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特許7584039音響整合層、超音波送受信器、及びこれを用いた超音波流速計、超音波流量計及び超音波濃度計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】音響整合層、超音波送受信器、及びこれを用いた超音波流速計、超音波流量計及び超音波濃度計
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20241108BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 29/28 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
G01N29/07
G01N29/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020196517
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085040
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋田 昌道
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0342654(US,A1)
【文献】特開2005-257611(JP,A)
【文献】特開2016-153750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
G01F 1/66
G01N 29/07
G01N 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凹形状であることを特徴とする音響整合層。
【請求項2】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状であることを特徴とする音響整合層。
【請求項3】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状であることを特徴とする音響整合層。
【請求項4】
前記膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状であることを特徴とする請求項またはに記載の音響整合層。
【請求項5】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記接合部と前記膜状部材を接合する補強部材を有することを特徴とする音響整合層。
【請求項6】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記隔壁と前記膜状部材を接合する補強部材を有することを特徴とする音響整合層。
【請求項7】
前記補強部材が、音波の気体への伝播方向に対して略平行な面での断面形状が凹形状の板状部材からなることを特徴とする請求項またはに記載の音響整合層。
【請求項8】
前記補強部材が、音波の気体への伝播方向に対して略平行な面での断面形状が凸形状の板状部材からなることを特徴とする請求項またはに記載の音響整合層。
【請求項9】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記膜状部材の密度に対する引張強度の比が20kN・m/kg以上であることを特徴とする音響整合層。
【請求項10】
前記補強部材の密度に対する引張強度の比が20kN・m/kg以上であることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の音響整合層。
【請求項11】
音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成し、前記中空構造体は、前記膜状部材と前記隔壁と前記接合部で囲まれる空間を有し、
前記空間内が大気圧未満であることを特徴とする音響整合層。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の音響整合層と、前記音響整合層の接合部と接合された音波発生源とを備えたことを特徴とする超音波送受信器。
【請求項13】
被計測流体を通じる流路と、超音波を送受信する前記流路の上流と下流に取り付けられた請求項12に記載の超音波送受信器と、前記超音波送受信器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、前記計時装置により求めた到達時間より、流速を演算する演算手段と、を備える超音波流速計。
【請求項14】
被計測流体を通じる流路と、超音波を送受信する前記流路の上流と下流に取り付けられた請求項12に記載の超音波送受信器と、前記超音波送受信器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、前記計時装置により求めた到達時間より、流量を演算する演算手段と、を備える超音波流量計。
【請求項15】
被計測流体を通じる通気口を備える筐体と、前記筐体内部に所定の距離を離し対向して配置した請求項12に記載の一対の超音波送受信器と、前記筐体内部に配置した温度センサと、前記超音波送受信器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、前記計時装置により求めた到達時間より、伝播速度、混合ガスの平均分子量、ガス濃度を演算する演算手段と、を備える超音波濃度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に超音波の送受信の感度と、機械的強度、耐熱性が高い音響整合層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波発生源から空気等の気体への(超音波の)エネルギー伝達効率は、これらの音響インピーダンス(それぞれの物質の密度と音速の積)が近いほど高くなる。
【0003】
しかし、超音波発生源はセラミックス(密度と音速が高い)により構成されるのが一般的であり、超音波を伝達させようとする対象である空気等の気体の密度と音速は、セラミックスのそれらより大幅に小さい。従って、超音波発生源から空気へのエネルギー伝達効率は非常に低くなる。この問題を解決するため、超音波発生源と気体の間に、超音波発生源より音響インピーダンスが小さく、空気より音響インピーダンスが大きい音響整合層を介在させ、エネルギー伝達効率を高める対策が行われてきた。
【0004】
金属やセラミックス等からなる板状部材に、音波の伝播方向に欠損部を設けることにより、音響インピーダンスを低減し、欠損部を膜状部材で被うことにより、空気との運動量交換効率を向上することがなされてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-12921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、音波伝播方向に対して垂直方向の欠損部のスケールが大きくなると、膜状部材がたわむことにより、空気との運動量の交換効率が低減することが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の音響整合層は、音波伝播方向に伸縮させる力による耐性を向上した中空構造とすることにより、気体との界面での運動量交換効率向上と、前記音響整合層の変形による伝播効率低減の抑制がなされ、音波発生源の振動を高効率で気体へ伝播することができる。
【0008】
上記の音響整合層により、高効率で気体へ音波を伝達できるメカニズムを以下に示す。
【0009】
まず、音響インピーダンスの定義である密度と音速の積は、その物質の微小単位要素を構成する物質の運動量を示す。すなわち、微小単位要素を構成する物質の運動量をΔP、質量をΔM、速度をVmとすると、運動量の定義より、
ΔP(運動量)=ΔM×Vm(音響インピーダンス)
となり、音響インピーダンスは微小単位要素を構成する物質の運動量であることが判る。従って、音響整合層と気体の界面で起こる現象は、これらの運動量交換であり、運動量交換(伝播)を高効率で行える整合層が優れた特性を有している。更に、圧電素子と整合層の間でも高効率で運動量の交換がなされる整合層が優れた特性を有している。
【0010】
