとの間に設けられていればよい。上蓋30の上面の酸化ケイ素膜L31は、本発明の「絶縁層」の一例に相当する。
【0054】
貫通電極V1,V2は、上蓋30に形成された貫通孔に導電性材料が充填されて形成される。充填される導電性材料は、例えば、不純物ドープされた多結晶シリコン(Poly-Si)、銅(Cu)、金(Au)、不純物ドープされた単結晶シリコン等である。貫通電極V1は、電源端子ST1と端子T1’とを電気的に接続する配線としての役割を果たし、貫通電極V2は、電源端子ST2と端子T2’とを電気的に接続する配線としての役割を果たす。
【0055】
上蓋30の上面(共振子10と対向する面と反対側の面)には、電源端子ST1,ST2と、接地端子GTと、が形成されている。また、上蓋30の下面(共振子10と対向する面)には、端子T1’、T2’と、接地配線GWと、が形成されている。電源端子ST1、貫通電極V1、及び端子T1’は、酸化ケイ素膜L31によって、SiウエハL3から電気的に絶縁されている。他方、上蓋30と共振子10とが接合する際に、端子T1’と上部配線UW1とが接続することによって、電源端子ST1は、上部配線UW1に電気的に接続される。前述したように、上部配線UW1は上部電極125B,125Cに電気的に接続するので、電源端子ST1は、共振子10の上部電極125B,125Cに電気的に接続される。
【0056】
電源端子ST2は、貫通電極V2及び端子T2’を介して、上部配線UW2に電気的に接続されている。電源端子ST2、貫通電極V2、及び端子T2’は、酸化ケイ素膜L31によって、SiウエハL3から電気的に絶縁されている。他方、上蓋30と共振子10とが接合する際に、端子T2’と上部配線UW2とが接続することによって、電源端子ST2は、上部配線UW2に電気的に接続される。前述したように、上部配線UW2は上部電極125A,125Dに電気的に接続するので、電源端子ST2は、共振子10の上部電極125A,125Dに電気的に接続される。
【0057】
接地端子GTは、SiウエハL3に接触するように形成される。具体的には、エッチング等の加工によって酸化ケイ素膜L31の一部が除去され、露出したSiウエハL3の上に接地端子GTが形成される。同様に、接地配線GWは、SiウエハL3に接触するように形成される。具体的には、エッチング等の加工によって酸化ケイ素膜L31の一部が除去され、露出したSiウエハL3の上に接地配線GWが形成される。
【0058】
接地端子GT及び接地配線GWは、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)等の金属を用いて形成される。形成された金属にアニール処理(熱処理)を行うことによって、接地端子GT及び接地配線GWは、SiウエハL3に対してオーミック接触する。これにより、接地端子GTと接地配線GWとが、SiウエハL3を介して電気的に接続される。
【0059】
上蓋30と共振子10とが接合する際に、接地配線GWと導電層CLとが接続することによって、接地端子GTは、導電層CLに電気的に接続される。前述したように、導電層CLは下部電極129に電気的に接続するので、接地端子GTは、共振子10の下部電極129に電気的に接続される。
【0060】
このように、接地端子GTが、接地配線GW及び導電層CLを介して下部電極129に電気的に接続されることにより、接地端子GTが共振子10に基準電位を容易に与える(加える)ことができる。
【0061】
次に、
図5を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る共振装置1における共振子10とその周辺の配線について説明する。
図5は、
図1に示した共振子及びその周辺の配線を概略的に示す平面図である。
【0062】
図5に示すように、上部電極125Aは振動腕135Aに設けられ、上部電極125Bは振動腕135Bに設けられ、上部電極125Cは振動腕135Cに設けられ、上部電極125Dは振動腕135Dに設けられている。端子T1’は、上蓋30の電源端子ST1に形成される貫通電極V1と、共振子10の保護膜235上に形成される上部配線UW1と、を電気的に接続する。上部配線UW1は、保護膜235によって覆われた下部配線LW1に電気的に接続する。下部配線LW1は、引き回されて、振動腕135Bの上部電極125B及び振動腕135Cの上部電極125Cに電気的に接続している。
【0063】
端子T2’は、上蓋30の電源端子ST2に形成される貫通電極V2と、共振子10の保護膜235上に形成される上部配線UW2と、を電気的に接続する。上部配線UW2は、保護膜235によって覆われた下部配線LW21、LW22に電気的に接続する。下部配線LW21は、引き回されて、振動腕135Dの上部電極125Dに電気的に接続している。下部配線LW22は、引き回されて、振動腕135Aの上部電極125Aに電気的に接続している。
