(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20241108BHJP
【FI】
G06Q40/03
(21)【出願番号】P 2019226060
(22)【出願日】2019-12-16
(62)【分割の表示】P 2018092847の分割
【原出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518103662
【氏名又は名称】株式会社スマイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 恒之
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】月野 洋一郎
【審判官】安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-18816号公報
【文献】特開2004-213286号公報
【文献】山中卓,”企業の受注情報の貸出業務への活用可能性の検討 -受注情報を用いた企業評価というFinTech的試みと事例研究-”,[online],2016年9月29日,日本銀行ワーキングペーパーシリーズ 2016年,16-J-10,[令和6年8月22日検索],インターネット<URL:https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j10.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者における従業員又は役員に関連した第一情報であって、前記従業員
又は前記役員に対する給与
又は報酬に関する情報を含む第一情報と、前記利用者における取引に関連した第二情報
であって月次の受注件数又は月次の受注金額を含む第二情報と、前記利用者における財務状況に関連した第三情報であって、月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を含む第三情報とを記憶する記憶部と、
前記第一情報、
前記月次の受注件数又は月次の受注金額を含む第二情報、及び前記月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を含む第三情報を前記記憶部から読み出して出力する出力部と、
少なくとも、前記出力部から出力された前記第一情報の前記従業員又は前記役員に対する給与又は報酬に関する情報と、前記第二情報の月次の受注件数又は月次の受注金額と、前記第三情報の月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を用いて、前記利用者に対する与信を行う制御部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第一情報は、前記従業員もしくは前記役員の人数の平均もしくは増減、又は前記従業員もしくは前記役員に対する給与もしくは報酬の平均もしくは増減に関する情報を含むことを特徴とする請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第一情報は、前記従業員又は前記役員の扶養情報又は年齢情報を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第一情報は、前記従業員又は前記役員の扶養情報又は年齢情報を含み、
前記制御部は、前記扶養情報又は前記年齢情報を用いて、前記従業員又は前記役員に対する契約の成約見込みを判断する又は与信を
行うことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記利用者に対する与信情報も用いて、前記従業員又は前記役員に対する前記契約の成約見込みを判断する又は前記与信を行うことを特徴とする請求項
4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記従業員又は前記役員への支払情報と、広告情報とを出力することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第一情報は、前記従業員又は前記役員の労働時間、残業時間又は休日出勤に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記利用者は企業であり、
前記第一情報は、前記企業の部門における従業員数割合に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第二情報は
