(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】リードフレーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
H01L23/50 H
(21)【出願番号】P 2024082632
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2023216133の分割
【原出願日】2022-09-01
【審査請求日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2021144288
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021144291
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021185138
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021185144
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022058471
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】永田 昌博
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 和広
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】奥山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】初田 千秋
(72)【発明者】
【氏名】関 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀人
(72)【発明者】
【氏名】大内 一範
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084880(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112133640(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームであって、
半導体素子が搭載されるダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、
前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっており、
前記粗面は、前記リードフレームを構成する金属材料からなる面であ
り、
前記リード部の表面の全域が粗面化処理が施されていない平滑面となっている、リードフレーム。
【請求項2】
リードフレームであって、
半導体素子が搭載されるダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、
前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっており、
前記粗面は、前記リードフレームを構成する金属材料からなる面であり、
前記リード部の表面に金属層が位置し、前記リード部の表面のうち、前記金属層の外側に隣接する第1表面部分は平滑面となっており、前記第1表面部分の外側に隣接する第2表面部分は粗面となっている
、リードフレーム。
【請求項3】
リードフレームであって、
半導体素子が搭載されるダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、
前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっており、
前記粗面は、前記リードフレームを構成する金属材料からなる面であり、
前記リード部の表面に金属層が位置し、前記リード部の表面のうち、前記金属層の外側に凹部が形成され、前記凹部の外側に隣接する第3表面部分は粗面となっており、前記凹部の内面は平滑面となっている
、リードフレーム。
【請求項4】
リードフレームであって、
半導体素子が搭載されるダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、
前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっており、
前記粗面は、前記リードフレームを構成する金属材料からなる面であり、
前記リード部の表面に金属層が位置し、前記リード部の表面のうち、前記金属層の外側に凹部が形成され、前記凹部の外側に隣接する第3表面部分は粗面となっており、前記凹部の内面は粗面となっている
、リードフレーム。
【請求項5】
リードフレームであって、
半導体素子が搭載されるダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、
前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっており、
前記粗面は、前記リードフレームを構成する金属材料からなる面であり、
前記ダイパッドの表面と裏面とはそれぞれ平滑面となっており、前記ダイパッドの側面は粗面となっている
、リードフレーム。
【請求項6】
前記リード部は、裏面側から薄肉化されたインナーリードを有し、前記インナーリードのうち前記ダイパッドを向く面にはインナーリード先端面が形成され、前記インナーリード先端面は、粗面となっている、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【請求項7】
リードフレームであって、
半導体素子が搭載されるダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、
前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっており、
前記粗面は、前記リードフレームを構成する金属材料からなる面であり、
前記粗面のS-ratioは1.30以上であり、前記平滑面のS-ratioは1.30未満である
、リードフレーム。
【請求項8】
リードフレームの製造方法において、
金属基板を準備する工程と、
前記金属基板をエッチングすることにより、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するとともに、裏面側から一部が薄肉化されたリード部とを形成する工程と、
前記金属基板の周囲にめっき層を形成する工程と、
粗面を形成する領域に存在する一部のめっき層を除去する工程と、
前記金属基板のうち、前記めっき層に覆われていない部分に粗面を形成する工程と、
前記めっき層を除去する工程と、を備え、
前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となり、薄肉化されていない部分は平滑面となる、リードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リードフレーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板に実装される半導体装置の小型化及び薄型化が要求されてきている。このような要求に対応すべく、いわゆるQFN(Quad Flat Non-leaded package)タイプの半導体装置が種々提案されている。QFNタイプの半導体装置は、リードフレームの搭載面に搭載した半導体素子を封止樹脂によって封止するとともに、裏面側にリードの一部分を露出させて構成されたものである。
【0003】
従来、フリップチップタイプの半導体装置が知られている(特許文献1参照)。フリップチップタイプの半導体装置は、実装基板上に半導体素子を実装する際、半導体素子と実装基板とをバンプによって互いに接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-110849号公報
【文献】特開2019-40994号公報
【0005】
一般にフリップチップタイプの半導体装置は、半導体装置の外周から半導体素子の電極までの距離であって、外気(空気)に含まれる水分が浸入可能な経路が短くなりやすい。このため、半導体装置の外周から半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するおそれがある。
【0006】
また従来、車載向け又は高信頼性が要求される半導体パッケージを作製する場合、ダイアタッチフィルムを用いて半導体素子をダイパッドに搭載している。近年、このような半導体パッケージにおいて、半導体素子をダイパッド上に搭載する際、より安価なダイアタッチペーストも用いられている。
【0007】
しかしながら、従来、ダイアタッチペーストをダイパッドに塗布し、半導体素子を搭載した後に加熱硬化させたとき、ダイアタッチペースト中のエポキシ樹脂成分が毛細管現象により滲み出す現象(ブリードアウト)が生じている(特許文献2参照)。
【0008】
本実施形態は、半導体素子の電極まで空気中の水分の浸入を抑制可能な半導体装置を製造できるリードフレーム及びその製造方法を提供する。
【0009】
本実施形態は、バンプとリードフレームと良好に接続させるとともに、半導体装置の外周から半導体素子の電極に向けて水分が侵入することを抑制可能な、リードフレーム及びその製造方法を提供する。
【0010】
本実施形態は、粗面が形成されたリードフレームを低コストで製造することが可能な、リードフレーム及びその製造方法を提供する。
【0011】
本実施形態は、半導体装置の外周から半導体素子の電極に向けて水分が侵入することを抑制することが可能な、リードフレーム及びその製造方法を提供する。
【0012】
本実施形態は、ブリードアウトを抑制するとともに、半導体装置の外周から半導体素子の電極に向けて水分が侵入することを抑制可能な、リードフレーム及びその製造方法を提供する。
【発明の開示】
【0013】
本開示の実施形態は、以下の[1]~[51]に関する。
【0014】
[1]複数のリード部を備え、前記リード部の上面の少なくとも一部及び前記リード部の側壁面は、粗化された粗面であり、前記粗面のCIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲である、リードフレーム。
【0015】
[2]複数のリード部を備え、前記リード部の上面の少なくとも一部及び前記リード部の側壁面は、粗化された粗面であり、前記粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上である、リードフレーム。
【0016】
[3]前記粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上である、[2]に記載のリードフレーム。
【0017】
[4]前記リード部の上面の一部及び前記リード部の側壁面が前記粗面であり、前記リード部の前記上面のうちの前記粗面ではない面に金属めっき層が設けられている、[1]~[3]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0018】
[5]前記金属めっき層は、Agめっき層、Niめっき層、Pdめっき層、及びAuめっき層のうちの少なくとも1つを含む、[4]に記載のリードフレーム。
【0019】
[6]前記リード部は、前記リード部の下面側から薄肉化されたインナーリード部を含み、前記インナーリード部の下面は前記粗面である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0020】
[7]半導体素子を搭載するダイパッド部をさらに備え、前記ダイパッド部の周囲に前記複数のリード部が配置され、前記ダイパッド部の上面及び前記ダイパッド部の側壁面は前記粗面である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0021】
[8]前記リードフレームは、前記複数のリード部を少なくとも封止する封止部を備える半導体装置を製造するために用いられるものであって、前記封止部と接触する前記リード部の上面及び前記リード部の側壁面は粗化された粗面である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0022】
[9]第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する金属基板を準備する金属基板準備工程と、前記金属基板を加工することにより複数のリード部を形成する金属基板加工工程と、前記リード部の上面の少なくとも一部及び前記リード部の側壁面を粗化して粗面を形成する粗面形成工程とを含み、前記粗面形成工程において、前記粗面のCIELab色空間におけるa*値が12~19の範囲、b*値が12~17の範囲となるように粗化する、リードフレームの製造方法。
【0023】
[10]第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する金属基板を準備する金属基板準備工程と、前記金属基板を加工することにより複数のリード部を形成する金属基板加工工程と、前記リード部の上面の少なくとも一部及び前記リード部の側壁面を粗化して粗面を形成する粗面形成工程とを含み、前記粗面形成工程において、前記粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上となるように粗化する、リードフレームの製造方法。
【0024】
[11]前記粗面形成工程において、前記粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上となるように粗化する、[10]に記載のリードフレームの製造方法。
【0025】
[12]前記粗面形成工程後に、前記リード部にアルカリ処理を施す、[9]~[11]のいずれか1つに記載のリードフレームの製造方法。
【0026】
[13]前記リード部の前記上面の一部に金属めっき層が設けられており、前記粗面形成工程において、前記リード部における前記金属めっき層が設けられていない前記上面及び前記側壁面を粗化する、[9]~[12]のいずれか1つに記載のリードフレームの製造方法。
【0027】
[14]前記金属めっき層は、Agめっき層、Niめっき層、Pdめっき層、及びAuめっき層のうちの少なくとも1つを含む、[13]に記載のリードフレームの製造方法。
【0028】
[15]前記金属基板加工工程において、前記リード部の下面側から薄肉化されたインナーリード部を含む前記リード部を形成し、前記粗面形成工程において、前記インナーリード部の下面に前記粗面を形成する、[9]~[14]のいずれか1つに記載のリードフレームの製造方法。
【0029】
[16]前記金属基板加工工程において、半導体素子を搭載するダイパッド部を、前記ダイパッド部の周囲に前記複数のリード部が配置されるように形成し、前記粗面形成工程において、前記ダイパッド部の上面及び前記ダイパッド部の側壁面、並びに前記リード部の上面の少なくとも一部及び前記リード部の側壁面を粗化して前記粗面を形成する工程を含む、[9]~[15]のいずれか1つに記載のリードフレームの製造方法。
【0030】
[17]半導体素子が搭載されるダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、前記ダイパッドの表面又は前記リード部の表面に平滑面の領域が形成され、前記平滑面の領域の全周を取り囲むように粗面の領域が存在する、リードフレーム。
【0031】
[18]前記粗面の領域は、平面視で前記ダイパッドの周縁全域又は前記リード部の周縁全域に沿って形成されている、[17]に記載のリードフレーム。
【0032】
[19]前記リード部は、裏面側から薄肉化されたインナーリードを有し、前記インナーリードの表面側にインナーリード表面が形成され、前記インナーリードの裏面側にインナーリード裏面が形成され、前記インナーリードのうち前記ダイパッドを向く面にはインナーリード先端面が形成され、前記リード部の裏面のうち薄肉化されていない部分には、外部端子が形成され、前記インナーリード裏面と、前記インナーリード先端面とは、粗面となっており、前記外部端子が平滑面となっている、[17]又は[18]に記載のリードフレーム。
【0033】
[20]前記ダイパッドの裏面は平滑面となっており、前記ダイパッドの側面は粗面となっている、[17]~[19]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0034】
[21]前記平滑面の領域は、平面視で円形、楕円又は長円である、[17]~[20]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0035】
[22]前記平滑面の領域は、平面視で正方形又は長方形である、[17]~[20]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0036】
[23]前記平滑面の領域は、平面視で曲線と線分とを含む閉じた図形である、[17]~[20]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0037】
[24]前記平滑面の領域と、前記ダイパッド又は前記リード部の周縁との最短距離は、0.025mm以上1.0mm以下である、[17]~[23]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0038】
[25]前記粗面のS-ratioは1.30以上であり、前記平滑面のS-ratioは1.30未満である、[17]~[24]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0039】
[26]リードフレームの製造方法において、金属基板を準備する工程と、前記金属基板をエッチングすることにより、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部とを形成する工程と、前記金属基板の一部にめっき層を形成する工程と、前記金属基板のうち、前記めっき層に覆われていない部分に粗面を形成する工程と、前記めっき層を除去する工程と、を備え、前記ダイパッドの表面又は前記リード部の表面に平滑面の領域が形成され、前記平滑面の領域の全周を取り囲むように前記粗面の領域が存在する、リードフレームの製造方法。
【0040】
[27]リードフレームの製造方法において、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部とを有する金属基板を準備する工程と、前記金属基板のうち、表面の少なくとも一部を除く外周に、めっき層を形成する工程と、前記金属基板の少なくとも裏面に存在するめっき層を残し、他のめっき層を除去する工程と、前記金属基板のうち、前記めっき層に覆われていない部分に粗面を形成する工程と、前記めっき層を除去する工程と、を備えた、リードフレームの製造方法。
【0041】
[28]前記めっき層を形成する工程において、前記めっき層は、前記金属基板の表面全域に形成されない、[27]に記載のリードフレームの製造方法。
【0042】
[29]前記めっき層を形成する工程において、前記めっき層は、前記リード部の表面の一部に形成され、前記他のめっき層を除去する工程において、前記リード部の表面の一部に存在する前記めっき層を残す、[27]に記載のリードフレームの製造方法。
【0043】
[30]前記めっき層を除去する工程の後、前記金属基板の表面の一部上に金属層を形成する工程を更に備えた、[29]に記載のリードフレームの製造方法。
【0044】
[31]前記粗面のS-ratioは1.30以上である、[27]~[30]のいずれか1つに記載のリードフレームの製造方法。
【0045】
[32]半導体素子が搭載されるダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、前記リード部は、裏面側から薄肉化されたインナーリードを有し、前記インナーリードの表面側にインナーリード表面が形成され、前記インナーリードの裏面側にインナーリード裏面が形成され、前記インナーリードのうち前記ダイパッドを向く面にはインナーリード先端面が形成され、前記リード部の裏面のうち薄肉化されていない部分には、外部端子が形成され、前記インナーリード表面の少なくとも一部と、前記インナーリード裏面と、前記インナーリード先端面とは、粗面となっており、前記外部端子が平滑面となっている、リードフレーム。
【0046】
[33]前記インナーリード表面の全体が粗面となっている、[32]に記載のリードフレーム。
【0047】
[34]前記インナーリード表面上に金属層が形成され、前記インナーリード表面のうち金属層が形成される部分は平滑面となっている、[32]に記載のリードフレーム。
【0048】
[35]半導体素子が搭載されるダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、前記リード部は、裏面側から一部が薄肉化され、前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっており、薄肉化されていない部分は平滑面となっている、リードフレーム。
【0049】
[36]前記リード部の表面に金属層が位置し、前記リード部の表面のうち、前記金属層の外側に隣接する第1表面部分は平滑面となっており、前記第1表面部分の外側に隣接する第2表面部分は粗面となっている、[35]に記載のリードフレーム。
【0050】
[37]前記リード部の表面に金属層が位置し、前記リード部の表面のうち、前記金属層の外側に凹部が形成され、前記凹部の外側に隣接する第3表面部分は粗面となっており、前記凹部の内面は平滑面となっている、[35]に記載のリードフレーム。
【0051】
[38]前記リード部の表面に金属層が位置し、前記リード部の表面のうち、前記金属層の外側に凹部が形成され、前記凹部の外側に隣接する第3表面部分は粗面となっており、前記凹部の内面は粗面となっている、[35]に記載のリードフレーム。
【0052】
[39]前記ダイパッドの表面と裏面とはそれぞれ平滑面となっており、前記ダイパッドの側面は粗面となっている、[35]~[38]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0053】
[40]前記リード部は、裏面側から薄肉化されたインナーリードを有し、前記インナーリードのうち前記ダイパッドを向く面にはインナーリード先端面が形成され、前記インナーリード先端面は、粗面となっている、[35]~[39]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0054】
[41]前記粗面のS-ratioは1.30以上であり、前記平滑面のS-ratioは1.30未満である、[35]~[40]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0055】
[42]リードフレームの製造方法において、金属基板を準備する工程と、前記金属基板をエッチングすることにより、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するとともに、裏面側から一部が薄肉化されたリード部とを形成する工程と、前記金属基板の周囲にめっき層を形成する工程と、粗面を形成する領域に存在する一部のめっき層を除去する工程と、前記金属基板のうち、前記めっき層に覆われていない部分に粗面を形成する工程と、前記めっき層を除去する工程と、を備え、前記リード部の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となり、薄肉化されていない部分は平滑面となる、リードフレームの製造方法。
【0056】
[43]半導体素子が搭載されるダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部と、を備え、前記ダイパッドの表面の少なくとも一部に第1の粗面が形成され、前記リード部の表面の少なくとも一部に第2の粗面が形成され、前記リード部の前記第2の粗面の粗さは、前記ダイパッドの前記第1の粗面の粗さよりも粗い、リードフレーム。
【0057】
[44]前記ダイパッドの側面に第3の粗面が形成され、前記ダイパッドの前記第3の粗面の粗さは、前記ダイパッドの前記第1の粗面の粗さよりも粗い、[43]に記載のリードフレーム。
【0058】
[45]前記リード部は、裏面側から薄肉化されたインナーリードを有し、前記インナーリードの裏面側にインナーリード裏面が形成され、前記インナーリード裏面には、第4の粗面が形成され、前記リード部の前記第4の粗面の粗さは、前記ダイパッドの前記第1の粗面の粗さよりも粗い、[43]又は[44]に記載のリードフレーム。
【0059】
[46]前記リード部は、裏面側から薄肉化されたインナーリードを有し、前記インナーリードのうち前記ダイパッドを向く面にはインナーリード先端面が形成され、前記インナーリード先端面には、第5の粗面が形成され、前記リード部の前記第5の粗面の粗さは、前記ダイパッドの前記第1の粗面の粗さよりも粗い、[43]~[45]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0060】
[47]前記リード部の表面には平滑面の領域が形成されている、[43]~[46]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0061】
[48]前記平滑面の領域に、金属層が形成されている、[47]に記載のリードフレーム。
【0062】
[49]前記平滑面の領域は、外方に露出する、[47]に記載のリードフレーム。
【0063】
[50]前記第1の粗面のS-ratioは1.10以上1.30未満であり、前記第2の粗面のS-ratioは1.30以上2.30以下である、[43]~[49]のいずれか1つに記載のリードフレーム。
【0064】