【0064】
図5から明らかなように、電源端子ST1と上部電極125B,125Cとを電気的に接続する上部配線UW1及び下部配線LW1は、電源端子ST2と上部電極125A,125Dとを電気的に接続する上部配線UW2及び下部配線LW21,LW22とは、引き回される長さ(距離)が異なるため、面積が異なる。
【0065】
下部配線LW1は、ダミー配線DWを含む。ダミー配線DWは、電気的に接続されるものでなく、下部配線LW1の対称性を図りつつ、その面積を増やすものである。これにより、振動腕135の振動の対称性を保つことが可能となるとともに、上部配線UW1、下部配線LW1、上部配線UW2、及び下部配線LW21,LW22の面積によって発生する容量のアンバランスを、ダミー配線DWの面積で調整することが可能となる。
【0066】
貫通電極V3は、貫通電極V1,V2と同様に、上蓋30に形成された貫通孔に導電性材料が充填されて形成される。充填される導電性材料は、例えば、不純物ドープされた多結晶シリコン(Poly-Si)、銅(Cu)、金(Au)、不純物ドープされた単結晶シリコン等である。貫通電極V3は、上蓋30の上面に形成される接地端子GTと共振子10の上に環状に形成された接合部60とを電気的に接続する配線としての役割を果たす。このように、接地端子GTが、下部電極129に接続されるとともに、接合部60に電気的に接続されることにより、
図4に示した積層構造において、接合部60と下部電極129との間に発生し得る寄生容量を低減することができる。
【0067】
また、接合部60は、連結部材65を含んでいる。連結部材65は、例えば接合部60の角部に形成され、共振子10の外縁まで延在している。これにより、後述する集合基板100の状態において、対角に配置された共振装置1の連結部材65を互いに接続させることで、連結部材65を介して下部電極129同士を導通することが可能となる。
【0068】
なお、連結部材65は、接合部60の角部に形成される場合に限定されるものではない。例えば、平面視における略矩形の長辺又は短辺から突出して共振子10の外縁まで延在していてもよい。また、接合部60が含む連結部材65は、1つである場合に限定されず、2以上の複数であってもよい。
【0069】
次に、
図6を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る上蓋30の上面側の構造について説明する。
図6は、
図1に示した上蓋の構造を概略的に示す平面図である。
【0070】
図6に示すように、電源端子ST1は、電源パッドPD1と、電源配線SL1と、を含む。電源パッドPD1は、上蓋30の上面において、X軸正方向側、かつ、Y軸正方向側の角部に配置されている。また、上蓋30の上面を平面視(共振子の上面を平面視したときと同様であるため、以下、単に「平面視」という)したときに、切欠きCO1を含む形状を有している。電源配線SL1は、一端部(
図6おける右端部)が電源パッドPD1に接続し、後述する接地パッドPD3の近くまで延在している。また、電源配線SL1の他端部(
図6おいて左端部)には、前述した貫通電極V1が形成される。
【0071】
電源端子ST2は、電源パッドPD2を含む。電源パッドPD2は、上蓋30の上面において、X軸負方向側、かつ、Y軸負方向側の角部に配置されている。また、平面視において、電源パッドPD2は略矩形の形状を有している。さらに、電源パッドPD2は、X軸正方向に突出する部分を有している。当該部分には、前述した貫通電極V2が形成される。
【0072】
接地端子GTは、接地パッドPD3と、接地配線GL3と、を含む。上蓋30の上面において、接地パッドPD3は、X軸正方向側、かつ、Y軸負方向側の角部に配置されている。また、平面視において、接地パッドPD3は略矩形の形状を有している。接地配線GL3は、一端部(
図6おける
下端部)が
接地パッドPD
3に接続し、他端部(
図6における
上端部)に、前述した貫通電極V3が形成される。
【0073】
ダミー端子DTは、共振子10に電気的に接続されない端子である。ダミー端子DTは、ダミーパッドDDのみを含む。上蓋30の上面において、ダミーパッドDDは、X軸負方向側、かつ、Y軸正方向側の角部に配置されている。平面視において、ダミーパッドDDは略矩形の形状を有している。
【0074】
