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  • -車体後部構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B62D25/20 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023078617
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2019007523の分割
【原出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2023090983
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】岸野 清広
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-076934(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021054(WO,A1)
【文献】特開2017-114411(JP,A)
【文献】特開2017-227236(JP,A)
【文献】特開2015-077896(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129065(WO,A1)
【文献】特開2010-247583(JP,A)
【文献】特開2010-241176(JP,A)
【文献】特開2019-171898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08、25/14-29/04
B60K 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デファレンシャルギアボックスを支持するデフブレースと、
車幅方向に延び、前記デフブレースの後部に接合され、リヤフロアパネルに接合される後部デフクロスメンバと、
前記後部デフクロスメンバから後方に延び、前記デフブレースの車幅方向両側に配置され、前記リヤフロアパネルに接合される一対のブレースと、
を有し、
前記デフブレースは、車幅方向の中央に配置されていることを特徴とする、車体後部構造。
【請求項2】
車幅方向に延び、前記デフブレースの前部に接合され、前記リヤフロアパネルに接合される前部デフクロスメンバと、
前記リヤフロアパネルの下面側の車幅方向両側に配置され、車両前後方向に延びているリヤサイドメンバと、
を有し、
前部デフクロスメンバ及び前記後部デフクロスメンバの車幅方向側部は、前記リヤサイドメンバに接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
デファレンシャルギアボックスを支持するデフブレースと、
車幅方向に延び、前記デフブレースの後部に接合され、リヤフロアパネルに接合される後部デフクロスメンバと、
前記後部デフクロスメンバから後方に延び、前記デフブレースの車幅方向両側に配置され、前記リヤフロアパネルに接合される一対のブレースと、
車幅方向に延び、前記一対のブレースの後部に接合され、前記リヤフロアパネルに接合されるリヤクロスメンバと、
を有することを特徴とする、車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤフロアパネルの下面側の車幅方向両側に配置され、車両前後方向に延びているリヤサイドメンバを有し、
前記後部デフクロスメンバ及び前記リヤクロスメンバの車幅方向外側部は、前記リヤサイドメンバに接合されていることを特徴とする、請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記デファレンシャルギアボックスは、車幅方向で、一対の前記ブレースの間の位置する前記リヤクロスメンバで支持されていることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の車体後部構造。
【請求項6】
デファレンシャルギアボックスを支持するデフブレースと、
車幅方向に延び、前記デフブレースの後部に接合され、リヤフロアパネルに接合される後部デフクロスメンバと、
前記後部デフクロスメンバから後方に延び、前記デフブレースの車幅方向両側に配置され、前記リヤフロアパネルに接合される一対のブレースと、
車幅方向に延び、前記一対のブレースの後部に接合され、前記リヤフロアパネルに接合されるリヤクロスメンバと、を有し、
前記リヤクロスメンバは、本体部と、前記本体部の車幅方向外側部のそれぞれに配置される側部材と、を有し、