、前記利用者における発注に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第二情報は、前記利用者における売上占有率又は売上構成比率に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第二情報は、前記利用者における売掛金の回収又は買掛金の支払に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第二情報は、前記利用者における受注から納品までの平均サイクルもしくは売掛金の回収サイクルに関する情報、又は前記利用者における発注から仕入までの平均サイクルに関する情報もしくは買掛金の支払いサイクルに関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第二情報は、前記利用者における在庫に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
記憶部によって、利用者における従業員又は役員に関連した第一情報であって、前記従業員
又は前記役員に対する給与
又は報酬に関する情報を含む第一情報と、前記利用者における取引に関連した第二情報
であって月次の受注件数又は月次の受注金額を含む第二情報と、前記利用者における財務状況に関連した第三情報であって、月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を含む第三情報とを記憶することと、
出力部によって、前記記憶部に記憶された前記第一情報、
前記月次の受注件数又は月次の受注金額を含む第二情報、及び前記月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を含む第三情報を読み出して出力することと、
制御部によって、
少なくとも、前記出力部から出力された前記第一情報の前記従業員又は前記役員に対する給与又は報酬に関する情報と、前記第二情報の月次の受注件数又は月次の受注金額と、前記第三情報の月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を用いて、前記利用者に対する与信を行うことと、
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記情報処理装置に、
利用者における従業員又は役員に関連した第一情報であって、前記従業員
又は前記役員に対する給与
又は報酬に関する情報を含む第一情報と、前記利用者における取引に関連した第二情報
であって月次の受注件数又は月次の受注金額を含む第二情報と、前記利用者における財務状況に関連した第三情報であって、月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を含む第三情報とを記憶する記憶機能と、
前記第一情報、
前記月次の受注件数又は月次の受注金額を含む第二情報、及び前記月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を含む第三情報を読み出して出力する出力機能と、
少なくとも、前記出力部から出力された前記第一情報の前記従業員又は前記役員に対する給与又は報酬に関する情報と、前記第二情報の月次の受注件数又は月次の受注金額と、前記第三情報の月次の売掛債権残高又は買掛債務残高を用いて、前記利用者に対する与信を行う制御機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から金融機関等が対象企業に金銭の貸し付けを行うことが行われている。金銭を貸し付ける際には、対象企業の実績、決算書類等を根拠に金銭の貸し付けを行っている。一例として、特許文献1では、貸借対照表、損益計算書、販売費・一般管理費明細及び製造原価明細を含む企業の複数期の財務諸表を分析して該企業の信用格付を行う信用格付装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従前では用いられていなかった観点から与信を行うことができる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による情報処理装置は、
利用者における従業員又は役員に関連した第一情報と、前記利用者における取引に関連した第二情報又は前記利用者における財務状況に関連した第三情報とを記憶する記憶部と、
前記第一情報と、前記第二情報又は前記第三情報を出力する出力部と、
を備えてもよい。
【0006】
本発明による情報処理装置は、
前記出力部から出力された前記第一情報と、前記第二情報又は前記第三情報とを用いて、前記利用者に対する与信を行う制御部を備えてもよい。
【0007】
本発明による情報処理装置において、
前記制御部は、閾値を超える数値を除外してもよい。
【0008】
本発明による情報処理装置において、
前記第一情報は、前記従業員もしくは前記役員の人数、又は前記従業員もしくは前記役員に対する給与もしくは報酬に関する情報を含んでもよい。
【0009】