図6から明らかなように、電源端子ST1が電源パッドPD1及び電源配線SL1を含む一方、電源端子ST2は電源パッドPD2のみを含むので、電源端子ST1と電源端子ST2とは、その面積が異なっている。より詳細には、電源端子ST1と接地端子GTとの間に発生する容量と電源端子ST2と接地端子GTとの間に発生する容量とが近似するように、電源端子ST1の面積と電源端子ST2の面積とが異なる。これにより、電源端子ST1と接地端子GTとの間に発生する容量と電源端子ST2と接地端子GTとの間に発生する容量との差の絶対値が低減する。従って、電源端子ST1と接地端子GTとの間に発生する容量と電源端子ST2と接地端子GTとの間に発生する容量とのアンバランスを抑制することができる。
【0075】
また、平面視において、電源端子ST2の電源パッドPD2は、略矩形の形状を有しているのに対し、電源端子ST1の電源パッドPD1は、切欠きCO1を含む形状を有している。このように、電源端子ST1の形状と電源端子ST2の形状とが異なることにより、互いに面積の異なる電源端子ST1及び電源端子ST2を容易に実現できる。なお、電源パッドPD2、接地パッドPD3及びダミーパッドDDの少なくとも1つが切欠きを含む形状であってもよい。
【0076】
平面視において、本発明の「絶縁層」の一例である酸化ケイ素膜L31は、上蓋30の外縁から離間する中央領域CRと、中央領域CRから延出し上蓋30の外縁に到達する連結領域LRとを有している。中央領域CRは、電源端子ST1,ST2、接地端子GT及びダミー端子DTの全面と重なっている。連結領域LRは、電源端子ST1の電源パッドPD1、電源端子ST2の電源パッドPD2、接地端子GTの接地パッドPD3、及び、ダミー端子DTのダミーパッドDDの間の領域の延長線上に設けられている。連結領域LRの面積は、中央領域CRの面積よりも小さい。連結領域LRの延出方向と直交する方向の幅(以下、単に「幅」という)は、各パッドPD1,PD2,PD3,DDの幅よりも小さく、隣り合う端子の間の領域の幅よりも小さい。この連結領域LRの幅は、後述する連結配線LL1,LL2の幅以上の大きさであればよく、小さければ小さいほど好ましい。なお、後述する集合基板100の状態において、隣り合う共振装置1の連結領域LRは連続している。
【0077】
本発明の「絶縁層」は、複数の絶縁膜からなる多層膜であってもよい。このような多層膜の場合、少なくとも1つの絶縁膜が上蓋30の外縁から離間すればよく、その他の絶縁膜は上蓋30の外縁まで延在してもよい。
【0078】
<集合基板>
次に、
図7から
図9を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る集合基板100の概略構成について説明する。
図7は、一実施形態における集合基板100の外観を概略的に示す分解斜視図である。
図8は、
図7に示した領域Aを拡大した部分拡大図である。
図9は、
図7に示した領域Bを拡大した部分拡大図である。なお、
図8に示す分割ラインLN1は、
図9に示す分割ラインLN1に対応し、
図8に示す分割ラインLN2は、
図9に示す分割ラインLN2に対応するものである。
【0079】
本実施形態の集合基板100は、前述した共振装置1を製造するためのものである。
図7に示すように、この集合基板100は、上側基板13と、下側基板14とを備えている。上側基板13及び下側基板14は、それぞれ、平面視において円形の形状を有している。下側基板14は、複数の共振子10を含んでいる。上側基板13は、下面が複数の共振子10を間に挟んで下側基板14と対向するように配置されている。なお、本実施形態の下側基板14は、本発明の「第1基板」の一例に相当し、本実施形態の上側基板13は、本発明の「第2基板」の一例に相当する。
【0080】
図8に示すように、上側基板13の上面には、複数の電源端子ST1,ST2と、複数の接地端子GTと、複数のダミー端子DTとが形成されている。電源端子ST1、電源端子ST2、接地端子GT、及びダミー端子DTの4つの端子の組は、上側基板13の上面の全体にアレイ状に配置されている。具体的には、この組が行方向(
図8におけるY軸に沿う方向)及び列方向(
図8におけるX軸に沿う方向)に、それぞれ所定の間隔で、複数配置されている。
【0081】
また、上側基板13の上面には、複数の連結配線LL1、LL2(以下、まとめて「連結配線LL」ともいう)が形成されている。各連結配線LL1は、電源端子ST1に電気的に接続され、列方向(
図8におけるX軸に沿う方向)に延在している。また、各連結配線LL2は、連結配線LL1に電気的に接続され、行方向(
