(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】噴霧器
(51)【国際特許分類】
B05B 17/04 20060101AFI20241108BHJP
D06F 75/16 20060101ALI20241108BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20241108BHJP
C25B 9/15 20210101ALI20241108BHJP
C25B 11/042 20210101ALI20241108BHJP
B05C 11/10 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
B05B17/04
D06F75/16
B05C11/00
C25B9/15
C25B11/042
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2021017167
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優子
(72)【発明者】
【氏名】笹部 茂
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-064566(JP,A)
【文献】特開2020-011159(JP,A)
【文献】特開2009-050304(JP,A)
【文献】特開2019-103771(JP,A)
【文献】特開2008-309357(JP,A)
【文献】特開2016-022197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 17/04
D06F 75/16
B05C 11/00
C25B 9/15
C25B 11/042
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を蓄えるタンクと、
前記タンクの水を噴出する噴出部と、
前記タンクと前記噴出部との間に配置され、金属で構成された少なくとも2枚の電極からなる電解部と、
前記電解部に電気的に接続され、前記電解部を制御する制御部と、
を備え、
前記電解部は、水を前記制御部の制御によって電気分解し、抗菌性を有する金属イオンを放出し、
前記噴出部は、金属イオンを含む水を噴出し、
前記制御部は、前記電解部における通電をパルス通電とし、金属イオンの濃度を制御
し、
前記制御部によるパルス通電は、周期を0.2~5Hzとする噴霧器。
【請求項2】
水を蓄えるタンクと、
前記タンクの水を噴出する噴出部と、
前記タンクと前記噴出部との間に配置され、金属で構成された少なくとも2枚の電極からなる電解部と、
前記電解部に電気的に接続され、前記電解部を制御する制御部と、
を備え、
前記電解部は、水を前記制御部の制御によって電気分解し、抗菌性を有する金属イオンを放出し、
前記噴出部は、金属イオンを含む水を噴出し、
前記制御部は、水の導電率を検出する検出部を有し、前記検出部の出力に応じて前記電解部に対する通電を制御する噴霧器。
【請求項3】
前記電解部の電極は、銀電極である請求項1または2に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記制御部は、前記電解部における通電をパルス通電とする請求項2に記載の噴霧器。
【請求項5】
前記制御部によるパルス通電は、周期を0.2~5Hzとする請求項
4に記載の噴霧器。
【請求項6】
前記タンクと前記噴出部との間には、前記タンクの水を前記噴出部へ供給するポンプが配置され、
前記電解部は、前記タンクと前記ポンプとの間に配置されている請求項1から5のいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項7】
前記電解部は、前記電極が収容されるハウジングを有し、
前記ハウジングの下部には、水を前記ハウジングの内部に流入させる流入部が設けられ、
前記ハウジングの上部には、前記ハウジングの内部の水を前記ハウジングの外部に流出させる流出部が設けられている請求項1から6のいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項8】
前記制御部は、水の導電率を検出する検出部を有し、前記検出部の出力に応じて前記電解部に対する通電を制御する請求項1に記載の噴霧器。
【請求項9】
前記検出部は、前記電解部への通電開始時における前記電極間に流れるピーク電流を検出し、検出したピーク電流の値に基づいて水の導電率を検出する請求項2または8に記載の噴霧器。
【請求項10】
前記検出部は、前記電解部に水が流れているときの前記電極間に流れるピーク電流を検出する請求項9に記載の噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴霧器としては、噴射される水に、抗菌剤や消臭剤を混ぜて同時に噴射させるスチームアイロンが知られている(特許文献1参照)。この噴霧器は、水を蓄えるタンクと、タンクの水を噴出させる噴出部としてのスチーム噴出盤とを備えている。このような噴霧器では、アイロンでしわを伸ばす作業と同時に、スチーム噴出盤から噴出するスチームに菌処理剤を混入することで、衣類などに付着する臭いや菌類を取り除き、かつ菌類が付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の噴霧器では、タンク内に抗菌剤や消臭剤を収容し、タンク内で水に溶解させている。しかしながら、抗菌剤や消臭剤を水に混合する徐放方式では、抗菌剤や消臭剤が水に溶解するのに一定時間必要であった。このため、溶解するまでの待機時間が必要であり、使い勝手が悪いものであった。