[51]リードフレームの製造方法において、金属基板を準備する工程と、前記金属基板をエッチングすることにより、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置するリード部とを形成する工程と、前記ダイパッド及び前記リード部に被覆層を形成する工程と、前記ダイパッドの表面の少なくとも一部に存在する前記被覆層を除去する工程と、前記ダイパッドのうち、前記被覆層に覆われていない部分に第1の粗面を形成する工程と、前記リード部の表面の少なくとも一部に存在する前記被覆層を除去する工程と、前記リード部のうち、前記被覆層に覆われていない部分に第2の粗面を形成する工程と、を備え、前記リード部の前記第2の粗面の粗さは、前記ダイパッドの前記第1の粗面の粗さよりも粗い、リードフレームの製造方法。
【0065】
本実施形態によれば、半導体素子の電極まで空気中の水分の浸入を抑制可能な半導体装置を製造できる。
【0066】
本実施形態によれば、バンプとリードフレームと良好に接続させるとともに、半導体装置の外周から半導体素子の電極に向けて水分が侵入することを抑制できる。
【0067】
本実施形態によれば、粗面が形成されたリードフレームを低コストで製造できる。
【0068】
本実施形態によれば、半導体装置の外周から半導体素子の電極に向けて水分が侵入することを抑制できる。
【0069】
本実施形態によれば、ブリードアウトを抑制するとともに、半導体装置の外周から半導体素子の電極に向けて水分が侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るリードフレームを示す平面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るリードフレームの部分切断端面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置の部分切断端面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の部分切断端面図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための工程図である。
【
図6B】
図6Bは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Aに続く工程図である。
【
図6C】
図6Cは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Bに続く工程図である。
【
図6D】
図6Dは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Cに続く工程図である。
【
図6E】
図6Eは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Dに続く工程図である。
【
図6F】
図6Fは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Eに続く工程図である。
【
図6G】
図6Gは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Fに続く工程図である。
【
図6H】
図6Hは、第1の実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための、
図6Gに続く工程図である。
【
図7A】
図7Aは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための、
図7Aに続く工程図である。
【
図7C】
図7Cは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための、
図7Bに続く工程図である。
【
図7D】
図7Dは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための、
図7Cに続く工程図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態によるリードフレームを示す平面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態によるリードフレームを示す断面図(
図8のIX-IX線断面図)である。
【
図10】
図10(a)、(b)は、それぞれダイパッドの表面及びリード部の表面を示す拡大平面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態による半導体装置を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態による半導体装置を示す断面図(
図11のXII-XII線断面図)である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、それぞれ接続部としてのバンプを示す拡大断面図である。
【
図14】
図14(a)-(i)は、第2の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図である。
【
図15】
図15(a)-(d)は、第2の実施形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図である。
【
図17】
図17(a)-(d)は、それぞれ第2の実施形態の変形例によるダイパッドの表面及びリード部の表面を示す拡大平面図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態によるリードフレームを示す平面図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態によるリードフレームを示す断面図(
図18のXIX-XIX線断面図)である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態による半導体装置を示す平面図である。
【
図21】
図21は、第3の実施形態による半導体装置を示す断面図(
図20のXXI-XXI線断面図)である。
【
図22】
図22は、接続部としてのバンプを示す拡大断面図である。
【
図23】
図23(a)-(i)は、第3の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図である。
【
図24】
図24(a)-(d)は、第3の実施形態による半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図25】
図25は、第3の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図である。
【
図26】
図26は、第4の実施形態によるリードフレームを示す断面図である。
【
図27】
図27は、第4の実施形態による半導体装置を示す断面図である。
【
図28】
図28(a)-(j)は、第4の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図である。
【
図29】
図29は、第4の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図である。
【
図30】
図30は、第5の実施形態によるリードフレームを示す平面図。
【
図31】
図31は、第5の実施形態によるリードフレームを示す断面図(
図30のXXXI-XXXI線断面図)。
【
図32】
図32は、第5の実施形態による半導体装置を示す平面図。
【
図33】
図33は、第5の実施形態による半導体装置を示す断面図(
図32のXXXIII- XXXIII線断面図)。
【
図35】
図35(a)-(j)は、第5の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【
図36】
図36(a)-(d)は、第5の実施形態による半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図37】
図37は、第5の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図。
【
図38】
図38は、第6の実施形態によるリードフレームを示す断面図。
【
図39】
図39は、第6の実施形態による半導体装置を示す断面図。
【
図40】
図40(a)-(j)は、第6の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【
図41】
図41は、第6の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図。
【
図42】
図42は、第7の実施形態によるリードフレームを示す断面図。
【
図43】
図43は、第7の実施形態による半導体装置を示す断面図。
【
図44】
図44(a)-(j)は、第7の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【
図45】
図45は、第7の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図。
【
図46】
図46は、第8の実施形態によるリードフレームを示す断面図。
【
図47】
図47は、第8の実施形態による半導体装置を示す断面図。
【
図48】
図48(a)-(j)は、第8の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【
図49】
図49は、第8の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図。
【
図50】
図50は、第9の実施形態によるリードフレームを示す平面図。
【
図51】
図51は、第9の実施形態によるリードフレームを示す断面図(
図50のLI-LI線断面図)。
【
図52】
図52は、第9の実施形態による半導体装置を示す平面図。
【
図53】
図53は、第9の実施形態による半導体装置を示す断面図(
図52のLIII-LIII線断面図)。
【
図54】
図54(a)-(e)は、第9の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【
図55】
図55(a)-(h)は、第9の実施形態によるリードフレームの製造方法を示す断面図。
【
図56】
図56(a)-(e)は、第9の実施形態による半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図57】
図57は、第9の実施形態による半導体装置を示す部分拡大断面図。
【
図58】
図58は、第9の実施形態の変形例によるリードフレームを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0071】
(第1の実施形態)
以下、
図1乃至
図7Dを参照して第1の実施形態について説明する。以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。また、本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
【0072】
なお、本明細書等において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値および上限値として含む範囲であることを意味する。また、本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
【0073】
[リードフレーム]
本開示のリードフレームの実施形態について説明する。本実施形態に係るリードフレーム100は、半導体装置200(
図3及び
図4参照)を作製するために用いられるものである。リードフレーム100は、複数のパッケージ領域100Aを備えている。複数のパッケージ領域100Aは、多列及び多段(マトリックス状)に配置されている。なお、
図1においては、1つのパッケージ領域100Aを中心としたリードフレーム100の一部のみを示している。
【0074】
パッケージ領域100Aは、後述する半導体装置200に対応する領域であって、矩形状の仮想線(
図1に示す破線)によって取り囲まれる領域である(
図1参照)。なお、本実施形態において、リードフレーム100として、複数のパッケージ領域100Aを含むものを例示しているが、この態様に限定されるものではなく、リードフレーム100は、1つのパッケージ領域100Aのみから構成されていてもよい。
【0075】
本明細書等において、「内」、「内側」とは、各パッケージ領域100Aの中心方向に向かう側のことをいい、「外」、「外側」とは、各パッケージ領域100Aの中心から離れる側(コネクティングバー130側)のことをいう。また、「上面」とは、半導体素子210が搭載される側の面のことをいい、「下面」とは、「上面」の反対側の面であって外部の実装基板(図示せず)に接続される面のことをいい、「側壁面」とは、「上面」と「下面」との間に位置する面であって、リードフレーム100(金属基板310)の厚みを構成する面のことをいう。
【0076】
また、本明細書等において、ハーフエッチングとは、被エッチング材料をその厚み方向に途中までエッチングすることをいう。ハーフエッチング後の被エッチング材料の厚みは、ハーフエッチング前の被エッチング材料の厚みの30%~70%、好ましくは、40%~60%となる。
【0077】
図1及び
図2に示すように、リードフレーム100の各パッケージ領域100Aは、複数のリード部110と、ダイパッド部120と、リード部110を連結するコネクティングバー130とを含む。リード部110は、インナーリード部111と端子部113とを含んでいてもよい。インナーリード部111は、下面側から薄肉化された部分であり、各パッケージ領域100Aにおいて内側(ダイパッド部120側)に位置する。端子部113は、各パッケージ領域100Aにおいて外側(コネクティングバー130側)に位置する。インナーリード部111は、端子部113からダイパッド部120側に延びている。インナーリード部111の上面側には内部端子が形成される。この内部端子は、後述するように接続部材220を介して半導体素子210に電気的に接続される領域である。内部端子上には、接続部材220との密着性を向上させるために金属めっき層112が設けられている。
【0078】
各リード部110は、それぞれ後述するように接続部材220を介して半導体素子210に接続されるものであり、ダイパッド部120との間に空間を介して配置される(
図4及び
図5参照)。複数のリード部110は、コネクティングバー130の長手方向に沿って互いに間隔を空けて配置されている。各リード部110は、それぞれコネクティングバー130から延び出している。
【0079】
リード部110は、ダイパッド部120の周囲に沿って配置されている。リード部110は、下面側から一部が薄肉化されている。この下面側から薄肉化されている部分がインナーリード部111である。また、リード部110のうちの下面側から薄肉化されていない部分が端子部113であり、端子部113の下面には外部端子150が形成されている。外部端子150は、外部の実装基板(図示せず)に電気的に接続される部分である。外部端子150は、後述する半導体装置200の外方に露出する部分である。
【0080】
インナーリード部111は、下面側から例えばハーフエッチングにより薄肉化されている。インナーリード部111は、インナーリード部上面111Aと、当該インナーリード部上面111Aに対向するインナーリード部下面111Bと、インナーリード部側壁面とを有する。インナーリード部上面111Aは、リード部110の上面の一部である。インナーリード側壁面は、ダイパッド部120側に向くダイパッド部対向面111Cと、隣り合うリード部110において対向する面とを含む。インナーリード部下面111Bはリード部110の下側に位置する。
【0081】
端子部113は、コネクティングバー130側に位置する。端子部113はコネクティングバー130に連結されている。端子部113の下面は上述した外部端子150を構成する。端子部113は、ハーフエッチングされることなく、ダイパッド部120と同一の厚みを有している。なお、端子部113のうちのコネクティングバー130側に位置する一部の下面側が薄肉化され、コネクティングバー130との接続部を構成していてもよい。
【0082】
リード部110の上面の少なくとも一部及び側壁面は、粗化された粗面であり、リード部110(端子部113)の下面は、粗化されていない非粗化面である。インナーリード部下面111Bは、粗化された粗面である。なお、
図1等において、粗化された粗面は太い破線で示されている。
【0083】
本実施形態において、単に「粗面」と称するとき、当該粗面とは、粗化された粗面、好適には、マイクロエッチング等により粗化された粗面を意味するものとする。
【0084】
リード部110の下面のうち、薄肉化されている部分は粗化された粗面となっている。具体的には、インナーリード部下面111Bは、その全域が粗面となっている。一方で、リード部110の下面のうち、薄肉化されていない部分は非粗化面となっている。具体的には、端子部113は下面側から薄肉化されておらず、端子部113の下面側に位置する外部端子150は、その全域が非粗化面になっている。ダイパッド部対向面111Cを含むインナーリード部側壁面は、その全域が粗化された粗面となっている。
【0085】
リード部110(インナーリード部111)の上面のうち、ダイパッド部120側に位置する一部の領域は非粗化面であればよく、その非粗化面には金属めっき層112が設けられていてもよい。金属めっき層112は、例えば、電解めっき法により形成されたものであってもよい。金属めっき層112の厚みは、1μm~10μmの範囲であればよい。金属めっき層112は、例えば、Agめっき層、Ag合金めっき層、Auめっき層、Au合金めっき層、Ptめっき層、Cuめっき層、Cu合金めっき層、Pdめっき層、Niめっき層等であればよく、これらのうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。金属めっき層112は、Agめっき層、Niめっき層、Pdめっき層、Auめっき層のうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。また、金属めっき層112を構成するものによって、下地めっきが必要な場合は、下地めっきとして公知なものを適用すればよい。例えば、Niめっき層やCuめっき層等を下地めっきとして使用できる。
【0086】
ダイパッド部120の上面には、後述するように半導体素子210が搭載される。また、ダイパッド部120の周囲には、複数のリード部110が配置されていればよい。ダイパッド部120の上面及び側壁面は、粗化された粗面であり、ダイパッド部120の下面は、粗化されていない非粗化面であればよい(
図2参照)。
【0087】
ダイパッド部120の上面は、後述するようにダイアタッチペースト等の接着剤240を介して半導体素子210に接合される領域(内部端子)である。ダイパッド部120の下面は、例えばハーフエッチングにより薄肉化されることなく、後述する加工前の金属基板310と同様に粗化されていない非粗化面となっている。ダイパッド部120の下面は、後述する半導体装置200において外方に露出される。
【0088】
各パッケージ領域100A同士は、コネクティングバー130を介して互いに連結されており、コネクティングバー130は、X方向及びY方向に沿ってそれぞれ延びている。なお、X方向及びY方向とは、リードフレーム100の面内において、パッケージ領域100Aの各辺に平行な二方向であり、X方向とY方向とは互いに直交している。
【0089】
各コネクティングバー130は、パッケージ領域100Aの周囲であって、パッケージ領域100Aよりも外側に配置されている。各コネクティングバー130は、平面視で細長い棒形状を有している。各コネクティングバー130の幅W(コネクティングバー130の長手方向に直交する方向の距離)は、特に限定されるものではないが、例えば、95μm~250μmの範囲で適宜設定され得る。各コネクティングバー130には、複数のリード部110がコネクティングバー130の長手方向に沿って所定の間隔を空けて連結されており、ダイパッド部120は、吊りリード140を介してコネクティングバー130に支持されている。なお、本実施形態におけるコネクティングバー130は、薄肉化されていないが、この態様に限定されるものではない。例えば、コネクティングバー130は、その下面側からハーフエッチングにより薄肉化されていてもよい。この場合のコネクティングバー130の厚みは、半導体装置200の構成等を考慮して設定できる。コネクティングバー130の厚みは、例えば、80μm~200μmの範囲で適宜設定され得る。
【0090】
本実施形態に係るリードフレーム100は、後述する封止部230を備える半導体装置200を製造するために用いられるものであって、封止部230と接触するリード部110の上面及びリード部110の側壁面は粗化された粗面であってもよい。また、パッケージ領域100Aよりも外側に位置するリード部110の上面及びリード部110の側壁面、並びにコネクティングバー130は粗化された粗面であってもよいし、粗化されていない非粗化面であってもよい。なお、リードフレーム100を用いて半導体装置200を製造する際に、コネクティングバー130に沿ってダイシングされる。このとき、各々のパッケージ領域100Aを個別にモールドしてダイシングすると、コネクティングバー130の上面が粗化された粗面であるとリードフレーム100をダイシングする際に異物が発生するおそれがある。そのため、コネクティングバー130の上面を粗化されていない非粗化面とすることで、半導体装置200を製造する際において、異物の発生を抑制できる。
【0091】
本実施形態に係るリードフレーム100の粗面において、CIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲であり、好ましくはa*値が13~18の範囲であり、b*値が12~16の範囲である。後述する実施例から明らかなように、本実施形態に係るリードフレーム100における粗面のCIELab色空間のうちのa*値及びb*値が所定の範囲であると、表面積比が高くなることになる。このため、当該リードフレーム100を用いて製造され得る半導体装置において、モールド樹脂との密着強度が上がる。これにより、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制できる。すなわち、本実施形態に係るリードフレーム100における粗面のCIELab色空間のうちのa*値及びb*値が上記範囲であることで、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制可能な半導体装置を製造できる。なお、本実施形態において、CIELab色空間のa*値及びb*値は、分光濃度・測色計eXact(X-rite社製)を用いて測定される。
【0092】
ここで、CIELab色空間(L*a*b*色空間)について説明する。L*a*b*色空間は、CIEが推薦するCIELabという色度図である。L*が明度を表し、a*が赤/マゼンタまたは緑の度合いを表し、b*が黄または青の度合いを表す。a*の値がマイナス側へ向かうほど緑色に近づき、プラス側へ向かうほど赤色に近づく。また、b*の値がマイナス側へ向かうほど青色に近づき、プラス側へ向かうほど黄色に近づく。L*の値が100の時は白色を示し(全反射)、L*の値が0の時は黒色を示す(全吸収)。そしてこれら3つの値の中心が中間色(灰色)となる。すなわち、L*軸方向の移動は明度の変化を示し、a*b*平面上の移動は、色相の変化を示す。なお、L*a*b*空間上の距離は色の近さに対応しており、距離が近いほど色が近いということができる。本実施形態に係るリードフレーム100の粗面においては、CIELab色空間のうちのa*値は赤/マゼンタと緑との間に、b*値は黄色と青との間に上記所定の範囲が相当するということができる。
【0093】
また、本実施形態に係るリードフレーム100において、粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、好ましくは1000mm-1~5000mm-1であり、より好ましくは2000mm-1~4000mm-1である。後述する実施例から明らかなように、本実施形態に係るリードフレーム100における粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが所定の範囲であると、被接触体に対して接触する点が尖っていることを示している。この場合、当該リードフレーム100を用いて製造される半導体装置において、モールド樹脂との密着強度が上がることとなり、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制できる。すなわち、本実施形態に係るリードフレーム100における粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが上記範囲であることで、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制可能な半導体装置を製造できる。さらに粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上であることが好ましく、0.12μm~0.34μmの範囲であることがより好ましい。粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、粗面の算術平均高さSaが所定の範囲であることで、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを効果的に抑制可能な半導体装置を製造できる。なお、山頂点の算術平均曲率Spcとは物体に存在する山頂点の主曲率の平均を表し、山頂点が尖っているほど、山頂点の算術平均曲率Spcの値が大きくなる。また、算術平均高さSaは、線の算術平均高さRaを三次元すなわち面に拡張したパラメータであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す数値である。なお、本実施形態において、山頂点の算術平均曲率Spc及び算術平均高さSaは、レーザー顕微鏡VK-X260(キーエンス社製、測定部)、レーザー顕微鏡VK-X250(キーエンス社製、コントローラー部)を用いて測定される。
