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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】色補正用チャート
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20241108BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20241108BHJP
   G01J 3/52 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 21/27 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B21/00
G01J3/52
G01N21/01 A
G01N21/27 E
G01N21/27 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024075377
(22)【出願日】2024-05-07
【審査請求日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2023146990
(32)【優先日】2023-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】西尾 直子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 徹
(72)【発明者】
【氏名】村山 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】安井 涼馬
(72)【発明者】
【氏名】小松 春菜
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 美晴
(72)【発明者】
【氏名】荻野 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 豪
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-088226(JP,A)
【文献】国際公開第2021/075406(WO,A1)
【文献】特開2015-102708(JP,A)
【文献】特開2022-164615(JP,A)
【文献】米国特許第10241310(US,B2)
【文献】特開2017-187756(JP,A)
【文献】特開2013-134170(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01J 3/00 - 9/04
G01N 1/00 - 1/44
G01N 21/00 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたカラーパッチと、を備え、
前記カラーパッチは、第1色を含み、
前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内にあり、
前記第1色の分光スペクトルのピーク波長は、520nm以上560nm以下であり、前記ピーク波長から長波長側へスペクトルが立ち上がる点が520nm以上560nm以下の範囲にあり、560nm以上620nm以下の範囲での分光透過率の上昇が40%T以下である、色補正用チャート。
【請求項2】
前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内にある、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項3】
前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内にある、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項4】
前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内にある、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項5】
前記基板上に形成された複数のカラーパッチを更に備え、
前記複数のカラーパッチは、互いに異なる色を含み、
前記複数のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内にある、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項6】
前記複数のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内にある、請求項5に記載の色補正用チャート。
【請求項7】
前記複数のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内にある、請求項5に記載の色補正用チャート。
【請求項8】
前記基板上に形成された他のカラーパッチを更に備え、
前記他のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.350,0.300)、(0.350,0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内にある、請求項2に記載の色補正用チャート。
【請求項9】
前記第1色の座標点は、黒体軌跡5000K以上9300K以下かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる白色領域外にある、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項10】
前記ピーク波長における分光透過率は、0.5%T以上45%T以下である、請求項に記載の色補正用チャート。
【請求項11】
標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が400W/m・hとなるように照射した後の前記カラーパッチの前記第1色の色の変化量ΔE*abが、2.5以下である、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項12】
標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が435W/m・hとなるように照射した後の前記カラーパッチの前記第1色の分光スペクトルにおける500nmの透過率(%T)の変化量及び520nmの透過率(%T)の変化量のうちの少なくとも一方が、2.0%T以下である、請求項1に記載の色補正用チャート。
【請求項13】
標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が435W/m・hとなるように照射した後の前記カラーパッチの前記第1色の分光スペクトルにおける500nmの透過率(%T)の変化率及び520nmの透過率(%T)の変化率のうちの少なくとも一方が、10%以下である、請求項1に記載の色補正用チャート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色補正用チャートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病理学分野で組織や細胞を検査することが行われている。この際、染色剤を用いて組織や細胞を染色する。その後、染色された組織や細胞の色の変化に基づいて、病変を区別し、疾患を診断する。
【0003】
染色された組織や細胞は、顕微鏡で直接観察される場合がある。また、染色された組織や細胞を、顕微鏡に取り付けられたCCDカメラで撮像後ディスプレイに出力し、観察する場合もある。さらに、染色された組織や細胞を、病理スライド用の顕微鏡やスライドガラススキャナ装置で撮像しデジタル画像として保存する場合もある。この場合、デジタル画像は遠隔診療やAI診断などに活用されても良い。
【0004】
染色された組織や細胞を撮像し、デジタル画像とする場合、使用する撮像機器によって色が異なる場合がある。このため、色補正ツールを使用し、撮像機器間の色を補正することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10241310号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、生体類似物質と病理染色に使用する染料でカラーパッチを形成し補正を行う方法が開示されている。しかしながら、一般に、同じ染料を使用したとしても、染色された母材が異なれば、被染色物の透過光又は反射光の色や、被染色物の透過光又は反射光の分光スペクトルは同一とはならない。これは、染料と母材との化学結合状態に違いが生じるためである。この違いは、染料が母材に定着する際に生じる、母材と、染料やその他添加材料等との相互作用や、母材中に染料が分散する程度が異なる等の理由により生じる。
【0007】
本開示は、病理検体画像の色補正効果を高めることが可能な、色補正用チャートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[14]に関する。
【0009】
[1]基板と、前記基板上に形成されたカラーパッチと、を備え、前記カラーパッチは、第1色を含み、前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内にある、色補正用チャート。
【0010】
[2]前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内にある、[1]に記載の色補正用チャート。
【0011】
[3]前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内にある、[1]又は[2]に記載の色補正用チャート。
【0012】
[4]前記第1色の座標点は、xy色度図上で(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内にある、[1]に記載の色補正用チャート。
【0013】
[5]前記基板上に形成された複数のカラーパッチを更に備え、前記複数のカラーパッチは、互いに異なる色を含み、前記複数のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内にある、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の色補正用チャート。
【0014】