ここで、圧電素子から整合層への運動量が交換されるということは、圧電素子を構成する物質が、整合層を構成する物質に加速度を与え、整合層を構成する物質の速度(運動量)が大きくなり、作用反作用の法則により、圧電素子を構成する物質の速度(運動量)が低減する現象である。
【0011】
一般に、中空構造の部材は、外部から加速度が加わった場合、中空部分が縮小するように変形しやすい。一方、中空構造である音響整合層は圧電素子の加速度により、変形(座屈)し難いことが求められる。このような特性を満たす物質の配置として、整合層を構成する物質は、圧電素子により音波伝播方向に加速された際、(例えば棒状の部材が長さ方向に音波伝播方向に略水平、或いは、板状部材の平面方向が音波伝播方向に略水平に配置されている場合のように)圧縮力が加わる配置となっている場合に、圧電素子と高効率で運動量を交換することができる。これは、一般に物質は、曲げ強度(弾性率)に比較して圧縮強度が著しく強いため、圧電素子の加速度が加わった場合、座屈することなく(あたかも、より低密度で密な物質からなる整合層のように)音波伝達面(放射面)へ運動量を伝播することができるためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、密度が高い樹脂、金属、セラミックス等、バルクでは、音響インピーダンスが大きいため、音響整合層として不利な物質であっても中空構造とすることにより音響整合層として用いることができる。従って、高温、高圧環境等、従来用いられてきた樹脂の適用が難しい場合であっても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図2】実施の形態1における音波発生源が収縮状態の斜視図
図3】実施の形態2における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図4】実施の形態2における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図5】実施の形態2における音波発生源が収縮状態の斜視図
図6】実施の形態3における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図7】実施の形態3における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図8】実施の形態4における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図9】実施の形態4における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図10】実施の形態5における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図11】実施の形態5における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図12】実施の形態6における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図13】実施の形態6における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図14】実施の形態7における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図15】実施の形態7における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図16】実施の形態8における音波発生源が収縮状態の断面模式図
図17】実施の形態8における音波発生源が伸長状態の断面模式図
図18】実施の形態9における超音波送受信器の断面図
図19】実施の形態10における超音波流速計の概念図
図20】実施の形態11における超音波流量計の概念図
図21】実施の形態12における超音波濃度計の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、音波発生源と接合される接合部と、前記音波発生源の振動を気体へ伝播する放射部とを備えた中空構造体であり、前記接合部と前記放射部との間の外面を隔壁で覆い、前記放射部を膜状部材で形成した音響整合層である。
【0015】
音響整合層の役割は、音響インピーダンスが大きい音波発生源と、音響インピーダンスが小さい気体の間の音波の伝播、即ち運動量の交換効率を向上することである。一方、音響整合層での伝播ロスを低く抑えることも必要である。
【0016】
前者の特性を満たすためには、固体から構成される音響整合層の音響インピーダンスを低減させ、気体の音響インピーダンスへ近づけることが必要である。
【0017】
一方、音の伝播ロスは音響整合層が非弾性変形をすることによる熱へのエネルギー変換が支配的であると考えられる。従って、音の伝播ロスを抑制するためには、整合層の弾性率を高くする、即ち硬くすることにより、弾性変形が支配的となるようにすることが必要である。
【0018】
一般に、音響インピーダンスを小さくするために材料を多孔質構造とする場合が多いが、この場合は、材料本来より硬度が低下するため、変形しやすくなるという相反する特性を有する。従って、音波発生源から気体への音の伝播と整合層での伝播ロスの低減のいずれをも満足することは困難である。
【0019】
中空構造体の密度は、接合部と隔壁と膜状部材の重量を、接合部と隔壁と膜状部材で囲まれる空間の体積で除した値で定義される。従って、接合部と隔壁と膜状部材を薄くすることにより、任意に小さくすることができる。一方、中空構造体の音速は、接合面と膜状部材即ち放射部をつなく隔壁の音速になる。従って、構造体の音響インピーダンスも任意に小さくすることができ、構造体と気体との運動量の交換効率を向上することができる。
【0020】
一方、隔壁や膜状部材が薄くなると、強度が低下し、非弾性変形しやすくなるが、隔壁と膜状部材の特性や配置を適正化することにより、非弾性変形を抑制し、音の伝播ロスを低減することができる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凹形状であることを特徴とする音響整合層である。
【0022】
一般に、物質の引張や圧縮に対する変形のしにくさ、即ち強度は、曲げに対する耐性に比較して著しく高い。従って、中空構造体に音波伝播方向の力が加わった場合、接合部、隔壁、膜状部材に圧縮力あるいは引張力が加わるように配置することにより、中空構造体の強度を高くすることができる。接合部は音波発生源に密着しているため、音波発生源から加速度を加えられた際、音波伝播方向に圧縮或いは引張力が加わる。隔壁は接合部と略垂直に配置することで、音波発生源から加速度を加えられた際、音波伝播方向に圧縮或いは引張力が加わる。一方、膜状部材は音波を気体へ放射するため、音波伝播方向に対して略垂直を基本とした配置にならざるを得ない。そこで、予め膜状部材を音波伝播方向に凹形状としておくことにより、懸垂線の構造物と同様に、膜状部材の各部分には、その接線方向の引張力が加わることになる。
【0023】
以上のように、膜状部材を凹形状とすることにより、中空構造体に音波発生源から加速度が加わった際、膜状部材が変形しにくく、高効率で音波を伝播することができる。
【0024】
第3の発明は、第1または第2の発明において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状であることを特徴とする音響整合層である。
【0025】
一般に(重力)加速度下で、ロープ、ワイヤー等、一次元状の部材を、加速度方向と垂直方向に離れた2点(以下、支点と記載)で固定した際、ロープ等は略懸垂線構造をとる
。懸垂線は、支点に近い程傾斜が急峻(加速度方向側に向く)であり、支点と支点の中央部付近では支点を結ぶ線分に平行な形状となる。これは、各微小部分には、『加速度方向に』加速度による力(重力下では重量)が作用するが、微小部分には支点側、中央部付近側から引張力が作用し、引張力の合力が、『加速度と逆方向に』引張力を作用させ、これらの力が釣り合う状態となる。
【0026】