前記本体部の剛性は、両側の前記側部材の剛性に比べ、高く設定され、
両側の前記側部材のうち、一方の前記側部材には一方の前記ブレースの部が接合され、他方の前記側部材には他方の前記ブレースの部が接合されていることを特徴とする、車体後部構造。
【請求項7】
前記リヤフロアパネルは、車両後方側に向かうに従い車両下方側に傾斜している部位を有し、
前記部位には、前記本体部が接合されていることを特徴とする、請求項6に記載の車体後部構造。
【請求項8】
デファレンシャルギアボックスを支持するデフブレースと、
車幅方向に延び、前記デフブレースの後部に接合され、リヤフロアパネルに接合される後部デフクロスメンバと、
前記後部デフクロスメンバから後方に延び、前記デフブレースの車幅方向両側に配置され、前記リヤフロアパネルに接合される一対のブレースと、
を有し、
前記リヤフロアパネルの車両前方側には、フロアトンネルが設けられ、
前記デフブレースは、車両前方視で、前記フロアトンネルに重合していることを特徴とする、車体後部構造。
【請求項9】
デファレンシャルギアボックスを支持するデフブレースと、
車幅方向に延び、前記デフブレースの後部に接合され、リヤフロアパネルに接合される後部デフクロスメンバと、
前記後部デフクロスメンバから後方に延び、前記デフブレースの車幅方向両側に配置され、前記リヤフロアパネルに接合される一対のブレースと、
車幅方向に延び、前記デフブレースの前部に接合され、前記リヤフロアパネルに接合される前部デフクロスメンバと、を有し、
前記デフブレースは、フロアトンネルの後部と車両前方視で重合していることを特徴とする、車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部のフロア部には、例えば特許文献1に開示されているように、スロープが設けられているものがある。当該スロープを設けることにより、車両上下方向の寸法が大きな積載物を積載することができる。このようなスロープが設けられたリヤフロアパネルは、通常、スペアタイヤハウス等の凹凸が設けられてない平板状である。
【0003】
一方で、リヤフロアパネルには、車体の骨格を構成するような車体構造部材が接合されている。当該車体構造部材には、サスペンション構造等の振動源となる構造体が取り付けられている。そのため、当該構造体の振動は、車体構造部材を介してリヤフロアパネルに伝達される。
【0004】
特許文献1では、リヤフロアパネルに車両前後方向に延びる2つの支持部が設けられている。当該支持部を設けることにより、リヤフロアパネルの振動がある程度抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6081371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記例のような構造では、リヤフロアパネルに伝達される振動のうち、単一の振動モードに過剰に反応し、共振する可能性がある。このため、上記例のような支持部を設ける構造には、リヤフロアパネルの振動を抑制する上で、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、リヤフロアパネルに伝達される振動に対して、単一の振動モードに過剰に反応せず、共振が分散されることが可能な車体後部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車体後部構造は、デファレンシャルギアボックスを支持するデフブレースと、車幅方向に延び、前記デフブレースの後部に接合され、リヤフロアパネルに接合される後部デフクロスメンバと、前記後部デフクロスメンバから後方に延び、前記デフブレースの車幅方向両側に配置され、前記リヤフロアパネルに接合される一対のブレースと、を有し、前記デフブレースは、車幅方向の中央に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リヤフロアパネルに伝達される振動に対して、単一の振動モードに過剰に反応せず、共振が分散されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車体後部構造を、車両下方から見た斜視図である。
図2図1の車体後部構造の下面図である。
図3図2のA-A矢視断面図である。
図4図2の車体後部構造に、サスペンション構造等が取り付けられた状態を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車体後部構造の一実施形態について、図面(図1図4)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印L、R方向は、車幅方向における左側、右側を示している。また、本実施形態の説明における「左右」は、車両室内の乗員が車両前方を向いたときの左右に対応している。