[6]前記複数のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内にある、[5]に記載の色補正用チャート。
【0015】
[7]前記複数のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内にある、[5]又は[6]に記載の色補正用チャート。
【0016】
[8]前記基板上に形成された他のカラーパッチを更に備え、前記他のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で(0.350,0.300)、(0.350,0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内にある、[2]又は[3]に記載の色補正用チャート。
【0017】
[9]前記第1色の座標点は、黒体軌跡5000K以上9300K以下かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる白色領域外にある、[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の色補正用チャート。
【0018】
[10]前記第1色の分光スペクトルのピーク波長は、520nm以上560nm以下であり、前記ピーク波長から長波長側へスペクトルが立ち上がる点が520nm以上560nm以下の範囲にあり、560nm以上620nm以下の範囲での分光透過率の上昇が40%T以下である、[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の色補正用チャート。
【0019】
[11]前記ピーク波長における分光透過率は、0.5%T以上45%T以下である、[10]に記載の色補正用チャート。
【0020】
[12]標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が400W/m・hとなるように照射した後の前記カラーパッチの前記第1色の色の変化量ΔE*abが、2.5以下である、[1]乃至[11]のいずれか一つに記載の色補正用チャート。
【0021】
[13]標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が435W/m・hとなるように照射した後の前記カラーパッチの前記第1色の分光スペクトルにおける500nmの透過率(%T)の変化量及び520nmの透過率(%T)の変化量のうちの少なくとも一方が、2.0%T以下である、[1]乃至[12]のいずれか一つに記載の色補正用チャート。
【0022】
[14]標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が435W/m・hとなるように照射した後の前記カラーパッチの前記第1色の分光スペクトルにおける500nmの透過率(%T)の変化率及び520nmの透過率(%T)の変化率のうちの少なくとも一方が、10%以下である、[1]乃至[13]のいずれか一つに記載の色補正用チャート。
【発明の効果】
【0023】
本実施の形態によれば、病理検体画像の色補正効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、一実施の形態による色補正用チャートを示す平面図である。
図2A図2Aは、一実施の形態による色補正用チャートの色域を示すxy色度図である。
図2B図2Bは、一実施の形態による色補正用チャートの色域を示すxy色度図であって、所定の白色領域を重ねて表示した図である。
図2C図2Cは、一実施の形態による色補正用チャートの色域を示すxy色度図であって、病理検体のプロット点を重ねて表示した図である。
図3A図3Aは、他の例による色補正用チャートの色域を示すxy色度図である。
図3B図3Bは、他の例による色補正用チャートの色域を示すxy色度図であって、所定の白色領域を重ねて表示した図である。
図3C図3Cは、他の例による色補正用チャートの色域を示すxy色度図であって、病理検体のプロット点を重ねて表示した図である。
図4図4は、一実施の形態による色補正用チャートが示す分光スペクトルの一例を示すグラフである。
図5A図5Aは、実施例1による色補正用チャートの第1色乃至第7色のカラーパッチの分光スペクトルを示すグラフである。
図5B図5Bは、実施例2による色補正用チャートの第1色乃至第11色のカラーパッチの分光スペクトルを示すグラフである。
図5C図5Cは、実施例4による色補正用チャートの第1色乃至第14色のカラーパッチの分光スペクトルを示すグラフである。
図6図6は、実際の病理細胞染色物の検体を示す写真である。
図7図7(a)-(d)は、それぞれ細胞質(cytoplasm)、細胞外マトリックス(ECM)、赤血球(RBC)、及び細胞核(cell nucleus)の画像を色補正する前後で色差ΔE*abがどのように変化したかを示すグラフである。
図8図8(a)-(c)は、異なるWSIスキャナを用いた場合に、細胞質、細胞外マトリックス、及び細胞核の画像を色補正する前後で色差ΔE*abがどのように変化したかを示すグラフである。
図9図9は、カラーパッチa~d、検体i、jのそれぞれについて、耐光性評価の前後における分光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら各実施の形態について具体的に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用できる。
【0026】
本明細書中、色域とは、可視領域のうち特定の範囲をいい、例えば図2A乃至図2Cに示すように、CIE(国際照明委員会)が定めたXYZ表色系(CIE1931-XYZ表色系)のxy色度図を使用して表すことができる。色域は、xy色度図においては各色の頂点となる色度座標を定め、それぞれを直線で結んだ多角形で示すことができる。色域は従来から種々の色域規格により定められており、撮像機器を含む映像業界では、例えば、図2A乃至図2Cに示すようなBT.709やBT.2020規格といった、広色域を網羅する規格が用いられている。また、図2A及び図2Bに示すxy色度図において、白点となるCIE標準光源D65をプロット□(四角)で示す。また図2A及び図2Bに示すxy色度図において、印刷業界の白基準光源D50、及び放送業界NTSC-J規格の白基準光源D93をそれぞれプロット□(四角)で示す。
【0027】
(色補正用チャートの構成)
本実施の形態による色補正用チャートについて、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本実施の形態による色補正用チャートの一例を示す概略平面図である。図2A乃至図2Cは、本実施の形態の色補正用チャートの色域を示すxy色度図である。図3A乃至図3Cは、他の例による色補正用チャートの色域を示すxy色度図である。図4は、本実施の形態による色補正用チャートが示す分光スペクトルの一例を示すグラフである。
【0028】
本実施の形態による色補正用チャート10は、染色された病理検体画像の色補正を行う際に用いられるものである。色補正用チャート10は、基板11と、基板11上に形成されたカラーパッチ群12とを有する。色補正用チャートは、カラーチャートと称しても良い。
【0029】
カラーパッチ群12は、第1カラーパッチ12a、第2カラーパッチ12b、第3カラーパッチ12c、第4カラーパッチ12d、第5カラーパッチ12e、第6カラーパッチ12f、及び第7カラーパッチ12gの、7色のカラーパッチを含む。以下、第1カラーパッチ12a、第2カラーパッチ12b、第3カラーパッチ12c、第4カラーパッチ12d、第5カラーパッチ12e、第6カラーパッチ12f、及び第7カラーパッチ12gを、単にカラーパッチ12a~12gともいう。カラーパッチ12a~12gは、パターン状に配列されて構成されている。カラーパッチ群12は、少なくとも1つのカラーパッチを含んでいれば良く、3つ以上のカラーパッチを含むことが好ましい。基板11上の各カラーパッチ12a~12gの周囲には、遮光部14が設けられている。カラーパッチは、色領域と称しても良い。
【0030】
各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、図2Aで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内に位置する。言い換えれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)を直線で結んだ三角形で囲まれた第1色域L1に存在する。
【0031】
図2Bに示すように、第1色域L1は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域を含まない第1修正色域L1′とするようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0032】
図2Cに示すように、第1色域L1は、臓器や組織、細胞種の異なるヘマトキシリン・エオジン(HE)染色された検体から抽出された759点の色(以後、抽出点の色と呼ぶ)が含まれる領域である。このうち白色領域を含まない第1修正色域L1′には、上記759点の抽出点のうち、710点が含まれている。なお、抽出点は、具体的には以下のように抽出している。14の臓器種から83の検体を作成し、1つの検体から観察目的の細胞が存在する領域内から複数個所をランダムに特定し、合計759点の抽出点を決めている。また、抽出点の色の特定は、具体的には以下のように特定している。染色された検体をスライドガラスとプレパラートで挟み、検体スライドを作成する。次に、オリンパス製の顕微鏡(MX61L、光源LG-PS2)を用いて検体を観察する。その際、顕微鏡に接続した分光計(トプコンテクノハウスSR-5000HM)を用いて検体の分光スペクトルを測定する。合わせて使用した光源LG-PS2の光についても分光スペクトルを測定する。次にLG-PS2光源から照射され検体を透過した光の分光スペクトルとLG-PS2光源の分光スペクトルに基づき、検体の分光透過率を得る。さらに、取得した検体の分光透過率を基に、CIE 標準イルミナントD65の分光分布データを使用し、xy色度図上の座標点を算出している。なお、使用する光源は上記光源に限らず可視光領域(380nm~780nm)全体に十分な強度のある光源であれば、任意の光源を使用できる。
【0033】