【0094】
一般に、QFN(Quad Flat Non-leaded package)タイプの半導体装置に使われるリードフレームは、近年、半導体装置の小型化及び薄型化が要求されてきている。このような半導体装置においては、外周から半導体素子の電極までの距離であって、外気(空気)に含まれる水分が浸入可能な経路が短くなりやすく、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入し、半導体装置が故障するおそれがある。
【0095】
そこで、本発明者らは、半導体装置に用いられるリードフレームでは、リードフレームの粗化された粗面の状態が重要であると気付いた。また半導体装置に対して要求される信頼性の観点では、粗面の状態を示す指標としてCIELab色空間または山頂点の算術平均曲率Spc及び算術平均高さSaに着目すべきことに気付いた。そして、CIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲である場合、または、粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上である場合に、半導体装置に対して要求される信頼性の高いリードフレームが得られることに気付くことによって、本発明を完成させた。
【0096】
本実施形態に係る粗面は、例えば、後述する金属基板310をマイクロエッチング液で粗面化処理をすることによって形成されていてもよい。なお、本実施形態において使用され得るマイクロエッチング液としては、硫酸又は塩酸を主成分として含有するもの、過酸化水素と硫酸を主成分として含有するもの等が挙げられる。
【0097】
本実施形態における粗面は、CIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲である。また、粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上である。このような所定の範囲の粗面を有することで、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制可能な半導体装置を製造できる。
【0098】
以上説明したリードフレーム100は、銅、銅合金、またはNi合金等の金属から構成されている。なお、リードフレーム100の厚みは、半導体装置200の構成等を考慮して設定できるが、リードフレーム100の厚みは、例えば、80μm~300μmの範囲で適宜設定され得る。
【0099】
本実施形態におけるリード部110は、パッケージ領域100Aの4辺全てに沿って配置されているが、これに限定されるものではなく、例えば、パッケージ領域100Aの対向する2辺のみに沿って配置されていてもよい。
【0100】
図1及び
図2に示すリードフレーム100は、ダイパッド部120を備えている態様で説明をしたが、これに限定されるものではなく、ダイパッド部120を備えていなくてもよく、例えば、各リード部110は、後述するように接続部材220としてバンプを介して半導体素子210に接続されるものであってもよい(
図5参照)。
【0101】
[半導体装置]本開示の半導体装置の実施形態について説明する。
図3及び
図4に示すように、半導体装置200は、複数のリード部110と、ダイパッド部120と、半導体素子210と、接続部材220と、封止部230とを備えている。
【0102】
本実施形態における半導体装置200は、上述したリードフレーム100を用いて製造されるものである。したがって、半導体装置200におけるリード部110及びダイパッド部120は、上述したリードフレーム100に備えられるものである。そのため、リード部110の上面のうち金属めっき層112よりも外側(ダイパッド部120から遠い側)の上面及びリード部110の側壁面は粗化された粗面である。また、ダイパッド部120の上面及びダイパッド部120の側壁面も粗化された粗面である。なお、
図4に示すように、リード部110は、リード部110の下面側から薄肉化されたインナーリード部111を含み、インナーリード部下面111Bは粗面である。インナーリード部下面111Bには封止部230が密着している。リード部110の端子部113は、下面側から薄肉化されていない。端子部113の下面に位置する外部端子150は非粗化面となっている。外部端子150は、封止部230から露出している。
【0103】
上記粗面におけるCIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲である。粗面のCIELab色空間のうちのa*値及びb*値が上記範囲であることで、半導体素子210の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制できる。
【0104】
また、上記粗面における山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上である。山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であることで、半導体素子210の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制できる。さらに上記粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上であることが好ましく、0.12μm~0.34μmの範囲であることがより好ましい。粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、粗面の算術平均高さSaが所定の範囲であることで、半導体素子210の電極まで空気中の水分が浸入するのをより効果的に抑制できる。
【0105】
半導体素子210は、従来一般的に用いられている各種半導体素子を使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等を用いることができる。この半導体素子210は、各々接続部材220が取り付けられる複数の電極210Aを有している。
【0106】
各接続部材220は、例えば、銅や金等の導電性の良い金属材料からなり、各接続部材220は、その一端が半導体素子210の電極210Aに、その他端は各リード部110上に位置する金属めっき層112にそれぞれ電気的に接続されている。なお、接続部材220として用いられるものとして、ボンディングワイヤやバンプ等の導電体等が挙げられる。
【0107】
封止部230は、リード部110と、ダイパッド部120と、半導体素子210と、接続部材220とを少なくとも封止する。封止部230は、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;PPS樹脂等の熱可塑性樹脂等の樹脂から構成されていてもよい。なお、封止部230全体の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、300μm~1500μm程度の範囲で適宜設定され得る。また、半導体装置200の平面視において、封止部230の一辺(半導体装置200の一辺)の長さは、特に限定されるものではないが、例えば、0.2mm~20mm程度の範囲で適宜設定され得る。
【0108】
図3及び
図4に示す半導体装置200は、ダイパッド部120を備えている態様で説明をしたが、これに限定されるものではなく、ダイパッド部120を備えていなくてもよく、例えば、各リード部110は、接続部材220としてバンプを介して半導体素子210の電極210Aに接続されていてもよい(
図5参照)。
【0109】
[リードフレームの製造方法]
図1及び
図2に示すリードフレーム100の製造方法を例として説明する。
図6A~
図6Hは、本実施形態に係るリードフレームの製造方法を説明するための工程図である。
【0110】
<金属基板準備工程>
図6A及び
図6Bに示すように、第1面310A及び当該第1面310Aに対向する第2面310Bを有する金属基板310を準備する(
図6A参照)。なお、本実施形態で使用できる金属基板310としては、純銅基板、銅合金基板、42合金(Ni42%のFe合金)基板等が挙げられるが、純銅基板または銅合金基板であることが好ましい。また、金属基板310は、第1面310A及び第2面310Bに対して脱脂を行い、洗浄処理を施したものを使用してもよい。
【0111】
<金属基板加工工程>
次に、金属基板310の第1面310A及び第2面310Bにそれぞれ感光性レジスト320を塗布し、これを乾燥させる(
図6B参照)。なお、本実施形態で使用できる感光性レジスト320としては、従来公知のものを使用できる。
【0112】
続いて、この金属基板310に対してフォトマスクを介して露光し現像することにより、所望の開口部330を有するレジスト層340を形成する(
図6C参照)。
【0113】
次に、レジスト層340を耐腐蝕膜として金属基板310に腐蝕液でエッチングを施す(
図6D参照)。なお、腐蝕液は、使用する金属基板310の材質に応じて適宜選択できる。例えば、金属基板310として純銅基板を用いる場合、通常、腐蝕液として塩化第二鉄水溶液を用い、金属基板310の第1面310A及び第2面310Bの両面にスプレーエッチングを行ってもよい。これにより、リード部110、ダイパッド部120及びコネクティングバー130の外形が形成される。このとき、ハーフエッチングによりリード部110の一部の下面が薄肉化され、インナーリード部111及び端子部113が形成されてもよい。
【0114】
次いで、レジスト層340を剥離除去し、エッチングされた金属基板310の表面に被覆層350を形成する(
図6E参照)。これにより、リード部110、ダイパッド部120及びコネクティングバー130の全周に被覆層350が形成される。被覆層350の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば0μm超2μm以下の厚さであればよい。また、被覆層350を形成する金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、銀を用いてもよい。被覆層350が銀めっき層からなる場合、電解めっき用めっき液としては、シアン化銀及びシアン化カリウムを主成分とした銀めっき液を用いることができる。なお、リード部110(端子部113)の下面の外部端子150及びダイパッド部120の下面には被覆層350を形成しないようにするのが好ましい。リード部110(端子部113)の下面の外部端子150及びダイパッド部120の下面に被覆層350を形成しないようにするために、例えば、リード部110(端子部113)の下面の外部端子150及びダイパッド部120の下面にレジスト層400を形成することで被覆層350の形成を回避してもよい(
図6E参照)。
【0115】
続いて、粗面を形成する領域に存在する被覆層350を除去する。具体的には、リード部110の上面のうち金属めっき層112が設けられる領域以外の上面、リード部110の側壁面、インナーリード部111の下面、ダイパッド部120の上面及びダイパッド部120の側壁面に形成されている被覆層350が除去される(
図6F参照)。この間、
図6Fに示すように、金属基板310の第1面310A及び第2面310Bにそれぞれゴムパッキン等の弾性部材410を配置し、弾性部材410を介して金属基板310を治具420によって挟む。次いで、弾性部材410に覆われていない部分の被覆層350を剥離除去する。これにより、リード部110の上面のうち金属めっき層112が設けられる領域以外の上面、リード部110の側壁面、インナーリード部111の下面、ダイパッド部120の上面及びダイパッド部120の側壁面が露出する。一方、弾性部材410に覆われたリード部110の上面のうち金属めっき層112が形成される領域の上面及びコネクティングバー130上の被覆層350は残存する。
【0116】
<粗面形成工程>
次に、金属基板310の下面側に金属基板を支持する支持層360を設ける(
図6G参照)。支持層360は、例えば、レジスト層であってもよい。支持層360を設けた後、金属基板310のうち被覆層350に覆われていない部分を粗化することにより粗面を形成する(
図6G参照)。具体的には、リード部110の上面のうち金属めっき層112が形成される領域よりも外側(ダイパッド部120から遠い側)の上面、リード部110の側壁面、インナーリード部111の下面、ダイパッド部120の上面及びダイパッド部120の側壁面に粗面が形成される。粗面を形成するには、例えば、金属基板310に対してマイクロエッチング液を供給する。これにより、被覆層350で覆われている部分を除き、金属基板310全体に粗面を形成できる。なお、マイクロエッチング液とは、金属表面を僅かに溶かし、微細な凹凸の粗面を形成できる表面処理剤である。本実施形態において使用され得るマイクロエッチング液としては、硫酸又は塩酸を主成分として含有するもの、過酸化水素と硫酸を主成分として含有するもの等が挙げられる。
【0117】
なお、粗面を形成する工程において、粗面におけるCIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲、b*値が12~17の範囲となるように粗化される。また、粗面を形成する工程において、粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上となるように粗化される。さらに、粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上であることが好ましく、0.12μm~0.34μmの範囲となるように粗化されることがより好ましい。このような所定の範囲になるように粗面を形成することで、半導体素子の電極まで空気中の水分が浸入するのを抑制可能な半導体装置を製造可能なリードフレーム100を得ることができる。
【0118】
その後、支持層360、被覆層350を順次剥離除去し、インナーリード部上面111Aの内側(ダイパッド部120側)端部に、金属めっき層112を設けることで、
図1及び
図2に示すリードフレーム100が得られる(
図6H参照)。金属めっき層112は、例えば、フォトリソグラフィ法により所定のパターンを有するめっき用レジスト層を形成し、めっき用レジスト層に覆われていない箇所に電解めっき法により金属めっき層112を形成できる。なお、上記製造方法により作製されたリードフレーム100にアルカリ処理を施してもよい。具体的には、リードフレーム100をアルカリ水溶液中に浸漬する。アルカリ処理を行うことで、粗面形成工程において使用した表面処理剤に含有する酸と中和し、リードフレーム100の腐食を抑止できる。なお、アルカリ処理に用いられるアルカリとしては、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0119】
[半導体装置の製造方法]
図3及び
図4に示す半導体装置200の製造方法を例として説明する。
図7A~
図7Dは、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。
【0120】
まず、
図6A~
図6Hに示す製造方法により製造されたリードフレーム100を準備する(
図7A参照)。次に、リードフレーム100のダイパッド部120上に、半導体素子210を搭載する。この場合、例えば、ダイアタッチペースト等の接着剤240を用いて、半導体素子210をダイパッド部120上に載置して固定する(
図7B参照)。なお、接着剤240は、銀ペースト及びエポキシ樹脂等の成分を含むエポキシ樹脂系の接着剤であってもよい。このとき、半導体素子210は、接着剤240を介してダイパッド部120の上面の粗面上に配置される。
【0121】
続いて、半導体素子210の各電極210Aと、各リード部110に形成された金属めっき層112とを、それぞれ接続部材220によって互いに電気的に接続する(
図7C参照)。
【0122】
次に、リードフレーム100に対して熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を射出成形またはトランスファ成形することにより、封止部230を形成する(
図7D参照)。これにより、リード部110、ダイパッド部120、半導体素子210及び接続部材220を樹脂封止できる。
【0123】
その後、パッケージ領域100Aごとに、リードフレーム100をダイシングする。このとき、ダイシングされるコネクティングバー130の上面が粗化されていない非粗化面であるため、ダイシング時に異物が発生するのを抑制できる。このようにして、半導体装置200ごとに個片化され、
図3及び
図4に示す半導体装置200が得られる。
【0124】
また、半導体装置200を長時間使用していると、空気中の水分等が、半導体装置200の側面または下面側から浸入するおそれがある。例えば、空気中の水分等が封止部230と、リード部110またはダイパッド部120との界面を介して浸入してくるおそれがある。
【0125】
この問題に対して本実施形態においては、リード部110の金属めっき層112が設けられていない上面、リード部110の側壁面、ダイパッド部120の上面及びダイパッド部120の側壁面には粗面が形成されている。粗面は、粗面のCIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲であるように、または、粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上であるように粗化されている。これにより、封止部230と、リード部110またはダイパッド部120との界面から半導体素子210側に水分が浸入してくる浸入経路の距離が相対的に長くなっている。このため、半導体素子210の電極210Aまで水分が浸入するのを抑制できる。さらに、上記所定の範囲の粗面を有することで、ダイパッド部120やリード部110と封止部230の密着強度を高めることができ、ダイパッド部120やリード部110と封止部230とが互いに剥離することを抑制できる。
【0126】
また、本実施形態におけるリード部110が、当該リード部110の下面側から薄肉化されたインナーリード部111を含む。インナーリード部111の下面は粗面であることで、半導体装置200の下面側において、封止部230とリード部110との界面における水分の浸入経路の距離が長くなっている。これにより封止部230とリード部110との界面から半導体素子210の電極210Aまで水分が浸入することを抑制できる。さらに、インナーリード部111の下面に上記所定の範囲の粗面を有することで、リード部110と封止部230の密着強度を高めることができ、リード部110と封止部230とが互いに剥離することを抑制できる。
【0127】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0128】
[実施例]
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0129】
〔実施例1〕
図1及び
図2に示す構成を有する。リードフレーム100を準備した。リードフレーム100において、リード部110の上面及び側壁面、並びにダイパッド部120の上面及び側壁面が、CIELab色空間のうちのa
*値が17.53、b
*値が14.80及び山頂点の算術平均曲率Spcが2431.46mm
-1、並びに算術平均高さSaが0.14μmの粗面により構成されていた。なお、a
*値及びb
*値は、分光濃度・測色計eXact(X-rite社製)を用いて測定し、山頂点の算術平均曲率Spc及び算術平均高さSaは、レーザー顕微鏡VK-X260(キーエンス社製、測定部)、レーザー顕微鏡VK-X250(キーエンス社製、コントローラー部)を用いて測定した。
【0130】
〔実施例2〕
リード部110の上面及び側壁面、並びにダイパッド部120の上面及び側壁面が、CIELab色空間のうちのa*値が16.03、b*値が13.84及び山頂点の算術平均曲率Spcが2952.08mm-1、並びに算術平均高さSaが0.17μmの粗面により構成されている以外は、実施例1と同様の構成を有するリードフレーム100を準備した。
【0131】
〔実施例3〕
リード部110の上面及び側壁面、並びにダイパッド部120の上面及び側壁面が、CIELab色空間のうちのa*値が15.39、b*値が13.16及び山頂点の算術平均曲率Spcが3523.76mm-1、並びに算術平均高さSaが0.22μmの粗面により構成されている以外は、実施例1と同様の構成を有するリードフレーム100を準備した。
【0132】
〔実施例4〕
リード部110の上面及び側壁面、並びにダイパッド部120の上面及び側壁面が、CIELab色空間のうちのa*値が14.65、b*値が12.86及び山頂点の算術平均曲率Spcが3378.00mm-1、並びに算術平均高さSaが0.21μmの粗面により構成されている以外は、実施例1と同様の構成を有するリードフレーム100を準備した。
【0133】
〔比較例1〕
リード部110の上面及び側壁面、並びにダイパッド部120の上面及び側壁面が、CIELab色空間のうちのa*値が18.59、b*値が17.29及び山頂点の算術平均曲率Spcが629.05mm-1、並びに算術平均高さSaが0.11μmの粗面により構成されている以外は、実施例1と同様の構成を有するリードフレームを準備した。
【0134】
〔比較例2〕
リード部110の上面及び側壁面、並びにダイパッド部120の上面及び側壁面が、CIELab色空間のうちのa*値が10.06、b*値が7.18及び山頂点の算術平均曲率Spcが986.96mm-1、並びに算術平均高さSaが0.09μmの粗化されていない非粗化面により構成されている以外は、実施例1と同様の構成を有するリードフレームを準備した。
【0135】
[試験例]
粗面状態評価試験実施例1~4及び比較例1~2の各リードフレームの粗面の状態をSEM及びレーザー顕微鏡で観察し、実施例1~4及び比較例1~2の各リードフレームのせん断強さを測定した。結果を表1に示す。なお、せん断強さは、モールド樹脂密着強度試験(プリンカップ試験)として、リードフレーム上にモールド樹脂を成型し、せん断方向を与えることによって計測する。モールド樹脂は、EME-631(住友ベークライト社製)を使用し、成型時間120秒、成型温度175±5℃、成型圧力10MPaでモールド樹脂成型を行い、その後、175℃で6時間硬化処理を行った。なお、成型したモールド樹脂のサイズは、高さ4mm、底面直径4mm、上面直径3mmとし、底面側をリードフレームに成型した。その後、リードフレームを接合強度試験機DAGE4000(ノードソン社製)に固定し、リードフレーム上のモールド樹脂の横方向からせん断荷重1kg、速度0.1mm/秒の荷重をかけることで、せん断強さを測定した。
【0136】
【0137】
表1に示すように、リードフレーム100が有する粗面のCIELab色空間のうちのa*値が12~19の範囲であり、b*値が12~17の範囲であれば、a*値及びb*値が上記範囲外であるときに比べ、せん断強さが上昇することが確認された。したがって、a*値及びb*値が上記範囲内であることで、リードフレーム100を用いて製造される半導体装置において、モールド樹脂との密着強度が上がることとなり、半導体素子210の電極210Aまで空気中の水分が浸入することを抑制できると推察される。
【0138】
また、リードフレーム100の粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であれば、山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1未満であるときに比べ、せん断強さが上昇することが確認された。さらに、実施例1~4の各リードフレーム100の粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上であった。この結果から、粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上であり、粗面の算術平均高さSaが0.12μm以上であることで、リードフレーム100を用いて製造される半導体装置において、モールド樹脂との密着強度が上がることとなり、半導体素子210の電極210Aまで空気中の水分が浸入することを抑制できると推察される。なお、比較例2の粗化されていない非粗化面の山頂点の算術平均曲率Spcが700mm-1以上となっている。これは、金属基板を圧延加工して比較例2のリードフレームを製造する際に、圧延痕の鋭い山が存在したため、山頂点の算術平均曲率Spcの値が700mm-1以上になったものと推察される。また、比較例1のリードフレームの粗面の山頂点の算術平均曲率Spcが比較例2の非粗化面の山頂点の算術平均曲率Spcよりも小さい。これは、粗面を形成する際に圧延痕の鋭い山の山頂点が削れる程度に粗化して粗面を形成したものであったため、算術平均曲率Spcの値が小さくなったものと推察される。実施例1~4のリードフレーム100の粗面は、比較例1のリードフレームの粗面よりもさらに粗化した粗面である。このため、エッチングが深く入り山頂点の算術平均曲率Spcの値が大きくなったものと推察される。
【0139】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、
図8乃至
図17を参照して説明する。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
【0140】
(リードフレームの構成)
まず、
図8乃至
図10により、本実施形態によるリードフレームの概略について説明する。