【0005】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、使い勝手のよい噴霧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係る噴霧器は、水を蓄えるタンクと、前記タンクの水を噴出する噴出部と、前記タンクと前記噴出部との間に配置され、金属で構成された少なくとも2枚の電極からなる電解部と、前記電解部に電気的に接続され、前記電解部を制御する制御部と、を備え、前記電解部は、水を前記制御部の制御によって電気分解し、抗菌性を有する金属イオンを放出し、前記噴出部は、金属イオンを含む水を噴出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、使い勝手のよい噴霧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る噴霧器の内部を透過した斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る噴霧器の電解部の斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る噴霧器の電解部に印可する電圧と銀の溶出濃度を示す相関図である。
【
図4】第2実施形態に係る噴霧器の導電率の違いによる銀の溶出濃度を示す相関図である。
【
図5】第2実施形態に係る噴霧器の導電率の違いによる電解部に流れる電流波形を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る噴霧器の水の導電率とピーク電流値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(第1実施形態)
図1~
図3を用いて第1実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る噴霧器1は、例えば、タンク3と、気化室5と、噴出部7と、ポンプ9と、電解部11と、制御部13とを備えている。
【0013】
タンク3は、例えば、筐体15の内部に配置され、内部に水を蓄える。タンク3は、流路を介して電解部11と連通されている。タンク3内の水は、電解部11を介して気化室5に供給される。なお、タンク3と気化室5とを、直接、流路を介して連通させてもよい。
【0014】
気化室5は、例えば、筐体15の内部でタンク3の下部に配置されている。気化室5には、筐体15の内部において、ヒータ17が隣接して配置されている。気化室5に流入した水は、ヒータ17の加熱によって気化される。
【0015】
噴出部7は、例えば、筐体15において、気化室5の下部に配置されている。噴出部7には、気化室5と筐体15の外部とを連通する複数の孔(不図示)が設けられている。噴出部7は、気化室5で発生されたスチームを複数の孔から筐体15の外部に噴出させる。
【0016】
ポンプ9は、例えば、筐体15の内部でタンク3に隣接して配置されている。ポンプ9は、タンク3と噴出部7との間の流路に対して圧力を付与し、タンク3から噴出部7への水の供給を制御する。
【0017】
電解部11は、例えば、筐体15の内部でタンク3とポンプ9との間に配置されている。電解部11は、タンク3とポンプ9との間を流れる水を電気分解し、抗菌性を有する金属イオンを生成する。ここで、電解部11を、ポンプ9と気化室5との間に設けると、電解部11の両側に位置するポンプ9と気化室5から加圧されることになる。このため、電解部11の耐久性や電気分解効率が低減してしまう。そこで、電解部11をポンプ9の上流側に配置することにより、ポンプ9と気化室5からの加圧を低減でき、耐久性や電気分解効率を保持することができる。なお、電解部11は、気化室5とポンプ9との間に配置されてもよい。
【0018】
制御部13は、例えば、筐体15の内部に配置され、電源(不図示)に電気的に接続されている。制御部13は、電解部11の電極19,21に対して、例えば、ファストン端子などを介して電気的に接続されている。制御部13は、電解部11に電流や電圧を印加し、電解部11を制御する。
【0019】
このような噴霧器1において、電解部11は、
図2に示すように、電極19,21と、ハウジング23とを備えている。
【0020】
電極19,21は、抗菌性を有する金属イオンとして銀イオンを生成可能な純度99.9%の銀電極となっている。抗菌性を有する金属イオンを生成可能な電極としては、銅や亜鉛などがあるが、最も抗菌性が高い銀を選定している。電極19,21の厚みは、薄いほど低コストになるが、耐久性や電極間距離確保の安定性、組立やすさの観点から、ここでは、0.5mmの厚みとしている。電極19,21間の距離は、スケール詰まりなどの耐久性を考慮し、6mmとしている。なお、銀電極は、柔らかく、組立時に曲がりが発生する可能性があるので、厚みや電極間距離は上記の値に限らず、適宜設定することができる。