図8におけるY軸に沿う方向)に延在している。複数の連結配線LLは、金属層ML1のうち第2金属層ML2に覆われた領域から延出した部分によって形成されている。つまり、複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、複数のダミー端子DT、及び、複数の連結配線LLに亘り連続した金属層ML1が形成されており、金属層ML1のうち複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、及び、複数のダミー端子DTに相当する領域が金属層ML2に覆われている。
【0082】
図8に示す分割ラインLN1,LN2(以下、まとめて「分割ラインLN」ともいう)は、集合基板100、つまり、上側基板13及び下側基板14を、切削等することで複数の共振装置1に分割するためのものであり、スクライブラインとも呼ばれる。分割ラインLNの幅は、例えば5μm以上20μm以下である。
【0083】
上側基板13の上面において、各連結配線LL1は、Y軸に平行な分割ラインLN2を超えて延在し、各連結配線LL2は、X軸に平行な分割ラインLN1を超えて延在している。これにより、個片化(チップ化)する前の、集合基板100の状態において、隣り合う共振装置1の連結配線LLが互い接続するので、電源端子ST1及び連結配線LLを介して複数の共振装置1の上部電極125B,125Cを導通することが可能となる。従って、電源端子ST1と接地端子GTとに2本プローブを接触させることで複数の共振装置1を一括して通電することができ、周波数調整や導通検査等の通電を伴う作業を短時間かつ簡易に行うことができる。
【0084】
平面視したとき、分割ラインLNのうち連結配線LLと重なる部分には、絶縁層の連結領域LRが設けられているため、連結配線LLとSiウエハL3とのショート不良の発生を抑制することができる。また、分割ラインLNのうち連結配線LLと重なる部分の外側ではSiウエハL3が露出しているため、SiウエハL3に比べて切断し難い絶縁層を避けて集合基板100を分割することができる。したがって、ダイシング不良を抑制することができる。
【0085】
なお、
図8では、上蓋30の上面に連結配線LL1及び連結配線LL2の2種類が形成される例を示したが、これに限定されるものではない。連結配線は、例えば、1種類又は3種類以上設けられていてもよい。また、複数の電源端子ST2を互いに電気的に接続する連結配線が設けられてもよく、複数の接地端子GTを互いに電気的に接続する連結配線が設けられてもよい。複数の電源端子ST2を連結する連結配線を設けたとすると、集合基板100において通電を伴う作業をさらに短時間かつ簡易に行うことができる。また、複数の接地端子GTを連結する連結配線を設けたとすると、連結部材65を省略したとしても、集合基板100において通電を伴う作業をさらに短時間かつ簡易に行うことができる。
【0086】
図9に示すように、下側基板14の上面には、複数のデバイスDEと、複数の接合部60とが形成されている。各デバイスDEは、前述した共振子10のうちの主要部、例えば振動部120及び保持腕110に対応する。各接合部60は、共振子10の保持部140の領域に設けられる。また、各接合部60は、矩形状の角部のそれぞれに、連結部材65を含んでいる。デバイスDE及び接合部60の組は、下側基板14の上面の全体にアレイ状に配置されている。具体的には、この組が行方向(
図9におけるY軸に沿う方向)及び列方向(
図9におけるX軸に沿う方向)に、それぞれ所定の間隔で、複数配置されている。
【0087】
各連結部材65は、分割ラインLNを超えて延在している。すなわち、ある接合部の連結部材65は、隣り合う複数の接合部60のうち、互いに角部が対向する接合部60の連結部材65と連結する。この結果、複数の接合部60は、連結部材65によって、互いに電気的に接続される。
【0088】
<MEMSデバイスの製造方法>
次に、
図10~
図12を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る共振装置1の製造方法について説明する。
図10は、一実施形態における共振装置1の製造方法S100を示すフローチャートである。
図11は、上側基板
13と下側基板14とを接合した直後の集合基板の構造を概略的に示す断面図である。
図12は、分割する直前の集合基板の構造を概略的に示す断面図である。
【0089】
図10に示すように、まず、共振装置1の上蓋30に対応する上側基板13を準備する(S110)。
【0090】
上側基板13は、Si基板を用いて形成されている。具体的には、上側基板13は、