【0012】
本実施形態の車体後部構造は、図1及び図2に示すように、リヤフロアパネル1と、リヤエンドパネル70と、一対のリヤサイドメンバ11,12と、3つのリヤクロスメンバ(第1のリヤクロスメンバ51、第2のリヤクロスメンバ(後部デフクロスメンバ)52及び第3のリヤクロスメンバ53)と、有している。さらに、車体後部構造は、一対の第1のブレース21,22と、一対の第2のブレース31,32と、第3のブレース(デフブレース)41と、を有している。
【0013】
リヤフロアパネル1の車幅方向両側の外側部には、右リヤホイールハウスパネル71及び左リヤホイールハウスパネル72が設けられ、リヤフロアパネル1の下方側には、リヤサスペンション構造が設けられている。また、図4に示すように、リヤフロアパネル1の下面側には、プロペラシャフト96、リヤデファレンシャルギアボックス95及びドライブシャフト97等が配置されている。
【0014】
リヤサイドメンバ11,12は、右リヤサイドメンバ11及び左リヤサイドメンバ12を有しており、右リヤサイドメンバ11及び左リヤサイドメンバ12は、車幅方向外側に互いに間隔を空けて、一対となるように配置されている。右リヤサイドメンバ11及び左リヤサイドメンバ12は、車両前後方向に延び、金属材料により形成されている部材で、車体骨格を構成する剛性の高い部材である。右リヤサイドメンバ11は、リヤフロアパネル1の車幅方向の右側部に接合され、左リヤサイドメンバ12は、リヤフロアパネル1の左側部に接合されている。
【0015】
リヤフロアパネル1は、車体後部のフロア部を構成する板状の部材で、金属材料により形成されている。リヤフロアパネル1は、車体後端から車両前方側に向かって、車体の前後方向中間部まで延び、後述するセンタフロアパネル2に接合されている。
【0016】
図3に示すように、右リヤサイドメンバ11と左リヤサイドメンバ12との間に位置するリヤフロアパネル1の後部は、車両後方側に向かうに従い車両下方側に傾斜している。また、右リヤホイールハウスパネル71及び左リヤホイールハウスパネル72は、リヤフロアパネル1の傾斜している部分の車幅方向外側に配置されている。
【0017】
図3に示すように、傾斜している部分は、車幅方向視で略三角形状の側壁1aを有している。三角形状の側壁1aの上端には、該上端から車幅方向外側に張り出すフランジが設けられ、該フランジに、右リヤサイドメンバ11と左リヤサイドメンバ12が接合されている。すなわち、三角形状の側壁1aは、右リヤサイドメンバ11及び左リヤサイドメンバ12に対して車幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0018】
リヤエンドパネル70は、車両後方を臨む板状の部材で、リヤフロアパネル1の後端から車両上方側に延び、且つ車幅方向に延びている。この例では、リヤエンドパネル70の下部は、リヤフロアパネル1の後端部に接合されている。また、リヤエンドパネル70の車幅方向の側部には、右リヤホイールハウスパネル71及び左リヤホイールハウスパネル72が接合されている。
【0019】
続いて、第1のリヤクロスメンバ51、第2のリヤクロスメンバ52及び第3のリヤクロスメンバ53について説明する。第1のリヤクロスメンバ51、第2のリヤクロスメンバ52及び第3のリヤクロスメンバ53は、それぞれ車幅方向に延びており、金属材料により形成された剛性の高い部材である。
【0020】
第1のリヤクロスメンバ51、第2のリヤクロスメンバ52及び第3のリヤクロスメンバ53は、車両前後方向に間隔を空けて配置されている。この例では、車両後方側から前方側に向かって、第1のリヤクロスメンバ51、第2のリヤクロスメンバ52及び第3のリヤクロスメンバ53の順に配置され、リヤフロアパネル1の下面に接合されている。
【0021】
第1のリヤクロスメンバ51は、リヤエンドパネル70の車両前方側に間隔を空けて配置されており、第1の本体部(本体)51Aと、第1の右エクステンション(側部材)51Bと、第1の左エクステンション(側部材)51Cとを有している。第1の本体部51A、第1の右エクステンション51B、第1の左エクステンション51Cは、それぞれ車幅方向に延び、上方に開口するハット型の断面形状を有し、前フランジと後フランジが設けられている。第1の本体部51Aの前フランジ54及び後フランジは、リヤフロアパネル1の下面のうち、傾斜している部分に接合される。
【0022】