【0021】
ハウジング23は、電極19,21を収容し、電極19,21が電気分解時に金属イオンを有効に生成可能とする水を収容可能な所定の容積を有する。ハウジング23には、タンク3内の水が流入される流入部25と、ハウジング23内の水を流出させる流出部27とが設けられている。流入部25は、ハウジング23の下部に設けられている。流出部27は、ハウジング23の上部に設けられている。流出部27をハウジング23の上部に設けることにより、ハウジング23の下部の流入部25から流入された水を、気泡と共にハウジング23の上部の流出部27から放出させることができる。このため、電気分解時に発生する酸素や水素などの気泡がハウジング23の上部に溜まることを抑制することができる。
【0022】
流出部27は、ハウジング23の上部において、電極19,21が電気分解に作用する有効面積(有効高さ)より上部に配置されている。このため、電極19,21の電気分解に作用する有効部分は、ハウジング23内に流入する水量が低減しても、常に水に浸漬されている。従って、電極19,21の電気分解に作用する有効面積は、変動することがなく、安定して金属イオンを溶出することができる。加えて、電極19,21の消耗も水量に影響することがなく、一定に保つことができる。
【0023】
なお、タンク3内に電極19,21を収容し、この電極19,21を電解部11としてもよいが、常に水で満たされるハウジング23に電極19,21を収容することで電解部11を構成することが好ましい。タンク3内では、水量が変動してしまうため、電気分解によって生成される銀イオン濃度も変動してしまう。これに対して、ハウジング23に電極19,21を収容することにより、使用したい水量を連続的に電気分解することができ、安定した銀イオン濃度の水を生成することができる。
【0024】
このような電解部11では、タンク3内の水がポンプ9によって、ハウジング23の下部の流入部25からハウジング23の内部に流入される。ハウジング23の内部に流入された水は、所定の速度でハウジング23の上部の流出部27からハウジング23の外部に流出される。水がハウジング23の内部を流通する間に、電極19,21は、制御部13から電圧もしくは電流が印加されることで銀イオンを連続的に溶出する。溶出された銀イオンは、水に溶け込み、所定の銀イオン濃度の水となり、流出部27から放出される。
【0025】
ここで、
図3に、本実施形態における制御部13が電極19,21に印加した電圧と流出部27から流出した水の銀イオン濃度の関係を示す。なお、ここでは、水量を8ml/分とし、電極19,21の有効面積を2cm
2とした。
図3に示すように、電圧が低いと銀イオンは溶出せず、約0.7Vから印加電圧の増加と共に溶出濃度も上昇し、飽和溶解濃度あたりで飽和することがわかる。
【0026】
このため、電気分解によって銀イオンを溶出するためには、標準電極電位以上の電圧を印加する必要がある。銀の標準電極電位は、約0.8Vであり、電極自身の分極抵抗、電極間の溶液抵抗もあり、電気分解時の印加電圧は各々の影響因子全て含めた電圧を印加する必要がある。そこで、電気分解時の印加電圧は、1.5V、望ましくは2V以上が好ましい。
【0027】
ここで、上記電圧を印可するため、印可電流を上げると、銀イオンの溶出量が高くなる、あるいは水量が少ないと、銀イオンの溶出量が高くなる可能性がある。銀イオン濃度が高くなると、黒ずみや人体への安全に留意する必要がある。このため、水量が少ない場合や溶出する銀イオン濃度が高い場合は、制御部13から印加する電圧もしくは電流をパルス印加することで、所定の銀イオン濃度に調整することが可能となる。
【0028】
例えば、2.2Vの印加時の銀イオン濃度は、1.2ppmであったが、水量を4ml/分に変更すると、2.4ppmの濃度となる。このため、制御部13による印加電圧2.2VをON-OFF制御することによって、流出部27から流出される銀イオン濃度を1.2ppmに低減することが可能である。安定した銀イオンを溶出可能な電圧を印加したうえで、印加電流や電圧を供給しないOFF時間を有するパルス制御を行うことによって、得たい銀イオン濃度に制御することが可能となる。
【0029】
ここで、電圧および電流を印加する時間と、印加しない時間との比率を1:1とした場合の周波数を検討した。結果、周波数が低いと、銀イオンの混合率が低下してしまい、銀イオン濃度の高い水と、低い水とが連続的に生成されてしまい抗菌性を均一に保つことが困難であった。
【0030】
一方、周波数が高いと、電極19,21への電流および電圧の印加とOFF時間とが追随しなくなり印加できない、電極表面に付着した気泡が転極することで離脱しにくくなるなどの影響で、銀イオンの生成効率が低下するなどの影響があった。そこで、これらの影響を排除し、安定した銀イオンの溶出および均一な混合を実現するために、周波数は0.2Hz~5Hzとすることが好ましい。
【0031】