図4に示した所定の厚みのSiウエハL3によって形成されている。SiウエハL3の上面、下面(共振子10に対向する面)及び貫通電極V1,V2,V3の側面は、酸化ケイ素膜L31に覆われている。酸化ケイ素膜L31は、例えばSiウエハL3の表面の酸化や、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって、SiウエハL3の表面に形成される。
【0091】
上側基板13の上面には、複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、複数のダミー端子DT、及び複数の連結配線LLが形成されている。具体的には、酸化ケイ素膜L31の中央領域CR上に、複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、及び複数のダミー端子DTが形成され、酸化ケイ素膜L31の中央領域CRから連結領域LRに亘って複数の連結配線LLが形成されている。
【0092】
複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、及び、複数のダミー端子DTを形成する工程では、まず、シード膜となる金属層ML1をスパッタによって形成する。具体的には、酸化ケイ素膜L31の上にCuシードを形成し、Cuシードの上にTiバリアメタルを形成する。次に、金属層ML1(シード膜)を電解メッキし、Ni-Auメッキ膜からなる金属層ML2を形成する。金属層ML2は、複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、及び、複数のダミー端子DTとなる領域に形成される。次に、金属層ML2から露出した金属層ML1のうち、複数の連結配線LLとして用いる部分以外をエッチングによって除去する。つまり、第2金属層(メッキ膜)に覆われた領域から延出した第1金属層(シード膜)によって複数の連結配線LLを形成する。このように、複数の電源端子ST1,ST2、複数の接地端子GT、及び複数のダミー端子DTを形成する工程を利用して複数の連結配線LLを形成することで、製造を短時間かつ簡易に行うことができる。
【0093】
図8に示したように、上側基板13の上面において、各連結配線LL1は、Y軸に平行な分割ラインLN2を超えて延在し、各連結配線LL2は、X軸に平行な分割ラインLN1を超えて延在している。これにより、個片化(チップ化)する前の、集合基板100の状態において、隣り合う共振装置1の連結配線LLが互い接続するので、電源端子ST1及び連結配線LLを介して複数の共振装置1の上部電極125B,125Cを導通することが可能となる。酸化ケイ素膜L31の連結領域LRは、各連結配線LLに沿って分割ラインLNを超えて延在し、各連結配線LLとSiウエハL3とのショートを防止している。分割ラインLN上における酸化ケイ素膜L31の連結領域LRの幅は、各連結配線LLの幅と略同等であり、中央領域CRは分割ラインLNから離間しているため、SiウエハL3よりも切断しにくい酸化ケイ素膜L31に起因したダイシング不良を抑制できる。
【0094】
図4に示した貫通電極V1,V2及び
図5に示した貫通電極V3は、上側基板13に形成された貫通孔に導電性材料が充填されて形成される。充填される導電性材料は、例えば、不純物ドープされた多結晶シリコン(Poly-Si)、銅(Cu)、金(Au)、不純物ドープされた単結晶シリコン等である。
【0095】
一方、上側基板13の下面には、端子T1’、T2’、及び接地配線GWが形成される。
【0096】
次に、共振装置1のMEMS基板50(共振子10及び下蓋20)に対応する下側基板14を準備する(S120)。
【0097】
下側基板14は、Si基板同士が互いに接合されている。なお、下側基板14は、SOI基板を用いて形成されてもよい。下側基板14は、
図4に示したように、SiウエハL1と、Si基板F2と、を含む。
【0098】
Si基板F2の上面には、下部電極129、圧電薄膜F3、上部電極125、保護膜235及び周波数調整膜236が積層される。保護膜235の上には、
図9に示した分割ラインLNに沿って、かつ、分割ラインLNから所定の距離を空けて、接合部60が形成される。
【0099】
また、圧電薄膜F3の上には、上部電極125に加えて、下部配線LW1,LW21,LW22とダミー配線DWとが形成される。下部配線LW1,LW21,LW22及びダミー配線DWの材料として上部電極125と同じ種類の金属を用いることで、製造プロセスを簡略化することができる。保護膜235の上には、接合部60に加えて、導電層CLと上部配線UW1,UW2とが形成される。上部配線UW1,UW2の材料として接合部60と同じ種類の金属を用いることで、製造プロセスを簡略化することができる。
【0100】