図8乃至
図10は、本実施形態によるリードフレームを示す図である。
【0141】
図8及び
図9に示すリードフレーム10は、半導体装置20(
図11及び
図12)を作製する際に用いられるものである。このようなリードフレーム10は、複数のパッケージ領域10aを備えている。複数のパッケージ領域10aは、多列及び多段に(マトリックス状に)配置されている。なお、
図8においては、1つのパッケージ領域10aを中心としたリードフレーム10の一部のみを示している。
【0142】
本明細書中、「内」、「内側」とは、各パッケージ領域10aの中心方向を向く側をいう。「外」、「外側」とは、各パッケージ領域10aの中心から離れる側(コネクティングバー13側)をいう。また、「表面」とは、半導体素子21が搭載される側の面をいう。「裏面」とは、「表面」の反対側の面であって外部の図示しない実装基板に接続される側の面をいう。「側面」とは、「表面」と「裏面」との間に位置する面であって、リードフレーム10(金属基板)の厚みを構成する面をいう。
【0143】
また、本明細書中、ハーフエッチングとは、被エッチング材料をその厚み方向に途中までエッチングすることをいう。ハーフエッチング後の被エッチング材料の厚みは、ハーフエッチング前の被エッチング材料の厚みの例えば30%以上70%以下、好ましくは40%以上60%以下となる。
【0144】
図8及び
図9に示すように、リードフレーム10の各パッケージ領域10aは、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12と、を備えている。このうちリード部12は、裏面側から一部が薄肉化されている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されていない部分は平滑面となっている。
【0145】
パッケージ領域10aは、半導体装置20(後述)に対応する領域である。パッケージ領域10aは、
図8において矩形状の仮想線(二点鎖線)によって取り囲まれる領域である。なお、本実施形態において、リードフレーム10は、複数のパッケージ領域10aを含んでいる。しかしながら、これに限らず、1つのリードフレーム10に1つのパッケージ領域10aのみが形成されていても良い。
【0146】
各パッケージ領域10a同士は、コネクティングバー(支持部材)13を介して互いに連結されている。このコネクティングバー13は、ダイパッド11及びリード部12を支持する。コネクティングバー13は、X方向又はY方向に沿ってそれぞれ延びている。ここで、X方向、Y方向とは、リードフレーム10の面内において、パッケージ領域10aの各辺に平行な二方向である。X方向とY方向とは互いに直交している。また、Z方向は、X方向及びY方向の両方に対して垂直な方向である。
【0147】
各コネクティングバー13は、パッケージ領域10aの周囲であってパッケージ領域10aよりも外側に配置されている。各コネクティングバー13は、平面視で細長い棒形状を有している。各コネクティングバー13の幅(コネクティングバー13の長手方向に直交する方向の距離)は、95μm以上250μm以下としても良い。各コネクティングバー13には、それぞれ複数のリード部12が、コネクティングバー13の長手方向に沿って間隔を空けて連結されている。ダイパッド11は、吊りリード14を介してコネクティングバー13に支持されている。コネクティングバー13は、薄肉化されていないが、これに限らず、裏面側から例えばハーフエッチングにより薄肉化されていても良い。コネクティングバー13の厚みは、半導体装置20の構成にもよるが、80μm以上200μm以下としても良い。
【0148】
図9に示すように、ダイパッド11は、表面側に位置するダイパッド表面11aと、裏面側に位置するダイパッド裏面11bとを有している。ダイパッド表面11aには、後述するように半導体素子21が搭載される。ダイパッド裏面11bは、半導体装置20(後述)から外方に露出する。また、ダイパッド11のうちリード部12を向く側には、第1ダイパッド側面11cと、第2ダイパッド側面11dとが形成されている。第1ダイパッド側面11cは、ダイパッド表面11a側に位置している。第2ダイパッド側面11dは、ダイパッド裏面11b側に位置している。この場合、ダイパッド11のうち第1ダイパッド側面11cと第2ダイパッド側面11dとはそれぞれ粗面となっている。一方、ダイパッド表面11aには、後述するように、平滑面(ダイパッド平滑面領域11e)と粗面(ダイパッド粗面領域11f)とが形成されている。ダイパッド裏面11bは、平滑面となっている。
【0149】
本実施形態中、「粗面」とは、S-ratioが1.30以上となる面をいう。「平滑面」とは、S-ratioが1.30未満となる面をいう。粗面は、平滑面よりも粗い面である。また、「粗面」のS-ratioは、1.30以上2.30以下となることが好ましい。「平滑面」のS-ratioは、1.00以上1.20以下となることが好ましい。ここで「S-ratio」とは、測定対象となる面を光干渉式測定器で複数の画素に分割して測定して得られた表面積を観察面積で除したものである。具体的には、測定対象となる面を株式会社日立ハイテクサイエンス製、VertScanを用いて複数の画素に分割して測定し、得られた表面積を観察面積で除して算出する。
【0150】
粗面は、後述する金属基板31の外面を、例えば過酸化水素と硫酸を主成分とするマイクロエッチング液で粗面化処理することによって形成されても良い。平滑面は、後述する金属基板31に対してこのような粗面化処理を施さない、未加工の面であっても良い。なお、
図9において、粗面化された部分を太い破線で示している(他の断面図についても同様)。
【0151】
ダイパッド11のダイパッド表面11aは、後述するようにバンプ26を介して半導体素子21に電気的に接続される領域(内部端子)となっている。ダイパッド表面11aは、ハーフエッチング等により薄肉化されていない領域であっても良い。ダイパッド表面11aには、平滑面の領域であるダイパッド平滑面領域11eと、粗面の領域であるダイパッド粗面領域11fとが形成されている。
【0152】
ダイパッド表面11aには、複数のダイパッド平滑面領域11eが形成されていても良い。ダイパッド平滑面領域11eは、それぞれ対応するバンプ26に接続される(
図12参照)。ダイパッド11上のダイパッド平滑面領域11eの個数と、ダイパッド11に接続されるバンプ26の個数は同一であっても良い。あるいは、1つのダイパッド平滑面領域11eに複数のバンプ26が配置されても良い。この場合、ダイパッド11上のダイパッド平滑面領域11eの個数は、ダイパッド11に接続されるバンプ26の個数より少なくても良い。
【0153】
ダイパッド粗面領域11fは、ダイパッド平滑面領域11eよりも粗い(S-ratioが大きい)。
図10(a)に示すように、ダイパッド粗面領域11fは、平面視で、各ダイパッド平滑面領域11eの全周を取り囲むように形成される。すなわち、ダイパッド平滑面領域11eは、ダイパッド11の周縁11gに直接接することがない。またダイパッド粗面領域11fは、平面視でダイパッド11の周縁11gの全域に沿って形成されている。ここで、ダイパッド11の周縁11gとは、
図8に示すように、ダイパッド11の複数(4つ)の辺によって取り囲まれる領域をいう。またダイパッド表面11aのうち、ダイパッド平滑面領域11e以外の領域は、全てダイパッド粗面領域11fとなっていても良い。すなわち、ダイパッド表面11aは、複数のダイパッド平滑面領域11eと、それ以外のダイパッド粗面領域11fと、のみによって構成されていても良い。
【0154】
図10(a)に示すように、ダイパッド平滑面領域11eは、平面視で円形であっても良い。ダイパッド平滑面領域11eは、平面視でバンプ26(仮想線)よりも大きいことが好ましい。ダイパッド平滑面領域11eの幅(直径)D1は、0.030mm以上としても良く、0.035mm以上としても良い。幅(直径)D1は、0.070mm以下としても良く、0.065mm以下としても良い。バンプ26をダイパッド平滑面領域11eの中心に配置したとき、バンプ26の周縁とダイパッド平滑面領域11eの周縁との最短距離d1は、0.005mm以上としても良く、0.010mm以上としても良い。最短距離d1は、0.020mm以下としても良く、0.015mm以下としても良い。ダイパッド平滑面領域11eと、ダイパッド11の周縁11gとの最短距離L1は、0.025mm以上としても良く、0.030mm以上としても良い。最短距離L1は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。ダイパッド平滑面領域11eが平面視で円形であることにより、円形のバンプ26をダイパッド平滑面領域11eに対して位置決めしやすくなっている。なお、
図10(a)(b)において、平滑面の部分を白色で示し、粗面の部分を網掛けで示している(
図17(a)-(d)についても同様)。
【0155】
また
図10(a)において、ダイパッド表面11aに複数のダイパッド平滑面領域11eが存在する場合、互いに隣接するダイパッド平滑面領域11e同士の最短距離M1は、0.030mm以上としても良く、0.040mm以上としても良い。最短距離M1は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。互いに隣接するダイパッド平滑面領域11eの中心同士のピッチP1は、0.045mm以上としても良く、0.057mm以上としても良い。ピッチP1は、1.2mm以下としても良く、0.60mm以下としても良い。なお、上記ピッチP1は、互いに隣接するバンプ26の中心同士のピッチに相当する。
【0156】
図9を参照すると、ダイパッド11のダイパッド裏面11bには、外部端子が形成されても良い。この外部端子は、図示しない実装基板に電気的に接続されても良い。ダイパッド裏面11bは、例えばハーフエッチングにより薄肉化されることなく、加工前の金属基板(後述する金属基板31)と同様の平滑面となっている。ダイパッド裏面11bは、半導体装置20(後述)の製造後に、半導体装置20から外方に露出する。
【0157】
各リード部12は、それぞれ後述するようにバンプ26を介して半導体素子21に接続されるものであり、ダイパッド11との間に空間を介して配置されている。複数のリード部12は、コネクティングバー13の長手方向に沿って互いに間隔を空けて配置されている。各リード部12は、それぞれコネクティングバー13から延び出している。
【0158】
リード部12は、ダイパッド11の周囲に沿って配置されている。リード部12は、裏面側から一部が薄肉化されている。この場合、リード部12のうち、後述するインナーリード51の裏面が薄肉化されている。またリード部12の裏面のうち薄肉化されていない部分には、外部端子17が形成されている。外部端子17は、外部の実装基板(図示せず)に電気的に接続される。外部端子17は、半導体装置20(後述)の製造後に、半導体装置20から外方に露出する。
【0159】
図9に示すように、リード部12は、インナーリード51と端子部53とを有している。インナーリード51は、内側(ダイパッド11側)に位置する。端子部53は、外側(コネクティングバー13側)に位置する。インナーリード51は、端子部53からダイパッド11側に延びている。インナーリード51の表面側には内部端子が形成される。この内部端子は、後述するようにバンプ26を介して半導体素子21に電気的に接続される領域(リード平滑面領域12e)である。
【0160】
インナーリード51は、裏面側から例えばハーフエッチングにより薄肉化されている。インナーリード51は、インナーリード表面51aと、インナーリード裏面51bとを有している。インナーリード表面51aは表面側に位置する。また、インナーリード51のうちダイパッド11を向く面には、インナーリード先端面51cが形成されている。インナーリード裏面51bは裏面側に位置する。
【0161】
端子部53は、コネクティングバー13側に位置する。端子部53の基端部はコネクティングバー13に連結されている。端子部53は、端子部表面53aを有する。端子部53の裏面には、上述した外部端子17が形成されている。端子部53は、ハーフエッチングされることなく、ダイパッド11と同一の厚みを有している。なお、リード部12のうち、端子部53よりもコネクティングバー13側に位置する部分の裏面が薄肉化され、コネクティングバー13との接続部を構成しても良い。
【0162】
本実施形態において、リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっている。具体的には、リード部12のインナーリード51が裏面側から薄肉化されている。インナーリード51の裏面側に位置するインナーリード裏面51bは、その全域が粗面となっている。一方、リード部12の裏面のうち、薄肉化されていない部分は平滑面となっている。具体的には、リード部12の端子部53は裏面側から薄肉化されていない。端子部53の裏面側に位置する外部端子17は、その全域が平滑面となっている。
【0163】
さらにリード部12のインナーリード先端面51cは、その全域が粗面となっている。また、図示していないが、リード部12の長手方向に沿う両側面も粗面となっていても良い。一方、リード部12のインナーリード51は表面側から薄肉化されていない。またリード部12の端子部53は表面側から薄肉化されていない。
【0164】
インナーリード51のインナーリード表面51aと、端子部53の端子部表面53aとにより、リード表面12aが構成されている。リード表面12aは、ハーフエッチング等により表面側から薄肉化されていない領域である。リード表面12aには、平滑面の領域であるリード平滑面領域12eと、粗面の領域であるリード粗面領域12fとが形成されている。
【0165】
各リード部12のリード表面12aには、それぞれ1つのリード平滑面領域12eが形成されている。各リード部12のリード表面12aには、それぞれ複数のリード平滑面領域12eが形成されていても良い。リード平滑面領域12eは、それぞれ対応するバンプ26に接続される(
図12参照)。また、1つのリード平滑面領域12eに複数のバンプ26が配置されても良い。この場合、各リード部12上のリード平滑面領域12eの個数は、当該リード部12に接続されるバンプ26の個数より少なくても良い。
【0166】
リード平滑面領域12eの周囲には、リード粗面領域12fが存在する。リード粗面領域12fはリード平滑面領域12eよりも粗い(S-ratioが大きい)。
図10(b)に示すように、リード粗面領域12fは、平面視で、各リード平滑面領域12eの全周を取り囲むように形成される。すなわち、リード平滑面領域12eは、リード部12の周縁12gに直接接することがない。またリード粗面領域12fは、平面視でリード部12の周縁12gの全域に沿って形成されている。ここで、リード部12の周縁12gとは、
図8に示すように、リード部12の複数(3つ)の辺と、コネクティングバー13とによって取り囲まれる領域をいう。またリード表面12aのうち、リード平滑面領域12e以外の領域は全てリード粗面領域12fとなっていても良い。すなわち、リード表面12aは、リード平滑面領域12eと、それ以外のリード粗面領域12fと、のみによって構成されていても良い。
【0167】
図10(b)に示すように、リード平滑面領域12eは、平面視で円形であっても良い。リード平滑面領域12eの形状は、上述したダイパッド平滑面領域11eと同一であっても良く、異なっていても良い。またリード平滑面領域12eは、平面視でバンプ26(仮想線)よりも大きいことが好ましい。リード平滑面領域12eの幅(直径)D2は、0.030mm以上としても良く、0.035mm以上としても良い。幅(直径)D2は、0.070mm以下としても良く、0.065mm以下としても良い。バンプ26をリード平滑面領域12eの中心に配置したとき、バンプ26の周縁とリード平滑面領域12eの周縁との最短距離d2は、0.005mm以上としても良く、0.010mm以上としても良い。最短距離d2は、0.020mm以下としても良く、0.015mm以下としても良い。リード平滑面領域12eと、リード部12の周縁12gとの最短距離L2は、0.025mm以上としても良く、0.030mm以上としても良い。最短距離L2は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。リード平滑面領域12eが平面視で円形であることにより、円形のバンプ26をダイパッド平滑面領域11eに対して位置決めしやすくなっている。
【0168】
以上説明したリードフレーム10は、全体として銅、銅合金、42合金(Ni42%のFe合金)等の金属から構成されている。また、リードフレーム10のうち薄肉化されていない部分の厚みは、製造する半導体装置20の構成にもよるが、80μm以上300μm以下としても良い。
【0169】
なお、本実施形態において、リード部12は、パッケージ領域10aの4辺全てに沿って配置されているが、これに限られるものではなく、例えばパッケージ領域10aの対向する2辺のみに沿って配置されていても良い。
【0170】
(半導体装置の構成)
次に、
図11乃至
図13により、本実施形態による半導体装置について説明する。
図11乃至
図13は、本実施形態による半導体装置(フリップチップタイプ)を示す図である。
【0171】
図11及び
図12に示すように、半導体装置(半導体パッケージ)20は、ダイパッド11と、半導体素子21と、複数のリード部12と、複数のバンプ26と、封止樹脂23とを備えている。
【0172】
このうち半導体素子21は、ダイパッド11及びリード部12上に搭載されている。複数のバンプ26は、それぞれ半導体素子21と、ダイパッド11又はリード部12とを電気的に接続する。この場合、バンプ26は接続部を構成する。またバンプ26は、ピラーであっても良い。封止樹脂23は、ダイパッド11、リード部12、半導体素子21及びバンプ26を樹脂封止する。
【0173】
ダイパッド11及びリード部12は、上述したリードフレーム10から作製されたものである。この場合、リード部12のインナーリード51は、裏面側から薄肉化されている。インナーリード51のインナーリード裏面51bは粗面となっている。インナーリード裏面51bには、封止樹脂23が密着している。リード部12の端子部53は、裏面側から薄肉化されていない。端子部53の裏面に位置する外部端子17は平滑面となっている。外部端子17は、封止樹脂23から外方に露出している。
【0174】
ダイパッド11及びリード部12上には、それぞれバンプ26が設けられている。ダイパッド11上のバンプ26は、ダイパッド平滑面領域11eに設けられている。バンプ26は、ダイパッド粗面領域11fから最短距離d1だけ離間して設けられている。リード部12上のバンプ26は、リード平滑面領域12eに設けられている。バンプ26は、リード粗面領域12fから最短距離d2だけ離間して設けられている。バンプ26を介して、半導体素子21と、ダイパッド11及びリード部12とが互いに電気的に接続されている。
【0175】
半導体素子21としては、従来一般に用いられている各種半導体素子を使用することが可能であり、特に限定されないが、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等を用いることができる。この半導体素子21は、各々バンプ26が取り付けられる複数の電極21aを有している。
【0176】
封止樹脂23としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいはPPS樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。封止樹脂23全体の厚みは、300μm以上1500μm以下程度としても良い。また、封止樹脂23の一辺(半導体装置20の一辺)は、例えば0.2mm以上20mm以下としても良く、0.2mm以上16mm以下としても良い。なお、
図11において、封止樹脂23のうち、リード部12及び半導体素子21よりも表面側に位置する部分の表示を省略している。
【0177】
バンプ(接続部)26は、例えば銅等の導電性の良い金属材料からなり、中実の略円柱形状又は略球形状を有していても良い。バンプ26は、それぞれその上端が半導体素子21の電極21aに接続されるとともに、その下端がダイパッド平滑面領域11e又はリード平滑面領域12eにそれぞれ接続されている。バンプ26の幅(直径)は、0.01mm以上0.070mm以下としても良い。なお、ダイパッド11には必ずしもバンプ26が設けられていなくても良い。この場合、ダイパッド11と半導体素子21とは、例えばダイボンディングペースト等の接着剤により互いに固定されても良い。
【0178】
図13(a)、(b)は、バンプ26の周辺を示す拡大断面図である。
図13(a)に示すように、バンプ26は、単一の層から構成されていても良い。この場合、バンプ26は、例えば銅等の金属層を含んでも良い。バンプ26は、ダイパッド11及びリード部12に含まれる主たる金属(例えば銅)と同一の金属から構成されても良い。バンプ26の高さは、30μm以上110μm以下としても良い。
【0179】
あるいは、
図13(b)に示すように、バンプ26は、複数の層を含んでいても良い。例えば、バンプ26は、ダイパッド11側又はリード部12側に位置する第1層26aと、半導体素子21側に位置する第2層26bとを含む。第1層26aは、例えば錫等の金属を含んでも良い。第1層26aの高さは、1μm以上10μm以下としても良い。第2層26bは、例えば銅等の金属を含んでも良い。第2層26bの高さは、30μm以上100μm以下としても良い。
【0180】
このほか、ダイパッド11及びリード部12の構成は、半導体装置20に含まれない領域を除き、上述した
図8乃至
図10に示すものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0181】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図8及び
図9に示すリードフレーム10の製造方法について、
図14(a)-(i)を用いて説明する。
図14(a)-(i)は、リードフレーム10の製造方法を示す断面図(
図9に対応する図)である。
【0182】
まず
図14(a)に示すように、平板状の金属基板31を準備する。この金属基板31としては、銅、銅合金、42合金(Ni42%のFe合金)等の金属からなる基板を使用できる。なお金属基板31は、その両面に対して脱脂等を行い、洗浄処理を施したものを使用することが好ましい。
【0183】
次に、金属基板31の表裏全体にそれぞれ感光性レジスト32a、33aを塗布し、これを乾燥する(
図14(b))。なお感光性レジスト32a、33aとしては、従来公知のものを使用できる。
【0184】
続いて、この金属基板31に対してフォトマスクを介して露光し、現像することにより、所望の開口部32b、33bを有するエッチング用レジスト層32、33を形成する(
図14(c))。
【0185】
次に、エッチング用レジスト層32、33を耐腐蝕膜として金属基板31に腐蝕液でエッチングを施す(
図14(d))。なお、腐蝕液は、使用する金属基板31の材質に応じて適宜選択できる。例えば、金属基板31として銅を用いる場合、通常、腐蝕液として塩化第二鉄水溶液を用い、金属基板31の両面からスプレーエッチングを行っても良い。これにより、ダイパッド11、リード部12及びコネクティングバー13の外形が形成される。このとき、リード部12は、ハーフエッチングにより裏面側から一部が薄肉化される。具体的には、リード部12のインナーリード51の裏面が薄肉化される。
【0186】
次いで、エッチング用レジスト層32、33を剥離して除去する(
図14(e))。このようにして、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12とを有する金属基板31が得られる。
【0187】
次に、金属基板31の一部にめっき層36を形成する(
図14(f))。このとき、まず金属基板31の表面に所定のパターンの開口を有するゴムパッキン等の弾性部材46を配置する。なお弾性部材46の開口は、ダイパッド平滑面領域11e及びリード平滑面領域12eに対応する形状を有する。次に、弾性部材46を介して金属基板31の表面を冶具47によって押さえる。冶具47は、弾性部材46と同様のパターンの開口を有する。次いで、金属基板31の表面のうち、弾性部材46及び冶具47に覆われていない部分にめっき層36を形成する。これにより、ダイパッド11のダイパッド平滑面領域11eに対応する部分と、リード部12のリード平滑面領域12eに対応する部分とに、めっき層36が形成される。めっき層36の厚みは、0μm超2μm以下としても良い。めっき層36を構成する金属としては、例えば銀を用いてもよい。めっき層36が銀めっきからなる場合、電解めっき用めっき液としては、シアン化銀及びシアン化カリウムを主成分とした銀めっき液を用いることができる。
【0188】
続いて、弾性部材46及び冶具47を除去する。また金属基板31の裏面側に、金属基板31を支持する支持層37を設ける(
図14(g))。支持層37は、例えばレジスト層であっても良い。
【0189】
次に、
図14(h)に示すように、金属基板31のうちめっき層36及び支持層37に覆われていない部分を粗化することにより、当該部分に粗面を形成する。具体的には、金属基板31にダイパッド粗面領域11f及びリード粗面領域12fがそれぞれ形成される。さらに、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが粗面とされる。この間、金属基板31に対してマイクロエッチング液を供給することにより、めっき層36及び支持層37で覆われている部分を除き、金属基板31の全体に粗面を形成する。ここでマイクロエッチング液とは、金属表面を僅かに溶かし、微細な凹凸の粗面を形成する表面処理剤である。例えば銅又は銅合金からなる金属基板31を粗面化する場合、過酸化水素水と硫酸を主成分とするマイクロエッチング液を用いても良い。