本発明による情報処理装置において、
前記第一情報は、前記従業員もしくは前記役員の人数の平均もしくは増減、又は前記従業員もしくは前記役員に対する給与もしくは報酬の平均もしくは増減に関する情報を含んでもよい。
【0010】
本発明による情報処理装置において、
前記第一情報は、前記従業員又は前記役員の扶養情報又は年齢情報を含んでもよい。
【0011】
本発明による情報処理装置は、
前記出力部から出力された前記第一情報と、前記第二情報又は前記第三情報とを用いて、前記利用者に対する与信を行う制御部を備え、
前記制御部は、前記扶養情報又は前記年齢情報を用いて、前記従業員又は前記役員に対する契約の成約見込みを判断する又は与信を行ってもよい。
【0012】
本発明による情報処理装置において、
前記制御部は、前記利用者に対する与信情報も用いて、前記従業員又は前記役員に対する前記契約の成約見込みを判断する又は前記与信を行ってもよい。
【0013】
本発明による情報処理装置において、
前記出力部は、前記従業員又は前記役員への支払情報と、広告情報とを出力してもよい。
【0014】
本発明による情報処理装置は、
前記広告情報を閲覧したかを判断する制御部をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明による情報処理装置において、
前記第一情報は、前記従業員又は前記役員の労働時間、残業時間又は休日出勤に関する情報を含んでもよい。
【0016】
本発明による情報処理装置において、
前記第一情報は、前記利用者における部門における従業員数割合に関する情報を含んでもよい。
【0017】
本発明による情報処理装置において、
前記第二情報は、所定期間における前記利用者における受注件数もしくは受注金額、又は所定期間における前記利用者における発注件数もしくは発注金額に関する情報を含んでもよい。
【0018】
本発明による情報処理装置において、
前記第二情報は、前記利用者における売上占有率又は売上構成比率に関する情報を含んでもよい。
【0019】
本発明による情報処理装置において、
前記第二情報は、前記利用者における所定期間の売上又は仕入に関する情報を含んでもよい。
【0020】
本発明による情報処理装置において、
前記第二情報は、前記利用者における売掛金の回収又は買掛金の支払に関する情報を含んでもよい。
【0021】
本発明による情報処理装置において、
前記第二情報は、前記利用者における受注から納品までの平均サイクル、又は前記利用者における発注から仕入までの平均サイクルに関する情報を含んでもよい。
【0022】
本発明による情報処理装置において、
前記第二情報は、前記利用者における在庫に関する情報を含んでもよい。
【0023】
本発明による情報処理装置は、
利用者における従業員又は役員に関連した第一情報と、前記利用者における取引に関連
した第二情報又は前記利用者における財務状況に関連した第三情報とを用いて、前記利用者に対する与信を行う制御部を備えてもよい。
【0024】
本発明による情報処理方法は、
利用者における従業員又は役員に関連した第一情報と、前記利用者における取引に関連した第二情報又は前記利用者における財務状況に関連した第三情報とを記憶することと、
前記第一情報と、前記第二情報又は前記第三情報を出力することと、
を備えてもよい。
【0025】
本発明によるプログラムは、
情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記情報処理装置に、
利用者における従業員又は役員に関連した第一情報と、前記利用者における取引に関連した第二情報又は前記利用者における財務状況に関連した第三情報とを記憶することと、
前記第一情報と、前記第二情報又は前記第三情報を出力することと、
を実行させてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明において、利用者における従業員又は役員に関連した第一情報と、利用者における取引に関連した第二情報又は利用者における財務状況に関連した第三情報を記憶して出力する態様を採用した場合には、取引情報又は財務情報だけではなく従業員又は役員に関連した情報に基づいて、利用者に対する与信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態による情報処理装置のブロック図。
【
図2】本発明の実施の形態で用いられうる第一情報の例を示した図。
【
図3】本発明の実施の形態で用いられうる第二情報の例を示した図。
【
図4】本発明の実施の形態で用いられうる第三情報の例を示した図。
【
図5】本発明の実施の形態で用いられうる第四情報の例を示した図。
【
図6】本発明の実施の形態で用いられうる基本情報の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態