本実施形態では、接合部60及び上部配線UW1,UW2を下側基板14の上面側に形成する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、接合部60及び上部配線UW1,UW2の少なくとも一方を、上側基板13の下面側に形成してもよい。また、接合部60が複数の材料で構成される場合、接合部60のうちの一部の材料、例えばゲルマニウム(Ge)を上側基板13の下面側に形成し、接合部60のうちの残りの材料、例えばアルミニウム(Al)を下側基板14の上面側に形成してもよい。同様に、上部配線UW1,UW2が複数の材料で構成される場合、上部配線UW1,UW2のうちの一部の材料を上側基板13の下面側に形成し、上部配線UW1,UW2のうちの残りの材料を下側基板14の上面側に形成してもよい。
【0101】
また、本実施形態では、工程S110において上側基板13を準備した後、工程S120において下側基板14を準備する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、順序を入れ替え、下側基板14を準備した後に上側基板13を準備してもよいし、上側基板13の準備と下側基板14の準備とを平行して行ってもよい。
【0102】
次に、周波数調整膜236の表面を除去加工する(S130)。
【0103】
具体的には、下側基板14に設けられた複数の共振子10のそれぞれの周波数調整膜236をイオンミリングによってトリミング処理し、振動腕135の質量変化によって共振子10の周波数を調整する。このとき、保護膜235の表面も一緒にトリミングしてもよい。本工程S130は、「封止前の周波数調整工程」又は「第1の周波数調整工程」の一例に相当する。
【0104】
次に、工程S110において準備した上側基板13と、工程S120において準備した下側基板14と、を接合する(S140)。
【0105】
具体的には、
図11に示すように、上側基板13の下面と下側基板14の上面とは、接合部60によって共晶接合される。
図4に示したように、端子T1’、T2’と上部配線UW1,UW2とが接触するように、上側基板13及び下側基板14の位置を合わせる。位置合わせをした後、ヒータ等によって上側基板13及び下側基板14が挟み込まれ、共晶接合のための加熱処理が行われる。共晶接合のための加熱処理における温度は、共焦点の温度以上、例えば424℃以上であり、加熱時間は、例えば10分以上20分以下程度である。加熱時に、上側基板13及び下側基板14は、例えば5MPa以上25MPa以下程度の圧力で押圧される。このようにして、接合部60は、上側基板13の下面と下側基板14の上面とを共晶接合する。工程S110から工程S140までの一連の工程は、本発明の「集合基板を準備すること」の一例に相当する。
【0106】
次に、振動腕135の先端部をキャビティ内壁に衝突させる(S150)。
【0107】
具体的には、連結配線LLを通して複数の共振子10に電界を印加し、複数の共振子10を同時に励振させる。このとき、共振装置1として通常使用する際に印加する電界よりも強い電界を印加し、共振子10の振幅を大きくする(以下、「過励振」ともいう)。過励振された複数の共振子10のそれぞれの振動腕135は、それぞれの下蓋20又は上蓋30の内壁に衝突して、先端部が削られる。これにより、振動腕135の質量変化によって共振子10の周波数を調整する。本工程S150は、「封止後の周波数調整工程」又は「第2の周波数調整工程」の一例に相当する。
【0108】
次に、連結配線LLを除去する(S160)。
【0109】
具体的には、金属層ML
2をマスクとして利用し、金属層ML
1をエッチングする。これにより、
図12に示すように、金属層ML2から露出していた金属層ML1は除去され、電源端子ST1,ST2、接地端子GT、及びダミー端子DTに相当する領域にのみ、金属層ML1と金属層ML2とが残存する。これによれば、集合基板100を分割するとき、連結配線LLの変形によるショート不良の発生を抑制できる。また、連結配線LLを除去する工程でフォトレジストを設ける必要がないため、製造工程を簡略化できる。
【0110】
次に、集合基板100を分割する(S170)。
【0111】
具体的には、分割ラインLNに沿って上側基板13及び下側基板14を分割する。上側基板13及び下側基板14の分割は、ダイシングソーを用いて上側基板13及び下側基板14を切削してダイシングを行ってもよいし、レーザを集光して基板内部に改質層を形成するステルスダイシング技術を用いてダイシングを行ってもよい。
【0112】