各カラーパッチ12a~12gの色の座標点が、xy色度図上で第1色域L1内に位置することにより、色補正用チャート10のカラーパッチ12a~12gの色を、病理細胞染色物に特徴的な色に近づけることができる。病理細胞染色物は、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色されたものであっても良い。カラーパッチ12a~12gの色を、病理細胞染色物に特徴的な色に近づけることにより、色補正用チャート10を用いて撮像機器の色補正を正確に行うことができる。
【0034】
各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、図2Aで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内に位置することが好ましい。言い換えれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)を直線で結んだ五角形で囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。第2色域L2は、第1色域L1に完全に包含される。各カラーパッチ12a~12gの色の座標点がxy色度図上で第2色域L2内に位置することにより、色補正用チャート10を用いて撮像機器の色補正をより正確に行うことができる。
【0035】
図2Bに示すように、第2色域L2は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域を含まない第2修正色域L2′とするようにしてもよい。所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0036】
図2Cに示すように、第2色域L2は、上記759点の抽出点の色のうち、633点が含まれる領域である(但し境界線上の点を除く)。第2色域L2に含まれる抽出点の色の密集度は、第1色域L1に含まれる抽出点の色の密集度の1.87倍となっている。ここで密集度は、第1色域L1及び第2色域L2それぞれの領域に含まれる抽出点の色の数を、第1色域L1及び第2色域L2それぞれのxy色度図上の面積で除して算出している。この第2色域L2に各カラーパッチ12a~12gの色の座標点を含めることで、より効率的に病理細胞染色物の画像補正ができるようになる。また、白色領域を含まない第2修正色域L2′には、上記633点の抽出点のうち、584点が含まれている。
【0037】
各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、図2Aで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内に位置することが好ましい。言い換えれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)を直線で結んだ四角形で囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。第3色域L3は、第2色域L2に完全に包含される。各カラーパッチ12a~12gの色の座標点がxy色度図上で第3色域L3内に位置することにより、色補正用チャート10を用いて撮像機器の色補正をより正確に行うことができる。
【0038】
図2Bに示すように、第3色域L3は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域を含まない第3修正色域L3′とするようにしてもよい。所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0039】
図2Cに示すように、第3色域L3は、上記759点の抽出点の色から統計的な手法を用いて選定された代表点が含まれる領域である。第3色域L3に各カラーパッチ12a~12gの色の座標点を含めることで、さらに効率的に病理細胞染色物の画像補正ができるようになる。
【0040】
xy色度図上のカラーパッチの色度座標は、下記式(これらをまとめて式Aともいう)にて算出される。
【数1】
【数2】
上記式はJIS Z8781にて規定される。
【0041】
あるいは、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、図3A乃至図3Cで示すように、xy色度図上で(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内に位置しても良い。言い換えれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)を直線で結んだ三角形で囲まれた第4色域L4に存在しても良い。第4色域L4は、第1色域L1に完全に包含されるが、第2色域L2及び第3色域L3には包含されない。
【0042】
第4色域L4は、赤血球に近似した色が含まれる色域である。このため、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点がxy色度図上で第4色域L4内に位置することにより、特に細胞核以外の色補正の精度を向上させることができる。
【0043】
本実施の形態による色補正用チャート10は、図4で示すような分光スペクトル特性を有する。各カラーパッチ12a~12gの透過スペクトルは、ピーク波長を所定の位置に有する。本実施の形態による色補正用チャート10の分光スペクトルにおいて、各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルの形状は、実際の病理細胞染色物の分光スペクトルの形状に近似している。これにより、例えば光源が変化した場合等、色補正用チャート10を使用する環境の違いによりカラーパッチ12a~12gの色と、実際の病理細胞染色物の色とがずれることが抑えられる。この結果、色補正用チャート10を使用するときにメタメリズム(条件等色)が発生することを抑制できる。
【0044】
各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルは、ピーク波長を有する。すなわち、各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルは、図4に示すような波形を示し、低透過率を示すピーク波長λPを有する。ピーク波長λPは、図4に示すように、分光スペクトルの実測透過率の最大値Tmaxを特定し、最大値Tmaxの透過率を100%としたときの相対透過率が最低値Tminとなるときの波長とする。各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルは、株式会社島津製作所製、紫外可視分光光度計、UV-1800を用いて、無色(透明)である白色領域をバックグラウンドとして可視光領域380nm~780nmの範囲における透過率を1nm間隔で測定して得られる。また、xy色度図上における各色の座標を算出する際は、既知であるCIE 標準イルミナントD65の分光分布データが用いられる。
【0045】
具体的には、各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、0.5%T以上(又は測定限界値以上)であっても良く、1%T以上であっても良く、2%T以上であっても良く、3%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、45%T以下であっても良く、40%T以下であっても良く、35%T以下であっても良く、30%T以下であっても良い。これにより、各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルの形状を、実際の病理細胞染色物の分光スペクトルの形状に近似させ、色補正用チャート10を使用するときのメタメリズムの発生を抑制できる。
【0046】
各カラーパッチ12a~12gの分光スペクトルにおいて、上述したように、ピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。また、ピーク波長λPから長波長側へスペクトルが立ち上がる点Pr(図4)が、520nm以上560nm以下の範囲にあることが好ましい。ここで、スペクトルが立ち上がる点Prとは、ピーク波長λPにおける分光透過率TPよりも5%Tだけ分光透過率が上昇する点、もしくは520nm以上560nm以下の範囲での最低透過率の点をいう。また、波長が560nm以上620nm以下の範囲での分光透過率の上昇が40%T以下であることが好ましい。具体的には、波長620nmでの分光透過率をT620(%T)とし、波長560nmでの分光透過率をT560(%T)としたとき、T620-T560の値が40%T以下であることが好ましい。
【0047】
図1に示す遮光部14は、所望の遮光性を有するものであればよい。遮光部14としては、例えば、クロム薄膜等の金属膜、黒色インキで形成された印刷層等が挙げられる。遮光部14の形成方法については、使用する材料に応じて従来公知の方法を用いることができる。
【0048】
基板11としては、カラーパッチ群12及び遮光部14を支持できるものが用いられる。基板11は、光透過性を有する透明基板であっても良い。基板11は、従来公知のカラーチャートに用いられる基板と同様としても良い。具体的には、基板11は、ガラス基板等の無機基板や樹脂基板を用いることができる。樹脂基板は、板状の他、フィルムやシートであってもよい。
【0049】
基板11は、顕微鏡等の病理用撮像機器によって観察する際に用いられるスライドガラスであっても良い。スライドガラスには、病理細胞染色物を支持する支持部が設けられていても良い。カラーパッチ群12及び支持部は、カバーガラスによって覆われても良い。
【0050】
あるいは、色補正用チャート10とスライドガラスとは、別体に設けられても良い。この場合、色補正用チャート10は、病理細胞染色物を支持するスライドガラスに対してスライド可能な構造としても良い。これにより、病理細胞染色物の観察時と同じ条件で、病理用撮像機器によって色補正用チャートを撮影できる。また、色補正用チャート10がカバーガラスによって覆われないため、カバーガラスの汚れや傷によってカラーパッチ群12に影響が生じない。また、カバーガラスに覆われることによりカラーパッチ群12の色が変化することを抑制できる。
【0051】
基板11は、カラーパッチ12a~12gを作製するための染料を分散できるものを用いても良い。基板11は、カラーパッチ12a~12gを作製するための染料と化学的に結合できるものを用いても良い。ここで、化学的な結合の例としては、水素結合、イオン結合、キレート結合、共有結合、分散力や配向力による結合等が挙げられる。
【0052】