《構成》
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明において「又は」及び「もしくは」は「及び」及び「並びに」の意味も含んでおり、例えば「A又はB」とは、A、B並びにA及びBのいずれかを意味している。
【0029】
本実施の形態の情報処理装置は、例えばサーバプログラム等のプログラムをインストールすることで生成される。このプログラムは電子メールで配信されてもよいし、所定のURLにアクセスしたうえでログインすることで入手できてもよいし、記録媒体に記録されてもよい。本実施の形態の情報処理方法は上記プログラムがインストールされた情報処理装置によって実施される。
【0030】
本実施の形態の情報処理装置は一台の装置から構成されてもよいが、複数の装置から構成されてもよい。情報処理装置が複数の装置から構成される場合には、情報処理装置を構成する装置は異なる部屋又は異なる場所に設置されてもよく、情報処理装置の一部と情報処理装置の残部が遠隔地に配置されてもよい。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の情報処理装置は、利用者における従業員又は役員に
関連した第一情報と、利用者における取引に関連した第二情報又は利用者における財務状況に関連した第三情報とを記憶する記憶部60と、第一情報と、第二情報又は第三情報を出力する出力部10と、を有してもよい。本実施の形態の情報処理装置は、第一情報と、第二情報又は第三情報を取得する取得部20を有してもよい。このような態様に限られることはなく、情報処理装置は、第一情報、第二情報及び第三情報のいずれか1つ以上を取得して記憶してもよく、第一情報、第二情報及び第三情報の全てを取得して記憶してもよい。利用者は、典型的には、企業等の法人、公共団体、法人格なき社団等の団体や個人事業主である。
【0032】
情報処理装置は、様々な情報を利用者等に送信する送信部30と、様々な情報を利用者等から受信する受信部35とを有してもよい。
【0033】
情報処理装置は、第一情報、第二情報及び第三情報のいずれか1つ以上を用いて、利用者に対する与信を行う制御部50を有してもよい。制御部50は利用者における与信情報をチャート形式で出力してもよいし、表形式で出力してもよい。制御部50は閾値を超える数値を除外して、データクレンジングを行ってもよい。このような態様を採用した場合には、閾値を超えるエラー情報及び特殊情報を除外してモデルを作成できることから、信頼性の高いモデルを提供できる。一例として、持ち株会社のホールディングスでは平均給料が異常に高いことがあるが、そのような情報を用いてしまうと正確な情報を得ることができないこともある。他方、このようなホールディングスにおける情報を利用しないことで、より正確な情報を用いてモデルを生成でき、精度の高い結果を得ることができる。
【0034】
制御部50は人工知能機能(AI機能)を有してもよい。この場合には、過去の実績に基づいて採用変数や採用係数が決定された算出モデルに、制御部50が利用者に関する情報を当て込むことで与信情報を出力するようにしてもよい。制御部50は、利用者に貸し付けを行った際の結果についてフィードバックすることで、算出モデルを更新してもよい。また、制御部50は、利用者に貸し付けを行った際の結果(支払遅延も含む。)についてフィードバックすることで、当該利用者に対する信用情報を更新するようにしてもよい。
【0035】
受信部35がある利用者から受信して送信部30が別の利用者に送信する情報としては、例えば、見積情報、発注情報、受注情報、納品依頼情報、納品情報、検収情報、請求情報、支払情報等の様々な情報を挙げることができる。利用者間の情報の送受信はクラウドを介して行われてもよい。
【0036】
制御部50は各利用者における商取引の明細データからの自動会計仕訳を行ってもよい。この場合には、例えば、請求情報、入金情報、仕入情報、支払情報等を用いて、売上、仕入、入金、支払等を自動で仕訳するようにしてもよい。
【0037】
記憶部60は、部材の入出荷情報、在庫情報等の部材管理情報を記憶してもよい。制御部50は、部材が入荷されたり出荷されたりすると、部材管理情報を更新してもよい。このような情報の管理は部材に付けられたICタグ等を用いて行ってもよい。
【0038】
第一情報は、従業員もしくは役員の人数、又は従業員もしくは役員に対する給与もしくは報酬に関する情報を含んでもよい。第一情報は、一例として
図2に示すように、業種別、規模別又は地域別の月次の役員・従業員数/役員報酬・給与支払額の指標値又はその推移を含んでもよい。また、第一情報は、一例として、業種別、規模別又は地域別の賞与支払額の指標値又はその推移を含んでもよい。
【0039】