第1の右エクステンション51Bは、第1の本体部51Aの車幅方向の右側部に接合され、第1の左エクステンション51Cは、第1の本体部51Aの左側部に接合されている。第1の右エクステンション51Bは、リヤフロアパネル1の傾斜している部分の側壁1aと、右リヤサイドメンバ11とを架け渡し、第1の左エクステンション51Cは、当該側壁1aと左リヤサイドメンバ12とを架け渡している。
【0023】
第2のリヤクロスメンバ52は、第1のリヤクロスメンバ51の車両前方側に間隔を空けて配置されており、第2の本体部52Aと、第2の右エクステンション52Bと、第2の左エクステンション52Cとを有している。第2の本体部52A、第2の右エクステンション52B、第2の左エクステンション52Cは、それぞれ車幅方向に延び、上方に開口するハット型の断面形状を有し、前フランジと後フランジが設けられている。第2の本体部52A、第2の右エクステンション52B、第2の左エクステンション52Cのそれぞれの前フランジ及び後フランジは、リヤフロアパネル1の下面のうち、傾斜の起点となる位置に接合されている。
【0024】
第3のリヤクロスメンバ53は、第2のリヤクロスメンバ52の車両前方側に間隔を空けて配置されており、この例では、リヤフロアパネル1の後部に配置されている。第3のリヤクロスメンバ53の側部は、右リヤサイドメンバ11及び左リヤサイドメンバ12に接合されている。また、第3のリヤフロアクロスメンバは、上方に開口するハット型の断面形状を有し、詳細な図示は省略するが、前フランジと後フランジが設けられている。当該前フランジ及び後フランジは、リヤフロアパネル1の下面に接合されている。
【0025】
本実施形態のリヤサスペンション構造は、マルチリンク式のサスペンションであり、図4に示すように、車幅方向両外側に配置された右トレーリングアーム81及び左トレーリングアーム82を有している。右トレーリングアーム81及び左トレーリングアーム82は、第2のリヤクロスメンバ52の前方側から後方側まで、車両前後方向に延びている。右トレーリングアーム81は、右リヤサイドメンバ11の下面にコイルスプリング(図示せず)等を介して連結され、左トレーリングアーム82は、左リヤサイドメンバ12の下面にコイルスプリング等を介して連結されている。
【0026】
図4に示すように、右トレーリングアーム81及び左トレーリングアーム82には、スプリング設置部81d,82dが設けられている。スプリング設置部81d,82dは、トレーリングアーム81,82の本体の車幅方向内側部から車幅方向中心に向かって張り出しており、スプリング設置部81d,82dの上部には、図示しないコイルスプリングが設置される。スプリング設置部81d,82dは、リヤサイドメンバ11,12の下面に対向配置されている。スプリング設置部81d,82dの上方に位置するリヤサイドメンバ11,12の下面には、図1及び図2に示すように、スプリング受け部11d,12dが設けられている。スプリング受け部11d,12dは、車両前後方向で、第2のリヤクロスメンバ52の後方側に隣接して配置されている。
【0027】
続いて、一対の第1のブレース(第1の右ブレース21、第1の左ブレース22)について説明する。第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22は、それぞれ車両前後方向に延びている部材で、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22のそれぞれの前部は、第1のリヤクロスメンバ51に接合され、それぞれの後部は、リヤエンドパネル70に接合されている。
【0028】
第1の右ブレース21は、上方に開くハット型の断面形状を有している。第1の右ブレース21の上部の車幅方向外側には、外側フランジ21bが設けられ、車幅方向内側には、内側フランジ21cが設けられている。
【0029】
第1の右ブレース21の上部に位置する外側フランジ21b及び内側フランジ21cは、リヤフロアパネル1の下面のうち、傾斜している部分に沿って傾斜している。外側フランジ21b及び内側フランジ21cは、傾斜している下面に接合されている。第1の右ブレース21の下面21aは、車両前後方向に沿ってほぼ水平に延びている。第1の右ブレース21の後端は、リヤエンドパネル70の下部に接合されている(図3)。
【0030】
第1の右ブレース21の下面21aの前端には、該前端から車両前方側に延長されて形成された前側フランジ(フランジ)21dが設けられている。前側フランジ21dは、第1のリヤクロスメンバ51の第1の本体部51Aの下面51aに接合されている。詳細な図示は省略するが、外側フランジ21b及び内側フランジ21cの前端には、該前端から下方に延びるフランジが設けられ、該フランジは、第1の本体部51Aの後壁に接合されている。