工程S170において上側基板13及び下側基板14を分割ラインLNに沿って分割することで、上側基板13及び下側基板14が、上蓋30及びMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)を備える共振装置1のそれぞれに個片化(チップ化)される。
【0113】
次に、前述した実施形態の変形例について説明する。なお、
図1から
図12に示した構成と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0114】
(第1変形例)
図13を参照しつつ、第1変形例に係る集合基板200の構造について説明する。
図13は、一実施形態における集合基板の構造を概略的に示す断面図である。
【0115】
図13に示すように、上側基板
13は、酸化ケイ素膜L31と金属層ML1との間に、さらに有機絶縁膜L32を備えている。酸化ケイ素膜L31及び有機絶縁膜L32は、合わせて本発明の「絶縁層」の一例に相当する。酸化ケイ素膜L31は、分割ラインを超えて延在し、SiウエハL3の上面の略全面に形成されている。有機絶縁膜L32は、分割ラインLNを超えて延在する連結領域LRと、分割ラインLNから離間する中央領域CRと、を有している。絶縁層を2つの絶縁膜(酸化ケイ素膜L31及び有機絶縁膜L32)によって構成することで、電源端子ST1,ST2を貫通電極V1,V2から離れた位置に形成することが可能となる。したがって、設計の自由度が向上する。
【0116】
(第2変形例)
図14を参照しつつ、第2変形例に係る集合基板300の構造について説明する。
図14は、一実施形態における集合基板の構造を概略的に示す平面図である。
【0117】
図14に示すように、集合基板300の上側基板には、複数の電源端子ST1を電気的に接続する連結配線LLaに加えて、複数の電源端子ST2を電気的に接続する連結配線LLbが形成されている。連結配線LLa,LLbは、第1金属膜ML1のうち第2金属膜ML2に覆われた領域から延出した部分によって形成されている。連結配線LLa,LLbは、集合基板300を分割する前に、第2金属膜ML2をマスクとして用いたエッチングによって除去される。集合基板300において、電源端子ST1及び連結配線LLaを通して複数の共振子のそれぞれの上部電極125B,125Cを一括して導通することができ、電源端子ST2及び連結配線LLbを通して複数の共振子のそれぞれの上部電極125A,125Dを一括して導通することができる。連結配線LLaは本発明に係る「第1連結配線」の一例に相当し、連結配線LLbは本発明に係る「第2連結配線」の一例に相当する。なお、集合基板300は、複数の接地端子GTを電気的に接続する第3連結配線をさらに備えてもよい。このような第3連結配線は、連結配線LLa,LLbと同様に第1金属膜ML1によって形成され、集合基板300を分割する前に、第2金属膜ML2をマスクとして用いたエッチングによって除去される。
【0118】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本発明の一実施形態に係る共振装置の製造方法によれば、それぞれが上部電極及び下部電極を有する複数の共振子を有する第1基板と、第1基板の複数の共振子側に接合された第2基板と、を備える集合基板であって、複数の共振子のそれぞれの上部電極に電気的に接続された複数の第1電源端子と、複数の第1電源端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第1連結配線と、を有する集合基板を準備することと、集合基板を複数の共振装置に分割することと、を含み、複数の第1電源端子は、第2基板の第1基板とは反対側に設けられた第1金属層と、第1金属層を覆う第2金属層とからなり、第1連結配線は、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなり、集合基板を複数の共振装置に分割することの前に、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分を除去することをさらに含む。
これによれば、集合基板を分割するときには、分割ラインを超えて形成された第1連結配線が除去されているため、分割による第1連結配線の変形に起因したショート不良の発生を抑制することができる。また、第1連結配線を除去する前は、第1連結配線を通して複数の共振装置を一括して通電することができ、周波数調整や導通検査等の通電を伴う作業を短時間かつ簡易に行うことができる。
【0119】
前述した共振装置の製造方法において、複数の共振子の周波数を調整することをさらに含み、複数の共振子の周波数を調整することは、第1連結配線を通して複数の共振子に電圧を印加すること、又は、第1連結配線を通して複数の共振子の周波数を測定することを含んでもよい。