ここで、各微小部分に作用する引張力(ベクトル)は次の通りとなる。まず、ロープなどは静止しているのであるから、支点間方向に働く力の成分は、各微小部分で同じである。一方、加速度方向の力の成分は、中央部付近では、その(一つ目の)微小部分に働く力を隣接する(二つ目)部分からの引張力で打ち消している。次に、二つ目の微小部分に作用する力は、当該部分に作用する加速度による力と、一つ目の部分から加わる力である(加速度方向の合力1)。更に、三つ目の微小部分に作用する力は、当該部分に作用する加速度による力と、加速度方向の合力の合計(加速度方向の合力2)となり、支点に近くなるに従って、各微小部分に加わる加速度方向の力が大きくなり、傾斜が急峻になる。
【0027】
ここで、懸垂線を表す方程式は下記の通りである。中央部の高さを0、中央部から隔壁方向への座標をx、aを定数とすると、下記の通りである。
【0028】
y=a(exp(ax)+exp(-ax))/2 ・・・(1)
式(1)から判るように、懸垂線は中央部から隔壁方向へ対称的な形状である。ここで、aは定数であるため、緩やかな形状から急峻な形状までとることができる。
【0029】
膜のように二次元状の材料では、上記の支点に相当する部分(隔壁と膜状材料の接合部)に近づくに従って、一次元状の部材は太くなるが、作用する力は引張力が支配的となる状況は同じである。
【0030】
以上のように、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状であることにより、膜状部材には、曲げ応力ではなく、引張力が加わるため、変形を抑えることができる。
【0031】
以上より、中空構造体に音波発生源から加速度が加わった際、変形しにくく高い効率で音波を伝播することができる。
【0032】
第4の発明は、第1の発明において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状であることを特徴とする音響整合層である。
【0033】
予め膜状部材を音波伝播方向に凸形状としておくことにより、第2の発明と同様に、膜状部材の各部分には、その接線方向の圧縮力が加わることになる。即ち、アーチ形状の構造物と同様に、膜状部材の各部分には圧縮力が加わることになる。
【0034】
以上より、中空構造体に音波発生源から加速度が加わった際、変形しにくく高い効率で音波を高効率で伝播することができる。
【0035】
第5の発明は、第3または第4の発明において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状であることを特徴とする音響整合層である。
【0036】
構造力学において、アーチは懸垂線を加速度方向が逆となるようにしたものであり、懸垂線での部材の各微小部分に作用する引張力が、圧縮力となるものである。従って、加速度による変形を小さく抑えることができ、第4の発明同様に中空構造体に音波発生源から
加速度が加わった際、変形しにくく高い効率で音波を高効率で伝播することができる。
【0037】
第6の発明は、第1から第5のいずれか1つの発明において、接合部と膜状部材を接合する補強部材を有することを特徴とする音響整合層である。
【0038】
膜状部材は、音波を放射する必要があるため、平面或いは曲率が一定した形状である必要がある。これに対し、音波を放射する部材以外であれば、任意の形状をとることができる。そこで、補強部材として、音波放射面を支える部材を用いることで、中空構造体に音波発生源から加速度が加わった際、変形しにくく高い効率で音波を高効率で伝播することができる。
【0039】
第7の発明は、第1から第5のいずれか1つの発明において、隔壁と膜状部材を接合する補強部材を有することを特徴とする音響整合層である。
【0040】
隔壁は、音波発生源と略垂直の配置とすることができるため、その加速度に対して引張と圧縮の応力が加わるため、変形し難い。そこで、隔壁と膜状部材を補強部材で接合することにより、膜状部材の変形、即ち音波発生源の加速度によるたわみを抑制することができる。
【0041】
第8の発明は、第6または第7の発明において、補強部材が、音波の気体への伝播方向に対して略平行な面での断面形状が凹形状の板状部材からなることを特徴とする音響整合層である。
【0042】
第2の発明と同様に、凹形状の部材は、音波伝播方向の加速度に対して変形し難い特徴がある。そこで、膜状部材が非常に薄く、凹形状での成型が難しい、即ち平面状の場合であっても、補強部材により支えることで、膜状部材のたわみを抑制することができる。
【0043】
第9の発明は、第6または第7の発明において、補強部材が、音波の気体への伝播方向に対して略平行な面での断面形状が凸形状の板状部材からなることを特徴とする音響整合層である。
【0044】
第4の発明と同様に、凸形状の部材は、音波伝播方向の加速度に対して変形し難い特徴がある。そこで、膜状部材が非常に薄く、凸形状での成型が難しい、即ち平面状の場合であっても、補強部材により支えることで、膜状部材のたわみを抑制することができる。
【0045】
第10の発明は、第1から第9のいずれか1つの発明において、膜状部材あるいは補強部材の密度に対する引張強度の比が20kN・m/kg以上であることを特徴とする音響整合層である。
【0046】
第1から第9の発明では、膜状部材や補強部材に引張力や圧縮力が加わるようにして変形を抑制している。膜状部材に引張力が加わった場合、その力を弾性率で除した割合で、僅かではあるが伸長する。そこで、引張強度が大きい材料を用いることにより、伸長を抑えることができる。ここで、膜状部材に加わる引張力は、音波発生源の加速度に膜の自重を加えたものである。即ち、密度が小さい程自重が小さくなるため、加わる引張力が小さくなる。そこで、密度に対する引張強度の比が大きい材料程、音波発生源の加速度による変形が小さくなる。従って、高効率で空気に運動量を伝播することができる音響整合層を得ることができる。
【0047】
第11の発明は、第1から第10のいずれか1つの発明において、音波発生源と隔壁と放射部からなる空間内が大気圧未満であることを特徴とする音響整合層である。
【0048】
音波発生源と隔壁と放射部からなる空間内が大気圧未満であることにより、これらの空間の圧力と大気圧の差により、放射部を構成する膜状部材或いは、補強部材に対して、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凹形状となる力が加わる。従って、膜状部材や補強部材として平面状の部材を用いることができる。従って、低価格で、高効率で空気に運動量を伝播することができる音響整合層を得ることができる。
【0049】
第12の発明は、第1から11のいずれか1つの発明の音響整合層と、前記音響整合層の接合部と接合された音波発生源を備えたことを特徴とする超音波送受信器である。
【0050】
第1から第11の発明の音響整合層金属等、耐熱性や耐衝撃性などの耐久性に優れた材料で作製することができる。従って、高温環境等、厳しい環境で使用可能な超音波送受信器を得ることができる。
【0051】
第13の発明は、被計測流体を通じる流路と、超音波を送受信する前記流路の上流と下流に取り付けられた第12の発明の超音波送受信器と、前記超音波送受信器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、前記計時装置により求めた到達時間より、流速を演算する演算手段と、を備える超音波流速計である。
【0052】
流速を計測する気体は、流路と超音波送受信器に接触する。ここで、流路はその耐久性を満たすため、金属等、耐久性が高い材料で作製することができる。一方、音響整合層は密度(音響インピーダンス)が小さい材料であること必要であるが、金属を中空構造とすることにより、低密度で耐久性に優れた音響整合層を得ることができる。この音響整合層を用いた超音波送受信器を用いることで、耐久性が必要な高温の気体の流速の測定が可能になる。
【0053】
第14の発明は、被計測流体を通じる流路と、超音波を送受信する前記流路の上流と下流に取り付けられた第12の発明の超音波送受信器と、前記超音波送受信器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、前記計時装置により求めた到達時間より、流量を演算する演算手段と、を備える超音波流量計である。
【0054】
流量を計測する気体は、流路と超音波送受信器に接触する。ここで、流路はその耐久性を満たすため、金属等、耐久性が高い材料で作製することができる。一方、音響整合層は密度(音響インピーダンス)が小さい材料であること必要であるが、金属を中空構造とすることにより、低密度で耐久性に優れた音響整合層を得ることができる。この音響整合層を用いた超音波送受信器を用いることで、耐久性が必要な高温の気体の流量の測定が可能になる。