【0031】
第1の左ブレース22は、第1の右ブレース21と同様に、上方に開くハット型の断面形状を有し、第1の左ブレース22の上部の車幅方向外側には、外側フランジ22bが設けられ、車幅方向内側には、内側フランジ22cが設けられている。
【0032】
第1の左ブレース22の外側フランジ22b及び内側フランジ22cは、第1の右ブレース21と同様に、リヤフロアパネル1の下面の傾斜している部分に接合されている。第1の左ブレース22の下面22aは、車両前後方向に沿ってほぼ水平に延びており、第1の左ブレース22の後端は、リヤエンドパネル70の下部に接合されている。
【0033】
第1の左ブレース22の下面22aの前端には、第1の右ブレース21と同様に、前側フランジ(フランジ)22dが設けられ、前側フランジ22dは、第1の本体部51Aの下面51aに接合されている。また、第1の左ブレース22の前端には、第1の右ブレース21と同様に、第1の本体部51Aの後壁に接合されるフランジが設けられている。
【0034】
続いて、一対の第2のブレース(一対のブレース:第2の右ブレース31、第2の左ブレース32)について説明する。第2の右ブレース31及び第2の左ブレース32は、それぞれ車両前後方向に延びている部材で、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。第2の右ブレース31及び第2の左ブレース32のそれぞれの前部は、第2のリヤクロスメンバ52に接合され、それぞれの後部は、第1のリヤクロスメンバ51に接合されている。
【0035】
第2の右ブレース31は、第1の右ブレース21と同様に、上方に開くハット型の断面形状を有している。第2の右ブレース31の上部の車幅方向外側には、外側フランジ31bが設けられ、車幅方向内側には、内側フランジ31cが設けられている。
【0036】
第2の右ブレース31の上部に位置する外側フランジ31b及び内側フランジ31cは、リヤフロアパネル1の下面のうち、傾斜している部分に沿って傾斜している。外側フランジ31b及び内側フランジ31cは、リヤフロアパネル1の傾斜している下面に接合されている。さらに、内側フランジ31cの後部は、第1の本体部51Aの前フランジ54に接合され、外側フランジ31bの後部は、第1の右エクステンション51Bの前フランジ55に接合されている。また、第2の右ブレース31の後端に、第1の本体部51Aの前壁に接合されるフランジを設けてもよい。
【0037】
さらに、第2の右ブレース31の内側フランジ31cの前部は、第2の本体部52Aの後フランジ57に接合され、外側フランジ31bの前部は、第2の右エクステンション52Bの後フランジ58に接合されている。また、第2の右ブレース31の下面31aの前端には、該前端から車両前方側に延長されて形成された前側フランジ31dが設けられている。前側フランジ31dは、第2の本体部52Aの下面52aの後部に接合されている。詳細な図示は省略するが、外側フランジ31b及び内側フランジ31cの前端には、下方に延びるフランジが設けられ、該フランジは、第2の本体部52Aの後壁に接合されている。
【0038】
第2の左ブレース32は、第2の右ブレース31と同様に、上方に開くハット型の断面形状を有し、外側フランジ32b及び内側フランジ32cが設けられている。外側フランジ32b及び内側フランジ32cは、リヤフロアパネル1の傾斜している下面に接合されている。さらに、内側フランジ32cの後部は、第1の本体部51Aの前フランジ54に接合され、外側フランジ32bの後部は、第1の左エクステンション51Cの前フランジ56に接合されている。また、第2の左ブレース32の後端に、第1の本体部51Aの前壁に接合されるフランジを設けてもよい。
【0039】
さらに、第2の右ブレース31と同様に、第2の左ブレース32の内側フランジ32cの前部は、第2の本体部52Aの後フランジ57に接合され、外側フランジ32bの前部は、第2の左エクステンション52Cの後フランジ59に接合されている。また、第2の左ブレース32の下面32aの前端には、前側フランジ32dが設けられ、前側フランジ32dは、第2の本体部52Aの下面52aの後部に接合されている。さらに、外側フランジ32b及び内側フランジ32cのそれぞれの前端には、図示しないフランジが設けられ、該フランジは、第2の本体部52Aの後壁に接合されている。
【0040】