第一情報は、従業員もしくは役員の人数の平均もしくは増減、従業員もしくは役員に対
する給与もしくは報酬の平均もしくは増減に関する情報を含んでもよい。
【0040】
一般論として、従業員もしくは役員の数、従業員もしくは役員に支払っている金額、従業員もしくは役員の人数の平均、従業員もしくは役員に対する給与もしくは報酬の平均が増加傾向にある場合には当該利用者はビジネス上の勢いがある可能性が高い。他方、従業員もしくは役員の数、従業員もしくは役員に支払っている金額、従業員もしくは役員の人数の平均、従業員もしくは役員に対する給与もしくは報酬の平均が減少傾向にある場合には当該利用者はビジネス上の勢いがなくなっている可能性が高い。このため、これらの指標を用いることは有益である。
【0041】
第一情報は、従業員又は役員の扶養情報又は年齢情報を含んでもよい。
【0042】
一般論として、従業員の平均年齢が低い場合には積極的に若手を採用しており、当該利用者はビジネス上の勢いがある可能性が高く、平均年齢が高い場合には積極的に若手をあまり採用しておらず、当該利用者はビジネス上の勢いがない可能性が高い。このため、これらの指標を用いることは有益である。また、役員の平均年齢が低い場合には積極的に若手を役員に採用しており、他方、役員の平均年齢が高い場合にはある程度の年代の者を役員に採用していることを把握することができる。
【0043】
制御部50は、従業員又は役員の扶養情報又は年齢情報を用いて、従業員又は役員に対して商品を売り込んだ際の契約の成約見込みに関する成約見込み情報を判断してもよいし、従業員又は役員に対する与信を行ってもよい。制御部50は、雇用主である企業等の利用者に対する与信情報も用いて、従業員又は役員における成約見込み情報を判断したり、与信を行ったりしてもよい。
【0044】
出力部10は、従業員又役員への給与明細等の支払情報とともに、広告情報を出力してもよい。制御部50は、当該広告情報をクリック等して閲覧したかを判断してもよい。このような広告情報の閲覧割合(開封率)を記憶部60で記憶してもよい。このように支払情報とともに広告情報を出力して端末で表示させることで、広告の閲覧割合を高めることができる。また、支払情報は、毎月の給与又は報酬に関する第一支払情報と、賞与に関する第二支払情報とを含んでもよい。出力部10は一定の従業員又は役員に関し、第一支払情報については広告情報を出力せず、賞与について広告情報を出力するようにしてもよい。このように賞与についてのみ広告情報を出力する従業員又は役員は広告情報の閲覧割合によって判断し、第一支払情報とともに出力される広告情報について閲覧割合が一定値以下の場合には第一支払情報とともに広告情報を出力せず、第二支払情報とともに広告情報を出力するようにしてもよい。毎月の給与又は報酬は決まった概ね金額であることが多く、その場合には、そもそも従業員又は役員が第一支払情報を閲覧しないこともある。他方、賞与の場合には、その金額が確定していないことが多く、従業員又は役員が第二支払情報を閲覧する可能性が高いためである。
【0045】
第一情報は、従業員又は役員の労働時間、残業時間又は休日出勤に関する指標値又はその推移といった情報を含んでもよい。残業時間には深夜残業時間が含まれてもよい。労働時間に関する情報には平均労働時間に関する情報が含まれてもよい。残業時間に関する情報には平均残業時間に関する情報が含まれてもよい。休日出勤に関する情報には平均休日出勤時間に関する情報が含まれてもよい。例えば、利益が出ている場合であっても平均労働時間が長い場合には、人手不足である可能性が高く、当該利益を維持できないリスクがあると制御部50が判断してもよい。
【0046】
第一情報は、利用者における部門における従業員数割合に関する指標値又はその推移といった情報を含んでもよい。第一情報は、一例として
図2に示すように、製造系従業員数
と販売系従業員数の割合に関する情報を含んでもよい。販売系従業員数に対して製造系従業員数の比率が高い場合には製造中心の利用者であり、製造系従業員数に対して販売系従業員数の比率が高い場合には営業中心の利用者であると判断できる。例えば、製造系従業員数に対して販売系従業員数の比率が高い場合には営業力が強みとなっていることから、例えば制御部50において、営業力の高い人材が抜けてしまって売上高が下がってしまうリスクがあると判断できることもある。
【0047】
第二情報は、所定期間における利用者における受注件数もしくは受注金額、又は所定期間における利用者における発注件数もしくは発注金額に関する情報を含んでもよい。第二情報は、一例として
図2に示すように、月別受注件数、月別受注金額又はその推移と、月別売上件数、月別受注金額又はその推移を含んでもよい。また、第二情報はこれらの情報の経年比較も含んでもよい。このように受注情報や発注情報を用いることで、例えば制御部50において受注の波や発注の波を見ることができる。