【0190】
次いで、
図14(i)に示すように、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去することにより、
図8及び
図9に示すリードフレーム10が得られる。
【0191】
(半導体装置の製造方法)
次に、
図11及び
図12に示す半導体装置20の製造方法について、
図15(a)-(d)を用いて説明する。
図15(a)-(d)は、半導体装置20の製造方法を示す断面図(
図12に対応する図)である。
【0192】
まず、例えば
図14(a)-(i)に示す方法により、リードフレーム10を作製する(
図15(a))。
【0193】
次に、リードフレーム10のダイパッド11及びリード部12上に、半導体素子21を搭載する。この場合、予め半導体素子21の電極21aにそれぞれバンプ26を形成しておく。次いで、このバンプ26をダイパッド11及びリード部12にそれぞれ接続して固定する(
図15(b))。このとき、半導体素子21の各電極21aと、ダイパッド11及びリード部12とが、それぞれバンプ26を介して互いに電気的に接続される。ダイパッド11上のバンプ26は、ダイパッド平滑面領域11eに接続される。このときバンプ26は、ダイパッド粗面領域11fから離間して設けられる。またリード部12上のバンプ26は、リード平滑面領域12eに接続される。このときバンプ26は、リード粗面領域12fから離間して設けられる。
【0194】
次に、リードフレーム10に対して熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を射出成形又はトランスファ成形することにより、封止樹脂23を形成する(
図15(c))。これにより、ダイパッド11、リード部12、半導体素子21及びバンプ26を樹脂封止する。
【0195】
その後、パッケージ領域10a毎に、リードフレーム10及び封止樹脂23を切断する。これにより、リードフレーム10が半導体装置20毎に分離され、
図11及び
図12に示す半導体装置20が得られる(
図15(d))。
【0196】
ところで、このようにして作製された半導体装置20を長期間使用している間、空気中の水分等が、半導体装置20の側面側又は裏面側から、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面を介して侵入することが考えられる。
【0197】
これに対して本実施形態によれば、ダイパッド平滑面領域11eの全周を取り囲むようにダイパッド粗面領域11fが存在する。同様に、リード平滑面領域12eの全周を取り囲むようにリード粗面領域12fが存在する。このため、バンプ26の外側で、ダイパッド表面11a又はリード表面12aと封止樹脂23との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、ダイパッド表面11a又はリード表面12aと封止樹脂23との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えられる(
図16の矢印F
A参照)。この結果、長期間の使用後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0198】
また本実施形態によれば、ダイパッド表面11aのうち、バンプ26の外側に隣接するダイパッド平滑面領域11eは平滑面となっている。またリード表面12aのうち、バンプ26の外側に隣接するリード平滑面領域12eは平滑面となっている。
【0199】
これにより、バンプ26が銅等の単一の金属層から構成される場合(
図13(a)参照)、以下のような効果が得られる。すなわちダイパッド11及びリード部12上に半導体素子21を搭載する際、バンプ26とダイパッド11及びリード部12との密着性を高めることができる。他方、仮にバンプ26を接続するダイパッド11及びリード部12の面が粗面であると、粗面に形成された酸化膜(例えば酸化銅)の影響により、バンプ26と粗面との接触面積が狭くなる。この場合、バンプ26とダイパッド11及びリード部12との接合強度が弱くなるおそれがある。
【0200】
またバンプ26が錫等の金属を含む場合(
図13(b)参照)、以下のような効果が得られる。すなわちダイパッド11及びリード部12上に半導体素子21を搭載する際、バンプ26に含まれる錫等が粗面を伝わって流れ出すことを抑制できる。他方、仮にバンプ26の外側に隣接する部分が粗面であると、表面張力により、バンプ26に含まれる錫等が粗面を伝わって流れ出てしまうおそれがある。
【0201】
また、本実施形態によれば、ダイパッド粗面領域11fは、平面視でダイパッド11の周縁11gの全域に沿って形成されている。またリード粗面領域12fは、平面視でリード部12の周縁12gの全域に沿って形成されている。これにより、ダイパッド表面11a又はリード表面12aと封止樹脂23との界面から半導体素子21側に水分が侵入することをより効果的に抑制できる。
【0202】
また本実施形態によれば、リード部12のインナーリード裏面51bとインナーリード先端面51cとが粗面となっている。また、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dがそれぞれ粗面となっている。このため、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図16の矢印F
B参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0203】
とりわけ、フリップチップタイプの半導体装置20においては、半導体素子21の電極21aが裏面側を向いている。このため、フリップチップタイプの半導体装置20においては、半導体装置20の裏面から半導体素子21の電極21aまでの距離が短くなりやすい。これに対して本実施形態によれば、リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分が粗面となっている。これにより、封止樹脂23とリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することをより効果的に抑えることができる。
【0204】
また、本実施形態によれば、リード部12のインナーリード裏面51bとインナーリード先端面51cとが粗面となっている。また、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dがそれぞれ粗面となっている。これにより、ダイパッド11及びリード部12と封止樹脂23との密着強度を高め、ダイパッド11及びリード部12と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0205】
(変形例)
次に、
図17(a)-(d)により、ダイパッド平滑面領域11e及びリード平滑面領域12eの変形例について説明する。
図17(a)-(d)は、それぞれダイパッド平滑面領域11e及びリード平滑面領域12e(以下、単に平滑面領域11e、12eともいう)と、ダイパッド粗面領域11f及びリード粗面領域12f(以下、単に粗面領域11f、12fともいう)を示す拡大平面図である。
【0206】
図17(a)に示すように、平滑面領域11e、12eは、平面視で正方形又は長方形であっても良い。平滑面領域11e、12eの幅(各辺の長さ)D3は、0.030mm以上としても良く、0.035mm以上としても良い。幅D3は、0.070mm以下としても良く、0.065mm以下としても良い。またバンプ26を平滑面領域11e、12eの中心に配置したとき、バンプ26の周縁と平滑面領域11e、12eの周縁との最短距離d3は、0.005mm以上としても良く、0.010mm以上としても良い。最短距離d3は、0.020mm以下としても良く、0.015mm以下としても良い。また平滑面領域11e、12eと、ダイパッド11の周縁11g又はリード部12の周縁12gとの最短距離L3は、0.025mm以上としても良く、0.030mm以上としても良い。最短距離L3は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eが平面視で正方形又は長方形であることにより、バンプ26の周縁と平滑面領域11e、12eの周縁との最短距離(間隔)d3を十分確保できる。
【0207】
図17(b)に示すように、平滑面領域11e、12eは、平面視で正方形又は長方形であり、1つの平滑面領域11e、12eに複数のバンプ26が配置されても良い。平滑面領域11e、12eの長辺の長さD4aは、0.045mm以上としても良く、0.065mm以上としても良い。長さD4aは、0.12mm以下としても良く、0.10mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eの短辺の長さD4bは、0.030mm以上としても良く、0.035mm以上としても良い。長さD4bは、0.070mm以下としても良く、0.065mm以下としても良い。また各バンプ26を平滑面領域11e、12eの短辺方向の中心に配置したとき、バンプ26の周縁と平滑面領域11e、12eの周縁との短辺方向の最短距離d4は、0.005mm以上としても良く、0.010mm以上としても良い。最短距離d4は、0.020mm以下としても良く、0.015mm以下としても良い。また平滑面領域11e、12eと、ダイパッド11の周縁11g又はリード部12の周縁12gとの最短距離L4は、0.025mm以上としても良く、0.030mm以上としても良い。最短距離L4は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eが平面視で正方形又は長方形であることにより、バンプ26の周縁と平滑面領域11e、12eの周縁との最短距離(間隔)d4を十分確保できる。また、各平滑面領域11e、12eに、互いに隣接する2つ以上のバンプ26を設置できる。
【0208】
図17(c)に示すように、平滑面領域11e、12eは、平面視で楕円又は長円であり、1つの平滑面領域11e、12eに複数のバンプ26が配置されても良い。平滑面領域11e、12eの長手方向の長さD5aは、0.045mm以上としても良く、0.065mm以上としても良い。長さD5aは、0.12mm以下としても良く、0.10mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eの短手方向の長さD5bは、0.030mm以上としても良く、0.035mm以上としても良い。長さD5bは、0.070mm以下としても良く、0.065mm以下としても良い。また各バンプ26を平滑面領域11e、12eの短手方向の中心に配置したとき、バンプ26の周縁と平滑面領域11e、12eの周縁との最短距離d5は、0.005mm以上としても良く、0.010mm以上としても良い。最短距離d5は、0.020mm以下としても良く、0.015mm以下としても良い。また平滑面領域11e、12eと、ダイパッド11の周縁11g又はリード部12の周縁12gとの最短距離L5は、0.025mm以上としても良く、0.030mm以上としても良い。最短距離L5は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eが平面視で楕円又は長円であることにより、各平滑面領域11e、12eに、互いに隣接する2つ以上のバンプ26を設置できる。
【0209】
図17(d)に示すように、平滑面領域11e、12eの周縁は、平面視で曲線Cvと線分Lsとを含む閉じた図形であっても良い。平滑面領域11e、12eは、円又は楕円の一部を除去した図形、例えば半円又は半楕円であっても良い。平滑面領域11e、12eの周縁を構成する線分Lsは、ダイパッド11の周縁11g又はリード部12の周縁12gに対して平行であっても良い。平滑面領域11e、12eの、線分Lsに直交する方向の長さD6aは、0.030mm以上としても良く、0.050mm以上としても良い。長さD6aは、0.12mm以下としても良く、0.10mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eの、線分Lsに平行な方向の長さD6bは、0.030mm以上としても良く、0.035mm以上としても良い。長さD6bは、0.070mm以下としても良く、0.065mm以下としても良い。また各バンプ26を平滑面領域11e、12eの線分Lsに平行な方向及び直交する方向の中心に配置したとき、バンプ26の周縁と平滑面領域11e、12eの周縁との最短距離d6は、0.005mm以上としても良く、0.010mm以上としても良い。最短距離d6は、0.020mm以下としても良く、0.015mm以下としても良い。また平滑面領域11e、12eと、ダイパッド11の周縁11g又はリード部12の周縁12gとの最短距離L6は、0.025mm以上としても良く、0.030mm以上としても良い。最短距離L6は、1.0mm以下としても良く、0.50mm以下としても良い。平滑面領域11e、12eが平面視で曲線Cvと線分Lsとを含む閉じた図形であることにより、平滑面領域11e、12eと、ダイパッド11の周縁11g又はリード部12の周縁12gとの最短距離L6を一定以上確保できる。
【0210】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態について、
図18乃至
図25を参照して説明する。
図18乃至
図25は、第3の実施形態を示す図である。
図18乃至
図25において、
図8乃至
図17に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0211】
(リードフレームの構成)
まず、
図18及び
図19により、本実施形態によるリードフレームの概略について説明する。
図18及び
図19は、本実施形態によるリードフレームを示す図である。
【0212】
本明細書中、「外周」とは、リードフレーム10(金属基板)のうち外側に露出する部分であり、「表面」、「側面」及び「裏面」を含む領域をいう。
【0213】
図18及び
図19に示すように、リードフレーム10の各パッケージ領域10aは、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12と、を備えている。このうちリード部12は、裏面側から一部が薄肉化されている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されていない部分は平滑面となっている。
【0214】
図19に示すように、ダイパッド11は、表面側に位置するダイパッド表面11aと、裏面側に位置するダイパッド裏面11bとを有している。この場合、ダイパッド11のうちダイパッド表面11aと第1ダイパッド側面11cと第2ダイパッド側面11dとはそれぞれ粗面となっている。一方、ダイパッド11のうちダイパッド裏面11bは平滑面となっている。
【0215】
図19に示すように、リード部12は、インナーリード51と端子部53とを有している。インナーリード51は、内側(ダイパッド11側)に位置する。端子部53は、外側(コネクティングバー13側)に位置する。インナーリード51は、端子部53からダイパッド11側に延びている。インナーリード51の表面側の先端部には内部端子が形成される。この内部端子は、後述するようにバンプ26を介して半導体素子21に電気的に接続される領域である。
【0216】
インナーリード51は、裏面側から例えばハーフエッチングにより薄肉化されている。インナーリード51は、インナーリード表面51aと、インナーリード裏面51bとを有している。インナーリード表面51aは表面側に位置する。インナーリード表面51aの一部には、内部端子が形成される。また、インナーリード51のうちダイパッド11を向く面には、インナーリード先端面51cが形成されている。インナーリード裏面51bは裏面側に位置する。
【0217】
リード部12のインナーリード先端面51cは、その全域が粗面となっている。また、図示していないが、リード部12の長手方向に沿う両側面も粗面となっていても良い。一方、リード部12のインナーリード51は表面側から薄肉化されていない。インナーリード51の表面側に位置するインナーリード表面51aは、その全域が粗面となっている。またリード部12の端子部53は表面側から薄肉化されていない。端子部53の表面側に位置する端子部表面53aは、その全域が粗面となっている。
【0218】
このほか、本実施形態によるリードフレーム10の構成は、第2の実施形態によるリードフレーム10の構成と同様としても良い。
【0219】
本実施形態において、「粗面」及び「平滑面」の定義及び測定方法は、第2の実施形態の場合と同様である。
【0220】
(半導体装置の構成)次に、
図20乃至
図22により、本実施形態による半導体装置について説明する。
図20乃至
図22は、本実施形態による半導体装置(フリップチップタイプ)を示す図である。
【0221】
図20及び
図21に示すように、半導体装置(半導体パッケージ)20は、ダイパッド11と、半導体素子21と、複数のリード部12と、複数のバンプ26と、封止樹脂23とを備えている。
【0222】
このうち半導体素子21は、ダイパッド11上に搭載されている。また複数のリード部12は、ダイパッド11の周囲に配置されている。複数のバンプ26は、それぞれ半導体素子21と、ダイパッド11又はリード部12とを電気的に接続する。この場合、バンプ26は接続部を構成する。またバンプ26は、ピラーであっても良い。封止樹脂23は、ダイパッド11、リード部12、半導体素子21及びバンプ26を樹脂封止する。
【0223】
ダイパッド11及びリード部12上にはバンプ26が設けられている。このバンプ26を介して、半導体素子21と、ダイパッド11及びリード部12とが互いに電気的に接続されている。
【0224】
バンプ(接続部)26は、例えば銅等の導電性の良い金属材料からなり、中実の略円柱形状又は略球形状を有していても良い。バンプ26は、それぞれその上端が半導体素子21の電極21aに接続されるとともに、その下端がダイパッド11及びリード部12にそれぞれ接続されている。なお、ダイパッド11には必ずしもバンプ26が設けられていなくても良い。この場合、ダイパッド11と半導体素子21とは、例えばダイボンディングペースト等の接着剤により互いに固定されても良い。
【0225】
図22は、バンプ26の周辺を示す拡大断面図である。
図22に示すように、バンプ26は、複数の層を含んでいても良い。例えば、バンプ26は、ダイパッド11又はリード部12側に位置する第1層26aと、半導体素子21側に位置する第2層26bとを含む。第1層26aは、例えば錫等の金属を含んでも良い。第1層26aの高さは、1μm以上10μm以下としても良い。第2層26bは、例えば銅等の金属を含んでも良い。第2層26bの高さは、30μm以上100μm以下としても良い。
【0226】
なお、半導体装置20としては、フリップチップタイプのものには限られない。バンプ26に代えて、例えばボンディングワイヤが接続部を構成しても良い。この場合、ボンディングワイヤが、半導体素子21とリード部12とを互いに電気的に接続しても良い。
【0227】
このほか、本実施形態による半導体装置20の構成は、第2の実施形態による半導体装置20の構成と同様としても良い。
【0228】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図18及び
図19に示すリードフレーム10の製造方法について、
図23(a)-(i)を用いて説明する。
図23(a)-(i)は、リードフレーム10の製造方法を示す断面図(
図19に対応する図)である。
【0229】
まず第2の実施形態(
図14(a)-(e))の場合と同様にして、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12とを有する金属基板31を作製する(
図23(a)-(e))。
【0230】
次に、金属基板31の外周の一部にめっき層36を形成する(
図23(f))。このとき、金属基板31のうち、表面の全域を除く外周領域にめっき層36が形成される。すなわち、めっき層36は、金属基板31の表面全域には形成されず、金属基板31の裏面全域及び側面全域に形成される。より具体的には、めっき層36は、ダイパッド11のダイパッド表面11aと、リード部12のインナーリード表面51a及び端子部表面53aには形成されない。一方、めっき層36は、ダイパッド11のダイパッド裏面11b、第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dに形成される。また、めっき層36は、リード部12の外部端子17、インナーリード裏面51b及びインナーリード先端面51cに形成される。なお、めっき層36は、コネクティングバー13の表面に形成されなくても良い。めっき層36は、コネクティングバー13の裏面に形成されても良い。
【0231】
この際、
図23(f)に示すように、金属基板31の表面の全域をゴムパッキン等の弾性部材44を介して第1の治具45で覆う。この状態で金属基板31に対して電解めっきを施すことにより、金属基板31のうち、表面の全域を除く領域にめっき層36が形成される。めっき層36の厚みは、0μm超2μm以下としても良い。めっき層36を構成する金属としては、例えば銀を用いてもよい。めっき層36が銀めっきからなる場合、電解めっき用めっき液としては、シアン化銀及びシアン化カリウムを主成分とした銀めっき液を用いることができる。このように、めっき層36が金属基板31の表面全域に形成されないことにより、めっき層36を構成する銀等の金属の使用量を削減できる。これにより、リードフレーム10の製造コストを低減できる。
【0232】
続いて、粗面を形成する領域に存在する一部のめっき層36を除去する。具体的には、金属基板31の少なくとも裏面に存在するめっき層36を残し、他のめっき層36を除去する(
図23(g))。具体的には、めっき層36のうち、金属基板31の側面に存在する部分を除去する。これにより、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c上及び第2ダイパッド側面11d上のめっき層36が除去される。また、リード部12のインナーリード先端面51c上及びインナーリード裏面51b上のめっき層36が除去される。
【0233】
この間、
図23(g)に示すように、まず金属基板31の裏面にゴムパッキン等の弾性部材46を配置し、弾性部材46を介して金属基板31の裏面側に第2の冶具47Aを配置する。次いで、弾性部材46に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去する。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが露出する。一方、弾性部材46に覆われたダイパッド裏面11b及び外部端子17上のめっき層36は残存する。
【0234】
次に、
図23(h)に示すように、金属基板31の裏面側に、金属基板31を支持する支持層37を設ける。支持層37は、例えばレジスト層であっても良い。続いて
図23(h)に示すように、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する。具体的には、ダイパッド表面11a、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード表面51a、端子部表面53a、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bがそれぞれ粗面とされる。この間、金属基板31に対してマイクロエッチング液を供給することにより、めっき層36で覆われている部分を除き、金属基板31の全体に粗面を形成する。ここでマイクロエッチング液とは、金属表面を僅かに溶かし、微細な凹凸の粗面を形成する表面処理剤である。例えば銅又は銅合金からなる金属基板31を粗面化する場合、過酸化水素水と硫酸を主成分とするマイクロエッチング液を用いても良い。
【0235】
次いで、
図23(i)に示すように、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去することにより、
図18及び
図19に示すリードフレーム10が得られる。
【0236】
(半導体装置の製造方法)
図24(a)-(d)に示すように、本実施形態による半導体装置20の製造方法は、第2の実施形態による半導体装置20の製造方法と略同様にして行うことができる。この場合、半導体素子21の各電極21aは、それぞれバンプ26を介して、ダイパッド11及びリード部12に電気的に接続される。
【0237】
このように本実施形態によれば、金属基板31のうち、表面を除く領域にめっき層36を形成する(
図24(f))。次に、金属基板31の裏面に存在するめっき層36を残し、他のめっき層36を除去する(
図24(g))。その後、金属基板31のうち、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する(
図24(h))。このように、粗面を形成するためのめっき層36を金属基板31の全面に設けることなく、金属基板31のうち表面を除く領域に設けている。これにより、めっき層36を構成する銀等の金属の使用量を削減できる。この結果、リードフレーム10の製造コストを低減できる。
【0238】
ところで、このようにして作製された半導体装置20を長期間使用している間、空気中の水分等が、半導体装置20の裏面側から封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面を介して侵入することが考えられる。これに対して本実施形態によれば、リード部12のインナーリード裏面51bとインナーリード先端面51cとが粗面となっている。また、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dがそれぞれ粗面となっている。このため、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図25の矢印F