本実施形態において、第1の左ブレース22及び第1の右ブレース21は、第2の右ブレース31と第2の左ブレース32の間に配置されている。この例では、第1のブレース21,22及び第2のブレース31,32は、車体の車幅方向の中心に対して、線対称になるように配置されている。さらに、第1の右ブレース21と第1の左ブレース22との車幅方向の間隔は、第2の右ブレース31と第2の左ブレース32との車幅方向の間隔の2分の1の長さよりも小さくなるように設定されている。
【0041】
本実施形態のリヤフロアパネル1は、傾斜面を有しているが、スペアタイヤハウスのような車両上下方向の凹凸形状を有していない。このため、第1のブレース21,22及び第2のブレース31,32は、直線的に構成されている。これにより、リヤエンドパネル70と、第1のリヤクロスメンバ51と、第1の右ブレース21と、第1の左ブレース22によって、平面視で格子構造(枠形状)を構成し、さらに、第1のリヤクロスメンバ51と、第2のリヤクロスメンバ52と、第2の右ブレース31と、第2の左ブレース32によって、平面視で別の格子構造(枠形状)を構成することが可能となる。
【0042】
このように格子構造を構成することで、リヤフロアパネル1の太鼓状の振動を抑えることができる。また、第1の右ブレース21と第1の左ブレース22との車幅方向の間隔は、第2の右ブレース31と第2の左ブレース32との車幅方向の間隔との関係において、上記のように設定されているので、リヤフロアパネル1に伝達される振動に対して、単一の振動モードに過剰に反応せず、共振が分散されることが可能となり、その結果、車室内騒音を改善できる。
【0043】
さらに、後突時には、リヤバンパからリヤエンドパネル70に伝わる荷重は、右リヤサイドメンバ11及び左リヤサイドメンバ12に伝達されるが、中央に位置する車幅方向の間隔が小さい第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22にも伝達される。第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22に伝達された荷重は、第1のリヤクロスメンバ51を介して、車幅方向の間隔が大きい第2の右ブレース31及び第2の左ブレース32に伝達され、さらに、第2のリヤクロスメンバ52に伝達される。このため、リヤサイドメンバ11,12のみで荷重を伝達するよりも、巣値全体に荷重が拡散され、リヤサイドメンバ11,12の局所的な応力集中が低減され、リヤサイドメンバ11,12の折れ等の発生を低減することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22は、図3に示すように、車幅方向視で、略三角形状であり、第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22の前側の下部は、第1のリヤクロスメンバ51の下面51aに接合されている。すなわち、本実施形態は、第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22の上部は、車両前方に向かうに従い、車両上方に傾斜して高くなる。
【0045】
これにより、第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22の前端は、は第1のリヤクロスメンバ51の、特に車両前後方向からの荷重により倒れる変形を低減し、車体剛性を確保すると共に、リヤフロアパネル1の振動を低減することが可能となる。
【0046】
さらに、第1の右ブレース21及び第1の左ブレース22と、第1のリヤクロスメンバ51との接合部の車両上下方向位置を、第2の右ブレース31及び第2の左ブレース32と、第1のリヤクロスメンバ51との接合部の車両上下方向位置に、揃えるように配置することが可能となる。その結果、荷重の流れが滞らず局所応力が低減され、後述する後側ブラケット65,66の設置も容易になる。
【0047】
続いて、第3のブレース41について説明する。第3のブレース41は、車両前後方向に延びる部材で、車両前後方向視でハット型の断面形状を有し、車幅方向両側に右フランジ41b及び左フランジ41cを有している。右フランジ41b及び左フランジ41cは、リヤフロアパネル1の下面に接合され、さらに、第2のブレース31,32と同様に、第2のリヤクロスメンバ52の前フランジ及び第3のリヤクロスメンバの後フランジに接合されている。
【0048】
第3のブレース41の下面41aの前端には、該前端から車両前方側に延長されて形成された前側フランジ41dが設けられ、後端には、前端と同様に、後側フランジ41eが設けられている。後側フランジ41eは、第2の本体部52Aの下面52aに接合され、前側フランジ41dは、第3のリヤクロスメンバ53の下面53aに接合されている。また、第3のブレース41の後部には、第2の本体部52Aの前壁に接合されるフランジが設けられ、前部には、第3のリヤクロスメンバ53の前壁に接合されるフランジが設けられている。