【0048】
第二情報は、利用者における売上占有率又は売上構成比率に関する情報を含んでもよい。第二情報は、一例として、上位n社(「n」は1以上の整数)の売上占有率に関する情報を含んでもよく、上位3社の売上占有率、上位5社の売上占有率、上位10社の売上占有率等を含んでもよい。第二情報は、一例として、売上X%の構成社数に関する情報を含んでもよく、売上80%の構成社数、売上50%の構成社数等を含んでもよい。例えば、売上高の80%を一社が占めている利用者と売上高の80%が20社で構成されている利用者とでは、前者と比較して後者の方の安定性が高いと例えば制御部50において判断することができる。
【0049】
第二情報は、所定期間の売上又は仕入に関する情報を含んでもよい。このように売上情報や仕入情報を用いることで、受注から少し遅れた売上や発注から少し遅れた仕入れの波を例えば制御部50において見ることができる。第二情報は、一例として、業種別、規模別又は地域別の月次の売上又は仕入れの指標値又はその推移を含んでもよい。例えば地方銀行等の場合には、地方銀行が力を入れている地域の情報についてのニーズが高い。この点、第二情報が地域別の情報を有している場合には、そのようなニーズに応えることができる。また、ある所定の地域における売上高が高い場合には自治体等の仕事を受けている可能性があり、その場合には、一定期間において安定した売上高を見込めると例えば制御部50において判断してもよい。また、利用者の業種が商業であるのか又は工業であるのかによって、売上、仕入等の情報と今後の売上、利益率等の情報との関係が変わりうることから、第二情報として利用者の業種に関する情報が含まれていることは有益である。
【0050】
第二情報は、利用者における売掛金の回収又は買掛金の支払に関する情報を含んでもよい。第二情報は、一例として
図3に示すように、売掛金平均回収サイクルの指標値又はその推移を含んでもよく、買掛金平均支払サイクルの指標値又はその推移を含んでもよい。また、第二情報は、稼働している有効な売掛先数又は買掛先数の指標値又はその推移を含んでもよい。このように売掛金の回収又は買掛金の支払に関する情報を用いることで、売掛金の回収率や買掛金の遅延率を用いた判断が例えば制御部50において可能となる。また、売掛金の回収サイクルや買掛金の支払いサイクルを用いた判断も例えば制御部50において可能となる。売掛金の回収率が高い場合には、売掛金として計上されているものは高確率で現金化できると例えば制御部50において判断できる。また、買掛金の遅延率が低い場合には期限を守った支払いが行われており、融資を行った場合にも期限内での回収確率が高いと例えば制御部50において判断できる。
【0051】
第二情報は、利用者における受注から納品までの平均サイクル、又は利用者における発注から仕入までの平均サイクルに関する情報を含んでもよい。このような平均サイクルを用いることで、受注又は発注を起点とした現金の平均的な流れを例えば制御部50におい
て把握することができる。
【0052】
第二情報は、利用者における在庫に関する情報を含んでもよい。第二情報は、一例として
図3に示すように、平均在庫回転率の指標値又はその推移を含んでもよい。また、第二情報は、一例として、滞留在庫の原価合計値の指標値又はその推移を含んでもよい。出荷した段階及び入荷した段階又は製造した段階で記憶部60にこれらの情報が入力されて、在庫情報が記憶されてもよい。
【0053】
第二情報は、Recency(最新購買日)、Frequency(購買頻度)及びMonetary(購買金額)に関する情報を含んでもよく、RFM分析の指標値又はその推移を含んでもよい。例えば離反している顧客が多い場合には、今後の売上高が下がる可能性が高いと例えば制御部50において判断でき、頻繁に取引の発生している顧客が増えている場合には、今後の売上高が上がる可能性が高いと例えば制御部50において判断できる。
【0054】
第三情報は、
図4に示すように、業種別、規模別又は地域別の月次の残高試算表のような財務指標を含んでもよい。
【0055】
第三情報は、流動比率、当座比率又は手元現預金比率に関する情報を含んでもよい。
【0056】
第三情報は、自己資本比率、固定長期適合比率、借入依存度又は借入月商倍率を含んでもよい。なお、借入金月商倍率とは、借入金が月間売上高の何倍であるかを示す指標であり、借入金の返済余力を見るための指標である。
【0057】
第三情報は、売上高総利益率、売上高営業利益率又は売上高経常利益率を含んでもよい。
【0058】
第三情報は、総資本利益率、総資本経常利益率又は総資本償却前経常利益率を含んでもよい。
【0059】
第三情報は、総資本回転率、又は従業員一人当たりの売上高、利益率もしくは固定資産額を含んでもよい。
【0060】
第三情報は、所定期間(例えば月次)の現預金残高の推移、所定期間(例えば月次)の売掛債権残高又は買掛債務残高を含んでもよい。