基板11としては、染料定着層を含むものを用いても良い。染料定着層は、カラーパッチ12a~12gを作製するための染料と化学的に結合できる層である。染料定着層としては、ゼラチンやコラーゲン等のタンパク質、ナイロンやポリエステル、アクリル等の合成樹脂を含むものが挙げられる。また、染料定着層を含む基板11としては、フォトマスク描画用フィルムや、印刷製版用フィルム、フォトツーリング用フィルム、印画紙等が挙げられる。基板11が染料定着層を含むことで、基板11と染料との間に化学的な結合が形成され、水分や摩擦、光による堅牢度が向上する効果がある。
【0053】
カラーパッチ12a~12gを作製するための染料としては、水溶性染料を用いても良い。水溶性染料としては、テキスタイル用途で使用される染料や食用染料が挙げられる。染料の種類としては、例えば酸性染料、直接染料、カチオン染料、金属錯塩酸性染料、酸性媒染染料、反応染料を挙げることができる。酸性染料、直接染料の例としては、Acid Yellow、Acid Violet、Acid Red、Acid Green、Acid Blue、Acid Black、Acid Orange、Acid Brown、Direct Red、Direct Black、Direct Orange、Direct Yellow、Direct Green、Direct Violet、Direct Brown、Direct Blueの名がつく染料が挙げられる。食用染料の例としては、Food Red、Food Green、Food Blue、Food Yellow、Food Black、Food Brown、Food Violet、Food Orangeの名がつく染料が挙げられる。または、上記染料の混合物や類似の染色条件、染色用途で使用されるものを含むことができる。染料としては、1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0054】
基板11及び染料として上記材料を用いることにより、以下に説明するように、本実施の形態による色補正用チャート10を長期間あるいは複数回使用しても、光源の光によってカラーパッチ12a~12gの色が変化(退色)することが抑えられる。この結果、色補正用チャート10を長期間あるいは複数回使用した後も、補正精度が落ちることを抑え、高い色補正効果を維持できる。
【0055】
具体的には、本実施の形態による色補正用チャート10は、長時間光を照射された後のカラーパッチ12a~12gの色の変化量ΔE*abが抑えられている。より詳細には、標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が400W/m・hとなるように照射した後の、カラーパッチ12a~12gの色の変化量ΔE*abは、2.5以下であることが好ましい。当該変化量ΔE*abは、1.2以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。
【0056】
また、標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が1000W/m・hとなるように照射した後の、カラーパッチ12a~12gの色の変化量ΔE*abは、2.5以下であることがより好ましい。
【0057】
また、標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が2000W/m・hとなるように照射した後の、カラーパッチ12a~12gの色の変化量ΔE*abは、2.5以下であることがさらに好ましい。
【0058】
ここで、色の変化量ΔE*abは、CIE1976規格の(L*、a*、b*)空間表色系による色差公式(後述する式B)から求められる値である。また、L*、a*及びb*の値は、後述する式Bを用いてX、Y及びZから変換して算出される。X、Y及びZの値は、上述した式Aを用いて、分光スペクトル、等色関数、及び照明光の相対分光分布から算出される。またRaは、平均演色評価数であり、R9は、特殊演色評価数である。ΔE*abは、単にΔEと表記する場合もある。
【0059】
ΔE*ab=2.5以下とは、「離間して判定した場合に、ほぼ同一と認めることができる」色差として知られている(日本色彩学会「新編色彩科学ハンドブック[第3版]」(東京大学出版会)より))。ΔE*abが2.5以下であると、高い色補正効果を維持できる。
【0060】
ΔE*ab=1.2以下とは、「並べて判定した場合に、ほとんどの人が容易に色差を認めることができる」色差として知られている(日本色彩学会「新編色彩科学ハンドブック[第3版]」(東京大学出版会)より))。ΔE*abが1.2以下であると、より高い色補正効果を維持できる。
【0061】
ΔE*ab=0.6以下とは、「各種の誤差要因を考えた場合の実用的な許容差の限界」の色差として知られている(日本色彩学会「新編色彩科学ハンドブック[第3版]」(東京大学出版会)より))。ΔE*abが0.6以下であると、さらに高い色補正効果を維持できる。
【0062】
このように、本実施の形態による色補正用チャート10は、長期間あるいは複数回使用しても、高い色補正効果を維持できる。
【0063】
また、本実施の形態による色補正用チャート10は、長時間光を照射された後のカラーパッチ12a~12gの色の分光スペクトルにおける500nmの透過率の変化が抑えられている。より詳細には、標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が435W/m・hとなるように照射した後の、カラーパッチ12a~12gの色の分光スペクトルにおける500nmの透過率(%T)の変化量及び520nmの透過率(%T)の変化量のうちの少なくとも一方が、2.0%T以下であることが好ましい。当該少なくとも一方の透過率(%T)の変化量は、1.5%T以下であることがより好ましく、1.0%T以下であることがさらに好ましい。
【0064】
分光スペクトルにおける500nmの透過率の変化量は、下記式によって算出できる。
変化量(%T)=光照射後の透過率(%T)-光照射前の透過率(%T)
【0065】
また、標準イルミナントD65の分光分布を模した、Ra≧90かつR9≧80の演色性を有する白色LED光源の光を、照射物体に対する放射照度が50W/m~65W/mであり、かつ積算光量が435W/m・hとなるように照射した後の、カラーパッチ12a~12gの色の分光スペクトルにおける500nmの透過率(%T)の変化率及び520nmの透過率(%T)の変化率のうちの少なくとも一方は、10%以下であることが好ましい。当該少なくとも一方の透過率(%T)の変化率は、8.0%以下であることがより好ましく、5.0%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
分光スペクトルにおける500nmの透過率の変化率(%)は、下記式によって算出できる。
変化率(%)=((光照射後の透過率(%T)/光照射前の透過率(%T)-1)×100
【0067】
本実施の形態による色補正用チャート10は、上述の構成の他に、アライメントマーク、認識コード、カバーガラス、カラーパッチ保持枠、遮光部付きの透明保護板等を有していてもよい。認識コードは、例えば、テストチャートの情報等を記録したコードとすることができる。また、アライメントマークは、位置情報が記録されたマークとすることができるが、さらにテストチャートの情報等が記録された認識コードとして機能してもよい。これらは、遮光部付きの透明保護板上に設けられていてもよい。
【0068】
(各カラーパッチの構成)
以下、本実施の形態による各カラーパッチの構成について説明する。
【0069】
(a)第1カラーパッチ
第1カラーパッチ12aは、第1色を含む。第1色は、病理細胞染色物の色を表現するために最も特徴的な色としても良い。第1色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内に位置する。すなわち第1色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)を直線で結んだ三角形で囲まれた第1色域L1に存在する。第1色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0070】
第1色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内に位置することが好ましい。すなわち第1色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)を直線で結んだ五角形で囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。
【0071】
第1色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内に位置することがさらに好ましい。すなわち第1色の座標点は、xy色度図上の各座標(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)を直線で結んだ四角形で囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0072】
一例として、第1色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.328、0.224)であっても良い。第1色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0073】
図4に示すように、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、0.5%T以上であっても良く、1%T以上であっても良く、3%T以上であっても良く、5%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、20%T以下であっても良く、15%T以下であっても良く、10%T以下であっても良い。
【0074】
第1色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために最も特徴的な色としても良い。第1色は、例えば様々な臓器の細胞染色物の分光スペクトルを取得し、その中から特徴的な細胞色を選定及び抽出することにより得ても良い。この場合、第1色は、例えば上記抽出された複数の細胞染色物の分光スペクトルに基づき、統計的な手法を用いて選択しても良い。
【0075】
(b)第2カラーパッチ