【0049】
続いて、リヤデファレンシャルギアボックス95の配置等について説明する。リヤデファレンシャルギアボックス95は、図4に示すように、車幅方向で、右リヤサイドメンバ11と左リヤサイドメンバ12とのの間に配置され、車両前後方向で、第1のリヤクロスメンバ51と第2のリヤクロスメンバ52との間に配置されている。さらに、詳細には、リヤデファレンシャルギアボックス95は、車幅方向で、第2の右ブレース31と第2の左ブレース32との間に配置されている。
【0050】
リヤデファレンシャルギアボックス95の車幅方向外側部にはドライブシャフト97が連結されており、ドライブシャフト97は、右トレーリングアーム81及び左トレーリングアーム82を介して、後輪用の車軸に連結されている。また、リヤデファレンシャルギアボックス95の前部には、プロペラシャフト96が連結されている。
【0051】
プロペラシャフト96は、車体前部に配置されたパワーユニット(図示せず)に接続されており、パワーユニットからの動力を、リヤデファレンシャルギアボックス95に伝達する。プロペラシャフト96は、車両前後方向に延び、リヤフロアパネル1の下面側の車幅方向中間部に配置されている。
【0052】
リヤデファレンシャルギアボックス95は、図4に示すように、前側ブラケット61、右後側ブラケット(ブラケット)65及び左後側ブラケット(ブラケット)66を介して、車体に取り付けられている。前側ブラケット61は、第3のブレース41の下面41aの車両前後方向中間部に接合されている。
【0053】
右後側ブラケット65は、図2に示すように、2つの前側接合部65a,65bと、1つの後側接合部65cと、を有している。2つの前側接合部65a,65bは、右後側ブラケット65の前部に、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。右後側ブラケット65は、2つの前側接合部65a,65bで第1のリヤクロスメンバ51の下面51aに接合され、後側接合部65cで第1の右ブレース21の下面21aに接合されている。
【0054】
左後側ブラケット66は、右後側ブラケット65と同様に、2つの前側接合部と、1つの後側接合部とを有し、2つの前側接合部で第1のリヤクロスメンバ51の第1の本体部51Aの下面51aに接合され、後側接合部66cで第1の左ブレース22の下面22aに接合されている。
【0055】
リヤデファレンシャルギアボックス95のブラケット61,65,66には、プロペラシャフト96からの駆動回転力が作用すると共に、プロペラシャフト96による車両前後方向に押す力及び引く力が作用し、さらに、リヤデファレンシャルギアボックス95の自重による慣性力で、前後、左右、上下の荷重が作用する。これらは、リヤフロアパネル1の変形を発生させ、車室内騒音の原因となるだけでなく、車体骨格の変形を誘発する可能性がある。
【0056】
本実施形態では、第1のリヤクロスメンバ51、第1のブレース21,22及び第2のブレース31,32により剛性を確保した領域で、右後側ブラケット65及び左後側ブラケット66を支持している。このとき、図3に示すように、第1のリヤクロスメンバ51の下面51aと、第1の右ブレース21の下面21aの前部の高さを同じに設定し、2つの前側接合部65a,65bと1つの後側接合部65cの3箇所で接合して、リヤデファレンシャルギアボックス95からの荷重を受けることができる。第1の左ブレース22についても同様である。
【0057】
また、本実施形態では、第1のリヤクロスメンバ51は、第1の本体部51Aと、第1の右エクステンション51Bと、第1の左エクステンション51Cの3つの部材により構成されている。また、上記したように、第1のブレース21,22の前部は、第1の本体部51Aに接合され、第2のブレース31,32の後部は、第1のエクステンション51B,51Cの少なくとも一部に接合されている。
【0058】
第1のリヤクロスメンバ51を3つの部材で構成することで、第1の本体部51Aと、左右のエクステンション51C,51Bの板厚等を変えて剛性差を設定することが可能となり、設計の自由度が向上する。例えば、第1の本体部51Aの剛性を、左右のエクステンション51C,51Bに比べて高くすると、リヤフロアパネル1の変形を、第1の本体部51Aが低減しつつ、後突時の荷重を、第1及び第2のブレース21,22,31,32や、第1のエクステンション51B,51Cに分配することが可能となる。ここで、第2のブレース31,32が第1のエクステンション51B,51Cと接合していることにより、後突時の第1のブレース21,22からの荷重は、第1のエクステンション51B,51Cを介して、リヤサイドメンバ11,12及び第2のブレース31,32に伝達されるので、第2のブレース31,32に荷重の伝達が偏ることを抑制でき、リヤフロアパネル1の変形を低減することができる。