A参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0239】
(第4の実施形態)
次に、
図26乃至
図29を参照して第4の実施形態について説明する。
図26乃至
図29は第4の実施形態を示す図である。
図26乃至
図29に示す第4の実施形態は、主として、ダイパッド11及びリード部12の表面に金属層25が設けられている点が異なるものであり、他の構成は上述した第3の実施形態と略同一である。
図26乃至
図29において、
図8乃至
図17に示す第2の実施形態、及び、
図18乃至
図25に示す第3の実施形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0240】
(リードフレーム及び半導体装置の構成)
図26は本実施形態によるリードフレーム10Aを示す断面図であり、
図27は本実施形態による半導体装置20Aを示す断面図である。
【0241】
図26に示すリードフレーム10A及び
図27に示す半導体装置20Aにおいて、ダイパッド11の一部上及びリード部12の一部上に、金属層25が位置している。具体的には、ダイパッド11のダイパッド表面11aに、バンプ26との密着性を向上させる金属層25が複数設けられている。またリード部12のインナーリード51に形成された内部端子上に、バンプ26と密着性を向上させる金属層25が設けられている。
【0242】
金属層25は、バンプ26と、ダイパッド11及びリード部12との接続を良好にするためのものである。金属層25は、例えば電解めっき法により形成されためっき層であっても良い。金属層25の厚みは、1μm以上10μm以下としても良い。このようなめっき層を構成する金属としては、銀、銀合金、金、金合金、白金族、銅、銅合金、パラジウムなどを用いてもよい。金属層25を構成する金属によって、下地めっきが必要な場合は、ニッケルや、銅などの公知のものを適用すればよい。
【0243】
図26及び
図27に示すように、リード部12の表面は、平滑面である第1表面部分56aと、粗面である第2表面部分56bとを有する。第1表面部分56aは、リード部12の内側(ダイパッド11側)端部に位置する。第1表面部分56a上には、金属層25が形成される。第1表面部分56aは、その全体が平滑面となっている。なお第1表面部分56aは、インナーリード表面51aの一部に位置している。
【0244】
第2表面部分56bは、第1表面部分56a及び金属層25の外側(ダイパッド11の反対側)に隣接する。第2表面部分56bは、第1表面部分56a及び金属層25に直接接している。この第2表面部分56bは、その全体が粗面となっている。またリードフレーム10Aにおいて、第2表面部分56bは、リード部12とコネクティングバー13との接続部まで連続的に延びていることが好ましい。またコネクティングバー13の表面が粗面となっていてもよい。なお第2表面部分56bは、インナーリード表面51aの一部と端子部表面53aの一部とに位置している。
【0245】
図27に示すように、半導体装置20Aにおいて、バンプ26は、金属層25上に設けられている。バンプ26は、それぞれその上端が半導体素子21の電極21aに接続されるとともに、その下端が金属層25を介してダイパッド11及びリード部12にそれぞれ接続されている。なお、ダイパッド11には必ずしも金属層25及びバンプ26が設けられていなくても良い。
【0246】
本実施形態において、「粗面」及び「平滑面」の定義及び測定方法は、第2の実施形態の場合と同様である。
【0247】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図26に示すリードフレーム10Aの製造方法について、
図28(a)-(j)を用いて説明する。
図28(a)-(j)において、
図23(a)-(i)に示す構成と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0248】
まず、第2の実施形態(
図14(a)-(e))の場合と同様にして、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12とを有する金属基板31を作製する(
図28(a)-(e))。
【0249】
次に、金属基板31のうち、表面の一部を除く領域にめっき層36を形成する(
図28(f))。このとき、めっき層36は、金属基板31の表面の一部と、裏面全域と、側面全域とに形成される。また、めっき層36は、ダイパッド11の表面の一部と、リード部12の表面の一部とに形成される。より具体的には、めっき層36は、ダイパッド11のダイパッド表面11aのうち金属層25を形成する領域に形成され、金属層25を形成する領域以外には形成されない。まためっき層36は、ダイパッド11のダイパッド裏面11b、第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dに形成される。まためっき層36は、リード部12の第1表面部分56a、外部端子17、インナーリード裏面51b及びインナーリード先端面51cに形成される。一方、めっき層36は、リード部12の第2表面部分56bには形成されない。なお、めっき層36は、コネクティングバー13の表面に形成されなくても良く、コネクティングバー13の裏面に形成されても良い。
【0250】
この際、
図28(f)に示すように、金属基板31の表面の一部をゴムパッキン等の弾性部材44Aを介して第1の治具45Aで覆う。この状態で金属基板31に対して電解めっきを施すことにより、金属基板31のうち、表面の一部を除く領域にめっき層36が形成される。このように、めっき層36を金属基板31の表面の一部に形成しないことにより、めっき層36を構成する銀等の金属の使用量を削減できる。これにより、リードフレーム10Aの製造コストを低減できる。なお、めっき層36の材料及び厚みは、第3の実施形態の場合と同様にすることができる。
【0251】
次いで、粗面を形成する領域に存在する一部のめっき層36を除去する(
図28(g))。このとき、金属基板31の表面の一部及び裏面に存在するめっき層36を残し、他のめっき層36を除去する。具体的には、めっき層36のうち、金属基板31の第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bに対応する部分を除去する。
【0252】
この間、
図28(g)に示すように、まず金属基板31の表面及び裏面にそれぞれ弾性部材46を配置し、ゴムパッキン等の弾性部材46を介して金属基板31を第2の冶具47Bによって挟む。なお、金属基板31の表面側の弾性部材46は、金属基板31の表面側全域を覆う。次いで、弾性部材46に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去する。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが露出する。一方、弾性部材46に覆われたダイパッド表面11a、ダイパッド裏面11b、第1表面部分56a及び外部端子17上のめっき層36は残存する。
【0253】
続いて、上述した
図23(h)に示す工程と略同様にして、金属基板31の裏面側に支持層37を設ける。次に、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する(
図28(h))。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第2表面部分56b、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが粗面となる。
【0254】
次いで、
図23(i)に示す工程と略同様にして、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去する(
図28(i))。
【0255】
その後、
図28(j)に示すように、金属基板31の表面の一部上に金属層25を形成する。具体的には、ダイパッド11の一部上及びリード部12の一部上に金属層25を形成する。この場合、まずダイパッド11及びリード部12上に、例えばフォトリソグラフィ法により図示しない所定パターンのめっき用レジスト層を形成する。次にこのめっき用レジスト層に覆われていない箇所に、例えば電解めっき法によりめっき層からなる金属層25を形成する。その後、めっき用レジスト層を除去することにより、
図26に示すリードフレーム10Aが得られる。
【0256】
(半導体装置の製造方法)本実施形態による半導体装置20Aの製造方法は、
図24(a)-(d)に示す半導体装置20の製造方法と略同様にして行うことができる。この場合、半導体素子21の各電極21aは、それぞれバンプ26及び金属層25を介して、ダイパッド11及びリード部12に電気的に接続される。
【0257】
このように本実施形態によれば、金属基板31のうち、表面の一部を除く領域にめっき層36を形成する(
図28(f))。次に、金属基板31の表面の一部及び裏面に存在するめっき層36を残し、他のめっき層36を除去する(
図28(g))。その後、金属基板31のうち、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する(
図28(h))。このように、粗面を形成するためのめっき層36を金属基板31の全面に設けることなく、金属基板31のうち表面の一部を除く領域に設けている。これにより、めっき層36を構成する銀等の金属の使用量を削減できる。この結果、リードフレーム10の製造コストを低減できる。
【0258】
また本実施形態によれば、金属層25の外側に隣接する第2表面部分56bは粗面となっている。このため、リード部12の表面と封止樹脂23との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、リード部12の表面と封止樹脂23との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図29の矢印F
B参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Aの信頼性を向上させることができる。
【0259】
また本実施形態によれば、リード部12の第2表面部分56bは粗面となっている。これにより、第2表面部分56bと封止樹脂23との密着強度を高め、リード部12の表面と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0260】
また本実施形態によれば、半導体装置20Aの裏面側において、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図29の矢印F
A参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Aの信頼性を向上させることができる。
【0261】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について、
図30乃至
図37を参照して説明する。
図30乃至
図37は、第5の実施形態を示す図である。
図30乃至
図37において、
図8乃至
図29に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0262】
(リードフレームの構成)
まず、
図30及び
図31により、本実施形態によるリードフレームの概略について説明する。
図30及び
図31は、本実施形態によるリードフレームを示す図である。
【0263】
本明細書中、「外周」とは、リードフレーム10(金属基板)のうち外側に露出する部分であり、「表面」、「側面」及び「裏面」を含む領域をいう。
【0264】
図30及び
図31に示すように、リードフレーム10の各パッケージ領域10aは、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12と、を備えている。このうちリード部12は、裏面側から一部が薄肉化されている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されていない部分は平滑面となっている。
【0265】
図31に示すように、ダイパッド11は、表面側に位置するダイパッド表面11aと、裏面側に位置するダイパッド裏面11bとを有している。ダイパッド表面11aには、後述するように半導体素子21が搭載される。ダイパッド裏面11bは、半導体装置20(後述)から外方に露出する。また、ダイパッド11のうちリード部12を向く側には、第1ダイパッド側面11cと、第2ダイパッド側面11dとが形成されている。第1ダイパッド側面11cは、ダイパッド表面11a側に位置している。第2ダイパッド側面11dは、ダイパッド裏面11b側に位置している。この場合、ダイパッド11のうち第1ダイパッド側面11cと第2ダイパッド側面11dとはそれぞれ粗面となっている。一方、ダイパッド11のうちダイパッド表面11aとダイパッド裏面11bとはそれぞれ平滑面となっている。
【0266】
本実施形態において、「粗面」及び「平滑面」の定義及び測定方法は、第2の実施形態の場合と同様である。
【0267】
粗面は、後述する金属基板31の外面を、例えば過酸化水素と硫酸を主成分とするマイクロエッチング液で粗面化処理することによって形成されても良い。平滑面は、後述する金属基板31に対してこのような粗面化処理を施さない、未加工の面であっても良い。なお、
図31において、粗面化された部分を太い破線で示している(他の断面図についても同様)。
【0268】
図31に示すように、リード部12は、インナーリード51と端子部53とを有している。インナーリード51は、内側(ダイパッド11側)に位置する。端子部53は、外側(コネクティングバー13側)に位置する。インナーリード51は、端子部53からダイパッド11側に延びている。インナーリード51の表面側の先端部には内部端子が形成される。この内部端子は、後述するようにバンプ26を介して半導体素子21に電気的に接続される領域である。内部端子上には、バンプ26と密着性を向上させる金属層25が設けられている。
【0269】
インナーリード51は、裏面側から例えばハーフエッチングにより薄肉化されている。インナーリード51は、インナーリード表面51aと、インナーリード裏面51bとを有している。インナーリード表面51aは表面側に位置する。インナーリード表面51aの一部には、内部端子が形成される。また、インナーリード51のうちダイパッド11を向く面には、インナーリード先端面51cが形成されている。インナーリード裏面51bは裏面側に位置する。
【0270】
さらにリード部12のインナーリード先端面51cは、その全域が粗面となっている。また、図示していないが、リード部12の長手方向に沿う両側面も粗面となっていても良い。一方、リード部12のインナーリード51は表面側から薄肉化されていない。インナーリード51の表面側に位置するインナーリード表面51aは、その全域が平滑面となっている。またリード部12の端子部53は表面側から薄肉化されていない。端子部53の表面側に位置する端子部表面53aは、その全域が平滑面となっている。
【0271】
また
図31に示すように、ダイパッド11及びリード部12上に、金属層25が位置している。この金属層25は、ダイパッド11の一部上及びリード部12の一部上に形成されている。金属層25は、バンプ26と、ダイパッド11及びリード部12との接続を良好にするためのものである。金属層25は、例えば電解めっき法により形成されためっき層であっても良い。金属層25の厚みは、1μm以上10μm以下としても良い。このようなめっき層を構成する金属としては、銀、銀合金、金、金合金、白金族、銅、銅合金、パラジウムなどを用いてもよい。金属層25を構成する金属によって、下地めっきが必要な場合は、ニッケルや、銅などの公知のものを適用すればよい。
【0272】
このほか、本実施形態によるリードフレーム10の構成は、第2の実施形態によるリードフレーム10の構成と同様としても良い。
【0273】
(半導体装置の構成)
次に、
図32乃至
図34により、本実施形態による半導体装置について説明する。
図32乃至
図34は、本実施形態による半導体装置(フリップチップタイプ)を示す図である。
【0274】
図32及び
図33に示すように、半導体装置(半導体パッケージ)20は、ダイパッド11と、半導体素子21と、複数のリード部12と、複数のバンプ26と、封止樹脂23とを備えている。
【0275】
このうち半導体素子21は、ダイパッド11上に搭載されている。また複数のリード部12は、ダイパッド11の周囲に配置されている。また、ダイパッド11及びリード部12上には、それぞれ金属層25が形成されている。金属層25上にはバンプ26が設けられている。このバンプ26を介して、半導体素子21と、ダイパッド11及びリード部12とが互いに電気的に接続されている。
【0276】
封止樹脂23の一辺(半導体装置20の一辺)は、例えば0.2mm以上16mm以下としても良い。
【0277】
バンプ(接続部)26は、例えば銅等の導電性の良い金属材料からなり、中実の略円柱形状又は略球形状を有していても良い。バンプ26は、それぞれその上端が半導体素子21の電極21aに接続されるとともに、その下端が金属層25を介してダイパッド11及びリード部12にそれぞれ接続されている。なお、ダイパッド11には必ずしも金属層25及びバンプ26が設けられていなくても良い。この場合、ダイパッド11と半導体素子21とは、例えばダイボンディングペースト等の接着剤により互いに固定されても良い。
【0278】
図34は、バンプ26の周辺を示す拡大断面図である。
図34に示すように、バンプ26は、複数の層を含んでいても良い。例えば、バンプ26は、金属層25側に位置する第1層26aと、半導体素子21側に位置する第2層26bとを含む。第1層26aは、例えば錫等の金属を含んでも良い。第1層26aの高さは、1μm以上10μm以下としても良い。第2層26bは、例えば銅等の金属を含んでも良い。第2層26bの高さは、30μm以上100μm以下としても良い。
【0279】
このほか、ダイパッド11及びリード部12の構成は、半導体装置20に含まれない領域を除き、上述した
図30及び
図31に示すものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0280】
なお、半導体装置20としては、フリップチップタイプのものには限られない。バンプ26に代えて、例えばボンディングワイヤが接続部を構成しても良い。この場合、ボンディングワイヤが、半導体素子21とリード部12とを互いに電気的に接続しても良い。
【0281】
このほか、本実施形態による半導体装置20の構成は、第2の実施形態による半導体装置20の構成と同様としても良い。
【0282】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図30及び
図31に示すリードフレーム10の製造方法について、
図35(a)-(j)を用いて説明する。
図35(a)-(j)は、リードフレーム10の製造方法を示す断面図(
図31に対応する図)である。
【0283】
まず第2の実施形態(
図14(a)-(e))の場合と同様にして、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12とを有する金属基板31を作製する(
図35(a)-(e))。
【0284】
次に、金属基板31の周囲にめっき層36を形成する(
図35(f))。このとき、ダイパッド11、リード部12及びコネクティングバー13の全周にめっき層36が形成される。めっき層36の厚みは、0μm超2μm以下としても良い。めっき層36を構成する金属としては、例えば銀を用いてもよい。めっき層36が銀めっきからなる場合、電解めっき用めっき液としては、シアン化銀及びシアン化カリウムを主成分とした銀めっき液を用いることができる。
【0285】
続いて、粗面を形成する領域に存在する一部のめっき層36を除去する。具体的には、めっき層36のうち、金属基板31の表面及び裏面以外に位置する部分を除去する(
図35(g))。これにより、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c、ダイパッド11の第2ダイパッド側面11d、リード部12のインナーリード先端面51c、及び、リード部12のインナーリード裏面51b上のめっき層36が除去される。
【0286】
この間、
図35(g)に示すように、まず金属基板31の表面及び裏面にそれぞれゴムパッキン等の弾性部材46を配置し、弾性部材46を介して金属基板31を冶具47Cによって挟む。次いで、弾性部材46に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去する。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが露出する。一方、弾性部材46に覆われたダイパッド表面11a、端子部表面53a、ダイパッド裏面11b、インナーリード表面51a及び外部端子17上のめっき層36は残存する。
【0287】
次に、
図35(h)に示すように、金属基板31の裏面側に、金属基板31を支持する支持層37を設ける。支持層37は、例えばレジスト層であっても良い。続いて
図35(h)に示すように、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する。具体的には、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが粗面とされる。この間、金属基板31に対してマイクロエッチング液を供給することにより、めっき層36で覆われている部分を除き、金属基板31の全体に粗面を形成する。ここでマイクロエッチング液とは、金属表面を僅かに溶かし、微細な凹凸の粗面を形成する表面処理剤である。例えば銅又は銅合金からなる金属基板31を粗面化する場合、過酸化水素水と硫酸を主成分とするマイクロエッチング液を用いても良い。
【0288】
次いで、
図35(i)に示すように、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去する。
【0289】
その後、
図35(j)に示すように、ダイパッド11及びリード部12上に金属層25を形成する。この場合、まずダイパッド11及びリード部12上に、例えばフォトリソグラフィ法により図示しない所定パターンのめっき用レジスト層を形成する。次にこのめっき用レジスト層に覆われていない箇所に、例えば電解めっき法によりめっき層からなる金属層25を形成する。その後、めっき用レジスト層を除去することにより、
図30及び
図31に示すリードフレーム10が得られる。
【0290】
(半導体装置の製造方法)
図36(a)-(d)に示すように、本実施形態による半導体装置20の製造方法は、第2の実施形態による半導体装置20の製造方法と略同様にして行うことができる。この場合、半導体素子21の各電極21aと、ダイパッド11及びリード部12とが、それぞれバンプ26及び金属層25を介して互いに電気的に接続される。
【0291】
ところで、このようにして作製された半導体装置20を長期間使用している間、空気中の水分等が、半導体装置20の裏面側から封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面を介して侵入することが考えられる。これに対して本実施形態によれば、リード部12のインナーリード裏面51bとインナーリード先端面51cとが粗面となっている。また、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dがそれぞれ粗面となっている。このため、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図37の矢印F
A参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0292】
とりわけ、フリップチップタイプの半導体装置20においては、半導体素子21の電極21aが裏面側を向いている。このため、フリップチップタイプの半導体装置20においては、半導体装置20の裏面から半導体素子21の電極21aまでの距離が短くなりやすい。これに対して本実施形態によれば、リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分が粗面となっている。これにより、封止樹脂23とリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することをより効果的に抑えることができる。
【0293】
また、本実施形態によれば、リード部12のインナーリード裏面51bとインナーリード先端面51cとが粗面となっている。また、ダイパッド11の第1ダイパッド側面11c及び第2ダイパッド側面11dがそれぞれ粗面となっている。これにより、ダイパッド11及びリード部12と封止樹脂23との密着強度を高め、ダイパッド11及びリード部12と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0294】
(第6の実施形態)
次に、
図38乃至
図41を参照して第6の実施形態について説明する。
図38乃至
図41は第6の実施形態を示す図である。
図38乃至
図41に示す第6の実施形態は、主として、リード部12の表面に粗面が形成されている点が異なるものであり、他の構成は上述した第5の実施形態と略同一である。
図38乃至
図41において、
図8乃至
図37に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0295】
(リードフレーム及び半導体装置の構成)
図38は本実施形態によるリードフレーム10Aを示す断面図であり、
図39は本実施形態による半導体装置20Aを示す断面図である。