【0055】
第15の発明は、被計測流体を通じる通気口を備える筐体と、前記筐体内部に所定の距離を離し対向して配置した第12の発明の一対の超音波送受信器と、前記筐体内部に配置した温度センサと、前記超音波送受信器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、前記計時装置により求めた到達時間より、伝播速度、混合ガスの平均分子量、ガス濃度を演算する演算手段と、を備える超音波濃度計である。
【0056】
濃度を計測する気体は、流路と超音波送受信器に接触する。ここで、流路はその耐久性を満たすため、金属等、耐久性が高い材料で作製することができる。一方、音響整合層は密度(音響インピーダンス)が小さい材料であること必要であるが、金属を中空構造とすることにより、低密度で耐久性に優れた音響整合層を得ることができる。この音響整合層を用いた超音波送受信器を用いることで、耐久性が必要な高温の気体の濃度の測定が可能になる。
【0057】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0058】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図2は、本発明の実施の形態1における音波発生源が収縮状態の斜視図である。
【0059】
図1において、音響整合層1は、膜状部材2、隔壁3、接合部4からなる中空構造体5からなり、接合部4が音波発生源6に接合されている。そして、膜状部材2は、音波発生源6の振動を気体へ伝播する放射部として機能する。
【0060】
図1において、膜状部材2は、厚さ100μm、直径8mmのSUS304箔からなる箔である。隔壁3は、内径7mm厚さ0.5mm、高さ2.9mmのSUS304からなる円筒である。接合部4は、厚さ0.3mm、直径8mmのSUS304からなる板である。音波発生源6は、電圧の印加により伸縮して超音波を発生する圧電素子である。
【0061】
図1に示す通り、中空構造体5は、膜状部材2、隔壁3、接合部4により構成されている。以下、中空構造体5が、音響整合層1として機能するメカニズムを示す。
【0062】
まず、音波発生源6が収縮状態にある場合を説明する。
【0063】
音波発生源6が収縮状態の場合、振り子やバネの運動と同様に接合部4の速度は最小である0であり、図1に示す上向きの加速度方向(音波伝播方向)の加速度は最大になる。接合部4の加速度は隔壁3に対して音波伝播方向に対して平行方向、即ち隔壁3を圧縮する方向に作用する。SUS304は圧縮に対して非常に強度が高いため、加速度による変形は非常に小さく、膜状部材2は、隔壁3と接合されている接合部分2aの加速度は接合部4の加速度とほぼ同等になる。同時に、隔壁3は膜状部材2に対して音波伝播方向に加速度を加えるが、この際、膜状部材2は音波伝播方向に対して略垂直な面に対して平行になっている。
【0064】
このため、図2に示す通り、膜状部材2は、隔壁3との接合部分2aに近い部分は隔壁3に追従し、隔壁3との接合部分2aから遠い部分を音波伝播方向に加速するため、同方向に力を加える。この際、作用反作用の法則により、接合部分2aに近い部分は、隔壁3から遠い部分の方向から引張力を受ける。従って、膜状部材2は、図2に示すようにたわむことになる。この結果、膜状部材2から空気へは運動量を伝播することができるが、それは隔壁3から近い部分を介してが支配的になる。
【0065】
しかし、隔壁3は円筒型であるため、隔壁3の伸縮により膜状部材2へ加えられる加速度は対称的である。このため、膜状部材2は、対称性を保ちつつ変形するため、たわみの影響を少なくすることができ、(隔壁3が多角形である場合に想定される)しわも発生し難い。従って、放射面である膜状部材2から発生する音波の対称性も保たれ、高効率で音波を気体に伝播させることができる。
【0066】
以上の理由により、隔壁3の直径が小さい程、音響整合層の面積に対して気体へ運動量の伝播に寄与する面積の割合が高くなり、より多くの運動量を伝播することができる。一方、隔壁3の直径が小さくなると、音響整合層に占める隔壁3の割合が大きくなるため、見かけの密度の低減には限界がある。
【0067】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図4は本発明の実施の形態2における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。図5は本発明の実施の形態2における音波発生源が収縮状態の斜視図である。
【0068】
図3において、音響整合層1は、膜状部材2、隔壁3、接合部4からなる中空構造体5からなり、接合部4が音波発生源6に接合されている。
【0069】
図3において、膜状部材2は、厚さ100μm、直径8mmのSUS304箔からなり、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凹形状になっている。隔壁3は、内径7mm厚さ0.5mm、高さ2.9mmのSUS304からなる円筒である。接合部4は、厚さ0.3mm、直径8mmのSUS304からなる板である。音波発生源6は電圧の印加により伸縮して超音波を発生する圧電素子である。
【0070】
図3に示す通り、中空構造体5は、膜状部材2、隔壁3、接合部4により構成されている。以下、中空構造体5が、音響整合層1として機能するメカニズムを示す。
【0071】
まず、音波発生源6が収縮状態にある場合を説明する。
音波発生源6が収縮状態の場合、振り子やバネの運動と同様に接合部4の速度は最小である0であり、図3に示す上向きの加速度方向(音波伝播方向)の加速度は最大になる。接合部4の加速度は隔壁3に対して音波伝播方向に対して平行方向、即ち隔壁3を圧縮する方向に作用する。SUS304は圧縮に対して非常に強度が高いため、加速度による変形は非常に小さく、膜状部材2と接合されている接合部分2aの加速度は接合部4の加速度とほぼ同等になる。同時に、隔壁3は膜状部材2に対して音波伝播方向に加速度を加えるが、この際、膜状部材2は音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凹形状になっている為、膜状部材2の各部分には引張力が加わった状態となっている。この現象は、ロープ等、細長い部材が懸垂線となっている場合、各部分には引張力が加わるのと同様の現象である。
【0072】
従って、隔壁3から加えられた加速度により膜状部材2に発生する引張力による膜状部材2の変形量は図1に示す膜状部材2が平面の場合よりも小さくなり、膜状部材2は、ほぼ全面が気体へ運動量を伝播することに寄与しうる。従って、気体に対して音、即ち運動量を高効率で伝播することができる。
【0073】
次に、音波発生源6が伸長状態にある場合を説明する。
【0074】
音波発生源6が伸長状態の場合、振り子やバネの運動と同様に接合部4の速度は最小である0であり、図4に示す下向きの加速度方向(音波発生源方向)の加速度は最大になる。接合部4の加速度は隔壁3に対して音波伝播方向に対して平行方向、即ち隔壁3を伸長する方向に作用する。SUS304は引張に対しても非常に強度が高いため、加速度による変形は非常に小さく、膜状部材2と接合されている部分の加速度は接合部4の加速度とほぼ同等になる。
【0075】
図5に示す通り、膜状部材2は隔壁3に接合されており、隔壁3から距離が大きくなるに従って凹形状になっているため、隔壁3が伸長すると、膜状部材2に引張力を加える。引張力の加わり方は、図3で説明した通りである。ここで、図2では引張力が隔壁3付近には強く加わるため、隔壁3から遠い部分へは力が伝わり難いため、膜状部材の2の中心部の振動が小さくなるが、図5では膜状部材2には、中心部付近まで引張力が伝わるため、より効率的に空気に運動量を伝えることができる。
【0076】
従って、隔壁3から加えられた加速度により膜状部材2に発生する圧縮力による膜状部
材2の変形量は小さくなり、膜状部材2は、ほぼ全面が気体へ運動量を伝播することに寄与しうる。従って、気体に対して音波、即ち運動量を高効率で伝播することができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態によると、膜状部材2を凹形状とすることにより、中空構造体に音波発生源から加速度が加わった際、膜状部材2が変形しにくく、高効率で音波を気体に伝播することができる。