【0061】
なお、第一情報、第二情報及び第三情報に含まれる各々の情報に関する比較情報が記憶部60で記憶されてもよい。一例としては、各指標値の前年同期比、3期比較等が記憶部60で記憶されてもよい。
【0062】
記憶部60には、利用者である企業の基本情報が記憶されてもよい。基本情報としては、例えば
図6に示すように、会社設立年月日、資本金、地域又は業種が含まれてもよい。また、基本情報としては、従業員数、年商、免許又は資格が含まれてもよい。また、基本情報としては、代表者氏名、代表者年齢又は代表者経歴のような代表者情報が含まれてもよい。
【0063】
企業の基本情報も与信に利用されてもよい。例えば記憶部60に記憶されている第一情報、第二情報、第三情報及び基本情報を用いて、制御部50が当該企業の与信に関する情報を導き出してもよい。
【0064】
記憶部60には、インターネット等から入手できる第四情報が記憶されてもよい。第四
情報には、例えば
図5に示すように、会社サイト又は製品サイトの更新頻度、アクセス状況又はSEO(Search Engine Optimization)ランクが含まれてもよい。第四情報には、SNS上での投稿頻度、投稿に対する反応又は評価が含まれてもよい。第四情報には、利用者が企業等の場合には当該企業の代表者情報が含まれてもよく、例えば、代表者のインターネットでの検索ヒット数、アクセス数又は評価が含まれてもよい。
【0065】
記憶部60に記憶されている第一情報、第二情報、第三情報、第四情報及び基本情報を用いて制御部50が当該企業の与信に関する情報を導き出してもよい。なお、本実施の形態では、記憶部60に記憶されている第一情報、第二情報、第三情報、第四情報及び基本情報のいずれか1つ以上を用いて制御部50が当該企業の与信に関する情報を導き出す態様も含まれている。
【0066】
情報処理装置は決済基盤であってもよい。そして、この決済基盤を用いた一連の商取引は記憶部60で記憶されてもよい。そして、制御部50が、検収率や再納品検収率等の検収実績、期日内納品実績等の納期遵守率、売掛金回収実績等の商取引における役務実行実績を評価モデルで指標化し、取引信用モデルで取引実行力を評価してもよい。
【0067】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果であって、未だ説明していないものを中心に説明する。なお、「効果」で述べるあらゆる構成は、本実施の形態の構成として利用することができる。
【0068】
本実施の形態において、利用者における従業員又は役員に関連した第一情報と、利用者における取引に関連した第二情報又は利用者における財務状況に関連した第三情報とを記憶して出力する態様を採用した場合には、取引情報又は財務情報だけではなく従業員又は役員に関連した情報に基づいて、利用者に対する与信を行うことができる。このため、より信頼性の高い与信情報を提供できる。
【0069】
出力部10から出力された第一情報と、第二情報又は第三情報とを用いて、制御部50が利用者に対する与信を行う態様を採用した場合には、取引情報又は財務情報だけではなく従業員又は役員に関連した情報に基づいた与信結果を得ることができる。
【0070】
利用者の従業員又は役員の扶養情報又は年齢情報を用いて、従業員又は役員における契約の成約見込みを判断する又は与信を行う態様を採用した場合には、利用者だけではなく、利用者の従業員又は役員に対して契約の成約見込みを判断したり与信を行ったりすることができる。従来であれば、利用者の従業員又は役員に対して与信を行う場合であれば、勤務先の一般的な情報と当該従業員又は役員における過去の給与等とを用いて与信を行っているが、本態様によれば、利用者における極めて詳細な情報を用いて与信を行うことができる点で有益である。また、本態様によれば契約の成約見込みを判断できることから、従業員又は役員に対する営業(マーケティング)を効果的に行うことができる。
【0071】
上記各実施の形態の出力部10、取得部20、制御部50、記憶部60、送信部30、受信部35等を含む各構成要素は、ICチップ、LSI等の集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよいし、CPU、メモリ等を用いてソフトウェアによって実現してもよい。また、各構成要素は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、複数の構成要素が1つの集積回路によって実現されてもよい。
【0072】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。
【符号の説明】
【0073】
10 出力部
20 取得部
30 送信部
35 受信部
50 制御部
60 記憶部