このような噴霧器1は、電解部11によって所定濃度に生成された銀イオン水を、噴出部7から対象物に向けて噴出することによって、対象物に抗菌性を付与することが可能となる。この噴出部7からの銀イオン水の噴出においては、電解部11で生成した銀イオン水を、そのままポンプ9を介して噴出部7からミスト状に噴出してもよい。あるいは、タンク3の水を気化室5で気化し、スチーム状になった水に電解部11からの銀イオン水をミスト状にして混合し、噴出部7から噴出させてもよい。さらには、電解部11からの銀イオン水を気化室5で気化し、スチーム状になった銀イオン水を噴出部7から噴出させてもよい。
【0032】
なお、電解部11は、タンク3内に配置されてもよい。タンク3内に配置された電解部11は、タンク3内の水を電気分解し、タンク3内で銀イオン水を生成し、噴出部7から噴出させる。あるいは、電解部11は、気化室5内に配置されてもよい。気化室5内に配置された電解部11は、気化室5に供給された水を電気分解し、生成された銀イオン水を気化室5で気化させ、噴出部7から噴出させる。あるいは、気化室5内に配置された電解部11は、タンク3から供給された水を電気分解し、生成された銀イオン水と気化室5に供給された水とを混合し、気化室5で気化させ、噴出部7から噴出させる。さらには、電解部11は、気化室5と噴出部7との間に配置されてもよい。気化室5と噴出部7との間に配置された電解部11は、タンク3から供給された水を電気分解し、生成された銀イオン水と気化室5で気化された水とを混合し、噴出部7から噴出させる。
【0033】
このような噴霧器1では、電解部11が、水を制御部13の制御によって電気分解し、抗菌性を有する金属イオンを放出し、噴出部7が、金属イオンを含む水を噴出する。このため、噴出部7から噴出される水は、タンク3から噴出部7を流通する間に、電解部11によって抗菌性が付与されている。従って、このような噴霧器1では、水が抗菌性を有するまでの待機時間がなく、使い勝手をよくすることができる。
【0034】
また、電解部11の電極19,21は、銀電極である。このため、噴出部7から噴出される水に高い抗菌性を付与することができる。
【0035】
さらに、制御部13は、電解部11における通電をパルス通電とする。このため、電解部11で安定した濃度の金属イオンを生成することができ、安定した抗菌性を保持することができる。
【0036】
また、制御部13によるパルス通電は、周期を0.2~5Hzとする。このため、電解部11で安定した濃度の金属イオンを生成し、水と金属イオンとの混合を均一化し、安定した抗菌性を保持することができる。
【0037】
さらに、タンク3と噴出部7との間には、タンク3の水を噴出部7へ供給するポンプ9が配置されている。そして、電解部11は、タンク3とポンプ9との間に配置されている。このため、電解部11をポンプ9の上流側に配置することで、ポンプ9による電解部11への加圧を低減でき、電解部11の耐久性や電気分解効率を保持することができる。
【0038】
また、電解部11は、電極19,21が収容されるハウジング23を有する。さらに、ハウジング23の下部には、水をハウジング23の内部に流入させる流入部25が設けられている。そして、ハウジング23の上部には、ハウジング23の内部の水をハウジング23の外部に流出させる流出部27が設けられている。このため、ハウジング23の下部の流入部25から流入された水を、気泡と共にハウジング23の上部の流出部27から放出させることができる。従って、電気分解時に発生する酸素や水素などの気泡がハウジング23の上部に溜まることを抑制することができる。
【0039】
(第2実施形態)
図1~
図6を用いて第2実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態に係る噴霧器1は、制御部13が、水の導電率を検出する検出部29を有し、検出部29の出力に応じて電解部11に対する通電を制御する。
【0041】
また、検出部29は、電解部11への通電開始時における電極19,21間に流れるピーク電流を検出し、検出したピーク電流の値に基づいて水の導電率を検出する。
【0042】
さらに、検出部29は、電解部11に水が流れているときの電極19,21間に流れるピーク電流を検出する。
【0043】
なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0044】
通常、制御部13から電解部11に印加される電流は、水の導電率によって影響を受ける。これは、電極19,21の間に存在する溶液抵抗が導電率に依存するためである。このため、一般的に制御部13は、電極19,21に一定電流を印加し、金属イオンを溶出することで、導電率の影響を受けにくくしている。しかしながら、少量の水量を処理する場合や金属イオン濃度を低くしたい場合には、電極19,21に一定電流を印加しても、印加電流が低いため、金属イオンを溶出するために必要な電圧の影響を受けてしまう。このため、金属イオンの溶出量が導電率によって変化してしまうことがある。
【0045】
図4に水量8ml/分で0.4mAを印加した際の導電率と銀イオン濃度の関係を示す。
図4に示すように、電解部11によって溶出される銀イオンは、水の導電率によって影響を受ける。導電率が高くなると、印加される電圧が低くなり、銀イオンを溶出するのに必要な標準電位まで上がらず、