【0078】
なお、本実施の形態において、膜状部材2、隔壁3、接合部4の接合方法は溶接、ロウ付け、拡散接合等を用いることができるがこれらに限定するものではない。
【0079】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図7は本発明の実施の形態3における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。
【0080】
実施の形態3では、実施の形態2における膜状部材2の凹形状を、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状として実施した。その他は、実施の形態2と同様である。
【0081】
そして、膜状部材2が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状であることにより、膜状部材2には、曲げ応力ではなく、引張力が加わるため、より変形を抑えることができる。
【0082】
ここで、SUS304からなる膜状部材2の引張と圧縮による変形に関して考察する。
【0083】
上記のメカニズムで、膜状部材2が音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状である場合、材料が引張や圧縮により伸縮しない場合、膜状部材の中心は隔壁の伸縮に完全に追従すると考えられるが、実際には僅かではあるが伸縮するため、中心の伸縮度合いは、隔壁3の伸縮度合いより小さくなる。一般に、密な材料であれば、圧縮による変形は非常に小さい。従って、膜状部材2は、引張強度が大きく、密度が小さい材料(比強度が大きい)が望ましい。
【0084】
例えば、SUS304の引張強度は500MPa、密度は7.95g/cm程度であるから、密度に対する引張強度の大きさ、即ち比強度は62.9kN・m/kg程度である。アルミニウム(A1050)の引張強度は78MPa、密度は2.7g/cm程度であるから、比強度は28.9kN・m/kg程度、アルミニウム合金の引張強度は600MPa、密度は2.7g/cm程度であるから、比強度は222.2kN・m/kg程度である。また、チタンの引張強度は393MPa、密度は4.51g/cm程度であるから、比強度は87.1kN・m/kg程度である。
【0085】
更に、ガラス繊維の引張強度は3500MPa、密度は2.5g/cm程度であるから、比強度は1400kN・m/kg程度であり、炭素繊維の引張強度は4000MPa、密度は1.7g/cm程度であるから、比強度は2352kN・m/kg程度となり、金属と比較しても著しく大きな値を示す。これらの材料(ガラス繊維や炭素繊維)では膜状部材を形成することは困難であるが、これらにより強化した樹脂との複合材料で膜状部材を作製することにより、優れた特性が期待できる。
【0086】
上記の通り、主な金属材料の比強度は20kN・m/kg以上である。これに対し、ゴムの引張強度は15MPa、密度は0.92g/cm程度であるから、比強度は16.3kN・m/kg程度である。
【0087】
柔軟な材料であるゴムを膜状部材として用いた場合は、整合層としての特性を得るのは難しい。これらを鑑みると、整合層としての特性を得るための比強度は20kN・m/kg以上必要であると考えられる。
【0088】
(実施の形態4)
図8は本発明の実施の形態4における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図9は本発明の実施の形態4における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。
【0089】
図8において、音響整合層1は、膜状部材2、隔壁3、接合部4からなる中空構造体5からなり、接合部4が音波発生源6に接合されている。そして、膜状部材2は、音波発生源6の振動を気体へ伝播する放射部として機能する。
【0090】
図8において、膜状部材2は、厚さ100μm、直径8mmのSUS304箔からなり、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状になっている。隔壁3は、内径7mm、厚さ0.5mm、高さ2.9mmのSUS304からなる円筒である。接合部4は、厚さ0.3mm、直径8mmのSUS304からなる板である。音波発生源6は、電圧の印加により伸縮して超音波を発生する圧電素子である。
【0091】
図8に示す通り、中空構造体5は、膜状部材2、隔壁3、接合部4により構成されている。以下、中空構造体5が、音響整合層として機能するメカニズムを示す。
【0092】
まず、音波発生源6が収縮状態にある場合を説明する。
【0093】
音波発生源6が収縮状態の場合、接合部4の加速度は隔壁3に対して音波伝播方向に対して平行方向、即ち隔壁3を圧縮する方向に作用する。SUS304は圧縮に対して非常に強度が高いため、加速度による変形は非常に小さく、膜状部材2と接合されている接合部分2aの加速度は接合部4の加速度とほぼ同等になる。同時に、隔壁3は膜状部材2に対して音波伝播方向に加速度を加えるが、この際、膜状部材2は音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状になっている為、膜状部材2の各部分には圧縮力が加わった状態となっている。この現象は、アーチ形状の構造の各部分には圧縮力が加わるのと同様の現象である。
【0094】
従って、隔壁3から加えられた加速度により膜状部材2に発生する圧縮力による膜状部材2の変形量は図1に示す膜状部材2が平面の場合よりも小さくなり、気体に対して音波、即ち運動量を高効率で気体に伝播することができる。
【0095】
次に、音波発生源が伸長状態にある場合を説明する。
【0096】
音波発生源6が伸長状態の場合、図9に示す下向きの加速度方向(音波発生源方向)の加速度は最大になる。接合部4の加速度は隔壁3に対して音波伝播方向に対して逆方向、即ち隔壁3を引張る方向に作用する。SUS304は引張に対して非常に強度が高いため、加速度による変形は非常に小さく、膜状部材2と接合されている接合部分2aの加速度は接合部4の加速度とほぼ同等になる。同時に、隔壁3は、膜状部材2に対して音波発生源方向に加速度を加えるが、この際、膜状部材2は音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状になっている為、膜状部材2の各部分には引張力が加わった状態となっている。この現象は、ロープ等、細長い部材が懸垂線となっている場合、各部分には引張力が加わるのと同様の現象である。
【0097】
従って、隔壁3から加えられた加速度により膜状部材2に発生する引張力による膜状部材2の変形量は図1に示す膜状部材2が平面の場合よりも小さくなり、気体に対して音波
、即ち運動量を高効率で伝播することができる。
【0098】
以上のように、実施の形態4で、音波発生源が収縮状態の場合、実施の形態2で音波発生源が伸長状態の場合と同様の力が膜状部材2に加わる。一方、音波発生源が伸長状態の場合、膜状部材2には実施の形態2で音波発生源が収縮状態と同様の力が加わる。しかし、予め膜状部材2を音波伝播方向に凸形状としておくことにより、音波発生源から加速度が加わった際、変形しにくく高効率で音波を気体に伝播することができる。
【0099】
なお、本実施の形態において、膜状部材2、隔壁3、接合部4の接合方法は溶接、ロウ付け、拡散接合等を用いることができるがこれらに限定するものではない。
【0100】
(実施の形態5)
図10は本発明の実施の形態5における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図11は本発明の実施の形態5における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。
【0101】
実施の形態5では、実施の形態3における膜状部材2の凸形状を、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状として実施した。その他は、実施の形態3と同様である。
【0102】
図10において、音響整合層1は、膜状部材2、隔壁3、接合部4からなる中空構造体5からなり、接合部4が音波発生源6に接合されている。
【0103】