第2カラーパッチ12bは、第1色と異なる第2色を含む。第2色は、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第2色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在する。第2色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0076】
第2色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。
【0077】
第2色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0078】
一例として、第2色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.275、0.172)であっても良い。第2色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0079】
図4に示すように、第2色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第2色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、0.5%T以上であっても良く、1%T以上であっても良く、2%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、10%T以下であっても良く、8%T以下であっても良く、5%T以下であっても良い。第2色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPより低くても良い。
【0080】
第2色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第2色は、xy色度図上で第1色域L1に存在しつつ、xy色度図上で第1色とは一定程度以上異なる距離にある色としても良い。この場合、病理検体画像の色補正をより行いやすくなる。
【0081】
(c)第3カラーパッチ
第3カラーパッチ12cは、第1色及び第2色と異なる第3色を含む。第3色は、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第3色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在する。第3色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0082】
第3色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。
【0083】
第3色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0084】
一例として、第3色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.327、0.270)であっても良い。第3色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0085】
図4に示すように、第3色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第3色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、10%T以上であっても良く、15%T以上であっても良く、20%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、45%T以下であっても良く、40%T以下であっても良く、35%T以下であっても良い。第3色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPより高くても良い。
【0086】
第3色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第3色は、xy色度図上で第1色域L1に存在しつつ、xy色度図上で第1色及び第2色とは一定程度以上異なる距離にある色としても良い。この場合、病理検体画像の色補正をより行いやすくなる。
【0087】
(d)第4カラーパッチ
第4カラーパッチ12dは、第1色乃至第3色と異なる第4色を含む。第4色は、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第4色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在する。第4色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0088】
第4色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。
【0089】
第4色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0090】
一例として、第4色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.321、0.239)であっても良い。第4色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0091】
図4に示すように、第4色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第4色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、3%T以上であっても良く、5%T以上であっても良く、7%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、25%T以下であっても良く、20%T以下であっても良く、15%T以下であっても良い。第4色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPより高くても良い。
【0092】
第4色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第4色は、xy色度図上で第1色域L1に存在しつつ、xy色度図上で少なくとも第1色とは一定程度以上異なる距離にある色としても良い。この場合、病理検体画像の色補正をより行いやすくなる。
【0093】
(e)第5カラーパッチ
第5カラーパッチ12eは、第1色乃至第4色と異なる第5色を含む。第5色は、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第5色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在する。第5色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0094】
第5色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。
【0095】
第5色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0096】
一例として、第5色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.320、0.195)であっても良い。第5色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0097】
図4に示すように、第5色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第5色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、0.5%T以上であっても良く、1%T以上であっても良く、2%T以上であっても良く、3%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、15%T以下であっても良く、10%T以下であっても良く、7%T以下であっても良い。第5色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPより低くても良い。
【0098】
第5色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第5色は、xy色度図上で第1色域L1に存在しつつ、xy色度図上で少なくとも第1色とは一定程度以上異なる距離にある色としても良い。この場合、病理検体画像の色補正をより行いやすくなる。
【0099】
(f)第6カラーパッチ
第6カラーパッチ12fは、第1色乃至第5色と異なる第6色を含む。第6色は、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第6色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在する。
【0100】
第6色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。第6色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0101】
第6色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0102】
一例として、第6色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.331、0.213)であっても良い。第6色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0103】
図4に示すように、第6色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第6色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、1%T以上であっても良く、2%T以上であっても良く、3%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、15%T以下であっても良く、10%T以下であっても良く、7%T以下であっても良い。第6色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPより低くても良い。
【0104】