【0120】
前述した共振装置の製造方法において、第1金属層は、第2金属層をメッキによって設けるためのシード膜を有してもよい。
【0121】
前述した共振装置の製造方法において、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分を除去することは、第2金属層をマスクとして用いて第1金属層をエッチングすることを含んでもよい。
これによれば、第1連結配線を除去するエッチングのために、フォトレジスト等を設ける必要がなく、製造工程を簡略化することができる。
【0122】
前述した共振装置の製造方法において、第2基板は、半導体基板と、半導体基板と第1金属層との間に設けられた少なくとも1つの絶縁層とを有し、少なくとも1つの絶縁層は、集合基板の分割ラインから離間した複数の中央領域と、分割ラインを横断する複数の連結領域とを有してもよい。
これによれば、半導体基板よりも分割し難い絶縁層を分割する機会が減るため、ダイシング不良の発生を抑制することができる。
【0123】
前述した共振装置の製造方法において、集合基板は、複数の共振子のそれぞれの上部電極に電気的に接続され且つ複数の第1電源端子とは絶縁された複数の第2電源端子と、複数の第2電源端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第2連結配線とをさらに備え、複数の第2電源端子は、第1金属層と、第2金属層とからなり、第2連結配線は、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなってもよい。
これによれば、周波数調整や導通検査等の通電を伴う作業をさらに短時間かつ簡易に行うことができる。
【0124】
前述した共振装置の製造方法において、集合基板は、複数の共振子のそれぞれの下部電極に電気的に接続された複数の接地端子と、複数の接地端子のうち少なくとも2つを電気的に接続する第3連結配線とをさらに備え、複数の接地端子は、第1金属層と、第2金属層とからなり、第3連結配線は、第1金属層のうち第2金属層に覆われた領域から延出した部分からなってもよい。
これによれば、周波数調整や導通検査等の通電を伴う作業をさらに短時間かつ簡易に行うことができる。
【0125】
また、本発明の一実施形態に係る共振装置によれば、上部電極及び下部電極を有する共振子を有する第1基板と、第1基板の共振子側に接合された第2基板と、を備え、第2基板は、半導体基板と、半導体基板の第1基板とは反対側に設けられ、上部電極の一部に電気的に接続され且つ互いに絶縁された第1電源端子及び第2電源端子と、半導体基板の第1基板とは反対側に設けられ、下部電極に電気的に接続された接地端子と、半導体基板と第1電源端子との間、及び、半導体基板と第2電源端子との間に設けられた絶縁層と、を有し、第2基板の第1基板とは反対側を平面視したとき、絶縁層は、第2基板の外縁から離間する中央領域と、中央領域から延出し第2基板の外縁に到達する連結領域と、を有する。
【0126】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、生産性が向上した共振装置及びその製造方法を提供することができる。
【0127】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態及び/又は変形例に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態及び/又は変形例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態及び変形例は例示であり、異なる実施形態及び/又は変形例で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0128】
1…共振装置、
10…共振子、
13…上側基板、
14…下側基板、
20…下蓋、
30…上蓋、
50…MEMS基板、
60…接合部、
65…連結部材、
100…集合基板、
110…保持腕、
120…振動部、
125,125A,125B,125C,125D…上部電極、
129…下部電極、
130…基部、
135,135A,135B,135C,135D…振動腕、
140…保持部、
235…保護膜、
236…周波数調整膜、
F2…Si基板、
F3…圧電薄膜、
L1,L3…Siウエハ、
L31…酸化ケイ素膜、
LL,LL1,LL2…連結配線、
LN,LN1、LN2…分割ライン、
ST1,ST2…電源端子、
GT…接地端子、
DT…ダミー端子。