実施の形態5で、音波発生源6が収縮状態の場合、実施の形態3での音波発生源が伸長状態の場合に相当し、実施の形態5で音波発生源6が伸長状態の場合、実施の形態3で音波発生源6が収縮状態の場合に相当する。そして、膜状部材2は、音波発生源6の振動を気体へ伝播する放射部として機能する。
【0104】
そして、膜状部材2の形状を音波伝播方向に略アーチ形状することにより、加速度による変形を小さく抑えることができ、中空構造体5に音波発生源6から加速度が加わった際、変形しにくく、高効率で音波を気体に伝播することができる
(実施の形態6)
図12は本発明の実施の形態6における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図13は本発明の実施の形態6における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。
【0105】
図12において、音響整合層1は、膜状部材2、隔壁3、接合部4からなる中空構造体5からなり、接合部4が音波発生源6に接合されている。更に、中空構造体5の内部には、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状である補強部材7が内包されており、補強部材7の外周部7aは、隔壁3と接合部4との部分で接合され、頂点部分7bは、膜状部材2が接合されている。そして、膜状部材2は、音波発生源6の振動を気体へ伝播する放射部として機能する。
【0106】
図12において、膜状部材2は、厚さ20μm、直径8mmの、平面状のアルミ箔からなる。隔壁3は、内径7mm厚さ0.5mm、高さ2.9mmのアルミニウムからなる円筒である。接合部4は、厚さ0.3mm、直径8mmのSUS304からなる板である。音波発生源6は、電圧の印加により伸縮して超音波を発生する圧電素子である。
【0107】
以下、膜状部材2と中空構造体5が、音響整合層1として機能するメカニズムを示す。
【0108】
まず、音波発生源6が収縮状態にある場合を説明する。
【0109】
音波発生源6が収縮状態にある場合、接合部4の加速度は隔壁3と補強部材7に対して圧縮力を加える。補強部材7へ圧縮力が加わる現象は、アーチ形状の構造の各部分には圧縮力が加わるのと同様の現象である。従って、補強部材7の変形は小さく、補強部材7に接合された膜状部材2の中央部2b付近の変形も小さくなる。一方、膜状部材2と隔壁3の接合部分2aから、膜状部材2の中間部2c付近には音波発生源方向へ曲げ応力が加わる。ここで、膜状部材2と隔壁3の接合部分2aから中間部2c付近へのスパンが短いため、膜状部材2の変形は小さくなる。
【0110】
以上より、隔壁3から加えられた加速度による膜状部材2の変形は小さく、気体に対して音波、即ち運動量を高効率で伝播することができる。
【0111】
次に、音波発生源が伸長状態にある場合を説明する。
【0112】
音波発生源が伸長状態にある場合、隔壁3は補強部材7に対して音波発生源方向に加速度を加えるが、この際、補強部材7は音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凸形状になっている。
【0113】
従って、補強部材7の各部分には引張力が加わる。この現象は、ロープ等、細長い部材が懸垂線となっている場合、各部分には引張力が加わるのと同様の現象である。
【0114】
従って、補強部材7の変形は小さく、補強部材7に接続された膜状部材2の中央部2b付近の変形も小さくなる。一方、膜状部材2と隔壁3の接合部分2aから、膜状部材2の中間部2c付近には音波伝播方向へ曲げ応力が加わる。ここで、膜状部材2と隔壁3の接合部分2aから中間部2cへのスパンが短いため、膜状部材2の変形は小さくなる。
【0115】
以上より、膜状部材2を補強部材7で補強することで、膜状部材2の変形を防止することができ、薄いアルミ箔のように、曲げ加工による成型が難しい材料であっても、膜状部材として用いることができるようになる。
【0116】
なお、本実施の形態において、膜状部材2、隔壁3、接合部4、補強部材7の接合方法は溶接、ロウ付け、拡散接合、接着剤等を用いることができるがこれらに限定するものではない。
【0117】
(実施の形態7)
図14は本発明の実施の形態7における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図15は本発明の実施の形態7における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。
【0118】
実施の形態7では、実施の形態3において、膜状部材2と接合部4を、円筒状の補強部材7で接合したものである。ここで、補強部材7の中心部は、膜状部材2の中央部に配置されている。その他は、実施の形態3と同様である。
【0119】
図14に示すように、音波発生源6が収縮状態の場合は膜状部材2には、引張力が加わるため、僅かではあるが伸びにることにより、中央部付近は隔壁3の加速度方向と逆方向に延びる。ここで、補強部材7は、膜状部材2に対して隔壁3と同じ方向に加速度を加える。従って、膜状部材2の伸びによる変形を抑えることができ、より高効率で気体へ運動量を伝播させることができる。
【0120】
一方、図15に示すように、音波発生源6が収縮伸長状態の場合は膜状部材2には、圧縮力が加わるため、僅かではあるが縮むことになる。ここで、補強部材7は、膜状部材2に対して隔壁3と同じ方向に加速度を加える。従って、膜状部材2の収縮による変形を抑
えることができ、より高効率で気体へ運動量を伝播させることができる。
【0121】
以上のように、音波発生源6が収縮状態、伸長状態いずれの状態にある場合でも、補強部材7により膜状部材2の変形を抑えることができ、より高性能な音響整合層を得ることができる。
【0122】
(実施の形態8)
図16は本発明の実施の形態8における音波発生源が収縮状態の断面模式図である。図17は本発明の実施の形態8における音波発生源が伸長状態の断面模式図である。
【0123】
図16において、音響整合層1は、膜状部材2、隔壁3、接合部4からなる中空構造体5からなり、接合部4が音波発生源6に接合されている。そして、膜状部材2は、音波発生源6の振動を気体へ伝播する放射部として機能する。
【0124】
図17において、膜状部材2は、厚さ50μm、直径8mmのSUS304箔からなり、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に凹形状になっている。隔壁3は、内径7mm厚さ0.5mm高さ2.9mmのSUS304からなる円筒である。接合部4は厚さ0.3mm、直径8mmのSUS304からなる板である。音波発生源6は電圧の印加により伸縮して超音波を発生する圧電素子である。
【0125】
ここで、膜状部材2、隔壁3、接合部4は真空中で拡散接合により接合されていることにより、中空構造体5の内部は真空になっている。このため、膜状部材2には音波発生源方向に曲げ応力が加わった結果、凹形状になっている。従って、実施の形態2と同様に、音響整合層としての特性が得られる。
【0126】
なお、本実施の形態において、中空構造体5内を真空にできる接合方法であれば、膜状部材2、隔壁3、接合部4、補強部材7の接合方法は溶接、ロウ付け、拡散接合、接着剤等を用いることができるがこれらに限定するものではない。
【0127】
(実施の形態9)
図18は本発明の実施の形態9における超音波送受信器の断面図である。
【0128】
図18に示す通り、超音波送受信器8は、実施の形態1~7で説明した音響整合層1が、音波発生源6に接合部4を介して接合されている。音波発生源6は、圧電素子からなり、接合面側の電極に接続された信号線9と対面側の電極に接続された信号線10が接続されている。そして、信号線9と信号線10に電圧を加えることにより、圧電素子はその周波数に応じた頻度で伸縮し、音響整合層1に加速度を与える。ここで、隔壁3は音波発生源6の周囲より内側にあることにより、隔壁3へは音波発生源の伸縮を高効率で伝播することができる。従って、優れた特性を有する超音波送受信器を得ることができる。
【0129】
(実施の形態10)
図19は本発明の実施の形態10における超音波流速計の概念図である。
【0130】
図19に示す通り、超音波流速計11は、流路12に対して、超音波送受信器13、超音波送受信器14が斜めに取り付けられている。更に、超音波送受信器13と14は計時装置15に接続され、計時装置15は演算手段16が接続されている。
【0131】