【0059】
リヤフロアパネル1の車両前方側で、第3のリヤクロスメンバ53の前方側には、センタフロアパネル2が配置されている。該センタフロアパネル2の車幅方向中間部には、車両下方に開口し、車両前後方向に延びるフロアトンネル3が設けられている。第3のブレース41は、車両前方視で、フロアトンネル3に重合している。
【0060】
上記のように、第3のブレース41を設けることにより、第2のリヤクロスメンバ52の車両前方向への倒れが低減され、車体のねじり剛性やフロアの振動が低減される。また、第1のリヤクロスメンバ51と、第2のリヤクロスメンバ52と、第2のブレース31,32で構成される格子構造を、該格子構造の前後に位置する第1のブレース21,22と第3のブレース41で支持するので、振動抑制効果が確保される。
【0061】
さらに、後突時の荷重伝達の流れにおいて、第2のリヤクロスメンバ52に作用する荷重が、リササイドメンバ11,12だけでなく、第3のブレース41を通り、第3のリヤクロスメンバ53や、第3のリヤクロスメンバ53に接合されるセンタフロアパネル2等に分散される。ここで、第3のブレース41は、第3のリヤクロスメンバ53と接合されると共に、フロアの基本剛性を担うフロアトンネル3の後端部(後部)と、車両前方視で重合しているので、フロア剛性と連動しており、上記効果を確保することができる。
【0062】
また、本実施形態のリヤフロアパネル1は、傾斜している部分を有し、第1のブレース21,22の上部及び第2のブレース31,32の上部は、リヤフロアパネル1の傾斜に沿って延びている。すなわち、第1のブレース21,22及び第2のブレース31,32は、車幅方向視で略三角形状となり(図3)、車体底部で下方への突き出すことなく、剛性部材を配置することができる。
【0063】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、第1のリヤクロスメンバ51は、3つの部材、すなわち、第1の本体部51A、第1の右エクステンション51B及び第1の左エクステンション51Cで構成されているが、これに限らない。1つの部材で構成してもよい。第2のリヤクロスメンバ52についても同様である。
【符号の説明】
【0065】
1 リヤフロアパネル
2 センタフロアパネル
3 フロアトンネル
11 右リヤサイドメンバ
11d スプリング受け部
12 左リヤサイドメンバ
12d スプリング受け部
21 第1の右ブレース
21a 下面
21b 外側フランジ
21c 内側フランジ
21d 前側フランジ(フランジ)
22 第1の左ブレース
22a 下面
22b 外側フランジ
22c 内側フランジ
22d 前側フランジ(フランジ)
31 第2の右ブレース(ブレース)
31a 下面
31b 外側フランジ
31c 内側フランジ
31d 前側フランジ
32 第2の左ブレース(ブレース)
32a 下面
32b 外側フランジ
32c 内側フランジ
32d 前側フランジ
41 第3のブレース(デフブレース)
41a 下面
41b 右フランジ
41c 左フランジ
41d 前側フランジ
41e 後側フランジ
51 第1のリヤクロスメンバ
51A 第1の本体部(本体)
51a 下面
51B 第1の右エクステンション(側部材)
51C 第1の左エクステンション(側部材)
52 第2のリヤクロスメンバ(後部デフクロスメンバ)
52A 第2の本体部
52a 下面
52B 第2の右エクステンション
52C 第2の左エクステンション
53 第3のリヤクロスメンバ
53a 下面
54 第1の本体部の前フランジ
55 第1の右エクステンションの前フランジ
56 第1の左エクステンションの前フランジ
57 第2の本体部の後フランジ
58 第2の右エクステンションの後フランジ
59 第2の左エクステンションの後フランジ
61 前側ブラケット
65 右後側ブラケット(ブラケット)
65a 前側接合部
65b 前側接合部
65c 後側接合部
66 左後側ブラケット(ブラケット)
70 リヤエンドパネル
71 右リヤホイールハウスパネル
72 左リヤホイールハウスパネル
81 右トレーリングアーム
81d スプリング設置部
82 左トレーリングアーム
82d スプリング設置部
95 リヤデファレンシャルギアボックス
96 プロペラシャフト
97 ドライブシャフト
図1
図2
図3
図4