【0296】
図38に示すリードフレーム10A及び
図39に示す半導体装置20Aにおいて、リード部12の表面は、平滑面である第1表面部分54aと、粗面である第2表面部分54bとを有する。
【0297】
第1表面部分54aは、金属層25の外側(ダイパッド11の反対側)に隣接する。第1表面部分54aは、金属層25に直接接している。この第1表面部分54aは、その全体が平滑面となっている。リード部12の長手方向に沿う第1表面部分54aの長さ(X方向の長さ)LAは、25μm以上200μm以下としても良く、好ましくは50μm以上100μm以下としても良い。なお第1表面部分54aは、インナーリード表面51aの一部に位置しているが、これに限られない。第1表面部分54aは、例えばインナーリード表面51aの一部と端子部表面53aの一部とに位置していても良い。
【0298】
第2表面部分54bは、第1表面部分54aの外側に隣接する。すなわち第2表面部分54bは、第1表面部分54aに直接接している。この第2表面部分54bは、その全体が粗面となっている。またリードフレーム10Aにおいて、第2表面部分54bは、リード部12とコネクティングバー13との接続部まで連続的に延びていることが好ましい。またコネクティングバー13の表面が粗面となっていてもよい。なお第2表面部分54bは、インナーリード表面51aの一部と端子部表面53aの一部とに位置しているが、これに限られない。第2表面部分54bは、端子部表面53aの一部に位置していても良い。
【0299】
本実施形態において、「粗面」及び「平滑面」の定義及び測定方法は、第2の実施形態の場合と同様である。
【0300】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図38に示すリードフレーム10Aの製造方法について、
図40(a)-(j)を用いて説明する。
図40(a)-(j)において、
図35(a)-(j)に示す構成と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0301】
まず第2の実施形態(
図14(a)-(e))の場合と同様にして、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12とを有する金属基板31を作製する(
図40(a)-(e))。
【0302】
次に、上述した
図35(f)に示す工程と略同様にして、金属基板31の全周にめっき層36を形成する(
図40(f))。
【0303】
次いで、めっき層36のうち、金属基板31の第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第2表面部分54b、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bに対応する部分を除去する(
図40(g))。
【0304】
この間、
図40(g)に示すように、まず金属基板31の表面及び裏面にそれぞれゴムパッキン等の弾性部材46を配置し、弾性部材46を介して金属基板31を冶具47Dによって挟む。なお、金属基板31の表面側の弾性部材46は、ダイパッド表面11aと、第1表面部分54aに対応する領域と、リード部12の金属層25が設けられる領域とを覆う。次いで、弾性部材46に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去する。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第2表面部分54b、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが露出する。一方、弾性部材46に覆われたダイパッド表面11a、ダイパッド裏面11b、第1表面部分54a及び外部端子17上のめっき層36は残存する。
【0305】
続いて、上述した
図35(h)に示す工程と略同様にして、金属基板31の裏面側に支持層37を設ける。次に、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する(
図40(h))。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第2表面部分54b、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが粗面となる。
【0306】
次いで、
図35(i)に示す工程と略同様にして、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去する(
図40(i))。
【0307】
その後、上述した
図35(j)に示す工程と略同様にして、ダイパッド11及びリード部12上に金属層25を形成する。このようにして
図38に示すリードフレーム10Aが得られる(
図40(j))。
【0308】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態による半導体装置20Aの製造方法は、
図36(a)-(d)に示す半導体装置20の製造方法と略同様にして行うことができる。
【0309】
本実施形態によれば、リード部12の表面のうち、金属層25の外側に隣接する第1表面部分54aは平滑面となっている。これにより、ダイパッド11上に半導体素子21を搭載する際、バンプ26に含まれる錫等が第1表面部分54aを伝わって流れ出すことを抑制できる(
図41の矢印F
C参照)。他方、仮に第1表面部分54aが粗面であると、表面張力により、バンプ26に含まれる錫等が第1表面部分54aを伝わって流れ出てしまうおそれがある。
【0310】
また本実施形態によれば、第1表面部分54aの外側に隣接する第2表面部分54bは粗面となっている。このため、リード部12の表面と封止樹脂23との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、リード部12の表面と封止樹脂23との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図41の矢印F
B参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Aの信頼性を向上させることができる。
【0311】
また本実施形態によれば、リード部12の第2表面部分54bは粗面となっている。これにより、第2表面部分54bと封止樹脂23との密着強度を高め、リード部12の表面と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0312】
また本実施形態によれば、半導体装置20Aの裏面側において、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図41の矢印F
A参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Aの信頼性を向上させることができる。
【0313】
(第7の実施形態)
次に、
図42乃至
図45を参照して第7の実施形態について説明する。
図42乃至
図45は第7の実施形態を示す図である。
図42乃至
図45に示す第7の実施形態は、主として、リード部12の表面に凹部18が形成されている点が異なるものであり、他の構成は上述した第5の実施形態と略同一である。
図42乃至
図45において、
図8乃至
図41に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0314】
(リードフレーム及び半導体装置の構成)
図42は本実施形態によるリードフレーム10Bを示す断面図であり、
図43は本実施形態による半導体装置20Bを示す断面図である。
【0315】
図42に示すリードフレーム10B及び
図43に示す半導体装置20Bにおいて、リード部12の表面のうち、金属層25の外側(ダイパッド11の反対側)に凹部18が形成されている。また凹部18の外側に隣接する部分(第3表面部分54c)は粗面となっている。凹部18の内面は平滑面となっている。凹部18と金属層25との間に位置する部分(第4表面部分54d)は平滑面となっている。
【0316】
第4表面部分54dは、金属層25の外側(ダイパッド11の反対側)に隣接する。第4表面部分54dは、金属層25に直接接している。この第4表面部分54dは、その全体が平滑面となっている。リード部12の長手方向に沿う第4表面部分54dの長さ(X方向の長さ)LBは、25μm以上200μm以下としても良く、好ましくは50μm以上100μm以下としても良い。
【0317】
凹部18は、第4表面部分54dの外側(ダイパッド11の反対側)に隣接する。凹部18は、第4表面部分54dに直接接している。この凹部18の内面は、その全体が平滑面となっている。リード部12の長手方向に沿う凹部18の長さ(X方向の長さ)Lcは、50μm以上150μm以下としても良く、好ましくは75μm以上100μm以下としても良い。凹部18の深さは、25μm以上125μm以下としても良く、好ましくは50μm以上100μm以下としても良い。凹部18の平面形状は、例えば円形、四角形等の多角形としても良い。凹部18は、リード部12の幅方向の一部に設けられている。しかしながらこれに限らず、凹部18は、リード部12の幅方向全域にわたって設けられていても良い。
【0318】
第3表面部分54cは、凹部18の外側(ダイパッド11の反対側)に隣接する。第3表面部分54cは、凹部18に直接接している。この第3表面部分54cは、その全体が粗面となっている。またリードフレーム10Bにおいて、第3表面部分54cは、リード部12とコネクティングバー13との接続部まで連続的に延びていることが好ましい。またコネクティングバー13の表面が粗面となっていてもよい。
【0319】
本実施形態において、「粗面」及び「平滑面」の定義及び測定方法は、第2の実施形態の場合と同様である。
【0320】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図42に示すリードフレーム10Bの製造方法について、
図44(a)-(j)を用いて説明する。
図44(a)-(j)において、
図35(a)-(j)に示す構成と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0321】
まず、上述した
図35(a)、(b)に示す工程と略同様にして、金属基板31を準備し(
図44(a))、金属基板31の表裏にそれぞれ感光性レジスト32a、33aを形成する(
図44(b))。
【0322】
次に、上述した
図35(c)に示す工程と略同様にして、開口部32b、33bを有するエッチング用レジスト層32、33を形成する(
図44(c))。なお、このとき凹部18に対応する領域にも開口部32bが形成される。
【0323】
続いて、上述した
図35(d)に示す工程と略同様にして、金属基板31にエッチングを施すことにより、ダイパッド11、リード部12及びコネクティングバー13の外形を形成する(
図44(d))。また、このときリード部12の表面に凹部18が形成される。次いで、上述した
図35(e)に示す工程と略同様にして、エッチング用レジスト層32、33を剥離除去する(
図44(e))。
【0324】
次に、上述した
図35(f)に示す工程と略同様にして、金属基板31の全周にめっき層36を形成する(
図44(f))。なお、このとき凹部18内にもめっき層36が形成される。
【0325】
次いで、めっき層36のうち、金属基板31の第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第3表面部分54c、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bに対応する部分を除去する(
図44(g))。
【0326】
この間、
図44(g)に示すように、まず金属基板31の表面及び裏面にそれぞれゴムパッキン等の弾性部材46を配置し、弾性部材46を介して金属基板31を冶具47Eによって挟む。なお、金属基板31の表面側の弾性部材46は、ダイパッド表面11aと、凹部18と、第4表面部分54dに対応する領域と、リード部12の金属層25が設けられる領域とを覆う。次いで、弾性部材46に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去する。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第3表面部分54c、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが露出する。一方、弾性部材46に覆われたダイパッド表面11a、ダイパッド裏面11b、凹部18の内面、第4表面部分54d及び外部端子17上のめっき層36は残存する。
【0327】
続いて、上述した
図35(h)に示す工程と略同様にして、金属基板31の裏面側に支持層37を設ける。次に、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する(
図44(h))。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第3表面部分54c、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが粗面となる。
【0328】
次いで、
図35(i)に示す工程と略同様にして、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去する(
図44(i))。
【0329】
その後、上述した
図35(j)に示す工程と略同様にして、ダイパッド11及びリード部12上に金属層25を形成する。このようにして
図42に示すリードフレーム10Bが得られる(
図44(j))。
【0330】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態による半導体装置20Bの製造方法は、
図36(a)-(d)に示す半導体装置20の製造方法と略同様にして行うことができる。
【0331】
本実施形態によれば、リード部12の表面のうち、金属層25の外側に隣接する第4表面部分54dは平滑面となっている。これにより、ダイパッド11上に半導体素子21を搭載する際、バンプ26に含まれる錫等が第4表面部分54dを伝わって流れ出すことを抑制できる(
図45の矢印F
C参照)。他方、仮に第4表面部分54dが粗面であると、表面張力により、バンプ26に含まれる錫等が第4表面部分54dを伝わって流れ出てしまうおそれがある。
【0332】
また本実施形態によれば、リード部12の表面のうち、金属層25の外側に凹部18が形成されている。これにより、仮にバンプ26に含まれる錫等が第4表面部分54dを伝わって流れ出した場合でも、流れ出た錫等を凹部18によって受け止めることができる。これにより、流れ出た錫等が第3表面部分54c側まで到達することを抑制できる。
【0333】
また本実施形態によれば、凹部18の外側に隣接する第3表面部分54cは粗面となっている。このため、リード部12の表面と封止樹脂23との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、リード部12の表面と封止樹脂23との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図45の矢印F
B参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Bの信頼性を向上させることができる。
【0334】
また本実施形態によれば、リード部12の第3表面部分54cは粗面となっている。これにより、第3表面部分54cと封止樹脂23との密着強度を高め、リード部12の表面と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0335】
また本実施形態によれば、半導体装置20Bの裏面側において、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図45の矢印F
A参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Bの信頼性を向上させることができる。
【0336】
(第8の実施形態)
次に、
図46乃至
図49を参照して第8の実施形態について説明する。
図46乃至
図49は第8の実施形態を示す図である。
図46乃至
図49に示す第8の実施形態は、主として、凹部18の内面が粗面となっている点が異なるものであり、他の構成は上述した第7の実施形態と略同一である。
図46乃至
図49において、
図8乃至
図45に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0337】
(リードフレーム及び半導体装置の構成)
図46は本実施形態によるリードフレーム10Cを示す断面図であり、
図47は本実施形態による半導体装置20Cを示す断面図である。
【0338】
図46に示すリードフレーム10C及び
図47に示す半導体装置20Cにおいて、リード部12の表面のうち、金属層25の外側(ダイパッド11の反対側)に凹部18が形成されている。また凹部18の外側に隣接する部分(第3表面部分54c)は粗面となっている。凹部18の内面は、その全体が粗面となっている。凹部18と金属層25との間に位置する部分(第4表面部分54d)は平滑面となっている。
【0339】
本実施形態において、「粗面」及び「平滑面」の定義及び測定方法は、第2の実施形態の場合と同様である。
【0340】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図46に示すリードフレーム10Cの製造方法について、
図48(a)-(j)を用いて説明する。
図48(a)-(j)において、
図35(a)-(j)に示す構成と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0341】
まず、上述した
図35(a)、(b)に示す工程と略同様にして、金属基板31を準備し(
図48(a))、金属基板31の表裏にそれぞれ感光性レジスト32a、33aを形成する(
図48(b))。
【0342】
次に、上述した
図35(c)に示す工程と略同様にして、開口部32b、33bを有するエッチング用レジスト層32、33を形成する(
図48(c))。なお、このとき凹部18に対応する領域にも開口部32bが形成される。
【0343】
続いて、上述した
図35(d)に示す工程と略同様にして、金属基板31にエッチングを施すことにより、ダイパッド11、リード部12及びコネクティングバー13の外形を形成する(
図48(d))。また、このときリード部12の表面に凹部18が形成される。次いで、上述した
図35(e)に示す工程と略同様にして、エッチング用レジスト層32、33を剥離除去する(
図48(e))。
【0344】
次に、上述した
図35(f)に示す工程と略同様にして、金属基板31の全周にめっき層36を形成する(
図48(f))。なお、このとき凹部18内にもめっき層36が形成される。
【0345】
次いで、めっき層36のうち、金属基板31の第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第3表面部分54c、凹部18、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bに対応する部分を除去する(
図48(g))。
【0346】
この間、
図48(g)に示すように、まず金属基板31の表面及び裏面にそれぞれゴムパッキン等の弾性部材46を配置し、弾性部材46を介して金属基板31を冶具47Fによって挟む。なお、金属基板31の表面側の弾性部材46は、ダイパッド表面11aと、第4表面部分54dに対応する領域と、リード部12の金属層25が設けられる領域とを覆う。次いで、弾性部材46に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去する。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第3表面部分54c、凹部18、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが露出する。一方、弾性部材46に覆われたダイパッド表面11a、ダイパッド裏面11b、第4表面部分54d及び外部端子17上のめっき層36は残存する。
【0347】
続いて、上述した
図35(h)に示す工程と略同様にして、金属基板31の裏面側に支持層37を設ける。次に、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36に覆われていない部分に粗面を形成する(
図48(h))。これにより、第1ダイパッド側面11c、第2ダイパッド側面11d、第3表面部分54c、凹部18の内面、インナーリード先端面51c及びインナーリード裏面51bが粗面となる。
【0348】
次いで、
図35(i)に示す工程と略同様にして、支持層37とめっき層36とを順次剥離除去する(
図48(i))。
【0349】
その後、上述した
図35(j)に示す工程と略同様にして、ダイパッド11及びリード部12上に金属層25を形成する。このようにして
図46に示すリードフレーム10Cが得られる(
図48(j))。
【0350】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態による半導体装置20Cの製造方法は、
図36(a)-(d)に示す半導体装置20の製造方法と略同様にして行うことができる。
【0351】
本実施形態によれば、リード部12の表面のうち、金属層25の外側に隣接する第4表面部分54dは平滑面となっている。これにより、ダイパッド11上に半導体素子21を搭載する際、バンプ26に含まれる錫等が第4表面部分54dを伝わって流れ出すことを抑制できる(
図49の矢印F
C参照)。他方、仮に第4表面部分54dが粗面であると、表面張力により、バンプ26に含まれる錫等が第4表面部分54dを伝わって流れ出てしまうおそれがある。
【0352】
また本実施形態によれば、リード部12の表面のうち、金属層25の外側に凹部18が形成されている。これにより、仮にバンプ26に含まれる錫等が第4表面部分54dを伝わって流れ出した場合でも、流れ出た錫等を凹部18によって受け止めることができる。これにより、流れ出た錫等が第3表面部分54c側まで到達することを抑制できる。
【0353】
また本実施形態によれば、凹部18の内面と、第3表面部分54cとは粗面となっている。このため、リード部12の表面と封止樹脂23との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、リード部12の表面と封止樹脂23との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図49の矢印F
B参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Cの信頼性を向上させることができる。
【0354】
また本実施形態によれば、凹部18の内面と、第3表面部分54cとは粗面となっている。これにより、凹部18及び第3表面部分54cと封止樹脂23との密着強度を高め、リード部12の表面と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0355】
また本実施形態によれば、半導体装置20Cの裏面側において、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図49の矢印F
A参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20Cの信頼性を向上させることができる。
【0356】
(第9の実施形態)
第9の実施形態について、
図50乃至
図57を参照して説明する。
図50乃至
図57は、第9の実施形態を示す図である。
図50乃至
図57において、
図8乃至
図49に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0357】
(リードフレームの構成)
まず、
図50及び
図51により、本実施形態によるリードフレームの概略について説明する。
図50及び
図51は、本実施形態によるリードフレームを示す図である。
【0358】
図50及び
図51に示すように、リードフレーム10の各パッケージ領域10aは、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12と、を備えている。このうちリード部12は、裏面側から一部が薄肉化されている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっている。リード部12の裏面のうち、薄肉化されていない部分は平滑面となっている。
【0359】
図51に示すように、ダイパッド11は、表面側に位置するダイパッド表面11aと、裏面側に位置するダイパッド裏面11bとを有している。ダイパッド表面11aには、後述するように半導体素子21が搭載される。ダイパッド裏面11bは、半導体装置20(後述)から外方に露出する。また、ダイパッド11のうちリード部12を向く側には、ダイパッド側面11hが形成されている。ダイパッド側面11hは、ダイパッド表面11a側からダイパッド裏面11b側まで厚み方向(Z方向)に延びている。この場合、ダイパッド側面11hは粗面となっている。すなわちダイパッド側面11hには、第3の粗面R3が形成されている。一方、ダイパッド裏面11bは、平滑面となっている。
【0360】