第6色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第6色は、xy色度図上で第1色域L1に存在しつつ、xy色度図上で少なくとも第1色とは一定程度以上異なる距離にある色としても良い。この場合、病理検体画像の色補正をより行いやすくなる。
【0105】
(g)第7カラーパッチ
第7カラーパッチ12gは、第1色乃至第6色と異なる第7色を含む。第7色は、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第7色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在する。第7色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしてもよい。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0106】
第7色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた第2色域L2に存在することが好ましい。
【0107】
第7色の座標点は、図2A乃至図2Cで示すように、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた第3色域L3に存在することが好ましい。
【0108】
一例として、第7色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.309、0.223)であっても良い。第7色の座標点は、xy色度図上で第1色域L1乃至第3色域L3の各頂点の座標であっても良いし、第1色域L1乃至第3色域L3の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0109】
図4に示すように、第7色の分光スペクトルのピーク波長λPは、520nm以上560nm以下であっても良い。第7色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、1%T以上であっても良く、3%T以上であっても良く、5%T以上であっても良い。ピーク波長λPにおける分光透過率TPは、25%T以下であっても良く、20%T以下であっても良く、15%T以下であっても良い。第7色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPは、第1色の分光スペクトルのピーク波長λPにおける分光透過率TPより高くても良い。
【0110】
第7色は、上述したように、病理細胞染色物の色を表現するために特徴的な色としても良い。第7色は、xy色度図上で第1色域L1に存在しつつ、xy色度図上で少なくとも第1色とは一定程度以上異なる距離にある色としても良い。この場合、病理検体画像の色補正をより行いやすくなる。
【0111】
(h)他のカラーパッチ
カラーパッチ群12は、カラーパッチ12a~12g以外の他のカラーパッチを有していても良い。他のカラーパッチは、第1色乃至第7色と異なる色を含んでも良い。他のカラーパッチの色の座標点は、図3A乃至図3Cで示すように、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた第1色域L1に存在しても良い。他のカラーパッチの色は、xy色度図上の座標範囲内で所定の白色領域に含まれないようにしても良い。上記所定の白色領域は、例えば黒体軌跡5000K以上9300K以下、かつ黒体軌跡からの色偏差dUV=±0.005で囲まれる領域であっても良い。
【0112】
他のカラーパッチは、赤血球に近似した色を有しても良い。他のカラーパッチの色は、図3A乃至図3Cで示すように、xy色度図上で(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内に位置しても良い。すなわち他のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で第4色域L4に含まれても良い。
【0113】
一例として、他のカラーパッチの色の座標点は、例えばxy色度図の座標(0.368、0.278)であっても良い。当該他のカラーパッチの色の座標点は、xy色度図上で第4色域L4の各頂点の座標であっても良いし、第4色域L4の頂点を結んだ直線上の座標であっても良い。
【0114】
なお、カラーパッチ12a~12gのうちの少なくとも1つの色が、図3A乃至図3Cで示すように、xy色度図上で(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内に位置しても良い。すなわちカラーパッチ12a~12gのうちの少なくとも1つの色の座標点が、xy色度図上で第4色域L4に含まれても良い。
【0115】
カラーパッチ群12は、カラーパッチ12a~12g以外の標準色のカラーパッチを有していても良い。標準色のカラーパッチとしては、例えばBT.709規格で規定される色又はBT.2020規格で規定される色等が挙げられる。標準色のカラーパッチは、例えば赤色(R)カラーパッチ、緑色(G)カラーパッチ、青色(B)カラーパッチ、マゼンタ色(M)カラーパッチ、黄色(Y)カラーパッチ、シアン色(C)カラーパッチ、バイオレット色(V)カラーパッチを含んでも良い。
【0116】
標準色のカラーパッチの色として、例えば、JIS Z8110に記載された図(系統色名の一般的な色度区分)に明記されている青、赤、緑、青緑、紫~赤紫、(紫みの)ピンク、黄と記述されている座標範囲の色であっても良い。標準色のカラーパッチの色としては、市場に流通しているカラーチャートのRed、Green、Blue、Cyan、Magenta、Yellowに該当する色を使用しても良い。市場に流通しているカラーチャートの例として、ColorChecker(x-rite社(旧Gretag-Macbeth社))、IT8ターゲット(富士フイルム、コダック、LaserSoft Imagingなど)、BT.709チャート、BT.2020チャートなどがある。ウェブカラーの色表現に用いられるものとしては、Rの色としてRed、Gの色としてGreen、Bの色としてBlue、Cの色としてCyanやAqua、Mの色としてMagentaやFuchsia、Yの色としてYellowと記載される色を使用しても良い。
【0117】
カラーパッチ群12は、輝度調整用のグレー階調カラーパッチを含んでも良い。グレー階調カラーパッチは、黒色、灰色、白色というように、明暗の輝度差によって構成されたカラーパッチであっても良い。
【0118】
カラーパッチ群12が標準色のカラーパッチ又はグレー階調カラーパッチを含むことにより、仮に病理細胞染色物にxy色度図上で第1色域L1に含まれない色の部分が存在しても、撮像機器の色補正を行いやすい。
【0119】
(カラーパッチの形成方法)
各色のカラーパッチ12a~12gは、所望の透過スペクトルを示す部材であればよい。各色のカラーパッチ12a~12gとしては、例えば、バンドパスフィルタ、染色基板を用いても良い。染色基板は、染色法により形成できる。染色基板は、例えば以下のようにして作製できる。まず銀塩乳剤をガラス板等のチップ基板上に塗布する。銀塩乳剤としては、臭化カリウムを硝酸銀の溶液をゼラチンに加えて調製した銀塩乳剤を用いても良い。次に、銀塩乳剤を乾燥して得た銀塩写真乾板から脱銀する。その後、銀塩写真乾板をカラーパッチの色に応じた染料により染色することで、染色基板を形成できる。また、染色基板は、以下のようにして作製しても良い。まず、ゼラチン(溶液)にあらかじめ染料を混合し、所定の色にした材料を作製する。この材料をガラス板等のチップ基板に塗布することにより、染色基板を形成しても良い。
【0120】
カラーパッチ12a~12gの各色は、様々な臓器の細胞染色物の実際の分光スペクトルを取得し、その中から特徴的な細胞色を選定及び抽出することにより得ても良い。その際、カラーパッチ12a~12gの各色は、例えば上記抽出された複数の細胞染色物の分光スペクトルに基づき、統計的な手法を用いて選択しても良い。
【0121】
各カラーパッチ12a~12gの形成に際し、カラーパッチ12a~12gの色及び透過スペクトルは、カラーパッチ12a~12gの種類やその形成方法に応じて調整できる。例えば、1種の染料を用いた染色基板をカラーパッチ12a~12gとして用いる場合であれば、染料の濃度を調整することで、カラーパッチ12a~12gの色及び透過スペクトルも調整できる。また、2種以上の染料を配合して形成した染色基板をカラーパッチ12a~12gとして用いる場合であれば、2種の染料の配合比率を変えることで、カラーパッチ12a~12gの色及び透過スペクトルを調整できる。
【0122】
カラーパッチ12a~12gのサイズ等については特に限定されず、本実施の形態の色補正用チャート10の用途等に応じて所望の効果を奏しやすくなるように、適宜設計できる。
【0123】
カラーパッチ群12において、各カラーパッチ12a~12gはパターン状に配列される。各カラーパッチ12a~12gの配列パターンとしては、図1に示すように一列にラインパターン状に配列されていてもよい。あるいは、各カラーパッチ12a~12gの配列パターンとしては、図示しないが格子パターン状や円形状に配列されていてもよい。また、各カラーパッチ12a~12gの配列順については特に限定されない。各カラーパッチ12a~12gの配列は、適宜設計できる。
【0124】
各カラーパッチ12a~12gは、例えば、蒸着法、染色法、印刷法、転写法、インクジェット法等の、従来公知の方法を用いて形成することもできる。染色法によるカラーパッチ12a~12gの形成方法については、上述したのでここでの説明は省略する。また、カラーパッチ群12は、例えば、上述の方法で形成した各カラーパッチ12a~12gを、基板11の片面に所望のパターンで配列し、上記基板11とカバーガラスとで挟持して形成しても良い。
【0125】
本実施の形態による色補正用チャート10は、適応される撮像画像に応じて、サイズを設計できる。例えば、本実施の形態による色補正用チャート10は、病理用撮像機器の顕微鏡を介して撮像された測定試料の出力画像を色評価及び色補正するために使用できる。この場合、色補正用チャート10は、顕微鏡の対物レンズの倍率に応じたサイズのカラーパッチ群12が形成されたミクロ撮像用カラーチャートとすることができる。また、本実施の形態による色補正用チャート10は、例えば、撮像機器により等倍で撮像された測定試料の出力画像を色評価及び色補正するために使用できる。この場合、撮像画像サイズに応じたサイズのカラーパッチ群12が形成されたマクロ撮像用カラーチャートとすることができる。
【0126】