流路12の中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC(図示せず)、流体の流れる方向と超音波の伝播方向の角度をθとする。超音波送受信器13を超音波送信器、超音波送受信器14を超音波受信器として用いたときに、超音波送受信器13から出た
超音波が超音波送受信器14に到達する伝播時間t1は、
t1=L/(C+Vcosθ) ・・・(2)
で示される。
【0132】
次に、超音波送受信器13から出た超音波パルスが超音波送受信器14に到達する伝播時間t2は、
t2=L/(C-Vcosθ) ・・・(3)
で示される。
【0133】
更に、式(2)と(3)から流体の音速Cを消去すると、
V=L/2cosθ(1/t1-1/t2) ・・・(4)
の式が得られる。
【0134】
Lとθが既知であれば、計時装置15にてt1とt2を測定すれば流速Vを求めることができる。加えて、演算手段16によって、この流速Vに断面積Sと補正係数Kを乗じれば、流量Qを求めることができる。演算手段16は、上記Q=KSVを演算するものである。
【0135】
超音波送受信器は流体に暴露されるため、流体が高温である場合、耐熱性が必要とされ、腐食性を有する場合は耐食性が必要とされるように、耐久性が必要となる場合、これらは金属等、耐熱性や耐食性等の耐久性を有する材料であることが必要である。ここで、音波発生源はステンレス等の耐久性を有する材料で被うことにより、耐久性を確保することができるが、音響整合層は流体へ超音波を伝播させる必要があることから、何らかの部材で被うことは困難である。ここで、音響整合層が耐久性を有する金属等であるため、優れた耐久性を有する超音波流速計を得ることができる。
【0136】
(実施の形態11)
図20は本発明の実施の形態11における超音波流量計の概念図である。
【0137】
図20に示す通り、超音波流量計17は、流路12に対して、超音波送受信器13、超音波送受信器14が斜めに取り付けられている。更に、超音波送受信器13と14は計時装置15に接続され、計時装置15は演算手段18が接続されている。
【0138】
実施の形態9と同様の方法で算出した流速と、流路12の面積をかけることにより、流量が算出される。
【0139】
超音波流速計と同様に、優れた耐久性を有する超音波流量計を得ることができる。
【0140】
(実施の形態12)
図21は本発明の実施の形態12における超音波濃度計の断面図である。
【0141】
図21に示す通り、超音波濃度計19は、気体濃度を測定するための濃度測定空間20を有する筐体21を備えており、筐体21には被計測流体を通すための通気孔22が設けられている。筐体21における濃度測定空間20の形状は例えば直方体や円筒型が可能である。濃度測定空間20は、必ずしも筐体21の壁によって全方向が囲まれていなくてもよく、少なくとも超音波を送受信できる空間であればよい。例えば、筐体21の一部を欠損させ、その欠損部において濃度測定空間20が外部に開放されていてもよい。
【0142】
濃度測定空間20内に、実施の形態8で説明した超音波送受信器8の構成を用いた一対の超音波送受信器23、24を対向するように配置し、さらに、温度センサ25を収容し
、計時装置26および演算手段27に接続されている。
【0143】
次に、気体濃度計の動作を説明する。
【0144】
超音波送受信器23を超音波送信器として用いる場合、計時装置26の動作に基づいて超音波を送信する。超音波送受信器24は、超音波受信器として機能し、超音波送受信器23から送信された超音波は、濃度測定空間20に満たされた被計測流体中を伝播し、超音波受信器として用いた超音波送受信器24は、超音波を受信する。計時装置26は、超音波が送信されてから受信されるまでの伝播時間と、予め定められた超音波の伝播距離Lに基づいて、超音波の伝播速度Vsを求める。
この被計測流体である混合ガス中を伝播する超音波の伝播速度Vsは、式(5)で表されるように、混合ガスの平均分子量M、比熱比γ、気体定数R及び絶対温度T(K)によって決まる。音速及び温度を測定すれば平均分子量が求まる。
【0145】
Vs=γ・R・T/M ・・・(5)
混合ガス中のガス成分が既知のときは、ガスの絶対温度T及び伝播速度Vsを測定して平均分子量Mを求め、平均分子量Mから求めるガス濃度を演算できる。濃度演算式はa,bからな
る2種混合理想気体の場合式(6)のようになる。
【0146】
ガスaの濃度(%)=M-mb / ma-mb×100 ・・・(6)
ma及びmbはそれぞれaガス及びbガスの分子量を表す。
【0147】
超音波送受信器は流体に暴露されるため、流体が高温である場合、腐食性を有する場合など、耐久性が必要となる場合、これらは金属等の耐久性を有する材料であることが必要である。ここで、音波発生源はステンレス等の耐久性を有する材料で被うことにより、耐久性を確保することができるが、音響整合層は流体へ超音波を伝播させる必要があることから、何らかの部材で被うことは困難である。ここで、音響整合層が耐久性を有する金属等であるため、優れた耐久性を有する超音波濃度計を得ることができる。
【0148】
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。実施例では音響整合層の特性の評価指標として、音波発生源として用いる圧電素子に接合した音響整合層を対にして100mm離して設置し、一方の超音波発生源から発した超音波が、他方の音響整合層から、圧電素子に伝播して起電力が発生するようにする。更に、オシロスコープによりこの起電力を測定する。起電力は、音響整合層の伝播特性の増加関数であることから、起電力により、音響整合層の伝播特性が明らかとなる。
【実施例
【0149】
(実施例1)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.2mmのものである。
上記の場合、起電力は10mVであった。
【0150】
(実施例2)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.4mmのものである。
上記の場合、起電力は20mVであった。
【0151】
(実施例3)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.6mmのものである。
上記の場合、起電力は35mVであった。
【0152】
(実施例4)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.8mmのものである。
上記の場合、起電力は40mVであった。
【0153】
(実施例5)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が1.0mmのものである。
上記の場合、起電力は40mVであった。
【0154】
(実施例6)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が1.2mmのものである。
上記の場合、起電力は37mVであった。
【0155】
(実施例7)
実施の形態2において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が1.4mmのものである。
上記の場合、起電力は32mVであった。
【0156】
(実施例8)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを0.2mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は20mVであった。
【0157】
(実施例9)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを0.4mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は30mVであった。
【0158】
(実施例10)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを0.6mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は35mVであった。
【0159】
(実施例11)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波
伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを0.8mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は45mVであった。