図3に示す印加電圧と銀イオン濃度の関係と同じ結果である。
【0046】
そこで、制御部13は、水の導電率を検出する検出部29を有する。制御部13が検出部29を有することにより、水の導電率を検出し、印加する電流を可変制御することで、導電率に影響なく一定の金属イオンの溶出量を保つことができる。なお、検出部29は、タンク3内、流路、もしくは電解部11など、電解部11に供給される水の導電率を検出できる箇所であれば、どのような箇所に設けてもよい。本実施形態においては、小型化および低コスト化を実現するために、検出部29としてシャント抵抗やホール素子を用い、電極19,21に流れるピーク電流を検出する構成としている。
【0047】
図5に導電率の違いによる電解部11に設けられた電極19,21に流れる電流波形を示す。
図5に示すように、導電率が高いと、通電開始時のピーク電流値が大きくなり(
図5に示す電流値B)、導電率が低いと、通電開始時のピーク電流値が小さくなる(
図5に示す電流値C)。また、水温によっても導電率が異なるため、通電開始直後のピーク電流値の大きさに違いが生じる。このため、検出部29は、通電開始直後から時間A経過後の電解部11に流れるピーク電流値を検出する。
【0048】
ここで、制御部13は、電解部11に水が流れていない場合、電解部11に通電しない。電解部11に水が流れていないときに通電してしまうと、ハウジング23内に滞留された水の金属イオン濃度が上昇してしまい、所定の金属イオン濃度の水を得ることができない。このため、検出部29は、電解部11に水が流れているときのピーク電流値を検出する。加えて、水が滞留しているときのピーク電流を検出すると、水量に対してピーク電流が影響する可能性がある。このため、流水では、一定量の水が流れているので、水量に影響することがなく、安定した導電率の検出を可能とすることができる。
【0049】
図6にタンク3内の水の導電率とピーク電流値の関係を示す。
図6に示すように、導電率とピーク電流値とは、直線関係が得られている。このため、検出部29によって、ピーク電流を検出することで導電率を算出することが可能となる。タンク3内の水の導電率がわかれば、その水質に応じた印加電圧あるいは電流を制御部13で制御することができる。従って、検出部29を有する制御部13を備えた噴霧器1では、水質によらず安定した金属イオン濃度の水を得ることができる。
【0050】
このような噴霧器1では、制御部13が、水の導電率を検出する検出部29を有し、検出部29の出力に応じて電解部11に対する通電を制御する。このため、電解部11において、水質によらず安定した金属イオンを溶出させることができる。
【0051】
また、検出部29は、電解部11への通電開始時における電極19,21間に流れるピーク電流を検出し、検出したピーク電流の値に基づいて水の導電率を検出する。このため、検出部29が大型化や高コスト化することなく、水の導電率を検出することができる。
【0052】
さらに、検出部29は、電解部11に水が流れているときの電極19,21間に流れるピーク電流を検出する。このため、検出部29が正確な水の導電率を検出でき、制御部13による電解部11の制御を安定化することができる。
【0053】
なお、噴霧器としては、水を蓄えるタンクと、タンクの水を電気分解し、抗菌性を有する金属イオンを生成する電解部と、金属イオンを含む水を噴出する噴出部と、を備える噴霧器としてもよい。また、電解部は、タンクと噴出部との間の流路に配置されていることが好ましい。さらに、電解部は、貴金属で構成された少なくとも2枚の電極を有し、電極は、電気分解により銀イオンを生成することが好ましい。
【0054】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。例えば、第1実施形態と第2実施形態で示した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0055】
本実施の形態においては、電解部の電極が2枚であるが、これに限らず、電極を3枚以上としてもよい。また、電極は、銀電極を用いているが、これに限らず、抗菌性を有する金属イオンを溶出するものであれば、電極はどのような電極を用いてもよい。
【0056】
本実施の形態においては、検出部が、電極に流れるピーク電流を検出しているが、これに限らず、タンク内や流路などに配置され、導電率を検出可能な新たなデバイスやセンサなどを検出部としてもよい。この場合には、検出部と制御部とを電気的に接続し、制御部を介して電極に印加する電流や電圧を制御すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示は、抗菌性を有する水を生成しスチームもしくはミストとして噴霧する装置に適用可能である。具体的には、衣類スチーマ、スチームアイロン、美顔器、加湿器、抗菌スプレなどに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 噴霧器
3 タンク
7 噴出部
9 ポンプ
11 電解部
13 制御部
19,21 電極
23 ハウジング
25 流入部
27 流出部
29 検出部