本実施の形態による色補正用チャート10は、病理細胞染色物の色補正を必要とする病理用撮像機器及び必要とする周辺機器全般に用いることができる。本明細書中、撮像機器とは、専ら静止画を撮像するものだけでなく、動画等を撮像する映像機器も含む。病理用撮像機器としては、例えばWSI(Whole Slide Imaging)スキャナを用いても良い。
【0127】
次に、本実施の形態による色補正用チャート10を用いた病理細胞染色物の色補正方法について説明する。
【0128】
まず、病理細胞染色物を作製する。この場合、まず検体となる病理細胞を採取し、これに対して脱脂等の前処理を施す。次いで、病理細胞を薄切りにするとともに、ヘマトキシリン・エオジン(HE)等の染色液によって染色する。ヘマトキシリン(hematoxylin)液は、青紫色であり、細胞核やリボソームを青紫色に染色するものである。エオジン(eosin)液は、赤色であり、細胞質、細胞間結合組織、繊維及び赤血球、好酸性物質、顆粒等を赤色又は紫色に染色するものである。結果として、病理細胞に含まれる細胞核、細胞質、骨組織、軟部組織の結合組織、赤血球、線維組織、内分泌顆粒、細胞外マトリックス等が染色される。
【0129】
次に、顕微鏡やスライドガラススキャナ等の撮像機器を用いて、このようにして得られた病理細胞染色物の画像を得る。このとき、撮像装置の撮像範囲に、病理細胞染色物の画像とともに、本実施の形態による色補正用チャート10を含めるようにして画像を得てもよいし、本実施の形態による色補正用チャート10の画像を別に得てもよい。ここで、得られた画像はデジタル画像である。
【0130】
次に、画像補正プログラムを用いて、上記デジタル画像について色補正を実施する。この場合、まず取得した色補正用チャート10の画像に基づき、画像補正プログラムを適用することにより、ICC(International Color Consortium)プロファイルを作成する。ICCプロファイルとは、色補正の対象となる機器で行う色補正等を規定した情報をいう。その後、病理細胞染色物の画像に対してICCプロファイルを適用することにより、病理細胞染色物の画像に対する色補正が行われる。
【0131】
このように本実施の形態によれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域内にある。これにより、各カラーパッチ12a~12gの色を、HE染色された実際の病理細胞染色物の色に近づけることができる。この結果、色補正用チャート10を用いた撮像機器の色補正がより行いやすくなり、撮像機器に対して効果的な色補正を行うことができる。
【0132】
また本実施の形態によれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内にあっても良い。これにより、色補正用チャート10を用いて、撮像機器に対してより効果的な色補正を行うことができる。
【0133】
また本実施の形態によれば、各カラーパッチ12a~12gの色の座標点は、xy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内にあっても良い。これにより、色補正用チャート10を用いて、撮像機器に対してより効果的な色補正を行うことができる。
【0134】
[実施例]
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0135】
(実施例1)
色補正用チャート(実施例1)を作製した。この色補正用チャート(実施例1)は、第1色乃至第7色の7つのカラーパッチを有していた。色補正用チャート(実施例1)において、第1色乃至第7色のxy色度図上での色座標は、それぞれ以下の通りである。第1色乃至第7色は、いずれもxy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内に位置する。すなわち、第1色乃至第7色は、いずれもxy色度図上で第1色域L1、第2色域L2及び第3色域L3内に存在する。
【0136】
【表1】
【0137】
また色補正用チャート(実施例1)は、BT.709規格で規定される標準色のカラーパッチと、グレー階調カラーパッチとを有していた。標準色のカラーパッチは、赤色(R)カラーパッチ、緑色(G)カラーパッチ、青色(B)カラーパッチ、マゼンタ色(M)カラーパッチ、黄色(Y)カラーパッチ、シアン色(Cy)カラーパッチ、バイオレット色(V)カラーパッチの7色のカラーパッチを含んでいた。グレー階調カラーパッチは、黒色から白色まで11段階の階調を有していた。
【0138】
色補正用チャートの第1色乃至第7色のカラーパッチの分光スペクトルは、図5Aに示すとおりであった。図5Aに示す分光スペクトルにおいて、各カラーパッチの分光スペクトルのピーク波長は、520nm以上560nm以下にあり、ピーク波長における分光透過率は0.5%T以上30%T以下であった。
【0139】
(実施例2)
色補正用チャート(実施例2)を作製した。この色補正用チャートは、第8色乃至第11色の4つのカラーパッチを有していた。色補正用チャートにおいて、第8色乃至第11色のxy色度図上での色座標は、それぞれ以下の通りである。第8色乃至第11色は、いずれもxy色度図上で(0.310、0.340)、(0.350、0.300)、(0.350,0.200)、(0.260,0.150)、(0.280,0.250)の5点に囲まれた領域内に位置する。また第8色乃至第11色は、いずれもxy色度図上で(0.311,0.334)、(0.347,0.210)、(0.270,0.162)、(0.292,0.216)の4点に囲まれた領域内に位置しない。すなわち、第8色乃至第11色は、いずれもxy色度図上で第1色域L1及び第2色域L2内に存在するが、第3色域L3内に存在しない。
【0140】
【表2】
【0141】
また色補正用チャート(実施例2)は、BT.709規格で規定される標準色のカラーパッチと、グレー階調カラーパッチとを有していた。標準色のカラーパッチ及びグレー階調カラーパッチは、色補正用チャート(実施例1)の場合と同一であった。
【0142】
色補正用チャートの第1色乃至第11色のカラーパッチの分光スペクトルは、図5Bに示すとおりであった。図5Bに示す分光スペクトルにおいて、各カラーパッチの分光スペクトルのピーク波長は、520nm以上560nm以下にあり、ピーク波長における分光透過率は0.5%T以上40%T以下であった。
【0143】
(実施例3)
色補正用チャート(実施例3)を作製した。この色補正用チャートは、第1色乃至第11色の11個のカラーパッチを有していた。色補正用チャートにおいて、第1色乃至第7色のxy色度図上での色座標は、色補正用チャート(実施例1)の場合と同一である。第8色乃至第11色のxy色度図上での色座標は、色補正用チャート(実施例2)の場合と同一である。
【0144】
また色補正用チャート(実施例3)は、BT.709規格で規定される標準色のカラーパッチと、グレー階調カラーパッチとを有していた。標準色のカラーパッチ及びグレー階調カラーパッチは、色補正用チャート(実施例1)の場合と同一であった。
【0145】
(実施例4)
色補正用チャート(実施例4)を作製した。この色補正用チャートは、第1色乃至第14色の14個のカラーパッチを有していた。色補正用チャート(実施例4)において、第1色乃至第7色のxy色度図上での色座標は、色補正用チャート(実施例1)の場合と同一である。第8色乃至第11色のxy色度図上での色座標は、色補正用チャート(実施例2)の場合と同一である。
【0146】
色補正用チャートにおいて、第12色乃至第14色のxy色度図上での色座標は、それぞれ以下の通りである。第12色及び第14色は、いずれもxy色度図上で第1色域L1及び第2色域L2内に存在するが、第3色域L3及び第4色域L4内に存在しない。第13色は、xy色度図上で(0.350、0.300)、(0.350、0.200)、(0.380、0.280)の3点に囲まれた領域内に位置する。すなわち、第13色は、xy色度図上で第1色域L1及び第4色域L4内に存在するが、第2色域L2及び第3色域L3内に存在しない。
【0147】
【表3】
【0148】
また色補正用チャート(実施例4)は、BT.709規格で規定される標準色のカラーパッチと、グレー階調カラーパッチとを有していた。標準色のカラーパッチ及びグレー階調カラーパッチは、色補正用チャート(実施例1)の場合と同一であった。
【0149】
色補正用チャートの第1色乃至第14色のカラーパッチの分光スペクトルは、図5Cに示すとおりであった。図5Cに示す分光スペクトルにおいて、各カラーパッチの分光スペクトルのピーク波長は、520nm以上560nm以下にあり、ピーク波長における分光透過率は0.5%T以上40%T以下であった。
【0150】
(比較例)
第1色乃至第7色の7つのカラーパッチを有していないこと、以外は上記実施例1と同様にして、色補正用チャート(比較例)を作製した。この色補正用チャートは、BT.709規格で規定される標準色のカラーパッチと、グレー階調カラーパッチとを有していた。標準色のカラーパッチ及びグレー階調カラーパッチは、色補正用チャート(実施例1)の場合と同一であった。
【0151】
[病理画像の補正精度の検証]
各色補正用チャート(実施例1-3及び比較例)について、病理画像の補正精度を検証した。この場合、まず図6に示すように、HE染色された実際の病理細胞染色物の検体を準備した。続いて、病理細胞染色物の検体について、WSIスキャナ(浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer HT1)を用いて撮像した。次に、この撮像した元画像のうち、細胞質(cytoplasm)、細胞外マトリックス(ECM)、赤血球(RBC)、及び細胞核(cell nucleus)の部位について、それぞれ5ポイントずつ抽出し、各色補正用チャート(実施例1-3及び比較例)を用いて色補正を実施した。
【0152】
次に、(i)撮像した元画像と、(ii)色補正用チャート(実施例1-3及び比較例)を用いて色補正を実施した画像とのそれぞれについて、実際の病理細胞染色物との色差ΔE*abを測定した。
【0153】
色差ΔE*abは、デジタル画像のL*a*b*と、実測のL*a*b*との差を表す。デジタル画像のL*a*b*は、WSIスキャナで取得した画像のRGB値をXYZ変換し、さらにLab変換することにより得た。実測のL*a*b*は、分光計(トプコンテクノハウス社製 SR-5000HM)を用いて実際の病理細胞染色物の分光スペクトルから得た。
【0154】