【0160】
(実施例12)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを1.0mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は50mVであった。
【0161】
(実施例13)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを1.2mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は50mVであった。
【0162】
(実施例14)
実施の形態3において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略懸垂線形状とした。更に、中央部付近の窪みを1.4mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は50mVであった。
【0163】
実施例1~14から判る通り、膜状部材の曲率が小さい場合、起電力が小さいが、中央部付近の変形が大きくなるに従って、起電力が大きくなる。これは、曲率が小さい程、膜状部材に対して曲げ応力が加わる度合いが大きいためであると考えられる。
【0164】
更に、実施例1から7、と実施例8から14それぞれの中央部付近の窪みが同じもので起電力を比較すると、実施例8から14の方が起電力が大きいことが判る。これは膜状部材が、懸垂線構造であることにより、音波発生源の加速度へ追従する効果が高まったためであると考えられる。
【0165】
(実施例15)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.2mmのものである。
上記の場合、起電力は10mVであった。
【0166】
(実施例16)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.4mmのものである。
上記の場合、起電力は20mVであった。
【0167】
(実施例17)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.6mmのものである。
上記の場合、起電力は35mVであった。
【0168】
(実施例18)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が0.8mmのものである。
上記の場合、起電力は40mVであった。
【0169】
(実施例19)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が1.0mmのものである。
上記の場合、起電力は40mVであった。
【0170】
(実施例20)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が1.2mmのものである。
上記の場合、起電力は37mVであった。
【0171】
(実施例21)
実施の形態4において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が1.4mmのものである。
上記の場合、起電力は32mVであった。
【0172】
(実施例22)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を0.2mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は20mVであった。
【0173】
(実施例23)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を0.4mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は30mVであった。
【0174】
(実施例24)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を0.6mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は35mVであった。
【0175】
(実施例25)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を0.8mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は45mVであった。
【0176】
(実施例26)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を1.0mmとして評価を行っ
た。
上記の場合、起電力は50mVであった。
【0177】
(実施例27)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を1.2mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は50mVであった。
【0178】
(実施例28)
実施の形態5において、膜状部材が、音波伝播方向に対して略垂直な面に対して、音波伝播方向に略アーチ形状とした。更に、中央部付近の変形を1.4mmとして評価を行った。
上記の場合、起電力は50mVであった。
【0179】
実施例15から21、と実施例22から28それぞれの中央部付近の変形が同じもので起電力を比較すると、実施例22から28の方が起電力が大きいことが判る。これは膜状部材が、アーチ構造であることにより、音波発生源の加速度へ追従する効果が高まったためであると考えられる。
【0180】
更に、各実施例から判る通り、膜状部材の曲率が小さい場合、起電力が小さいが、中央部付近の変形が大きくなるに従って、起電力が大きくなる。これは、曲率が小さい程、膜状部材に対して曲げ応力が加わる度合いが大きいためであると考えられる。更に、実施の形態2と4、実施の形態3と5それぞれの中央部付近の変形が同じ場合、起電力は同じになる。これは、実施の形態で説明した通り、実施の形態2での音波発生源が収縮状態の場合と、実施の形態4で音波発生源が伸長状態の場合では、膜状部材に同一の力が加わっているためであると考えられる。同様に、実施の形態3で音波発生源が伸長状態の場合と実施の形態5で音波発生源が収縮状態の場合、膜状部材には同一の力が加わっているためであると考えられる。
(実施例29)
実施の形態6において、下記の通り起電力の評価を行った。
隔壁3の膜状部材2との接合部が含まれる面を基準面として、中央部付近の変形が2.7mmのものである。中央部付近の変形と補強部材の厚さ(0.2mm)の合計が隔壁の高さと同一になるため、隔壁と膜状部材の接合部と、膜状部材が同一面になる。
上記の場合、起電力は28mVであった。
【0181】
補強部材の形状は、実施例11、実施例12の膜状部材とほぼ同じ形状であるにも関わらず、起電力が小さくなっているがこれは、膜状部材の中央部付近と、隔壁との接合部材間では補強されていないため、音響整合層の加速度によりたわんだためであると考えられる。
【0182】
以上のように、本発明によると従来は密度(音響インピーダンス)が大きいため、整合層としては不適な材料を音響整合層として用いることが可能となる。更に、複雑な構成をとる必要がないため、安価に高性能な音響整合層を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
以上のように、本発明にかかる音響整合層は、金属やセラミックス等、耐熱性や耐熱性に優れた材料を用いることができる。従って、自動車、発電、航空機の熱機関等、高温に対する耐久性が必要であるため、従来は適用が難しかった分野への適用も可能である。
【符号の説明】
【0184】
1 音響整合層
2 膜状部材(放射部)
3 隔壁
4 接合部
5 中空構造体
6 音波発生源
7 補強部材
8 超音波送受信器
9 信号線
10 信号線
11 超音波流速計
12 流路
13 超音波送受信器
14 超音波送受信器
15 計時装置
16 演算手段
17 超音波流量計
18 演算手段
19 超音波濃度計
20 濃度測定空間
21 筐体
22 通気孔
23 超音波送受信器
24 超音波送受信器
25 温度センサ
26 計時装置
27 演算手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21