本実施形態において、「粗面」とは、S-ratioが1.10以上となる面をいう。「平滑面」とは、S-ratioが1.10未満となる面をいう。粗面は、平滑面よりも粗い面である。また、「粗面」のS-ratioは、1.10以上2.30以下となることが好ましい。「平滑面」のS-ratioは、1.00以上1.10未満となることが好ましい。ここで「S-ratio」とは、測定対象となる面を光干渉式測定器で複数の画素に分割して測定して得られた表面積率をあらわしている。具体的には、測定対象となる面を株式会社日立ハイテクサイエンス製、VertScanを用いて複数の画素に分割して測定し、得られた表面積を観察面積で除して算出する。
【0361】
粗面は、後述する金属基板31の外面を、例えばマイクロエッチング液で粗面化処理することによって形成されても良い。このようなマイクロエッチング液としては、硫酸又は塩酸を主成分とするもの(例えば後述する第1のマイクロエッチング液)が挙げられる。あるいは、マイクロエッチング液としては、過酸化水素と硫酸を主成分とするもの(例えば後述する第2のマイクロエッチング液)を用いても良い。平滑面は、後述する金属基板31に対してこのような粗面化処理を施さない、未加工の面であっても良い。なお、
図51において、相対的に粗さが滑らかな粗面(例えば後述する第1の粗面R1)を細い破線で示す。また、
図51において、相対的に粗さの粗い粗面(例えば後述する第2の粗面R2、第3の粗面R3、第4の粗面R4及び第5の粗面R5)を太い破線で示している(他の断面図についても同様)。
【0362】
ダイパッド11のダイパッド表面11aは、後述するようにダイアタッチペースト等の接着剤24を介して半導体素子21に接合される領域(内部端子)である。ダイパッド表面11aは、ハーフエッチング等により薄肉化されていない領域であっても良い。また、ダイパッド表面11aには、第1の粗面R1が形成されている。ここで第1の粗面R1の粗さは、後述するリード部12の第2の粗面R2の粗さよりも滑らかである(粗くない)。具体的には、第1の粗面R1のS-ratioは、1.10以上1.30未満となっても良い。
【0363】
本実施形態において、第1の粗面R1は、ダイパッド表面11aの全域にわたって形成されている。しかしながら、これに限らず、第1の粗面R1は、ダイパッド表面11aの一部に形成されていても良い。とりわけ、第1の粗面R1は、ダイパッド表面11aのうち、半導体素子21の搭載領域の外側周縁に形成されていることが好ましい。これにより、後述するように、接着剤24中のエポキシ樹脂等の成分が、ダイパッド表面11aの毛細管現象により滲み出す現象(ブリードアウト)を抑制できる。また第1の粗面R1は、ダイパッド11の周縁の全域に沿って形成されても良い。第1の粗面R1が、ダイパッド表面11aの一部に形成されている場合、第1の粗面R1以外の部分は平滑面になっていても良い。あるいは、ダイパッド表面11aの第1の粗面R1以外の部分は、第1の粗面R1の粗さよりも粗い粗面であっても良い。例えば、ダイパッド表面11aの第1の粗面R1以外の部分のS-ratioは、1.30以上2.30以下となっても良い。
【0364】
図51を参照すると、ダイパッド裏面11bは、例えばハーフエッチングにより薄肉化されることなく、加工前の金属基板(後述する金属基板31)と同様の平滑面となっている。ダイパッド裏面11bは、半導体装置20(後述)の製造後に、半導体装置20から外方に露出する。
【0365】
各リード部12は、それぞれ後述するようにボンディングワイヤ22を介して半導体素子21に接続されるものであり、ダイパッド11との間に空間を介して配置されている。複数のリード部12は、コネクティングバー13の長手方向に沿って互いに間隔を空けて配置されている。各リード部12は、それぞれコネクティングバー13から延び出している。
【0366】
図51に示すように、リード部12は、インナーリード51と端子部53とを有している。インナーリード51は、内側(ダイパッド11側)に位置する。端子部53は、外側(コネクティングバー13側)に位置する。インナーリード51は、端子部53からダイパッド11側に延びている。インナーリード51の表面側には内部端子が形成される。この内部端子は、後述するようにボンディングワイヤ22を介して半導体素子21に電気的に接続される領域である。内部端子上には、ボンディングワイヤ22との密着性を向上させる金属層25が設けられている。
【0367】
本実施形態において、リード部12の裏面のうち、薄肉化されている部分は粗面となっている。具体的には、リード部12のインナーリード51が裏面側から薄肉化されている。インナーリード51の裏面側に位置するインナーリード裏面51bは、その全域が粗面となっている。すなわちインナーリード裏面51bには、第4の粗面R4が形成されている。一方、リード部12の裏面のうち、薄肉化されていない部分は平滑面となっている。具体的には、リード部12の端子部53は裏面側から薄肉化されていない。端子部53の裏面側に位置する外部端子17は、その全域が平滑面となっている。
【0368】
さらにリード部12のインナーリード先端面51cは、その全域が粗面となっている。すなわちインナーリード先端面51cには、第5の粗面R5が形成されている。また、図示していないが、リード部12の長手方向に沿う両側面も粗面となっていても良い。一方、リード部12のインナーリード51は表面側から薄肉化されていない。またリード部12の端子部53は表面側から薄肉化されていない。
【0369】
インナーリード51のインナーリード表面51aと、端子部53の端子部表面53aとにより、リード表面12aが構成されている。リード表面12aは、ハーフエッチング等により表面側から薄肉化されていない領域である。リード表面12aには、平滑面の領域である平滑面領域Sと、粗面の領域である第2の粗面R2とが形成されている。
【0370】
平滑面領域Sは、リード部12の内側(ダイパッド11側)端部に位置する。平滑面領域S上には、金属層25が形成されている。この場合、金属層25は、平面視で平滑面領域Sの全体を覆う。金属層25は、例えば電解めっき法により形成されためっき層であっても良い。金属層25の厚みは、1μm以上10μm以下としても良い。このようなめっき層を構成する金属としては、銀、銀合金、金、金合金、白金族、銅、銅合金、パラジウムなどを用いてもよい。金属層25を構成する金属によって、下地めっきが必要な場合は、ニッケルや、銅などの公知のものを適用すればよい。
【0371】
この場合、各リード部12のリード表面12aには、それぞれ1つの平滑面領域Sが形成されている。しかしながらこれに限らず、各リード部12のリード表面12aには、それぞれ複数の平滑面領域Sが形成されていても良い。また、各リード部12のリード表面12aには、平滑面領域Sが形成されていなくても良い。すなわち、各リード部12のリード表面12aの全体が、第2の粗面R2となっていても良い。
【0372】
平滑面領域S及び金属層25の外側(コネクティングバー13側)には、第2の粗面R2が位置する。この場合、第2の粗面R2は、平滑面領域Sよりも外側(コネクティングバー13側)のみに設けられている。しかしながら、これに限らず、第2の粗面R2は、平面視で平滑面領域Sを取り囲むように設けられても良い。リード表面12aは、平滑面領域S及び第2の粗面R2のみから構成されていても良い。
【0373】
本実施形態において、第2の粗面R2の粗さは、上述したダイパッド11の第1の粗面R1の粗さよりも粗い。具体的には、第2の粗面R2のS-ratioは、1.30以上2.30以下となっても良い。一方、上述したように、第1の粗面R1のS-ratioは、1.10以上1.30未満となっても良い。
【0374】
上述したダイパッド11の第3の粗面R3の粗さは、第1の粗面R1の粗さよりも粗くても良い。第3の粗面R3のS-ratioは、1.30以上2.30以下となっても良い。また、リード部12の第4の粗面R4の粗さは、上述した第1の粗面R1の粗さよりも粗くても良い。第4の粗面R4のS-ratioは、1.30以上2.30以下となっても良い。また、リード部12の第5の粗面R5の粗さは、上述した第1の粗面R1の粗さよりも粗くても良い。第5の粗面R5のS-ratioは、1.30以上2.30以下となっても良い。
【0375】
なお、第2の粗面R2、第3の粗面R3、第4の粗面R4及び第5の粗面R5の粗さの大小関係は問わない。第2の粗面R2、第3の粗面R3、第4の粗面R4及び第5の粗面R5の粗さは、互いに異なっていても良く、互いに同一であっても良い。
【0376】
このほか、本実施形態によるリードフレーム10の構成は、第2の実施形態によるリードフレーム10の構成と同様としても良い。
【0377】
(半導体装置の構成)
次に、
図52及び
図53により、本実施形態による半導体装置について説明する。
図52及び
図53は、本実施形態による半導体装置(QFNタイプ)を示す図である。
【0378】
図52及び
図53に示すように、半導体装置(半導体パッケージ)20は、ダイパッド11と、半導体素子21と、複数のリード部12と、複数のボンディングワイヤ22と、封止樹脂23とを備えている。
【0379】
このうち半導体素子21は、ダイパッド11上に搭載されている。複数のボンディングワイヤ22は、それぞれ半導体素子21と、リード部12の金属層25とを電気的に接続する。この場合、ボンディングワイヤ22は接続部材を構成する。封止樹脂23は、ダイパッド11、リード部12、半導体素子21及びボンディングワイヤ22を樹脂封止する。
【0380】
ダイパッド11及びリード部12は、上述したリードフレーム10から作製されたものである。この場合、ダイパッド11のダイパッド表面11aに、第1の粗面R1が形成されている。またリード部12のリード表面12aのうち、金属層25よりも外側(ダイパッド11から遠い側)の位置に第2の粗面R2が形成されている。リード部12の第2の粗面R2の粗さは、ダイパッド11の第1の粗面R1の粗さよりも粗い。
【0381】
また、ダイパッド11のダイパッド側面11hには、第3の粗面R3が形成されている。第3の粗面R3の粗さは、第1の粗面R1の粗さよりも粗い。ダイパッド側面11hには、封止樹脂23が密着している。リード部12のインナーリード51は、裏面側から薄肉化されている。インナーリード51のインナーリード裏面51bは第4の粗面R4となっている。第4の粗面R4の粗さは、第1の粗面R1の粗さよりも粗い。インナーリード裏面51bには、封止樹脂23が密着している。またインナーリード51のインナーリード先端面51cには、第5の粗面R5が形成されている。第5の粗面R5の粗さは、第1の粗面R1の粗さよりも粗い。インナーリード先端面51cには、封止樹脂23が密着している。リード部12の端子部53は、裏面側から薄肉化されていない。端子部53の裏面に位置する外部端子17は平滑面となっている。外部端子17は、封止樹脂23から外方に露出している。
【0382】
半導体素子21としては、従来一般に用いられている各種半導体素子を使用することが可能であり、特に限定されないが、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等を用いることができる。この半導体素子21は、各々ボンディングワイヤ22が取り付けられる複数の電極21aを有している。また、半導体素子21は、例えばダイアタッチペースト等の接着剤24により、ダイパッド11の表面に固定されている。接着剤24は、銀ペースト及びエポキシ樹脂等の成分を含むエポキシ樹脂系の接着剤であっても良い。
【0383】
各ボンディングワイヤ22は、例えば金、銅等の導電性の良い材料からなっている。各ボンディングワイヤ22は、それぞれその一端が半導体素子21の電極21aに接続されるとともに、その他端が各リード部12上に位置する金属層25にそれぞれ接続されている。接続部材としては、ボンディングワイヤ22に代えてバンプ等の導電体を用いても良い。この場合、フリップチップボンディングにより半導体素子21をリード部12に接続できる。
【0384】
封止樹脂23としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいはPPS樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。封止樹脂23全体の厚みは、300μm以上1500μm以下程度としても良い。また、封止樹脂23の一辺(半導体装置20の一辺)は、例えば0.2mm以上20mm以下としても良い。なお、
図52において、封止樹脂23のうち、リード部12及び半導体素子21よりも表面側に位置する部分の表示を省略している。
【0385】
このほか、ダイパッド11及びリード部12の構成は、半導体装置20に含まれない領域を除き、上述した
図50及び
図51に示すものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0386】
(リードフレームの製造方法)
次に、
図50及び
図51に示すリードフレーム10の製造方法について、
図54(a)-(e)及び
図55(a)-(h)を用いて説明する。
図54(a)-(e)及び
図55(a)-(h)は、リードフレーム10の製造方法を示す断面図(
図51に対応する図)である。
【0387】
まず第2の実施形態(
図14(a)-(e))の場合と同様にして、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に位置するリード部12とを有する金属基板31を作製する(
図54(a)-(e))。
【0388】
次に、金属基板31の周囲にめっき層(被覆層)36を形成する(
図55(a))。このとき、ダイパッド11、リード部12及びコネクティングバー13のうち、外方に露出する部分の全体にめっき層36が形成されても良い。めっき層36の厚みは、0μm超2μm以下としても良い。めっき層36を構成する金属としては、例えば銀を用いてもよい。めっき層36が銀めっきからなる場合、電解めっき用めっき液としては、シアン化銀及びシアン化カリウムを主成分とした銀めっき液を用いることができる。
【0389】
続いて、金属基板31のうち、第1の粗面R1を形成する領域に存在するめっき層36を除去する。具体的には、ダイパッド11のダイパッド表面11aの全域に位置するめっき層36を除去する(
図55(b))。この場合、例えば金属基板31のうち、ダイパッド表面11a以外の表面及び裏面を、それぞれ弾性部材を介して冶具によって挟む。次いで、弾性部材及び冶具に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去しても良い。これにより、ダイパッド表面11a上のめっき層36が除去される。
【0390】
次に、金属基板31のうちめっき層36に覆われていない部分を粗化することにより、当該部分に第1の粗面R1を形成する(
図55(c))。具体的には、金属基板31に対して第1のマイクロエッチング液を供給することにより、めっき層36で覆われていないダイパッド表面11aの全体に第1の粗面R1を形成する。ここで第1のマイクロエッチング液とは、金属表面を僅かに溶かし、微細な凹凸の第1の粗面R1を形成する表面処理剤である。例えば銅又は銅合金からなる金属基板31に粗面化する場合、第1のマイクロエッチング液としては、硫酸又は塩酸を主成分とするマイクロエッチング液を用いても良い。
【0391】
次いで、金属基板31のうち、リード表面12aの平滑面領域S(金属層25を形成する領域)以外に存在するめっき層36を除去する。この場合、例えば金属基板31のうち、平滑面領域S以外の表面及び裏面を、それぞれ弾性部材を介して冶具によって挟む。次いで、弾性部材及び冶具に覆われていない部分のめっき層36を剥離除去しても良い。これにより、ダイパッド11のダイパッド裏面11b及びダイパッド側面11hに位置するめっき層36が除去される。また、リード部12において、リード表面12aの平滑面領域S以外の部分、インナーリード裏面51b、インナーリード先端面51c及び外部端子17に位置するめっき層36が除去される。
【0392】
次に、金属基板31の表面及び裏面に、保護層37Aをそれぞれ設ける(
図55(e))。保護層37Aは、例えばレジスト層であっても良い。表面側の保護層37Aは、ダイパッド11のダイパッド表面11aと、リード部12の平滑面領域S上のめっき層36とを覆う。このとき、表面側の保護層37Aは、ダイパッド11の第1の粗面R1の全域を覆う。また表面側の保護層37Aは、平滑面領域S上のめっき層36の一部又は全域を覆っても良い。裏面側の保護層37Aは、ダイパッド11のダイパッド裏面11bと、リード部12の外部端子17とを覆う。
【0393】
続いて、金属基板31のうちめっき層36及び保護層37Aに覆われていない部分を粗化することにより、めっき層36及び保護層37Aに覆われていない部分に粗面を形成する(
図55(f))。具体的には、リード部12のリード表面12aの一部に第2の粗面R2が形成される。またダイパッド11のダイパッド側面11hには、第3の粗面R3が形成される。またリード部12のインナーリード裏面51bには、第4の粗面R4が形成される。さらにリード部12のインナーリード先端面51cには、第5の粗面R5が形成される。
【0394】
この間、金属基板31に対して第2のマイクロエッチング液を供給する。これにより、めっき層36及び保護層37Aで覆われている部分を除き、金属基板31の全体に粗面を形成する。ここで第2のマイクロエッチング液とは、金属表面を僅かに溶かし、微細な凹凸の粗面を形成する表面処理剤である。例えば銅又は銅合金からなる金属基板31を粗面化する場合、第2のマイクロエッチング液としては、過酸化水素水と硫酸を主成分とするマイクロエッチング液を用いても良い。第2のマイクロエッチング液は、上述した第1のマイクロエッチング液とは異なる成分を含んでも良い。第2のマイクロエッチング液は、第1のマイクロエッチング液よりも金属をより粗くする。このため、第2の粗面R2、第3の粗面R3、第4の粗面R4及び第5の粗面R5は、それぞれ第1の粗面R1よりも粗くなる。
【0395】
次いで、金属基板31のうち表面側の保護層37Aと、めっき層36とをそれぞれ剥離除去する(
図55(g))。このとき、リード表面12aを覆うめっき層36が除去され、平滑面領域Sが露出する。なお、裏面側の保護層37Aは金属基板31に残存する。
【0396】
その後、リード部12の平滑面領域S上に金属層25を形成する(
図55(h))。この場合、まず平滑面領域Sを除く、ダイパッド11及びリード部12上に、例えばフォトリソグラフィ法により図示しない所定パターンのめっき用レジスト層を形成する。次にめっき用レジスト層に覆われていない平滑面領域Sに、例えば電解めっき法によりめっき層からなる金属層25を形成する。その後、めっき用レジスト層を除去することにより、
図50及び
図51に示すリードフレーム10が得られる。
【0397】
(半導体装置の製造方法)
次に、
図52及び
図53に示す半導体装置20の製造方法について、
図56(a)-(e)を用いて説明する。
図56(a)-(e)は、半導体装置20の製造方法を示す断面図(
図53に対応する図)である。
【0398】
まず、例えば
図54(a)-(e)及び
図55(a)-(h)に示す方法により、リードフレーム10を作製する(
図56(a))。
【0399】
次に、リードフレーム10のダイパッド11上に、半導体素子21を搭載する。この場合、例えばダイアタッチペースト等の接着剤24を用いて、半導体素子21をダイパッド11上に載置して固定する(
図56(b))。接着剤24は、銀ペースト及びエポキシ樹脂等の成分を含むエポキシ樹脂系の接着剤であっても良い。このとき、半導体素子21は、接着剤24を介して、ダイパッド表面11aの第1の粗面R1上に配置される。また半導体素子21及び接着剤24の外周に沿って、第1の粗面R1が位置する。
【0400】
続いて、半導体素子21の各電極21aと、各リード部12に形成された金属層25とを、それぞれボンディングワイヤ(接続部材)22によって互いに電気的に接続する(
図56(c))。
【0401】
次に、リードフレーム10に対して熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を射出成形又はトランスファ成形することにより、封止樹脂23を形成する(
図56(d))。これにより、ダイパッド11、リード部12、半導体素子21及びボンディングワイヤ22を樹脂封止する。
【0402】
その後、パッケージ領域10a毎に、リードフレーム10及び封止樹脂23を切断する。これにより、リードフレーム10が半導体装置20毎に分離され、
図52及び
図53に示す半導体装置20が得られる(
図56(e))。
【0403】
ところで、このようにして半導体装置20を作製する間、接着剤24を加熱硬化する工程が行われる(
図56(b))。具体的には、ダイアタッチペースト等の接着剤24をダイパッド11に塗布し、半導体素子21をダイパッド11に搭載した後、接着剤24を加熱硬化する。このとき、塗布した接着剤24中のエポキシ樹脂等の成分が、ダイパッド表面11aの毛細管現象により滲み出すおそれがある。このような現象をブリードアウト又はエポキシブリードアウトともいう。
【0404】
これに対して本実施形態によれば、ダイパッド11のダイパッド表面11aに第1の粗面R1が形成されている。第1の粗面R1の粗さは、第2の粗面R2の粗さよりも抑えられている。これにより、ダイパッド表面11aの凹凸による毛細管現象によって、接着剤24中のエポキシ樹脂等が滲み出す現象(ブリードアウト)を抑制できる(
図57の矢印E参照)。一方、接着剤24の周囲のダイパッド表面11aを平滑面とすることも考えられる。しかしながら、接着剤24中のエポキシ樹脂の粘度が低いと、むしろエポキシ樹脂が、平滑面であるダイパッド表面11aに沿って流れやすくなる。このため、本実施形態において、ダイパッド表面11aの粗さを毛細管現象が生じない程度に適度に粗くしている(第1の粗面R1とする)。これにより、接着剤24中のエポキシ樹脂の粘度に関わらず、エポキシ樹脂がダイパッド表面11aに沿って流れることを抑制できる。
【0405】
また、このような半導体装置20を長期間使用していると、空気中の水分等が、半導体装置20の側面側又は裏面側から侵入するおそれがある。例えば、水分等が、封止樹脂23と、ダイパッド11又はリード部12との界面を介して侵入することが考えられる。
【0406】
これに対して本実施形態によれば、リード部12のリード表面12aに第2の粗面R2が形成されている。このため、リード表面12aと封止樹脂23との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、リード表面12aと封止樹脂23との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えられる(
図57の矢印F
A参照)。この結果、長期間の使用後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0407】
また本実施形態によれば、ダイパッド11のダイパッド側面11hが第3の粗面R3となっている。第3の粗面R3の粗さは、第1の粗面R1の粗さよりも粗い。このため、半導体装置20の裏面側において、封止樹脂23とダイパッド11との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23とダイパッド11との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図57の矢印F
B参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。さらに、ダイパッド11と封止樹脂23との密着強度を高め、ダイパッド11と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0408】
また本実施形態によれば、リード部12のインナーリード裏面51bが第4の粗面R4となっている。さらにリード部12のインナーリード先端面51cが第5の粗面R5となっている。第4の粗面R4の粗さ及び第5の粗面R5の粗さは、それぞれ第1の粗面R1の粗さよりも粗い。このため、半導体装置20の裏面側において、封止樹脂23とリード部12との界面における水分の侵入経路の距離が長くなっている。これにより、封止樹脂23とリード部12との界面から、半導体素子21側に水分が侵入することを抑えることができる(
図57の矢印F
c参照)。この結果、長期間使用した後における半導体装置20の信頼性を向上させることができる。さらに、リード部12と封止樹脂23との密着強度を高め、リード部12と封止樹脂23とが互いに剥離することを抑制できる。
【0409】
(変形例)
次に、
図58により、本実施形態によるリードフレーム10の変形例について説明する。
図58は、変形例によるリードフレーム10を示す断面図である。
図58において、
図50乃至
図57に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0410】
図58において、リード部12のリード表面12aには、平滑面領域Sと、第2の粗面R2とが形成されている。この場合、平滑面領域Sには、金属層25が設けられていない。このため平滑面領域Sは、リードフレーム10の外方に露出している。
【0411】
図58に示すリードフレーム10を作製する場合、上述した
図54(a)-(e)及び
図55(a)-(g)に示す工程を行った後、金属層25を形成する工程(
図55(h))を行わない。これにより、
図58に示すリードフレーム10が得られる。
【0412】
このように、平滑面領域Sに金属層25を設けないことにより、リードフレーム10の製造工程を削減できる。また、銀、銀合金、金、金合金、白金族、銅、銅合金、パラジウム等のめっき層からなる金属層25を設けないことにより、リードフレーム10の製造コストを削減できる。また、ワイヤボンディングにより半導体素子21をリード部12に接続する形態ではなく、フリップチップボンディングにより半導体素子21をリード部12に接続する形態とした場合により有効である。
【0413】
上記各実施形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。