なお、色差ΔE*abは、CIE1976規格の(L*、a*、b*)空間表色系による色差公式(ΔE*ab={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2)から求められる値である。また、L*、a*及びb*は、以下の式(これらをまとめて式Bともいう)を用いて三刺激値X、Y及びZから変換して算出される。
L*=116(Y/Yn)1/3-16
a*=500{(X/Xn)1/3-(Y/Yn)1/3
b*=200{(Y/Yn)1/3-(Z/Zn)1/3
ここで、関数f(X/Xn)は、
f(X/Xn)=(X/Xn)1/3 (X/Xn>0.008856)
f(X/Xn)=7.787(X/Xn)+16/116 (X/Xn≦0.008856)
にて定義される。なお、関数f(Y/Yn)及びf(Z/Zn)についても同様に定義される。上記式において、Xn、Yn及びZnは完全拡散反射面(透過物体の場合は完全拡散透過面)の三刺激値であり、Xn、Yn及びZnは、D65光源の三刺激値(λ=380nm~780nm、1nm間隔)を使用する。Xn=95.04、Yn=100.00、Zn=108.86を使用する。
一方、上記式はX/Xn>0.008856、Y/Yn>0.008856、Z/Zn>0.008856の範囲で行い、それ以外に関しては次の補正式を用いる。
L*=116f(Y/Yn)-16
a*=500{f(X/Xn)-f(Y/Yn)}
b*=200{f(Y/Yn)-f(Z/Zn)}
【0155】
この結果を図7(a)-(d)に示す。図7(a)-(d)は、それぞれ細胞質(cytoplasm)、細胞外マトリックス(ECM)、赤血球(RBC)、及び細胞核(cell nucleus)の画像を色補正する前後で色差ΔE*abがどのように変化したかを示すグラフである。
【0156】
図7(a)-(d)に示すように、色補正用チャート(実施例1-3)を用いた場合、色補正用チャート(比較例)を用いた場合と比較して、色差ΔE*abを低減できた。すなわち色補正用チャート(実施例1-3)を用いることにより、色補正を実施した画像を実際の病理細胞染色物により近づけることができた。具体的には、色補正用チャートによる補正精度は、実施例1≧実施例3>実施例2>比較例という順となった。BT.709規格で規定される標準色のカラーパッチ及びグレー階調カラーパッチだけでなく、xy色度図上で第1色域L1及び第2色域L2内に存在する色のカラーパッチを用いて補正することで、元画像との色差ΔE*abを改善できた。さらに、xy色度図上で第3色域L3内に存在する色を用いて補正することで、元画像との色差ΔE*abをさらに改善できた。
【0157】
[異なるWSIスキャナを用いた場合の補正精度の検証]
上述した2つの色補正用チャート(実施例1及び比較例)について、異なるWSIスキャナを用いた場合の補正精度を検証した。この場合、上記と同様に、HE染色された実際の病理細胞染色物の検体(図6参照)を作製した。この病理細胞染色物の検体を、3種類のWSIスキャナ(浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer HT1、浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer XR1、及びフィリップス社製UFS)を用いてそれぞれ撮像した。次に、この撮像した元画像のうち、細胞質(cytoplasm)、細胞外マトリックス(ECM)、及び細胞核(cell nucleus)の部位について、それぞれ5ポイントずつ抽出し、各色補正用チャート(実施例1及び比較例)を用いて色補正を実施した。
【0158】
次に、(i)撮像した元画像と、(ii)色補正用チャート(実施例1及び比較例)を用いて色補正を実施した画像とのそれぞれについて、実際の病理細胞染色物との色差ΔE*abを測定した。色差ΔE*abの算出方法は上記と同様である。
【0159】
この結果を図8(a)-(c)に示す。
【0160】
図8(a)は、WSIスキャナ(浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer HT1)を用いた場合に、それぞれ細胞質、細胞外マトリックス、及び細胞核の画像を色補正する前後で色差ΔE*abがどのように変化したかを示す。図8(a)に示すように、WSIスキャナ(浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer HT1)で撮像した画像を、色補正用チャート(実施例1)を用いて補正した場合、病理細胞染色物の元画像と比較して、色差ΔE*abが13.8~23.6低減した。
【0161】
図8(b)は、WSIスキャナ(浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer XR1)を用いた場合に、それぞれ細胞質、細胞外マトリックス、及び細胞核の画像を色補正する前後で色差ΔE*abがどのように変化したかを示す。図8(b)に示すように、WSIスキャナ(浜松ホトニクス株式会社製 Nanozoomer XR1)で撮像した画像を、色補正用チャート(実施例1)を用いて補正した場合、病理細胞染色物の元画像と比較して、色差ΔE*abが14.8~26.5低減した。
【0162】
図8(c)は、WSIスキャナ(フィリップス社製UFS)を用いた場合に、それぞれ細胞質、細胞外マトリックス、及び細胞核の画像を色補正する前後で色差ΔE*abがどのように変化したかを示す。図8(c)に示すように、WSIスキャナ(フィリップス社製UFS)で撮像した画像を、色補正用チャート(実施例1)を用いて補正した場合、病理細胞染色物の元画像と比較して、色差ΔE*abが3.1~6.9低減した。
【0163】
このように、色補正用チャート(実施例1)を用いることにより、WSIスキャナの機種によらず、色差ΔE*abを低減できた。
【0164】
[耐光性評価]
色補正用チャートの耐光性を評価するため以下のサンプルを準備した。
【0165】
<サンプル作製方法>
【0166】
(カラーパッチ)
印刷製版用フィルム製の基板上に、a~eのカラーパッチ(実施例)を水溶性染料によって形成した。カラーパッチa~eの色座標及び色域は下記の表の通りである。
【0167】
(検体)
生体染料で染色した生体組織を疑似的なカラーパッチ(参考例)とした。生体組織としては、哺乳動物の腎臓を用いた。染色は一般的なHE染色の手法により行った。耐光性評価部分の色座標及び色域は下記の表の通りである。
【0168】
【表4】
【0169】
[光照射後の色の変化量(ΔE*ab)]
[耐光性評価1]
カラーパッチa~d、検体i、jを評価サンプルとして使用した。
光源は、標準イルミナントD65の分光分布を模した白色LED光源で、Ra≧90、R9≧80の演色性を有しており、カラーパッチa~dには放射照度が53W/m、検体i、jには放射照度が62W/mの光を、積算光量が増加していくように、出力を一定に保ったまま、一定時間連続して照射した。
照射時間は、カラーパッチa~dが最大8.2h、検体i、jが最大7hとした。
カラーパッチa~dは、0h、4h、8.2hのタイミングで分光測定を行い、検体i、jは、0h~7.0hの間、15分~1時間間隔で計14回分光測定を行った。
放射照度の測定は、株式会社日本医科器械製作所(NK system)のライトアナライザーLA-105を用いて測定した。
分光スペクトルの測定は、分光放射輝度計(トプコンテクノハウス社製 SR-5000HM)を使用した。
【0170】
上記の分光スペクトルから色の変化量ΔE*abを算出し、積算光量に対する各ΔE*abの値を結んだ直線をカラーパッチa~dと検体i、jとのそれぞれで作成した。
上記の直線から、同じ積算光量となる時のΔE*abの値を読み取り色変化量の比較を行った。
読みとった色変化量ΔE*abの値は以下の表の通りである。
【0171】
【表5】
【0172】
上記の表より、カラーパッチa~dは、積算光量が400W/m・hとなるように光を照射した後の色の変化量ΔE*abが2.0以下に抑えられた。一方、検体i、jは、積算光量が400W/m・hとなるように光を照射した後の色の変化量ΔE*abが最大5.4となった。
【0173】
[耐光性評価2]
実施例によるカラーパッチについて、さらに長時間光照射した場合の色変化量を評価した。
サンプルは、カラーパッチeを使用した。
光源は、標準イルミナントD65の分光分布を模した白色LED光源で、Ra≧90、R9≧80の演色性を有しており、放射照度が53W/mの光を、積算光量が増加していくように、出力を一定に保ったまま、一定時間連続して照射した。
【0174】
照射時間が、0h、15h、30h、45h、60hとなるタイミングで分光測定を行い、色変化量ΔE*abを算出した。
積算光量に対する各ΔE*abの値を結んだ直線から、2000W/m・hのΔE*abの値を読みとった結果、ΔE*abは2.1であった。
【0175】
[光照射後のスペクトルの変化量及び変化率]
上述した[耐光性評価1]で使用したサンプル(カラーパッチa~d、検体i、j)について、耐光性評価の前後における分光スペクトルの変化量と変化率とをそれぞれ算出した。
照射前の分光スペクトルを基準とし、積算光量が435W/m・hとなるまで光を照射した後の分光スペクトルについて、分光波長500nmと520nmにおける透過率の変化量(%T)と変化率(%)をそれぞれ算出した。
その結果は以下の表の通りである。
【0176】
【表6】
【0177】
カラーパッチa~d、検体i、jのそれぞれについて、耐光性評価の前後における分光スペクトルは図9に示す通りである。
【0178】
上記各実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0179】
10 色補正用チャート
11 基板
12 カラーパッチ群
12a~12g カラーパッチ
14 遮光部
L1 第1色域
L2 第2色域
L3 第3色域
【要約】      (修正有)
【課題】染色された組織や細胞を撮像し、デジタル画像とする場合、使用する撮像機器によって色が異なる場合がある。このため、色補正ツールを使用し、撮像機器間の色を補正することが行われている。本開示は、病理検体画像の色補正効果を高めることが可能な、色補正用チャートを提供する。
【解決手段】色補正用チャート10は、基板11と、基板11上に形成されたカラーパッチ12aと、を備え、カラーパッチ12aは、第1色を含み、第1色の座標点は、xy色度図上で(0.200、0.070)、(0.450、0.280)、(0.310、0.340)の3点に囲まれた領域L1内にある。
【選択図】図2A
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9